平成29(行コ)99 損失補償裁決取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成30年8月10日 名古屋高等裁判所 その他
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判決文本文5,858 文字)

平成30年8月10日判決言渡平成29年(行コ)第99号損失補償裁決取消請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成29年(行ウ)第14号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 愛知県収用委員会が,27愛収第2-2号事件につき平成28年11月15日付けで控訴人に対してした裁決を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,愛知県α市(以下「α市」という。)による土地区画整理事業の施行地区内の宅地を所有する控訴人が,同地区内の宅地につき仮換地の指定を受けたところ,上記事業により上記宅地の東側,西側及び北側のいずれにも道路が新設され,これらの道路と上記宅地との間に高低差が生ずるなどしたため,愛知県収用委員会に対し,α市を相手方として道路法70条1項等に基づく損失補償の裁決を申請したが,土地区画整理事業によって道路の新設がされる場合には同項の適用はないこと等を理由として,これを却下する旨の裁決を受けたことから,土地収用法133条1項に基づき,上記裁決の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人が主張する土地区画整理事業の一環としての道路の新設に伴って生ずる高低差や,道路と宅地上の建物との距離及びそれに伴うプライバシーの問題等については,換地処分等の際の照応の原則の適用の中で,又は清算金等の算定の中で考慮することが予定されており,これに不服がある場合には,換地処分等に対する抗告訴訟の手段により争うことが可能であるため,別途, 道路法によって補償すべき損失が生ずることは観念できないから,上記裁決は適法であるとして,控訴人の請求を棄却した。 そこで,控訴人が控訴し 訴訟の手段により争うことが可能であるため,別途, 道路法によって補償すべき損失が生ずることは観念できないから,上記裁決は適法であるとして,控訴人の請求を棄却した。 そこで,控訴人が控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,3のとおり控訴人の当審における補充主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の2ないし4に記載するとおりであるから,これを引用する。 3 控訴人の当審における補充主張(1) 本件宅地から,その東側道路へは通行可能であるが,西側道路及び本件北側道路へは,大きな段差があり通行が不可能である。本件宅地は,面積合計が1624.03㎡もあり,東西に長い長方形状の土地となっている。本件宅地は,東側道路としか実際の通行,出入りができない状況となっており,西側が道路との高低差により袋地のようになっていて,盛土をして道路に直接通行できるようにしない限り,宅地としての価値は著しく減殺される。 一般に,宅地は,道路面よりも30㎝程度は盛土をして高くしておくのが常識であるにもかかわらず,本件宅地は,いずれの道路面よりも敷地高が低く,豪雨の時には本件宅地全体が浸水し,敷地内に立っている本件居宅等にも雨水が進入する可能性が高い。 また,本件北側道路は,本件居宅の北東角との距離は0.75mしかなく,本件物置の北東角との距離は1.5mしかないから,プライバシー侵害等の生活への影響は甚大である。 (2) 本件宅地において,旧宅地と同様の生活状況にするための工事(盛土,かさ上げ,家屋の移動工事,樹木の伐採等)をするための工事費の額は,5616万円である。これに対し,α市は,道路の新設又は拡張により控訴人が被った損失については,本件事業の中で全く補償しないことを明言してい ,家屋の移動工事,樹木の伐採等)をするための工事費の額は,5616万円である。これに対し,α市は,道路の新設又は拡張により控訴人が被った損失については,本件事業の中で全く補償しないことを明言している。 しかし,道路法70条1項による請求は,道路の新設・改築による隣接地 の損失の填補を目的としているのに対し,土地区画整理法の換地,仮換地及び清算金,仮清算金の制度は,従前地と換地との価値の均衡を図るものであり,道路の新設,改築に伴う損失の填補を目的とするものではないのであり,要件もそれぞれ異なるから,両者は別の制度と考えるべきであって,一方が優先適用又は選択的に適用される関係にはないというべきである。 (3) 本件事業においては,現段階で控訴人が仮清算金を請求するための法的制度も用意されておらず,土地区画整理事業においては,換地処分とともに清算金の決定を受けて初めて,補償内容を知ることができるのであり,その場合でも,道路新設による損失と,本来の清算金の額が区別されることなく清算金の額が提示されることとなり,詳細は不明である。また,本件事業の換地処分の時期は現状では不明であり,今後10年単位の時間を要すると推測されるから,換地処分における照応の原則の適用上,土地の利用状況や環境等の変化が考慮され,土地の所有者の権利・利益の保護が図られているとはいえない。 したがって,土地区画整理法においては,現段階で道路の新設等により損失を受けた者の権利を救済する制度は用意されていない。道路法70条1項の損失補償の規定は,道路の新設等によって損失を受けた者が直ちに補償の請求をすることができるものであるのに対し,土地区画整理法の照応の原則は,従前地と換地・仮換地との価値の均衡を図るものであり,両者は異なった概念であるから,前者が よって損失を受けた者が直ちに補償の請求をすることができるものであるのに対し,土地区画整理法の照応の原則は,従前地と換地・仮換地との価値の均衡を図るものであり,両者は異なった概念であるから,前者が後者によって評価され尽くしているために,土地の所有者の権利・利益の保護が図られているとはいえない。 (4) 控訴人は,α市の本件仮換地指定によって相当の減歩を受ける一方で,道路の新設による不利益の救済の場面においては,その道路を設置した道路管理者であるα市から,道路法70条1項の適用はない旨主張されている。 このようなα市の主張は,換地処分等という自己の権限を行使することにより,恣意的に道路法70条1項の適用の潜脱を許す結果となるものである。 少なくとも,土地区画整理事業の主体と道路設置をした道路管理者とが一致する場合には,道路の新設等により不利益を受ける仮換地の所有者に対し,道路法70条1項の保護を与えない理由はなく,控訴人は,現地換地を受けたのであるから,なおさら保護が与えられるべきである。 (5) 土地区画整理事業に関する詳細の情報は,施行者がこれを持っているけれども,地権者は持っておらず,施行者側が,換地処分の正当性を主張し,照応の原則を持ち出された場合に,地権者の側がこれに有効に反論することは極めて困難である。したがって,土地区画整理事業内の土地については,土地区画整理事業の枠組みの中で解決すべきであるとすると,個別具体的な地権者の不利益を救済することは極めて困難である。他方で,道路法70条1項によれば,仮換地を受けた者は,収用委員会の裁定の手続により現段階で救済を受けることができる。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,土地区画整理事業における道路の新設に伴う仮換地の環境面の条件の問題について,土地区画整理法から 委員会の裁定の手続により現段階で救済を受けることができる。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,土地区画整理事業における道路の新設に伴う仮換地の環境面の条件の問題について,土地区画整理法から離れて,道路法70条1項に基づいて損失補償を請求することは認められないと解するのが相当であるから,本件裁決は適法であり,控訴人の本訴請求は,棄却すべきものと判断する。その理由は,2のとおり控訴人の当審における補充主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2に記載するとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断(1) 控訴人は,本件宅地が,東側道路からしか出入りができない状況となっており,いずれの道路面よりも敷地高が低く,本件北側道路から本件居宅又は本件物置との距離も短いから,生活への影響もあり,そのために旧宅地と同様の生活を営むことができるようにするため多額の工事費が必要となる,土地区画整理法の換地処分等の制度と,道路法70条1項による請求は,一 方が優先適用又は選択的に適用される関係にはない旨主張する。 この点,本件宅地が,控訴人の指摘するような状況であるとしても,本件で控訴人が損失補償を求める理由としている事項は,いずれも,換地処分等における照応の原則の適用の中で,又は清算金等の算定の中で考慮されることが予定されている事項であるというべきであり(原判決第3の1),本件においても,控訴人の主張する道路の新設又は改築により生ずる土地の利用状況,環境等の変化は,土地区画整理法に規定する換地処分における照応の原則の適用上考慮されているというべきである(乙1ないし4,19)。 そして,土地区画整理事業の一環である道路の新設に伴う問題は,換地処 等の変化は,土地区画整理法に規定する換地処分における照応の原則の適用上考慮されているというべきである(乙1ないし4,19)。 そして,土地区画整理事業の一環である道路の新設に伴う問題は,換地処分等の内容又は清算金の定め方によって解決されることが予定されているために,それとは別に損失が生ずることになるとはいえず,損失が生ずることを前提とする道路法の規定が,別途適用されることはないというべきである(原判決第3の1及び2)。 したがって,控訴人の主張するように,本件事業による換地処分等に係る本件宅地が,そもそも道路法70条1項等に基づく損失補償規定の適用対象であると認めることはできない。控訴人の上記主張は,採用することができない。 (2) 控訴人は,土地区画整理法において,現段階で控訴人が本件事業について仮清算金を請求するための法的制度が用意されていない,道路法70条1項の損失補償の規定と,土地区画整理法の照応の原則は,それぞれ異なった概念であるから,前者が後者によって評価され尽くしており,土地の所有者の権利・利益の保護が図られているとはいえない旨主張する。 しかし,土地区画整理法には,換地処分がなされていない段階においても,換地計画の縦覧の制度や,意見書を提出することができる権利が規定されているほか,仮換地の指定処分に対する行政不服審査法に基づく不服申立てや,抗告訴訟等により救済を求めることができるのであるから,控訴人の主張す るように,現段階で救済するための法的制度が用意されていないと認めることはできない。 また,道路法70条1項の損失補償の規定と,土地区画整理法の照応の原則が,それぞれ異なった概念であるからこそ,控訴人の主張する道路の新設又は改築により生ずる土地の利用状況,環境等の変化は,土地区画整理法に 路法70条1項の損失補償の規定と,土地区画整理法の照応の原則が,それぞれ異なった概念であるからこそ,控訴人の主張する道路の新設又は改築により生ずる土地の利用状況,環境等の変化は,土地区画整理法に規定する換地処分における照応の原則の適用上考慮されることで,土地所有者の権利・利益の保護に欠けることはなく,それとは別の損失が生ずることを前提とする道路法の規定が適用されることはないというべきである(上記(1))。 控訴人の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3) 控訴人は,本件仮換地指定に,道路法70条1項の適用がないとすることは,同項の適用の潜脱を許すことになる,土地区画整理事業の主体と道路管理者とが一致する場合や,いわゆる現地換地を受けた場合には,なおさら同項による保護が与えられるべきである旨主張する。 しかし,道路の新設又は改築により生ずる土地の利用状況,環境等の変化は,土地区画整理法に規定する換地処分における照応の原則の適用上考慮されるものであって,損失が生ずることを前提とする道路法70条1項の規定が別途適用されないことは,上記(1)のとおりであり,そもそも同項の適用の潜脱が問題となる関係にはない。 また,従前所有していた宅地に仮換地の指定がされる,いわゆる現地換地の場合であっても,仮換地の指定の効果は同様であるから,道路法70条1項の適用に関する結論が左右されるものではない。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 (4) 控訴人は,土地区画整理事業に関する詳細な情報が,施行者側に偏在しているから,土地区画整理事業内の土地について,同事業の枠組みの中で解決すべきであるとすると,個別具体的な地権者の不利益を救済することが極 めて困難である旨主張する。 しかし,道路法70条1項が, 土地区画整理事業内の土地について,同事業の枠組みの中で解決すべきであるとすると,個別具体的な地権者の不利益を救済することが極 めて困難である旨主張する。 しかし,道路法70条1項が,上記のような土地区画整理事業における情報の偏在に伴う不利益を救済するといった趣旨から,道路が新設又は改築されたことにより,当該道路に面する土地について,従前の用法に従った用益を維持,継続するためにやむを得ず必要となった通路の新設,移設等の工事に要する費用の全部又は一部を道路管理者が補償することを定めたものと解することはできない。また,土地区画整理法に基づく処分に対する不服は,当該処分を行った土地区画整理事業の施行者に対してされるのが通常であって,一般に,当該処分に関係のない道路管理者に対して,当該処分の補償請求をすることができると考えることは困難である。 控訴人の上記主張は,いずれも採用することができない。 第4 結論よって,控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官永野圧彦 裁判官田邊浩典 裁判官大久保香織

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