平成13(行ウ)16 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月30日 京都地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文21,104 文字)

主文 1 別紙2・損害一覧表1ないし65の各被告らは,それぞれ,宇治市に対し,同一覧表のその被告の「損害額合計」欄記載の金員及びこれに対する平成13年6月22日(ただし,被告aことb,同cことd,同東宝地建株式会社及び同株式会社吉田建設については同月23日,被告eことfについては同月24日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告gは,宇治市に対し,1281万5461円及びこれに対する平成13年7月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その3を原告らの各負担とし,その余を被告らの連帯負担とする。 事実及び理由 第一請求一別紙3・入札一覧表の「落札業者」欄記載の被告らは,それぞれ,宇治市に対し,同一覧表のその「落札業者」欄に対応する「請求額」欄記載の金員及びこれに対する平成13年6月22日(ただし,被告aことb,同cことd,同東宝地建株式会社及び同株式会社吉田建設については同月23日,被告eことfについては同月24日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 二主文第2項と同旨第二事案の概要本件は,宇治市の住民である原告らが,宇治市が平成7年度(平成7年4月1日から平成8年3月31日まで,以下,この意味で「年度」という。)から平成9年度にかけて発注した別紙3・入札一覧表の土木建設工事の各入札(以下「本件各入札」という。)において,被告gと土木建設業者であるその余の被告らが,違法な談合を行い,被告gはその取りまとめ役として被告らの一部からその報酬(「部金」)を受領し,その結果,落札による各契約金額が適正価格より高額になり,宇治市が損害を被ったにもかかわらず,宇治市はその損害賠償請求権を行使しない の取りまとめ役として被告らの一部からその報酬(「部金」)を受領し,その結果,落札による各契約金額が適正価格より高額になり,宇治市が損害を被ったにもかかわらず,宇治市はその損害賠償請求権を行使しないなどと主張して,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号後段により,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償金及びこれに対する遅延損害金を宇治市に支払うよう求めた住民訴訟である。 一争いのない事実等 1 当事者(1) 原告らは,いずれも宇治市の住民である。 (2) 被告gを除く被告ら(以下「被告業者ら」という。)は,土木建設等を業とする者であり,宇治市が発注する土木建設等の工事の受注について,その入札に参加する資格を有する指名業者の登録を受け,土木工事や建設工事等でB,C,D及びEのランクの指定をそれぞれ受けている。被告gは,被告有限会社古川組の実質的経営者である。 2 宇治市は,平成7年度から平成9年度にかけて,別紙3・入札一覧表の「工事名」欄に記載された各工事の本件各入札を各「入札日」欄記載の各日付で実施し,それぞれについて,被告業者らを含む同一覧表「落札業者」欄記載の各業者が,同一覧表「落札金額」欄記載の金額で落札し,それぞれ,宇治市との間で,その落札金額に消費税を加えた金額を工事代金として工事請負契約を締結してそれぞれの工事を実施し,宇治市からその工事代金を受領した。 3 原告らは,本件各入札について,それぞれ,それに先立って,被告g及び落札業者となった者や通称「協力会」に参加していた建設業者らの間で談合が行われ,それによって落札金額及び工事代金額が高額となり,宇治市が損害を被ったと主張して,宇治市監査委員に対し,平成13年3月2日,宇治市長に被告らへの損害賠償請求を勧告するよう求める監査 で談合が行われ,それによって落札金額及び工事代金額が高額となり,宇治市が損害を被ったと主張して,宇治市監査委員に対し,平成13年3月2日,宇治市長に被告らへの損害賠償請求を勧告するよう求める監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った。 4 しかし,同監査委員は,同年4月27日付「住民監査請求にかかる監査の結果について」と題する文書により,本件監査請求を棄却し,同文書は,同月28日,原告らに到達した(甲1,2)。 5 原告らは,同年5月23日,本件訴えを提起した。 二争点 1 原告らが行った本件監査請求は適法か(争点1) 2 被告らは,本件各入札において談合行為を行ったか(争点2)。 3 被告らの各談合行為により,宇治市に損害が生じたか。生じたとして,その額はいくらか(争点3)。 三争点に対する当事者の主張 1 争点1(本件監査請求の適法性)について(原告らの主張)(1) 監査委員が怠る事実の監査を遂げるために,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,法242条2項本文の趣旨を没却するものとはいえず,これに同規定を適用すべきではない。 (2) 本件監査請求の対象事項は,宇治市が被告らに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実とされているところ,本件監査請求を遂げるためには,監査委員は,宇治市が被告らと請負契約を締結したことやその代金額が不当に高いものであったか否かを検討せざるを得ないのであるが,宇治市の契約締結やその代金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされてはじめて宇治市の被告らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく,被告らの談合,これに基づく被告らの入札及び宇治市との契 締結やその代金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされてはじめて宇治市の被告らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく,被告らの談合,これに基づく被告らの入札及び宇治市との契約締結が不法行為法上違法の評価を受けるものであること,これにより宇治市に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りるのであるから,本件監査請求は宇治市の契約締結を対象とする監査請求を含むものとみざるを得ないものではない。本件監査請求には同規定の適用はない。 (被告らの主張)「怠る事実」の是正を求める監査請求であっても,それが財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実に係るものであるときは,違法,無効とされる財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として法242条2項本文の規定が適用され,それらの日から1年以内に監査請求をしなければならない。 本件各入札は,もっとも最近のものでも平成10年3月19日に実施されており,原告らが本件監査請求を行ったのは平成13年3月2日であるから,すでに監査請求期間は徒過しており,原告らの本件訴えは不適法である。 2 争点2(談合行為の有無)について(原告らの主張)(1) 被告gは,被告有限会社古川組の実質的経営者であるところ,平成6年ないし平成7年ころから,宇治市のBランク以下の土木建設業者を中心に構成される「協力会」と称する会の取りまとめ役をしていた。 (2) 協力会は,宇治市が入札を行う前日ころに行われる談合の会であり,その席では,被告gが話し合いを進める司会役をしていた。初めに,入札が行われる工事について,それを受注したいとの希望の有無を,その場に出席している各業者に確認し,その工事の受注を希望する業者が1社だけであれば,すぐにその業者にその工事を落 をしていた。初めに,入札が行われる工事について,それを受注したいとの希望の有無を,その場に出席している各業者に確認し,その工事の受注を希望する業者が1社だけであれば,すぐにその業者にその工事を落札されることが決まることになる。このようにして協力会での話し合いで落札することの決まった業者を,業者の間では「本命」とか「選手」などと呼んでいた。工事の受注を希望する業者が複数ある場合には,その複数の業者の間で話し合いを行わせ,あるいは複数の業者それぞれにくじを引いてもらい,そのくじで組み合わされた2つの業者が話し合って,どちらかの業者が本命業者の候補となり,そうして勝ち残った本命業者の候補同士が更に話し合うなどして,最終的に1つの業者を本命業者として絞り込んでいった。 (3) 被告gは,宇治市の担当者であるhに対し,宇治市が発注する建設工事について,特定の業者に入札参加資格を付与するよう働きかけていたほか,hから,宇治市が発注する本件各入札に係る工事を含む土木建設工事の設計金額を聞き出した上,その工事の設計金額に基づいて,どの程度の金額で入札するのかを本命業者に指示していた。そして,本命業者は,被告gの指示した金額で入札を行い,他の業者は,本命業者が落札できるように協力して,本命業者の入札金額より高い金額で入札を行っていた。 (4) 被告gは,こうした方法で,宇治市内のBランク以下の土木建設業者に対して影響力を行使する一方,前記「協力会」に参加する業者から,年会費を徴収したり,落札に成功した業者から,落札金額の一定割合の金額を「部金」と称して受領するなどしていた。 (5) 本件各入札は,それぞれ,前記のように,被告業者らを含む別紙3・入札一覧表の各「落札業者」が被告gや協力会に参加していた各業者らとの間で,入札参加業者のうち誰が落札するかにつ などしていた。 (5) 本件各入札は,それぞれ,前記のように,被告業者らを含む別紙3・入札一覧表の各「落札業者」が被告gや協力会に参加していた各業者らとの間で,入札参加業者のうち誰が落札するかにつき事前に談合をして決定した上で行われたものである。 (被告らの主張)本件各入札がいずれも被告らの談合によって落札され,価格等の決定がなされたとの原告らの主張については,すべて否認する。 3 争点3(宇治市の損害の有無とその額)について(原告らの主張)(1) 被告らの談合行為は,指名競争入札前に受注予定者を決め,その者が落札できるように互いに入札予定価格を調整して,受注予定者に希望どおり落札させるというものであるから,これは結局,指名業者間で公正な競争をすることによって落札金額が低下することを防ぎ,ひいては宇治市との契約価格をつり上げて受注した業者の利益を図るという目的のものであり,談合行為によって落札業者は利益を受けていたのであるから,宇治市が損害を被ったことは明白である。 被告らは,談合があったとしても適正額であるから宇治市には損害が発生していないと主張する。しかし,談合行為の目的からして,談合が存在した場合とそうでない場合とにおいて,落札金額に差異を生じる蓋然性があることは明らかであり,かかる蓋然性が認められること自体,地方公共団体についての損害を根拠づけるものである。 (2)ア談合がなく,適正に入札が行われていれば,落札金額は設計金額の8割程度になるところ,談合の結果,高額で落札されており,その結果,宇治市は,少なくとも,本件各入札において,設計金額の8割相当額と落札金額の差額につき損害を被った。 イ落札者である被告業者らは,宇治市に対し,本件各入札のうち,自らが落札した工事に対応する別紙3・入札一覧表の「請求額」欄記載の金員を て,設計金額の8割相当額と落札金額の差額につき損害を被った。 イ落札者である被告業者らは,宇治市に対し,本件各入札のうち,自らが落札した工事に対応する別紙3・入札一覧表の「請求額」欄記載の金員を,それぞれ賠償する義務がある。 また,被告gは,談合の取りまとめ役として,本件各入札のうち,同一覧表のうち「部金」欄に金額の記載のあるものについては,落札した業者らから部金として同金額の金員(合計1281万5461円)を受領しており,同被告は,宇治市に対し,同金額相当の損害を与えたというべきであるから,少なくとも部金と同額を,同工事を落札した被告業者らと連帯して宇治市に対し損害賠償する義務がある。 ウ被告らの中には,過失相殺を主張する者があるが,宇治市職員が設計金額を漏洩していたとしても,これは同職員と被告らの共同不法行為であるにすぎず,被害者である宇治市との間で過失相殺されるべきではない。 (被告らの主張)(1)ア予定価格は,標準的な施工能力を有する建設業者が,それぞれ現場の条件に照らしても適正な施工をする場合に必要となる経費を基準として積算されるものである。積算基準や設計図書等によって,極めて精緻に算出されるものであるから,工事内容や施工方法などで業者側が創意工夫をこらして入札に参加することは全くあり得ず,そもそも,入札において価格競争をする仕組みにはなっていない。 請負工事代金は,原価と一般管理費等からなるが,原価を割るという典型的なダンピングは,自由競争を阻害する行為として禁止されており,また一般管理費を削ることも困難であるから,値下げをするためには,業者は利益を切りつめるしかない。公共工事の粗利は5パーセント前後といわれているから,公共工事の入札で価格競争が生じる余地は,設計金額から5パーセントぐらいが最大幅であって,このラ をするためには,業者は利益を切りつめるしかない。公共工事の粗利は5パーセント前後といわれているから,公共工事の入札で価格競争が生じる余地は,設計金額から5パーセントぐらいが最大幅であって,このラインを超えると,実質赤字が生じる蓋然性が極めて高い。 イまた,入札参加者としては,入札参加資格を維持するか,ランクの格上げを図るためにも,また適正な工事の施工により施工実績を積み重ねるためにも,できるだけ設計金額に近いところで落札しようとするのが当然の理である。 ウこのように,落札金額が限りなく設計金額に近づく「上限張り付き現象」は,談合の有無とは関係なく生じるものであり,自由競争阻害行為が存在した場合とそうでない場合とで,落札金額に差異を生じる蓋然性はあるかもしれないが,自由競争阻害行為が存在しなかったからといって,落札金額が低下する蓋然性は全く認められない。したがって,そもそも,宇治市に損害が発生したとはいえない。 (2)ア原告らは,想定落札金額が設計金額の80パーセントであることを前提に損害額を主張する。しかし,本件各入札には,いずれも最低制限価格が設定されており,仮に,設計金額の80パーセント相当の価格が想定落札金額というのなら,最低制限価格を下回る結果となるものが多数ある。最低制限価格を下回る入札は自動的に失格となるのであるから,これらの工事については,原告らの主張する想定落札金額というものはあり得ず,宇治市にこのような損害が発生することはあり得ない。 イ違法な談合行為には,宇治市の担当者から被告gへの予定価格の開示が大きな役割を果たしており,長期間にわたりこれを放置していた宇治市にも重大な監督義務違反がある。損害額の算定に当たっては,公平の見地から過失相殺の法理の適用により,相当割合の減額が図られるべきである。 第三当裁判所の おり,長期間にわたりこれを放置していた宇治市にも重大な監督義務違反がある。損害額の算定に当たっては,公平の見地から過失相殺の法理の適用により,相当割合の減額が図られるべきである。 第三当裁判所の判断一前記第二の一の事実に,甲1ないし41,乙①1ないし37(枝番を含む。),乙②1ないし8,乙③1ないし3,乙⑨1,2,乙〔69〕1ないし3,証人iの証言,被告g及び同jの各本人尋問の結果,宇治市に対する調査嘱託の各結果(以上の各証拠を,以下「本件各証拠」という。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 1 宇治市においては,外部の業者に業務を発注しようとする場合,一定の例外を除けば,総務部管財契約課契約係を通じて業者と契約することとなっていた。建設工事に関しては,工事担当課の課長から「工事請負契約依頼書」が管財契約課主幹宛に提出され,主幹は,契約係の担当者に書類を回し,その契約係の担当者において契約の相手方である業者を決める入札手続や,その後の契約手続を行っていた。 2 契約相手先の選択方法としては,特別に大規模な工事を除けば,指名競争入札の方法が採られており,入札に参加できるのは,宇治市に登録された業者に限られていた。 3 宇治市の指名競争入札においても,設計金額に基づいて予定金額が定められ,また,平成8年度までは最低制限価格制度が,平成9年度以降は低入札価格調査制度が採用されており,これらを上下限として,業者による競争入札が行われていた。 4 入札方法の選択や入札参加業者の選定に関する具体的な運用方法については,「宇治市競争参加業者選定基準及び運用基準」が設けられており,これに従って,入札に参加する業者の選定を行うことになっていた。選定基準には,競争参加資格,建設工事の運用基準及び発注標準などが決められていた。 5 参加業者選定基準及び運用基準」が設けられており,これに従って,入札に参加する業者の選定を行うことになっていた。選定基準には,競争参加資格,建設工事の運用基準及び発注標準などが決められていた。 5 工事担当課から契約係に回されてきた「工事請負契約依頼書」には,工事名,工期,工事概要や設計金額が記載されているので,その案件にふさわしい契約の方法について,契約係の担当者が,選定基準に従い,いわゆる担当者案を作成していた。 6 担当者は,工事予算額に応じて,名簿に登録された業者の中からどの業者を入札の参加業者とするか,何社を入札に参加させるかなどの業者選定の担当者案をその判断で作成していたが,それについて明確な基準はなかった。担当者において入札参加業者を選定し契約方法を決めて担当者案を作った後,これを基に,更に,担当者,契約係長及び管財契約課主幹が集まって協議し,いわゆる事務局案を作り,この事務局案を,宇治市業者選定委員会の部会に提出して審議してもらっていた。 7 業者選定委員会で契約方法や入札指名業者が選定された後,契約係の担当者が,選定された指名業者に対し,電話等で入札参加業者となったことの連絡をし,指名業者に対する指名通知書,設計図書などの関係書類を準備し,それらの書類を交付していた。 8 設計金額は,予定価格等の基になる金額であり,設計金額が判明すればおおよその予定価格が推測できてしまうので,平成9年3月までは,設計金額は外部に公表してはならない秘密事項であった。しかし,同年4月1日からは,従来の入札制度が変わり,設計金額が公表されることになった。 9 宇治市における入札執行の現場には,当該契約を担当する管財契約課契約係の担当者と,契約係長か契約係の他の職員が立ち会っていた。入札室では,業者同士の会話は一切認められておらず,携帯電話の使用 。 9 宇治市における入札執行の現場には,当該契約を担当する管財契約課契約係の担当者と,契約係長か契約係の他の職員が立ち会っていた。入札室では,業者同士の会話は一切認められておらず,携帯電話の使用も禁止されていた。担当者は,入札に参加する業者の出席を確認した後,各業者に指示して入札箱に入札書を投函させ,全業者が投函を終えた後,予定価格調書の入った封筒の一部をはさみで切って中から予定価格調書を取り出し,その場に持ち込んだパソコンで入札予定価格を算出した上,入札箱から取り出した入札書の入札金額を比較して落札業者を決め,その場で落札業者を発表し,それで入札の執行を終えた。 ただ,すべての入札金額が予定価格を上回って落札業者がないときは,1回目の入札時の入札金額の最低額を発表し,その金額以下で入札するよう指示して,2回目の入札を行った。平成8年当時は,このようにして最大3回まで入札を繰り返すことになっており,それでも落札業者が出ない場合には,その入札は不成立になった。 10 落札業者が決まると,工事担当課は,契約係と合議で契約締結の起案書を決裁し,その決裁がおりれば落札業者と契約の手続をした。 11 hは,平成7年4月から平成10年3月まで,宇治市の総務部管財契約課主任の地位にあり,契約係に配属されて,建設工事関係の入札や契約に関する事務を担当していた。hは,工事請負契約依頼書を通常の業務過程で取り扱うため,容易に同書に記載されている設計金額を知ることができ,また,工事予算額をみて入札の競争参加資格者名簿登録業者の中からどの業者を入札の参加業者とするかなどの業者選定の担当者案を作成できる立場にあった。 12 被告gは,hに働きかけて,平成7年5月ころから平成10年3月までの間,宇治市が発注するBランク以下の土木工事のほとんど全部について,その設 などの業者選定の担当者案を作成できる立場にあった。 12 被告gは,hに働きかけて,平成7年5月ころから平成10年3月までの間,宇治市が発注するBランク以下の土木工事のほとんど全部について,その設計金額及び入札に参加させる予定の業者を,業者選定委員会で決定される前に教えてもらっていた。そして,このような便宜を受けたこと,あるいは今後も同様の便宜を受けられることに対する見返りとして,hに対し,平成8年4月中旬ころから平成9年12月下旬ころまでの間に,複数回にわたって現金等を供与するなどの贈賄行為をしていた。 13 hは,平成12年3月8日,上記の事実について,収賄罪で起訴され,被告gも,上記の事実で贈賄罪で起訴され,いずれも刑事処分を受けた。 二争点1について 1 普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,その監査請求が,当該地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該監査請求については,同怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。しかしながら,その監査請求について,監査委員が怠る事実の監査を遂げるために,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,法242条2項本文の同規定を適用すべきではないと解するのが相当であ 検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,法242条2項本文の同規定を適用すべきではないと解するのが相当である(最高裁平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁,同平成14年7月18日第一小法廷判決・集民206号887頁参照)。 2 前記第二の一の事実並びに第三の一の事実によれば,原告らは,宇治市が被告らに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象事項として本件監査請求をしたものであり,原告らは,当該損害賠償請求権は,被告らが,談合をした上で宇治市の実施した指名競争入札に参加し,不当に高額な金額で落札して,それに基づいて宇治市と不当に高額な代金で請負契約を締結した結果,宇治市に損害を与えたという不法行為により発生したものとして,本件監査請求をしたものと解される。 そうすると,本件監査請求について,監査を遂げるためには,監査委員は,宇治市が被告らと請負契約を締結したことや,その代金額が不当に高いものであったか否かを検討せざるを得ないことになるが,宇治市の契約締結やその代金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされてはじめて,宇治市の被告らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく,各入札における被告らの談合行為,これに基づく被告らの入札及び宇治市との契約締結が不法行為法上違法であるとの評価を受けるものであること,これにより宇治市に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りることになる。したがって,本件監査請求は宇治市の契約締結を対象とする監査請求を含むものとみざるを得ないものではない。 このようにみてくると,本件監査請求は,違法に財産の管理を怠る事実を改めるために必要な措置を講ずべきことを求めたものとして,これ 約締結を対象とする監査請求を含むものとみざるを得ないものではない。 このようにみてくると,本件監査請求は,違法に財産の管理を怠る事実を改めるために必要な措置を講ずべきことを求めたものとして,これについては法242条2項の適用はないものと解すべきである(最高裁昭和53年6月23日第三小法廷判決・判例時報897号54頁参照)。 3 本件訴えは,適法な監査請求を経て,法242条の2第2項に定める出訴期間内に提起されたもので,適法であるというべきである。 三争点2について 1 前記一の認定事実,本件各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次のとおり認められる。 (1) 宇治市が発注する土木建設工事の入札においては,前記認定のとおり,指名競争入札の方法が採られていたが,指名を受けて入札に参加できる業者について,その実績や規模に応じてAからEランクまでの格付けがされており,各入札の予算価格の規模に応じて,土木工事であれば,予算金額が6000万円以上のものはAランク業者,2000万円から6000万円未満のものはBランク業者,1000万円から2000万円未満のものはCランク業者,300万円から1000万円未満のものはDランク業者,300万円未満のものはEランク業者が入札に参加できるものとされていた。そのうち,Bランク以下の業者は,比較的小規模の業者ないし零細業者であった。 (2) 従来から,受注を希望する業者,特に,Bランク以下の業者の間では,各入札において低額の落札金額を競い合う過当競争となる傾向もあり,各業者の間では,各業者間の共存共栄を図るため,逐次実施される各入札を通じて,その参加業者がそれぞれ受注する機会を調整し,順次,ほぼすべての指名業者に落札の機会を確保できるようにするための各業者間の意向の取りまとめを何らかの形で求める傾向があった。 (3) 各入札を通じて,その参加業者がそれぞれ受注する機会を調整し,順次,ほぼすべての指名業者に落札の機会を確保できるようにするための各業者間の意向の取りまとめを何らかの形で求める傾向があった。 (3) 平成6年ころ以前,DEランクの指名登録業者について,宇治建設企業協同組合という組織があり,k土木の代表者であったkが各業者を仕切って,各入札における落札者を予め決定する談合が行われていた。しかし,これらの業者の中には,kに反発する業者もあって,平成6年ころまでには,かような形態での談合は行われなくなり,それに代わって,指名業者であった被告有限会社古川組のワンマン経営者である被告gが次第に各業者間の受注の調整や意向の取りまとめ役をするようになった。 (4) hは,平成7年4月から,契約係の主任に就任し,入札参加資格者の審査・登録,契約,指名業者の選定委員会等の職務を担当することになったが,同年5月ころから,担当していた職務で知り得た宇治市が発注する土木工事,建設工事の設計金額を,職務上の義務に違反して,それらの入札に先立って,その都度,継続的に,被告gに教えるようになった。当時,宇治市においては,それらの設計金額は秘密とされ,宇治市の職員であってもその担当者以外は知ることのできない情報であった。 (5) 被告gは,このようにして,平成7年ころからは,Bランクの指名業者である被告有限会社古川組の実質的な経営者として,Bランク以下の各指名業者の間で,強い影響力を有するようになった。そして,被告gは,協力会と称する会を作り,Bランク以下の各業者への工事の入札がある度に,入札参加業者の各意向を調整してそれぞれの落札予定者を事前に決定するようになった。被告gは,協力会の会員となった指名業者から,その会費として,Cランクの業者からは年額6万円,DEランク がある度に,入札参加業者の各意向を調整してそれぞれの落札予定者を事前に決定するようになった。被告gは,協力会の会員となった指名業者から,その会費として,Cランクの業者からは年額6万円,DEランクの業者からは年額3万6000円の交付を受けた。更に,被告gは,各入札の都度,落札業者となったものからは,いわゆる部金として,その落札金額の1パーセントないし1.5パーセント相当額の金員の支払を受けた。これらの部金の支払は,南京都信用金庫の「企業建設組合l」名義の口座に入金する方法,または被告有限会社古川組の事務所でその従業員のmに支払われる方法等でされ,いずれも被告gが個人的に取得した。ただし,被告gは,Bランクの業者からは,被告有限会社古川組がBランクに昇格したのが平成7年当時は比較的新しかった関係で,会費や部会を徴収しなかった。 (6) ただし,平成7年度以降も,CDEランクの各指名業者のすべてが協力会の会員となったわけではなく,協力会の会員は,年度によってその数に違いがあるものの,Cランク業者がほぼ20社程度,DEランク業者が40社ないし50社程度であった。 (7) 被告gの取りまとめで談合が行われ,その入札の落札予定者が決定されて,その者が落札する過程は,次のとおりであった。すなわち,被告gは,hから,予定されている入札の設計金額等の情報を入手した後,多くの場合,宇治市が入札を行う前日ころに,その入札に参加することになった業者と会合をもった。その席では,被告gが話し合いを進める司会役をし,初めに,入札が行われる工事の受注希望を出席している各業者に確認し,希望する業者が1社だけであれば,すぐにその業者を落札予定者に決定する。希望する業者が複数ある場合には,その複数の業者の間で話し合いを行わせ,あるいは複数の業者間でそれぞれにくじを引いて に確認し,希望する業者が1社だけであれば,すぐにその業者を落札予定者に決定する。希望する業者が複数ある場合には,その複数の業者の間で話し合いを行わせ,あるいは複数の業者間でそれぞれにくじを引いてもらい,そのくじで組み合わされた2つの業者が話し合って,どちらかの業者が本命業者の候補となり,そうして勝ち残った本命業者の候補業者同士が更に話し合うなどして,最終的に1つの業者を落札予定者として絞り込んでいった。このようにして協力会での話し合いで決まった落札予定者を,業者の間では「本命」とか「選手」などと呼んでいた。 被告gは,このようにして,協力会に属する会員の各業者の間では,各入札を通じて順次落札予定者を予め決定していく方法で,各ランクの会員の業者がほぼまんべんなく宇治市発注の工事が受注できるように配慮していた。そして,被告gは,このような談合によって落札予定者が決定した場合には,その落札予定者に対してだけ,hから教示を受けたその工事の設計金額を基に若干の減額をした金額をその業者の入札金額とするよう教示した。そして,その落札予定者は,他の入札参加業者との間で他の入札業者はすべて落札予定者の入札金額以上の価格で入札するように決めた上で入札に臨み,落札者となった。 (8) 被告gは,Bランク以下の業者を対象とするほぼすべての入札に係る工事の設計金額の情報をhから得た。そして,平成7年度ないし平成10年度の間に宇治市が発注したBランク以下の業者を対象とする土木建設工事の各入札(以下「本件期間中の当該各入札」という。)においては,被告gの強い影響力の下に,前記のような談合が行われるのがほぼ常態となっていた。 (9) このように談合によって落札予定者が決定した場合には,その落札業者は,設計金額等を予め知った上でしかも他の業者との間の競争を全く考慮せず 前記のような談合が行われるのがほぼ常態となっていた。 (9) このように談合によって落札予定者が決定した場合には,その落札業者は,設計金額等を予め知った上でしかも他の業者との間の競争を全く考慮せずに入札して,その者が落札する関係になるので,その落札業者にとっては,各業者間の競争を排除してほぼ最大限度の利益を確保することができる契約を宇治市との間でできることになった。その結果,このようにして談合によって落札予定者が決定された入札においては,その落札金額の設計金額に対する割合,すなわち落札率は,極めて高い率,ほとんどの場合は95パーセント前後になった。 (10) しかし,本件期間中の当該各入札の中には,協力会の会員の間でも前記のようにして落札予定者が決定できないときもあり,また,協力会の会員以外の業者が入札に参加することになって,前記のような談合をすることができなくなることもあった。そのような場合には,実施された入札においては,参加業者の間で,いずれも設計金額等の情報を知って入札する者がなく,しかも,「タタキ」と称される低価格競争がされる傾向にあったこともあり,談合により落札予定者が決定された場合とは相当に異なった様相となり,そのような入札での落札金額は,最低制限価格近くまで下がる傾向があった。例えば,本件各入札以外の工事である平成7年6月30日に実施されたα線他道路維持修繕工事(本件訴状添付一覧表7番の工事)では,協力会の会員でない指名業者が入札に参加したためにこのタタキの状態となり,設計金額が676万3000円のところ落札金額が573万9000円で,その落札率は84.86パーセントであった。また,同様に,本件各入札以外の工事である同年9月28日に実施されたβ線道路維持修繕工事(同一覧表107番の工事)の入札でも同様にタタキの状態になり 円で,その落札率は84.86パーセントであった。また,同様に,本件各入札以外の工事である同年9月28日に実施されたβ線道路維持修繕工事(同一覧表107番の工事)の入札でも同様にタタキの状態になり,設計金額が574万2000円のところ落札金額は488万円で,その落札率は84.99パーセントであった。 本件期間中の当該各入札の中には,他にも,落札率が低い落札結果となった入札が,一定数あるが,多数は落札率が95パーセント前後の高落札率のものであった。 (11) 前記のように,被告gがhから設計金額等の情報を得て,Bランク以下の指名業者の間で前記のような談合が継続的に行われる状態は,平成10年4月にhが宇治市の他の部署に異動するまで継続された。 (12) 本件各入札の落札業者,設計金額,予定価格,落札金額,落札率,前記のように被告gに支払われた部金の有無及び金額は,別紙3・入札一覧表のとおりであり,その落札率は,前記のいずれも高落札率のもので,被告業者らを含む落札業者は,いずれも協力会の会員であった。 2 以上の認定事実を基に,更に,本件各証拠を検討して,本件各入札について,談合があったかどうかを検討する。 (1) まず,本件各入札のうち,別紙3・入札一覧表の番号(以下,各番号のみで表示する。)14,27,30,92,95,111,138,145,162及び165の各入札については,これらの個々の具体的な入札についていずれも談合があったことを証する直接の証拠(甲8ないし10,甲16,19,28)がある。 (2) 次に,前記1の認定事実によれば,本件各入札は,いずれも,本件期間中の当該各入札の中の一部であり,被告gが,各入札ごとに,継続的に,それぞれの工事の設計金額等の情報を得て,それを基にBランク以下の各業者の間で談合によって落札予定者を決定す は,いずれも,本件期間中の当該各入札の中の一部であり,被告gが,各入札ごとに,継続的に,それぞれの工事の設計金額等の情報を得て,それを基にBランク以下の各業者の間で談合によって落札予定者を決定するのがほぼ常態となっていた時期のもので,むしろ,多くの場合には談合されて落札予定者が決定されたが,例外的には談合による落札予定者の決定が前記のようになかった場合もあるものと考えられる。そして,前記認定のとおり,落札予定者が決定された場合には,落札業者となる落札予定者の入札金額が設計金額を考慮した被告gの指示によるものであったため,その工事の落札金額の設計金額に対する割合である落札率が極めて高い比率になる傾向が顕著であり,逆に,落札予定者が決定しなかった場合には,いわゆるタタキの状態またはそれに近い状態となって最低制限価格近くの低価格の競争状態となって落札率が低下する関係になっていたもので,このように,予め,談合により落札予定者が決定しなかった場合は,落札率が顕著に低下したものと考えられる。 (3) そして,本件各証拠によって,本件期間中の当該各入札の落札率をみると(例えば,甲6の供述調書添付の資料1の一覧表),95パーセント前後の高落札率のものが多数を占めるが,一定数は85パーセント前後またはそれ以下の低落札率のものがある。そして,このように,落札率が二極化している中で,更に,本件各入札の結果をみると,その落札率は,別紙3・入札一覧表のとおりであって,いずれも,97.87パーセントから92.53パーセントまでの範囲内に集中しており,高落札率のものであることが明らかである。 (4) 更に,本件各証拠(特に,調査嘱託の各結果)によると,本件各入札は,そのほとんどが第1回目の入札で落札者が決定されているが,本件各入札のうち,番号6,11,41,45, ことが明らかである。 (4) 更に,本件各証拠(特に,調査嘱託の各結果)によると,本件各入札は,そのほとんどが第1回目の入札で落札者が決定されているが,本件各入札のうち,番号6,11,41,45,61,65及び156番の各入札は,第2回目の入札で落札者が決定されていること,これらの各入札においては,第1回目の入札の最低価格が予定価格を上回ることになったため,第2回目の入札が行われたが,第1回目の入札で最低価格で入札した者と第2回目の入札における落札者が同一人であること,番号120の入札においては,3回の入札が行われて,第3回目の入札でようやく落札者が被告カナヤマ建設と決定したこと,本件各入札の中で3回の入札が行われたのはこの入札だけであったこと,この入札においては,第1回目及び第2回目の最低価格を入札した者がいずれも被告松井組であったこと,本件各入札のうち,これら第2回目または第3回目の入札で落札者が決定された場合以外のものは,すべて第1回目の入札で落札者が決定されたこと,以上が認められる。 (5) 以上の諸点に照らして,前記1の認定事実,更に本件各証拠を総合すると,本件期間中の当該各入札の中で,少なくとも,番号120を除く本件各入札については,いずれも,被告gの取りまとめによる前記のような談合が行われて予め落札予定者が決定され,その者に被告gが入札価格を教示して入札が実施され,その結果,落札者が決定されたものであると認めるのが相当である。 前記認定のとおり,第2回目の入札で落札者が決定したものについては,本件各証拠によれば,被告gが教示した入札金額がその工事の予定価格を上回るものであったため,第2回目の入札が実施されることになっただけであると認められ,第1回目と第2回目の最低価格を入札した者が同一であることは,事前の談合があったこと 札金額がその工事の予定価格を上回るものであったため,第2回目の入札が実施されることになっただけであると認められ,第1回目と第2回目の最低価格を入札した者が同一であることは,事前の談合があったことを強く推認させるものといわなければならない。 (6) ただし,第3回目の入札まで行われた番号120の入札については,少なくとも,第3回目の入札に関する限り,被告gとの事前の談合で落札者が決定されていたといえないことは明らかであるので,その落札結果が事前の談合によるものであるとは認められないというべきである。なお,本件各証拠によれば,この番号120の入札については,落札率が93.73パーセントと高率ではあるが,第1回目及び第2回目の入札では最低価格を入札した者は協力会の会員であった被告松井組であったもので,事前には,被告gの主導による談合があり,被告松井組に被告gが入札金額の教示をしていたことが強く推認され,ただし,それが予期に反して,極めて例外的な現象として第3回目の入札をすることになったもので,何らかの事情で,結果的に,第3回目の入札では,当初の談合による落札予定者が落札できなかったのではないかとも考えられ,いずれにしても,このような例外的な場合である120番の入札の結果があるからといって,その余の本件各入札について談合があったとの前記の認定判断は左右されるものではないというべきである。 (7) 被告らは,甲6ないし19,26ないし29の各供述調書について,一般に伝聞証拠は反対尋問を経ておらず信用性が乏しい上,それらにおいては,被告g及びhの贈収賄罪の刑事事件に関する取調べの中で談合の事実が述べられており,その供述者は真実を述べる必要も動機もないから,その信用性は極めて乏しいなどと主張する。しかし,これらの各供述内容は,「協力会」の開催状況,「 刑事事件に関する取調べの中で談合の事実が述べられており,その供述者は真実を述べる必要も動機もないから,その信用性は極めて乏しいなどと主張する。しかし,これらの各供述内容は,「協力会」の開催状況,「本命」の決定方法,被告gによる入札金額の教示,「部金」や「会費」の支払状況等につき,非常に詳細かつ具体的であり,また,被告gがhから設計金額を聞き出し,それに対する謝礼として金員等を供与していたこと(この事実については被告らも争わない。)との関連においても,不自然・不合理な点は特に認められず,これらの供述の任意性,信用性を疑わせるような具体的な事情もうかがわれない。 (8) また,被告gは,その本人尋問において,hから設計金額を聞き出し,それに対する見返りとして現金等を供与していたこと,協力会を組織していたこと,その参加業者から会費や部金を受け取っていたことなどについては認める一方で,hから聞いた設計金額を他の業者には教えたことはなく,また,協力会は単なる親睦団体であって,会費や部金は電気代や電話代,コーヒー代として会員の業者が自発的に持ってきていたものにすぎないなどとも供述している。しかし,本件各証拠によれば,部金は被告gからC以下のランクの落札業者に請求して支払わせていたものであること(甲29添付の資料14等),その金額は個々の入札における落札金額の一定割合であり,20万円を超えることも少なくなかったことが認められることなどに照らせば,被告gの前記供述は到底信用できず,むしろ,本件各証拠によれば,協力会は,落札予定者である本命業者を決定するいわば談合組織であって,被告gは,協力会の談合で決定した本命業者に対し,hから聞き出した設計金額に基づく入札金額を教示していたもので,部金の性質としては,多くの場合,このように被告gが談合を取りまとめ, 合組織であって,被告gは,協力会の談合で決定した本命業者に対し,hから聞き出した設計金額に基づく入札金額を教示していたもので,部金の性質としては,多くの場合,このように被告gが談合を取りまとめ,また落札業者に対して有利な入札金額を教示していたことに対するC以下のランクの落札業者からの謝礼の趣旨もあったと認めるのが相当である。もっとも,前記1の(10)のとおり,本件各入札において,談合によって落札予定者が決定されずにいわゆるタタキとなった場合にも,落札業者から被告gへ部金が支払われた事実があるが(甲8別表参照),それらは極めて例外的な現象であったと考えられる。 四争点3について 1 前記の認定のとおり,本件各入札(番号120を除く。)に際しては,いずれも談合によって落札予定者は当初から決定され,しかも,被告gが本命業者に予定価格に近接した入札価格を教示したことにより,それらの落札金額が不当につり上げられたことが明らかであり,その結果,宇治市は損害を被ったことも明らかである。被告らは,談合があったとしても宇治市に損害はなかったとの趣旨に解される主張をするが,それを裏付ける的確な証拠がないといわざるを得ないもので,到底採用できない。 2 そして,前記認定事実によれば,本件期間中の当該各入札は,本件各入札(番号120を除く。)のように落札率が95パーセント前後のものと,85パーセント前後またはそれ以下のものに二極化しており,この低落札率群に属する各入札の落札率は,結局,談合によらず,入札参加業者間で自由競争がされた結果もたらされたものであると考えられるから,本件各入札(番号120を除く。)についても,談合がされなかった場合の想定落札価格としては,当然,その落札率が参考になるというべきである。 3 もっとも,これらのいわば低落札率群に属する各 れるから,本件各入札(番号120を除く。)についても,談合がされなかった場合の想定落札価格としては,当然,その落札率が参考になるというべきである。 3 もっとも,これらのいわば低落札率群に属する各入札においては,小規模業者が多いBランク以下の入札参加業者の中に,工事実績を上げ信用力を高める等の目的で利益を度外視した極めて低価格での入札を行った者があった可能性や,恒常的に頻繁に行われる談合による過分な利益を享受していた各業者が,利益を度外視した過当な低価格競争を行った可能性があることも,全く否定することはできない。 4 また,原告らが主張するように,本件各入札(番号120を除く。)において談合がなければ,その落札金額は,その工事の設計金額の8割程度になるとも認め難い。なぜなら,本件各証拠によれば,本件各入札(番号120を除く。)において,各工事の設計金額の8割相当額で入札した場合には,ほぼすべての入札について最低制限価格までも下回ることになることが認められるからである。 5 そこで,以上の諸点のほか,前記認定事実や本件各証拠,それに,本件期間中の当該各入札において,前記のいわば低落札率群の各入札においては,その落札率が85パーセント前後であるものが比較的多いこと,それらの入札において参加業者の入札金額のほとんどがその工事の設計金額の9割を下回っていること等に鑑みれば,本件各入札(番号120を除く。)において,談合がなかった場合の想定落札金額は,いずれの入札についても,少なくとも,その工事の設計金額の9割を上回ることはなかったものと認めるのが相当である。 そうすると,宇治市は,本件各入札(番号120を除く。)について,各落札金額に消費税相当額を加算した工事代金額で契約をし,その金額の金員を支払ったものであるから,少なくとも,実際の落札金額と る。 そうすると,宇治市は,本件各入札(番号120を除く。)について,各落札金額に消費税相当額を加算した工事代金額で契約をし,その金額の金員を支払ったものであるから,少なくとも,実際の落札金額とそれらの設計金額の9割相当額との差額分にそれぞれの年度の消費税相当分(平成7年度及び平成8年度は3パーセント,平成9年度は5パーセント)を加算した額の損害(因みに,各契約金額と比較すると,契約金額のほぼ3.98パーセントから8.04パーセント相当となる。)を被ったものというべきである。 6 被告らの責任(1) そうすると,別紙3・入札一覧表の番号120を除く「落札業者」欄に記載された被告らは,宇治市に対し,談合による不法行為責任を負うというべきであり,これらの被告業者らが宇治市に対して賠償すべき金額は,別紙2・損害一覧表の各被告の「損害額」欄記載のとおりとなり,被告業者らごとの賠償すべき金額の合計は,各被告の「損害額合計」欄記載のとおりとなる。 (2) 被告gも,本件各入札(番号120を除く。)について,その落札業者とともに宇治市に対し,前記判示のとおり算定した金額の損害賠償義務を負う。ただし,原告らの本件請求は,被告gに対しては,本件各入札のうち,部金の支払があったものについてのみの,しかも,各部金の限度の請求に限定したものであり,被告業者らのうちで,別紙2・損害一覧表の「部金」欄に金員の記載のある被告らは,その賠償すべき金員のうち,その被告の同一覧表の部金の金員の限度においては,被告gと連帯して支払う義務を負うというべきである。 7 被告らは,宇治市の損害の発生には,宇治市のhに対する監督義務違反が寄与しているとして,被告らが賠償すべき損害額については過失相殺により大幅に減額されるべきであると主張する。しかし,被告らの各談合は,故意による不 市の損害の発生には,宇治市のhに対する監督義務違反が寄与しているとして,被告らが賠償すべき損害額については過失相殺により大幅に減額されるべきであると主張する。しかし,被告らの各談合は,故意による不法行為であって,hが設計金額等の情報を漏洩したことにより本件各入札の落札金額が不当につり上げられた部分があることは前記判断のとおりであるとしても,その部分の利益も落札者となった被告らがすでに享受していることは明らかである。そして,前記認定事実によれば,本件各入札において,落札した被告業者ら,被告g及びhは,宇治市に対して,共同不法行為者というべきである。 このようにみてくると,被告らが賠償すべき損害額について,過失相殺の法理によりそれを減額すべきではないというべきである。 五以上のとおりであり,原告らの本訴請求は,別紙2・損害一覧表の各被告について,それぞれ,その「損害額合計」記載の金員(合計1億3252万1290円)及びこれに対する遅延損害金を,また,被告gに対して,本件各入札のうちの部金の支払があったものについて,その部金相当額の合計である1281万5461円及びこれに対する遅延損害金を(ただし,各入札につき被告gに部金を支払った被告らは,当該支払った部金相当額の限度で,被告gと連帯して),それぞれ宇治市に支払うよう求める限度で理由があるからこれを認容し,その余については理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行訴法7条,民訴法65条1項ただし書き,64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。なお,認容部分についての仮執行宣言は,相当でないからこれを付さない。 京都地方裁判所第3民事部裁判長裁判官八木良一裁判官飯野里朗裁判官財賀理行 仮執行宣言は,相当でないからこれを付さない。 京都地方裁判所第3民事部裁判長裁判官八木良一裁判官飯野里朗裁判官財賀理行

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