- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,甲・乙事件とも原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 甲事件( )福岡県知事が平成17年9月1日付けで甲事件原告(兼乙事件原告。以 下単に「原告」という。)に対してしたα区第××号区画漁業権の不免許処分を取り消す。 ( )福岡県知事が平成17年9月1日付けで原告に対してしたα区第××号 に係るA漁業協同組合第1種区画漁業権(のり養殖業)行使規則の不認可処分を取り消す。 乙事件原告が,乙事件被告福岡県知事(以下「被告知事」という。)に対し,水産業協同組合法(以下「水協法」という。)68条5項に定める解散届を提出する義務がないことを確認する。 第2事案の概要本件は,原告が水協法68条4項に定める組合員数20人を下回り当然に解散したとして,被告知事が,原告に対し,同法68条5項所定の解散届を提出するよう行政指導するとともに,平成17年9月1日付けで原告に対してα区第××号区画漁業権の不免許処分及びα区第××号に係るA漁業協同組合第1種区画漁業権(のり養殖業)行使規則の不認可処分(以下,併せて「本件各処分」という。)をしたところ,原告が,未だ解散していない旨主張して,甲事件被告福岡県(以下「被告県」という。)に対し本件各処分の取り消し(甲事件)を求めるとともに,実質的当事者訴訟として,被告知事に対し解散届提出義務が存在しないことの確認(乙事件)を求めた事案である。 - 2 - 前提事実次の事実は,当事者間に争いがないか,主に各項末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ( )当事者 ア原告は,昭和24年7月21日に設立された水協法にいう漁業協同組合(以下「漁協」という。)である(現在も存続しているかについては争い 及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ( )当事者 ア原告は,昭和24年7月21日に設立された水協法にいう漁業協同組合(以下「漁協」という。)である(現在も存続しているかについては争いがある。)。 イ被告県は,普通地方公共団体であり,被告知事は,被告県を代表して,その事務を管理し,執行するとともに(地方自治法147,148条),水協法上,漁協の監督を行なうべき行政庁であり(同法127条),かつ,漁業法上,漁業権の免許及び漁業権行使規則の認可を行うべき行政庁である(同法8条6項,10条)。 ( )法令及び定款の定め ア正組合員の資格要件水協法18条1項1号は,正組合員の資格要件につき,「当該組合の地区内に住所を有し,かつ,漁業を営み又はこれに従事する日数が一年を通じて九十日から百二十日までの間で定款で定める日数を超える漁民」と定義し,同条3項は,組合は,上記90日から120日の範囲内であれば,定款で定める日数をこえる者に組合員資格を限定できると規定している。 これを受けて,原告は,定款8条1項1号において,正組合員となることができる要件の一つとして,「この組合の地区内に住所を有し,かつ,1年を通じて90日を越えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」と規定している(以下,「組合員資格」は,上記「正組合員資格」のことをいう。)。しかして,「漁業」とは,水産動植物の採捕又は養殖の事業をいい(同法10条1項),「漁民」とは,漁業を営む個人又は漁業を営む者のために水産動植物の採捕若しくは養殖に従事する個人をいう(同条2- 3 -項)と定義づけられている。 イ組合員の脱退漁協の組合員の脱退事由は,「予告脱退」(水協法26条,定款14条1項)と「資格喪失,死亡又は解散及び除名」(同法27条,定款14条2項)であるが,予告脱 )と定義づけられている。 イ組合員の脱退漁協の組合員の脱退事由は,「予告脱退」(水協法26条,定款14条1項)と「資格喪失,死亡又は解散及び除名」(同法27条,定款14条2項)であるが,予告脱退については,「組合員は,六十日前に予告し,事業年度の終において脱退することができる。」と規定されている。 ウ漁協の解散水協法68条4項は,漁協の解散事由として「組合は,組合員(准組合員を除く。)が二十人・・・未満になったことに因つて解散する。」と規定している(以下,准組合員を除く組合員を「正組合員」といい,組合員数20人を「法定組合員数」という。)。 (以上につき甲7,13)( )原告の正組合員数の変動と第56年度業務報告書の提出 原告の正組合員数は,平成13年3月31日(第52年度末)時点で31人,平成14年3月31日(第53年度末)時点で30人,平成15年3月31日(第54年度末)時点で28人,平成16年3月31日(第56年度末)時点で22人であった。 そして,平成17年1月9日にBが,同月15日にCが,それぞれ脱退届を原告に提出し,同年3月18日には,Dが「退休願一身上の都合により退休させて下さい。」と記載した書面(以下「本件退休願」という。)を原告に提出した(なお,同書面がいかなる趣旨の書面であるかについては争いがある。)。 原告は,同月31日時点における原告の正組合員数を「19人」と記載した第56年度業務報告書(水協法58条の2所定の業務報告書)を作成し,同年6月5日開催の原告通常総会において,特段の質問もないまま満場一致で承認を受けて,これを同月27日,被告知事に提出した(なお,原告は,- 4 -上記人数の記載は誤記である旨主張している。)。 (甲2ないし6,13,32ないし35)( )原告の漁業権免許申請等 を受けて,これを同月27日,被告知事に提出した(なお,原告は,- 4 -上記人数の記載は誤記である旨主張している。)。 (甲2ないし6,13,32ないし35)( )原告の漁業権免許申請等 原告は,被告知事に対し,平成17年6月30日付けで,漁業法10条に基づき,E漁協と共同で,α区第××号第1種区画漁業権(のり養殖業)免許申請(以下「本件申請1」という。)を行なうとともに,漁業法8条6項に基づきA漁業協同組合α区第××号第1種区画漁業権(のり養殖業)行使規則認可申請(以下「本件申請2」という。)を行なった。 ( )被告県の担当者らによる正組合員数の調査 被告県においては,水協法に基づく監督行政や漁業法に基づく許認可行政を水産林務部漁政課が担当していたところ,当時の同課課長補佐兼団体指導係長であったFらは,原告から提出された第56年度業務報告書に正組合員数が上記のとおり19人と記載してあったことから,組合員数につき調査することとした。 そして,Fら担当者は,平成17年7月27日,28日,原告に対し,その業務の状況を検査する常例調査を行い,さらに,同年8月1日Dの自宅を訪問して,同人の娘からDの漁業実態を聴取し,同月2日には,静岡県在住のDに電話を架けて,直接その漁業実態を聴取するなどした。 Fら担当者は,同月5日,原告の正組合員数が同年3月末日時点で法定組合員数(20人)を下回っていた旨の検査結果報告書を作成し,同月12日,漁政課課長から決裁を受けた。 (甲13,36,証人F)( )被告ら担当者による解散の告知とこれに対する原告の対応 Fら担当者は,平成17年8月8日,原告の事務所に赴き,原告理事らに対し,原告の第56年度業務報告書の記載及び常例検査等の結果,原告の正組合員数が同年3月末時点で19人となり解散したこと(以 応 Fら担当者は,平成17年8月8日,原告の事務所に赴き,原告理事らに対し,原告の第56年度業務報告書の記載及び常例検査等の結果,原告の正組合員数が同年3月末時点で19人となり解散したこと(以下「法定解散」ともいう。)が判明したこと,その後再び正組合員数が法定組合員数を上回- 5 -っても解散の効果に影響を及ぼさないことを説明した上で,早期に解散届を提出した上で,今後は清算手続を行う必要がある旨指導した。 これに対し,原告は,同日,理事会(資格審査委員)において,G,H及びIの3人が正組合員であったことを決議し,正組合員として承認した。 被告知事は,同月9日,「解散届書の提出について」と題する書面を原告に交付し,解散届書を速やかに提出するよう促した。 原告の組合員らはこれらの告知や指導に反発し,原告代表者が,同月18日,被告知事宛の「要請文」を漁政課課長のもとに持参して,解散通告等につき抗議したが,同課長は早期に解散届を提出するよう促すのみで,議論は平行線のままであった。 (甲13,14,証人F)( )被告知事による行政指導,本件各処分及び過料通知 ア被告知事は,原告に対して,上記( )記載のとおり,平成17年8月以 降数回にわたり,水協法68条5項に基づく解散届を提出するように行政指導を行った。また,J漁業協同組合連合会も,同月18日,被告県と同様に原告に対し同連合会に対する資格喪失届を提出するよう通知した。 イ被告知事は,同年9月1日付けで,原告に対し,本件申請1については,原告が法定組合員数を下回って法定解散しているため,免許の適格性がないことを理由にこれを免許しない旨の処分(以下「本件不免許処分」という。)を行ない,本件申請2については,前提となる免許がなされないため制定の必要性がないことを理由にこれを認可しない 許の適格性がないことを理由にこれを免許しない旨の処分(以下「本件不免許処分」という。)を行ない,本件申請2については,前提となる免許がなされないため制定の必要性がないことを理由にこれを認可しない旨の処分(以下「本件不認可処分」という。)をした(本件各処分)。 ウさらに,被告知事は,原告が上記行政指導に応じなかったことから,当庁大牟田支部に対し,同年10月31日付けで水協法130条1項4号に基づき,原告代表者であるKを過料処分に処すべきである旨通知した(同支部平成▲▲年(ホ)第▲▲号水産協同組合法違反過料事件。以下「本件過料事件」という。)。 (甲13,21,乙2,3)- 6 -( )本件各処分に対する異議申立て 原告は,被告知事に対し,平成17年9月27日付けで本件各処分に対する異議申立てを行ったが,被告知事は,同年12月22日付けでこれを棄却した。 (甲1)( )本件過料事件の経過 当庁大牟田支部は,平成17年12月22日に被審人Kに対し過料決定をしたが,同人から異議の申立てがあったため,再度審理を行い,その結果,平成18年3月23日,上記決定を取り消し,同人を処罰しない旨決定した。 その理由の要旨は,Dの脱退については,平成17年3月31日時点で組合員資格を喪失していたと解する余地はあるが,他方で予告脱退として取り扱う余地もあり,しかも,原告が解散を強く争っていることからすれば,解散したことが裁判で確定するまでは,解散を前提として解散届を提出しないことを理由に過料に処するのは相当でないというものであった。 (甲11,13) 争点及び争点に対する当事者の主張( )甲事件についての本案前の主張(訴えの利益の欠如) (被告県の主張)ア仮に本件各処分が取り消されたとしても,原告の正組合員数は,水協法の規定する 争点及び争点に対する当事者の主張( )甲事件についての本案前の主張(訴えの利益の欠如) (被告県の主張)ア仮に本件各処分が取り消されたとしても,原告の正組合員数は,水協法の規定する法定組合員数を下回っているから解散しており,区画漁業免許についての適格性を欠くため,いずれにしても被告県は本件各処分と同様の処分を行うこととなる。 イまた,仮に原告が解散していないとしても,α区第××号区画漁業権(のり養殖業)の免許には,漁業法14条2項2号所定の「二以上共同して申請した場合において,これらの組合員のうち地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の総数が,地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の総数の三分の二以上であるもの」に該当するこ- 7 -とが必要であるところ,原告の組合員には,のり養殖業者が少なくとも本件免許申請時には1人もいなかったから,上記要件に該当せず,区画漁業免許についての適格性を欠いている。 ウそうすると,原告は,いずれにしてもα区第××号区画漁業権の免許及び行使規則の認可を得ることはできないのであるから,甲事件の訴えは,訴えの利益を欠き,不適法であって却下されるべきである。 エなお,原告は,新規に正組合員となった者がいるから解散していない旨主張するが,原告主張の新規組合員は,漁業実態の審査もされないまま,原告において形式的に決議されたに過ぎないから,上記主張は,そもそも理由がない。 (原告の主張)被告県の上記アの主張は,口頭弁論終結時における原告の正組合員数を問題とするものであるところ,平成17年3月31日時点でDは脱退していなかったのであるから,原告の正組合員数は20人であった。また,Gら3人が同日時点で正組合員の資格要件を満たしていたので,原告は,同年8月8日,上記3人を正 平成17年3月31日時点でDは脱退していなかったのであるから,原告の正組合員数は20人であった。また,Gら3人が同日時点で正組合員の資格要件を満たしていたので,原告は,同年8月8日,上記3人を正組合員とする旨理事会で承認し,同年9月10日,臨時総会において決議したので,同日時点の原告の正組合員数は23人となった。 その後,平成18年1月22日に新たに7人が原告の正組合員となったから,D及びLが同年3月31日に脱退したとしても,同日時点における正組合員数は28人であり,その後変動はない。 したがって,原告の正組合員数は,水協法の規定する法定組合員数を下回るどころか,むしろ増加している。 ( )乙事件についての本案前の主張(確認の利益の欠如) (被告知事の主張)仮に原告が被告知事に対して水協法68条5項所定の解散届を提出する義務がないことが確認されたとしても,このことによって直ちに原告が同法に- 8 -規定する漁協であることが確定されるものではない。 したがって,本件では確認を求める法律上の利益が存しないから却下されるべきである。 (原告の主張)被告知事の上記主張は,単に原告が同法に規定する漁協である点に関して既判力が生じないと主張しているに過ぎず,これにより確認を求める法律上の利益がないというのは,主張自体失当であり,本件では次のとおり確認の利益が存する。 ア確認の対象に関する要件の充足解散届提出義務は,水協法上の原告・被告知事間の法律関係に関するものであるから,乙事件は行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟に該当する。 イ即時確定の利益の存在(ア)方法選択の適否本件各処分の取消しを求める甲事件において,仮に原告が勝訴判決を得たとしても,原告が法定解散したかどうかという判断に関しては,その効果が及ばない。したがって, 定の利益の存在(ア)方法選択の適否本件各処分の取消しを求める甲事件において,仮に原告が勝訴判決を得たとしても,原告が法定解散したかどうかという判断に関しては,その効果が及ばない。したがって,原告が法定解散しているか否かを巡る当事者間の紛争を抜本的に解決するためには,確認訴訟が有効かつ適切である。 また,被告知事は,原告代表者が,代表清算人として解散届を提出しないことを理由に,行政指導や過料通知などを行っているところ,解散届を提出する義務がないことが確認されれば,後日同一の紛争の蒸し返しを防止することができる。 (イ)即時解決の必要性被告らが原告の法定解散を主張しているため,原告は本件各処分を受け,原告所属の組合員は一部の例外を除き漁業権を行使できない上,原- 9 -告はM漁業協同組合連合会から配分されていた補助金の交付を受けることができないという不利益を被っている。したがって,原告は,確認判決により抜本的に不利益を除去する必要がある。 ( )本件各処分の適法性及び解散届提出義務の存否 (被告らの主張)水協法68条4項は,「組合は,正組合員が20人未満になったことに因って解散する。」旨規定しているところ,原告は,以下のとおり,遅くとも平成17年3月31日時点で正組合員数が多くとも19人になったことにより同時点で法定解散しており,しかも,組合員数が減少して解散となった後に,仮に再び20人を超えたとしても,いったん生じた解散の効力が失われることはない。したがって,原告は,上記解散により,同条5項に従い被告知事に対し解散届を提出すべき義務を負う上,本件申請1に係る免許を受ける適格性を有しないこととなるから,本件不免許処分は正当であり,また,これを前提とする本件不認可処分も正当である。 アDの組合員資格喪失(ア)平成17 き義務を負う上,本件申請1に係る免許を受ける適格性を有しないこととなるから,本件不免許処分は正当であり,また,これを前提とする本件不認可処分も正当である。 アDの組合員資格喪失(ア)平成17年3月31日時点でB及びCが原告を脱退したことは明らかであるので,Dの組合員資格の有無が問題となるが,次のとおりDは遅くとも上記時点で組合員資格を喪失している。すなわち,Dは,10年以上前から漁業を廃業して,福岡県を離れてトンネル工事の仕事に従事しており,このことは,本件過料事件の審問において同人自身が自認しているところである。しかして,前記前提事実( )ア記載のとおり 「漁民」とは漁業(水産動植物の採捕又は養殖の事業)を営む個人又は漁業に従事する個人をいうのであるから,Dの上記稼動実態は,漁業の休業にも当たらないし,そもそも「漁民」の定義からも外れるものであって,Dは当然に資格を喪失している。 (イ)これに対し,原告は,Dの組合員資格に関し,同人が提出した本件- 10 -退休願の趣旨や法的性質をるる主張し,本件退休願を脱退届と解した場合,Dが脱退したのは次の年度末である旨主張するが,上記のとおりそもそもDは10年以上前に実態上組合員資格を喪失し,法定脱退となっていたのであるから,上記書面の趣旨や法的性質にかかわらず,遅くとも同日時点で組合員資格を喪失しているのであって,原告の上記主張は理由がない。 (ウ)さらに,原告は,組合員資格の審査権は漁協理事にあり,被告知事は判断権を有しない旨主張する。 しかしながら,漁協内部の私的自治の観点から,組合員資格の第一次的な判断権限が,漁協の理事にあると解されるとしても,組合員資格の判断について理事に絶対的な権限があると解すべきではなく,漁協の健全な発達を図るという目的に従って,監督行政庁である 合員資格の第一次的な判断権限が,漁協の理事にあると解されるとしても,組合員資格の判断について理事に絶対的な権限があると解すべきではなく,漁協の健全な発達を図るという目的に従って,監督行政庁である被告知事が独自に組合の業務の検証として組合員資格の有無を判断することも可能であって,被告知事が組合員資格につき疑義を抱けば,調査を行ない独自に組合員資格について判断することもできるというべきである。 被告知事の漁協に対する監督は,必要かつ相当な範囲に制限されるべきは当然であるが,他方,漁協は,漁民及び水産加工業者の経済的地位の向上を図ることを目的としており,組合の運営いかんは多数の関係者に重大な影響を及ぼすものであり,公共的な性格を有しているのであるから,その健全な発達を図るために必要な限度で被告知事が指導監督を行なうのは当然であって,水協法や漁業法は,このために漁協に対する監督に関する各種規定を設けているのである。本件において,被告知事は,原告に対し,必要な限度における監督を行なっているにすぎないのである。 イその余の正組合員の資格喪失有明海区漁業調整委員会が平成18年5月に実施した漁業着業実態調査- 11 -によっても,原告の正組合員のうち,実際に漁業を営み,組合員資格の要件を満たしていると思われる者は,認定をかなり緩和した基準で行った場合でも14人程度しかいない。原告は,Dだけでなく,漁業を廃業して組合員資格を喪失した者を,形式的に正組合員として算定してきており,実際には恒常的に法定組合員数を下回っていたものである。 したがって,この点からも,原告が法定解散となっていることは明らかである。 ウ水協法68条4項の効果漁協が,水協法68条4項の解散事由に該当して当然に法定解散となった場合には,その後に再び正組合員数が法定組合員数以 らも,原告が法定解散となっていることは明らかである。 ウ水協法68条4項の効果漁協が,水協法68条4項の解散事由に該当して当然に法定解散となった場合には,その後に再び正組合員数が法定組合員数以上となっても,一度発生した解散の効果が影響を受けることはない。なぜならば,仮に法的根拠もないままいったん発生した解散の効果を失効させることを認めることとなれば,法律関係の安定性が大きく損なわれる結果となる上,およそ水協法が予想する協同組合としての体をなさない組合の存続を認める結果となってしまい,組合の目的を達成するためには一定の組合員数が必要であることから20人という法定組合員数を設けた水協法の趣旨を没却することとなるからである。 エ解散が組合員に与える影響原告は,組合が解散すれば,漁民が多大の不利益を被る旨主張する。 しかしながら,現在の漁業法においては,組合管理漁業権は漁協に免許されるものであるが,漁協は,漁業権の形式的な権利主体として漁業権の管理を行うに過ぎない。そして,組合員は,漁業権ごとに,漁協が定める漁業権行使規則に従い,各自の権利として漁業を営むものである。 そして,組合管理漁業権の内容となる漁業は,この漁業を営む者を一部に限定させず,関係地区内の漁民にもこの漁業を営ませることが適当であるから,漁業法14条において,当該漁業権者である漁協に加入していな- 12 -い漁民に対しても漁業を営ませるための措置を規定している。すなわち,漁民は,当該漁協権の対象となる漁業を営むため,必ずしも漁協に属さなければならないというものではなく,仮に所属する漁協が解散した場合,若しくは個人の意思により漁協を脱退した場合でも,その組合員は,漁民であれば,漁業権の形式的な権利主体である漁協の容認を得て漁業を従前どおり営むことができるし,仮に漁協が 属する漁協が解散した場合,若しくは個人の意思により漁協を脱退した場合でも,その組合員は,漁民であれば,漁業権の形式的な権利主体である漁協の容認を得て漁業を従前どおり営むことができるし,仮に漁協がそれを容認しない場合には漁業法67条に基づく海区漁業調整委員会指示を発動して,漁民の当該漁業を拒まないように義務を課すことも可能である。 また,漁業権に基づく漁業以外については,福岡県漁業調整規則7条に規定する許可を得て操業することが可能である。 したがって,組合が解散しても漁民が従前どおり許可漁業を営むことは可能であるから,原告の上記主張は理由がない。 (原告の主張)ア正組合員たる地位の消滅要件(ア)任意(予告)脱退について任意(予告)脱退は,前記前提事実( )イ記載のとおり60日前まで に書面をもって申し出ることが要件とされ,その効力が発生する時期は,当該事業年度の終わりと規定されている(定款14条1項)。定款が,上記予告期間を設けたのは,突然の任意脱退を認めた場合,正組合員数が20人を下回るという不測の事態が生じ,出資金の払戻準備や組合費収入が突然遮断されてしまうなど,組合の事業遂行上支障が生じることを避けるためである。 (イ)組合員資格の喪失について組合員資格の喪失は,死亡と同じく法定脱退事由であるが,生存・死亡という自明の事実とは異なり,資格喪失には,評価的要素が多分に含まれるから,同列に論ずることはできず,次のとおり評価的要素をどの- 13 -ように認定するのか(認定方法の問題),誰が認定するのか(認定権者の問題)という問題が発生する。 すなわち,資格喪失は,正組合員が「組合の地区内に住所を有し,かつ,1年を通じて90日を超えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」という要件を欠如することをいうが,これは一義的に決まるも が発生する。 すなわち,資格喪失は,正組合員が「組合の地区内に住所を有し,かつ,1年を通じて90日を超えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」という要件を欠如することをいうが,これは一義的に決まるものではなく,解釈が不可欠である。そして,その解釈を前提として,さらに当該漁民の漁業実態の事実調査が必要となるが,漁業者は,不漁のため何日も漁に出れないこともあるし,1日の漁のために何日もの準備が必要な漁業種もあり,このような待機期間や準備期間も「漁業を営み又はこれに従事する日数」に含まれるのである。したがって,「年間90日を超えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」という要件に該当する否かを判断するに当たっては,単純に漁撈を行った日数のみならず,着業準備期間や切上げ期間の日数も調査しなければならず,当該組合員の家族従事者についても個別に漁業日数を調査しなければならない。また,当該組合員において実績がなくとも,今後漁業を営み又は従事する意思や能力があるか否かについても調査しなければならず,一時的理由により漁業日数要件を欠いていたとしても,当該事由の消滅により再び漁業に復帰することが明らかかどうかについても調査しなければならないのである。 そして,かかる認定権者が当該漁協の理事であることは水協法上も明らかであり,後述のとおり,被告知事はその認定権者たり得ない。 (ウ)手続的要件(定款11条)原告の定款11条は,「組合員がその資格を失った時は,直ちにその旨を組合に届け出なければならない。」と規定しているが,上記のとおり組合員資格の存否が漁協理事の認定判断によることからすれば,定款が上記届出を要求したのは,「資格喪失届」が漁協理事の資格喪失認定- 14 -の契機となるものであることから,これを手続的な要件としたものである。 (エ)小括以上 断によることからすれば,定款が上記届出を要求したのは,「資格喪失届」が漁協理事の資格喪失認定- 14 -の契機となるものであることから,これを手続的な要件としたものである。 (エ)小括以上のとおり,漁協の正組合員が資格喪失により脱退するには,当該組合員が実体的に資格喪失しており,当該組合員から資格喪失届が提出され,当該漁協(理事)により資格喪失の事実が確認されて初めて,調査結果に基づく資格喪失の時期において,脱退の効力が発生するのである。このように解さなければ,漁民が自ら資格喪失したと申し出ることによりいつでも任意に漁協を脱退できることになり,任意(予告)脱退の潜脱となる上,漁協の知らないところで組合員が脱退していたという事態が頻発し,組合の安定的運営が大きく阻害されることとなる。また,資格喪失の認定権を国家権力が行使すると,国家権力が勝手に個々の漁民の資格喪失を宣告することが可能となり,漁協の自主的運営に対し容易に介入できることとなり不当である。 イDが平成17年3月31日時点で組合員であったこと(ア)Dの資格要件の有無被告らは,Dの資格要件の有無を常例検査等で調査した旨主張する。 しかし,被告県の担当者らは,当初から漁協の統廃合の数値目標を達成するという強い動機を有しており,原告が提出した第56年度業務報告書に正組合員が19人であると誤記されていたことを奇貨として,数値目標達成のため,Dの資格喪失ひいては原告の解散という結論を導くために恣意的に調査したものである。上記担当者らは,かかる誤記を事実として固めるため,あたかも定例の常例検査であるかのごとく装い,しかも上記結論を導くため反対証拠には目を向けず,Dの本件退休願等を収集したが,それだけでは資格喪失の結論を導けなかったことから,D宅を抜き打ち的に訪れ,Dの娘から の常例検査であるかのごとく装い,しかも上記結論を導くため反対証拠には目を向けず,Dの本件退休願等を収集したが,それだけでは資格喪失の結論を導けなかったことから,D宅を抜き打ち的に訪れ,Dの娘から資格喪失の結論を導くべく誘導し- 15 -て回答を得て,さらにD本人に対する電話聴き取りにおいても酩酊状態にある同人に露骨に希望を押しつけて回答を得るなど,悪質な調査を行っている。 さらに,上記担当者らの常例検査は,Dが漁撈を行った日数,着業準備期間や切上げ期間,家族従事者,Dの意思や能力等,資格喪失を認定するために必要な事項を一切調査していない杜撰なものであった。 これに反し,Dは,本件過料事件における審問の際には,被告らの調査時とは全く異なる事実を供述している(以下,これを「Dの審問供述」という。)。 (イ)Dの漁業実態Dの審問供述を前提とすると,Dは,平成16年度までは原告に賦課金を支払い,現在までタイラギ漁に不可欠な潜水用具や網などの漁具類を保有しており,トンネル工事の仕事を始めた後も,平成17年はゴールデンウィークや夏季,年末年始には漁民としてアサリを採るなど,現在に至るまで漁業自体は継続してきた。 この点,上記以外の時期については上記供述で言及されていないため,それ以外の時期に漁業を行っていた可能性も否定できないから,切上げ期間や着業準備期間を考慮すれば,1年を通じて90日を超えて漁業を行っていた可能性は十分にある。 また,同人の「できればしばらく休むという形にしてほしい。」旨の供述によれば,漁業再開の強い希望も窺われる。 そうすると,Dは未だ資格を喪失しておらず,また仮にそうでないとしても,立証責任を負う被告らは,資格喪失に係る事実を立証しておらず,資格喪失したと判断するには合理的な疑いがある。 (ウ)Dは資格喪失届を提出 ,Dは未だ資格を喪失しておらず,また仮にそうでないとしても,立証責任を負う被告らは,資格喪失に係る事実を立証しておらず,資格喪失したと判断するには合理的な疑いがある。 (ウ)Dは資格喪失届を提出していないこと(手続要件)仮にDが実体的に資格喪失したと認定できるとしても,本件において,- 16 -Dが資格喪失届を提出した事実はないので,いずれにしてもDの資格喪失は認められない。すなわち,平成16年度まで賦課金を支払っていたこと,「できればしばらく休むという形にしてほしい。」旨の本件退休願提出時におけるDの意思及び被告県の担当者らの聴き取り調査においてDが「字を間違えた。」旨述べていることに鑑みると,Dが提出した本件退休願は,脱退届と評価するほかない。 そうすると,Dの脱退の効力発生時期は,平成18年度末となる。 (エ)Dの資格喪失要件を原告が調査・確認していないこと原告は,Dの本件退休願を資格喪失届ではなく,脱退届として処理したため,Dの資格審査のために漁業実態を調査していない。 なお,原告は,第56年度業務報告書において,Dを資格喪失と取り扱ったように記載しているが,同報告書において,任意(予告)脱退であることが明らかなB及びCについても資格喪失と取り扱っていることから明らかなように,原告の誤解に基づく誤記である。また,原告は,平成17年度総会後にDに出資金を返還しているが,仮に資格喪失していたのであれば,即時に返還しなければならないが,原告はかかる処理をせずに,Dを任意(予告)脱退と取り扱った上で,同人の窮状に鑑みて,本来の時期より1年早めて出資金を返還したに過ぎない。 ウ被告知事にはDの組合員資格の認定をする権限がないこと監督行政庁たる被告知事が,漁協の組合員の資格喪失を認定し得るかについては,水協法上,明文の規定を欠くが 年早めて出資金を返還したに過ぎない。 ウ被告知事にはDの組合員資格の認定をする権限がないこと監督行政庁たる被告知事が,漁協の組合員の資格喪失を認定し得るかについては,水協法上,明文の規定を欠くが,解釈上もそのような権限を認める余地はない。なぜなら,同法は,行政庁が漁協の組合員資格審査へ介入し得る一定の権限を認めているが,漁協の独立性の要請から必要最小限のもののみを規定しているから,それ以上の権限を解釈により導くことは許されないからである。 すなわち,同法上,行政庁が組合員の資格審査に介入できるのは,①当- 17 -該組合において客観的にみて非漁民的な者が相当数含まれており,資格審査が適正を欠くと思われ,②それに対する社会的な批判もある組合に対し,③常例検査等を通じて再三にわたって指導を加えても組合が素直に応じない場合,④その違法性を矯正する方法として,報告の徴収(同法122条)あるいは検査(同法123条)を行い,組合業務の違法性を確認の上,⑤措置命令(同法124条1項)を出しても組合がこれに従わないときに,はじめて,⑥業務の全部若しくは一部の停止又は役員の改選を命ずることができるのであって(同条2項),それ以上の介入を行うことはできないとされているのである。これは,漁協が,同法上,高度の私的自治が要請され,かつ,経済的弱者と観念されている中小漁業者及び中小水産加工業者の経済的社会的地位の向上を図るという公益的・社会的側面を有し,同法1条に定める漁協の目的に反し,構成員の利益に反する行為を行う場合に,これを是正する限りにおいてのみ公権力の介入が認められているのである。 そして,例外的に被告知事が組合員の資格喪失を認定できる場合があるとしても,本件では,被告知事は,特段の緊急性もなく,また,漁協再編という目的の裏に,β港を公共埠頭 介入が認められているのである。 そして,例外的に被告知事が組合員の資格喪失を認定できる場合があるとしても,本件では,被告知事は,特段の緊急性もなく,また,漁協再編という目的の裏に,β港を公共埠頭にする計画に際し,同意権のある原告を解散させてスムーズに計画を進行させたいという真の目的のもとに原告を解散させようとしており,その目的に正当性もない上,別の漁協においては上記①ないし⑥の要件及び手続を踏んでいるのに対し,原告に対してはそれを行わないなど,その手段にも相当性を欠くなどしているから違法である。 エ憲法上の権利の侵害被告知事がDの組合員資格喪失を認定することは,原告及びその構成員の結社の自由(憲法21条)及び財産権(同法29条1項)を侵害し,さらに適正手続(同法31条)や平等原則(同法14条)に反するものであ- 18 -る。 (ア)結社の自由の侵害漁協は,私的自治の原則の下,自主的民主的組織であることが要請され,その内部的構成員である組合員の経済的・社会的地位を保存するため外部からの干渉を排除した高度の独立性が維持されなければならない。 したがって,水協法上認められた監督権限を超えて被告知事が内部組織に介入することは,原告の結社の自由を侵害し,違憲である。 (イ)漁業権(財産権)の侵害漁業権は,財産権として憲法29条1項により保障されており,本件における漁業権の権利主体は原告及びその構成員である。 したがって,被告知事が組合員資格審査権に違法に介入し,原告の解散事由となるDの組合員資格喪失を認定することは,原告の漁業権の帰属主体性を否定するとともに原告組合員の漁業権行使を否定し,有明海異変による深刻な漁業被害に苦しむ原告組合員の漁業継続をさらに窮地に追い込むものであり,漁業権の侵害であって違憲である。 (ウ)適正手続違反 を否定するとともに原告組合員の漁業権行使を否定し,有明海異変による深刻な漁業被害に苦しむ原告組合員の漁業継続をさらに窮地に追い込むものであり,漁業権の侵害であって違憲である。 (ウ)適正手続違反被告県は,上記ウ①ないし⑥の要件を充足し,措置命令手続を踏まえ,原告の不服申立ての機会を保障し,告知・聴聞の機会を与えて手続を行うべきところ,常例検査でも正組合員数の調査をしていることを秘するなど,これらを行っていないから,適正手続を規定した憲法31条に違反する。 (エ)平等原則違反被告県の担当者らは,N漁協及びO漁協に対しては措置命令手続を踏まえた不服申立ての機会を保障したのに対して,原告に対しては一切そのような手続を踏んでいない。 このような漁協間の差別的な取り扱いには何ら合理性は認められない- 19 -から,平等原則を定めた憲法14条に違反している。 第3当裁判所の判断 争点( )(甲事件についての本案前の主張)について ( )被告県は,仮に原告が平成17年3月31日時点で解散していなかった としても,原告は現在においても法定組合員数を下回っているから法定解散しており,また,漁業法14条2項の要件も満たしていないから,いずれにしても被告知事は本件各処分と同様の処分を行うこととなるので,甲事件は訴えの利益がない旨主張する。 ( )しかしながら,被告県の上記主張は,別の理由で本件各処分が適法であ ること,或いは,仮に本件各処分が取り消された場合に,別途異なる処分理由で同様の処分を行うことができることを主張しているに過ぎない。前者の場合には本件各処分の適法性の有無を判断するに当って処分理由の追加ないし差し替えが可能か否かが問題となるに過ぎないし,後者の場合には,その新たな処分の適法性が別途問題となるに過ぎないから,これを の場合には本件各処分の適法性の有無を判断するに当って処分理由の追加ないし差し替えが可能か否かが問題となるに過ぎないし,後者の場合には,その新たな処分の適法性が別途問題となるに過ぎないから,これをもって甲事件の訴えの利益がないということはできない。 そして,原告が,本件各処分により,α区第××号漁業権の免許を得ることができず,また,行使規則の認可が得られないという法律上の不利益を受けていることは明らかであるから,本件各処分の取消を求める訴えの利益があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 争点( )(乙事件についての本案前の主張)について ( )被告知事は,仮に乙事件において原告に解散届提出義務がないことが確 認されたとしても,原告が水協法に定める漁協であることが確定されるわけではないから,確認を求める法律上の利益がない旨主張する。 ( )しかしながら,前記前提事実( )ア,ウ記載のとおり原告が解散届を提出 しないことを理由に,被告知事から行政指導や過料通知を受けるなど,現に- 20 -当事者間に水協法上の解散届提出義務の存否という法律関係に関して争いがあるのであるから,その存否の確定が上記紛争の解決に資することは明らかである。そして,仮に甲事件において本件各処分時において法定解散していないとの理由で本件各処分が取り消されたとしても,原告が現在(口頭弁論終結時)において法定解散しているか否か,解散届の提出義務を負うか否かについてはその拘束力が及ばないのであるから,原告が法定解散しているか否かを巡る当事者間の紛争を抜本的に解決するためには,確認判決により不利益を除去する必要があるのであって,即時確定を求める法律上の利益があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は,採用するこ かを巡る当事者間の紛争を抜本的に解決するためには,確認判決により不利益を除去する必要があるのであって,即時確定を求める法律上の利益があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 争点( )(本件各処分の適法性及び解散届提出義務の存否)について ( )事実経過について 前記前提事実に加え,主に各項末尾の証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の法定解散の有無について,次の事実が認められる。 ア組合員資格審査に対する被告県の指導状況水協法は,「漁民及び水産加工業者の協同組織の発達を促進し,もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図り,国民経済の発展を期すること」を目的として掲げ(同法1条),また,漁協の目的として「組合は,その行なう事業によつてその組合員又は会員のために直接の奉仕をすること」を目的としており(同法4条),個人の組合員については,前記前提事実( )ア,イ記載のとおり「この組合の地区内に住所 を有し,かつ,1年を通じて90日を越えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」であることが資格要件とされ,その資格を喪失すれば当然に脱退することとされていることから(同法27条1項1号),一般に漁協が真に漁業を営み又はこれに従事する漁民によって組織された漁民のための組織であるべきものと考えられている。また,水産業は,国民の食料供給に- 21 -よって国民生活の基盤を支えるという重要な役割を果たしているため,国や地方公共団体は,漁協などに財政支援措置を講じているが,一方で,漁業を行っていない者や組合員資格のない者が存在する漁協もあることから,これに対する上記財政支援措置(税金の支出)については批判の声も上がっていた。そこで,漁協から漁民でない者を排除するため,被告県の担当者らは, い者や組合員資格のない者が存在する漁協もあることから,これに対する上記財政支援措置(税金の支出)については批判の声も上がっていた。そこで,漁協から漁民でない者を排除するため,被告県の担当者らは,従前から漁協に対し,組合員の資格審査を適正に行なうよう指導文書を発するなどの指導を行ない,国も平成5年11月には水産庁長官名で「漁業協同組合及び漁業協同組合連合会の今後の指導方針について」を発出し,適正な組合員の資格審査を実施するように指導していた。 ところで,平成15年度当時,全国に沿海地区漁協が約1500存在し,しかも,小規模な漁協が多く,正組合員数が50名未満の漁協が26%を占めていたところ,漁協の組合員が少なければ1人当たりの費用負担が多くなり,漁協からのサービス低下が懸念されていた。また,水産業自体で経営が黒字の漁協は4分の1程度しかなく,国や地方公共団体による各種の補償金や迷惑料などの雑収入によって黒字になる漁協が全体の3分の2程度を占めていたため,経営基盤を強化し,漁民へのサービスを向上させてコストダウンを図ることを目的として漁協を統廃合・再編成し,漁協の組織的基盤を強化することが全国的な課題となっていた。福岡県内においても,平成9年に漁業関係団体が主体となって,当時存在していた74漁協を最終的に8漁協に統合する漁協組織再編構想が策定されたが,平成15年度当時においても県内に66漁協があり,中には小規模漁協が乱立している地域もあったことから,漁協の統廃合・再編成が図られていた。 そして,被告県の担当者らは,非漁業者が組合員の中に相当数含まれていることが上記漁協再編の阻害要因ともなっているとして,平成17年2月7日付け「組合員資格審査の適正化について」(水産林務部長通知)を発して,各漁協において厳正に組合員の資格審査を行うよう通知 れていることが上記漁協再編の阻害要因ともなっているとして,平成17年2月7日付け「組合員資格審査の適正化について」(水産林務部長通知)を発して,各漁協において厳正に組合員の資格審査を行うよう通知した。と- 22 -ころが,同年4月1日時点でも,福岡県内に61漁協存在していたため,同年8月2日開催の福岡県議会農林水産委員会において,委員から,漁協再編が進まないことに対し,被告県の指導不足を指摘し,非漁業者が含まれている漁協や正組合員数が20人台の漁協については強力に指導すべきであるとの意見が述べられた。これを受けて,被告県の担当者(漁政課)は,同月12日,県内各漁協に対し,非漁業者が漁協再編の阻害要因となっていることを指摘した上で,各漁協の組合員資格審査の状況を把握するために,「組合員資格審査の実施状況調査票」及び「組合員資格に関する実態調査票」を提出するように水協法122条1項に基づき通知した。 (甲8,24,37)イ原告の第56年度業務報告書の内容等原告は,γ区の漁協の中でも小規模な漁協であり,平成10年ころの正組合員数が30数名で,その後も減少し,前記前提事実( )記載のとおり 平成16年3月31日時点で22人であったが,その多くが刺し網漁業及び潜水器漁業などの漁船漁業を営んでいた。そして,前記前提事実( )記 載のとおり平成16年4月1日から平成17年3月31日までの間に正組合員が3名減少したとして第56年度業務報告書に年度末現在の正組合員数を「19名」と記載して,通常総会における承認を得て,同年6月27日に被告県に提出した。 (甲13,証人P)ウFらによる原告の正組合員数に関する調査(ア)被告県のFら担当者は,上記イ記載の原告の第56年度業務報告書に,正組合員数が法定組合員数より少ない「19人」と記載されて た。 (甲13,証人P)ウFらによる原告の正組合員数に関する調査(ア)被告県のFら担当者は,上記イ記載の原告の第56年度業務報告書に,正組合員数が法定組合員数より少ない「19人」と記載されていたことを端緒として,原告の組合員数の実態調査を行うこととし,同年7月19日,原告に対し,水協法123条4項に基づき常例検査を実施することを通知した上で,同月27日,28日,原告事務所に赴いて,原告の議事録,帳簿関係,BとCの脱退届及びDの本件退休願等の書類等- 23 -をコピーするなどして業務の状況を調査した。なお,Fら担当者は,原告が組合員数の偽装を図ることなどを防止するため,原告理事らに対し,上記常例検査に先立って,組合員数が20人を下回る場合には法定解散になることや上記調査の目的を告げなかった。 Fら担当者は,上記常例検査において,原告の理事兼職員であるQに対し,Dやその他の組合員の漁業実態について口頭で尋ねるなどした(なお,通常実施されている常例検査においては,これまで組合員資格の有無については,一応尋ねていたが,実質的に踏み込んで個々の組合員の状況まで調査確認は行なっていなかった。)。そして,Fは,これまでは,常例検査の講評を検査終了日に行なうことが多かったが,本件については後日行なうこととして,原告代表者に書類の整理関係はできている旨述べて上記常例検査を終了した。 (イ)Fら担当者は,上記常例検査の結果,平成17年3月31日時点の原告の正組合員数は,Dを除けば多くとも19人であると判断した(なお,D以外にも組合員資格に疑義が生じたものが複数名存在した。)。 他方,Dの出資金73万2000円が同年6月5日に支払済みであることから,同人が原告から脱退したことは明らかであったが,Dから同年3月18日付けで原告に対して提出された書 ものが複数名存在した。)。 他方,Dの出資金73万2000円が同年6月5日に支払済みであることから,同人が原告から脱退したことは明らかであったが,Dから同年3月18日付けで原告に対して提出された書面が「退休願」(本件退休願)であったため,Fには,これが脱退(予告脱退)の趣旨の届出であるか資格喪失による脱退の趣旨の届出であるのかが判然としなかった。 そこで,Fは,Dについて別途調査することとし,同年8月1日,大牟田市内のD宅を訪問した(なお,Fは,電話帳にDの名前で登載されていなかったため,事前に電話連絡することなく訪れた。)。ところが,Dは,そのころ静岡県内へ仕事に出かけていたため,同人方に在宅していた同人の娘であるRが応対した。そして,同女は,Fに対し,大要,「Dは,4,5年前からタイラギが捕れなくなったため,出稼ぎに行っ- 24 -ており,平成16年夏には漁船を解体し,現在は全く漁をしていない。 大牟田市にいても仕事がないため,甥の会社で出稼ぎのためトンネル関係の仕事に行っている。」旨述べ,それを明らかにするため,本件退休願の写しに「5年前から漁業してません。R17年8月1日」と記載した。 (ウ)また,Fは,翌2日,静岡県裾野市にいるD本人(昭和▲年▲月▲日生)に電話を架けて,漁業を行っていないことにつき質問したところ,Dは,大要,「タイラギ漁は,妻が病気したことなどから14,5年前に止めた。妻の死亡後,弟の船に2年間ほど乗って手伝っていたが,これも止めて,以後漁業をしていない。トンネル工事関係の職業に就いて,いろいろな場所で出稼ぎで働いており,4,5年前から甥が所長をしているトンネル工事関係の会社に入り,福岡と静岡を行ったり来たりして,主に静岡県の第2東名高速道路のトンネル工事の仕事に携わっている。 少なくとも10年前ころ で働いており,4,5年前から甥が所長をしているトンネル工事関係の会社に入り,福岡と静岡を行ったり来たりして,主に静岡県の第2東名高速道路のトンネル工事の仕事に携わっている。 少なくとも10年前ころからは手伝いも含めて漁業を行っていない。船も使用できなくなったので解体した。」旨述べた。Fから本件退休願について質問されたのに対し,Dは,いったん「脱退届でしょう。」と述べたが,Fは,自分の意思で10年以上前に漁業を止めているので資格を喪失しているものと考え,「退休願は資格喪失のことでよろしいですね。」と確認したところ,Dもこれを肯定した。 (以上につき甲13,36,乙10,証人桑村,証人岩本)エDの漁業に関する許可取得等ところで,Dは,昭和34年ころから原告の組合員として主にタイラギ潜水器漁業の許可を受けて,漁船(○○丸。4.04トン)と潜水器漁具を所有して冬場の操業期間はこれに従事し,それ以外の時期は海老や魚を漁船漁業で捕って生計を立てており,平成3年度のタイラギ漁の操業においても,平成3年11月22日付けで潜水器漁業許可を得て同月26日か- 25 -ら平成4年4月30日まで同漁業に従事した。ところが,Dは,平成4年度のタイラギ漁(平成4年12月8日付け潜水器漁業許可にかかるもので,操業期間を同月10日から平成5年4月30日までとするもの)に対する許可申請をせず,その後も許可申請を行なわなかった。なお,D所有の漁船(○○丸)は,平成16年8月に解体処分され,平成17年1月27日に漁船登録が抹消された。 (甲13,乙6,9の1・2)オ解散届に関する行政指導と本件過料事件におけるDの審問供述等前記前提事実( )記載のとおり,被告県担当者らは,上記常例検査やD に対する調査などの結果,原告が平成17年3月31日時点において組合員数 届に関する行政指導と本件過料事件におけるDの審問供述等前記前提事実( )記載のとおり,被告県担当者らは,上記常例検査やD に対する調査などの結果,原告が平成17年3月31日時点において組合員数が20人未満(多くとも19人)となったことにより当然に法定解散となったことが判明したとして,原告に対し水協法68条5項に基づく解散届を提出するように口頭や書面で促す行政指導を行なったが,原告はこれに反発して上記届出をしなかった。そのため,被告県水産林務部長は,前記前提事実( )ウ記載のとおり,原告代表者(代表清算人K)を被審人 として解散届の届出を怠っていることにつき過料の支払を求めた(本件過料事件)。 本件過料事件において,いったん同年12月22日に過料決定がなされたが,被審人から異議申立てがなされたため,審問手続が行なわれ,平成18年3月6日にはDの審問が行なわれた。その際,Dは,大要,「以前は,主にタイラギ漁を行ない,それ以外は海老や魚を捕っていたが,実際に漁師をしていたのは,タイラギが捕れなくなったころの9年ないし10年前である。それ以後は,トンネル抗夫の仕事をするようになって,いろいろな場所で稼動した。漁業を止めてからも船を置いていたが,約2年前に廃棄処分とした。もっとも,タイラギが捕れるようになったら使用しようと考えて潜水用具や網などの漁具は保有している。これまでも年3回(5月の連休,盆,正月)大牟田市に帰った際には,アサリを採ったりし- 26 -ており,全く海に行かないということはなかった。漁業をしていないのに年間の賦課金を支払うのが負担となったため,これを免れるために原告を退会しなければならないと考えて,本件退休願を提出したが,自分の気持ちとしてはしばらく休むという形にして欲しいと思っていた。なお,本件退休願を提出した のが負担となったため,これを免れるために原告を退会しなければならないと考えて,本件退休願を提出したが,自分の気持ちとしてはしばらく休むという形にして欲しいと思っていた。なお,本件退休願を提出した後の平成17年5月,6月もトンネル坑夫の仕事がなかったため,大潮のときにアサリを採るなどした。」旨供述した。 当庁大牟田支部は,前記前提事実( )記載のとおり,平成18年3月2 3日上記過料決定を取り消して被審人を処罰しない旨決定した。(甲13)( )組合員減少による法定解散について ア前記前提事実( )ウ記載のとおり水協法68条4項は,「組合は,正組 合員が二十人未満になったことに因って解散する。」旨規定している。これは,漁協の社団的性格から,その存続に一定数以上の組合員が存在していることを当然に必要としており,この最低数は,「漁民及び水産加工業者の協同組織(漁協)の発達促進」という水協法の目的から判断して,これより少なければ,およそ水協法の予想する協同組合として体をなさないと考えられる組合員数であって,水協法はこのような正組合員数として「20人」という法定組合員数を規定したものと解される。したがって,漁協は,正組合員数が20人未満になったという事実が生じた時点で,何らの手続を要することなく当然に解散するというべきである。そして,仮に漁協が上記のとおり当然に解散した後に,その後の事情によって,いったん発生した解散の効果が失効することになるとすれば,法律関係の安定性が大きく損なわれて不当であるから,漁協が当然解散となった場合には,その後に正組合員数が再び法定組合員数以上となっても,一度発生した解散の効果には影響を及ぼさないと解するのが相当である。 イ行政庁の組合員資格の判断について- 27 -(ア)ところで,各漁協の組合員 に正組合員数が再び法定組合員数以上となっても,一度発生した解散の効果には影響を及ぼさないと解するのが相当である。 イ行政庁の組合員資格の判断について- 27 -(ア)ところで,各漁協の組合員資格の有無の判断は,漁協の自主性の確保という観点からみて行政庁等の外部機関がみだりに干渉することは望ましくなく,第一次的には漁協の理事或いは組合員資格審査委員会等の内部機関の権限と解されるが,上記( )ア認定のとおり,漁協は,漁民 及び水産加工業者の経済的地位の向上を図ることを目的とし,公共的な性格を有していること,組合員資格を有しない非漁業者が相当数含まれている漁協が存在している疑いがあり,このような漁協に対しても国や地方公共団体から財政的措置が採られていることに対する批判があることなどに鑑みると,組合員資格の有無は,純然たる内部問題ということはできない。また,水協法が,第8章において,行政庁に対し漁協の業務及び会計等につき監督する権限を与えている趣旨からすれば,漁協の健全な発達を図るという目的に従って行政庁が漁協の業務内容の適正な執行を検証するため組合員資格の有無について判断することや,理事等内部機関による審査に法令又は定款に違反するなどの事情がある場合には,その違法状態を正すため,組合員資格の有無の判断についても調査・監督することができるというべきである。しかして,上記ア説示のとおり正組合員数が20人未満となったという事実が客観的に存在すれば,その時点において,当該漁協は当然に法定解散となるのであるから,行政庁が調査した結果,そのような事態となったことが判明すれば,以後,当該漁協が当然に法定解散したことを前提に行政指導や行政処分等の各般の行政上の手続を進めることは何ら違法ではないというべきである。 (イ)この点,原告は,組合員資 態となったことが判明すれば,以後,当該漁協が当然に法定解散したことを前提に行政指導や行政処分等の各般の行政上の手続を進めることは何ら違法ではないというべきである。 (イ)この点,原告は,組合員資格(資格喪失)の存否は,漁協理事が判断すべきである上,その判断の契機とするため,定款11条が組合員が資格を失った時は組合に届け出なければならないと規定しているのであるから,資格喪失による法定脱退というためには,手続的要件として資格喪失届の提出が必要である旨主張する。 - 28 -しかしながら,上記( )イ認定のとおり原告は,通常総会で承認を受 けた上で監督行政庁である被告知事に対して提出した水協法58条の2第1項所定の業務報告書(第56年度業務報告書)において,正組合員数が3名減少して平成17年3月31日時点における原告の正組合員数が「19人」である旨を正式に報告したのであるから,原告理事において組合員資格の得喪に関する判断を経た上で正組合員数を19人と判断したものと考えざるを得ない。そこで,上記報告を受けた被告県の担当者らは,上記報告内容を確認するため常例検査やDらに対する調査を実施し,その結果,上記事実を確認したのであるから,上記担当者らが原告理事の判断権を侵害したとはいえない。さらに,仮に正組合員が年間90日間以上漁業を営み又はこれに従事しているという実態が全くないことが一見して明らかな場合にも,資格喪失届が提出されない限り,組合員資格を喪失したと判断できないと解するのは不当であるから,手続的要件として資格喪失届の提出が必要であるとは認め難い。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 ( )Dの組合員資格の有無について アそこで,本件において,Dが「1年を通じて90日を越えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」 難い。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 ( )Dの組合員資格の有無について アそこで,本件において,Dが「1年を通じて90日を越えて漁業を営み又はこれに従事する漁民」に該当し,組合員資格を有するか否かについて検討するに,前記前提事実( )ア記載のとおり,水協法上「漁民」は,漁 業(水産動植物の採捕又は養殖の事業)を営む個人又は漁業を営む者のために水産動植物の採捕若しくは養殖に従事する個人をいう(同法10条2項)ところ,「漁業を営」むとは,漁撈作業のみでなく,その着業期間及び切上げ期間も含み,その日数要件を充足しているか否かは,過去の実績を最も大きな判断要素として,これに現在及び将来におけるその意思及び能力,その他客観的事情をも勘案し,その者が何日程度漁業を営み又はこれに従事するようなものであるかを総合して判断するのが相当である。 - 29 -上記( )認定の事実,とりわけ,Dの調査段階における電話による回答 内容や漁業許可の実態によれば,Dは,平成4年12月許可分から,従前主に従事していたタイラギ潜水器漁業の許可を受けずに,自ら操業するのを止めて,弟の漁業をしばらく手伝っていたが,これも2年間ほどで止めて,Fら担当者らによる調査時点である平成17年夏から10年ないし12年前ころ(遅くとも平成7年ころ)からは漁業に従事せずに,出稼ぎのトンネル工事従事者として全国各地(最近5年間は静岡県)で働いていたのであるから,Dの審問供述どおり地元に年3回(5月の連休,盆及び正月)程度帰省した際に,アサリを採っていたとしても,その期間は,漁獲に伴う着業準備期間や切上げ期間を考慮しても,到底年間90日を越えると認めることはできない。したがって,Dは,遅くとも平成7年ころには正組合員の資格を喪失し,法定脱退していたも も,その期間は,漁獲に伴う着業準備期間や切上げ期間を考慮しても,到底年間90日を越えると認めることはできない。したがって,Dは,遅くとも平成7年ころには正組合員の資格を喪失し,法定脱退していたものというべきである。このことは,Dが地元に帰省して行なっていたという漁業について,Fからの電話による調査の際は述べずに,「約10年前から漁業に従事していない。」とのみ述べていたこと,Dは,審問供述において,「平成17年5,6月ころは,大潮のときだったのでアサリを採った。」旨述べており,実際に行なわれた漁業が極めて限定された期間であることが窺われること及びD自身が「漁師をやめた。」旨供述しており,同人自身の認識としても自己を「漁民」と認識していなかったものと解されることからも,首肯できるところである。 イこれに対し,原告は,Dは組合員資格である年間90日以上漁業を営んでいた旨主張し,Dの審問供述にはこれに副うかのような部分がある。 しかしながら,Dは,審問供述においても漁師をやめて長期間漁業を営んでおらず,トンネル工事に従事していることを認めているのであるから,原告の上記主張を直接裏付けるものではない。しかも,Dは,上記審問供述において,実際に漁師としてタイラギ漁をしていたのは,タイラギが採- 30 -れなくなったころの9年ないし10年前まで(すなわち,平成8年ないし平成9年ころ)である旨供述するが,上記( )エ認定のとおり同人がタイ ラギ潜水器漁業の許可申請をしなくなったのは,これより4,5年前の平成4年12月許可分からである。そして,本件証拠(乙8)によれば,有明海福岡県地先におけるタイラギ漁獲量は,昭和59年度ころは極めて不振であったが,昭和61年度以降は年間1000トン前後の漁獲であり,平成3年度には約1500トンと豊漁であった (乙8)によれば,有明海福岡県地先におけるタイラギ漁獲量は,昭和59年度ころは極めて不振であったが,昭和61年度以降は年間1000トン前後の漁獲であり,平成3年度には約1500トンと豊漁であったこと,しかし,上記漁獲量は,翌平成4年度に1000トンを下回り,その後も平成6年度に100トン以下と不漁であったが,平成7年度に約500トンとやや回復し,平成8年度,9年度には,年間1500トン以上と昭和59年以降では最も豊漁であったこと,ところが,その後,上記漁獲量は,平成10年度に約600トン程度と減少し,平成11年度以降は100トン以下の極めて不漁が続いていることが認められる。 そうすると,Dの審問供述どおりタイラギ漁を止めたのが,タイラギ漁の不振が原因であるとすれば,近時としては最も漁獲高が多かった平成8,9年にこれを止めたとは認め難い上,客観的に明らかな上記タイラギ潜水器漁業許可取得状況に照らして,この点に関するDの上記供述部分は採用できず,むしろ,DのFに対する調査段階の供述(上記( )ウ(ウ))の方 が客観的事実に符合するというべきである。そうすると,Dは,弟の操業を約2年間手伝っていたとしても遅くとも平成7年ころ漁業に従事するのを止めて,10年間以上,他所において主にトンネル工事に従事していたと認めるのが相当である。なお,原告は,漁協の統廃合・再編問題があったことから,被告県担当者らの調査方法が強引で不当であった旨主張するが,漁協の整理統合の阻害要因として非漁業者の存在が指摘され,その排除の必要性が指摘されていたことは上記( )ア認定のとおりであるとして も,上記のとおりDのFに対する調査段階の供述の方が客観的事実に符合- 31 -することに照らしても,上記事情のために被告担当者らの調査方法が強引で不当であったとは認 認定のとおりであるとして も,上記のとおりDのFに対する調査段階の供述の方が客観的事実に符合- 31 -することに照らしても,上記事情のために被告担当者らの調査方法が強引で不当であったとは認め難いから,上記主張は,採用することができない。 ウまた,原告は,潜水用具等の漁具を保有しており,同人がタイラギ漁等の漁業に従事する意向を有していることを示している旨主張し,Dの審問供述にもこれに副う供述部分がある。 しかしながら,上記( )エ,オ認定のとおりDは,タイラギ潜水器漁業 や漁船漁業を営むために必要な自己所有の漁船(○○丸)を港に置いていたが,動かなくなって邪魔になったため,平成16年夏ころ解体処分し,漁船を保有していないところ,本件証拠(甲27)によれば,再びタイラギ漁を営むために漁船を購入して設備一式を揃えるとすれば約1700万円を要するとされていることが認められるから,Dが将来タイラギ漁を営む可能性は実際には極めて乏しいといわねばならない(なお,上記証拠によれば,潜水用道具を購入するためには200万円程度を要することが認められるから,漁業に従事する意向を有していなくとも,財産的価値がある潜水用具を保有していることはあり得るところである。したがって,これをもって,漁業に従事する意向があることを裏付けるものとは言い難い。)。そして,上記事情に照らせば,Dが,漁業を営み又は従事することを止めた後も長期間賦課金を支払い,出資金の返還を求めなかったことも,将来漁業を営む具体的意思を有していたことを裏付けるに足りる事実とは言い難いというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 エ原告は,Dはしばらく漁業を休むという趣旨で本件退休願を提出したのであって,資格喪失届の意図はなく,脱退届の趣旨であり,しかも,そ である。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 エ原告は,Dはしばらく漁業を休むという趣旨で本件退休願を提出したのであって,資格喪失届の意図はなく,脱退届の趣旨であり,しかも,その脱退の効力は平成18年3月31日に発生する旨主張し,Dの審問供述中には,これに副う部分がある。しかしながら,上記( )イ(イ)説示のとお り組合員が漁業を営み又はこれに従事しなくなって組合員資格を失ったに- 32 -もかかわらず,その届出がなければ組合員資格が存続するとは考え難いから,資格喪失と認定判断するに当っては当事者の届出が必要とは解されない。また,Dからの資格喪失届の有無及び届出の意図如何にかかわらず,実態として組合員資格を喪失しているか否かで判断すべきである。したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くから採用することができない。 ( )原告の法定解散について 以上によれば,平成17年3月31日時点において,Dが組合員資格を喪失していたから,原告の正組合員数は,多くとも19人であったことになる。 そうすると,原告は,同日時点において法定組合員数よりも正組合員数が少ないのであるから,水協法68条4項により当然に法定解散したものといわねばならない。 ( )憲法上の権利の侵害について 原告は,被告知事らがDの組合員資格喪失を認定することは,原告及びその構成員の結社の自由(憲法21条)及び財産権(同法29条1項)を侵害し,さらに適正手続(同法31条)や平等原則(同法14条)に違反する旨主張する。 アしかしながら,前記前提事実( )ウ記載のとおり,水協法は法定組合員 数を定めて,これより少ない組合員数になった時には当然に解散する旨規定しているところ(上記規定が,水協法の趣旨,目的に照らして合理性があることは明らかである。) 記載のとおり,水協法は法定組合員 数を定めて,これより少ない組合員数になった時には当然に解散する旨規定しているところ(上記規定が,水協法の趣旨,目的に照らして合理性があることは明らかである。),漁協を監督する権限を有する行政庁において,原告から提出された業務報告書の記載内容を端緒として,これを確認するために調査し,原告が法定解散となったことを確認したことから,これを前提として各般の行政処理を行なうことは,水協法の定めるところと解され,行政庁の上記対応をもって漁協やその組合員の結社の自由を侵害するということはできない。 イまた,原告が法定解散により漁業権を失うとしても,漁協は,漁業法上,- 33 -漁業権の形式的な権利主体として漁業権の管理を行うに過ぎず,組合員は,漁業権ごとに,漁協が定める漁業権行使規則に従い,各自の権利として漁業を営むのであるから(同法8条),漁協が上記管理権を失うことをもって財産権の侵害とはいえない。 そして,仮に所属する漁協が解散した場合でも,その組合員は,漁民であれば,組合管理漁業権の形式的な権利主体である漁協の容認を得て漁業を従前どおり営むことができるし,仮に漁協がそれを容認しない場合には漁業法67条の規定に基づく海区漁業調整委員会指示を発動して,その漁業を拒まないように義務を課すことができ(同法14条11項),本件においてもγ区漁業調整委員会指示が発動されている(乙4の2,証人P)。 また,漁業権に基づく漁業以外については,福岡県漁業調整規則7条に規定する許可を得て操業することが可能である(乙11)。 したがって,原告の組合員であった漁民は,従前どおり許可漁業を営むことは可能であるから,原告組合員の財産権を侵害するとはいえない。 ウさらに,本件証拠(甲13,20の1ないし4,37)及び弁論の全趣旨に って,原告の組合員であった漁民は,従前どおり許可漁業を営むことは可能であるから,原告組合員の財産権を侵害するとはいえない。 ウさらに,本件証拠(甲13,20の1ないし4,37)及び弁論の全趣旨によれば,原告の場合と同様に,S漁協が平成17年6月20日被告県に提出した業務報告書に,正組合員数が「16人」と記載されていたため,被告県の担当者らは,上記記載どおりであれば法定解散していることになるとして常例検査を実施し,その確認を行なったこと,その結果,被告県の担当者らは,関係書類から遅くとも同年2月16日には同漁協の正組合員数が多くとも18人となって法定解散したことを確認したとして,同年8月29日に解散届を提出するように口頭で指導したこと,その後,同漁協は,組合員資格に関する定款の規定が変更されたなどと主張して訴訟を提起し,法定解散の有無について争ったこと,他方,N漁協は,同年9月ころ被告県に対し正組合員数を「36人」と報告したが,被告県の担当者らは,同漁協に対し組合員資格に関して適正な運営を行なうように指導し- 34 -たこと,その後,被告知事は,同漁協による改善が見られないとして,措置命令を発し,さらに,同漁協の意見を聴いた上で,平成18年12月25日付けで同漁協に対し水協法124条の2第3号に基づき解散命令を発したこと及び同漁協は,上記解散命令の取消しを求めて提訴したことが認められる。 ところで,一般に,漁協理事ら漁協内部機関による組合員資格の判断に疑問がある場合に,行政庁がこれを監督する方法としては,水協法122条の報告の徴収や同法123条の業務の検査を行って事実関係を確認した上で,行政指導をするなどして改善を要求し,それに応じない場合には同法124条1項の「必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。」との規定に基づき措置 23条の業務の検査を行って事実関係を確認した上で,行政指導をするなどして改善を要求し,それに応じない場合には同法124条1項の「必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。」との規定に基づき措置命令を発し,これにも従わない場合には,漁協に対する行政手続法に定める聴聞手続を経た上で,同条2項所定の「業務の停止若しくは役員の改選」を命ずるか,あるいは,同法124条の2第3号(組合が法令に違反した場合において,行政庁が措置命令をしたにもかかわらず,これに従わないとき)に当たるとして漁協に対し解散命令を発することができると解されるところ,上記認定事実によれば,N漁協については,同漁協自体は正組合員数を20人以上と判断していたのに対し,被告県の担当者らが適正な組合員資格の審査,業務執行を指導・指示したにもかかわらず,これに従わなかったとして,措置命令や解散命令等の各手続を執ったものであり,その際,行政庁が漁協に対し解散命令等の不利益処分を課すものであったことから,行政手続法に定める聴聞手続(意見聴取手続)がなされたものと解される。 これに対し,原告の場合は,N漁協とは異なり,正組合員数が法定組合員数を下回る旨の業務報告をしていたところ,これが事実であったことから,水協法68条4項により法律上当然に解散となったものであって,行政庁は何ら関与をしていないのである。したがって,本件の場合は,聴聞- 35 -手続等を行なうべき前提を欠くというほかなく,適正手続に違反しているということはできない。 エそして,上記ウ認定説示のとおり,原告の場合は,N漁協と前提事実を異にしているから,同漁協と異なる対応が取られたとしても,平等原則に違反するということもできない。このことは,上記ウ認定のとおり漁協自体が正組合員数が法定組合員数を下回る業務報告を行ってい 提事実を異にしているから,同漁協と異なる対応が取られたとしても,平等原則に違反するということもできない。このことは,上記ウ認定のとおり漁協自体が正組合員数が法定組合員数を下回る業務報告を行っていたS漁協については,原告の場合と同様の経過を辿っており,その取扱に異なるところはないことからも明らかである。 オしたがって,原告の上記各主張は,いずれも採用することができない。 ( )まとめ 以上によれば,原告は,遅くとも平成17年3月31日時点において法定組合員数20人を下回る正組合員しかいなかったために水協法68条4項により当然に解散となったといわざるを得ない。したがって,原告が本件申請1の適格を有しないことは明らかであるから,これを理由として上記申請を不許可とした本件不免許処分は正当であり,また,これを前提とする本件申請2を認可しなかった本件不認可処分も正当である。さらに,原告は,水協法68条5項の規定に従い,遅滞なく解散の事実を行政庁(被告知事)に届け出る義務があるというべきである。 第4 結論 そうすると,原告の被告らに対する本件各請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第3民事部永松健幹裁判長裁判官- 36 -裁判官本田能久は転補につき,裁判官坂本隆一は転官につき,それぞれ署名押印することができない。 永松健幹裁判長裁判官
▼ クリックして全文を表示