主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 申立て 1 原告ら(1) 第1・第2事件ア被告鏡町長A(以下「被告鏡町長」という。)は,「八代郡医師会立病院建設支援ふるさと融資利子補給町村負担金」(以下「本件負担金」という。)につき,未払部分の支出命令をしてはならない。 イ被告鏡町収入役B(以下「被告鏡町収入役」という。)は,本件負担金につき,未払部分の支出をしてはならない。 (2) 第1事件被告Aは,鏡町に対して金62万2000円及びこれに対する平成14年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 第2事件被告Aは,鏡町に対して金41万2000円を支払え。 2 被告ら(第1・第2事件)(1) 本件訴えを却下する。 (2) 主文同旨第2 事案の概要本件は,熊本県八代郡鏡町(以下「鏡町」という。)の住民である原告らが,本件負担金の支出は地方自治法232条の2及び地方財政法4条の5に反して違法であると主張して,被告鏡町長及び被告鏡町収入役に対して,平成13年度及び平成14年度に係る本件負担金の支出差止めを求めるとともに,鏡町長たる被告Aが本件負担金に関して違法に支出命令を発したとして,原告らが鏡町に代わって,被告Aに対して損害賠償金の支払を求めた住民訴訟である。 1 前提となる事実(証拠により認定した事実は,各項末尾に主な証拠を掲記した。その他の事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも鏡町の住民である。 イ被告鏡町長は,地方自治法232条の4第1項に基づき支出命令を行う者,被告鏡町収入役は,同法232条の4に基づき支出命令に係る支出を行う者である。 ウ被告Aは,鏡町長として,平成13年度及び平成14年度 鏡町長は,地方自治法232条の4第1項に基づき支出命令を行う者,被告鏡町収入役は,同法232条の4に基づき支出命令に係る支出を行う者である。 ウ被告Aは,鏡町長として,平成13年度及び平成14年度に係る本件負担金に関し,支出命令を行った者である。 (2) 八代郡医師会立病院開設の経緯ア平成7年11月当時,熊本県地域医療計画による八代保健医療圏において,医療計画上の不足病床数が185床であったため,訴外医療法人徳洲会(以下「徳洲会」という。)の医師であった訴外Cは,そのころαに救急医療体制を完備した病床数185床の病院(仮称「γ病院」。以下「γ病院」という。)の開設を計画し,八代保健所に開設計画書を持参した。 (甲19,41,43,44)イこれに対し,社団法人八代郡医師会(以下「郡医師会」という。)は,平成7年11月24日,熊本県に対し,病床数80床(一般病床20床,療養型病床60床)の八代郡医師会立病院(以下「郡医師会立病院」という。)をβに開設する旨の開設計画書を提出し,さらに,同月29日には,社団法人八代市医師会(以下「市医師会」という。)が病床数100床(全て療養型病床)の八代市医師会立病院(以下「市医師会立病院」という。)の開設計画書を提出した。 Cは,同年12月12日に熊本県に対し,γ病院の開設計画書を正式に提出したが,平成8年1月10日開催の八代地域保健医療推進協議会においては,「八代保健医療圏では救急医療主体の病院は不足しておらず,むしろ療養型病院の設置が望ましい。」とされた。 (甲14,19,41,44,45)ウその後,Cは,熊本県知事に対し平成9年4月15日付けでγ病院の開設許可申請書を提出したが,市医師会は,同月30日付けで市医師会立病院の,郡医師会は,同年5月14日付けで郡医師会立病院の各開設許可申請書を ,Cは,熊本県知事に対し平成9年4月15日付けでγ病院の開設許可申請書を提出したが,市医師会は,同月30日付けで市医師会立病院の,郡医師会は,同年5月14日付けで郡医師会立病院の各開設許可申請書をそれぞれ熊本県知事に対して提出したため,病院開設申請病床数が上記不足病床数を超えることとなった。 熊本県知事は,八代地域保健医療推進協議会の意見を踏まえて,所要の手続を経て,同年9月19日,郡医師会立病院及び市医師会立病院の開設を許可した。(甲19,20,44,45,弁論の全趣旨)エ他方,熊本県知事は,平成9年11月5日,Cに対して,医療計画に定める必要病床数を超えているとして,医療法30条の7に基づき病院開設を取りやめるよう勧告したが(以下,これを「中止勧告」という。),同人から同月7日ごろ中止勧告に従わない旨回答を受けた。熊本県知事は,同月18日,Cに対し,γ病院の開設を許可した。 (甲19,40,弁論の全趣旨)(3) 本件負担金ア上記(2)ウ記載のとおり,熊本県知事が平成9年9月19日に郡医師会立病院開設を許可したことを受けて,郡医師会は,同年11月から平成10年1月にかけて,八代郡の各町村及び八代郡町村会に対し,病院建設資金の借入金の一部につき「ふるさと融資制度」による財政支援を要望した。 ところで,「ふるさと融資制度」は,地域総合整備資金貸付要綱(平成2年3月31日自治地第87号自治省財政局地方債課長通知)に基づき民間事業者等に供給される無利子資金(地域総合整備資金)の貸付制度であり,地域振興に資する民間事業活動等を支援し,もって活力と魅力ある地域づくりの推進に寄与するために,地方公共団体が金融機関等と共同して,財団法人地域総合整備財団(通称ふるさと財団。以下「ふるさと財団」という。)の支援を得て,地方債を原資として,民間 活力と魅力ある地域づくりの推進に寄与するために,地方公共団体が金融機関等と共同して,財団法人地域総合整備財団(通称ふるさと財団。以下「ふるさと財団」という。)の支援を得て,地方債を原資として,民間事業者等の事業(公益性,事業採算性,低収益性の観点から実施され,かつ,新規雇用が見込まれる等の要件を満たす事業)に対し無利子資金の貸付を行うものである。貸付手続の流れは,民間事業者等から地方公共団体への融資申込がされると,地方公共団体がふるさと財団に総合的な調査・検討を依頼し,ふるさと財団における貸付対象事業の決定・通知を受けて,総務省における起債枠配分と地方公共団体における融資決定がされ,その上で,地方公共団体が地方債を発行して民間金融機関から原資を借り入れ,これを当該民間事業者等に対し,15年以内の期間,無利子で貸し渡すというものである。そして,地方公共団体において負担する民間金融機関に対する利息については,原則としてその75パーセントが地方交付税により補填され,残り25パーセントを当該地方公共団体が負担することになっている。 (乙2ないし4,19ないし21)イ平成10年4月16日に開催された八代郡町村長会議では,郡医師会から出された上記要望について検討が行われ,ふるさと融資制度を利用して,病院建設予定地である宮原町が,起債して民間金融機関から原資を調達した上で,郡医師会に無利息で貸付を行い(なお,複数の市町村にまたがる案件については,主たる事業を行う市町村が貸付主体になることとされている。),宮原町が負担する民間金融機関に対する利息の25パーセントについて,八代郡の各町村が負担することが合意された。そして,各町村の負担金については,上記25パーセントの内3割を各町村が4.3パーセントずつ均等割で負担し,その余を人口割で負担することとし セントについて,八代郡の各町村が負担することが合意された。そして,各町村の負担金については,上記25パーセントの内3割を各町村が4.3パーセントずつ均等割で負担し,その余を人口割で負担することとし,宮原町を除く各町村が,合意に係る各負担金を宮原町に支払い,宮原町が当該金融機関に対する利息の支払を行うことが合意された。この合意に基づく鏡町の負担(本件負担金)額は,平成13年10月分が62万2000円であり,平成14年10月分が41万2000円であった。 (甲2,3,乙3,29,30,証人D,証人E,証人F)ウその後,郡医師会は,地元町村長の要請を受けて,住民の交通の便の良い場所へ病院建設予定地を変更することとなったとして,平成10年11月4日,熊本県知事に対する郡医師会立病院の開設許可申請を一旦取り下げ,変更後の予定地につき開設許可申請を行ったので,同知事は,同年12月7日これを許可した。その後,郡医師会立病院は,建築が進められ,平成12年4月に開院した。 (甲40,44,乙22,29,30,証人D,証人E)エ郡医師会は,平成11年10月19日,宮原町長に対し,正式に,郡医師会立病院の新築工事事業につき,借入総額12億4900万円のうち2億4200万円をふるさと融資制度に基づき借り入れたい旨申し込んだ。これに対し,ふるさと財団による調査・検討が行われ,同財団から同年11月5日付けで「貸付対象事業として適当である。」旨通知を受けたことから,宮原町長は,平成12年3月24日熊本県から地方債の起債の許可を受けて,同年5月24日株式会社肥後銀行から2億4200万円を借り入れて,翌25日,郡医師会に対し,無利息で,平成13年10月以降平成26年10月まで,毎年4月及び10月に分割弁済するとの約定で,これを貸し付けた。(乙9ないし11,15ない 億4200万円を借り入れて,翌25日,郡医師会に対し,無利息で,平成13年10月以降平成26年10月まで,毎年4月及び10月に分割弁済するとの約定で,これを貸し付けた。(乙9ないし11,15ないし17)オ鏡町においては,上記イの合意に基づく本件負担金の平成13年10月分の利子負担につき,同年3月19日の町議会定例会における議決を経た上で,被告鏡町長が,同年11月26日に支出命令を発し,被告鏡町収入役が宮原町に対し,同年12月6日,利息負担金62万2000円を支出した。また,本件負担金の平成14年10月分の利子負担については,同年3月25日の町議会定例会における議決を経た上で,被告鏡町長が,同年11月7日に支出命令を発し,被告鏡町収入役が宮原町に対し,同月21日,利息負担金41万2000円を支出した。 (甲3,9,証人F,弁論の全趣旨)(4) 住民監査請求ア原告らは,平成13年12月20日付けで,鏡町監査委員に対し,本件負担金の支出は違法不当であると主張して,平成13年度分の本件負担金に係る支出を差し止め,既支出分につき損害回復の措置をとることなどを求める住民監査請求を行った。しかし,上記監査委員は,平成14年2月8日付けで,原告らが同請求を町外の者(原告ら訴訟代理人)に委任して行っているから,住民監査請求の要件を欠くとの理由で,監査請求を却下したため,原告らは,平成14年(行ウ)第1号支出命令差止等請求事件(第1事件)を提起した。(甲4,5,弁論の全趣旨)イまた,原告らは,前同様の主張に基づき,平成14年6月12日付けで,鏡町監査委員に対し,平成14年度分の本件負担金につき同様の措置を求める住民監査請求(以下,平成13年度分についての請求と併せて「本件監査請求」という。)を行った。しかし,上記監査委員は,上記アと同じ理由で, 員に対し,平成14年度分の本件負担金につき同様の措置を求める住民監査請求(以下,平成13年度分についての請求と併せて「本件監査請求」という。)を行った。しかし,上記監査委員は,上記アと同じ理由で,同年7月30日付けで監査請求を却下した。そこで,原告らは,平成14年(行ウ)第10号支出命令差止等請求事件(第2事件)を提起した。 (甲10,11,弁論の全趣旨) 2 争点(1) 本件監査請求の適法性について(被告らの主張)地方自治法242条1項の規定に基づく監査請求は,「市町村の区域内に住所を有する」住民が住民全体に係る利益を確保することを目的としているから,住民本人の意思に基づき住民本人により行われることを要件としており,代理になじまない。 原告らは,αの区域内に住所を有しない者(原告ら訴訟代理人)に委任して,その者を代理人として本件監査請求をしているから,同請求は,上記要件を満たしておらず,不適法である。 (原告らの主張)ア住民監査請求の要件として,住民本人により行われることは,法文上,要求されていない。監査請求は,講学上,私人の公法行為と呼ばれるもので,意思表示を行為の要素とするものであり,このような私人の公法行為については,事柄の性質上本人の意思によって本人が行わなければならない選挙のようなものを除いて,代理によって行うことができるというべきである。 イ監査請求は,地方公共団体の行財政の適正な運営を確保し,もって住民全体の利益を擁護することを目的とする制度であるから,住民の意思に基づいて行われさえすればよいのであって,住民本人が自ら行わなければ意味をなさないとはいえない。代理人によって監査請求を行っても,それが本人の意思に基づいて行われていることは明らかである。また,監査請求を行うには,請求の要旨を1000字以内にまとめ ら行わなければ意味をなさないとはいえない。代理人によって監査請求を行っても,それが本人の意思に基づいて行われていることは明らかである。また,監査請求を行うには,請求の要旨を1000字以内にまとめなければならないなど細かな要件が規定されており,住民本人が自ら行わなければならないとすると,住民の権利行使を著しく阻害することになる。さらに,本件では,原告らは監査請求を弁護士に委任しているが,弁護士法3条1項によれば,「弁護士は,当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって,訴訟事件,非訟事件及び審査請求,異議申立て,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」として,弁護士の職務が一切の法律事務に及ぶことを規定し,これに対する除外事由は定められていない。 ウしたがって,住民監査請求が代理に親しむ行為であることは明らかであり,本件監査請求は適法である。 (2) 本件負担金の公益上の必要性の有無について(原告らの主張)鏡町の本件負担金の支出は,宮原町に対する寄付又は補助にあたるから,公益上必要がある場合でなければできない(地方自治法232条の2)。そもそも,地方公共団体が寄付金や補助金を交付するのに公益上の必要がなければならないとされているのは,これが当該地方公共団体の住民らが納付した税金から交付される以上,納税者全体の利益に帰するような形で支出されなければならないためである。 したがって,ある公金の支出が公益上必要がある場合といえるかどうかの判断にあたっては,①当該公金支出の目的が当該普通地方公共団体にとっていかなる公益,すなわち当該地方公共団体の住民の利益に向けられたものであるか,②その支出によっていかなる効果がどの程度挙げられ,③その効果の内容及び程度が公金を支出するほど望ま 地方公共団体にとっていかなる公益,すなわち当該地方公共団体の住民の利益に向けられたものであるか,②その支出によっていかなる効果がどの程度挙げられ,③その効果の内容及び程度が公金を支出するほど望ましいものであるか,という観点から検討を行うべきである。 本件においては,次のとおり,本件負担金は,γ病院の開設を妨害するという違法な目的を有しているから,そもそも公金支出の目的が住民の利益に向けられているとはいえないし,仮に,そうでないとしても,上記①ないし③の観点から見て公益上必要がある場合とはいえない。 ア γ病院の開設を妨害する目的の有無について(ア) 八代保健医療圏においては,過去何年間も病院開設の動きがなかったのに,平成7年11月ころCの病院開設計画が公になるや,わずか数日の間に,郡医師会や市医師会が病院開設計画書を提出した。そして,郡医師会が中心となって,γ病院建設に対する執拗なまでの反対活動が行われていたこと,市医師会も徳洲会病院建設進出に反対する要望書を提出するなどしていること,市医師会と郡医師会の希望病床数の合計病床が,当時の不足病床数をほぼ埋める形の病床計画が立てられていること等に照らせば,両医師会の病院開設計画がγ病院の開設を妨害するためのものであることは明らかである。 (イ) 郡医師会立病院の当初の開設予定地が病院開設に適さない崖地であったことや,計画段階において資金調達の予定が全く立っていなかったため,ふるさと融資制度による貸付に頼らざるを得なかったことからしても,郡医師会の病院開設計画は,以前から存在したとは考えられない。また,市医師会や郡医師会は,Cが平成9年4月15日付けでγ病院の開設許可申請書を郵送提出した後になって,あわててそれぞれ病院開設許可申請書を提出しており,このこと自体,両医師会の病院開設計画がγ病 た,市医師会や郡医師会は,Cが平成9年4月15日付けでγ病院の開設許可申請書を郵送提出した後になって,あわててそれぞれ病院開設許可申請書を提出しており,このこと自体,両医師会の病院開設計画がγ病院の開設を妨害する目的のもとに急きょ行われたものであることを表している。 (ウ) 熊本県の担当部も,次のとおりこれに関与している。すなわち,救急医療を中心とする徳洲会系のγ病院の開設計画が明らかになるや,γ病院の開設を阻止したい郡医師会は,救急医療体制が整っているという外形を調えるために,郡医師会所属の医師が経営する6医療機関に救急医療機関指定の申請を行わせたが,熊本県は,病院でない診療所が救急医療機関として認定されるのは異常であるにもかかわらず,平成8年5月1日,上記医療機関を救急医療機関として認定告示した(上記認定告示は形だけのものであったが,これを踏まえて,同年7月24日に開催された第2回八代地域保健医療推進協議会において,「八代郡の救急医療体制はさらに充実している。」旨発表されている。)。そして,熊本県の担当部は,Cが病院開設許可申請書を提出する前に,γ病院の開設中止を求める書面をC宛に送付したり,C,市医師会及び郡医師会の病院開設許可申請が出揃った後,不足病床数を超える許可申請がされた場合には,まず病床調整を行うのが通常であるにもかかわらず,病床の調整を全く行わなかったことから見ても,熊本県の担当部が,これに深く関与していることは明らかである。 (エ) ところで,Cに対し知事の中止勧告がされたにもかかわず,γ病院開設に向けた運動がなおも進められていたことから,郡医師会及び熊本県は,現実に病院を開設しなければγ病院の開設を阻止できないと気づき,郡医師会立病院の開設予定地を変更し,それが地元住民らの要望に基づくものであることを装うために, れていたことから,郡医師会及び熊本県は,現実に病院を開設しなければγ病院の開設を阻止できないと気づき,郡医師会立病院の開設予定地を変更し,それが地元住民らの要望に基づくものであることを装うために,町村会を通じて八代郡内の町村長を県庁に呼び出し,場所変更の要望書に署名させた。そして,郡医師会は,病院を建設するため,八代郡内の各町村に資金援助を求めて,ふるさと融資制度を利用することとなり,宮原町が郡医師会に対する融資の原資を地方債により肥後銀行から借り入れ調達したが,この起債を熊本県が許可している。 (オ) 以上によれば,γ病院の開設を阻止したい郡医師会が,熊本県と結託し,貸付制度を悪用してまで郡医師会立病院の建設を遂行しようとしたことは明らかである。そして,この一連の流れの中で,宮原町の負担する利子の25パーセントを八代郡内の各町村で負担することになったものであって,本件負担金制度も,郡医師会の要望に基づき,熊本県主導のもと,γ病院の開設を妨害するために導入されたことは明らかである。 (カ) したがって,このような意図のもとに導入された本件負担金は,地方公共団体の利益に向けられたものとはいえず,公益上必要がある場合にあたらないことは明白であって,本件負担金の支出は違法である。 イ公益上の必要性の有無について(ア) 平成7年当時の熊本県八代郡部における救急医療体制は極めて不十分であり,地域住民としては救急医療を中心とした病院の開設を望んでいた。 ところが,現実には,療養型の病院である郡医師会立病院が熊本県から開設を許可され,その後,郡医師会からの資金援助の要請を受けるや,平成10年4月16日に開催された八代郡町村長会議において,本件負担金が了承されたが,八代郡町村長会議のメンバーであった宮原町長や鏡町長らは,八代郡部の救急医療体制が不 の資金援助の要請を受けるや,平成10年4月16日に開催された八代郡町村長会議において,本件負担金が了承されたが,八代郡町村長会議のメンバーであった宮原町長や鏡町長らは,八代郡部の救急医療体制が不十分であるとの認識を有しつつ,ただ郡医師会に日頃からお世話になっているという理由だけで,本件負担金を了承したものである。同じく病院開設を申請していたγ病院は,自己資金で建設することになっていたのであるから,本件負担金のような支出をしなくても,救急医療を中心とする病院の開設実現の可能性があったにもかかわらず,それとの比較検討をすることすらなく,本件負担金を了承し,さらに,鏡町では,本件負担金をそのまま予算に計上したものである。 (イ) そうすると,本件負担金は,単に長年,郡医師会にお世話になってきたからということで導入されており,救急医療体制の充実を望む住民の意向は完全に無視されている。また,公金を支出する以上,公益上必要な場合にあたるか否かや,地方財政法4条の5に関する問題点などを検討すべきであったのに,そういった議論をすることなく,郡医師会からの資金援助要請をほぼ無条件で了承してしまっている。これでは,少なくとも客観的に見て,本件負担金の支出の目的が鏡町の住民の利益に向けられているとは評価できず,前記①の要件を満たしていない。 (ウ) 本件負担金が支出されることによって挙げられる直接的な効果は,宮原町の肥後銀行への借入金の利子負担が軽減されるということであるが,鏡町の住民にとって,町の公金を支出してまで宮原町の負担を軽減させることに意味はない。 病院開設の申請が競合していた時期,鏡町の住民の圧倒的多数は,γ病院の開設を望んでいた。そして,同病院は,自主財源によって建設されることになっていたので,鏡町としては何らの負担なくして同町に病院建設が実現 設の申請が競合していた時期,鏡町の住民の圧倒的多数は,γ病院の開設を望んでいた。そして,同病院は,自主財源によって建設されることになっていたので,鏡町としては何らの負担なくして同町に病院建設が実現することになっていたのである。そのようなγ病院の開設が困難になった挙げ句,宮原町の利子負担を軽減させることが鏡町の住民の利益につながらないことは明らかである。 さらに,本件負担金を支出することは,間接的に郡医師会を援助していることになるが,鏡町が公金を支出してまで,郡医師会を援助することに何ら合理的理由は見出せない。実際にも,郡医師会立病院がオープンしたが,周辺住民のニーズには応えきれていないというのが地元のほぼ共通した認識となっており,同病院の経営母体である郡医師会に対して,間接的ながらも援助をすることによって,鏡町の住民全体の福祉向上という効果を挙げることはできない。 したがって,本件負担金制度は,直接的にも間接的にも公金を支出してまで望むような内容と程度の効果が得られないものであって,前記②,③の観点から考えても,公益上必要がある場合とはいえない。 (エ) そうすると,仮に,本件負担金に,γ病院の開設を妨害しようとする違法な目的までは認められないとしても,本件負担金の支出には,公益上の必要性が認められないから,地方自治法232条の2に違反している。 (被告らの主張)地方公共団体が行う寄付金の支出に公益上の必要性があるか否かは,まず長及び議会により認定されるべきものである。そして,本件負担金の支出は,町長が町議会の議決を経てそれぞれ執行したものであり,しかも,次のとおり,γ病院の開設を妨害する目的はない上,公益上必要な場合に当たるから,適法である。 ア γ病院の開設を妨害する目的の有無について原告らは,本件負担金は,γ病院の開設を妨害 であり,しかも,次のとおり,γ病院の開設を妨害する目的はない上,公益上必要な場合に当たるから,適法である。 ア γ病院の開設を妨害する目的の有無について原告らは,本件負担金は,γ病院の開設を妨害するという違法な目的を有している旨主張するが,本件負担金は,郡医師会立病院の開設に賛同する八代郡町村長の総意によって決定されたものであり,γ病院の開設を妨害するという意図の下に決定されたものではないから,原告らの上記主張は理由がない。 イ公益上の必要性の有無について原告らは,仮に,本件負担金に違法な目的までは認められないとしても,本件負担金の支出には,公益上の必要性が認められず,地方自治法232条の2に違反している旨主張する。 (ア) しかしながら,上記前提となる事実(3)ア,イ,エ記載のとおり,宮原町は,地方債により肥後銀行から2億4200万円の借入れを行って融資の原資を調達し,これを郡医師会に対し,郡医師会立病院建設工事事業のために地域総合整備資金(ふるさと融資)として無利子で貸し渡し,上記借入金の利子については,その75パーセントが地方交付税により宮原町に補填され,残余25パーセントにつき八代郡内の町村が一定の基準に基づき負担することとなり,鏡町もこれにより本件負担金を支出したものである。 ところで,上記ふるさと融資は,政府が採用した施策である地域総合整備資金貸付制度に基づき,ふるさと財団における総合的な調査,検討の結果に基づき決定されるものであるから,融資対象事業は地域振興に資する民間活動等で,公益性があることが認められているのである。 そして,宮原町が,地方債により肥後銀行から借り入れるに際しては,熊本県から地方債の起債について許可を受けているが,公益上の必要性があるからこそ起債の許可がされたものであり,また,上記借入金の利子 そして,宮原町が,地方債により肥後銀行から借り入れるに際しては,熊本県から地方債の起債について許可を受けているが,公益上の必要性があるからこそ起債の許可がされたものであり,また,上記借入金の利子の75パーセントが地方交付税により補填されるのは,利子の支払について公益性が認められているからにほかならない。したがって,本件負担金に係る残余の利子の負担についても等しく公益性が認められるべきである。 (イ) ところで,熊本県地域医療計画による八代保健医療圏は,65歳以上の高齢者率が熊本県内の平均を上回り,全国平均よりも10年以上早い高齢化社会の到来が予想されていた。 そこで,熊本県保健医療計画による八代保健医療圏においては,高齢者に対応する医療供給体制の整備が急務とされたために,入院医療環境を充実すべく療養型病床群の整備促進が目標とされ,また,八代郡内においては,病院(医療法1条の2第1項)が皆無であり,高度の医療サービスを受けられない住民の不安は大きく,診断体制の整備,充実のために八代郡内に病院を開設すべき公益上の必要性が存した。そのような状況の時に,郡医師会が郡医師会立病院を建設することとなったのであり,公益に適うものである。 そして,郡医師会立病院は,療養型病床60床及び一般病床20床の合計80床の病院であり,老人医療,地域医療,救急医療を担い,休祭日,夜間を問わず24時間の診療体制をとるものであって,不足する病床数を十分に補うものであったばかりでなく,夜間や救急時に速やかな対応が可能であるという安心感を住民に与えるものである。実際にも,郡医師会立病院における鏡町住民の外来,入院患者数は,いずれも八代郡内において最も多く,しかもいずれも著しい増加傾向にあり,同病院の地域医療における貢献は,明らかである。 (ウ) さらに,郡医師会は, 医師会立病院における鏡町住民の外来,入院患者数は,いずれも八代郡内において最も多く,しかもいずれも著しい増加傾向にあり,同病院の地域医療における貢献は,明らかである。 (ウ) さらに,郡医師会は,医道の高揚,医学及び医術の発達普及並びに公衆衛生の向上を図り,もって社会福祉を増進することを目的として設立された公益法人であり,事業の一環として八代郡内の地方公共団体,社会福祉法人(保育園等),医療機関と連携して,社会福祉の対象者を包括的にケアしていくための福祉事業などを行っている。郡医師会は,八代郡内町村に対し,乳幼児,高齢者の予防接種に対する協力や乳幼児健康診査に対する協力など,保健,医療,福祉の面で種々の協力をしており,今日までの郡医師会の貢献は大きく,今後も地域医療を充実させていくためには,地方公共団体(町村)と郡医師会双方が提携し協力することが重要不可欠である。 上記のような郡医師会の八代郡内の町村に対する各種の貢献にかんがみ,郡医師会立病院の新築工事を支援することは,郡医師会と八代郡内の町村との協力関係を深め,郡医師会の八代郡内町村に対する各種サービスや医療環境のさらなる向上のため有意義である。 (エ) 以上のとおり,本件ふるさと融資については,ふるさと財団における総合的な調査,検討の結果,公益性があると判断されて融資が実行されていることや,地方債の起債について熊本県の許可がされていること,借入金の利子の一部について地方交付税により補填されていることから見て,郡医師会立病院の開設に公益性があることは明らかであり,実際にも,同病院は,老人医療,地域医療,救急医療を担っており,鏡町住民の多くが同病院を利用しており,同病院の地域医療における貢献が明らかであるから,本件負担金の支出は公益上の必要性があるというべきである。 (3) 地方財 療,地域医療,救急医療を担っており,鏡町住民の多くが同病院を利用しており,同病院の地域医療における貢献が明らかであるから,本件負担金の支出は公益上の必要性があるというべきである。 (3) 地方財政法4条の5違反の有無(原告らの主張)ア地方財政法4条の5は,いわゆる割当的寄付金等を禁止している。これは,元来,寄付金は,自発的,任意的にされるべきものであるが,国,地方公共団体,住民の間において,しばしば寄付金の名目で,隠れた負担の強制的転嫁が行われており,これが財政秩序の混乱を招く重大な原因ともなるおそれがあることにかんがみて設けられた規定である。このような趣旨からすれば,同条は,寄付金等の「割り当て」自体を禁じているのであって,割り当てをしても強制的に徴収さえしなければよいというものではない。 イ平成10年4月16日に八代郡町村長会議において,各町村が郡医師会に対するふるさと融資制度による無利子貸付けを実現するために,宮原町が肥後銀行から借り入れた借入金の利子の25パーセントを八代郡の各町村が負担することとされ,その負担割合は,総利子の25パーセントの3割を各町村の均等割とし,残る7割を各町村の人口割とされた。これは,宮原町が八代郡内の他の町村に対して,それぞれの持分を分割して示したのにほかならないのであって,地方財政法4条の5が禁ずる「割り当て」に該当し,本件負担金の支出は,地方財政法4条の5に違反する。 (被告らの主張)郡医師会立病院の建設については,八代郡内の全町村がこれを支援することとしたものであるところ,その建設場所がβであったことから,宮原町が地方債の起債手続や地域総合整備資金としての貸付手続等の諸手続をとったものである。 したがって,宮原町が八代郡内の他の町村に対し,本件負担金の支払を求めたことは,そもそも「割 ったことから,宮原町が地方債の起債手続や地域総合整備資金としての貸付手続等の諸手続をとったものである。 したがって,宮原町が八代郡内の他の町村に対し,本件負担金の支払を求めたことは,そもそも「割り当てて強制的に徴収する」ことに該当するものではなく,本件負担金の支出は,地方財政法4条の5に違反しない。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 争点(1)(本件監査請求の適法性)について(1) 被告らは,住民監査請求は,住民本人の意思に基づき住民本人により行われることを要件とし,代理にはなじまないところ,本件監査請求は代理人が行っているから,不適法である旨主張する。 (2) 住民監査請求の制度は,普通地方公共団体の財政の腐敗防止を図り,住民全体の利益を確保する見地から,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について,その監査と予防,是正等の措置とを監査委員に請求する権能を住民に与えたものであって,住民訴訟の前置手続として,まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は当該怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とするものである。そのため,地方自治法は,このような趣旨から,住民監査請求をなし得る主体を当該地方公共団体の住民に限定している。 (3) しかし,同法上,代理人による住民監査請求を行うことができないとする定めは設けられていない。そして,住民監査請求が代理人の意思表示によって行われたものであったとしても,その請求権の行使が当該地方公共団体の住民である本人の意思に基づくものであることが手続上明確に確認できるのであれば,事柄の性質上,特段支障が生じるとは解されない。そうすると, たものであったとしても,その請求権の行使が当該地方公共団体の住民である本人の意思に基づくものであることが手続上明確に確認できるのであれば,事柄の性質上,特段支障が生じるとは解されない。そうすると,住民監査請求については,民法の代理に関する規定が類推適用され,代理人による請求であっても適法な請求と評価するのが相当である。 (4) 以上によれば,被告らの上記主張は採用することができない。 そうすると,本件監査請求は適法であったというべきであるから,鏡町監査委員による却下決定にかかわらず,原告らの本訴請求は監査請求前置の要件を具備していると解される。そこで,以下,本件負担金の支出の適否につき検討することとする。 2 争点(2)(公益上の必要性の有無)について(1) 地方自治法232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる。」と規定しているところ,地方公共団体の長は,地方自治の本旨の理念に沿って,住民の福祉の増進を図るために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関として,住民の多様な意見及び利益を勘案し,寄付等の要否についての決定を行うものである。したがって,その決定は,事柄の性質上,諸般の事情を総合的に考慮した上での政策的判断を要するものであるから,公益上の必要性に関する判断に当たっては,寄付等の要否を決定する地方公共団体の長に一定の裁量権があるものと解されるが,当該地方公共団体の長による公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったと認められる場合には,当該寄付金等の交付は違法と評価されることになるものと解される。そして,地方公共団体の長の上記公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは,当該寄付金等の交付の目的, 場合には,当該寄付金等の交付は違法と評価されることになるものと解される。そして,地方公共団体の長の上記公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは,当該寄付金等の交付の目的,趣旨及び経緯,寄付等の対象となる事業の目的,性質及び状況,議会の対応等の諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要であると解される。 (2) γ病院の開設を妨害する目的の有無について原告らは,本件負担金はγ病院の開設を妨害する目的を有するものであるから,公益上必要な場合には当たらない旨主張する。 アなるほど,本件証拠(甲8の1・2,19,22,原告本人G)及び弁論の全趣旨によれば,八代保健医療圏においては,過去病院開設の動きがなかったのに,平成7年11月ころCの病院開設計画が公になるや,わずか数日の間に,郡医師会や市医師会が病院開設計画書を提出したこと,郡医師会は,徳洲会による病院建設に反対の意向を示し,鏡町議会議長らに対してもその旨の要望書を提出したこと及び熊本県医師会も,会長が熊本県知事に会って,「徳州会の病院の進出に反対する。」旨の要望書を提出したことが認められることからすれば,郡医師会がγ病院の開設計画に対抗して,その進出を阻止しようとする意図を有していた可能性は否定できない。 イしかしながら,鏡町を含む八代郡内町村が,徳洲会による病院進出を阻止する目的を有していたと認めるに足る的確な証拠はない。かえって,本件証拠(乙29ないし31,証人D,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,八代郡内町村では,かねてより徳洲会系の病院であれ,郡医師会立病院であれ,住民の医療に対するニーズに適う救急医療体制の整った総合病院の設置への要望があり,竜北町長,宮原町長らは,医療機関が地元に多く開設されれば,住民の医療の選択権が広くなるという考えか 会立病院であれ,住民の医療に対するニーズに適う救急医療体制の整った総合病院の設置への要望があり,竜北町長,宮原町長らは,医療機関が地元に多く開設されれば,住民の医療の選択権が広くなるという考えから,いずれの病院の開設にも賛成しており,γ病院の開設についても賛意を示していたこと,郡医師会立病院の開設許可後,郡医師会から,ふるさと融資制度の利用による財政支援の要請がされたため,八代郡内町村は,病院開設が住民の医療確保に資するものである上,郡医師会が各町村と従前から協力関係にある公共性の高い団体であり,これまで地域医療を支えてきており,今後も乳幼児から高齢者までの医療を確保するために協力が必要と考られ,しかも,宮原町などについては,同病院開設により,雇用の増加,地域の産業振興等が図られ,税収増等の財政的メリットも見込めることなどから,公益性があるものと判断して,ふるさと融資制度の利用による財政支援を決めたこと及びその際,熊本県担当部から八代郡内町村に対して,本件負担金についての働きかけはなかったことが認められる。 そうすると,たとえふるさと融資制度による郡医師会への貸付が,γ病院にとって不利に影響するとしても,そのことから直ちに本件負担金の支出がγ病院進出阻止という違法な目的によるものと評価することはできない。 ウ原告らは,熊本県の担当部署がγ病院の開設阻止に関与して,診療所を救急医療機関として認定したり,病床調整をしなかったり,場所変更の要望書に署名させたりした旨主張するけれども,上記各事実をもって,鏡町を含む八代郡内町村において,γ病院の開設阻止の違法目的があったことを裏付けるに足りる事情ということはできないから,上記認定を左右するものではない(なお,原告らは,郡医師会及び熊本県が,町村会を通じて八代郡内の町村長を呼び出し,郡医師会立 阻止の違法目的があったことを裏付けるに足りる事情ということはできないから,上記認定を左右するものではない(なお,原告らは,郡医師会及び熊本県が,町村会を通じて八代郡内の町村長を呼び出し,郡医師会立病院の建設場所変更の要望書に署名させた旨主張するが,本件証拠(乙22,29,30,証人D,証人E,証人F)によれば,八代郡内の町村長が,郡医師会に対し,ふるさと融資を利用して病院建設資金を貸し付けるに当たって,住民の利便性を考えると,病院建設予定地を交通の便が良い場所に変更するのが望ましいとの意向を示したところ,郡医師会から,八代郡内町村会から熊本県に対し働きかけて欲しいと要請されたこと,そこで,八代郡内町村長は,郡医師会立病院の建設場所変更の要望書を作成した上で,日程調整して,熊本県知事と面談して,提出するとともにその旨直接陳情したことが認められるから,上記主張は採用できない。)。 エしたがって,本件負担金はγ病院の開設を妨害する目的を有する旨の原告らの主張は採用できない。 (3) 本件負担金の公益上の必要性の有無について原告らは,仮に,本件負担金にγ病院の開設を妨害しようとする違法な目的が認められないとしても,本件負担金の支出には,公益上の必要性が認められない旨主張する。 アなるほど,本件証拠(甲7,14,15,17ないし19,37の3・5,41,乙29)によれば,鏡町を含む八代郡内町村において,地元住民の間には救急医療体制を備えた総合病院に対する需要があったこと,鏡町議会においてγ病院の誘致を求める請願が全会一致で採択されたことが認められる。 しかしながら,他方,本件証拠(甲40,44,45,乙24,25,31,証人E,証人D)によれば,八代保健医療圏は,65歳以上の高齢者率が熊本県内の平均を上回り,全国平均よりも10年以上早く高 。 しかしながら,他方,本件証拠(甲40,44,45,乙24,25,31,証人E,証人D)によれば,八代保健医療圏は,65歳以上の高齢者率が熊本県内の平均を上回り,全国平均よりも10年以上早く高齢化社会が到来することが予想されて,高齢化が急速に進んでいる状況にあり,高齢化社会に備えた社会基盤(医療体制)を整備する必要性があったこと,平成12年度から介護保険法が施行され,施設介護サービスを行う介護療養型医療施設の需要が高まる状況にあったこと,上記のとおり,地元住民の間には救急医療体制を備えた総合病院に対する需要があったところ,郡医師会立病院は,診療科目が内科や外科で,一般病床20床を有しており,緊急医療にも対応可能であること(実際にも,同病院の病床は,療養型60床,一般型20床であるところ,開設後の入院患者の多くが70歳以上であり,平成14年度について見ると,70歳代が26.7パーセント,80歳代が40.4パーセント,90歳代以上が11.1パーセントであって,所期の目的を達成しており,しかも,八代郡内では鏡町の住民が外来及び入院とも最も多く同病院を利用している。また,同病院は,開設後,時間外は当直体制,休日は日直体制で緊急患者に対応しており,時間外・深夜・休日・乳幼児時間外外来患者数は,平成12年度98.3人(1か月平均人数。以下同じ。)だったものが,平成13年度は152.4人,平成14年度172.8人と増加し,また,搬送救急患者数も,平成12年度6.7人(入院・外来を含む1か月平均人数。以下同じ。)だったものが,平成13年度は10.6人,平成14年度11.3人と増加している。),平成8年5月ころ開催の鏡町議会において,徳州会系病院誘致推進特別委員会の設置が提案されたが,前記前提となる事実(2)イ記載のとおり,平成8年1月10日開催 成14年度11.3人と増加している。),平成8年5月ころ開催の鏡町議会において,徳州会系病院誘致推進特別委員会の設置が提案されたが,前記前提となる事実(2)イ記載のとおり,平成8年1月10日開催の八代地域保健医療推進協議会において,「八代保健医療圏では療養型病院の設置が望ましい。」という意見が出されていたことなどから,上記提案は否決されたこと,及び,80床の病床を有する郡医師会立病院の開設は,βなどの町村の地域経済活性化にも寄与していることが認められる。 上記認定事実によれば,本件負担金の対象事業は,療養型病院(ただし,一般病床も含む。)である郡医師会立病院の設置であって,鏡町を含む八代郡内の各町村の住民の健康,医療,介護や福祉の増進に資するものであり,高齢化社会に対応しており,また,救急医療体制の充実を望む住民の意向にも沿ったものであるから,本件負担金支出の目的は,公益性があるものと評価することができる。そして,上記(2)イ認定のとおり,本件負担金が,これまで地域住民の健康保健の確保に寄与していた公益法人である郡医師会の要請に基づくものである上,前記前提となる事実(3)オ記載のとおり本件負担金の支出につき鏡町議会の議決を経ていることも考慮すれば,鏡町が,宮原町に対して本件負担金を支出し,これにより間接的に郡医師会立病院の新築工事に対する援助を行うことには公益上の必要性があるというべきである。したがって,本件負担金の支出につき公益上の必要があると判断した被告鏡町長の判断に裁量権の逸脱や濫用があるとは認め難いといわねばならない。 イこれに対し,原告らは,①αにγ病院が自主財源により建設されることになっていたのに,同病院の開設を困難にした上,宮原町の利子返済負担を軽減させる本件負担金は,鏡町住民の利益につながらない,②本件負担金は間接 し,原告らは,①αにγ病院が自主財源により建設されることになっていたのに,同病院の開設を困難にした上,宮原町の利子返済負担を軽減させる本件負担金は,鏡町住民の利益につながらない,②本件負担金は間接的に郡医師会を援助するものであるが,鏡町が公金を支出して郡医師会を援助することに合理的理由がない,③郡医師会立病院は,救急医療を中心とする鏡町住民のニーズに応えられておらず,本件負担金により鏡町の住民全体の福祉向上という効果を挙げることはできないなどとも主張する。 しかしながら,本件負担金の支出について公益上の必要があることは上記アのとおりである。寄付金の交付について,上記(1)記載のとおり地方自治体の長に一定の裁量権が認められることからすれば,たとえ救急医療体制を完備した病院を自主財源により開設する計画が他に存在したとしても,高齢化社会への対応を迫られる中で,老人医療を担う療養型病院の開設を支援するために本件負担金を交付することや,実質的な財政援助の相手方である郡医師会が,各町村と従前から協力関係にある公共性の高い団体であり,今後も医療を確保するためにその協力が必要と判断して,本件負担金を交付することとしたことが,地方自治体の長に委ねられた裁量権の逸脱,濫用に当たるとは解されない。したがって,いずれも,郡医師会立病院設置に係る公益性を否定するに足る事情とは解されないから,原告らの上記主張は採用できない。 ウ以上によれば,本件負担金の支出は,公益上必要な場合に当たるから,上記支出は適法である。 3 争点(3)(地方財政法4条の5違反の有無)について(1) 地方財政法4条の5にいう「寄付金を割り当てて強制的に徴収する行為」とは,地方公共団体がその権力関係又は公権力を利用して,強制的に寄付の意思表示をさせて,これを収納する行為をいうと解される (1) 地方財政法4条の5にいう「寄付金を割り当てて強制的に徴収する行為」とは,地方公共団体がその権力関係又は公権力を利用して,強制的に寄付の意思表示をさせて,これを収納する行為をいうと解される。 (2) ところで,前記前提となる事実(3)イ記載のとおり,平成10年4月16日に開かれた八代郡町村長会議で,八代郡内の各町村において八代郡医師会立病院の建設を支援し,同病院の建設に係る金融機関からの融資に対する利子の内25パーセントを補給することが合意され,各町村の負担金については,その内3割を各町村が4.3パーセントずつ均等割で負担し,その余を人口割で負担することが合意されたところ,本件証拠(甲2,証人D,証人E)によれば,宮原町担当者は,各種団体への財政支援を参考に均等割と人口割を考慮して各町村の負担する負担金の具体的額を算定して素案を提示したこと,各町村長は,前記記載のとおり郡医師会立病院の建設を財政的に支援することは公益上の必要性があると考えて納得していたため,さしたる議論もなく,上記負担を自ら受け入れたこと及び上記合意に基づいて,鏡町議会が本件負担金の受け入れを決議して,予算計上したことが認められる。 そうすると,宮原町が鏡町に対して,公権力等を利用して強制的に寄付の意思表示をさせて,これを収納したと認め難いというべきである。 (3) 原告らは,地方財政法4条の5は寄付金等の「割り当て」自体を禁じているのであって,割り当てをしても強制的に徴収さえしなければよいというものではない旨主張する。 しかし,地方財政法4条の5は,地方公共団体がその権力関係又は公権力を利用することにより,本来任意的にされるべき寄付を強制し,財政秩序を混乱させることを防ぐための規定であると解され,「割り当て」は強制的徴収の手段ないしそれを推認させる事情とい の権力関係又は公権力を利用することにより,本来任意的にされるべき寄付を強制し,財政秩序を混乱させることを防ぐための規定であると解され,「割り当て」は強制的徴収の手段ないしそれを推認させる事情というに過ぎない。ところが,上記認定のとおり宮原町担当者が各町村の負担する負担金の素案を提示したとしても,上記説示のとおり本件負担金の支出については,寄付を強制されたものではないから,原告らの主張を採用することはできない。 (4) したがって,本件負担金の支出が地方財政法4条の5に違反するとの原告らの主張は採用できない。 第4 結論以上の次第で,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部裁判長裁判官永松健幹裁判官堀部亮一裁判官古玉正紀
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