令和6(ネ)10010 損害賠償請求控訴事件(特許権侵害)

裁判年月日・裁判所
令和6年8月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和3(ワ)18262
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令和6年8月29日判決言渡令和6年(ネ)第10010号損害賠償請求控訴事件(特許権侵害)(原審東京地方裁判所令和3年(ワ)第18262号)口頭弁論終結日令和6年6月25日判決 控訴人株式会社FLORe 同訴訟代理人弁護士渡 邉 遼太郎同補佐人弁理士鬼頭優希 被控訴人株式会社MIC 同訴訟代理人弁護士三原研自同 中村智廣 同訴訟代理人弁理士青谷一雄 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。 2 前項の取消しに係る部分につき被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は、発明の名称を「女性用衣料」とする特許第3996406号(以下 「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する被控訴人が、控訴人による原判決別紙物件目録記載の製品(以下「控訴人製品」という。)の販売行為は本件特許権を侵害すると主張して、控訴人に対し、特許権侵害の不法行為に基づき、損害金5328万1800円(特許法102条3項により算定される損害額並びに弁護士及び弁理士費用相当額の合計)及びこ れに対する不法行為後の日である令和3年9月4日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人の請求について、特許法102条3項の損害額として705万4587円並びに 達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人の請求について、特許法102条3項の損害額として705万4587円並びに弁護士及び弁理士費用相当額70万5459円の合計 776万0046円及びこれに対する令和3年9月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払の限度で認容し、その余を棄却したところ、控訴人が敗訴部分の取消しを求めて本件控訴を提起した。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記3及び4のとおり、当審における控訴人の主な補充主張(構成要件充足性及び損害額に関し)並び に当審における控訴人の新たな無効理由の主張及びこれに対する被控訴人の主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の2、3及び第3(原判決2頁15行目から25頁10行目)に記載のとおりであるから、これを引用する(以下、引用する原判決中の「別紙」は「原判決別紙」と、「被告製品」は「控訴人製品」と読み替える。その他、原審で用いられた略語は、当審でも そのまま用いる。)。 3 当審における控訴人の主な補充主張(構成要件充足性及び損害額に関し)⑴ 控訴人製品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)についてア本件発明の構成要件Dは「左右の前身頃部材を・・・連結するとともに、・・・連結幅を調整可能に設けられた」とするところ、原判決は、「本件明細書に おいて『連結部材』として具体的例示されているものは、いずれも連結部 材同士の連結を解除しなければ、その連結幅を調節できない」(35頁17行目ないし19行目)とした。 しかし、構成要件Dは、その前段の「左右の前身頃部材を互いに連結すること」と、後段の「連結幅を調節可能に設 連結を解除しなければ、その連結幅を調節できない」(35頁17行目ないし19行目)とした。 しかし、構成要件Dは、その前段の「左右の前身頃部材を互いに連結すること」と、後段の「連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材」を、「ともに」の語句により繋げて記載していることは、文言上明らかである。 このような記載からごく自然に構成要件Dを解釈すると、構成要件Dの「複数の連結部材」とは、「左右の前身頃部材を互いに連結する」状態を維持しながら「連結幅を調節可能」とするものである。 本件発明の構成要件Dの複数の連結部材とは、本件明細書の図9に示される複数の連結部材27であり、フックとアイの組み合わせが開示されて いる。これについて、例えば、複数の連結部材の中からいくつかのフックとアイを用いて垂直方向に列を揃えて係合させるほか、異なる列での係合を実現することができる。 本件発明の構成要件Dの複数の連結部材は、縦方向の列により連結部材(複数の列状のフックとアイ)を係合(連結)させるとともに、縦方向の 列を超えて隣の列のフックとアイの係合(連結)も許容する自由度の高い調整を実現可能とする構造を備える。 本件発明の女性用衣類を着る、脱ぐ、調節する各場面を想定すると、連結部材(複数の列状のフックとアイ)について、フックとアイの係合(連結)を「ひとつずつ」係合(連結)したり解除したりすることとなる。つ まり、本件発明の女性用衣類を着る、脱ぐ、調節する場合、どこかの連結部材(複数フックとアイ)の係合(連結)を解除しても、別の連結部材(複数フックとアイ)は係合(連結)を維持しており、連結部材の連結が続いていることが意図されている。その認識ゆえに、本件発明の構成要件Dでは「・・・とともに、・・・」の文言が用いられている。 そ フックとアイ)は係合(連結)を維持しており、連結部材の連結が続いていることが意図されている。その認識ゆえに、本件発明の構成要件Dでは「・・・とともに、・・・」の文言が用いられている。 そうすると、構成要件Dの「ともに」は、「左右の前身頃部材を互いに連 結すること」の状態を維持しながら「連結幅を調節可能」であることを意味するとするのが、本件発明の技術に即した解釈であり、妥当である。 ところが原判決は、辞書が「語句の意味をどのようなものから優先的に記述するかは、・・・広く一般に用いられる意味から記載するとの編纂方針が採用されていることを認めるに足りる証拠はない。」(35頁13行目な いし16行目)とし、本件発明において特徴となる構成要件Dの技術的な把握、文言解釈を放棄している。 控訴人製品のフックとアイは横方向に一列あるのみであるから、控訴人製品のフックとアイでは「左右の前身頃部材を互いに連結すること」の状態を維持しながら「連結幅を調節可能」とすることができない。 控訴人製品におけるフックとアイの配置の構成によると、フックとアイの組み合わせで位置を調整する場合、絶えずフックとアイを係合(連結)させることと、フックとアイの係合(連結)を解除させることを繰り返さなければならない。換言すると、控訴人製品にあっては、フックとアイは、「連結」の状態と「非連結」の状態を繰り返す混在状態とならざるを得な い。 そうすると、控訴人製品は、本件発明の構成要件Dの前段部分の「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する」を充足しているとしても、控訴人製品の連結部材では、構成要件Dの後段部分の「当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能」を同時に充足することはできな い。 控訴人製品の連結部材となる 連結する」を充足しているとしても、控訴人製品の連結部材では、構成要件Dの後段部分の「当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能」を同時に充足することはできな い。 控訴人製品の連結部材となるフックとアイの配置では、本件発明の構成要件Dとして規定する複数の連結部材としての作用、効果、性能を発揮し得ない。 控訴人製品は本件発明の構成要件Dを充足するとの原判決の認定は誤り である。 イ原判決は「この『フックとアイからなる』連結部材によって調節可能となっている連結幅は、一つのフックに対して、胴体水平方向に間隔を置いて配置された二つのアイのいずれかを選択するかによって定まるものであるから、胴体水平方向の連結幅であると理解できる。・・・以上によれば、『左右の前身頃部材の連結幅』とは、胴体水平方向における右の前身頃部 材と左の前身頃部材の連結部分の幅、すなわち両部材の重なり量と解するのが相当である。」(36頁6行目ないし18行目)とした。 ここで、「連結幅」の「幅(はば)」の語句の意味は、「物の横方向の、一端から他の端までの距離。横のひろさ。また、細長く続くものの、両側を直角に切る長さ。」とされている(乙34(広辞苑第六版))。すなわち、「幅 (はば)」とは、端から端までの途切れることのない連続した関係が成立している状態において成り立つ言葉であり、一般的な概念として、「幅(はば)」の意味には端から端までの連続した関係が備わっていることが明らかである。本件発明の構成要件Dでは、そこに「連結」が結び付けられている。 それゆえ、連結幅とは、絶えず連結が続いている状態における端から端ま での長さであるということができる。 ところが、控訴人製品におけるフックとアイの配置の構成では、フックとアイの組み合わせで位置 ゆえ、連結幅とは、絶えず連結が続いている状態における端から端ま での長さであるということができる。 ところが、控訴人製品におけるフックとアイの配置の構成では、フックとアイの組み合わせで位置を調整する場合、絶えずフックとアイを係合(連結)させることと、そのフックとアイの係合(連結)を解除させることが繰り返され、「連結」の状態と「非連結」の状態の混在状態となる。控 訴人製品では、「連結」の状態は維持されることはなく、常に一定の連結幅が存在しているものではない。このため、控訴人製品においては、絶えず連結が続いている状態は形成されず、本件発明における連結幅に対応する構成は認められない。 控訴人製品では、右の前身頃部材と左の前身頃部材の連結部分の両部材 の重なり量があるときとないときがあり、一様ではなく、控訴人製品は、 構成要件Dにおいて「ともに」を採用し、双方の構成を一体化させている本件発明と同一視されるべきではなく、また、本件発明における連結幅と控訴人製品との相違から、本件発明の構成に控訴人製品を当てはめることには無理がある。 したがって、控訴人製品は本件発明の構成要件Dを充足するとの原判決 の認定は誤りである。 ウ原判決は「左右の前身頃部材により挟まれたV字状の部分において、全開のV字、半開のY字とするというのは、3対あるフック及びアイの係合数を1対のみとして、残りの2対のフック及びアイを係合せずに使用する(全開のV字)、フック及びアイの係合数を2対として、残りの1対のフッ ク及びアイを係合せずに使用する(半開のY字)ということとなるが、このような方法で本件発明の女性用衣料を使用することに合理性は認めがたく、不自然な使用方法であるといわざるを得ない。・・・連結幅を調節可能にするように複数段の する(半開のY字)ということとなるが、このような方法で本件発明の女性用衣料を使用することに合理性は認めがたく、不自然な使用方法であるといわざるを得ない。・・・連結幅を調節可能にするように複数段のファスナーが設けられているにもかかわらず、敢えてファスナーを半開きの状態で使用することは想定しがたい。そうすると、 『左右の前身頃部材の連結幅』を、左右の前身頃部材の胴体垂直方向における接合量と解することは、本件明細書の記載と整合するものとはいえない。」(37頁8行目ないし19行目)とした。 当該認定において、「全開のV字」、「半開のY字」は単にあり得ないとしているものの、着用者の体形、体格、胸部の大きさ等如何によっては、締 め付け具合を変更すること、また、着用者自身にとって丁度よい締め付け具合とすることは、商品購入後に試行錯誤して、見出すことは容易に想到される。 なぜならば、既製品の衣類を購入して着用する際、常に着用者自身の体形に衣類が一致しているとは限らず、着用時の微細な違和感を調整するこ とは常套である。特に、女性の胸部の形状を鑑みると、凹凸が複雑であり、 既製品の衣類と自身の体形、体格との違和感が生じやすい。そうすると、本件発明のとおり、複数あるフックとアイは、むしろ多用な組み合わせ方を実現するための好機としてとらえられる。 ここで、「左右の前身頃部材の連結幅」を両部材の重なり量と解してしまうと、上記着用時の着こなし方が没却されることを、原判決は見落として いる。本件発明の構成要件Dの前段部分の「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する」と、同構成要件Dの後段部分の「当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能」は、「ともに」により結びつけられており、本件発明の構成要件Dの両方の構成を 身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する」と、同構成要件Dの後段部分の「当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能」は、「ともに」により結びつけられており、本件発明の構成要件Dの両方の構成を充足させようとすると、胴体垂直方向における接合量と解することは、自然である。 既に説明したとおり、「連結幅」の「幅」は、端から端までの連続した関係が要求され、「連結幅」とあることから、連結している部分の片方の端からもう片方の端を繋ぐ長さが自然に導き出される。そうすると、胴体垂直方向における接合量とすることに合理的な意味があり、本件明細書の図面(図4)はその内容に合致した作図となっている。 本件明細書の段落【0038】とこれに関連して原判決の示す帽子の後ろ側の原判決別紙ワンタッチ具写真目録は、連結部材の構成の例示としての位置付けに過ぎない。本件明細書の図面を参酌しても、帽子の後ろ側のワンタッチ具に対応する構成を適応し得る構造が見出されない。むしろ、原判決における帽子の後ろ側の原判決別紙ワンタッチ具写真目録の提示 とその説明は、出願人が特許出願時に意図していない内容へ、特許出願後に権利解釈の拡張を図る行為(後出し)であり、看過されるべきものではない。 控訴人製品が本件発明の構成要件Dを充足するとの原判決の認定は誤りである。 ⑵ 被控訴人に生じた損害の有無及びその額(争点3)について 原判決は、控訴人製品の売上高を1億1757万6451円と認定した上、特許権侵害をした者に対して事後的に定められる本件発明の実施に対し受けるべき料率を6パーセントと認定し、弁護士費用を含め、合計776万0046円の損害額を認定した。 上記損害額に関する原判決の認定は、本件発明の実施に対し受けるべき料 率の認定及びこれ 対し受けるべき料率を6パーセントと認定し、弁護士費用を含め、合計776万0046円の損害額を認定した。 上記損害額に関する原判決の認定は、本件発明の実施に対し受けるべき料 率の認定及びこれを踏まえた損害額の認定を誤るものである。原審でも主張したとおり、「ロイヤルティ料率データハンドブック」によれば、ブラジャーが属する技術分類である「繊維、製紙」の実施料率の平均値は3.5パーセントであるから(乙28)、本件発明の実施に対し受けるべき料率は3.5パーセントと認定されるべきである。また、仮に、本件発明の実施に対し受け るべき料率が3.5パーセントと認められないとしても、原判決は、甲15ないし18を踏まえ、本件発明の実際の実施許諾契約における実施料率を5パーセントと認定した上で、諸事情を考慮し、特許権侵害をした者に対して事後的に定められる本件発明の実施に対し受けるべき料率を6パーセントと認定しているが、甲15、16、18の各特許権実施許諾契約は、各契約第 4条を踏まえれば、いずれも被控訴人が本件特許権を侵害している者との間で締結した契約と考えられるところ(なお、甲17の特許権実施許諾契約についても、第3条の標題が「将来の実施料」とされていることを踏まえると、同様に被控訴人が本件特許権を侵害している者との間で締結した契約であると考えられる。)、特許権侵害をした者に対して事後的に定められる本件発明 の実施に対し受けるべき料率は、最大でも5パーセントにとどまると考えられる。 そもそも、被控訴人の控訴人に対する損害賠償請求は認められるべきものではないが、仮に当該請求が認められるとしても、認定されるべき実施料率及びこれを踏まえた損害額はより低廉なものにとどまるため、原判決のこれ らに関する判断は誤っているといえる。 れるべきものではないが、仮に当該請求が認められるとしても、認定されるべき実施料率及びこれを踏まえた損害額はより低廉なものにとどまるため、原判決のこれ らに関する判断は誤っているといえる。 4 当審における控訴人の新たな無効理由の主張及びこれに対する被控訴人の主張〔控訴人の主張〕⑴ 控訴人は、本件発明に係る特許の無効理由となり得る新たな証拠を発見するに至ったので、当審においてこれを主張する。その無効理由は、下記⑵及 び⑶のとおりの本件発明に係る特許の新規性欠如及び進歩性欠如である。 当審において、原判決の無効理由(乙8文献を主引用文献とする認定)の判断については論じない。 ⑵ 乙31(米国特許第4,325,378号。公開日:昭和57年(1982年)4月20日。以下「乙31文献」という。)に基づく新規性欠如の無効 理由 ア乙31文献の記載乙31文献には、以下の記載がある。 「好ましい実施形態の詳細な説明運動やスポーツなどの身体活動に従事している女性が使用するための、 本発明による女性用スポーツ衣類を図1に示し、一般に数字10で指定する。現在好ましい実施形態では、この衣服は、ブラジャーの一般的な形態である。この衣服はインナーライナー11からなり、このインナーライナー11は、好ましくは、任意の柔らかい、滑らかな、または他の適切な生地から作られ、頭上に引き下げられるか、またはその前部に従来の取り外 し可能な接続手段23を有し、縫い目19に沿って背中で結合される。ライナー11には、従来のブラジャーの構造について当該技術分野で周知の方法で形成された乳房係合ポケット12を形成することができる。図2及び図3に最もよく見られるように、乳房係合ポケット12は、2つの乳房支持フラップ13及び1 ジャーの構造について当該技術分野で周知の方法で形成された乳房係合ポケット12を形成することができる。図2及び図3に最もよく見られるように、乳房係合ポケット12は、2つの乳房支持フラップ13及び14によってオーバーフィットされている。フラッ プ13及び14は、好ましくは、ライナー11の生地よりも重い及び/ま たは強い生地から作られる。現在好ましい実施形態では、フラップは、フラップ14の端部25にあるテーパー部20を、フラップ13の端部27に隣接して取り付けられたループ21に通すことによって、一緒に固定されるか、または相互接続される。テーパー部20がループ21を通ってさらに引っ張られ、または締め付けられ、それ自体の上に戻って取り付けら れると、内向きの圧力または圧縮力が生じ、図6に示されるように、乳房を胸に向かって、そしていくらか互いに向かって押し付ける。この締め付け作用が大きくなるにつれて、乳房の動きはより拘束されるようになる。 図2を参照すると、乳房支持フラップ13は、ポケット12の後方の点で、ステッチまたは他の適切な取り付け手段15によって、ライナー11に固 定することができる。フラップ14は、図5及び図6に示すように、フラップ13と同様の方法で固定してもよい。この実施形態では、ライナー11はショルダーストラップ16も備えている。図3に示すように、矢印30で指定される、フラップ13及び14を締め付けることによって生じる内向きの圧力または圧縮力は、乳房の重さによって及ぼされる下向きの圧 力による、矢印32で指定される、いかなる垂直方向の負荷からも独立している。したがって、フラップは有効であり、衣服は、従来ストラップレスブラジャーと呼ばれている形態であっても有効である。いずれの構造においても、乳房組織 定される、いかなる垂直方向の負荷からも独立している。したがって、フラップは有効であり、衣服は、従来ストラップレスブラジャーと呼ばれている形態であっても有効である。いずれの構造においても、乳房組織がたるんだり破れたりする危険性は実質的に排除される。 締め付けられたときにフラップ13及び14によって及ぼされる支持圧力にもかかわらず、ライナー11及びフラップ13及び14は、少なくとも乳房及び乳房係合ポケット12に隣接する領域において、互いに対して独立して変位可能である。ライナー11が、締め付けられた状態でもフラップ13及び14に対して相対的に動く能力は、そうでなければフラップ 13及び14によって完全に拘束されない乳房の動きによって生じる擦 れによる刺激から乳房を保護する。 弾性部材18は、胸部係合ポケットの下方に配置され、裏地11の底部に取り付けられていてもよい。この弾性部材は主に、ライナー11を身体に対して流線型に保つように機能する。弾性部材18はまた、乳房をわずかに支えることもできる。 フラップ14のテーパー部20がそれ自体の上に引き戻され、フラップ13及び14を締め付けるとき、面ファスナーのような解放可能かつ調節可能な留め具手段22が、フラップを固定するために使用される。フラップ13及び14の締め付けは、図1及び図5、特に図6に示されている。 緩みが生じると、解放可能で調節可能な留め具手段22は、着用者が運動 中であっても、締め付け圧力を容易に調節することを可能にする。さらに、この調節は、人前で、服を脱ぐ必要なく、乳房を露出することなく行うことができる。 ライナー11は、図3、図5及び図6に示すように、締め付け手段19を含んでいてもよく、これにより、衣服の従来の取り外し可能な接続が可 を脱ぐ必要なく、乳房を露出することなく行うことができる。 ライナー11は、図3、図5及び図6に示すように、締め付け手段19を含んでいてもよく、これにより、衣服の従来の取り外し可能な接続が可 能になる。代替案として、図2及び図4に示す実施形態で必要となるように、頭上で衣服を引き下げることによって裏地を身体に配置してもよい。 フラップ13及び14は、図1〜3、図5及び図6の場合のように、ライナー11の側面に取り付けられた別個のフラップ以外の形態をとってもよい。そのような別の実施形態が図4に示されている。図4において、 調節可能な乳房支持フラップは単一のバンド部材17の端部であり、このバンド部材17は適切な取り付け手段によってライナー11の背面に接続されている。そのような適切な又は取り付け手段は、縫い目19から構成されてもよく、又は縫い目19と一体的に形成されてもよい。この実施形態では、ライナー11は、例えば図2及び図6に示すように、接続手段 23にかかわらず、連続したバンドであってもよい。図示されていない更 なる実施形態では、単一のバンド部材17が利用されてもよく、ライナーは、連続的なバンド部材でなくてもよいが、接続手段15と同様の接続手段によって、衣服の側部に取り付けられ、衣服の前部上にのみ延在してもよい。 」イ上記記載によれば、乙31文献には、以下の発明(以下「乙31発明」という。)が記載されているといえる。 「構成A 少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、構成B 少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、構成C カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、構成D 左右 構成B 少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、構成C カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、構成D 左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する とともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた構成E ことを特徴とする女性用衣料。」ウ本件発明の構成要件への具体的なあてはめ(ア) 「構成A 少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、」及 び「構成E ことを特徴とする女性用衣料。」本件発明は女性用衣料である。乙31発明も女性用衣料であり、いずれも女性のバスト部を覆う女性用衣料である。 したがって、当該構成A及びEにおいて、乙31発明は本件発明と一致する。乙31発明には本件発明の構成要件A(「少なくとも女性のバス ト部を覆う女性用衣料において、」)及びE(「ことを特徴とする女性用衣料。」)が開示されている。 (イ) 「構成B 少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、」本件発明はカップ部材を備える(本件明細書の図4の符号22参照)。 乙31発明は、本件発明のカップ部材を、乳房係合ポケット12(原文 の「breastengagingpockets 12」)として開示する(乙31文献のFIG.2等の符号12参照)。 したがって、当該構成Bにおいて、乙31発明は本件発明と一致する。 乙31発明には本件発明の構成要件B(「前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、」)が開示されている。 (ウ) 「構成C カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配 置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、」本件発明 と、」)が開示されている。 (ウ) 「構成C カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配 置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、」本件発明の「左右の前身頃部材」は、本件明細書図4の符号26、26a(段落【0036】では符号26b、26b)の左右の上部パネルとして開示されている。 乙31発明において、本件発明の「左右の前身頃部材」に対応する部 材は、フラップ13及び14である(原文の「flaps 13 and 14」)。 乙31発明のフラップ13及び14は、カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置される。乙31発明のFIG.2、FIG.4 より、フラップ13及び14はカップ部材(乳房係合ポケット12)と分離していて、その表面側に配置されていることは自明である。乙31発 明のFIG.2、FIG.4 の符号12と13、14の位置が参照される。 乙31発明のフラップ13及び14は、バスト下部の中央部にかけて設けられる。乙31発明のFIG.2 より、乳房係合ポケット12とフラップ13及び14との位置関係から、フラップ13及び14はバスト下部の中央部にかけて設けられる。 乙31発明は、本件発明の「左右の前身頃部材」を、フラップ13及び14(原文の「flaps 13 and 14」)として開示する(乙31発明のFIG.2等の符号13、14参照)。 したがって、当該構成Cにおいて、乙31発明は本件発明と一致する。 乙31発明には本件発明の構成要件C(「前記カップ部材と分離した状態 で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、」)が開示されている。 分離した状態 で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、」)が開示されている。 (エ) 「構成D 左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた 複数の連結部材とを備えた」 本件発明の「複数の連結部材」は、本件明細書の図9の符号27等として開示されている。 乙31発明において、本件発明の「複数の連結部材」に対応する部材は、ループ21と調節可能な留め具手段22である(原文の「loop 21、adjustablefasteningmeans 22」)。 乙31発明の調節可能な留め具手段22は、左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する。乙31発明の調節可能な留め具手段22は、本件発明の「左右の前身頃部材」に対応するフラップ13及び14を、バスト下部の中央部近傍で互いに連結する。乙31発明のFIG.1、FIG.5、FIG.6 より、調節可能な留め具手段22の位置が参照さ れる。 乙31発明の調節可能な留め具手段22は、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材となる。乙31発明のFIG.1、FIG.5、FIG.6 より、左右の前身頃部材の連結幅が調節されていることは自明である。また、複数であることについて、乙31発明は、 調節可能な留め具手段22としてVELCROfastener を開示する。この「VELCROfastener」は面ファスナーを指し示すものとして知られており、複数のループと複数のフック(鉤)を備え、複数のループに複数のフックが相互に引っ掛かり固定される。 示する。この「VELCROfastener」は面ファスナーを指し示すものとして知られており、複数のループと複数のフック(鉤)を備え、複数のループに複数のフックが相互に引っ掛かり固定される。 それゆえ、乙31発明の調節可能な留め具手段22は、互いに係合し 合う部位を複数備えていることは自明である。 したがって、当該構成Dにおいて、乙31発明は本件発明と一致する。 乙31発明には本件発明の構成要件D(「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」)が開示され ている。 エ具体的なあてはめを踏まえた結論以上のとおり、乙31発明は、本件発明の構成要件の全てを開示する。 それゆえ、本件発明は、乙31文献に記載された発明であるから、特許を受けることができない。 ⑶ 乙31文献を主引用文献とする進歩性欠如の無効理由 ア進歩性欠如の無効理由仮に乙31文献によっては新規性欠如の無効理由が認められないとしても、乙31文献を主引用文献とし、副引用文献または周知技術として当審において提出する乙32、乙33及び原審で提出した乙8文献の適用により、本件特許に係る発明には進歩性欠如の無効理由が存する。 なお、乙8文献は、原審において提出した文献ではあるものの、引用する箇所は原審とは異なる。乙8文献は副引用文献(周知技術)の位置付けである。 イ文献の記載(ア) 乙32(米国特許第1,537,681号。公開日:大正14年(19 25年)5月12日。以下「乙32文献」という。)には、以下の記載がある。 「同様に、背面部材11には延長部18及び19が設けられ、延長部18にはストラップ20が、延長部19 14年(19 25年)5月12日。以下「乙32文献」という。)には、以下の記載がある。 「同様に、背面部材11には延長部18及び19が設けられ、延長部18にはストラップ20が、延長部19には同様のストラップ21が取り付けられ、これらのストラップは、着用者の身体に関連するフックアン ドアイまたは他の接続アタッチメントを有する。また、示されているように、前部及び後部部材は、肩の上に延びるように適合されたストラップ22及び23によって接続されている。」「Fig.1(図1) Fig.2(図2) 」(イ) 乙33(米国特許第1,242,118号。公開日:大正6年(19 17年)10月9日。以下「乙33文献」という。)には、以下の記載がある。 「対向するテーパー状のタブ状部分13が設けられており、このタブ状部分13は部分12の下縁からブラシエールの前面まで延びており、タブ状部分13は実際には背面カバー部分12の一部である。これらのタ ブの端には、紐またはテープ部材14が接続されており、図2に示されているように、前部で結びつけることができる。覆い部分にはさらにタブ5(2つ)があり、それぞれがブラシエールのショルダーストラップ 16に取り付けられている。」「Fig.1(図1) Fig.2(図2) 」(ウ) 乙8文献(実開平7-24915号公報。公開日:平成7年(1995年)5月12日)には、以下の記載がある。 「 【0001】【産業上の利用分野】 この考案は、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボデ 15号公報。公開日:平成7年(1995年)5月12日)には、以下の記載がある。 「 【0001】【産業上の利用分野】 この考案は、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボデ ィラインを美しく補整するために着用されるファンデーションに関する。」「 【0004】【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上述の如きブラジャーは、妊産婦のように一時期に 急激に体型が変化する者にとっては、係止手段の係止位置の調整のみではボディラインの補整に対処しきれず、特にアンダーバストに連続する上腹部の補整ができないという欠点がある。」「 【0008】【作用】 以上のように構成されたファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地が伸長し、背開き用係止布部3の係止用両端部に設けた複数列の係止手段4a、4bを適宜選択して係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着部2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分に密着 する。 【0009】補整用前布5の係止用他端部に設けた複数列の係止手段6a、6bを適宜選択して係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。 【0010】背開き用係止布部3の係止用両端部相互を係止する係止手段4a、4bと、補整用前布5の係止用他端部相互を係止する係止手段6a、6bとの、係止位置の組合せを変えることにより、このファンデーションの体に対する密着度が微妙に変化する。 【0011】 【実施例】図1及び図2に示すように、この考案に係るファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連 化する。 【0011】 【実施例】図1及び図2に示すように、この考案に係るファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連続する上腹密着部2と、背開き用係止布部3とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部1及び上腹密着部2 の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用布地5の一端がそれぞれ連接されている。 【0012】前記背開き用係止布部3の係止用両端部には、図2に示すように、1列4個のフック4aが3列、このフック4aが係止されるアイ4b が3列設けられている。 【0013】前記補整用前布5の係止用他端部には、図1に示すように、1列5個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられている。 【0014】即ち、この実施例においては、背開き用係止布部3の係止用両端部相互を係脱自在に係止する係止手段、及び補整用前布5の係止用他端部相互を係脱自在に係止する係止手段が、フック4a、6aとアイ4b、6bとにより構成される。 【0015】このファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地が伸長し、例えば最も端部に位置するフック4aとアイ4bとを係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着部2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続す る部分に密着し、密着状態が保持される。 【0016】また、補整用前布5に設けたフック6aとアイ6bとを係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。」「 【0024】 【考案の効果】以上のように、この考案に 5に設けたフック6aとアイ6bとを係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。」「 【0024】 【考案の効果】以上のように、この考案に係るファンデーションは、ブラジャー前部1と上腹密着部2とが伸縮布地により構成されていることから、着用時にこの伸縮布地が伸長して、アンダーバストから上腹部に連続する部分に密着すると共に、上腹密着部2との左右脇部分に連接された 補整用前布5により前記伸縮布地の伸長を適度に抑制して、体を無理なく締付けて、体型を補整することができる。 【0025】また、補整用前布5の係止用他端部相互を係脱自在に係止する係止手段6a、6bが複数列設けられていることから、背開き用布部3の 係止用両端部相互を係脱自在に係止する係止手段4a、4bの係止位置を変えることなく、この補整用前布5のみによって、ブラジャー前部1及び上腹密着部2と体との密着度を調整することができる。 【0026】さらに、背開き用布部3に設けた係止手段4a、4bの係止位置と、 補整用前布5に設けた係止手段6a、6bの係止位置との組合せを変えることにより、体に対する密着度を微妙に調整して、体型の変化に柔軟に対処することができ、着用感に優れたものとなる。」「【図1】 」ウ主引用文献への副引用文献(周知技術)の適用本件発明の構成要件Cに関し、例えば、乙32文献の延長部18及び19(原文の「extensions 18 and 19」)、乙33文献の対向するテーパー状のタブ状部分13(原文の「Oppositelytaperedtab-likeparts 13」)、乙 8文献の補整用前布5が、「左右の前身頃部材」に相当する。 乙32文献の延長部18及び のタブ状部分13(原文の「Oppositelytaperedtab-likeparts 13」)、乙 8文献の補整用前布5が、「左右の前身頃部材」に相当する。 乙32文献の延長部18及び19は、その図示から明らかなように、表面側に配置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる。同様に、乙33文献のタブ状部分13も表面側に配置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる。さらに、乙8文献の補整用前布5も表面側に配置され、バ スト下部の中央部にかけて設けられる。 このことから明らかであるように、本件発明の構成要件Cにおける「左右の前身頃部材」の構成、その配置等は、本件発明の出願前において、既に周知の構成である。 加えて、本件発明の構成要件Dに関し、例えば、乙8文献には、複数の フック6aとアイ6bが開示されている(図面)。乙8文献の複数のフック6aとアイ6bは、本件発明の構成要件Dにおける「複数の連結部材」に相当する。 仮に、乙31文献に開示された調節可能な留め具手段22が本件発明の 構成要件Dにおける「複数の連結部材」には相当しないとしても、既に本件発明の出願前に、乙8文献に開示された複数のフック6aとアイ6bの構成は公然と知られたものであり、出願前に周知の一般技術である。このことから、連結部材の置き換えは容易である。 エ主引用文献への副引用文献(周知技術)の適用を踏まえた結論 上記ウから理解されるとおり、仮に乙31文献が本件発明の全ての構成要件を開示していないとしても、本件発明に適用可能な構成は、副引用文献または周知技術としての乙32文献、乙33文献及び乙8文献に開示されている。 それゆえ、本件発明は、その特許出願前にその発明の属する技術の分野 における通常の知識を有する者が乙31 引用文献または周知技術としての乙32文献、乙33文献及び乙8文献に開示されている。 それゆえ、本件発明は、その特許出願前にその発明の属する技術の分野 における通常の知識を有する者が乙31文献と、乙32文献、乙33文献、又は乙8文献とに基いて容易に発明をすることができたものに該当するから、本件発明に係る特許には無効理由が存在し、被控訴人による権利行使は認められるべきではない。 〔被控訴人の主張〕 ⑴ 控訴人が追加した新たな無効理由の主張は、いずれも時機に後れた攻撃防御方法であること控訴人は、控訴理由書において、本件特許について、新たに乙31文献を根拠として新規性欠如の無効理由を主張するとともに、乙31文献を主引用例とし、乙32文献、乙33文献、乙8文献を副引用例等として、進歩性欠 如の無効理由をも主張している。 しかし、かかる主張は、いずれも時機に後れた攻撃防御方法であるから、却下されるべきである。 本件訴訟においては、控訴人には原審の当初より、訴訟代理人弁護士のほかに、補佐人弁理士も就いていたものであり、令和3年11月4日の原審に おける第1回の手続(ウェブ会議の方法による書面準備手続(協議))から、 充足論及び無効論(控訴人は、当初から乙8文献に基づく本件特許の無効理由(新規性欠如)を主張していたが、令和4年8月29日付けの準備書面⑸において、乙8文献を主引用例とし、乙9あるいは乙10を副引用例とする構成の本件特許の無効理由(進歩性欠如)についても追加主張した。)について、当事者双方の主張立証が行われてきたものである。 その後、令和4年8月31日のウェブ会議による書面準備手続期日において、当事者双方の主張立証が尽くされたことが最終確認された上で、裁判所の心証開示が行われ、原審 証が行われてきたものである。 その後、令和4年8月31日のウェブ会議による書面準備手続期日において、当事者双方の主張立証が尽くされたことが最終確認された上で、裁判所の心証開示が行われ、原審裁判所は本件特許権の侵害を認めたため、以後損害論の審理に入ったものである。そして、令和5年7月18日の第3回ウェブ会議による弁論準備手続期日では、裁判所主導の和解協議も行われていた ものである(なお、控訴人は、乙8文献を主引用例、乙9、乙10等を副引用例とする本件特許の無効理由(進歩性欠如)を主張して、令和3年10月20日、特許庁に無効審判請求をしていたものであるが、請求が成り立たないとの審決が令和5年1月20日付で出されていた(甲19)。)。 しかしながら、令和5年8月22日の第4回ウェブ会議による弁論準備手 続期日における和解協議の席で、原審における控訴人の訴訟代理人弁護士は、「本件特許の無効理由となりそうな米国特許文献が複数見つかったので、ゼロ和解でないと応じられない。再度の無効審判も予定しているので、判決して貰って結構である。控訴して争う。」として和解金の支払を拒否する態度に出たため、和解協議は即打ち切られ、同年9月22日に原審口頭弁論が終結 されて、同年12月6日に原判決が言い渡されたものである。 なお、原審においては、控訴人からは、最後まで乙31ないし33の提出すらなされず、またそれらに基づく無効論の主張等も一切なされていなかったものである。これは、控訴人自身が、当時原審で主張しても、時機に後れた攻撃防御方法として却下されるはずのものと認識していたゆえである。 そもそも、侵害論について裁判所の心証開示が行われた上記令和4年8月 31日のウェブ会議による書面準備手続期日までに、控訴人が、乙31な されるはずのものと認識していたゆえである。 そもそも、侵害論について裁判所の心証開示が行われた上記令和4年8月 31日のウェブ会議による書面準備手続期日までに、控訴人が、乙31ないし33の文献に基づく無効の抗弁を主張することが困難であったことをうかがわせる事情は存在しない。 そうすると、控訴人としては、上記原審における令和4年8月31日のウェブ会議による書面準備手続期日までに新たな無効理由を主張することが可 能であったものであり、また、そうすべきものであったものの、それをしなかったことは、時機に後れたものであるといえ、控訴人には、時機に後れたことについて重大な過失があったものといえる。そして、そのような評価は、控訴人が控訴を提起して審級が変わったこと、あるいは訴訟代理人弁護士が控訴審で変更されたこと等の理由によって変わるものではない。 また、控訴審から、控訴人が新規に提出した証拠に基づく新たな無効理由の主張の成否を審理することとなれば、訴訟の完結が遅延することも明らかである。 したがって、控訴審における控訴人の新たな無効の抗弁は、時機に後れた攻撃防御方法であり却下されるべきである。 ⑵ 控訴人の新たな無効理由の主張に対する反論(予備的反論)上記のとおり、控訴人の新たな無効理由の主張は、時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであるが、予備的に、被控訴人はその内容について、以下のとおり反論する。 ア乙31文献による無効理由(新規性欠如)の主張について (ア) 乙31発明は、米国特許第4,325,378号に係る「スポーツ衣料」として、昭和57年(1982年)4月20日に公開されたものである。 乙31文献には「本発明の目的は、身体運動またはスポーツ活動に従事している間、乳房運 4,325,378号に係る「スポーツ衣料」として、昭和57年(1982年)4月20日に公開されたものである。 乙31文献には「本発明の目的は、身体運動またはスポーツ活動に従事している間、乳房運動によって引き起こされる身体的問題の発症から 保護することができるスポーツ衣料を提供することにある。」(3頁2欄 37行目ないし40行目、乙31の2(訳文)5頁右欄下から11行目ないし7行目)との記載がある。 また、乙31文献には「本発明のさらなる目的は、過度の乳房の運動を阻害し、擦れによって引き起こされる刺激を実質的に排除する、記載された衣服を提供することであり、ここで、必要とされる挟み込み力は、 過度の動きを阻害するために、調整可能であり、乳房の重量による垂直荷重とは無関係であり、そして、挟み込み力に関係なく、擦れが続く保護が提供される。」(3頁2欄49行目ないし56行目、乙31の2(訳文)6頁7行目ないし16行目)との記載がある。 これに対し、本件発明の課題は、「女性のバストのサイズや形などに応 じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供する」(本件明細書【0008】)ことであり、乙31発明とは解決しようとする技術的課題自体が明らかに異なっている。 そして、乙31発明は、「過度の乳房の運動を阻害し、擦れによって引き起こされる刺激を実質的に排除する、記載された衣服を提供する」という課題を解決するため、その請求項1に記載されているように、「乳房受けポケットのそれぞれの後ろの点でそれぞれインナーライナーに取り付けられた乳房支持フラップであって、フラップは乳房受けポケ る」という課題を解決するため、その請求項1に記載されているように、「乳房受けポケットのそれぞれの後ろの点でそれぞれインナーライナーに取り付けられた乳房支持フラップであって、フラップは乳房受けポケットを オーバーフィットし、それにもかかわらず、乳房受けポケットはフラップに対して独立して変位可能である、支持フラップ;およびフラップを解放可能かつ調節可能に締め付ける手段であって、締め付けられたフラップは、胴体に対して実質的に固定された位置にあり、それにより、フラップは、過剰且つ有害な乳房の動きを拘束するための内側に向けられ た圧力を提供し、インナーライナーの乳房受けポケットは、乳房ととも に動き、フラップによって拘束されない乳房の動きによる擦れから保護する。」(乙31、5頁6欄19行目ないし33行目、乙31の2(訳文)14頁13行目ないし30行目)という構成を採用したものである。 このように、乙31発明は、それぞれインナーライナーに取り付けられた乳房支持フラップを乳房受けポケットにオーバーフィットするよう 配置し、乳房支持フラップを解放可能かつ調節可能に締め付ける手段を備えるよう構成したものである。 ここで、「オーバーフィット」とは、「上から覆って適合させる」と直訳することが出来る用語であるが、乙31文献では、図1ないし図3などから理解されるように、乳房受けポケットと同一形状に形成された乳 房支持フラップが、乳房受けポケットの表面全体を覆うように配置されている状態を意味しているものと解される。 したがって、乙31発明の乳房支持フラップは、乳房受けポケットにオーバーフィットするよう配置され、当該乳房支持フラップを締付け手段によって解放可能かつ調節可能に締め付けることによって、過剰かつ 有害な乳房 31発明の乳房支持フラップは、乳房受けポケットにオーバーフィットするよう配置され、当該乳房支持フラップを締付け手段によって解放可能かつ調節可能に締め付けることによって、過剰かつ 有害な乳房の動きを拘束するものであり、本件発明のごとく個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することができないものであることは明らかである。 (イ) 乙31発明には、本件発明のごとく、左右の前身頃部材を、バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にか けて設ける点は、何ら開示されておらず、示唆もない。 控訴人は、乙31文献には、本件発明の構成要件AないしEが余すところなく開示されているがごとく主張するが、構成Cに関する主張では、「構成C カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、」と 記載し、本件発明の構成要件Cから「バスト部の左右の各脇部からバス トの側部を覆った状態で」との文言を意図的に除いているのみならず、乙31文献の乳房支持フラップが乳房受けポケットにオーバーフィットするよう配置されている構成を意図的に無視している。 (ウ) また、そもそも乙31文献では、締め付け手段20ないし22が乳房支持フラップをバスト全体の中央部近傍で互いに連結するものであって、 「左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結する」ものではなく、本件発明の構成要件Dを満たしていないことも明白である。 (エ) 以上のとおりであり、乙31文献では、本件発明の構成要件C及びDについて、何ら開示も示唆もない。本件発明は、乙31文献に記載された発明とは明らかに非同一の発明であって、新規性を有してい (エ) 以上のとおりであり、乙31文献では、本件発明の構成要件C及びDについて、何ら開示も示唆もない。本件発明は、乙31文献に記載された発明とは明らかに非同一の発明であって、新規性を有している。 イ乙31文献と乙32文献、乙33文献又は乙8文献による無効理由(進歩性欠如)の主張について(ア) 乙32文献は、米国特許第1,537,681号に係る「ブラジャー」として、大正14年(1925年)5月12日に公開されたものである。 乙32文献には「同様に、背面部材11には延長部18及び19が設 けられ、延長部18にはストラップ20が、延長部19には同様のストラップ21が取り付けられ、これらのストラップは、着用者の身体に関連するフックアンドアイまたは他の接続アタッチメントを有する。また、示されるように、前部及び後部部材は、肩の上に延びるように適合されたストラップ22及び23によって接続されている。」(3頁右欄72行 目ないし82行目)との記載がある。 控訴人は、本件発明の構成要件Cに関し、乙32文献の延長部18及び19(原文の「extension 18 and 19」)、乙33文献の対向するテーパー状のタブ状部分13(原文の「Oppositelytaperedtab-likeparts 13」)、乙8文献の補整用前布5が、「左右の前身頃部材」に相当すると主張する。 しかし、乙32文献記載の発明(以下「乙32発明」という。)は、大 別して、上半身の前部を覆う前面部材10と、上半身の後部を覆う背面部材11と、前面及び背面部材10、11を肩の上に延びるように配置されて接続するストラップ22及び23とから構成されたブラジャーであり、着用に際しては、前面部材10の延長部12及び13を体の背面側へ 材11と、前面及び背面部材10、11を肩の上に延びるように配置されて接続するストラップ22及び23とから構成されたブラジャーであり、着用に際しては、前面部材10の延長部12及び13を体の背面側へ回して紐14、15で結ぶとともに、背面部材11の延長部18及 び19を体の前面側へ回してストラップ20、21をフックアンドアイ又は他の接続アタッチメントで接続することにより着用するものであって、そもそも「カップ部材」を備えていない。 つまり、乙32発明は、体の前面に配置される前面部材10を備えているが、前面部材10は、中央に位置する布地と左右に位置する布地と を縫い合わせて構成されていることが見て取れるものの、当該布地が「カップ部材」でないことは明らかである。 そうすると、乙32発明は、乙31発明及び本件発明と構成要件を対比する上で、構成要件C並びにDの配置及び構成を規定する「カップ部材」自体を特定することができない。 したがって、乙32発明には、当然のことながら「カップ部材」に対する位置関係などから規定される「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され」る左右の前身頃部材は、何ら開示されていない。 大正14年(1925年)に公開され「カップ部材」を備えない乙3 2発明において、背面部材11の一部である延長部18及び19は、前面部材10と相まって、初めていわゆる「ブラジャー」としての機能を発揮する部材であり、その意味において、本件発明の構成要件Cにおける「左右の前身頃部材」に相当するものではない(なお、「ブラジャー」とは、「女性の胸の形を整えるために用いる下着。乳押え。ブラ。」(広辞 苑)である。)。 仮に、控訴人が、乙32発明において、延長部18及び19が本件発明の構成 、「ブラジャー」とは、「女性の胸の形を整えるために用いる下着。乳押え。ブラ。」(広辞 苑)である。)。 仮に、控訴人が、乙32発明において、延長部18及び19が本件発明の構成要件Cの「左右の前身頃部材」に相当すると主張するのであれば、延長部18及び19を除いた乙32発明は、乙31発明のライナー11に相当する前面部材10のみしか存在しないこととなり、本来「女性の胸の形を整えるために用いる下着。」である「ブラジャー」としての 機能を果たすべき乙32発明において、「カップ部材」の有無を無視して、背面部材11の一部である延長部18及び19が本件発明の構成要件Cの「左右の前身頃部材」に相当すると主張するのは、乙32発明の構成を本来の構成から離れて一部のみ意図的に解釈するものであって、相当でない。そうすると、「カップ部材」を備えない乙32発明には、「カッ プ部材」に対する位置関係などから規定される本件発明の構成要件Cにおける「左右の前身頃部材」が記載されていないといえる。 したがって、乙32発明の「背面部材11の一部である延長部18及び19」のみを抜き出して、乙31発明と組み合わせることはできない。 また、乙31発明に乙32発明を組み合わせるべき動機付けも、何ら 存在しない。 (イ) 乙33文献は、米国特許第1,242,118号に係る「ブラジャー」として、大正6年(1917年)10月9日に公開されたものである。 乙33文献には「対向するテーパー状のタブ状部分13が設けられており、このタブ状部分13は部分12の下縁からブラジャーの前面まで 延びており、タブ状部分13は実際には背面カバー部分12の一部である。これらのタブの端には、紐またはテープ部材14が接続されており、図2に示されているように、前部 縁からブラジャーの前面まで 延びており、タブ状部分13は実際には背面カバー部分12の一部である。これらのタブの端には、紐またはテープ部材14が接続されており、図2に示されているように、前部で結びつけることができる。覆い部分にはさらにタブ5(2つ)があり、それぞれがブラジャーのショルダーストラップ16に取り付けられている。」(2頁右欄102行目ないし3 頁左欄2行目)との記載がある。 控訴人は、前記のとおり、本件発明の構成要件Cに関し、例えば、乙32文献の延長部18及び19(原文の「extension 18 and 19」)、乙33文献の対向するテーパー状のタブ状部分13(原文の「Oppositelytaperedtab-likeparts 13」)、乙8文献の補整用前布5が、「左右の前身頃部材」に相当すると主張する。 しかし、乙33文献記載の発明(以下「乙33発明」という。)においても、乙32発明と同様、そもそも「カップ部材」を備えておらず、乙31発明並びに本件発明と構成要件を対比する上で、構成要件C並びにDの配置及び構成を規定する「カップ部材」を特定することはできない。 そうすると、乙33発明には、乙32発明と同様の理由により、本件 発明の構成要件Cの「左右の前身頃部材」が記載されていないものであり、故に乙33発明の「テーパー状のタブ状部分13」のみを抜き出して、乙31発明と組み合わせることもできない。 (ウ) 乙8文献について、控訴人は、乙8文献の補整用前布5が、本件発明の構成要件Cの「バストの側部を覆った状態で…設けられる左右の前身頃 部材」に相当すると主張しているが、乙8文献の補整用前布5が本件発明の構成要件Cの「バストの側部を覆った状態で…設けられる左右の前身頃部材」に トの側部を覆った状態で…設けられる左右の前身頃 部材」に相当すると主張しているが、乙8文献の補整用前布5が本件発明の構成要件Cの「バストの側部を覆った状態で…設けられる左右の前身頃部材」に相当しないものであることは原審で主張したとおりであり、同旨の主張を繰り返すこと自体失当である。 (エ) なお、控訴人は、仮に乙31発明が本件発明の全ての構成を開示して いないとしても、本件発明に適用可能な構成は、副引用文献又は周知技術としての乙32文献、乙33文献及び乙8文献に開示されているとも主張する。 しかしながら、発明の進歩性とは、本件発明の構成要件を出発点として判断するものではなく、本件発明が存在しない状態で、主引用文献で ある乙31文献と、副引用文献ないし周知技術としての乙32文献、乙 33文献及び乙8文献に基づいて、いかなる論理付けをすれば、当業者が容易に本件発明に到達することができたか否かで判断されるものである。 この点、控訴人の主張を見る限り、本件発明と解決課題や構成要件が異なる乙31文献に、乙32文献、乙33文献及び乙8文献をどのよう に組み合わせれば、当業者が容易に本件発明に到達することができたのか全く不明である。 (オ) 上記のとおり、本件発明は、乙31文献ないし33文献又は乙8文献に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求は、原判決主文第1項掲記の限度で理由があり、その範囲で認容されるべきであるが、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2及び3のとおり、当審における控訴人の主な補充主張並びに当審における控訴人の新たな無効理由の 主張 るが、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2及び3のとおり、当審における控訴人の主な補充主張並びに当審における控訴人の新たな無効理由の 主張及びこれに対する被控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決第4(原判決25頁11行目から47頁3行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決28頁15行目の「1▼」を「1▼(判決注;①)」と、同行目の「3▼」を「3▼(判決注;③)」と、同頁23行目の「2▼」を「2▼(判決注; ②)」とそれぞれ改める。 ⑵ 原判決33頁12行目の「ていた。」を「ていた」と改める。 ⑶ 原判決35頁13行目ないし20行目を以下のとおり改める。 「しかし、前記アのとおり、本件明細書に記載された『連結するとともに』における『ともに』は、『同時に』を意味するものと解され、これはその用語 について辞書に記載された通常の意味するところでもあるから、控訴人の主 張は、本件明細書の記載に基づくものとはいえない。」⑷ 原判決36頁6行目の「本件明細書の【図9】によれば、」から10行目末尾までを、「本件明細書の【0011】に『図11のAに示すように・・・Aの範囲だけ短くデザインされた左右の前身頃部材・・・を・・・所定の連結部材によって連結することにより、人体乳房の乳頭間のスペースBを、これ より狭いA’にすることにより、左右のバストの引き寄せ効果を高めるものである。』と記載され、【図11】のAは左右方向の距離を示していること、前記『フックとアイからなる』連結部材によって調節可能となっている連結幅は、一つのフックに対して、胴体水平方向に間隔をおいて配置された二つのアイのいずれを選択するかによって定まることが【図9】に示され 記『フックとアイからなる』連結部材によって調節可能となっている連結幅は、一つのフックに対して、胴体水平方向に間隔をおいて配置された二つのアイのいずれを選択するかによって定まることが【図9】に示されている ことから、『左右の前身頃部材の連結幅』は、胴体水平方向の連結幅であると理解できる。」と改める。 ⑸ 原判決46頁7行目の「実施許諾契約」の次に「(特許紛争の解決に際して締結され、過去分の損害賠償の支払を約束するものも含む。)」を加え、7行目ないし8行目の「実施料率は、」の次に「過去分の損害賠償の支払を約束す るものとそうでないものとを通じ、」を加える。 ⑹ 原判決46頁23行目の「705万4587円」の次に「(1億1757万6451円×0.06=705万4587円)」と加える。 2 当審における控訴人の主な補充主張についての判断は、以下のとおりである。 ⑴ 控訴人は、前記第2の3⑴アのとおり、本件発明の構成要件Dの「複数の 連結部材」とは、「左右の前身頃部材を互いに連結すること」の状態を維持しながら「連結幅を調節可能」とするものをいうところ、控訴人製品のフックとアイでは、この「左右の前身頃部材を互いに連結する」状態を維持しながら「連結幅を調節可能」とすることができないから構成要件Dを充足しない旨を主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決第4の2⑴アのとおり、本件発明の構 成要件Dにおける「ともに」の意義は、複数の連結部材が、「左右の前身頃部材を・・・連結する」機能を果たすと同時に、その「連結幅を調節可能」とする機能も果たす構成を意味すると解するのが相当であり、補正の上で引用した原判決第4の2⑴イのとおり、控訴人の主張するような「左右の前身頃部材」を互いに連結する状態を維持又は保持しながら、 可能」とする機能も果たす構成を意味すると解するのが相当であり、補正の上で引用した原判決第4の2⑴イのとおり、控訴人の主張するような「左右の前身頃部材」を互いに連結する状態を維持又は保持しながら、連結幅を調節可能と するものをいうとは解されない。そして、控訴人製品が、構成要件Dを充足することについては、補正の上で引用した原判決第4の2⑶アのとおりである。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 控訴人は、前記第2の3⑴イのとおり、本件発明の構成要件Dにいう「連 結幅」は、絶えず連結が続いている状態における端から端までの長さであるところ、控訴人製品におけるフックとアイの配置の構成では、フックとアイの組み合わせで位置を調整する場合、「連結」の状態は維持されず、常に一定の連結幅が存在しているものではないから、構成要件Dを充足しない旨を主張する。 控訴人の主張は、「連結幅」について、上記⑴のとおりの「左右の前身頃部材を互いに連結する」状態を維持しながら調節可能とするものをいうことが前提となっているところ、この前提を採用できないことについては既に上記⑴で検討したとおりであり、補正の上で引用した原判決第4の2⑵のとおり、構成要件Dにおける「左右の前身頃部材の連結幅」とは、胴体水平方向にお ける右の前身頃部材と左の前身頃部材の連結部分の幅、すなわち両部材の重なり量と解するのが相当であり、控訴人製品の一つのフックと三つのアイとからなる連結部材は、「左右の前身頃部材を・・・連結する」ものであり、同時に、胴体水平方向における右の前身頃部材と左の前身頃部材の重なり量「を調節可能に設けられた」ものと認められるから、構成要件Dを充足する。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 方向における右の前身頃部材と左の前身頃部材の重なり量「を調節可能に設けられた」ものと認められるから、構成要件Dを充足する。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑶ 控訴人は、前記第2の3⑴ウのとおり、本件発明の構成要件Dの「連結幅」は胴体垂直方向における接合量とするのが合理的であるから、控訴人製品は構成要件Dを充足しない旨を主張する。 しかし、補正の上で引用した原判決第4の2⑵アのとおり、構成要件Dにおける「連結幅」とは、胴体水平方向における右の前身頃部材と左の前身頃 部材の連結部分の幅、すなわち両部材の重なり量と解するのが相当であり、控訴人製品の連結部材は、胴体水平方向における右の前身頃部材と左の前身頃部材の重なり量を調節可能に設けられたものと認められ、構成要件Dを充足する。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑷ 控訴人は、前記第2の3⑵のとおり、仮に損害賠償請求が認められるとしても、実施に対して受けるべき料率は最大でも5パーセントである旨を主張する。 特許法102条3項は、特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり、同項による損害は、原則として、侵害品の 売上高を基準とし、そこに、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。同項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」を認定するために、過去の実施許諾例、業界における実施料の相場は考慮に入り得るが、それのみならず、特許発明の技術内容や重要性、他の技術手段による代替可能性、特許発明を侵害品に使用することによる売上げ や利益への貢献度、侵害品の価格・数量、侵害の態様、特許権者と侵害者の競業関係や特許権者の営業方針等、諸般の事情が総合考慮 技術手段による代替可能性、特許発明を侵害品に使用することによる売上げ や利益への貢献度、侵害品の価格・数量、侵害の態様、特許権者と侵害者の競業関係や特許権者の営業方針等、諸般の事情が総合考慮されるべきである。 そして、同項所定の相当実施料額を認定するに当たっては、「特許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害があったことを前提として当該特 許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特 許権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる」(特許法102条4項)と定められていることからすれば、自由な市場で特許権者と実施者が任意に実施許諾契約を締結する場合と、特許権侵害訴訟における損害賠償額算定の段階との違いも考慮されるべきである。すなわち、任意に実施許諾契約を締結する場合には、一般的に、特許が有効であるか否 か、実施品が特許発明の技術的範囲に属するか否かについて裁判所の判断が示されていないのに対し、特許権侵害訴訟における損害賠償額算定の段階では、裁判所が、特許が有効であり、侵害品が特許発明の技術的範囲に属すると判断していることが前提となっており、有効な特許発明の実施に該当することが一層明確になっている。また、特許権者は、本来、実施許諾をするか 否かを自由に決めることができるにもかかわらず、特許権侵害が認められる場合には、特許権者の意思とは無関係に特許発明が実施されており、特許権者は、実施許諾するか否かを判断する機会が奪われている。さらに、特許権者と実施者が任意に実施許諾契約を締結する場合には、同契約により、実施料の支払期限の設定、実施者による最低保証料の支払、契約解除事由の制限、 特 かを判断する機会が奪われている。さらに、特許権者と実施者が任意に実施許諾契約を締結する場合には、同契約により、実施料の支払期限の設定、実施者による最低保証料の支払、契約解除事由の制限、 特許無効の場合の実施料返還請求の制限等が定められることがあり、実施者は、そのような契約による制限の範囲内において実施をすることになるが、特許権侵害が認められる場合には、そのような制限なく特許発明が実施されている。任意に実施許諾契約を締結する場合と損害賠償額算定の段階との間に上記のような相違があることからすれば、特許法102条3項所定の相当 実施料額は、任意に実施許諾契約を締結する場合の実施料額に比べて増額されると認めるのが相当である。 そうすると、補正の上で引用した原判決第4の5⑵イのとおり、事後的に定められる本件発明の実施に対し受けるべき料率は6パーセントと認めるのが相当である。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 3 当審における控訴人の新たな無効理由の主張及びこれに対する被控訴人の主張に対する判断は、以下のとおりである。 ⑴ 控訴人は、前記第2の4〔控訴人の主張〕のとおり、原審において主張していた無効理由とは異なる新たな無効理由(当審において新たに提出する乙31文献による新規性欠如、同文献を主引用例とする進歩性欠如)を主張し、 被控訴人は、これにつき時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして却下を申し立てている。 ⑵ そこで、まず時機に後れた攻撃防御方法に当たるかについて検討すると、控訴人による当審における新たな無効理由の主張は、令和6年2月6日付け控訴理由書においてなされたものであるところ、特許権侵害訴訟において、 無効の抗弁は、特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の 当審における新たな無効理由の主張は、令和6年2月6日付け控訴理由書においてなされたものであるところ、特許権侵害訴訟において、 無効の抗弁は、特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手続内で迅速に解決するため、特許無効審判手続による無効審決の確定を待つことなく主張することができるものとされており、特許無効審判とは別の手続である民事訴訟手続内でのものであるから、審理の経過に鑑みて、審理を不当に遅延させるものであるときは、時機に後れた攻撃防御方法に当たるもの として却下されるべきである。 これを基に原審における審理経過についてみると、一審被告である控訴人は、原審において、令和3年10月27日提出の同月22日付け答弁書において、被控訴人製品の本件発明の構成要件該当性を否認するとともに、乙8文献を主引用例とし、これと周知技術との組み合わせないし乙9文献を副引 用例とする進歩性欠如の無効理由を主張した。これに対する一審原告である被控訴人の反論等を受け、令和4年3月18日付け準備書面⑶において、乙8文献による新規性欠如の無効理由を追加し、これに対する被控訴人の更なる反論を受けて、令和4年5月27日付け準備書面⑷において、更に乙8文献を主引用例とし、乙10文献を副引用例とする進歩性欠如の無効理由を追 加した。これについての被控訴人の反論に対しては、更に令和4年8月29 日付け準備書面⑸において反論をした。 そして、侵害論について当事者が主張立証を尽くしたことを前提とし、令和4年8月31日に行われたウェブ会議の方法による書面準備手続において、裁判所から損害論に審理を進める旨の心証開示を受けて(令和4年8月31日の書面準備手続の経過表には、協議の結果欄に、「当事者双方侵害論につ いての主張立証は尽く 法による書面準備手続において、裁判所から損害論に審理を進める旨の心証開示を受けて(令和4年8月31日の書面準備手続の経過表には、協議の結果欄に、「当事者双方侵害論につ いての主張立証は尽くした。」「裁判長今後、損害論についての審理を進める。」との記載がある。)、損害論の審理が進められ、令和5年9月22日に行われた口頭弁論期日において、控訴人は他に主張立証することはない旨を陳述し、原審口頭弁論が終結されて原判決が言い渡されたものである。 こうした原審での審理経過に鑑みると、当審における新たな無効理由の主 張は、時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たり、その提出が後れたことについて控訴人には重過失があるから、本来であれば却下は免れないが、被控訴人から、予備的にではあるものの、当審において提出された無効理由についての反論がされており、これに対する控訴人の再反論の主張はなく当審の口頭弁論終結に至っていることから、この限度では訴訟の完結を遅延さ せることになるとまではいえないため、以下、判断を加えることとする。 ⑶ 乙31文献に基づく新規性欠如の無効理由についてア乙31文献(公開日:昭和57年(1982年)4月20日)には、以下の記載がある。 (ア) 請求項1(一部):「乳房受けポケットのそれぞれの後ろの点でそれぞ れインナーライナーに取り付けられた乳房支持フラップであって、フラップは乳房受けポケットをオーバーフィットし、それにもかかわらず、乳房受けポケットはフラップに対して独立して変位可能である、支持フラップ;及びフラップを解放可能かつ調節可能に締め付ける手段であって、締め付けられたフラップは、胴体に対して実質的に固定された位置 にあり、それにより、フラップは、過剰且つ有害な乳房の動きを拘束す 及びフラップを解放可能かつ調節可能に締め付ける手段であって、締め付けられたフラップは、胴体に対して実質的に固定された位置 にあり、それにより、フラップは、過剰且つ有害な乳房の動きを拘束す るための内側に向けられた圧力を提供し、インナーライナーの乳房受けポケットは、乳房とともに動き、フラップによって拘束されない乳房の動きによる擦れから保護する。」(5頁6欄19行目ないし33行目、乙31の2(訳文)14頁13行目ないし30行目)(イ) 発明の詳細な説明 ・「本発明の目的は、身体運動またはスポーツ活動に従事している間、乳房運動によって引き起こされる身体的問題の発症から保護することができるスポーツ衣料を提供することにある。」(3頁2欄37行目ないし40行目、乙31の2(訳文)5頁右欄下から11行目ないし7行目) ・「本発明のさらなる目的は、過度の乳房の運動を阻害し、擦れによって引き起こされる刺激を実質的に排除する、記載された衣服を提供することであり、ここで、必要とされる挟み込み力は、過度の動きを阻害するために、調整可能であり、乳房の重量による垂直荷重とは無関係であり、そして、挟み込み力に関係なく、擦れが続く保護が提供され る。」(3頁2欄49行目ないし56行目、乙31の2(訳文)6頁7行目ないし16行目)(ウ) 図面 上記によれば、乙31文献に記載された発明は、「過度の乳房の運動を阻害し、擦れによって引き起こされる刺激を実質的に排除する、記載された衣服を提供する」との発明の課題を解決するため、請求項1に係る構成、すなわち「フラップは、過剰且つ有害な乳房の動きを拘束するための内側に向けられた圧力を提供」するとの構成を採用したものである。 そうすると、控訴人が本件発明の「前 るため、請求項1に係る構成、すなわち「フラップは、過剰且つ有害な乳房の動きを拘束するための内側に向けられた圧力を提供」するとの構成を採用したものである。 そうすると、控訴人が本件発明の「前身頃部材」に相当すると主張する乳房支持フラップ(フラップ13及び14)は、図1(FIG.1)及び図2(FIG.2)に示されるように、乳房を胸に向かって押し付けることによって乳房の動きを拘束するという作用機序を有するものであって、そのために、インナーライナーに取り付けられた乳房支持フラップを乳房受けポケ ットにオーバーフィットする、即ち同フラップが乳房全体を覆う構成を必須とするものといえる。 そして、乙31文献に記載された発明の乳房支持フラップは、乳房受けポケットにオーバーフィットするよう配置され、当該乳房支持フラップを締付け手段によって解放可能かつ調節可能に締め付けることによって、過 剰かつ有害な乳房の動きを拘束するものであるから、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応するものではない。 イ一方、本件発明の課題は、補正の上で引用した原判決第4の1⑵イのとおり、「女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を 個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供する」(本件明細書【0008】)ことにある。 そして、その課題解決のため、本件発明の「前身頃部材」は、構成要件Cにおいて「バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバ スト下部の中央部にかけて設けられる」とされるものであって、これによ り、左右バストを引き寄せる作用機序を有するも Cにおいて「バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバ スト下部の中央部にかけて設けられる」とされるものであって、これによ り、左右バストを引き寄せる作用機序を有するものと認められる。仮に、本件発明の「前身頃部材」がバスト全体を覆うものとすると、左右バストを引き寄せる以外の作用が生じてしまい、上記作用機序が失われ、少なくとも弱められるであろうことは容易に理解される。そうであるとすれば、本件発明の「前身頃部材」は、構成要件Cにおいて特定されたバスト部の 左右の各脇部からバストの側部のみを覆うものであって、それ以外の部分は覆わないものと解される。 ウそうすると、本件発明の「前身頃部材」と、乙31文献に記載された発明の乳房支持フラップ(フラップ13及び14)は、異なる作用機序を奏するため、構成上の差異を有しているものといえる。 したがって、本件発明が乙31文献により新規性を欠如する旨の控訴人の主張には理由がない。 ⑷ 乙31文献に基づく進歩性欠如の無効理由についてア前記⑶アのとおり、乙31文献に記載された発明は、乳房支持フラップ(フラップ13及び14)で乳房全体を覆うことにより課題を解決するも のであるところ、このフラップを、副引用例ないし周知技術を示すものと控訴人が主張して提出した各文献に記載された、乙32文献の延長部18及び19、乙33文献のタブ状部分13及び乙8文献の補整用前布5のような、乳房全体を覆わないものに置き換えるとすると、その課題が解決できないことは明らかであるから、乙31文献記載の発明に、上記副引用例 ないし周知技術を適用するについては、阻害要因があるものと認められる。 イ加えて、補正の上で引用した原判決第4の3⑴ウ(原判決39頁14行目ないし40頁3行 文献記載の発明に、上記副引用例 ないし周知技術を適用するについては、阻害要因があるものと認められる。 イ加えて、補正の上で引用した原判決第4の3⑴ウ(原判決39頁14行目ないし40頁3行目)のとおり、乙8文献に記載の「補整用前布5」は、本件発明の「前身頃部材」のように、バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆うものとは認められない(控訴人が乙8文献について当審にお いて摘記する箇所を参照しても同様である。)。 ウまた、乙32文献には、「同様に、背面部材11には延長部18及び19が設けられ、延長部18にはストラップ20が、延長部19には同様のストラップ21が取り付けられ、これらのストラップは、着用者の身体に関連するフックアンドアイまたは他の接続アタッチメントを有する。また、示されるように、前部及び後部部材は、肩の上に延びるように適合された ストラップ22及び23によって接続されている。」との記載があり、図1(FIG.1)及び図2(FIG.2)が掲載されているところ(前記第2の4〔控訴人の主張〕⑶イ(ア))、これらの図1(FIG.1)及び図2(FIG.2)を参照しても、本件発明におけるバスト部を覆うカップ部材に相当する構成が不明である。仮にこの点を措くとしても、控訴人が本件発明の「前身頃部材」 に相当すると主張する、乙32文献の延長部18及び19が、バスト側部を覆う構成は示されていない。 エさらに、乙33文献には、「対向するテーパー状のタブ状部分13が設けられており、このタブ状部分13は部分12の下縁からブラシエールの前面まで延びており、タブ状部分13は実際には背面カバー部分12の一部 である。これらのタブの端には、紐またはテープ部材14が接続されており、図2に示されているように、前部 からブラシエールの前面まで延びており、タブ状部分13は実際には背面カバー部分12の一部 である。これらのタブの端には、紐またはテープ部材14が接続されており、図2に示されているように、前部で結びつけることができる。覆い部分にはさらにタブ5(2つ)があり、それぞれがブラシエールのショルダーストラップ16に取り付けられている。」との記載があり、図1(FIG.1)及び図2(FIG.2)が掲載されているところ(前記第2の4〔控訴人の主 張〕⑶イ(イ))、これらの図1(FIG.1)及び図2(FIG.2)を参照しても、本件発明のカップ部材に相当する構成が不明である。仮にこの点を措くとしても、控訴人が本件発明の「前身頃部材」に相当すると主張する乙33文献のタブ状部分13において、バスト側部を覆う構成は示されていない。 オ以上によれば、本件発明は、乙31ないし33の各文献、乙8文献に記 載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと はいえない。 したがって、控訴人の本件特許に係る発明が乙31ないし33の各文献、乙8文献に記載された各発明に基づいて進歩性を欠く旨の主張には理由がない。 4 その他、控訴人は縷々主張するが、いずれも上記認定及び判断を左右しない。 5 よって、被控訴人の請求は、原判決が認容した限度で理由があり、その余については理由がなく、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平 健 裁判官今井 中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則

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