平成26(行ケ)10275 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年2月24日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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平成28年2月24日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成26年(行ケ)第10275号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成28年1月27日判決 原告トミー株式会社 同訴訟代理人弁護士井上康一伊藤晴國橋本有加同弁理士牧野純 被告アメリカン・オーソドンティクス・コーポレーション 同訴訟代理人弁護士深井俊至磯田直也 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2013-800224号事件について平成26年11月12日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は,平成11年10月8日,発明の名称を「歯列矯正ブラケットおよび歯列矯正ブラケット用ツール」とする特許出願をし(甲2。以下「本件特許出願」という。),平成22年1月22日,設定の登録を受けた(特許第4444410号。 請求項の数19。甲1。以下,この「特許」を「本件特許」といい,この特許権を「本件特許権」という。本件特許に係る明細書〔甲1〕を「本件明細書」という。)。 登録を受けた(特許第4444410号。 請求項の数19。甲1。以下,この「特許」を「本件特許」といい,この特許権を「本件特許権」という。本件特許に係る明細書〔甲1〕を「本件明細書」という。)。 ⑵ 被告は,平成25年12月12日,本件特許の特許請求の範囲請求項1から18に係る特許について特許無効審判を請求した。 ⑶ 特許庁は,上記請求を無効2013-800224号事件として審理を行い(以下「本件審判」という。),平成26年11月12日,「特許第4444410号の請求項1ないし18に係る発明についての特許を無効とする。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,同月20日,その謄本が原告に送達された。 ⑷ 原告は,平成26年12月18日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲請求項1から18の記載は,次のとおりである(甲1。 以下,順に,請求項1記載の発明を「本件発明1」などといい,本件発明1ないし18を併せて「本件発明」という。)。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示す。 【請求項1】歯面に固着されるベースを備え,該ベースから垂直方向に延びるブラケット本体,該ブラケット本体の中央にて近遠心方向に延び前方に開放したアーチワイヤスロットを備えており,前記アーチワイヤスロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えた歯列矯正ブラケットであって,/前記ロック部材は,一端側が前記ベース側に該ベースに沿って延びるベース側部と,他端側が前記アーチワイヤスロットの長さと略同じ幅を有してスロット上方側に延びる反ベース側部とを備 える断面形状がU字形状になされ,且つ該反ベース側部の中央に切欠き部が設けられた弾性体から構成されており,/前記ブラケット本 トの長さと略同じ幅を有してスロット上方側に延びる反ベース側部とを備 える断面形状がU字形状になされ,且つ該反ベース側部の中央に切欠き部が設けられた弾性体から構成されており,/前記ブラケット本体には,前記アーチワイヤスロットの開放縁部に,前記ロック部材の先端をスロット閉じ位置に係止する閉じ係止溝と,該係止溝とは反対側の縁部に前記ロック部材の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部が形成されており,該係止溝の長手方向中央部分には,前記切欠き部に対応して該係止溝を埋めるように突出したリブが形成されたことを特徴とする歯列矯正ブラケット。 【請求項2】前記ベース側部の後端部には,凹み又は切欠きからなる係合端部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項3】前記ブラケット本体は,近心側タイウイングと遠心側タイウイングとによって挟まれた中溝をもつツインブラケットであり,前記リブは前記中溝の全幅にわたって形成され且つ前記近心側タイウイング及び前記遠心側タイウイングに繋がって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項4】前記ブラケット本体がタイウイングを備えるシングルブラケットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項5】前記ブラケット本体が歯の裏面側に装着するリンガルブラケットであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項6】前記リブの上端面に凹部が形成されたことを特徴とする請求項1又は3に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項7】前記ブラケット本体には,近遠心方向に沿って貫通する開口が形成されたことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項8】前記ブラケット本体 ラケット。 【請求項7】前記ブラケット本体には,近遠心方向に沿って貫通する開口が形成されたことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項8】前記ブラケット本体は,前記ロック部材の縁部が摺動するタイウイング側面に,該縁部に当接可能な突起が設けられ,ロック部材のスロット閉塞時に該突起が縁部よりも外側に位置するように構成されたことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項9】前記ブラケット本体に,該ブラケット本体のタイウイングの近遠心方 向に立ち上がって張り出したフックが設けられたことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項10】前記ロック部材は,一枚板材からなり,その歯軸方向の中断部分を境にして前記ベース寄りのベース側部が,ブラケットのアンギュレーションに一致した傾斜角とし,一方,前記ベース寄りの側とは反対側の反ベース側部がブラケットアンギュレーションの傾斜角に加えて,アーチワイヤを押圧するための曲がり分に対応する角度を補正した傾斜角とし,/さらに,前記ベース側部と前記反ベース側部との両者を結ぶ湾曲部分は,正弦曲線の一部となるように構成されたことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項11】前記ブラケット本体は,ロンボイド形の形状であり,前記ロック部材の反ベース側部の近遠心両縁部および前記ベース側部の近遠心両縁部がブラケット上方から見たときに,ブラケット近遠心縁部に沿って平行であり,且つ前記反ベース側部の近遠心方向に延びる各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行に形成されたことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項12】前記ブラケット本体は,アー ース側部の近遠心方向に延びる各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行に形成されたことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項12】前記ブラケット本体は,アーチワイヤスロットが歯軸に対して傾斜したカットアンギュレーション型であり,前記ロック部材の反ベース側部の近遠心方向に延びる各縁部が前記アーチワイヤスロットに平行になるように構成されたことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項13】前記ロック部材が超弾性部材にて構成されたことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項14】前記ロック部材がβ・チタニウム合金にて構成されたことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項15】前記ロック部材がクローム(Cr)およびモリブデン(Mo)を含有するコバルト-ニッケル基合金(Co-Ni基合金)にて構成されたことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項16】前記ロック部材が加工硬化型ニッケル-チタニウム(Ni-Ti) 合金にて構成されたことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項17】前記ブラケット本体がトルクインベース構造であり,前記ロック部材のベース側部がトルクに応じて傾いたベースに平行に位置するように構成されたことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の歯列矯正ブラケット。 【請求項18】前記ロック部材のベース側部が前記ベース上を摺動するように構成されたことを特徴とする請求項17に記載の歯列矯正ブラケット。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。 ベース側部が前記ベース上を摺動するように構成されたことを特徴とする請求項17に記載の歯列矯正ブラケット。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。 要するに,本件発明は,いずれもAと原告の従業員Bが共同して発明したものであるから,この両名が本件発明について特許を受ける権利を共有している。 しかし,本件特許出願は,原告が単独で行っており,A及びBが各自有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分のいずれも,本件特許出願前に,原告に譲渡されていなかった。 したがって,本件特許は,①A及びBのいずれからも特許を受ける権利を承継しなかった原告の本件特許出願に対してされたものであるから,平成23年法律第63号による改正前の特許法123条1項6号に該当し,また,②本件特許出願は,少なくともAと共同でなければできなかったものであるにもかかわらず,原告が単独で行ったものであるから,同法123条1項2号にも該当し,無効にされるべきものである。 ⑵ 本件審決は,その判断の前提として,本件発明1の特徴的部分は,①ロック部材の反ベース側部の中央に切欠き部が設けられており,②ブラケット本体の係止溝の長手方向中央部分に,上記切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されている点である旨認定した。 なお,本件発明1の特徴的部分は,本件審決の前記認定のとおりであり(後記第4の1⑵イ),当事者間に争いはない。 4 取消事由⑴ Aを本件発明の共同発明者とした認定・判断の誤り(取消事由1)⑵ 原告が本件発明について特許を受ける権利を承継していないとした認定・判断の誤り(取消事由2)⑶ 本件審判の審理不尽(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(Aを本 由1)⑵ 原告が本件発明について特許を受ける権利を承継していないとした認定・判断の誤り(取消事由2)⑶ 本件審判の審理不尽(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(Aを本件発明の共同発明者とした認定・判断の誤り)について〔原告の主張〕本件発明は,Bが単独で発明したものであるから,Aを本件発明の共同発明者とした本件審決の認定・判断は,誤りである。 ⑴ 本件発明1の特徴的部分の着想者について本件審決は,概要,Aは,平成11年5月に開催された米国矯正歯科学会の会合において,Bと共同開発をしていた歯列矯正ブラケットにつき,「縁から離れたブラケットの係止溝の部位にリブかブロックを設ける着想」をスケッチして出席者に見せたとして,Aにおいて本件発明1の特徴的部分の着想に関与したことがうかがわれる旨認定したが,以下のとおり,本件発明1の特徴的部分は,Bが単独で着想したものであるから,上記認定は誤りである。 ア本件発明1の特徴的部分の着想に関する経緯について本件発明1の特徴的部分は,以下のとおり,Bが,平成11年5月17日,米国矯正歯科学会の会場に展示されていたSTRITE社のSPEEDブラケットを観察していた際に,着想したものである。 (ア) Bが本件発明1の特徴的部分の着想に至るまでの経緯についてaBは,平成11年当時,原告の開発部部長として,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケット製品を開発する責任者の立場にあった。Bは,同年5月,米国矯正歯科学会に出席するために渡米し,その際,部下に作成させた上記製品の構想図であるCAD図面(甲32の1の,手書きによる書き込みがないもの。以下, 甲32の1を「本件図面」という。別紙1参照)を携えていた。 本件発明1は,セルフライゲーション せた上記製品の構想図であるCAD図面(甲32の1の,手書きによる書き込みがないもの。以下, 甲32の1を「本件図面」という。別紙1参照)を携えていた。 本件発明1は,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットにおいて,①アーチワイヤが係止溝にはまり込むのを防止すること及び②外力によるアーチワイヤのねじれを制御すること(トルクコントロール)を主な課題とし,これらを解決する手段として,係止溝の長手方向中央部分に突出したリブを形成し,クリップ(ロック部材を指す。以下同じ。)の中央に上記リブに対応する切欠き部を設けるという構成を提供するものである。 前記CAD図面には,上記課題及びその解決手段のいずれも記載されておらず,このことから,Bは,米国矯正歯科学会に参加するまでは,本件発明1の構成のみならず,課題にも気付いていなかったということができる。 bBは,平成11年5月16日,原告が歯列矯正器材の独占的販売権を与えていた米国法人であるGACインターナショナル・インク(以下「GAC」という。)のCらとの会議に出席した。このときは,Aは同席していなかった。 当時,原告の競合他社であったSTRITE社は,一対のタイウイングを備えたシングルブラケットである同社のSPEEDブラケットにおいて,クリップの左右の動きの制御及びトルクコントロールの確保を目的として,係止溝の両端にリブ(トルキングレール)を設ける構成を採用していた。 原告の歯列矯正ブラケットは,2対のタイウイングを備えたツインブラケットであったが,Cは,原告の歯列矯正ブラケットにおいてもトルクコントロールを確保する必要があり,そのために,SPEEDブラケットの前記構成と同様の構成の採用を提案した。Bも,前日又は当日の会議前,SPEEDブラケットの構成を見て,トルクコ トにおいてもトルクコントロールを確保する必要があり,そのために,SPEEDブラケットの前記構成と同様の構成の採用を提案した。Bも,前日又は当日の会議前,SPEEDブラケットの構成を見て,トルクコントロールの確保は,原告の歯列矯正ブラケットにおいても解決すべき課題である旨認識していた。もっとも,Cの前記提案の採否については,結論に至らず,検討課題として残された。 cBは,平成11年5月17日,米国矯正歯科学会の会場に展示されたSPEEDブラケットを観察していたとき,原告の歯列矯正ブラケットにおいてリブを係 止溝の両端に設けることは,金型製作上の問題から困難であることに気付いた。同時に,リブを係止溝の中央部分に設ければ,上記問題は生じず,トルクコントロールも確保できることを思いついた。 さらに,Bは,リブを係止溝に設けることによって,矯正初期に使用する細いアーチワイヤが係止溝にはまり込むことを防止し得ることに気付き,同防止は,トルクコントロールの確保よりも重要な課題ではないかと考えた。加えて,リブの設置場所を係止溝の中央部分にすれば,係止溝がオープンエンドになるので,ローテーションコントロールも容易にできるようになることにも,気付いた。 この時点において,Bは,リブを係止溝の中央部分に設けることによって,①トルクコントロールの確保のみならず,②アーチワイヤが係止溝にはまり込む事態の防止及び③良好なローテーションコントロールの確保という別個の課題も解決可能であることを発見した。また,リブを係止溝の中央部分に設ける以上,その係止溝に入るクリップ先端の中央にリブの形状に対応した切欠き部を設ける必要があることも認識し,本件発明1の特徴的部分を着想するに至った。 (イ) 平成11年5月18日の会議(以下「本件会議」という。)につ 入るクリップ先端の中央にリブの形状に対応した切欠き部を設ける必要があることも認識し,本件発明1の特徴的部分を着想するに至った。 (イ) 平成11年5月18日の会議(以下「本件会議」という。)について平成11年5月18日,原告の製品開発の方向性を協議するために本件会議が開催された。本件会議には,BとAが出席していた。 Aは,トルクコントロール,すなわち,外力によるアーチワイヤのねじれの制御という課題が話題になった際,SPEEDブラケットと同様に係止溝の両端にリブを設けることを提案した。 Bは,係止溝の中央部分にリブを設けることを提案し,これによって,上記課題に加え,アーチワイヤが係止溝にはまり込む事態を防止するなど,それまで注目されていなかった別の課題も解決される旨を説明した。Bは,本件図面に,係止溝の長手方向中央部分にリブを設けることを示す略正方形の図を書き込むとともに,同リブによってアーチワイヤが係止溝にはまり込む事態を防止するという課題も解決されるという趣旨で,「ワイヤーが上がらないようにするブロック板 φ014” が抜けない」と記載した。 Aは,本件会議においては,Bの前記提案に同調せず,本件図面に,係止溝の両端にリブを設ける旨の書き込みをした。なお,Aは,技術者ではないことから製図に疎く,誤ってアーチワイヤスロットの部位に上記リブを書き込んだ。歯列矯正器具の技術者であるBが,係止溝とアーチワイヤスロットを取り違えてこのような書き込みをすることは,あり得ない。 (ウ) 本件会議後の経緯についてa その後,Cは,Dを発明者とする米国特許第5906486号(以下「米国特許486号」という。)の発行を知り,Aに対し,係止溝の両端にリブを設けるという同人が提案した構成を採用すれば米国特許486号に抵触してし は,Dを発明者とする米国特許第5906486号(以下「米国特許486号」という。)の発行を知り,Aに対し,係止溝の両端にリブを設けるという同人が提案した構成を採用すれば米国特許486号に抵触してしまうので,異なる構成を採らざるを得ない旨を伝えた。 これに対して,Aは,係止溝の中央部分にリブを設けるというBが提案した構成を採用すれば米国特許486号に抵触することもなく,係止溝の両端にリブを設けた場合に生じる金型製作上の問題も回避できるとして,自身の提案を撤回し,Bの提案した構成の採用を提言した。 他方,Bも米国特許486号の発行を知ったが,CとAとの間で上記のやり取りがあったことは知らなかった。Bは,A及び自身の提案のいずれも米国特許486号に抵触するものと誤解し,係止溝にリブを設けない構成の図面を作成してCに送付し,同構成に沿った歯列矯正ブラケットの20倍モデルの製作を進めていた。Bは,当時,クリップの素材をニッケルチタンからステンレス鋼に変更してクリップの強度を上げれば,アーチワイヤが係止溝にはまり込むという事態をある程度回避できるのではないかと考えていた。 bBは,Aが前記のとおり係止溝の中央部分にリブを設けるという構成は米国特許486号に抵触しない旨の見解を有していることを知ったことから,同構成の採用を決定し,その概要をノートに書き記す作業を始めた。そして,歯列矯正ブラケットの20倍モデルも,同構成を採用したものに変更することとした。 cBは,係止溝の中央部分にリブを設けた歯列矯正ブラケットの20倍モデルをAに送付した。Aは,同20倍モデルを受領して本件発明1の特徴的部分に係る構成が機能することを確認し,発明者であるBに対する賛辞を表明した。 原告の依頼を受けた特許事務所は,Bが作成した前記ノートに基 送付した。Aは,同20倍モデルを受領して本件発明1の特徴的部分に係る構成が機能することを確認し,発明者であるBに対する賛辞を表明した。 原告の依頼を受けた特許事務所は,Bが作成した前記ノートに基づいて,本件特許出願の願書及びその請求項の英訳文を作成し,この英訳文は,願書に添付する予定の図面と共にAに転送された。Aは,原告に対し,転送された書面について数点のコメントを返したが,原告は,【図9】に関するもの以外は採用せず,本件特許出願をした。 イ Cの認識について平成11年当時GACの国内販売部長を務めていたEは,陳述書において,「C氏が多数の会話の中で,スロットブロッカー発明についてBを称賛していたことを覚えております。」などと述べていることによれば,Cは,本件発明1の特徴的部分がBの単独発明である旨認識しており,これは,本件発明1がBの単独発明であることを裏付ける事実である。 ウ Aの関与についてAは,原告の製品に本件発明1の特徴的部分に係る構成が採用されるに至った経緯に関与しているが,原告の製品についてのアドバイスとして前記採用を提言したにすぎない。このことは,以下の各事実によっても裏付けられる。 (ア) Aは,C宛ての平成11年6月7日付け書簡において,「最も良い提案は,0.14ワイヤーが2つの係止溝にはまり込むのを防止するために,単に,半円状の金属製の堅固なブロックをウィング間の部位に置いておくというものでした。 我々は,B氏と議論したようにこれを設計図に書き込むことを検討すべきであり,また,当然それを直ちに保護すべきです。私は,その出願にAとB(の名前)を用いることを提案します。」と述べた。 (イ) Aは,C宛ての平成11年9月21日付け電子メールにおいて,本件発明1の特徴的部分が本件発明の課題について きです。私は,その出願にAとB(の名前)を用いることを提案します。」と述べた。 (イ) Aは,C宛ての平成11年9月21日付け電子メールにおいて,本件発明1の特徴的部分が本件発明の課題について所望の効果を奏するというBの意見につ き,「Wearecorrect(我々が正しい)」ではなく,「Youarecorrect(貴方が言うとおり)」と表現し,Bに賛辞を贈るなど,本件発明1がBの単独発明であり,A自身は共同発明者ではないことを自認する趣旨のことを述べた。 (ウ) Aは,GACから支払われる特許実施料収入を対価として製品開発に関与していたにもかかわらず,何ら契約関係を有しない原告の求めに応じて,本件特許出願を優先権の基礎として米国にされた出願(米国特許第6368105号に係る出願。以下,米国特許第6368105号を「米国特許105号」という。)に係る譲渡書を原告に送付する旨の意思表示をした。これは,本件発明1の共同発明者としては,経済的合理性を欠く行動である。 (エ) Aは,本件特許出願の願書の英訳文を受領し,その1頁を見て原告が単独出願人になっていることを知りながら何ら異議を述べず,単に「従前の特許と関連するような形にするため」に発明者欄の筆頭に自身の氏名を記載するよう要望したにとどまった。 (オ) Aは,本件特許出願後,本件発明について特許を受ける権利に係る自身の共有持分を原告に譲渡したことはないという趣旨の平成25年1月10日付け書簡を原告に送付するまで,13年以上にわたる長期間,本件特許に関する権利主張,問合せを一切せず,特許年金の支払に関する確認もしなかった。 エ被告の主張について被告は,Aが本件会議において係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分を提案し(本件図面), 合せを一切せず,特許年金の支払に関する確認もしなかった。 エ被告の主張について被告は,Aが本件会議において係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分を提案し(本件図面),その後も,具体的な図面を作成して同様の提案を継続した旨主張するが,前記ウの点に加え,以下の点によれば,同主張は,理由がない。 (ア) 被告は,本件図面のうち,上方にある図面の中央部分に見られる手書きによる略半円状の書き込みにつき,リブが係止溝の中央部分に位置する構成を示したものである旨主張する。 しかし,上記書き込みは,Aが甲第54号証の書簡において,「ピンセットツー ルがクリップを開放するための支点として機能するために半円状の凹み」と表現した部位,すなわち,クリップの開放ツールを挿入するための凹み部であり,係止溝のリブではない。 したがって,被告の前記主張は,誤りである。 (イ) 前記アのとおり,Aは,本件図面に,係止溝の両端にリブを設ける構成を示す書き込みをした。 この点に関し,Cも,甲第17号証の会議議事録において,Aが前記構成を超える提案をしなかった旨を明示している。 ⑵ Aによる歯列矯正ブラケットの20倍モデルの試験及び分析について本件審決は,本件発明1の完成時期に関し,本件発明1は,その特徴的部分を備えた歯列矯正ブラケットの作用効果について矯正歯科の臨床医という立場から試験や分析等によって確認及び検討をする必要があり,その確認及び検討をして初めて完成したものということができると認定した。そして,本件審決は,同認定に係る事実を前提として,Aが平成11年9月21日の時点において前記歯列矯正ブラケットの20倍モデルの試験及び分析を行っていたことをもって,同人は少なくとも本件発明1の特徴的部分の完成に創作的 認定に係る事実を前提として,Aが平成11年9月21日の時点において前記歯列矯正ブラケットの20倍モデルの試験及び分析を行っていたことをもって,同人は少なくとも本件発明1の特徴的部分の完成に創作的な寄与をしたものと認められる旨判断したが,以下によれば,上記認定・判断は,誤りである。 ア本件発明1の完成時期について(ア) 本件発明1の完成時期は,前記⑴ア(ア)のとおりBが平成11年5月17日に本件発明1の特徴的部分を着想した時点である。Aによる前記歯列矯正ブラケットの20倍モデルの試験及び分析は,本件発明1の完成後に行われたものにすぎないから,本件発明1の完成に寄与したものということはできない。 (イ) 歯列矯正ブラケットにおいて,①係止溝にリブを設ければ,アーチワイヤが係止溝内にはまり込むという事態は,物理的に生じ得ないこと,②リブの形状に対応してロック部材の先端部分を凹ませれば,同先端部分は,物理的に位置規制され,アーチワイヤスロット長手方向への動きやねじれが制限されること,③係止溝 の中央部分にリブを設ければ,その形状に対応するロック部材の先端部分は凹型となるから,構造上,その先端部分の幅をアーチワイヤスロットの長さ以上にすることができ,それによって,ロック部材の先端が近遠心方向に押さえる距離をブラケット本体の構造に制約されることなく大きくすることができることは,いずれも物理的構造から必然的に導かれる自明のことである。 以上の点に鑑みると,本件発明1の特徴的部分に係る構成の採用によって,①アーチワイヤがアーチワイヤスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態を回避する,②ロック部材の先端部分のアーチワイヤスロット長手方向への動きやねじれを制限する,③ロック部材の先端の近遠心方向に押さえる距離をブラケット本 ロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態を回避する,②ロック部材の先端部分のアーチワイヤスロット長手方向への動きやねじれを制限する,③ロック部材の先端の近遠心方向に押さえる距離をブラケット本体の構造に制約されることなく大きくすることができるという本件発明の課題を解決する効果が得られるのは,実験をするまでもなく,明らかである。そして,これらは,純粋に機構的な作用効果に係るものであって,患者の歯列の状態によって左右されるものではないから,矯正歯科の臨床医の試験及び分析によって確認される性質のものではない。 しかも,Aが前記歯列矯正ブラケットの20倍モデルの試験及び分析を行っていたのは,平成11年9月21日頃であるところ,同年10月8日の本件特許出願の際,願書に添付された明細書は,Bが同年7月30日から同年8月3日にかけて作成したノート及び同年9月2日付けの同人のノートに記載された素案に基づいて作成されており,Aによる試験及び分析の結果は反映されていない。この点に鑑みると,本件発明1の作成時期について本件審決のように解するのであれば,本件特許は,未完成の発明を対象とするものになってしまう。 イ Aによる試験及び分析の内容についてAが試験及び分析の対象とした歯列矯正ブラケットの20倍モデルは,ロック部材については,実物の20倍にすると約3mmの厚さになって本来の操作力で開閉することができなくなるので,その約6分の1の厚みを有するバネ素材が用いられている。したがって,前記20倍モデルの試験及び分析によって,実物の歯列矯正 ブラケットのロック部材の動作確認をすることは,不可能である。 前記20倍モデルは,矯正歯科医として実際のユーザーの立場にあるAに製品の外観と基本的構造を確認してもらった上,製品紹介のレクチャーに使用 ケットのロック部材の動作確認をすることは,不可能である。 前記20倍モデルは,矯正歯科医として実際のユーザーの立場にあるAに製品の外観と基本的構造を確認してもらった上,製品紹介のレクチャーに使用してもらうためのものにすぎなかった。 しかも,Aは,原告に対し,前記20倍モデルにつき,試験結果と呼ぶことができるような具体的な報告をしておらず,特に,本件発明1の特徴的部分については,平成11年9月21日付け電子メールにおいてBに対する賛辞を述べたほかは,何らコメントしていない。 以上によれば,Aによる前記20倍モデルの試験及び分析は,その内容自体,本件発明1の特徴的部分の完成に創作的な寄与をするものということはできない。 ウ被告の主張について(ア) 被告は,薬事法の規定等を挙げて,矯正歯科の臨床医であるAによる試験及び分析は,本件発明1の完成に不可欠なものであったとして,本件発明1の完成時期は,Aが,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた20倍モデルなどの試作品について良好な結果が得られるまで試験を行い,実用に際して期待されたとおり機能し,かつ,障害を生じないことが確認された時点である旨主張する。 しかし,前記アに加えて以下の点に鑑みると,上記主張は,理由がない。 (イ) そもそも薬事法は,保健衛生を目的として医療機器等の製造,販売等を規制するものであり,医療機器に関する発明の完成の要件を定めたものではない。 また,確かに,平成11年当時,薬事法上,歯列矯正ブラケットの製造には厚生大臣の承認が要求されており,歯科材料の製造承認申請に必要な物理的・化学的試験について適用されていた通知によれば,専門知識を有する技術者の判断による最適と思われる試験方法の選択及び試験の適正な実施が求められていた。 しかし,本件発明1に 承認申請に必要な物理的・化学的試験について適用されていた通知によれば,専門知識を有する技術者の判断による最適と思われる試験方法の選択及び試験の適正な実施が求められていた。 しかし,本件発明1に係る歯列矯正用ブラケットのような金属系の矯正用ブラケット材に関する専門知識を有する技術者は,矯正歯科ではなく,工学の専門家である。現に,本件発明1を製品化したものについては,原告の従業員及び社団法人が 各種試験を実施しており,原告は,その試験成績書を添付して製造承認の申請を行い,厚生大臣の承認を得たが,その際,矯正歯科医の臨床試験を要求されたことはなかった。 ⑶ 本件特許出願の願書及び本件特許出願を優先権の基礎とする米国特許105号に係る明細書にAが発明者として記載されていることについて本件審決は,上記記載に関し,本件特許出願は,本件発明1を主たる発明としており,また,米国特許105号も,本件発明1とほぼ同じものであるクレーム1に係る発明を主たる発明としているところ,特段の事情がなければ,願書等に記載された発明者は,主たる発明の発明者であるものと推認できるとしているが,この判断は,誤りである。 すなわち,日米いずれの特許出願実務においても,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合,それらのうち一部の請求項に係る発明のみが共同発明であっても,また,請求項ごとに発明者が異なっていても,発明者欄には,いずれかの請求項に係る発明の発明者を全員記載しており,請求項ごとに発明者を特定して記載する運用は実施されていない。特に,米国の特許出願については,米国特許商標庁が用意する譲渡書のモデルフォームも,クレームを特定して権利を譲渡する形式のものではなく,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合,それ 米国の特許出願については,米国特許商標庁が用意する譲渡書のモデルフォームも,クレームを特定して権利を譲渡する形式のものではなく,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合,それらのうち一部の請求項に係る発明のみが共同発明であっても,また,請求項ごとに発明者が異なっていても,譲渡対象の出願に係る権利を請求項ごとに書き分けることはできない。一般に,当該出願に係る権利を包括的に譲渡することが予定されている。 したがって,本件特許出願の願書及び米国特許105号に係る明細書のいずれにおいてもAが発明者として記載されていることは,Aが本件発明1の発明者であることを推認させる事実ということはできない。 ⑷ 本件発明2から18について本件発明9及び14は,BとAの共同発明であるが,本件発明2から8,本件発 明10から13のうち請求項9に対する直接的又は間接的な従属関係を有しない部分,本件発明15から18のうち請求項9又は14に対する直接的又は間接的な従属関係を有しない部分は,Bの単独発明である。 ⑸ 発明者の認定方法の誤りについて以下のとおり,本件審決の発明者の認定方法は,立証責任の観点からも,誤りである。 冒認出願又は共同出願違反を理由とする特許無効の主張がされた場合,特許権者の主張に係る発明者以外の者が当該特許発明の共同発明者であることの立証責任は,無効を主張する者が負担するものと解される。 本件においては,被告において,Aが本件発明の共同発明者であることについて立証責任を負担するべきである。したがって,被告は,前記⑷のとおり,原告がBの単独発明として主張する本件発明2から8,本件発明10から13のうち請求項9に対する直接的又は間接的な従属関係を有しない部分,本件発明15から18のうち請求項9 ,被告は,前記⑷のとおり,原告がBの単独発明として主張する本件発明2から8,本件発明10から13のうち請求項9に対する直接的又は間接的な従属関係を有しない部分,本件発明15から18のうち請求項9又は14に対する直接的又は間接的な従属関係を有しない部分について,Aが共同発明者であることを高度の蓋然性が認められる程度に立証することを要するが,同要証事実を証明する実質的な証拠を提出していないことから,Aが共同発明者であると認定することはできない。 ⑹ Aの発明者性を否定する原告の主張は,禁反言として許されない旨の被告の主張についてア原告は,本件発明9,本件発明10から13のうち請求項9に対する直接的又は間接的な従属関係を有する部分,本件発明14,本件発明15から18のうち,請求項9又は14に対する直接的又は間接的な従属関係を有する部分については,AとBの共同発明であることを認めている。そして,日本においては,特許出願実務上,特許願書の法定の様式上,発明者については,発明者の欄に住所又は居所及び氏名のみを記載することが要求されているので,前記⑶のとおり,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合において,請求項ごとに発明 者を特定して記載することができず,いずれかの請求項に係る発明の発明者を全員発明者欄に記載せざるを得ない。 原告としては,本件発明の一部が前記のとおりBとAとの共同発明である以上,本件特許出願の願書の発明者欄にAの名を記載せざるを得なかったのであるから,この記載は,禁反言の理由にならない。 イまた,米国においても,特許出願実務上,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合,宣誓書(oath)又は宣言書(declaration)においては,請求項ごとに発明者を特定 イまた,米国においても,特許出願実務上,1つの特許出願の特許請求の範囲に複数の請求項が記載される場合,宣誓書(oath)又は宣言書(declaration)においては,請求項ごとに発明者を特定して記載するのではなく,いずれかの請求項に係る発明の発明者全員が発明者として宣誓又は宣言する形式が採用されている。 したがって,米国特許105号の宣言書において,AがBと並んで,請求項を特定することなく,「theoriginal, firstandsoleinventor(原初かつ最初で唯一の発明者)」である旨を宣言して署名していることは,両名が全ての請求項に係る発明の共同発明者であることを示すものではない。 ウ前記イのとおり,米国の特許出願実務上,発明者を請求項ごとに書き分けることはしていない以上,原告がAに対し,請求項を特定することなく米国特許105号に係る特許を受ける権利の共有持分の譲渡を打診したことは,本件訴訟における原告の主張と矛盾するものではない。 エ米国特許105号は,いまだ原告の単独保有となっていないが,これは,Aが署名した譲渡契約書を送付せず,原告との間の譲渡合意を履行していない状態が継続しているからであり,原告がAを米国特許105号の共同発明者として認識していることを示すものではない。 〔被告の主張〕本件発明は,BとAが共同で発明したものであるから,同旨の本件審決の認定・判断に誤りはない。 ⑴ 本件発明1の特徴的部分の着想者についてア本件発明1の特徴的部分の着想に関する経緯について 以下のとおり,Aが本件会議において係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分を提案し(本件図面),その後も,具体的な図面を作成して同様の提案を継続していたところ,Bが,平成11年7 以下のとおり,Aが本件会議において係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分を提案し(本件図面),その後も,具体的な図面を作成して同様の提案を継続していたところ,Bが,平成11年7月29日にGACからのファクシミリを受けて,ようやく上記提案を評価してこれを採用することとし,本件特許出願に向けたノート(甲41の1)の作成に着手したことを,合理的に認めることができる。 (ア) 本件図面についてaAは,本件会議の際,BやCらの同席の下,縁から離れたブラケットの係止溝の部位にリブかブロックを設ける着想をスケッチして出席者に見せた旨述べている。 この点に関し,本件図面のうち,上方にある図面の中央部分に見られる手書きによる略半円状の書き込みについて,Bは,まずAが黒色で書き込み,その後にB自身が再確認のために赤色でなぞった旨を述べているところ,この書き込みは,Aによる前記スケッチである可能性が高い。そして,上記書き込みは,リブが係止溝の中央部分に位置する構成を示したものであることは,明らかである(甲54)。 b 仮に,前記略半円状の書き込みがAの提案に係るクリップの開放ツールを挿入するための凹み部を示したものであったとしても,Aが前記書き込みと同じ位置にリブを設けることを提案したことは,明らかである。 すなわち,上記位置は係止溝の中央部分であるところ,ここにクリップ開放ツールの一端を挿入する凹み部を設けるということは,必然的に,閉じ位置のクリップに覆われて隠れない位置に凹み部を設けることを意味するものであり,それは,係止溝の長手方向中央部分にリブを設け,その上に凹み部を設ける構造にほかならない。 (イ) 甲第52号証の書簡及び甲第57号証の図面についてAは,本件会議の2週間余り後の平成11年6月7日付け 止溝の長手方向中央部分にリブを設け,その上に凹み部を設ける構造にほかならない。 (イ) 甲第52号証の書簡及び甲第57号証の図面についてAは,本件会議の2週間余り後の平成11年6月7日付けで,Cに対し,甲第52号証の書簡を送付した。Aは,同書簡に,本件発明1の課題を挙げ,その解決の ためには,リブを係止溝の端部ではなく中央部分に設けることが必要であることを改めて提唱するとともに,AとBの氏名を出願に用いることを提案して本件発明1が両名の共同発明であることを確認している。 甲第57号証の5丁目の図面には,係止溝の中央部分にリブを設けるブラケット本体の構成及びそのリブに対応する切欠き部を設けるクリップの構成という,本件発明1の特徴的部分に係る構成が示されており,6丁目の図面にも,係止溝の中央部分にリブを設けるブラケット本体の構成が示されている。これらの図面は,甲第52号証の書簡とともに,AからCに送付された可能性が高い。 (ウ) 甲第53号証の図面について甲第53号証の2丁目から10丁目は,Bが平成11年7月21日付けでCに送信したファクシミリの送り状及び添付図面であるところ,同図面には,係止溝にリブを設けないブラケット本体の構成が記載されている。これは,Bが,本件会議以降も,本件発明1の特徴的部分を備えた具体的構成について着想も提案もしていなかったことの証左である。 この点に関し,原告は,Bは,当初,係止溝の中央部分にリブを設ける構成は,Dを発明者とする米国特許486号に抵触するものと誤解して,係止溝にリブを設けないブラケット本体の構成を記載した図面をCに送付した旨主張するが,以下のとおり,同主張は,理由がない。 すなわち,甲第53号証には,上記主張を裏付ける記載も示唆もなく,また,平成11年当時,Bが いブラケット本体の構成を記載した図面をCに送付した旨主張するが,以下のとおり,同主張は,理由がない。 すなわち,甲第53号証には,上記主張を裏付ける記載も示唆もなく,また,平成11年当時,Bが,歯列矯正器具の設計開発を担当する開発部部長職にあり,新製品開発,特許出願等にも携わっていたことに鑑みると,Bにおいて前記誤解をすることは,考え難い。加えて,「開発・設計計画書」(甲15の1丁目)中,同年6月10日の追記部分の記載によれば,Bを含む原告の担当者は,遅くとも同日の時点において,米国特許486号が開示する歯列矯正器具のブラケット本体の構成は,係止溝の両端にリブを設け,そのリブはウイングと連続しておらず,リブとウイングとの間にすき間があるというものであることを,正しく理解していたことになる。 (エ) 甲第54号証の書簡についてAは,前記(ア)及び(イ)のとおり,本件会議及びC宛ての平成11年6月7日付け書簡において,係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分に係る構成を重ねて提案していたが,前記(ウ)のとおり,Bから,係止溝にリブを設けないブラケット本体の構成が記載された図面(甲53)を含むファクシミリを,GACを介して受け取った。 そこで,Aは,平成11年7月26日付けで,Cに対し,ウィング間に位置するスロット歯肉壁の小さなスロットブロッカーが各図面において示される必要がある旨の甲第54号証の書簡を送付した。同書簡には,「スロットブロッカー」と対応する「クリップの相補的な切欠き」をAが手書きで示した図面が添付されている(甲54の3丁目の図面。別紙2参照)。 (オ) 甲第41号証の1及び甲第42号証の1のノートについてBは,平成11年7月29日付けで,GACから,Aから送付された同年6月7 添付されている(甲54の3丁目の図面。別紙2参照)。 (オ) 甲第41号証の1及び甲第42号証の1のノートについてBは,平成11年7月29日付けで,GACから,Aから送付された同年6月7日付け書簡及びその添付図面並びに同年7月26日付け書簡及びその添付図面を,ファクシミリで転送された。 前記(イ)及び(エ)のとおり,前記添付図面には,係止溝の中央部分にリブを設けるという本件発明1の特徴的部分に係る構成が記載されており,Bは,これらを見た上で,甲第41号証の1のノートを作成した。さらに,Bは,Aの提案に基づいて甲第42号証の1のノートを作成した。 (カ) 小括以上のとおり,Bは,甲第41号証の1及び甲第42号証の1のノートを除き,本件発明1の特徴的部分を客観的に示す具体的な構成を記載した書面等の記録を作成しておらず,当時勤務していた原告に,発明を届け出ることもしなかった。甲第41号証の1及び甲第42号証の1のノートには,本件発明1の特徴的部分に係る構成が示されているものの,これは,BがAの作成した図面を見て記載したものである。 他方,Aは,本件発明1の特徴的部分を具体化した図面を作成し,その採用を提案し続けていた。 イ原告の主張について原告は,Bが,平成11年5月17日に本件発明1の特徴的な部分を着想した旨主張するが,当時,Bは,実用化の可否も定かではない,抽象的な構想を抱いたにすぎず,同構想は,発明としては未完成であった。 (ア) 本件図面の手書き部分についてAとBは,相手の話を聞きながら技術事項を議論し,本件図面に書き込みをしていた。この点に鑑みると,本件図面の手書き部分については,それを実際に書いた者がA又はBのいずれであったとしても,相手の話を聞き取って記載した可能性や, ら技術事項を議論し,本件図面に書き込みをしていた。この点に鑑みると,本件図面の手書き部分については,それを実際に書いた者がA又はBのいずれであったとしても,相手の話を聞き取って記載した可能性や,自身と相手の話のまとめとして記載した可能性は,十分にある。また,Bが会議後に単独で書き込んだという部分についても,それは,会議においてAと協議した内容を書いたものであり,会議後にBが単独で着想した内容を記載したものではない。 以上によれば,本件図面の手書き部分については,原告主張に係る記載者が単独で着想したものということはできず,BとAが共同で着想したものというべきである。 (イ) 本件図面の手書き部分のうち,「ワイヤーが上がらないようにするブロック板 φ014’’が抜けない」という記載について本件発明1において,「リブ」という語は,表面から突起する部材という趣旨で使用されていると解されるが,「ブロック板」という語は,板状の部材を意味するものとして理解し得るにとどまり,また,本件図面上,同部材の幅も不明である。 たとえ「ブロック板」が本件発明1の「リブ」に相当するとしても,本件図面上,「ブロック板」の位置は,全く特定されていない。 また,「ブロック板」の機能については,アーチワイヤとの関係についてのみ説明されており,本件発明1の特徴的部分に係る構成である,反ベース側部の中央に切欠き部が設けられた弾性体から構成されるロック部材についての示唆を読み取る ことはできない。 以上によれば,前記記載には,本件発明1の特徴的部分が示されているということはできない。 ⑵ 本件発明1の完成時期について本件発明1の完成時期は,Aが,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた20倍モデルなどの試作品について良好な結果が得られるまで試験 いるということはできない。 ⑵ 本件発明1の完成時期について本件発明1の完成時期は,Aが,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた20倍モデルなどの試作品について良好な結果が得られるまで試験を行い,実用に際して期待されたとおり機能し,かつ,障害を生じないことが確認された時点と解すべきである。 ア歯列矯正ブラケットに係る試験について歯列矯正ブラケットは,薬事法所定の管理医療機器に該当し,その製造販売は,厚生労働大臣の登録を受けた登録認証機関による認証を受けなければならず,同認証を受けるためには,厚生労働大臣が定める医療機器の基準(基本要件基準)に適合することを証する必要がある。そして,「基本要件適合性チェックリスト(歯列矯正用アタッチメント)」に列挙された医療機器の性能及び機能等の項目に適合することを証するためには,当該医療機器の試験を要し,試験方法についての通知の記載によれば,臨床医や研究者等の専門家による試験が一般的に要求されていることがうかがわれる。 セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットについては,日々の業務において患者又は顧客に対してそれを実際に使用する矯正歯科の臨床医による試験並びにその試験結果の分析及び評価が求められる。平成11年当時は,10倍,20倍等の拡大モデルの試作品による試験並びにその試験結果の分析及び評価は,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの製品開発に不可欠な行為であった。 イ Aによる試験及び分析の意義について本件においては,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた歯列矯正ブラケットの20倍モデルを使用した試験の結果を踏まえて,上記構成を備える新規の製品のデザインが全く支障なく想定どおりに機能するよう確実を期す必要性があった。 したがって,臨床医であ 正ブラケットの20倍モデルを使用した試験の結果を踏まえて,上記構成を備える新規の製品のデザインが全く支障なく想定どおりに機能するよう確実を期す必要性があった。 したがって,臨床医であるAによる試験及び分析は,本件発明1の完成に不可欠なものであったということができる。 ウ原告の主張について原告は,本件発明1の完成時期は,Bが平成11年5月17日に本件発明1の特徴的部分を着想した時点である旨主張する。 しかし,本件発明1が上記主張の時期に完成したのであれば,その後,同年10月8日の本件特許出願に至るまで5か月もの期間を要した理由が不明である。また,原告が,わざわざカナダ在住のAに本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた20倍モデルを送付し,同人による試験並びに試験結果の分析及び評価の実施後,しばらく経ってから本件特許出願をしたことについても,合理的に説明することができなくなる。 ⑶ 本件特許出願の願書及び米国特許105号に係る明細書にAが発明者として記載されていることについて原告は,米国特許商標庁が用意している譲渡書のモデルフォームを使用せずに,譲渡人及び譲受人の双方が署名する形式のもので,約因を含み,詳細な契約条件を列挙する「ASSIGNMENT」というタイトルの契約書を自ら作成して,Aに送付した。原告は,上記契約書のドラフティングに当たり,どのような内容でも記載することができたところ,米国特許105号に関し,本件発明1とほぼ同じものであるクレーム1に係る発明を含む全ての特許発明につき,特許を受ける権利の譲渡の申入れをしている。 また,Bが単独で本件発明1を完成させたというのであれば,原告は,自らの単独名義で早期に日本の特許庁に出願し,その後,米国においてBを単独発明者として出願することができたは の申入れをしている。 また,Bが単独で本件発明1を完成させたというのであれば,原告は,自らの単独名義で早期に日本の特許庁に出願し,その後,米国においてBを単独発明者として出願することができたはずであるにもかかわらず,そのような出願をしていない。 これらの事実によれば,原告は,本件発明1を含む本件発明の全てがAとBの共同発明であった旨を認識していたものといえ,したがって,本件特許出願の願書及び米国特許105号に係る明細書のいずれにおいてもAが発明者として記載されて いることは,Aの発明者性を肯定する1つの要素ということができる。 ⑷ 本件発明2及び4から18についてア本件発明2及び4から8について(ア) 原告は,本件特許の特許請求の範囲の請求項19「請求項1に記載の歯列矯正ブラケットの前記アーチワイヤスロットを開放するべく…歯列矯正ブラケット用ツール」の発明については,AとBの共同発明であることを認めている。 本件発明2及び6は,上記歯列矯正ブラケット用ツールを前提とするものであるから,AとBの共同発明である。 (イ) 請求項4は,請求項2に対する従属関係を含むものであるから,本件発明4も,本件発明2と同様に,AとBの共同発明である。 請求項5は,請求項2及び4に対する従属関係を含むものであるから,本件発明5も,本件発明2及び4と同様に,AとBの共同発明である。 (ウ) 請求項7は,請求項2及び4から6に対する従属関係を含むものであるから,本件発明2及び4から6と同様に,AとBの共同発明である。 請求項8は,請求項2及び4から7に対する従属関係を含むものであるから,本件発明2及び4から7と同様に,AとBの共同発明である。 イ本件発明9から18について(ア) 原告は,本件発明9については, は,請求項2及び4から7に対する従属関係を含むものであるから,本件発明2及び4から7と同様に,AとBの共同発明である。 イ本件発明9から18について(ア) 原告は,本件発明9については,AとBの共同発明であることを認めているところ,請求項10は,請求項9に対する従属関係を含むものであるから,本件発明10は,本件発明9と同様に,AとBの共同発明である。 (イ) 請求項11は,請求項9及び請求項10に対する従属関係を含むものであるから,本件発明11は,本件発明9及び10と同様に,AとBの共同発明である。 (ウ) 請求項12は,請求項9から11に対する従属関係を含むものであるから,本件発明12は,本件発明9から11と同様に,AとBの共同発明である。 (エ) 請求項13から16は,いずれも請求項9から12に対する従属関係を含むものであるから,本件発明13から16は,いずれも本件発明9から12と同様 に,AとBの共同発明である。 (オ) 請求項17は,請求項9から16に対する従属関係を含むものであるから,本件発明17は,本件発明9から16と同様に,AとBの共同発明である。 (カ) 請求項18は,請求項17に対して従属しているから,本件発明18は,本件発明17と同様に,AとBの共同発明である。 ⑸ 発明者の認定方法の誤りについて特許権者において,自らの特許出願に係る発明の発明者等から特許を受ける権利の承継を受けたことの立証責任を負担すると解するのが,立証責任の分配上も,合理的である。本件においては,特許権者である原告が,自ら本件特許出願時に共同発明者としたA及びBから本件発明について特許を受ける権利の承継を受けたことにつき立証責任を負担するが,原告は,その立証責任を果たしていない。 ⑹ Aの発明者性を否定す ,自ら本件特許出願時に共同発明者としたA及びBから本件発明について特許を受ける権利の承継を受けたことにつき立証責任を負担するが,原告は,その立証責任を果たしていない。 ⑹ Aの発明者性を否定する原告の主張は,禁反言として許されないことについてア特許出願人が,出願の際,自ら特許庁に提出した願書に共同発明者として記載した者につき,後日,発明者ではないと主張することは,国家機関である特許庁に対して特許法36条1項2号に基づき記載した内容と異なることを公然と主張するものであるから,禁反言に当たり,信義に反するものということができ,許されるべきではない。 イ本件特許の出願人である原告は,自ら作成して特許庁に提出した平成11年10月8日付け願書において,Aを本件発明の共同発明者として記載し,その後,何らの補正もなく本件特許権の設定登録を受け,特許公報にもAが共同発明者の1人として記載されていたにもかかわらず,本件審判時に提出した平成26年3月11日付け審判事件答弁書においては,本件発明の大部分がBの単独発明であり,Aは発明者ではない旨を主張した。 しかも,この間,原告が米国特許105号の出願の際に米国特許商標庁に提出した特許出願宣言書においては,Bが,本件発明の全てはAとの共同発明である旨を 公に宣言している。さらに,原告は,Aが本件発明の発明者であることを前提として,同人に対し,同人が有する米国特許105号に係る特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡することの打診等をしており,同譲渡についてAの同意を得られなかったことから,Bの共有持分のみを譲り受け,現在,米国特許105号に係る特許権をAと共有している。原告において,Aが本件発明の発明者ではない可能性がある旨を初めて主張したのは,本件特許出願後13年以上も経過した平 Bの共有持分のみを譲り受け,現在,米国特許105号に係る特許権をAと共有している。原告において,Aが本件発明の発明者ではない可能性がある旨を初めて主張したのは,本件特許出願後13年以上も経過した平成25年1月である。 以上によれば,AとBの両名が本件発明の発明者であることを否定する原告の主張は,禁反言に当たり,信義に反し,許されるべきではない。 2 取消事由2(原告が本件発明について特許を受ける権利を承継していないとした認定・判断の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は,①Aは,本件特許出願前において,同人が有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡しておらず,また,Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分に関し,原告に譲渡することに同意していない,②Aと原告との間の黙示的合意によって,Aの前記共有持分が原告に譲渡されたということはできず,また,Aが同譲渡を事後的に追認していたということもできない旨判断したが,本件審決の前記判断は,誤りである。 ⑴ Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについてア Aと原告との間の黙示的合意について原告とAとの間において,遅くとも本件特許出願時までには,Aの前記共有持分を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたということができる。 (ア) Aは,C宛ての平成11年9月21日付け電子メールにおいて,本件発明1の特徴的部分が,①アーチワイヤの係止溝へのはまり込み防止及び②外力によるアーチワイヤのねじれの制御という本件発明1の2つの課題を達成して所望の効果 を奏する旨を,「Wearecorrect(我々が正しい)」ではなく,「Youarecorrect(貴方が言うとおり)」と表現し,また,Bに対し 明1の2つの課題を達成して所望の効果 を奏する旨を,「Wearecorrect(我々が正しい)」ではなく,「Youarecorrect(貴方が言うとおり)」と表現し,また,Bに対して賛辞を贈るなど,本件発明1がBの単独発明であり,A自身は共同発明者ではないことを自認する趣旨のことを述べた。 (イ) Aは,本件特許出願後,Aの前記共有持分を原告に譲渡したことはないという趣旨の書簡を平成25年1月10日付けで原告に送付するまで,13年以上にわたる長期間,原告に対し,本件発明に関する権利を譲渡する意思がないことを明示したことはなく,また,本件特許に関する要求,通知,問合せもせず,特許年金の支払に関する確認もしなかった。 イ Aの前記共有持分の譲渡についてのBの同意についてBは,①原告を単独出願人とする本件特許出願の準備を担当していたこと,②Aに対し,同人の米国特許105号に係る共有持分を原告に譲渡する旨の譲渡書の送付を求めていたことによれば,遅くとも本件特許出願時までには,Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡することについて,同意していたということができる。 ⑵ Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについてア原告への譲渡について(ア) B自ら原告単独による本件特許出願の準備を担当していたこと自体,Bにおいて,本件発明の時点から本件特許出願に至るまでの間,一貫して,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡する意思を有していたことの証左である。 Bは,職務発明は原告が承継するという労使慣行に基づき,本件発明の時点において,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡したものということができる。 ことの証左である。 Bは,職務発明は原告が承継するという労使慣行に基づき,本件発明の時点において,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡したものということができる。 仮に,そうでないとしても,Bは,甲第71号証及び甲第72号証の社内連絡書 をもって,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡したものということができる。 (イ) 被告は,原告主張に係る労使慣行は,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3項又は公序良俗(民法90条)に反するとともに,原告の就業規則にも反し,無効である旨主張する。 しかし,職務発明である以上,その特許を受ける権利の事前承継を内容とする労使慣行は,改正前の特許法に反するものでも公序良俗として無効となるような違法性を有するものでもなく,また,原告の就業規則に違反するものでもない。加えて,本件においては,B自身が本件発明について特許を受ける権利を原告に譲渡したことを自認しており,少なくとも原告とBとの関係においては,前記労使慣行を無効とすべき実質的理由は存在しない。 さらに,Bが,甲第71号証及び甲第72号証の社内連絡書をもって,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡したというのであれば,そのような事後的譲渡合意を無効とする法的理由はない。 イ Bの前記共有持分の譲渡についてのAの同意について前記⑴アのとおり,原告とAとの間においては,遅くとも本件特許出願時までには,Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたのであるから,Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡することについて,Aの同意は,不要である。 ⑶ Aによる本件特許出願の を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたのであるから,Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡することについて,Aの同意は,不要である。 ⑶ Aによる本件特許出願の事後的追認について仮に,前記⑴アの黙示的合意が成立していなかったとしても,前記⑴ア(イ)の点に加え,以下の点に鑑みれば,Aは,原告単独による本件特許出願を事後的に追認していたということができる。 ア GACは,平成11年12月頃,原告からの依頼により,本件特許出願の願書の英訳文を作成してAに送付した。 Aは,上記英訳文を見て,原告が単独で本件特許出願をしたこと,したがって, 原告のみが本件特許の特許権者になることを認識したにもかかわらず,この点については異議を述べず,上記願書の発明者欄の筆頭にBの氏名が記載されていることにつき,自身の氏名を筆頭に記載してほしい旨の要望をCに伝えてきたにすぎなかった。 イ米国特許105号に係る発明は,本件発明と実質的に同一のものであるところ,Aは,米国特許105号の出願後に,Bから,Aの米国特許105号に係る共有持分を原告に譲渡する旨の譲渡書の送付を求められた際,これに応じる旨の回答をしていた。この事実によれば,Aは,原告に対し,前記共有持分を原告に譲渡する旨の意思表示をし,Aと原告との間において,前記共有持分を原告に譲渡する旨の合意が成立したことは明らかである。 そして,前記アの点にも鑑みれば,Aによる前記意思表示には,原告単独による本件特許出願を事後的に追認する意思表示も含まれていたものということができる。 〔被告の主張〕Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分につき,原告に譲渡された事実も,Aが原告単独による本件特許出願を事後的に追認した事実も存在せず,本件審 いうことができる。 〔被告の主張〕Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分につき,原告に譲渡された事実も,Aが原告単独による本件特許出願を事後的に追認した事実も存在せず,本件審決の判断に誤りはない。 ⑴ Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについて原告とAとの間において,Aの前記共有持分を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたということはできない。 ア Aが作成したC宛ての平成11年9月21日付け電子メールは,Bに対する儀礼的な賛辞が記載されているにすぎず,本件発明の発明者や本件発明に係る権利の帰属については,何ら言及されていないから,Aにおいて本件発明1がBの単独発明であることを自認する趣旨のものではない。 イ Aが本件特許出願後から平成25年1月10日付け書簡を原告に送付するまでの間,原告に対し,本件発明に関する権利を譲渡する意思がないことを明示する ことなどをしなかった理由は,原告において,Aに対し,本件特許出願を原告単独で行った事実を説明せず,また,Aも,同事実を認識していなかったからである。 ウ原告は,米国特許105号が登録された平成14年以降,現在に至るまで12年以上もの長期間にわたり,米国特許105号の共同発明者であるAが同人の共有持分を原告に譲渡するという内容の譲渡書を送付しなかったことにつき,Aに対してその履行を求めるなどの責任追及をすることなく,放置してきた。この事実は,Aの共有持分を譲渡する合意は,明示,黙示を問わず存在しなかったことを示すものということができる。 ⑵ Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについてア原告への譲渡についてBの前記共有持分が原告に譲渡された事実は, すものということができる。 ⑵ Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについてア原告への譲渡についてBの前記共有持分が原告に譲渡された事実は,認められない。 この点に関し,原告は,Bにおいて,職務発明は原告が承継するという労使慣行に基づき,本件発明の時点において,本件発明について特許を受ける権利又はその共有持分を原告に譲渡したものということができる旨主張する。 しかし,上記労使慣行の存在及び原告の従業員がそのような労使慣行を当然のものとして認識していた事実については,何ら立証されていない。そもそも,原告主張に係る労使慣行は,平成16年改正前の特許法において,職務発明をした従業員に原始的に帰属するとされる特許を受ける権利という重要な権利を,同法35条3項に規定された相当の対価を全く支払うことなく剥奪するというものであり,同項又は公序良俗(民法90条)に反するとともに,原告の就業規則にも反し,無効である。 イ Aの同意について仮に,原告とBとの間においてBの共有持分を原告に譲渡する旨が合意されていたとしても,Aはそのような譲渡について同意しておらず,したがって,上記譲渡合意は無効である(特許法33条3項)。 ⑶ Aによる本件特許出願の事後的追認についてア特許出願の追認の法的効力について特許権の効力の有無は,第三者に大きな影響を及ぼすことであるから,特許について冒認出願又は共同出願違反の無効理由が存する場合,当該特許出願の事後的追認によって当該無効理由が遡及的に解消されると解すべきではない。 したがって,Aが本件特許出願を事後的に追認したとしても,それによって本件特許についての冒認出願又は共同出願違反の無効理由が解消されるものではなく,原告の主張は, に解消されると解すべきではない。 したがって,Aが本件特許出願を事後的に追認したとしても,それによって本件特許についての冒認出願又は共同出願違反の無効理由が解消されるものではなく,原告の主張は,それ自体失当である。 イ Aによる本件特許出願の事後的追認の存否についてAが本件特許出願を事後的に追認していたということはできない。 (ア) Aが作成して原告に送った平成22年11月1日付け電子メール及び同月2日付け書簡は,Aが原告に送付した米国特許105号の「DECLARATIONFORPATENTAPPLICATION」に関するものであり,譲渡契約書に関するものではない。 仮に,原告が,Aに対し,「DECLARATIONFORPATENTAPPLICATION」と共に譲渡契約書のドラフトも送付していたとしても,Aは譲渡契約書に署名しておらず,米国特許105号に係る特許を受ける権利を原告に譲渡しない旨の意思決定をしていたことは明らかである。 したがって,米国特許105号については,Bが有していた特許を受ける権利のみが原告に譲渡され,原告とAが米国特許105号を共有していた。そして,両名の間で,日本における特許出願につき,米国特許105号とは異なる権利者とするという合意がされたはずはない。 (イ) Aが,本件特許出願後から平成25年1月10日付け書簡を原告に送付するまでの間,異議を述べなかった理由は,前記⑴イのとおりである。 3 取消事由3(本件審判の審理不尽)について〔原告の主張〕⑴ 前記1〔原告の主張〕⑵アのとおり,本件発明1の完成時期は,Bが本件発 明1の特徴的部分を着想した時点であるところ,同着想については,Bが単独で着想した旨を述べているのに対し,Aは上記着想に関与した旨を述べており,双方の供 本件発明1の完成時期は,Bが本件発 明1の特徴的部分を着想した時点であるところ,同着想については,Bが単独で着想した旨を述べているのに対し,Aは上記着想に関与した旨を述べており,双方の供述内容が相反している。このような状況下において本件発明1の特徴的部分の着想者を認定するためには,B及びAの証人尋問が不可欠である。 しかし,本件審判においては,両名の証人尋問が実施されないまま,本件審決とおおむね同じ内容の予告審決がされた。 その後,原告においてBの証人尋問の申出等をしたにもかかわらず,何らの応答もないまま,本件審決が出された。 ⑵ この点に関し,本件審決は,概要,「Bのみが本件発明1の特徴的部分の着想に関与したとしても,Aは,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた歯列矯正ブラケットの20倍モデルについての試験及び分析を行ったことにより,本件発明1の特徴的部分の創作に実質的に貢献していたということができるから,Bの証人尋問を実施する必要性は認められない」と判断した。 しかし,この判断は,本件発明1の完成時期を,Aが矯正歯科の臨床医という立場から,本件発明1の特徴的部分に係る構成を備えた歯列矯正ブラケットについての試験及び分析等によりその作用効果を確認及び検討した時点とすることが前提となっていると解されるところ,前記1〔原告の主張〕⑵ウのとおり,同前提自体に誤りがあるというべきである。 ⑶ 以上によれば,本件審判において,Bの証人尋問を実施することなく,本件審決をしたことは,裁量権を超えた審理不尽というべきである。 〔被告の主張〕原告は,本件審判係属中,平成26年3月11日付け審判事件答弁書と共にBの平成26年3月4日付け陳述書を提出し,同人の供述を証拠とする意向を表明しながら,その後,同年6月20日には口 告の主張〕原告は,本件審判係属中,平成26年3月11日付け審判事件答弁書と共にBの平成26年3月4日付け陳述書を提出し,同人の供述を証拠とする意向を表明しながら,その後,同年6月20日には口頭審理期日に臨み,同月27日にはBの3通目の陳述書を追加提出するなど,Bの証人尋問請求をする機会はあったにもかかわらず,原告に不利な内容の同年8月19日付け審決予告を経て,同年9月25日付 けでBの証人尋問請求書を提出するまでの間,同人の証人尋問を請求しなかった。 また,前記口頭審理期日の際,審判長において,以後の審理は書面審理とする旨を宣言したが,原告は,同宣言に異議も述べず,Bの証人尋問申請に言及することもしなかった。 以上によれば,本件審判においてBの証人尋問を実施することなく,本件審決をしたことは,審理不尽に当たらない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明1について⑴ 本件発明1に係る特許請求の範囲は,前記第2の2【請求項1】のとおりであるところ,本件明細書(甲1)には,おおむね,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については,別紙3参照)。 ア産業上の利用分野本発明は,ブラケット本体のアーチワイヤスロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えた歯列矯正ブラケット等に関するものである(【0001】)。 イ従来の技術(ア) 歯列矯正治療においては,一般に,歯列矯正ブラケットと称される小さな器具が用いられている。すなわち,歯列矯正ブラケットを患者の歯に適宜固定し,それらの固定された歯列矯正ブラケット間に掛け渡されたアーチワイヤ等を介して歯並びの悪い歯に外力を加えて矯正する。歯列矯正ブラケットの構成は,例えば,小さなスロットを有しており,①歯の口唇側若しくは舌側に直接接着される本体又は②歯にセメン け渡されたアーチワイヤ等を介して歯並びの悪い歯に外力を加えて矯正する。歯列矯正ブラケットの構成は,例えば,小さなスロットを有しており,①歯の口唇側若しくは舌側に直接接着される本体又は②歯にセメント付け若しくは他の方法で固定された金属バンド等に付着される本体を有するというものである。 このように構成された歯列矯正ブラケットは,歯列弓に沿うように湾曲した弾性アーチワイヤをスロットに取り付け,その弾性アーチワイヤの復元力によって,歯並びがきれいになるように時間をかけて歯を移動させることができる。すなわち,この歯列矯正ブラケットは,例えば,ブラケット本体に形成されたスロットの三次 元的な傾斜やアーチワイヤの任意の曲げなどによって,歯に対して所望の方向(歯を移動させたり,回転させたり,傾けたりする方向)に力を加えることができる。 従来の歯列矯正ブラケットは,タイウイングを備えており,このタイウイングにリガッチャーワイヤ又はエラストメリックリガッチャーリングを掛けて,アーチワイヤをスロットから外れないようにしっかり収納する。そして,スロットに通されたアーチワイヤが大きく変形することから,その復元力をブラケットを介して歯根に伝えることによって,不正咬合の歯列を矯正する。 一般的に,治療の初期においては,アーチワイヤとして細いソフトな丸ワイヤを使用し,この丸ワイヤがスロット内で自在に滑る(ノンフリクション)ように,ステンレスリガッチャーワイヤを結紮した後に,丸ワイヤを少し浮かす操作が必要となる。なお,エラストメリックリガッチャーリングでは,摩擦力を取り除くことはできない。その後,治療の進行とともに,アーチワイヤとして,太いワイヤ,角ワイヤ,より剛性の高いワイヤを使用するようになる。動的治療がほぼ終了すると,後戻り防止のためにしばらく 擦力を取り除くことはできない。その後,治療の進行とともに,アーチワイヤとして,太いワイヤ,角ワイヤ,より剛性の高いワイヤを使用するようになる。動的治療がほぼ終了すると,後戻り防止のためにしばらく保定するが,この際,リガッチャーワイヤで強く縛ってほとんど動かないように固定する場合もある(【0002】~【0004】)。 (イ) このように,歯列矯正治療においては,その治療期間中に,数種類の異なるアーチワイヤを順次使用していくことから,来院の都度,リガッチャーワイヤを取り外し,アーチワイヤの曲げの調整や取替えをする必要があるところ,この作業は,多大なチェアタイムを要するものである上,患者には不快感を与えるものとなっていた(【0005】)。 (ウ) さらに,リガッチャーワイヤの使用により,以下のような問題が生じていた。 すなわち,結紮して切断したリガッチャーワイヤの末端は,タイウイング下にねじ込むようにして収納するところ,このような取付形態であることから,食物残渣がこびりつきやすいという問題を抱えており,その結果,口腔内を衛生的に良好な状態に保つためには,比較的多くの労力を要した。 また,リガッチャーワイヤは,そのねじ曲げた端部がタイウイング下から露出して,患者の舌や頬の軟組織に刺激を与えることがある。さらに,リガッチャーワイヤが切れて外れた場合には,患者が外れたリガッチャーワイヤを飲み込む,治療が停滞するという支障が生じる。加えて,リガッチャーワイヤが手指に刺さって出血することから生じる各種感染症には,近年,重大な関心が持たれている(【0006】)。 これらの問題は,ロック式歯列矯正ブラケットによってある程度解消される。すなわち,ロック式歯列矯正ブラケットには,スロットを開閉するために移動できるロック部材が組み入 ている(【0006】)。 これらの問題は,ロック式歯列矯正ブラケットによってある程度解消される。すなわち,ロック式歯列矯正ブラケットには,スロットを開閉するために移動できるロック部材が組み入れられており,結紮用のタイワイヤを必要としない構造である。 ロック部材は,移動できるものであることから,アーチワイヤをスロット内に押しとどめたり,スロットから外したりすることが,極めて容易にできる。また,ワイヤのねじ曲げ部分等がないすっきりとした構造であることから,飲食物やそのかすがこびりつくことを回避しやすい。ロック部材には,例えば回転式のものやスライド式のものがある(【0007】)。 ウ発明が解決しようとする課題(ア) スライド式のロック部材を有する歯列矯正ブラケットにおいては,例えば,【図13】に示すように,ブラケット本体82に設けられたアーチワイヤスロット85内のアーチワイヤ50が,ブラケット本体82に装着されたロック部材120の先端部分によって,スロット内に閉じ込められている。ロック部材120の先端部分は,例えばスロット85と連続した係止溝86によって開き方向の動きを制限されている。通常,スロット85内のアーチワイヤ50は,スロット底面側に位置している。 アーチワイヤ50に不測の大きな外力が加わったときには,【図14】に示すように,アーチワイヤ50が,係止溝86内に入り込んでしまい,引っかかった状態になることがあり,このような状態になると,アーチワイヤ50がスロット内を円滑に移動することができなくなり,矯正治療に支障が生じる。上記状態を回避する ために,係止溝86の幅Wを小さくすることも考えられるが,そうすると,ロック部材120の機能,すなわち,細い丸ワイヤからフルサイズの角ワイヤまで弾性範囲内でしなやかに圧下す 状態を回避する ために,係止溝86の幅Wを小さくすることも考えられるが,そうすると,ロック部材120の機能,すなわち,細い丸ワイヤからフルサイズの角ワイヤまで弾性範囲内でしなやかに圧下する機能が低下することになり,望ましくない。 また,アーチワイヤ50に不測の大きな外力が加わると,【図15】に示すように,アーチワイヤ50がねじれたときに,ロック部材120の先端部分121がねじれてワイヤ保持が不安定になるという問題があった。この点に関し,米国特許486号に開示された構造においては,係止溝の両端側を閉じるように構成してロック部材の先端部分の位置規制をするものが示されているが,前記構成のためには,ロック部材の先端部分の幅をスロットの長さに比べて小さくせざるを得ない。したがって,ロック部材の先端部分がアーチワイヤを押さえる長さが短くなることから,ローテーションコントロールが十分ではないという欠点を抱えていた(【0008】)。 (イ) 本発明は,前記(ア)の問題を解決するためにされたものであり,アーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態の回避,アーチワイヤのより確実な係止が可能であり,かつ,操作性の良いロック部材を備えた歯列矯正ブラケットを提供することなどである(【0009】)。 エ課題を解決するための手段本発明に係る歯列矯正ブラケットは,①歯面に固着されるベース,②ベースから垂直方向に延びるブラケット本体,③ブラケット本体の中央において近遠心方向に延び,前方に開放したアーチワイヤスロット及び④アーチワイヤスロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えたものである。 ロック部材は,弾性体から構成されており,①一端側が,ベース側に,ベースに沿って延びるベース側部と,②他端側が,スロット上方側に延び ロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えたものである。 ロック部材は,弾性体から構成されており,①一端側が,ベース側に,ベースに沿って延びるベース側部と,②他端側が,スロット上方側に延びており,アーチワイヤスロットの長さと略同じ幅を有する反ベース側部とを備える断面形状がU字形状になされ,かつ,反ベース側部の中央に切欠き部が設けられている。 ブラケット本体には,①アーチワイヤスロットの開放縁部に,ロック部材の先端 をスロット閉じ位置に係止する係止溝が形成され,②係止溝とは反対側の縁部に,前記ロック部材の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部が形成されており,③係止溝の長手方向中央部分には,ロック部材の反ベース側部の中央に設けられた切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されている(請求項1,【0010】)。 オ作用,効果(ア) 本発明に係る歯列矯正ブラケットによれば,時間のかかるアーチワイヤ結紮が不要となり,また,リガッチャーワイヤを用いる必要がないので,その破損や外れることなどによる不都合を回避できる(【0064】)。 (イ) 本発明に係る歯列矯正ブラケットは,前記エのロック部材の構成を備えていることから,同構成により,ブラケット本体上においてロック部材がアーチワイヤスロットを開閉するようにスライドできる。 また,係止溝の長手方向中央部分に,ロック部材の切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されていることにより,アーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態を回避でき,さらに,係止溝のリブに対してロック部材の切欠き部がはまり込むように対応していることにより,ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動き及びねじれが効果的に抑えられる。すなわち う事態を回避でき,さらに,係止溝のリブに対してロック部材の切欠き部がはまり込むように対応していることにより,ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動き及びねじれが効果的に抑えられる。すなわち,係止溝の中央領域に設けられたリブによって,ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動きやねじれを抑えることができる。しかも,ロック部材の左右両端部分がブラケット本体によって位置規制される構造ではないことから,ロック部材の先端の近遠心方向における押さえる距離は,ブラケット本体の構造に制約されることなく,大きくすることができる(請求項1,【0019】,【0064】)。 カ発明の実施の形態(ア) 【図1】及び【図2】に示す実施形態の歯列矯正ブラケット1は,近心側タイウイング4と遠心側タイウイング4とによって挟まれた中溝17をもつツインブラケットである。 このツインブラケットは,①歯面に固着されるベース3,②ベース3から略垂直方向に延びるブラケット本体2,③ブラケット本体2の略中央にて近遠心方向に延び前方に開放したアーチワイヤスロット5及び④アーチワイヤスロット5を開閉できる移動可能なロック部材20を備えている(【0038】)。 (イ) ロック部材20は,弾性体であり,①ベース側部22(舌側に位置する部分)と②反ベース側部21(唇側に位置する部分)とを備える断面形状が略U字形状に構成されており,反ベース側部21の先縁部の略中央に,切欠き部23が設けられている(【0039】)。 (ウ) ブラケット本体2には,アーチワイヤスロット5の開放縁部に,ロック部材20の先端をスロット閉じ位置に係止する係止溝6が形成されており,その長手方向中央部分には,ロック部材20の切欠き部23に対応して係止溝6を埋めるように突出したリブ7が形成 の開放縁部に,ロック部材20の先端をスロット閉じ位置に係止する係止溝6が形成されており,その長手方向中央部分には,ロック部材20の切欠き部23に対応して係止溝6を埋めるように突出したリブ7が形成されている。リブ7の上端面には,例えば三角形の凹部8が形成されている。 係止溝6とは反対側の縁部には,ロック部材20の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部11が形成されている。 ロック部材20のベース側部22の後端部には,切欠き,凹部,突起等により構成し得る係合端部24が形成されている(【0040】,【0041】)。 (エ) ブラケット本体2には,アーチワイヤスロット5(近遠心方向)に沿って貫通した開口14が形成されており,この開口14は,ロック部材20をよりしっかり固定するときに,結紮手段を貫通させて利用することができる。 また,ブラケット本体2には,ロック部材20の湾曲部分の両側縁部に対応する位置に突起13が設けられている。この突起13は,ロック部材20のベース側部22の両縁部22a,22aの湾曲した部分に適宜圧力で当接できる程度の大きさに突出しており,ロック部材20がアーチワイヤスロット5を閉塞したときに,この突起13が湾曲部の両側縁部の外側に位置するように構成されている。したがって,例えば,口腔内において不測の外力が作用したときでも,この突起13がベー ス側部22を押さえ,ロック部材20の開放する方向の動きを抑える(【0042】)。 (オ) 以上のように構成された歯列矯正ブラケット1においては,ロック部材20が,ブラケット本体2上においてアーチワイヤスロット5を開閉するように円滑にスライドできる。 そして,係止溝6の長手方向中央部分に,ロック部材20の切欠き部23に対応したリブ7が形成されていることに ブラケット本体2上においてアーチワイヤスロット5を開閉するように円滑にスライドできる。 そして,係止溝6の長手方向中央部分に,ロック部材20の切欠き部23に対応したリブ7が形成されていることにより,係止溝6の高さWがアーチワイヤ50の直径より大きい構成であっても,例えば,アーチワイヤ50がスロット5の底部から浮き上がるように付勢したとき,係止溝6内にはまり込む事態が回避される。 また,係止溝6の幅方向の中央部分において,ロック部材20の反ベース側部21の先端部分に設けられた切欠き部23がはまり込むように係合しているので,反ベース側部21がしっかりと保持され,スロット長手方向へのズレやねじれを防止することができる。さらに,ロック部材20は,係止溝6によって,反ベース側部21の先端部分が係止されていることで,意図せず唇側に開くことがない(【0043】)。 ⑵ 本件発明1の特徴前記⑴の記載によれば,本件発明1の特徴は,以下のとおりである。 ア解決課題(ア) 従前から使用されていた歯列矯正ブラケットは,ブラケット本体のタイウイングにリガッチャーワイヤ等を掛けてアーチワイヤを結紮し,アーチワイヤがブラケット本体のアーチワイヤスロットから外れるのを防ぐ構成を備えていたところ,アーチワイヤの曲げの調整や取替えの都度,リガッチャーワイヤを取り外す必要があり,患者に不快感を与える,リガッチャーワイヤの末端に食物残渣がこびりつきやすいなどの問題があったことから,スロットを開閉するために移動できるロック部材が組み入れられた,結紮用のタイワイヤを要しないロック式歯列矯正ブラケットが使用されるようになった(【0001】~【0007】)。 (イ) 前記ロック式歯列矯正ブラケットについては,アーチワイヤに不測の大きな外力が加わ ヤを要しないロック式歯列矯正ブラケットが使用されるようになった(【0001】~【0007】)。 (イ) 前記ロック式歯列矯正ブラケットについては,アーチワイヤに不測の大きな外力が加わったとき,①アーチワイヤが係止溝に入り込んで引っかかった状態になり,アーチワイヤスロット内を円滑に移動することができなくなって,矯正治療に支障が生じる,②アーチワイヤがねじれたとき,ロック部材の先端部分がねじれてワイヤ保持が不安定になるという問題があった。 これらの問題に関し,米国特許486号に開示された構造においては,係止溝の両端側を閉じるように構成してロック部材の先端部分の位置規制をするものが示されているが,同構成のためには,ロック部材の先端部分の幅をスロットの長さよりも小さくせざるを得ず,ロック部材の先端部分がアーチワイヤを押さえる長さが短くなることから,ローテーションコントロールが十分ではないという欠点があった(【0008】)。 (ウ) 本件発明1は,前記(ア)及び(イ)の問題を解決するためになされたものであり,アーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態の回避,アーチワイヤのより確実な係止が可能であり,かつ,操作性の良いロック部材を備えた歯列矯正ブラケットを提供することなどを目的とするものである(【0009】)。 イ本件発明1の課題解決手段(ア) 本件発明1に係る歯列矯正ブラケットは,①歯面に固着されるベース,②ベースから垂直方向に延びるブラケット本体,③ブラケット本体の中央において近遠心方向に延び,前方に開放したアーチワイヤスロット及び④アーチワイヤスロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えたものである。 ロック部材は,弾性体から構成されており,①一端側が,ベース側に,ベースに沿って延び 開放したアーチワイヤスロット及び④アーチワイヤスロットを開閉するべく移動可能なロック部材を備えたものである。 ロック部材は,弾性体から構成されており,①一端側が,ベース側に,ベースに沿って延びるベース側部と,②他端側が,スロット上方側に延びており,アーチワイヤスロットの長さと略同じ幅を有する反ベース側部とを備える断面形状がU字形状になされ,かつ,反ベース側部の中央に切欠き部が設けられている。 ブラケット本体には,①アーチワイヤスロットの開放縁部に,ロック部材の先端 をスロット閉じ位置に係止する係止溝が形成され,②係止溝とは反対側の縁部に,前記ロック部材の先端をスロット開放位置に係止する開放係止凹部が形成されており,③係止溝の長手方向中央部分には,ロック部材の反ベース側部の中央に設けられた切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されている。 (イ) 本件発明1の特徴的部分は,①ロック部材の反ベース側部の中央に切欠き部が設けられており,②ブラケット本体の係止溝の長手方向中央部分に,上記切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されているという構成を採用したことである(請求項1,【0010】)。なお,この点については,当事者間に争いがない。 ウ本件発明1の効果(ア) 本件発明1に係る歯列矯正ブラケットによれば,時間のかかるアーチワイヤ結紮が不要となり,また,リガッチャーワイヤを用いる必要がないので,その破損や外れることなどによる不都合を回避できる(【0064】)。 (イ) 本件発明1に係る歯列矯正ブラケットは,前記イのロック部材の構成を備えていることから,同構成により,ロック部材がブラケット本体上においてアーチワイヤスロットを開閉するようにスライドできる。 また,係止溝の長手方向 列矯正ブラケットは,前記イのロック部材の構成を備えていることから,同構成により,ロック部材がブラケット本体上においてアーチワイヤスロットを開閉するようにスライドできる。 また,係止溝の長手方向中央部分に,ロック部材の切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されていることにより,アーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態を回避でき,さらに,係止溝のリブに対してロック部材の切欠き部がはまり込むように対応していることにより,ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動き及びねじれが効果的に抑えられる。すなわち,係止溝の中央領域に設けられたリブによって,ロック部材の先端部分のスロット長手方向への動きやねじれを抑えることができる。しかも,ロック部材の左右両端部分がブラケット本体によって位置規制される構造ではないことから,ロック部材の先端の近遠心方向における押さえる距離は,ブラケット本体の構造に制約されることなく,大きくすることができる(請求項1,【0019】,【0064】)。 2 本件特許出願に関する事実経過について後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 当事者等ア原告は,各種歯科用器材の製造,加工等を目的とする株式会社である。 Bは,昭和60年から平成26年3月までの間,原告に勤務しており,平成11年当時は,設計開発を担当する開発部部長として,新製品開発,法務関係,特許出願等に携わっていた(甲86,88,弁論の全趣旨)。 Aは,カナダ国内において臨床診療を行う矯正歯科医である(甲3,8)。 イ被告は,米国法人であり,平成11年当時,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの主要製造業者であった(乙4,弁論の全趣旨)。 ウなお,被告は,原 矯正歯科医である(甲3,8)。 イ被告は,米国法人であり,平成11年当時,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの主要製造業者であった(乙4,弁論の全趣旨)。 ウなお,被告は,原告を相手方として,東京地方裁判所に対し,原告が被告の取引先に対して被告の製品が本件発明1の技術的範囲に属する旨の通知をしたことが,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に該当するとして,訴えを提起した(甲6,弁論の全趣旨。東京地方裁判所平成26年(ワ)第8922号。以下「別件訴訟」という。)。 ⑵ 歯列矯正ブラケットに関する先行技術ア従来は,前記1⑴イのとおり,ブラケット本体にアーチワイヤを結紮するためにリガッチャーワイヤ等の結紮線を用いる歯列矯正ブラケットが主流であったが,平成2年頃から,クリップ等によってアーチワイヤをブラケット本体のアーチワイヤスロットに固定する構成を備えた結紮不要の歯列矯正ブラケット,すなわち,セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの研究,開発が,メーカーや医師によって進められるようになった。代表的な基本発明として,米国特許第5586882号(以下「米国特許882号」という。)に開示されたDによる発明が挙げられる(弁論の全趣旨)。 イ Aも,「結紮の不要な歯列矯正用ブラケット」という名称の発明を自ら発明し,平成7年2月21日,米国において,単独の発明者としてこれを出願し,平成 9年5月20日に特許が登録された(米国特許第5630715号。以下「米国特許715号」という。)。 Dによる米国特許882号に係る歯列矯正用ブラケットについては,クリップが閉じた状態において,タイウイングの片側2つが完全に覆われてしまい,そのままでは補助牽引することが難しいという問題があった。 Aによる米国 882号に係る歯列矯正用ブラケットについては,クリップが閉じた状態において,タイウイングの片側2つが完全に覆われてしまい,そのままでは補助牽引することが難しいという問題があった。 Aによる米国特許715号に係る歯列矯正用ブラケットは,上記問題を解決するために,クリップの形状をT字型にすることにより,クリップが閉じた状態においても4つのタイウイングが全て露出するようにした点に特徴がある。 また,米国特許715号に先行する技術として,STRITE社のSPEEDブラケットが存在したものの,同ブラケットが一対のタイウイングを備えたシングルブラケットであったのに対し,米国特許715号に係る歯列矯正用ブラケットは,2対のタイウイングを備えたツインブラケットにおいてクリップが開閉する構造を備えていた(甲62,86,88,弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件特許出願の経緯ア原告とAとの関係原告は,平成7年5月頃,GACの依頼を受けてセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの開発を始め,平成11年秋頃に終了した。 この間,Aが,平成9年又は平成10年頃から,前記開発のアドバイザーとして,原告に対し,米国特許715号に係るものも含め,アイデアやコメントを提供してきた。Aは,平成11年当時,GACとの間で,Aの保有する知的財産及びその潜在的な改良のうち所定のものについてGACにライセンスを付与するという契約関係にあるなど,従前からGACの業務に関わっていた。 原告は,米国特許715号に係る歯列矯正ブラケットの構成を採用した。そして,平成10年に,上記構成を採用した歯列矯正ブラケットの20倍モデルを製作してGAC経由でAに送付し,Aから,「ブラケットボディの近遠心幅(width M-D)をオムコのツインロックのように3mmに縮める」など に,上記構成を採用した歯列矯正ブラケットの20倍モデルを製作してGAC経由でAに送付し,Aから,「ブラケットボディの近遠心幅(width M-D)をオムコのツインロックのように3mmに縮める」などの変更点を具体的に指摘し た書簡(甲13)を受領した。なお,同書簡に添付された20倍モデルの図面には,リブが設けられていない(甲8,13,69,86,88,弁論の全趣旨)。 イ本件会議までの経緯(ア) 平成11年5月8日付けの「開発・設計計画書」(甲15の1丁目)には,手書きで「505-04 セルフライゲーションブラケット(AIN-OVATION)」などと記載され,歯列矯正ブラケットの図面が描かれている。 「開発・設計計画書」の上部には「△追記 99.6.10」とあり,△印を付して,「近遠心の側面の壁△-Dr.Dの新PAT 5,906,486△」,「5/ 18 サンディエゴAAOでDr.Aと△打合わせた。5-5の製品図とUCSの20倍モデル.UCS,AN,LBC2のMIM金型によるトライ△」などと手書きで記載されている。また,「近遠心の側面の壁△」の真上には,「詳細別紙」と記載されているところ,これは,上記「開発・設計計画書」に添付された図面(甲15の2丁目。本件図面〔甲32の1〕と同じもの)を指すものと解される。 前記手書き部分は,いずれもBが記載したものであり,うち追記部分は平成11年6月10日に,その余の部分は同年5月8日に記載したものである(弁論の全趣旨)。 上記「開発・設計計画書」(甲15の1丁目)には,本件発明1の特徴的部分についての記載はない。 (イ) GACが作成した「オープン開発プロジェクト 1999年5月11日サンディエゴでのミーティングの要約」と題する書面(甲16)には,「505- 特徴的部分についての記載はない。 (イ) GACが作成した「オープン開発プロジェクト 1999年5月11日サンディエゴでのミーティングの要約」と題する書面(甲16)には,「505- 04 IN-Ovation」などの記載があり,Bの平成11年5月12日付け社用印が押捺されている。この書面には,本件発明1の特徴的部分についての言及はない。 (ウ) 第99回米国矯正歯科学会が,平成11年5月15日から同月18日までの4日間にわたり,アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴで開催され,原告からは,B,同人の部下であるF,原告代表者(当時は取締役)ほか1名が参加 した(甲14)。 (エ) 平成11年5月16日及び同月18日,Bは,Cらと打合せを行い,少なくとも同月18日の打合せ(本件会議)には,Aも参加していた(甲8,15,17,86,88)。 Cが同月26日付けで作成した「サンディエゴマリオット 1999年5月16日開催の開発プロジェクトミーティング」と題する書面(甲17)においては,「ステンレス鋼クリップ,菱形状のベース,これについて多くの論点がありました。 …平易な英語で言えば,彼はそうと認めませんでしたが,Aが欲しいものはツインスピードブラケットです。これが特許が言っていることであり,我々は安全です。 彼はクリップを改善するいくつかの提案を持っていましたが,それらはSpeed社が既に何年も使っている原理と同じものです。私は,彼がブースで議論したときの彼の振る舞いをお詫びします。…B氏は彼が今欲しいものをご存知で,…私は,座っている間に決定したスチールクリップ,スナップロック,リテイナー壁などの設計変更が市場で最高のものになるだろうことを,強く確信しています。…それらの変更を反映させるように20倍モデルを修正し ,座っている間に決定したスチールクリップ,スナップロック,リテイナー壁などの設計変更が市場で最高のものになるだろうことを,強く確信しています。…それらの変更を反映させるように20倍モデルを修正してください。」と記載されている。 この書面には,本件発明1の特徴的部分に関する記載はない。 ウ本件会議後平成11年7月末頃までの経緯(ア) 平成11年5月25日,Dが発明したセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットにつき,特許が登録された(米国特許486号)。同特許に係る歯列矯正ブラケットは,係止溝の両端,すなわち,近遠心端にリブを設ける構成を備えていた。 Cは,同年6月7日付けで,Aに対し,米国特許486号につき,「D博士は,クリップホルダーの近遠心両端を閉塞させるというアイデアについて特許を受けたようです。我々は,異なるアイデアを見つけ出さなければならないようです。」という内容のファクシミリを送信した(甲51)。 (イ) Aは,Cに対し,前記(ア)のファクシミリについて,平成11年6月7日 付け書簡(甲52の1丁目)を送付した。同書簡には,「幸い,Speedのもののような硬直的なシングルと異なり,ユニークなサイアミーズツインの場合,常に対処する手立てがより多くあり,また幸いなことに金型を作るのも容易です。解決方法は簡単です。最も良い提案は,0.14ワイヤーが2つの係止溝にはまり込むのを防止するために,単に,半円状の金属製の堅固なブロックをウィング間の部位に置いておくというものでした。我々は,B氏と議論したようにこれを設計図に書き込むことを検討すべきであり,また,当然それを直ちに保護すべきです。私は,その出願にAとB(の名前)を用いることを提案します。さらに,これは,より技術的な要求事項の多い,外側の部分をブロッ 図に書き込むことを検討すべきであり,また,当然それを直ちに保護すべきです。私は,その出願にAとB(の名前)を用いることを提案します。さらに,これは,より技術的な要求事項の多い,外側の部分をブロックするためのSpeedの技術についてB氏が述べた,我々のピンの除去の問題を解決します。また,クリップは,端部ではなくウィング間の(中央)部において切欠きを設けられることになりますが,これはローテーションの修正に重要です。」と記載されている。同記載中,「0.14ワイヤーが2つの係止溝にはまり込むのを防止するために,単に,半円状の金属製の堅固なブロックをウィング間の部位に置いておく」は,係止溝の両端ではなく,中央部分にブロック(リブを指す。以下同じ。)を設けることを意味し,また,「クリップは,端部ではなくウィング間の(中央)部において切欠きを設けられる」は,クリップの中央に切欠き部を設けることを意味するものと解されるから,これらの記載は,本件発明1の特徴的部分について述べたものということができる。 (ウ) Bは,平成11年7月21日付けで,係止溝にリブを設けない構成のセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの図面を作成してCにファクシミリで送信し,Cは,同月22日付けで,これをAにファクシミリで転送した(甲53,弁論の全趣旨)。なお,後記(エ)のとおり,上記図面は,甲第53号証の3丁目から10丁目の図面及び甲第54号証の3丁目の図面(別紙2参照)である。 (エ) Aは,Cに対し,前記(ウ)の図面に関して,平成11年7月26日付け書簡(甲54の1・2丁目)を送付した。 a 同書簡には,以下のとおり記載されている。 「B氏が製作したフックの角度は,開放のためにツールを挿入することを妨げないので,非常に素晴らしいです。…些細なこ ・2丁目)を送付した。 a 同書簡には,以下のとおり記載されている。 「B氏が製作したフックの角度は,開放のためにツールを挿入することを妨げないので,非常に素晴らしいです。…些細なことがまだ2つほど欠けていますが,下記の2点のみコメントしておきます。…A)アーチワイヤーが係止溝に嵌り込むのを防ぎ,B)理想的なトルクコントロールを得るための,ウィング間に位置するスロット歯肉壁の小さなスロットブロッカーが各図面において示される必要があります。 さらに,我々が以前話した,スロットブロッカーの周囲に係合するための重要なクリップの相補的な切欠き(スロットブロッカーのスケッチを添付します。)を見ていただければ幸いです。」上記記載中,「ウィング間に位置するスロット歯肉壁の小さなスロットブロッカー」は,係止溝の両端ではなく,中央部分にスロットブロッカー(リブを指す。)を設けることを意味し,また,「スロットブロッカーの周囲に係合するための重要なクリップの相補的な切欠き」は,クリップに設けたスロットブロッカーに対応する切欠き部を意味するものと解されるから,これらの記載は,本件発明1の特徴的部分について述べたものということができる。 b また,前記書簡には,Aが作成した歯列矯正ブラケットの図面(甲54の3丁目)が添付されており,同図面においては,係止溝の中央部分のリブ及びそのリブに対応する切欠き部を備えたクリップが手書きで書き入れられている。 なお,同図面は,「IN-OVATIONUCS ’99.7/15」というタイトルが付されており,「99年7月21日午後5時27分トミー株式会社福島工場」,「0240 32 2305:♯4/10」というファクシミリによる印字がある。上記電話番号は,原告の電話番号と推認できる。 この点に関し,前 9年7月21日午後5時27分トミー株式会社福島工場」,「0240 32 2305:♯4/10」というファクシミリによる印字がある。上記電話番号は,原告の電話番号と推認できる。 この点に関し,前記(ウ)のとおり,Bが平成11年7月21日付けでCにファクシミリで送信したものとして提出された甲第53号証の2丁目から10丁目の全てに「99年7月21日午後5時27分トミー株式会社福島工場」というファクシミリによる印字があり,特に,2丁目のBからCへのファクシミリの送り状及び8丁目から10丁目の図面には,いずれも上記電話番号と,それぞれ♯1/10,♯8 /10,♯9/10,♯10/10というファクシミリによる印字がある。さらに,3丁目から5丁目の図面には,それぞれ「IN-OVATIONCN ’99. 7/15」,「IN-OVATIONLT ’99.7/15」,「IN-OVATIONUBC ’99.7/15」というタイトルが付されている。 前記のとおり2丁目及び8丁目から10丁目にある「1/10」,「8/10」,「9/10」及び「10/10」という印字によれば,Bが平成11年7月21日付けでCに送信した書面は10枚あるものと認められるところ,甲第53号証中,同送信に係る書面は,2丁目から10丁目までの9枚のみである。したがって,Bが平成11年7月21日付けでCにファクシミリで送信した書面は,甲第53号証の2丁目から10丁目のほか1枚あったものと認められる。 他方,甲第53号証の1丁目は,CからAにファクシミリを送信した際の「FAXCOVERSHEET」であり,「NumberofPages(includingthiscoversheet)11」と記載されているところ,甲第53号証は10枚のみである。したがって,Cが同 VERSHEET」であり,「NumberofPages(includingthiscoversheet)11」と記載されているところ,甲第53号証は10枚のみである。したがって,Cが同日付けでAにファクシミリで転送した書面も,甲第53号証の10枚のほか1枚あったものと認められる。 以上の事実に加え,Aの前記書簡に添付された図面(甲54の3丁目)に手書きで記載された文字は,「ClipNotchforSlotBlocker(InterwingRegiononly)」など全て英語であることに鑑みると,①Bは,平成11年7月21日付けで,Cに対し,甲第53号証の2丁目のファクシミリ送り状1枚並びに3丁目から10丁目の図面及び甲第54号証の3丁目の図面の手書き部分がないものの合計9枚の図面,合わせて10枚の書面をファクシミリで送信したこと,②Cは,同日付けで,Aに対し,これら10枚の書面をファクシミリで転送したこと,③Aは,上記10枚の書面のうち,甲第54号証の3丁目の図面の手書き部分がないものに,手書きでリブ等を記載して前記書簡に添付したことが認められる。 (オ) Bは,平成11年7月27日付けで,Cに対し,「スロットブロッカーは既に他者によって特許取得されてしまったので,我々はそれを作成することができません。」という内容のファクシミリを送信し,Cは,これを直ちに,GACの従業員によってAに転送させた(甲55)。 Aは,Cに対し,上記ファクシミリに関して,同月28日付け書簡(甲56)を送付した。同書簡には,「私は,ウィング間の部位における確かなスロットブロッカー特許に気が付いたことがありませんでした。B氏において,私の検討用に,我々のツインのようにウィング間の部位に位置することを特徴とする先行技術の 「私は,ウィング間の部位における確かなスロットブロッカー特許に気が付いたことがありませんでした。B氏において,私の検討用に,我々のツインのようにウィング間の部位に位置することを特徴とする先行技術のスロットブロッカー特許をその名称と番号を添えて送っていただければ,非常に感謝します。」と記載されている。 (カ) Cは,平成11年7月29日付けで,原告に対し,Aから送付された前記(エ)の同月26日付け書簡(甲54の1・2丁目)及びそれに添付されていた図面(甲54の3丁目),前記(イ)の同年6月7日付け書簡(甲52の1丁目)並びに同年6月7日付けでAが作成した手書きの歯列矯正ブラケットの図面(甲57の5・6丁目。別紙4参照)をファクシミリで送信した(甲57)。Aが作成した上記同年6月7日付け図面には,係止溝の長手方向中央部分にリブ(BLOCK)が設けられ,ロック部材(Clip)に切欠き部が設けられており,本件発明1の特徴的部分が全て明示されている。甲第57号証の1丁目(Aから送付された平成11年7月26日付け書簡の1丁目〔甲54の1丁目〕)の右上部には,Bの同月31日付け社用印が押捺されている。 エ Bのノート作成から本件特許出願までの経緯(ア) Bが作成した甲第41号証の1のノートは,5枚の会社用せんから成り,1丁目の右上部には「99.7.30」,2丁目の右上部には「99.8.2」,3丁目から5丁目の各右上部には「99.8.3」と記載されており,各丁の内容は,各丁の右上部に記載された日に,Bにおいて記載したものである。また,Bは,平成11年8月3日に,各丁右上部に「1/5」から「5/5」の通し番号を記載し た(甲86,88)。 甲第41号証の1の1丁目には,「セルフライゲーションブラケットの追加特許」という表題が付さ 1年8月3日に,各丁右上部に「1/5」から「5/5」の通し番号を記載し た(甲86,88)。 甲第41号証の1の1丁目には,「セルフライゲーションブラケットの追加特許」という表題が付され,「主旨:構想もほぼかたまり,Dr.Aのツインブラケットを補完するための特許出願を行う。」と記載されている。「Dr.Aのツインブラケット」は,米国特許715号に係る歯列矯正ブラケットを指すものと解される。 甲第41号証の1中,4丁目の「3)スロットブロッカー」の項目において,「本案は,近遠心のタイウイングの間にあって,ある幅の範囲だけ,スロット歯肉側の壁を高くしたもので,これにより,細い丸ワイヤーが,上記凹部にとび込んで,動けなくなる事故を防止できる。」,「中溝のスロットブロッカー」という記載があり,これは,係止溝の長手方向中央部分(「近遠心のタイウイングの間」,「中溝」)にリブ(「壁」,「スロットブロッカー」)を設けて,アーチワイヤ(「細い丸ワイヤー」)が係止溝内にはまり込むという事態を防止する(「上記凹部にとび込んで,動けなくなる事故を防止できる。」)という趣旨の記載と解される。また,「クリップ形状はスロットブロッカーを逃げた形とする」という記載もあり,これは,ロック部材に,リブ(スロットブロッカー)の形状に対応した切欠き部を設ける趣旨の記載と解される。 したがって,これらは,本件発明1の特徴的部分に係る構成について説明したものであり,また,同構成を示した図面も掲載されている。 甲第41号証の1中,本件発明1の特徴的部分に触れているのは,上記4丁目の「3)スロットブロッカー」の項目の記載及び5丁目の「中溝のスロットブロッカー」という記載のみである。 (イ) Bが作成した平成11年8月9日付け社内連絡書(甲71)には,「セルフ 上記4丁目の「3)スロットブロッカー」の項目の記載及び5丁目の「中溝のスロットブロッカー」という記載のみである。 (イ) Bが作成した平成11年8月9日付け社内連絡書(甲71)には,「セルフライゲーションブラケットの製品化にあたり,細部の構造について特許の追加出願を行いたい。発明者はDr.Aとトミーの両者とし,出願は日本及び米国ともにトミー単独としたい。」と記載されている。上記社内連絡書には,当時の原告の社長の署名及び工場長を含む管理職の社用印が押捺されている。 Bは,同月19日付けで,Cに対し,係止溝の長手方向中央部分にリブを設け,ロック部材に切欠き部を設けたセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの図面を送付した(甲58)。 (ウ) Bが作成した甲第42号証の1のノートは,3枚の会社用せんから成り,各丁の右上部には「99.9.2」と記載されており,また,「1/3」から「3/3」の通し番号が付されている。各丁とも,Bが平成11年9月2日に記載したものである(甲86,88)。甲第42号証の1の1丁目に,係止溝の長手方向中央部分にリブを設ける構成が記載されている。 (エ) 原告代表者は,平成11年9月2日付けで,Cに対し,電子メール(甲43)を送信した。同メールには,「A博士用の20倍モデルをあなたに送付しました。…スライドに関しては,20倍のサイズではありません。20倍で製造したならば3mmの厚さとなりますが,このモデルでの厚さは0.5mmしかないので弾力性があります。」と記載されている。 Bは,Cに対し,UPSで前記20倍モデルを送付したことを知らせ,Aへの転送を依頼する旨の同日付け書簡(甲44)を送付した。 Aは,同月21日付けで,Cに対し,電子メールを送信し,Cは,これを直ちに原告に転送した( Sで前記20倍モデルを送付したことを知らせ,Aへの転送を依頼する旨の同日付け書簡(甲44)を送付した。 Aは,同月21日付けで,Cに対し,電子メールを送信し,Cは,これを直ちに原告に転送した(甲20)。前記電子メールには,「すでに20倍モデルを受け取っています。我々の要求する仕様を満たすか,現在試験しているところです。貴方が言うとおり,ざっと分析したところ,これは確かに非常に素晴らしい出来栄えで,見事に作動します。これが十分な機能性を備えていることを確信しています。間もなく完全な評価を終えて,貴方に連絡いたします。スロットブロッカー特許は今や重大です。B氏に賛辞を送ります。ありがとう。」と記載されている。 以上の電子メール及び書簡によれば,Aは,原告において作成した本件発明1に係るセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの20倍モデルにつき,実用化に向けて試験及び分析を行ったものと推認することができる。 (オ) GACの従業員は,Cの指示により,平成11年9月23日付けで,Aに 対し,Cが原告のスタッフとの会議を終えて持ち帰ってきた本件特許出願についてのクレーム及び図面を,遅くとも9月28日までにコメントを知らせてほしい旨の依頼文と共に,ファクシミリで送信した(甲59)。 (カ) Bが作成した平成11年9月24日付け社内連絡書(甲72)には,「添付内容で,追加の特許を出願したいので,内容の確認をお願いします。考案者はトミーとDr.Aとの両名とし,権利はトミー単独です。…出願予定は9/30のため,急ぎご確認願います。」と記載されている。同記載中の「添付内容」は,Bが作成した甲第42号証の1のノートである(甲86,88)。上記の社内連絡書には,当時の原告の代表者及び工場長を含む管理職の社用印が押捺されている。 記載されている。同記載中の「添付内容」は,Bが作成した甲第42号証の1のノートである(甲86,88)。上記の社内連絡書には,当時の原告の代表者及び工場長を含む管理職の社用印が押捺されている。 (キ) Aは,平成11年9月28日付けで,Cに対し,前記(オ)のクレーム及び図面についてのコメントを記した書簡及び図面を送付し(甲60),GACの前記従業員は,これらを直ちに,ファクシミリで原告に送信した(甲61)。 (ク) 原告は,平成11年10月8日,日本の特許庁に対し,本件特許出願をした。その願書には,発明者として,B及びAの氏名がこの順序で記載されていた(甲2)。 原告は,本件特許出願に際し,Aが有する本件発明について特許を受ける権利を原告に譲渡することにつき,書面による事前の同意は得ていなかった(甲86,88)。 ⑷ 本件特許出願後の経緯ア米国特許105号の出願までの経緯(ア) Bは,平成11年11月1日付けで,GACに対し,同年10月28日に本件特許に係る歯列矯正ブラケットのサンプル等を送付したので,客観的な総合評価をしてほしい,重大な欠陥が見つからなければ,直ちに成形用金型の製作に着手する旨の電子メール(甲66)を送信した。 (イ) Aは,平成11年11月3日付けで,Cに対し,前記(ア)のサンプル及び原告から送付された20倍モデル(前記⑶エ(エ))に関する追加のコメントを記載 した電子メールを送信し,Cは,これを直ちに原告に転送した(甲64)。 (ウ) Aは,平成12年1月28付けで,Cに対し,本件特許出願のレビューとして,「説明文(例:25頁末尾)」を修正すべきである,クレームが不要な限定を含んでいるなどと記載した電子メールを送信し,Cは,同年2月1日付けで,原告に対し,前記電子メールを転送し 願のレビューとして,「説明文(例:25頁末尾)」を修正すべきである,クレームが不要な限定を含んでいるなどと記載した電子メールを送信し,Cは,同年2月1日付けで,原告に対し,前記電子メールを転送した(甲45)。 Bは,同日付けで,Cに対し,上記電子メールに関して,クレームを修正すること,「25頁末尾」の記載が分からないことなどから,本件特許出願の願書の翻訳版全頁の送付を依頼した(甲46)。GACの従業員は,同月2日付けで,Bに対し,本件特許出願の願書の英訳文を送付した(甲47)。 (エ) Cは,平成12年2月22日付けで,Bに対し,Aが本件特許についてAの従前の特許と関連するものであることを示すためには,特許上においてAの氏名が最初に来ることが重要である旨考えていることを伝え,その点に関する本件特許出願の変更の可否を尋ねる内容のメモをファクシミリで送信した(甲21)。 Bは,同月23日付けで,Cに対し,願書においてAの氏名が最初に記載されていても2番目に記載されていても,特許法上の差はなく,2番目であっても,本件特許がAの従前の特許と関連し得ること,平成12年10月に米国と欧州に特許出願する際には,Aの氏名を最初に書くことを記載した電子メール(甲22)を送信した。 (オ) 原告は,平成12年10月6日,A及びBを発明者として,米国特許105号の出願をした。米国特許105号に係る明細書中,発明者欄にはAの氏名が筆頭に記されている(甲7)。 イ米国特許105号の出願後の経緯(ア) Bは,平成12年10月31日付けで,Aに対し,本件特許に対応する特許につき,Aを第一発明者として米国と欧州に出願したことを伝えるとともに,米国特許105号について,早期に宣言譲渡書(declarationassignment)に署名して原 本件特許に対応する特許につき,Aを第一発明者として米国と欧州に出願したことを伝えるとともに,米国特許105号について,早期に宣言譲渡書(declarationassignment)に署名して原告に返送することを求める電子メール(甲23)を送 信した。 Aは,同年11月1日付けで,Bに対して,上記電子メールに返信し,本日,宣言譲渡書(declarationassignment)にサインして送る旨を述べた(甲24)。 Aは,Bに対し,米国特許105号についてこれを自らが発明した旨の署名入り陳述書を同封した同月2日付け書簡(甲25)を送付し,同書簡において,「貴方の素晴らしいお仕事に感謝いたします。」と述べた。 (イ) Cは,平成12年11月4日付けで,原告に対し,「スロットブロッカー特許は非常に重要かもしれません。私は,A博士が,それにサインし貴方に送付したと言っているところを見ました。それが届いたら私に教えてもらえますか?」と記載した電子メール(甲26)を送信した。 Bは,同月14日付けで,Aに対し,電子メール(甲27)を送信し,「当社は,貴方の署名入りデクラレーションを受領し,…しかしながら,当社は,署名を求めて同封で貴方に送付した譲渡契約書フォーム(assignmentform)を未だ受領しておりません。よって,もしお手元にあるのなら,できる限り早期に署名して当社にご送付下さい。」と述べた。 さらに,Bは,同年12月21日付けで,Aに対し,前記電子メールと同様の内容を記載した航空便(甲28)を送付し,譲渡契約書フォームに署名した上でこれを原告に送付するよう,重ねて求めた。 (ウ) Aは,平成13年1月31日付けで,Bに対し,前記(イ)の電子メール及び航空便に対する回答をファクシミリで送信した(甲29 フォームに署名した上でこれを原告に送付するよう,重ねて求めた。 (ウ) Aは,平成13年1月31日付けで,Bに対し,前記(イ)の電子メール及び航空便に対する回答をファクシミリで送信した(甲29)。Aは,同回答において,「私は,この譲渡契約書を見ていたと思っていました。すぐに対処するようにします。」と述べるとともに,「この特許がどの国において間もなく発行されるのか,またいつ発行されるのか。」を尋ね,その点について確認できれば,回答できると思う旨を述べている。 Bは,同年2月5日付けで,Aに対し,電子メールで,原告が本件発明に係る特 許を出願したのは,日本,米国及び欧州のみである旨を伝えた(甲30)。 (エ) Bは,平成13年6月1日付けで,Cに対し,電子メール(甲67)を送信し,Aに対して米国特許105号に係る譲渡契約書のフォームを送付し,それに署名して返送するよう求めたものの,返答がない,トロントでAに会ったとき,同人は,署名して返送すると言っていたが,疑わしく思っていることを伝え,(このままAが譲渡契約書に署名しなければ)Aと原告が共同発明者となっている発明に係る特許出願の権利は,両名に50:50で帰属し,Aはそれを第三者にライセンスすることができるが,それは,GACとAとの契約に抵触するか否かを尋ねた。 Cは,同日付けで,原告に対し,電子メール(甲68)を送信し,「彼が貴社に譲渡するかについて,私は非常に疑わしいと思っています。」,「基本的には,我々は715の特許に対する半分の権利,スロットブロッカー特許に対する半分の権利…を有していると思っています。」と述べた。 (オ) 平成14年4月9日,米国特許105号につき,特許が登録された。現在,米国特許105号の特許権者は,Aと原告になっている(甲7,86,88) 利…を有していると思っています。」と述べた。 (オ) 平成14年4月9日,米国特許105号につき,特許が登録された。現在,米国特許105号の特許権者は,Aと原告になっている(甲7,86,88)。 平成22年1月22日,我が国において,原告を特許権者として本件特許権の設定の登録がされた。本件特許の特許公報(甲1)には,発明者としてB及びAの氏名が記載されている。 (カ) Aは,原告に対し,自身が本件特許の特許請求の範囲の請求項に具体化された発明に関する権利を原告に譲渡した記憶はなく,その旨の記録も有していないという趣旨の平成25年1月10日付け書簡を送付した(甲31)。 Aは,本件特許出願後,上記書簡の送付に至るまで,原告に対し,本件特許に関する権利主張や問合せ等の連絡をしたことはなく,特許料の支払を確認したこともなかった(弁論の全趣旨)。 3 取消事由1(Aを本件発明の共同発明者とした認定・判断の誤り)について⑴ 共同発明者性の認定についてア発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうこ とから(特許法2条1項),発明者といえるためには,当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したこと,すなわち,技術的思想の創作行為,とりわけ従前の技術的課題の解決手段に係る発明の特徴的部分の完成に現実に関与することが必要である。 イ前記1⑵のとおり,本件発明1の課題は,アーチワイヤがスロットから外れて係止溝内にはまり込むという事態の回避,アーチワイヤのより確実な係止が可能であり,かつ,操作性の良いロック部材を備えた歯列矯正ブラケットの提供であり,その課題の解決手段として,①ロック部材の反ベース側部の中央に切欠き部が設けられており,②ブラケット本体の係止溝の長手方向中央部分に,上記切 性の良いロック部材を備えた歯列矯正ブラケットの提供であり,その課題の解決手段として,①ロック部材の反ベース側部の中央に切欠き部が設けられており,②ブラケット本体の係止溝の長手方向中央部分に,上記切欠き部に対応して係止溝を埋めるように突出したリブが形成されているという構成が本件発明1の特徴的部分であることは,当事者間に争いがない。 ⑵ 本件発明1の特徴的部分の完成に対するAの関与についてア Aの有する技術的知見についてAは,①カナダ国内において臨床診療を行う矯正歯科医であること(前記2⑴ア),②セルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの代表的な基本発明であった,米国特許882号の問題を解決するための構成を備えたツインブラケットの歯列矯正ブラケットを自ら発明し,単独の発明者として米国特許715号を取得したこと(前記2⑵イ),③平成9年又は平成10年頃から平成11年秋頃にかけて,原告におけるセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの開発のアドバイザーとして,原告に対し,アイデアやコメントを提供してきたこと(前記2⑶ア),④その間,原告が米国特許715号に係る歯列矯正ブラケットの構成を採用して製作した20倍モデルに対し,具体的な変更点を指摘したこと(前記2⑶ア)に鑑みると,セルフライゲーションの歯列矯正ブラケットの構造等に関し,相当高度な技術的知見を有しているものと認められる。 イ Aの影響力についてしかも,本件特許出願に関し,①平成11年5月8日付けの「開発・設計計画書」 (甲15の1丁目)に,手書きで「505-04 セルフライゲーションブラケット(AIN-OVATION)」と記載されていること(前記2⑶イ(ア)),②Bが作成したノート(甲41の1の1丁目)には,「セルフライゲーションブラケットの 5-04 セルフライゲーションブラケット(AIN-OVATION)」と記載されていること(前記2⑶イ(ア)),②Bが作成したノート(甲41の1の1丁目)には,「セルフライゲーションブラケットの追加特許」という表題が付され,「主旨:構想もほぼ固まり,Dr.Aのツインブラケットを補完するための特許出願を行う。」と記載されており,「Dr.Aのツインブラケット」は,米国特許715号に係る歯列矯正ブラケットを指すものと解されること(前記2⑶エ(ア)),③Bが作成した平成11年8月9日付け社内連絡書(甲71)には,「特許の追加出願を行いたい」という記載があり,同年9月24日付け社内連絡書(甲72)にも,「追加の特許を出願したい」という記載があること(前記2⑶エ(イ),(カ))に鑑みると,本件発明1は,Aの単独発明である米国特許715号に係る歯列矯正ブラケットをベースとして,係止溝の中央部分のリブ及びロック部材の切欠き部など特徴的部分に係る構成も含め,改良を加えたものということができる。これらの点に加え,原告,B又はCが,本件会議から本件特許出願までの間,Aに対し,複数回にわたり図面を送付したり,コメントを求めたりしていたこと(前記2⑶ウ,エ)を併せ考えると,Aは,本件特許出願に向けての準備において,大きな影響力を有していたものと推認できる。 ウ本件発明1の特徴的部分に対するAの関与について(ア) 前記2⑶ア及びイのとおり,本件会議前に作成された書面や本件会議前のことを記載した書面のいずれにも,本件発明1の特徴的部分に関する記載は見られない。 この点に鑑みると,A及びBのいずれにおいても,本件会議前に,本件発明1の特徴的部分に係る構成を着想していたということはできない。 (イ) Aは,本件会議後,Cから平成11年6月7日付けで送信 この点に鑑みると,A及びBのいずれにおいても,本件会議前に,本件発明1の特徴的部分に係る構成を着想していたということはできない。 (イ) Aは,本件会議後,Cから平成11年6月7日付けで送信されたファクシミリにおいて,米国特許486号の「クリップホルダーの近遠心両端を閉塞させるというアイデア」とは「異なるアイデア」を見つけ出さなければならない旨述べていたのに対し,同日付け書簡(甲52の1丁目)において,本件発明1の特徴的部 分に係る構成を採用すれば,米国特許486号との抵触を避けられるという趣旨のことを述べている(前記2⑶ウ(ア)及び(イ))。 次いで,Aは,Bから,平成11年7月21日付けで,Cを介して,係止溝にリブを設けない構成のセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの図面9枚を送付された後,Cに対し,同月26日付け書簡(甲54の1・2丁目)を送付しており,同書簡において,上記図面に関するコメントの1つとして本件発明1の特徴的部分に係る構成を述べている(前記2⑶ウ(ウ)及び(エ))。 また,Aは,BからCを介して送られた前記9枚の図面のうち1枚に,係止溝の中央部分のリブ及びそのリブに対応する切欠き部を備えたクリップを手書きで書き入れて,その図面(甲54の3丁目)も前記書簡に添付してCに送っている(前記2⑶ウ(エ))。 さらに,Aは,Bによる「スロットブロッカーは既に他者によって特許取得されてしまった」という内容の同月27日付けファクシミリに関し,同月28日付け書簡において,「ウィング間の部位」に「スロットブロッカー」がある,すなわち,係止溝の両端ではなく,中央部部分にリブが設けられている構成の歯列矯正ブラケットについての特許発明は見たことがない旨を述べている(前記2⑶ウ(オ))。 加えて,Aは,遅 ッカー」がある,すなわち,係止溝の両端ではなく,中央部部分にリブが設けられている構成の歯列矯正ブラケットについての特許発明は見たことがない旨を述べている(前記2⑶ウ(オ))。 加えて,Aは,遅くともCが同月29日付けで原告に対してAからの書簡及び図面をファクシミリで送信するまでに,Cに対し,係止溝の長手方向中央部分にリブ(BLOCK)が設けられ,ロック部材(Clip)に切欠き部が設けられているという,本件発明1の特徴的部分に係る構成が全て示された同年6月7日付け図面(甲57の5・6丁目)を送付したものと認められる(前記2⑶ウ(カ))。 (ウ) 前記(イ)のとおり,Aは,本件会議後,平成11年7月末までの約1か月半の間,B又はCに対し,Dによる米国特許486号に係る歯列矯正ブラケットの構成との相違を意識しながら,書簡及び図面において,本件発明1の特徴的部分に係る構成を明示している。 他方,この間,Bの側から,Aに対し,本件発明1の特徴的部分に係る構成が示 されたことを認めるに足りる証拠は,存在しない。 そして,前記2⑶エのとおり,Bが作成したノート(甲41の1,甲42の1)には,本件発明1の特徴的部分に係る構成が図面と共に明記されており,本件発明1に係る明細書の記載内容(前記1⑴)と比較すると,同明細書は,前記ノートの内容を基に作成されたものと推認することができる。この点に関し,前記2⑶エ(ア)及び(ウ)のとおり,前記ノートに本件発明1の特徴的部分に係る構成が記載されたのは,平成11年8月3日及び同年9月2日であるところ,前記2⑶ウ(カ)のとおり,それよりも前に,本件発明1の特徴的部分に係る構成が明記されたA作成に係る書簡や図面がファクシミリで原告に送信されており,Bは,同年7月31日にはこれらを確認していたものと認 2⑶ウ(カ)のとおり,それよりも前に,本件発明1の特徴的部分に係る構成が明記されたA作成に係る書簡や図面がファクシミリで原告に送信されており,Bは,同年7月31日にはこれらを確認していたものと認められる。このことから,Bは,上記書簡や図面を参照しつつ,前記ノートを作成したものと推認することができる。 以上のとおり,Cが,原告に対し,Aから送付された本件発明1の特徴的部分に係る構成が明記された書簡及び図面をファクシミリで送信した後に,Bがこれらを参照して本件発明1の特徴的部分に係る構成が明記されたノートを作成したことが認められ,本件発明1の特徴的部分を着想したのはAであったということができる。 (エ) さらに,Aは,原告において作成した本件発明1に係るセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの20倍モデルにつき,実用化に向けて試験及び分析を行ったものと推認することができる(前記⑶エ(エ))。 エ小括以上のとおり,①Aは,セルフライゲーションの歯列矯正ブラケットの構造等に関し,相当高度な技術的知見を有していたこと(前記ア),②Aは,本件特許出願に向けての準備において,大きな影響力を有していたこと(前記イ),③本件発明1の特徴的部分を着想したのはAであったこと(前記ウ(ウ)),④Aは,原告において作成した本件発明1に係るセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの20倍モデルにつき,実用化に向けて試験及び分析を行ったこと(前記ウ(エ))を総合すれば,Aは,本件発明1の特徴的部分の完成に現実に関与したものという べきである。このことは,Bが本件特許出願について作成した2通の社内連絡書においてAを「発明者」又は「考案者」としており,いずれの書面とも当時の原告の代表者及び工場長を含む管理職の確認を経ていること(前 である。このことは,Bが本件特許出願について作成した2通の社内連絡書においてAを「発明者」又は「考案者」としており,いずれの書面とも当時の原告の代表者及び工場長を含む管理職の確認を経ていること(前記2⑶エ(イ),(カ))並びに⑤本件特許出願の願書及び本件特許の特許公報においてAが発明者として記載されていること(前記2⑶エ(ク),⑷イ(オ))からも裏付けられる。 そして,Bが本件発明1の発明者の1人であることは争いがないから,Aは,本件発明1の共同発明者であり,同旨の本件審決の認定・判断に誤りはないというべきである。 ⑶ 原告の主張についてア原告は,Bが,平成11年5月17日,米国矯正歯科学会の会場に展示されていたSTRITE社のSPEEDブラケットを観察していた際に,本件発明1の特徴的部分を着想して本件発明1を完成させ,その上で,本件会議において本件発明1の特徴的部分について提案し,本件図面に,係止溝の長手方向中央部分にリブを設けることを示す略正方形の図を書き込んだ旨主張する。 しかし,原告の上記主張は,主としてBの供述に基づくものであるところ,以下のとおり,同供述は,採用できず,したがって,原告の上記主張も採用することはできない。 (ア) すなわち,Bは,本件発明1の特徴的部分を着想した経緯に関し,平成26年3月4日付け陳述書(甲19)においては,本件会議時にAに対して上記着想の内容を話したところ,「良い評価をもらった」と述べながら,同年6月4日付け陳述書(甲33)においては,概要,「本件会議の際,Aは,係止溝の両端にリブを設ける構成を提案し,中央部分にリブを設けるというBの提案に対しては,あまりいい顔をせず,積極的に賛同してくれなかった。AがBの提案に賛同したのは,本件会議の後のことである。」と述べており,別件 を設ける構成を提案し,中央部分にリブを設けるというBの提案に対しては,あまりいい顔をせず,積極的に賛同してくれなかった。AがBの提案に賛同したのは,本件会議の後のことである。」と述べており,別件訴訟において平成27年7月15日に行われた証人尋問においても,同旨を述べている(甲86,88)。 また,Bは,本件図面に関しても,原告が平成26年3月11日付け審判答弁書 (乙1)の作成当時は,社内で厳重に秘密裏に保管されている資料であったため,米国矯正歯科学会に持参することができなかったので,帰国後に本件発明1の構成を書き込んだ旨述べながら,同年6月4日付け陳述書(甲33)においては,渡米時にCとの会議に備えて持参し,手書きによる書き込みは,Aが本件会議の場で書き込んだもの,Bが本件会議の場及び本件会議後に宿泊先のホテルで書き込んだもの,Fが後日書き込んだものがある旨述べ,前記証人尋問においても同旨を述べている(甲86,88)。 Bが本件発明1の特徴的部分を着想したという平成11年5月17日の翌日に実施された本件会議において,Bによる上記着想の提案に対してAがどのような反応をしたか,上記着想を表した最初の図面であるという本件図面は,どのような経緯で作成されたかは,いずれも,本件発明1の特徴的部分の着想の経緯において重要な事実というべきである。Bによる前記供述は,本件会議の約15年から16年後にされたものであることを考慮しても,このように重要な事実に関する供述内容が大きく変遷していることは,それ自体,Bの供述の信用性を疑わせるものである。 (イ) 加えて,Bは,前記(ア)のとおり,Aが同席した本件会議において自ら着想した本件発明1の特徴的部分を提案した旨述べているところ,前記2⑶イ(ア)のとおり,平成11年6月10日に「開発・ (イ) 加えて,Bは,前記(ア)のとおり,Aが同席した本件会議において自ら着想した本件発明1の特徴的部分を提案した旨述べているところ,前記2⑶イ(ア)のとおり,平成11年6月10日に「開発・設計計画書」に本件会議のことを追記した際,一見して趣旨が分かりにくい手書きを付した本件図面を添付したのみで,ほかに,本件発明1の特徴的部分についての具体的内容や,それについてのAの見解等につき,文章で何ら記載していないのは,不自然である。 (ウ) さらに,Bは,平成11年7月21日付けで,係止溝にリブを設けない構成のセルフライゲーションタイプの歯列矯正ブラケットの図面を作成してCにファクシミリで送信したこと(前記2⑶ウ(ウ))につき,概要,「当初,係止溝の中央部分にリブを設ける構成の歯列矯正ブラケットは,米国特許486号の技術的範囲に属するものと誤解していたので,上記図面を送った。その後,米国特許486号が,係止溝の近遠心端にリブを設ける構成を備えた歯列矯正ブラケットを開示する ものであり,係止溝の中央部分にリブを設ける構成のものは開示されていないことに気付いた。」と述べている(甲86,88)。 しかし,Bは,当時,原告において,設計開発を担当する開発部部長として,新製品開発,法務関係,特許出願等に携わっており(前記2⑴ア),しかも,毎週約2000件の特許調査をしていたこと(甲86,88)を考えると,自ら着想したという係止溝の中央部分にリブを設ける構成を備えた歯列矯正ブラケットが,係止溝の近遠心両端にリブを設ける構成を備えた歯列矯正ブラケットを開示する米国特許486号の技術的範囲に属すると誤解することは,考え難い。 さらに,前記2⑶イ(ア)のとおり,平成11年5月8日付け「開発・設計計画書」中,Bが同年6月10日に追記したもの ットを開示する米国特許486号の技術的範囲に属すると誤解することは,考え難い。 さらに,前記2⑶イ(ア)のとおり,平成11年5月8日付け「開発・設計計画書」中,Bが同年6月10日に追記したもののうち,「近遠心の側面の壁△-Dr.Dの新PAT 5,906,486△」という記載は,米国特許486号に係る歯列矯正ブラケットにつき,係止溝の近遠心両端に壁,すなわち,リブを設けることを示すものと解される。 この点に鑑みると,Bは,平成11年6月10日の時点において,米国特許486号につき,係止溝の近遠心両端にリブを設ける構成を備えた歯列矯正ブラケットを開示するものとして正しく認識していたものと推認できる。 したがって,Bにおいて,同年7月21日付けで前記図面をCに送信した際,前述のような誤解をすることについては,不自然といわざるを得ない。 (エ) 加えて,Bの前記供述は,客観的な裏付けも欠いている。 この点に関し,Bは,本件図面につき,手書き部分の書き込みは,B自身,A又はFによるものであり,自らは,係止溝の中央部分にリブを書き込んだ旨を述べる。 しかし,本件図面の書き込みのうち,特に文字以外のものは,複数の線が重なっているところもあるなど,一見して分かりにくいものということができる。また,日本語の記載が少なくともAによるものではないことは推認できるものの,さらに具体的に各書き込みの記載者を特定する根拠は,Bの前記供述のみである。同供述は,本件会議から長期間経過した後にされたものであり,記憶違いの可能性は否定 できない上,前記(ア)のとおり,本件図面が作成された経緯についてのBの供述が不自然に変遷していることにも鑑みると,Bの前記供述のみに基づいて各書き込みの記載者を特定することはできない。 さらに,仮にBの述べると ア)のとおり,本件図面が作成された経緯についてのBの供述が不自然に変遷していることにも鑑みると,Bの前記供述のみに基づいて各書き込みの記載者を特定することはできない。 さらに,仮にBの述べるとおり同人が係止溝の中央部分にリブを書き込んだとしても,それがAの話の内容に基づくものであったり,同人との議論によって得た結論に基づくものであるなどの可能性を否定しきれず,直ちにBが係止溝の中央部分にリブを設ける構成を単独で着想したということはできない。 以上に鑑みると,本件図面は,自ら単独で本件発明1を着想したというBの供述を客観的に裏付けるものということはできない。 イ原告は,Eが,陳述書において,「C氏が多数の会話の中で,スロットブロッカー発明についてB氏を称賛していたことを覚えております。」などと述べていることによれば,Cは,本件発明1の特徴的部分がBの単独発明である旨認識しており,これは,本件発明1がBの単独発明であることを裏付ける事実である旨主張する。 確かに,Eの陳述書(甲40)においては,スロットブロッカー発明の本質的特徴を着想したのはBである旨をCから聞いたなどと記載されているが,本件発明1の特徴的部分が着想された経緯についての具体的な言及はなく,上記陳述書の記載のみをもって,Cが原告主張のとおり認識していたものと認めることはできない。 また,仮にCが原告主張のとおり認識していたとしても,それのみをもって,本件発明1がBの単独発明であることを裏付ける事実とは,必ずしもいい難い。 以上によれば,原告の前記主張は,前提を欠き,採用できない。 ウ原告は,Aの関与につき,同人は,原告の製品についてのアドバイスとして,本件発明1の特徴的部分に係る構成の採用を提言したにすぎない旨主張し,これを裏付けるものとしていくつか ,採用できない。 ウ原告は,Aの関与につき,同人は,原告の製品についてのアドバイスとして,本件発明1の特徴的部分に係る構成の採用を提言したにすぎない旨主張し,これを裏付けるものとしていくつかの事実を指摘している。 しかし,前記⑵に加え,以下のとおり,原告が指摘する事実は,いずれも上記主張を裏付けるものということはできず,同主張を採用することはできない。 (ア) 原告は,AがC宛ての平成11年6月7日付け書簡において,「最も良い提案は,0.14ワイヤーが2つの係止溝にはまり込むのを防止するために,単に,半円状の金属製の堅固なブロックをウィング間の部位に置いておくというものでした。我々は,B氏と議論したようにこれを設計図に書き込むことを検討すべきであり,また,当然それを直ちに保護すべきです。私は,その出願にAとB(の名前)を用いることを提案します。」と述べている事実(前記2⑶ウ(イ))を指摘し,これをもって,前記の原告主張に係るAの関与を裏付ける事実として主張する。 しかし,前記書簡の内容からは,AとBとの間で,その作成日付よりも前に,本件発明1の特徴的部分についての議論が交わされたものと推認することができるものの,本件発明1の特徴的部分をBが単独で着想したとまでは認められない。よって,前記書簡の内容は,Aの関与についての原告の前記主張を裏付けるものとまではいうことができない。 (イ) 原告は,Aが,C宛ての平成11年9月21日付け電子メールにおいて,自身は共同発明者ではないことを自認する趣旨のことを述べた旨主張する。 しかし,上記電子メールの内容(前記2⑶エ(エ))は,主としてBが作成した歯列矯正ブラケットの20倍モデルを高く評価している旨を述べるものであり,上記趣旨を読み取ることはできない。 (ウ) 原 しかし,上記電子メールの内容(前記2⑶エ(エ))は,主としてBが作成した歯列矯正ブラケットの20倍モデルを高く評価している旨を述べるものであり,上記趣旨を読み取ることはできない。 (ウ) 原告は,Aが,GACから支払われる特許実施料収入を対価として製品開発に関与していたにもかかわらず,何ら契約関係を有しない原告の求めに応じて,米国特許105号に係る譲渡書を原告に送付する旨の意思表示をしたとして,本件発明1の共同発明者としては,経済的合理性を欠く行動である旨主張する。 しかし,前記2⑷イ(ア)から(オ)のとおり,Aは,Bから,電子メールや航空便で複数回にわたり,米国特許105号に係るAの権利を原告に譲渡する旨の譲渡契約書のフォームに署名した上で原告に返送することを強く求められながら,これに応じず,現在,原告と共に,米国特許105号の特許権者となっている。そして,この点に関しては,B及びCにおいても,米国特許105号の特許が登録された平 成14年の前年の時点で,Aにはその権利を原告に譲渡する意思はないものと判断していたことが推認できる。 したがって,Aは,上記譲渡契約書に署名して原告に返送してほしい旨の原告の要求を実質的に拒否しており,BやCもそのように認識していたものということができる。 (エ) 原告は,Aが,本件特許出願の願書の英訳文を受領し,その1頁を見て原告が単独出願人になっていることを知りながら何ら異議を述べず,単に「従前の特許と関連するような形にするため」に発明者欄の筆頭に自身の氏名を記載するよう要望したにとどまった事実を指摘し,これをもって,前記の原告主張に係るAの関与を裏付ける事実として主張する。 確かに,前記2⑷ア(エ)によれば,Aは,本件特許出願の願書の英訳文を見て,その発明者欄においてBの氏 った事実を指摘し,これをもって,前記の原告主張に係るAの関与を裏付ける事実として主張する。 確かに,前記2⑷ア(エ)によれば,Aは,本件特許出願の願書の英訳文を見て,その発明者欄においてBの氏名が先に記載されていることに不満を抱き,自身の氏名を筆頭に記載するようCを介して原告に要求したものと認められ,このことから,上記願書中,出願人として原告のみが記載されていることも,Aの目に触れたものと推認することができる。 しかし,Aは,上記のとおり発明者名の記載の順序という比較的小さな問題を取り上げてわざわざCを介して原告に変更を要求していることに鑑みると,願書中,発明者欄の記載について相当に強い関心を持っていたのに対し,発明者欄以外の記載には,さほど注意を払っていなかったものと考えられる。また,Aが上記のとおり発明者欄の記載について相当に強い関心を持っていたことは,同人が自身の発明者としての立場を強く意識していたことの証左ということができる。 以上に鑑みると,原告が指摘する前記事実は,Aの関与についての原告の前記主張を裏付けるものということはできない。 (オ) 原告は,Aが,本件特許出願後,平成25年1月10日付け書簡を原告に送付するまで,13年以上にわたる長期間,本件特許に関する権利主張,問合せを一切せず,特許年金の支払に関する確認もしなかった事実を指摘する。 しかし,上記事実も,Aの関与についての原告の前記主張を裏付けるものとまではいうことができない。 エ原告は,Aが本件図面に係止溝の両端にリブを設ける構成を示す書き込みをしたとして,これを,Aの共同発明者性を否定する要素の1つとして主張する。 しかし,前記ア(エ)と同様の理由により,そのような書き込みの記載者を直ちにAと特定することはできない。仮に,Aが上 みをしたとして,これを,Aの共同発明者性を否定する要素の1つとして主張する。 しかし,前記ア(エ)と同様の理由により,そのような書き込みの記載者を直ちにAと特定することはできない。仮に,Aが上記書き込みをしたとしても,それがAの考えを反映したものとは限らない。 したがって,原告の前記主張は前提を欠き,採用できない。 オ原告は,Cが,甲第17号証の会議議事録において,Aが係止溝の両端にリブを設けるという構成を超える提案をしなかった旨を明示しているとして,これを,Aの共同発明者性を否定する要素の1つとして主張する。 しかし,甲第17号証,すなわち,「サンディエゴマリオット 1999年5月16日開催の開発プロジェクトミーティングの要約」と題する書面の概要は,前記2⑶イ(エ)のとおりであり,Aの提案に関しては,「彼はクリップを改善するいくつかの提案を持っていましたが,それらはSpeed社が既に何年も使っている原理と同じものです。」という記載があるところ,「クリップを改善するいくつかの提案」の内容は明らかではない。この点に鑑みると,甲第17号証の記載は,原告主張の点を明示するものということはできない。 また,そもそも前記書面の内容は,当該ミーティングにおける議論の内容の記録というよりも,Cが同ミーティングの出席者に対して自身の感想,考えを伝える書簡のようなものということができる。加えて,米国矯正歯科学会の際に行われたBとCらとの打合せは,平成11年5月16日及び同月18日(本件会議)の2回であり,Aは少なくとも本件会議には参加していたところ(前記2⑶イ(エ)),甲第17号証は,前記題名によれば,Cが主に同月16日の打合せについて記載したものと推認することができる。 これらの点に鑑みると,甲第17号証は,米国矯正歯科学会の際 ところ(前記2⑶イ(エ)),甲第17号証は,前記題名によれば,Cが主に同月16日の打合せについて記載したものと推認することができる。 これらの点に鑑みると,甲第17号証は,米国矯正歯科学会の際に行われた打合 せにおいてAが提案した内容を全て記載したものということはできない。 以上によれば,甲第17号証の記載は,Aの共同発明者性を否定するものとまでいうことはできない。 ⑷ 本件発明2から18について本件発明2から18は,いずれの発明特定事項も本件発明1の発明特定事項の全てを含むものである。 そして,前記⑴から⑶のとおり,本件発明1は,AとBの共同発明であるから,本件発明2から18も同様に,AとBの共同発明ということができる。 なお,原告は,本件発明9及び14については,AとBの共同発明であることを認めている。 ⑸ 小括以上によれば,本件発明は,AとBの共同発明であり,本件審決には,原告主張の取消事由1に係る違法はない。 4 取消事由2(原告が本件発明について特許を受ける権利を承継していないとした認定・判断の誤り)について前記3によれば,AとBは,本件発明の共同発明者として,本件特許出願当時,それぞれ本件発明について特許を受ける権利の共有持分を有していたものと認められる。 ⑴ Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分の譲渡についてア原告は,本件特許出願に際し,Aが有する本件発明について特許を受ける権利を原告に譲渡することにつき,書面による事前の同意は得ていなかった(前記2⑶エ(ク))。本件証拠上,Aが本件発明に関して自身が有する権利を原告に譲渡したことを示す書面は,存在しない。 そして,Aは,原告から,本件特許出願を優先権の基礎とする米国特許105号に係る自身の権利を ))。本件証拠上,Aが本件発明に関して自身が有する権利を原告に譲渡したことを示す書面は,存在しない。 そして,Aは,原告から,本件特許出願を優先権の基礎とする米国特許105号に係る自身の権利を原告に譲渡する旨の譲渡契約書フォームに署名した上で返送することを強く求められながら,その要求を実質的に拒否しており(前記3⑶ウ (ウ)),したがって,上記権利を原告に譲渡することを拒否していたものと認められる。 さらに,本件特許の特許公報には,発明者としてAの氏名が記されているところ(前記2⑷イ(オ)),Aは,原告に対し,自身が本件特許の特許請求の範囲の請求項に具体化された発明に関する権利を原告に譲渡した記憶はなく,その旨の記録も有していないという趣旨の平成25年1月10日付け書簡を送付した(前記2⑷イ(カ))。 以上によれば,本件全証拠によっても,Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことは,認めるに足りないというべきである。 イ原告の主張について(ア) 原告は,Aが,C宛ての平成11年9月21日付け電子メールにおいて,本件発明1がBの単独発明であり,A自身は共同発明者ではないことを自認する趣旨のことを述べた旨主張する。 しかし,前記3⑶ウ(イ)のとおり,上記電子メールは,主としてBが作成した歯列矯正ブラケットの20倍モデルを高く評価している旨を述べるものであり,原告が主張するような趣旨を読み取ることができない。 (イ) 原告は,Aが,本件特許出願後,平成25年1月10日付け書簡を原告に送付するまで,13年以上にわたる長期間,原告に対し,本件発明に関する権利を譲渡する意思がないことを明示したことはなく,また,本件特許に関する要求,通知,問合せもせず,特許年金の支払に関する確認もしな 付するまで,13年以上にわたる長期間,原告に対し,本件発明に関する権利を譲渡する意思がないことを明示したことはなく,また,本件特許に関する要求,通知,問合せもせず,特許年金の支払に関する確認もしなかったことをもって,原告とAとの間において,遅くとも本件特許出願時までには,Aの前記共有持分を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたということができる旨主張する。 しかし,前記アのとおり,Aにおいて本件特許出願を優先権の基礎とする米国特許105号に係る自身の権利を原告に譲渡することを拒否していたことに鑑みると,原告が指摘する事実をもって,前記黙示的合意の存在を推認させる事実と評価することはできない。 (ウ) そのほか,本件全証拠によっても,前記黙示的合意の存在を認めるに足りず,原告の前記主張は,採用できない。 ⑵ Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡したことについて原告は,原告とAとの間においては,遅くとも本件特許出願時までには,Aが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡する旨の黙示的合意が成立していたのであるから,Bが有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡することについて,Aの同意は不要である旨主張する。 しかし,前記⑴のとおり,本件全証拠によっても,上記黙示的合意の存在を認めるに足りない。 また,Bにおいて同人が有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡していたとしても,本件証拠上,本件発明の共同発明者としてその特許を受ける権利をBと共有していたAが,上記譲渡に同意していたことを認めるに足りないというべきである。 ⑶ 本件特許出願について本件発明の特許を受ける権利は,AとBが共有していたものと認められる。 権利をBと共有していたAが,上記譲渡に同意していたことを認めるに足りないというべきである。 ⑶ 本件特許出願について本件発明の特許を受ける権利は,AとBが共有していたものと認められる。 そして,前記⑴のとおり,Aが有する本件発明の特許を受ける権利の共有持分が原告に譲渡されたことについては,これを認めるに足りない。 また,前記⑵のとおり,Bにおいて同人が有する本件発明について特許を受ける権利の共有持分を原告に譲渡していたとしても,Aが同譲渡に同意していたことを認めるに足りない。したがって,仮に同譲渡があったとしても,無効と解すべきである。 以上によれば,本件特許出願当時,AとBが本件発明について特許を受ける権利を共有していたものと認められるから,原告による本件特許出願は,本件発明の発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願,すなわち,いわゆる冒認出願といわざるを得ない。 ⑷ Aによる本件特許出願の事後的追認についてア原告は,仮に,前記黙示的合意が成立していなかったとしても,Aが,①本件特許出願後,13年以上にわたる長期間,原告に対し,本件発明に関する権利を譲渡する意思がないことを明示したことはなく,また,本件特許に関する要求,通知,問合せもせず,特許年金の支払に関する確認もしなかったこと,②本件特許出願の願書の英訳文を見て,原告が単独で本件特許出願をしたこと,したがって,原告のみが本件特許の特許権者になることを認識したにもかかわらず,この点については異議を述べなかったこと,③Aは,米国特許105号の出願後に,Bから,Aの米国特許105号に係る共有持分を原告に譲渡する旨の譲渡書の送付を求められた際,これに応じる旨の回答をしており,Aと原告との間において,前記共有持分 ,③Aは,米国特許105号の出願後に,Bから,Aの米国特許105号に係る共有持分を原告に譲渡する旨の譲渡書の送付を求められた際,これに応じる旨の回答をしており,Aと原告との間において,前記共有持分を原告に譲渡する旨の合意が成立したことは明らかであることによれば,Aは,原告単独による本件特許出願を事後的に追認していたものということができる旨主張する。 イしかし,上記①の点については,前記⑴アのとおり,Aにおいて本件特許出願を優先権の基礎とする米国特許105号に係る自身の権利を原告に譲渡することを拒否していたことに鑑みると,原告が指摘する事実をもって,本件特許出願の事後的追認の存在を推認させる事実とみることはできない。 上記②の点については,前記3⑶ウ(エ)のとおり,Aは,自身の発明者としての立場を強く意識していたことから,発明者欄の記載について相当に強い関心を持ち,注意を向けており,他方,発明者欄以外の記載には,さほど注意を払っていなかったものと考えられ,原告が指摘する事実をもって,本件特許出願の事後的追認の存在を推認させる事実とみることはできない。 上記③の点については,前記⑴アのとおり,Aは,米国特許105号に係る自身の権利を原告に譲渡することを拒否していたものと認められ,原告の主張は,前提を欠く。 ウしたがって,Aが原告単独による本件特許出願を事後的に追認していたとい う原告の主張は,採用できない。 ⑸ 小括以上によれば,本件特許は,本件発明の共同発明者であるA及びBのいずれからも特許を受ける権利を承継しなかった原告による本件特許出願に対してされたものであるという本件審決の認定に誤りはない。 したがって,取消事由2は,理由がない。 5 取消事由3(本件審判の審理不尽)について原告は,本 なかった原告による本件特許出願に対してされたものであるという本件審決の認定に誤りはない。 したがって,取消事由2は,理由がない。 5 取消事由3(本件審判の審理不尽)について原告は,本件審判において,Bの証人尋問を実施することなく,本件審決をしたことは,裁量権を超えた審理不尽というべきである旨主張する。 しかし,本件審判においては,Bの陳述書(甲19,33,35)が取り調べられたものである。そして,当審は,本件と当事者が同一であり,本件の取消事由1及び2とほぼ同じ内容を争点とする別件訴訟において行われたBの証人尋問調書(甲86,88)を取り調べており,その結果,前記3及び4のとおり,取消事由1及び2はいずれも理由がないものと判断した。 したがって,本件審判においてBの証人尋問を実施しなかったことは,本件審決の結論に影響を及ぼすものではなく,本件審決を取り消す理由にはなり得ない。 以上によれば,取消事由3は,理由がない。 6 結論したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官田中芳樹 裁判官鈴木わかな (別紙1) 本件図面(甲32の1) ●●省略●● (別紙2) 甲第54号証の3丁目の図面●●省略●● (別紙3)本件明細書(甲1)掲載の図面 【図1】(本件発明に係る歯列矯正ブラケットの分解斜視図) 【図2】(本件発明に係る歯列矯正ブラケットの平面図) 【図1】(本件発明に係る歯列矯正ブラケットの分解斜視図) 【図2】(本件発明に係る歯列矯正ブラケットの平面図) 【図13】(従来の歯列矯正ブラケットにおいて,アーチワイヤが通常の状態にあるときの,ロック部材の作用を示す断面図) 【図14】(従来の歯列矯正ブラケットにおいて,アーチワイヤが動いたときの状態を示す部分断面図) 【図15】(従来の歯列矯正ブラケットにおいて,アーチワイヤが動いたときのロック部材の状態を示す断面図) (別紙4)甲57号証の5・6丁目の図面5丁目の図面 6丁目の図面

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