平成19(わ)813 恐喝,詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
平成20年8月15日 大阪地方裁判所
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判決文本文19,870 文字)

主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1かねて,甲と共に,A弁護士が行った甲の金融業者に対する債務の処理に不手際があったなどと因縁を付けて金銭を脅し取ったり,甲が借金をした悪質な金融業者等がAの名前が記載された借用書を所持しているため,このままだとAに対して取り立てにくるなどという架空の話を信じこませた上,同人に対し,金融業者に金を払わなければ,金融業者がAを刺しにくる,被告人がそれを止めてやっているが,まとまった金を払わないと,抑えられないなどと脅迫し,同人を畏怖させて金銭を脅し取っていたものであるが,同人の畏怖に乗じて,更に金銭を脅し取ろうと企て,平成12年3月2日ころから平成18年12月14日ころまでの間,多数回にわたり,大阪市北区西天満aビル所在のA法律事務所等において,Aと面談し,または,同人の携帯電話に電話をかけるなどして,同人に対し「このままやったら金融屋が行きよるぞ。金融屋はお,前を刺しに行く言うてるぞ「何が起こってもおかしくないくらい緊。」,迫しとる「金融屋に金を持っていかないとあかん。早く金を入れろ。 。」,普通の金融屋じゃない「金が遅れたので,金融屋はむちゃくちゃ怒。」,ってる。容赦せんと言うてるぞ。私が止めるのにも限度がある「金。」,を払わないと私も債権者を止め切れないので,お前のところに債権者が押しかけて何をするか分からない「お前の嫁はんもどうなるか分か。」,らんぞ。金融屋は,お前が死んだって,嫁はんとか子供とかに行きよるぞ。何をされるか分からんぞ「家や近所や事務所の周りにビラをま。」, くぞ「4000万円プラス利息を払わないと金融屋が押しかける。 。」,何をされるか分からない「今すぐ金融屋が に行きよるぞ。何をされるか分からんぞ「家や近所や事務所の周りにビラをま。」, くぞ「4000万円プラス利息を払わないと金融屋が押しかける。 。」,何をされるか分からない「今すぐ金融屋がお前のところに行く。」,ぞ「誰のおかげで弁護士できてんねん「お前もこのへんで腹く。」,。」,くれ。金払うか,やられるかや」などと執拗に言い,上記A法律事務。 所にあてて「今日が最終期日です。このまま放っておくと弁護士を辞,めなくてはならない事態になるであろう「返済の件もあるので,大。」,至急電話をしてきなさい。同時に自宅のほうにも北海道から来ている人が訪問し,その趣旨と文面を君のところに届けると思います。君の所が留守の場合には,ご近所に届けると思います」などと記載した文書を。 ファクシミリ送信し,深夜,兵庫県宝塚市のA方に押しかけ,あるいは,同人方付近路上において,自動車のクラクションを何度も鳴らすなどして威嚇し,さらに,上記A方玄関扉等に「借金紛れで君の自慢の自宅も既に所有権は変わってしまった。自業自得である。これ以上今までの様な電話もしない,返金もしない,弁護士の資格も剥奪されることもあり得る状況であることを分かっているのか」などと記載した書面を貼り。 付けるなどし,平成16年10月26日ころ,上記aビルに入居している法律事務所13か所にA作成の借用書等をファクシミリ送信し,そのうちaビルの法律事務所に届いた1通を同事務所員を介してAに了知させ,平成18年3月30日ころから同月31日ころまでの間,同年4月18日ころから同月21日ころまでの間,同年6月22日ころから同年7月10日ころまでの間及び同月13日ころから同年12月14日ころまでの間,上記A方前の歩道を殊更塞いで自動車を駐車するなどして,同人及びその親族の身体, 日ころまでの間,同年6月22日ころから同年7月10日ころまでの間及び同月13日ころから同年12月14日ころまでの間,上記A方前の歩道を殊更塞いで自動車を駐車するなどして,同人及びその親族の身体,生活の平穏,円滑な事務所運営,弁護士としての社会的信用等に危害を加える旨を告知するなどの脅迫をして金銭の交付を要求し,同人に,もし要求に応じなければ自己及び親族の身体等にいかなる危害を加えられるかもしれないと畏怖させ,よって,別表1 記載のとおり,414回にわたり,同人から神戸市灘区所在の株式会社みずほ銀行灘支店の被告人名義の普通預金口座に現金合計3億1191万5000円を振り込ませ,もって人を恐喝して財物の交付を受け第2スナックで知り合ったBから,信販会社に対するクレジット債務の返済に関する相談を受け,かねて,同人に対し,債務処理はまだ解決しておらず,被告人が請求を止めてやっている,被告人が手を引けば,同人やその父が仕事を辞めなければならなくなり,大変なことになるなどと執拗に脅し付けるなどして,肉体関係等を強要し,同人を畏怖させていたものであるが,同人の畏怖に乗じて,更に金銭を脅し取ろうと企て,平成15年4月9日ころから平成17年5月23日ころまでの間,その都度,佐賀県内にいた同人に電話をかけるなどして,同人に対し「サ,ラ金に借入れの申込みをして来い「プロミスに行け「武富士に。」,。」,行け「お前その金持っていてもしゃあないやろ。俺に預けろ」な。」,。 どと金融業者から金銭を借りて送金等をするように言うなどして,金銭の交付を要求し,同人に,もし要求に応じなければ自己及びその親族の身体等にいかなる危害を加えられるかもしれないと畏怖させ,よって,別表2記載のとおり,23回にわたり,同人から兵庫県尼崎市所在の株式会社三井住 求し,同人に,もし要求に応じなければ自己及びその親族の身体等にいかなる危害を加えられるかもしれないと畏怖させ,よって,別表2記載のとおり,23回にわたり,同人から兵庫県尼崎市所在の株式会社三井住友銀行尼崎支店の被告人名義の普通預金口座等に振込送金をさせるなどの方法により,現金合計431万円を交付させ,もって人を恐喝して財物の交付を受け第3Cから金銭を詐取しようと企て,平成18年8月初めころから同月下旬までの間,その都度,神戸市内を走行する普通乗用自動車内において,Cに対し,真実は,返済の意思がなく,受領した金銭は第三者に貸し付けることなく,自己の用途に費消するつもりであるのに「俺に出資せ,えへんか。この時代,金や株に投資したら,元本が目減りするかもしれん。高利貸しに金を貸したら,一番安心やぞ。金融機関から金を借りれ ばいいんや。利息は俺が払ってやるから,絶対に損はせえへん。いるときに言うてくれたら,いつでも返すから「VISAカードでどれだ。」,け利用枠が残っている。それでJRの新幹線の回数券を買って,金融屋に持って行って金を作って,それを出資してくれ。いるときに言ってくれたら,すぐに返すから「サラ金から,金を借りてもらっても,必。」,。 ,要なときにはすぐに返すから。利息は俺が払うから」などと嘘を言い同人を,そのように誤信させ,よって,別表3記載のとおり,同月3日から同月28日までの間,4回にわたり,同人から,被告人に対する出資金として,前記株式会社みずほ銀行灘支店の被告人名義の普通預金口座に現金合計344万円を振込送金させ,もって,人を欺いて,財物の交付を受けた。 (証拠)省略(事実認定の補足説明)第1Aに対する恐喝事件について 弁護人の主張弁護人は,Aが被告人の管理口座に,別表1記載のとおり金銭を振 させ,もって,人を欺いて,財物の交付を受けた。 (証拠)省略(事実認定の補足説明)第1Aに対する恐喝事件について 弁護人の主張弁護人は,Aが被告人の管理口座に,別表1記載のとおり金銭を振り込んだこと,被告人が,判示第1記載のとおり,Aが経営する法律事務所や近隣の法律事務所に文書等をファクシミリ送信したこと,Aの自宅駐車場前付近に自動車を駐車したことは争わないが,①本件犯行前の経緯として指摘されていることを含めて被告人が脅迫行為を行ったことはない,②Aから受け取った別表1記載の金銭は,Aに対する貸付金の返済である,③被告人がAにした嫌がらせは,Aが上記貸付金の返済を怠ったためにしたものであるが,その行為は脅迫に該当しないと主張するので以下検討する。なお,被告人は,公判廷で,おおむね弁護人の上記主張に沿う供述をするが,判示記載のAに対する脅迫文言とされているような発言をしたことは一部認める供述をしている。 Aの供述について(1)Aは,平成12年3月2日以降被告人から多額の現金を恐喝されるようになった経緯として,被告人を通じて紹介された甲から,平成3年5月以降,様々な因縁を付けられ金銭を交付し続けていたところ,被告人のことを,Aと甲との仲裁をしてくれたり,Aに適切な助言を与えてくれる人物であると非常に信頼するようなった,一方,甲からは,平成4年春過ぎころ,同じく被告人から紹介された乙が,Aの名前を記載した偽造の借用書で借金をし,その借用書が和歌山の金融業者に回っているとか,平成5年12月ころ,その金融業者とトラブルになり傷害事件になってしまった,金融業者は資力のあるAやその家族に追い込みをかけるだろうなどと言われていたところ,被告人からも,甲の話と符合することを言われた上,金を支払わなければAもその家族も殺される 害事件になってしまった,金融業者は資力のあるAやその家族に追い込みをかけるだろうなどと言われていたところ,被告人からも,甲の話と符合することを言われた上,金を支払わなければAもその家族も殺される,上記傷害事件の件で和歌山の金融業者は3億5000万円を要求している,被告人自身も多額の金銭を負担して交渉するので,Aも相応の金銭を負担するよう言われるなどし,平成6年以降恒常的に,被告人に和歌山等の金融業者対策として多額の金銭を交付していったなどと供述する。 (2)Aが,平成12年3月2日から平成18年12月14日ころまでの間,被告人に対し,別表1記載のとおり,多数回にわたって多額の現金を振り込んだことは,被告人もこれを争わず関係証拠によって優に認められるところ,関係証拠によれば,Aは,平成6年1月ころから被告人に多額の現金を交付し始め,遅くとも平成7年4月5日から平成18年12月14日までの被告人管理口座への振込額合計は約5億4300万円にもなっていることが認められる。Aと被告人は,平成元年12月ころ,被告人が被告となった民事訴訟の訴訟委任を契機として知り合ったことは明らかであり,Aが,そのような経緯で知り 合った被告人に上記のとおり長期間にわたって多額の現金を振り込むことは,特別な理由を抜きにして考えられないが,Aの上記供述は,その特別な理由を具体的かつ詳細に語るものである。 また,Aは,被告人から判示第1記載のとおりの脅迫をされたと供述しているが,その脅迫行為のうち,被告人がAの経営する法律事務所や近隣の法律事務所に判示記載の内容のファクシミリを送信したこと,深夜A方に押しかけたり,同人方付近路上において,自動車のクラクションを何度も鳴らすなどしたこと,判示記載の期間,A方前に自動車を駐車したことについては,被告人もこれを争っ クシミリを送信したこと,深夜A方に押しかけたり,同人方付近路上において,自動車のクラクションを何度も鳴らすなどしたこと,判示記載の期間,A方前に自動車を駐車したことについては,被告人もこれを争っておらず,関係証拠によって明らかに認められる。また,被告人がA方玄関扉等に書面を貼り付けるなどしたことについても,当該文書の存在によって裏付けられている。さらに,判示第1記載の脅迫行為のうち被告人からAに対する脅迫文言については,Aが録音していたAと被告人又は甲との会話状況を録音したテープやAが備忘録代わりに付けていたと認められる手帳の記載によって間接的に裏付けられているものがあるほか,被告人自身,公判廷において,Aに金銭を交付させるため,あたかも被告人がAの防波堤となって和歌山,広島,北海道などの金融業者と交渉し,その金融業者がAのもとへ行くのを食い止めるためには金がいる,金融業者にAの借用書を入れなくてはならないなどといった架空の話をしたり,金融業者に指示してAのもとに取立てに行かせる,俺も腹をくくってるからお前も腹をくくれなどという話をした旨供述しており,A供述と重要な部分において符合している。なお,被告人は,上記金融業者などの架空の話をした時期は平成16,17年以降からであったかのような供述もするが,手帳の記載や録音されているAと被告人の会話状況からすれば,Aは,平成5年12月ころ,被告人から,金融業者から要求された高額の金銭を被告人も負担する のでAも準備するよう説得され,平成6年1月27日に,被告人に1500万円を交付したことが動かし難い事実として認められる。したがって,被告人の上記発言時期に関する供述は客観的証拠と矛盾している。 そのほかAは,長年にわたる被告人や甲とのやりとりを具体的かつ詳細に語っているが,その供述内 かし難い事実として認められる。したがって,被告人の上記発言時期に関する供述は客観的証拠と矛盾している。 そのほかAは,長年にわたる被告人や甲とのやりとりを具体的かつ詳細に語っているが,その供述内容のポイント等は,上記の会話状況や手帳の記載及びAがその当時作成した文書等の客観証拠に符合している。 (3)A供述は,本件が15年以上前の出来事に端を発しているにもかかわらず,平成3年5月ころからAが甲から恐喝されるようなった経緯,甲からの恐喝内容,平成5年12月ころを境に甲からの恐喝が次第に被告人からの恐喝へと推移していった経緯,被告人からの恐喝内容のいずれについても,非常に詳細かつ具体的である。また,Aは,当初の鷲林寺や武庫川の河川敷での出来事や,和歌山の金融業者と関連させて被告人から受けてきた要求の内容,何枚もの多額の借用書を作成させられた事情,平成9年以降姿を見せなくなった甲について被告人からロシア人に殺されたと告げられた状況など,真に体験した者でなければ語ることができない迫真的で重要なエピソードを数多く語っている。さらに,Aは,長い経過の中でなぜ被告人に恐喝され続けたのかということについて,被告人のことを当初は甲を押さえその後は金融業者を押さえてくれる存在として信頼していたところ,脅迫してきた甲と信頼していた被告人の話が一致するなどしたため,Aやその家族に危害を加えかねない金融業者が実際に存在し,被告人が自ら金銭の負担をしながら金融業者と交渉していたことは信じて疑わなかったこと,そのため,平成9年ころからは被告人から命令されるような関係となり,当初Aが被告人に抱いていたような感謝の念はなくな っていったが,金融業者と被告人に対する二重の恐怖から,被告人の要求に従ったというように,自らが体験した事態の推移に応じて変化した被 関係となり,当初Aが被告人に抱いていたような感謝の念はなくな っていったが,金融業者と被告人に対する二重の恐怖から,被告人の要求に従ったというように,自らが体験した事態の推移に応じて変化した被告人に対する心情も交えながら具体的に供述している。そして,A供述の内容は,詳細な反対尋問にさらされても一貫している。 (4)弁護人は,①Aは弁護士であるから,Aが供述するような恐喝被害に遭えば警察に通報するのが当然であるところ,Aは顧客からの預り金に対する業務上横領容疑で逮捕されるまで,本件について一切警察に通報しておらず,それは不自然であること,②Aは事件処理を通じて暴力団と交渉した経験もあるのであるから,裏の金融業者なる存在を信じるのも不自然であるし,被告人が裏の金融業者の存在を使って恐喝しているのであれば,当該金融業者と直接交渉するなどして相手を確認することも可能であったにもかかわらずそのようなことをしておらず,不自然であるなどと主張する。 まず,①について,Aは,甲や非常に信頼していた被告人から金融業者がすぐに刺しに行くと言われていたので,そのことを信じ,警察に頼んでいたのでは間に合わないと思っていたし,北海道や和歌山の金融業者といってもその名前や場所が特定されていないことから警察に通報しても警察も対応してくれないと思ったと供述しているところ,Aの弁護士としての職務経験から,そのように考えることもあり得るところであり,また,甲や被告人から継続的に恐喝を受け,金融業者等から危害を加えられることに切迫した恐怖を感じていたことをも併せ考えると,Aが本件について一切警察に通報しなかったことが特段不自然とまではいえず,これによってA供述の信用性が損なわれるものではない。 また,②の点についても,Aが,被告人が語る金融業者の存在を信じていた Aが本件について一切警察に通報しなかったことが特段不自然とまではいえず,これによってA供述の信用性が損なわれるものではない。 また,②の点についても,Aが,被告人が語る金融業者の存在を信じていたことは,既に指摘した録音テープ,手帳等の客観証拠により 明らかであり,金融業者の存在は,Aと被告人の間で当然の前提になっていたと認められる。そして,Aは,自ら金融業者と交渉しようと思ったこともあったが,被告人に必ず止められ,信頼している被告人から並の金融屋ではないなどと言われており金融業者に対する恐怖感もあったので,被告人に任せておこうと思ったと供述しているところ,そのようなAの供述が特段不合理とはいえない。 甲の供述について(1)甲は,被告人から,被告人を通じて銀行協会に金を預ければ,利息が付いて倍になるなどと言われ,金融業者から借金をしてまで被告人に金を預けるようになったが,被告人の紹介で借り入れたY商事からの1000万円の返済が滞り,厳しい取立てをうけるようになったこと,被告人からAを紹介され,AにY商事の件の解決を依頼したが,AがY商事との間で締結した和解金の支払ができず被告人に相談したところ,被告人から,Aの交渉がまずかったなどと因縁をつけて金を取ればいいなどと言われ,その指示に従って,Aの自宅や事務所に押しかけたり電話をしたりして金の支払いを要求し続けたこと及びその後も,平成10年ころまで被告人の指示に従って,Aを恐喝し続けていた状況について,具体的に供述をしている。 (2)上記A供述等によれば,被告人は,Aに対し,甲からの脅迫行為について相談に乗ったり,仲裁するような態度を示していたものの,結局,Aに対して甲の要求どおりの金銭を支払うよう助言しており,また,甲がAに話していた和歌山の金融業者の件では,Aからの相談 迫行為について相談に乗ったり,仲裁するような態度を示していたものの,結局,Aに対して甲の要求どおりの金銭を支払うよう助言しており,また,甲がAに話していた和歌山の金融業者の件では,Aからの相談を受けた被告人も,実体のない金融業者の存在を信じ込ませた上で,自分も金銭を負担するからなどと言い,Aに金銭の支払を要求するなどしている。このように,被告人の言動を通じてみれば,被告人は甲の脅迫行為に歩調を合わせて被告人に金銭を支払うよう仕向けていた のであり,両者が当初から相通じていたことは高度の蓋然性をもって認められる。そして,甲が被告人から離反し,Aに対する恐喝行為を止めた後も,被告人は,甲が金融業者に殺されたなどと述べて,更にAを畏怖させ,金銭を要求し続けていたことからすれば,甲によるAに対する恐喝行為については,当初から,被告人が積極的,主導的に遂行していたものと推認される。 甲の供述は,全体を通じて具体的かつ自然であり,上記認定にもよく符合している上,特に被告人から恐喝の指示を受けた際の状況や文言については迫真性がある。また,Aを恐喝する原因となる被告人に対する金銭の預託については,甲が作成し被告人に渡したメモによって裏付けられている上,Aに対する恐喝行為の具体的態様については,A供述とも概要において一致しているなど,他の証拠関係とも整合している。 (3)弁護人は,甲が被告人の話を信じて被告人に約6000万円もの金銭を預けながら,分け前もなく,被告人の指示に従ってAを恐喝し,結局被告人から金銭を返還してもらうのをあきらめたというのは不自然であり,甲が作成し被告人に渡したメモを被告人に預けた金銭を記載したと理解するには合理的に説明できない点があり,信用できないと主張する。 甲は,これらの点につき,当時被告人に多額の金銭を預け 不自然であり,甲が作成し被告人に渡したメモを被告人に預けた金銭を記載したと理解するには合理的に説明できない点があり,信用できないと主張する。 甲は,これらの点につき,当時被告人に多額の金銭を預けていたことや,金融業者からの取立てが怖かったので,被告人の指示どおりにAに繰り返し連絡し追い込んでいった,その後も今まで預けた金銭を戻して欲しいという気持ちもあり,被告人に従ってAを脅迫していた,平成10年ころ,本業の事業が忙しくなり,本業で生活できるようになっていたので被告人の下を離れたが,被告人が怖かったので返済を強く求めたり,刑事告訴することはなかったと供述している。この点 は,被告人の話を信じて金銭を預けたものの,事業によって生計を立てることができるようになったことに加え,当時からAに対する行為が恐喝に該当すると認識していたという当時の甲の心理状態からすれば,あえて警察や裁判に訴えることで自らの行為を明るみに出すことを避け,預けた金銭の返済をあきらめたとしても不自然ではない。 次に,弁護人が合理的でないと主張するメモについては,確かに,同メモは10年以上前に作成されたものであるため,甲の供述には記憶に曖昧な点があることは否定できないが,甲は,平成6年以降に,それまでに被告人に預けた金を返してもらいたいとの趣旨で作成したと述べているところ,同メモの記載自体に特段不合理な点は見あたらない。すなわち,同メモ本文2枚目には,平成2年11月に「1000万Y」の記載があるところ,この記載は,甲がY商事から1000万円を借り受けた旨の借用書に符合し,Y商事から1000万円を借り受けて被告人に預けた旨の甲の供述を客観的に裏付けている。また,弁護人が不合理であると主張する本文2枚目の「8月200万Z」の記載は,Zから300万円借り入れて被 し,Y商事から1000万円を借り受けて被告人に預けた旨の甲の供述を客観的に裏付けている。また,弁護人が不合理であると主張する本文2枚目の「8月200万Z」の記載は,Zから300万円借り入れて被告人に預けたが,そのうち100万円は既に被告人がZに返済したので,残りは200万円であるという趣旨であり,本文4枚目の単に「社長」記載され,数字が計上されているものは,甲が供述するように甲の自己資金から被告人に預けた金額であり,また,同じく4枚目の「9月△190万円社長より(W小切手分,6枚目の「平成6年200万円程い)」ただいてます」の文言は,甲が被告人から金銭を受け取った場合の特別の記載であると,合理的に理解することが可能である。したがって,弁護人の主張を考慮しても,甲供述の信用性は揺るがない。 (4)また,弁護人は,甲が被告人に6000万円を超える金銭を預けていると供述しながら,甲の経営する事業が発展しているのは不自然 であって,Aから脅し取った金銭を取得していたからこそ事業が成功したと主張するが,甲の供述によっても,当初国民金融公庫からの借入金については返済しておらず,自宅にも抵当権が設定されているというのであるから,この点も甲供述の信用性を否定するものではない。 その他種々弁護人の主張する点を考慮しても甲供述の信用性は否定されない。 恐喝罪の成否について(1)以上のとおりであって,A及び甲の公判供述は,いずれも十分信用に値し,これらの供述に関係各証拠を総合すると,被告人は,判示記載の文言及び方法によってAを畏怖させ,同人から金銭の交付を受けたことが認められる。 (2)弁護人は,判示第1記載の脅迫文言について「金融屋が刺しに,来る」などの文言は第三者の加害行為の告知であって,恐喝罪にお。 ける脅迫に該当しない から金銭の交付を受けたことが認められる。 (2)弁護人は,判示第1記載の脅迫文言について「金融屋が刺しに,来る」などの文言は第三者の加害行為の告知であって,恐喝罪にお。 ける脅迫に該当しないと主張する。しかし,被告人は,Aに対して,平成12年以前から「私が必死で止めてるんや」との文言を用い,。 て自己の関与を示している上,本件起訴に係る平成12年3月2日ころ以降は「私も限度がある。これ以上金融屋を止められない」な,。 どと,自らが金融業者との交渉を担当しており,被告人に金銭を交付して金融業者との交渉をしてもらわなければ,金融業者がA及びその家族に危害を与える旨の文言を用いているのであるから,被告人が金融業者の害悪行為の決意に対し影響を与えることができる立場にあることをAに知らせていたのであり,判示第1記載の文言が恐喝罪の脅迫に該当することは明らかである。 (3)また弁護人は,借用書などのファクシミリ送信,A宅への車の駐車及びクラクションについては,Aを畏怖させるものではなく,嫌がらせにとどまるから,恐喝罪の脅迫に該当しないと主張する。しかし, 告知する害悪の内容は,それ自体が独立して相手方を畏怖させるに足りないものであるとしても,他の事情と相まって相手方を畏怖させるものであれば恐喝罪の脅迫に該当すると解すべきところ,上記行為はいずれも金融業者が刺しにくる旨の脅迫と並行して,金銭交付の手段として行われたものであるから,当該行為が他の脅迫行為及び脅迫行為によるAの畏怖状況と相まって恐喝罪における脅迫に該当することは明らかである。 (4)さらに,弁護人は,Aは暴力団とも交渉経験があり,かつ暴力団との交渉を得意としていたのであるから,公訴事実記載の程度の脅迫文言で畏怖することはないと主張するが,公訴事実記載の脅迫文言は, 。 (4)さらに,弁護人は,Aは暴力団とも交渉経験があり,かつ暴力団との交渉を得意としていたのであるから,公訴事実記載の程度の脅迫文言で畏怖することはないと主張するが,公訴事実記載の脅迫文言は,一般的に人を畏怖させるに十分なものである上,下記のとおり,被告人のAに対する貸付けや慰謝料支払い約束は認められず,Aが同情や憐憫等の理由で被告人に金銭を交付していたことをうががわせる事情も認められないことからすれば,Aが公訴事実記載の脅迫文言等によって畏怖し,金銭を被告人に交付していたことは明らかである。 (5)被告人は,公判廷において,平成2年ころに,被告人がAに対して,2億8700万円を貸し付けており,Aから被告人への振込みは,その返済であると供述する。なお,被告人は,公判廷において,平成4年ころ,被告人が傷害事件で起訴された際,Aは被告人に無罪獲得を約束し,無罪がとれなかったことへの慰謝料として10億円支払うことを約束したとも供述する。 確かに,被告人を貸主,Aを借主とする2億8700万円の借用書が作成されており,Aもこれに署名したことを認めている。しかし,上記借用書の作成年月日は平成7年であるところ,同借用書についてAは,被告人から和歌山の金融業者と交渉するに際して必要だと言われ,最初は平成5年12月16日ころ6000万円の借用書を作成し, 次に和歌山の金融業者から要求されている3億5000万円の慰謝料について交渉するのに必要だと言われ,平成6年4月ころに2億5000万円の借用書を作成し,更に同様の理由から必要だといわれ,平成7年2月ころに2億8700万円の借用書を作成したと供述している。Aの上記供述は,A作成名義の借用書の存在をその作成年月日も含めて矛盾なく説明できている上,録音・反訳されたAと被告人及びAと甲の会話内容 月ころに2億8700万円の借用書を作成したと供述している。Aの上記供述は,A作成名義の借用書の存在をその作成年月日も含めて矛盾なく説明できている上,録音・反訳されたAと被告人及びAと甲の会話内容やA作成の手帳の記載によっても裏付けられている。 一方,被告人の公判供述についてみると,被告人は裏口入学等で得た金銭をアパートに保管し,それをAに貸し付けたと供述するが,原資について客観的裏付けがないばかりか,関係証拠によれば,被告人は,各種国税や地方税を滞納していたほか,平成元年6月ころから自宅土地建物の住宅ローンの支払いを怠り,同年8月には住宅ローン保証会社から自宅土地建物が差し押さえられ,平成2年には自宅を任意売却し,その後被告人は借家住まいをしていたことが認められるのであって,当時被告人が多額の資産を有しており,Aに2億円を超える貸付けをしたとは到底認められない。 これらのことからすれば,Aの被告人に対する金銭の振込みが,被告人のAに対する貸付金の返済であったとする被告人の公判供述は全く信用することができないない。 なお,被告人は,公判廷で,傷害罪で起訴された件で無罪を取れなかった慰謝料として,Aが被告人に対し10億円の支払を約束としたとも供述する。しかし,この点についての被告人の供述自体,極めて唐突であるだけでなく,上記の録音テープには,起訴された傷害事件を巡りAが被告人に無罪獲得は非常に難しい旨説明している会話が録音されている。これらの事情に照らし,被告人の上記公判供述も到底信用することができない。 (6)以上説示したとおり,被告人に判示第1のAに対する恐喝罪が成立することは合理的疑いなく認められる。 第2Bに対する恐喝事件について 弁護人の主張弁護人は,Bが被告人が管理する口座に対して,別表2記載のとおり金銭を振 人に判示第1のAに対する恐喝罪が成立することは合理的疑いなく認められる。 第2Bに対する恐喝事件について 弁護人の主張弁護人は,Bが被告人が管理する口座に対して,別表2記載のとおり金銭を振り込んだことは争わないものの,Bに肉体関係を強要したことはなく,Bから金銭を脅し取ったことはないから被告人は無罪であると主張する。また,弁護人は,期日間整理手続において,Bが被告人に手渡したとされる25万円については受け取りを否認し,Bから受け取った金銭は,Aが被告人に支払を約束していた金銭を支払わないためBがAに渡す債務整理の返済資金を受け取っていたものであると主張した。 以下検討する。 Bの供述について(1)Bは,平成12年の末ころ,いわゆるキャッチセールスで作った借金を返済するためにキャバレーでアルバイトをしていた際に客として来店した被告人と知り合い,営業のために被告人と食事をしたりしていたところ,借金について被告人に話すとAを紹介された。平成13年になり,被告人から肉体関係を求められ,これを拒否したところ,被告人から自分が手を引くと金融業者が取り立てに来て,風俗で働かなければならなくなり,父親も仕事を辞めなくてはならなくなるなどと脅され,肉体関係を強要された。その後も判示第2記載の文言等で脅されて肉体関係を強要されていたが,平成15年4月ころに,被告人から,ブラックリストに載っていないか確認するために必要であるなどと言われて,金融業者等のカードを作らされ,借り入れた金銭を被告人に振り込んだり手渡し,その後も被告人に対する恐怖心から要求されるままに金融機関から借金をして公訴事実記載のとおりの金銭 を被告人に交付したなどと供述する。 (2)関係証拠によれば,大学の4回生であったBは,平成12年末ころ,借金返済のためアルバイ 求されるままに金融機関から借金をして公訴事実記載のとおりの金銭 を被告人に交付したなどと供述する。 (2)関係証拠によれば,大学の4回生であったBは,平成12年末ころ,借金返済のためアルバイトをしていた飲食店で被告人と知り合い,被告人に債務整理を相談したりしたが,平成13年4月に,希望していた職種に就職するため佐賀県に転居したこと,しかし,それ以後も被告人との交際は継続し,平成15年4月になってから約2年間,消費者金融等の金融機関から借金をしてまで被告人に多額の金銭を送金したこと,Bは,最後に送金した約1か月後に,弁護士を通じて被告人に金銭の返還を請求する内容証明郵便を送付したことが明らかに認められる。上記客観的事実関係からすれば,Bが,なぜアルバイト先で知り合ったにすぎない年齢の離れた被告人との関係を地方に転居した後も長く続け,債務整理の相談をしたBが被告人に多額の金銭を送金したのか疑問が生じるところ,B供述は,この疑問を客観的事実関係と矛盾することなく合理的に説明できている。また,Bの供述は具体的かつ詳細であり,特に被告人から脅迫を受けた状況や脅迫文言については特徴的なものであって,被告人に金銭を交付し続けた理由として,特に被告人から理由を言われることなく命じられたが,被告人を畏怖するあまり,命じられるまま借金をして被告人に送金したと,当時の心境ををありのまま供述しようと努めているのであり,その供述態度は真摯である。また,被告人が受領を否認する25万円についても,判示第2別表2番号12及び21に相当する日に,兵庫県内に店舗を有する但馬銀行から,それぞれ20万円及び5万円を引き出したことを示すカードサービスご利用控によって裏付けられている。さらに,Bは,被告人のことをおそれ,被告人から言われるがまま,被告人に対する反省 する但馬銀行から,それぞれ20万円及び5万円を引き出したことを示すカードサービスご利用控によって裏付けられている。さらに,Bは,被告人のことをおそれ,被告人から言われるがまま,被告人に対する反省文を書いたり,被告人から命じられた調査を行ったり,被告人から命じられるまま第三者に対する脅迫文書等を作成した と,本件当時被告人を畏怖していたことを具体的なエピソードで迫真的かつ説得的に供述をしているが,これらの供述はそれぞれ客観証拠によって裏付けられている。 (3)弁護人は,BはAと連絡をとっており,キャッチセールスで作った借金について既に債務処理が終わっていたことを知っていた可能性が高いと主張するが,Bが債務処理の終了を知っていたのであれば,Bが被告人に金銭を交付する必要はなくなる上,この点についてBは,Aに相談はしたものの,その結果債務がどのように処理されたかはわからないと供述し,Aも,金融業者と和解しようとしたがBと連絡がとれなくなったので無断で和解したと供述している。したがって,弁護人の上記主張は単なる憶測に過ぎず,Bの供述の信用性を減殺するものではない。 また,弁護人は,期日間整理手続において,Bから受け取った金銭は,Aが被告人に支払を約束していた金銭を支払わないためBがAに渡す債務整理の返済資金を受け取っていたものであると主張した。しかし,被告人は,公判廷で,Aが債務整理を終わらせていたことを知らなかったと供述し,上記弁護人の主張に沿う供述をしていない。また,弁護人の上記主張の前提とする被告人からAに対する金銭の貸付けがないことは既に判示したとおりであるから,弁護人の上記主張はおよそ理由がない。 被告人が公判廷で供述するBから金銭を受け取っていた理由は要を得ないものであるが,Bに金銭を借り入れさせたのはブラックリスト とは既に判示したとおりであるから,弁護人の上記主張はおよそ理由がない。 被告人が公判廷で供述するBから金銭を受け取っていた理由は要を得ないものであるが,Bに金銭を借り入れさせたのはブラックリストに載っているか確認するためであり,借り入れた金銭はBが持っていてもしかたないので被告人が預かり,被告人が返済資金を送金していたと供述するようである。しかし,ブラックリストに載っているか確認するためであれば,借入後直ちにBが借入先に全額を返済すればよ いのであって,被告人の上記供述は被告人が金銭を受領する理由として不合理であり,また,長期間にわたって反復的にBに金銭を借り入れさせる理由ともならない。 したがって,被告人の上記供述は全く信用できない。 。 (4)以上のとおりであって,Bの供述は十分に信用することができる 恐喝罪の成否について弁護人は,Bは,債務処理に関する脅迫文言と送金は関係ないと供述していることから,恐喝罪は成立しないと主張する。しかし,Bは一つ一つの送金について,なぜ送金しなくてはならないのか理由はよく分からなかったが,被告人が怖かったから言われるままに送金したとも供述しているのであり,被告人は,債務処理に関してBを脅迫し,被告人を恐れていたBの畏怖に乗じて金銭の交付を受けていたのであるから,恐喝罪が成立することは明らかである。 第3Cに対する詐欺事件について 被告人及び弁護人の主張被告人は,Cが被告人の管理する口座に対して,別表3記載のとおり金銭を振り込んだり,手交していたことは認めるものの,Cからは金銭を借り受けたもので,かつ借り受けた金銭は既に返済していると供述し,弁護人も同様の主張をしている。 C供述について(1)Cは,輸入家具の商社に勤めていた際,被告人方のソファーの張り替えを通じて被告人と知 もので,かつ借り受けた金銭は既に返済していると供述し,弁護人も同様の主張をしている。 C供述について(1)Cは,輸入家具の商社に勤めていた際,被告人方のソファーの張り替えを通じて被告人と知り合い,食事をするようになった。被告人から,高利貸しをしているからお金を出資しないかと言われ,出資するお金がないといったら,個人でお金を借りれば独立した際に信用になるし,利息は被告人が払うし,必要な時はいつでも返すからと言われ,カード会社から金銭を借りて被告人に渡し,その後も消費者金融 から金銭を借り入れるなどして被告人に送金していたなどと供述している。 (2)Cの供述は,その内容も具体的かつ詳細であり,特に,被告人から出資話をもちかけられた際の文言については特徴的で迫真性のあるものである。そして,関係証拠によれば,Cは,勤務先の客として被告人と知り合い,その僅か7か月後の平成18年8月中に,被告人に対し,消費者金融から借金をしてまで344万円もの現金を交付したことが認められるが,Cの供述は,その理由を合理的に説明する内容となっている。 したがって,Cの供述は十分信用することができる。 詐欺罪の成否について上記C供述によれば,被告人は,Cに対し,判示第3記載のとおりの文言により,自らが営む高利貸しに出資するよう勧誘して,これを信用したCから金銭の交付を受けたことが認められるが,被告人が高利貸しを営んでいないことは被告人も公判廷で認めるところであり,関係証拠によれば,被告人はCから受領した金銭を自らの用途に費消したことが認められる。これらのことからすれば,被告人は架空の出資話をCに信じ込まさせて,返済する意思もないのに,Cから金銭を騙し取ったことに疑いの余地はなく,被告人には判示第3記載のとおりの詐欺罪が成立することは明らかであ のことからすれば,被告人は架空の出資話をCに信じ込まさせて,返済する意思もないのに,Cから金銭を騙し取ったことに疑いの余地はなく,被告人には判示第3記載のとおりの詐欺罪が成立することは明らかである。なお,被告人は,Cの求めにより,後日,70万円を返済したことが認められるが,このことは,上記認定を左右するものとはいえない。 弁護人は,Cの供述によっても,被告人に金銭を交付した主要な理由は,被告人を怒らせたくなかったという点にあるから,詐欺罪は成立しないと主張する。Cは,被告人に金銭を交付した動機には被告人との人間関係を保ちたいとの思いや,借金を増やすことは個人の信用を増すこ とになるとの被告人の言を信じたからでもあったと供述するが,一方で,被告人が述べた出資話は信じており,信じたからこそ金銭を交付したと明確に供述し,被告人に交付した金銭が返済されなくてもよいと思ったとは供述していない。そうすると,被告人との人間関係を保ちたいとの気持ちと被告人の欺罔行為によってCが錯誤に陥ったこととは両立するものであり,Cが主として被告人の欺罔行為によって錯誤に陥ったため被告人に金銭を交付したとの認定を妨げるものではない。 第4被告人の捜査段階の供述について 被告人及び弁護人は,被告人の捜査段階の供述調書について,被告人は,P検事から認めれば保釈で出られるし,執行猶予が付くなどの説明を受けて,虚偽の自白をしたものであり,任意性も信用性もないと主張する。 しかし,P検事は上記のようは説明をしたことを否定しているところ,同人の供述に特段不自然不合理な点はない。また,被告人は捜査段階において,数名の弁護人と接見していることに加え,逮捕された2日後の平成19年1月12日に作成された供述調書において,すでに,逮捕の被疑事実を超えて,Aから6億円以 点はない。また,被告人は捜査段階において,数名の弁護人と接見していることに加え,逮捕された2日後の平成19年1月12日に作成された供述調書において,すでに,逮捕の被疑事実を超えて,Aから6億円以上の金銭を脅し取っていた旨の記載や犯行の動機等が記載されていること,逆に,被告人は,当初の勾留が満期釈放となった後,これと関連する被疑事実により再逮捕,勾留され,さらに,P検事から実刑間違いないと言われて非常なショックを受けたと言いながら,なおも事実を認める供述を続けていたことからすれば,被告人の捜査段階における供述の前提として,保釈や執行猶予の約束があったとするのは不自然であり,P検事が上記のような説明をしたとの被告人の公判供述は信用することができない。その他,弁護人が主張する諸事情を検討しても,被告人の検察官に対する供述調書の任意性に疑いを生じさせるような事情はうかがえず,また,本件の逮捕経緯等から すれば,弁護人の主張するような違法収集証拠に該当しないことも明らかである。 以上の事実に加え,捜査段階の被告人供述は,多くの点で上記で検討した被害者らの証言と一致している上,特に,判示第1の犯行をする動機となった事実関係等を含め,その供述内容は詳細かつ具体的であって,信用性も認められる。 第5 結論 以上のとおり,各被害者の供述は十分信用することができ,これに被告人の検察官に対する各供述調書その他の関係各証拠を総合すると,被告人が判示第1ないし第3の各犯行に及んだことは,合理的な疑いを入れる余地なく認めることができる。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,被告人が,弁護士である被害者に対し闇の金融業者からの危害が切迫しているなどと脅して多額の現金を脅し取り(判示第1,年若い女性)被害者に対し,いわゆるキャッチセールスで負っ (量刑の理由)本件は,被告人が,弁護士である被害者に対し闇の金融業者からの危害が切迫しているなどと脅して多額の現金を脅し取り(判示第1,年若い女性)被害者に対し,いわゆるキャッチセールスで負った債務の処理にかこつけて現金を脅し取り(判示第1,2,さらに,別の被害者1名から高利貸しへ)の出資名目で現金を騙し取った(判示第3)という各事実からなる事案である。 判示第1の犯行についてみると,その被害額は,3億1000万円以上と甚大である。しかし,本件の特徴は,被告人が,Aに対して,6年以上もの長期にわたって,自らに寄せられた信頼を利用して完全な作り話を信じ込ませた上で,金融業者がAだけでなくAの妻子に危害を加える旨の脅迫を執拗に繰り返し,Aの事務所,自宅及び近隣の法律事務所等に多量のビラを貼り付けたり,ファクシミリ送信をしたりし続け,Aの自宅前に車を駐車したり,クラクションを多数回鳴らすなど,ありとあらゆる陰湿かつ強烈な脅迫行為 を尽くし,日常的にAから多額の現金を脅し取り続けた結果,上記被害総額に到達したところにある。その犯行態様は極めて巧妙,計画的で,常軌を逸した悪質極まりないものというほかなく,その被害を単純に喝取金額のみで評価することはできない。Aは3億円余りの顧客からの預り金を横領したため有罪の実刑判決を受けており,近い将来弁護士資格が剥奪されることも免れないところ,弁護士であるAが業務上横領という犯罪行為に及んだ大きな原因に,本件被害があったことは疑いようもなく,Aは,財産的被害にとどまらない損失を被っている。また,Aのみならずその家族も,本件によって人生を大きく狂わされたのであって,そのような実情も量刑上考慮せざるを得ない。加えて,被告人は,公訴提起はされていないものの,平成3年5月ころから甲と役割分担をして自ら らずその家族も,本件によって人生を大きく狂わされたのであって,そのような実情も量刑上考慮せざるを得ない。加えて,被告人は,公訴提起はされていないものの,平成3年5月ころから甲と役割分担をして自らへの信頼を高めながら,同様の犯行を重ね高額の金銭を喝取していたのであり,そのような経過の上で行われた本件の重大性,悪質性はより一層著しいというべきである。 判示第2の犯行については,被告人は,借金の相談をしてきたBに対し,その弱みにつけ込み,威圧的な態度をとりつつ,同人に肉体関係を強要しながら,同人が被告人を畏怖しているのに乗じ,2年間にわたって金融機関から借り入れさせた金銭を脅し取っていたもので,犯行態様はまことに執拗かつ悪質である。被害額は400万円余りと高額であり,20代半ばの数年間を被告人から脅迫等され続けてきたBの精神的苦痛も計り知れない。被告人がBに対して金融機関に対する借金の返済に宛てるための金銭を送金していることは認められるが,その送金は到底十分なものではなく,それがためBの金融機関に対する借金はさほど減少しなかったのであるから,被告人のBに対する送金によって,被害回復がなされたとは評価できない。 判示第3の犯行においても,被告人は,Cに対して,出資すれば絶対に損はしないなどと嘘を言って,同人から金銭を騙し取っており,同人に現金を用意させるため,クレジットカードを使用して現金を作るように命じたり, 消費者金融で借り入れをさせるなどして,金銭を交付させていたものであり,犯行態様は悪質で,被害額も300万円余りに上っている。 以上のとおり,各被害者は,判示の犯行により,程度の差はあれいずれも重大な被害を被っているが,被告人は,判示第1及び第2の被害者に対して,何ら慰謝の措置を講じていないばかりか,いずれの犯行についても,公判廷 り,各被害者は,判示の犯行により,程度の差はあれいずれも重大な被害を被っているが,被告人は,判示第1及び第2の被害者に対して,何ら慰謝の措置を講じていないばかりか,いずれの犯行についても,公判廷において,被害者らに与えた財産的被害や精神的苦痛に何ら思いを致さず,被害者の名誉等を更に貶めるような虚偽の弁解を弄しているのであって,反省の態度は全くみられない。特に,判示第1及び第2の被害者の処罰感情にはまことに厳しいものがあるが,そのことは,本件各被害状況に照らせば十分理解できるところである。 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重く,処断刑の範囲内における最高の刑罰で被告人を処断することも十分考えられるところである。 しかしながら,本件で検察官は,被告人に対して懲役14年の求刑をしているところ,公益の代表者たる検察官の科刑意見は十分傾聴すべきものであること,判示第2及び第3の被害については一部被害回復がなされていることなど被告人に有利な事情も存在することを併せ考え,被告人に対し,求刑どおり主文の刑を科することとした。 (求刑懲役14年)平成20年8月15日大阪地方裁判所第9刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官安永武央 裁判官野村昌也

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