【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人笠島永之助の上告理由第一点について。 論旨は、第一審判決を是認引用
主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人笠島永之助の上告理由第一点について。 論旨は、第一審判決を是認引用した原判決は判例に反し民法六九六条等の法令の 解釈適用を誤まつたものであると主張する。 記録に徴するに、本件訴訟において原告(被上告人)は被告(上告人)に対し請 求の趣旨として金三〇万円及びこれに対する昭和三三年一二月九日より完済迄年六 分の損害金の支払を求め、その原因として主張する事実は「被告は昭和三三年八月 一六日金額三〇万円、支払期日同年一二月八日受取人株式会社D製作所(その他の 記載事項第一審判決表示の通り)なる約束手形一通を振出し、右受取人会社は拒絶 証書作成義務を免除して右手形を原告に白地裏書譲渡したので、原告は支払期日に これを支払場所に呈示したところ支払を拒絶せられた。よつて被告に対し右手形金 並にこれに対する支払期日の翌日より完済迄手形法所定の年六分の損害金の支払を 求める」というのである。 そして、第一審第一回口頭弁論期日には原告訴訟代理人は訴状に基き右の通り陳 述したのに、被告訴訟代理人の「答弁準備のため」との理由による申立により同期 日は答弁に入らないまま続行され、同第二回口頭弁論期日は被告訴訟代理人の「示 談のため」との理由による申立により延期となり、同第三回口頭弁論期日(昭和三 四年四月一四日午后二時)には何ら被告の答弁のないまま本件和解が成立した。 本件和解条項は「一、被告は原告に対し本件約束手形金債務元金三〇万円及びこ れに対する昭和三三年一二月九日より完済に至るまで年六分の損害金を支払うべき 債務あることを認め、右元金のうち金二五万円を次のとおり原告代理人事務所に持 - 1 - 参又は送付して支払うこと。イ、昭和三四年四月三〇日までに金一 月九日より完済に至るまで年六分の損害金を支払うべき 債務あることを認め、右元金のうち金二五万円を次のとおり原告代理人事務所に持 - 1 - 参又は送付して支払うこと。イ、昭和三四年四月三〇日までに金一〇万円ロ、同年 五月一五日までに金一五万円、二、被告が右支払を各期限までに履行したときは原 告は被告の残債務金五万円及び損害金の支払を免除すること。三、被告が第一項の 支払をしないときは同項の元金三〇万円(一部支払済みのときはその残額)及び同 項所定の損害金を即時に支払うこと。四、訴訟費用は各自弁のこと。」というもの であること第一審判決表示のとおりである。(昭和三四年四月一四日の右第三回口 頭弁論調書には同日右和解が成立したことの記載がある。) 被告訴訟代理人は右和解成立後第一審に新口頭弁論期日の指定を申請しその理由 として、原告が本件手形をその受取人株式会社D製作所より裏書を受けたのは実は その満期後であつたのに、被告は右和解の成立に至るまで右裏書は原告主張の如く 満期前になされたもので原告は善意の第三者所持人であるものの如く錯誤に陥つて いたため右和解をしたのであるから、右和解は要素の錯誤ある無効のものである、 と主張する。 よつて按ずるに、一般に、第一審口頭弁論期日において原告が訴状に基づき請求 の趣旨及び原因を陳述したのに対し、被告が「答弁準備のため」又は「示談のため」 との理由で未だ何ら本案について答弁しないときは、これを被告が原告の主張事実 を明らかに争わないものとみ、自白したものと看做すことは民事訴訟法一四〇条の 趣旨に副うゆえんでなく、これを当事者間に訴訟の目的物につき争が存するものと 解するのが相当である。 本件和解条項において、原告が本訴で主張する三〇万円の手形金債権及び損害金 債権を有することを本件和解条項で被告が認めた点は、(和解条項で原告が二五 的物につき争が存するものと 解するのが相当である。 本件和解条項において、原告が本訴で主張する三〇万円の手形金債権及び損害金 債権を有することを本件和解条項で被告が認めた点は、(和解条項で原告が二五万 円についてのみ二回分割払を認めこれが履行された場合には残五万円の手形金及び 損害金債務を免除すべきことを約した点とともに)原判示の如く一の譲歩であり、 また、右和解は訴訟上なされたものであるが一の私法上の和解であることはいうま - 2 - でもない。 そして第一審で訴訟の目的物とされた原告主張の三〇万円の手形金債権及び損害 金債権を原告が有することをその口頭弁論期日における本件和解において被告が認 めた以上は、たとえ和解後に至り和解において被告がこれを認めたことが右被告主 張の如き錯誤にいでたものであつたとしても、本件和解は無効とされるべきでなく 民法六九六条により効力を妨げられないものと解するのを相当とする。論旨引用の 判例はいずれも事案を異にし本件に適切でない。されば本件和解の成立により本件 訴訟終了の効果を生じたものというほかない。 論旨は理由がない。 同第二点について。 論旨は判断遺脱、理由不備をいうけれども、記録に徴すると、所論の準備書面は 原審において陳述されていないのであるから、原判決が所論の事実摘示をせず又は 判断を示さないことには所論の違法はない。 論旨は採ることができない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと おり判決する。 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 垂 水 克 己 裁判官 石 坂 修 一 裁判官 五 鬼 上 竪 磐 裁判官 横 田 克 己 裁判官 石 坂 修 一 裁判官 五 鬼 上 竪 磐 裁判官 横 田 正 俊 - 3 -
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