平成21(行コ)37 建築許可差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第585号)

裁判年月日・裁判所
平成21年9月16日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文6,405 文字)

- 1 -主文本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨原判決を取り消す。 処分行政庁がA株式会社に対し原判決別紙建築物目録記載の建築物について 平成19年9月25日付けでした都市計画法53条1項の規定による建築許可処分を取り消す。 (略語等は原判決の例に従う。)第2事案の概要本件は,行政処分庁が不動産開発業者に対し,東京都知事が新たに定めた東 京都民設公園事業実施要綱に従い,都市計画法による都市計画施設(公園)の区域内における本件マンションの建築を許可したところ,同区域の近隣に居住する控訴人らが,本件建築許可が同区域での将来の公園事業の円滑な施行に重大な障害となるものであるから,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用しており違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。 原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却した。 当裁判所も,控訴人らの請求をいずれも棄却すべきものと判断した。 関連法令の定め,前提事実,争点及びこれに対する各当事者の主張の要旨は, 以下のとおり変更・付加するほかは,原判決の事実及び理由の「第2事案の概要」の1ないし4(原判決2頁11行目から30頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決22頁3行目「(イ)」の後に1文字を空けて「本件原計画決定がα公(1)園区域を,その規模の点も含めて都市に必要な公園と定めている以上,合理的な理由なく,その整備事業の完全な施行を阻害するような建築を許可することは許されない。」を加える。 - 2 -原判決22頁9行目「変質し,」の後に「しかも,区分所有者の永続的な生(2)活の本拠として利用されることから,」を加える。 原判決22頁16行目「明らかである。」の後に「本件建築許 る。 - 2 -原判決22頁9行目「変質し,」の後に「しかも,区分所有者の永続的な生(2)活の本拠として利用されることから,」を加える。 原判決22頁16行目「明らかである。」の後に「本件建築許可に別紙許可(3)条件のとおりの条件が付されているが,この条件では将来の都市計画事業の円滑な施行に対する障害を除去する効果はない。」を加える。 原判決22頁21行目「廃止するに等しく,」の後に「行政運営に求められ(4)る信義誠実の原則に違反し,」を加える。 原判決23頁10行目「評価し得ない。」の後に「加えて,将来における本(5)件マンションの解体時には本件民設公園が工事車両の出入りなどで利用されることが必至であるから,そのまま都市公園に転用できるはずがなく,これを将来の都市計画事業の先取りとして評価することもできない。」を加える。 原判決23頁14行目「を欠く。」の後に「仮に,戸建て細分化の可能性が(6)高いとした場合でも,本件土地に戸建て住宅が建築された場合と本件マンションが建築された場合とで,将来における都市計画事業の施行に際していずれが時間,費用,労力を要するか比較検討すべきであるにもかかわらず,これも行っていないのである。」を加える。 原判決23頁末行の後に行を改めて「もともと,α公園区域は,公園として(7)の供用開始部分とそれらに接するお茶の水女子大学βの緑地・農地部分を合わせると,都市計画面積全体の50%以上の部分が公園・緑地として保全されているのであって,同じ東村山市内にある他の公園・緑地の現状と比較してみても,同区域が戸建て細分化される可能性は低く,このような状況に鑑みれば,大規模高層マンションの建築を許容してまで公開空地の整備を急ぐ必要性は乏しい。加えて,本件マンションは,本件実施要綱が定める周辺の市街地環境等に対す 分化される可能性は低く,このような状況に鑑みれば,大規模高層マンションの建築を許容してまで公開空地の整備を急ぐ必要性は乏しい。加えて,本件マンションは,本件実施要綱が定める周辺の市街地環境等に対する配慮に全く欠けるものである。」を加える。 原判決25頁5行目末尾の後に行を改めて「(エ)仮に53条許可の判断に(8)つき,政策的・専門技術的裁量があるとしても,本件建築許可にあっては,事実誤- 3 -認や事実評価に合理性を欠くなどの不適切な事実認定に基づいていたり,あるいは他事考慮に基づくなど,裁量権のゆ越・濫用があり違法である。」を加え,6行目「(エ)」を「(オ)」に改める。 第3当裁判所の判断当裁判所の判断は,原判決の事実及び理由の「第3争点に対する判断」1 及び2(原判決30頁21行目から73頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 被控訴人は,控訴人らに原告適格がないと主張する。しかし,都市計画法5 3条1項の規定及び関連法令の趣旨・目的,53条許可の制度を通じて保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,都市計画法53条1項の規定は,当該都市計画施設に係る防災,避難等に関する機能が確保された都市計画事業の円滑な施行が阻害されることによって,災害時に拡大する火災等によって生命又は身体に著しい被害を受けるおそれのある個々の住民に対し,そのような被害を免れる利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であり,当該都市計画施設の区域の周辺に居住する住民のうち,当該都市計画施設に係る53条許可の結果生ずる都市計画事業の支障及び遅延により,災害時に拡大する火災等によって生命又は身体に著しい被害を受けるおそれのある者,すなわち,都内の公園である当該都市計画施設につき都市 施設に係る53条許可の結果生ずる都市計画事業の支障及び遅延により,災害時に拡大する火災等によって生命又は身体に著しい被害を受けるおそれのある者,すなわち,都内の公園である当該都市計画施設につき都市計画事業が施行されて都市公園となったときは当該公園を避難場所として利用する蓋然性が客観的に高いと認められる者は,当該都市計画施設に係る53条許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものと解するのが相当であることは,原判決の説示するとおりである。被控訴人は,当該処分の「根拠となる法令」は,都市計画法53条1項であって,関係法令の規定は含まれない,また,生命・身体への被害は53条に違反した53条許可から直接生ずるものではないと主張するが,行政事件訴訟法9条2項は,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはこれに参酌するものとしていること及び生命・身体への被害につ- 4 -いて直接に生ずるものと間接に生ずるものとを区別する理由もないから,被控訴人の上記主張は採用できない。さらに,被控訴人は,原判決の基準が不明確であると主張するが,原判決は,控訴人につき,本件土地の北東端から約10メートルの範囲に居住しており,本件土地につき都市計画事業が施行されて都市公園になった場合には,本件土地が最も近い都市公園となることが認められるとしているから,この点に関する被控訴人の主張も採用することができない。 控訴人らは,53条許可がその立法趣旨に照らして限定的な裁量の下にあり, 本件マンションの建築許可はこれを逸脱している等と主張する。しかしながら,53条許可は,決定権者である都道府県知事の広範な裁量に委ねられているというべきであって,その裁量権の行使に際し,判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によ いる等と主張する。しかしながら,53条許可は,決定権者である都道府県知事の広範な裁量に委ねられているというべきであって,その裁量権の行使に際し,判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠く場合,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によって,その許否の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして,違法となると解すべきところ,本件において,その許否の判断にあたって,基礎となる事実関係の誤認や事実評価が明らかに合理性を欠いている,あるいは判断過程で考慮すべき事情を考慮しなかったという点は特段見当たらず,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとは認められないことは原判決認定判断のとおりである。 控訴人らは,本件建築許可に付された条件につき,①本件マンションが4(1)撤去の容易でない中高層の堅固な建物で容易に除去することができない,②本件マンションが永続的な生活の本拠(居住用物件)であるところから存続期間が長期を予定されており,都市公園事業化が困難であると判断することによって新たな建築物の建築を認める構造になっている,③建替え禁止の条件も本件マンション所有者に拘束力がなく,とりわけ本件マンションを低層住宅に建て替える場合,法54条に照らして都知事がこれを拒否するのは困難である等,将来の都市計画事業の円滑な施行に対する障害を除去する効果がないと主張する。 - 5 -しかしながら,①本件マンションの撤去が現在の技術水準でも物理的に困難でないことは上記引用にかかる原判決説示のとおりであり,②本件実施要綱では,民設公園の公開後35年を経過し,適切な管理の実施がされているにもかか ①本件マンションの撤去が現在の技術水準でも物理的に困難でないことは上記引用にかかる原判決説示のとおりであり,②本件実施要綱では,民設公園の公開後35年を経過し,適切な管理の実施がされているにもかかわらず老朽化により本件マンションの存続が困難となったときに,所定の手続を経て建替えを行うことができるものとされているが,その規定から本件マンション所有者の意思のみによって左右されるものではないことが明らかであるし,法令上,本件民設公園の公開開始から35年以内であっても,本件土地を都市公園にすることが可能であることは上記引用に係る原判決説示のとおりである。③また,建替え禁止の条件が本件マンション所有者を直接拘束しないとしても,本件実施要綱により,本件マンションの分譲に際し,譲受人に対し,重要事項説明書に民設公園事業についての義務を継承するような契約を締結すること及び民設公園の区域につき,物権等権利の設定をすることが民設公園事業者に義務づけられていることから,建替え禁止の条件は担保されているということができる。したがって,本件建築許可に付された条件が将来の都市計画事業の円滑な施行に対する障害を除去する効果がないとは認められない。 控訴人らは,都市計画法によれば,いったん策定された都市計画を変更する(2)場合には,周辺住民の参加する適正な手続を経なければならないとされているにもかかわらず,大規模高層分譲マンションの建築を認める本件建築許可に至る一連の行政活動は,上記手続を経ずに実質的に本件原計画を改変したのと等しいことになると主張する。 しかしながら,本件建築許可の許可条件6で明記されているとおり,民設公園事業者の要請を伴わずに早期に都市計画公園事業が施行される場合があることも想定しており,要請の有無に関わらず,被控訴人ないしは都市計画事業実施者 件建築許可の許可条件6で明記されているとおり,民設公園事業者の要請を伴わずに早期に都市計画公園事業が施行される場合があることも想定しており,要請の有無に関わらず,被控訴人ないしは都市計画事業実施者が任意の時期に都市計画法に従って都市計画事業を施行することを当然の前提としているものであるから,実質的に本件土地の都市計画事業の実現を放棄し,本件原計画が改変されたと評価することはできない。 - 6 -さらに,控訴人らは,α公園区域では都市計画面積全体の50%以上が既に(3)公園・緑地として保全され,同じ東村山市内にある他の公園・緑地の現状と比較して戸建て細分化される可能性が低く,本件マンションの建築を許容してまで公園整備を急ぐ必要性に乏しい,戸建て細分化の可能性が高いとした場合でも,戸建て住宅の場合と本件マンションの場合とで都市計画事業の施行に際して要する時間,費用,労力の比較衡量を行っていない,本件マンションは,本件実施要綱が定める周辺の市街地環境等への配慮を欠いている,本件マンションを撤去する際には民設公園区域を作業用地として使用するはずであるから,将来において民設公園をそのまま都市公園に転用できるとする評価は誤りである等と指摘して,その許否の判断にあたり,誤った前提事実ないし事実に対する誤った評価を行い,また,判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないから,裁量権の逸脱又は濫用があると主張する。 しかしながら,証拠(甲75,乙14)によれば,α公園区域と控訴人らが挙げる東村山市内の他の公園・緑地とは立地条件等が異なり,B鉄道γ線と同鉄道δ線が交わるε駅に近接し,低層住宅専用地域の中にある両側を公園・緑地に挟まれた面積約1.49ヘクタールの広さを有する本件土地は,従前テニスコートとして使用されていたところ,本件建築許可がなされ 道δ線が交わるε駅に近接し,低層住宅専用地域の中にある両側を公園・緑地に挟まれた面積約1.49ヘクタールの広さを有する本件土地は,従前テニスコートとして使用されていたところ,本件建築許可がなされない場合には,戸建て細分化される可能性はむしろ高いというべきであり,その面積の広さを考えれば,公園・緑地化を図る必要性を否定することはできない。また,本件土地が戸建て細分化された場合と本件マンションが建築された場合とでその撤去に要する費用等の比較については,現時点では,都市計画事業の実施時期,その時点での社会経済情勢,本件土地の細分化の状況及び利害関係人の数等,不確定な変動要因を多く含んでいることを考えれば,有為な推計は困難であり,本件建築許可の許否の判断に必要不可欠な事項とまではいえない。さらに,証拠(甲39,66,乙15)によれば,本件土地の東西と北側には低層の住宅街が広がるものの,北側道路を挟んだ反対側に中層の都営住宅1棟が,北西方向には同じく都営住宅群があり,南側のB鉄道の線路を挟んだ- 7 -反対側の地域に目を転じれば,中高層の公務員住宅や公団住宅が建ち並んでいることが認められ,これらの周辺の市街地の状況を全般的に見渡せば,本件マンションが市街地環境とまったく調和しない異質な建築物であると断ずることはできない。 なお,将来の本件マンションの撤去に際して作業用地を要することは当然に想定されるところであり,民設公園すべてをそのまま都市公園に転用することが不可能であるとしても,被控訴人は本件建築許可の許否の判断に際して上記転用を考慮要素としたことを認めるに足りる証拠はないから,重要な事実の誤認と認めることはできない。 したがって,裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえない。 以上のとおり,控訴人らの主張はいずれも理由がない。 第4 結論 よって を認めるに足りる証拠はないから,重要な事実の誤認と認めることはできない。したがって,裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえない。以上のとおり,控訴人らの主張はいずれも理由がない。 第4 結論 よって,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。東京高等裁判所第1民事部裁判長裁判官一宮なほみ裁判官田川直之裁判官石垣陽介

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