令和2(行コ)128 入札無効決定取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年2月19日 大阪高等裁判所
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判決文本文4,429 文字)

- 1 -令和3年2月19日判決言渡令和2年(行コ)第128号 入札無効決定取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和元年(行ウ)第179号) 主 文1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 大阪市長が控訴人に対し令和元年9月13日付けでした入札無効の決定を取り消す。 3 大阪市長がA株式会社に対し令和元年9月13日付けでした落札者の決定を取り消す。 第2 事案の概要1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が実施した原判決別紙物件目録記載の各建物の定期建物賃借権の賃借人を募集する条件付一般競争入札において,最高価格で入札した控訴人の入札書を適式な押印がないことを理由に無効とし,上記入札に参加した業者の中で最高価格の入札者ではないA株式会社を落札者とした決定がいずれも違法であると主張して,上記各決定の取消しを求める事案である。 原審は,上記各決定はいずれも行政事件訴訟法3条2項の「処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるといえず,取消訴訟の対象に該当しないから,控訴人の訴えを不適法であるとして却下したところ,これを不服とした控訴人が控訴した。 2 関係法令及び前提事実- 2 -次のとおり,付加補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,以下,略称については原判決の例によるものとする。 原判決15頁1行目中の「同条」の次に「1項」を加え,同頁2行目中の「同条」を「同項」に改める。 原判決3頁5行目を,「イ 被控訴人は,本件各建物(大阪市(住所省略)所在の原判決別紙物件目録記載1の建物及び同市(住所省略)所在の に「1項」を加え,同頁2行目中の「同条」を「同項」に改める。 原判決3頁5行目を,「イ 被控訴人は,本件各建物(大阪市(住所省略)所在の原判決別紙物件目録記載1の建物及び同市(住所省略)所在の同目録記載2の建物)を所有する普通地方公共団体(以下,単に「地方公共団体」という。)である(甲11,12の1)。」に改める。 原判決4頁3行目中の「入札参加申請をし,」を「実印を押捺した入札参加申請書及び印鑑証明書等の書類を提出して,本件入札への参加を申請し,」に,同頁4行目中の括弧内を「(甲12~16,19,20,24,弁論の全趣旨)」に,それぞれ改める。 同頁23行目中の「同月18日,」から26行目末尾までを「同月18日,本件入札に3者が参加し,そのうちの1法人が月額1652万0095円(消費税等を除く。)で落札して管理運営予定者と決定された旨をウェブサイトで公表した(甲28,弁論の全趣旨)。」に改める原判決5頁1行目中の「令和元年10月4日,」を削除し,同頁3行目中の「同額を供託した。(甲29)」を「,令和元年10月4日に大阪法務局に同額を供託した(大阪法務局平成31年度金第9706号,甲29)。」に改める。 3 争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり,各争点に共通する当審における控訴人の補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の3及び4のとおりであるから,これを引用する。 (当審における控訴人の補充主張)- 3 -入札は,「入札参加者の選定」,「入札(札を入れる行為)」,「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」の三つの手続によって構成されるところ,このうち「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」については,地方自治法234条3項により,地方公共団体は,例外規定に該当しない限り,最高又は 相手方の決定」の三つの手続によって構成されるところ,このうち「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」については,地方自治法234条3項により,地方公共団体は,例外規定に該当しない限り,最高又は最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができない。この点が,私人における入札手続と質的に異なる点であり,入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定について両者に決定的な相違があるといえるから,地方公共団体による「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」は,私人間の入札手続と同じ私法行為であるところの契約の準備段階の行為と評価することはできない。 「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」が,純粋な私法上の行為である契約締結の準備段階の行為にすぎないと解すると,地方公共団体に,入札の結果に関わらず裁量によって契約の相手方を選定することを許容することになる。この場合,裁量によって契約の相手方とされなかった者は,国家賠償法による損害賠償を請求し得るが,信頼利益に留まるため,本件契約のような多額の収益が見込める入札については,地方公共団体が公有財産の犠牲のもとに意に沿う契約の相手方を選定することを抑止することは期待できず,地方自治法234条3項は死文化する。 競争入札において,最高又は最低の価格をもって申込み(入札)をした者は,被控訴人から落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知を受ける。この通知は,地方自治法234条3項に基づくものであり,これにより本件契約を締結することができるという法的効果を有するものであるから,単なる事実を通知するものではないことは明らかである。したがって,控訴人による入札を無効とし,控訴人に対し落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知を行わないことは,抗告訴訟の対象となる。 第 なる事実を通知するものではないことは明らかである。したがって,控訴人による入札を無効とし,控訴人に対し落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知を行わないことは,抗告訴訟の対象となる。 第3 当裁判所の判断- 4 -1 当裁判所も控訴人の本件訴えはいずれも却下すべきものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正し,後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3の1から3までのとおりであるから,これを引用する。 原判決9頁23行目中の「そうすると,」から原判決10頁9行目末尾までを,次のとおり改める。 「そうすると,本件入札は,一般の私人間の契約と同じく対等な当事者間の申込みと承諾により成立する本件契約において,その相手方の選考方法及び被控訴人が受領する対価の決定方法である準備的行為にすぎないといえる。 したがって,本件入札において,被控訴人が提出された入札書が適式なものではないことを理由として入札が無効である旨を決定したことは,本件契約の相手方の選考等の前提となるべき適式な申込みがなかったことを明らかにしたものにすぎないから,公権力の行使に当たる行為として,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する性質を有するものとはいえない。」原判決10頁19行目中の「自由競争の範囲内で」の前に「地方公共団体が私人と対等の地位において締結する同条1項の定める売買,貸借,請負その他の契約について,」を加え,同頁23行目中の「このような入札者を」から同頁25行目中の「解される。」までを,「入札により契約の相手方及び価格について,地方公共団体と落札者の意思が合致し契約の予約が成立したことによる効果であると解される。」に改める。 2 当審における控訴 目中の「解される。」までを,「入札により契約の相手方及び価格について,地方公共団体と落札者の意思が合致し契約の予約が成立したことによる効果であると解される。」に改める。 2 当審における控訴人の補充主張について 控訴人は,本件入札における「入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定」手続は,私人間の入札と質的に異なるから,私法行為である契約締結の準備段階の行為と評価することはできないと主張する。 しかし,原判決の「事実及び理由」中の第3の2(上記1による補正後のもの)の説示のとおり,本件入札は対等な当事者間における私人間の契- 5 -約締結と変わるところはないから,控訴人の主張は採用できない。 控訴人は,入札の結果を踏まえた契約の相手方の決定が,純粋な私法上の行為である契約締結の準備段階の行為にすぎないとすると,地方公共団体は,入札の結果を問わず,裁量によって契約の相手方を決定できることになり,地方公共団体の公有財産の保護や競争入札の正常な機能を阻害することになるなどと主張する。 しかし,地方公共団体は,「売買,貸借,請負その他の契約」の締結の相手方を決定するに際しては,地方自治法や政令等の規定に従わなければならず,仮に,契約の相手方の決定において何らかの違法があれば,それにより損害を被った者は,国家賠償法による損害賠償請求ができ,また,当該地方公共団体の住民は,住民監査請求や住民訴訟等の手続をとることができる。 これらに鑑みれば,本件入札を私法上の契約である本件契約の締結の準備的行為と認めたからといって,地方公共団体の公有財産の保護や競争入札の正常な機能を阻害することになるとはいえず,控訴人の上記主張は採用できない。 控訴人は,被控訴人から落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知が行われることによ 公有財産の保護や競争入札の正常な機能を阻害することになるとはいえず,控訴人の上記主張は採用できない。 控訴人は,被控訴人から落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知が行われることにより,契約締結ができるという法的効果が発生するから,上記通知を行わないこと(控訴人による入札を無効と判断したこと)が,抗告訴訟の対象となると主張する。 しかし,原判決の「事実及び理由」中の第3の2(上記1による補正後のもの)の説示のとおり,落札者が契約の予約の当事者の地位を取得するのは,契約の相手方等について被控訴人と落札者との間で意思の合致が成立したからであって,被控訴人による落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知によるものではないから,上記通知は単に競争入札の結果という事実を通知するものにすぎないというべきであり,控訴人の上記主張は採用できない。 - 6 -3 結論以上のとおり,控訴人の訴えはいずれも不適法なものであるから却下すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 山 田 明 裁判官 川 畑 公 美 裁判官 井 上 博 喜

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