平成21(行ウ)386 公文書非開示決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年11月27日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文7,216 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求警視総監が原告に対し平成21年7月21日付けでした公文書開示請求却下決定(監.総.文.情第○号)を取り消す。 第2事案の概要原告は,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下「本件条例」という)に基づいて,警視総監に対し,原告が平成21年5月に福生警。 察署長あてに提出した請願書に対する決裁等関係文書一切(以下「本件文書」という)の開示を求め,その際,開示請求者の氏名欄に「大統領」と記載し。 た開示請求書を提出した。これに対し,警視総監は,同請求書による公文書開示請求は,本件条例6条1項1号の規定する「氏名又は名称」を明らかにして行われたものとはいえないとして,同請求を却下する旨の決定をした。 本件は,原告が,開示請求者の氏名欄に「大統領」と記載した開示請求書による開示請求は本件条例6条1項1号に反するものではないとして,上記却下決定の取消しを求める事案である。 関係法令の定め(1)本件条例ア東京都の区域内に住所を有する者は,実施機関に対して公文書の開示を請求することができる(5条1号。 ) (「」。),イ本件条例5条の規定による開示の請求以下開示請求というは実施機関に対して,氏名又は名称及び住所又は事務所若しくは事業所の所在地並びに法人その他の団体にあってはその代表者の氏名を明らかにして東京都規則その他の実施機関が定める規則,規程等で定める方法により行わなければならない(6条1項1号。 )ウ実施機関は,上記イの規定により行われた開示請求に形式上の不備が,(「」。)あると認めるときは開示請求をしたもの以下開示請求者というに対し,相当の期間を定めて,その補正を求める ウ実施機関は,上記イの規定により行われた開示請求に形式上の不備が,(「」。)あると認めるときは開示請求をしたもの以下開示請求者というに対し,相当の期間を定めて,その補正を求めることができる。この場合において,実施機関は,開示請求者に対し,補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない(6条2項。 )(2)警視総監が行う情報公開の事務に関する規程(平成13年訓令甲第37号)2条本件条例6条1項に規定する開示請求を受ける場合は,同項各号の事項を記載した開示請求書の提出を受けなければならない。 前提事実,,,本件の前提となる事実は次のとおりであり当事者間に争いのある事実は各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。その余の事実は,当事者間に争いがない。 (1)原告は,平成21年6月12日,警視庁福生警察署(以下「福生署」という)を訪れ,本件条例に基づき本件文書の開示を求める開示請求書(以。 下「本件開示請求書」といい,これに係る開示請求を「本件開示請求」という)を提出したが,本件開示請求書の開示請求者の氏名欄には「大統領」。 と記載されていた。 ,,(2)本件開示請求書は福生署から警視総監に送付されたが本件開示請求は本件文書の内容から自己の保有個人情報に係る本人からの開示請求の趣旨と認められたことから,警視庁総務部文書課警部Aは,東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条例第113号。以下「個人情報保護条例」という)による開示請求手続を説明するため,本件開示請求書記載の電話。 番号に架電し,原告に対して,本件開示請求が個人情報保護条例にいう自己の保有個人情報に係る本人からの開示請求であるから,本件開示請求を取り下げ,個人情報保護条例に基づく規定様式の開示請求書を提出するよう に架電し,原告に対して,本件開示請求が個人情報保護条例にいう自己の保有個人情報に係る本人からの開示請求であるから,本件開示請求を取り下げ,個人情報保護条例に基づく規定様式の開示請求書を提出するよう求めた。これに対して,原告は,本件条例に基づく開示請求をするか,個人情報保護条例に基づく開示請求をするかは請求者の自由である,法的な不備については補正命令を出した上で却下決定,存否応答拒否等をすればよいなどと告げるとともに,自らが「大統領」であることを確認することができる証明書を有していないから本件条例に基づく開示請求を行った旨を述べた(乙。 4)(3)警視総監は,本件開示請求書の開示請求者の氏名欄に記載された「大統領」との記載が本件条例6条1項1号の規定する「氏名」又は「名称」のいずれにも該当しないと判断し,平成21年6月24日,同条2項に基づき,「」。 ,開示請求書の補正についてと題する書面を原告に送付した同書面には本件開示請求書の開示請求者の氏名欄に記載された「大統領」は,一般に個人の氏名とは理解し難く,同号の規定する「氏名」を記載しているものとは認められないため,同欄に請求者の戸籍上の氏名又はそれと同程度に特定し 識別することが可能な呼称を記載するよう求める旨,補正の期限は同年7月17日であり,同日までに補正がされない場合には本件開示請求に対する行政処分を行う旨などが記載されていた。 (4)警視総監は,平成21年6月29日,原告から,上記(3)の補正を拒否する旨の書面(甲3)の送付を受け,同年7月17日までに本件開示請求の補正が行われなかったことから,同月21日付けで本件開示請求を却下する旨の決定(監.総.文.情第○号。以下「本件却下決定」という)をした。 。 (5)原告は,平成21年8月1日,本件却下決定の取消しを求 が行われなかったことから,同月21日付けで本件開示請求を却下する旨の決定(監.総.文.情第○号。以下「本件却下決定」という)をした。 。 (5)原告は,平成21年8月1日,本件却下決定の取消しを求める本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 争点 (1)本件訴えの適法性(2)本件却下決定の適法性 当事者の主張の要旨(1)争点(1)(本件訴えの適法性)について(被告の主張)訴訟上の当事者が何人であるかは,判決の名あて人のみならず,裁判籍,訴訟事件の同一性,既判力の範囲等訴訟手続の基礎を決定する重要な事項であり,当事者は原則として実名又は社会生活上周知された通称によって訴訟行為をしなければならず,仮名による訴えは,当事者の確定を妨げるものとして不適法であるとされている本件訴状に原告として記載されている大,。 「統領」との名称は,実名又は社会生活上周知された通称とは認められない。 したがって,本件訴えは,当事者が確定されていない不適法なものといわざ るを得ない。 (原告の主張)後記(2)における原告の主張のとおり,本件訴えの原告は,訴状記載の住所地(以下「本件住所地」という)を住所とする「大統領」と称する個人。 として,特定し識別し得るから,本件訴えの当事者は確定されており,本件訴えは適法である。 (2)争点(2)(本件却下決定の適法性)について(被告の主張)本件条例6条1項1号は,本件条例に基づく文書開示請求は「氏名又は,名称」を明らかにして行わなければならないと規定しているところ,請求者が日本国籍を有する自然人であるときは,同号所定の「氏名」は戸籍上の氏名をいうと解すべきであるし「名称」といえるためには戸籍上の氏名と同,程度に個人を特定し識別するものとして社会的に定着しているものでなければならない 人であるときは,同号所定の「氏名」は戸籍上の氏名をいうと解すべきであるし「名称」といえるためには戸籍上の氏名と同,程度に個人を特定し識別するものとして社会的に定着しているものでなければならないと解すべきである。しかるに,原告が本件開示請求書の開示請求者の氏名欄に記載した「大統領」は,原告の戸籍上の氏名ではないし,個人を特定し識別するものとして社会的に定着しているものでないことは明らかである。したがって,開示請求者の氏名欄に「大統領」と記載された本件開示請求書による本件開示請求は,同号に反するものであるから,本件却下決定は適法である。 (原告の主張)以下の各事情に照らすと「大統領」との呼称は,原告を特定し識別する,ものとして社会的に定着していることが明らかであるから,開示請求者の氏 名欄に「大統領」と記載された本件開示請求書による本件開示請求が本件条例6条1項1号に反するものということはできず,本件却下決定は違法である。 ア原告が自らを「大統領」と表示し住所を本件住所地として提起した訴えにつき東京高等裁判所は同訴えの原告は本件住所地を住所とする大,,,「統領」と称する個人であって,これが原告を表す通称として使用されていることが明らかであるとして,当事者の特定に欠ける点はないとした。 イ警視総監は,本件開示請求書の補正を求める文書及び本件却下決定の決定書の名あて人をいずれも「大統領」とした上,いずれもあて先を「大統」,。 領として本件開示請求書記載の住所地に発送し原告がこれを受領したウ東京地方検察庁検察官は,原告が告訴人を「大統領」として提出した告訴状を受理した上「大統領」を名あて人とする処分通知書を送付し,原,告がこれを受領した。 エ外務大臣防衛庁長官及び東京都知事はいずれも原告が請求者を大,,,「 を「大統領」として提出した告訴状を受理した上「大統領」を名あて人とする処分通知書を送付し,原,告がこれを受領した。 エ外務大臣防衛庁長官及び東京都知事はいずれも原告が請求者を大,,,「統領」として提出した情報公開請求書を受理した上「大統領」を名あて,人とする開示決定通知書を送付し,原告がこれらを受領した。 第3争点に対する判断 争点(1)(本件訴えの適法性)について証拠(乙6,7)及び弁論の全趣旨によれば,原告を「大統領」と表示した訴状により東京都を被告として慰謝料請求訴訟を提起した者が,その第1回口頭弁論期日に東京簡易裁判所に出頭し,同期日において,同人の戸籍上の氏名は「B」である旨を述べたこと,同訴訟の判決に「原告大統領ことB」と表 示して記載された同人の住所は,本件住所地と同一であることが認められる。 これらの各事実に照らすと,原告の戸籍上の氏名は「B」であり,同人が自己を「大統領」と称して本件訴えを提起し,本件訴訟を追行したものであると認められる。したがって,本件訴訟の原告は上記のとおり特定されているというべきであり,本件訴えは適法なものということができる。 争点(2)(本件却下決定の適法性)について(1)本件条例6条1項1号が,開示請求は,実施機関に対して,開示請求者の氏名又は名称を明らかにして行わなければならないとしているのは,当該公文書の開示を求める請求が実在する特定の自然人又は団体によって現実に行われたものであることを明らかにして,情報公開制度の適正な運用を確保するとともに,当該開示請求者が本件条例所定の請求者の資格(本件条例5),,条を有するものであることを確認し実施機関が公文書の開示義務を負いその開示又は不開示の決定を通知する相手方(本件条例7条,11条)を確定するためであると解 所定の請求者の資格(本件条例5),,条を有するものであることを確認し実施機関が公文書の開示義務を負いその開示又は不開示の決定を通知する相手方(本件条例7条,11条)を確定するためであると解される。このような趣旨からすれば,本件条例に基づく公文書の開示請求者が戸籍上の氏名以外の呼称をもって自己を表示した場合において,当該請求が本件条例6条1項1号に規定する「氏名又は名称」を明らかにしてしたものといえるためには,当該呼称が少なくとも戸籍上の氏名と同程度にその使用者を特定し識別するものとして社会的に定着しているものであることを要すると解すべきである。 本件では,前記1に認定した事実と弁論の全趣旨によれば「大統領」は,原告の戸籍上の氏名ではないことが認められるから「大統領」の呼称が戸,籍上の氏名と同程度に原告を特定し識別するものとして社会的に定着してい るものであるかについて検討する。 (2)この点,証拠(甲4)によれば,原告が自らを「大統領」と表示し住所を本件住所地として提起した訴えにつき,東京高等裁判所が,当事者の特定に欠けるところはないとの内容の判決をしたことは認められる。しかし,この判決は,第1審裁判所による訴状補正命令や訴状却下命令が「大統領」あてに本件住所地を送達場所として送達され,原告がこれらを受領していること,その送達の際作成された郵便送達報告書の「受領者の押印又は署名」欄には「B」と読むことのできる印影が顕出されていることなどから,上記訴えの原告は,本件住所地を住所とする「大統領」と称する個人であって,これが本人を表す呼称として使用されていることが明らかであるとして上記訴えにおいては当事者が特定されているとしたものであり,郵便業務の内容,性格等に照らすと,同判決が理由とした上記各事情のみからは「大統領」, す呼称として使用されていることが明らかであるとして上記訴えにおいては当事者が特定されているとしたものであり,郵便業務の内容,性格等に照らすと,同判決が理由とした上記各事情のみからは「大統領」,の呼称が戸籍上の氏名と同程度に原告を特定し識別するものとして社会的に定着しているものであるということはできない。 (3)また,証拠(甲1,2,5ないし11)によれば,①警視総監は,本件開示請求書の補正を求める文書及び本件却下決定の決定書の名あて人をいずれも「大統領」とした上,いずれもあて先を「大統領」として本件住所地に発送し,原告がこれを受領していること,②東京地方検察庁検察官は,告訴人を「大統領」とする告訴状(甲5)を受理した上「大統領」を名あて,人とする処分通知書(甲6)を送付し,原告がこれを受領していること,③外務大臣,防衛庁長官及び東京都知事は,いずれも,請求者を「大統領」とする情報公開請求書を受理した上「大統領」を名あて人とする開示決定, 通知書を「大統領」あてに送付し,原告がこれらを受領したことが認められ。 ,「」るしかし上記の検察官や各行政機関の長が告訴人又は請求者を大統領とする告訴状又は情報公開請求書を受理しこれらに応答しているのは,国民の告訴権や情報公開請求権に配慮した事実上の措置であるとも解されるし,処分通知書や開示決定書の名あて人を「大統領」とし,これを「大統領」あてに送付したのも告訴状及び情報公開請求書に告訴人又は請求者として大,「統領」と記載されていたことからこれに対応する表記をしたにすぎないものと考えられる。また,原告が「大統領」あてに送付された処分通知書や開示,,,決定書を受領していることについても郵便業務の内容性格等に照らすとそれだけで「大統領」の呼称が戸籍上の氏名と同程度に原告を特定し る。また,原告が「大統領」あてに送付された処分通知書や開示,,,決定書を受領していることについても郵便業務の内容性格等に照らすとそれだけで「大統領」の呼称が戸籍上の氏名と同程度に原告を特定し識別するものとして社会的に定着していることを裏付けるものということはできない。 (4)以上によれば「大統領」の呼称が戸籍上の氏名と同程度に原告を特定し,識別するものとして社会的に定着しているものであるとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件開示請求は,本件条例6条1項1号に反するものというべきである。 (5)そして,警視総監は,平成21年6月24日,本件条例6条2項に基づき「開示請求書の補正について」と題する書面を送付し,原告に対して,,本件開示請求書の開示請求者の氏名欄に記載された「大統領」は,一般に個人の氏名とは理解し難く,同条1項1号に規定する「氏名」を記載しているものとは認められないとして,同年7月17日までに,同欄に請求者の戸籍上の氏名又はそれと同程度に特定し識別することが可能な呼称を記載するよ う補正を求め,原告がこれに応じなかったことから本件却下決定をしているのであるから(前提事実(3),(4) ,本件却下決定に違法はないというべき)である。 (6)なお,原告は,警視総監が原告に送付した上記の「開示請求書の補正について」と題する書面に「開示請求者の氏名欄には,貴殿の戸籍上の氏名又はそれと同程度に貴殿を特定・識別することが可能な呼称を記載するようお願いいたします」との記載があることから,同書面の送付により補正命令。 がされたものということはできないとして,本件却下決定が補正命令を欠く違法なものであると主張するが,同書面の表題が「開示請求書の補正について」とされ,頭書に本件開示請求書につ 送付により補正命令。 がされたものということはできないとして,本件却下決定が補正命令を欠く違法なものであると主張するが,同書面の表題が「開示請求書の補正について」とされ,頭書に本件開示請求書について本件条例6条2項に基づき補正を求める旨が記載されていること(甲2)に照らすと,同書面の送付により本件条例6条2項に規定する補正命令がされたことは明らかであって,原告の上記主張は採用することができない。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦 裁判官品田幸男裁判官角谷昌毅

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