令和1(ネ)230 各国家賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年6月1日 仙台高等裁判所
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判決文本文77,168 文字)

令和元年(ネ)第230号各国家賠償請求控訴事件 判決 仙台高等裁判所第1民事部 本文目次 主文 ...................................................... 7事実及び理由 ...................................................... 7第1 控訴の趣旨 ........................................................ 7第2 事案の概要 ........................................................ 7 1 事案の要旨 ........................................................ 7 2 前提事実及び関係法令 .............................................. 9控訴人ら ....................................................... 10旧優生保護法 ................................................... 10平成8年法改正 ................................................. 13一時金の支給等に関する法律の立法 ............................... 14 3 争点 ................................. ... 13一時金の支給等に関する法律の立法 ............................... 14 3 争点 ............................................................. 15争点1:平成8年法改正前後を通じた被控訴人による一連一体の不法行為が成立するか(主位的請求) ......................................... 15争点2:平成8年法改正後の被控訴人による被害回復、軽減措置の不作為による不法行為が成立するか(予備的請求) ........................... 15争点3:民法724条後段の適用 ................................. 15 4 争点1に関する当事者の主張 ....................................... 15【控訴人らの主張】 ................................................. 15総論 ........................................................... 15国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為が違憲違法であること (主位的違法行為①) ......................................................... 16平成8年法改正前まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したことが違憲違法であること(主位的違法行為②) ....................... 17 厚生大臣 平成8年法改正前まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したことが違憲違法であること(主位的違法行為②) ....................... 17 厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったことが違法であること(主位的違法行為③)......... 19平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置を怠ったことが違法であること(主位的違法行為④) ........................................................... 20【被控訴人の主張】 ................................................. 21総論 ........................................................... 21主位的違法行為①から④の一連一体の継続的不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないこと ......................................... 22主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であり又は主位的違法行為③が不法行為にあたることにより被控訴人に対する損害賠償請求権を有しているとの控訴人らの主張に理由がないこと............. 24 5 争点2に関する当事者の主張 ....................................... 24【控訴人らの主張】 ................................................. 24総論 ................ ........... 24【控訴人らの主張】 ................................................. 24総論 ........................................................... 24厚生大臣及び厚生労働大臣が、遅くとも平成8年法改正時点までに、控訴人らに発生していた被害回復、軽減措置を講じる義務を怠っていることが違法であること(予備的違法行為①) ..................................... 24国会議員が、厚生労働大臣が被害者への補償について答弁した3年後である平成19年3月以降、控訴人らが憲法17条に基づく国家賠償請求権又は憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権を行使するための立法措置を講じることを怠ったことが違法であること(予備的違法行為②) ..................................... 25【被控訴人の主張】 ................................................. 28予備的違法行為①につき不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないこと ........................................................... 28 予備的違法行為②につき不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないこと ........................................................... 29 6 争点3に関する当事者の主張 ........................... .................................................... 29 6 争点3に関する当事者の主張 ....................................... 31【被控訴人の主張】 ................................................. 31総論 ........................................................... 31除斥期間の起算点が本件優生手術実施時であること................. 31除斥期間経過の効果制限がされるべきではないこと................. 32本件に国賠法4条、民法724条後段の規定を適用することが憲法17条の趣旨に反しないこと ............................................... 34【控訴人らの主張】 ................................................. 35総論 ........................................................... 35主位的違法行為①から④が被控訴人による一連一体の不法行為となるものであり除斥期間の起算点が到来していないこと ......................... 35仮に主位的違法行為①から③のみが一連の継続的な不法行為であるとしても、除斥期間の起算点が到来しておらず、仮に除斥期間が経過していたとしても民法724条後段が適用されないこと ............................... 35仮に主位的違法行為③のみが被控 起算点が到来しておらず、仮に除斥期間が経過していたとしても民法724条後段が適用されないこと ............................... 35仮に主位的違法行為③のみが被控訴人による不法行為であったとしても、民法724条後段が適用されないこと ................................. 42第3 当裁判所の判断 ................................................... 42 1 認定事実 ......................................................... 42旧優生保護法制定に至る経緯 ..................................... 42旧優生保護法施行後の優生手術の実施件数 ......................... 43優生手術実施に関する旧優生保護法の解釈、通知等................. 44旧優生保護法施行後の国会での議論の状況及び厚生省の施策の実施状況45都道府県の動向 ................................................. 45学習指導要領、教科書における優生に関する記載................... 46 旧優生保護法の見直しをめぐる動向 ............................... 50平成8年法改正前の改正要望等 ................................... 51平成8年法改正 ................................................. 52平成8年法改正 ........................ 51平成8年法改正 ................................................. 52平成8年法改正後の動向 ......................................... 53被控訴人における障害者関連政策の動向 ........................... 55国際条約 ....................................................... 56国際機関の勧告等 ............................................... 60日弁連の対応 ................................................... 63スウェーデン及びドイツの対応 ................................... 64控訴人らに対する本件優生手術の実施等 ........................... 64 2 争点1(平成8年法改正前後を通じた被控訴人による一連一体の不法行為が成立するか)について ................................................. 65主位的違法行為①から④が一連一体の不法行為であるとの主張について65ア旧優生保護法を制定した国会議員の立法行為及び平成8年法改正まで改正・廃止しなかった立法不作為(主位的違法行為①)について......... 65イ平成8年法改正前までの国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)について ........................... )について......... 65イ平成8年法改正前までの国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)について ............................. 69ウ厚生大臣が本件優生手術を阻止しなかったこと(主位的違法行為③)について ........................................................... 69エ平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置)を怠っていること(主位的違法行為④)について ........................................... 71オの結論 ..................................................... 72主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であるとの主張及び主位的違法行為③が不法行為に当たるとの主張について .... 72 3 争点3(民法724条後段の適用)について ......................... 73民法724条後段の法的性質 ..................................... 73除斥期間の起算点 ............................................... 73起算点から20年経過後の民法724条後段の適用制限............. 75正義公平の理念による民法724条後段の適用制限................. 79本件に民法724条後段を適用 ら20年経過後の民法724条後段の適用制限............. 75正義公平の理念による民法724条後段の適用制限................. 79本件に民法724条後段を適用することの違憲性................... 79本件に民法724条後段を適用することの拷問等禁止条約及び国際慣習法違反 ............................................................... 80 4 小括 ............................................................. 82 5 争点2(平成8年法改正後の被控訴人による被害回復、軽減措置の不作為による不法行為が成立するか)について ................................... 83厚生大臣及び厚生労働大臣が遅くとも平成8年法改正までに発生する、損害の賠償、補償のための措置を含む被害回復、軽減措置を講ずる義務を怠ったこと(予備的違法行為①)の違法性 ................................... 83国会議員が、平成19年3月以降、本件優生手術を受けた控訴人らが被控訴人に対して有する憲法17条に基づく国家賠償請求権又は憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権を行使するための立法措置を講じることを怠ったこと(予備的違法行為②)の違法性 ........................................................... 85第4 結論 .................................................. ....................................... 85第4 結論 ............................................................. 87 主文 1 控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 主位的請求(1) 被控訴人は、控訴人甲1に対し、3300万円及びこれに対する(省略)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人は、控訴人甲2に対し、3850万円及びこれに対する(省略)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 予備的請求(1) 被控訴人は、控訴人甲1に対し、3300万円及びこれに対する平成19年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人は、控訴人甲2に対し、3850万円及びこれに対する平成19年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、控訴人らが、平成8年法律第105号による改正(以下「平成8年法改正」という。)前の優生保護法(昭和23年法律第156号。以下「旧優生保護法」という。)に基づき、旧優生保護法2条1項の優生手術(生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術)を受けさせられたとして、被控訴人に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び遅延損害金の支払を求める事案である。 原審において、控訴人らは、旧優生保護法2章、4 て、被控訴人に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び遅延損害金の支払を求める事案である。 原審において、控訴人らは、旧優生保護法2章、4章及び5章の規定に基づき優生手術を受けさせられ、子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を一方的に侵害され、損害を被ったとして、主位的に、国会が上記損害を賠償する立法措置を講じなかった立法不作為及び厚生労働大臣が上記損害を賠償する立法等の施策を行わなかった不作為が違法であるとして、予備的に、厚生大臣が控訴人らに対する優生手術(本件優生手術)を防止することを怠ったことが違法であるとして、国賠法1条1項による損害賠償請求権に基づき、控訴人甲1が3300万円の慰謝料等及び遅延損害金の、控訴人甲2が3850万円の慰謝料等及び遅延損害金の支払を求めた。 原審は、旧優生保護法2章、4章及び5章の各規定は、憲法13条に違反し、無効であり、控訴人らは、リプロダクティブ権を侵害されたものとして国賠法1条1項に基づき被控訴人にその賠償を求めることができるとし、主位的請求について、上記損害賠償請求権は、国賠法4条、平成29年法律第44号による改正前の民法724条(以下単に「民法724条」という。)後段により、本件優生手術から20年の除斥期間の経過をもって消滅するが、20年を経過する前に損害賠償請求権を行使することは現実的には困難であったから、権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠ではあったものの、それが明白であったとはいえないとして、上記控訴人らの主張する国会の立法不作為又は厚生労働大臣の施策の不作為が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではなく、予備的請求について、除斥期間の規定 ったとはいえないとして、上記控訴人らの主張する国会の立法不作為又は厚生労働大臣の施策の不作為が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではなく、予備的請求について、除斥期間の規定 には目的の正当性並びに合理性及び必要性が認められるとして、控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らが控訴した。 当審において、控訴人らは、国賠法1条1項による損害賠償請求権の請求原因を変更し、主位的に、①国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為(主位的違法行為①)、平成8年法改正まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)、厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して控訴人らに対する本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったこと(主位的違法行為③)、平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置)を怠っていること(主位的違法行為④)は、一連一体の不法行為であり、②仮にこれが認められないとしても、主位的違法行為①から③は、密接に関連した複合的な継続的不法行為であり、③仮にこれが認められないとしても、主位的違法行為③が、不法行為に当たるとして、上記各慰謝料等及び本件優生手術の時以降の遅延損害金の支払を求め、予備的に、①厚生大臣及び厚生労働大臣が、遅くとも平成8年法改正までに発生していた、控訴人らに被害回復、軽減措置を講じる義務(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置、損害の賠償、補償のための措置)を怠っていること(予備的違法行為①)、②国会議員が、厚生労働大臣が被害者 講じる義務(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置、損害の賠償、補償のための措置)を怠っていること(予備的違法行為①)、②国会議員が、厚生労働大臣が被害者への補償について答弁した3年後の平成19年3月以降、控訴人らが憲法上の補償請求権を行使するための立法措置を講じる義務を怠っていること(予備的違法行為②)がいずれも違法であり、控訴人らに対する不法行為が成立すると主張し、上記各慰謝料等及び上記厚生労働大臣の答弁の日から起算して3年が経過した日以降の遅延損害金の支払を求めた。 2 前提事実及び関係法令 争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに関係法令は、次のとおりである。 控訴人ら控訴人甲1(省略)は(省略)に、控訴人甲2(省略)は(省略)頃に、いずれも、(省略)旧優生保護法2条1項の優生手術を受けた(以下、これらの優生手術を併せて「本件優生手術」という。)(甲1B4、6、甲2B1(枝番を含む。枝番のある証拠については、特に記載しない限り以下同じ。)、2、4、15、17、21、(省略)控訴人甲2本人(原審及び当審))。 旧優生保護法旧優生保護法は、昭和23年7月13日に公布され、同年9月11日に施行された法律であり、その概要は次のとおりである。 1条(この法律の目的)この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。 2条(定義)1項この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう。 3条(医師の認定による優生手術)1項医師は、次の各号の一に該 (定義)1項この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう。 3条(医師の認定による優生手術)1項医師は、次の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者があるときはその同意を得て、優生手術を行うことができる。ただし、未成年者、精神病者又は精神薄弱者についてはこの限りでない。 1号本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇型を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの(昭和27年法令第141号による改正(以下「昭和27年法改正」という。)により、「配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有し ているもの」を追加)2号本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性畸形を有しているもの(昭和24年法律第216号による改正(以下「昭和24年法改正」という。)により、「且つ、子孫にこれが遺伝する虞れのあるもの」との要件を削除)3号本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの(らい予防法の廃止に関する法律(平成8年法律第28号)により削除)4、5号略(母体の生命保護の見地から手術を行うことができる場合を定めたもの)4条(審査を要件とする優生手術の申請)医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹っていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請しなければならない。(昭和24年法改正により、3条の同意を得なくても、 るため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請しなければならない。(昭和24年法改正により、3条の同意を得なくても、都道府県優生保護審査会に審査を申請できるとされていたのを変更)別表1号遺伝性精神病2号遺伝性精神薄弱3号顕著な遺伝性精神病質4号顕著な遺伝性身体疾患5号強度な遺伝性奇型5条(優生手術の審査)1項都道府県優生保護審査会は、4条の規定による申請を受けたとき は、優生手術を受くべき者にその旨を通知するとともに、同条に規定する要件を具えているかどうかを審査の上、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者及び優生手術を受くべき者に通知する。 2項都道府県優生保護審査会は、優生手術を行うことが適当である旨の決定をしたときは、申請者及び関係者の意見をきいて、その手術を行うべき医師を指定し、申請者、優生手術を受くべき者及び当該医師に、これを通知する。 6条(再審査の申請)1項 5条1項の規定によって、優生手術を受くべき旨の決定を受けた者は、その決定に異議があるときは、同条同項の通知を受けた日から2週間以内に、公衆衛生審議会に対して、その再審査の申請をすることができる。 9条(訴の提起)公衆衛生審議会の決定に対して不服のある者は、その取消しの訴を提起することができる。 10条(優生手術の実施)優生手術を行うことが適当である旨の決定に異議がないとき又はその決定若しくはこれに関する判決が確定したときは、5条2項の医師が、優生手術を行う。 11条(費用の負担)1項 10条の規定によって行う優生手 とが適当である旨の決定に異議がないとき又はその決定若しくはこれに関する判決が確定したときは、5条2項の医師が、優生手術を行う。 11条(費用の負担)1項 10条の規定によって行う優生手術に関する費用は、政令の定めるところにより、当該都道府県の支弁とする。 2項前項の費用は、国庫の負担とする。 12条(精神病者等に対する優生手術)医師は、別表1号又は2号に掲げる遺伝性のもの以外の精神病又は精神 薄弱にかかっている者について、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)20条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護者となる場合)又は同法21条(市町村長が保護者となる場合)に規定する保護者の同意があった場合には、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。 13条1項都道府県優生保護審査会は、12条の規定による申請を受けたときは、本人が同条に規定する精神病又は精神薄弱に罹っているかどうか及び優生手術を行うことが本人保護のために必要であるかどうかを審査の上、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者及び12条の同意者に通知する。 2項医師は、前項の規定により優生手術を行うことが適当である旨の決定があったときは、優生手術を行うことができる。 第4章都道府県優生保護審査会16条優生手術に関する適否の審査を行うため、都道府県知事の監督に属する都道府県優生保護審査会を置く。 第5章優生保護相談所20条優生保護の見地から結婚の相談に応じ遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上を図るとともに、受胎調節に関する適正な方法の普及指導をするため、優生保護相談所を設置する。 優生保護相談所20条優生保護の見地から結婚の相談に応じ遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上を図るとともに、受胎調節に関する適正な方法の普及指導をするため、優生保護相談所を設置する。 平成8年法改正優生保護法の一部を改正する法律(平成8年法律第105号。同年6月26日公布、同年9月26日施行)により、旧優生保護法について、題名が「優生保護法」から「母体保護法」に改められ、次のとおり改正された。 ア 1条(この法律の目的)のうち、「優生上の見地から不良な子孫の出生 を防止するとともに」が「不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により」に改められた。 イ 3条(医師の認定による優生手術)を、不妊手術に関する規定に改め、同条1項1号及び2号が削られた。 ウ 4条から13条までの審査を要件とする優生手術及び精神病者等に関する優生手術についての規定が全て削られた。 エ第4章(都道府県優生保護審査会)及び第5章(優生保護相談所)の規定が全て削られた。 一時金の支給等に関する法律の立法旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(平成31年法律第14号。以下「一時金支給法」という。)が、平成31年4月24日、公布、施行された。その概要は次のとおりである。 前文(前略)多くの方々が、特定の疾病や障害を有すること等を理由に(中略)生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきた。このことに対して、我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする。(中略)ここに、国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、この法律を制定する。 けてきた。このことに対して、我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする。(中略)ここに、国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、この法律を制定する。 3条(一時金の支給)国は、この法律の定めるところにより、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者(2条により、3条1項4号又は5号に掲げる者に該当することのみを理由として同項の規定により行われた優生手術を受けた者を除く。)に対し、一時金を支給する。 4条(一時金の額)一時金の額は、320万円とする。 5条(一時金に係る認定等)3項請求は、施行日から起算して5年を経過したときは、することができない。 3 争点 争点1:平成8年法改正前後を通じた被控訴人による一連一体の不法行為が成立するか(主位的請求) 争点2:平成8年法改正後の被控訴人による被害回復、軽減措置の不作為による不法行為が成立するか(予備的請求) 争点3:民法724条後段の適用 4 争点1に関する当事者の主張【控訴人らの主張】 総論国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為(主位的違法行為①)、平成8年法改正まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)、厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったこと(主位的違法行為③)はいずれも違法で、これらは密接に関連した複合的な継続的不法行為であるところ、さらに、平成8年法改正以降、厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるス した複合的な継続的不法行為であるところ、さらに、平成8年法改正以降、厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置)を怠ったこと(主位的違法行為④)は違法であり、これらの平成8年法改正前後を通じた違法行為(主位的違法行為①から④)は、人としての尊厳に対する侵害行為という点で連続した継続的な加害行為であるから、一連一体の継続的な不法行為である。 仮に、主位的違法行為①から④が一連一体の継続的な不法行為であると認められないとしても、主位的違法行為①から③は、密接に関連した複合的な 継続的不法行為である。 さらに、仮に主位的違法行為①から③が一連一体の継続的な不法行為であると認められないとしても、主位的違法行為③は、控訴人らに対する不法行為にあたる。 国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為が違憲違法であること (主位的違法行為①)ア国会議員による旧優生保護法の立法行為が国賠法上違法であること旧優生保護法は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止することを立法目的とし(1条)、特定の障害ないし疾患を有する者を一律に「不良」と断定して、優生手術により子どもを持つ権利を奪うもの(4条ないし13条。以下、1条及び4条ないし13条の規定を「優生条項」という。)であり、このこと自体、非人道的かつ差別的であり、憲法に違反することは明白である。 また、2条の委任に基づき命令で定められた優生手術の術式は、卵管の結さつ・切断等という、身体への強度の侵襲を内容とし、生命ないし身体に対する危険と不可逆的な生殖能力の喪失という重大な結果をもたらすもので 2条の委任に基づき命令で定められた優生手術の術式は、卵管の結さつ・切断等という、身体への強度の侵襲を内容とし、生命ないし身体に対する危険と不可逆的な生殖能力の喪失という重大な結果をもたらすものであり、優生手術の対象が、昭和27年法改正により、非遺伝性の特定の障害ないし疾患を有する者にも拡大されて、更に人権侵害性の高いものとなり、優生条項は、手術の対象、手段等の客観的内容に照らしても憲法に違反することが明白であった。 よって、旧優生保護法は、国民に憲法上保障されている、個人の尊厳、身体保全の権利及びリプロダクティブ権(憲法13条)、平等権(憲法14条1項)、拷問及び残虐な刑罰を受けない権利(憲法36条)などの権利を違法に侵害するものであることが客観的に明白であるから、国会議員の旧優生保護法の立法行為は、国賠法上違法である。 イ国会議員が旧優生保護法を平成8年法改正まで改廃しなかった立法不作為が国賠法上違法であること上記のとおり、旧優生保護法が、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが客観的に明白であったにもかかわらず、国会議員が長期にわたりその改廃を行わなかった立法不作為は国賠法上違法である。 ウ国会議員に故意過失があること旧優生保護法は、その内容が、憲法13条、14条1項などの憲法の明文の規定に明らかに反するものであるが、その立法過程においても、国会において、国会議員により、先天性の遺伝病者について優生手術により生殖能力を奪うことが国益に適うなどの優生思想に基づくあからさまな障害者差別を内容とする立法趣旨説明がされ、反対する意見もなく、簡単に成立した。さらに、遺伝性でない精神疾患でも保護者の同意があれば優生手術を可能にするなどの大幅な改正を行った昭和27年法改正の な障害者差別を内容とする立法趣旨説明がされ、反対する意見もなく、簡単に成立した。さらに、遺伝性でない精神疾患でも保護者の同意があれば優生手術を可能にするなどの大幅な改正を行った昭和27年法改正の際にも、国会議員による趣旨説明において、従来のままでは優生手術が極めて少ないことを指摘し、政府に対し、都道府県の衛生部及び保健所から民間への指導を十分徹底するように指導するよう要望された。 このような旧優生保護法の内容、国会における立法過程及びその後の改正の経緯に照らし、国会議員は、旧優生保護法の優生条項が違憲であることを認識することが可能であり、認識すべきであったから、旧優生保護法を制定、改正した国会議員に少なくとも過失があったことは明白である。 平成8年法改正前まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したことが違憲違法であること(主位的違法行為②)ア国会議員及び厚生省が優生手術を推進し、優生思想の普及を図ったこと 国会では、旧優生保護法制定後の昭和23年から昭和30年にかけて、国会議員から厚生大臣に対し、不良分子の出生を防止するなどの目的の ため、優生手術の実施を促進することを求める質問、要望が繰り返しされた。昭和24年には衆議院本会議において、人口問題に関する決議がされ、優生手術の実施を促進するため、昭和24年法改正、昭和27年法改正が行われた。 厚生省は、各都道府県宛てに、昭和24年には、審査を要件とする優生手術につき、当然に本人の意思に反しても手術を行うことができることや、真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があると解して差し支えないとの通知(優生保護法逐条通牒)をし、昭和29年及び昭和32年には、優生手術の 真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があると解して差し支えないとの通知(優生保護法逐条通牒)をし、昭和29年及び昭和32年には、優生手術の実施件数が実施計画又は予算上の件数を下回っているため、計画どおり実施し又はその実をあげるよう通知をした。昭和37年には、岐阜県知事からの照会に対し、審査を要件とする優生手術につき、旧優生保護法5条1項の決定の確定後できるだけ速やかに実施することが望ましい旨回答した。また、京都大学医学部の不妊目的の実験として卵巣などに放射線を当てることに関する問い合わせに対し、昭和24年、レントゲン照射は禁止されているとしながらも、大学(医学部)等において学術研究を目的として行うことは差し支えない旨を回答した。 昭和37年に厚生省人口問題審議会が採択した「人口資質向上対策に関する決議」では、「人口構成において、欠陥者の比率を減らし、優秀者の比率を増やすように配慮することは、国民の総合能力の向上のための基本的要請である」ことが決議された。また、昭和46年の厚生白書には「遺伝による先天異常を防ごう」という項目があり、「先天異常の子や親の不幸は測ることができぬほど大きいものであり、先天異常についてはその発生を未然に防止することに全力をあげる必要がある」とされていた。 イ文部省が学校教育を通じて優生思想の浸透、定着を図ったこと 高等学校学習指導要領において、遅くとも昭和31年改訂版で「国民優生」への言及を求め、昭和33年改訂後の昭和35年の要領で「国民優生」に触れることとし、昭和43年改訂後の昭和45年の要領で「結婚と優生」について扱うこととしており、教科書もこれに沿った記載がされた。特に、昭和43年改訂により、優生教育は飛躍的 の要領で「国民優生」に触れることとし、昭和43年改訂後の昭和45年の要領で「結婚と優生」について扱うこととしており、教科書もこれに沿った記載がされた。特に、昭和43年改訂により、優生教育は飛躍的に強化され、優生思想についての記述の厚い教科書が検定を合格し、教科書として採用された。昭和52年改訂後の昭和53年の要領では「健康な家庭生活」の項目があるのみで、「結婚と優生」についての記述は確認できないが、教職員向けの学習指導要領解説書には「結婚と優生」の小項目があり、教科書の優生教育に関する記述は、それまでの教科書とは異なり、優生思想の絶対的正当性を主張する断定的な言い回しを避けるものも登場しているが、基調としては、やはり優生思想を推進するものであった。 高等学校進学率は、昭和33年に53.7%、昭和40年に70.7%、昭和50年に91.9%、昭和60年に94.1%であり、多数の高等学校の生徒が昭和43年改訂後の学習指導要領に従った教育を受けた。 ウ国会議員、厚生大臣及び文部大臣による上記優生政策の推進が違憲、違法であり、過失があること上記のとおり、旧優生保護法の制定後、国会議員及び厚生省によって優生手術の推進、優生思想の普及が、文部省によって学校教育を通じた優生思想の浸透、定着が図られ、国を挙げた優生政策の推進が行われた。優生政策推進の根本ともいうべき旧優生保護法の優生条項が明白に憲法に違反するのであるから、上記優生政策の推進は、違憲、違法な重大な権利侵害であり、それを行った国会議員、厚生大臣及び文部大臣には、当然に過失が認められるというべきである。 厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったことが違法であること(主位的違法行為③) 当然に過失が認められるというべきである。 厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったことが違法であること(主位的違法行為③) ア本件優生手術は、違憲、無効な法律である旧優生保護法に基づいて行われたから、違憲、違法である。本件優生手術が実施された当時、旧優生保護法を所管する厚生省の長であった厚生大臣は、国家公務員として憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負っていたから、違憲である旧優生保護法に基づく優生手術を実施しないように通達、指導を行い、旧優生保護法の改正、廃止に向けた検討をし、法律の改正案を提出すべき義務を負っていたにもかかわらず、同義務を怠り、重大な人権侵害を放置し続けたものであり、厚生大臣の不作為は違憲、違法である。 イ旧優生保護法の優生条項は、その内容から明らかに違憲、違法であり、厚生大臣の運用によりその人権侵害性が一層強まっていたが、昭和25年、厚生省内部関係者から強制的な優生手術の実施が日本国憲法の本旨に照らして許されないとの認識に基づく反対意見が表明されたことがあったことなどから、厚生大臣は、旧優生保護法、優生手術の違憲性を認識することが十分に可能であり、その違憲性、違法性を認識すべきであったから、少なくとも過失があることは明白である。 平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置を怠ったことが違法であること(主位的違法行為④)ア厚生大臣及び厚生労働大臣が作為義務を負うこと上記の国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為(主位的違法行為①)、平成8年法改正まで国会議員、厚生省及び文部省が優生 上記の国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為(主位的違法行為①)、平成8年法改正まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)、厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して本件優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったこと(主位的違法行為③)により、旧優生保護法の対象とされた者(障害者等)に対する差別偏見を定着蔓延させ、優生手術を受けた者のリプロダクティブ権、身体保全の権 利を侵害し、人としての尊厳を著しく毀損した。 厚生大臣及び厚生労働大臣は、上記先行行為に基づく条理上の作為義務として、先行行為によって蔓延した、旧優生保護法の対象とされた者に対する、不良な存在、子を持つべきではない存在という一般的差別偏見及び優生手術により不良な存在との烙印を明示的に押されたことにより、人としての尊厳等を著しく毀損された被害について、控訴人らに対する被害回復、軽減のための措置として、優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置を講ずる義務を負っている。 イ厚生大臣及び厚生労働大臣が作為義務を果たしていないこと平成8年法改正により優生条項は削除されたが、厚生大臣及び厚生労働大臣は、国策によって優生思想、差別偏見が助長されたという事実を明らかにすることもなく、被害の検証も被害者に対する謝罪も行わず、その後も長期間にわたり、優生手術被害者に対する差別偏見を除去することや名誉を回復するための措置等を何ら行わなかったから、控訴人らに対する「人としての尊厳」の被害回復、軽減の措置を講ずる義務に違反している。 ウ厚生大臣及び厚生労働大臣に過失があること厚生大臣及び厚生労働 等を何ら行わなかったから、控訴人らに対する「人としての尊厳」の被害回復、軽減の措置を講ずる義務に違反している。 ウ厚生大臣及び厚生労働大臣に過失があること厚生大臣及び厚生労働大臣は、平成8年法改正以降は、旧優生保護法が違憲違法であることを認識でき、優生手術を合法とする法律がなくなり、回復義務の履行は現実的に可能であったから、厚生大臣及び厚生労働大臣に過失があることは明らかである。 【被控訴人の主張】 総論国賠法1条1項の違法とは、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することをいう(職務行為基準説)。国賠法1条1項の違法の本質は、法的な職務義務違反(行為義務違反)であって、当該公務員が、損害賠償を求めている個々の国 民との関係で通常尽くすべき職務上の注意義務を尽くすことなく漫然とこれに違反したと認め得るかどうかという枠組みをもって判断されるべきである。 主位的違法行為①から④の一連一体の継続的不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないことア控訴人らが主張する平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置を講じることを怠っていること(主位的違法行為④)が本件優生手術の実施(主位的違法行為③)と別個の不法行為を構成する余地はないこと先行行為が不法行為を構成する場合には、先行行為と相当因果関係のある損害は、原則として当該行為の不法行為責任として発生する金銭賠償の方法による損害賠償によって回復されるべきであり、かかる損害賠償義務とは別に、条理を根拠として当該損害を回復するための作為義務を認めることは、民法の不法行為責任の規律が、損害賠償の方 する金銭賠償の方法による損害賠償によって回復されるべきであり、かかる損害賠償義務とは別に、条理を根拠として当該損害を回復するための作為義務を認めることは、民法の不法行為責任の規律が、損害賠償の方法として金銭賠償を原則とし(722条1項、417条)、不法行為に基づく損害賠償請求権について消滅時効、除斥期間の適用があるとした(724条)趣旨を没却するもので、解釈による原状回復の余地を否定する確立した判例理論にも沿わないものであって、到底採り得ないというべきである。 また、控訴人らの主張する、旧優生保護法(及び優生手術)に基づく長期の優生政策及び優生思想の社会への浸透による人としての尊厳の著しい毀損という、継続的、累積的被害、損害は、平成8年法改正の前後を問わず、本件優生手術の実施に係る不法行為による損害を中核とし、これに起因するものにほかならない。そうすると、控訴人らの主張する上記損害は、本件優生手術時に発生しているものないし発生が予見可能なものというべきであり、控訴人らが先行行為であると主張する本件優生手術の実施に係る不法行為と相当因果関係にある損害に含まれると解するのが相当 であるから、これを本件優生手術の実施に係る不法行為による損害とは別個の新たな損害ということはできない。 イ厚生大臣及び厚生労働大臣が、「人としての尊厳」の回復のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表・謝罪等によるスティグマの除去・名誉回復、被害実態の検証)を講じる義務を、国賠法1条1項の違法を構成する法的義務として負う余地はないこと行政活動において、ある作為が国賠法1条1項における職務上の法的義務たり得るには、当該作為に係る法令の規定等に照らし、当該作為を求められる公務員において、通常なすべきとして認識でき こと行政活動において、ある作為が国賠法1条1項における職務上の法的義務たり得るには、当該作為に係る法令の規定等に照らし、当該作為を求められる公務員において、通常なすべきとして認識できる程度に、当該作為の発生要件及び作為すべき内容が明確なものでなければならない。しかし、控訴人らが主張する被害回復・軽減措置という作為は、いずれも当該作為を求められる公務員である厚生大臣及び厚生労働大臣において、通常なすべきとして認識できる程度に、その発生要件及び作為すべき内容が明確なものとして当然に導き出されるものとはいえない。 また、控訴人らが主張する被害回復・軽減措置は、仮に公務員が、当該措置という作為に係る職務上の義務を負うことがあるとしても、それは、国民一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し、他人の人権にも十分配慮した行動をとることができるよう意識を高めてもらうことなどを目的とするもので、創意工夫を凝らした多種多様な内容・方法によって広く不断に実施していくことになるから、専ら、広く人権尊重の理念に係る国民の理解を深めるという公益上の見地から、国民一般に対して負うものであり、優生手術等の優生政策により人権侵害を受けたという個々の国民に対して負うものでないことは明らかである。 ウ小括よって、厚生大臣及び厚生労働大臣が、控訴人らに対し、被害回復・軽減措置を講じる義務を負う余地はなく、当該義務の違反を本件優生手術の 実施等と一連一体の不法行為と評価することもできないから、主位的違法行為④が主位的違法行為①から③と一連一体の継続的不法行為であるとの控訴人らの主張には理由がない。 主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であり又は主位的違法行為③が不法行為 主位的違法行為①から③と一連一体の継続的不法行為であるとの控訴人らの主張には理由がない。 主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であり又は主位的違法行為③が不法行為にあたることにより被控訴人に対する損害賠償請求権を有しているとの控訴人らの主張に理由がないこと主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であり又は主位的違法行為③が不法行為にあたることにより被控訴人に対する損害賠償請求権を有しているとしても、後記のとおり、民法724条後段の除斥期間の経過により消滅している。 5 争点2に関する当事者の主張【控訴人らの主張】 総論厚生大臣及び厚生労働大臣が、遅くとも平成8年法改正時点までに、控訴人らに発生していた被害の回復、軽減措置を講じる義務(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置、損害の賠償、補償のための措置)を怠っていること(予備的違法行為①)又は国会議員が、厚生労働大臣が被害者への補償について答弁した3年後である平成19年3月以降、控訴人らが憲法17条に基づく国家賠償請求権又は憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権を行使するための立法措置を講じる義務を怠っていること(予備的違法行為②)につき、被控訴人は国賠法上の賠償責任を負う。 厚生大臣及び厚生労働大臣が、遅くとも平成8年法改正時点までに、控訴人らに発生していた被害回復、軽減措置を講じる義務を怠っていることが違法であること(予備的違法行為①)厚生大臣及び厚生労働大臣は、旧優生保護法の制定及び改廃の懈怠(主位 的違法行為①)、優生政策推進による優生思想の浸透(主位的違法行為②)、優 であること(予備的違法行為①)厚生大臣及び厚生労働大臣は、旧優生保護法の制定及び改廃の懈怠(主位 的違法行為①)、優生政策推進による優生思想の浸透(主位的違法行為②)、優生手術の実施(主位的違法行為③)という先行行為に基づく条理上の作為義務として、遅くとも平成8年法改正時点までに、控訴人らが被った優生手術に基づく損害及び人としての尊厳に対する被害について、損害の賠償、補償のための措置を含む被害回復、軽減措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復、被害実態の検証、損害の賠償、補償のための措置)を講じる作為義務を負っている。 厚生大臣及び厚生労働大臣が、平成8年法改正以降も、その作為義務を果たしていないことは国賠法上違法であり、厚生大臣及び厚生労働大臣には過失がある。 国会議員が、厚生労働大臣が被害者への補償について答弁した3年後である平成19年3月以降、控訴人らが憲法17条に基づく国家賠償請求権又は憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権を行使するための立法措置を講じることを怠ったことが違法であること(予備的違法行為②)ア控訴人らが補償請求権を有していること控訴人らには、憲法13条により特別の犠牲を強制されない権利が保障されている。控訴人らは、当時は公益と称されていた利益のために、人間の存在の最も根源に捉えられるべき事柄についての自己決定権が奪い取られ、社会全体のためとの名目で犠牲となり、特別の犠牲を強制されない権利を侵害された。仮に憲法13条によって、特別の犠牲を強制されない権利があるとまで認められないとしても、公平負担の原則から、全体の公益を図るとの目的で特定の個人に対し特別の犠牲を 牲を強制されない権利を侵害された。仮に憲法13条によって、特別の犠牲を強制されない権利があるとまで認められないとしても、公平負担の原則から、全体の公益を図るとの目的で特定の個人に対し特別の犠牲を強制し、それについて補償がされていない場合は、公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づき、補償請求権が発生するというべきである。したがって、控訴人らは憲法13条に基づき補償請求権を有しており、仮に憲法 13条によって特別の犠牲を強制されない権利があるとまでは認められないとしても、公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づき、補償請求権を有している。 イ控訴人らが補償請求権を行使する機会を確保するために所要の立法措置が必要不可欠であり同措置を行うべきことが明白であったこと控訴人らの補償請求権は憲法上の権利であり、また、控訴人らへの権利侵害は、絶対的少数者への権利侵害であるから、その救済法(補償法)の制定については、国会の立法裁量が減縮される。さらに、本件においては、被害の態様が、生殖に関する自己決定権に対する永久的な侵奪という深刻かつ重大なものであること、被害者の中にはその障害や疾患により自ら声を上げることが難しい者も多数含まれ、個人の性に関わる事柄で公にすることがはばかられる問題であったこと、被害が回復困難であること、被害が広汎であること、他の法律による現実的救済可能性がないことなどの特有の事情もあり、国会の立法裁量はより一層限定され、被害者の被害回復をするため、被害者の特性および被害内容に配慮した特別の補償立法を行うことは必要不可欠であり、そのようにすべきことは明白であった。 国賠法の存在については、旧優生保護法が廃止されるまで法律として存在していたこと、旧 び被害内容に配慮した特別の補償立法を行うことは必要不可欠であり、そのようにすべきことは明白であった。 国賠法の存在については、旧優生保護法が廃止されるまで法律として存在していたこと、旧優生保護法を違憲であると指摘した判例がそれまでなかったこと、旧優生保護法が違憲であるとする学説が広く認知されていた状態でもなかったこと、不良な者あるいは社会生活上他人より劣るなどとして差別されてきた被害者やその家族らが、その社会的偏見にかかわらず自ら当該手術の違法性、不当性を認識し、さらに公開の法廷で自らの被害回復を図ることは事実上困難であったといわざるを得ないことなどから、国賠法による救済は現実的には困難であった。 ウ国会が正当な理由なく長期にわたって補償に関する立法措置を怠ったこと 平成8年法改正以降、市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)人権委員会(以下「国際人権規約委員会」という。)などの国際機関からの勧告や障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)の日本による批准、スウェーデンにおける優生手術の被害者への補償制度の開始、ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律(平成13年法律第63号)の制定、平成16年の坂口厚生労働大臣による優生手術の被害者に対する補償について「今後私たちも考えていきたいと思います。」との答弁、平成29年の日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)による意見書の公表など、国会が補償に関する立法措置を行う必要性を具体的に認識するに足りる事実が存在した。 以上に照らすと、遅くとも坂口厚生労働大臣による答弁がされた平成16年3月を基準とし、補償立法を行うための審議討議に要する期間を3年と考えても、平成19年3月には被害回復の措置を した。 以上に照らすと、遅くとも坂口厚生労働大臣による答弁がされた平成16年3月を基準とし、補償立法を行うための審議討議に要する期間を3年と考えても、平成19年3月には被害回復の措置を採るための相当な期間が経過したというべきであり、同月以降、国会が、控訴人らが補償請求権を行使するための立法措置を講じることを怠ったことは違法である。 エ国会が補償に関する立法措置として、国会としての謝罪、優生思想の克服、障害者に対する差別解消に向けての被控訴人と国民の責務の明示、被害回復のための特別措置(補償ないし賠償)を行うべきであったこと本件の被害の本質は、単にリプロダクティブ権や身体保全の権利、平等権を侵害した点にとどまらず、差別偏見を定着、蔓延させ、これによって旧優生保護法の対象とされた者の人としての尊厳(憲法13条)という極めて重大な憲法上の法益を侵害したことにあり、平成8年法改正から現在まで長期にわたり被害が放置されてきたことは、憲法99条に定められている国会議員の憲法尊重擁護義務に反する背信的なものである。そして、上記長期間に及ぶ国会議員の怠慢によって、優生手術を受けた被害者のみならず、障害者全体に対する社会の深刻な偏見差別が助長、維持され続け てきたのであるから、偏見差別を解消するためには、国会自身が、その責任を認めた上で率先して取り組むことが法律に明記されることが必要であり、立法措置は一定の金銭的補償(賠償)を含むものでなければならない。 国会が制定すべき法律の内容は「人としての尊厳」を回復するための措置及び損害の賠償や補償のための立法であり、具体的には、①国会としての謝罪、②優生思想の克服、障害者に対する偏見差別解消に向けての国と国民の責務の明示、③被害回復のための特別措置 を回復するための措置及び損害の賠償や補償のための立法であり、具体的には、①国会としての謝罪、②優生思想の克服、障害者に対する偏見差別解消に向けての国と国民の責務の明示、③被害回復のための特別措置(補償ないし賠償)の3点が明記されている法律である。 【被控訴人の主張】 予備的違法行為①につき不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないことア控訴人らの主張する予備的違法行為①については、主位的違法行為④が主位的違法行為①から③と一連一体の継続的不法行為となるものではないことについて述べたのと同様に、本件優生手術の実施とは別個の不法行為を構成する余地がなく、予備的違法行為①につき「人としての尊厳」の回復のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表・謝罪等によるスティグマの除去・名誉回復、被害実態の検証)を講じる義務を、国賠法1条1項の違法を構成する法的義務として負う余地はない。 イ仮に、控訴人らの主張するとおり、本件優生手術により控訴人らが被った損害につき損害賠償請求権が生じていたとしても、昭和22年以降、国賠法が存在しており、控訴人らが損害賠償請求権を行使する機会は確保されており、国会議員に国賠法とは別の控訴人らが主張する補償制度や特別措置を内容とする法律を制定する立法義務があったとはいえないから、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、 国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には該当せず、厚生大臣及び厚生労働大臣が、控訴人らの主張する法案の提出を行い、その施策を講じる職務上の法的義務を負っていたということもできない。 憲法17条は、侵害された権利の重大性や態様等によって 厚生大臣及び厚生労働大臣が、控訴人らの主張する法案の提出を行い、その施策を講じる職務上の法的義務を負っていたということもできない。 憲法17条は、侵害された権利の重大性や態様等によって、その保護を異なるものとすることを予定しておらず、優生手術を受けた者との関係でも、国賠法によって権利行使の機会が与えられていることによって、憲法17条の要請は充足されていると解するのが相当である。 ウよって、厚生大臣及び厚生労働大臣が、控訴人らに対し、被害回復・軽減措置を講じる義務を負う余地はなく、予備的違法行為①に係る損害賠償請求については理由がない。 予備的違法行為②につき不法行為が成立するとの控訴人らの主張に理由がないことア予備的違法行為②の国会議員の立法不作為が、本件優生手術の実施に係る不法行為から独立して別個の不法行為を構成する余地がないこと控訴人らが予備的違法行為②として主張する国会議員の立法不作為につき、本件優生手術の実施に係る不法行為から独立して別個の不法行為を構成する余地がないことは、主位的違法行為④及び予備的違法行為①について述べたとおりである。 イ国会議員が、控訴人らの主張する立法義務を、国賠法1条1項の違法を構成する法的義務として負う余地がないこと 国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)に関する国賠法1条1項の違法の判断枠組み国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)が国賠法1条1項の適用上違法となるためには、単に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するというだけでは足りず、①立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明 白な場合(最高裁平成17年判決(最高裁平 為が憲法の規定に違反するというだけでは足りず、①立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明 白な場合(最高裁平成17年判決(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁をいう。以下同じ。)前段基準)、②国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合(最高裁平成17年判決後段基準)のように、当該立法の内容又は立法不作為が憲法上保障されている国民の権利を違法に侵害することが明白であることや、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であることが最低限必要となる。 本件が最高裁平成17年判決後段基準に該当せず、国会議員が職務上の法的義務に違反したと評価される例外的な場合に該当しないこと控訴人らの主張する立法措置①(国会としての謝罪)及び立法措置②(優生思想の克服、障害者に対する偏見差別解消に向けての国と国民の責務の明示)は、国会議員が「行使の機会」を確保すべき控訴人らの権利の内容さえ明確ではないから、最高裁平成17年判決後段基準を満たすものでないことは明らかである。 また、憲法13条は、個人主義を基調とする自由権的基本権ないし基本的人権を一般的、抽象的、包括的に宣言しているものであって、同条から国民が国に対して何らかの実体法上の請求権を取得することは考えられない上、国家による制度形成を前提とする憲法上の権利であるともいえない。 控訴人らの主張する立法措置③(被害回復のための特別措置(補償ないし賠償))に の請求権を取得することは考えられない上、国家による制度形成を前提とする憲法上の権利であるともいえない。 控訴人らの主張する立法措置③(被害回復のための特別措置(補償ないし賠償))については、上記のとおり、憲法13条の規定から実体法上の請求権を直接根拠づけることはできない上、国民に憲法上保障されている権利である国家賠償請求権(憲法17条)の権利行使の機会を確 保するための法律としては、既に国賠法が存在していたことから、国賠法とは別に本件優生手術の被害に対する賠償法の立法措置を講じることが必要不可欠であったとはいえない。 ウ控訴人らが主張する予備的違法行為②の国会議員の立法不作為と控訴人らが主張する損害との間には相当因果関係が認められないこと控訴人らが主張する精神的損害は、本件優生手術により生じたものであり、控訴人らが主張する国会議員の立法不作為から生ずる余地はないから、予備的違法行為②との間には相当因果関係がない。 エ小括よって、控訴人らの主張する立法不作為が、本件優生手術の実施に係る不法行為から独立して不法行為を構成するものではなく、国会議員が控訴人らの主張する立法義務を国賠法1条1項の違法を構成する法的義務として負うとはいえず、控訴人らが主張する損害との間に相当因果関係もないから、被控訴人は損害賠償義務を負わない。 6 争点3に関する当事者の主張【被控訴人の主張】 総論仮に、主位的違法行為①から③が複合的な継続的不法行為であり、又は主位的違法行為③が不法行為にあたるとしても、これにより生じる損害賠償請求権は、不法行為の時である本件優生手術実施時を起算点として、20年の除斥期間が経過したことにより消滅している。 り、又は主位的違法行為③が不法行為にあたるとしても、これにより生じる損害賠償請求権は、不法行為の時である本件優生手術実施時を起算点として、20年の除斥期間が経過したことにより消滅している。 除斥期間の起算点が本件優生手術実施時であること民法724条後段は除斥期間を定めたものであり、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図するもので、20年の期間は、被害者側の認識を問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため、請求権の存続期間を画一的に定めたものと解される。国賠法4条は、限定を付することなく 広く民法の規定の適用を定めているから、私人に対する損害賠償請求権か国に対する国家賠償請求権かによってその適否が左右されるものでもない。 そして、除斥期間の起算点である「不法行為の時」は、本件優生手術のときと解すべきである。 除斥期間経過の効果制限がされるべきではないことア除斥期間の経過による権利消滅の効果が当然かつ絶対的に生じるものであること民法724条後段は、被害者の保護と加害者と目される者との利害の調整を図った上で、法的安定の見地から20年という期間を定め、不法行為をめぐる法律関係の画一的な解決を図ったものと解されるから、除斥期間の経過による権利消滅の効果は、不法行為に基づく損害賠償請求権一般につき、当然かつ絶対的に生じ、当事者が信義則違反や権利濫用を主張しても主張自体失当と解すべきものとされている。 イ除斥期間の効果制限に関する判例法理における除斥期間が経過しても民法724条後段の効果が生じない特段の事情がないこと最高裁平成10年判決(最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁)及び最高裁平成21年判決(最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・民集 が生じない特段の事情がないこと最高裁平成10年判決(最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁)及び最高裁平成21年判決(最高裁平成21年4月28日第三小法廷判決・民集63巻4号853頁)が判例法理として示した除斥期間が経過しても民法724条後段の効果が生じない「特段の事情」が認められる場合とは、①時効の停止のような除斥期間の経過による効果を制限する根拠となる明文の規定と当該規定により法定された客観的な事由に相当する事由があり(基準①)、かつ、②基準①に係る客観的事由が債務者の不法行為に起因するため、除斥期間の経過による効果を債権者に甘受させることが著しく正義・公平の理念に反するといった極めて例外的な場合(基準②)に限られるというべきである。 本件においては、基準①の客観的事由があるとは認められず、仮に、当 該事由があったとしても、平成8年法改正に至った経緯や被控訴人が障害者等に対する差別等の温床ともなり得る法律について必要な改正を行うなど、障害者等に対する差別等を解消するための取組を行ってきたことなどに照らし、平成8年法改正後、被控訴人が障害者等に対する差別・偏見を助長したとはいえず、除斥期間の経過による効果を発生させることが正義・公平の理念に反するとはいえないから、基準②にも該当せず、上記特段の事情は認められない。 ウその他の除斥期間の効果制限がされるべき事情もないこと控訴人らは、最高裁判所が当該法律を違憲であると判決した時から6か月間が経過するまでは除斥期間の効果が生じないと主張するが、最高裁判所が憲法適合性についての判断をするか否か及びその時期はいずれも不確かであり、当該法律の執行により生じた被害に係る損害賠償請求権の存続期間が極めて不安定なものとなるから、不法行為をめぐる 、最高裁判所が憲法適合性についての判断をするか否か及びその時期はいずれも不確かであり、当該法律の執行により生じた被害に係る損害賠償請求権の存続期間が極めて不安定なものとなるから、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図して、一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めた除斥期間の規定の趣旨に明らかに反するものである。 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約(以下「拷問等禁止条約」という。)14条1項は、拷問に当たる行為の被害者の救済を受ける権利について、時効ないし除斥期間の規定の適用が当然に否定されることを規定するものではなく、拷問禁止委員会一般的意見及び総括所見が、日本に対して法的拘束力を有するものでもないから、本件に除斥期間の規定を適用することは拷問等禁止条約14条1項に抵触しない。 ウィーン条約法条約(以下「条約法条約」という。)28条は、条約不遡及の原則を定めており、拷問等禁止条約には遡及適用を認める明文の規定はなく、市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)(以 下「自由権規約」という。)、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)(以下「社会権規約」という。)、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下「女子差別撤廃条約」という。)、障害者権利条約にも、遡及適用を認める明文の規定はないから、条約の効力が生じる前に行われた本件優生手術の実施に係る国の加害行為に関し、日本を拘束しない。 本件に除斥期間の規定を適用することは、国際慣習法に抵触しない。 国際人権法の重大な違反及び国際人道法の深刻な違反の被害者のための救済及び賠償の権利に関する基本原則及びガイドライン(以下「基本原則及びガイドライン」と 定を適用することは、国際慣習法に抵触しない。 国際人権法の重大な違反及び国際人道法の深刻な違反の被害者のための救済及び賠償の権利に関する基本原則及びガイドライン(以下「基本原則及びガイドライン」という。)の原則6は「国際法上の犯罪を構成する国際人権法の重大な違反及び国際人道法の深刻な違反に対しては、時効は適用されない」と規定しているが、原則6は、その策定経緯、時効不適用条約の締約国が少数にとどまっていることなどに照らし、国際慣習法として確立していないことは明らかである。 本件に国賠法4条、民法724条後段の規定を適用することが憲法17条の趣旨に反しないこと憲法17条は、国又は公共団体が公務員の行為による不法行為責任を負うことを原則とした規定であり、当該行為の態様やその違法性の強弱等の個別事情に応じて異なる規律を設けることまでを要請するものではなく、国賠法4条、民法724条後段は、国賠法1条、2条及び4条という一連の規律と併せて全体として一つの国家賠償制度を構成しているのであって、このような国家賠償制度の措定は憲法17条の要請を満たすものであり、国賠法4条、民法724条後段の規定は、憲法17条に違反しない。 仮に、国賠法4条、民法724条後段が国賠法に基づく損害賠償請求権の行使を制限するものであると解されるとしても、その目的の正当性、手段の合理性に照らせば、合理的な制約であり、これらの規定は、憲法17条に反 しない。そして、国賠法4条、民法724条後段は、優生手術を受けたことによりその者が取得したとする損害賠償請求権についても、当然に適用が予定されているといえる。 【控訴人らの主張】 総論主位的違法行為①から④は、被控訴人による一連一体の継続的不法行為であり、不法行為が継続しているか についても、当然に適用が予定されているといえる。 【控訴人らの主張】 総論主位的違法行為①から④は、被控訴人による一連一体の継続的不法行為であり、不法行為が継続しているから、除斥期間の起算点が到来していない。 仮に、主位的違法行為①から③が一連の継続的不法行為である場合又は主位的違法行為③が不法行為である場合には、平成8年法改正以降も、客観的に権利行使が可能になる程度に不法性が顕在化していない間、あるいは、社会通念上提訴が極めて困難だったことが明らかな間は除斥期間の起算点が到来せず、仮に除斥期間の起算点から20年が経過していたとしても、権利行使を著しく困難とする事由が解消した時から一定期間が経過するまでは、民法724条後段の効果は発生しない。 主位的違法行為①から④が被控訴人による一連一体の不法行為となるものであり除斥期間の起算点が到来していないこと主位的違法行為①から④は、一連一体の継続的不法行為であり、平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置を怠っている違法行為が継続しているから、除斥期間の起算点は到来していない。 仮に主位的違法行為①から③のみが一連の継続的な不法行為であるとしても、除斥期間の起算点が到来しておらず、仮に除斥期間が経過していたとしても民法724条後段が適用されないことア権利行使が困難な間は起算点が到来しないこと不法行為の終了時である平成8年法改正時までは除斥期間は進行しておらず、平成8年法改正後も、除斥期間の起算点は、客観的に権利行使が 可能になる程度に不法性が顕在化した時点及び社会通念上提訴が困難ではなくなったと認められる時点まで到来しない。 客観的に権利行 除斥期間の起算点は、客観的に権利行使が 可能になる程度に不法性が顕在化した時点及び社会通念上提訴が困難ではなくなったと認められる時点まで到来しない。 客観的に権利行使が可能になる程度に不法性が顕在化した時点まで起算点が到来しないこと被控訴人の不法行為は、不法性潜在型の不法行為であるから、除斥期間の起算点は客観的に権利行使が可能になる程度に不法性が顕在化した(不法行為による損害として客観的に認識可能になった)時点である。 本件優生手術は、実施された当時は、旧優生保護法に基づく適法な手術であるとされ、平成8年法改正以降も、被控訴人が当時は適法に行われたもので不法行為ではないと主張し、意図的に不法性を潜在化させ、一般的にも、旧優生保護法の違憲性が議論されることはほとんどなく、ごく近年まで、不法性は顕在化していなかった。 本件優生手術の不法性が客観的に認識可能となった時期は、早くても、日弁連が、平成29年2月16日に「旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶に対する補償等の適切な措置を求める意見書」(以下「平成29年日弁連意見書」という。)を公表し、初めて、社会に向けて旧優生保護法の違憲性と補償の必要性を明確に指摘した時点である。 社会通念上提訴が困難ではなくなったと認められる時点まで起算点が到来しないこと社会通念上提訴が極めて困難な状況においては、除斥期間の起算点は到来しないと解されるべきである。平成8年法改正後も、上記のとおり、本件優生手術の不法性が潜在化したままで、優生思想に基づく差別、偏見の蔓延は全く解消されず、更なる差別を生み出す可能性がある状態が続いていたから、社会通念上、提訴が困難で 法改正後も、上記のとおり、本件優生手術の不法性が潜在化したままで、優生思想に基づく差別、偏見の蔓延は全く解消されず、更なる差別を生み出す可能性がある状態が続いていたから、社会通念上、提訴が困難でなくなったといえるのは、旧優生保護法の甚大な負の影響力を打ち消す法律として、障害を理由と する差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)が成立した平成25年以降であるか、早くとも当時まだ激しい差別偏見が残っていたことが日弁連人権擁護大会における報告書(甲A267)において明らかにされた平成13年頃までは起算点が到来していなかったというべきである。また、平成8年法改正時点で、本件優生手術から20年が経過していたことや、当時、民法724条後段の適用の例外を認めた最高裁平成10年判決及び最高裁平成21年判決はされておらず、被害者の権利行使に極めて大きな法的障害があったことも考慮されるべきである。 イ仮に除斥期間が経過していたとしても、民法724条後段の効果が制限されること 最高裁判所の違憲判決から6か月経過するまで除斥期間の効果が制限されること仮に除斥期間が経過していたとしても、権利行使を不能又は著しく困難とする事情がある場合には、その事由が解消されてから6か月を経過するまでは除斥期間の適用が制限されるものと解すべきである。 本件のように、国策として行われた違憲な行為によって人権が侵害された場合には、正義、公平の理念からすれば、最高裁判所による最終的かつ公権的判断(違憲判決)から6か月以内に被害者が損害賠償請求権を行使したという特段の事情があるときは、民法159条、160条の法意に照らし、民法724条後段の効果が生じないと解すべきであり、本件においては、最高 憲判決)から6か月以内に被害者が損害賠償請求権を行使したという特段の事情があるときは、民法159条、160条の法意に照らし、民法724条後段の効果が生じないと解すべきであり、本件においては、最高裁判所による違憲判断はされていないので、控訴人らの請求にはいずれも民法724条後段の効果は生じない。 国による不法行為を客観的に認識し得た時点から相当期間、除斥期間の効果が制限されること被害者による権利行使を民法724条後段の期間の経過によって排斥 することが著しく正義、公平に反するような特段の事情がある場合には、相当期間その効果を制限するのが相当であり、それが条理にも適うものであるから、優生手術の被害者については、自己の受けた被害が被控訴人による不法行為であることを客観的に認識し得た時から相当期間、除斥期間の効果が制限されると解するべきである。 旧優生保護法の優生手術の実施については、身体拘束や麻酔薬施用、欺罔の手段を用いることが許容されるなど、被害者が旧優生保護法に基づく手術であることを認識し難い構造的な仕組みが構築され、被控訴人による優生政策の積極的な推進により、優生手術対象者に対する偏見、差別が社会に浸透しており、平成8年法改正後においても、被控訴人が当時は適法であった旨の見解を表明していたことなどから、実施された優生手術が被害者の権利を侵害するものであることや違憲性を被害者が認識することができないようになっていた。控訴人らについても、本件優生手術が被控訴人によるものであることや、本件優生手術が控訴人らの権利を侵害する違法、違憲なものであり、被控訴人による不法行為が成立することを認識することができなかった。 控訴人らが、被控訴人による不法行為があったことを客観的に認 生手術が控訴人らの権利を侵害する違法、違憲なものであり、被控訴人による不法行為が成立することを認識することができなかった。 控訴人らが、被控訴人による不法行為があったことを客観的に認識し得た時期は、最高裁判所の違憲判決があった時というべきであるが、一時金支給法の制定時(平成31年4月24日)と考えることにも一定の合理性があり、その場合には除斥期間の猶予期間を5年とすべきである。本訴は、いずれも一時金支給法制定時から5年経過前に提起されているから、除斥期間の効果は制限される。 ウ正義公平の理念により民法724条後段の適用が制限されること本件では、仮に除斥期間が経過していたとしても、正義公平を根拠として、適用を制限すべき特段の事情があるから、民法724条後段の適用は制限されるべきである。 エ消滅時効の援用が制限されること民法724条後段は、そもそも除斥期間ではなく消滅時効を定めた規定と解すべきであり、本件における消滅時効の援用は信義則に反しあるいは権利濫用により制限される。 オ本件に民法724条後段を適用することが違憲であること民法724条後段を国家賠償請求に適用することを定めた国賠法4条は、控訴人らに適用する限りにおいて憲法17条に違反し違憲である。民法724条後段の制度目的自体には正当性があったとしても、本件に適用することは、侵害行為の態様、侵害される法的利益の種類及び侵害の程度、並びに免責又は責任制限の範囲及び程度に照らし、上記制度目的達成のための手段としての合理性、必要性が一切なく、国賠法4条のうち民法724条後段を準用する部分は、控訴人らを含む優生手術被害者に適用する限りにおいて憲法17条に違反する。 本件の控訴人らに対 めの手段としての合理性、必要性が一切なく、国賠法4条のうち民法724条後段を準用する部分は、控訴人らを含む優生手術被害者に適用する限りにおいて憲法17条に違反する。 本件の控訴人らに対する侵害は、国家が違憲な法律に基づき、優生手術という身体の侵襲を伴う行為により、子を作るか作らないかという憲法上保障された自己決定権を永久に剥奪する甚大な人権侵害を生じさせるものである。被控訴人は、本件優生手術後も、旧優生保護法の廃止を怠り、平成8年法改正後も、被害回復措置を検討せず、優生手術が当時は適法であったと主張して損害賠償請求権等の存在を否定する態度をとり続け、平成8年法改正時点で、ほとんどの被害者につき優生手術から20年が経過しており、旧優生保護法の違憲性を指摘する学説もほとんどなく、差別意識が根強く継続していた中で、控訴人ら優生手術被害者による国家賠償請求は著しく困難であり、手術の違法性を訴えることは不可能に近いものであった。したがって、国賠法4条、民法724条後段の適用により控訴人らの損害賠償請求権を消滅させることは、憲法17条に違反する。 カ拷問等禁止条約及び国際慣習法により除斥期間が適用されないこと 除斥期間の適用が拷問等禁止条約に違反すること強制不妊手術は拷問に当たるところ、拷問等禁止条約14条1項の規定並びに拷問禁止委員会の一般的意見及び総括所見(勧告)に照らし、拷問等禁止条約は、締約国に対し、拷問被害者に完全な補償をする義務及び補償を受ける権利を阻害する時効を適用してはならないという義務を課しており、日本は、拷問等禁止条約に留保なく加入してこれらの条約上の義務を負っているから、本件に民法724条後段を適用することは拷問等禁止条約に違反する。 除斥期間の いという義務を課しており、日本は、拷問等禁止条約に留保なく加入してこれらの条約上の義務を負っているから、本件に民法724条後段を適用することは拷問等禁止条約に違反する。 除斥期間の適用が国際慣習法に違反すること日本は、国際人権規約(自由権規約及び社会権規約)、女子差別撤廃条約、拷問等禁止条約、障害者権利条約に加盟、批准しており、これらの条約は、条約上の権利を侵害された被害者の救済を受ける権利を確保することを締約国の義務としている。 また、国連総会において平成17年に採択された基本原則及びガイドラインでは、時効について、「適用される条約又はその他の国際法上の義務に規定されている場合、時効は、国際人権法及び国際人道上の重大な違反であって国際法上の犯罪を構成するものには適用されない」とされており、これは国際慣習法となっている。 強制不妊手術が「拷問」に当たることは、国際人権機関における共通認識となっており、旧優生保護法に基づく強制不妊手術は、拷問に当たる重大な人権侵害であって、「国際人権法の重大な違反であって国際法上の犯罪を構成する」との要件を満たす。 よって、控訴人らの損害賠償請求について民法724条後段を適用することは、国際慣習法に反する。 本件について時間的管轄の制約を受けないこと条約の遵守義務は条約批准後の行為に対して生じるものであるとされ ているが、継続的侵害に対しては、加害行為が条約締結前にされていたとしても、その被害は条約締結後回復されることなしに存在しているのであるから、継続的侵害の法理により条約の適用を認めることができるとされている。 本件においても、控訴人甲1は、不妊手術の癒着を原因として卵巣嚢腫になり、右卵巣摘出手術を受けており、控訴人甲2 のであるから、継続的侵害の法理により条約の適用を認めることができるとされている。 本件においても、控訴人甲1は、不妊手術の癒着を原因として卵巣嚢腫になり、右卵巣摘出手術を受けており、控訴人甲2は、本件優生手術後子宮外妊娠により多大な苦痛を受け、更に本件優生手術及び責任を否定する被控訴人の対応などを原因として心的外傷後ストレス障害と診断されて現在も苦しんでおり、手術自体による身体の不可逆的な被害だけではなく、長く国に被害救済を放置されたことによっても侵害が継続しており、時間的管轄の制約を受けないというべきである。 条約の直接適用又は間接適用により除斥期間の規定の適用が制限されること本件に関係する人権条約の規定は、内容が十分に明確であり、裁判規範として直接適用が可能であると考えられるから、除斥期間を定めた日本の法律の規定を本件に適用することは、人権条約及び国際慣習法に反し、制限される。 仮に直接適用が相当でないとしても、間接適用によって、国賠法4条、民法724条後段は、関連人権条約及び国際慣習法に適合するよう、強制不妊手術という類型の被害については適用されないものと解釈されるべきである。 条約違反の事実及び社会の意識の変化等を意識して民法724条後段の適用の可否が判断されるべきこと控訴人らが主張する、民法724条後段の法的性質、適用制限を含めた内容に関する解釈、憲法17条への適合性などに関する解釈については、条約違反の事実及び社会の意識の変化等を意識して判断されるべき である。 仮に主位的違法行為③のみが被控訴人による不法行為であったとしても、民法724条後段が適用されないこと仮に主位的違法行為③のみが被控訴人による不法行為であったとしても、除斥期間 仮に主位的違法行為③のみが被控訴人による不法行為であったとしても、民法724条後段が適用されないこと仮に主位的違法行為③のみが被控訴人による不法行為であったとしても、除斥期間の起算点、民法724条後段の適用制限、本件に民法724条後段を適用することの違憲性、拷問等禁止条約及び国際慣習法への違反については、主位的違法行為①から③が一連一体の継続的不法行為となる場合について述べたとおりであり、控訴人らの被控訴人に対する損害賠償請求権は消滅していない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 旧優生保護法制定に至る経緯ア旧優生保護法の可決、成立旧優生保護法は、昭和23年、第2回国会で、参議院において、議員の発議により法案が提出され、同年6月23日、参議院本会議において可決され、同月28日、衆議院本会議において可決されて成立した。(甲A36から41)イ議員からの提案理由要旨の説明昭和23年6月23日に参議院本会議においてされた議員からの提案理由要旨の説明では、産児制限が必要とされる社会情勢の中で、「子供の将来を考えるような比較的優秀な階級の方のみが産児制限をいたしまして、無自覚者や低能者などが行いません結果、国民素質の低下すなわち民族の逆淘汰を起こすおそれがある」こと、「先天性の遺伝病者の出生を抑制するということが民族の逆淘汰を防止する上から」必要であることが説明された(甲A38)。 ウ旧優生保護法1条(法律の目的)の意義旧優生保護法1条の「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことの意義について、「解詳改正優生保護法」(法務省刑事局参事官著、昭和27年)では、「広く 法1条(法律の目的)の意義旧優生保護法1条の「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことの意義について、「解詳改正優生保護法」(法務省刑事局参事官著、昭和27年)では、「広く一般に承認されている優生学の原理に基づいて、それによって「劣悪な素質を受け継いで生まれることが確実であるとされる」ような、子孫の出生を極力防止することを意味する」とされていた(甲A33)。 旧優生保護法施行後の優生手術の実施件数ア全国における実施件数旧優生保護法施行後の全国における旧優生保護法4条の審査を要件とする優生手術(以下「旧優生保護法4条の優生手術」という。)及び旧優生保護法12条の精神病者等の優生手術(以下「旧優生保護法12条の優生手術」という。)の実施件数は次のとおりであった(甲A4、乙A18)。 ① 旧優生保護法4条の優生手術総数は1万4609件であり、昭和24年の130件から始まり、昭和30年が1260件と最多で、以降、徐々に減少したが、昭和38年までは各年500件を超え、その後も昭和47年までは各年100件を超えており、昭和57年及び昭和59年以降は各年10件未満となって、平成元年に2件実施されたのが最後である。 ② 旧優生保護法12条の優生手術総数は1909件であり、昭和27年の46件から始まり、昭和29年が160件と最多で、以降、徐々に減少したが、昭和49年までは各年50件を超え、昭和58年以降10件未満となって、平成2年及び平成3年は実施されず、平成4年に1件実施されたのが最後である。 イ宮城県における実施件数旧優生保護法施行後の宮城県における優生手術の実施件数は次のとおり であった(甲A4、乙A18)。ただし、昭和27年及び昭和28年の件数 が最後である。 イ宮城県における実施件数旧優生保護法施行後の宮城県における優生手術の実施件数は次のとおり であった(甲A4、乙A18)。ただし、昭和27年及び昭和28年の件数は把握されていないため0件として計算されている。 ① 旧優生保護法4条の優生手術総数は1355件であり、昭和24年の6件から始まり、昭和40年が128件と最多で、その後も昭和47年までは各年50件を超えていたが、昭和48年以降10件未満となり、昭和52年、昭和54年及び昭和55年は実施されておらず、昭和58年に3件実施されたのが最後である。 ② 旧優生保護法12条の優生手術総数は51件であり、昭和35年の3件から始まり、10件を超えたのは、昭和48年の18件と昭和49年の16件のみで、実施されていない年が複数あり、昭和56年に1件実施されたのが最後である。 優生手術実施に関する旧優生保護法の解釈、通知等ア法務府は、昭和24年、厚生省公衆衛生局長宛てに、優生手術実施に関する旧優生保護法の解釈について、「強制優生手術実施の手段について」と題して、「優生保護法第10条の規定による強制優生手術は、本人の意思に反しても、これを実施することができる。この場合身体の拘束、麻酔薬施用等の手段を用いることは真に止むを得ない事情のある場合に限り且つ必要の最小限度に止めなければならない。」と回答した(甲A173)。 イこれを受けて、厚生省公衆衛生局長は、昭和24年、各都道府県知事宛てに上記法務府の回答を通知し、同年の優生保護法逐条通牒においても、上記法務府の回答に沿った解釈がされていた(甲A174、277)。 ウ厚生省事務次官は、昭和28年、各都道府県知事宛てに、「審査を要件とする優生手術は、本人の意見に反 生保護法逐条通牒においても、上記法務府の回答に沿った解釈がされていた(甲A174、277)。 ウ厚生省事務次官は、昭和28年、各都道府県知事宛てに、「審査を要件とする優生手術は、本人の意見に反してもこれを行うことができるものであること。(中略)この場合に許される強制の方法は、手術に当って必要な最小限度のものでなければならないので、なるべく有形力の行使はつつ しまなければならないが、それぞれの具体的な場合に応じては、真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があると解しても差し支えないこと。」を通知した(甲A3)。 旧優生保護法施行後の国会での議論の状況及び厚生省の施策の実施状況ア国会では、旧優生保護法施行後、昭和30年代にかけて、国会での質疑において、議員が厚生大臣に対し、旧優生保護法の優生手術の積極的な実施及び予算の確保を促すことがあり、昭和24年に、衆議院本会議において、優生思想及び優生保護法の普及をはかることを含む人口問題に関する決議がされ、昭和27年には、優生手術の対象を拡大する昭和27年法改正がされた(甲A42ないし46、171、175、176、262)。 イ旧優生保護法施行後、昭和30年代にかけて、厚生省は、各都道府県に対し、実施計画及び予算上の件数に達するように優生手術を実施するよう通知した(甲A179、266)。 昭和37年には、厚生省の人口問題審議会において、国民の遺伝素質の向上や、そのための特別の専門的指導者を養成して、全国ネットワークに配置することなどを含む「人口資質向上対策に関する決議」がされた(甲A181)。 昭和46年版厚生白書では、「遺伝による先天異常を防ごう」との項目で「学校教育や社会教育においても、また婚 クに配置することなどを含む「人口資質向上対策に関する決議」がされた(甲A181)。 昭和46年版厚生白書では、「遺伝による先天異常を防ごう」との項目で「学校教育や社会教育においても、また婚前学級においてもあらゆる努力を通じて遺伝をはじめ、生理、解剖、優性結婚、家族計画の意義などについてじゆうぶん指導を行なう必要がある。また、精神衛生センター、優性保護相談所、結婚相談所などを活用して専門家による相談を受けさせるよう指導することが望ましい。」との記載がされていた(甲A183)。 都道府県の動向各都道府県においては、旧優生保護法に基づき、都道府県優生保護審査会 及び優生保護相談所の設置(4章、5章)、優生手術に関する適否の審査(16条)、優生保護相談所における、優生保護の見地から結婚の相談や必要な知識の普及向上(20条)などの施策が実施されるとともに、各都道府県の優生保護審査会又は関連部署において、優生保護の考え方の普及に努め、宮城県においても、優生保護相談所、民生労働部母子課などにおいて、普及の取組がされていた(甲A18、27、28、263の1及び2、270)。 学習指導要領、教科書における優生に関する記載ア高等学校学習指導要領高等学校学習指導要領の保健体育に、昭和31年度改訂版では、「国民生活の合理化と国民保健」の項目で「国民優生、環境改善、栄養改善などを取り扱う。」との記載があり、昭和35年版では、「母子衛生・家族計画・国民優生」の項目があった(甲A58の1、184、240)。 その後、昭和35年版を改訂した昭和45年の学習指導要領では、「家庭生活と健康」の項目で「結婚と優生」が挙げられており、「高等学校学習指導要領解説」には、「結婚と優生」について、「優生については、優生の意義 和35年版を改訂した昭和45年の学習指導要領では、「家庭生活と健康」の項目で「結婚と優生」が挙げられており、「高等学校学習指導要領解説」には、「結婚と優生」について、「優生については、優生の意義や優生上問題となる疾病及び血族結婚などについて理解させる。 また、心身に特別な異常をもつ子孫の出生を防止し、母性の生命や健康を保護することを目的とした優生保護法にふれ、これに基づいて行われている優生手術や人工妊娠中絶の現状を知らせる。」との記載がされていた(甲A58の2、242)。 昭和45年版を改訂した昭和53年の学習指導要領では「結婚と優生」の記載がなくなり、「健康な家庭生活」が記載された(甲A246)。 イ教科書の記載 昭和45年から昭和47年にかけての、高等学校の保健体育の教科書では、「国民優生」の項目で次のような記載がされているものがあった。 「国民優生とは、優生学にもとづいて国民の質の向上に努めることで ある。そのために、劣悪な遺伝素質をもっている人びとに対しては、できるかぎり受胎調節をすすめ、必要な場合は、優生保護法により、受胎・出産を制限することができる。また、国民優生思想の普及により、人びとがすすんで国民優生政策に協力し、劣悪な遺伝病を防ぐことがのぞましい。」(昭和45年。甲A59の3)「遺伝によって次の世代に受けつがれる疾患も少なくない。劣悪な遺伝は社会生活を乱し、国民の健康の水準を低下させる。遺伝によっておこる疾患や機能の異常は多いが、特に精神病・精神薄弱・血友病・遺伝性奇形などは、遺伝病としてよく知られている。劣悪な遺伝を除去し、健全な社会を築くために優生保護法があり、本人あるいは親族の同意によって優生手術や人工妊娠中絶が行われることもある。」(昭和47年。甲A59 どは、遺伝病としてよく知られている。劣悪な遺伝を除去し、健全な社会を築くために優生保護法があり、本人あるいは親族の同意によって優生手術や人工妊娠中絶が行われることもある。」(昭和47年。甲A59の7)「悪質の遺伝によって精神病者や犯罪者を出した例もある。幸福な家庭を築くには、結婚に対する正しい認識をもち、結婚に際しては、信頼する医師にみてもらい、健康診断書を取りかわすのがよい。これによって、遺伝性疾病や性病などによる疾病異常を予防できる。」(昭和47年。甲A59の8)「優生結婚の立場からは自らの家系の遺伝病患者の有無を確かめるとともに、相手の家系についてもこのことをよく確かめることが先決問題である。家計の調査範囲は両親・兄弟姉妹はもとより、祖父母・叔父叔母・従兄弟までおよぶことが望ましい。もちろん一方の家系に遺伝病があっても、やむを得ない場合には法の規定によって優生手術ができるので、専門家に相談することがよい。」(昭和47年。甲A59の11) 昭和54年の高等学校の保健体育の教科書では、「結婚と優生」の項目で次のような記載がされているものがあった。 「優生とは、遺伝学の知識にもとづいて、国民の資質が低下することを防ぐとともに、これを向上させることである。(中略)たとえば、精神的、身体的に望ましくない因子を遺伝するおそれのある場合は、優生手術や妊娠中絶を行うことができる。」「優生保護法(1948年)は、優生の見地から望ましくない子孫の出生を防ぐとともに、母性を保護するために定められた法律である。」(甲A248)「結婚に際して、遺伝のことを忘れてはならない。遺伝性の病気や不良な遺伝的素質をもっている人の増加を防ぎ、健康で優秀な素質をもっている人を増加させて国民全体の素質を向上させることを国民 248)「結婚に際して、遺伝のことを忘れてはならない。遺伝性の病気や不良な遺伝的素質をもっている人の増加を防ぎ、健康で優秀な素質をもっている人を増加させて国民全体の素質を向上させることを国民優生という。そのために、不良な遺伝的素質をもっている人に対してできるかぎり受胎調節をすすめ、必要な場合は、優生保護法により優生手術を行うことができる。」「国民優生思想の普及をはかることによって、国民がすすんで遺伝病を防ぐために協力することがたいせつである。」(甲A249)「次の世代の子どもたちに、心身ともに健全な形質が受けつがれていくように配慮することを優生という。生まれてくる子どもの体型や性格などは、両親の形質を受けついでいることが多いが、疾病や形質の異常、特に顕著な遺伝性の疾患がある場合には、たんに、その結婚を回避すればよいというのではなく、遺伝相談などを受けて、十分な知識と適切な準備や対策を考えておくことがたいせつである。たとえば、妊娠を避けるように配慮することなども優生や母性保護のうえからも必要なことである。」「優生上の見地から、次の世代の子どもたちの健康や疾病の対策が考えられなくてはならないが、わが国では、1948年に優生保護法が制定され、優生手術や人工妊娠中絶が認められている。」(甲A250)「結婚しようとする場合には、(中略)さらに重要なことは、優生 上問題になる点がないかどうかということである。それには、信頼できる医師に相談し、健康の程度、アルコール中毒や性病、遺伝性疾病の有無などを検査してもらい、健康診断書をとりかわしてから結婚生活にはいるのがよい方法である。」「われわれの子孫に、不良な遺伝子を残さないようにすることを優生という。」「国でも優生の問題を重視し、その対策として1948年に優生保護法を制 とりかわしてから結婚生活にはいるのがよい方法である。」「われわれの子孫に、不良な遺伝子を残さないようにすることを優生という。」「国でも優生の問題を重視し、その対策として1948年に優生保護法を制定し、優生上問題になる疾病のある場合には妊娠中絶や優生手術を認めている。このようにして、母体の生命・健康を保護するとともに、国民全体の遺伝素質を改善し、向上させるために、国民優生に力をそそいでいる。」(甲A252)「子孫のなかに遺伝的なよい素質を伝え、疾患を伝えないようにすることを優生という。」「わが国ではこのような遺伝性素質や疾患が子孫に伝わることを防止する目的と、母体の生命、健康の保護を目的として、優生保護法が1948年に制定された。これにより、とくに悪質な遺伝性疾患を持ったり、出産により母体に危険がある場合、暴行や脅迫によって妊娠してしまった場合において合法的に優生手術や人工妊娠中絶ができることになっている。(中略)しかし、国民優生を強調するあまり、身体的・精神的に障害をもつ人の人権が侵される傾向や、障害をもって生まれてきた子どもの生命を軽視する社会的風潮も指摘されるようになった。そのため、優生保護法を再検討しようとする傾向も強まってきている。」(甲A253)「結婚にあたっては、(中略)遺伝による疾病異常の有無の確認も必要である。」「優生とは、つぎの世代の子どもたちが、遺伝上の問題で不利益を生じないように配慮することをいう。特定の疾病や形質が遺伝によって、つぎの世代にうけつがれることがあるが、そ の場合、遺伝の影響が残らないように結婚の相手を選んだり、妊娠をさけたりすることがある。しかし、これは本人どうしの責任と決断にまかせられることがらである。かつて、ナチス・ドイツがゲルマン民族の純血を保つという名目で本 残らないように結婚の相手を選んだり、妊娠をさけたりすることがある。しかし、これは本人どうしの責任と決断にまかせられることがらである。かつて、ナチス・ドイツがゲルマン民族の純血を保つという名目で本人の意志とかかわりなく強制的優生政策をとったということが伝えられた。また、わが国でも、かつて国民優生法(1941年)という法律があり、これによって、社会に混乱をひきおこすという理由で精神障害者や伝染病患者の一部に対して強制的に優生手術を行うことができるようなしくみになっていた。」(甲A255) 平成5年発行の「高等保健体育」では、「健康な家庭生活」として「家庭生活と健康問題」及び「結婚と健康」の各項目が設けられていたが、優生に関する記載はない(甲A257)。 旧優生保護法の見直しをめぐる動向ア旧優生保護法については、昭和27年法改正以降、昭和47年及び昭和48年に、人工妊娠中絶に関する改正法案が国会に提出され、廃案になったことがあった(甲A187、188、乙A21)が、旧優生保護法1条や4条、12条など優生手術に関する規定の見直しを内容とする改正法案が提出されたことはなかった。 イ他方で、厚生省や自由民主党内においては、旧優生保護法の優生手術に関する規定の見直しに関する検討が行われていた。 自由民主党においては、昭和58年、政務調査会社会部会に優生保護法等検討小委員会が設けられ、同年5月、同小委員会は「優生保護法の取扱いについて」と題する中間的な報告を取りまとめ、旧優生保護法1条の「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」との表現や、3条1項に掲げる適応事由及び別表に掲げる遺伝性疾患等を具体例に挙げ、優生保護法の立法趣旨の根底に人口政策や民族の逆淘汰の防止といった思想が存在 から不良な子孫の出生を防止する」との表現や、3条1項に掲げる適応事由及び別表に掲げる遺伝性疾患等を具体例に挙げ、優生保護法の立法趣旨の根底に人口政策や民族の逆淘汰の防止といった思想が存在 し、それが今日の社会思想と医学水準等に照らして、法の基本面に問題があるものとの認識を示した(甲A23、乙A21)。 厚生省では、保健医療局精神保健課(精神保健課)が、昭和61年10月、旧優生保護法に関して、近年の医学の飛躍的な進歩あるいは社会情勢の変化に伴い、各方面から問題点が指摘されていることを踏まえ、もし全面的な旧優生保護法の改正を行うとすればどのような手順となるかについて、予算面を含めた5か年計画の概略を検討した(乙A22)。 厚生大臣の諮問機関である公衆衛生審議会優生保護部会では、昭和63年3月、優生保護法をめぐる諸問題として、旧優生保護法1条の優生上の見地、不良な子孫の定義、現在における優生手術の必要性、特に年間10件前後と少ない医師の申請による手術の必要性、人道的な問題、旧優生保護法別表の遺伝性疾患の適切性などについて議論がされた(乙A21)。 厚生省内で、昭和63年8月頃、旧優生保護法について検討が行われ、各規定につき、優生思想の排除、強制手術の是非などを検討事項とする資料が作成された(甲A25の1、乙A24)。また、児童家庭局母子衛生課において、昭和63年8月ないし9月頃、精神保健課が検討していた旧優生保護法の改正法案について、検討が行われた(甲A25の2ないし4、乙A25ないし27)。 平成8年法改正前の改正要望等ア DPI(障害者インターナショナル)女性障害者ネットワークは、平成7年2月18日付けで、厚生大臣に対し、「優生保護法、刑法堕胎罪の撤廃を求める要望書」を 平成8年法改正前の改正要望等ア DPI(障害者インターナショナル)女性障害者ネットワークは、平成7年2月18日付けで、厚生大臣に対し、「優生保護法、刑法堕胎罪の撤廃を求める要望書」を提出し、旧優生保護法をただちに撤廃すること、優生思想をなくすためのキャンペーンをマスコミ等を通じて行うことなどを要望した(甲A87)。 イ日本脳性マヒ者協会全国青い芝の会総連合会は、平成7年、厚生省精神保健課宛てに、「「優生保護法」撤廃に向けての再度交渉申し入れ書」を 提出し、旧優生保護法に代わる新たな中絶法を立法するための検討委員会を設置することなどを求めた(甲A199)。 ウ日本障害者協議会は、平成8年6月3日付けで、各国会議員に対し、「優生保護法の見直しについての要望書」を提出し、旧優生保護法の法律名から「優生」を、法律の目的(1条)から「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」をそれぞれ削除すること、3条の医師の認定による優生手術のうち障害者等であることによる要件を削除すること、障害者等に対する強制的な優生手術の規定を廃止することなどを要望した(甲A91)。 平成8年法改正ア平成8年法改正は、衆議院厚生委員長の発議により法案が提案され、同年6月14日、衆議院本会議で可決され、同月18日、参議院本会議で可決し成立した(乙A20)。 イ平成8年法改正の審議経過において、衆議院厚生委員会では、衆議院厚生委員長から、各会派間において協議され意見の一致を見たため、委員長において草案を作成したこと、法案は、旧優生保護法の目的その他の規定のうち不良の子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が障害者に対する差別となっていること等にかんがみ、所要の規定を整備しようとするものである したこと、法案は、旧優生保護法の目的その他の規定のうち不良の子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が障害者に対する差別となっていること等にかんがみ、所要の規定を整備しようとするものであること及び法案の骨子について説明がされた後、直ちに採決され、可決された。衆議院本会議においても、衆議院厚生委員長による厚生委員会における審査経過及び結果並びに趣旨の説明後、直ちに採決され、可決された。 参議院厚生委員会では、法案提出者の衆議院厚生委員長による趣旨説明の後、直ちに採決され、可決され、次のとおり附帯決議がされた。 「政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。 一、この法律の改正を機会に、国連の国際人口開発会議で採択された行動計画及び第四回世界女性会議で採択された行動綱領を踏まえ、リ プロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康・権利)の観点から、女性の健康等に関わる施策に総合的な検討を加え、適切な措置を講ずること。」参議院本会議では、参議院厚生委員長による厚生委員会における審査経過及び結果並びに趣旨の説明、附帯決議の説明の後、直ちに採決され、可決され、法案が成立した。 (甲A17、201、乙A28ないし31)ウ公衆衛生審議会優生保護部会においては、平成8年6月25日、精神保健課長から、平成8年法改正の経緯に関する説明として、旧優生保護法については、昭和47年から58年にかけて議論がされたが手を付けられなかったこと、昭和56年から国連障害者の10年が始まり、障害者問題について国民の関心が高まってきたこと、障害者基本法の制定や精神保健法改正がされ、精神障害者を病気の対象ではなく福祉の対象としても見るようになり、精神障害者の方々から精神障害 年が始まり、障害者問題について国民の関心が高まってきたこと、障害者基本法の制定や精神保健法改正がされ、精神障害者を病気の対象ではなく福祉の対象としても見るようになり、精神障害者の方々から精神障害者を差別している旧優生保護法の改正を求める要望が平成7年頃から大きくなってきたこと、平成6年にカイロで行われた国連の人口開発会議で日本の旧優生保護法の問題が取り上げられ、平成7年に北京で行われた女性会議においても、改正すべきとの強い意向が示されたこと、平成7年秋くらいから、各政党間で勉強会が始まり、平成8年5月連休後、急遽、議員立法により法案が提出され可決されたことなどが説明された(甲A117、乙A20)。 平成8年法改正後の動向ア謝罪を求める会平成9年、スウェーデンをはじめとする北欧諸国で1976年まで法律に基づく強制不妊手術が行われてきたことを指摘する新聞報道をきっかけに、日本においても「強制不妊手術に対する謝罪を求める会」(平成11年に「優生手術に対する謝罪を求める会」に名称変更。以下「謝罪を求 める会」という。)が結成され、平成9年9月、厚生省に対し謝罪と補償を求める要望書を提出し、①旧優生保護法の下で強制的に不妊手術をされた人、及び「不良な生命」と規定されたことで誇りと尊厳を奪われた全ての障害者に謝罪し、補償を検討すること、②旧優生保護法が、いかに障害者の基本的人権を侵害してきたかを明らかにするため、歴史的事実(被害者の実態)を検証すること、③障害をもつ女性への違法な子宮摘出について、早急に調査を行い、今後二度と繰り返させない対策及び被害者を総合的に救済する対策を講じることなどを要望した(甲A122、123)。 イ平成16年厚生労働大臣答弁平成16年3月24日、参議院厚 い、今後二度と繰り返させない対策及び被害者を総合的に救済する対策を講じることなどを要望した(甲A122、123)。 イ平成16年厚生労働大臣答弁平成16年3月24日、参議院厚生労働委員会において、坂口力厚生労働大臣は、旧優生保護法に関する議員からの質問に対し、「過去にどういったケースがあったのかといったことにつきましての総合的なことというのは私も存じ上げておりませんけれども、こういう法律がありました以上、それの対象者になった人があることだけは紛れもない事実だというふうに思っております。そういう人たちが今はどういう立場にいるのかというところまで我々も把握をいたしておりませんけれども、中にはもう亡くなった方もおありになるし、いろいろのことがあるんだろうというふうに思っておりますが、こういう歴史的な経緯がこの中にあったということだけは、これはもう、ほかに言いようのない、これはもう事実でございますから、そうした事実を今後どうしていくかということは、今後私たちも考えていきたいと思っております。」と答弁した(甲A16)。 ウ平成29年日弁連意見書日弁連は、平成29年2月16日、「旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶に対する補償等の適切な措置を求める意見書」(平成29年日弁連意見書)を公表した。 平成29年日弁連意見書は、要旨、①国が、旧優生保護法下において実 施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶が、対象者の自己決定権及びリプロダクティブ・ヘルス/ライツを侵害し、遺伝性疾患、ハンセン病、精神障がい等を理由とする差別であったことを認め、被害者に対する謝罪、補償等の適切な措置を速やかに実施すべきであること、②国が、旧優生保護法下におい ヘルス/ライツを侵害し、遺伝性疾患、ハンセン病、精神障がい等を理由とする差別であったことを認め、被害者に対する謝罪、補償等の適切な措置を速やかに実施すべきであること、②国が、旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工妊娠中絶に関連する資料を保全し、これら優生手術及び人工妊娠中絶に関する実態調査を速やかに行うべきであることを述べるものである。 (甲A5) 被控訴人における障害者関連政策の動向ア身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)は、昭和59年法律第63号による改正により、「すべて身体障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」(2条2項)との規定が追加された。(公知の事実)イ精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)は、題名が、昭和62年法律第98号により「精神衛生法」から「精神保健法」に改められ、平成7年法律第94号により「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改められた。また、1条(目的)について、上記昭和62年の改正により、精神障害者等の福祉の増進を図ることが明示され、上記平成7年の改正により、精神障害者の自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うことが明示された。(公知の事実)ウ障害者基本法(昭和45年法律第84号)は、平成5年法律第94号により、題名が「心身障害者対策基本法」から「障害者基本法」に改められ、1条(目的)で、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することとし、3条(基本的理念)で、すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その 合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することとし、3条(基本的理念)で、すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機 会が与えられることが規定された。さらに、平成16年法律第80号による改正では、3条に、何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないことが加えられ、平成23年法律第90号による改正で、上記差別の禁止を、4条(差別の禁止)とし、さらに、その2項において、社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって1項(差別することその他の権利利益を侵害する行為の禁止)の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないことが規定された。(公知の事実)エ平成25年、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。障害者差別解消法)が制定され、1条(目的)において、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とするとされている。 国際条約ア国際人権規約経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)(社会権規約)並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)(自由権規約)は、昭和41年の国連総会にお ア国際人権規約経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)(社会権規約)並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)(自由権規約)は、昭和41年の国連総会において採択され、昭和51年に発効したものであり、日本は昭和54年に批准した。 社会権規約10条は、できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養 児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきであることを、締約国が認めるとしている。 自由権規約は、2条で、自由権規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保することを、締約国が約束するとされ、7条で、何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないとし、17条で、何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されないとし、26条で、すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有するとされている。 (甲A137、141、公知の事実)イ女子差別撤廃条約女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)は、昭和54年の国連総会において採択、昭和56年に発効し、日本は昭和60年に批准した。 女子差別撤廃条約2条は、締約国が、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、このため、女子の権利の法的な保護を男子と 約2条は、締約国が、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、このため、女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある自国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保すること、女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義務に従って行動することを確保すること、女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとることを約束するとしている。 (甲A143、公知の事実)ウ拷問等禁止条約拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約(拷問等禁止条約)は、昭和59年の国連総会において採択、昭和62年に発効し、日本は平成11年に加入した。 拷問等禁止条約1条は、「拷問」とは、「身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。」としている。 14条1項は、締約国は、拷問に当たる行為の被害者が救済を受けること及び公正かつ適正な賠償を受ける強制執行可能な権利を有すること(できる限り 黙認の下に行われるものをいう。」としている。 14条1項は、締約国は、拷問に当たる行為の被害者が救済を受けること及び公正かつ適正な賠償を受ける強制執行可能な権利を有すること(できる限り十分なリハビリテーションに必要な手段が与えられることを含む。)を自国の法制において確保するとしている。 (甲A147、公知の事実)エ障害者権利条約障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)は、平成18年に国連総会において採択、平成20年に発効し、日本は平成26年に批准した。 障害者権利条約15条は、いかなる者も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないとし、17条は、全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有するとし、23条は、締約国が、婚姻をすることができる年齢の全ての障害者が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づい て婚姻をし、かつ、家族を形成する権利を認められることや、障害者が子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利を認められることなどの確保を目的として、他の者との平等を基礎として、婚姻、家族、親子関係及び個人的な関係に係る全ての事項に関し、障害者に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとるとしている。 (甲A151、公知の事実)オ基本原則及びガイドライン国際人権法の重大な違反及び国際人道法の深刻な違反の被害者のための救済及び賠償の権利に関する基本原則及びガイドライン(基本原則及びガイドライン)は、平成17年に国連総会において採択された。 基本原則及びガイドライン4章の6(原則6)は、「適用可能な条約において規定されている場合、 原則及びガイドライン(基本原則及びガイドライン)は、平成17年に国連総会において採択された。 基本原則及びガイドライン4章の6(原則6)は、「適用可能な条約において規定されている場合、あるいは、他の国際的な法的義務に含まれている場合、国際法上の犯罪を構成する国際人権法の重大な違反及び国際人道法の深刻な違反に対しては、時効は適用されない。」としている。 原則6について、第1回諮問会議において、スウェーデンが、戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約(以下「時効不適用条約」という。)が44か国しか締結されていないことを根拠に、それらの規定の正当性について疑問を呈し、これを理由として、国際刑事裁判所(ICC)の管轄権の下にある犯罪を除けば、当該規定は行き過ぎたものであるとし、アメリカ合衆国の代表がスウェーデンのコメント及び懸念を共有し、日本の代表は、一定の犯罪について、いくつかの条約が時効の不適用を規定していることは事実であるものの、そのような条約の締約国数は非常に少なく、当該原則(原則6及び7)は、依然として国際慣習法の一部とはなっていないとの懸念を示した。 第3回諮問会議では、いくつかの代表団が、原則6に含まれる義務の根拠について疑問を呈し、これを受けて、時効不適用条約は普遍的に締結さ れたものでないものの、この問題に関する既存の国際法を広く反映するものであると留意され、いくつかの代表団によって提起された懸念にさらに対応するため、原則6に、「適用可能な条約において規定されている場合、あるいは、他の国際的な法的義務に含まれている場合」という限定句を再挿入することが提案された。 (乙A11ないし13)カ戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約 いは、他の国際的な法的義務に含まれている場合」という限定句を再挿入することが提案された。 (乙A11ないし13)カ戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約(時効不適用条約)は、昭和43年に国連総会において採択、昭和45年に発効し、令和3年2月時点において、締約国は56か国であり、日本は締約国ではない。(乙A14)キウィーン条約法条約ウィーン条約法条約(条約法条約)は、昭和55年に発効し、昭和56年に日本について効力が発生した条約であるところ、条約法条約28条(旧24条)(条約の不遡及)は、条約は、別段の意図が条約自体から明らかである場合及びこの意図が他の方法によって確認される場合を除くほか、条約の効力が当事国について生ずる日前に行われた行為、同日前に生じた事実又は同日前に消滅した事態に関し、当該当事国を拘束しないとしている。(乙A15、公知の事実) 国際機関の勧告等ア国際人権規約委員会の勧告等市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)人権委員会(国際人権規約委員会)は、平成10年11月19日、日本国政府の第4回報告について、「委員会は、障害を持つ女性の強制不妊の廃止を認識する一方、法律が強制不妊の対象となった人達の補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置がとられることを勧告する。」とす る最終見解を採択した(甲A7)。 上記勧告について、平成16年11月9日、参議院厚生労働委員会において、議員から質問がされ、政府参考人(厚生労働省政策統括官)が、優生手術で強制的に不妊手術を受けた者について、旧優生保護法に基づき、適正に適法に処理をした件であるため、特 参議院厚生労働委員会において、議員から質問がされ、政府参考人(厚生労働省政策統括官)が、優生手術で強制的に不妊手術を受けた者について、旧優生保護法に基づき、適正に適法に処理をした件であるため、特段の補償を特に考えていない旨を答弁している(甲A92)。 日本国政府は、平成18年12月、「市民的及び政治的権利に関する国際規約第40条1(b)に基づく第5回政府報告」において、「同法〔旧優生保護法〕は、優生保護法の一部を改正する法律(1996年法律第105号)により改正され、本人の同意を得ない優生手術に係る規定等は削除されたところであるが、同法による改正前の旧優生保護法に基づき適法に行われた手術については、過去にさかのぼって補償することは考えていない。」との報告を行った(甲A8)。 国際人権規約委員会は、平成20年10月30日、上記報告を含む日本国政府の第5回報告について、「委員会は、締約国の第4回定期審査後の見解で発出された勧告の多くが履行されていないことを懸念する。締約国は、委員会によって採択された今回の勧告及び前回の最終見解を実行するべきである。」とする最終見解を採択した(甲A10)。 イ女子差別撤廃委員会女子差別撤廃委員会は、平成28年3月7日、「日本の第7回及び第8回合同定期報告に関する最終見解」を取りまとめ、「委員会は、締約国が優生保護法に基づき行った女性の強制的な優生手術という形態の過去の侵害の規模について調査を行った上で、加害者を訴追し、有罪の場合は適切な処罰を行うことを勧告する。委員会は、さらに、締約国が強制的な優生手術を受けた全ての被害者に支援の手を差し伸べ、被害者が法的救済を受け、補償とリハビリテーションの措置の提供を受けられるようにするた め、具体的な取組 は、さらに、締約国が強制的な優生手術を受けた全ての被害者に支援の手を差し伸べ、被害者が法的救済を受け、補償とリハビリテーションの措置の提供を受けられるようにするた め、具体的な取組を行うことを勧告する。」とした(甲A15)。 ウ拷問禁止委員会拷問禁止委員会は、平成24年12月13日、締約国による第14条の実施に関する一般的意見を採択し、救済を受ける権利に対する障害に関し、「本条約の締約国は、救済を受ける権利が効果的であることを確保する義務がある。救済を受ける権利の享受を妨げ、14条の効果的な実施を阻む具体的な障害としては、国の不適切な法律、通報及び調査の制度や改善及び救済を求める手続の利用における差別、加害者の身柄を確保するための対策が不適切であること、国の秘密保護に関する法律、救済を受ける権利の確定を妨げる立証責任や手続上の要件、出訴期間、恩赦及び免責、被害者や証人に十分な法的支援や保護措置を提供していないこと、関連する非難、身体的、心理的その他関連する拷問や不当な取扱いの影響などが挙げられるが、それに限定されるものではない。」とした(甲A148)。 拷問禁止委員会は、日本の初回報告を審査し、平成19年5月16日及び18日の会合において、次のとおり結論及び勧告を採択した。(甲A149)「委員会は、拷問及び不当な取扱いに当たる行為に対して時効が適用されることを懸念をもって留意する。委員会は、拷問及び不当な取扱いに当たる行為に時効を適用することは、このような重大な犯罪の捜査、訴追、及び処罰を妨げ得るものであると懸念する。特に、委員会は、第二次世界大戦中に軍の性的奴隷の被害者となったいわゆる「慰安婦」によって提訴された案件が、時効に関連する理由をもって棄却されたことを遺憾とする。」「 得るものであると懸念する。特に、委員会は、第二次世界大戦中に軍の性的奴隷の被害者となったいわゆる「慰安婦」によって提訴された案件が、時効に関連する理由をもって棄却されたことを遺憾とする。」「締約国は、拷問未遂行為及び拷問の共謀又は拷問への加担となるような何人による行為を含め、拷問及び不当な取扱いに当たる行為が時 間の制限なく、捜査、訴追及び処罰の対象となるよう、時効に関する規則及び規定を見直し、それらを条約上の義務に完全に一致させるべきである。」 拷問禁止委員会は、日本の第2回定期報告を審査し、平成25年5月29日の会合において、次のとおり、総括所見を採択した。(甲A150)「被害者が、もって国または公的団体に対して損害賠償を求めることができる国家賠償法第1条にもかかわらず、委員会は、(a) 被害者が、拷問又は不当な取扱い行為に係る救済及び十分な賠償を得るに際して困難に直面しているという報告を受けていること、(b) 法令上の制約や移民についての相互規定のような、補償の権利が制約されていること、(c) 拷問又は不当な取扱いを受けた被害者が請求し、受け取った補償に関する情報が欠如していること(14条)、について引き続き懸念を有している。」「拷問の被害者に対して完全な補償を提供するとの締約国の義務の内容と範囲を明確にした、条約第14条に関する一般的意見第3号(2012年)に関連して、委員会は、締約国に対し、拷問や不当な取扱い行為の被害者が、公平で十分な補償と可能な限り完全なリハビリテーション、更には真実の権利を含む救済の権利を完全に行使できることを確保すべく、そのための努力を強化するよう勧告する。」 日弁連の対応日弁連は、平成13年11月、「女性差別撤廃条約に基づく 更には真実の権利を含む救済の権利を完全に行使できることを確保すべく、そのための努力を強化するよう勧告する。」 日弁連の対応日弁連は、平成13年11月、「女性差別撤廃条約に基づく第4回日本政府報告書に対する日本弁護士連合会の報告書」において、「特に、日本政府は、優生保護法の下で強制的な不妊手術を受けた女性に対して、補償する措置を講じるべきである。」「特に、政府は、規約人権委員会から勧告を受けている優生保護法下の強制不妊手術の被害救済に取り組むべきである。」と し(甲A12)、平成27年3月、「女性差別撤廃条約に基づく第7回及び第8回日本政府報告書に対する日本弁護士連合会の報告書」において、障害をもつ女性の中には旧優生保護法により強制不妊手術の対象とされた人がいるが、これらの人達に対する補償については未だ何らの施策がとられていないことや、平成10年の国際人権規約委員会の勧告につき、今日まで進展していないことなどを指摘した(甲A13)。 日弁連は、平成19年12月、「国際人権(自由権)規約に基づき提出された第5回日本政府報告書に対する日本弁護士連合会報告書」を取りまとめ、「国は、過去に行われたハンセン病患者をはじめとする障害を持つ女性に対する強制不妊措置について、政府としての包括的な調査と補償を実施する計画を、早急に明らかにすべきである。」とした(甲A9)。 スウェーデン及びドイツの対応スウェーデン及びドイツの対応については、原判決18頁5行目から24行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 控訴人らに対する本件優生手術の実施等控訴人らに対する本件優生手術の実施等については、次のとおり補正するほかは、原判決13頁5行目から15頁21行目までに記載のとお を引用する。 控訴人らに対する本件優生手術の実施等控訴人らに対する本件優生手術の実施等については、次のとおり補正するほかは、原判決13頁5行目から15頁21行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)原判決15頁21行目末尾に改行して次のとおり加える。 「控訴人甲2は、平成9年頃、謝罪を求める会が行った被害者向けのホットラインに相談をし、優生保護の問題について活動をするようになり、当初、実名でマスコミの取材に応じ、テレビに出るなどしていたところ、自身や実家、近所に住んでいる親戚が嫌がらせを受けるようになったため、仮名を使用して活動するようになった(甲2B17、控訴人甲2本人(原審))。 控訴人甲2は、平成11年10月頃、謝罪を求める会の者と一緒に、国に謝罪を求めるため、厚生省を訪問し、担当者と面会した(甲2B26、控訴人甲2本人(原審及び当審))。 控訴人甲2は、平成25年頃、弁護士に相談をし、平成27年6月23日、日弁連に対し、人権救済の申立てを行った。これに対し、日弁連人権擁護委員会は、平成29年2月24日、同申立てについて慎重に検討した結果、措置を行うことができないとの結論に至ったこと、調査の過程において、旧優生保護法の被害者が放置されている現状は問題であると認識し、平成29年日弁連意見書を取りまとめ、平成29年2月22日付けで厚生労働大臣に提出したことなどを通知した。(甲A346、甲2B26、控訴人甲2本人(原審及び当審))」 2 争点1(平成8年法改正前後を通じた被控訴人による一連一体の不法行為が成立するか)について 主位的違法行為①から④が一連一体の不法行為であるとの主張について控訴人らは、国会議員による旧優生 点1(平成8年法改正前後を通じた被控訴人による一連一体の不法行為が成立するか)について 主位的違法行為①から④が一連一体の不法行為であるとの主張について控訴人らは、国会議員による旧優生保護法を制定した立法行為及び平成8年法改正まで旧優生保護法の改廃を懈怠した立法不作為(主位的違法行為①)、平成8年法改正まで国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)、厚生大臣が憲法尊重擁護義務を遵守して控訴人らに対する優生手術を阻止すべきであったのにそれを怠ったこと(主位的違法行為③)がいずれも違法であり、主位的違法行為①から③は継続的不法行為であるところ、さらに、平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置)を怠っていること(主位的違法行為④)が、一連一体の不法行為であると主張する。 ア旧優生保護法を制定した国会議員の立法行為及び平成8年法改正まで改 正・廃止しなかった立法不作為(主位的違法行為①)について 旧優生保護法の優生条項の憲法適合性旧優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」(1条)ことを目的として立法されたものであり、その意義は、広く一般に承認されていた優生学の原理に基づいて、劣悪な素質を受け継いで生まれることが確実であるとされるような子孫の出生を極力防止するものと解されていたことは前記認定のとおりであるから、個人の素質を不良なものとそうでないものに区別した上で、不良な素質を有するとされた者について、当該素質が受け継がれることを防ぐために、その子孫の出生を防止するというものであって、憲法14条の保障する法 の素質を不良なものとそうでないものに区別した上で、不良な素質を有するとされた者について、当該素質が受け継がれることを防ぐために、その子孫の出生を防止するというものであって、憲法14条の保障する法の下の平等の要請に反することが明らかな、不合理なものである。 そして、旧優生保護法の優生条項の内容は、都道府県優生保護審査会の決定に基づいて、本人の意思によらずに身体への侵襲を伴う手術により不可逆的に生殖を不能にするというもので、個人の身体への侵襲を受けない自由や尊厳、子を産み育てるか否かを意思決定する権利を侵害するものであるとともに、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を与えるものであって、著しく不合理なものである。 したがって、旧優生保護法の優生条項は、合理的な根拠なく不良とされる者を差別的に取り扱うもので、憲法14条1項に反し、無効であったというべきである。 旧優生保護法の立法行為の違法性国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを定めるものであり、国会議員の立法行為又は立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法であるというためには、国会議員の立法過程における 行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したと認められることを要するから、仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのことから直ちに国会議員の立法行為又は立法不作為が違法の評価を受けるものではない。しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障され の立法行為又は立法不作為が違法の評価を受けるものではない。しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国賠法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成17年判決参照)。 旧優生保護法の立法目的が憲法14条の保障する法の下の平等の要請に反することが明らかな、不合理なもので、旧優生保護法の優生条項の内容も個人の身体に侵襲を受けない自由や尊厳、子を産み育てるか否かを意思決定する権利を侵害し、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を与えるもので、著しく不合理なものであることは、上記説示のとおりであり、立法過程において、上記立法目的が議員の提案理由説明として述べられていたことも上記のとおりであるから、旧優生保護法の優生条項は立法の内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であるといえ、旧優生保護法の優生条項により優生手術を受けた者との関係で、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるというべきである。 平成8年法改正まで旧優生保護法の優生条項を改廃しなかったことの違法性上記のとおり、旧優生保護法の立法目的が憲法14条の保障する法の 下の平等の要請に反することが明らかであり、旧優生保護法の優生条項の内容も著しく不合理なものであって、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵 法の立法目的が憲法14条の保障する法の 下の平等の要請に反することが明らかであり、旧優生保護法の優生条項の内容も著しく不合理なものであって、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であるから、本件優生手術を受けた控訴人らとの関係では、控訴人らが本件優生手術を受けるまでの間、旧優生保護法の優生条項を改廃しなかったことは、国賠法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものといわざるを得ない。 他方で、控訴人らが、本件優生手術を受けさせられ、身体への侵襲を受けない自由や尊厳、子を産み育てるか否かを意思決定する権利を侵害されるとともに、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を被ったことは後記のとおりであるが、この損害は本件優生手術により発生したものであって、本件優生手術終了後も旧優生保護法の優生条項の存在により侵害行為が継続し、あるいは損害が発生し続けているということはできない。 したがって、本件優生手術を受けた控訴人らとの関係では、本件優生手術後平成8年法改正まで旧優生保護法を改廃しなかった立法不作為を国賠法1条1項の適用上違法と評価することはできない。 また、本件優生手術実施後も旧優生保護法が存在していたことは、社会一般に対し、不良であるとされた者に対する差別の意識を誘発し、助長するものであったというべきであるが、控訴人らに対する本件優生手術の実施と直接の因果関係を有するものではなく、控訴人らが本件訴訟において主張している本件優生手術を受けたことによる損害との関係で相当因果関係があるともいえない。 以上のとおりであるから、旧優生保護法を平成8年法改正まで改廃しなかった立法不作為について、控訴人らとの関係では、控訴人らが本件優生手術を受けるまでの立法不作為は、国賠法1条1項の適用上違法というべ 上のとおりであるから、旧優生保護法を平成8年法改正まで改廃しなかった立法不作為について、控訴人らとの関係では、控訴人らが本件優生手術を受けるまでの立法不作為は、国賠法1条1項の適用上違法というべきであるが、本件優生手術後の立法不作為を違法と評価することはできない。 イ平成8年法改正前までの国会議員、厚生省及び文部省が優生政策を推進したこと(主位的違法行為②)について旧優生保護法の制定後、優生手術の対象を拡大するなどの改正が行われたほか、国会において、議員が厚生大臣に優生手術の積極的な実施や予算の確保を促し、優生思想の普及等を図る決議がされるなどしていたこと、厚生省が、各都道府県に対し、計画及び予算に計上した件数の優生手術を行うよう通知するなどし、各都道府県でも優生保護の考え方の普及に努め、文部省も高等学校学習指導要領で旧優生保護法を含む優生について扱うこととし、これを受けて教科書に優生について記載されたことは前記認定のとおりである。 上記の国会議員や厚生省及び文部省による優生政策の推進は、旧優生保護法による優生手術の実施を促進し、不良とされた者に対する差別の意識を誘発し、助長するものであったといわざるを得ないが、上記優生政策の推進が、控訴人らに対する本件優生手術の実施と直接の因果関係を有する行為であったということはできず、控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法と評価されるものとはいえない。また、控訴人らが本件訴訟において請求している本件優生手術を受けたことにより被った損害との関係で、上記政策の推進が相当因果関係を有するものということもできない。 したがって、上記優生政策の推進が、控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法であるとの控訴人らの主張は採用することができない 、上記政策の推進が相当因果関係を有するものということもできない。 したがって、上記優生政策の推進が、控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法であるとの控訴人らの主張は採用することができない。 ウ厚生大臣が本件優生手術を阻止しなかったこと(主位的違法行為③)について 本件優生手術の内容前記認定のとおり、控訴人甲1は、(省略)において、旧優生保護法4条の優生手術を受けたものである。 控訴人甲2は、(省略)ころ、(省略)保護者である父が同意して、優生手術を受けたことは前記認定のとおりであるところ、厚生労働省の資料(乙A18)では、(省略)における優生手術の実施件数は、旧優生保護法12条の優生手術が0件、旧優生保護法4条の優生手術が114件とされており、保護者の同意を要件としない旧優生保護法4条の優生手術についても保護者の同意を得ることが望ましいとされていた都道府県があったこと(甲A209)に照らし、控訴人甲2が受けたのは、旧優生保護法4条の優生手術であったものと認められる。 本件優生手術により控訴人らが被った損害本件優生手術により控訴人らは、その意思によらずに、身体への侵襲を受けるとともに不可逆的に生殖が不能となり身体への侵襲を受けない自由や尊厳、子を産み育てるか否かを意思決定する権利を侵害され、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を被ったというべきである。 厚生大臣が本件優生手術を阻止しなかった不作為の違法性厚生省が、各都道府県に対し、優生手術の実施に関する通知や照会回答を行っていたことは前記認定のとおりであり、旧優生保護法4条の優生手術が都道府県優生保護審査会の決定に基づき行われていたもので、厚生大臣の指揮監督のもと、全国的かつ組 術の実施に関する通知や照会回答を行っていたことは前記認定のとおりであり、旧優生保護法4条の優生手術が都道府県優生保護審査会の決定に基づき行われていたもので、厚生大臣の指揮監督のもと、全国的かつ組織的に実施されていたものというべきであるところ、本件優生手術もその一つであった。 上記厚生大臣の指揮監督権限の行使の要否は、厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解されるが、その裁量権の行使が著しく合理性を欠く場合には、裁量権の範囲を逸脱し、あるいはこれを濫用するものとして国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものと解される。 旧優生保護法の優生条項が憲法14条1項に反することが明白で、無効であることは上記説示のとおりであり、厚生大臣は、憲法を尊重し擁 護する義務を負っている(憲法99条)から、都道府県宛てに通知をするなど指揮監督権限を行使して、旧優生保護法の優生条項に基づく優生手術が実施されないようにすべきであった。それにもかかわらず、厚生大臣は、指揮監督権限の行使を怠り、その結果、控訴人らに対する本件優生手術が実施されたものであるから、厚生大臣の権限不行使は著しく不合理であり、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきである。 エ平成8年法改正以降の厚生大臣及び厚生労働大臣が人としての尊厳に対する被害の回復、軽減のための措置(優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復等の措置)を怠っていること(主位的違法行為④)について控訴人らは、主位的違法行為①から③の先行行為に基づく条理上の作為義務として、不良な存在、子を持つべきではない存在という一般的差別偏見及び優生手術により不良な存在との烙印を明示的に押されたことによる人としての尊厳等を著し 為①から③の先行行為に基づく条理上の作為義務として、不良な存在、子を持つべきではない存在という一般的差別偏見及び優生手術により不良な存在との烙印を明示的に押されたことによる人としての尊厳等を著しく毀損する被害について、厚生大臣及び厚生労働大臣が控訴人らに対する被害回復・軽減のための措置を講ずる義務を負っており、同義務を果たしていないことにつき、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張する。 国賠法1条1項の違法とは、公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することをいうものと解されることは上記のとおりであり、職務上の法的義務があるというためには、控訴人らの主張する先行行為から生じる条理上の作為義務の発生要件が当該公務員にとって明確であり、発生すべき作為義務の内容も当該公務員にとって明らかであることを要するものと解される。 控訴人らは、主位的違法行為①から③がいずれも国賠法1条1項の適用上違法であるとして、本件優生手術により発生した損害賠償を求めている ところ、控訴人らの主張によっても、損害賠償請求権に加えて、主位的違法行為①から③を先行行為として、厚生大臣及び厚生労働大臣に、控訴人らとの関係で、条理上何らかの作為義務が発生することは明らかではない。また、控訴人らが主張する作為義務の内容も被害回復・軽減措置というのみで、控訴人らが例示する項目を併せてみても具体的に明確であるとはいえないし、先行行為であるとする主位的違法行為①から③の内容から、具体的に発生する作為義務の内容が明確であるということもできない。 したがって、厚生大臣及び厚生労働大臣が、主位的違法行為①から③を先行行為として、何らかの条理上の作為義務を個々の国民に対して負担する職務上の法的義務として負っ 明確であるということもできない。 したがって、厚生大臣及び厚生労働大臣が、主位的違法行為①から③を先行行為として、何らかの条理上の作為義務を個々の国民に対して負担する職務上の法的義務として負っているということはできないから、これを怠ったという主位的違法行為④が、控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法であることをいう控訴人らの主張は理由がない。 オの結論以上のとおり、主位的違法行為④が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるということはできないから、主位的違法行為①から④が一連一体の違法行為であるという控訴人らの主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 主位的違法行為①から③が密接に関連した複合的な継続的不法行為であるとの主張及び主位的違法行為③が不法行為に当たるとの主張について控訴人らは、主位的違法行為①から③は密接に関連した複合的な継続的不法行為であり、仮にこれが認められないとしても主位的違法行為③は控訴人らに対する不法行為に当たると主張する。 ア主位的違法行為①のうち、旧優生保護法の優生条項について、本件優生手術後平成8年法改正まで改正・廃止しなかった立法不作為が、控訴人らに対する本件優生手術の実施と直接の因果関係を有するものということ はできず、控訴人らが本件訴訟において主張している本件優生手術を受けたことによる損害との関係で相当因果関係があるともいえないこと及び主位的違法行為②が控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法であるといえないことは、いずれも上記のとおりである。したがって、主位的違法行為①から③が複合的な継続的不法行為であるということはできない。 イ主位的違法行為③が控訴人らとの関係で国賠法1条1項の適用上違法であることは上記のとおりであるか したがって、主位的違法行為①から③が複合的な継続的不法行為であるということはできない。 イ主位的違法行為③が控訴人らとの関係で国賠法1条1項の適用上違法であることは上記のとおりであるから、被控訴人は、控訴人らが被った損害を賠償すべき義務を負う。 3 争点3(民法724条後段の適用)について民法724条後段の法的性質民法724条後段は、不法行為による損害賠償請求権が、不法行為の時から20年を経過したときに消滅することを定めており、この規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解される(最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)から、上記規定が消滅時効を定めた規定であるとする控訴人らの主張は採用できない。 除斥期間の起算点ア民法724条後段の除斥期間の起算点は「不法行為の時」であり、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると解される(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁参照)。 厚生大臣が、本件優生手術が実施されないように権限を行使しなかった不作為により、控訴人らは本件優生手術を受け、憲法上保障されている自由ないし権利を侵害されるとともに、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を被ったものであるから、上記不作為による違法行為は本件優生手術のとき に終了し、控訴人らの損害も同時に発生したものというべきである。 したがって、控訴人らの被控訴人に対する損害賠償請求権についての除斥期間の起算点は、いずれも本件優生手術のときである。 イ控訴人らは、除斥期間の起算点は、客観的に権利行使が可能になる程度に不法性が顕在化した時点であり、また、社会通 賠償請求権についての除斥期間の起算点は、いずれも本件優生手術のときである。 イ控訴人らは、除斥期間の起算点は、客観的に権利行使が可能になる程度に不法性が顕在化した時点であり、また、社会通念上提訴が極めて困難な状況においては、除斥期間の起算点は到来しないと解されるべきであるとし、不法性が顕在化したのは、日弁連が、旧優生保護法の違憲性と補償の必要性を明確に指摘した平成29年日弁連意見書を公表した時点であり、社会通念上提訴が極めて困難な状況は、障害者差別解消法が成立した平成25年までか、少なくとも当時まだ激しい差別偏見が残っていたことが日弁連人権擁護大会における報告書によって明らかである平成13年頃まで続いており、これらの時期まで起算点が到来しないと主張する。 しかしながら、民法724条後段は、不法行為をめぐる法律関係の画一的な解決を図るものとして、被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過により法律関係を確定させるため、請求権の存続期間を画一的に定めたものと解されるのであり、期間の起算点を「不法行為の時」と定めているのであるから、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると解されることは上記のとおりである。不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が起算点となると解される(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁参照)が、いずれにしても、除斥期間の起算点は、加害行為の時又は損害の全部若しくは一部が発生した時をもって客観的に定まるのであって、被害者の不法性の認識や社会通念上提訴が極めて困難であることなど、被害者の主観的事情により起算点が左右されると解 加害行為の時又は損害の全部若しくは一部が発生した時をもって客観的に定まるのであって、被害者の不法性の認識や社会通念上提訴が極めて困難であることなど、被害者の主観的事情により起算点が左右されると解することはできない。 起算点から20年経過後の民法724条後段の適用制限ア上記のとおり、民法724条後段が、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり、請求権の存続期間を画一的に定めたものと解されるから、不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には、裁判所は、当事者からの主張がなくても、除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと判断すべきである(最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)。 控訴人甲1は(省略)に、控訴人甲2は(省略)ころ、いずれも本件優生手術を受けたものであるから、本訴提起の時点においては、いずれも不法行為の時から20年以上が経過している。また、旧優生保護法の優生条項の立法行為及び本件優生手術までその改廃を行わなかった不作為が、国賠法1条1項の適用上違法であることは上記のとおりであり、仮にこれが主位的違法行為③と継続的な不法行為であるといえるとしても、本件優生手術の時点が不法行為の時であることに変わりはないから、20年以上が経過していることは同様である。 イこれに対し、控訴人らは、仮に起算点から20年が経過していたとしても、権利行使を不能又は著しく困難とする事情がある場合には、その事由が解消されてから6か月を経過するまで除斥期間の適用が制限されるというべきであり、国策としてされた違憲な行為によって人権が侵害された場合には、正義、公平の理念からして、最高裁判所による最終的かつ公権的判断(違憲判決)か を経過するまで除斥期間の適用が制限されるというべきであり、国策としてされた違憲な行為によって人権が侵害された場合には、正義、公平の理念からして、最高裁判所による最終的かつ公権的判断(違憲判決)から6か月以内に被害者が損害賠償請求権を行使したという特段の事情があるときは、民法159条、160条などの法意に照らし、民法724条後段の効果が生じないと主張する。 確かに、不法行為の被害者が不法行為の時から20年が経過する前6か月以内において、当該不法行為を原因として心神喪失の状況にあるのに法定代理人を有しなかった場合に、被害者の後見人に就職した者がその時か ら6か月以内にその損害賠償請求権を行使したなど特段の事情がある場合には、民法158条の法意に照らし、民法724条後段の効果は生じないものとされ(最高裁平成10年判決)、また、被害者を殺害した加害者が死体を隠匿したため、被害者の相続人が死亡の事実を知ることができず、相続人が確定しないまま20年が経過した場合に、相続人が確定したときから6か月以内に損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法160条の法意に照らし、民法724条後段の効果は生じないものと解される(最高裁平成21年判決)から、不法行為の時から20年の除斥期間を経過した場合であっても、民法724条後段の効果が生じない場合があるといえる。 しかしながら、上記の除斥期間が定められた趣旨及び法的性質に照らせば、上記各事例に共通するように、民法724条後段の効果が生じないとされるためには、少なくとも、被害者が、不法行為から20年の間に、不法行為による損害賠償請求権を行使することが客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったといえる場合に、客観的に権利行使を不可能にし、又はその行 も、被害者が、不法行為から20年の間に、不法行為による損害賠償請求権を行使することが客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったといえる場合に、客観的に権利行使を不可能にし、又はその行使の機会を失わせたのが加害者であるため、20年の経過により加害者が損害賠償義務を免れることが、著しく正義・公平の理念に反する場合であって、同様の場合に時効期間が満了していても時効の完成を猶予する明文の規定がある場合には、その規定の法意に照らして、民法724条後段の効果は生じないものと解すべきである。 本件優生手術が、憲法14条1項に反し無効である旧優生保護法の優生条項に基づいてされたものであり、優生手術が、厚生大臣の指揮監督のもと、全国的かつ組織的に実施されていたことは上記認定のとおりであって、優生思想の普及が図られていたことから、優生手術の対象とされた者が損害賠償請求権を行使することが困難であったということはできるが、他方で、控訴人甲1について、昭和54年頃、本件優生手術を受けたこと が知られたため縁談が破談になったことは上記認定のとおりであり、控訴人甲1の母は、昭和50年頃、控訴人甲1の義姉に対して控訴人甲1に子どもができないように手術したことを伝えるなど、控訴人甲1に不妊手術が実施されたことを認識していた(甲1B6、(省略))から、遅くともそのころ、控訴人甲1は、優生手術を受けたことを認識し得たものというべきであり、控訴人甲2は、本件優生手術から半年程度経った頃、両親の会話を偶然聞くことがあり、自身の受けた手術が、不妊手術、優生手術であることを認識した(甲2B17、控訴人甲2本人(原審))というのであるから、控訴人らが権利行使することが客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったとまではいえない。そ 手術、優生手術であることを認識した(甲2B17、控訴人甲2本人(原審))というのであるから、控訴人らが権利行使することが客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかったとまではいえない。そして、上記のとおり、民法724条後段所定の期間が、被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過により法律関係を確定させるため、請求権の存続期間を画一的に定めたものであり、民法724条後段の効果が生じないとされた上記事例をみても、除斥期間の適用を事案の具体的事情により制限することを広く認めたものとは解されないのであり、正義・公平という理念のみに基づいて、最高裁判所による違憲判決がされてから6か月以内に権利行使した場合に、民法724条後段の効果が排除されると解することは、本件優生手術が国による違法な行為であり、その結果、控訴人らが重大な損害を被ったことを考慮に入れたとしても、なお困難であるといわざるを得ない。したがって、控訴人らの主張は採用することができない。 ウ控訴人らは、被害者による権利行使を民法724条後段の期間の経過によって排斥することが著しく正義、公平に反するような特段の事情がある場合には、国による不法行為を客観的に認識し得た時点から相当期間その効果を制限するのが相当であり、それが条理にも適うとし、客観的に認識し得た時期は、最高裁判所の違憲判決があった時というべきであり、また、一時金支給法の制定時(平成31年4月24日)と考えることにも一定の 合理性があると主張する。 しかしながら、民法724条後段が、被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過により法律関係を確定させるため、請求権の存続期間を画一的に定めたものであることは上記のとおりであり、民法724条後段の効果が生じないとされた事例も、不法行為 側の認識のいかんを問わず一定の時の経過により法律関係を確定させるため、請求権の存続期間を画一的に定めたものであることは上記のとおりであり、民法724条後段の効果が生じないとされた事例も、不法行為から20年の間に損害賠償請求権を行使することが客観的におよそ不可能であり又はその行使の機会がなかった場合に、客観的に権利行使を不可能にし又はその行使の機会を失わせたのが加害者であるため、20年の経過により加害者が損害賠償義務を免れることが、著しく正義・公平の理念に反する場合であって、同様の場合に時効期間が満了していても時効の完成を猶予する明文の規定がある場合には、その規定の法意に照らして、民法724条後段の効果が生じないとするものであることに照らせば、正義・公平という理念のみに基づいて、被害者の認識により民法724条後段の効果を排除し得るものと解することは困難である。 そして、控訴人らが、本件優生手術の実施及びそれによる損害の発生を認識しており、旧優生保護法の優生手術であったことについても認識し又は認識し得たものというべきであることも上記のとおりであるところ、控訴人らは、本件優生手術について認識していたとしても、控訴人らの権利を侵害する違法、違憲なものであり、被控訴人による不法行為が成立することを認識することができなかったと主張する。 確かに、本件優生手術から20年が経過した時点では、平成8年法改正は行われておらず、当時、過去に実施された優生手術につき法律に基づく適法なものと取り扱われており、優生手術が違憲、違法なものであるとの認識が一般的であったとはいえないから、優生政策の実施等を踏まえれば、優生手術を受けた者が、当該優生手術につき、違法であったと判断し、被控訴人に対して損害賠償請求権を行使することは困難であったという ったとはいえないから、優生政策の実施等を踏まえれば、優生手術を受けた者が、当該優生手術につき、違法であったと判断し、被控訴人に対して損害賠償請求権を行使することは困難であったという ことができるが、客観的におよそ不可能であったとまでいうことはできない。したがって、控訴人らの上記主張は採用できない。 正義公平の理念による民法724条後段の適用制限控訴人らは、本件では、仮に除斥期間の起算点から20年が経過していたとしても、適用を制限すべき特段の事情があり、正義公平を根拠として民法724条後段の適用は制限されるべきであると主張する。 しかしながら、民法724条後段の趣旨及び法的性質に照らし、正義・公平という理念のみに基づいて、民法724条後段の効果を排除し得るものと解することが困難であることは上記のとおりであって、控訴人らの上記主張は採用できない。 本件に民法724条後段を適用することの違憲性ア控訴人らは、民法724条後段の制度目的自体には正当性があったとしても、本件に適用することは、侵害行為の態様、侵害される法的利益の種類及び侵害の程度、並びに免責又は責任制限の範囲及び程度に照らし、制度目的達成のための手段としての合理性、必要性が一切なく、国賠法4条のうち民法724条後段を適用する部分は、控訴人らに適用する限りにおいて憲法17条に違反すると主張する。 イ控訴人らの上記主張は、法令が当然に適用を予定している場合の一部につきその適用を違憲と判断すべきというものであって、結局のところ、法令の一部を違憲であると主張するに等しいものといわざるを得ない。そこで、国賠法4条、民法724条後段が憲法17条に違反するかについてみるに、憲法17条は、国又は公共団体に対して損害賠償を求める権利を保 一部を違憲であると主張するに等しいものといわざるを得ない。そこで、国賠法4条、民法724条後段が憲法17条に違反するかについてみるに、憲法17条は、国又は公共団体に対して損害賠償を求める権利を保障し、当該権利については法律による具体化を予定しているものであるところ、公務員の不法行為による国又は公共団体の損害賠償責任を免除又は制限する法律の規定が憲法17条に適合するか否かは、当該規定の目的の正当性並びにその目的達成の手段として免責又は責任制限を認めること の合理性及び必要性を総合的に考慮して判断すべきである(最高裁平成14年9月11日大法廷判決・民集56巻7号1439頁参照)。 国賠法4条により適用される民法724条後段は、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図するものであり、被害者側の認識のいかんを問わず、不法行為の時から20年という一定の期間の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めたものであると解されることは上記説示のとおりであるところ、その規定の目的は正当であり、その目的達成の手段として上記のとおり免責を認めることに合理性及び必要性があることに照らせば、民法724条後段が憲法17条に適合しないものということはできない。 したがって、国賠法4条により適用される民法724条後段が憲法17条に違反するものとはいえず、本件に民法724条後段を適用することが、その目的、趣旨を逸脱するものということもできないから、控訴人らの上記主張は採用できない。 本件に民法724条後段を適用することの拷問等禁止条約及び国際慣習法違反ア控訴人らは、本件に民法724条後段を適用することが拷問等禁止条約14条1項に違反すると主張する。 条約は、その国について効力が発生した の拷問等禁止条約及び国際慣習法違反ア控訴人らは、本件に民法724条後段を適用することが拷問等禁止条約14条1項に違反すると主張する。 条約は、その国について効力が発生した日前に生じた行為、事実又は同日前に消滅した事態に関しては、当該当事国を拘束しない(条約法条約28条)とされているところ、本件優生手術がされたのは、控訴人甲1については(省略)控訴人甲2については(省略)であり、日本が拷問等禁止条約に加入したのは平成11年であるから、上記拷問等禁止条約の規定は、本件との関係では、日本を拘束するものではないというべきである。なお、控訴人らは、控訴人らへの侵害が日本の拷問等禁止条約加入まで継続しており、継続的侵害の法理により条約の適用を認める ことができると主張するが、控訴人らに対する加害行為が本件優生手術の実施により終了し、損害も本件優生手術の時に発生したものというべきであることは前記説示のとおりであるから、控訴人らの主張は採用することができない。 そもそも、拷問等禁止条約14条1項は、その文言上、被害者について生じた損害賠償請求権について、権利の存続期間を設けることを許さないとするものではなく、拷問等禁止条約の解釈にかかる拷問禁止委員会の一般的意見は、日本を拘束するものではなく、14条の効果的な実施を阻む具体的な障害として出訴期間が挙げられている(平成24年の一般的意見第38項。甲A148)ものの、救済を受ける権利について出訴期間を設けることを一切許容しないこととはされていないから、除斥期間の適用があること自体が同項に違反するということはできない。 イ控訴人らは、本件に民法724条後段を適用することが国際慣習法に違反すると主張し、「時効は、国際人権法及び国際人道上の重大な 期間の適用があること自体が同項に違反するということはできない。 イ控訴人らは、本件に民法724条後段を適用することが国際慣習法に違反すると主張し、「時効は、国際人権法及び国際人道上の重大な違反であって国際法上の犯罪を構成するものには適用されない」とする基本原則及びガイドライン原則6は、国際慣習法となっており、控訴人らの救済を受ける権利が、自由権規約及び社会権規約、女子差別撤廃条約、拷問等禁止条約、障害者権利条約などに規定された、被害者の救済を受ける権利であり、本件優生手術は国際人権法及び国際人道上の重大な違反であって国際法上の犯罪に当たると主張する。 しかしながら、そもそも、条約が効力を発生した日前に生じた行為等に関して当事国を拘束しないことは上記のとおりであり、上記各条約について、日本が加入又は批准したのは、自由権規約及び社会権規約が昭和54年、女子差別撤廃条約が昭和60年、拷問等禁止条約が平成11年、障害者権利条約が平成26年であって、いずれも本件優生手術の後であるから、本件との関係では、日本を拘束するものではないし、いずれも、出訴 期間等の時間的制限を設けることを一切許容しないとするものでもない。 また、上記基本原則及びガイドライン原則6については、その諮問会議報告書において、各国から懸念が示されている状況であり、その他の事情に照らしても、各国において広く一般的に受け入れられ、又は、国際法上の義務と認識され、確信して行われているなど、国際慣習法となっているということはできない。 よって、本件に民法724条後段を適用することが国際慣習法に違反するということはできず、控訴人らの主張は採用することができない。 4 小括上記のとおり、控訴人らの主位的請求のうち、主位的違法行為③は に民法724条後段を適用することが国際慣習法に違反するということはできず、控訴人らの主張は採用することができない。 4 小括上記のとおり、控訴人らの主位的請求のうち、主位的違法行為③は、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受け、本件優生手術により控訴人らが被った損害について、被控訴人に対する損害賠償請求権が生じているところ、控訴人らが本訴を提起したのは、控訴人甲1が平成30年1月30日、控訴人甲2が同年5月17日であり、控訴人らが本件優生手術を受けたのは、控訴人甲1が(省略)控訴人甲2が(省略)であるから、本訴提起の時点においては、いずれも不法行為の時から20年以上が経過し、除斥期間の経過により上記損害賠償請求権は消滅している。また、旧優生保護法の優生条項の立法行為及び本件優生手術までその改廃を行わなかった不作為が、国賠法1条1項の適用上違法であることは上記のとおりであるが、仮にこれが主位的違法行為③と継続的な不法行為であるといえるとしても、本件優生手術の時点が不法行為の時であることに変わりはないから、20年以上が経過していることは同様である。 なお、仮に、控訴人らの主張を踏まえ、平成8年法改正までは、旧優生保護法が存在しており、同法に基づく優生手術が適法であったことや優生政策等の実施により、適法であるとの認識が一般的であったことに鑑み、平成8年法改正の時点を除斥期間の起算点と解したとしても、本訴提起の時点では既に20年以上が経過している。そして、平成8年法改正前後からの20年の間には、 平成8年法改正に際し、日本障害者協議会等からの改正の要望がされ、これに先立ち、国連の会議などでも旧優生保護法を取り上げて、改正すべきとの強い意向が示されていたこと、平成8年法改正後は、謝罪を求める会が結成され、平成9 日本障害者協議会等からの改正の要望がされ、これに先立ち、国連の会議などでも旧優生保護法を取り上げて、改正すべきとの強い意向が示されていたこと、平成8年法改正後は、謝罪を求める会が結成され、平成9年には謝罪と補償を求める要望書を厚生省に提出したこと、障害者基本法や障害者差別解消法などの法整備がされたこと、日弁連も平成13年及び平成27年には優生手術の対象となった人達に対する補償の措置を講じるべきであることなどを内容とする報告書を発表していること、控訴人甲2が平成9年以降、謝罪を求める会において活動し、平成25年には弁護士に相談して日弁連に人権救済の申立てを行ったことはいずれも上記認定のとおりであり、優生政策が推進されたことなどにより、優生思想による差別や偏見が継続して存在していたことなどを考慮しても、上記期間内に優生手術の対象とされた控訴人らが権利行使することが著しく困難であって、手術の違法性を訴えることが不可能に近い状態であったとまではいえないから、控訴人らが主張するところを考慮しても、上記結論は左右されない。 5 争点2(平成8年法改正後の被控訴人による被害回復、軽減措置の不作為による不法行為が成立するか)について厚生大臣及び厚生労働大臣が遅くとも平成8年法改正までに発生する、損害の賠償、補償のための措置を含む被害回復、軽減措置を講ずる義務を怠ったこと(予備的違法行為①)の違法性控訴人らは、厚生大臣及び厚生労働大臣は、遅くとも平成8年法改正までに、主位的違法行為①から③の先行行為に基づく条理上の作為義務として、控訴人らが被った優生手術に基づく損害及び人としての尊厳に対する被害について、被害回復、軽減措置として、優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復、被害実態の検証、損害の賠償、補 被った優生手術に基づく損害及び人としての尊厳に対する被害について、被害回復、軽減措置として、優生条項の廃止の事実や理由の公表、謝罪等によるスティグマ除去、名誉回復、被害実態の検証、損害の賠償、補償のための措置を講じるべき作為義務を負っていると主張する。 しかしながら、国賠法1条1項の違法とは、公権力の行使に当たる公務員 が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することをいうものと解され、職務上の法的義務があるというためには、控訴人らの主張する先行行為から生じる条理上の作為義務の発生要件が当該公務員にとって明確であり、発生すべき作為義務の内容も当該公務員にとって明らかであることを要するものと解されることは主位的違法行為④について説示したとおりである。控訴人らは、主位的違法行為①から③がいずれも国賠法1条1項の適用上違法であるとして、本件優生手術により発生した損害賠償を求めているところ、控訴人らの主張によっても、損害賠償請求権に加えて、主位的違法行為①から③を先行行為として、厚生大臣及び厚生労働大臣に、控訴人らとの関係で、条理上何らかの作為義務が発生することが明らかではなく、控訴人らが主張する作為義務の内容も被害回復・軽減措置というのみで、控訴人らが例示する項目を併せてみても具体的に明確であるとはいえないし、先行行為であるとする主位的違法行為①から③の内容から、具体的に発生する作為義務の内容が明確であるということができないことも同様である。 また、控訴人らが被った本件優生手術による損害等に対する損害賠償や補償のための措置を講じる義務があったと主張していることについては、憲法上保障されている国家賠償請求権を行使するための立法として、既に国賠法が存在しており、平成8年法改正の時点では、優生手術から20年の除斥期間 置を講じる義務があったと主張していることについては、憲法上保障されている国家賠償請求権を行使するための立法として、既に国賠法が存在しており、平成8年法改正の時点では、優生手術から20年の除斥期間を経過していた被害者が多数いたことを考慮しても、国賠法とは別に国家賠償請求権の行使の機会を確保するための立法措置をとることが憲法上の要請であるとはいえず、上記立法措置が必要不可欠であり、そのことが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なくこれを怠っていたということもできないから、厚生大臣又は厚生労働大臣が国賠法のほかに損害賠償請求のための法案を提出すべき職務上の法的義務を負っていたとはいえない。 さらに、控訴人らは、憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権があることを前提として、補 償請求のための立法措置を講じる義務があったと主張するが、憲法の上記条文ないしその精神、趣旨から具体的な補償請求権が発生しているということは困難であり、旧優生保護法による優生手術を受けた者に対する補償の要否、要する場合におけるその具体的な手続及び内容は、国会の裁量的権限にゆだねられるものと解されるから、平成31年に制定された一時金支給法が補償請求に係る立法措置であると評価し得るとしても、その制定の時期及び内容について、立法裁量の当不当の問題が生じるにすぎず、補償請求に係る立法措置ではないと評価される場合であっても、補償請求のための立法措置が必要不可欠であり、そのことが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なくこれを怠っていたということはできないのであって、いずれにしても厚生大臣又は厚生労働大臣が補償請求のための法案を提出すべき職務上の法的義務を負っていたとはいえない。 したがって、厚生大臣及び 由なくこれを怠っていたということはできないのであって、いずれにしても厚生大臣又は厚生労働大臣が補償請求のための法案を提出すべき職務上の法的義務を負っていたとはいえない。 したがって、厚生大臣及び厚生労働大臣について、予備的違法行為①が、控訴人らとの関係で、国賠法1条1項の適用上違法であることをいう控訴人らの主張は理由がない。 国会議員が、平成19年3月以降、本件優生手術を受けた控訴人らが被控訴人に対して有する憲法17条に基づく国家賠償請求権又は憲法13条あるいは公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づく補償請求権を行使するための立法措置を講じることを怠ったこと(予備的違法行為②)の違法性ア国会議員の立法ないし立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法となるのは、立法の内容や立法不作為が憲法の規定に違反することだけでは足りず、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期 にわたってこれを怠る場合に限られることは上記説示のとおりである。 イ控訴人らは、憲法17条に基づく国家賠償請求権を有しており、また、憲法13条が特別の犠牲を強制されない権利を保障しており、当時は公益と称されていた利益のために、社会全体のためとの名目で犠牲となったことについて、憲法13条に基づき、若しくは、公平の原則及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づき、補償請求権が発生すると解するべきであり、この憲法上の権利の行使の機会を確保するため、①国会としての謝罪、②優生思想の克服、障害者に対する偏見差 及び憲法13条、14条、25条の精神、趣旨に基づき、補償請求権が発生すると解するべきであり、この憲法上の権利の行使の機会を確保するため、①国会としての謝罪、②優生思想の克服、障害者に対する偏見差別解消に向けての被控訴人と国民の責務の明示、③被害回復のための特別措置(補償ないし賠償)の3点が明記されている法律を立法することが不可欠であり、そのようにすべきことは明白であったと主張する。 しかしながら、憲法17条は、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体にその賠償を求めることができることを定め、これは、国又は公共団体が公務員の行為による不法行為責任を負うことを原則とした上、公務員のどのような行為によりいかなる要件で損害賠償責任を負うかを立法府の政策判断にゆだねたものである(最高裁平成14年9月11日大法廷判決民集56巻7号1439頁参照)。そして、憲法上保障されている国家賠償請求権を行使するための立法として、既に国賠法が存在しており、平成8年法改正の時点では、優生手術から20年の除斥期間を経過していた被害者が多数いたことを考慮しても、国賠法とは別に国家賠償請求権の行使の機会を確保するための立法措置をとることが憲法上の要請であるとはいえず、控訴人らが主張する内容の立法措置が必要不可欠であり、そのことが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なくこれを怠っていたということもできないことは上記のとおりである。そして、控訴人らが主張する損害は、本件優生手術により被ったとするものであるところ、その損害との関係で控訴人ら 主張の国会議員の立法不作為が相当因果関係を有するものということもできない。 また、控訴人らの主張する補償請求権が憲法の上記条文ないし公平の原則及びその精神、趣旨から 係で控訴人ら 主張の国会議員の立法不作為が相当因果関係を有するものということもできない。 また、控訴人らの主張する補償請求権が憲法の上記条文ないし公平の原則及びその精神、趣旨から憲法上直接生じるものということは困難であり、旧優生保護法による優生手術を受けた者に対する補償の要否、要する場合におけるその具体的な手続及び内容は、国会の裁量的権限にゆだねられるものと解されるから、平成31年に制定された一時金支給法が補償請求に係る立法措置であると評価し得るとしても、その制定の時期及び内容について、立法裁量の当不当の問題が生じるにすぎず、補償請求に係る立法措置ではないと評価される場合であっても、補償請求のための立法措置が必要不可欠であり、そのことが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なくこれを怠っていたということができないことも上記のとおりである。 したがって、控訴人らの主張する国会議員の予備的違法行為②が、国賠法1条1項の適用上、違法の評価を受けるということはできない。 第4 結論以上のとおり、控訴人らが当審において変更した請求原因を含め、控訴人らの請求はいずれも理由がなく、控訴人らの請求を棄却した原判決は結論において相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第1民事部裁判長裁判官石栗正子 裁判官鈴木綱平 裁判官竹下慶 別紙当事者目録は掲載省略 竹下慶 別紙当事者目録は掲載省略

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