令和6年7月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第70722号妨害禁止等請求事件口頭弁論終結日令和6年6月6日判決原告 A 原告 B原告ら訴訟代理人弁護士佐藤大和同植田仰生東京都渋谷区神宮前2-22-2FOLDビル1F被告ハチドリーム株式会社 同訴訟代理人弁護士瀧井喜博同隅田 唯同稲生貴子 主文 1 原告らと被告との間において、原告ら被告間の令和4年4月16日付 けマネジメント契約が終了していることを確認する。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、いわゆるカップルユーチューバーである原告らが、タレントのマネジメント会社である被告に対し、被告との間で締結した令和4年4月16日付けマネジメント契約が終了していることの確認を求める事案である。 なお、原告らは、被告においてマネージャー募集に関するウエブサイト広 告(別紙参照)に原告らの肖像及びグループ名を使用する行為が、原告らのパブリシティ権侵害等を構成すると主張して、上記肖像及びグループ名の削除を求める請求をしていたところ、被告は、争点整理の一環として、任意に削除したことから、原告らは、上記請求を取り下げ、被告もこれに同意した。 したがって、本 すると主張して、上記肖像及びグループ名の削除を求める請求をしていたところ、被告は、争点整理の一環として、任意に削除したことから、原告らは、上記請求を取り下げ、被告もこれに同意した。 したがって、本件の争点は、上記マネジメント契約の解除の成否のみである。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者ア原告らは、いわゆるカップルユーチューバーとして、「C」というグ ループ名で、動画配信プラットフォームであるYouTube上で配信活動を行ってきた者である。 イ被告は、タレントのマネジメント等を業とする株式会社である。 ⑵ マネジメント契約の締結原告らは、令和4年4月16日、被告との間で、原告らの芸能活動に関 するマネジメント業務を委託することなどを内容とする専属マネジメント契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲2)。 本件契約は、大要、次に掲げる内容を定めている(甲2)。 ア専属マネジメント契約原告らは、被告に対して、契約期間中、独占的に、原告らの全世界に おける芸能活動についてのマネジメント業務を委託し、被告はこれを受託する(2条1項)。 原告らは、契約期間中に第三者との間で、名目を問わず、本件契約と同様の内容を有する契約又は矛盾する内容の契約を締結し、又は締結のための交渉をしてはならない(2条4項)。 イ被告の業務 被告は、2条1項のマネジメント業務として、以下の業務を誠実に行わなければならない(5条)。 自らの名義によって第三者からの原告らに対する芸能活動の依頼を受け、原告らの芸能活動に関 被告は、2条1項のマネジメント業務として、以下の業務を誠実に行わなければならない(5条)。 自らの名義によって第三者からの原告らに対する芸能活動の依頼を受け、原告らの芸能活動に関するスケジュール管理を行うこと原告らの芸能活動に関する連絡、折衝、取材対応その他外部との交 渉業務原告らの芸能活動から生ずる一切の知的財産権等の権利を自ら利用するとともに、第三者からの利用の申出に対し、許諾の可否を決し、許諾を与えること ないしの業務に伴う報酬・対価・収益を収受し、その管理を行 うこと原告らの芸能活動に関する広告宣伝活動を行うこと ないしの各号の業務に付随する一切の業務を行うことウ原告らの義務原告らは、契約期間中、被告の指示に従い誠実に、芸能活動、自らの 芸能活動に関する広告宣伝活動、これらに付随する一切の活動を行わなければならない(6条1項)。 エ契約期間契約期間は、契約締結日より3年間とする(12条1項本文)。 原告ら及び被告は、12条1項に定める契約期間内であっても、合 意により解除することができる(12条2項)。 原告らは、契約終了後6か月間は、被告以外の芸能活動のマネジメント業務又はこれに類似する事業を行う法人又は個人と契約して、芸能活動を行ってはならない(12条3項)。 ⑶ 原告らによる解除の意思表示 原告らは、被告に対し、本件契約を令和5年7月14日をもって解除す る旨の意思表示を記載した同月13日付け解除通知書を送付し、被告は、この頃、同通知書を受領した(甲3、弁論の全趣旨)。 ⑷ 仮処分の申立て原告らは、東京地方裁判所に対し、被告を債務者として、被告が原告らの芸能活動を妨害しないことなどを求め 被告は、この頃、同通知書を受領した(甲3、弁論の全趣旨)。 ⑷ 仮処分の申立て原告らは、東京地方裁判所に対し、被告を債務者として、被告が原告らの芸能活動を妨害しないことなどを求める仮処分を申し立て、同裁判所は、 令和5年10月17日、同申立てを認容する決定をした(甲9)。 3 争点本件の争点は、原告らによる解除の成否であり、具体的には、以下の2点である。 ⑴ 原告らが本件契約の解除権を放棄したといえるか(争点1) ⑵ 本件契約の解除権の行使が権利の濫用に当たるか(争点2) 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(原告らが本件契約の解除権を放棄したといえるか)について(被告の主張)本件契約12条2項は、これを反対解釈すれば、合意がない限り、契約 期間内に本件契約を解除することはできない旨を定めたものであり、民法656条が準用する651条1項による原告らの解除権を放棄する旨を定めた規定である。 すなわち、本件契約は、駆け出しのユーチューバーであった原告らに被告がノウハウを提供し、原告らの配信する動画の登録者数と再生回数が増 加することに伴って、原告らの収入と被告の収益が増加することを目的としたものである。そのため、契約期間の満了を待たずに原告らの意思表示による一方的な解除を認めると、被告の利益の回収が困難になる。また、原告らの活動の中には、被告が企業からの広告依頼を獲得し、その依頼に沿う動画の制作・広告宣伝等を行うこともあったから、この点では原告ら には受託者たる側面もあった。 このような本件契約の性質及び態様からすれば、本件契約は双方が安定的に委託された業務を提供し合いながら収益活動を行うことを前提としたものであり、途中解約を前提 託者たる側面もあった。 このような本件契約の性質及び態様からすれば、本件契約は双方が安定的に委託された業務を提供し合いながら収益活動を行うことを前提としたものであり、途中解約を前提としない有期契約であることが、当事者間の合理的な意思であったと認められる。 したがって、本件契約12条2項は、民法651条1項による原告らの 解除権の放棄を定めた規定であり、原告らは、同項による解除権を放棄したというべきである。 (原告らの主張)本件契約12条2項は、契約期間内の合意解除が可能であることを確認した規定であり、同項を根拠として、原告らにおいて民法656条が準用 する651条1項に基づく解除権を放棄したと解釈することはできない。 解除権を放棄するのであれば、その趣旨を一義的に明確にすることが通常である。 期間の定めのある有償委任契約であっても、受任者の利益を目的とする委任契約でない限り、解除権の行使は制限されるべきではないと解される ところ、被告が本件契約から得られる収益は、独立した利益ではなく上記「受任者の利益」に該当しないから、解除権の行使は制限されない。また、被告が主張するビジネスモデルを踏まえても、委任契約の本質的な規定である民法651条1項の解除権を放棄する趣旨であったとは認められない。 したがって、本件契約12条2項は、民法651条1項による原告らの 解除権を放棄した規定であるとはいえないから、原告らは同項の解除権によりいつでも本件契約を解除することができる。 ⑵ 争点2(本件契約の解除権の行使が権利の濫用に当たるか)について(被告の主張)民法651条1項に基づく解除権が認められるとしても、次に掲げる事 情によれば、本件において原告らが当該解除権を行使することは、 の行使が権利の濫用に当たるか)について(被告の主張)民法651条1項に基づく解除権が認められるとしても、次に掲げる事 情によれば、本件において原告らが当該解除権を行使することは、権利の 濫用に当たり許されない。 原告らは、被告に対し、学業等を理由として、令和5年6月頃から、同年7月末に契約を解除し活動を終了することを申し入れていたにもかかわらず、それ以降も活動を続け、同年8月以降には別のエージェントの住所をファンレターの送付先として設定するなどしているから、遅くとも本件 契約の解約を申し入れた同年6月頃から別のエージェントと交渉を始めていたことが推認される。 そうすると、原告らは、遅くとも同年6月頃から本件契約2条4項に違反する状態であったのであるから、原告らが解除権を行使することは権利の濫用(民法1条3項)である。 (原告らの主張)原告らは、解除の意思表示を行った令和5年7月13日より前に別のエージェントと交渉等をした事実はない。同年8月以降にファンレターの窓口業務を委託したことはあるが、これは専属マネジメントを内容とする本件契約に同一又は類似する契約であるとはいえないから、本件契約2条4 項に違反するものであるともいえない。 したがって、原告らによる解除権の行使が権利の濫用であるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らが本件契約の解除権を放棄したといえるか)について ⑴ 民法656条が準用する651条1項は、委任契約が当事者間の信頼関係を基礎とする契約であることに鑑み、各当事者がいつでもその解除をすることができる旨規定している。同項の上記の趣旨目的に鑑みれば、委任者の意思に反して事務処理を継続させることは、委任者の利益を阻害し、もって委 る契約であることに鑑み、各当事者がいつでもその解除をすることができる旨規定している。同項の上記の趣旨目的に鑑みれば、委任者の意思に反して事務処理を継続させることは、委任者の利益を阻害し、もって委任契約の本旨に反することからすると、委任者が委任契約を解除 することによって、受任者が不利益を受ける場合には、受任者は、同条2 項に基づき、委任者から損害の賠償を受けることによって、その不利益を填補されれば足りるというべきである(最高裁昭和54年(オ)第353号同56年1月19日第二小法廷判決・民集35巻1号1頁参照)。 したがって、委任者は、明らかに解除権を放棄したと認められる特段の事情がない限り、いつでも委任契約の解除をすることができるものと解す るのが相当である。 これを本件についてみると、証拠(甲2)によれば、本件契約12条2項は、契約当事者は契約期間内であっても合意により解除することができる旨規定するところ、上記の規定内容は、合意解除を定めたものにすぎず、原告らが本件契約の解除権を放棄する旨を明記するものとはいえない。 上記の事情の下においては、上記特段の事情を認めることはできず、原告らは、民法656条が準用する651条1項の規定により、いつでも本件契約を解除することができるというべきである。 ⑵ これに対し、被告は、本件契約の性質及び態様によれば、本件契約は途中解約を前提としないものである上、本件契約12条2項は契約期間内の 任意解除を排除する規定であり、上記特段の事情が認められる旨主張する。 しかしながら、証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば、本件契約は、原告らの芸能活動におけるマネジメントを主たる目的とするものであり、そもそも、委任者である原告らの利益のために締結されたものであることが しながら、証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば、本件契約は、原告らの芸能活動におけるマネジメントを主たる目的とするものであり、そもそも、委任者である原告らの利益のために締結されたものであることが認められる。そうすると、本件契約が途中解約を前提としないものであ ったとする被告の主張は、その前提を欠く。 そして、委任者の解除権が制限されるのは、委任者において明らかに解除権を放棄したという特段の事情が認められる場合に限られると解すべきことは、上記において説示したとおりである。しかしながら、本件契約に係る書式は、被告の定型書式を利用したものにすぎず、原告らが解除権を 放棄する旨の特約は明記されていないのであるから、原告らにおいて明ら かに解除権を放棄したものと認めることはできない。 その他に、被告主張に係る本件契約の性質及び態様を改めて検討しても、原告らにおいて明らかに解除権を放棄したことをいうに足りず、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。 2 争点2(本件契約の解除権の行使が権利の濫用に当たるか)について被告は、原告らにおいて本件契約の解除権が認められるとしても、原告らは本件契約の契約期間中に別のエージェントと交渉等をしていた事実を踏まえると、原告らが解除権を行使することは、権利の濫用に当たり許されない旨主張する。 しかしながら、本件全証拠によっても、被告主張に係る事実を認めるに足りず、被告の主張は、その前提を欠く。のみならず、委任者の解除権が制限されるのは、委任者において明らかに解除権を放棄したという特段の事情が認められる場合に限られるというべきであるから、仮に被告主張に係る上記事実が認められたとしても、委任契約の性質に鑑み、その解除 限されるのは、委任者において明らかに解除権を放棄したという特段の事情が認められる場合に限られるというべきであるから、仮に被告主張に係る上記事実が認められたとしても、委任契約の性質に鑑み、その解除権の行使が権利の濫用に当たるものと直ちに解することはできない。その他に、被告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても、前記説示に係る委任契約の性質に鑑みると、いずれも上記判断を左右するに至らない。したがって、被告の主張はいずれも採用することができない。 第4 結論 よって、原告らの請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 坂本達也 裁判官 尾池悠子 (別紙)(省略)
▼ クリックして全文を表示