- 1 - 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 本件各附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 控訴人らは、被控訴人1に対し、連帯して1925万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5分 の割合による金員を支払え。 ⑵ 控訴人らは、被控訴人2に対し、連帯して1925万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを20分し、その9を被控訴人らの負担とし、その余を控訴人らの連帯負担とする。 4 この判決は、第2項⑴及び⑵に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨⑴ 原判決中控訴人ら敗訴部分をいずれも取り消す。 ⑵ 前項の部分につき、被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 2 附帯控訴の趣旨 原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 控訴人らは、被控訴人1に対し、連帯して3600万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 控訴人らは、被控訴人2に対し、連帯して3600万円及びこれに対する 平成23年11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払 - 2 -え。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 平成23年11月当時、指定暴力団五代目E會(E會)において、控訴人Aは総裁、控訴人Bは会長、Cは構成員であった。被害者は 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 平成23年11月当時、指定暴力団五代目E會(E會)において、控訴人Aは総裁、控訴人Bは会長、Cは構成員であった。被害者は建設業者であるD株式会社の会長であり、複数の建設団体の会長、副会長等であった。 本件は、被害者の子である被控訴人らが、被害者は建設業界からの暴力団排除の動きに対する報復と建設業界における利権確保のための見せしめのため、Cによる銃撃を受けて死亡した(本件犯行)として、控訴人らに対し、民法715条又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)31条の2に基づき、慰謝料等の各損害金3600万円及びこれに対する不法行為の 日である平成23年11月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 原判決が各損害金1650万円及びこれに対する前記各遅延損害金の限度で被控訴人らの請求を認容したところ、各敗訴部分を不服として、控訴人らが控 訴をし、被控訴人らが附帯控訴をした。 2 前提事実、争点及び当事者の主張は、次のとおり原判決を補正し、後記3のとおり控訴理由を追加し、後記4のとおり附帯控訴理由を追加するほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 2頁24行目の「被告A」から次行目の「務めていた」までを「控訴人Aが総裁であり、控訴人Bが会長であった」と改める。 ⑵ 4頁4行目の「相まって」を「背景として」と、7行目の「E會に」を「E會において、同會に」と、13行目の「本件犯行を行った」を「本件犯行が 行われた」と、18行目の「任務」を「役割 ⑵ 4頁4行目の「相まって」を「背景として」と、7行目の「E會に」を「E會において、同會に」と、13行目の「本件犯行を行った」を「本件犯行が 行われた」と、18行目の「任務」を「役割」と各改める。 - 3 -⑶ 9頁15行目の「その」の次に「主張の」を加え、16行目の「被害者」を削る。 3 控訴理由⑴ 本件犯行は、威力利用資金獲得行為に該当しない。 被害者は、平成23年まで、E會にみかじめ料を支払う建設業界側の窓口 を務め、みかじめ料の支払を拒んでいなかった。このため、本件犯行は、E會が建設業界からみかじめ料等の利権を得続けるためのものではない。 ⑵ 控訴人Aは、暴対法31条の2の「代表者等」に該当しない。 E會の「代表者等」は、会長及び執行部の構成員であり、総裁は隠居後の名誉職にすぎない。控訴人Aは、平成23年11月当時、総裁にすぎず、執 行部の構成員でもなかった。控訴人Aは、會の行事等での序列が1位であったが、儀礼的なものにすぎない。 ⑶ 被害者の慰謝料は、不法行為による死亡事案の相場に照らして、2000万円から2500万円程度とすべきである。 ⑷ 被控訴人らは、平成29年2月9日又は同年3月31日に本件犯行の損害 及び加害者を知ったので、その3年後に消滅時効が完成している。 被害者は、平成23年当時、建設業界の幹部として暴力団排除運動に関与していたところ、同年11月に射殺されたこと、E會の組員らは、平成29年2月9日に本件犯行の犯人として起訴され、これらの経緯について報道等がされたことを総合すれば、被控訴人らは、同日か遅くとも同年3月31日 には、本件犯行がE會の威力利用資金獲得行為に該当することをも知ったといえる。 ⑸ 本 、これらの経緯について報道等がされたことを総合すれば、被控訴人らは、同日か遅くとも同年3月31日 には、本件犯行がE會の威力利用資金獲得行為に該当することをも知ったといえる。 ⑸ 本件債権譲渡は、被控訴人らに訴訟行為をさせることを主たる目的とした信託に該当するので、無効である。 被害者の死亡から本件債権譲渡までは約10年が経過しているのに対し、 本件債権譲渡から本件提訴までは1か月しか経過していない。 - 4 - 4 附帯控訴理由⑴ 被害者の慰謝料は、交通事故の死亡事案の相場でも2500万円から3000万円とされていることに照らせば、6000万円を下らない。 ⑵ 弁護士費用は、被控訴人らが特定危険指定暴力団のトップらを相手に提訴するため複数の弁護士に依頼せざるを得なかったことに照らせば、慰謝料の 2割に相当する1200万円とすべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、各損害金1925万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5分の割合による各遅延損害金の限度で被控訴人らの請求を認容し、その余をいずれも棄却するのが相当と判断する。その理由は、次 のとおり原判決を補正し、後記2のとおり控訴理由に対する判断を付加し、後記3のとおり附帯控訴理由に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 12頁5行目の「被告Aが務めており」を「控訴人Aであり」と改める。 ⑵ 17頁14行目の「意に反する」から次行目の「保持する」までを「意に反する言動を行う者には加害する姿勢を示して委縮させ、みかじめ料支払の途絶の動きを妨害し、會の資金回収の方途を維持する」と改める。 ⑶ 4行目の「意に反する」から次行目の「保持する」までを「意に反する言動を行う者には加害する姿勢を示して委縮させ、みかじめ料支払の途絶の動きを妨害し、會の資金回収の方途を維持する」と改める。 ⑶ 20頁5行目の「犯行態様」を「極めて危険性が高く残忍な犯行態様、突如妻子らを残して逝かざるを得ないことによる被害者の無念さ、建設業界の 幹部が暴力団排除に取り組んでいた矢先に射殺されたことによる社会的影響、一家の支柱となる者が交通事故で死亡した場合における一般的な慰謝料額との均衡」と改める。 ⑷ 20頁7行目から次行目にかけての「3000万円」を「3500万円」と、17行目の「300万円」を「350万円」と、それぞれ改める。 ⑸ 22頁8行目の「もの」を「信託」と改める。 - 5 -⑹ 22頁11行目の「3300万円」を「3850万円」と改める。 2 控訴理由に対する判断⑴ 本件犯行が威力利用資金獲得行為に該当することは、原判決「事実及び理由」第3の2のとおりである。 証拠(甲5、78、79、乙8~11、15~17、19、20、22) によれば、被害者は、平成23年頃までE會にみかじめ料を支払う建設業界側の窓口であった一方で、同年頃から建設業界内で暴力団への利益供与を断るよう呼び掛けていたことが認められ、みかじめ料の支払の途絶に向けて活動していたといえる。そうすると、本件犯行は、E會が建設業界からみかじめ料等の利権を得続けるためのものであったと認めることができる。 ⑵ 控訴人Aが暴対法31条の2の「代表者等」に該当することは、原判決「事実及び理由」第3の3のとおりである。 前記第3の3摘示の事情に加え、控訴人Aは、平成23年7月の総裁就任後も、組員から自宅を「本 暴対法31条の2の「代表者等」に該当することは、原判決「事実及び理由」第3の3のとおりである。 前記第3の3摘示の事情に加え、控訴人Aは、平成23年7月の総裁就任後も、組員から自宅を「本家」と呼ばれたり、総裁秘書等が付き、24時間態勢で部屋住み等から身の回りの世話を受けたり、ほぼ毎朝幹部組員による 訪問を受けたりしていたことも併せて考慮すれば(認定事実⑴ウ)、五代目E會における総裁の地位は、名誉職や儀礼的なものとはいえず、実質的な首領に該当するというべきである。 ⑶ 被害者の慰謝料を3500万円とするのが相当であることは、補正後の原判決「事実及び理由」第3の4のとおりである。 ⑷ 被控訴人らが平成29年2月9日や同年3月31日に本件犯行の損害及び加害者を知ったと認められないことは、原判決「事実及び理由」第3の5のとおりである。 証拠(甲5、乙8~22)によれば、各種報道機関は、平成29年1月19日頃や同年2月9日頃、捜査機関等への取材に基づき、E會の組員らが本 件犯行の容疑で同年1月19日に逮捕されたり同年2月9日に起訴されたり - 6 -したこと、被害者が平成23年頃から建設業界内で暴力団への利益供与を断るよう呼び掛けていたところ同年11月に射殺されたことについて多数報道したことが認められる。しかし、これらの報道に被控訴人らが接していたことを認めるに足りる証拠はない上、仮に接していたとしても、これらの報道は、捜査機関や報道機関が発表した一方的な事実を内容とするものにすぎな いから、上記認定事実から被控訴人らにおいて一般人が本件犯行はE會の威力利用資金獲得行為に該当すると判断するに足りる事実を認識したということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ⑸ 本件債権 上記認定事実から被控訴人らにおいて一般人が本件犯行はE會の威力利用資金獲得行為に該当すると判断するに足りる事実を認識したということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ⑸ 本件債権譲渡が被控訴人らに訴訟行為をさせることを主たる目的とした信託と認められないことは、補正後の原判決「事実及び理由」第3の6のとお りである。 被控訴人らが被害者の妻との間で専ら同人の利益を図るために本件訴訟を提起すべき旨の契約を締結したことを認めるに足りる証拠はないから、本件債権譲渡を訴訟信託と認める余地はないというべきである(信託法2条1項、10条)。 3 附帯控訴理由に対する判断⑴ 被害者の慰謝料を3500万円とするのが相当であることは、補正後の原判決「事実及び理由」第3の4のとおりである。 ⑵ 弁護士費用を350万円とするのが相当であることは、補正後の原判決「事実及び理由」第3の4のとおりである。 主張立証が甚だ複雑困難な事案では、弁護士費用を他の損害額の1割以上とするのが相当な場合もあると解されるが、本件がそのような事案に該当するものとは認められない。 第4 結論以上によれば、被控訴人らの請求は、暴対法31条の2に基づき、各損害金 1925万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5 - 7 -分の割合による各遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるから、その限度でそれぞれ認容し、その余はいずれも棄却すべきである。 よって、これと異なる原判決を変更することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官松田典浩 主文 決を変更することとして、主文のとおり判決する。 理由 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官松田典浩 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学
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