- 1 -令和元年(あ)第953号殺人,強盗殺人未遂被告事件令和3年6月29日第三小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人堀和幸ほかの上告趣意のうち,憲法31条,34条,36条,98条2項違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから,理由がなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 付言すると,本件は,被告人が,平成19年12月,債務の返済を免れる目的で,知人にシアン化合物を服用させて殺害しようとしたが,シアン中毒に基づく全治不能の高次機能障害等の傷害を負わせたにとどまったという強盗殺人未遂と,平成24年3月から同25年12月までの間,遺産取得等の目的で,いずれも当時の夫や内縁の夫ら3名にシアン化合物を服用させて殺害したという殺人3件から成る事案である。 被告人は,強盗殺人未遂の被害者には,犯行当日までに返済を要する多額の債務を負っており,殺人の被害者らとの関係では,婚姻又は遺言により遺産を取得できる状態となっていたのであって,被害者らの殺害により財産的利益を得ようとした動機に酌むべき点はない。結婚相談所を利用して次々と高齢の被害者らと知り合っ- 2 - ,婚姻又は遺言により遺産を取得できる状態となっていたのであって,被害者らの殺害により財産的利益を得ようとした動機に酌むべき点はない。結婚相談所を利用して次々と高齢の被害者らと知り合っ- 2 -た上,被害者らをして,被告人のことを,将来を共にする相手,あるいは多額の金を預ける相手として信頼させ,その信頼に乗じて,猛毒のシアン化合物を入れたカプセルを服用させるという態様は計画的かつ巧妙であり,生命侵害の危険性が高く,強固な殺意に基づく冷酷なものである。同種の犯行を約6年の間に4回にわたり反復累行しており,人命軽視の態度が顕著というほかない。3名の生命を奪い,1名に重篤な傷害を負わせたという結果は重大であり,遺族らは厳しい処罰感情を示している。これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重大である。 そうすると,前科がないこと,高齢であることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 検察官平光信隆公判出席(裁判長裁判官宮崎裕子裁判官戸倉三郎裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官長嶺安政)
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