1 令和4年12月8日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第26273号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 令和4年9月15日判 決主 文51 被告は、原告に対し、22万円及びこれに対する平成30年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 104 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する平成29年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 15第2 事案の概要本件は、原告が、被告がインターネット上に投稿した記事によって、原告の名誉が毀損され、又は名誉感情が侵害されたと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償金110万円及びこれに対する平成29年11月10日(上記記事の掲載日)から支払済みまで民法(ただし、平成29年法律第44号による改正前のもの。以下20同様。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(認定に用いた証拠は括弧内に示した。)⑴ 当事者ア 原告は、「A」との芸名で音楽家、アーティスト、ライターとして活動している者である。 25原告は、平成29年11月9日、沖縄県名護市aにおいて、米軍基地に関するいわ2 ゆる基地反対運動(以下、沖縄県内における同種の活動を指して、単に「基地反対運動」という。)に参加し、新基地建設現場ゲート前で抗議行動中に逮捕されたことがあった(以下「本件逮捕」という。)。 イ 被告は、全国紙の新聞である「産経新聞」を発行する 動を指して、単に「基地反対運動」という。)に参加し、新基地建設現場ゲート前で抗議行動中に逮捕されたことがあった(以下「本件逮捕」という。)。 イ 被告は、全国紙の新聞である「産経新聞」を発行する株式会社である。 ⑵ 被告による記事の投稿5被告は、平成29年11月10日、別紙投稿記事目録記載の記事をインターネット上の自身のウェブサイトに投稿した(以下「本件記事」という。)。 ⑶ 本件記事の削除本件記事は、令和2年6月10日まではインターネット上で掲載されており、その後に削除された(弁論の全趣旨)。 10⑷ 消滅時効に関する事実関係ア 原告は、遅くとも平成29年11月11日には、本件記事の存在を知った。 その後、原告は、令和3年10月11日に本件訴えを提起した。 イ 被告は、原告に対し、令和4年1月18日到達の準備書面により、後記2⑷の時効を援用するとの意思表示をした(顕著な事実)。 152 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 本件各記載(その定義は、後記(原告の主張)ア参照)により原告の名誉が毀損されたといえるか(原告の主張)ア 本件記事には、以下の①から③までの各記載がある(以下、これらの記載を併20せて「本件各記載」といい、個別に指す場合には「本件記載①」などという。)。 ① 「cを皮切りにaでも暴力の限りを尽くし、その過激さから仲間割れを起こし、善良で穏健な仲間たちの離反を招いた」② 「相手が無抵抗だと罵声を吐いて挑発し揚げ足をとり、いざ検挙となると急に縮み上がって主張を引っ込める小心者。こんな輩が社会を荒らしている」25③ 「『朗報』に接した良識派の県民たちはネット上で『沖縄県警はいい仕事をし3 た』『天誅(てんちゅう)が下った』『沖縄から追放、強制 っ込める小心者。こんな輩が社会を荒らしている」25③ 「『朗報』に接した良識派の県民たちはネット上で『沖縄県警はいい仕事をし3 た』『天誅(てんちゅう)が下った』『沖縄から追放、強制送還すべき』などと声を上げた」イ 本件各記載により摘示された事実又は述べられた論評の内容等は、一般の読者の普通の注意と読み方に照らし、以下のとおりとされるべきである。 本件記載①については、原告が同記載に現れた各地で暴力を振るい、そのため5仲間の離反を招いたとの事実を摘示するものである。これは、原告が粗暴で問題ある人物である旨の印象を与え、社会的評価を低下させることが明らかである。 本件記載②については、原告が無抵抗の相手には罵声を吐くなどの行為をし、検挙されると急に主張を引っ込めた旨の事実を摘示した上、「小心者」、「社会を荒らしている」と論評するものである。これは、原告が無抵抗な相手を攻撃する上に不都10合になると主張を変える旨の印象を与え、社会的評価を低下させることが明らかである。 本件記載③については、原告が現行犯逮捕された旨の事実を前提として、「朗報」、「天誅が下った」、「沖縄から追放、強制送還すべき」との意見又は論評を述べるものであり、社会的評価を低下させるものである。 15ウ なお、本件記載①及び②については、インターネット上の投稿につき特に注釈をつけず、そのまま掲載したものであるから、第三者からの伝聞の形式を取って事実を摘示したと理解されるものであり、単に上記投稿がされた事実を摘示したものとは考えられない。また、本件記載③についても、「良識派の県民たち」の声という形を取って、被告自身の評価を述べたものと理解されるものである。 20(被告の主張)以下のとおり争う。 ア 事実摘示 られない。また、本件記載③についても、「良識派の県民たち」の声という形を取って、被告自身の評価を述べたものと理解されるものである。 20(被告の主張)以下のとおり争う。 ア 事実摘示の内容については、本件記載①及び②は、原告の主張するような事実を摘示したのではなく、原告に対する評価がインターネット上で投稿されたという事実を摘示するものに過ぎないというべきである。また、本件記載③についても、原告25に関してインターネット上で意見やコメントが述べられた旨の事実を摘示するに過4 ぎないというべきである。 上記のとおり理解すべきことは、本件記事の文言にも現れているというべきである。 イ このように、本件記載①から③までの内容は、いずれも、原告とは政治的・社会的立場の異なる者らの原告に対する評価や意見を紹介したものであり、中立的な立場からの評価を述べたものではない。立場の異なる者らによる評価等を紹介したから5といって、原告の社会的評価は必ずしも低下しないというべきである。 ⑵ 本件記載③が不法行為を構成する名誉感情の侵害に当たるか(原告の主張)前記⑴(原告の主張)と同様、本件記載③は、被告自身による評価を述べたものと理解されるものである。 そして、本件記載③は、原告が逮捕されたという一般的には不名誉な事実を公表し10た上、「朗報」、「天誅が下った」と評価し、かつ「沖縄から追放、強制送還すべき」などとの意見を述べるものである。これは、原告の名誉感情を社会通念上許される範囲を超えて著しく侵害するものである。 (被告の主張)争う。 15まず、前記⑴(被告の主張)と同様、本件記載③は原告に関するインターネット上の意見等を紹介するに過ぎず、被告自身が意見を述べているものではない。よって、被告が原 被告の主張)争う。 15まず、前記⑴(被告の主張)と同様、本件記載③は原告に関するインターネット上の意見等を紹介するに過ぎず、被告自身が意見を述べているものではない。よって、被告が原告の名誉感情を侵害したものではない。 また、仮に本件記載③が被告の意見を述べるものであるとしても、原告は、後記⑶(被告の主張)のとおり、暴力的行為等を行った上、その状況を自ら積極的に発信し20てきた経過がある。このような経過を元に「天誅」などと厳しいコメントをされたとしても、甘受すべき範囲内というべきである。よって、本件記載③は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為には当たらない。 ⑶ 本件各記載についての違法性阻却事由等が認められるか(被告の主張)25以下の点から、本件記載①及び②については、いわゆる真実性等の抗弁が成立する。 5 また、本件記載③については、公共性及び公益目的が認められ、論評の前提となる事実は真実であり、論評としての域を逸脱するものではない。よって、本件記事は、本件記載①から③までのいずれの点についても違法性を欠くというべきである。 ア 公共性、公益目的について(本件記載①から③までに共通)本件記事は、原告が逮捕された旨を報道するものであるから、その際に被疑者の経5歴、主だった活動、周囲からの評価等を併せて報じることにつき、公共性が認められることは明らかである。 また、被告は、上記のとおり公共性を有する事項を広く読者に提供する意図で本件記事を行ったものであり、専ら公益を図る目的であったことも明らかである。 イ 本件記載①及び②の真実性等について10 前記⑴(被告の主張)のとおり、本件記載①及び②が摘示する事実は、原告に関する意見等がインターネット上で述べられたというものであ かである。 イ 本件記載①及び②の真実性等について10 前記⑴(被告の主張)のとおり、本件記載①及び②が摘示する事実は、原告に関する意見等がインターネット上で述べられたというものである。そして、これらはいずれも真実であるか、仮に真実ではなかったとしても、被告において真実であると信じるについて、相当な根拠がある。 また、仮に、本件記載①及び②の摘示する事実が、前記⑴(原告の主張)イ15及びのようなものであったとしても、①原告が度々暴力的行為・威圧的行為に及んでいたこと、②原告が仲間割れを起こしていること、③相手が無抵抗だと罵声を吐いて挑発的言動をするが、検挙となるとそれまでの態度を覆すことは、いずれも真実である。 ウ 本件記載③について20 本件記載③による意見又は論評の前提となる事実は、前記⑴(被告の主張)アのとおり、原告に関してインターネット上で意見等が述べられたというものである。 また、仮に、本件記載③について、前記⑴(原告の主張)イのように理解するとしても、意見又は論評の前提となる事実は本件逮捕である。そして、これらはいずれも真実である。 25 そして、原告は、前記のとおり暴力的行為や威圧的言動をするなどして、政治6 的・社会的活動を過激な形で行っており、かつ、それを積極的に発信していた。このような経過からは、「天誅」や「沖縄から追放、強制送還すべき」などと評する意見が出ることや、それを報じることは、意見又は論評としての域を逸脱するものではないというべきである。 (原告の主張)5ア 公共性、公益目的について(本件記載①から③まで共通)上記の点については特に争わない。 イ 本件記載①及び②の真実性等について以下のとおり否認又は争う。 まず、摘示 5ア 公共性、公益目的について(本件記載①から③まで共通)上記の点については特に争わない。 イ 本件記載①及び②の真実性等について以下のとおり否認又は争う。 まず、摘示された事実は前記⑴(原告の主張)のとおりであって、単に原告に10対する意見が述べられたなどというものではない。 そして、原告は、cやa等の各地で暴力を振るったことは一切なく、暴力に起因して仲間割れを起こしたこともない。また、本件逮捕に際して、罪状を告げられた際に基地内の撮影についてのものであると解釈し、動画の内容を消すと伝えたことはあるが、基地建設反対の主張を撤回したことはない。 15その他、被告の指摘する内容は、いずれも本件とは内容的に無関係であるか、本件逮捕よりも後の出来事である。 ウ 本件記載③について争う。前記⑵(原告の主張)のとおり、本件記載③は、社会通念上許される限度を超えて名誉感情を侵害する内容であり、意見又は論評の域を逸脱しているというべき20である。 ⑷ 消滅時効の成否(被告の主張)原告は、本件記事の掲載当日に、本件記事の存在を知ったはずである。そして、本件訴えの提起時点で、消滅時効期間である3年が経過しているから、原告の被告に対25する損害賠償請求権については、消滅時効が完成しているというべきである。 7 また、仮に、本件記事がインターネット上で掲載されている間は被告の行為が継続していると評価されるとしても、本件訴えの提起時点で3年を経過している部分に係る原告の被告に対する損害賠償請求権については、消滅時効が完成しているというべきである。 (原告の主張)5本件のように、インターネットを通じて投稿された記事を継続的に公開することによる名誉毀損については、消滅時効 償請求権については、消滅時効が完成しているというべきである。 (原告の主張)5本件のように、インターネットを通じて投稿された記事を継続的に公開することによる名誉毀損については、消滅時効の起算点は当該記事を削除した時点とされるべきである。 そうすると、本件記事が削除されたのは令和2年6月10日以降であるから、消滅時効は完成していない。 10⑸ 原告の損害額(原告の主張)被告が全国紙を発行する会社であり、その記事には高い信用性があると受け取られていること、本件記事について裏付け取材がされていない上、表現内容も原告の名誉を低下させる程度が高いものであること、原告が、社会的な評価により仕事の幅が左15右される職業であることなどの事情に鑑みると、原告が本件記事により受けた精神的苦痛を慰謝するのに相当な金額は、100万円を下らない。 また、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は、10万円である。 (被告の主張)20争う。 なお、前記⑷(被告の主張)のとおり、少なくとも、本件訴えの提起時点で3年を経過した部分に係る原告の被告に対する損害賠償請求権については、時効消滅しているといえる。そして、インターネット上に掲載された記事は、掲載開始当初に最も影響があり、時間の経過とともに影響が薄れるものであるから、時効期間が経過してい25ない部分による影響はわずかなものであり、損害賠償に値するほどの損害は発生して8 いないというべきである。 関連して、本件記事の閲覧数(ただし、正確には本件記事へのリンクをクリックした者の人数であり、記事の内容を実際に読んだ者の人数とは差があると考えられる。 以下同様である。)を見ても、平成29年11月10日から数日が大部分である。その後、令和2年 件記事へのリンクをクリックした者の人数であり、記事の内容を実際に読んだ者の人数とは差があると考えられる。 以下同様である。)を見ても、平成29年11月10日から数日が大部分である。その後、令和2年6月に原告の他の言動が話題となった際、これに関連して閲覧数が増え5たが、原告が暴力を振るったと理解したコメントは見当たらない。 第3 判断1 争点⑴(本件各記載により原告の名誉が毀損されたといえるか)について⑴ 一般に、名誉毀損の成否が問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見・論評の表明であるかについては、一般読者の普通の注意と読み方を基準10として、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものであり、そのような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見・論評の表明に属するものというべきである。特に、当該表現が第三者からの伝聞内容の紹介等の形を取る場合であっても、15前後の文脈や一般の読者の知識、経験等を考慮し、上記特定の事項を主張するものと理解されるものであれば、当該表現は事実を摘示するものとみるのが相当である。 また、人の社会的評価を低下させる表現は、事実の摘示であるか、意見・論評の表明であるかを問わず、人の名誉を毀損するというべきであるところ、ある表現における事実の摘示又は意見・論評の表明が人の社会的評価を低下させるかどうかは、当該20表現についての一般読者の普通の注意と読み方とを基準としてその意味内容を解釈して判断すべきものと解される。(以上につき、最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁、最高裁平成9年9月9日第三小 読者の普通の注意と読み方とを基準としてその意味内容を解釈して判断すべきものと解される。(以上につき、最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁、最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁、最高裁平成16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)25⑵ 以上に基づき、本件各記載について検討する。 9 ア 本件記載①についてまず前提として、本件記事全体につき検討すると、本件記事は、全国紙を発行する被告のウェブサイトにおける記事として投稿されたものであるから(前記前提事実⑴イ、⑵)、一般の読者が本件記事を読む際には、基本的には事実関係を報じるものと期待して読むものと解される。そして、本件各記載の直前までの記載内容を見ても、5一部に原告について「いわくつきの人物」、「評判は基地容認派の間で散々だった」などという評価にわたることが明らかと解される記載もあるものの、全体としては本件逮捕及び原告の従前の経歴や活動状況に関する事実関係を紹介する体裁で記載されている。 このような本件記事に関する読者の期待及び本件各記載の直前までの文脈を考慮10すれば、本件各記載についても、基本的には、記載された事実関係を主張するものとして理解されるものと解される。 そして、本件記載①について検討すると、別紙投稿記事目録記載のとおり、直前には「反基地活動家」や「基地容認派」などとの記載がある上、「c」や「a」との具体的な地名を挙げて「暴力の限りを尽くし」などという断定的な表現を用いている15から、基本的には、原告の反基地活動に関して、記載されている事実があった旨主張する趣旨であると理解されるのは明らかというべきである。 他方で、本件記載①及び②の直後の部分には、同各記載につ 15から、基本的には、原告の反基地活動に関して、記載されている事実があった旨主張する趣旨であると理解されるのは明らかというべきである。 他方で、本件記載①及び②の直後の部分には、同各記載につき、B(以下「B」という。)がインターネット上に投稿を行ったものである旨を明示する記載がされている(以下、この記載を、便宜上「Bの投稿に関する記載」ということがある。)。こ20のような記載の体裁のみを見れば、本件記載①は伝聞に過ぎず、直ちに事実関係を主張するものではないと理解する余地もないとはいえない。 しかしながら、Bの投稿に関する記載については、実際の事実であるかどうかにつき留保するような記載はなく、かえって、同人が原告の「行状をよく知る」として、同人の投稿内容の信用性を高めるかのような記載が見られる。そうすると、前記、25のとおり基本的には事実関係を主張するものと理解される点と併せれば、上記のB10 の投稿に関する記載は、本件記載①が事実関係を主張するものと理解することを妨げるに足りるものとはいえない。 以上から、一般の読者の普通の注意と読み方に照らせば、本件記載①は、原告が、反基地活動について実際に各地で暴力を振るい、過激な行動により仲間割れを起こすといった、記載に対応する行為に及んだ旨の事実を摘示するものというべきであ5る。 そして、このような暴力や仲間割れといった事実の摘示は、原告につき粗暴な人物であるなどの否定的評価がされるに足りるものであることは明らかであり、原告の社会的評価を低下させるものというべきである。 イ 本件記載②について10本件記載②についても、本件記事に関する読者の期待及び本件各記載の直前までの文脈は本件記載①と同様であり、そして別紙投稿記事目録記載のとおり、本件記載①に引き続い イ 本件記載②について10本件記載②についても、本件記事に関する読者の期待及び本件各記載の直前までの文脈は本件記載①と同様であり、そして別紙投稿記事目録記載のとおり、本件記載①に引き続いて原告の言動につき具体的な内容を断定的に述べるものである。また、Bの投稿に関する記載を考慮しても事実関係を主張するものと理解することが妨げられないことについても同様である。 15よって、本件記載②は、原告が、反基地活動について相手が無抵抗であれば罵声を吐いて挑発し揚げ足を取り、自身が検挙されると急に主張を撤回するといった、記載に対応する行為に及んだ旨の事実を摘示するものというべきである。 そして、このような事実の摘示は、原告につき相手や状況によって急に態度を変えて主張を曲げる旨の否定的評価がされるに足りるものと解され、原告の社会的評価を20低下させるものというべきである。 ウ 本件記載③について本件記載③については、まず、本件記事に関する読者の期待及び本件各記載の直前までの文脈は、本件記載①及び②と同様であり、そして、同各記載及び前記のBの投稿に関する記載に引き続いて記載されているものである。 25他方で、本件記載③の中では、「良識派の県民たち」が本件逮捕についてインターネ11 ット上で述べた意見であることを明記する旨の記載がある。しかしながら、このような記載を考慮しても、上記のような全体の文脈並びに本件記載①及び②につきBの投稿に関する記載を考慮しても伝聞に過ぎないものとは言えないこと(前記ア、イ)に照らせば、本件記載③についても、インターネット上の意見を紹介するに過ぎないものと解されない。一般の読者の普通の注意と読み方に照らし、他人の意見を紹介する5体裁を取って、被告自身の意見を述べたものと理解されるというべき いても、インターネット上の意見を紹介するに過ぎないものと解されない。一般の読者の普通の注意と読み方に照らし、他人の意見を紹介する5体裁を取って、被告自身の意見を述べたものと理解されるというべきである。 以上から、本件記載③は、本件逮捕の事実を前提として摘示した上、「朗報」、「天誅が下った」、「沖縄から追放、強制送還すべき」との論評をするものというべきである。 そして、このような記載は、逮捕の事実自体が一般的には否定的評価に結びつくこ10とが多いと解されることと併せて、本件逮捕が良い知らせである旨や原告に「追放」などといった強い不利益をもたらすべきである旨を述べるものであり、原告の活動につき否定的評価がされるに足りる内容であることは明らかである。よって、原告の社会的評価を低下させるものというべきである。 ⑶ これに対し、被告は前記第2の2⑴のとおり主張し、本件各記載が原告の名誉15を毀損するものではないとしている。 しかしながら、上記主張は、インターネット上で本件各記載に対応する投稿や意見表明が行われた旨を摘示するに過ぎないとの点を前提とするものである。このような前提を採用できないことは、前記⑵で判示したとおりであるから、被告の上記主張は前提を欠くものであって採用できない。 20⑷ 以上から、本件各記載は、原告の名誉を毀損するものと認められる。 2 争点⑵(本件記載③が不法行為を構成する名誉感情の侵害に当たるか)について⑴ア 本件記載③が被告自身による評価を述べたものと理解されること及び同記載が原告の社会的評価を低下させるに足りるものであることは、前記1⑵ウのとおり25であるから、同記載が原告の名誉感情を侵害し得る内容であること自体は認められる。 12 イ しかしながら、名誉感情を侵害する表現行為が不 せるに足りるものであることは、前記1⑵ウのとおり25であるから、同記載が原告の名誉感情を侵害し得る内容であること自体は認められる。 12 イ しかしながら、名誉感情を侵害する表現行為が不法行為を構成するのは、(それが)社会通念上許される限度を超える侮辱行為であって、人格的利益の侵害があったと認められるときに限られるものと解するのが相当である。そこで、本件記載③が社会通念上許される限度を超えて原告を侮辱するものであると認められるかが問題となる。 5ウ 本件記載③は、前記のとおり、原告が反基地活動という政治的・社会的活動を行っていること及びその中で逮捕されたこと(本件逮捕)といった経過が示され(前記1⑵ア、ウ)、さらに、原告の「評判は基地容認派の間で散々だった。」などと、原告の上記活動につき反対の立場からの評価であることをうかがわせる記載もあるといった文脈の中で、本件逮捕を好意的に評価し、原告を批判する趣旨で記載された10ものと理解することができる。そうすると、本件記載③は、原告の上記活動に対して否定的評価をするものと解され、何ら理由なく侮辱的表現を述べたものとはいえない。 また、「朗報」や、「追放、強制送還すべき」などとの表現も、原告に対する揶揄又は極端な誇張表現と解されるものであるものの、上記のような政治的・社会的活動に関連して述べられた評価であり、原告の人格や個人的属性に対して直接否定的評価を15するものとは解し難い。そうすると、社会通念上許される限度を超える侮辱とまではいい難い。 そして、「天誅が下った」との表現については、その文言のみを見れば、原告に重大な不利益がもたらされるべきことを示唆するといった理解もできないではない。しかし、前後の文脈を含めて検討すれば、本件逮捕に対する好意的な評価を極端に誇張 現については、その文言のみを見れば、原告に重大な不利益がもたらされるべきことを示唆するといった理解もできないではない。しかし、前後の文脈を含めて検討すれば、本件逮捕に対する好意的な評価を極端に誇張す20るにとどまり、逮捕の事実以外に原告へ重大な不利益がもたらされるべきとの趣旨とまで直ちに解することはできない。そうすると、前記の「朗報」等の表現と同様、社会通念上許される限度を超える侮辱とまではいい難い。 ⑵ 以上から、本件記載③につき、社会通念上許される限度を超える侮辱とは認められない。よって、本件記事につき、原告の名誉感情の侵害が成立するとは認められ25ない。 13 この点に反する原告の主張は、本件記載③が社会通念上許される限度を超えると認めるに足りる具体的指摘が見当たらず、採用することができない。 3 争点⑶(本件各記載についての違法性阻却事由等が認められるか)について⑴ 不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るものである場合に、摘示された事実がその重要な部分にお5いて真実であるとの証明があれば、当該行為は違法性を欠くものと解するのが相当である。また、ある事実を基礎としての意見又は論評の表明による名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見又は論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見又は論評としての域を逸10脱したものでない限り、違法性を欠くものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁、最高裁平成9 限り、違法性を欠くものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁、最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁等参照)。 ⑵ 以上に基づき検討する。 15ア 本件記載①及び②について本件記載①は、原告の反基地活動等の状況及び平成29年11月9日に行われた本件逮捕につき報じる文脈の中で、「cを皮切りにaでも暴力の限りを尽くし」と明記されているから、摘示事実の重要部分には、原告が同日以前の時点で、cやaを始めとした沖縄県内において、反基地活動に関して直接的な暴力行為をした旨が含ま20れることは明らかである。 また、本件記載②は、本件記載①に引き続いて、「いざ検挙となると急に縮み上がって主張を引っ込める」などと記載されているから、摘示事実の重要部分には、原告が検挙された際、反基地活動に関する主張を撤回した旨が含まれることは明らかである。 そして、上記各重要部分について真実であると認められるかについて検討する25と、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められるが、それらによ14 って、原告自身が直接的な暴力に及んだとは認めがたく、また、後記dの行為から直ちに原告が反基地活動に関する主張自体を撤回したということもできない。 a 原告は、平成28年10月26日頃、基地反対運動に参加し、関連する施設の区域からの退去を求める担当職員に対し、「お前馬鹿なんじゃねえの」、「黙れ」などと発言し、また他の参加者らとともに、担当職員らを取り囲むような行動を取った(乙56の1)。 b 原告は、平成28年10月29日頃、基地反対運動に参加し、その際に取材していたネットニュースメディ 言し、また他の参加者らとともに、担当職員らを取り囲むような行動を取った(乙56の1)。 b 原告は、平成28年10月29日頃、基地反対運動に参加し、その際に取材していたネットニュースメディアの関係者らに対して、顔を至近距離まで近づけて自身の考えを話し続けるなどという行為をした(乙5の1)。 c 原告は、平成29年2月24日頃、基地反対運動に関して起訴後勾留されてい10た人物に関し、那覇地方裁判所の敷地内に多人数で入るよう大声で呼びかけ、他の多数の参加者とともに、上記人物を今すぐ返すよう呼びかけるといった行動を取った(乙6の2)。 d 原告は、本件逮捕において窃盗という罪状を告げられた際、動画の内容を消す旨を述べたことがあった。 15被告は、本件記載①及び②の摘示事実の真実性につき、上記の認定事実及びこれに関する証拠以外にも、種々の事実関係を主張し、動画等の証拠を提出する。 しかしながら、これらの動画は、そもそも原告以外の者が撮影されたもの(乙5の2)、本件逮捕より後の時点のもの(乙5の3、5の4)、内容面で基地反対運動と関連がないもの(乙6の3)、時点及び内容の両面で上記同様であるもの(乙5の5から205の7まで)といった内容にとどまる。他には、前記の基地反対運動に関し起訴後勾留されていた人物(上記c)につき支持を表明すると解されるもの(乙8から10まで)がある程度であり、本件記載①及び②の摘示事実の真実性を直接裏付けるものとはいえない。 また、被告は、原告が平成29年7月31日頃に別件の捜索現場に居合わせて状況25を撮影していた際、当初は捜査員を挑発するなどの言動をしていながら、撮影に使用15 していたスマートフォンを押収すると告げられると態度を豹変させた旨を指摘し、裏付けとなる動画(乙6の3 25を撮影していた際、当初は捜査員を挑発するなどの言動をしていながら、撮影に使用15 していたスマートフォンを押収すると告げられると態度を豹変させた旨を指摘し、裏付けとなる動画(乙6の3)を指摘する。しかしながら、この動画が基地反対運動とは関連がないことは前記のとおりである上、態度の豹変とされる具体的内容は、自身のスマートフォンが押収されることにつき、撮影中の動画は消す旨を述べるなどして押収に反対したり理由説明を求めたりする旨と理解できるものである。よって、基地5反対運動を含め政治的・社会的主張を撤回したものと直ちにいうことはできない。 その他、被告の主張を踏まえて検討しても、摘示事実の重要部分としての、原告の基地反対運動に関する直接的暴力や上記運動に関する主張の撤回(上記)に当たる事実を認めるに足りる的確な事実、証拠は何ら見当たらない。 よって、本件記載①及び②の摘示事実について、真実性の証明があったとは認10められない。なお、被告は、本件記載①及び②が摘示する事実が、原告に関する意見等がインターネット上で述べられたというものであることを前提として、仮にそれが真実ではなかったとしても、被告において真実であると信じるについて、相当な根拠がある旨主張するが、既に判示したとおり、本件記載①及び②が摘示する事実は、上記のものとは異なるから、上記の主張は、前提を欠き、採用できない。 15イ 本件記載③について本件記載③については、まず、公共性及び公益目的があることについては争いがなく(前記第2の2⑶(原告の主張)ア)、また、意見又は論評の前提となる事実は本件逮捕であるところ(前記1⑵ウ)、この事実の存在自体については争いがない(前記前提事実⑴ア)。 20そこで、本件記載③が意見又は論評としての域を逸脱し た、意見又は論評の前提となる事実は本件逮捕であるところ(前記1⑵ウ)、この事実の存在自体については争いがない(前記前提事実⑴ア)。 20そこで、本件記載③が意見又は論評としての域を逸脱しているといえるか否かについて検討すると、この記載は、原告の行っていた政治的・社会的活動及びその中における本件逮捕といった経過が示された上、それに対する評価として述べられたものであり、表現の一部に相当性を欠く部分もみられるものの、原告の人格や個人的属性に対して直接否定的評価をするものとは解し難い。 25そうすると、本件記載③については、意見又は論評としての域を逸脱したものとは16 いえない。 ⑶ 以上のとおり、本件記載③については違法性が阻却されるが、本件記載①及び②については被告の主張を採用することはできない。 4 争点⑷(消滅時効の成否)について⑴ インターネット上の記事等の投稿による名誉毀損は、当該記事等がインターネ5ット上に存在し、閲覧可能な状況にある以上、日々新たな読者が生じ得て、これにより上記名誉毀損の被害者の精神的苦痛が継続的に発生し得るものと解される。しかし、上記の精神的苦痛が、上記記事等の掲載が取りやめられるまでの間のものを不可分一体のものとして把握しなければならないものであるとはいえず、また、上記被害者は、上記記事等の存在を知った時点で、その投稿者に対して慰謝料等の損害賠償を請求す10ることを妨げられていない。 そうすると、原告が本件記事の存在を知った時点で、同時点までの期間に発生した損害賠償請求権の消滅時効が進行し、それ以降は日々発生する損害賠償請求権について個別に消滅時効が進行するものと解するのが相当である。 ⑵ 以上によれば、原告は、遅くとも平成29年11月11日に本件記事の存在を15知り が進行し、それ以降は日々発生する損害賠償請求権について個別に消滅時効が進行するものと解するのが相当である。 ⑵ 以上によれば、原告は、遅くとも平成29年11月11日に本件記事の存在を15知り、その後、令和3年10月11日に本件訴えを提起しているから(前記前提事実⑷ア)、被告の不法行為により平成30年10月10日までに生じた原告の精神的苦痛に係る損害賠償請求権については消滅時効が完成している。他方で、同月11日以降に生じた原告の精神的苦痛に係る損害賠償請求権については、消滅時効が完成していない。 20そして、被告は、原告に対し、完成した消滅時効を援用している(前記前提事実⑷イ)。 したがって、被告の不法行為により平成30年10月10日までに生じた原告の精神的苦痛に係る損害賠償請求権は時効消滅したというべきである。 5 争点⑸(原告の損害額)について25⑴ア (本件記載①及び②を含む)本件記事は、全国紙を発行する被告のウェブサ17 イトにおいて投稿されたものである(前記前提事実⑴イ、⑵)。 イ また、証拠(乙12、13)及び弁論の全趣旨によれば、①本件記事が、平成30年1月頃まで閲覧されており、その後は閲覧されない状態が続いていたこと、②その後、令和2年6月22日及び同月23日に、一時的に合計3万件程度の閲覧があったことが認められる(ただし、いずれの閲覧についても、前記第2の2⑸(被告の5主張)における指摘のとおり、本件記事の内容を実際に読んだ者の人数とは差がある可能性は否定できない。)。 ウ 他方で、通常は、記事が最も注目される時期であると解される本件記事が投稿された時に近接した時期に対応する原告の精神的損害に係る損害賠償請求権については、既に時効消滅している(前記4⑵)。また、本件記事のうち本件記載③につ 最も注目される時期であると解される本件記事が投稿された時に近接した時期に対応する原告の精神的損害に係る損害賠償請求権については、既に時効消滅している(前記4⑵)。また、本件記事のうち本件記載③について10は、違法性が阻却される(前記3)。 ⑵ 上記⑴で認定した事情を含め、本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告の不法行為により原告に生じた精神的苦痛を慰謝するための金額は、20万円が相当である。また、本件における認容額や審理経過に鑑みると、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は、2万円と認めるのが相当である。 15第4 結論以上のとおりであるから、原告の請求は、22万円及びこれに対する平成30年10月11日(消滅時効の完成する部分を除き、不法行為の始期)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。よって、主文のとおり判決する。 20 東京地方裁判所民事第44部 裁判長裁判官 飛 澤 知 行 25 18 裁判官 金 田 健 児 裁判官 川 本 涼 平
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