令和2(行コ)51 障害者投票権確認等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年8月30日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所 平成29(行ウ)51
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判決文本文40,732 文字)

主 文1 原判決を次のとおり変更する。 2 本件訴えのうち,控訴人が,次回の豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票所の事務に従事する者に限らず,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき者と5して選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める部分に係る訴えを却下する。 3 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 事 実 及 び 理 由10第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 控訴人が,次回の衆議院議員,参議院議員並びに豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票所の事務に従事する者に限らず,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受15けた上で投票をすることができる地位にあることを確認する。 3 被控訴人は,控訴人に対し,110万円及びこれに対する平成28年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は,1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略称は,断りのない限り原判決の例による。)201 概要本件は,脳性麻痺により両上肢機能の障害を有し,大阪府豊中市に居住する控訴人が,成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律(平成25年法律第21号)(平成25年改正法)により改正前公選法48条2項が改正され,選挙人の投票を補助すべき者(補助者)を投票所の事25務に従事する者(投票事務従事者)から選ぶ方法に変更され,自らの希望しな - 2 - い者を補助者として投票をせざるを得なくなったものであるから,改正後公選法48条2項は,憲法15条1 に従事する者(投票事務従事者)から選ぶ方法に変更され,自らの希望しな - 2 - い者を補助者として投票をせざるを得なくなったものであるから,改正後公選法48条2項は,憲法15条1項・4項,43条,44条及び14条1項(憲法15条4項等)に違反するとして,(ア)次回の衆議院議員,参議院議員並びに豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票事務従事者に限らず,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から補助者として選任を5受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める(本件確認請求)とともに,(イ)①国会議員が平成25年改正法を制定して改正前公選法48条2項を改正後公選法48条2項に改正した行為(本件立法行為)及び②第24回参議院議員通常選挙(本件選挙)までに平成25年改正法を改正しなかった不作為(本件立法不作為)は,国賠法の適用上違法であり,本件選挙にお10いて自らの希望する補助者の協力の下で投票をできなかったことにより精神的苦痛を被った旨を主張して,被控訴人に対し,国賠法1条1項に基づき,損害賠償金110万円及びこれに対する違法行為の後の日である平成28年7月11日(本件選挙の投票日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(本件15国賠請求)事案である。 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が控訴した。 2 関係法令等の定め及び前提事実は,原判決9頁6行目の次に以下のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の1及び2のとおりであるから,これを引用する。 20「⑶ 控訴人の投票方法控訴人は,本件選挙の前は,調子が良いときは自書して投票することもあ 「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の1及び2のとおりであるから,これを引用する。 20「⑶ 控訴人の投票方法控訴人は,本件選挙の前は,調子が良いときは自書して投票することもあったが,調子が悪いときは親,友人又はヘルパーに代筆を頼んで投票することもあった。また,控訴人は,本件訴訟提起後,平成30年4月の豊中市長選挙・大阪府議会議員補欠選挙・豊中市議会議員補欠選挙ではヘルパーの代25筆により投票を行うことができたが,同市選挙管理委員会は,後日,このと - 3 - きヘルパーの代筆による投票を認めたことはミスであった旨説明しており,それ以外の選挙においてはヘルパー等の代筆による投票はできていない。 (甲7の1~3,17,控訴人本人)」3 争点⑴ 本件確認請求に係る争点5ア 訴えの適法性(争点1)(当審において追加された。)イ 改正後公選法48条2項が秘密投票を保障する憲法15条1項・4項,43条及び44条に違反するか(争点2)ウ 改正後公選法48条2項が憲法14条1項に違反するか(争点3)エ 控訴人は,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を10補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあるか(争点4)⑵ 本件国賠請求に係る争点ア 本件立法行為に係る国賠法上の違法の有無(争点5)イ 本件立法不作為に係る国賠法上の違法の有無(争点6)15ウ 損害の有無及び額(争点7)4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(訴えの適法性)について(被控訴人の主張)ア 本件確認請求に係る訴えに関する紛争は法律上の争訟とはいえない。 20「法律上の争訟」(裁判 当事者の主張⑴ 争点1(訴えの適法性)について(被控訴人の主張)ア 本件確認請求に係る訴えに関する紛争は法律上の争訟とはいえない。 20「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)は,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決できるものに限られる。そして,法令の適用により終局的に解決できるといえるためには,実定法上,当事者間の具体的な権利ないし法律関係を直接根拠づける規定があることが必要である。 25憲法47条は,投票の方法を含めて選挙制度の具体的な仕組みの決定を - 4 - 国会の立法政策に委ねており,同法には,選挙人が投票の補助者について,自らが希望する者の選任を受けることのできる地位を付与する旨の規定や,かかる地位の要件及び投票手続等を定める規定はないから,選挙権の行使に当たり,いかなる投票の方法等を定めるかについては,国会の合理的な立法裁量に委ねられたものと解すべきである。そして,公選法の規定をみ5ると,改正後公選法48条1項が代理投票の事由等について定め,同条2項が代理投票の具体的方法を定めるとおり,代理投票制度は,心身の故障その他の事由により,自ら投票所における自書投票ができない選挙人のための投票制度として,上記各規定に基づいて存在するものである。当該制度においては,投票事務従事者のうちから投票管理者が補助者2人を決定10することとしており,選挙人の補助者を任意に選択できる権利を保障し,又はそのような地位を付与するものではなく,それ以外の法令の規定にも,選挙人にかかる権利・地位を付与するものと解すべき規定はない。 したがって,改正後公選法の解釈によっては,選挙人が自ら投票の補助 うな地位を付与するものではなく,それ以外の法令の規定にも,選挙人にかかる権利・地位を付与するものと解すべき規定はない。 したがって,改正後公選法の解釈によっては,選挙人が自ら投票の補助を希望する者を投票管理者から補助者として選任を受けた上で投票するこ15とができる具体的地位を導き出すことができない。また,仮に改正後公選法48条2項の規定が憲法15条4項等に違反して無効であるとしても,その余の規定から上記具体的地位を導き出すことはできない。さらに,仮に改正後公選法48条2項が違憲無効とされたとしても,国会による個別具体的な立法行為をまたずに現行法が廃止されたり旧法が復活したりする20ことはないし,改正前公選法48条2項の定めるところによって上記具体的地位が付与されていたものでもない。 よって,本件確認請求に係る訴えは,憲法ないし公選法等の法令の適用により終局的に解決できるものとはいえず,法律上の争訟性を欠き,不適法である。 25イ 本件確認請求に係る訴えは確認の利益がない。 - 5 - 前記アのとおり,憲法ないし公選法の規定の解釈によっては,選挙人が自ら投票の補助を希望する者を投票管理者から補助者として選任を受けた上で投票することができる具体的地位を導き出すことはできず,仮に改正後公選法48条2項が違憲無効であるとしても,控訴人が次回の衆議院議員選挙等において上記の形で投票を行うには国会の立法措置を経ることが5必要である。そうすると,本件確認請求に係る訴えの判決によって控訴人が主張する上記具体的な地位の存否に係る紛争が終局的に解決されるとはいえず,同訴えは,紛争解決にとって必要かつ適切なものとはいえないから,確認の利益を欠き,不適法である。 (控訴人の主張 訴人が主張する上記具体的な地位の存否に係る紛争が終局的に解決されるとはいえず,同訴えは,紛争解決にとって必要かつ適切なものとはいえないから,確認の利益を欠き,不適法である。 (控訴人の主張)10本件確認請求に係る訴えは適法である。 公法上の法律関係に関する確認の訴えにおいて確認の利益が認められるためには,行政の活動,作用により控訴人の有する権利又は法的地位に対する危険,不安が現に存し,これを行政過程がより進行した後の時点で争うより,現在,確認の訴えを認めることが,当事者間の紛争の抜本的な解決に資15し,有効適切といえることを要する。本件確認請求が認められなければ,控訴人は,今後実施される選挙において憲法が保障する秘密投票による選挙権の行使が不可能であるところ,具体的な選挙の告示があってから法的手段に訴えたのでは,選挙日までに控訴人の権利について判断を得ることは不可能であり,選挙終了後に一個人の選挙権行使の侵害が認められたとしても当該20選挙が無効となることは事実上あり得ないことからすれば,現時点で確認請求が認められることは,控訴人の権利救済のための直截かつ唯一の方法である。 ⑵ 争点2(改正後公選法48条2項が秘密投票を保障する憲法15条1項・4項,43条及び44条に違反するか)について25(控訴人の主張) - 6 - ア 秘密投票の性質憲法15条1項・4項,43条及び44条は,一体として,選挙権の自由な行使を確保するため,秘密投票を保障している。投票の秘密は,歴史的には社会的に弱い立場の選挙人が増え,干渉,買収,威嚇等により投票の自由が侵害される危険性が高まり,不正を防止する目的で導入されたも5のであるが,現在では,投票の意思の自由を確保するために,選挙人の 社会的に弱い立場の選挙人が増え,干渉,買収,威嚇等により投票の自由が侵害される危険性が高まり,不正を防止する目的で導入されたも5のであるが,現在では,投票の意思の自由を確保するために,選挙人の秘密投票権(選挙人がいずれの候補者又は政党等に投票したかについて選挙人と結び付く形で第三者に知られないという主観的権利)が憲法上の人権として保障されていると解されている。すなわち,憲法15条4項は,国家機関が選挙人に対して,その意に反して投票の秘密を侵すことを禁じた10ものであり,選挙人の意思を問うことなく投票の秘密を制度的に確保することを要請する制度的保障を定めたにとどまるものではない。 イ 秘密投票の制限について憲法15条4項が保障する秘密投票権は,普通選挙,平等選挙,直接選挙とともに民主主義における選挙権の根幹をなす原則であり,憲法は,こ15れらを国民の立場から捉え,普通選挙,平等選挙,秘密選挙及び直接選挙を一体として国民の選挙権を構成する要素として保障しているのであるから,秘密投票権に対する制限は,選挙権又はその行使に対する制限と異なることはない。憲法47条が法律に投票の具体的方法を委ねたのは,国民の生活状況の変化,技術の進歩等に応じて投票方法にも改善が求められ20るからであって,立法機関である国会に憲法上保障された秘密投票権を制約する裁量を与えるものではない。国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,選挙権と一体である秘密投票権の制限が許容されるのは,そのような制限をすることなしに選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であるとのや25むを得ない事由が認められる場合に限られるというべきである(最高裁平 - 7 - 成17年判決参照)。 選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であるとのや25むを得ない事由が認められる場合に限られるというべきである(最高裁平 - 7 - 成17年判決参照)。 ウ 改正後公選法48条2項が憲法15条1項・4項,43条及び44条に違反すること改正後公選法48条2項は,選挙の公正を確保することを目的として,代理投票において,補助者を投票事務従事者に一律に限定し,投票事務従5事者に限らず選挙人が希望する者を補助者として選任することはできないものとするところ,これは,自書することができない選挙人に,選挙権行使のために公務員たる投票事務従事者に対する投票内容の開示を強制することとなる(選挙人が任意に投票内容を開示する場合を除く。)から,秘密投票権の制限にほかならない。また,以下のとおり,上記制限に「そのよ10うな制限をすることなしに選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であるとのやむを得ない事由」があるとはいえないから,改正後公選法48条2項は,憲法15条1項・4項,43条及び44条に違反するというべきである。 補助者による不正投票を防止し,選挙の公正を確保するためには,例15えば,ヘルパー等が自書することができない選挙人に代わって代筆した後,投票事務従事者等が,選挙人に対し,ヘルパー等が意思どおりに代筆したかを確認すれば足り,補助者を投票事務従事者に一律に限定する必要はない。 なお,このとき,投票事務従事者等が選挙人から聞いた言葉を理解で20きないことがあり得るが,そのような場合に補助者を投票事務従事者に一律に限定すれば,投票事務従事者が,選挙人が誰に投票したいかという真意を確認できない可能性がある。 ヘルパー等が代筆できることとした場合 とがあり得るが,そのような場合に補助者を投票事務従事者に一律に限定すれば,投票事務従事者が,選挙人が誰に投票したいかという真意を確認できない可能性がある。 ヘルパー等が代筆できることとした場合,選挙人が,ヘルパー等が意思どおりに代筆したと回答したとしても真意とは限らないとか,ヘルパ25ー等の選挙人に対する無言の圧力,強制があったとの可能性が否定はで - 8 - きないとしても,そのようなことは,補助者を投票事務従事者に一律に限定した場合でも生じ得ることである。 ヘルパーや弁護士といった公務員でない者は,補助者となった場合に,選挙人に対して契約又は法律に基づいて守秘義務を負うとともに,政府機関に属しない者として公務員より高度の中立性を保つことが可能で5ある一方で,投票事務従事者は,臨時職員として任用されており,守秘義務や政治的中立性の要請に自覚的であるか疑わしいから,守秘義務や中立性の観点から,補助者を投票事務従事者に限定することは合理的であるとはいえない。 郵便等投票制度においては,郵便等による不在者投票をすることがで10きる者のうち自ら投票の記載をすることができないと考えられる,公的書類等によって障害の程度が証明された者について,代理記載を可能としており,あらかじめ代理記載人となるべき者を届け出ることによって,選挙の公正や選挙人の投票意思の自由を確保することとされている(公選法49条2項,3項)。そうであれば,物理的に投票所に行くことがで15きるが自書することができない者について,代理投票の補助者を限定すべき理由がない。 (被控訴人の主張)ア 秘密投票の性質憲法15条4項前段は,選挙人の意思にかかわりなく,投票内容を知ら20れないことを制度的に保障することを要請する を限定すべき理由がない。 (被控訴人の主張)ア 秘密投票の性質憲法15条4項前段は,選挙人の意思にかかわりなく,投票内容を知ら20れないことを制度的に保障することを要請するもの,すなわち,国その他の公権力を名宛人として,投票内容を第三者に知られない選挙制度を設け,投票の秘密を確保することを要請するものであり,選挙人に対してその意に反して投票の内容を第三者に知られないことについて個人的かつ任意の放棄が可能な権利を付与するものではなく,代理投票において選挙人の意25に沿った補助者を選任できる権利ないし法的地位を付与するものでもない。 - 9 - イ 秘密投票の制限憲法は,選挙制度に関し,普通選挙の原則(15条3項),平等原則(14条1項,44条ただし書),秘密投票及び選挙人の公私にわたる無答責(15条4項)を定める一方で,投票の方法を含む両議院の議員の選挙に関する事項の具体的決定を国会の広汎な裁量に委ねている(47条)。これは,5投票の方法を含む選挙制度を具体的にどのように制度設計するかについては,短期間のうちに極めて多数の投票行為が行われるという選挙の性質上,一定の時間的制約や人的・物的設備面の制約等,考慮すべき技術的事項が多いこと,選挙制度の具体的決定には,我が国の政治的・社会的な状況等に応じて,考慮すべき政策的事項が少なくないこと,選挙権は公務として10の法的性格も有しており,選挙の公正の確保及び選挙の適正な管理執行にも配慮する必要があることによるものである。 そして,投票の方法と同様に,その決定が立法府の広汎な裁量に委ねられている両議院の議員及びその選挙人の資格の憲法適合性については,立法府の判断が,合理的裁量の範囲内にあるか否か,具体的には,立法目的15が合理的 と同様に,その決定が立法府の広汎な裁量に委ねられている両議院の議員及びその選挙人の資格の憲法適合性については,立法府の判断が,合理的裁量の範囲内にあるか否か,具体的には,立法目的15が合理的であり,その手段が立法目的を達成するために必要かつ合理的なものであるか否かという基準によって判断するものと解されている。そうすると,投票の方法を定めた立法の憲法適合性についても,これと同様の基準によって判断されるべきである。 控訴人は,最高裁平成17年判決の厳格な違憲審査基準が本件に妥当す20る旨を主張するが,当該事案は,国外に居住し,国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使の全部又は一部を認めないことの憲法適合性が争われたものであり,国民の選挙権又は選挙権の行使を制限することは原則として許されないものと解すべきことは当然であることから,当該制限に「やむを得ないと認められる事由」が25なければならない旨判示された。これに対し,本件は,選挙人に選挙権及 - 10 - び選挙権行使の機会が与えられていることを前提として,改正後公選法48条2項により,代理投票の補助者が投票事務従事者に限定されていることの憲法適合性(選挙権の行使を制限する規定ではなく,自書能力を有しない者の選挙権の行使を可能とするための救済的措置として設けられた投票の方法に関する規定の憲法適合性)が争われている事案であるから,最5高裁平成17年判決の事案とは異なり,その射程は本件に及ばない。仮に憲法15条4項前段が選挙人に秘密投票権を主観的権利として保障するとしても,代理投票制度は,議会制民主主義の根幹を成す選挙権の行使の機会を保障するために投票の秘密が制約されるものであるから,選挙権又は選挙権の行使それ自体に対す 密投票権を主観的権利として保障するとしても,代理投票制度は,議会制民主主義の根幹を成す選挙権の行使の機会を保障するために投票の秘密が制約されるものであるから,選挙権又は選挙権の行使それ自体に対する制限の合憲性が争点となっている事案とは10違憲審査基準が異なるのは当然である。 ウ 改正後公選法48条2項が憲法15条1項・4項,43条及び44条に違反しないこと 改正後公選法48条2項は,立法目的が合理的であり,立法目的を達成する手段としては,代理投票の補助者を投票事務従事者に限定するこ15とが必要かつ合理的である。 a 改正後公選法48条2項の立法目的は,選挙の公正な実施を確保する点にあり,同項は民主主義の根幹を成す公職選挙の公正な実施を確保するという極めて重要な法益を実現するためのものであるから,立法目的が合理的なものであることは明らかである。 20b 改正後公選法48条2項の立法目的を達成するためには,以下のとおり,代理投票の補助者を投票事務従事者に限定することが必要かつ合理的である。 平成25年改正法は,成年被後見人の選挙権を一律に回復することとしたものであるが,その場合,平成24年4月12日時点で,1325万6484人の成年被後見人が選挙権を有することとなり,将来的に - 11 - は,認知症を有する国民や知的障害を有する国民等,多数の国民が成年被後見人となる可能性があることが議論され,代理投票制度の利用の比率が高まることが予想されていた。そして,平成25年改正法の制定に至るまでも,選挙人が十分な判断能力を有しないこと等に乗じた公選法違反事件が続いており,平成25年2月にも,特別養護老人5ホームにおいて,不在者投票における代理投票の補助者を務めた同ホームの職員が, でも,選挙人が十分な判断能力を有しないこと等に乗じた公選法違反事件が続いており,平成25年2月にも,特別養護老人5ホームにおいて,不在者投票における代理投票の補助者を務めた同ホームの職員が,意思表示のできない高齢者の投票用紙に候補者の氏名を記載した事件が発生していた。改正後公選法48条2項は,前記の選挙権回復の状況及び公選法違反の状況等を受けて制定されたものである。 10代理投票においては,かかる状況に加え,候補者等の氏名を確認するときは,選挙人本人の意思を確実に確認するため特に慎重さが求められること,補助者は,補助者として知った選挙人の投票の秘密を厳守できる者であること,公選法に従った取扱いをすること等といった要請が存する。しかし,補助者となろうとする者に対してその政治的15中立性を個別に確認することは,思想良心の自由(憲法19条)との関係で問題が生じる上,短期間のうちに極めて多数の投票行為が行われるという選挙の性質上,投票管理者において,政治的中立性を有する者か否か,前記の要請に応える能力等を有する者か否かを投票所で適切に判断することは,時間的・技術的にも困難である。 20一方,投票所における代理投票の補助者として想定されている投票事務従事者は,選挙管理委員会や市役所等の職員(地方公務員)であり,前記のような要請に応えることが可能である上,選挙人の指示した候補者の氏名等について守秘義務が課され(刑罰もある。),一定の政治的中立性が法律上要請されている(地方公務員法34条1項,3256条1項,公選法136条)。そして,投票事務従事者は,政治的中立 - 12 - 性が法律上要請されている投票管理者(公選法88条,135条)の指揮命令系統下にあることからすれば,法律上,政治的中立性が要求され して,投票事務従事者は,政治的中立 - 12 - 性が法律上要請されている投票管理者(公選法88条,135条)の指揮命令系統下にあることからすれば,法律上,政治的中立性が要求されておらず,投票管理者との指揮命令関係も存在しない者と比較して,その政治的中立性が強く担保されているものといえる。したがって,選挙の公正な実施を確保するためには,投票所における代理投票5の補助者を投票事務従事者に限定することが必要かつ合理的である。 秘密投票主義は,誰に投票したかを秘密にする制度をいうのであるから,選挙人が投票する被選挙人の氏名等を伝える補助者が誰であるかによって,投票の秘密が害されるか否かが変わるものではない。また,選挙人が補助者を個人的に信頼しているとしても,その者が選挙10人の指示どおりに投票するなど適切に行動するか否かは別の問題であり,投票事務従事者は,政治的中立性及び守秘義務が法律上要請されている者として,補助者として適切に行動することが期待できる。 改正後公選法48条2項は,選挙の公正を図るため,投票管理者による補助者の選任に当たっての裁量を投票事務従事者からしか選任する15ことができないように限定したものであって,控訴人を含む選挙人の権利を制限するものではない。 すなわち,代理投票制度は,本来,当該選挙時に心身の故障その他の事由によって自書することができない選挙人のため,その投票の機会を確保し,選挙権の行使を実質的に保障するために設けられた例外的な制20度であり,補助者が誰であるかにかかわらず,候補者の氏名を告げることが必須であるという点において,投票の秘密の制約を不可避的に伴うものである。なお,自書投票制度や記号式投票制度その他投票の秘密の要請に適合する第三者が介在しないいかなる投票方法を の氏名を告げることが必須であるという点において,投票の秘密の制約を不可避的に伴うものである。なお,自書投票制度や記号式投票制度その他投票の秘密の要請に適合する第三者が介在しないいかなる投票方法を採用するとしても,心身の故障等により本人自身による投票行為ができない選挙人は25必ず存在することから,そのような選挙人においても投票の機会を確保 - 13 - する制度が必要となり,その制度は,本人自身が投票行為をすることができない以上,必然的に選挙人以外の第三者が投票行為に介在する代理投票制度とならざるを得ないものである。 そうであるところ,改正前公選法48条2項も,補助者を決定する権限を投票管理者のみに与えており,代理投票の補助者は,投票所に入る5ことができる者,すなわち,選挙人,投票立会人,投票事務従事者等でなければならず(58条2項),補助者の選任に当たっては,補助者の承諾を要するものの,選挙人については,その承諾すら必要とされず,補助者の選任について何らの権利も与えられていなかった。 代理投票制度においては,投票が投票所等で行われる一方で,対象者10が郵便等投票制度よりも限定されていないことから,投票の際に投票管理者が適切な管理を行うことで不正投票の防止を図ることが可能であり,かつ,合理的である。そして,選挙人が投票意思を適切に表示することができる者であるか否か,補助者が選挙人の意思に反した投票を行うおそれがあるかどうかなどを投票管理者が適切に判断することは極15めて困難であるから,投票管理者においてそのような不正行為を行うおそれが類型的にないと判断できる投票事務従事者を補助者として選定することにより不正投票を防止しようとすることには合理性がある。これに対し,郵便等投票制度における代理記載制度 のような不正行為を行うおそれが類型的にないと判断できる投票事務従事者を補助者として選定することにより不正投票を防止しようとすることには合理性がある。これに対し,郵便等投票制度における代理記載制度においては,投票の記載に際し第三者が介在することに伴う不正行為のおそれが存在するが,20投票所に物理的に行くことができず,自ら投票の記載をすることもできない者にも投票の機会を確保する必要があり,他方で,投票管理者等の第三者の下で行う巡回投票制度や立会人制度の導入も実現困難であることから,対象者を自ら投票の記載をすることができないものであることが公的に証明された者に限定した上,代理記載人の事前届出等,採用25可能な不正防止手段を講じたものである。このように,代理投票制度と - 14 - 代理記載制度の取扱いの違いは,物理的に投票所に行くことができる選挙人を対象とするか否か,投票管理者の管理の下で投票をできるか否かといった区分に応じ,投票の機会の確保や不正投票防止の要請に基づいて生じるのであって,代理投票制度における補助者を投票事務従事者に限定することは合理性を欠くものとはいえない。 5 以上によれば,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項に違反しない。また,同法15条1項は,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利であるとする規定であり,同法43条及び44条は,両議院の議員の定数や,両議院の議員及びその選挙人の資格についての規定であって,いずれも秘密投票を保障するものではなく,公選10法48条2項はこれらの規定に違反しない。 ⑶ 争点3(改正後公選法48条2項が憲法14条1項に違反するか)について(控訴人の主張)改正後公選法48条2項は,以下のとおり,憲法14条1項 8条2項はこれらの規定に違反しない。 ⑶ 争点3(改正後公選法48条2項が憲法14条1項に違反するか)について(控訴人の主張)改正後公選法48条2項は,以下のとおり,憲法14条1項の保障する平15等原則に違反する。 ア 改正後公選法48条2項が,自書ができない者の補助者を投票事務従事者に一律に限定することは,自書ができないことを理由とした差別である。 自書ができる者は,たとえ判断能力が不十分で他者からの不当な圧力や干渉を受け自由な意思の表明ができなくとも,投票事務従事者を補助者と20することなく投票を行うことができるが,自書ができない者は,改正後公選法48条2項により,自書ができないという理由のみによって,他者から不当な圧力や干渉を受け自由な意思の表明ができないおそれがあるとみなされ,投票事務従事者を補助者としなければ投票を行うことができない。 平成25年改正法が,代理投票の補助者を投票事務従事者に限定するこ25ととした目的は,選挙人が,当該補助者を含む他者から不当な圧力や干渉 - 15 - を受け自由な意思の表明ができなくなるおそれが生じる結果の発生を回避するためとされる。しかし,その効果があるのは,自書ができない者に限られ,自書ができて自由な意思の表明ができない人には効果がないし,投票事務従事者から自書ができない選挙人が影響を受けることもある。すなわち,障害者は行政から給付を受けている者が多いゆえ,行政批判的ある5いは政権批判的な候補者に投票することを投票事務従事者に委ねることに躊躇する者もいるのであって,その意味では,自由な意思の表明ができなくなるおそれを回避することができる場合は自書投票ができない人の全てではない。したがって,不正防止の立法目的と,補 者に委ねることに躊躇する者もいるのであって,その意味では,自由な意思の表明ができなくなるおそれを回避することができる場合は自書投票ができない人の全てではない。したがって,不正防止の立法目的と,補助者を投票事務従事者に限定するという手段に合理的関連性がない。 10イ 改正後公選法48条2項は,郵便等投票制度における代理記載制度を利用する選挙人との間に合理的理由のない差異を設けるものである。 投票所に行くことができないと公的書類等によって証明された障害のある者は,あらかじめ代理記載人となるべき者を届け出ることによって,選挙の公正や選挙人の投票意思の自由が確保できるのに対し,投票所に行く15ことができるが自書ができない障害のある者は,あらかじめ代理記載人となるべき者を届け出ることによっては,選挙の公正や選挙人の投票意思の自由を確保できず,投票を行うために投票事務従事者の補助を受けなければならないとすることは,合理的根拠がない。 改正後公選法48条2項は,自書ができない者は判断能力が不十分な選20挙人であるとの偏見により,上記のような差別的扱いをするものである。 (被控訴人の主張)ア 憲法14条1項は,法の下の平等を定めているが,国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく区別を禁止するものではないと解される。そして,投票の方法の具体25的決定については,立法府の広汎な裁量に委ねられている。 - 16 - 投票の方法について定める立法によって生じた区別が憲法14条1項に違反するといえるのは,このような立法府の広汎な裁量権を考慮してもなお,そのような区別が合理的な理由のない差別的取扱いに当たると認められる場合に限られる。具体的に よって生じた区別が憲法14条1項に違反するといえるのは,このような立法府の広汎な裁量権を考慮してもなお,そのような区別が合理的な理由のない差別的取扱いに当たると認められる場合に限られる。具体的には,立法目的に合理的な根拠が認められない場合,又は当該立法目的とその区別との間に合理的関連性が認められ5ない場合に限り,当該区別は,合理的な根拠を欠く不合理な差別として,憲法14条1項に違反するものと解すべきである。このことは,最高裁昭和60年判決が,選挙権の行使を可能にするために設けられた投票の方法という点で,代理投票と事案を共通にする不在者投票の事案において,不在者投票が権利ではなく救済措置であることに鑑みて,合理的関連性の基10準を適用したと解されることに照らしても明らかである。 イ 前記⑵(被控訴人の主張)ウのとおり,改正後公選法48条2項は,立法目的が合理的であり,立法目的を達成する手段としては,代理投票の補助者を投票事務従事者に限定することが必要かつ合理的であるから,憲法14条1項に違反しない。 15代理投票制度と代理記載制度とが異なる取扱いである点についても,前記⑵(被控訴人の主張)ウのとおり,物理的に投票所に行くことができる選挙人を対象とするか否か,投票管理者の管理の下で投票をできるか否かといった区分に応じ,投票の機会の確保や不正投票防止の要請に基づいて生じる合理的な区別であり,同項に違反する差別的取扱いではない。 20⑷ 争点4(控訴人は,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあるか)について(控訴人の主張)ア 主位的主張25前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は, べき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあるか)について(控訴人の主張)ア 主位的主張25前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は, - 17 - 憲法上保障された秘密投票権を侵害するとともに,憲法14条1項に違反して無効であり,控訴人は,憲法上保障された秘密投票権により,事前の手続等を要せずに,自らの希望する者を代理投票の補助者として選任を受けて投票をできる地位にあるというべきである。選挙権は秘密投票権と一体となった権利であり,この一体となった権利は憲法上認められた権利で5ある。そして,障害により筆記のできない控訴人の秘密投票は自らの希望する者を代理投票の補助者とすることと同義であるから,控訴人はそのような権利を憲法上保障されている。 また,改正後公選法48条2項の規定は成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法の一部を改正する法律の成立,施行によるものである10から,改正後公選法48条2項が違憲無効となったときは,改正前公選法48条2項の規定に戻ることになる。 イ 予備的主張仮に前記アの地位が認められないとしても,代理記載制度との比較に照らし,控訴人は,障害の程度の公的な証明や補助者の事前の届出等を要15件とすることによって補助者を選択できる地位にあるというべきである。 (被控訴人の主張)いずれも争う。 憲法上の選挙権は,具体的な立法による選挙制度の形成に依存しているところ,代理投票において,選挙人が,投票管理者に対し,投票事務従事者以20外の者から,希望する者を投票の補助者として選任を受けた上で投票をする地位は,憲法上の選挙権から直ちに帰結されるものではなく,公選法上も保障されていない。また,代理投票制度は 票事務従事者以20外の者から,希望する者を投票の補助者として選任を受けた上で投票をする地位は,憲法上の選挙権から直ちに帰結されるものではなく,公選法上も保障されていない。また,代理投票制度は,選挙権行使の確保のため,本人投票主義,自書主義及び秘密投票主義の例外として設けられた制度であり,選挙人に,具体的に立法化された代理投票制度によって投票する権利があると25しても,それを超えて,選挙人に上記地位が認められるものではない。 - 18 - 控訴人は,改正後公選法48条2項が違憲無効となったときは,改正前公選法48条2項の規定に戻る旨主張するが,違憲審査権の行使が具体的な争訟事件の裁判に付随して行われるものであることからすれば,当該判決の効力は当該事案について当該法律の規定の適用を排除する限度において認められるべきものであり,改正前の旧法の規定(改正前公選法48条2項)が5復活して適用されるものではない。のみならず,改正前公選法48条2項においても,補助者を決定するのは投票管理者であり,その承諾を得る相手方も選挙人ではなく補助者とされていたのであって,選挙人に自ら希望する者を補助者として選任することができる地位が保障されたり,そのような地位が付与されたりしていたものではない。 10なお,控訴人の予備的主張に関し,前記⑵(被控訴人の主張)ウのとおり,代理投票制度と代理記載制度の取扱いの違いは,立法裁量を逸脱する不合理なものであるということはできない。 ⑸ 争点5(本件立法行為に係る国賠法上の違法の有無)について(控訴人の主張)15ア 憲法違反について前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項等に違反するものであり,投票事務従事者以外は選挙人の ついて(控訴人の主張)15ア 憲法違反について前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項等に違反するものであり,投票事務従事者以外は選挙人の補助者となることができないという制約を課すことによって,控訴人を含む補助を必要とする選挙人に対して秘密投票権を放棄しなければ選挙権を20行使することができない状況を強制し,憲法上保障されている権利を違法に侵害したことが明白である。 イ 障害者基本法違反について前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)に主張したように,平成25年改正法の制定は,判断能力が十分でない認知症高齢者や知的障害のある人は自書25ができず,かつ,自書ができない人は判断能力が不十分で容易く他者から - 19 - 不当な圧力や干渉を受け,自由な意思の表明ができないとの偏見に基づき行われたものであり,国及び地方公共団体は,法律又は条例の定めるところにより行われる選挙等において,障害者が円滑に投票できるようにするため,投票所の施設又は設備の整備その他必要な施策を講じなければならない旨を定めた障害者基本法28条に違反する。公選法と障害者基本法が5いずれも同順位の効力にある法律であるとしても,国会は,国の唯一の立法機関として,各法律間において矛盾を来すことなく法的な調和を保つことが求められる。 ウ その他の事情について日本政府は,平成25年改正法の制定当時,障害者権利条約に署名して10おり(同条約は平成26年2月19日に日本について効力を発生した。),必要な場合には,障害者の要請に応じて,当該障害者により選択される者が投票の際に援助することが求められていたほか(29条(a)(ⅲ)),障害者差別解消法が平成25年改正法と同一会期の国会において審理さ 要な場合には,障害者の要請に応じて,当該障害者により選択される者が投票の際に援助することが求められていたほか(29条(a)(ⅲ)),障害者差別解消法が平成25年改正法と同一会期の国会において審理されており,国会議員には,相互に矛盾する法的利益を調整した上で立法行為を行15うことが職務上の義務として求められていた。しかるに,本件立法行為は,改正後公選法48条2項が障害者権利条約等に整合しているかどうかについて精査しないで行われた。 エ 以上によれば,国会議員が,平成25年改正法を制定し,改正前公選法48条2項のうち,「その承諾を得て」という文言を削り,「投票所の事務20に従事する者のうちから」という文言を加える旨の改正をした本件立法行為は,国賠法1条1項の適用上違法である。 (被控訴人の主張)ア 憲法違反について前記⑵及び⑶の(被控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項25は,憲法15条4項等に違反せず,本件立法行為が国民に憲法上保障され - 20 - ている権利である秘密投票権(憲法15条4項)を違法に侵害するものであることが明白であるとは認められないから,国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるとはいえない。 イ 障害者基本法等違反について国会は,既存の条約や法令と異なる法令を定め,又は既存の法令を改廃5することを含め,立法に関して広汎な裁量を有する上,障害者基本法は,平成25年改正法と同位の効力を有する法律であるところ,本件において,控訴人が,障害者基本法28条等に違反する国会議員の立法行為が国賠法1条1項の適用上違法であるとする根拠は不明である。また,障害者基本法28条等によって,控訴人にどのような具体的権利が認められ,前記立10法行為によりいかなる侵害を受けたかは不 立法行為が国賠法1条1項の適用上違法であるとする根拠は不明である。また,障害者基本法28条等によって,控訴人にどのような具体的権利が認められ,前記立10法行為によりいかなる侵害を受けたかは不明である。したがって,控訴人の主張は主張自体失当である。 ウ 以上によれば,本件立法行為は,国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるとはいえない。 ⑹ 争点6(本件立法不作為に係る国賠法上の違法の有無)について15(控訴人の主張)ア 憲法違反について前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は憲法15条4項等に違反し,控訴人を含め補助を必要とする選挙人の憲法上保障されている権利(秘密投票権)を違法に侵害していることが明白で20あるから,控訴人を含む秘密投票を望む選挙人に対してその権利行使の機会を確保するため必要な立法措置を執らないこと(あるいは,改正後公選法48条2項につき投票者自身が望む者による代筆を認める解釈運用をしないこと)は,遅くとも本件選挙時には違法であった。 イ 障害者権利条約違反について25障害者権利条約3条及び29条(a)(ⅲ)によれば,障害者は,一般原則 - 21 - として,固有の尊厳及び自ら選択する自由を含む個人の自律を保障された上,他の者と平等に政治活動に参加する権利の保障を受け,締約国は,選挙人としての障害者の意思の自由な表明を保障するため,必要な場合には,障害者の要請に応じて,当該障害者により選択される者が投票の際に援助することを認めることが求められるところ,改正後公選法48条2項は,5障害者が代理投票をする際の補助者を投票事務従事者に限定するものであって,当該障害者により選択される者が代理投票の援助をすることを認めていないから,本件選挙 ところ,改正後公選法48条2項は,5障害者が代理投票をする際の補助者を投票事務従事者に限定するものであって,当該障害者により選択される者が代理投票の援助をすることを認めていないから,本件選挙時までに批准された障害者権利条約3条及び29条(a)(ⅲ)に違反する状態となっていた。 被控訴人は,障害者権利条約29条(a)(ⅲ)に係る義務の履行について10は,締約国に一定の裁量が認められる旨を主張するが,同項は,障害者権利条約における個人の自律の原則を具体化したものであって,自由な意思による投票を保障するためには,被選挙人の氏名等を記載する際の援助が障害者により選択される者によってされる必要があることに照らせば,代理投票の援助をする者をいずれの者とするかについて,裁量の余地はない15というべきである。 ウ 障害者基本法及び障害者差別解消法違反について前記⑵及び⑶の(控訴人の主張)に主張したところによれば,改正後公選法48条2項は,本件選挙時までに障害者基本法28条に違反する状態となっていた。 20また,障害者差別解消法3条は,国及び地方公共団体は,障害者差別解消法の趣旨にのっとり,障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し,及びこれを実施しなければならない旨を定めるところ,改正後公選法48条2項は,本件選挙時までに施行された障害者差別解消法3条に違反する状態となっていた。 25エ 以上によれば,国会議員は,本件選挙までに改正後公選法48条2項を - 22 - 改正し,選挙人が,投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票の補助者として選任を受けた上で投票をすることができるようにすべきであったにもかかわらず,これを怠った。したがって,本件立法不作為は,国賠法1条1項の適用上違法であ 希望する者を,投票管理者から投票の補助者として選任を受けた上で投票をすることができるようにすべきであったにもかかわらず,これを怠った。したがって,本件立法不作為は,国賠法1条1項の適用上違法であるというべきである。 (被控訴人の主張)5ア 憲法違反について前記⑵及び⑶の(被控訴人の主張)のとおり,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項等に違反する状態にあったということはできず,本件選挙時までに改正後公選法48条2項の改正を必要とする新たな立法事実が生じたとはいえない。 10イ 障害者権利条約違反について障害者権利条約29条(a)(ⅲ)は,「選挙人としての障害者の意思の自由な表明を保障すること。このため,必要な場合には,障害者の要請に応じて,当該障害者により選択される者が投票の際に援助することを認めること。」と定めるものであり,障害者により選択される者による援助の具体的15な方法までは明示されていないところ,各締約国における選挙制度や障害者に関する制度が異なることに鑑みれば,その義務の履行に当たっては,各締約国に一定の裁量が認められる。そして,前記条項は,選挙人としての障害者の自由な意思の表明を保障するために援助を認めることを締約国に求める趣旨であると解されるところ,公選法においては,48条におい20て代理投票制度を設ける一方で,58条3項において,障害者である選挙人を介護する者等投票管理者が「やむを得ない事情がある者」と認めた者については,投票に際し,投票所に入ることができ,選挙人に随行して入場した者は,投票所内での移動や代理投票の申請等の援助をすることができることを定めているから,公選法の定めは,障害者の自由な意思の表明25を保障するものであって,障害者権利条約の規定に反するものではない。 投票所内での移動や代理投票の申請等の援助をすることができることを定めているから,公選法の定めは,障害者の自由な意思の表明25を保障するものであって,障害者権利条約の規定に反するものではない。 - 23 - ウ 障害者基本法及び障害者差別解消法違反について改正後公選法48条2項は,障害者基本法及び障害者差別解消法と法形式上同順位にある法律であるから,これらに違反すると評価されることはない。また,改正後公選法48条2項は,自ら投票の記載をすることができない障害者につき,投票の機会を確保しようとするものであり,障害者5差別解消法3条に反しない。 エ 以上によれば,本件立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるとはいえない。 ⑺ 争点7(損害の有無及び額)について(控訴人の主張)10控訴人は,本件立法行為又は本件立法不作為により,選挙権という重要な権利を行使することができず,精神的苦痛を被っており,これに対する慰謝料の額は100万円を下回らない。また,弁護士費用は10万円が相当である。 (被控訴人の主張)15改正前公選法48条2項においても,補助者を決定するのは投票管理者であり,その承諾を得る相手方は補助者であるとされていたのであり,選挙人に補助者を選任したり自らの希望する補助者を選任するよう投票管理者に求める権利や法的地位が与えられていたものではないから,平成25年改正法による公選法の改正の前後において控訴人の権利関係や法的地位に変更20はなく,本件立法行為により控訴人の権利が侵害され損害が生じたとは認められない。 また,代理投票制度は,選挙権を有しながら,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人のため,その投票の機会を 行為により控訴人の権利が侵害され損害が生じたとは認められない。 また,代理投票制度は,選挙権を有しながら,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人のため,その投票の機会を確保し,選挙権の行使を実質的に保障するために設けられた我が国の選挙制度(本人投票25主義,自書主義及び秘密投票主義)の例外的な制度であり,代理投票制度を - 24 - 利用する以上,補助者に候補者の氏名等を指示するという限度で,投票の秘密が制限されることが当然に予定されており,制限される投票の秘密についてその秘密を担保する制度が備えられているのであるから,投票事務従事者をもって補助者とし,選挙人が補助者に対し候補者の氏名等を指示したとしても,秘密投票の権利が侵害されたと評価すべきではない。 5第3 当裁判所の判断1 争点1(訴えの適法性)について⑴ 被控訴人は,①代理投票制度(改正後公選法48条1項・2項)は,選挙人の補助者を任意に選択できる権利を保障し,又はそのような地位を付与するものではなく,それ以外の法令の規定にも,選挙人にかかる権利・地位を10付与するものと解すべき規定はないから,改正後公選法の解釈によっては,選挙人が控訴人主張の具体的地位を有することを導き出すことができない,②仮に改正後公選法48条2項の規定が憲法15条4項等に違反して無効であるとしても,その余の規定から上記具体的地位を導き出すことはできないし,国会による個別具体的な立法行為をまたずに現行法が廃止されたり旧15法が復活したりすることはなく,改正前公選法48条の定めるところによって上記具体的地位が付与されていたものでもないとして,本件確認請求に係る訴えは,憲法ないし公選法等の法令の適用により終局的に解決できるものとはいえず とはなく,改正前公選法48条の定めるところによって上記具体的地位が付与されていたものでもないとして,本件確認請求に係る訴えは,憲法ないし公選法等の法令の適用により終局的に解決できるものとはいえず,法律上の争訟性を欠き,また,紛争解決にとって必要かつ適切なものといえないから,確認の利益を欠き,不適法である旨主張する。 20⑵ 本件確認請求は,控訴人が,障害により筆記のできない控訴人は,秘密投票権と一体となった選挙権の内容として控訴人が投票の補助を希望する者を投票を補助すべき者として投票をすることができる権利を憲法上保障されているところ,改正後公選法48条2項につき所要の改正がされないと,今後直近に実施されることになる衆議院議員,参議院議員並びに豊中市及び25大阪府の議会の議員及び長の選挙において秘密投票をすることができず,選 - 25 - 挙権を行使する権利を侵害されることになるので,そのような事態になることを防止するために,同項が違憲無効であると主張して,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,当該各選挙において控訴人が投票の補助を希望する者を投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認をあらかじめ求める訴えである5と解することができる。 選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであるから,その権利の重要性にかんがみると,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこ10れを有することの確認を求める訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきものである。控訴人の上記主張に 権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこ10れを有することの確認を求める訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきものである。控訴人の上記主張によれば,憲法は選挙権を秘密投票権と一体のものとして保障しており,控訴人は,次回の選挙で秘密投票権を侵害されることなく選挙権を行使することができないため,憲法上保障された上記内容の選挙権を行使することが15できないことになるので,そのような事態になることを防止するため,本件確認請求をするというのであるから,本件確認請求に係る訴えは,法律上の争訟に当たることは明らかであり,当該訴えのうち,被控訴人との間で次回の衆議院議員及び参議院議員の選挙において控訴人が投票の補助を希望する者を投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票を20することができる地位にあることの確認を求める部分は,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,確認の利益を肯定することができる。 しかし,本件確認請求に係る訴えのうち被控訴人との間で豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において控訴人が投票の補助を希望する者を投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をするこ25とができる地位にあることの確認を求める部分は,上記選挙に係る事務は被 - 26 - 控訴人の事務ではないから,控訴人の主張に係る上記事態を防止するため有効適切な手段であるとは認められず,したがって,公法上の法律関係に関する確認の訴えとしても確認の利益を肯定することはできない。 以上によれば,本件確認請求に係る訴えのうち,控訴人が,次回の豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票所の事務に従事する者5に限らず,控訴人が投票の補助を希望する者 はできない。 以上によれば,本件確認請求に係る訴えのうち,控訴人が,次回の豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票所の事務に従事する者5に限らず,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める部分に係る訴えは,確認の利益を欠き,不適法というべきである。 2 争点2(改正後公選法48条2項が秘密投票を保障する憲法15条1項・410項,43条及び44条に違反するか)について⑴ 控訴人は,改正後公選法48条2項が,代理投票において,補助者を投票事務従事者に一律に限定し,投票事務従事者に限らず選挙人が希望する者を補助者として選任することはできない旨規定するのは,自書することができない選挙人に,選挙権行使のために公務員たる投票事務従事者に対する投票15内容の開示を強制することとなるから,秘密投票権の制限に当たり,そのような秘密投票の制限に「やむを得ない事由」があるとはいえないから,同項は,投票の秘密を保障する憲法15条1項,4項,43条及び44条に違反する旨主張するので,以下,検討する。 ⑵ 憲法は,国民主権の原理(前文,1条)に基づき,両議院の議員や地方公20共団体の長,その議会の議員等の選挙において投票をすることによって国又は地方の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障している(15条1項,43条1項,44条ただし書)。この選挙権は,国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成すものであり,憲法は,その趣旨を確たるものとするため,国民に25対して投票をする機会を平等に保障しているものと解される。 - 27 - また,憲法15条4項 主主義の根幹を成すものであり,憲法は,その趣旨を確たるものとするため,国民に25対して投票をする機会を平等に保障しているものと解される。 - 27 - また,憲法15条4項前段は「すべて選挙における投票の秘密は,これを侵してはならない。」と規定し,投票の秘密を保障する。秘密投票制度は,歴史的には,社会における弱い立場にある者が自由な意思に基づく投票を行い,選挙の公正が確保されるためには,投票の前後を通じて選挙人が他から干渉,買収,威嚇等を受けることがないようにする必要があることから,選挙人が5どの候補者又は政党等に投票したか,すなわち投票と投票者とのつながりが,その選挙人以外の者に知られないようにする制度として導入されたものであり,憲法15条4項の投票の秘密の保障も,個人の自由な意思による投票の確保を目的とするものと解される。そして,憲法は,投票の秘密を客観的な憲法秩序ないし制度として保障するにとどまらず,選挙において投票し又10は投票しようとする個々人の主観的権利としても保障しているものと解される。 他方で,代表民主制の下における選挙制度は,選挙された代表者を通じて,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とするものであるから,選挙人の自由な意思が選挙の結果に正しく反映され15ることが要請され,そのためには,選挙の公正の確保が必要不可欠というべきであって,選挙の公正の確保は,代表民主制をとる憲法の要求するところと解されるのであり,選挙の公正を確保する見地から国民の選挙権又はその行使が制約を受けることとなっても,選挙権の行使が国民個人の主観的権利の行使という性格に加えて代表民主制の下における国家の機関としての公20務執行という性格を併せ持つことに由来するやむを得ない 行使が制約を受けることとなっても,選挙権の行使が国民個人の主観的権利の行使という性格に加えて代表民主制の下における国家の機関としての公20務執行という性格を併せ持つことに由来するやむを得ないものとして憲法の許容するところというべきである。 ⑶ 改正後公選法は,選挙人は,選挙の当日,自ら投票所に行き,投票をしなければならず(44条1項。本人投票の原則),投票所において,投票用紙に,その選挙の公職の候補者一人の氏名又は政党等の名称を自書して,これを投25票箱に入れて投票しなければならない(46条1項ないし3項。自書投票) - 28 - とした上で,48条において,心身の故障その他の事由により,自ら当該選挙の公職の候補者の氏名等を記載することができない選挙人は,投票管理者に対し,代理投票の申請をすることができ(1項),当該申請があった場合においては,投票管理者は,投票立会人の意見を聴いて,投票事務従事者のうちから当該選挙人の補助者二人を定め,その一人に投票の記載をする場所に5おいて投票用紙に当該選挙人が指示する公職の候補者一人の氏名等を記載させ,他の一人をこれに立ち会わせなければならない(2項)旨規定している。 このように,改正後公選法は,選挙人が投票所において投票用紙に公職の候補者の氏名等を自書する方法によって投票を行うものとする制度(自書投10票制度)を採用するとともに,心身の故障その他の事由により,自書することができない選挙人は,一人の投票事務従事者に対し,公職の候補者の氏名等を指示した上で,当該投票事務従事者に投票用紙の記載をさせ,他の一人の投票事務従事者は,これに立ち会わなければならないものとしている(48条2項)のであって,心身の故障その他の事由により自書することができ15ない選挙 事務従事者に投票用紙の記載をさせ,他の一人の投票事務従事者は,これに立ち会わなければならないものとしている(48条2項)のであって,心身の故障その他の事由により自書することができ15ない選挙人は,改正後公選法の下においては,投票事務従事者を補助者とする代理投票によってしかその選挙権を行使することができず,その選挙権の行使においていずれの候補者又は政党等に投票したかについて補助者である投票事務従事者に必然的に知られてしまうことになるものとされているのである。もとより,憲法15条4項は,私人との関係のみならず国及び地20方公共団体との関係においても投票の秘密を保障しているところ,投票事務従事者は,公務員であるから,改正後公選法48条2項は,上記の限りにおいて,憲法15条4項の保障する秘密投票制度の例外を成すとともに,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人の投票の秘密に係る主観的権利を制約するものというべきである(なお,改正前公選法4825条2項の下においても,選挙人の投票を補助すべき者は投票管理者が定める - 29 - ものとされており,選挙人には投票の補助を希望する者を投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受ける地位を付与されていなかったと解されるが,投票管理者が選挙人が投票の補助を希望する者を投票を補助すべき者と定める運用の余地を残していたのに対し,改正後公選法48条2項の下においては,投票管理者は投票事務従事者のうちからしか選挙人の補助者を5定めることができないものとされている点において,投票の秘密に係る選挙人の主観的権利を制約する程度は大きいというべきである。)。 平成25年改正法が,改正後公選法48条2項において,補助者を投票事務従事者に限定することとした目的は,補助 いて,投票の秘密に係る選挙人の主観的権利を制約する程度は大きいというべきである。)。 平成25年改正法が,改正後公選法48条2項において,補助者を投票事務従事者に限定することとした目的は,補助者を中立的な立場にある者に限定することにより,補助者に対して投票意思を表示する方法によって選挙権10を行使する選挙人が,当該補助者を含む他者から不当な圧力や干渉を受け,自由な意思の表明ができなくなるおそれが生じる結果の発生を回避することにあるものと解される。 そうであるところ,詐偽登録,虚偽宣言等,詐偽投票,投票の偽造・増減,代理投票における記載義務違反の送致人員は,平成19年には169人,平15成21年には70人,平成22年には26人,平成23年には56人,平成24年には16人であり(乙6の1~6),投票の秘密侵害,投票干渉に関する検挙件数は,平成19年ないし平成23年の5年間で25件であったところ(乙2),このうち,選挙人の判断能力が不十分なこと等に乗じたと考えられる公選法違反の事案として,平成16年7月の特別養護老人ホーム職員に20よる投票偽造事件,平成17年9月の知的障害者更生施設職員らによる投票干渉事件や特別養護老人ホーム職員らによる投票偽造事件,平成21年8月の特別養護老人ホーム施設長らによる投票偽造事件,平成25年2月の不在者投票の際に代理投票の補助者を務めた特別養護老人ホーム職員が意思表示のできない高齢者の投票用紙に特定の候補者の氏名を記載した投票偽造25事件等があったことが認められる(乙5の1・2・6・10,7)。そして, - 30 - 国会においては,平成24年4月12日現在で13万6484人の成年被後見人がおり,平成25年改正法の法律案により成年被後見人が一律に選挙権を回復した場合,上 そして, - 30 - 国会においては,平成24年4月12日現在で13万6484人の成年被後見人がおり,平成25年改正法の法律案により成年被後見人が一律に選挙権を回復した場合,上記の成年被後見人が選挙権を有することとなること,認知症高齢者の数は平成24年の推計で305万人,20歳以上の精神障害者の数は平成23年の推計で301万人,18歳以上の知的障害者の数は平成517年の推計で41万人であって,将来的に認知症を持つ国民や知的障害を持つ国民等,多数の国民が成年被後見人となる可能性があることが議論され(乙2),加えて,アメリカ,フランス,ドイツ等においては,成年後見制度において選挙権を行使する能力の有無を個別に判断する立法例も存在することが紹介されたが,平成25年改正法においては,選挙権を行使するに足10りる能力がどのようなものであるかについて速やかに一義的に定めるのが困難であること,この能力につき誰がいかなる手続でいかなる基準によって判断するのかといった問題があること等から,成年被後見人が一律に選挙権を回復することとされたものである(乙1~3)。 このように,従前から選挙人の判断能力が不十分なこと等に乗じたと考え15られる投票偽造事件等が発生していたところ,平成25年改正法によって成年被後見人が一律に選挙権を回復した後は,判断能力が必ずしも十分でない選挙人が代理投票によって投票をする例も多数増加することが想定されたこと,平成25年改正法の制定前にも,代理投票においては,大多数の事例において投票事務従事者が補助者となっていたことから(甲2,乙19),補20助者に対して投票意思を表示する方法によって選挙権を行使する選挙人についても,補助者となるべき者を中立的な立場にある投票事務従事者に限定することにより なっていたことから(甲2,乙19),補20助者に対して投票意思を表示する方法によって選挙権を行使する選挙人についても,補助者となるべき者を中立的な立場にある投票事務従事者に限定することにより,補助者となる者を含む他者から不当な圧力や干渉を受けることなく,その自由な意思に基づき投票できることを確保する必要性が高いと考えられたものである。選挙人の判断能力が不十分なこと等に乗じたと考25えられる不正投票が後を絶たないこと,意思表示のできない高齢者選挙人に - 31 - 係る代理投票の補助者による投票偽造事件も発生していたこと,成年被後見人が一律に選挙権を回復した場合に判断能力が必ずしも十分でない選挙人が代理投票によって投票する例が多数増加することが想定された上,高齢化社会の進展等により成年被後見人の増加が見込まれることを踏まえれば,上記の立法目的それ自体には合理的な根拠があるものと認められる。 5 もっとも,改正後公選法48条2項の立法目的がそれ自体合理的な根拠があるとしても,上記のとおり,改正後公選法の下においては,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人は,投票事務従事者を補助者とする代理投票によってしかその選挙権を行使することができず,その選挙権の行使においていずれの候補者又は政党等に投票したかについて補助10者である投票事務従事者に必然的に知られてしまうことになるのであって,その限りにおいて,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定する旨の規定は,憲法15条4項の保障する秘密投票制度の例外を成すとともに,当該選挙人の投票の秘密に係る主観的権利を制約するものである。のみならず,補助者となる投票事務従事者は公務員であり,改15正後公選法48条2項は,心身 保障する秘密投票制度の例外を成すとともに,当該選挙人の投票の秘密に係る主観的権利を制約するものである。のみならず,補助者となる投票事務従事者は公務員であり,改15正後公選法48条2項は,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人にその選挙権の行使において行政の担い手である公務員に対して自らの投票内容の開示をさせるものであって,選挙権の行使が議会制民主主義ないし代表民主制の下における行政の民主的統制の重要な契機を成すものであることに鑑みると,代理投票における選挙人の投票を補助すべき20者を投票事務従事者に限定する旨の改正後公選法48条2項の規定による投票の秘密の保障に対する制約が憲法上許容されるためには,憲法の要求する選挙の公正を確保する見地からやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。 そうであるところ,投票事務従事者は,選挙管理委員会の職員ないし市役25所等の地方公共団体の職員(地方公務員)であり,選挙に関する事務の管理 - 32 - その他の地方公共団体の行政運営に携わる者であるが,公務員として政治的中立性を確保することが法令により義務付けられており(地方公務員法36条,公選法136条1号,136条の2),公選法によって政治的中立性の保持が義務付けられている投票管理者の指揮監督を受けるものとされているのであって(公選法88条,135条),政治的中立性が制度的に確保されて5いる。改正後公選法48条2項は,投票事務従事者の上記のような地位に鑑み,選挙の公正を確保する目的から,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定したものである。 そして,投票事務従事者は,公務員として職務上知り得た秘密について守秘義務を負い(地方公務員法34条1項), から,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定したものである。 そして,投票事務従事者は,公務員として職務上知り得た秘密について守秘義務を負い(地方公務員法34条1項),この守秘義務は罰則(1年以下の10懲役又は50万円以下の罰金。同法60条2号)によって担保されているのみならず,公選法により,選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党等の名称等を陳述する義務を負わず(52条),選挙人の投票した被選挙人の氏名等を表示したときは,2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処するものとされている(227条)。他方で,国若しくは地方公共団体の公務員,選挙管15理委員会の委員若しくは職員,投票管理者,開票管理者又は選挙長若しくは選挙分会長等が選挙人に対し,その投票しようとし又は投票した被選挙人の氏名等の表示を求めたときは,6月以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処するものとされている(226条2項)。 これらの規定によれば,公選法は,投票事務従事者が公務員として政治的20中立性が制度的に確保された地位を有することに鑑み,代理投票において選挙人の補助者となり選挙人から投票内容の開示を受ける権限を付与するとともに,職務上代理投票に係る選挙人の投票内容を知り得る立場にあることに鑑み,公務員としての守秘義務に加え,2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金という刑罰の制裁をもって選挙人の投票した被選挙人の氏名等を表25示することを禁止する(227条)等し,これによって,投票事務従事者が - 33 - 職務上知り得た代理投票に係る選挙人の投票内容が,投票事務従事者の属する行政機関等において共有されることはもとより,当該投票事務従事者以外の何人に対しても知られることがないよう,制度的な手当をしているのであっ た代理投票に係る選挙人の投票内容が,投票事務従事者の属する行政機関等において共有されることはもとより,当該投票事務従事者以外の何人に対しても知られることがないよう,制度的な手当をしているのであって,選挙の公正を確保する観点から代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定することによって必然的に生じる選挙人5の投票の秘密の保障に対する制約を必要最小限度にとどめようとするものということができる。また,投票事務従事者が職務上知り得た代理投票に係る選挙人の投票内容の漏えいを防止するための上記の制度的手当が実効性を失って形骸化するなど現実に機能していないことをうかがわせるような事情も見当たらない(平成25年改正法の制定前にも代理投票においては大10多数の事例において投票事務従事者が補助者となっていたことは上記のとおりである。)。 そうであるとすれば,補助者となる投票事務従事者が公務員であり,改正後公選法48条2項が,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人にその選挙権の行使において行政の担い手である公務員に対し15て自らの投票内容の開示をさせるものであって,選挙権の行使が議会制民主主義ないし代表民主制の下における行政の民主的統制の重要な契機を成すものであることに鑑みても,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定する旨の改正後公選法48条2項の規定による投票の秘密の保障に対する制約は,憲法の要求する選挙の公正を確保する見地20からやむを得ないものとして,憲法15条4項の許容するところというべきである。 に候補者の氏名等を自書することはできないものの,比較的大きな書面に自らの氏名を自書することができるというのであって,手の動作や投票用紙に25記号を記載する するところというべきである。 に候補者の氏名等を自書することはできないものの,比較的大きな書面に自らの氏名を自書することができるというのであって,手の動作や投票用紙に25記号を記載する方法によって投票意思を表示することも必ずしも不可能で - 34 - はないと考えられるのであり,改正後公選法が投票所における自書投票を原則としていることからその選挙権を行使するためには代理投票の方法によらざるを得ないものと認められる。そうであるところ,現行の選挙制度においても,地方自治体の選択によって,当該地方公共団体の議会の議員又は長の選挙の投票において,投票用紙に氏名が印刷された公職の候補者のうちそ5の投票しようとするもの一人に対して,投票用紙の記号を記載する欄に○の記号を記載する方法による投票(以下「記号式投票」という。公選法46条の2),電磁的記録式投票機(機械を操作することにより,当該機械に記録されている公職の候補者のいずれかを選択し,かつ,当該公職の候補者を選択したことを電磁的記録として電磁的記録媒体に記録することができる機械10をいう。以下同じ。)を用いて行う投票(以下「電磁的記録式投票」という。 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律)を採用することが認められている。 しかし,代表民主制の下における選挙制度は,選挙された代表者を通じて,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標15とし,他方,国政における安定の要請をも考慮しながら,それぞれの国において,その国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではないところ,公選法の定める自書投票制度は,選挙人の自 しながら,それぞれの国において,その国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではないところ,公選法の定める自書投票制度は,選挙人の自由な意思による投票を担保するものであるとともに,選挙の管理執行が容易になるなどの利点を有するものであって,20その合理性を否定することはできない。他方で,記号式投票又は電磁的記録式投票の方法を採用した場合においても,心身の故障等により本人自身による投票行為ができない選挙人は必ず存在することになるはずである。そして,そのような選挙人に対しても投票をする機会を確保するための所要の措置を執ることが憲法上要求されているのであり,その制度は,本人自身が投票25行為をすることができない以上,現在の社会,経済,技術的諸条件の下にお - 35 - いては,必然的に選挙人以外の第三者が投票行為に介在する代理投票制度とならざるを得ないものである。また,代理投票制度においては,補助者が誰であるかにかかわらず選挙人が当該補助者に対して投票内容を伝えることが不可欠であり,その限りにおいて,憲法の投票の秘密の保障に対する制約を不可避的に伴うものというべきである。そうであるところ,いかなる投票5方法の下における代理投票制度であっても,選挙人の心身の故障等に乗じ代理投票制度を悪用した不正投票が行われる危険が存在する以上,憲法の要求する選挙の公正を確保するための措置を講ずる必要があることはいうまでもない。そして,投票方法のいかんを問わず,当該投票方法の下で代理投票によってしか選挙権の行使をすることができない選挙人の選挙権の価値自10体に差はないのであるから,公選法が原則として採用する自書投票以外の投票方法を採れば代理投票制度の対象となる選挙人 代理投票によってしか選挙権の行使をすることができない選挙人の選挙権の価値自10体に差はないのであるから,公選法が原則として採用する自書投票以外の投票方法を採れば代理投票制度の対象となる選挙人が減少し,また,控訴人自身が代理投票によらずに選挙権を行使することが可能となるとしても,そのことのゆえに,改正後公選法48条2項の規定による投票の秘密の保障に対する制約につきやむを得ない事由がないとすることも,同項の規定が控訴人15の投票の秘密に係る主観的権利を違法に侵害しているとすることもできないというべきである。 控訴人は,郵便等投票制度においては,郵便等による不在者投票をすることができる者のうち自ら投票の記載をすることができないと考えられる,公的書類等によって障害の程度が証明された者について,代理記載を可能とし20ており,あらかじめ代理記載人となるべき者を届け出ることによって,選挙の公正や選挙人の投票意思の自由を確保することとされているのであるから,物理的に投票所に行くことができるが自書することができない者について,代理投票の補助者を限定すべき理由がない旨主張する。 郵便等投票制度における代理記載制度は,平成15年法律第127号によ25る公選法の改正により設けられたものであって,選挙人で身体に所定の重度 - 36 - の障害があって投票所に行くことが困難であり,その現在する場所において自ら投票の記載をすることができない者を対象として,あらかじめ市町村の選挙管理委員会の委員長に届け出た代理記載人をして投票に関する記載をさせる制度であるところ(公選法49条2項,3項),その立案過程においては,選挙の公正を確保する観点から,投票管理者等の第三者の管理の下で投5票が行われる巡回投票制度の創設についても検討 記載をさせる制度であるところ(公選法49条2項,3項),その立案過程においては,選挙の公正を確保する観点から,投票管理者等の第三者の管理の下で投5票が行われる巡回投票制度の創設についても検討されたものの,多数の対象者が存在する地域や離島等の交通至難の地域を含め,選挙管理機関が全ての対象者を巡回することが困難であること等から,その対象者を公的書類等によって障害の程度が証明された者に限定し,代理記載人について事前の届出を行わせる等の不正防止手段を講じた上で,郵便等投票制度のうちの一制度10として創設されたものである(乙12ないし16)。 選挙人で身体に所定の重度の障害があって投票所に行くことが困難であり,その現在する場所において自ら投票の記載をすることができない者に対しても,投票をする機会を確保するための所要の措置を執ることが憲法上要求されているのであり,その制度は,現在の社会,経済,技術的諸条件の下15においては,必然的に選挙人以外の第三者が投票行為に介在する制度とならざるを得ないものである。また,選挙人の心身の故障等に乗じ制度を悪用した不正投票が行われる危険が存在する以上,憲法の要求する選挙の公正を確保するための措置を講ずる必要があることはいうまでもない。のみならず,投票の方法は,選挙の施行がその性格上一定の時間的,人的,物的設備面で20の制約を伴うものであることから,選挙の施行を可能にするものであることが要請されるところ,代理記載制度が導入された際の上記のような検討状況等に鑑みると,選挙人の心身の故障等に乗じ制度を悪用した不正投票を防止し選挙の公正を確保するための措置として,代理記載制度という,改正後公選法48条2項の規定する代理投票制度とは異なった仕組みが採用された25ことが,不合理であるとはいえない。 した不正投票を防止し選挙の公正を確保するための措置として,代理記載制度という,改正後公選法48条2項の規定する代理投票制度とは異なった仕組みが採用された25ことが,不合理であるとはいえない。そうであるとすれば,逆に,心身の故 - 37 - 障等により投票所に行くことができるものの候補者の氏名等を自書することができない選挙人について,選挙の公正を確保するための措置として代理記載制度と異なった規律をしたからといって,そのことのゆえに,同項の規定による投票の秘密の保障に対する制約につき直ちにやむを得ない事由がないとすることはできない。 5以上説示したところによれば,改正後公選法48条2項は憲法15条4項に違反するということはできず,憲法15条1項,43条又は44条に違反するということもできない。 3 争点3(改正後公選法48条2項が憲法14条1項に違反するか)について⑴ 控訴人は,改正後公選法48条2項が,自書ができない選挙人の補助者を10投票事務従事者に一律に限定し,投票事務従事者を補助者としなければ投票を行うことができないものとすることは,自書ができないことを理由とした合理的理由のない差別である,同項は,郵便等投票制度における代理記載制度を利用する選挙人と,投票所に行くことができるが自書ができない選挙人との間に合理的理由のない差異を設けるものであるとして,改正後公選法4158条2項は憲法14条1項の保障する平等原則に違反する旨主張するので,以下,検討する。 ⑵ 上記2⑶のとおり,改正後公選法48条2項の下においては,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人は,投票事務従事者を補助者とする代理投票によってしかその選挙権を行使することができず,その20選挙権の行使においていず の下においては,心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人は,投票事務従事者を補助者とする代理投票によってしかその選挙権を行使することができず,その20選挙権の行使においていずれの候補者又は政党等に投票したかについて補助者である投票事務従事者に必然的に知られてしまうことになるものとされているのであって,その限りにおいて,自書することができる選挙人に比して,投票の秘密に係る主観的権利が制約されているというべきである。 そうであるところ,上記2⑷のとおり,平成25年改正法が,改正後公選25法48条2項において,選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限 - 38 - 定することとした目的は,補助者を中立的な立場にある者に限定することにより,補助者に対して投票意思を表示する方法によって選挙権を行使する選挙人が,当該補助者を含む他者から不当な圧力や干渉を受け,自由な意思の表明ができなくなるおそれが生じる結果の発生を回避することにあり,その立法目的それ自体には合理的な根拠があると認められる。 5そして,上記2⑸のとおり,改正後公選法48条2項は,政治的中立性が制度的に確保された投票事務従事者の地位に鑑み,選挙の公正を確保する目的から,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定したものであるから,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定することは,上記の立法目的との関連において不合理10なものではなく,公選法は,投票事務従事者が職務上知り得た代理投票に係る選挙人の投票内容が,投票事務従事者の属する行政機関等において共有されることはもとより,当該投票事務従事者以外の何人に対しても知られることがないよう,制度的な手当をしているのであって,選 投票に係る選挙人の投票内容が,投票事務従事者の属する行政機関等において共有されることはもとより,当該投票事務従事者以外の何人に対しても知られることがないよう,制度的な手当をしているのであって,選挙の公正を確保する観点から代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者15に限定することによって必然的に生じる選挙人の投票の秘密の保障に対する制約を必要最小限度にとどめようとしていることに鑑みると,上記投票の秘密の保障に対する制約は,憲法の要求する選挙の公正を確保する見地からやむを得ないものとして,立法府の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる。 20したがって,改正後公選法48条2項が心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人につき投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定したことにより,自書することができる選挙人との間に生じた,投票の秘密に対する制約に係る区別は,合理的理由のない差別に当たるとはいえず,憲法14条1項に違反するということはできない。 25⑶ 上記2⑺のとおり,郵便等投票制度における代理記載制度は,選挙人で身 - 39 - 体に所定の重度の障害があって投票所に行くことが困難であり,その現在する場所において自ら投票の記載をすることができない者を対象として,あらかじめ市町村の選挙管理委員会の委員長に届け出た代理記載人をして投票に関する記載をさせる制度であり(公選法49条2項,3項),投票内容を表示して候補者の氏名等を記載させる者を選択することができるものとして5いる点において,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者が投票事務従事者に限定されている,投票所に行くことができるが心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人との間に区別 て5いる点において,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者が投票事務従事者に限定されている,投票所に行くことができるが心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人との間に区別が生じている。 しかし,上記2⑺のとおり,代理記載制度については,その立案過程において,選挙の公正を確保する観点から,投票管理者等の第三者の管理の下で10投票が行われる巡回投票制度の創設についても検討されたものの,多数の対象者が存在する地域や離島等の交通至難の地域を含め,選挙管理機関がすべての対象者を巡回することが困難であること等から,その対象者を公的書類等によって障害の程度が証明された者に限定し,代理記載人について事前の届出を行わせる等の不正防止手段を講じたものであるのに対し,代理投票制15度においては,政治的中立性が制度的に確保された投票事務従事者の地位に鑑み,選挙の公正を確保する目的から,代理投票における選挙人の投票を補助すべき者を投票事務従事者に限定したものであるから,上記の区別の立法目的には合理的な根拠があり,かつ,その区別の具体的内容が立法目的との関連において不合理なものではなく,立法府の合理的な裁量判断の範囲を超20えるものではないと認められる。したがって,上記区別は,合理的理由のない差別に当たるとはいえず,憲法14条1項に違反するということはできない。 ⑷ 以上によれば,改正後公選法48条2項が,憲法14条1項に違反するということはできない。 254 争点4(控訴人は,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投 - 40 - 票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあるか)について⑴ 前記2及び3のとおり,改正後公選法48条2項の規定自体は,憲法15 ら投 - 40 - 票を補助すべき者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあるか)について⑴ 前記2及び3のとおり,改正後公選法48条2項の規定自体は,憲法15条4項,14条1項等に違反するとは認められず,その効力は否定されないから,控訴人は,代理投票を行う場合には,改正後公選法48条2項に従い5投票事務従事者のうちから投票管理者が投票立会人の意見を聴いて定める者を投票を補助すべき者として投票をしなければならず,控訴人が投票の補助を希望する者を投票管理者から投票を補助すべき者として選任を受けた上で投票することができる地位を有するとは認められない。 ⑵ また,控訴人は,予備的に,投票所に行くことができず郵便等投票制度に10おける代理記載制度を利用する選挙人との比較から,投票所に行くことができる控訴人においても,代理記載制度と同様に事前の届出等を要件とすることによって,補助者を選択できる地位を有すると解すべきである旨主張する。 しかし,上記3⑶のとおり,郵便等投票制度における代理記載制度では投票所に行くことができない身体に重大な障害がある選挙人について投票内15容を表示して候補者の氏名等を記載させる者を選択することができるとされているのに対し,投票所に行くことができるが心身の故障その他の事由により自書することができない選挙人については投票管理者が投票事務従事者のうちから投票を補助すべき者を定めるものとされているとしても,当該区別は,合理的理由のない差別に当たるとはいえず,憲法14条1項に違反20するということはできないから,改正後公選法48条2項の規定を控訴人の主張するように解釈することはできず,控訴人は,障害の程度の公的な証明や補助者に事前の届出等を要件とすることによっ に違反20するということはできないから,改正後公選法48条2項の規定を控訴人の主張するように解釈することはできず,控訴人は,障害の程度の公的な証明や補助者に事前の届出等を要件とすることによって補助者を選択できる地位を有するとは認められない。 5 争点5(本件立法行為に係る国賠法上の違法の有無)及び争点6(本件立法25不作為に係る国賠法上の違法の有無)について - 41 - ⑴ 国会議員の立法行為又は立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会5議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではないが,立法の内容又は立法不作為が国民の憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白である場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわ10たってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国賠法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷15判決・民集59巻7号2087頁参照)⑵ 本件立法行為に係る国賠法上の違法の有無について控訴人 )第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷15判決・民集59巻7号2087頁参照)⑵ 本件立法行為に係る国賠法上の違法の有無について控訴人は,改正後公選法48条2項が,憲法15条4項等及び障害者基本法28条に違反するとして,本件立法行為は,国賠法1条1項の適用上違法である旨主張する。 20前記2及び3に説示したところによれば,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項,14条1項等に違反するとは認められず,障害者基本法28条に整合しないということもできない。 したがって,本件立法行為について,国賠法1条1項の適用上違法があるとはいえない。 25⑶ 本件立法不作為に係る国賠法上の違法の有無について - 42 - 控訴人は,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項等に違反し,控訴人を含め補助を必要とする選挙人の憲法上保障されている権利(秘密投票権)を違法に侵害していることが明白であるから,控訴人を含む秘密投票を望む選挙人に対してその権利行使の機会を確保するため必要な立法措置を執らないこと(あるいは,改正後公選法48条2項につき投票者自身が望む者に5よる代筆を認める解釈運用をしないこと)は,遅くとも本件選挙時には違法であった旨主張する。 しかし,前記2及び3に説示したとおり,改正後公選法48条2項は,憲法15条4項,14条1項等に違反するとは認められず,また,前記4⑵に説示したとおり,改正後公選法48条2項の規定を控訴人の上記主張のよう10に解釈することはできない。 控訴人は,改正後公選法48条2項は本件選挙時までに批准された障害者権利条約3条及び29条(a)(ⅲ)に違反する状態となっていた旨主張する。 障害者権利条約3条は,その原 解釈することはできない。 控訴人は,改正後公選法48条2項は本件選挙時までに批准された障害者権利条約3条及び29条(a)(ⅲ)に違反する状態となっていた旨主張する。 障害者権利条約3条は,その原則として,(a)固有の尊厳,個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重,(e)機会の均等を規定し,1529条(a)(ⅲ)は,締約国は,障害者に対して政治的権利を保障し,及び他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を保障するものとし,選挙人としての障害者の意思の自由な表明を保障すること,このため,必要な場合には,障害者の要請に応じて,当該障害者により選択される者が投票の際に援助することを認めることにより,障害者が,直接に,又は自由に選んだ20代表者を通じて,他の者との平等を基礎として,政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができること(障害者が投票し,及び選挙される権利及び機会を含む。)を確保することを約束する旨規定する。 しかし,障害者権利条約3条(a)の個人の自律(自ら選択する自由を含む。)等に関する原則規定並びに29条(a)(ⅲ)の選挙人としての障害者の意思の25自由な表明を保障すること及びこのため必要な場合には障害者の要請に応 - 43 - じて当該障害者により選択される者が投票の際に援助することを認めることとの規定から,投票所に行くことができるものの心身の故障その他の事由により候補者の氏名等を自書することができない選挙人に対してその選択する者を補助者として当該選挙人が指示する候補者の氏名等を記載することを認めなければならない旨の規範的解釈を一義的に導き出すことはでき5ず,当該選挙人が代理投票を行うに当たり,選挙の公正を確保する観点から,職務上知り得た代理投票に係る選挙 の氏名等を記載することを認めなければならない旨の規範的解釈を一義的に導き出すことはでき5ず,当該選挙人が代理投票を行うに当たり,選挙の公正を確保する観点から,職務上知り得た代理投票に係る選挙人の投票内容の漏えいを防止するための制度的手当を講じた上で,代理投票における補助者となるべき者を政治的中立性が制度的に確保された投票事務従事者に限定することが,障害者権利条約の上記各規定の趣旨に明らかに抵触するということもできない(なお,10公選法58条3項は,投票所に出入りし得る者の例外として,選挙人を介護する者その他の選挙人とともに投票所に入ることについてやむを得ない事情がある者として投票管理者が認めた者も投票所に入ることができる旨規定しているところである。)。 控訴人は,改正後公選法48条2項は,本件選挙時までに障害者基本法2158条及び障害者差別解消法3条に違反する状態となっていた旨主張するが,上記⑵のとおり,改正後公選法48条2項を存置することが障害者基本法28条に整合しないということはできず,また,改正後公選法48条2項が障害者差別解消法の趣旨に抵触するということもできないから,改正後公選法48条2項を存置することが障害者差別解消法3条と整合しないというこ20ともできない。 したがって,本件立法不作為について,国賠法1条1項の適用上違法があるとは認められない。 6 以上によれば,本件確認請求に係る訴えのうち,控訴人が,次回の豊中市及び大阪府の議会の議員及び長の選挙において,投票所の事務に従事する者に限25らず,控訴人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき - 44 - 者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める部分に係る訴えは,不適法であるか が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき - 44 - 者として選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める部分に係る訴えは,不適法であるから,その余の争点について判断するまでもなく,却下すべきであり,本件確認請求のうち,控訴人が,次回の衆議院議員及び参議院議員の選挙において,投票所の事務に従事する者に限らず,投票人が投票の補助を希望する者を,投票管理者から投票を補助すべき者とし5て選任を受けた上で投票をすることができる地位にあることの確認を求める部分及び本件国賠請求は,いずれも,その余の争点について判断するまでもなく,理由がないから,これを棄却すべきである。よって,その限度で原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第7民事部10 裁判官 武 宮 英 子 裁判官 前 原 栄 智15 裁判長裁判官西川知一郎は,差支えのため,署名押印することができない。 20裁判官 武 宮 英 子

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