平成29(ネ)574 違約金等支払請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月7日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所 平成27(ワ)1974
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判決文本文27,324 文字)

平成31年2月7日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成29年第574号違約金等支払請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成27年第1974号)口頭弁論終結日平成30年10月10日主文 1 本件控訴(当審における拡張請求を含む。)を棄却する。 2 当審における訴訟費用(補助参加によって生じたものを含む。)は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人の被控訴人に対する不当利得返還請求権に基づく予約金返還請求及びこれに対する約定遅延損害金請求を棄却した部分を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,8億3099万5620円及びこれに対する平成25年2月20日から平成27年2月9日まで年6%の割合,同月10日から支払済みまで年18.25%の割合による金員を支払え(当審における拡張請求を含む。)。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,控訴人が,被控訴人との間で,被控訴人及びa 株式会社(以下「a」という。)が名古屋市α区β丁目γ番地δ他に建設中のビル(以下「本件ビル」という。)に係る定期建物賃貸借契約を締結するための予約契約(以下「本件予約契約」という。)を締結して,予約金8億3099万5620円(以下「本件予約金」という。)を被控訴人に預託したところ,①被控訴人の債務不履行を理由に本件予約契約を解除した(主位的主張),②瑕疵担保責任を理由に本件予約契約を解除した (予備的主張),③本件予約契約で合意された約定解除(解約)権を行使した(更なる予備的主張),と主張して,被控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,本件予約金8億3099万5620円の返還並びに同額に対する予約金交付の日である平成25年2月20日から解除の日である平成27年2月9日 ),と主張して,被控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,本件予約金8億3099万5620円の返還並びに同額に対する予約金交付の日である平成25年2月20日から解除の日である平成27年2月9日まで商事法定利率年6%の割合による法定利息(民法545条2項。ただし,上記③の更なる予備的主張による場合は請求しない。)及び同月10日から支払済みまで年18.25%の割合による約定遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,控訴人の本件予約金返還請求(及びその遅延損害金の支払請求)を棄却したため,これを不服とする控訴人が控訴した。 なお,控訴人は,原審において,本件予約金の返還に加え,本件予約契約に基づき,本件予約金と同額の違約金(及びこれに対する遅延損害金)の支払を求めていたところ,原判決はこの違約金支払請求を棄却したが,控訴人は原判決中の同部分を不服の対象としていないため,違約金支払請求については当審の判断対象にならない。また,控訴人は,原審において,本件予約金に係る附帯請求として,原判決摘示の主位的請求においては平成27年3月12日から,原判決摘示の予備的請求においては同年2月10日から,いずれも支払済みまで年18.25%の割合による約定遅延損害金の支払を求めていたところ,控訴人の当審での附帯請求のうち,上記の原審における附帯請求に含まれない部分は,当審における拡張請求に当たる。 2 前提事実(争いがない事実並びに後掲証拠(枝番のある書証については特記しない限り全ての枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア控訴人は,カメラ,家庭用電気製品,オーディオ機器,コンピュ ータ,時計,ゲーム機・ゲームソフト,映像ソフト・音楽ソフトなどの販売等を業とする株式会社である。( る事実)⑴ 当事者等ア控訴人は,カメラ,家庭用電気製品,オーディオ機器,コンピュ ータ,時計,ゲーム機・ゲームソフト,映像ソフト・音楽ソフトなどの販売等を業とする株式会社である。(甲1)イ被控訴人は,不動産の保有,管理及び賃貸等を業とする株式会社であり,a の完全子会社である。(甲2,35)⑵ 本件予約契約の締結等ア a は,名古屋市からの「β丁目地区のまちづくりについて」と題する平成18年12月19日付け書面(乙1)による要請を踏まえ,平成20年12月には「まちづくり基本構想」をとりまとめ,これに基づき「名古屋駅新ビル計画」を策定して本件ビルの建設を決定し,併せて,被控訴人に対し,本件ビルの運営及び管理を任せることとした。被控訴人及びa は,本件ビルの出店者の選定方法として,いわゆるプロポーザル方式を採用し,平成22年7月23日,控訴人を含む複数の家電量販店に対し,本件ビルの商業区画への出店についての提案を募集した結果,控訴人の提案が最も適当であると判断した。そして,控訴人,被控訴人及びa は,平成23年2月10日付けの出店合意書(乙5。以下「本件合意書」という。)を取り交わし,控訴人と被控訴人が本件ビルの定期建物賃貸借契約に係る定期建物賃貸借予約契約(本件予約契約)の契約条件の協議を行うこと等を内容とする合意をした。(乙1ないし5,46)イ控訴人,被控訴人及びa は,平成25年2月6日,同年1月23日付け定期建物賃貸借予約契約書(甲3。以下「本件予約契約書」という。)を取り交わして,本件予約契約を締結した。本件予約契約書は,前文及び1条ないし26条から成り,別紙として,①賃貸借条件表,②工事施工区分表,③図面(共用荷捌場,後方エレベーター),④定期建物賃貸借契約書条項案が添付されている。本件予 た。本件予約契約書は,前文及び1条ないし26条から成り,別紙として,①賃貸借条件表,②工事施工区分表,③図面(共用荷捌場,後方エレベーター),④定期建物賃貸借契約書条項案が添付されている。本件予約契約書には,別紙「本件予約契約書抜粋」のとおりの記載がある。 (甲3,乙46)ウ控訴人は,平成25年2月26日,被控訴人に対し,本件予約契約8条1項に基づき,本件予約金8億3099万5620円を支払った。(甲36)⑶ 本件ビル建設工事,計画の変更等ア被控訴人及びa は,平成24年4月20日時点では,同年10月頃に本件ビル建設工事に着手し,平成27年末に竣工し,平成28年3月頃に開業することを予定していた。被控訴人及びa は,平成24年5月16日,報道機関に対し,開業までのスケジュール(予定)として,本件ビルの竣工時期を平成27年末,百貨店及びホテルの開業時期を平成28年春とする旨を発表し,その頃,本件ビルの竣工時期を平成27年末(予定)と記載した本件ビルに係るパンフレットを公表した。(甲12ないし15)イ被控訴人及びa は,本件予約契約締結の前である平成24年10月頃,本件ビル建設工事に着工した。 ウ本件予約契約締結の後である平成25年11月,本件ビル建設工事のコンクリート打設作業中,杭孔内の内壁の一部が杭孔内に崩落し,打設中のコンクリート上部に土砂が堆積するという事象(以下「本件崩落」という。)が発生した。(乙48)エ a 社長は,平成25年11月13日,定例記者会見において,本件ビルの完成時期が半年以上遅れ,平成28年6月以降となる見通しであることを発表した。(甲4)オ a 社長は,平成26年2月13日,定例記者会見において,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,百貨店及びホテル 平成28年6月以降となる見通しであることを発表した。(甲4)オ a 社長は,平成26年2月13日,定例記者会見において,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,百貨店及びホテルの開業時期が平成29年4月となることを発表した。(甲5)カなお,本件ビルは,平成29年3月13日新築されたところ(同 年6月8日表示登記),その種類は店舗・事務所・ホテル・駐車場・バスターミナル,構造は鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下6階付き46階建て,総床面積は約25万㎡であり,建物の名称はb である。(甲34)⑷ 本件予約契約の解除ア控訴人から依頼を受けたc 弁護士ら(控訴人の原審訴訟代理人。 以下「c 弁護士ら」という。)は,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,平成27年2月9日に到達した同月5日付け通知書をもって,本件予約契約を解除する旨の意思表示をし,速やかに本件予約金を返還するよう求めた(以下,この通知を「本件解除通知」という。)。上記通知書には,「平成28年春開業の建物の賃貸借契約を締結するという目的達成不能を理由として,本件予約契約を解除する」旨の記載がある。(甲10)イ被控訴人は,控訴人に対し,平成27年2月17日到達の書面をもって,本件解除通知の主張は前提に誤りがあり,本件予約契約解除の効力は発生しない旨回答した。被控訴人は,控訴人に対し,同年3月6日到達の書面をもって,本件予約契約15条1項に基づき同契約を解除する旨の意思表示をし,同条2項に基づき本件予約金を違約金として処理することを通知した。この書面には,控訴人の翻意を願って控訴人代表者への面会を求めたにもかかわらず,控訴人がこれを拒絶し,協議に応じなかったことは,本件予約契約15条1項4号の解除事由(本契約の締結拒否及び本契約締結 この書面には,控訴人の翻意を願って控訴人代表者への面会を求めたにもかかわらず,控訴人がこれを拒絶し,協議に応じなかったことは,本件予約契約15条1項4号の解除事由(本契約の締結拒否及び本契約締結のための協議に応じないこと)に該当する旨の記載がある。(甲8,乙37,40)ウ c 弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,平成27年3月11日到達の通知書をもって,本件予約契約15条1項に 基づき,本件予約契約を解除する旨の意思表示をし,本件予約金の返還及び違約金8億3099万5620円の支払を求めた。上記通知書には,本件ビル建設に係る事前調査及び本件ビル建設計画の不備という被控訴人の責めに帰すべき事由により,本件ビルの開業時期が本件予約契約締結時点において前提とされていた平成28年春から遅延し,控訴人と被控訴人との間で本契約を開始・継続するために信頼関係を構築することは著しく困難となっており,被控訴人との間で本契約を締結することは著しく困難となっている旨の記載がある(甲9。ただし,控訴人は,当審において,この通知書による解除を本件予約契約の終了事由として主張するものではない(当審における「控訴の趣旨等変更申立書」等))。 3 主な争点⑴ 被控訴人の債務不履行を理由とする本件予約契約解除の可否(主位的主張関係)⑵ 瑕疵担保責任を理由とする本件予約契約解除の可否(予備的主張関係)⑶ 約定の解除(解約)権行使の可否(更なる予備的主張関係) 4 主な争点に関する当事者の主張⑴ 被控訴人の債務不履行を理由とする本件予約契約解除の可否(控訴人の主張)ア本件予約契約書の「平成28年春開業予定」という字句は,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定したものである。被控訴人は,本件予約契約に基づき,平成28 約契約解除の可否(控訴人の主張)ア本件予約契約書の「平成28年春開業予定」という字句は,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定したものである。被控訴人は,本件予約契約に基づき,平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して,約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負っていた。しかるに,被控訴人は,控訴人に対して平成29年4月開業 予定のビルの区画しか供することができず,本契約締結が約1年遅延して予約契約期間が3年間余となるという債務不履行に陥った。 したがって,本件予約契約15条1項3号若しくは13号(ただし,同条4項による読み替え後のもの。以下,控訴人による解除に関して同条1項各号を引用する場合も同じ。)の事由又は法定の解除事由が存在する。なお,本来の義務が履行不能であるから催告は不要である。 イ仮に,本件ビルの開業が平成29年4月予定になると判明した平成26年2月13日時点において,上記アの債務不履行だけでは解除事由に該当しないとしても,被控訴人は,当初控訴人に対する損害賠償責任を認めながら,その後に豹変して約1年間も損害賠償の支払を予め強く拒絶する債務不履行を言明し,また,控訴人がA工事とB工事(更にC工事)を同時並行して進めることで開業時期を早めることなどを申し出ても,これを取り上げないという本件予約契約4条3項の義務を怠る債務不履行も加わった。したがって,遅くとも控訴人が本件解除通知を発した平成27年2月5日時点では,上記アと同様の各解除事由が生じた。 ウ控訴人は,本件解除通知により,本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。なお,解除は端的な契約解消の意思表示であり,解除通知に解除原因を示す必要はなく,客観的な解除原因が存在すれば効 た。 ウ控訴人は,本件解除通知により,本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。なお,解除は端的な契約解消の意思表示であり,解除通知に解除原因を示す必要はなく,客観的な解除原因が存在すれば効力を生じるから,本件解除通知によって本件予約契約は終了した。 (被控訴人の主張)ア被控訴人は,本件予約契約において,控訴人が主張するような,約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負うものではない。本件予約契約書には,上記の行為債務がある との記載は存在しない。本件予約契約において,控訴人と被控訴人は,被控訴人がB工事を着工する前日(本件予約契約3条)という不確定期限までに本契約を締結することを合意したにすぎない。本件予約契約書の前文及び2条には,「平成28年春に開業予定の」というフレーズがあるが,これは本件予約契約締結時点ではまだ名称も決まっていないビルを特定するためのフレーズにすぎず,特定の建物を賃貸借の対象に供して本契約を締結する行為債務を被控訴人が負う理由にはならない。 イ控訴人は,平成26年2月13日以降の被控訴人の行為も解除事由として主張するが,被控訴人が当初控訴人に対する損害賠償責任を認めた事実は一切なく,また,本件予約契約4条3項は,控訴人が意見を具申し協議を求めることができる対象を賃貸借物件の範囲に限定しているから,被控訴人に債務不履行はない。 ウ控訴人が本件解除通知により本件予約契約を解除する旨の意思表示をしたことは認めるが,解除の効力及び控訴人の法的主張は争う。 ⑵ 瑕疵担保責任を理由とする本件予約契約解除の可否(控訴人の主張)ア本件予約契約は,徒手空拳で本契約締結のための協議をするものではなく,被控訴人には,「平成28年春開業予定のビル区画」という特定物を賃貸借対 由とする本件予約契約解除の可否(控訴人の主張)ア本件予約契約は,徒手空拳で本契約締結のための協議をするものではなく,被控訴人には,「平成28年春開業予定のビル区画」という特定物を賃貸借対象に供して,本契約締結のための協議をする行為債務があったところ,仮にその場所でのビル建築については平成28年春開業が当初から不可能であり,原始的瑕疵ある特定物であったとすれば,その約1年後に開業となるビル区画しか供することができず,予約契約の期間は約3年間と大幅に遅延することとなるから,本件予約契約の目的を達成することができない。したがって,上記の原始的瑕疵が判明したときに,控訴人は,民法566条 1項,同570条の各準用により本件予約契約を解除できることとなった。 イ被控訴人は,除斥期間経過の主張をするが,控訴人は,被控訴人に対し,平成26年4月1日に瑕疵担保責任を前提とした損害賠償を請求し,同年8月13日付け「ご連絡」(甲6)及び同年10月14日到達の「申入書」(甲11の1)でも損害賠償請求をするなど,解除直前の平成27年2月2日まで損害賠償を求め続けて,瑕疵担保責任を問う意思を明確にし,同月9日,本件解除通知により確定的に本件予約契約を解除したから,被控訴人の上記主張は理由がない。 (被控訴人の主張)ア瑕疵担保責任に関する控訴人の主張は,平成28年春開業予定のビル区画という特定物を賃貸借対象に供して協議をする行為債務が被控訴人にあったことを前提とするものであるが,被控訴人がそのような債務を負わないことは,前記⑴(被控訴人の主張)アのとおりである。 イ瑕疵担保責任の追及については1年の除斥期間(民法566条3項,570条)が設けられているところ,控訴人の主張によれば,遅くとも平成26年2月13日時点で瑕疵担保責 主張)アのとおりである。 イ瑕疵担保責任の追及については1年の除斥期間(民法566条3項,570条)が設けられているところ,控訴人の主張によれば,遅くとも平成26年2月13日時点で瑕疵担保責任の規定に基づいて本件予約契約を解除することが可能になったのであるが,控訴人が初めて瑕疵担保責任による解除を主張したのは,平成29年7月28日付け控訴理由書においてであるから,瑕疵担保責任を追及することは認められない。 ⑶ 約定の解除(解約)権行使の可否(控訴人の主張)ア被控訴人が本件崩落の原因を特定できず,本件ビル建設工事の期 間が約1年間遅延することは,本件予約契約14条1項1号の「土壌汚染や埋設文化財等の判明」により「甲・乙の計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当し,また,同項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当する。したがって,本件ビルの開業予定が平成29年4月になると判明した平成26年2月13日時点で,控訴人は,同項の約定解除(解約)権を行使できることとなった。 イ仮に同日時点では約定解除権の行使が可能でなくとも,本件予約契約の期間が約3年間と遅延して,控訴人に損害が生じ,その後に長期間にわたって当事者間で損害賠償についての主張の争いが続き,また,被控訴人は本件予約契約4条3項の義務を怠ったから,遅くとも平成27年2月5日には,当事者間で長期(本件予約契約書添付の賃貸借条件表等により15年間)にわたる賃貸借ができる信頼関係の成立が不可能となった。したがって,同日時点では,本件予約契約14条1項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当することとなり,控訴人は,約定解除権 可能となった。したがって,同日時点では,本件予約契約14条1項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当することとなり,控訴人は,約定解除権を行使できることとなった。 (被控訴人の主張)ア本件崩落の原因が特定できず,本件ビル建設工事の期間が約1年間延伸したことは,本件予約契約14条1項所定の土壌汚染や埋設文化財の判明又はこれに準ずるような事由に当たらない。また,控訴人は平成27年2月まで継続的に本契約の締結に向けて被控訴人と協議を行っており,本契約の締結が困難な状態になったことはない。 イ本件ビル建設工事の期間が約1年間延伸したことにより控訴人に 損害は生じておらず,控訴人と被控訴人との間で損害賠償についての争いが続いた事実もない。被控訴人に本件予約契約4条3項の義務違反がないことは,前記⑴(被控訴人の主張)イのとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに証拠(後掲証拠のほか,甲18,46の1,乙46ないし48,証人d,同e,同f,同g)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ⑴ 本件合意書取り交わしに至るまでの経緯等ア a は,平成18年12月,名古屋市から,「β丁目地区のまちづくりについて」と題する書面(乙1)により,名古屋駅周辺地区における名古屋の玄関口にふさわしい顔づくり及び都心としての賑わいと活力の創出を図るため,駅機能との一体性を保ちつつ,ターミナル機能の拡充,隣接ビルとの一体的な機能の確保及び周辺との調和のとれた高度利用の促進を行うことについて検討するよう求められた。a は,平成20年12月,a のグループ会社が所有していたhビルを建て替え,同ビルの敷地に隣接して土地を有するi,j 株式会社 和のとれた高度利用の促進を行うことについて検討するよう求められた。a は,平成20年12月,a のグループ会社が所有していたhビルを建て替え,同ビルの敷地に隣接して土地を有するi,j 株式会社及びk 株式会社等とともに開発を進めることを内容とする「β丁目ω番地区における「まちづくり基本構想」について」と題する文書(乙2)をとりまとめて公表した。a は,この基本構想に基づき「名古屋駅新ビル計画」の実現に向けた検討を進め,平成22年5月19日,これを具体化した「「名古屋駅新ビル計画」の推進決定について」と題する文書(乙3の3)を公表した。(乙1,2,3の3)イ a は,平成22年7月,株式会社l(現商号は株式会社m。当時は控訴人の子会社であったが,現在は組織再編により控訴人の完全親 会社となった。)に対し,本件ビルの商業区画への出店について具体的に交渉する会社を選定するため,出店店舗に係る提案書の提出を求める依頼書及び提案要領(乙3の1・2)を交付し,併せて添付資料として,上記「「名古屋駅新ビル計画」の推進決定について」と題する文書(乙3の3)を交付した。同文書には,本件ビル計画の概要として,同年12月初めにh ビルの解体に着手し,平成24年夏頃に本件ビルの建設に着手し,平成28年度に本件ビルを竣工させ,平成29年度にかけて順次開業する旨のスケジュールが記載され,同スケジュールについては今後の行政手続の状況により変更される可能性がある旨も記載されていた。これを受けて,控訴人は,aに対し,平成22年8月24日頃,出店検討に向けての提案書(乙4の1)を提出し,更に同年9月,aから追加提案を求められたのを受けて,追加提案書(乙4の4)を提出した。(乙3,4)ウ被控訴人及びaは,控訴人の上記提案を受けて,本件ビルの商業 の提案書(乙4の1)を提出し,更に同年9月,aから追加提案を求められたのを受けて,追加提案書(乙4の4)を提出した。(乙3,4)ウ被控訴人及びaは,控訴人の上記提案を受けて,本件ビルの商業区画への出店について具体的に交渉する会社として控訴人を選定し,控訴人との間で,平成23年2月10日付けで本件合意書を取り交わし,控訴人及び被控訴人が,本件予約契約を平成24年7月末を目途に締結できるよう,誠意をもって契約条件の協議を行うものとすることなどを合意した。(乙5)⑵ 本件ビル建設工事の計画,着工等ア被控訴人及びaは,平成24年4月20日時点では,同年10月頃に本件ビル建設工事に着手し,平成27年末に竣工し,平成28年3月頃に開業することを予定し,これを表にした「全体スケジュールについて」と題する書面(甲12)を作成し,控訴人に交付した。なお,同書面には,本契約の締結や本件ビルの開業等については,今後工事工程計画の深度化・行政検査により変更の可能性があ る旨が注記されていた。被控訴人及びaは,平成24年5月16日,「名古屋駅新ビル(仮称)の開業時期の前倒し等について」と題する書面(甲13)を作成し,報道機関に対し,これまでの進捗を踏まえ,本件ビルの開業時期を前倒しするなどスケジュールの変更をしたとして,本件ビルの竣工時期を平成27年末,百貨店及びホテルの開業時期を平成28年春とする旨を発表したが,この新スケジュールについては,今後の行政手続及び工事の進捗状況により変更となる場合があるとされていた。被控訴人及びaは,その頃,本件ビルの竣工時期を「平成27年末(予定)」と記載した本件ビルに係るパンフレット(甲15)を作成し,公表した。(甲12ないし15)イ被控訴人及びaは,本件予約契約締結の前である平成24年1 本件ビルの竣工時期を「平成27年末(予定)」と記載した本件ビルに係るパンフレット(甲15)を作成し,公表した。(甲12ないし15)イ被控訴人及びaは,本件予約契約締結の前である平成24年10月頃,本件ビル建設工事に着工した。 ⑶ 本件予約契約締結に至るまでの経緯等ア控訴人と被控訴人及びa(以下,被控訴人とaの両社又はそのいずれか1社を指して「被控訴人側」ということがある。)は,本件合意書を取り交わした後,それぞれの担当者間で面談及びメールや電話のやり取りをして本件ビルに係る予約契約の締結に向けた協議を実施した。 被控訴人側は,平成23年12月12日,控訴人に対し,本件ビルの定期建物賃貸借契約に係る予約契約書案(乙7の1)を提示した。上記契約書案は,前文及び1条ないし54条から成るところ,本件ビルの竣工時期及び開業時期についての記載はなく,末尾の契約日付欄には「平成24年7月**日」と記載されていた。 その後平成24年2月21日にかけて,控訴人が上記契約書案に対する指摘ないし要望を述べ,これを受けて被控訴人側が対照表 (乙7の2)の形で整理した上で被控訴人側の見解や修正案を示し,控訴人が被控訴人側の示した契約書案に加除訂正して作成した予約契約書案(いわゆる見え消し版。乙7の3,7の4の2)を示し,被控訴人側が再び対照表(乙7の6)の形式で見解や修正案を示すなどして,協議が継続された。 被控訴人側は,同年5月22日,控訴人に対し,改めて予約契約書案(乙7の7の2)を送付した。(以上につき,乙7)イ控訴人は,上記予約契約書案を踏まえ,平成24年7月3日,被控訴人側に対し,修正案を送付した。そして,被控訴人側は,その後の控訴人との協議を経た上で,同月12日,最終案として,更に修正した予約契約書 訴人は,上記予約契約書案を踏まえ,平成24年7月3日,被控訴人側に対し,修正案を送付した。そして,被控訴人側は,その後の控訴人との協議を経た上で,同月12日,最終案として,更に修正した予約契約書案(乙8の2)を送付した。 これに対し,控訴人は,同月17日,被控訴人側に対し,条文についての弁護士チェックが終わったとして,修正案(乙9の2)を送付した。そして,控訴人と被控訴人側の各担当者は,同月20日,控訴人の顧問弁護士であるn弁護士(控訴人の当審訴訟代理人。以下「n弁護士」という。)を交えて協議を行い,n弁護士が控訴人の予約契約書案を示すこととなった。 控訴人は,同月26日,被控訴人側に対し,n弁護士が起案した予約契約書案(乙10の2)を送付した。この予約契約書案は,それまでの予約契約書案が被控訴人に予約完結権を認める内容であったものを双方共に予約完結権を有しない予約とし,条項の多くを削除して24条から成るものにするなどの大幅な修正を施したものであった。また,控訴人は,被控訴人側に対し,同年8月3日,上記予約契約書案(乙10の2)の変更内容と理由を記載した一覧表(乙11の2)を,同月6日,n弁護士が作成した「今回の予約契約について」と題するコメント(乙11の4)を送付した。 被控訴人及びaは,同年9月6日,控訴人に対し,「賃貸借予約契約書案文弊社修正案の考え方」と題する書面(乙12の1)を送付した。この文書は,控訴人による修正の趣旨を,要旨,①予約完結権のある予約ではなく,双方に本契約の締結義務のある予約とすべき,②本契約で定めるべき事項については今後協議として予約契約から削除すべき,③被控訴人の連帯保証人,契約当事者としてaが加入すべき,との趣旨であると整理した上で,①については,控訴人案をベースに き,②本契約で定めるべき事項については今後協議として予約契約から削除すべき,③被控訴人の連帯保証人,契約当事者としてaが加入すべき,との趣旨であると整理した上で,①については,控訴人案をベースに条文に反映すること,②については,双方が締結すべき本契約の内容を「本契約書案」として予約契約に別紙添付し,その内容は今後双方の合意により変更・追加が可能である旨を明記すること,③については,予約契約の当事者は控訴人と被控訴人の2者とした上で,aと被控訴人との関係については控訴人案をベースに条文に反映することを提案するものであり,これを前提とした条文比較一覧表(乙12の2)及び予約契約書案(乙12の3)を添付するものであった。 これに対し,控訴人は,同月13日,被控訴人及びaに対し,被控訴人及びaの上記提案に不適切な点があることなどを指摘して再考を求めることなどを記載した「今回の予約契約について」と題する文書(乙13)を送付し,同年10月11日,本契約書案のうち今後も検討を要する案文には「【注】」を付することを加筆するなどの修正を施した25条から成る新たな予約契約書案(乙14)を送付した。 被控訴人側は,控訴人からの上記予約契約書案を受けて,同月24日,控訴人に対し,25条から成る修正した予約契約書案(乙15の1)及び同年9月6日付け被控訴人案及び同年10月11日付け控訴人案との対比並びに修正についての考え方を一覧にした条文 比較表(乙15の2)を送付した。なお,この修正した予約契約書案(乙15の1)では,その頃に本件ビル建設工事に着工したことに伴い,予約契約の対象となる建物について,従前はa及び被控訴人が「建設する」名古屋駅新ビル(仮称)(又は新ビル)と表記されていたのが,「建設している」名古屋駅新ビル(仮称)(又は 事に着工したことに伴い,予約契約の対象となる建物について,従前はa及び被控訴人が「建設する」名古屋駅新ビル(仮称)(又は新ビル)と表記されていたのが,「建設している」名古屋駅新ビル(仮称)(又は新ビル)と改められた。(以上につき,乙8ないし15)ウ n弁護士は,平成24年12月22日,控訴人の依頼を受け,その了承を得た上で,被控訴人側に対し,26条から成る予約契約書案(乙16の2)を添付したメール(乙16の1)を直接送付した。 この予約契約書案の前文及び2条においては,被控訴人が直近に作成した予約契約書案(乙15の1)では,予約契約の対象となる建物について,a及び被控訴人が建設している名古屋駅新ビル(仮称)又は新ビルとのみ記載されていたのを,「平成28年3月末に開業予定の」名古屋駅新ビル(仮称)(前文)又は新ビル(2条)と修正することを提案し,「【Y注:平成28年3月末に開業予定の,との特定も必要と存じます】」との注記がそれぞれ付記されていた。 また,n弁護士は,予約契約書に添付する本契約の条項案について,「現時点での合意した条項の束であることを明らかにすべきです」との意見を付した。 これに対し,被控訴人側は,平成25年1月10日,n弁護士及び控訴人担当者に対し,被控訴人側の弁護士とも調整の上であるとして,26条から成る予約契約書案(乙17の3)を添付したメール(乙17の1)を送付した。この予約契約書案においては,n弁護士が平成24年12月22日に送付した予約契約書案(乙16の2)の前文及び2条で修正の提案をした「平成28年3月末に開業予定の」との箇所がいずれも「平成28年春に開業予定の」と再修 正され,「【現時点のスケジュールでは平成28年春の開業を予定しています】」とそれぞれ付記されていた。 n弁護士は に開業予定の」との箇所がいずれも「平成28年春に開業予定の」と再修 正され,「【現時点のスケジュールでは平成28年春の開業を予定しています】」とそれぞれ付記されていた。 n弁護士は,平成25年1月11日,被控訴人側に対し,再度修正した予約契約書案(乙18の2)を添付したメール(乙18の1)を送付した。なお,この予約契約書案では,前文及び2条の再修正は提案されていなかった。(以上につき,甲27,乙16ないし18)エ控訴人,被控訴人及びaは,前提事実⑵イのとおり,平成25年2月6日,本件予約契約書を取り交わして,本件予約契約を締結した。本件予約契約書には,n弁護士が同年1月11日に送付した予約契約書案(乙18の2)による再修正は反映されなかった。(甲3,乙18,46)⑷ 本件崩落の発生及びその後の対応等ア平成25年11月,本件ビル建設工事を実施していたo株式会社とp株式会社の共同企業体(以下「施工JV」という。)がコンクリート打設作業をしていたところ,杭孔内の内壁の一部が杭孔内に崩落し,打設中のコンクリート上部に土砂が堆積するという事象(本件崩落)が発生した。 イ施工JVは,本件崩落の原因を明確に特定することができなかったところ,平成26年1月頃までに,その対策として,①打設中のコンクリートの健全性の確認,②杭工事の内容の変更,③より慎重に地下の掘削工事を行うことなどを実施することとし,これに従って工事を進めた結果,上記①及び②の対策のためそれぞれ数か月,上記③の対策のため約半年,工事期間が延伸することとなった。 ⑸ 本件崩落後の当事者間の折衝等ア a社長は,本件崩落後である平成25年11月13日の定例記者 会見において,本件ビルの完成時期が半年以上遅れ,平成28年6月以降となる見通しで た。 ⑸ 本件崩落後の当事者間の折衝等ア a社長は,本件崩落後である平成25年11月13日の定例記者 会見において,本件ビルの完成時期が半年以上遅れ,平成28年6月以降となる見通しであることを発表し,入居予定のテナントに説明を始めたこと,入居者への迷惑を最小限にする手立てを講じることなども話した。控訴人の広報担当者は,上記記者会見を受け,取材した報道機関に対し,「できないものは仕方がない。完成を待って予定通り出店する。」とコメントした。(甲4)被控訴人側の担当者は,平成25年11月,上記記者会見に先後して,控訴人の代表者や担当者を訪ね,本件ビルの竣工時期が半年以上先になる予定であることなどを説明し,また,同年12月,控訴人の担当者に対し,本件ビルの開業が早くても平成29年3月頃になることなどを説明した。この頃,控訴人が本件ビルへの出店取り止めを検討したことはなく,控訴人及び被控訴人側の各担当者は,控訴人の本件ビル出店に向けた打合せを定期的に実施していた。 イ被控訴人側の担当者は,平成26年2月4日,控訴人代表者に対し,工事の工程を見直した結果,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,商業施設及びホテル等の開業時期が平成29年4月の予定となったことを記載した書面(乙29)を交付し,これについて説明した。また,被控訴人側の担当者は,同日,控訴人の担当者に対し,開業時期変更後の本件ビル建設工事等の全体スケジュール及び店舗の内装設計に関するスケジュールについて,資料(乙31,45)を用いて説明し,控訴人の担当者は,被控訴人側の担当者に対し,本件ビルの開業が1年遅れることが確定したことにより失われる利益を補填するよう求めた。(乙29,31,45)a社長は,平成26年2月13日,定例記者会見にお 者は,被控訴人側の担当者に対し,本件ビルの開業が1年遅れることが確定したことにより失われる利益を補填するよう求めた。(乙29,31,45)a社長は,平成26年2月13日,定例記者会見において,本件ビルへのオフィスの入居開始時期が平成28年11月,百貨店及び ホテルの開業時期が平成29年4月となることを発表し,入居予定のテナントから補償を求められた場合に「自らのみ込むこともあれば,建設会社にお願いすることもある」などと述べた。(甲5)ウ平成26年3月から同年6月にかけて,控訴人の担当者は,被控訴人側の担当者に対し,本件ビルの開業時期が遅延したことによる金銭的補償を求め,これに対し,被控訴人側の担当者は,施工JVに対し損害賠償等を請求するつもりはなく,控訴人に対する補償を行うつもりはないが,出店準備金等の名目で金銭を支払うことや本件ビル建設工事のうち控訴人が負担するB工事につき被控訴人側が負担することは検討するなどと回答したが,これらの具体的金額は明示しなかった。また,控訴人の担当者は,被控訴人側の担当者に対し,開業時期を平成29年3月とすることも求めたが,被控訴人側の担当者はこれを約束することはできない旨回答した。 エ c弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人側に対し,平成26年8月13日付け書面(甲6)を送付し,控訴人に多大な損害が生じていることなどを述べ,本件ビルの竣工及び開業時期が遅延した原因についての可能な限り正確かつ具体的な説明及びその責任の所在について,書面で回答するよう求めた。(甲6)被控訴人は,c弁護士らに対し,平成26年9月1日付け書面(甲7)を送付し,掘削速度を抑えたり,状況の確認頻度を増やすなど更に丁寧に工事を進めることとし,工事全般の工程を見直したことにより,本件ビルの開 人は,c弁護士らに対し,平成26年9月1日付け書面(甲7)を送付し,掘削速度を抑えたり,状況の確認頻度を増やすなど更に丁寧に工事を進めることとし,工事全般の工程を見直したことにより,本件ビルの開業予定が平成29年4月になったこと,事前調査,工法・作業手順に問題はなく,被控訴人側が責めを負うものではないことなどを回答した。(甲7)c弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,平成26年10月10日付け書面(甲11の1)を送付し,被控訴人の上 記回答が不十分であること,本件ビルの開業遅延は被控訴人の責めに帰すべき事由であることなどを述べ,本件ビルの開業遅延により控訴人が被ることになる損害についての被控訴人の見解及び対応について,書面で回答するよう求めた。もっとも,被控訴人は,これに対する回答は不要と判断し,特に回答をしなかった。(甲11)オその後も,控訴人は,被控訴人側に対し,本件ビルの開業遅延による損害賠償ないし金銭的補償を求め,被控訴人側は,控訴人に対し金銭を支払う法的義務はないという回答に終始した。控訴人代表者は,平成26年11月頃には,平成29年3月に本件ビルが開業できない場合には出店を取り止めることを考える旨の発言をするようになった。控訴人の担当者は,平成27年1月までに,被控訴人側担当者に対し,A工事とB工事を併行して行うなどして工期を短縮し,平成28年12月に本件ビルを開業することを打診したが,被控訴人側担当者は,そのようなことは不可能であり,平成29年3月の開業も約束できない旨を回答した。もっとも,控訴人の担当者と被控訴人側の担当者とは,平成27年2月3日までは,控訴人が本件ビルに出店するための設計に関する打合せを継続して実施しており,同日時点でも,その後の打合せの日程を合意していた。 ( 控訴人の担当者と被控訴人側の担当者とは,平成27年2月3日までは,控訴人が本件ビルに出店するための設計に関する打合せを継続して実施しており,同日時点でも,その後の打合せの日程を合意していた。 (乙35,36,49ないし52)⑹ 本件予約契約の解除等ア c弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,前提事実⑷アのとおり,平成27年2月9日,本件解除通知をもって,本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。(甲10)イ被控訴人は,控訴人に対し,平成27年2月17日到達の内容証明郵便をもって,本件解除通知には理由がなく,効力がないことなどを回答した。(乙37) ウ c弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,平成27年2月18日付け通知書を送付し,平成28年春に本件ビルを開業することが不可能になったことをもって,本件予約契約の目的を達成することができなくなったこと,被控訴人が本契約の締結を迫るなどということは著しく信頼にもとる行為であることなどを記載して,上記イの内容証明郵便に対する反論をした。(乙39)エ被控訴人側の担当者は,控訴人の担当者に対し,平成27年2月9日から同月20日までの間に数回にわたって,控訴人代表者との面会の場を設けるよう求めたが,面会を拒否された。 オ被控訴人は,控訴人に対し,前提事実⑷イのとおり,平成27年3月6日到達の書面をもって,本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。(甲8,乙40)カ c弁護士らは,控訴人の代理人として,被控訴人に対し,前提事実⑷ウのとおり,平成27年3月11日到達の書面をもって,再度本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。(甲9) 2 主な争点⑴(被控訴人の債務不履行を理由とする本件予約契約解除の可否)について⑴ア控訴人は,本件予 年3月11日到達の書面をもって,再度本件予約契約を解除する旨の意思表示をした。(甲9) 2 主な争点⑴(被控訴人の債務不履行を理由とする本件予約契約解除の可否)について⑴ア控訴人は,本件予約契約書の「平成28年春開業予定」という字句は,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定したものであり,被控訴人は,本件予約契約に基づき,平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して,約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負っていたのに,その履行を怠ったから,本件予約契約15条1項3号若しくは13号の事由又は法定の解除事由が生じた旨主張する(前記第2の4⑴(控訴人の主張)ア)。 イしかしながら,まず,「平成28年春開業予定」という字句のう ち「予定」という文言自体が開業時期の変更があり得ることを内包するものである上,平成22年7月に株式会社lに対し交付された「「名古屋駅新ビル計画」の推進決定について」と題する文書(乙3の3),平成24年4月頃に控訴人に交付された「全体スケジュールについて」と題する書面(甲12)及び同年5月の報道発表に際し作成された「名古屋駅新ビル(仮称)の開業時期の前倒し等について」と題する書面(甲13)にも,開業スケジュールが,今後の行政手続の状況,工事工程計画の深度化・行政指導又は工事の進捗状況によって変更される可能性がある旨が記載されていたものである。もっとも,本件予約契約が締結された平成25年2月時点では,既に本件ビル建設工事が着工されていたが,地下6階付き46階建てで総床面積が約25万㎡に及ぶなどの本件ビルの規模等に照らせば,着工後であっても,建設工事の進捗状況等によっては本件ビルの開業時期に変更の可能性があることに変わりはない。 地下6階付き46階建てで総床面積が約25万㎡に及ぶなどの本件ビルの規模等に照らせば,着工後であっても,建設工事の進捗状況等によっては本件ビルの開業時期に変更の可能性があることに変わりはない。 また,「平成28年春開業予定」という字句のうち「春」という文言についても,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定するための文言としては曖昧なものといわざるを得ない。しかも,控訴人が主張するように,上記字句が賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定したものであり,被控訴人が平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して,約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負うことになると解するとすれば,少なくとも本件予約契約書の文言上は,被控訴人が平成28年春開業予定のビルを賃貸借の対象とする本契約を締結することができない場合には,控訴人に本件予約契約の解除権が発生し,8億円を超える本件予約金の返還を求めることができるのみならず,本件予約金と同額の違約金を請求する ことができることとなり得る。しかるところ,そのような重大な法的効果を生じさせ得るような契約書上の条項に「春」などという不明確な文言を使用することは通常考えにくく,とりわけ,本件予約契約書は,著名な家電量販店である控訴人と巨大企業であるaの完全子会社である被控訴人が,双方とも弁護士との協議,調整を繰り返した上で取り交わしたものであるから,仮に控訴人が主張するように賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定するという重要な法的意味を持たせるのであれば,「春」という語を使用することはおよそ想定し難い。 そうすると,本件予約契約書前文及び2条の「平成28年春開業予定」という字句自体に,控訴人の主張するような,賃貸借の対象 を持たせるのであれば,「春」という語を使用することはおよそ想定し難い。 そうすると,本件予約契約書前文及び2条の「平成28年春開業予定」という字句自体に,控訴人の主張するような,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定したものであるとの趣旨を読み込むことは困難であり,むしろ,被控訴人が主張するように,名称も決まっていないビルを特定するためのフレーズにすぎないと解するのが自然である。 ウ次に,本件予約契約書に「平成28年春開業予定」という字句が加えられた経緯については,前記1の認定事実⑶ウのとおりであり,n弁護士が平成24年12月22日に被控訴人側に送付した予約契約書案(乙16の2)で初めて加えられた修正に,被控訴人側が平成25年1月10日にn弁護士及び控訴人担当者に送付した予約契約書案(乙17の3)で再修正を加えた結果,本件予約契約書のような記載となったものである。そして,控訴人が当審において提出した,当時株式会社lの契約実務を担当する部長であったq作成の陳述書(甲46の1)には,n弁護士が作成した予約契約書案(乙16の2)の修正は,開業予定が遅延すると控訴人に甚大な損害が生じることから,本件ビルについて「平成28年3月開業予定」と してaに責任を持たせるためにされたものであり,本件予約契約は「平成28年3月開業予定」のビルを対象とする契約である旨の記載がある(なお,原審証人dの証言及び同人作成の陳述書(甲18)中にも,これと類似する趣旨の部分がある。)。 しかしながら,控訴人の主張及びq作成の陳述書(甲46の1)によっても,平成24年12月22日より前に作成されていた予約契約書案においては,賃貸借の対象である建物(本件ビル)の品質・性能の特定及びこれを前提とする被控訴人の行為債務に関する定めはなかった によっても,平成24年12月22日より前に作成されていた予約契約書案においては,賃貸借の対象である建物(本件ビル)の品質・性能の特定及びこれを前提とする被控訴人の行為債務に関する定めはなかったことになるところ,n弁護士が起案した上記予約契約書案における上記修正の注釈は【Y注:平成28年3月末に開業予定の,との特定も必要と存じます】というものにとどまり,「平成28年3月開業予定」のビルを対象とする契約として被控訴人側に責任を持たせる内容の予約契約に変更するという趣旨を被控訴人側に伝えるものと解することは困難である。加えて,被控訴人側は,平成25年1月10日送付の予約契約書案(乙17の3)において,「平成28年3月開業予定」という文言を「平成28年春に開業予定の」という文言に再修正し,開業予定時期の特定を薄めた上,「【現時点のスケジュールでは平成28年春の開業を予定しています】」と付記して,開業予定時期は「現時点」でのスケジュールに基づくものであり,今後なお開業時期の変更があり得ることを示唆しており,被控訴人側は本件ビルを平成28年春に開業させることにつき法律上の責任を負うものではないと考えていたことを容易に看取することができる。そうすると,控訴人の内心はともかく,「平成28年春開業予定」という字句が加えられたことによって,控訴人と被控訴人との間に,被控訴人が平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して, 約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負うということについての意思の合致が生じたと認めることはできない。 エ以上によれば,控訴人と被控訴人が,本件予約契約において,被控訴人が平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象 の意思の合致が生じたと認めることはできない。 エ以上によれば,控訴人と被控訴人が,本件予約契約において,被控訴人が平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負うことを合意したと認めることはできない。 ⑵ 控訴人は,仮に平成26年2月13日時点においては被控訴人の債務不履行が解除事由に該当しないとしても,その後に,被控訴人が約1年間も損害賠償の支払を予め強く拒絶する債務不履行を言明し,本件予約契約4条3項の義務を怠る債務不履行も加わったことによって,解除事由が生じた旨主張する(前記第2の4⑴(控訴人の主張)イ)。 しかしながら,控訴人の上記主張は,被控訴人が平成28年春開業予定の本件ビルのうちの一部(区画)という特定物を賃貸借の対象に供して約2年間と予定された予約契約期間中に本契約を締結する行為債務を負い,その債務不履行があったことを前提に,平成26年2月13日以降の被控訴人の行為を加えて解除事由として主張するものと解されるところ,前記⑴で説示したところによれば,その前提が欠けているといわざるを得ない。また,被控訴人が上記行為債務を負うものではない以上,被控訴人が控訴人に対し損害賠償を拒否することが債務不履行になるものでもなく,被控訴人が控訴人に対し本件ビルの開業時期が遅れることによる法的な責任を認めていたという事実(前記1⑸ア及びイで認定したa社長の定例記者会見における各発言がこれに当たるとは認められない。)を認めるに足りる証拠もない。そして,本件予約契約4条3項は,控訴人が被控訴人に対し意見の具申及 び協議の申出をすることができるものとし,被控訴人が可能な限り斟酌するものとした規定であり,被控訴人のすべき 証拠もない。そして,本件予約契約4条3項は,控訴人が被控訴人に対し意見の具申及 び協議の申出をすることができるものとし,被控訴人が可能な限り斟酌するものとした規定であり,被控訴人のすべき行為の具体性,特定性に乏しいものであって,その不履行が解除原因となるような被控訴人の債務を定めたものとは解し難い。 ⑶ 以上によれば,控訴人の主な争点⑴に関する主張(主位的主張)は,採用することができない。 3 主な争点⑵(瑕疵担保責任を理由とする本件予約契約解除の可否)について控訴人は,予備的主張として,瑕疵担保責任を理由として,民法566条1項,同570条の各準用により,控訴人は本件予約契約を解除することができる旨主張する(前記第2の4⑵(控訴人の主張)ア)。 しかしながら,この主張は,本件予約契約において,被控訴人が「平成28年春開業予定のビル区画」という特定物を賃貸借対象に供して,本契約締結のための協議をする行為債務を負うことを前提にするものであるが,被控訴人にそのような行為債務がないことは,前記2⑴で説示したとおりである。 したがって,控訴人の主な争点⑵に関する主張(予備的主張)は,採用することができない。 4 主な争点⑶(約定の解除(解約)権行使の可否)について⑴ア控訴人は,被控訴人が本件崩落の原因を特定できず,本件ビル建設工事の期間が約1年間遅延することは,本件予約契約14条1項1号の「土壌汚染や埋設文化財等の判明」により「甲・乙の計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当し,また,同項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当するから,本件ビルの開業が平成29年4月になると判明した平成25年2月13日 時点で,控訴人 号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当するから,本件ビルの開業が平成29年4月になると判明した平成25年2月13日 時点で,控訴人は同項の約定解除(解約)権を行使できることになった旨主張する(前記第2の4⑶(控訴人の主張)ア)。 イしかしながら,本件崩落の発生及びこれが原因で本件ビル建設工事の期間が約1年間延伸したことと,本件予約契約14条1項1号の「土壌汚染や埋設文化財等の判明」とは,明らかに異なるものであり,文言上,同号に該当する事由があると認めることは困難である。また,同号に該当するのは,被控訴人及び控訴人の「計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」であるが,本件においては,本件崩落により,被控訴人及びaの建設する本件ビルの構造や仕様等が大きく変更されたわけではなく,本件ビルの開業予定時期が約1年間先になったものであるところ,前記2⑴で説示したとおり,本件ビルの開業時期については,もともと行政手続の状況,工事工程計画の深度化・行政指導又は工事の進捗状況によって変更される可能性があることが想定されていたこと,本件予約契約書の前文及び2条の「平成28年春開業予定」(の本件ビル)という字句についても,賃貸借の対象である建物の品質・性能を特定するというような重要な法的意味を有するものとは認められず,むしろ,名称も決まっていないビルを特定するためのフレーズにすぎないと解するのが自然であることなどに照らすと,本件ビルの開業時期が本件予約契約締結時の予定より約1年遅れることが「計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当すると認めることはできない。 なお付言すると,本件ビルの開業時期が約1年にとどまらず更に遅延し,その程度が社会通念 遅れることが「計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき」に該当すると認めることはできない。 なお付言すると,本件ビルの開業時期が約1年にとどまらず更に遅延し,その程度が社会通念上の受忍限度を超える著しいものとなった場合であっても控訴人が本件予約契約に拘束されるとすれば,控訴人に甚大な損害が生じることがあり得るところであり,本件予 約契約書14条の規定を拡大解釈して,控訴人が本件予約契約から離脱することを認める余地があるが,一方で,控訴人が本件予約契約から離脱することが認められれば,新たなテナントを確保するために被控訴人が重大な不利益を受けることがあり得るから,本件予約契約14条1項1号及び4号を安易に拡大解釈することは相当でない。本件においては,本件ビルの開業予定時期が変更される可能性は想定されたというべきであるから,控訴人において,本件ビルの開業時期遅延によるリスクを回避しようとするのであれば,開業予定時期が一定時期以降になるときに本件予約契約から離脱することを認める条項を設けるよう求めることなどによるべきであり,本件予約契約書の前文及び2条に「平成28年3月開業予定」(の本件ビル)という字句が加わるだけでは不十分であるというべきである。 ウまた,上記イで説示したとおり,本件ビルの開業時期については変更される可能性が想定されていたこと,本件予約契約書の「平成28年春開業予定」という字句が重要な意味を有するものとは認められないことなどに照らすと,本件予約契約書14条1項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当する事由が生じたと認めることもできない。 ⑵ 控訴人は,仮に平成25年2月13日時点では約定解除権の行使が可能でなくとも,その後に長 本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当する事由が生じたと認めることもできない。 ⑵ 控訴人は,仮に平成25年2月13日時点では約定解除権の行使が可能でなくとも,その後に長期間にわたって当事者間で損害賠償についての主張の争いが続き,また,被控訴人が本件予約契約4条3項の義務を怠ったことにより,遅くとも平成27年2月5日には,本件予約契約14条1項4号の事由が生じ,控訴人は,約定解除権を行使できることとなった旨主張する(前記第2の4⑶(控訴人の主張)イ)。 しかしながら,上記⑴で説示したとおり,平成25年2月13日時点で,本件予約契約14条1項1号又は4号所定の事由は認められないところ,前記2⑵で説示したところによれば,被控訴人が控訴人に対する損害賠償を拒否することが不当とはいえず,また,本件予約契約4条3項に基づき被控訴人がすべき行為は具体性・特定性に乏しいことからすれば,控訴人主張の事情をもって,本件予約契約14条1項4号の「その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき」に該当する事由が生じたと認めることはできない。 ⑶ 以上によれば,控訴人の主な争点⑶に関する主張(更なる予備的主張)は,採用することができない。 5 まとめ以上のとおり,控訴人の主位的主張,予備的主張及び更なる予備的主張は,いずれも理由がなく,控訴人は,この他に被控訴人が本件予約金を保持する法律上の原因となる本件予約契約の効力喪失事由のあることを主張していない。 そして,控訴人の被控訴人に対する平成27年2月9日到達の本件解除通知は効力を生じないから,控訴人は,なお本契約を締結すべき義務を負っていたところ,その後,同月17日に被控訴人から本件解除通知には効力がないことなど 控訴人に対する平成27年2月9日到達の本件解除通知は効力を生じないから,控訴人は,なお本契約を締結すべき義務を負っていたところ,その後,同月17日に被控訴人から本件解除通知には効力がないことなどの回答を受けると,同月18日付けで被控訴人が本契約の締結を迫るなどということは著しく信頼にもとるなどと反論し,被控訴人側担当者から控訴人代表者との面会の場を設けるよう複数回求められても,これを拒否するなどして,本契約の締結を拒否する意思を一層明確にしたものである。そうすると,遅くとも被控訴人が本件予約契約を解除する旨の意思表示をした同年3月6日時点では,本件予約契約15条1項4号所定の解除事由が生じていたと認められるから, 被控訴人がした上記解除は有効であり,同条2項に基づき,控訴人の被控訴人に対する本件予約金返還請求権は確定的に消滅し,控訴人が被控訴人に対し不当利得として本件予約金の返還を求めることはできなくなったというべきである。 第4 結論よって,控訴人の本件予約金返還請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴(当審における拡張請求を含む。)は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官戸田久 裁判官朝日貴浩 裁判官髙橋信幸 (別紙)本件予約契約書抜粋(前文)被控訴人(以下「甲」という)と控訴人(以下「乙」という)とは,a 株式会社(以下「a」という)及び甲が建設している平成28年春に開業予定の名古屋駅新ビル(仮称)(以下「新ビル」という)について定期建物賃貸借契約を締結するための予約契約(以下「本予約契約」という。なお,本予 下「a」という)及び甲が建設している平成28年春に開業予定の名古屋駅新ビル(仮称)(以下「新ビル」という)について定期建物賃貸借契約を締結するための予約契約(以下「本予約契約」という。なお,本予約契約は,甲と乙が定期建物賃貸借契約の締結義務を負うことを内容とするものであり,甲乙共に予約完結権を有さない予約とする)を以下のとおり締結する。 (賃貸借の予約)第2条甲及び乙は,a 及び甲が愛知県名古屋市α区β丁目γ番δ他に建設している平成28年春に開業予定の新ビルにつき,甲がa から転貸権付の賃借権を得て,その一部を本予約契約書別紙「賃貸借条件表(以下「条件表」という)に記載される条件にて乙に賃貸し,乙がこれを賃借する契約を締結することを予約する。 (賃貸借契約の締結義務)第3条甲と乙は,甲が第12条第1項第2号に定めるB工事を着工する前日までに,本予約契約書別紙「定期建物賃貸借契約書条項案」(以下「本契約書条項案」という。但し,今後も検討を要する案文には【注】記で付記をする。)記載の内容で借地借家法第38条に基づく定期建物賃貸借契約(以下「本契約」という)を締結する。但し,本契約締結までに状況の変化等で契約内容の変更や加除が合理的に必要と認められる場合には,甲及び乙の合意により,本契約の内容は当該変更・加除後の内容によるものとする。但し,甲及び乙は不合理な理由でその合意を拒否しない。 (賃貸借物件)第4条(第1項及び第2項省略)第3項乙は賃貸借物件及びこれに関連する本ビルの構造などの設計,設備及びこれら施工に関して甲に(及び,甲を通じてa にも)意見を具申し並びに協議を求めることができ,これらの乙の意見が,新ビル全体及び他のテナントの使用部分との関係でも不合理ではない場合は,甲はその採用に れら施工に関して甲に(及び,甲を通じてa にも)意見を具申し並びに協議を求めることができ,これらの乙の意見が,新ビル全体及び他のテナントの使用部分との関係でも不合理ではない場合は,甲はその採用につき可能な限り斟酌をするものとする。 (予約金)第8条第1項乙は,本予約契約及びこれに付随して締結する契約に基づき甲に対して負担する一切の金銭債務の弁済を担保するため,予約金として条件表記載の金額を甲の指定する日までに甲の指定する金融機関口座に振込むものとする。(中略)なお,甲は本契約締結時に予約金を敷金の一部に振り替えるものとする。ただし,甲は予約金に対して利息をつけないものとする。 (第2項ないし第5項省略)(工事施工区分及び負担区分)第12条第1項賃貸借物件にかかわる内装その他の工事は,本予約契約書別紙「工事施工区分表」により施工する。なお,工事区分の考え方は以下の通りとする。 第1号 a 又は甲の費用負担で,a 又は甲が設計施工する工事を,A工事という。 第2号乙の費用負担で,乙の設計に起因して発生する工事のうち,a又は甲が設計施工する工事を,B工事という。 第3号乙の費用負担で設計し,a 又は甲の指定する業者若しくは甲が事前に承諾した内装工事に実績のある業者へ,乙が直接,施工発注する工事を,C工事という。 (第2項ないし第6項省略)(不可抗力)第14条第1項甲及び乙は,以下の各号のいずれかの場合,本予約契約を解除することができる。この場合甲乙ともお互いに相手方に対し損害賠償,違約金等の請求をしない。 第1号天災地変その他の不可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,新ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の 方に対し損害賠償,違約金等の請求をしない。 第1号天災地変その他の不可抗力,暴動・争議,経済事情の変動,土壌汚染や埋設文化財等の判明,新ビルの建設計画に影響する許認可や第三者の開発行為の滞りその他の事由により甲・乙の計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき。 第2号都市計画法(昭和43年法律第100号),建築基準法(昭和25年法律第201号)その他法令に基づく規制・行政指導等により,甲・乙の計画どおりの新ビル建設が困難と合理的に判断されるとき。 第3号大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号)に基づく行政機関からの意見・勧告により,乙の出店が不適切と判断されるとき。 第4号その他前各号に準ずる事由で,本契約の締結が困難と合理的な理由により判断されるとき。 第2項前項の場合,甲は受領済みの予約金を無利息にて乙に対して返還するものとする。 (本予約契約の解除)第15条 第1項甲は,乙において次の各号の一に該当する事実があったときは,何らの催告なしに直ちに本予約契約を解除することができる。この場合,甲は,解除により乙に発生した損害を賠償する責任を一切負わないものとする。 (第1号及び第2号省略)第3号前各号の他,本予約契約の定めに違反したとき第4号乙の責めに帰すべき事由で,本契約の締結を拒否若しくは締結のための協議に応じず又は条件表に定める内容に対して大幅な変更・追加・削除を申し出るなど,本契約の締結が困難となったとき。 但し,このうち,関係官公庁の指導,法律の改正,経済情勢の大幅な変動等により変更の必要が合理的に認められる場合は除く。 (第5号ないし第12号省略)第13号前各号に準ずる事由により本予約契約を継続しがたくなった 指導,法律の改正,経済情勢の大幅な変動等により変更の必要が合理的に認められる場合は除く。 (第5号ないし第12号省略)第13号前各号に準ずる事由により本予約契約を継続しがたくなったとき第2項前項に基づき,本予約契約が解除された場合には,第8条第1項に規定する予約金を違約金として乙は甲に支払うものとする。ただし,甲は既に受領済みの予約金を違約金に充当できるものとする。この場合,乙は甲が充当した額につき,予約金の返還請求権を失う。 (第3項省略)第4項乙は,甲において第1項第3号ないし第11号(これらに定める「乙」と「甲」はそれぞれ「甲」と「乙」と読み替える)またはこれらに準ずる事由により本予約契約を継続しがたくなったときは,何らの催告なしに直ちに本予約契約を解除することができる。この場合,乙は,解除により甲に発生した損害を賠償する責任を一切負わず,甲は第8条第1項の予約金全額を直ちに乙に返還し,かつ,それと同額を違約金として乙に支払うものとする。 第5項前各項の定めは,甲または乙が,相手方の債務不履行を理由として,法定の解除権を行使し,また損害賠償請求をすることを制限するものではない。 (遅延損害金)第20条甲又は乙は,本予約契約による金銭債務の履行を怠ったときは,遅延日数に応じ,年率18.25パーセントの割合で計算した遅延損害金を相手方に支払う。ただし,その支払遅延者が遅延損害金を支払った場合といえども相手方の有する(解除権は法定,合意の別を問わない)解除権の行使には何等影響を及ぼさない。 (以上) さない。 (以上)

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