平成26(ワ)1140 特許権侵害差止等請求

裁判年月日・裁判所
平成27年12月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文57,731 文字)

- 1 -平成27年12月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第1140号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年10月19日判決 原告 X同訴訟代理人弁護士中嶋俊作同補佐人弁理士中村雅典 被告大阪精工株式会社同訴訟代理人弁護士山上和則同雨宮沙耶花同訴訟代理人弁理士石田純同橋本信吾同加野 博主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,輸出し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の製品及びその半製品並びにこれらを製造する別紙被告製造装置目録記載の装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1億6065万円及び別紙遅延損害金起算日一覧表の「損害額」欄記載の各金額に対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から各支- 2 -払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,発明の名称を「後方押出方法および後方押出装置」とする特許権を有する原告が,被告が原告の特許発明を実施して自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプ(「プリテンショナパイプ」ともいう。)の製品又は半製品(以下,併せて「プリテンショナーパイプ」といい,「C9Tパイプ」という が原告の特許発明を実施して自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプ(「プリテンショナパイプ」ともいう。)の製品又は半製品(以下,併せて「プリテンショナーパイプ」といい,「C9Tパイプ」ということもある。また,被告が製造販売するプリテンショナーパイプの製品又は半製品を「被告製品」という。)を製造販売していると主張して,被告に対し,特許権に基づき,被告製品の製造等の差止め及び被告製品の製造装置の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,合計1億6065万円及び各月に生じた損害につき,不法行為の後の日である各損害発生月の翌月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 これに対し,被告は,自己が使用する製造方法・装置を開示した上で,その方法・装置は原告の特許権に係る特許発明の技術的範囲に属しないと主張した。 これに対する原告の主張の骨子は,被告主張の製造方法・装置によりプリテンショナーパイプを製造しているという被告の主張は虚偽であり,被告は,原告の特許発明を実施してプリテンショナーパイプを製造している,というものである。 なお,原告は,被告が被告主張の方法・装置を用いてプリテンショナーパイプを製造していることを前提とする特許権侵害の主張はしない旨を明確にしている(平成26年7月8日付け原告準備書面(5))。 2 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 特許権- 3 -ア原告は,別紙特許目録記載の特許権を有している(甲1,2)(以下,これを「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」,そのうち,請求項1,2に係る発明を「本件特許発明」,本件特許の特許出願を「本件出願」,本件出願の願書に している(甲1,2)(以下,これを「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」,そのうち,請求項1,2に係る発明を「本件特許発明」,本件特許の特許出願を「本件出願」,本件出願の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書」という。)。 また,本件特許発明の構成要件を分説すると,別紙「本件特許発明と被告主張方法・装置の対比」の「本件特許発明」欄記載のとおりである。 イ本件特許発明の作用効果は次のとおりである。 ① 本件特許発明によれば,従来の後方押出装置のように,押出製品の成形空間を確保するために,すなわち,ノックアウトスリーブの収容スペースを確保するために,わざわざカウンターパンチを長くする必要がないので,ダイスの小型化を図ることができる。 ② 本件特許発明によれば,ノックアウトピンの押出製品に接する部分以外については,ダイス穴の内周面およびガイド穴で支持されるノックアウトピンで直線状に保持されているため,大きな加工圧力が加わっても容易に座屈することはないので,寸法比L/Dの大きい押出製品を製造してもカウンターパンチの座屈が生じにくいという優れた効果を奏し得るものである。 (2) 原告が勤務していた株式会社ミナミダ(以下「ミナミダ」という。)は,本件特許発明を用いてプリテンショナーパイプを製造し,三櫻工業株式会社(甲14。以下「三櫻工業」という。)に納品していた。その後,被告は,三櫻工業から依頼を受けて,プリテンショナーパイプ(被告製品)を製造し,ミナミダと並んで三櫻工業に納品してきた。 (3) 本件提訴前の交渉及び証拠保全被告は,本件提訴前の原告からの通知書に対する回答書(甲10)において,被告が使用する装置は,本件特許発明の内容とは異なるもので,本件出- 4 -願前から (3) 本件提訴前の交渉及び証拠保全被告は,本件提訴前の原告からの通知書に対する回答書(甲10)において,被告が使用する装置は,本件特許発明の内容とは異なるもので,本件出- 4 -願前から公然実施されていた技術を用いており,そのことは,本件出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等で証明することができると回答した。 そこで,原告は,本件の提訴前に,被告に対する証拠保全を申し立て,その証拠保全決定を経て,平成25年10月16日,被告の本社及び奈良工場において,証拠保全手続が実施された。このうち,奈良工場での手続において,被告側は,原告側に対し,被告が使用する装置の構成が公然実施されていた技術であることを証明する資料として,甲22及び甲23を任意に交付した(甲19)。 3 被告が本件訴訟で開示した製造方法・装置の構成(1) 本件訴訟において,被告が用いていると主張する製造方法・装置の構成は,別紙「本件特許発明と被告主張方法・装置の対比」の「被告主張方法・装置」欄記載のとおりである(以下「被告主張方法・装置」という。)。 (2) 本件訴訟において,被告は,被告の製造方法・装置は,次のアないしウのとおり,本件特許発明の構成要件①,③とは異なる構成を含むものであるから,被告は本件特許発明を実施していないと主張した。 ア(ア) 本件特許発明の構成要件③は,ノックアウトピンをカウンターパンチの外周面とダイス穴の内周面との間に嵌合するように介在させて,カウンターパンチを支持するものである(別紙「金型図」図A-1参照)。ここにいう「嵌合するように介在」して「支持」するとは,ノックアウトピンとカウンターパンチとが「摺動可能に接触」している状態を指す。 (イ) 他方,被告の製造方法・装置の構成では,ノックアウトピンはカウンターパンチの外 に介在」して「支持」するとは,ノックアウトピンとカウンターパンチとが「摺動可能に接触」している状態を指す。 (イ) 他方,被告の製造方法・装置の構成では,ノックアウトピンはカウンターパンチの外周面との間に0.65mm の隙間をあけて介在させており,両者は摺動可能に接触しておらず,ノックアウトピンはカウンターパンチを支持していない(別紙「金型図」図B-1参照)。 イ(ア) 本件特許発明の構成要件①では,カウンターパンチホルダーにおい- 5 -て,ガイド穴がカウンターパンチの外周面に複数配置されている(別紙「金型図」図A-2参照)。 (イ) 他方,被告の製造方法・装置の構成では,カウンターパンチホルダーにおいて,ガイド穴がカウンターパンチの外周面ではなく,カウンターパンチの外周面から離隔した部分に配置されている(別紙「金型図」図B-2参照)。 (3) 被告は,本件訴訟において,被告主張方法・装置に使用する金型及びそれにより製造された半製品であるとして,別紙「参考品目録」記載の金型及び半製品を任意に提出した。それらの形状は,同目録中の書証番号欄に記載の写真のとおりであり,以下,写真の撮影対象の金型等をいうときは,参考品目録の番号を用いる。 また,被告は,本件訴訟において,別紙「図面対応表」のとおり,被告主張方法・装置に用いる金型の図面を提出した。 4 争点(1) 被告は,本件特許発明を実施して被告製品を製造してきたか(争点1)。 (2) 自由技術の抗弁(争点2)(3) 原告の損害額(争点3)第3 争点に関する当事者の主張の概要 1 争点1(被告は,本件特許発明を実施して被告製品を製造してきたか。)について【原告の主張】被告は,被告主張方法・装置では,ノックアウトピンはカウンターパンチの外周面と 者の主張の概要 1 争点1(被告は,本件特許発明を実施して被告製品を製造してきたか。)について【原告の主張】被告は,被告主張方法・装置では,ノックアウトピンはカウンターパンチの外周面との間に隙間を空けて介在させていると主張し,その開発経過等として後記被告の主張(1)ないし(3)のとおり主張するが,虚偽である。次のとおり,被告が当初から現在まで上記のような隙間を介在させない本件特許発明を実施して被告製品を製造していることは明らかであり,被告主張方法・装置は,提- 6 -訴前に原告からの通知書(甲3)を受領した後に考え出したものである。 (1) 本件特許発明の市場での優位性本件特許発明は,従来技術ではL/D比が大きいプリテンショナーパイプを製造できなかった課題を解決したもので,L/D比が大きく,強度の強いプリテンショナーパイプを製造するためには本件特許発明の製造方法・装置によるほかないため,市場において優位性を有している。 (2) P1発言ア三櫻工業の元開発技術担当取締役であるP1は,平成24年6月13日及び同年10月21日,原告補佐人に対し,概要,次のように供述した。 (ア) ミナミダが本件特許発明を実施して自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプを製造し,三櫻工業に納品していた。 (イ) ミナミダの生産能力に限界があったので,三櫻工業は,ミナミダが製造しているのと同じものを被告に製造,納品させることになった。 (ウ) 三櫻工業は,原告が作成したミナミダの図面を入手して被告に渡し,ミナミダのノウハウを被告に移植した。 (エ) ミナミダの製造方法と被告の製造方法は同じである。 (オ) ミナミダの製造装置と被告の製造装置は同じである。 (カ) 三櫻工 渡し,ミナミダのノウハウを被告に移植した。 (エ) ミナミダの製造方法と被告の製造方法は同じである。 (オ) ミナミダの製造装置と被告の製造装置は同じである。 (カ) 三櫻工業が原告作成の図面を入手して被告に渡したのは,ミナミダが製造,納品する製品と被告が製造,納品する製品とが同じである必要があり,また,被告が一から開発すると,時間がかかって間に合わないからである。 (キ) 三櫻工業は,原告が特許出願することを知っていたので,原告に,自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプについては,三櫻工業に無償で実施権を許諾するという念書を書いてもらった。これがなければ,三櫻工業は本件特許発明を実施することはできなくなる。この念書を探したが見つからない。 - 7 -(ク) P1は,平成24年6月13日から同年10月21日までの間に,三櫻工業と被告の取引の間に入っている神鋼商事から,原告から被告への警告に対し,公知資料らしきものがあったと聞いた。 (ケ) P1は,原告に本件特許発明を実施することにつきロイヤリティを払うのであれば,被告が払う必要はなく,三櫻工業が払うという考えである。 イ P1は,三櫻工業の元開発技術担当取締役であり,自ら担当していたプリテンショナーパイプが被告においてどのように製造されていたかを把握していなかったとはおよそ考えられない。そして,P1は,三櫻工業を退職した後も三櫻工業寄りの立場にあり,本件請求は三櫻工業に不利なものであることから,P1があえて原告に有利な発言をすることは考えられない。よって,P1発言のうち原告に有利な部分は,信用性が極めて高い。 また,P1がミナミダのノウハウを被告に移植した理由として述べる点(前記ア(カ))は,極めて合理的であるから,P1発 とは考えられない。よって,P1発言のうち原告に有利な部分は,信用性が極めて高い。 また,P1がミナミダのノウハウを被告に移植した理由として述べる点(前記ア(カ))は,極めて合理的であるから,P1発言の信用性は高い。 ウ以上から,被告は,三櫻工業から教示を受けて,本件特許発明を実施してきた。 (3) 株式会社ニチダイ(以下「ニチダイ」という。)の複数の社員らの供述ア金型製造業者であるニチダイの社員であったP2は,原告に対し,平成24年2月ないし3月頃,ニチダイの設計者であるP3が,原告が作成した本件特許権に関する金型の図面を見て被告で使う機械に金型を嵌め込むために図面を書き直していたこと,P3が,原告が作成した金型の設計思想の理解に苦しんでいたこと,被告は奈良工場で本件のプリテンショナーパイプを製造していること等を原告に話した(甲114)。 イニチダイに勤務していた,P4,P5,P6,P7は,金型製造の各工程で,ミナミダ作成の図面(甲84,85,88,89,91,92,95,96)に記載された金型と同じ金型を扱ったことがある旨の証言,供- 8 -述をしており,これらを総合すると,ニチダイがこれらに記載された金型と同じ金型を製造していたことは間違いなく,これに反するP8の証言は信用できない。 ウ以上から,被告は,ニチダイに本件特許発明に係る金型を製造させて,本件特許発明を実施してきた。 (4) 本件訴訟前の被告の主張が事実に反し,かつ,本件訴訟における被告の主張と矛盾していること被告は,本件訴訟前,被告が使用する製造方法及び製造装置は本件出願の前から公然実施されていた技術を用いており,そのことは,本件出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等で証明することができるとして,同セミナ 件訴訟前,被告が使用する製造方法及び製造装置は本件出願の前から公然実施されていた技術を用いており,そのことは,本件出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等で証明することができるとして,同セミナー資料に当たるものとして甲22を原告代理人に交付した。 しかし,被告は,本件訴訟において,同セミナー資料は,甲22とは別の,乙56の別紙1ないし3であるとし,また,本件出願前の日付がある製作図面は存在しないと説明している。 製作図面が存在しなければ,被告がセミナー資料に基づいて製造装置を作り,その製造装置で製品を製造していたことの証明はできないから,被告の主張は全く信用できない。 さらに,被告は,本件訴訟前の証拠保全手続で,甲23を原告代理人に渡したが,被告は,本件訴訟で甲23に基づく主張を一切していない。 (5) 被告主張方法・装置の開発経過が不自然であること被告が,後記被告の主張(1)で述べる被告主張方法・装置の開発経過は,以下のとおり不自然である。 ア被告は,平成15年に被告主張方法・装置を開発したと主張しているにもかかわらず,本件の提訴前の原告の問合せに対して,本件出願日である平成14年10月2日より前の日付の製作図面があると回答している(甲10)。 - 9 -被告の主張では,平成13年,14年当時,被告は被告主張方法・装置を開発しておらず,開発したのは平成15年ということであるから,本件出願前の日付がある製作図面は存在し得ないことになる。この主張は甲10の回答と矛盾する。 イ被告は,平成17年6月に,三櫻工業からプリテンショナーパイプの製造を打診された際,本件特許が出願されていることを知らなかったというのであり,しかも,被告によれば,その後,被告主張方法・装置による 被告は,平成17年6月に,三櫻工業からプリテンショナーパイプの製造を打診された際,本件特許が出願されていることを知らなかったというのであり,しかも,被告によれば,その後,被告主張方法・装置による製造では,折損と座屈の不具合が生じたというのであり,そのことは平成17年6月時点で予想できたはずである。したがって,P1から,現にプリテンショナーパイプを製造して三櫻工業に納品しているミナミダの製造方法・装置を教えてもらい,これに従って製造することに何ら支障がなかったはずであり,それを教えてもらわないことなど考えられない。 ウ被告主張方法・装置は,明らかに本件特許発明の「嵌合」の要件を回避するためのものと考えられるところ,原告が本件明細書に「嵌合するように」という文言を加えたのは,平成19年7月26日付けで意見書及び手続補正書を提出したときであるから,被告が本件特許権を回避することができるようになったのは同日以降である。被告の主張は,本件特許が出願されていることを知らず,平成17年,18年頃に嵌合しない方法で採用したところ,原告が平成19年に至って手続を補正したことによって,本件特許権を侵害しなくなったというものであり,極めて不自然である。 エ被告は,本件特許発明のようにノックアウトピンとカウンターパンチを接触させることも可能であり,また,被告主張方法・装置では隔壁部分が薄肉であると考え,少数の加工で破壊することを懸念したが,隙間をあけた方がメリットが大きいと考えて被告主張方法・装置を考えたと主張している(後記被告の主張(2)イ)。被告の同主張は,被告が被告主張方法・装置を考えたときに,本件特許発明のノックアウトピンとカウンターパン- 10 -チを接触させるという内容を知っていて,本件特許発明よりも,隙間をあけた方が 。被告の同主張は,被告が被告主張方法・装置を考えたときに,本件特許発明のノックアウトピンとカウンターパン- 10 -チを接触させるという内容を知っていて,本件特許発明よりも,隙間をあけた方がメリットが大きいと考えたという内容であるから,P1から本件特許発明の製造方法・装置を教えてもらわなかったという被告の主張と矛盾している。 オ乙56の別紙1には「設計法」と記載されており,単なるアイデアであって,実用化されているか不明である。 また,万一,乙56の別紙2,3が実用化され得るものであるとしても,この装置では,ノックアウトピンがカウンターパンチを支持していないため,折損,座屈の問題が生じ,L/D比が3倍程度,最大でも4倍程度の製品しか製造できないはずであり,三櫻工業に納品するL/D比10.8倍のプリテンショナーパイプは製造できない。 (6) 参乙3と参乙7の金型に関する表示の印刷箇所が矛盾していること被告は,使用前の金型として参乙3を提出し,使用済みの金型として参乙7を提出したが,参乙3には,金型に関する表示が裏面に印刷されているのに(甲54の①,②),参乙7には,金型に関する表示が表面に印刷されている(甲54の③,④)。被告が本当に平成18年以降被告主張方法・装置を実用化しているのであれば,金型に関する表示が金型の裏面に印刷されたり,表面に印刷されたりする矛盾が生じることは,通常あり得ない。上記の印刷面の矛盾は,それらが実用化されていないことを裏付けている。 (7) 被告が開示を拒否していること被告は,後記被告の主張(1)で平成15年に製造していたという他社の自動車部品及び市販のものと主張するカウンターパンチの材質について開示を拒否している。このような立証の放棄により,被告は,平 被告は,後記被告の主張(1)で平成15年に製造していたという他社の自動車部品及び市販のものと主張するカウンターパンチの材質について開示を拒否している。このような立証の放棄により,被告は,平成15年に被告主張方法・装置を実用化していたこと,及び,カウンターパンチの材質で座屈が防止でき,被告主張方法・装置が実用化できることが立証されていない。 (8) 和田山精機は金型を製造していないこと- 11 -被告は,後記被告の主張(1)で,和田山精機株式会社(以下「和田山精機」という。)が被告製品用の金型を製造していると主張するが,同社の元生産管理部長等であったP9は,同社では,被告が提出した設計図面(乙42ないし44ほか)の図面を見たことがなく,それらの金型を同社で製造しているのを見たことがない,同社と被告が平成17年,18年頃に合同でC9Tパイプの開発実験,試作をしたことは聞いたことがない等と述べている。 また,被告は,後記被告の主張(1)で,平成17年,18年のテストに関与したのは和田山精機の技術部に在籍していたP10らであると主張するが,P10は,平成10年前後から城陽ティック(その後NBティック有限会社と変更)に入社しており,当時,P10は和田山精機の社員ではなかったことから,被告の主張する平成17年,18年頃の開発のストーリーは事実に反する。 (9) 被告主張方法・装置の不自然・不合理さ被告が,後記被告の主張(2)で述べる被告主張方法・装置を採用した理由は,以下のとおり不自然・不合理で,被告主張方法・装置で,ノックアウトピンとカウンターパンチの間に0.65mmの隙間が空けてあるとは到底信じられない。 ア金型費用について本件特許発明によるカウンターパンチの金型とすることによるコストの増加分は, ノックアウトピンとカウンターパンチの間に0.65mmの隙間が空けてあるとは到底信じられない。 ア金型費用について本件特許発明によるカウンターパンチの金型とすることによるコストの増加分は,1万5000円から2万円程度の極めてわずかな金額であり,この金型費用の負担増を避けるために隙間を空けることは絶対にあり得ない。被告の主張によっても,金型費用の差額が具体的に明らかにされていない。 イ摺動性について被告の主張する違いがあるとは言えない。 ウカウンターパンチの寿命について- 12 -被告の主張する違いがあるとは言えない。 エカウンターパンチの座屈防止カウンターパンチの座屈防止は極めて重要なメリットであり,このメリットよりも,金型費用,摺動性,カウンターパンチの寿命のメリットを優先することはあり得ない。なぜなら,カウンターパンチが座屈すれば,被告も認めるとおり,三櫻工業に納品する製品が不良品になる可能性が生じるのであり,被告の主張する要素は質的に重要性が全く異なるものである。 しかも,被告は,他の方法でカウンターパンチの座屈防止を図ることができると主張するが,具体的に被告がどのような方法によって座屈防止を実現したのか全く明らかにしていない。仮に,カウンターパンチの材質を強固なものにする方法をとったとすれば,材質を強固なものによることによりコストがかかるから,わざわざ隙間を空けることにより,金型費用とカウンターパンチの寿命についてのメリットをとるというのは本末転倒の理屈であり,被告の主張は矛盾し,破綻する。 オカウンターパンチホルダーのガイド穴とカウンターパンチの挿通穴の間にわずか0.5mmの壁(乙44の図面によれば壁の厚さは,わずか0. 5mmしかない。)を残すことやガイド穴の断面をまゆ形 する。 オカウンターパンチホルダーのガイド穴とカウンターパンチの挿通穴の間にわずか0.5mmの壁(乙44の図面によれば壁の厚さは,わずか0. 5mmしかない。)を残すことやガイド穴の断面をまゆ形にすることは加工が難しくなり,コストが高くなる。被告の主張するメリットを実現するためにカウンターパンチホルダーにつき,難しく,コストが高くなる加工方法をとることは考えられず,カウンターパンチの金型費用を削減するために隙間をあけたという被告の主張と矛盾する。 また,被告は,当初,被告主張方法・装置に関する図面を証拠として一切提出していなかった。 (10)乙1と乙9との重大な差異ア被告製品の設計図として提出された乙1の「冷間鍛造部品図」には,被告製品の写真として提出された乙9の【写真1-①-b】のまゆ形- 13 -の突起が記載されていない。乙1の図面には,製品の両端の円周上にダレ(円周上につく不充足部分(欠けている部分))が生じたとしても最大で1mm以下でなければならないと記載されているから,製品の端面に高さ0.4mmのまゆ形の突起が生じているのであれば,乙1の図面に記載してあるはずである。乙1の図面に乙9のまゆ形の突起が生じていることが記載されていないから,被告主張方法・装置で製造した製品は乙1の図面に適合しないことになり,三櫻工業に納入することはできないはずである。 イ乙9の【写真1-①】の半製品は,裁判用に偽装工作されたものである。 被告が,乙9の【写真1-①】で,後記被告の主張(3)記載の各加工工程における半製品の太さを読み取ったところ,以下の寸法であった(甲40)。 加工開始前→10.6mm 工程0→9.7mm工程1→9.3mm工程2→9.0mm工程3 における半製品の太さを読み取ったところ,以下の寸法であった(甲40)。 加工開始前→10.6mm 工程0→9.7mm工程1→9.3mm工程2→9.0mm工程3→9.1mm工程4→9.3mm工程5→9.7mm上記の寸法によれば,加工開始前(10.6mm)が最も太く,加工工程が進むにつれて,工程2(9.0mm)で最も細くなっている。その後,最終の工程5(9.7mm)まで工程が進むにつれて逆に太くなっていっている。しかし,鍛造の仕組からすると,上記のように寸法変化することは起こり得ない。鍛造の仕組では,ワークを型内で軸方向に圧造すれば,当然ながら径方向では太くなる。なお,ワークを型に挿入するとき,挿入- 14 -するワークの外径よりも受け入れる型の内径の方が太くなければ挿入できないため,型の内径は,工程が進むにつれて太くなっていくように設定される。以上のとおり,工程が進むにつれて,ワークの外径は太くなっていくはずであるが,乙9の【写真1-①】では,加工開始前が最も太くなっており,工程2までは工程が進むにつれて細くなっているのであり,このようなことは絶対にあり得ない。よって,乙9の【写真1-①】に写った被告半製品は,裁判用に偽造工作されたものであることが明らかである(甲40)。 (11)被告の主張の変遷ア半製品に跡が生じる工程に関する被告の主張の変遷被告は,平成26年6月2日付けの「検証申出に対する補足意見書」で,半製品に凸型(まゆ形)の跡が形成されるのは,工程2において,ワーク(素材)に初めて下から穴をあけるときに,ワーク素材がカウンターパンチホルダーの穴(ノックアウトピンのガイド穴)に食い込むためであると主張していた。 これに対して,原告が,参乙4に乙 いて,ワーク(素材)に初めて下から穴をあけるときに,ワーク素材がカウンターパンチホルダーの穴(ノックアウトピンのガイド穴)に食い込むためであると主張していた。 これに対して,原告が,参乙4に乙6及び参乙3の溝の跡がないことからして,被告の前記主張は虚偽であると指摘すると,被告は,後記被告の主張(3)のとおり,工程は全部で6工程あるところ,半製品に残る跡は,上からパンチで穴を開ける工程4で生じたものである,と主張を変遷させた。 このように,被告が,跡を生じたとする工程についての主張を変遷させたり,跡が生じた工程につき穴を開ける方向が全く逆であったと主張をしたりしているのは,被告主張方法・装置を実用化していないことの証左である。 イ乙9の【写真1-①-a】の跡に関する被告の主張の変遷原告は,乙6のカウンターパンチホルダーでワークの荷重を受けて- 15 -ガイド穴の跡が付くのであれば,ガイド穴の跡は凸型になるはずであるのに,乙9の【写真1-①-a】の写真の跡は凹型になっていることを指摘した。 被告は,この指摘に反論できなかったため,乙9の【写真1-①-a】の跡が凹型であり,ノックアウトピンのガイド穴の跡でないことを認め,従前の主張とは真逆の内容に主張を変遷させた。このような主張の変遷は,被告主張方法・装置を実用化していれば起こり得ないものである。 (12)被告の主張では,カウンターパンチホルダーが縦方向の圧縮応力で損傷すること(甲35)被告は,後記被告の主張(3)のとおり,ワーク(素材)を押し込む際に,ダイス側ピンホルダー(カウンターパンチホルダー)で荷重を受けるようにしていると主張しており,そのとおりとすれば,カウンターパンチホルダーは,ワークから甚大な圧縮応力を直接受ける )を押し込む際に,ダイス側ピンホルダー(カウンターパンチホルダー)で荷重を受けるようにしていると主張しており,そのとおりとすれば,カウンターパンチホルダーは,ワークから甚大な圧縮応力を直接受けることになるが,カウンターパンチホルダーは圧縮強さがあまり高くない材料(日立金属株式会社(以下,「日立金属」という。)製YXR3-HRC61)によって形成されているため,カウンターパンチホルダーは,縦方向の圧縮応力で損傷すると考えられる。 この点を明らかにするため,ワークがカウンターパンチホルダーのまゆ形のガイド穴(ノックアウトピン用)に食い込むことによってカウンターパンチホルダーが受ける圧縮応力の最大値を求め,求めた圧縮応力とカウンターパンチホルダー(日立金属製YXR3-HRC61)の圧縮強さと比較し,カウンターパンチホルダーが損傷するか否かを検討した結果,ワークがカウンターパンチホルダーのまゆ形のガイド穴に食い込み「まゆ形状」を押出し形成する状態において,圧縮応力が最大となり,その数値は4480MPaに達することが判明した。この圧縮応力の最大値4480MPaは,YXR- 16 -3の圧縮強さ約2000MPa(甲31の6頁)の2倍以上にも達しており,カウンターパンチホルダーが損傷することが判明した(甲35)。 よって,被告の主張は裁判提出用に考え出されたものであり,被告は被告の主張どおりには実施していないことが明らかである。 (13)被告の主張では,カウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されること(甲36)被告の主張を前提とすると,カウンターパンチとカウンターパンチホルダーの挿通穴は相互に密着していることから,被告製品の圧造時にカウンターパンチが軸方向の圧縮荷重を受けて半径方向に広がるように変形すると,カウンタ 提とすると,カウンターパンチとカウンターパンチホルダーの挿通穴は相互に密着していることから,被告製品の圧造時にカウンターパンチが軸方向の圧縮荷重を受けて半径方向に広がるように変形すると,カウンターパンチからカウンターパンチホルダーに対し,挿通穴を押し広げる半径方向の圧縮応力がダイレクトに作用することになる。 被告の主張どおり,カウンターパンチホルダーの挿通穴の周囲には,まゆ形のガイド穴(ノックアウトピン用)が形成されており,挿通穴とガイド穴の間には,厚さ0.5mmの隔壁が形成されていることを前提として,半製品圧造時において,カウンターパンチホルダーの隔壁に生じる円周方向の引張応力を算出し,算出した引張応力と,カウンターパンチホルダー(日立金属製YXR3-HRC61)の許容引張応力 (2600MPa=265.1kg/m㎡甲34)を比較して,隔壁が破壊される否かを判定した結果,隔壁に生じる円周方向の引張応力は,988.716kg/m㎡となり,カウンターパンチホルダーの材料YXR3-HRC61の許容引張強度2600MPa(=265.122kg/m㎡甲34)を超えるため,被告の主張するカウンターパンチホルダーの隔壁は,半製品圧造により破壊されることが判明した(甲36)。 よって,被告の主張は裁判提出用に考え出されたものであり,被告は被告の主張どおりには実施していないことが明らかである。 - 17 -(14)参乙7の隔壁が破壊されていること参乙7のカウンターパンチホルダーの2つの隔壁のうち,片方は,ワークの荷重を受ける部分が破損し,ひびが入っており,他方の隔壁は,少なくとも2箇所にひびが入っていた。 このように,参乙7のカウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されている事実は,参乙7を使用して半製品を作ることが る部分が破損し,ひびが入っており,他方の隔壁は,少なくとも2箇所にひびが入っていた。 このように,参乙7のカウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されている事実は,参乙7を使用して半製品を作ることができないことを示している。 なお,被告は,参乙7の隔壁は,被告製品を約10万個製造した結果破壊されたと主張するが,参乙7の形状,色から見て,被告製品を約10万個製造したとは到底認められない。 (15)被告の回答ア原告は,カウンターパンチホルダーが縦方向の圧縮応力で損傷するか否かを検討すると損傷する結論となること及びカウンターパンチホルダーの隔壁が破壊するか否かを検討すると破壊するとの結論となることを明らかにした上で,被告が主張するように,和田山精機がカウンターパンチホルダーを本当に設計したのであれば,カウンターパンチホルダーが縦方向の圧縮応力で損傷しないか否かを検討しているはずであり,かつ,カウンターパンチによりカウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されないか否かを計算して検討しているはずであるから,そのような設計を行った理由等につき,求釈明申立てを2回し,さらに,参乙7のカウンターパンチホルダーは,隔壁が両方とも破壊されていたことを指摘した上で,再度,求釈明申立てをした。 被告は,原告が定めた期限を過ぎて回答をしたが,その内容は,設計段階で和田山精機は設計上の計算をしていない,というものであった。このように,すぐに回答が可能な内容について回答が遅れたのは,被告が原告の指摘に対してどのように反論すべきかを検討した結果,設計上の計算で隔壁が破壊されないとの結論を導くことができなかったために,設計上の- 18 -計算をしていないと主張することにしたことによると考えられる。 イ被告が,カウンターパンチホルダーの低寿命を懸念 が破壊されないとの結論を導くことができなかったために,設計上の- 18 -計算をしていないと主張することにしたことによると考えられる。 イ被告が,カウンターパンチホルダーの低寿命を懸念し,実際に試験をしたと主張したのに対して,原告が,試験の内容等について明らかにするよう求めたのに対し,被告は,テストに関する客観的な資料が残っていないと回答した。 このような重要なテストに関する資料が残っていないことなどあり得ないことから,被告は試験を行っていないと考えられる。 (16)カウンターパンチとダイス側ピンの組み立て方被告は,カウンターパンチホルダーとダイス側ピンの組み立て方につき,工程1から5まで,いずれの工程でも同じであるが,カウンターパンチホルダーの真ん中の穴にダイス側ピン(カウンターパンチ)を挿入しているのみである,個体差により挿入しにくい場合には,ハンマーで叩くこともあると回答した。 しかし,カウンターパンチをカウンターパンチホルダーに挿入する際にハンマーで叩けば,それだけでカウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されることがあり得る。さらに,ハンマーで叩いてカウンターパンチをカウンターパンチホルダーに入れるということは,カウンターパンチがカウンターパンチホルダーに隙間なく挿入されているということであるから,圧造によりカウンターパンチが膨張することによってカウンターパンチホルダーの隔壁が容易に破壊されることになる。 このように,被告の主張には設計上の矛盾が生じており,被告が提出する図面は裁判用に考えられたものであり,被告は実務上実施していないことが明らかである。 (17)原告による実験原告は,被告製品の冷間圧造工程は合計6工程であるとの被告の主張に基づき,1ないし3の工程による加工硬 あり,被告は実務上実施していないことが明らかである。 (17)原告による実験原告は,被告製品の冷間圧造工程は合計6工程であるとの被告の主張に基づき,1ないし3の工程による加工硬化を考慮したうえで,カウンター- 19 -パンチが受ける軸方向の圧縮荷重を計算した。その結果,カウンターパンチが受ける軸方向の圧縮荷重は403.108kg/m㎡となり,カウンターパンチが受ける総荷重は42.948tになる(甲52)。 原告は,被告が主張する装置と製造方法で金型がどの程度の力で破壊するかを実験したところ,42tの荷重をかけるとカウンターパンチの座屈が生じ,45tでカウンターパンチとカウンターパンチホルダーが完全に破壊されるとの結果を得た(甲53)。この結果は,甲52の計算結果に一致するものである。 したがって,被告が主張する装置と製造方法では実用化できないことは明らかである。 (18)乙50について被告は,被告主張方法・装置により,被告製品が何万本も製造可能であるとして,乙50を提出している。しかし,公証人が被告の主張する装置が稼動しているのを現認したのは,平成26年10月9日午後2時頃から午後2時2分までのわずか2分間しかない。前記(17)の原告による実験の結果によれば,被告が主張する装置と製造方法では,わずかな時間は製造できても,連続して何万本も製造できるだけの強度を欠いているから,実用化できないのであり,乙50によりわずか2分間製造が可能であることが示されたとしても,それにより,被告主張方法・装置で,連続して何万本もの被告製品を製造していることの証明にはならない。 (19)被告の虚偽の主張被告は,三櫻工業に納品している半製品は,第1 伸管をした後の形状であることを隠し,乙1 ,連続して何万本もの被告製品を製造していることの証明にはならない。 (19)被告の虚偽の主張被告は,三櫻工業に納品している半製品は,第1 伸管をした後の形状であることを隠し,乙1の「冷間鍛造部品図」記載の半製品であると虚偽の主張をしている。 被告は,三櫻工業に納品するための半製品を製造するために「BPF-660SSLL」という機種を使用しているところ,これは,本件特許発明と- 20 -半製品の伸管等の技術にかかる別件発明を実施するために特別に作られた機械であり,第1伸管の工程を行わないのであれば,この機種を使用する必要はないことから,被告が第1伸管の工程を行っているのは明らかである。 被告が前記虚偽の主張をしている理由は,被告が第1伸管まで行っていることが判明すると,別件発明について三櫻工業から教えてもらったことになり,そうなると,別件発明とセットで実施されている本件特許発明についても三櫻工業から教えてもらったということになり,被告が本件特許発明を実施していることを裏付けることになるからである。 【被告の主張】(1) 被告主張方法・装置の開発経過等について被告の従業員であるP11は,平成13年6月18日から22日に米国オハイオ州で開催された,株式会社ナショナルマシナリーアジア主催のセミナーを受講し,セミナー資料として乙56(同セミナーで配布された別の資料が甲22)を受領したが,そこには,被告主張方法・装置の構成が示されている。そして,平成15年に,他社の自動車部品について,上記セミナー資料や他社で公然実施されていた製作図面(乙57の各号)を参考にして,被告主張方法・装置を開発し,当初は,折損や座屈の問題が生じたが,平成16年には解決できた。 平成17年6月,三櫻工業(担当者はP や他社で公然実施されていた製作図面(乙57の各号)を参考にして,被告主張方法・装置を開発し,当初は,折損や座屈の問題が生じたが,平成16年には解決できた。 平成17年6月,三櫻工業(担当者はP1)から被告にプリテンショナーパイプの製造の打診があった。このとき,三櫻工業からは,製造方法を教えてもよいという話はあったが,製品の仕様図を確認し,従前製造していた製品よりもL/D比が小さく,被告の技術で製造可能であったため,製造方法を教えてもらうことはなかった。そして,被告が見積書を提出した後の同年8月頃に三櫻工業から正式な製造依頼があり,金型製造業者の和田山精機(担当者はP10)と被告(担当者はP11)で検討し,同年11月に300本,同年12月に500本,平成18年1月に1万6178本を試作し,- 21 -三櫻工業に納品した。この試作では,カウンターパンチの折損の問題が生じたが,材質を変更して対応した。また,数千個から数万個製造すると製品の内径の振れが大きくなることから,カウンターパンチが座屈する問題が生じたと判断したが,この点は量産しながら解決手段を探ることとし,材質・形状・表面処理の変更(乙14,41)により,現在では金型寿命は約10万個となった。なお,被告は,原告からの平成24年4月18日付け通知書(甲3)で,初めて本件特許の存在を知った。 (2) 被告が被告主張方法・装置を採用した理由ア本件出願前から,原告が従来技術と主張するノックアウトスリーブのある構造だけでなく,本件特許発明の構成であるノックアウトピンとカウンターパンチが摺動可能に接触している構造も,また,被告主張方法・装置のように,ノックアウトピンとカウンターパンチの間に隙間がある構造も,いずれも従来技術であった。 イ被告は,本件特許発明の構成要件③のように 摺動可能に接触している構造も,また,被告主張方法・装置のように,ノックアウトピンとカウンターパンチの間に隙間がある構造も,いずれも従来技術であった。 イ被告は,本件特許発明の構成要件③のようにノックアウトピンとカウンターパンチを摺動可能に接触させることも可能であったが,隙間をあけた方が,次のようなメリットがあると考えて,被告主張方法・装置の構成を採用したのである。 (ア) 金型費用についてカウンターパンチは,カウンターパンチホルダーの根元部において他の部分の直径より太くなるが,このとき,ノックアウトピンがカウンターパンチの外周面から離れていれば,ノックアウトピンが干渉することなく,カウンターパンチの根元をそのまま太くすることが可能である。 しかし,ノックアウトピンがカウンターパンチの外周面に接触している場合には,カウンターパンチの根元部がノックアウトピンに干渉することになるため,カウンターパンチの根元部は,ノックアウトピンの部分を削って溝を形成する必要がある。このように,カウンターパンチの根- 22 -元部にノックアウトピンの部分の溝がある形状を作るには,異形金型を用いる必要があり,金型費用が高額になるというデメリットが存在する。 これに対し,被告主張方法・装置のように,ノックアウトスリーブをカウンターパンチから離隔しておくと,カウンターパンチを作る金型は単純な形状ですみ,金型費用が安くなる。 (イ) 摺動性についてノックアウトピンはスライドさせるものであるため,摺動性がよいことが必要であるが,本件特許発明のように,ノックアウトピンとカウンターパンチを摺動可能に接触させると,前述のように,カウンターパンチの根元部には溝を作らなければならない。 しかし,このような溝があることで,溝内でノックアウトピンとカウンターパ ウトピンとカウンターパンチを摺動可能に接触させると,前述のように,カウンターパンチの根元部には溝を作らなければならない。 しかし,このような溝があることで,溝内でノックアウトピンとカウンターパンチの接触面積が増え,ノックアウトピンの摺動性は悪化する。 これに対し,ノックアウトピンとカウンターパンチとの間に隙間があると,ノックアウトピンの摺動性には問題がない。 (ウ) カウンターパンチの寿命について本件特許発明のように,ノックアウトピンとカウンターパンチを摺動可能な程度に接触させ,ノックアウトピンでカウンターパンチを支持するということは,ノックアウトピンでカウンターパンチが擦られるということであり,カウンターパンチの寿命が短くなる。 これに対し,被告主張方法・装置のように,ノックアウトピンとカウンターパンチの間に隙間があれば,カウンターパンチがノックアウトピンに接触することがないため,カウンターパンチの寿命は長くなる。 (エ) カウンターパンチの座屈防止について本件特許発明のように,ノックアウトピンとカウンターパンチを摺動可能な程度に接触させ,ノックアウトピンでカウンターパンチを支持すると,カウンターパンチの座屈防止にはメリットがある。 - 23 -これに対し,被告主張方法・装置のように,ノックアウトピンとカウンターパンチの間に隙間があれば,カウンターパンチの座屈防止というメリットは存在しない。 もっとも,被告主張方法・装置の場合でも,カウンターパンチの座屈を防止するには,カウンターパンチ自体の材質により強度を向上させるという手段もあるし,精度を向上させる(ダイス穴とカウンターパンチの軸心同士の微小なずれが座屈の発生につながるので,微小なずれすらなくす。)という手段もある。 (3) 被告製品の製造工程について という手段もあるし,精度を向上させる(ダイス穴とカウンターパンチの軸心同士の微小なずれが座屈の発生につながるので,微小なずれすらなくす。)という手段もある。 (3) 被告製品の製造工程について被告製品の冷間圧造工程は別紙「金型組立工程図」のとおりの6工程であり,各工程の図面は別紙「図面対応表」のとおりである。このうち被告主張方法・装置に直接該当するのは工程1ないし3であるが,提出した参乙4は,全工程が終了した時点のものである。被告主張方法・装置では,カウンターパンチホルダーにノックアウトピンを挿入するガイド穴の形状が半製品に凸型として形成されるが,工程4では,上から穴をあける荷重を受けるためにカウンターパンチホルダーで意図的に荷重を受ける必要があるのに対し,工程2及び3は,一定以上に穴が深くならない程度(長くなり過ぎない程度)に材料の流れを必要に応じて止める役目として,カウンターパンチホルダーで荷重を受ける。そのため,工程2及び3では,カウンターパンチホルダーに加わる荷重は,それほど大きなものではないと判断できるので,工程4で付いた跡が半製品に現れる。 (4) 原告の主張(2)の「P1発言」についてア甲8によると,P1は,本件特許は三櫻工業が自由に使え,自由に許諾できると認識していたといえ,本件特許の使用不使用について,特に大きな関心があったわけではない。 - 24 -被告はP1に対し,製造工程は社外秘として了解を得ていたため,P1は,被告の製造方法こそ知らなかったが,本件特許以外の製造方法であることは認識していたはずである。 イ P1としては,被告が,ミナミダと同程度の製品さえ製造できればそれでよかったのであるから,ミナミダの製造方法と被告の製造方法が同じであるとする部分(原告の主張(2) していたはずである。 イ P1としては,被告が,ミナミダと同程度の製品さえ製造できればそれでよかったのであるから,ミナミダの製造方法と被告の製造方法が同じであるとする部分(原告の主張(2)ア(エ))には信用性がない。 さらに,原告の主張(2)ア(カ)については,同じ製法でなくても同じ製品を作ることは可能であり,現に,被告とミナミダとでは異なる機械を用いているようであるし,原料となる鋼線の線径も,ミナミダと被告とでは異なっている。 全く同じ製品でなければならないのであれば,製品図面が変わることはないはずであるが,乙1の改訂内容を見ると,製品の公差等の変更があり,三櫻工業も承認している。被告が本件特許発明ではなく,被告の主張する方法を用いているからこそ,それに合わせた改訂がなされたものである。 また,被告は同様の製品を製造する技術を有していたため,一からの開発ではなく,それほど時間はかからない。 (5) 原告の主張(3)の「ニチダイの複数の社員らの供述」についてP4やP5の証言には,曖昧な部分を含んでおり,正確に記憶しているのか疑わしい。仮に,P4とP5の証言内容が真実であったとしても,被告がその金型を使ったことはないから,被告が本件特許発明を実施したことを証明するものではない。 なお,P8は,被告と取引のあるニチダイの取締役であることから,被告に有利な証言をする動機自体はあるとしても,JASDAQ上場企業であるニチダイの取締役が偽証などすると大問題となることから,偽証する可能性は極めて低い。 (6) 原告の主張(4)の「本件訴訟前の被告の主張が事実に反し,かつ,本件訴- 25 -訟における被告の主張と矛盾していること」について乙56については,セミナーの主催者に平成13年度のセミ (6) 原告の主張(4)の「本件訴訟前の被告の主張が事実に反し,かつ,本件訴- 25 -訟における被告の主張と矛盾していること」について乙56については,セミナーの主催者に平成13年度のセミナー資料であることを証明してもらっており,本件出願前のものであることは明らかである。 甲22も同一のセミナーで受領した資料であるが,甲22は基礎入門の資料であり,乙56は上級工具設計法であり,乙56が適していると判断し,これを提出したものである。 (7) 原告の主張(5)の「被告主張方法・装置の開発経過が不自然であること」についてア甲6や甲10における記載は,本件特許の出願前から公然実施されていた技術を被告が用いているという意味であり,被告が本件出願前に被告主張方法・装置を実施していたという意味ではない。 イ争う。 ウそもそも「嵌合」しないものは公知技術であるから,補正される前であっても「嵌合」しない技術を用いるのは,単に公知技術を実施しているだけであり,何ら不自然ではない。 エ争う。 オ争う。 (8) 原告の主張(6)の「参乙3と参乙7の金型に関する表示の印刷箇所が矛盾していること」について金型製造元の和田山精機によれば,印刷位置は特に定めていないため,刻印位置に差が生じ得るとのことである。 (9) 原告の主張(7)の「被告が開示を拒否していること」について営業秘密に深く関わる部分について開示できないのは当然であり,むしろ,被告は,原告の求めに応じて必要以上に資料を開示していると評価されるべきである。 - 26 -(10)原告の主張(8)の「和田山精機は金型を製造していないこと」について被告は,和田山精機に対し,同社名義の金型図面をもとにC9 料を開示していると評価されるべきである。 - 26 -(10)原告の主張(8)の「和田山精機は金型を製造していないこと」について被告は,和田山精機に対し,同社名義の金型図面をもとにC9Tパイプ金型を発注しており(甲70),原告からの警告以降に金型図面を変更したものではない。 P10は,平成9年1月21日以降現在まで,和田山精機で勤務している。 和田山精機では,営業戦略上,京都営業所をNBテックと呼称することがあるが,京都営業所のメンバーは全員和田山精機の従業員である。 (11)原告の主張(9)の「被告主張方法・装置の不自然・不合理さ」について前記(2)のとおり,被告主張方法・装置には合理的理由がある。 (12)原告の主張(10)の「乙1と乙9との重大な差異」についてア被告は,これまでもずっとまゆ形の凸部が形成された製品を三櫻工業に納品しており,三櫻工業の担当者もその旨供述している(乙52)。 イ前記(3)のとおり,被告製品は,冷間圧造工程については合計6工程で圧造している。 原告は,甲40において,乙9の【写真1-①】の半製品の太さを写真上で読み取っているが,レンズにひずみが存在することにより,レンズの端にあるものが太く写ってしまうことから,中央にある工程2が最も細く見え,加工開始前と工程5が太く見えたにすぎない。よって,原告の主張は失当である。 実際の測定値は,工程0から工程3まで少しずつ太くなり,その後は変わっていなかった。 (13)原告の主張(11)の「被告の主張の変遷」について確かに,半製品につく跡についての当初の説明は誤っていたが,その理由は説明済みであるし,被告としては,できる限り開示する図面を少なくしたいという当然の要請から,最小限で足りると厳選したものを提出した 確かに,半製品につく跡についての当初の説明は誤っていたが,その理由は説明済みであるし,被告としては,できる限り開示する図面を少なくしたいという当然の要請から,最小限で足りると厳選したものを提出したことから生じた事態であった。被告は,原告の指摘を受け,本来であれば必要のな- 27 -い他の工程の図面まで提出したのであるから,現時点において,主張の変遷について何ら問題とされる理由はない。 (14)原告の主張(12)の「被告の主張では,カウンターパンチホルダーが縦方向の圧縮応力で損傷すること」及び同(13)の「被告の主張では,カウンターパンチホルダーの隔壁が破壊されること」について被告は,被告製品を製造するにあたり,設計上の計算まではしておらず,実際に試作品をテストし,実用に耐え得ると判断して製造を開始した。そして,実際にカウンターパンチホルダーや隔壁が損傷することなく製造できている。原告の主張は,机上の空論にすぎない。 (15)原告の主張(14)の「参乙7の隔壁が破壊されていること」について参乙7は,約10万個製造したことにより,隔壁が損傷し,取替時期となったことから,使用済み金型として提出したものであるから,破壊箇所があっても当然であり,被告主張方法・装置で半製品を作ることができない理由とはならない。 また,参乙7が約10万個製造後のものとは見えないとの原告の主張は,「形状,色からみて」というのみで,具体的な説明が全くない。 (16)原告の主張(15)の「被告の回答」についてア被告は,原告が勝手に設定した回答期限に応じる義務がないことから,回答期限までに回答しなかったにすぎない。求釈明とは,裁判長に対する申立てであることを理解しない原告の主張は失当である。 イ争う。 (17)原告の主張 期限に応じる義務がないことから,回答期限までに回答しなかったにすぎない。求釈明とは,裁判長に対する申立てであることを理解しない原告の主張は失当である。 イ争う。 (17)原告の主張(16)の「カウンターパンチとダイス側ピンの組み立て方」についてカウンターパンチをハンマーで叩いただけで破壊されるようなことはなく,圧造することで容易に破壊されるようなこともない。 (18)原告の主張(17)の「原告による実験」について- 28 -甲53では,ワーク素材を入れていないように読み取れる。そうすると,直接金型同士を接触させて加圧しているのであり,実際の製造条件とはかけ離れている。 ワーク素材があると,金型同士の直接の接触を避ける「緩衝材」の役目も果たす上に,カウンターパンチ外周にカウンターパンチを支えるように存在するため,カウンターパンチの折損を防止する効果が得られる。 ワーク素材なしで金型同士を加圧させた場合の座屈を主張しても,無意味である。 さらに,「加圧力を徐々に上昇させる」という試験方法では,いわゆる「静的な荷重」を「与え続けた」というものであるが,実際に使用される環境では,「動的な荷重」を「瞬間的に」与えるものであるから,甲53のような試験方法では製造の可否を判断できるものではない。 (19)原告の主張(18)の「乙50について」について原告は,被告が提出した金型では被告製品は作れないと主張するため,実際に作っていることを立証すべく,公証人に被告製品の製造状況を確認してもらった(乙50)。 公証人には,①被告装置を使って被告製品を製造している状況を確認してもらい,また,②出てきた被告製品に,まゆ形の凸部が形成されていることも確認してもらった。その後,③被告装置を た(乙50)。 公証人には,①被告装置を使って被告製品を製造している状況を確認してもらい,また,②出てきた被告製品に,まゆ形の凸部が形成されていることも確認してもらった。その後,③被告装置を分解し,金型を取り出し,金型の形状を確認してもらい,さらに,④カウンターパンチホルダー(ピンホルダー)は,カウンターパンチ挿通穴とノックアウトピンのガイド穴が離隔していることを確認してもらった。 以上より,被告が主張する金型を用いて,本件特許を用いずに,被告製品を製造できることは明らかである。 (20)原告の主張(19)の「被告の虚偽の主張」について被告は,第1伸管までは行っておらず,乙1の形状の半製品を三櫻工業に- 29 -納入し,三櫻工業が第1伸管を行っている。 「BPF-660SSLL」はプリテンショナーパイプの半製品の専用機ではなく,他の製品の製造にも使用している機械であるため,これを使用することが第1伸管の工程を行っていることを示すことにはならない。 2 争点2(自由技術の抗弁)について【被告の主張】カウンターパンチの長さを抑えるために,ノックアウトスリーブを使用せず,ノックアウトピンで直接製品を押し,排出させるという方法は,本件出願前から存在しており,被告主張方法・装置は自由技術を用いたものである。 【原告の主張】争う。 3 争点3(原告の損害額)について【原告の主張】(1) 原告は,被告に対し,特許法102条3項に基づき損害を賠償するよう請求する。 (2) 損害の額ア被告が販売した個数被告が三櫻工業からの依頼で侵害品の製造を始めたのは,遅くとも本件特許権が登録された平成19年9月14日よりも前である。被告は,遅くとも平成19年9 の額ア被告が販売した個数被告が三櫻工業からの依頼で侵害品の製造を始めたのは,遅くとも本件特許権が登録された平成19年9月14日よりも前である。被告は,遅くとも平成19年9月14日以前から現在まで侵害品を製造し続けている。 P1の供述によれば,被告が三櫻工業に納品している個数は月50万本であるとのことである。 イ販売価格被告が三櫻工業に出荷している仕切り価格は,1本当り70円ないし73円である。 - 30 -ウ実施料率被告は,三櫻工業から本件特許発明の実施方法を教えてもらい,本件特許権を原告に無断で使用し,三櫻工業に長期間にわたり安定的に侵害品を販売している。しかも,被告が三櫻工業に納品している製品は,本件特許発明をそのまま実施しているものであり,他の技術はほとんど使用されていない。このような事実を前提とすれば,被告は原告に通常の実施料率よりも高い料率で支払うべきであり,実施料率は販売価格の10%が相当である。原告は,本件訴訟で損害の一部請求として実施料率6%に対する損害を請求する。 エ損害額原告が本件訴訟で請求する平成19年9月の損害は,同月15日から同月30日までであるから,侵害品の数は25万本である。よって,損害額は,105万円(計算式 25万本×70円×0.06)である。原告が本件訴訟で請求する平成19年10月から平成26年1月までの各月の損害額は,210万円(計算式 50万本×70円×0.06)である。よって,原告が本件訴訟で請求する平成19年9月から平成26年1月までの損害額の合計は,1億6065万円(計算式 105万円+210万円×76)である。 【被告の主張】争う。 第4 争点に対する当裁判所の判断 1 本 19年9月から平成26年1月までの損害額の合計は,1億6065万円(計算式 105万円+210万円×76)である。 【被告の主張】争う。 第4 争点に対する当裁判所の判断 1 本件訴訟の経緯当事者の主張内容に鑑み,まず,本件訴訟の経緯について必要な限度で認定することとする。後掲証拠及び当裁判所に顕著な事実によれば,以下の経緯が認められる。 (1) 原告と被告との交渉経過- 31 -ア原告は,平成24年4月18日,被告に対して同日付けの通知書を送付し,本件特許発明の実施を中止すること等を請求した(甲3)。 イ被告は,原告に対し,同年5月9日付けの回答書を送付し,前記通知書の内容につき検討したいので,猶予をもらいたい旨回答した(甲4)。 ウ被告は,原告に対し,同年5月31日付けの書面で,被告が奈良工場で使用している製造方法及び製造装置が本件特許権を侵害しているか否かを検討しているので,さらに回答を待ってもらいたい旨通知した(甲5)。 エ被告は,原告に対し,同年6月14日付けの回答書を送付し,被告が奈良工場で使用している製造方法及び製造装置は,本件特許発明の特許出願前から公然実施されていた技術を用いていることが判明し,この技術自体も本件特許発明とは異なる等と回答した(甲6)。 オ原告は被告に対し,同年11月22日付けの質問書を送付し,次のとおりの質問をした(甲9)。 ① 被告が回答書において主張した「公然実施されていた技術」とは,具体的にどのようなことをいうのか。 ②「公然実施されていた技術」であることを証明する資料は存在するのか。 存在するのであれば,開示してもらいたい。 ③ 被告は,製造方法を三櫻工業から教えてもらったのではないか。 カ被告は,原告からの前記質 技術」であることを証明する資料は存在するのか。 存在するのであれば,開示してもらいたい。 ③ 被告は,製造方法を三櫻工業から教えてもらったのではないか。 カ被告は,原告からの前記質問に対し,同年12月12日付けの回答書で次のとおり回答した(甲10)。 ① 被告が使用する装置は,カウンターパンチホルダーに根元部が固定されたカウンターパンチがダイス穴内に立設され,カウンターパンチの外周面とダイス穴の内周面との間にそれぞれ略円弧状をなす2本のノックアウトピンがカウンターパンチの径方向両側に配置され,該ノックアウトピンがカウンターパンチの軸方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。そして,カウンターパンチの外周面とノックアウトピンとの- 32 -間に隙間が形成されている。このような構成は,本件出願前より公然実施されていた技術である。 ② 被告が使用する装置の構成が公然実施されていた技術であることは,本件出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等で証明することができる。 ③ 被告が三櫻工業から製造方法を教えてもらった事実はない。 キ原告は,前記カの回答を受けて,被告に対し,平成25年1月23日付けの書面で,被告が主張する「本件出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等」を開示してもらいたい旨申し入れた(甲11)。 ク被告は,同年2月13日付けの回答書で,原告の前記申入れを拒否した(甲12)。 (2) 本件提訴前の証拠保全ア原告による証拠保全申立てを受け,大阪地方裁判所裁判官は,同年10月3日,被告事務所において,同月16日午後1時に,平成14年10月2日より前の作成日付がある自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプの製造装置に関するセミナー資料,製作図面,金型図面,金 月3日,被告事務所において,同月16日午後1時に,平成14年10月2日より前の作成日付がある自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプの製造装置に関するセミナー資料,製作図面,金型図面,金型組立図等及びこれらの電磁的記録を検証する旨の証拠保全決定をした(甲16)。 平成25年10月16日,同証拠保全決定に基づき被告事務所において検証を実施しようとしたところ,被告が,図面は全て奈良工場で管理保管していると回答したことから,検証は不能とされ,手続は終了した(甲17)。 イ原告による証拠保全申立てを受け,同年10月3日,奈良地方裁判所城支部裁判官は,同月16日午後1時30分,被告奈良工場において,平成14年10月2日より前の作成日付がある自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプの製造装置に関するセミナー資料,製作図面,金型図面,金型組立図等及びこれらの電磁的記録を検証する旨の証拠保全決定を- 33 -した(甲18)。 平成25年10月16日,被告奈良工場において,証拠保全決定に基づく検証を実施しようとしたところ,被告立会人らが,検証の目的となっている書面等は存在しない旨回答した。 また,被告立会人らは,原告訴訟代理人弁護士中嶋俊作に対し,次のとおり説明し,以下の書類を交付した(甲19,争いのない事実)。 ① シートベルト用プリテンショナーパイプの製造装置に関するものではなく,平成14年10月2日よりも前のものかどうか不明であるが,米国のナショナルマシナリーの資料(甲22)がある。このセミナー資料の一部を任意に交付する。 ② セミナー資料ではないが,公知技術であることを示す資料としてサカムラの特許情報と図面(甲23)がある。この資料を任意に交付する。 ③ 被告のプリテンショナーパイプの製造装置に関する製作図面の最 ② セミナー資料ではないが,公知技術であることを示す資料としてサカムラの特許情報と図面(甲23)がある。この資料を任意に交付する。 ③ 被告のプリテンショナーパイプの製造装置に関する製作図面の最も古いものは平成17年8月25日付けの和田山精機が作成したものである。これは,被告が三櫻工業から発注を受けてシートベルト用プリテンショナーパイプを製造することになったときに,その製造装置を作ったものである。よって,平成14年10月2日よりも前の作成日付のある図面はない。 (3) 本件訴訟の経過ア原告は,平成26年2月7日,本件訴訟を提起した。 (当初の検証申立てに関する経緯)イ被告は,同年3月17日付けの答弁書において,前記第2事案の概要等記載3の主張をするとともに,同月24日の第1回口頭弁論期日において,被告の三櫻工業宛ての冷間鍛造部品図(乙1)を提出した。 ウ原告は,同年5月22日付けで検証申出をし,被告が被告主張方法・装- 34 -置を実施していないことを証するために,別紙「検証物目録」記載の図面の保管状況,同目録記載の部品の保管状況,形状,実際の使用状況,使用後の部品の保管状況,消耗の状況,同目録記載の半製品の保管状況,形状について検証することを求めた。 エこれに対し,被告は,同月26日の第1回弁論準備手続期日において,別紙「検証物目録」記載①ないし④に対応する図面として,乙4ないし乙7の図面を提出した。また,同目録記載⑤ないし⑦の部品のうち,使用前のものとして参乙1ないし参乙3を,同目録記載⑨の半製品として参乙4を提出した。 また,被告は,同日付けの「検証申出に対する意見書(被告)」において,参乙4には,ノックアウトピンによる跡が残っており,これは中心の穴(カウンターパンチによってでき 品として参乙4を提出した。 また,被告は,同日付けの「検証申出に対する意見書(被告)」において,参乙4には,ノックアウトピンによる跡が残っており,これは中心の穴(カウンターパンチによってできた穴)から離隔しているため,ノックアウトピンがカウンターパンチの外周面から離隔していることが明白であることから,被告主張方法・装置が本件特許に係る製造方法・装置と異なることは明白であり,検証の必要はないとした。 その上で,被告は,検証が実施されれば,本件訴訟の対象外の営業秘密に属する事項が原告の目に触れる可能性があること等を指摘して,検証の必要はないとの見解を示したが,裁判所が必要とするのであれば,秘密遵守契約の締結等を条件として,検証を受け入れることは可能であるとした。 オ原告は,同月27日付けの「検証申出に対する意見書(原告)」において,乙4ないし乙7の図面の作成日時は虚偽であり,これらは被告の装置で使用している部品の図面ではないと主張して,これらが提出されたからといって,検証の必要性はなくならないと主張した。 また,原告は,参乙4について,仮に被告の主張どおりに実施しているのだとすれば,半製品の断面には,まゆ形部分に対応した部分にノックアウトピンで押し出された跡(凹み)が付くはずであるのに,参乙4の断面- 35 -は,まゆ形の部分が盛り上がり,それ以外の部分が凹んでいるとして,これは,被告がノックアウトピンでできた跡を意図的に作出しようとして,逆の位置に凹みを付けてしまったものであるなどとして,参乙4は,参乙1ないし参乙3を実際に使用していないことを示す決定的な証拠であるとした。 そして,乙4ないし7及び参乙1ないし4の提出によっても,検証を実施すべき必要性は失われていないと主張した。 1ないし参乙3を実際に使用していないことを示す決定的な証拠であるとした。 そして,乙4ないし7及び参乙1ないし4の提出によっても,検証を実施すべき必要性は失われていないと主張した。 カ被告は,同年6月2日付けの「検証申出に対する補足意見書(被告)」において,参乙4についた跡について,ノックアウトピンの跡ではなく,正確にはダイス側ピンホルダー(カウンターパンチホルダー)にあるノックアウトピンを挿入するガイド穴の跡であると説明を訂正し,ワークを押し込む際に,ノックアウトピンを少し下げ,ダイス側ピンホルダー(カウンターパンチホルダー)で荷重を受けるようにしているため,ノックアウトピンを挿入するガイド穴にワークが食い込み,半製品にはガイド穴の形状が凸型として形成されるのであり,ノックアウトピンで押し出す際には,ノックアウトピンの跡はつかず,凹型の跡は形成されないと説明した。そして,ノックアウトピンもガイド穴も,当然ながら同じ形状であるため,この跡を見ることでカウンターパンチの外周面からノックアウトピンが離隔していることが分かると述べ,検証の必要性はないとした。 キ原告は,同月6日付け「検証申出に対する意見書(原告)(2)」により,参乙4の断面についた跡に関し,実用化されている装置ではカウンターパンチホルダーでワークの荷重を受けることはあり得ないため,被告の説明は虚偽であり,このことから,被告は,被告主張方法・装置を実施しておらず,被告が提出した図面と部品が裁判用に作成したものであることは明らかであると主張して,検証の必要性があるとした。 ク原告は,同日,「検証申出の訂正申立書」を提出し,被告主張方法・装- 36 -置が実用化できないものであり,三櫻工業に納品している製品は本件特許発明により製造して 要性があるとした。 ク原告は,同日,「検証申出の訂正申立書」を提出し,被告主張方法・装- 36 -置が実用化できないものであり,三櫻工業に納品している製品は本件特許発明により製造していることを証するため,①被告が三櫻工業に納品するために保管しているプリテンショナーパイプの半製品の状況(参乙4と同程度の凹凸が生じているか否か),②カウンターパンチホルダーの使用状況と2時間程度使用して半製品を製造した後の状況(割れ,欠けが生じているか否か),③前記②でカウンターパンチを使用して作られたプリテンショナーパイプの半製品の状況(参乙4と同程度の凹凸が生じているか否か)について検証を求めた。 ケ原告は,同月25日付け原告準備書面(2)により,乙6の図面によれば,カウンターパンチホルダーのワークが接触する面には,深さ0.5㎜の溝があり,参乙3として提出されたカウンターパンチホルダーにも,乙6の図面どおりの溝があることから,被告が主張するとおり,ワークを押し込む際に,ノックアウトピンを少し下げ,ダイス側ピンホルダー(カウンターパンチホルダー)で荷重を受けるようにしているため,ノックアウトピンを挿入するガイド穴にワークが食い込み,半製品にはガイド穴の形状が凸型として形成されるのであるなら,カウンターパンチホルダーの溝にもワークが食い込み,半製品には溝の形状が凸型に形成されなければならないにもかかわらず,参乙4には溝の跡が全くないと指摘し,被告の主張は事実に反すると主張した。 コ原告は,同年7月4日付け原告準備書面(4)により,被告に対し,①同年5月22日付けの検証申出に添付された検証物目録記載⑤ないし⑦のうち使用後の部品の提出,②乙4ないし乙7の図面は一部の工程の図面にすぎないため,他の工程の図面の提出を求めた。 被告に対し,①同年5月22日付けの検証申出に添付された検証物目録記載⑤ないし⑦のうち使用後の部品の提出,②乙4ないし乙7の図面は一部の工程の図面にすぎないため,他の工程の図面の提出を求めた。 また,原告は,同月8日付けの原告準備書面(5)において,後記の甲35及び甲36に基づいて,被告主張方法・装置ではカウンターパンチホルダーが損傷,破壊されるため,被告は被告主張方法・装置を実施していな- 37 -いと主張した。 サ被告は,同月11日付け被告第1準備書面において,半製品製造の冷間圧造工程は6工程あり,乙4ないし乙7及び参乙3は工程2に関するものであるところ,参乙4は工程の全てが終了した時点のものであり,半製品に残るような明確な跡は工程4で発生し,工程2,3ではわずかに残る程度であること,工程4では上から穴をあける荷重を受けるためにカウンターパンチホルダーで意図的に荷重を受ける必要があるが,工程2,3は,一定以上に穴が深くならない程度に材料の流れを必要に応じて止める役目としてカウンターパンチホルダーで荷重を受けること,この際,カウンターパンチホルダーに加わる荷重は,各工程の外観からそれほど大きなものではないと判断できるので,カウンターパンチホルダーの溝の跡は付かないのであり,したがって,工程2,3では明確な跡は付かず,工程4で付いた跡が半製品に表れているものであり,工程4のときのカウンターパンチホルダーには,工程1ないし3のカウンターパンチホルダーに存在する溝が存在しないことから,工程4では,ノックアウトピンのガイド穴の跡は付いても,溝の跡は付かない,と主張した。 その上で,被告は,同月14日の第2回弁論準備手続期日において,各工程終了時の半製品の状態を示した写真(乙9,そのうち【写真1-①-a】が工 は付いても,溝の跡は付かない,と主張した。 その上で,被告は,同月14日の第2回弁論準備手続期日において,各工程終了時の半製品の状態を示した写真(乙9,そのうち【写真1-①-a】が工程2終了時のものである。)を提出するとともに,前記⑤ないし⑦のうち使用後の部品として参乙5ないし参乙7を参考品として提出し,また,現在使用している全ての工程の金型の図面として,乙10ないし27を提出した。使用後のカウンターパンチホルダーの金型として提出された参乙7では,カウンターパンチ挿通穴とノックアウトピンのガイド穴との間の隔壁に割れや欠けがあった(甲37)。 なお,被告は,その後の同年10月31日の第4回弁論準備手続期日において,被告が当初使用していた被告装置に対応する金型図面として,乙- 38 -33ないし乙49の図面を提出した。 シ原告は,同年7月14日付けの原告準備書面(6)により,乙6のカウンターパンチホルダーのガイド穴と溝は同じ高さであるから,ガイド穴の跡が付くのであれば,溝の跡も付くはずであるとし,また,カウンターパンチホルダーでワークの荷重を受けてガイド穴の跡が付くのであれば,ガイド穴の跡は凸型になるはずであると指摘した。 ス被告は,同年8月29日付けの被告第2準備書面により,当初,工程1においてノックアウトピンのガイド穴の跡が付いたものと考えていたが,原告の指摘を受けて改めて検討し,ノックアウトピンの跡であると考えるに至ったものであるとし,続けて,乙9の【写真1-①―a】に見られる跡は凸型であると思っていたが,再度検討すると凹型であったとして,そうであれば,この跡は,ガイド穴の跡ではなく,半製品をノックアウトピンで押し出す時に付いた跡であると考えられるとし,したがって,溝の跡はないのである,と説明 が,再度検討すると凹型であったとして,そうであれば,この跡は,ガイド穴の跡ではなく,半製品をノックアウトピンで押し出す時に付いた跡であると考えられるとし,したがって,溝の跡はないのである,と説明した。 (検証に向けた協議の経緯)セ被告は,同年10月9日,後記のとおり公証人による被告製品の製造状況の事実実験を行い,同年10月31日の第4回弁論準備手続期日において,後記の乙50を提出した。 ソ原告は,同年12月16日付けの原告準備書面(13)において,乙50で公証人が装置の稼働を現認したのはわずか2分間しかなく,被告主張方法・装置では連続して何万本も製造できるだけの強度を欠いているから,実用化できないと主張し,同月22日の第5回弁論準備手続期日において,後記の甲52及び甲53を提出した。 タ原告は,前記検証申出及び検証訂正申立てに加えて,平成27年3月2日付けで,被告主張方法・装置でL/D比が10.8倍の自動車のシートベルト用プリテンショナーパイプを実用的に製造できるか否か等を鑑定事- 39 -項とする鑑定申出をした。これを受けて,同年4月21日の第7回弁論準備手続期日において,受命裁判官は,当事者に対し,鑑定人ではなく,当事者双方(ただし原告側は原告訴訟代理人及び原告補佐人のみ)が立会いの上で,被告の奈良工場において製品製造現場を確認する方法を採ることについて検討するよう求めた。 チ被告は,工場における製造現場確認に関し,同年5月22日付けの被告第8準備書面において,原告本人が対象の範囲外を見ることができないような工夫をすることを条件として,原告本人の立入りを認めると主張した。 ツ原告は,同年6月15日付け原告準備書面(22)において,次のとおり要望した。 (ア) 原告本人の立会いも希望するが, 工夫をすることを条件として,原告本人の立入りを認めると主張した。 ツ原告は,同年6月15日付け原告準備書面(22)において,次のとおり要望した。 (ア) 原告本人の立会いも希望するが,それに際して必要な遮蔽措置には応じる。 (イ) 機械の稼働時間としては,1時間では短すぎることから,3時間とすることを要望する。 (ウ) C9Tパイプの材質は「SB25-2」とされていることから,これを実験に使用することとし,材料は裁判所が準備することとする。 (エ) 金型のセットの事前確認は断念するが,線材のセットは事前に確認したい。 (オ) 金型は,新品のものを使用する。 (カ) 組立図の確認は求めない。 (キ) 被告装置で製造される製品の落下状況を確認したい。 (ク) 装置稼働終了後に金型を確認したい。使用した金型を裁判所に提出するものとする。 (ケ) 装置稼働終了後に,線材と製品を3個ずつサンプルとしてもらいたい。 テ被告は,前記ツの原告の要望に対し,同年7月7日付けの被告第9準備書面において,次のとおり主張した。 - 40 -(ア) 機械の稼働時間は,原告自ら期日で述べていた1時間で十分である。 (イ) 被告が,指定された材料以外の材料を使うことはあり得ないことであり,裁判所が材料を調達するというのも,現実的に困難と思われる。 (ウ) 線材の確認については,セットされている線材を確認することで足りる。 (エ) 金型については,新品を使用する必要はない。全てを新品とすると,調整にも時間がかかる。 (オ) 製品の落下状況とは何を指すのかが不明である。 (カ) 装置稼働後の金型確認には応じる。裁判 ついては,新品を使用する必要はない。全てを新品とすると,調整にも時間がかかる。 (オ) 製品の落下状況とは何を指すのかが不明である。 (カ) 装置稼働後の金型確認には応じる。裁判所に提出する必要はないと考えるが,仮に提出するのであれば,金型費用を原告に負担してもらいたい。 (キ) 線材と製品のサンプル提出について,裁判所のみに提出することは可能である。 ト前記ツ,テを踏まえ,同月8日の第9回弁論準備手続期日において,受命裁判官は,当事者双方から意見を聴取した上で,次のとおり告げた。 (ア) 次の条件で原告の平成26年6月6日付け検証訂正申立てを採用し,被告工場において,被告装置の稼働実験を行う予定である。 ① 被告装置の稼働状況をビデオで撮影し,稼働停止後に,取り出した金型について写真撮影をする。写真撮影の箇所は,乙50号証添付の写真撮影箇所を参照し,これに準ずることとする。 撮影は被告が行い,そのデータを現場で裁判所に提出することとする。 ② 被告装置の稼働時間は1時間とする。 ③ 実験に使用する材料は,被告において調達することとし,被告は,材料調達に係るマスキング処理済みの納品書を提示する。 ④ 線材については,実験開始前に,被告装置にセットされた状態のも- 41 -のを確認する。 ⑤ 実験に使用する金型は,新品のものに限定しないが,使用する金型が新品のものであるか否かについては,被告において明らかにする。 ⑥ 製品の落下状況については,製品が最終的に被告装置から装置外に排出される場所においてのみ確認する。 ⑦ 実験に使用した金型の提出は求めない。 ⑧ 被告は,実験において製造した製品を の落下状況については,製品が最終的に被告装置から装置外に排出される場所においてのみ確認する。 ⑦ 実験に使用した金型の提出は求めない。 ⑧ 被告は,実験において製造した製品を3本,裁判所に提出する。 ⑨ 被告は,実験において使用した線材を3本,原告に提供する。 (イ) 前記(ア)記載の条件で検証を実施予定であるが,仮に原告が,その限度でしか実施できないのであれば検証を希望しないという意向であれば,次回口頭弁論期日において,その意思を正式に表示されたい。 ナ原告は,同月14日付けの原告準備書面(24)において,被告が社内で焼きなまし等を行って材料を柔らかくするおそれがあることから,検証時に使用する材料の材質を納品書で確認するだけでは無意味であり,被告が焼きなまし等を自由に行えないようにすることが検証の絶対条件であることから,前記トの条件のままであれば検証を実施する意味がないため,原告としては検証の実施を求めないと主張した。 他方,被告は,同月14日の第2回口頭弁論期日において,被告の装置における製品製造に使用する材料の品質は,製品納入先の三櫻工業から細かく指定されているため,それ以外の材料を使用して製品を製造することはできないとした上で,被告としては,原告が検証を実施する必要がないというのであれば,あえて検証の実施を求めるものではないと述べた。 ニ以上の経緯を踏まえ,当裁判所は,第3回口頭弁論期日において,原告の検証申出及び鑑定申出を,いずれも採用の必要性がないことを理由に却下した。 2 争点1(被告は,本件特許発明を実施して被告製品を製造してきたか)につ- 42 -いて(1) 被告主張方法・装置の実用可能性について本件で,原告は,被告が被告主張方法・装置を用い 2 争点1(被告は,本件特許発明を実施して被告製品を製造してきたか)につ- 42 -いて(1) 被告主張方法・装置の実用可能性について本件で,原告は,被告が被告主張方法・装置を用いず,本件特許発明を用いて被告製品を製造していることの根拠の一つとして,被告主張方法・装置が実用に耐えない旨を主張しているので,まず,この点を検討する。 ア証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告によるプリテンショナーパイプ製造実験a 奈良合同公証役場の公証人は,本件係属中の平成26年10月9日,被告の奈良工場において,同工場に設置された装置によるプリテンショナーパイプの製造現場に立ち会った(以下,「被告事実実験」という。)(乙50)。 b 被告事実実験において公証人が目撃した事実実験の状況は,次のとおりであった。 (a) 被告事実実験は,午後2時頃に開始された。同時点において,装置はすでに運転中であり,公証人は,加工された製品が次々に排出されるところを確認した。 (b) 被告事実実験において製造されたパイプ状の製品の片側には,まゆ形様の凸部が形成されていた(乙50の写真5)。 (c) 同日午後2時2分頃,装置を停止させて分解を開始し,同22分頃に分解が完了した。公証人において,工程1ないし工程5の各工程で使用される金型のうち,カウンターパンチホルダー,カウンターパンチ,ノックアウトピン,ダイプレート(ダイス側ピン台)等を確認した。 各工程のカウンターパンチホルダーの金型においては,中央部に設けられた円形のカウンターパンチ挿通穴の外周面から離隔して,周方向で2か所に,まゆ形のノックアウトピンのガイド穴が形成さ- 43 -れており,カウンターパンチホルダ の金型においては,中央部に設けられた円形のカウンターパンチ挿通穴の外周面から離隔して,周方向で2か所に,まゆ形のノックアウトピンのガイド穴が形成さ- 43 -れており,カウンターパンチホルダーの金型には割れや欠けはなかった(乙50の写真12,17,18,23,32,33,38)。 また,工程1,2,5のカウンターパンチホルダーの中央には溝が形成されていた。 (d) 工程1ないし工程5のいずれのノックアウトピンも,まゆ形の断面であった(乙50の写真10,15,20,25,35)。 (イ) 原告による評価判定1原告補佐人作成の「ワークがカウンターパンチホルダーの穴に食い込むという被告主張について」(甲35)では,次の趣旨が記載されている。 a 被告は,ワークがカウンターパンチホルダーの穴(ノックアウトピンのガイド穴)に食い込むため,半製品の端面に「まゆ形状」が突状に形成されると主張する。しかし,そうとすれば,カウンターパンチホルダーは,ワークから甚大な圧縮応力を直接受けるが,圧縮強さがあまり高くない材料(日立金属製YXR3)で形成されているため,おそらく損傷すると考えられる。そこで,ワーク食込み(まゆ形状押出し)によりカウンターパンチホルダーが受ける圧縮応力の最大値をCAE解析により求めて,上記YXR3の圧縮強さと比較する検討を行った。 b その結果,カウンターパンチホルダーがワークの食い込みによりガイド穴同士の中間位置に受けるZ軸方向圧縮応力の最大値は,4480Mpaであり,これは,被告が使用しているカウンターパンチホルダーの素材であるYXR3の圧縮強さ約2000Mpaの2倍以上にも達していることから,カウンターパンチホルダーは損傷することが分かる。 (ウ) 原告による評価判定2- 44 -原告補 ホルダーの素材であるYXR3の圧縮強さ約2000Mpaの2倍以上にも達していることから,カウンターパンチホルダーは損傷することが分かる。 (ウ) 原告による評価判定2- 44 -原告補佐人作成の「カウンターパンチホルダーの隔壁破壊に関する評価判定」(甲36)では,次の趣旨が記載されている。 a カウンターパンチは,高硬度材料で形成されているが,半製品圧造時は,軸方向において非常に大きな圧縮応力を受けるため,軸方向には縮む一方で,半径方向に広がるように撓み変形する。カウンターパンチとカウンターパンチホルダーの挿通穴は相互に密着していると言えるため,半製品圧造時に,カウンターパンチが軸方向の圧縮荷重を受けて,半径方向に広がるように変形すると,カウンターパンチからカウンターパンチホルダーに対し,挿通穴を押し広げる半径方向の圧縮応力がダイレクトに作用する。そこで,薄肉円筒理論を適用し,半製品圧造時において,カウンターパンチホルダーの隔壁に生じる円周方向の引張応力を算出する。 b 半製品圧造時にカウンターパンチが受ける軸方向の圧縮応力は292.122kg/m㎡であり,これをもとに,隔壁に対して作用する半径方向の圧縮応力を算定すると,82.393kg/m㎡となり,隔壁に生じる円周方向の引張応力は,988.716kg/m㎡となる。 これは,カウンターパンチホルダーの材料YXR3-HRC61の許容引張強度265.122kg/m㎡を超えるため,被告装置のカウンターパンチホルダーの隔壁は,半製品圧造により破壊される。 なお,ここでは,焼鈍素材から一度に圧造することが前提とされている(甲52)。 (エ) カウンターパンチが受ける圧縮応力の再計算原告補佐人作成の「カウンターパンチが受ける軸方向の圧縮荷重(圧縮応力) ここでは,焼鈍素材から一度に圧造することが前提とされている(甲52)。 (エ) カウンターパンチが受ける圧縮応力の再計算原告補佐人作成の「カウンターパンチが受ける軸方向の圧縮荷重(圧縮応力)について」(甲52)では,次の趣旨が記載されている。 甲36の数値は,焼鈍素材から一度に圧造したものと想定した場合の数値である。しかし,被告の主張どおり,3工程で後方押出による圧造- 45 -をする場合には,カウンターパンチが受ける軸方向の圧縮荷重(圧縮応力)は403.108kg/m㎡であり,これをもとに算定すると,カウンターパンチが受ける総荷重は,42.948tである(甲52)。 (オ) 原告によるカウンターパンチ金型の破壊実験(甲53)原告は,平成26年12月11日,大阪府立産業技術総合研究所においてカウンターパンチ金型の破壊実験を行った。実験においては,試験金型を試験機器にセットして,カウンターパンチに対して上方からパンチを介して加圧し,試験金型が破壊されるまで加圧力を徐々に上昇させる操作を行った。 加圧力が42tに達した後,加圧力を上昇させる操作をしたにもかかわらず,表示が41tに低下し,その後,更に加圧力を上昇させる操作を行ったところ,45tでカウンターパンチが完全に破壊された(甲53)。 イ前記のとおり,被告事実実験において使用された工程1ないし工程5の各カウンターパンチホルダーの金型は,ノックアウトピンのガイド穴とカウンターパンチの挿通穴とが乖離し,それらの間にわずかな隙間が生じているものであること,工程1ないし工程5のいずれのノックアウトピンも,断面がまゆ形であること,製造された半製品の端面にはまゆ形の凸部が付いていたことが認められ,これらに甲27,乙52及び弁論の全趣旨を総合すると,被告事実実験は,被告主 のいずれのノックアウトピンも,断面がまゆ形であること,製造された半製品の端面にはまゆ形の凸部が付いていたことが認められ,これらに甲27,乙52及び弁論の全趣旨を総合すると,被告事実実験は,被告主張方法・装置により行われ,2分以上にわたり,被告が三櫻工業に納入しているのと同じ形状のプリテンショナーパイプが現に製造できたと認められる。 この被告事実実験について,原告は,公証人が製造状況を現認したのが約2分間にとどまる点を指摘する(争点1に関する原告の主張(18))。しかし,被告は,前記のとおり,検証に向けた協議において,被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意していたことからすると,被告主張- 46 -方法・装置では,相当時間にわたりプリテンショナーパイプを製造することができる可能性が十分にあるというべきである。 なお,原告は,前記検証に向けた協議の中で,被告が社内で焼きなまし等を操作して材料を柔らかくするおそれがあると主張し,陳述書(甲123)においても,知り合いのメーカーの会長から,被告が,競合メーカーに材料を納入するに当たり,熱処理で硬くした強度の高いものを納入し,金型寿命を意図的に低下させ,競合メーカーへの発注を中止に追い込んだと聞いたと述べる。しかし,この原告の陳述に裏付けがあるとはいえず,原告の疑念に合理的根拠が示されているとはいえない。 また,被告は,前記検証に向けた協議の中で,被告以外の者が材料を準備するのを拒否したが,上記のとおり原告の疑念に合理的根拠が示されているとはいえないこと,被告が日々の製造活動に使用する装置に被告の管理の及ばない材料を使用することを拒否するのも不合理ではないことからすると,上記のような被告の態度をもって,原告の疑念が裏付けられているともいえない。よって,原告の上記主張は,前記認 装置に被告の管理の及ばない材料を使用することを拒否するのも不合理ではないことからすると,上記のような被告の態度をもって,原告の疑念が裏付けられているともいえない。よって,原告の上記主張は,前記認定を左右しない。 ウこれに対し,原告は,金型破壊実験及び評価判定等を根拠に被告主張方法・装置が実用に耐えないと主張する(争点1に関する原告の主張(12)(13)(14)(16)(17))。 (ア) しかし,まず,金型破壊実験(甲53)について見ると,同実験では,ワーク素材が使用されておらず,実際の製造条件とは異なるものであるから,その結果を直ちに実際の製造状況に適用することはできない。 また,その点はおくとしても,前記のように,同実験では,加圧が42tに達した後,加圧上昇操作を続けたにもかかわらず,いったん加圧が41tにまで低下したことからすると,42tの加圧により,カウンターパンチの座屈が始まったものと推認される。そして,原告の再計算(甲52)では,3工程で圧造をした場合にカウンターパンチが受ける- 47 -総荷重は42t強であるとされている。そうすると,カウンターパンチが被告主張方法・装置による総荷重の加圧を1回受けた段階で,カウンターパンチに曲がりが生じ得ることになる。しかし,実際には,被告事実実験において2分以上の製造がカウンターパンチの損傷なく可能であることが確認されており,また,被告は,平成27年5月22日付け被告第8準備書面において,被告の装置の安定稼働時には1分当たり50個のプリテンショナーパイプを製造していると主張しているところ,このとおりだとすると,被告事実実験の際には約100個のプリテンショナーパイプが製造されたことになる。また,前記のとおり被告が被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意していたことから ところ,このとおりだとすると,被告事実実験の際には約100個のプリテンショナーパイプが製造されたことになる。また,前記のとおり被告が被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意していたことからすると,被告主張方法・装置では,相当時間にわたりプリテンショナーパイプを製造することができる可能性が十分にある。そうすると,甲52の再計算及び甲53の実験結果は採用できず,それらを根拠に被告主張方法・装置が実用に耐えないとは認められない。 (イ) 次に,原告による評価判定1(甲35)によれば,カウンターパンチホルダーが受ける縦方向の圧縮応力の最大値は,カウンターパンチホルダーの圧縮強さの2倍以上にも達しているというのであり,また,原告による評価判定2(甲36)によれば,当初,原告が算定した圧縮応力を前提としても,カウンターパンチホルダーの隔壁に生じる引張応力は許容強度の4倍近くになり,さらに,甲52で原告が再計算した圧縮応力を前提とすれば,許容強度の4倍を上回るものとなるというのである。 しかし,これらの算定も,被告主張方法・装置を1回実施した場合の圧縮応力及び引張応力を算定したものであるところ,これだけの応力が加えられるとするならば,被告事実実験において実際に2分以上の製造がカウンターパンチ金型の損傷なく可能であったとは考え難く,また,前記のとおり被告が被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意- 48 -していたことにも沿わない。したがって,原告による評価判定はいずれも採用できず,それらを根拠に被告主張方法・装置が実用に耐えないとは認められない。 (ウ) また,原告は,参乙7の隔壁が破壊されていることを指摘する(争点1に関する原告の主張(14))が,参乙7は,使用済みの金型として提出されているものであるから,その隔 いとは認められない。 (ウ) また,原告は,参乙7の隔壁が破壊されていることを指摘する(争点1に関する原告の主張(14))が,参乙7は,使用済みの金型として提出されているものであるから,その隔壁が破壊されているとしても,それをもって被告主張方法・装置が実用的でないとはいえない。また,原告は,参乙7が,被告が主張するような約10万個の半製品を製造した後のものには見えないとも主張するが,そのことを認めるに足りる証拠はない。 (エ) また,原告は,被告が,カウンターパンチをカウンターパンチホルダーに挿入する際にハンマーで叩くことがあると主張したことから,そのように隙間なく挿入されている場合には,圧造によりカウンターパンチが膨張することによってカウンターパンチホルダーの隔壁が容易に破壊されると主張する(争点1に関する原告の主張(16))が,前記のとおり,被告事実実験において実際に約2分間の製造がカウンターパンチホルダーの損傷なく可能であったことや,前記のとおり被告が被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意していたことから直ちに採用できない。 エ以上からすると,被告主張方法・装置が実用に耐えないとは認めるに足りないというべきであり,本件特許発明による以外にL/D比が大きいプリテンショナーパイプを製造できないという原告の主張(1)も採用できない。 (2) 被告による被告主張方法・装置の開発可能性についてア証拠(甲21,乙56)及び弁論の全趣旨によれば,①被告従業員のP11は,平成13年6月18日ないし22日に,米国オハイオ州において- 49 -開催された株式会社ナショナルマシナリーアジア主催のセミナーを受講し,同セミナーで配布された「多段打冷間成形用上級工具設計法」と題する乙56別紙1ないし3のセミナー資料を受領し いて- 49 -開催された株式会社ナショナルマシナリーアジア主催のセミナーを受講し,同セミナーで配布された「多段打冷間成形用上級工具設計法」と題する乙56別紙1ないし3のセミナー資料を受領したこと,②乙56別紙3では,「3本KOピン付固定ダイで後方押出し」との表題の下に,中央の円形で示されるカウンターパンチの周囲に3本の円形状のノックアウトピンが周方向に間隔を置いて配置され,ノックアウトピンとカウンターパンチの間にわずかな隙間が生じているものにより,後方押出成形する方法が記載されていることが認められる。そうすると,被告は,本件出願前の平成13年6月の時点で,被告主張方法・装置の基礎となる知見を得るに至っていたといえる。 この点について,原告は,被告が本件提訴前の証拠保全手続において公知資料として原告に交付したセミナー資料は乙56ではなく,甲22及び甲23であったことに矛盾・変遷があると主張する(争点1に関する原告の主張(4))。しかし,乙56が前記セミナーの資料であることは主催者の証明書から明らかであり,甲22もその体裁及び内容から同セミナーの資料であると認められるから,被告が同一のセミナーの資料を提出していることに変わりはなく,公知資料に関する被告の主張に実質的な変遷があるとはいえない。 また,原告は,乙56の別紙3の技術では,カウンターパンチの折損や座屈の問題が生じると主張し,L/D比10.8倍のプリテンショナーパイプは製造できないと主張する(争点1に関する原告の主張(5)オ)が,被告は,乙56の装置そのものを使用して被告製品を製造していると主張するものではない上,前記のとおり,被告事実実験において実際に2分以上の製造がカウンターパンチの損傷なく可能であったことや,被告が被告の装置を1時間稼働させて検証する て被告製品を製造していると主張するものではない上,前記のとおり,被告事実実験において実際に2分以上の製造がカウンターパンチの損傷なく可能であったことや,被告が被告の装置を1時間稼働させて検証することに同意していたことから,原告の上記主張は直ちに採用できない。 - 50 -そして,被告が本件出願前から被告主張方法・装置の基礎となる知見を得ていたと認められることからすると,被告は,三櫻工業からプリテンショナーパイプの製造依頼を受けた時点で,既に被告主張方法・装置を開発する技術的基礎を有していたということができる。 イまた,被告は,本件において,その主張する各製造工程の金型図面であるとして別紙「図面対応表」記載の各図面を提出しており,それら図面の金型の変更事項欄には,被告が主張する開発過程に沿った作成日付と修正日付の記載があることからすると,被告は,実際に被告主張方法・装置を用いてきたとすれば備えているはずの金型や図面を備えているということができる。 なお,原告は,被告が当初,被告主張方法・装置に関する図面を証拠提出していなかった点を指摘する(争点1に関する原告の主張(9))が,これら図面は営業秘密に該当し得るものであることからすれば,被告が,立証責任や審理状況に鑑み,必要に応じて提出を検討するといった応訴態度をとることは何ら不合理とはいえないから,上記の点は被告が本件特許発明を実施していることを何ら推認させるものではない。 ウ以上に加え,前記(1)で述べた点を併せ考慮すると,被告は,被告主張方法・装置を開発し,三櫻工業から製造依頼を受けた当初から,現在まで,被告主張方法・装置を用いてプリテンショナーパイプを製造してきた可能性が十分にあるというべきである。 これに対し,原告は,種々の点を主張して,被告は被告主張方法 依頼を受けた当初から,現在まで,被告主張方法・装置を用いてプリテンショナーパイプを製造してきた可能性が十分にあるというべきである。 これに対し,原告は,種々の点を主張して,被告は被告主張方法・装置を用いておらず,本件特許発明を実施していると主張するので,以下検討する。 (3) P1発言について(争点1に関する原告の主張(2))ア証拠(甲7,8,38及び39)及び弁論の全趣旨によれば,P1(平成25年2月28日に死去)は,原告補佐人と面談し,平成24年6月1- 51 -3日及び同年10月21日,①三櫻工業が,原告作成のミナミダの図面を入手して被告に渡し,先に本件特許発明を実施していたミナミダのノウハウを被告に移植したという趣旨の発言,②その理由は,ミナミダの製品と被告の製品とが同じである必要があるが,被告が一から開発すると時間がかかるからであるという趣旨の発言,③ミナミダと被告の製造方法・装置は同じであるという趣旨の発言を含め,概ね,原告が主張するとおりの供述をしたことが認められる。そして,被告も,三櫻工業からミナミダの技術を教えてもよいという打診があったことは認めている。 しかし,P1は,同人がそれら事実を認識した経緯や根拠,その件に対して同人がどのような関わりをしたのか等につき,何ら具体的に供述をしておらず,P1の供述内容に関わる事実につき,P1が正しく認識したものであることの裏付けとなる客観的証拠もない。 また,P1は,本件特許発明について,三櫻工業が無償で実施できる旨,及び,三櫻工業が第三者に自由に実施許諾できる旨の念書を原告からもらっていたとの供述もしている(甲8)が,原告が主張するようにこの供述が誤りであるとするならば,P1の供述に事実と反する内容が含まれている可能性も否定できない。 このように,P1 念書を原告からもらっていたとの供述もしている(甲8)が,原告が主張するようにこの供述が誤りであるとするならば,P1の供述に事実と反する内容が含まれている可能性も否定できない。 このように,P1の供述の信用性には,疑問を差し挟むべき点があるというべきである。 イこれに対し,原告は,P1が三櫻工業の元開発技術担当取締役であったことから,被告におけるプリテンショナーパイプの製造方法を把握していなかったとは考えられないと主張するが,三櫻工業の車両安全事業部の元事業部長及び現安全環境事業部の副部長が,いずれも,平成17年,18年当時,被告は三櫻工業に製造方法や装置を公開しなかった旨陳述していること(乙63,乙64)に照らして直ちに採用できない。 また,原告は,三櫻工業寄りの立場にあるP1がした,原告に有利な発- 52 -言部分の信用性は高いと主張する。しかし,原告補佐人との面談におけるP1の供述(甲7,8,38及び39)は,全体として見ると,本件特許発明を三櫻工業が無償で実施でき,三櫻工業が第三者に自由に実施許諾できる旨の念書を原告からもらっていたことを言う点に主眼があると認められるから,前記①ないし③の趣旨をどれだけ注意して述べたのかには疑問があるというべきである。 さらに,原告は,P1が,ミナミダのノウハウを被告に移植したことの理由として,ミナミダの製品と同等の製品を被告が一から開発していたのでは時間がかかると述べた点が合理的であるからP1発言の信用性は高いと主張するが,前記のとおり,被告は,三櫻工業が被告にプリテンショナーパイプの製造を依頼した時点で,既に被告主張方法・装置を開発する技術的基礎を有していたと認められるから,P1の述べる理由は根拠を欠くというべきである。 ウ原告は,平成17年6月に三櫻工業からプリテンショ 製造を依頼した時点で,既に被告主張方法・装置を開発する技術的基礎を有していたと認められるから,P1の述べる理由は根拠を欠くというべきである。 ウ原告は,平成17年6月に三櫻工業からプリテンショナーパイプの半製品の製造を打診された際に,被告は本件特許の存在を知らず,しかも,被告独自の方法による製造に不具合が生じることが予想できたにもかかわらず,既に三櫻工業に納品していたミナミダの製造方法等について教示を受けなかったのは不自然であると主張する(争点1に関する原告の主張(5)イ)。 しかし,前記のとおり,被告は,三櫻工業が被告にプリテンショナーパイプの製造を依頼した時点で,既に被告主張方法・装置を開発する技術的基礎を有していたと認められるから,被告がP1の申出を断ったとしても不合理とはいえない。 エ原告は,本件特許のようにノックアウトピンとカウンターパンチを接触させる形状とすることも検討したが最終的に被告主張方法・装置を採ることとしたという被告の主張は,P1から本件特許発明の製造方法・装置に- 53 -ついて教示を受けたことを前提としており,これを否認する被告の主張と矛盾していると主張する(争点1に関する原告の主張(5)エ)。 しかし,被告は,平成13年6月の時点で,乙56により,ノックアウトピンとカウンターパンチとの間にわずかな隙間が生じているものにより,後方押出成形する方法の知見を得ていたのであるから,本件特許のようなノックアウトピンとカウンターパンチを接触させる形状とすることを選択肢の一つとして検討することが,P1から本件特許の内容について教示を受けていなければ不可能なことであるとは認めるに足りず,原告の上記主張はその前提を欠くというべきである。 オ以上に加え,これまで前記(1)及び(2)で述べてきたことを併せ考慮 の内容について教示を受けていなければ不可能なことであるとは認めるに足りず,原告の上記主張はその前提を欠くというべきである。 オ以上に加え,これまで前記(1)及び(2)で述べてきたことを併せ考慮すると,P1発言の信用性を直ちに認めることはできないというべきである。 (4) 被告の金型の製造者についてア原告は,被告はニチダイに本件特許発明に係る金型を製造させていると主張し,ニチダイ社員らの証言や陳述を指摘する(争点1に関する原告の主張(3))。 (ア) ニチダイの元社員で,平成23年11月の定年まで勤務し,その間,熱処理,PVD処理等を担当していたP5は,主尋問において,①ミナミダのカウンターパンチホルダーの金型図面(甲91)と同じ設計図を見て,金型の熱処理をしたことを記憶している,②その金型は,中心部が異形であることから記憶に残っている,③ミナミダのダイプレートの金型図面(甲92)と同じ設計図を見て,金型の熱処理をしたこともある,④その金型は,熱処理前の品物に3か所の穴が開いており,寸法が大きいことも合わせて特徴的であったので記憶している,④ミナミダのカウンターパンチの金型図面(甲88)及びノックアウトピンの金型図面(甲85)に記載されたのと同じ形状の金型に,PVD処理又は熱処- 54 -象に残っていると証言した。 しかし,P5は,反対尋問においては,熱処理を直接担当していたのは平成14年までであり,その後も手伝うことはあったものの,前記ダイプレートの金型図面(甲92)に記載された金型について,自分は直接熱処理していないと思うと証言し,また,回答書(甲90)においてダイプレートは甲92の図面に記載された金型と似たものを熱処理していたと回答したのは勘違いかもしれないと証言しており,証言に変遷が見られる。 また いと思うと証言し,また,回答書(甲90)においてダイプレートは甲92の図面に記載された金型と似たものを熱処理していたと回答したのは勘違いかもしれないと証言しており,証言に変遷が見られる。 また,P5によれば,熱処理とは,粗引き加工ができた物をバスケットにセットしてスタートボタンを押す作業であるにすぎず,所定の材質について指定の硬度に仕上げるために金型図面を見ていたものの,そのような熱処理を毎日大小合わせて1000個以上はしていたというのであるから,このような作業内容や作業量に照らすと,退職後3年以上経過した時点で,在職中に処理した金型の形状を具体的に記憶しているものかについても疑問がある。 さらに,ニチダイの取締役営業本部長であるP8は,①同社では1か月間に7000件から8000件の金型を製造しており,多いときは1万件を超える,②平成10年頃以降の納品元帳をコンピューター上で調査したところ,同社が被告から受注して製造したC9Tパイプ用の金型は,3番ダイスピンのみであり,設計担当者に確認したが,ミナミダの金型図面に係る金型は製造していないと証言しており,この証言を排斥するに足りる客観的証拠はない。 以上の点からすると,証人P5の前記証言は,採用することができないというべきである。 (イ) ニチダイの元社員で,平成21年6月の定年まで勤務し,ニチダイで製造する全ての製品の品質管理を担当していたP4は,①ニチダイ勤務- 55 -中に,ミナミダのカウンターパンチホルダーの金型図面(甲84)に記載されたものと同じ金型を三次元測定したことを記憶している,②その金型は,ガイド穴が3分割されているところが特徴的であり,その部分について測定するのに苦労したことから,その部分のみ記憶している,③また,ノックアウトピンの金型図面(甲 たことを記憶している,②その金型は,ガイド穴が3分割されているところが特徴的であり,その部分について測定するのに苦労したことから,その部分のみ記憶している,③また,ノックアウトピンの金型図面(甲85)に記載された金型を測定したことを記憶しており,これについても,3分割された形状になっているところが特徴的であり,測定の際に苦労したことから記憶していると証言した。また,P4は,④複雑な部分がある物を対象とする測定方法が三次元測定であり,P4はその三次元測定を専門としていたこと,検査担当として稼働していたことが2回あり,1回目は10年間ほど,2回目は平成12年から平成21年までの9年間ほどであり,1日に15ないし40種類の金型を測定していたことも合わせて証言した。 この証人P4の証言は,証人P5の証言のような変遷があるわけではなく,客観的証拠に反する点があるわけでもない。しかし,その証言する金型検査の量は1日に15点ないし40点と多く,しかも,いずれも三次元測定を要する複雑な部分のある金型を検査していたというのであるから,日々それだけの量の複雑な金型を取り扱う中で,退職後5年以上を経過した時点で,在職中に検査した金型の形状を記憶しているものかについては,やはり疑問がある。そして,前記のとおり,これを否定する証人P8の証言について,それを排斥するに足りる客観的証拠がないことや,前記(1)及び(2)で述べた点も考慮すると,証人P4の上記証言の信用性を直ちに認めることはできないというべきである。 (ウ) 本件においては,他に,ニチダイ製造部でラップ仕上げ責任者であったP6が,ニチダイにおいて,原告作成のカウンターパンチの金型図面(甲88)及びカウンターパンチホルダー金型図面(甲89)に記載されたのと同じ金型を,平成15年から平成17年頃 プ仕上げ責任者であったP6が,ニチダイにおいて,原告作成のカウンターパンチの金型図面(甲88)及びカウンターパンチホルダー金型図面(甲89)に記載されたのと同じ金型を,平成15年から平成17年頃に製作していた旨回- 56 -答している(甲87)。 同様に,ニチダイ製造部研削部門で稼働していたP7が,ニチダイにおいて原告作成のカウンターパンチホルダーの金型図面(甲95)及びダイプレートの金型図面(甲96)と同じ金型を,平成15年頃に製作していた旨回答している(甲94)。 しかし,P6が金型製作をしていたのは10年ないし12年前からであり,ニチダイを退職したのが7年前であること(甲87)から,同人は長期間にわたって金型製作に携わっていたことが認められる。また,P7についても,金型製作をしていたのは平成15年から平成22年頃までであり(甲94),長期間にわたっていることが認められる。そうすると,証人P8が述べるニチダイにおける金型の製造個数も考慮すると,P6やP7においても,これら回答内容をたやすく信用することはできない。 (エ) また,原告は,同じくニチダイの社員であったP2から,ニチダイの設計者が,本件特許に関する図面を,被告で使う機械に嵌め込むために図面を書き直していたこと,原告がミナミダに在職中に開発した第1伸管サンプルと同じものをP2が被告の奈良工場で見たことを聞いたと陳述書において記載している(甲114)。 しかし,これは原告による伝聞にすぎず,供述者とされるP2の認識の正しさを裏付けるものは認められないことや,証人P8の証言に照らし,採用することはできない。 イ他方,被告は,被告主張方法・装置は被告と和田山精機(担当者はP10)とで開発し,金型製造も和田山精機において行っていると主張するが,これに対 人P8の証言に照らし,採用することはできない。 イ他方,被告は,被告主張方法・装置は被告と和田山精機(担当者はP10)とで開発し,金型製造も和田山精機において行っていると主張するが,これに対し,原告は,和田山精機は被告の金型を製造していないと主張する(争点1に関する原告の主張(8))。 (ア) この点につき,原告は,P10は,被告が被告装置の開発時期とする- 57 -平成17年,18年頃には和田山精機の従業員ではなかったと主張して,和田山精機が金型を製造したとする被告の主張は虚偽であると主張する。 しかし,証拠(乙58の1,2)によれば,P10は,平成2年10月1日から平成5年9月1日までは有限会社城陽テックの従業員として,同日から平成9年1月21日までは株式会社宮岡の従業員として,同日以降は和田山精機の従業員として,厚生年金基金に加入し,その後,少なくとも平成27年2月までは,資格変動の記録はないことから,少なくとも同日まで和田山精機の従業員の地位にあったものと認められる。 この点について,原告は,P10について,平成10年前後から城陽ティックという会社に入社しており,その後,城陽ティックはNBティック有限会社と名称変更したことから,平成25年以降はNBティックの代表と名乗っていたなどと主張するが,上記の年金記録に沿わず,これを認めるに足りる的確な証拠はない。原告はさらに,P10の名刺(乙29)に和田山精機の京都営業所と記載されている建物には,NBティックの表札が掲げられており(甲66),同建物の所有者から建物を賃借しているのはP10個人である(甲122),P10の名刺上,肩書きが,「技術部設計課」の「部長」というあり得ないものになっており,被告の主張とも異なるなどと主張するが,上記の年金記録に照らすと, 借しているのはP10個人である(甲122),P10の名刺上,肩書きが,「技術部設計課」の「部長」というあり得ないものになっており,被告の主張とも異なるなどと主張するが,上記の年金記録に照らすと,これら事実は前記認定を左右するものではない。 (イ) また,原告は,平成14年から平成25年にかけて和田山精機に勤務し,生産管理部長や営業部長に就いていたP9(甲82)が,被告が被告装置の金型図面であると主張する和田山精機名義の図面(乙42ないし44)を見たことがなく,これをもとに和田山精機が金型を製造しているのも見たことがないなどと回答している回答書(甲70)を提出する。 しかし,被告主張方法・装置に係る金型図面である乙59の1(乙1- 58 -1と同じ図面である。),乙60の1(乙7と同じ図面である。)及び乙62の1(乙15と同じ図面である。)にP9の承認印が押なつされていることからすると,上記甲70をもって,P9が被告主張方法・装置に係る金型や金型図面を見たことがないとは認めるに足りない。 (ウ) そして,乙70の各号は,被告が和田山精機に対して,平成19年5月から平成23年1月にかけて,C9Tパイプに係る金型を発注し,完成品を受け入れた旨が記載されている金型発注書兼受入管理表であるところ,そこでは,別紙「図面対応表」記載の図面に係る金型の製造を発注した旨が記載されている。これについて,原告は,乙70の各号の図面の作成日付は虚偽であると主張するが,これを認めるには足りる証拠はない。 (エ) 以上からすると,和田山精機が被告主張方法・装置に係る金型を製造していないという原告の主張を採用することはできない。 ウ以上からすると,被告が和田山精機に金型を製造させておらず,ニチダイに本件特許発明に係る金型を製造させているとの原告の主 置に係る金型を製造していないという原告の主張を採用することはできない。 ウ以上からすると,被告が和田山精機に金型を製造させておらず,ニチダイに本件特許発明に係る金型を製造させているとの原告の主張は,採用することができない。 (5) 被告主張方法・装置の開発経過が不自然であるとの原告の主張についてア原告は,被告が,平成15年に被告主張方法・装置を開発したと主張しているにもかかわらず,回答書(甲10)では,本件出願日前の日付の製作図面があると回答しており,被告が主張する開発経過は不自然であると主張する(争点1に関する原告の主張(5)ア)。 しかし,被告は,上記回答書において,「本件装置の構成が公然実施されていた技術であることは,本件特許出願前の日付があるセミナー資料,製作図面等で証明することができます。」と回答している(甲10)。この文言からすれば,ここで挙げられている製作図面は,被告の製作図面ではなく,それがすでに公然実施された技術によることを示すための,別製- 59 -品の製作図面を指すものと解すべきであり,実際にも被告は乙57の各号を提出している。 したがって,この回答は,被告主張方法・装置を開発したのは平成15年であるとする被告の主張と何ら矛盾するものではない。 イ原告は,被告が平成15年に製造していたという他社の自動車部品についてのカウンターパンチの材質等について開示を拒否していることから,その当時に被告主張方法・装置を実用化していたという被告主張の開発経過が立証されていないと主張する(争点1に関する原告の主張(7))。 しかし,カウンターパンチの材質が被告のノウハウであるとすれば,被告が本件においてそれを開示しないことにも合理的理由がある。そして,前記(1)及び(2)で述べたところからすれば, の主張(7))。 しかし,カウンターパンチの材質が被告のノウハウであるとすれば,被告が本件においてそれを開示しないことにも合理的理由がある。そして,前記(1)及び(2)で述べたところからすれば,被告が平成15年当時において被告主張方法・装置を用いた製品の製造をしていたか否かにかかわらず,被告は,三櫻工業から製造依頼を受けた当初から,現在まで,被告主張方法・装置を用いてプリテンショナーパイプを製造している可能性が十分にあるというべきである。 ウ原告は,被告主張方法・装置は,本件特許「嵌合するように」との構成要件を回避するためのものと考えられるところ,原告が同構成要件を加えたのは平成19年7月26日付けの意見書及び手続補正書によってであるから,それ以前に被告が被告主張方法・装置を開発したというのは不自然であると主張する(争点1に関する原告の主張(5)ウ)。 しかし,前記のとおり,被告は,三櫻工業が被告にプリテンショナーパイプの製造を依頼した時点で,既に被告主張方法・装置を開発する技術的基礎を有していたと認められることからすると,被告主張方法・装置が,本件特許を回避するためのものであるとは認めるに足りず,原告の上記主張は,その前提において採用できない。 (6) 原告のその他の主張について- 60 -ア原告は,参乙3と参乙7の金型に関する表示の印刷箇所が相違していることが不合理であると主張する(争点1に関する原告の主張(6))。 証拠(甲54の①ないし④)によれば,参乙3には,金型に関する表示が裏面に印刷されているのに対し,参乙7には,金型に関する表示が表面に表示されていることが認められる。 しかし,そのことをもって,参乙3及び参乙7の金型が裁判用に偽造されたもので,実用に供されていないものであると認め ,参乙7には,金型に関する表示が表面に表示されていることが認められる。 しかし,そのことをもって,参乙3及び参乙7の金型が裁判用に偽造されたもので,実用に供されていないものであると認めるに足りない。 イ原告は,被告主張方法・装置について,本件特許発明を実施しても,金型費用はほとんど変わらないこと,摺動性やカウンターパンチの寿命について,被告が主張するような差異が生じるとはいえないこと,カウンターパンチの座屈防止のメリットよりも金型とカウンターパンチの寿命を優先することなど考えられないこと,被告主張のように,カウンターパンチホルダーのガイド穴とカウンターパンチの挿通穴の間にわずか0.5ミリ程度の壁を残すことや,ガイド穴の断面をまゆ形にする加工は困難であり,コストが高くなることなどを挙げ,被告は,被告主張方法・装置を実施していないと主張する(争点1に関する原告の主張(9))。 しかし,前記(2)のとおり,被告事実実験では2分以上にわたり被告主張方法・装置によりプリテンショナーパイプを現に製造できており,被告は,検証に向けた協議において装置を1時間稼働させることに同意していたことからすると,被告主張方法・装置により,相当時間にわたりプリテンショナーパイプを製造することができる可能性が十分にあるというべきである。そうすると,仮に原告の主張どおり,本件特許発明を実施した方がコストを低く抑えられるなどのメリットがあったとしても,被告が本件特許発明を実施していることが推認されるとはいえない。 ウ原告は,被告主張方法・装置によるまゆ形の凸部(乙9)が三櫻工業宛ての「冷間鍛造部品図」(乙1)に記載されていないことから,被告は,- 61 -被告主張方法・装置による製品を三櫻工業に納品できないと主張する(争点1に関する原 まゆ形の凸部(乙9)が三櫻工業宛ての「冷間鍛造部品図」(乙1)に記載されていないことから,被告は,- 61 -被告主張方法・装置による製品を三櫻工業に納品できないと主張する(争点1に関する原告の主張(10)ア)。 しかし,乙9にみられるまゆ形の凸部の存在が,実際の製品としてどの程度の不都合があるのか明らかでない上,三櫻工業の安全環境事業部副部長の陳述書(乙52)では,被告から三櫻工業に納品されているパイプの端面には,全てまゆ形の跡がついていること,まゆ形の跡がついていても,商品としては何ら支障がなく,三櫻工業としても,これまで気にしたことはなかったと述べており,これを否定するに足りる証拠はないことからすると,原告の上記主張を採用することはできない。 エまた,原告は,本来,工程が進むにつれて太くなっていくべきワークの外径が,乙9の【写真1-①】では,工程2までは工程が進むにつれて細くなっていると指摘し,よって,乙9の【写真1-①】で示された半製品は,裁判用に偽造されたものであると主張する(争点1に関する原告の主張(10)イ)。 しかし,原告の主張は,各工程の半製品の写真をもとに外径を測定した(甲40)結果に基づいており,測定値はレンズの歪み等の影響を受けた可能性があると認められるところ(乙30,乙31),証拠(乙32)によれば,実際の半製品を測定した場合,工程0から工程3までは,工程が進むにつれて外径が太くなっており,その後は変わっていないことが認められる。 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。 オ原告は,被告が被告主張方法・装置を実際に用いているならば,半製品に凸状のまゆ形跡が形成される工程及びその原因についての被告の主張が変遷するのは不合理であると主張する(争点 ることはできない。 オ原告は,被告が被告主張方法・装置を実際に用いているならば,半製品に凸状のまゆ形跡が形成される工程及びその原因についての被告の主張が変遷するのは不合理であると主張する(争点1に関する原告の主張(11))。 確かに,前記1(3)のとおり,半製品に凸状のまゆ形跡が形成される工程及びその原因についての被告の主張は変遷している。しかし,前記のと- 62 -おり,半製品に残るまゆ形の跡については,乙1にも記載されず,納品先である三櫻工業も気にとめないようなものであるとすれば,被告として,これが生じる工程や原因について関心を持っていなかったとしても不自然ではない。 また,半製品に残る凹型の跡についても,これが生じた原因及び工程について検討,分析するのが当然であるというほどに重要なものであることを認めるには足りない。 そして,実際に,被告主張方法・装置により製造された半製品にも,参乙4と同様のまゆ形の跡が付いており(乙50),それが生じる原因及び工程についての被告の最終的な主張の内容も不合理とはいえないことに照らせば,前記被告の主張の変遷を有意のものということはできない。 カ原告は,カウンターパンチホルダーの隔壁が破壊される可能性があるにもかかわらず,和田山精機がそのような設計とした理由について3回の求釈明の申立てをし,これに対する被告の任意の回答が,原告の設定した期限を過ぎてなされたこと,及び,カウンターパンチホルダーの寿命について実施したテストに関する資料が残っていないことを理由に,被告主張方法・装置により製品を製造している事実はない旨の主張をする(争点1に関する原告の主張(15))。 しかし,原告が指摘する求釈明は,平成26年7月8日付け原告準備書面(5),同月14日付け 告主張方法・装置により製品を製造している事実はない旨の主張をする(争点1に関する原告の主張(15))。 しかし,原告が指摘する求釈明は,平成26年7月8日付け原告準備書面(5),同月14日付け原告準備書面(6)及び同月29日付け原告準備書面(8)においてされたものであるのに対し,被告が回答したのは同年8月29日付け被告第2準備書面によってであるから,被告の回答が不当に遅れたとはいえない。また,実際に製品を製造できてきたのであれば,平成17年当時のテストに関する資料が残っていないとしてもあながち不合理なことではないし,別紙「図面対応表」記載の各図面には,当時のテストによって図面を修正した記載もあることからすると,この点についての原告- 63 -の主張を採用することはできない。 キ原告は,被告が三櫻工業に納品している半製品は,第1伸管をした後の形状であると主張し,第1伸管の技術に必要な別件発明について三櫻工業から教示を受けるとともに,本件特許発明についても教示を受けたものと主張する(争点1に関する原告の主張(19))。 しかし,被告は,被告においては,第1伸管までは実施していないと主張しているところ,被告が使用する「BPF-660SSLL」という機種が,第1伸管を実施する以外に使用可能性がないことを示す証拠はなく,他に,被告が第1伸管まで行っている事実を認めるに足りる的確な証拠もないことから,当該事実を認めることはできない。原告は,P2が被告奈良工場で第1伸管後の製品を見たと言っていた旨の陳述書(甲114)を提出するが,特段の裏付けがなく,採用できない。 また,そもそも,仮に被告が第1伸管の工程まで行っているとしても,その事実から,被告が三櫻工業から本件特許発明について教示を受けた事実を推認すること ,特段の裏付けがなく,採用できない。 また,そもそも,仮に被告が第1伸管の工程まで行っているとしても,その事実から,被告が三櫻工業から本件特許発明について教示を受けた事実を推認することはできないことから,いずれにしても,原告の主張を採用することはできない。 3 以上のとおりであって,被告が当初から被告主張方法・装置を用いてきた可能性が十分にある反面,被告が被告主張方法・装置を用いておらず,本件特許発明を実施しているとして原告が主張する根拠はいずれも採用できないから,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求には理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之- 64 - 裁判官 田原美奈子 裁判官 大川潤子- 65 -(別紙)被告物件目録 被告が三櫻工業株式会社(本店茨城県古河市 <以下略> )からの発注で製造している自動車のシートベルト用プリテンショナパイプ(品名C9Tパイプ)以上- 66 -(別紙)被告製造装置目録 被告が三櫻工業株式会社(本店茨城県古河市 <以下略> )から 用プリテンショナパイプ(品名C9Tパイプ)以上- 66 -(別紙)被告製造装置目録 被告が三櫻工業株式会社(本店茨城県古河市 <以下略> )からの発注で製造している自動車のシートベルト用プリテンショナパイプ(品名C9Tパイプ)の製造装置(金型を含む。)以上 - 67 -(別紙)遅延損害金起算日一覧表 損害額利率遅延損害金起算日平成19年9月105万円5%平成19年10月1日平成19年10月210万円5%平成19年11月1日平成19年11月210万円5%平成19年12月1日平成19年12月210万円5%平成20年1月1日平成20年1月210万円5%平成20年2月1日平成20年2月210万円5%平成20年3月1日平成20年3月210万円5%平成20年4月1日平成20年4月210万円5%平成20年5月1日平成20年5月210万円5%平成20年6月1日平成20年6月210万円5%平成20年7月1日平成20年7月210万円5%平成20年8月1日平成20年8月210万円5%平成20年9月1日平成20年9月210万円5%平成20年10月1日平成20年10月210万円5%平成20年11月1日平成20年11月210万円5%平成20年12月1日平成20年12月210万円5%平成21年1月1日平成21年1月210万円5%平成21年2月1日平成21年2月210万 210万円5%平成20年12月1日平成20年12月210万円5%平成21年1月1日平成21年1月210万円5%平成21年2月1日平成21年2月210万円5%平成21年3月1日平成21年3月210万円5%平成21年4月1日平成21年4月210万円5%平成21年5月1日平成21年5月210万円5%平成21年6月1日- 68 -平成21年6月210万円5%平成21年7月1日平成21年7月210万円5%平成21年8月1日平成21年8月210万円5%平成21年9月1日平成21年9月210万円5%平成21年10月1日平成21年10月210万円5%平成21年11月1日平成21年11月210万円5%平成21年12月1日平成21年12月210万円5%平成22年1月1日平成22年1月210万円5%平成22年2月1日平成22年2月210万円5%平成22年3月1日平成22年3月210万円5%平成22年4月1日平成22年4月210万円5%平成22年5月1日平成22年5月210万円5%平成22年6月1日平成22年6月210万円5%平成22年7月1日平成22年7月210万円5%平成22年8月1日平成22年8月210万円5%平成22年9月1日平成22年9月210万円5%平成22年10月1日平成22年10月210万円5%平成22年11月1日平成22年11月210万円5%平成22年12月1日平成22年12月 10万円5%平成22年10月1日平成22年10月210万円5%平成22年11月1日平成22年11月210万円5%平成22年12月1日平成22年12月210万円5%平成23年1月1日平成23年1月210万円5%平成23年2月1日平成23年2月210万円5%平成23年3月1日平成23年3月210万円5%平成23年4月1日平成23年4月210万円5%平成23年5月1日平成23年5月210万円5%平成23年6月1日平成23年6月210万円5%平成23年7月1日- 69 -平成23年7月210万円5%平成23年8月1日平成23年8月210万円5%平成23年9月1日平成23年9月210万円5%平成23年10月1日平成23年10月210万円5%平成23年11月1日平成23年11月210万円5%平成23年12月1日平成23年12月210万円5%平成24年1月1日平成24年1月210万円5%平成24年2月1日平成24年2月210万円5%平成24年3月1日平成24年3月210万円5%平成24年4月1日平成24年4月210万円5%平成24年5月1日平成24年5月210万円5%平成24年6月1日平成24年6月210万円5%平成24年7月1日平成24年7月210万円5%平成24年8月1日平成24年8月210万円5%平成24年9月1日平成24年9月210万円5%平成24年10月1日平成24年10月210万 210万円5%平成24年8月1日平成24年8月210万円5%平成24年9月1日平成24年9月210万円5%平成24年10月1日平成24年10月210万円5%平成24年11月1日平成24年11月210万円5%平成24年12月1日平成24年12月210万円5%平成25年1月1日平成25年1月210万円5%平成25年2月1日平成25年2月210万円5%平成25年3月1日平成25年3月210万円5%平成25年4月1日平成25年4月210万円5%平成25年5月1日平成25年5月210万円5%平成25年6月1日平成25年6月210万円5%平成25年7月1日平成25年7月210万円5%平成25年8月1日- 70 -平成25年8月210万円5%平成25年9月1日平成25年9月210万円5%平成25年10月1日平成25年10月210万円5%平成25年11月1日平成25年11月210万円5%平成25年12月1日平成25年12月210万円5%平成26年1月1日平成26年1月210万円5%平成26年2月1日 - 71 -(別紙)特許目録特許番号特許第4011451号出願番号特願2002-289556出願日平成14年10月2日公開番号特開2004-122176公開日平成16年4月22日審査請求日平成17年9月20日登録日平成19年9月14日発明の名称後方押出方法および後方押出装置【請求項1】 22176公開日平成16年4月22日審査請求日平成17年9月20日登録日平成19年9月14日発明の名称後方押出方法および後方押出装置【請求項1】ダイス穴に挿入されたワーク素材を,前記ダイス穴の内部に設置されたカウンターパンチと前記ダイス穴に進入するパンチとで圧縮して,前記カウンターパンチにより後方押出を行う後方押出方法であって,前記カウンターパンチの根元部を固定するカウンターパンチホルダーに,前記カウンターパンチの外周面を,周方向で間隔をおいて囲むように配置された複数個のガイド穴を,前記カウンターパンチの軸方向と平行に貫通形成し,前記ガイド穴にノックアウトピンをスライド可能に貫挿し,前記ノックアウトピンを前記カウンターパンチと平行に延長して前記カウンターパンチの外周面と前記ダイス穴の内周面の間に嵌合するように介在させて,前記ダイス穴内でカウンターパンチを周囲から支持し,前記ダイス穴にワーク素材を挿入して前記パンチを進入させるときは,前記ダイス穴の内周面と前記カウンターパンチの外周面の間に押出製品の成形空間を確保するように,前記ノックアウトピンを前記カウンターパンチホルダー側に後退させ,- 72 -後方押出が終了して前記ダイス穴から前記パンチが退出した後は,前記ノックアウトピンの先端部を前記ダイス穴から突出させて前記ダイス穴から押出製品を排出するように,前記ノックアウトピンを前進させることを特徴とする後方押出方法。 【請求項2】ダイス穴に挿入されたワーク素材を,前記ダイス穴の内部に設置されたカウンターパンチと前記ダイス穴に進入するパンチとで圧縮して,前記カウンターパンチにより後方押出を行う後方押出装置であって,前記カウンター に挿入されたワーク素材を,前記ダイス穴の内部に設置されたカウンターパンチと前記ダイス穴に進入するパンチとで圧縮して,前記カウンターパンチにより後方押出を行う後方押出装置であって,前記カウンターパンチの根元部を固定するカウンターパンチホルダーに,前記カウンターパンチの外周面を,周方向で間隔をおいて囲むように配置された複数個のガイド穴が,前記カウンターパンチの軸方向と平行に貫通形成されており,前記ガイド穴にはノックアウトピンがスライド可能に貫挿されており,前記ノックアウトピンは前記カウンターパンチと平行に延びて前記カウンターパンチの外周面と前記ダイス穴の内周面の間に嵌合するように介在して,前記ダイス穴内でカウンターパンチを周囲から支持しており,ワーク素材を挿入された前記ダイス穴に前記パンチを進入させるときは,前記ダイス穴の内周面と前記カウンターパンチの外周面の間に押出製品の成形空間を確保するように,前記ノックアウトピンを前記カウンターパンチホルダー側に後退させ,後方押出が終了して前記ダイス穴から前記パンチが退出した後は,前記ノックアウトピンの先端部を前記ダイス穴から突出させて前記ダイス穴から押出製品を排出するように,前記ノックアウトピンを前進させることを特徴とする後方押出装置。 以上

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