- 1 - 平成25年12月5日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ウ)第369号手続却下処分取消請求事件口頭弁論の終結の日平成25年10月24日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁長官が特願2011-550259について平成24年4月27日付けで原告に対してした平成23年8月10日付け提出の国内書面に係る手続を却下する旨の処分を取り消す。 2 特許庁長官が特願2011-550259について平成24年4月27日付けで原告に対してした平成23年10月12日付け提出の国際出願翻訳文提出書に係る手続を却下する旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「特許協力条約」という。)に基づき国際出願をし,特許法184条の5第1項各号に掲げる事項を記載した書面並びに同条の4第1項に規定する明細書及び請求の範囲の日本語による翻訳文(以下「明細書等翻訳文」と - 2 - いう。)を特許庁長官に提出したところ,特許庁長官から,提出期間内に明細書等翻訳文の提出がなかったことを理由に,上記書面に係る手続の却下処分及び翻訳文提出書に係る手続の却下処分を受けたので,被告に対し,上記両処分には特許協力条約に基づく規則(以下「条約規則」という。)49.6による出願人の権利回復の請求に応じることなく,また,特許法184条の5第2項による手続の補正をすべきことを命ずることなくされた違法があると主張して,上記両 規則(以下「条約規則」という。)49.6による出願人の権利回復の請求に応じることなく,また,特許法184条の5第2項による手続の補正をすべきことを命ずることなくされた違法があると主張して,上記両処分の取消しを求める事案である。 1 国際出願の国内移行に関する条約及び我が国の法令の定め 特許協力条約22条は,において,国際出願の出願人は,優先日から30か月を経過する時までに各指定官庁に対し,国際出願の写し及び所定の翻訳文を提出する旨を規定しているが,において,国内法令は,提出をすべき期間として,30か月よりも遅い時に満了する期間を定めることができる旨を規定している。 特許法184条の4第1項は,外国語でされた国際特許出願の出願人は,優先日から2年6月の国内書面提出期間内に,国際出願日における明細書,請求の範囲,図面及び要約の日本語による翻訳文を,特許庁長官に提出しなければならないが,国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までの間に国内書面(同法184条の5第1項各号に掲げる事項を記載した書面)を提出すれば,国内書面の提出の日から2月の翻訳文提出特例期間内に,当該翻訳文を提出することができる旨を規定している。 特許協力条約24条は,において,国際出願の出願人が特許協力条約22条に規定する行為を該当する期間内にしなかった場合等には,国際出願の - 3 - 効果が,指定国において,当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する旨を規定しているが,において,指定官庁は,国際出願の効果を維持することができる旨も規定している。 特許法184条の4第3項は,国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなかったときは,その国際特許出願が取り下げられたも を維持することができる旨も規定している。 特許法184条の4第3項は,国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなかったときは,その国際特許出願が取り下げられたものとみなす旨を規定している。 条約規則49.6は,において,国際出願の出願人が特許協力条約22条に規定する行為を適用される期間内に行わなかったことにより国際出願の効果が消滅した場合には,指定官庁は,出願人の請求により,かつ,その請求の指定官庁への提出が上記期間を遵守できなかった理由がなくなった日から2か月か,上記期間が満了する日から12か月のうち早く満了する期間内に行われるなど,からまでの規定に従うことを条件として,期間が遵守されなかったことが故意ではないと認めるとき又は指定官庁がその選択により,状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず期間が遵守されなかったものであると認めるときは,その国際出願についての出願人の権利を回復する旨を規定しているが,において,2002年(平成14年)10月1日にからの規定が指定官庁によって適用される国内法令に適合しない場合には,当該指定官庁がその旨を2003年(平成15年)1月1日までに国際事務局に通告することを条件として,これらの規定は,その国内法令に適合しない間,当該指定官庁について適用しない旨を規定している。 特許庁は,平成14年12月4日付けで,国際事務局に対し,条約規則49.6ないしの規定が我が国の法令に適合しない旨の同に規定する通 - 4 - 告をした。 特許法等の一部を改正する法律(平成23年法律第63号。以下「改正特許法」という。)が平成23年5月31日に成立し,同年6月8日に公布され,平成24年4月1日から施行された。改正特許法は,1 特許法等の一部を改正する法律(平成23年法律第63号。以下「改正特許法」という。)が平成23年5月31日に成立し,同年6月8日に公布され,平成24年4月1日から施行された。改正特許法は,184条の4に4,5項を追加し,184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされた国際特許出願の出願人は,国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは,その理由がなくなった日から2月以内で国内書面提出期間又は翻訳文提出特例期間の経過後1年以内に限り,明細書等翻訳文並びに図面及び要約の両翻訳文を特許庁長官に提出することができる旨(4項),提出された翻訳文は国内書面提出期間又は翻訳文提出特例期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす旨(5項)を規定した。 特許庁は,平成24年1月16日付けで,国際事務局に対し,前記通告を撤回し,同年4月1日より条約規則49.6ないしの規定が我が国について効力を生じる旨の通告をした。 (乙2,3の1及び2) 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 原告は,平成22年2月12日,米国特許商標庁に対し,平成21年2月13日を優先日として,英語で国際出願(PCT/US2010/024036)をした。上記国際出願は,所定の国際出願日が認められるとともに,指定国に日本国を含むものであったから,特許法184条の3第1項により, - 5 - 上記国際出願日にされた特許出願(特願2011-550259号。以下「本件出願」という。)とみなされた。 原告は,本件出願に関し,国内書面を平成23年8月10日に特許庁長官に提出し,明細書,請 国際出願日にされた特許出願(特願2011-550259号。以下「本件出願」という。)とみなされた。 原告は,本件出願に関し,国内書面を平成23年8月10日に特許庁長官に提出し,明細書,請求の範囲,図面及び要約の日本語による各翻訳文を同年10月12日に特許庁長官に提出した。 特許庁長官は,平成24年4月27日付けで,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなく,本件出願が取り下げられたものとみなされたとして,平成23年8月10日付け提出の国内書面に係る手続を却下し,翻訳文提出特例期間経過後の提出であるとして,同年10月12日付け提出の国際出願翻訳文提出書に係る手続を却下した(以下,両処分を「本件両処分」という。)。 原告は,平成24年6月29日,特許庁長官に対し,本件両処分の取消しを求めて行政不服審査法に基づく異議申立てをしたところ,特許庁長官は,同年12月18日付けで異議申立てを棄却する旨の決定をし,同決定は,翌19日,原告に送達された。 原告は,平成25年6月19日,本件両処分の取消しを求めて本件訴えを提起した。 3 争点及びこれについての当事者の主張本件の争点は,本件両処分の違法性である。 (原告の主張) 条約規則49.6ないしは,同により,国内法令に適合しない間,適用しない旨が規定されているが,平成23年5月31日に成立した改正特 - 6 - 許法が国民に対する潜在的な拘束力を取得し,条約規則49.6ないしの規定は,客観的にみて国内法令に適合する状態になったから,条約規則の国内法令に対する優位性(憲法98条2項,特許法26条)に照らしても,上記同日以降は適用されるべきものである。 原告は,翻訳文提出特例期間の満了日の1日後に,明細書等翻訳文並びに から,条約規則の国内法令に対する優位性(憲法98条2項,特許法26条)に照らしても,上記同日以降は適用されるべきものである。 原告は,翻訳文提出特例期間の満了日の1日後に,明細書等翻訳文並びに図面及び要約の両翻訳文を特許庁長官に提出したが,期間を遵守しなかったことに故意又は過失がないから,特許庁長官は,原告の出願人としての権利回復の請求に応じる義務を負っていたものであり,それにもかかわらず,これに応じることなく,本件両処分をしたのであるから,本件両処分は違法である。 特許法184条の5第2項は,国際特許出願の出願人が国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に翻訳文を提出しないなどの場合に,特許庁長官は,相当の期間を指定して,手続の補正をすべきことを命ずることができる旨を規定しているところ,他に選択肢はなく,内容も一義的に明確であって,専門技術的な判断を要しない上,特許協力条約22条及び24条,条約規則49.6ないし並びに特許法184条の4第4項及び第5項の趣旨にも照らせば,特許法184条の5第2項は,特許庁長官の裁量に委ねたものではなく,第三者の利益を害するなどの特段の事情がない限りは,手続の補正をすべきことを命ずべきことを規定したというべきである。 仮に特許庁長官に裁量があるとしても,平成23年当時,諸外国では翻訳文提出期間を徒過した場合の救済規定が設けられ,我が国でも改正特許法が成立しているのであって,原告が,国内書面提出期間の末日よりも早く国内 - 7 - 書面を提出したばかりに,翻訳文提出特例期間に1日遅れて翻訳文を提出したにすぎないのであるから,このことを考慮すれば,特許庁長官が手続の補正をすべきことを命ずることなく本件両処分をすることは,裁量権の範囲を逸脱するものである。 に1日遅れて翻訳文を提出したにすぎないのであるから,このことを考慮すれば,特許庁長官が手続の補正をすべきことを命ずることなく本件両処分をすることは,裁量権の範囲を逸脱するものである。 本件において,第三者の利益を害するなどの特段の事情はないから,特許庁長官は,原告に対し手続の補正をすべきことを命ずる義務を負っていたものであり,それにもかかわらず,これを命じることなく,本件両処分をしたのであるから,本件両処分は違法である。 (被告の主張) 国際出願の手続は,実際に効力を有して運用されている条約や国内法令の各規定に基づいて行われ,条約規則49.6も,特許協力条約と国内法令の関係を調整する趣旨であるから,「国内法令に適合しない間」とは,現に国内で効力を有して運用されている法令に適合しない間を意味するのが最も自然である。我が国の法令は,施行により効力を一般的,現実的に発動して作用するようになるから,改正特許法も,平成24年4月1日の施行までは,効力を有して運用されている法令でなく,条約規則49.6ないしは,平成23年5月31日の改正特許法の成立によっては,国内法令に適合する状態になっていないのであって,上記同日以降に適用されるものではない。 条約規則49.6ないしは,平成24年4月1日の改正特許法の施行により,初めて国内法令に適合することとなり,同年3月31日以前に特許法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされた国際特許出願には同第4項及び第5項の規定を適用しない旨の経過規定(改正特許法 - 8 - 附則2条25項)も設けられたから,同年4月1日以降,適用されるにすぎない。 特許庁長官は,原告の出願人としての権利回復の請求に応じる義務を負っていないから,これに応じなかったと - 附則2条25項)も設けられたから,同年4月1日以降,適用されるにすぎない。 特許庁長官は,原告の出願人としての権利回復の請求に応じる義務を負っていないから,これに応じなかったとしても,本件両処分は違法でない。 特許法184条の5第2項は,「命ずることができる」と規定して,特許庁長官の裁量があることを明記している。また,同項は,同条の4第3項の規定に照らすと,国際特許出願の出願人が国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出したものの,要約の翻訳文を提出していない場合に,補正命令の対象となることを規定したものであり,原告は,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出していないのであるから,本件出願は取り下げられたものとみなされて,補正命令の対象となり得ない。 なお,特許協力条約22条及び24条も,締約国において,翻訳文等の提出をすべき期間として30か月よりも遅い時に満了する期間を定めたり,国際出願の効果を上記期間経過後も維持したりする「ことができる」と規定し,締約国の裁量があることを明記している。 特許庁長官は,原告に対し,手続の補正を命じる義務を負っていないから,これを命じなかったとしても,本件両処分は違法でない。 第3 当裁判所の判断 1 原告は,本件出願について,特許法184条の4第1項により,優先日である平成21年2月13日から2年6月後の平成23年8月15日(特許法3条により,同日をもって期間の末日とすることになる。)までの国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を,特許庁長官に提出しなければならなかったところ, - 9 - 同月10日に国内書面を特許庁長官に提出したから,同日から2月後の同年10月11日(特許法3条により,同日をもって期間の末日とすることになる。 に提出しなければならなかったところ, - 9 - 同月10日に国内書面を特許庁長官に提出したから,同日から2月後の同年10月11日(特許法3条により,同日をもって期間の末日とすることになる。)までの翻訳文提出特例期間内に当該翻訳文を提出することができることになったが,それにもかかわらず,同月12日に当該翻訳文を提出したのである。そうすると,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなかったものであるから,特許法184条の4第3項により,本件出願は,取り下げられたものとみなされた。 特許庁長官は,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文の提出がなく,本件出願が取り下げられたものとみなされたとして,国内書面に係る手続を却下し,翻訳文提出特例期間経過後の提出であるとして,国際出願翻訳文提出書に係る手続を却下したのであるから,本件両処分に違法はない。 2 そこで,原告の主張について,判断する。 条約規則49.6について条約規則49.6は,特許協力条約22条所定の期間が遵守されなかった場合に,国際出願の出願人を救済する条約規則49.6ないしとこれを救済しない国内法令の関係を調整する趣旨の規定であるから,ここにいう「国内法令」とは,我が国の場合,我が国において効力を一般的に現実に発動している法令,すなわち,施行されている法令を意味する(特許協力条約2条(ⅹ)参照)。そして,外国語でされた国際特許出願における出願書類とその翻訳文の提出は,改正特許法が施行された日の前日である平成24年3月31日まで,国内書面提出期間と翻訳文提出特例期間に限られていたし(特許法184条の4第1項),救済期間を新設した特許法184条の4第4項 - 10 - を含む改正特許法は同年4月1日から施行されたが,同法附則2条25項 と翻訳文提出特例期間に限られていたし(特許法184条の4第1項),救済期間を新設した特許法184条の4第4項 - 10 - を含む改正特許法は同年4月1日から施行されたが,同法附則2条25項は,同年3月31日以前に同法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされた国際特許出願には同第4項及び第5項の規定を適用しない旨を規定しているから,条約規則49.6ないしは,平成23年5月31日の改正特許法の成立によっては,国内法令に適合せず,平成24年4月1日の改正特許法の施行により,初めて国内法令に適合したものである。 原告は,平成23年10月11日までの翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出せず,特許法184条の4第3項により,本件出願が取り下げられたものとみなされたから,条約規則49.6ないしの適用を受ける余地はない。 したがって,特許庁長官が原告の出願人としての権利回復の請求に応じる義務を負っていたということはできない。 特許法184条の5第2項について特許法184条の5第2項と同条の4第3項とを併せ考慮すれば,外国語でされた国際特許出願における出願書類とその翻訳文の提出に関し,同条の5第2項は,国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出したものの,国内書面又は要約の翻訳文を提出していない場合(同条の5第2項1号又は4号),国内書面提出期間内に国内書面を提出し,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出したものの,要約の翻訳文を提出していない場合(同項4号)について規定し,同条の4第3項は,国内書面提出期間内に国内書面及び明細書等翻訳文を提出しない場合,国内書面提出期間内に国内書面を提出したものの,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出しない場合に - 11 - 4第3項は,国内書面提出期間内に国内書面及び明細書等翻訳文を提出しない場合,国内書面提出期間内に国内書面を提出したものの,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出しない場合に - 11 - ついて規定したものと解される。 原告は,国内書面提出期間内に国内書面を提出したものの,翻訳文提出特例期間内に明細書等翻訳文を提出せず,特許法184条の4第3項により,本件出願が取り下げられたものとみなされたから,特許庁長官が手続の補正をすべきことを命ずる余地はない。 したがって,特許庁長官が原告に対し手続の補正を命じる義務を負っていたということはできない。 3 以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官志賀勝 裁判官藤田壮 - 12 - (別紙)当事者目録アメリカ合衆国 02421マサチューセッツ州 <以下略>原告アビニシオテクノロジーエルエルシー同訴訟代理人弁護士根本浩友村明弘松永耕明同補佐人弁理士稲葉良幸 弘松永耕明同補佐人弁理士稲葉良幸佐藤睦 被告国処分行政庁特許庁長官同指定代理人木村智博高野剛駒 﨑 利徳上田智子古閑裕人
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