平成28年6月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第8905号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年4月27日判決 原告日亜化学工業株式会社同訴訟代理人弁護士古城春実同宮原正志同牧野知彦同加治梓子同訴訟代理人弁理士鮫島 睦同山尾憲人同田村 啓同玄 番 佐奈恵 被告 E&EJapan株式会社(以下「被告E&E」という。)同訴訟代理人弁護士伊藤 真同平井佑希 被告株式会社立花エレテック(以下「被告立花」という。)同訴訟代理人弁護士井上裕史同田上洋平同佐合俊彦 主文 1 被告E&Eは,原告に対し,25万5000円及びこれに対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告立花は,原告に対し,15万2000円及びこれに対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の4分の1と被告立花に生じた費用の2分の1を被告立花の負担とし,原告に生じた費用の4分の1と被告E&Eに生じた費用の2分の1を被告E&Eの負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項 花に生じた費用の2分の1を被告立花の負担とし,原告に生じた費用の4分の1と被告E&Eに生じた費用の2分の1を被告E&Eの負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告E&Eは,別紙1物件目録記載の製品を譲渡し,輸入し又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告立花は,別紙1物件目録記載の製品を譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。 3 被告E&Eは,その占有に係る別紙1物件目録記載の製品を廃棄せよ。 4 被告立花は,その占有に係る別紙1物件目録記載の製品を廃棄せよ。 5 被告E&Eは,原告に対し,110万5000円及びこれに対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,次項記載の金員の限度で被告立花と連帯して)を支払え。 6 被告立花は,原告に対し,被告E&Eと連帯して103万5000円及びこ れに対する平成26年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 原告は,発明の名称を「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」とする特許第3972943号に係る特許権(以下「本件特許権1」といい,その特許を「本件特許1」という。また,その願書に添付した明細書〔訂正審判事件(訂正2014-390187)の平成27年1月21日付け審決(同月29日確定)により訂正されたもの。別紙2(訂正明細書)参照〕及び図面〔別紙4(特許第3972943号公報)参照〕を併せて「本件明細書1」という。)及び発明の名称を「窒化物半導体素子」とする特許第3786114号に係る特許権(以下「本件特許権2」といい,その特許を「本件特許2」という。また,その願書に )参照〕を併せて「本件明細書1」という。)及び発明の名称を「窒化物半導体素子」とする特許第3786114号に係る特許権(以下「本件特許権2」といい,その特許を「本件特許2」という。また,その願書に添付した明細書〔訂正審判事件(訂正2015-390089)の平成27年9月24日付け審決(同年10月2日確定)により訂正されたもの。別紙5(訂正明細書)参照〕及び図面〔別紙7(特許第3786114号公報)参照〕を併せて「本件明細書2」という。)の特許権者である。 原告は,別紙1物件目録記載の青色LED(以下「被告LED」という。)に搭載されている窒化物半導体素子(以下「被告製品」という。)が,本件特許1の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2記載の発明(訂正審判事件〔訂正2014-390187〕の平成27年1月21日付け審決〔同月29日確定〕により訂正されたもの。別紙3〔特許請求の範囲〕参照。以下「本件発明1」といい,本件特許1のうち本件発明1に係る特許を「本件発明1についての特許」ということがある。)及び本件特許2の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1記載の発明(訂正審判事件〔訂正2015-390089〕の平成27年9月24日付け審決〔同年10月2日確定〕により訂正されたもの。別紙6〔訂正特許請求の範囲〕参照。以下「本件発明2」といい,本件特許2のうち本件発明2に係る特許を「本件発明2についての特許」ということがある。)の各技術的範囲に属する から,被告E&Eが被告LEDを譲渡し,輸入し又は譲渡の申出をする行為及び被告立花が被告LEDを譲渡し又は譲渡の申出をする行為(以下「譲渡等」ということがある。)は,いずれも本件特許権1及び同2を侵害する行為であると主張して,被告らに対し,次のとおりの請求をしている。 ①本件特許権2の侵害 譲渡し又は譲渡の申出をする行為(以下「譲渡等」ということがある。)は,いずれも本件特許権1及び同2を侵害する行為であると主張して,被告らに対し,次のとおりの請求をしている。 ①本件特許権2の侵害を原因として,特許法100条1項に基づき,被告E&Eに対しては被告LEDの譲渡,輸入及び譲渡の申出の差止めを,被告立花に対しては被告LEDの譲渡及び譲渡の申出の差止め(前記第1の1,2)。 ②本件特許権2の侵害を原因として,同条2項に基づき,被告らそれぞれに対し,その占有に係る被告LEDの廃棄(前記第1の3,4)。 ③本件特許権1及び同2の侵害を原因として,不法行為による損害賠償請求権(不法行為の対象期間は,平成19年6月22日から平成26年4月10日までである。)に基づき,被告らに対し,損害賠償金(弁護士費用)100万円(内訳は,被告E&Eによる本件特許権1の侵害につき25万円,被告E&Eによる本件特許権2の侵害につき25万円,被告立花による本件特許権1の侵害につき25万円,被告立花による本件特許権2の侵害につき25万円)及びこれに対する平成26年4月23日(各被告への訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払。 ④本件特許権1及び同2の侵害を原因とする不法行為による損害賠償請求権又は実施料を支払うことなく本件発明1及び同2を実施したことによる不当利得返還請求権(本件特許権1に基づく請求と同2に基づく請求は,選択的併合の関係にある。 また,不法行為による損害賠償請求権に基づく請求と不当利得返還請求権に基づく請求は,選択的併合の関係にある。)に基づき(不法行為又は不当利得の対象期間は,平成19年6月22日から平成26年4月10日までである。),被告E&Eに対しては損害賠償金又は不当利得金10万5000 請求は,選択的併合の関係にある。)に基づき(不法行為又は不当利得の対象期間は,平成19年6月22日から平成26年4月10日までである。),被告E&Eに対しては損害賠償金又は不当利得金10万5000円及びこれに対する平成26年4月23日(同被告への訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,被告立花に対しては損害賠償金又は不当 利得金3万5000円及びこれに対する平成26年4月23日(同被告への訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払(なお,原告は,被告E&Eに対する請求と,被告立花に対する請求について,請求額が重複する限りにおいて被告らの連帯支払を求めている。)。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等。なお,証拠の掲記に際し,枝番号の表記を省略することがある。)(1) 当事者ア原告は,半導体及び関連材料,部品,応用製品の製造,販売並びに研究開発などを業とする株式会社である。 イ被告E&Eは,電子部品の輸出入及び販売等を業とする株式会社である。 ウ被告立花は,各種電気機械器具,照明機械器具,電子応用機械器具等の製造・販売,半導体素子等の輸出入及び販売等を業とする株式会社である。 (2) 本件特許権1及び同2ア原告は,次の内容の本件特許権1の特許権者である(ただし,本件口頭弁論終結時において,既に存続期間が満了している。)。 登録番号特許第3972943号発明の名称窒化ガリウム系化合物半導体発光素子出願日平成17年7月19日(特願2005-209227)(特願平6-154708の分割である特願平 3号発明の名称窒化ガリウム系化合物半導体発光素子出願日平成17年7月19日(特願2005-209227)(特願平6-154708の分割である特願平10-326404の分割である特願2002-118852の分割)原出願日平成6年7月6日(特願平6-154708の出願日)公開日平成17年11月10日登録日平成19年6月22日特許請求の範囲別紙3(訂正特許請求の範囲)記載のとおり本件特許1については,訂正審判事件(訂正2014-390187)の平成2 7年1月21日付け審決(同月29日確定)により訂正が認められており,同審決の確定により,本件特許1の願書に添付した特許請求の範囲が別紙3(訂正特許請求の範囲)に記載のとおりのものとして,特許がされたものとみなされた(甲1の1・2,12の1ないし3,17)。 イ原告は,次の内容の本件特許権2の特許権者である。 登録番号特許第3786114号発明の名称窒化物半導体素子出願日平成16年1月5日(特願2004-502)(特願2001-174903の分割)原出願日平成13年6月8日公開日平成16年4月2日優先日平成12年11月21日(優先権主張番号特願2000-355078)(優先権主張国日本国)登録日平成18年3月31日特許請求の範囲別紙6(訂正特許請求の範囲)記載のとおり本件特許2については,訂正審判事件(訂正2015-390019)の平成27年5月29日付け審決(同年6月8日確定)及び 月31日特許請求の範囲別紙6(訂正特許請求の範囲)記載のとおり本件特許2については,訂正審判事件(訂正2015-390019)の平成27年5月29日付け審決(同年6月8日確定)及び再度の訂正審判事件(訂正2015-390089)の平成27年9月24日付け審決(同年10月2日確定)により訂正が認められており,後者の審決の確定により,本件特許2の願書に添付した特許請求の範囲が別紙6(訂正特許請求の範囲)に記載のとおりのものとして,特許がされたものとみなされた(甲2の1・2,18の1ないし3,29,31の1・2,32)。 (3) 本件発明1及び同2ア本件発明1(本件特許1の特許請求の範囲の請求項2記載の発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応 して「構成要件1A」などという。)。 1A:基板上にn型層,活性層,p型層が積層された構造を備え,該p型層上と,該n型層が一部露出された表面に,それぞれ正電極と負電極が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって,1B:前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有すると共に,1C:前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する1D:窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。 イ本件発明2(本件特許2の特許請求の範囲の請求項1記載の発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応して「構成要件2A」などという。なお,本件の審理中に訂正がされた関係上,符号2Eと同2Fの順 の請求項1記載の発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応して「構成要件2A」などという。なお,本件の審理中に訂正がされた関係上,符号2Eと同2Fの順が入れ替わっている。)。 2A:Inを含む窒化物半導体からなる井戸層と窒化物半導体からなる障壁層を有する量子井戸構造の活性層を,p型窒化物半導体層と,n型窒化物半導体層とで挟む構造を有する窒化物半導体素子において,2B:前記活性層がL個(L≧2)の前記障壁層を有し,2C:前記n型窒化物半導体層に最も近い位置に配置された障壁層を障壁層B1,該障壁層B1から前記p型窒化物半導体層に向かって数えてi番目(i=1,2,3,・・・L)の障壁層を障壁層Bi,とした時に,i=Lの障壁層BLが,前記p型窒化物半導体層中に設けられ,前記活性層よりもバンドギャップエネルギーの大きなAlを含む窒化物半導体の第1のp型窒化物半導体層,と前記井戸層と,の間に設けられ,2D:前記障壁層BLの膜厚が,i≠Lの障壁層Biの膜厚より大きく,2F:前記障壁層B1を含む前記n型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不 純物濃度が1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下であり,前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が5×1016/㎤未満である,2E:ことを特徴とする窒化物半導体素子。 (4) 被告らの行為被告LEDは,青色発光するLEDであって,窒化物半導体素子である被告製品を搭載している。 被告E&Eは,平成24年12月頃,台湾法人であるEverlightElectronics社(以下「エバー社」という。)から被告LED1000個を輸入してこれを被告立花に販売し,被告立花は,平成25年1月頃,これを株式会社イガ 頃,台湾法人であるEverlightElectronics社(以下「エバー社」という。)から被告LED1000個を輸入してこれを被告立花に販売し,被告立花は,平成25年1月頃,これを株式会社イガラシ(以下「イガラシ」という。)に販売した。 なお,被告らは,被告製品が本件発明1の構成要件1A及び1D,並びに本件発明2の構成要件2A,2B及び2Eを充足することにつき,争っていない。 (以上につき,甲6,乙28ないし35,丙1,2,5,7) 3 争点(1) 被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか(争点1)ア被告製品は構成要件1Bを充足するか(争点1-1)イ被告製品は構成要件1Cを充足するか(争点1-2)(2) 本件発明1についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点2)ア無効理由1(乙第6号証を主引例とする進歩性欠如)は認められるか(争点2-1)イ無効理由2(乙第13号証を主引例とする進歩性欠如)は認められるか(争点2-2)ウ無効理由3(サポート要件違反)は認められるか(争点2-3)エ無効理由4(実施可能要件違反)は認められるか(争点2-4) オ無効理由5(乙第27号証による新規性欠如)は認められるか(争点2-5)(3) 被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか(争点3)ア被告製品は構成要件2Cを充足するか(争点3-1)イ被告製品は構成要件2Dを充足するか(争点3-2)ウ被告製品は構成要件2Fを充足するか(争点3-3)(4) 本件発明2についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点4)ア無効理由1(サポート要件違反)は認められるか(争点4-1)イ無効理由2(実施可能 (4) 本件発明2についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点4)ア無効理由1(サポート要件違反)は認められるか(争点4-1)イ無効理由2(実施可能要件違反)は認められるか(争点4-2)ウ無効理由3(訂正要件違反)は認められるか(争点4-3)(5) 被告LEDの譲渡等につき原告の承諾があったか(争点5)(6) 被告LEDの譲渡等の差止め及び廃棄の必要性があるか(争点6)(7) 損害及び不当利得の額(争点7) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】ア被告製品の構成被告製品の構成を本件発明1の構成要件充足性の判断に必要な限りで模式図により示すと,別紙8(被告製品構造説明書(1))のとおりとなる(甲6)。(判決注:以下,原告の主張に係る同別紙の模式図中の番号によって特定される層を「層(1)」などと記載する。)イ争点1-1(被告製品は構成要件1Bを充足するか)について(ア) 被告製品は,そのn型層(61)中に,n型層(A)と,これに接し,これよりも電子キャリア濃度が大きいn型層(B)を有するから,構成要件1B「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有すると共に,」を充足する。 (イ) 被告らの主張について被告らは,被告製品のn型層(61)中に有する高Si濃度領域(被告らが「Siスパイク」と称する領域)について,SiH4の流量を変化させて生じたものではないから,電子キャリア濃度が大きいとは即断できないと主張するが,窒化ガリウム系化合物半導体中の電子キャリア濃度が,ドーピングの手法 」と称する領域)について,SiH4の流量を変化させて生じたものではないから,電子キャリア濃度が大きいとは即断できないと主張するが,窒化ガリウム系化合物半導体中の電子キャリア濃度が,ドーピングの手法にかかわらずドーパントの濃度に比例することは技術常識である。 また,被告らは,本件発明1における「第二のn型層」は,①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③Vf(順方向電圧)が「明らかに」低下するという効果を奏するものでなくてはならないとして,被告製品における高Si濃度領域は,これが属するn型層の他の領域と比べて約3倍程度のSi濃度しかなく,上記各効果を奏しないから,「第二のn型層」に当たらないと主張するが,特許請求の範囲の記載は,電子キャリア濃度の差について何らの限定をしていないし,被告製品が本件発明1の作用効果を奏しないということもない(甲11)。 ウ争点1-2(被告製品は構成要件1Cを充足するか)について(ア) 被告製品において,n型層(A)とn型層(B)はn型層中の,基板とn型層露出表面の間のn型層領域にあり,n型層(B)はn型層(A)の基板側に設けられているから,被告製品は構成要件1C「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」を充足する。 (イ) 被告らの主張について被告らは,被告製品のn型層(61)中に高Si濃度領域が存在することを認めながら,同領域は,SiH4の流量を変化させずに,単にいったん低下させたTMGaの流量を徐々に戻しながら形成されているから,n型層(61A)と同(61B)とは単一の層(被告の主張する層[61-2])と認定されるべきと主張して,この場合には構 ずに,単にいったん低下させたTMGaの流量を徐々に戻しながら形成されているから,n型層(61A)と同(61B)とは単一の層(被告の主張する層[61-2])と認定されるべきと主張して,この場合には構成要件1Cを充足しないと主張する。 しかしながら,そもそも,物の発明である本件発明1の充足性に関し,製造方法 に依拠した主張をすること自体失当であるし,被告らが依拠する分析結果(乙1)によっても,被告製品は,n型層中に,電子キャリア濃度の大きいn型層(61B)を有していることが明らかである。 【被告らの主張】ア被告製品の構成被告製品の構成を本件発明1の構成要件充足性の判断に必要な限りで模式図により示すと,別紙10(被告製品全体模式図),別紙11(被告製品層[61-1][61-2][61-3]付近模式図)及び別紙12(被告製品活性層(層[4~60])模式図)のとおりとなる。(判決注:以下,被告らの主張に係る上記各別紙の模式図中の番号によって特定される層を「層[1]」などと記載する。)イ争点1-1(被告製品は構成要件1Bを充足するか)について(ア) 「電子キャリア濃度が大きい」との立証がないこと被告製品における層[61-2]中の,層[61-3]との界面付近に相当する甲6号証の1の図2(3)-1のSIMSチャートの深さ(Depth)3μm付近には,Si濃度の小さなピーク(以下「Siスパイク」という。)が観察されるが,このSiスパイクは,SiH4の流量を変化させて生じたものではない(SiH4の流量を変化させずに,Ga源であるTMGaの流量を変化させたものである。)から,結晶成長の際にSiH4流量を変化させた場合に観察される「Si濃度と電子キャリア濃度が相関する」という甲6号証の2に示される立論が当然に成り立 a源であるTMGaの流量を変化させたものである。)から,結晶成長の際にSiH4流量を変化させた場合に観察される「Si濃度と電子キャリア濃度が相関する」という甲6号証の2に示される立論が当然に成り立つものではなく,Siスパイクに相当する部分の「電子キャリア濃度が大きい」と即断することはできない。 (イ) 「第二のn型層」に当たらないこと本件明細書1の記載からして,本件発明1における「第二のn型層」は,これを有することにより,他の発光素子と比べて,①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③Vf(順方向電圧)が「明らかに」低下する,という効果を奏するものでなくてはならないところ,被告製品におけるSiスパイクは,これが属するn 型層の他の領域と比べて約3倍程度のSi濃度しかなく,実験の結果(乙1ないし3)からしても,被告製品は上記①ないし③の効果を奏するものではない。 したがって,被告製品は「第二のn型層」を有しないから,構成要件1Bを充足しない。 ウ争点1-2(被告製品は構成要件1Cを充足するか)について原告は,被告製品の構成を説明する中で,Si源であるSiH4の流量や結晶成長温度が異なる部分をも単一の層であると主張するが,このような説明が許されるのであれば,SiH4の流量を変化させずに,単にいったん低下させたTMGaの流量を徐々に戻しながら形成された層[61-2]も,単一の層と認定されるべきである。 そうすると,仮に,層[61-2]中にSiスパイクが存することを理由に,単一の層たる層[61-2]が「第二のn型層」に当たるとしても,層[61-2]よりも層[61-3]が基板側に設けられていること,層[61-1]は「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域」にないことから「該第一のn型層」に当たら 」に当たるとしても,層[61-2]よりも層[61-3]が基板側に設けられていること,層[61-1]は「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域」にないことから「該第一のn型層」に当たらないことからして,層[61-2]は,「該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層」とはいえないこととなる。 したがって,被告製品は,構成要件1C「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」を充足しない。 (2) 争点2(本件発明1についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)についてア争点2-1(無効理由1〔乙第6号証を主引例とする進歩性欠如〕は認められるか)について【被告らの主張】(ア) 本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された特開平4-321280号公報(以下「乙6公報」という。)には,青色発光ダイオードに係る発明 (以下「乙6発明」という。)が開示されているところ,本件発明1と乙6発明とは,次の2点において相違するほかは,同一である。 ① 本件発明1のn型層は,相対的に高い電子キャリア濃度のn型層(第二のn型層)が,相対的に低い電子キャリア濃度のn型層(第一のn型層)に接して,基板側に設けられている構造であるのに対し,乙6発明のn型層の層構造は明示されていない点。 ② 本件発明1の第一のn型層と第二のn型層は,基板とn型層の露出表面との間にあるn型層領域に設けられているのに対し,乙6発明のn型層の配置は明示されていない点。 (イ) しかるところ,本件発明1と同一の技術分野に属する窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層 面との間にあるn型層領域に設けられているのに対し,乙6発明のn型層の配置は明示されていない点。 (イ) しかるところ,本件発明1と同一の技術分野に属する窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層において,高キャリア濃度n型層を低キャリア濃度n型層に接して基板側に配置するとの層構造は,本件特許1の原出願日当時における周知技術(少なくとも公知技術)であったから(乙7ないし12),乙6発明に同周知技術又は公知技術を適用して,上記相違点①に係る本件発明1の層構造とすることは,当業者が容易に想到できたものである。 また,そのような層構造を採用した際,具体的に各層がどのような配置となるかについては,n型層をどの程度エッチングして露出させるかという単なる設計的事項にすぎない(乙13,27),若しくは,乙13号証には,n型層の全てが基板と露出表面の間にあるn型層領域である構成が開示されているから,当業者において,乙6発明から適宜設計して,又は乙13号証に開示された構成を組み合わせて,上記相違点②に係る本件発明1のn型層の配置とすることは,容易に想到できたものである。 (ウ) そうすると,本件発明1は,乙6発明に基づき,これに周知慣用技術を適用して,又は周知慣用技術及び乙13号証記載の構成を組み合わせて,当業者が容易に発明することができたものであるから,本件発明1についての特許は,特許法29条2項に違反してされたものである。 したがって,本件発明1についての特許には,特許法123条1項2号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(同法104条の3第1項)。 【原告の主張】(ア) 乙6発明と本件発明1とは,次の2点において形式的に相違する。 きものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(同法104条の3第1項)。 【原告の主張】(ア) 乙6発明と本件発明1とは,次の2点において形式的に相違する。 ① 本件発明1が「前記n型層中に,第一のn型層3’と,第一のn型層3’に接して,第一のn側層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層33と,を有する」(構成要件1B)のに対して,乙6発明ではn型層中に第一のn型層3のみを有する点。 ② 本件発明1が「前記n型層中の基板1と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層3’と,該第一のn型層3’の基板側に設けられた前記第二のn型層33と,を有する」(構成要件1C)のに対して,乙6発明では,n型層中の基板1と露出面の間にあるn型層領域において,第一のn型層3のみを有する点。 もっとも,上記2点の相違点は,技術的に密接に関連しており,乙6発明と本件発明1の実質的な相違点は,露出表面を形成したn型層に加えて,その基板側に高キャリア濃度のn型層を有するか否かという点に集約される。 (イ) 被告らは,高キャリア濃度n型層を低キャリア濃度n型層に接して基板側に配置するとの層構造は,本件特許1の原出願日当時における周知技術(少なくとも公知技術)であったと主張するが,被告らが周知技術の根拠とする乙7号証ないし乙12号証には,負電極用の露出表面が形成された第一のn型層の基板側に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度の高い第二のn型層を形成する構成は一切開示されていないから,乙6発明に乙7号証ないし乙12号証記載の構成を組み合わせたところで,上記実質的相違点に係る本件発明1の構成は導かれない。また,低キャリア濃度n型層に電極形成用の露出表面を形成する されていないから,乙6発明に乙7号証ないし乙12号証記載の構成を組み合わせたところで,上記実質的相違点に係る本件発明1の構成は導かれない。また,低キャリア濃度n型層に電極形成用の露出表面を形成すると,電極とn型層との接触抵抗が極めて高くなり,電極から注入された電流の水平方向の広がりが不十分にな ることから,乙6発明におけるn型層を,乙7号証ないし乙12号証における高キャリア濃度n型層と低キャリア濃度n型層で置換したとしても,当業者は,高キャリア濃度n型層に電極形成用の露出表面を形成するのが当然であり,低キャリア濃度n型層に電極形成用の露出表面を形成する動機はなく,本件発明1の構成とすることには阻害要因がある。 また,乙27号証は,単にn層の成長初期においてドーピング濃度を高くすればよいことを説明しているのではなく,オーム性電極形成を容易にするために当該ドーピング濃度の高い部分にオーム性電極を接触させることを開示しているのであり,電極形成層の下に,これより高い電子キャリア濃度層を設ける構成は開示されていないから,乙6発明に乙27号証記載の構成を組み合わせても,上記実質的相違点に係る本件発明1の構成は導かれない。 イ争点2-2(無効理由2〔乙第13号証を主引例とする進歩性欠如〕は認められるか)について【被告らの主張】本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された特開平6-21511号公報(以下「乙13公報」という。)には,半導体発光素子に係る発明(以下「乙13発明」という。)が開示されているところ,本件発明1と乙13発明とは,「本件発明1のn型層は,相対的に高い電子キャリア濃度のn型層(第二のn型層)が,相対的に低い電子キャリア濃度のn型層(第一のn型層)に接して,基板側に設けられている構造であるのに対し, 発明とは,「本件発明1のn型層は,相対的に高い電子キャリア濃度のn型層(第二のn型層)が,相対的に低い電子キャリア濃度のn型層(第一のn型層)に接して,基板側に設けられている構造であるのに対し,乙13発明のn型層の層構造は明示されていない点」において相違するほかは,同一である。 しかるところ,本件発明1と同一の技術分野に属する窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層において,高キャリア濃度n型層を低キャリア濃度n型層に接して基板側に配置するとの層構造は,本件特許1の原出願日当時における周知技術(少なくとも公知技術)であったから(乙7ないし12),乙13発明に同周知技術又は公知技術を適用して,又は乙27号証記載の構成を組み合わせて,上記相違点に 係る本件発明1の層構造とすることは,当業者が容易に想到できたものである。 したがって,本件発明1は,乙13発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであり,本件発明1についての特許は,特許法123条1項2号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(同法104条の3第1項)。 【原告の主張】上記争点2-1について主張したところと同様の理由により,乙13発明に乙7号証ないし乙12号証記載の構成,さらには乙27号証記載の構成を組み合わせても,本件発明1の構成は導かれないし,低キャリア濃度n型層に電極形成用の露出表面を形成する動機はなく,本件発明1の構成とすることには阻害要因があるから,被告らの主張には理由がない。 ウ争点2-3(無効理由3〔サポート要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】本件発明1の作用効果である①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③ らの主張には理由がない。 ウ争点2-3(無効理由3〔サポート要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】本件発明1の作用効果である①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③Vf(順方向電圧)が「明らかに」低下するという作用効果を奏しない領域が,形式的に「第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい」ことを理由に「第二のn型層」に当たるというのであれば,特許請求の範囲には,発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないというべきであるし,発明の詳細な説明に開示された内容を過度に拡張ないし一般化するものであるから,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載したものでなく,本件発明1についての特許は,特許法36条6項1号の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明1についての特許には,特許法123条1項4号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】 被告らの主張は,被告製品における高Si濃度領域が,本件発明1の作用効果を奏しないことを前提とするものであるが,第二のn型層の電子キャリア濃度と第一n型層の電子キャリア濃度の差がそれほど大きくない場合であっても,本件発明1の効果が得られることに変わりはないから,被告らの主張は前提を誤っている。 エ争点2-4(無効理由4〔実施可能要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】(ア) 本件明細書1の記載をみても,どのような構成とすれば,被告製品のような濃度差の小さいSiスパイクでもなお本件発明1の作用効果を奏することができるのか,当業者において理解することができない。 (イ) また,甲9号証に みても,どのような構成とすれば,被告製品のような濃度差の小さいSiスパイクでもなお本件発明1の作用効果を奏することができるのか,当業者において理解することができない。 (イ) また,甲9号証に電子キャリア濃度が「5×1016から2×1018cm-3まで自由に制御できた。」との記載があるとおり,本件明細書1に実施例として記載されている「1E+20 atom/cm3」や「5E+20 atom/cm3」など極めて高い電子キャリアを有する第二のn型層を得るための具体的な製造方法は,本件明細書1には記載されておらず,当業者において理解することができない。 (ウ) 以上の2点において,本件明細書1の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから,本件発明1についての特許は,特許法(平成14年法律第24号による改正前のもの。)36条4項の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明1についての特許には,特許法123条1項4号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】被告らの主張のうち(ア)については,被告製品における高Si濃度領域が,本件発明1の作用効果を奏しないことを前提とする主張であるが,その前提が誤っていることは,すでに争点2-3について主張したとおりである。 被告らの主張のうち(イ)については,甲9号証の理解を誤るものである。甲9号証は,同記載の範囲外の濃度を実施できないことを何ら含意するものではない。 オ争点2-5(無効理由5〔乙第27号証による新規性欠如〕は認められるか)につ ,甲9号証の理解を誤るものである。甲9号証は,同記載の範囲外の濃度を実施できないことを何ら含意するものではない。 オ争点2-5(無効理由5〔乙第27号証による新規性欠如〕は認められるか)について【被告らの主張】本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された特開平4-242985号公報(以下「乙27公報」という。)には,窒化ガリウム系化合物半導体レーザダイオードに係る発明(以下「乙27発明」という。)が開示されているところ,本件発明1と乙27発明とは,次のとおり,同一の発明である。 a 乙27発明は,基板上にGaAlN層(3),GaN層(4),GaAlN層(5)が積層され,GaAlN層(5)とGaAlN層(3)の露出表面に,それぞれ金属電極(6A)及び(6B)を形成した構造を備える(乙27公報の段落【0040】【0041】【0043】【0045】【図1】)。ここで,乙27発明の「GaAlN層(3)」が本件発明1の「n型層」に,乙27発明の「GaN層(4)」が本件発明1の「活性層」に,乙27発明の「GaAlN層(5)」が本件発明1の「p型層」に,乙27発明の「金属電極(6A)及び(6B)」が本件発明1の「正電極」及び「負電極」に,それぞれ相当するから,乙27発明の上記構造は,本件発明1の構成要件1Aに相当する。 b 乙27発明のGaAlN層(3)に関して,乙27公報の段落【0025】【0038】には,n層成長初期に高濃度にドーピングし,pn接合付近ではドーピングしないかあるいは低濃度にドーピングしてもよい旨が記載されているから,GaAlN層(3)をかかる態様でドーピングすると,基板側に高濃度にドーピングされた(電子キャリア濃度が大きい)層が,電極面側にドーピングしないか低濃度にドーピングされた層に接して形成される。 ら,GaAlN層(3)をかかる態様でドーピングすると,基板側に高濃度にドーピングされた(電子キャリア濃度が大きい)層が,電極面側にドーピングしないか低濃度にドーピングされた層に接して形成される。この構造は,本件発明1の構成要件1Bに相当する。 c 乙27発明のGaAlN層(3)は,電極(6B)用の露出表面と基板との間に設 けられており,この構造は,上記bの構造と併せると,本件発明1の構成要件1Cに相当する。 d 乙27発明は,窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であるから,本件発明の構成要件1Dに相当する。 以上のとおり,本件発明1は,本件特許の原出願前に日本国内で頒布された刊行物に記載された発明であるから,本件発明1についての特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明1についての特許には,特許法123条1項2号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権1を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】乙27公報の段落【0025】には,「n層のオーム性電極形成を容易にするためにn層成長初期に高濃度にドーピングし,pn接合付近ではドーピングしないか或いは低濃度にドーピングしても良い。」との記載があるが,これは,段落【0032】からも明らかなように,同一組成の結晶によるpn接合構造(ホモ接合構造)の半導体レーザダイオードの作成方法に関する記載である。他方,乙27公報の段落【図1】は,段落【0038】からも明らかなように,異種組成の結晶による接合が二つ形成されている構造(ダブルへテロ接合構造)に関する記載である。 乙27公報は,ダブルへテロ接合構造のレーザダイオードにおいて,オーム性電極 】からも明らかなように,異種組成の結晶による接合が二つ形成されている構造(ダブルへテロ接合構造)に関する記載である。 乙27公報は,ダブルへテロ接合構造のレーザダイオードにおいて,オーム性電極形成を容易にするために,高濃度ドーピング層(高濃度キャリア層)を,電極と接触する電極形成層としてn層に設けることを開示するにとどまり,高濃度ドーピング層を電極形成層の下に形成する構成を開示するものではない。 したがって,乙27発明は,構成要件1Cを備えない点において,本件発明1とは相違するから,本件発明1についての特許が特許法29条1項に違反してされたということはない。 (3) 争点3(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか)について 【原告の主張】ア被告製品の構成被告製品の構成を本件発明2の構成要件充足性の判断に必要な限りで模式図により示すと,別紙9(被告製品構造説明書(2))のとおりとなる(甲7)。 イ争点3-1(被告製品は構成要件2Cを充足するか)について被告製品において,n型窒化物半導体層に最も近い位置に配置された障壁層(39)を障壁層B1としたときに,該障壁層からp型窒化物半導体層(1)及び(2)に向かって数えて19番目の障壁層B19に当たる障壁層(3)は,p型窒化物半導体層中に設けられ,活性層よりもバンドギャップエネルギーの大きなAlを含む窒化物半導体のp型層(2)と,井戸層(4)との間に設けられているから,被告製品は構成要件2C「前記n型窒化物半導体層に最も近い位置に配置された障壁層を障壁層B1,該障壁層B1から前記p型窒化物半導体層に向かって数えてi番目(i=1,2,3,・・・L)の障壁層を障壁層Bi,とした時に,i=Lの障壁層BLが,前記p型窒化物半導体層中に設けられ,前記活性層よ ,該障壁層B1から前記p型窒化物半導体層に向かって数えてi番目(i=1,2,3,・・・L)の障壁層を障壁層Bi,とした時に,i=Lの障壁層BLが,前記p型窒化物半導体層中に設けられ,前記活性層よりもバンドギャップエネルギーの大きなAlを含む窒化物半導体の第1のp型窒化物半導体層,と前記井戸層と,の間に設けられ,」を充足する。 ウ争点3-2(被告製品は構成要件2Dを充足するか)について(ア) 障壁層(3)の膜圧(340Å)は,障壁層(5),(7),(9),(11),(13),(15),(17),(19),(21),(23),(25),(27),(29),(31),(33),(35),(37)及び(39)のいずれの膜圧(150ないし160Å)よりも大きいから,被告製品は構成要件2D「前記障壁層BLの膜圧が,i≠Lの障壁層Biの膜圧より大きく,」を充足する。 (イ) 被告らの主張について被告らは,層(40)ないし層(60)も「活性層」と認定すべきであると主張するが,本件発明2の「活性層」のうち,「Inを含む窒化物半導体からなる井戸層」に当たるためには,単に「Inを含む窒化物半導体」であるのみでは足りず,キャリア の発光再結合による発光を可能とする層でなくてはならないところ,被告製品において,層(4),(6)・・・(38)と比してバンドギャップが狭くなく,In混晶比も相対的に低い層(40),(42)・・・(60)は,「井戸層」に当たらないから,層(40)ないし層(60)が「活性層」に含まれるということはない。また,被告製品と構造が異なる製品が問題とされた他の訴訟における原告の主張は,被告製品における「活性層」の認定の根拠とはなり得ないというべきである。 被告らは,層(3)は「活性層」と認定されるべきではないと主張 構造が異なる製品が問題とされた他の訴訟における原告の主張は,被告製品における「活性層」の認定の根拠とはなり得ないというべきである。 被告らは,層(3)は「活性層」と認定されるべきではないと主張するが,被告製品における層(3)の組成及び構造は,本件明細書2において障壁層として好ましいとされた組成及び構造に合致しているし,活性層がGaN障壁層とInGaN井戸層の繰り返しである場合には,InGaN井戸層と第1のp型窒化物半導体層との間に,障壁層としてのGaNを形成すれば足り,障壁層ではないバッファ層などをあえて形成する必要はないから,層(3)は「活性層」に含まれるというべきである。 エ争点3-3(被告製品は構成要件2Fを充足するか)について(ア) エバーライトエレクトロニクス株式会社作成の分析結果報告書(乙1)における被告製品のSIMS分析の結果のうち,活性層近傍を拡大し,被告製品における各層に対応させて示すと,次図のとおりとなる(なお,Al,In,Siの各プロファイルを太線で示した。)。 ここで,活性層の最もn側にある障壁層B1(層(39))を含む,活性層のn側の約半分の領域(上記図の①,②)に含まれる複数の障壁層のSi濃度は,1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下である。 次に,Si濃度は,障壁層B11(層(19))付近において5×1016/㎤まで落ちGaN(3)SiAlGaN(2)InGaN(4)~(38)の偶数GaN(5)~(39)の奇数InGaN(40)~(60)の偶数GaN(41)~(59)の奇数BLB1InAlN①②③5E+16半導体層表面側基板側 ている。SIMSチャート上では,その後,p側に行くに連れてSiプロファイルの上昇が観察されるが,これは 奇数BLB1InAlN①②③5E+16半導体層表面側基板側 ている。SIMSチャート上では,その後,p側に行くに連れてSiプロファイルの上昇が観察されるが,これは,試料の表面汚染の影響を受けたものである(このことは,SIMSチャート上のC,H,Oの各プロファイルが同様に上昇していることからも分かる。)。この表面汚染の影響は,障壁層B11(層(19))の位置において相応に残っているから,障壁層B11(層(19))のSi濃度は5×1016/㎤未満になっているものと認められる。そして,活性層中でn型層側において高かったSi濃度が一度大きく下げた後に,意図的にSi濃度を増加させることは考え難いから,結局,活性層の最もp型にある障壁層BL(層(3))を含む,活性層のp側の約半分の領域(上記図の③)に含まれる複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/㎤未満であると認められる。 したがって,被告製品は,構成要件2F「前記障壁層B1を含む前記n型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下であり,前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が5×1016/㎤未満である,」を充足する。 (イ) 被告らの主張について被告らは,n型不純物には酸素(O)も含まれると主張して,SIMSチャート上のOプロファイルだけを考えても構成要件2Fを充足しないと主張するが,SIMSにおける酸素の検出限界は1017/㎤程度であるから,SIMSチャートの結果を見ても被告製品に酸素が含まれているとはいえないし,そもそも,被告らは,被告製品において酸素をn型ドーパントとして添加しているとも主張してないのであるから,SIMSチャート上のOプロファイルは,ドーパントでは 製品に酸素が含まれているとはいえないし,そもそも,被告らは,被告製品において酸素をn型ドーパントとして添加しているとも主張してないのであるから,SIMSチャート上のOプロファイルは,ドーパントではなく単なる異物にすぎないというべきである。 【被告らの主張】ア被告製品の構成被告製品の構成を本件発明2の構成要件充足性の判断に必要な限りで模式図により示すと,別紙10(被告製品全体模式図),別紙11(被告製品層[61-1][61- 2][61-3]付近模式図)及び別紙12(被告製品活性層(層[4~60])模式図)のとおりとなる。 イ争点3-1(被告製品は構成要件2Cを充足するか)について争点3-2において主張するとおり,被告製品において障壁層BLに相当するのは障壁層[5]であり,原告の主張する層(3)ではない。 ウ争点3-2(被告製品は構成要件2Dを充足するか)について被告製品における「活性層」は,層[3-1]ないし層[39]ではなく,層[4]ないし層[60]と把握されるべきである。なぜなら,層[40]ないし層[60]も,「Inを含む窒化物半導体からなる井戸層と窒化物半導体からなる障壁層を有する量子井戸構造」を有し(本件明細書2の【請求項1】,段落【0008】参照),具体的な組成としても一般式InαGa1-αN(0<α≦1)を充足する(本件明細書2の段落【0036】参照)上,原告自身,他の訴訟において「活性層」について「井戸層に始まり井戸層に終わる」と主張していることからすれば,層[40]ないし層[60]も「活性層」と認定すべきであるし,層[3-1]及び層[3-2]は,活性層の上に直接AlGaN層[2]を成長させることによる活性層の結晶性悪化を防止するために設けられたキャップ層[3-2]及びバッファ 活性層」と認定すべきであるし,層[3-1]及び層[3-2]は,活性層の上に直接AlGaN層[2]を成長させることによる活性層の結晶性悪化を防止するために設けられたキャップ層[3-2]及びバッファ層[3-1]であるから,「活性層」と認定されるべきではない。 そうすると,被告製品における「障壁層BL」に相当するのは層[5]であって,他の障壁層の膜圧より大きいわけではないから,被告製品は,構成要件2D「前記障壁層BLの膜圧が,i≠Lの障壁層Biの膜圧より大きく,」を充足しない。 仮に,層[3-1]及び層[3-2]までも「活性層」と認定されるとすれば,層[61-1]も「活性層」と認定されるべきであり,その場合には,層[61-1]の膜圧は,層[3-1]及び層[3-2]の膜圧よりもはるかに大きいから,やはり被告製品は,構成要件2D「前記障壁層BLの膜圧が,i≠Lの障壁層Biの膜圧より大きく,」を充足しない。 エ争点3-3(被告製品は構成要件2Fを充足するか)について (ア) 構成要件2Fは,障壁層にn型不純物をドープするか否かという製法ではなく,障壁層に含まれるn型不純物の濃度により発明の構成を特定するものであるから,構成要件2Fの充足性を判断するには,意図的にドープされたか否かにかかわらず,障壁層に含まれる全てのn型不純物の濃度を検討すべきである。 そして,本件明細書2の記載によれば,n型不純物はSiに限られるものではなく,例えば酸素(O)が含まれるところ,SIMSチャートによれば,被告製品の障壁層には,酸素が7×1016/㎤程度検出されている。そうすると,酸素の濃度だけを見ても,被告製品の障壁層には5×1016/㎤を超えるn型不純物が含まれているのであるから,被告製品は構成要件2Fを充足しない。 (イ) また, ㎤程度検出されている。そうすると,酸素の濃度だけを見ても,被告製品の障壁層には5×1016/㎤を超えるn型不純物が含まれているのであるから,被告製品は構成要件2Fを充足しない。 (イ) また,Si濃度についても,被告製品の層[5]ないし層[39]の奇数の層は,全てSiをドープして形成しており,例えば層[5]及び層[7]のドーピングの濃度は6×1016/㎤である。したがって,Si濃度について見ても,被告製品は構成要件2Fを充足しない。 (4) 争点4(本件発明2についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)についてア争点4-1(無効理由1〔サポート要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】(ア) 本件発明2の特許請求の範囲において,最もp型窒化物半導体側に設けられた最後の障壁層BLの組成は特に限定されておらず,ノンドープの障壁層も含まれるところ,最後の障壁層の膜圧が厚くなればなるほど,発光効率は減少するから(乙5),「閾値電流密度などの素子特性に優れ,且つ長寿命,高出力の窒化物半導体素子を得る」という本件発明2の作用効果を得ることができなくなる。このような構成をも含む特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていない。 (イ) 本件発明2の構成要件2Fは,障壁層B1を含むn型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度について「1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下」 と特定するものであるが,本件明細書2において,B1を含む複数の障壁層をドープで,BLを含む複数の障壁層をアンドープで成長させた実施例は実施例12のみであるところ,同実施例からは,「1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下」という数値を特定する技術的意義を理解することがで プで,BLを含む複数の障壁層をアンドープで成長させた実施例は実施例12のみであるところ,同実施例からは,「1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下」という数値を特定する技術的意義を理解することができない。そうすると,特許請求の範囲に記載された数値範囲全体にわたる十分な数の具体例が示されておらず,技術常識に照らしても,同数値範囲全体について発明の詳細な説明に記載があるということはできない。 (ウ) 以上の2点において,本件発明2についての特許は,特許法36条6項1号の規定に違反して特許されたものである。 したがって,本件発明2についての特許には,特許法123条1項4号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権2を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】(ア) 被告らの主張のうち(ア)について,乙5号証記載の計算結果が正しいかは,現実の素子を用いて検証されなければ不明というほかないし,仮に,これが正しいことを前提としても,通常の定格駆動電流を用いた場合にまで,最後の障壁層の膜圧により出力が変化することを読み取ることはできない。そもそも,本件発明2により解決すべき課題は,第1のp型窒化物半導体層の熱による井戸層への悪影響や,p型キャリアにとって十分広い空間を確保できないことによる素子寿命の低下であり,同課題を本件発明2の構成により解決できることは当業者にとって明らかである。 (イ) 被告らの主張のうち(イ)について,本件明細書2の段落【0041】には,障壁層B1を含むn型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度を5×1016/㎤以上2×1018/㎤以下とすることが,段落【0125】には,n型不純物の濃度の下限値が1×1017/㎤とな は,障壁層B1を含むn型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度を5×1016/㎤以上2×1018/㎤以下とすることが,段落【0125】には,n型不純物の濃度の下限値が1×1017/㎤となることが,それぞれ開示されているから,本件発明2が発明の詳細な説明に記載されていないということはない。 イ争点4-2(無効理由2〔実施可能要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】本件発明2は,最もp型窒化物半導体側に設けられた最後の障壁層BLの膜圧が,他の障壁層Biの膜圧よりも大きいとするが(構成要件2D),単に障壁層BLの厚さを厚くすることを超えて,「他の障壁層よりも厚い」ことの技術的意義は,本件明細書2の発明の詳細な記載や技術常識を考慮しても理解することができない。 よって,本件発明2についての特許は,特許法(平成14年法律第24号による改正前のもの。)36条4項の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明2についての特許には,特許法123条1項4号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権2を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】本件明細書2の段落【0051】の記載を当業者が参照すれば,i≠Lの障壁層Biよりも障壁層BL膜圧が大きいことの意義が,p型のキャリアが多く存在する空間を広くし,素子寿命を向上しながら,n型層側から活性層内の各井戸層までの距離を近づけて,各井戸層へのn型層側からのキャリアの注入を促進する点にあることを理解できるから,本件発明2についての特許が特許法(平成14年法律第24号による改正前のもの。)36条4項の規定に違反してされたということはない。 ウ争点4-3(無効理由3 進する点にあることを理解できるから,本件発明2についての特許が特許法(平成14年法律第24号による改正前のもの。)36条4項の規定に違反してされたということはない。 ウ争点4-3(無効理由3〔訂正要件違反〕は認められるか)について【被告らの主張】(ア) 本件発明2についての特許に関し,原告は,訂正審判事件(訂正2015-390019)において,訂正前の請求項に「前記障壁層B1を含む前記n型窒化物半導体層側の複数の障壁層がn型不純物をドープして成長させたものであり,前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体側の複数の障壁層がn型不純物をアンドープで成長させたものである」という特定事項を追加する訂正を行い(以下「第1次訂正」という。),さらに,再度の訂正審判事件(訂正2015-3900 89)において,上記特定事項を「前記障壁層B1を含む前記n型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下であり,前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が5×1016/㎤未満である,」とする訂正を行ったが(以下「第2次訂正」という。),いずれの訂正の訂正事項も,訂正前の本件明細書2の段落【0052】,【0118】ないし【0130】には記載されていない事項であるから,第1次訂正,第2次訂正は,いずれも特許法126条5項の規定に違反してされたものである。 (イ) また,第1次訂正により追加された特定事項は,物の発明について特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されたものであるが,当該特許請求の範囲の記載を,第2次訂正のように,物の構造,特性により特定する記載に改める訂正をするには,当該製造方法により製造された物が,客観的にいかなる構造,特性を有するかを立証 ものであるが,当該特許請求の範囲の記載を,第2次訂正のように,物の構造,特性により特定する記載に改める訂正をするには,当該製造方法により製造された物が,客観的にいかなる構造,特性を有するかを立証した上,訂正後の発明特定事項にかかる物の構造,特性が,上記範囲を拡張又は変更するものでないことを立証しなくてはならないというべきである。 しかるところ,「前記障壁層B1を含む前記n型窒化物半導体層側の複数の障壁層がn型不純物をドープして成長させたものであり,前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体側の複数の障壁層がn型不純物をアンドープで成長させたものである」との製造方法により製造された物が,客観的にいかなる構造,特性を有するかについては,本件明細書2の記載によっても明らかではない。 そうすると,第2次訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであって,特許法126条6項の規定に違反してされたものである。 (ウ) 以上の2点において,本件発明2についての特許には特許法123条1項8号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告らに対し,本件特許権2を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】 (ア) 被告らの主張のうち(ア)について,第1次訂正については,訂正前の本件明細書2の段落【0052】ないし【0054】の記載を根拠とするものであり,第2次訂正については,訂正前の本件明細書の段落【0041】の記載を根拠とするものである。争点4-1において主張したとおり,本件明細書2には,障壁層B1を含むn型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度を5×1016/㎤以上2×1018/㎤以下とすること及びn型不純物の濃度の下限値が1×1017/㎤となること ,本件明細書2には,障壁層B1を含むn型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度を5×1016/㎤以上2×1018/㎤以下とすること及びn型不純物の濃度の下限値が1×1017/㎤となることが,それぞれ記載されているのであるから,第1次訂正,第2次訂正とも,訂正前の明細書に記載された事項の範囲内のものであって,特許法126条5項の規定に違反してされたものではない。 (イ) 被告らの主張のうち(イ)について,訂正前の本件明細書2の段落【0045】には,「本発明において,アンドープとは意図的にドープしないことであり,窒化物半導体成長時に,n型若しくはp型不純物をドープしないで成長させるものである。この時,不純物濃度は,5×1016/㎤未満となる。」として,「アンドープで成長させ」との構成と「n型不純物濃度が5×1016/㎤未満」とが同義であることを明示しているのであるから,第2次訂正が特許請求の範囲の実質的な拡張に当たるということはない。 (5) 争点5(被告LEDの譲渡等につき原告の承諾があったか)について【被告らの主張】本件は,原告が,被告らに対して訴訟を提起することを目的に,イガラシを介して,被告LEDを被告らから購入したものである(いわば「おとり購入」というべきものである。)。被告らは,イガラシに販売した被告LED1000個の他に,被告LEDを譲渡,輸入又は譲渡の申出をしていない。 そうすると,被告らによる全ての被告LEDの譲渡,輸入又は譲渡の申出は,原告自身の意思に基づく「おとり購入」により生じたものであり,特許権者である原告の承諾に基づくものであるから,本件特許権の侵害には当たらない。 【原告の主張】 イガラシは,被告立花に対し,「砲弾型LED球」の購入を申し込んだにすぎず,エバー社製 者である原告の承諾に基づくものであるから,本件特許権の侵害には当たらない。 【原告の主張】 イガラシは,被告立花に対し,「砲弾型LED球」の購入を申し込んだにすぎず,エバー社製のLEDの購入を申し込んだものではないし,まして,型番等を指定して被告LEDの購入を申し込んだものでもないから,イガラシへの被告LEDの販売が原告による「おとり購入」によるものなどということはできない。当然のことながら,原告は,被告LEDの譲渡,輸入又は譲渡の申出を承諾したものではない。 (6) 争点6(被告LEDの譲渡等の差止め及び廃棄の必要性があるか)について【原告の主張】被告らは,イガラシに対する譲渡以外に被告LEDを譲渡等していない旨主張するが,同主張は,信用できない。また,被告立花は,原告から特許権侵害の警告を受けた後も,自社ウェブサイトにおいて,被告LEDを含むエバー社製のLEDを取り扱っている旨を依然として宣明している。これらの事情に鑑みると,いまだ被告E&Eがエバー社から被告LEDを輸入して,これを譲渡等するおそれがあり,また,被告立花が被告LEDを譲渡等するおそれがあるというべきである。 【被告らの主張】前記のとおり,本件は,原告がイガラシを介して被告LEDを購入した「おとり購入」の事案であり,被告らはイガラシに対する譲渡以外に被告LEDを譲渡等していないし,被告LEDの在庫を保有しているわけでもない。 したがって,被告らが将来被告LEDを輸入や譲渡等をする可能性はなく,差止め及び廃棄の必要性は存在しないというべきである。 (7) 争点7(損害又は不当利得の額)について【原告の主張】ア逸失利益又は実施料相当額(ア) 特許法102条2項により推定される損害の額被告らが平成19年6月 きである。 (7) 争点7(損害又は不当利得の額)について【原告の主張】ア逸失利益又は実施料相当額(ア) 特許法102条2項により推定される損害の額被告らが平成19年6月22日から平成26年4月10日までの間に被告LEDを販売したことにより得た利益は,被告E&Eについて10万5000円(売上高105万円の10パーセント),被告立花について3万5000円(売上高35万 円の10パーセント)である。特許法102条2項により,これらの利益額は,本件特許権1又は同2が侵害されたことにより原告が受けた損害の額と推定される。 (イ) 特許法102条3項により算定される損害の額上記(ア)のとおり,被告らは,平成19年6月22日から平成26年4月10日までの間に,本件発明1及び同2の実施品である被告LEDを販売して,被告E&Eについて105万円の,被告立花について35万円の各売上げをあげたところ,本件発明1及び同2の実施に対し特許権者である原告が受けるべき金銭の額は,それぞれ,同売上高の10パーセント(被告E&Eについて10万5000円,被告立花について3万5000円)を下回ることはない。特許法102条3項により,原告は,これらの額を原告が受けた損害の額として請求することができる。 (ウ) 連帯支払義務被告立花が被告E&Eから被告LEDを仕入れてこれを販売していることからすれば,被告立花による被告LEDの販売によって原告が被った損害については,被告らが連帯してこれを賠償する責任を負うというべきである。 (エ) 不当利得の額上記(イ)のとおり,本件発明1及び同2の実施に対し特許権者である原告が受けるべき金銭の額は,被告LEDの売上高の10パーセントであるところ,被告は,原告に実施料を支払うことな ) 不当利得の額上記(イ)のとおり,本件発明1及び同2の実施に対し特許権者である原告が受けるべき金銭の額は,被告LEDの売上高の10パーセントであるところ,被告は,原告に実施料を支払うことなく被告LEDを販売して売上げをあげたのであるから,被告E&Eについて10万5000円,被告立花について3万5000円を利得し,同額の損失が原告に発生している。 (オ) 逸失利益額又は実施料相当額の小括原告は,不法行為による損害賠償(ただし,上記(ア)と上記(イ)とを選択的に主張する。)と不当利得返還(上記(エ))とを選択的に請求するものであり,また,本件発明1の実施による損害賠償(又は不当利得返還)と本件発明2の実施による損害賠償(又は不当利得返還)とを選択的に請求するものである。 イ弁護士費用 原告が本件訴訟追行のために要した弁護士費用のうち,被告らによる特許権侵害の不法行為と相当因果関係にある額は,本件特許権1の侵害について50万円(被告らそれぞれにつき25万円),本件特許権2の侵害について50万円(被告らそれぞれにつき25万円)の合計100万円である(前記ア(ウ)のとおり,被告立花が被告E&Eから被告LEDを仕入れてこれを販売していることからすれば,被告立花による被告LEDの販売によって原告が被った損害については,被告らが連帯してこれを賠償する責任を負うというべきである。)。 【被告らの主張】ア逸失利益について(ア) 損害の不発生前記のとおり,被告らが被告LEDを譲渡等したのは,イガラシに対する1000個のみであり,当該1000個の被告LEDは,原告が訴訟の証拠とするために全て受け取っている(また,その一部は,被告立花がイガラシから回収した。)。 そして,当該1000個以外に,被告LEDは市 0個のみであり,当該1000個の被告LEDは,原告が訴訟の証拠とするために全て受け取っている(また,その一部は,被告立花がイガラシから回収した。)。 そして,当該1000個以外に,被告LEDは市場に出回っていない。したがって,そもそも,被告LEDが譲渡等されなければ,原告の製品が販売されていたであろうとの条件関係が存在しないので,原告に逸失利益の損害は生じておらず,特許法102条2項を適用する前提を欠くというべきである。 被告立花は,被告LEDを販売した売上代金(2万円)を全額イガラシに返金しているので,そもそも被告立花が受けた利益は零であるが,上記返金前の被告立花の利益が被告LEDの売上高(上記のとおり,2万円である。)の10パーセントであることは争わない。 被告E&Eは,被告LEDを販売したことによる同被告の利益の額が10万5000円であることは争わない。 (イ) 本件特許権1及び同2の寄与率を考慮した損害額の推定の覆滅仮に,原告に何らかの逸失利益の損害が生じているとしても,原告は,被告LEDについて原告が保有する9件の特許権を侵害するなどと主張していること,被告 LEDは,本件発明1の作用効果を奏しないか,奏したとしても極めてわずかな効果しか奏しないこと,被告LEDは,被告製品(窒化物半導体素子)にさらなる部材を付加していること,有色LED市場における原告のシェアなどからすれば,本件発明1が被告らの得た利益に寄与した割合は,5パーセントを上回ることはない。 よって,特許法102条2項により被告らが得た利益の額が,原告が受けた損害の額と推定されるとしても,その95パーセント相当額については,同推定が覆滅されるべきである。 イ実施料率について本件発明1及び同2の実施に対し特許権者である原告が受けるべ 告が受けた損害の額と推定されるとしても,その95パーセント相当額については,同推定が覆滅されるべきである。 イ実施料率について本件発明1及び同2の実施に対し特許権者である原告が受けるべき金銭の額が売上高の10パーセントを下回ることはないとの原告の主張は否認し,争う。 ウ弁護士費用について本件と相当因果関係のある弁護士費用の損害額が,本件特許権1の侵害につき50万円,本件特許権2の侵害につき50万円であるとの原告の主張は否認し,争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件発明1の技術的範囲に属するか)について(1) 被告製品の構成について証拠(甲6,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,基板上にn型層,活性層,p型層が積層された構造を備えた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であり,p型層と,n型層(別紙8〔被告製品構造説明書(1)〕にいう層(61),別紙11〔被告製品層[61-1][61-2][61-3]付近模式図〕にいう層[61-1]ないし層[61-3])が一部露出された表面に,それぞれ正電極と負電極が形成されており,前記n型層中には,前記n型層が一部露出された表面よりも基板側に(別紙8にいう層(61B),別紙11にいう層[61-2]と層[61-3]の境界付近),Si濃度が高い領域(以下「高Si濃度領域」という。)が存在していることが認められる。 (2) 争点1-1(被告製品は構成要件1Bを充足するか)及び争点1-2(被告製品は構成要件1Cを充足するか)について ア前記のとおり,被告製品のn型層中には,高Si濃度領域が存在するところ,電気情報通信学会技術研究報告に掲載された加藤久喜ほか「SiドープGaNを用いた青色LEDの特性」(甲9)には,SiドープGaNの電気的 おり,被告製品のn型層中には,高Si濃度領域が存在するところ,電気情報通信学会技術研究報告に掲載された加藤久喜ほか「SiドープGaNを用いた青色LEDの特性」(甲9)には,SiドープGaNの電気的特性について,「図-4にSiH4流量に対する室温における自由電子濃度N及びSi濃度の関係を示す。図から明らかなように,GaN中に取り込まれるSiは,SiH4流量に比例しており線型制御が可能であることがわかった。そしてSiH4流量すなわちSi濃度に比例して室温での自由電子濃度は増加し,5×1016から2×1018cm-3まで自由に制御できた。」との記載があり,これによれば,被告製品における高Si濃度領域の電子キャリア濃度は,n型層中の他の領域よりも高いものと推認でき,同推認を覆すに足りる証拠はない。 この点について,被告らは,被告製品中の高Si濃度領域は,SiH4の流量を変化させて生じたものではないから,「Si濃度と電子キャリア濃度が相関する」という立論が当然に成り立つものではないと主張するが,前記文献には,GaN中に取り込まれるSiがSiH4流量に比例することと,Si濃度に比例して室温での自由電子濃度が増加することとを区別して記載しているのであるから,仮に,被告製品の高Si濃度領域が,SiH4の流量を変化させて生じたものではないとしても,そのことをもって上記認定が左右されるものではない。 イ次に,被告製品中の高Si濃度領域は,下図(原告作成の分析結果報告書〔甲6の1〕の図2(3)-1のSIMSチャート。ただし赤色の点線,矢印及び黒字による吹き出しを付した。)の深さ(Depth)3μm付近から明らかなとおり,その上下に存する領域(Siの濃度がほぼ一定している領域)とは異なり,不純物たるSi濃度が,次第に増大した後に減少していることが認め 出しを付した。)の深さ(Depth)3μm付近から明らかなとおり,その上下に存する領域(Siの濃度がほぼ一定している領域)とは異なり,不純物たるSi濃度が,次第に増大した後に減少していることが認められ,証拠(甲23ないし25)によれば,半導体の分野において,このように濃度が変化している領域を「一つの層」と観念することがあるものと認められるから,被告製品中の高Si濃度領域も,「一つの層」と観念して差し支えないというべきである。 ウ以上によれば,被告製品(別紙8〔被告製品構造説明書(1)〕を用いてその構造を説明する。)は,そのn型層(61)中に,n型層(61A)と,これに接して,これよりも電子キャリア濃度が大きいn型層(61B)を有し,n型層(61)中,基板と露出表面の間にあるn型層領域において,露出表面が形成されたn型層(61A)と,n型層(61A)の基板側に設けられたn型層(61B)を有すると認められる。 そして,被告製品の「n型層(61A)」が本件発明1の「第一のn型層」に,被告製品の「n型層(61B)」が本件発明1の「第二のn型層」に,それぞれ当たるといえるから,被告製品は,構成要件1B「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有すると共に,」,同1C「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」をいずれも充足高濃度Si領域Si濃度一定領域Si濃度一定領域 する。 エなお,被告は,被告製品における高Si濃度領域は,これが属するn型層の他の領域と比べて約3倍程度のSi濃度しかなく 高濃度Si領域Si濃度一定領域Si濃度一定領域 する。 エなお,被告は,被告製品における高Si濃度領域は,これが属するn型層の他の領域と比べて約3倍程度のSi濃度しかなく,本件発明1の作用効果である①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③Vfが明らかに低下する,という効果を奏しないから,「第二のn型層」に当たらないと主張する。 しかしながら,そもそも,特許請求の範囲には,第一のn型層と第二のn型層との電子キャリア濃度の差を限定する記載はない上,証拠(甲11)によれば,第二のn型層のSi濃度が第一のn型層のSi濃度の3倍程度にとどまる発光素子であっても,第二のn型層が存在しない発光素子と比して,少なくともVf値の低下が見られたというのであるから,被告製品の高Si濃度領域が,本件発明1の「第二のn型層」に当たるとの認定は妨げられないというべきである。 (3) 争点1の小括前記前提事実及び上記認定説示によれば,被告製品は,本件発明1の構成要件を全て充足するから,本件発明1の技術的範囲に属するものと認められる。 2 争点2(本件発明1についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(1) 争点2-1(無効理由1〔乙第6号証を主引例とする進歩性欠如〕は認められるか)についてア本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された乙6公報には,次の記載がある(引用に際し,乙6公報中の段落番号等を【】で示す。)。 「【請求項1】GaXAl1-XN(但しXは0<X≦1の範囲にある。)よりなるバッファ層と,Znがドープされた発光する活性層と,Siがドープされたn型のクラッド層と,さらに,Mgがドープされたp型のクラッド層とを具備していることを特徴とする青色発光ダイオー ある。)よりなるバッファ層と,Znがドープされた発光する活性層と,Siがドープされたn型のクラッド層と,さらに,Mgがドープされたp型のクラッド層とを具備していることを特徴とする青色発光ダイオード。」「【産業上の利用分野】本発明は,一般式がGaXAl1-XN(0≦X≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色発光ダイオードに係り,特に発 光効率が高く,高輝度,かつ色純度の良い,青色発光ダイオードに関するものである。」【0001】「・・・本発明は上記事情を鑑みて成されたものであり,上記i型層をp型層とn型層ではさむ構造の青色発光ダイオードを実現することにより,高効率で,高輝度かつ色純度等の発光特性に優れた青色発光ダイオードを提供することを目的とする。」【0008】「【課題を解決するための手段】本発明は,サファイア基板上に,一般式がGaXAl1-XN(0≦X≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体が積層された構造を有する青色発光ダイオードにおいて,GaXAl1-XN(但しXは0<X≦1の範囲にある。)よりなるバッファ層と,Znがドープされた発光する活性層と,Siがドープされたn型のクラッド層と,さらに,Mgがドープされたp型のクラッド層とを具備していることを特徴とするものである。」【0009】「その構造の一例を図1にしめす。本発明の青色発光ダイオードは,サファイア基板1上に,GaXAl1-XN(0<X≦1)よりなるバッファ層12,Siがドープされたn型のクラッド層であるSiドープn型GaXAl1-XN層3(以下n型クラッド層という。),Znがドープされた発光する活性層であるZnドープGaXAl1-XN層14(以下活性層という。),Mgがドープされたp型のクラッド層であるMgドープp型GaXAl (以下n型クラッド層という。),Znがドープされた発光する活性層であるZnドープGaXAl1-XN層14(以下活性層という。),Mgがドープされたp型のクラッド層であるMgドープp型GaXAl1-XN層5(以下p型クラッド層という。)が順に積層され,さらに,3および5から電極が取り出された構造となっている。」【0010】イ乙6公報の上記アの記載によれば,乙6公報には次の発明(乙6発明)が記載されているものと認められる。 「サファイア基板上にn型クラッド層,活性層,p型クラッド層が積層された構 造を備え,該p型クラッド層上と,該n型クラッド層が一部露出された表面に,それぞれ電極が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」ウ乙6発明の「サファイア基板」は本件発明1の「基板」に,乙6発明の「n型クラッド層」は本件発明1の「n型層」に,乙6発明の「p型クラッド層」は本件発明1の「p型層」に,乙6発明の「電極」は本件発明1の「正電極と負電極」に,それぞれ該当するといえるから,本件発明1と乙6発明とは,次の点で相違し,その余の点において一致するものと認められる。 (ア) 本件発明1は「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有する」のに対し,乙6発明の「n型クラッド層」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点6-1」という。)。 (イ) 本件発明1は「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」のに対し,乙6発明の「n型クラッド層」がかかる層構造を有するかが明記されていない点( 一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」のに対し,乙6発明の「n型クラッド層」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点6-2」という。)エ相違点に係る容易想到性について被告らは,窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層において,高キャリア濃度n型層を低キャリア濃度n型層に接して基板側に配置するとの層構造は,本件特許1の原出願日当時における周知技術(少なくとも公知技術)であったとして,乙6発明に同周知技術又は公知技術を適用して,相違点6-1に係る本件発明1の層構造とすることは,当業者が容易に想到できた,また,そのような層構造を採用した際に,具体的に各層がどのような配置となるかは,n型層をどの程度エッチングして露出させるかという設計的事項にすぎないから,相違点6-2に係る本件発明1の層構造とすることも,当業者が容易に想到できたなどと主張する。 確かに,本件特許1の原出願日前に日本国内で頒布されたと認められる乙7号証 ないし乙12号証には,窒化ガリウム系化合物半導体素子のn型層中において,電子キャリア濃度の小さいn型層(以下「n-層」という。)に接して,電子キャリア濃度の大きいn型層(以下「n+層」という。)が形成されている構成が開示されているものと認められる。しかしながら,乙7号証ないし乙12号証に開示された構成は,いずれも,n-層ではなくn+層に負電極用の露出表面が形成され,かつ,同露出表面が形成されたn+層に接して,当該n+層の上側に設けられたn-層が形成された構成が開示されているにとどまり,「電子キャリア濃度が小さくかつ露出表面が形成されたn-層と,これに接してこれよりも基板側に電子キャリア濃度が大きいn+層が設けられて に設けられたn-層が形成された構成が開示されているにとどまり,「電子キャリア濃度が小さくかつ露出表面が形成されたn-層と,これに接してこれよりも基板側に電子キャリア濃度が大きいn+層が設けられている」という,相違点6-2に係る本件発明1の構成は開示されていないのであるから,乙6発明に乙7号証ないし乙12号証に開示された構成を適用しても,相違点6-2に係る本件発明1の構成が導かれることはない。 この点について,被告らは,高キャリア濃度n型層と低キャリア濃度n型層とをどのような配置とするかは,n型層をどの程度エッチングして露出させるかという設計的事項にすぎないなどと主張するが,前記のとおり,乙7号証ないし乙12号証に開示された構成においては,いずれもn+層に負電極用の露出表面が形成されているのであって,これらの証拠をもって,n+層ではなくn-層に電極形成用の露出表面を形成することまでもが設計的事項にすぎないなどということはできない。 なお,乙27公報の段落【0025】には,「ドナー不純物をドーピングする場合,その濃度に関してはn層に均一にドーピングしても良い。又,n層のオーム電極形成を容易にするためにn型層成長初期に高濃度にドーピングし,pn接合付近ではドーピングしないか或いは低濃度にドーピングしても良い。」との記載があるが,「n層のオーム電極形成を容易にするために」との記載があることから明らかなとおり,同記載は,高濃度にドーピングした層に電極を形成することが含意されているのであり,乙27公報をもっても,低濃度にドーピングした層に電極用の露出表面を形成し,その下に接して高濃度にドーピングした層を設ける配置とすることが 設計的事項にすぎないと認めることはできないというべきである。 以上によれば,本件発明1が,乙6発明に被告ら 面を形成し,その下に接して高濃度にドーピングした層を設ける配置とすることが 設計的事項にすぎないと認めることはできないというべきである。 以上によれば,本件発明1が,乙6発明に被告ら主張の周知技術又は公知技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであったとは認められない(なお,被告らは,乙6発明に乙13公報記載の構成を組み合わせるかのような主張もするが,乙6発明に乙13公報記載の構成を組み合わせても,上記各相違点に係る本件発明1の構成に至らないことは明らかである。)。 オ争点2-1の小括したがって,本件発明1についての特許が,被告らの主張する無効理由1によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (2) 争点2-2(無効理由2〔乙第13号証を主引例とする進歩性欠如〕は認められるか)についてア本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された乙13公報には,次の記載がある(引用に際し,乙13公報中の段落番号等を【】で示す。)。 「【請求項1】 発光層中に【化1】層を少なくとも一層含む半導体発光素子において,発光層と成長基板との間に【化2】層を設けたことを特徴とする半導体発光素子。 【請求項2】 前記発光層中の【化1】層に接して,これよりバンドギャップエネルギが大きい【化3】層を有することを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。」「【産業上の利用分野】本発明は,可視から紫外で発光する化合物半導体発光素子用構造に関する。」【0001】「【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の問題点を解決するために提案されたもので,その目的は,可視から紫外にわたる広い波長域における高効率半導体発光素子を提供することにある。さらに詳述すれば,本発明は,発光 しようとする課題】本発明は以上の問題点を解決するために提案されたもので,その目的は,可視から紫外にわたる広い波長域における高効率半導体発光素子を提供することにある。さらに詳述すれば,本発明は,発光層内へ電子及び正孔を閉じ込めることが可能である上,発光層に用いた【化1】層の結晶性が自動的に向上する半導体発光素子を提供することにある。」【0005】 「【課題を解決するための手段】本発明の半導体発光素子は,発光層中に【化1】層を少なくとも一層含む半導体発光素子において,発光層と成長基板との間に【化2】層を設けたことを最も主要な特徴とする。また,本発明の第2の主要な特徴は,前記発光層中の【化1】層に接してこれと格子定数の異なる【化3】層を設けたことにある。従来のGaNホモ接合ダイオード及びGaAlN/GaNヘテロ接合ダイオードとは,発光層中にInを含む層を少なくとも一層含む点が異なる。さらに,従来のホモ接合ダイオードとは,発光層中にヘテロ接合界面を有する点が異なる。従来のInGaAlN/InGaNヘテロ接合ダイオードとは,格子不整合条件下で素子を作製する点が異なるものである。」【0006】「〔実施例1〕(格子不整合ダブルヘテロ構造及び単一量子井戸構造)図1は,本発明の第1の実施例の構造を示す図であって,61はサファイア(0001)基板,62は膜厚5μm及び電子濃度1019cm-3のSiドープn型GaN電流注入層,63は膜厚0.5μmのアンドープIn0.1Ga0.9N発光層,64は膜厚2μm及びホール濃度1018cm-3のMgドープp型GaN電流注入層,65はn側電極,66はp側電極である。電極65に対して正の電圧を66に加えることにより,電子及び正孔を発光層63に注入した。その結果,立ち上がり電圧4Vの電流対電 Mgドープp型GaN電流注入層,65はn側電極,66はp側電極である。電極65に対して正の電圧を66に加えることにより,電子及び正孔を発光層63に注入した。その結果,立ち上がり電圧4Vの電流対電圧特性が得られ,波長380nm帯にのみ発光ピークを持つ発光を観測できた。最大光出力は1.6mWであり,外部量子効率は2%であった。また,InGaN発光層63の組成を変化することによって,発光波長を600nmまで長波長化することができた。」【0010】イ乙13公報の上記アの記載によれば,乙13公報には次の発明(乙13発明) が記載されているものと認められる。 「サファイア基板61上にSiドープn型GaN電流注入層62,アンドープIn0.1Ga0.9N発光層63,Mgドープp型GaN電流注入層64が積層された構造を備え,該Mgドープp型GaN電流注入層64上と,該Siドープn型GaN電流注入層62が一部露出された表面に,それぞれp側電極66とn側電極65が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」ウ乙13発明の「サファイア基板61」は本件発明1の「基板」に,乙13発明の「Siドープn型GaN電流注入層62」は本件発明1の「n型層」に,乙13発明の「アンドープIn0.1Ga0.9N発光層63」は本件発明1の「活性層」に,乙13発明の「Mgドープp型GaN電流注入層64」は本件発明1の「p型層」に,乙13発明の「p側電極66」は本件発明1の「正電極」に,乙13発明の「n側電極65」は本件発明1の「負電極」に,それぞれ該当するといえるから,本件発明1と乙13発明とは,次の点において相違し,その余の点において一致するものと認められる。 (ア) 本件発明1は「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn えるから,本件発明1と乙13発明とは,次の点において相違し,その余の点において一致するものと認められる。 (ア) 本件発明1は「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有する」のに対し,乙13発明の「Siドープn型GaN電流注入層62」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点13-1」という。)。 (イ) 本件発明1は「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」のに対し,乙13発明の「Siドープn型GaN電流注入層62」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点13-2」という。)エ相違点に係る容易想到性について上記相違点13-1及び同13-2は,争点2-1において検討した相違点6-1及び同6-2と実質的に異なるところがないところ,既に認定説示したとおり, 乙7号証ないし乙12号証には,「電子キャリア濃度が小さくかつ露出表面が形成されたn-層と,これに接してこれよりも基板側に電子キャリア濃度が大きいn+層が設けられている」という,相違点13-2(相違点6-2と実質的に同一である。)に係る構成は開示されていないのであるから,乙13発明に乙7号証ないし乙12号証に開示された構成を適用しても,相違点13-2に係る本件発明1の構成が導かれることはない。また,乙7号証ないし乙12号証及び乙27公報をもっても,低濃度にドーピングした層に電極用の露出表面を形成し,その下に接して高濃度にドーピングした層を設ける配置とすることが設計的事項にすぎないと認めることはできない。したがって 及び乙27公報をもっても,低濃度にドーピングした層に電極用の露出表面を形成し,その下に接して高濃度にドーピングした層を設ける配置とすることが設計的事項にすぎないと認めることはできない。したがって,本件発明1が,乙13発明に周知技術又は公知技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであったとは認められない。 オ争点2-2の小括したがって,本件発明1についての特許が,被告らの主張する無効理由2によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (3) 争点2-3(無効理由3〔サポート要件違反〕は認められるか)についてア被告らは,本件発明1の作用効果である①均一な面発光が得られ,②発光出力が向上し,③Vf(順方向電圧)が「明らかに」低下するという作用効果を奏しない領域が,形式的に「第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい」ことを理由に「第二のn型層」に当たるというのであれば,特許請求の範囲には,発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないというべきであるし,発明の詳細な説明に開示された内容を過度に拡張ないし一般化するものであるから,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載したものでないと主張する。 イそこで検討するに,本件明細書1には,次の記載がある(引用に際し,本件明細書1の段落番号等を【】で示す。)。 「本発明はレーザダイオード(LD),発光ダイオード(LED)等の発光素子に使用される窒化ガリウム系化合物半導体(InaAlbGa1-a-bN,0≦a,0 ≦b,a+b≦1)よりなる発光素子に関する。」【0001】「従って本発明はこのような事情を鑑みてなされてものであり,その目的とするところは,ダブルへテロ,シングルへテロ等,少なくともn型層が活性 b,a+b≦1)よりなる発光素子に関する。」【0001】「従って本発明はこのような事情を鑑みてなされてものであり,その目的とするところは,ダブルへテロ,シングルへテロ等,少なくともn型層が活性層と基板との間に形成された構造を備える窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において,まず第一に活性層より均一な発光を得て,素子の光度,出力を向上させることにあり,第二にVfをさらに低下させて,発光効率を向上させることにある。」【0006】「【課題を解決するための手段】我々はn型層にさらにキャリア濃度の高い層を介在させることにより,上記問題が解決できることを見いだした。即ち,本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は,基板上にn型層,活性層,p型層が積層された構造備え,p型層上と,n型層が一部露出された表面に,それぞれ電極が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって,前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有すると共に,前記露出されたn型層表面に形成された電極から供給された電子が,前記第二のn型層中で平行に供給若しくは移動する窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」【0007】「第二のn型層33の電子キャリア濃度は1×1018/cm3~1×1022/cm3の範囲に調整することが好ましく,また第二のn型層33よりも電子キャリア濃度の小さい第一のn型層は1×1016/cm3~1×1019/cm3の範囲に調整することが好ましい。これらの電子キャリア濃度は,前記のように第二のn型層にSi,Ge,Sn,C等のn型ドーパントをドープすることにより調整可能である。第二のn型層33の電子キャリア濃度が1×1018/cm3よりも小さいと,電子を広げる作用が得られにくくなり 二のn型層にSi,Ge,Sn,C等のn型ドーパントをドープすることにより調整可能である。第二のn型層33の電子キャリア濃度が1×1018/cm3よりも小さいと,電子を広げる作用が得られにくくなり均一な活性層の発光が得られにくく,1×1022/cm3よりも大きいと結晶性が悪くなり,発光素子の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。 また第一のn型層についても電子キャリア濃度が1×1016/cm3よりも小さいと活性層自体の発光が得られにくく,また1×1019/cm3よりも大きいと1μm以上の厚膜を形成した際に結晶性が悪くなる傾向にあり,素子の出力を低下させる恐 れがあるからである。」【0016】「・・・図5は本発明の他の実施例の発光素子の構造を示す模式断面図である。 これは第一のn型層3に形成された負電極8と基板1との間に,第二のn型層33が形成され,第二のn型層33と負電極8との距離が接近していることを示している。本来であれば,電極8をキャリア濃度の大きい第二のn型層33の表面に形成できれば,例えば図4と比較して,電子がキャリア濃度の大きい第二のn型層33を通って流れるので,発光素子のVfを低下させることができる。しかしながら,サファイアのような絶縁性基板を用いた場合,エッチングを第二のn型層33で止めることが生産技術上困難であるため,図5のように第二のn型層33と負電極8との距離を短くして,電極8から注入された電子がキャリア濃度の大きい第二のn型層33を通ることにより,Vfを低下させることが可能となる。」【0019】「さらに,・・・第二のn型層33を,n型層の電極形成面と基板との間に形成することにより効果的にVfを低下させることができる。なぜなら,SiC,ZnO,Si等の導電性基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体を成長した構 二のn型層33を,n型層の電極形成面と基板との間に形成することにより効果的にVfを低下させることができる。なぜなら,SiC,ZnO,Si等の導電性基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体を成長した構造の発光素子であれば,n型層の電極は基板側に形成でき,n層側の電子は活性層に対し垂直に供給される。それに対し前記のようにサファイア基板を有する素子は,活性層に対し平行に供給される。垂直に供給される電子がn型層を移動する距離はせいぜい数μmであるのに対し,平行に供給される電子の移動距離は数十μm~数百μmもある。従って電子が平行に供給される素子において,電子が平行に供給される第二のn型層のキャリア濃度を大きくすることにより,電子が移動しやすくなるのでVfを低下させることができる。」【0020】ウ以上によれば,本件明細書1には,n型層が活性層と基板との間に形成された構造を備える窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において,n型層中に更にキャリア濃度の高い層(第二のn型層)を介在させること,さらに,第二のn型層をn型層の電極形成面と基板との間に形成することにより,エッチングを第二のn型層上で止めることの技術上の困難性を補いつつ,電極から注入された電子が第二の n型層を通ることにより,また,電子の垂直方向と水平方向の移動距離を調整することにより,Vfを低下させることができるという技術的思想が明確に記載されているし,本件明細書1の他の記載(例えば段落【0014】)も斟酌すれば,電子が第二のn型層中に均一に広がることにより,活性層から均一な発光を得るという技術的思想も記載されているということができる。さらに,段落【0016】には,第一のn型層及び第二のn型層について好ましい電子キャリア濃度についても記載されている。 そうすると,特許請 るという技術的思想も記載されているということができる。さらに,段落【0016】には,第一のn型層及び第二のn型層について好ましい電子キャリア濃度についても記載されている。 そうすると,特許請求の範囲に記載された本件発明1は,これら本件明細書1の記載により実質的に裏付けられているといえ,「第二のn型層」の電子キャリア濃度について特許請求の範囲に限定がない点についても,上記段落【0016】の記載や当業者の技術常識からその意義を把握することが可能というべきであるから,本件発明1が,発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。 エ争点2-3の小括したがって,本件発明1についての特許が,被告らの主張する無効理由3によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (4) 争点2-4(無効理由4〔実施可能要件違反〕は認められるか)について被告らは,①本件明細書1の記載をみても,どのような構成とすれば,被告製品のような濃度差の小さいSiスパイクでもなお本件発明1の作用効果を奏することができるのか,当業者において理解することができない,②本件明細書1に実施例として記載されている「1E+20 atom/cm3」や「5E+20 atom/cm3」など極めて高い電子キャリアを有する第二のn型層を得るための具体的な製造方法は,本件明細書1には記載されておらず,当業者において理解することができないなどとして,本件明細書1の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないと主張する。 しかしながら,上記(3)において認定説示したところによれば,当業者は,本件明細書1の記載と技術常識に基づいて本件発明1の意義を把握することができ,本 件発明1に係る半導 と主張する。 しかしながら,上記(3)において認定説示したところによれば,当業者は,本件明細書1の記載と技術常識に基づいて本件発明1の意義を把握することができ,本 件発明1に係る半導体発光素子を適宜製造し,使用することができるものと認めるのが相当である(なお,実施例に記載された「1E+20 atom/cm3 」や「5E+20atom/cm3」という電子キャリア濃度を得る製造方法が具体的に記載されていないことのみをもって,直ちに,本件発明1自体を実施することができないとはいえない。)。 したがって,本件発明1についての特許が,被告らの主張する無効理由4によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (5) 争点2-5(無効理由5〔乙第27号証による新規性欠如〕は認められるか)についてア本件特許1の原出願日より前に日本国内で頒布された乙27公報には,次の記載がある(引用に際し,乙27公報中の段落番号等を【】で示す。)。 「【産業上の利用分野】本発明は,可視単波長,特に,青色領域から紫色領域まで,及び紫外光領域で発光可能な半導体レーザダイオードに関する。」【0001】「【課題を解決するための手段】本第1発明は,n型伝導性を示す窒化ガリウム系化合物半導体((AlxGa1-x)yIn1-yN:0≦x≦1,0≦y≦1)から成るn層と,p型伝導性を示す窒化ガリウム系化合物半導体((Alx’Ga1-x’)y’In1-y’N:0≦x’≦1,0≦y’≦1)(x=x’またはx≠x’,y=y’またはy≠y’)から成るp層とが接合された少なくとも1つのpn接合を設けたことを特徴としている。」【0008】「まず,同一組成同士の結晶によるpn接合構造を作製する場合につき述べる。・・・」【0022】「 成るp層とが接合された少なくとも1つのpn接合を設けたことを特徴としている。」【0008】「まず,同一組成同士の結晶によるpn接合構造を作製する場合につき述べる。・・・」【0022】「ドナー不純物をドーピングする場合,その濃度に関してはn層に均一にドーピングしても良い。又,n層のオーム性電極形成を容易にするためにn層成長初期に高濃度にドーピングし,pn接合付近ではドーピングしないか或いは低濃度にドーピングしても良い。」【0025】「以上が同一組成の結晶によるpn接合構造の半導体レーザダイオードを作製す る場合の基本的方法である。異種混晶組成の結晶の接合,いわゆるヘテロ接合を利用した素子を作製する場合にも,pn接合を形成するという点では上記同一混晶組成の結晶の接合を利用する場合と同様である。」【0032】「ヘテロ接合を利用する場合も,同一組成の結晶によるpn接合の場合と同様に,オーム性電極組成を容易にするため電極と接触する部分付近のキャリア濃度は高濃度にしても良い。」【0038】「【実施例】以下,本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。((AlxGa1-x)yIn1-yN:0≦x≦1,0≦y≦1)半導体レーザダイオード用単結晶の作製には横型有機金属化合物気相成長装置を用いた。以下基板としてサファイア,Si,6H-SiC及びGaNを用いた場合各々について成長手順を示す。」【0040】「(1)サファイア基板の場合図1は,サファイア基板を用いた半導体レーザダイオードの構造を示した断面図である。図1において,(0001)面を結晶成長面とするサファイア基板1を有機洗浄の後,結晶成長装置の結晶成長部に設置する。・・・」【0041】「次に,・・・サファイア基板1上に50nm程度の膜厚を持つAl て,(0001)面を結晶成長面とするサファイア基板1を有機洗浄の後,結晶成長装置の結晶成長部に設置する。・・・」【0041】「次に,・・・サファイア基板1上に50nm程度の膜厚を持つAlN層2を形成する。次に,・・・Siドープn型GaAlN層3(n層)を成長する。」【0042】「・・・GaAlN層3の表面の一部をSiO2でマスクした後,・・・SiO2でマスクされていない部分に厚さ0.5μmのGaN層4を成長させる。次に,・・・ドープGaAlN層5(p層)を0.5μm成長する。」【0043】「次に,ドープGaAlN層5(p層)の窓8の部分と,Siドープn型GaAlN層3(n層)に,それぞれ,金属電極を形成する。・・・」【0045】イ乙27公報の上記アの記載によれば,乙27公報には次の発明(乙27発明) が記載されているものと認められる。 「サファイア基板上にSiドープn型GaAlN層3,GaN層4,ドープGaAlN層5が積層された構造を備え,該Siドープn型GaAlN層3上と,該ドープGaAlN層5が一部露出された表面に,それぞれ金属電極が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。」ウ乙27発明の「サファイア基板」は本件発明1の「基板」に,乙27発明の「Siドープn型GaAlN層3」は本件発明1の「n型層」に,乙27発明の「GaN層4」は本件発明1の「活性層」に,乙27発明の「ドープGaAlN層5」は本件発明1の「p型層」に,乙27発明の「金属電極」は本件発明1の「正電極と負電極」に,それぞれ該当するといえるから,本件発明1と乙27発明は,「サファイア基板上にn型層,活性層,p型層が堆積された構造を備え,該n型層上と,該p型層が一部露出された表面に,それぞれ正電極と負電極が設けられた窒化ガ るといえるから,本件発明1と乙27発明は,「サファイア基板上にn型層,活性層,p型層が堆積された構造を備え,該n型層上と,該p型層が一部露出された表面に,それぞれ正電極と負電極が設けられた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」である点において一致し,次の点において相違していると認められる。 (ア) 本件発明1は「前記n型層中に,第一のn型層と,第一のn型層に接して,第一のn型層よりも電子キャリア濃度が大きい第二のn型層と,を有する」のに対し,乙27発明の「Siドープn型GaAlN層3」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点27-1」という。)。 (イ) 本件発明1は「前記n型層中の基板と前記露出表面の間にあるn型層領域において,前記第一のn型層であって前記露出表面が形成された層と,該第一のn型層の基板側に設けられた前記第二のn型層と,を有する」のに対し,乙27発明の「Siドープn型GaAlN層3」がかかる層構造を有するかが明記されていない点(以下「相違点27-2」という。)エ上記相違点について,被告らは,乙27公報の段落【0025】【0038】に記載された態様でSiドープn型GaAlN層3をドーピングすれば,基板側に高濃度にドーピングされた層が,ドーピングしないか低濃度にドーピングされた層 に接して形成されるから,乙27発明は本件発明1と同一であると主張する。 しかしながら,乙27公報の段落【0025】の「n層のオーム性電極形成を容易にするためにn層成長初期に高濃度にドーピングし,pn接合付近ではドーピングしないか或いは低濃度にドーピングしても良い。」との記載は,段落【0032】の記載からも明らかなように,「同一組成の結晶によるpn接合構造の半導体レーザダイオードを作製する場合」に関するもの ピングしないか或いは低濃度にドーピングしても良い。」との記載は,段落【0032】の記載からも明らかなように,「同一組成の結晶によるpn接合構造の半導体レーザダイオードを作製する場合」に関するものであって,「サファイア基板上にSiドープn型GaAlN層3,GaN層4,ドープGaAlN層5が積層された構造を備え」た窒化ガリウム系化合物半導体発光素子についての記載ではない。 また,上記の点を措いて,段落【0025】の上記記載や,段落【0038】の「ヘテロ接合を利用する場合も,同一組成の結晶によるpn接合の場合と同様に,オーム性電極組成を容易にするため電極と接触する部分付近のキャリア濃度は高濃度にしても良い。」との記載を参酌するとしても,いずれの段落も,n型層のキャリア濃度を高濃度とする目的について,電極の形成を容易にするためと明確に記載しているのであるから,高キャリア濃度層上に電極を形成することが前提とされているものと解するのが相当であり,相違点27-2に係る本件発明1の構成のように,基板と露出表面の間にあるn型層領域において,露出表面が設けられた低キャリア濃度層の基板側に高キャリア濃度層を設けることは,想定されていないというべきである。 以上によれば,相違点27-2に係る本件発明1の構成が,乙27公報に記載されているとか,記載されているに等しいということはできないから,乙27公報に開示された乙27発明が,本件発明1と同一であるということはできない。 オ争点2-5の小括したがって,本件発明1についての特許が,被告らの主張する無効理由5によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (6) 争点2の小括以上の検討によれば,本件発明1についての特許は,被告らの主張する理由によ って,特許無 5によって,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。 (6) 争点2の小括以上の検討によれば,本件発明1についての特許は,被告らの主張する理由によ って,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから,原告による本件特許権1の行使が特許法104条の3第1項により封じられるものではない。 3 争点3(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか)について(1) 争点3-3(被告製品は構成要件2Fを充足するか)について事案に鑑み,争点3-3から判断する。 原告は,エバーライトエレクトロニクス株式会社作成の分析結果報告書(乙1)に示される被告製品のSIMS分析結果を検討すれば,同製品において,活性層の最もn型窒化物半導体層側にある障壁層B1(層(39))を含む,活性層のn型窒化物半導体層側の約半分の領域に含まれる複数の障壁層のSi濃度は,1×1017/㎤以上2×1018/㎤以下であり,活性層の最もp型窒化物半導体層側にある障壁層BL(層(3))を含む,活性層のp型窒化物半導体層側の約半分の領域に含まれる複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/㎤未満であると合理的に推認される旨主張する。 しかし,原告の主張によっても,同分析結果報告書記載のSIMSチャートでは,Si濃度は,n型窒化物半導体層側から数えて11番目の障壁層B11付近で約5×1016/㎤まで落ちた後,半導体層の表面(p型窒化物半導体層側)に向かってSiプロファイルの上昇が観察される(半導体層の表面から深さ約200nm程度までは,Si濃度が5×1016/㎤を超えている)というのであるから,同チャートに基づいて,直ちに「活性層の最もp型にある障壁層BL(層(3))を含む,活性層のp型窒化物半導体層側の約半分の領域に含まれる複 Si濃度が5×1016/㎤を超えている)というのであるから,同チャートに基づいて,直ちに「活性層の最もp型にある障壁層BL(層(3))を含む,活性層のp型窒化物半導体層側の約半分の領域に含まれる複数の障壁層のSi濃度は,5×1016/㎤未満である」旨推認することは,困難である。 この点について,原告は,Siプロファイルの上昇は試料の表面汚染の影響を受けたものであり,この表面汚染の影響は,障壁層B11(層(19))の位置において相応に残っており,障壁層B11(層(19))付近でいったん5×1016/㎤未満までSi濃度が下げた後に,意図的にSi濃度を増加させることは考え難いから,活性層の最もp型窒化物半導体層側にある障壁層BL(層(3))を含む,活性層のp型窒 化物半導体層側の約半分の領域に含まれる複数の障壁層のSi濃度が5×1016/㎤未満と認められる旨主張するものの,試料の表面汚染についての定量的な主張立証や,被告製品の製造方法に関する具体的な主張立証は,何ら行っていない。 したがって,被告製品が構成要件2Fのうち「前記障壁層BLを含む前記p型窒化物半導体層側の複数の障壁層のn型不純物濃度が5×1016/㎤未満」との点を充足することは,立証されていないというべきである。 (2) したがって,その余の構成要件充足性について判断するまでもなく,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するものとは認められない。 4 争点5(被告LEDの譲渡等につき原告の承諾があったか)について被告らは,原告が,訴訟提起を目的として,イガラシを介して被告LEDを被告らから購入したもので,被告らはこれ以外に被告LEDを譲渡等していないから,被告らによる全ての被告LEDの譲渡等は,原告自身の意思に基づく「おとり購入」により生じたものであって して被告LEDを被告らから購入したもので,被告らはこれ以外に被告LEDを譲渡等していないから,被告らによる全ての被告LEDの譲渡等は,原告自身の意思に基づく「おとり購入」により生じたものであって,特許権者である原告の承諾に基づくものであるなどと主張する。 しかしながら,証拠(丙1)によれば,イガラシは,被告立花に対し,「弊社希望内容下記に改めて記します。 ・砲弾型LED球大/小(5mmと3mm?)・色は提灯の色に合わせ,青/赤/黄を希望・数量はミニマムにて(小は1000個とのことでしたが,少なければベターです)」などと記載したメールを送付してLEDの購入方を申し込んだにとどまり,型番や構成等により,特に本件各発明の技術的範囲に含まれる製品を特定するなどして被告LEDを注文したものではないから,確かにその後,イガラシに販売した被告LEDが開封されることもなく原告の手に渡っていたとしても(甲6,7),そのことをもって,特許権者である原告が,被告らに対し,被告LEDの輸入,譲渡及び譲渡の申出について承諾していたと評価することは困難というほかない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 5 争点7(損害又は不当利得の額)について (1) 前記前提事実及びこれまで認定説示してきたところによれば,被告LEDに搭載された被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するところ,被告E&Eは,平成24年12月頃,エバー社から被告LED1000個を輸入してこれを被告立花に販売し,被告立花は,平成25年1月頃,これをイガラシに販売したのであるから,被告らによる上記各行為は,いずれも本件特許権1を侵害するというべきであるが,原告は,被告立花が被告E&Eから被告LEDを仕入れてこれを販売していることを主張するにとどま シに販売したのであるから,被告らによる上記各行為は,いずれも本件特許権1を侵害するというべきであるが,原告は,被告立花が被告E&Eから被告LEDを仕入れてこれを販売していることを主張するにとどまり,被告らが共謀の上で被告LEDを販売したとか,被告らの間に極めて密接な関係があるなど,共同不法行為の成立に必要な事実関係を主張立証していないから,被告らの各行為について,個別に不法行為が成立するにとどまるというべきである。 (2) そこで,被告らの行為により原告が受けた損害の額について検討する。 ア(ア) 原告は,特許法102条2項の適用を主張するところ,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告LEDと競合するLEDを販売等していると認められるから,原告には,被告らによる本件特許権1の侵害行為がなかったならば利益が得られたであろう事情が認められるといえ,同条項の適用が認められるべきである(知財高裁平成24年(ネ)第10015号同25年2月1日特別部判決・判時2179号36頁)。この点について,被告らは,被告LEDが譲渡等されなければ,原告の製品が販売されていたであろうとの条件関係が存在しないから,原告には逸失利益の損害は生じていないと主張するが,上記のとおり原告が被告LEDの競合品を販売等していることからして,なお原告に逸失利益の損害が生じたと認定するに差し支えないというべきである。 (イ) 本件特許権1の侵害により被告らがそれぞれ得た利益の額について,被告E&Eが10万5000円の利益を得たことについては,原告と同被告との間で争いがない。また,被告立花が被告LEDの販売により得る利益が,売上高の10パーセントであることは,原告と同被告との間で争いがないところ,被告立花は,イガラシに対して被告LEDを2万円で販売し,それ以 がない。また,被告立花が被告LEDの販売により得る利益が,売上高の10パーセントであることは,原告と同被告との間で争いがないところ,被告立花は,イガラシに対して被告LEDを2万円で販売し,それ以上に被告LEDの販売等により 売上をあげた事実は認められないから,被告立花が得た利益の額は,2000円と認めるのが相当である(なお,被告立花は,上記売上代金を全てイガラシに返金しているとの事情を主張するが,同事実によっても,一度発生した損害が発生しなかったことになるわけではないし,これにより原告に生じた損害が塡補されたと認めることもできない。)。したがって,これらの額は,特許法102条2項により,原告が受けた損害の額と推定される。 (ウ) 被告らは,①原告が被告LEDについて原告が保有する9件の特許権を侵害すると主張していること,②被告LEDは,本件発明1の作用効果を奏しないか,奏したとしても極めてわずかな効果しか奏しないこと,③被告LEDは,被告製品(窒化物半導体素子)にさらなる部材を付加していること,④有色LED市場における原告のシェアなどからすれば,本件発明1が被告らの得た利益に寄与した割合は5パーセントを上回ることはなく,推定された損害額のうち95パーセント相当額について,同推定が覆滅されるべきである旨主張する。 しかしながら,①について,被告LEDが,原告の他の特許権に係る発明の技術的範囲に含まれるか,含まれるとして,他の特許権に係る発明が被告LEDの売上にいかに寄与したかについては,本件証拠によっても,判然としないというほかない。②について,被告LEDが本件発明1の作用効果を奏しないか,極めてわずかしか奏しないなどといった事実は認められない。③については,被告LEDが被告製品に部材を付加しているとしても,その価値の ない。②について,被告LEDが本件発明1の作用効果を奏しないか,極めてわずかしか奏しないなどといった事実は認められない。③については,被告LEDが被告製品に部材を付加しているとしても,その価値の源泉の大半は被告製品にあるものと合理的に推認できる。④については,有色LED市場における原告のシェアを一般的に示すのみでは,本件において,なお原告の受けた損害の額についての推認を覆すには十分とはいえない。 以上のとおり,損害の額の推定が一部覆滅されるべきであるとする被告らの主張は,採用することができない。 (エ) 以上の検討によれば,被告E&Eによる本件特許権1の侵害行為により原告が受けた損害(逸失利益)の額は10万5000円と認められ,被告立花による本 件特許権1の侵害行為により原告が受けた損害(逸失利益)の額は2000円と認められる。 イ特許法102条3項にいう本件発明1の実施に対し受けるべき金銭の額及び本件発明1の無償実施による不当利得の額が,ア(エ)に認定した額を上回ることを認めるに足りる証拠はない。 ウ弁護士費用について被告らそれぞれによる本件特許権1の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金としては,本件特許権1の内容や本件訴訟の審理経過等に鑑み,各15万円をもって相当と認める。 (3) 損害額についての小括以上の検討によれば,原告は,本件特許権1の侵害を原因として,被告E&Eに対し,逸失利益に対応する損害賠償金10万5000円及び弁護士費用に対応する損害賠償金15万円の合計額である25万5000円並びにこれに対する遅延損害金の支払を,被告立花に対し,逸失利益に対応する損害賠償金2000円及び弁護士費用に対応する損害賠償金15万円の合計額である15万2000円並びにこれに対する遅延 000円並びにこれに対する遅延損害金の支払を,被告立花に対し,逸失利益に対応する損害賠償金2000円及び弁護士費用に対応する損害賠償金15万円の合計額である15万2000円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求めることができる。 なお,原告は,逸失利益の損害については,被告立花による被告LEDの譲渡により原告が受けた逸失利益の額の限度において被告らに連帯支払を求める一方で,弁護士費用の損害については,被告らの各行為により原告が受けた弁護士費用の損害の合計額について被告らに連帯支払を求めている。まず,弁護士費用の損害については,被告らに共同不法行為が成立すると認められないことは前記(1)のとおりであるから,原告は,被告らに対し各15万円及び遅延損害金の支払を求めることができるにとどまり,被告らの支払義務が不真正連帯債務となるものではない。次に,逸失利益の損害については,被告E&Eの譲渡により原告が受けた逸失利益の損害と,被告立花の譲渡により原告が受けた逸失利益の損害とは,別個の損害であって重複するものではないから,原告は,これらの損害の賠償をそれぞれ求めるこ とができ,被告らの支払義務が不真正連帯債務となるものではない(このように解したとしても,原告が各被告からそれぞれ受領できる損害賠償金及び遅延損害金の額並びに両被告から受領できる損害賠償金及び遅延損害金の総額のいずれも,原告の請求額〔前記第1の5項及び6項参照〕を上回ることはないから,本件について処分権主義違反の問題が生じることはないし,原告の上記連帯支払を求める主張をもって,原告が,原告が受けた逸失利益の損害額は10万5000円に限定されると主張しているとまでは解されないから,本件について弁論主義違反の問題が生じることもない。)。 6 結論以上によれば,原告 原告が,原告が受けた逸失利益の損害額は10万5000円に限定されると主張しているとまでは解されないから,本件について弁論主義違反の問題が生じることもない。)。 6 結論以上によれば,原告の請求のうち,本件特許権1の侵害を原因とする請求については,被告E&Eに対して25万5000円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年4月23日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告立花に対して15万2000円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年4月23日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度において理由があるが,その余は理由がない。 また,原告の請求のうち,本件特許権2の侵害を原因とする請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 天野研司 (別紙1)物件目録 下記の青色LED。 記1254-15ASUBC/XXXX-XX-X(XXX)(ただし,上記のXには,任意の英数字が入る。)以上 (別紙8)被告製品構造説明書(1) 1 被告製品構造模式図 被告製品のLEDチップ構造の模式図を以下に示す。 図1 LEDチップ構造模式図 Al0.23Ga0.77N[25Å]MgdopedGaN[2940Å]3.54μm 61G のLEDチップ構造の模式図を以下に示す。 図1 LEDチップ構造模式図 Al0.23Ga0.77N[25Å]MgdopedGaN[2940Å]3.54μm 61GaN [3.86μm]Al0.14Ga0.86N[200Å]負電極サファイア基板正電極Al0.10Ga0.90N[175Å]GaN/InGaN積層 3乃至60SidopedGaN (Si濃度:低) ASidopedGaN (Si濃度:高) BSidopedGaN (Si濃度:低) C約6.83μm約1.46μmGaND 図2 半導体積層構造の模式図図2では,半導体正電極側から基板側に向かい,各層に順に番号を振った。 また,図1では層(61)の中をさらに4層に分け,半導体正電極側から基板側に向かい,層(D),(A),(B),(C)と記号を振った。以下,各番号及び記号を用いて,当該層の組成及び機能を説明する。 2 被告製品の構造 被告製品の構造は次のとおりである。 ① 被告製品は,基板上にn型層である層(40)ないし(61),活性層である層(3)ないし(39),p型層である層(1)及び(2)が積層された構造を備えた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子である。 ② 被告製品は,p型層上と,n型層が一部露出された表面に,それぞれ正電極と負電極が設けられている。 ③ 被告製品は,そのn型層中に,n型層(A)と,これに接し,これよりも電子キャリア濃度が大きいn型層(B)を有する。 ④ n型層(A)とn型層(B)はn型層中の,基板とn型層露出表面の間のn型層領域にあり,n型層(B)はn型層(A)の基板側にある。 以上GaN [340Å]I B)を有する。 ④ n型層(A)とn型層(B)はn型層中の,基板とn型層露出表面の間のn型層領域にあり,n型層(B)はn型層(A)の基板側にある。 以上GaN [340Å]In0.08Ga0.92N[28Å]4乃至38の偶数GaN[150~160Å]5乃至39の奇数In0.02Ga0.98N[17Å]40乃至60の偶数GaN[180Å]41乃至59の奇数GaN (別紙10)被告製品全体模式図GaN 2702Å[1]2nd-MQW[4~39]InGaN/GaNLoop=181st-MQW[40~60]InGan/GaNLoop=11Cap層 GaN 100Å[3-2]Buffer層 HT-GaN 216Å[3-1]AlGaN 143Å[2]GaN 1000Å[61-1]GaN 31359Å[61-2&3]AlGaN 212Å[63]GaN 37061Å[64]AlGaN 13Å[62]活性層p-層n-層サファイア基板 (別紙11)被告製品層[61-1][61-2][61-3]付近模式図 GaN(Si-Dope)約12000Å[61-3]GaN(Si-Dope)約19000Å[61-2]GaN1000Å[61-1] (別紙12)被告製品活性層(層[4~60])模式図 loop18InGaN 30Å[4ないし38の偶数]GaN 150Å[5ないし39の奇数]InGaN 13Å[40ないし60の偶数]GaN 180Å[41ないし59の奇数]loop11 0Å[4ないし38の偶数]GaN 150Å[5ないし39の奇数]InGaN 13Å[40ないし60の偶数]GaN 180Å[41ないし59の奇数]loop11
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