令和7年5月27日宣告令和6年(わ)第246号公職選挙法違反被告事件判決 主文 被告人を罰金50万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和6年10月27日施行の第50回衆議院議員総選挙に際し、衆議院小選挙区選出議員選挙の長崎県第1区から立候補したC(以下「C」という。)の選挙運動者であるが、いずれもCの選挙運動者であるA及びBと共謀の上、Cに当選を得しめる目的をもって、Bにおいて、いまだCの立候補の届出のない同月3日から同月7日までの間、長崎市a 町b 番c 号所在のa ビル(以下、同ビルに設置されていたCの選挙事務所を「a 事務所」という。)前歩道上ほか5か所において、12回にわたり、D(以下「D」という。)ほか11名に対し、自ら又はDらを介し、携帯電話機を使用するなどして、同選挙区内の選挙人に電話をかけてCへの投票を依頼する選挙運動をすることの報酬として、1時間当たり1000円の割合で計算した金銭を後日供与することを申し込み、いまだCの立候補の届出のない同月3日から同月10日までの間、前記a ビル前歩道上若しくは長崎市内又はその周辺において、携帯電話機により、Dほか11名からその承諾を受け、もって、それぞれ選挙運動者に対し金銭の供与の約束をするとともに、立候補届出前の選挙運動をしたものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点判示衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)において、Cの選挙運動者で あるA及びB とともに、立候補届出前の選挙運動をしたものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点判示衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)において、Cの選挙運動者で あるA及びBが、共謀の上、Cに当選を得しめる目的をもって、判示のとおり電話による投票依頼の選挙運動に従事したDほか11名の選挙運動者(以下、このように、多数の選挙人に対し直接個々的に候補者への投票依頼をする選挙運動者を「電話隊」といい、本件において、その役割を担ったDほか11名を「本件電話隊」という。)に対し、Cへの投票依頼の選挙運動をすることの報酬として、1時間当たり1000円の割合で計算した金銭を後日供与することを申し込み、その承諾を受け、もって、それぞれ選挙運動者に対し金銭の供与の約束をするとともに、立候補届出前の選挙運動をしたことは優に認定することができ、当事者間にも争いはない。しかし、更に進んで、報酬として金銭を供与することを約束した上で、AやBがDら11名を上記選挙運動に従事させていたとの認識が被告人にあり、被告人とA及びBとの間に共謀があったと認められるか否かについては、弁護人と被告人は、これを否定して無罪を主張している。 当裁判所は、信用できるB、A及びE(以下「E」という。)の各公判供述(なお、各供述の信用性については、後記第2の2で検討する。)に加え、本件電話隊を構成するDほか11名の検察官調書や、Dら本件電話隊のメンバーの間及び同人らとBとの間のLINEのメッセージ等の履歴等から認定できる事実関係は、令和6年10月3日(以下、特に月日の前に年を記載しないものは全て「令和6年」の出来事である。)に被告人からアルバイトとして電話隊の人集めを依頼された旨をいうAの公判供述とも符合しており、これらの証拠関係に照らせば、被告人は、同日、本 前に年を記載しないものは全て「令和6年」の出来事である。)に被告人からアルバイトとして電話隊の人集めを依頼された旨をいうAの公判供述とも符合しており、これらの証拠関係に照らせば、被告人は、同日、本件電話隊に報酬として金銭を供与することになることを認識した上でAに人集めを依頼し、その後、Aから依頼を受けたBとも時給等について話し合うなどし、A及びBと順次意思を通じ合い、Bが、自ら又はDを介し、Dほか11名に対し、判示のとおり金銭の供与を申し込み、その承諾を受けることによって、金銭供与約束罪(公職選挙法221条1項1号)及び立候補届出前の選挙運動罪(同法239条1項1号、129条)の共謀を成立させたと認められ、被告人には、これらの罪の共同正犯が成立する、と認定した。 以下、その理由を述べる。 第2 認定事実 1 B、A及びEの各公判供述のほか、本件電話隊を構成するD、F(以下「F」という。)、G(以下「G」という。)らの検察官調書等の前掲関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 被告人は、遅くとも昭和57年頃以降、国政選挙や地方選挙の選挙活動に従事する中で、Cの父親やEと知り合った。 被告人は、令和5年9月頃、Cの父親から次期衆議院議員選挙に立候補予定のCの支援を依頼されて、これを引き受け、H党長崎県第一選挙区支部の事務局長に就任し、C事務所事務員との間で会議を開くなどして上記選挙に向けた活動状況を共有するなどし、衆議院が解散されて本件選挙が施行される可能性が高まった令和6年9月頃、Cの選挙対策本部(以下「選対」という。)の事務局長に選任され、選挙事務所の責任者として、選対の組織編制や選対事務所の設営等を担っていた。 当時、Aはイベントの企画立案、会場設営及び人材派遣の請負等を業とする会社(Aの会社)を経 。)の事務局長に選任され、選挙事務所の責任者として、選対の組織編制や選対事務所の設営等を担っていた。 当時、Aはイベントの企画立案、会場設営及び人材派遣の請負等を業とする会社(Aの会社)を経営し、Bは同社から業務委託を受けて人材派遣等をしていた。 Aは、平成2年頃から国政選挙や地方選挙の応援に関わる中で被告人と知り合った。Aは、選挙の際にウグイス嬢等をアルバイトとして集めた経験があったが、ボランティアを集めたことはなかった。Aは、9月頃、自社の従業員やBと共に本件選挙におけるCの選挙運動の応援をすることになったが、AやBに選対での役職や選挙運動に関する支出その他の活動方針に対する決定権限はなかった。 C陣営では本件選挙における選挙運動の一環として電話隊による投票依頼を実施する方針であったが、当初当てにしていた人物から電話隊の人集めを断られ、9月下旬頃の時点で電話隊の人集めはできていなかった(なお、当初、C陣営では公示日は10月29日頃になると見込んでいた。)被告人は、10月初旬頃、Aに対し、a 事務所の設営作業や電話隊が使用する 電話機4台の設置を依頼し、Aは、同事務所2階への電話機の設置を手配するなどした。 また、Aは、同月3日、同事務所において、被告人から、電話隊を1日4人集めてほしい旨依頼された。その際、被告人は、「有償」「アルバイト」「ボランティア」という言葉は用いなかった。Aは、自分に依頼してくるのだからアルバイトを集める依頼であると理解して、被告人からの依頼を引き受けた。 Aは、10月3日、上記依頼を受けた後、Bに対して、電話をかける人を集めてほしい旨依頼し、Dに依頼するのが良い旨伝え、Bは了承した。その際、Aは、Bに対し、対象は女性がいい、1日4人集めてほしいとの趣旨のことを告げた。 Bが、Aに対 後、Bに対して、電話をかける人を集めてほしい旨依頼し、Dに依頼するのが良い旨伝え、Bは了承した。その際、Aは、Bに対し、対象は女性がいい、1日4人集めてほしいとの趣旨のことを告げた。 Bが、Aに対し、バイト代について尋ねたところ、Aは、Bに対し、「1000円でいいんじゃない?」と答え、詳しいことは被告人と話すようにと言った。 そこで、Bは、10月3日中にa 事務所で被告人と電話隊について話をした。 その際、Bは、被告人から、同事務所の2階で電話をかける仕事で、選挙の公示日から投開票日の前日までの間、午前10時から午後5時まで勤務できる人を1日四、五人ほど集めてほしいなどと言われた。Bが、時給1000円で集めてよいかという旨尋ねると、被告人は、「900円にならないか。」と言ったが、Bが、900円では集まらない旨言ったところ、被告人は、「なら仕方ないよね。それでお願いします。」といった内容のことを言って、Bが時給1000円で電話隊の人集めをすることを了承した。 Bは、被告人から了承を得たことから、10月3日午後3時53分頃、a 事務所前歩道上で、Dに電話をかけ、選挙の投票依頼の電話をするアルバイトに入って欲しい、Dの他に1日当たり三、四名ほどアルバイトに入れる人を見つけてほしい、朝10時から夕方5時までの仕事で、時給1000円でお願いしますなどと説明し、Dはこの依頼を了承した。Dは、翌4日、Bに対し、LINEで、D、G、Fらの氏名を記載した名簿の写真を送信するとともに、Gらがアルバイトを引き受けたことをメッセージで報告した。それを閲読等したBは、電話隊が集ま ったものと理解し、a 事務所において、被告人に対し、「電話隊のアルバイト、そろいました。」と報告し、被告人は礼を言った。また、Gは、同日、Dから、他にもアルバイトをして 、電話隊が集ま ったものと理解し、a 事務所において、被告人に対し、「電話隊のアルバイト、そろいました。」と報告し、被告人は礼を言った。また、Gは、同日、Dから、他にもアルバイトをしてくれる人を紹介してほしいといった依頼も受けていたので、同月5日から同月7日にかけて、Iらを本件電話隊のアルバイトに勧誘し、順次承諾を得た。その上で、Gは、同月7日、Dに対し、I らの氏名が記載されたシフト表の写真を送信し、Dは、同月10日、Bに対し、これを踏まえて新たに作成したシフト表を送信するなどして人が集まったことを報告した。このようにして、Dほか11名は、B又はBから依頼を受けたDから電話かけのアルバイトを勧誘されて、本件電話隊の電話かけに従事することになった。 Bは、Dに対し、①10月6日頃、シール貼り、②同月7日、シール貼りやチラシ折り、③同月11日頃、証紙貼り、④同月14日、ビラ配り等のアルバイトの人集めを順次依頼し、Dが勧誘した知人らがこれらを引き受けた。また、Bは、Dから、本件電話隊のアルバイト代の支払時期を尋ねられたので、被告人に確認したところ、本件選挙終了後のできるだけ早い時期(10月中)には支払う旨回答を得た。Bは、同月9日、Dに対し、LINEのメッセージでその旨伝えた。 Dらは、本件選挙の公示日であり、かつCの立候補届出のあった日である10月15日から同月25日までの間、各人の分担日にa 事務所2階において、選挙人に電話をかけてCへの投票依頼を行った。また、Dらは、同月15日、被告人から投票依頼マニュアル等を渡された。C事務所の出納責任者である選挙運動事務員のJ(以下「J」という。)は、同日時点で電話隊を誰が担当するのか詳細を把握しておらず、電話かけをしているDらが不慣れなため、被告人がAに依頼して集めたアルバイ 務所の出納責任者である選挙運動事務員のJ(以下「J」という。)は、同日時点で電話隊を誰が担当するのか詳細を把握しておらず、電話かけをしているDらが不慣れなため、被告人がAに依頼して集めたアルバイトではないかとの疑いを抱いたが、あえて被告人には確認しなかった。 A、B、Eらの間では、10月15日頃、a 事務所において、警察に駐車違反で取締りを受けたりした際に、本件電話隊がアルバイトであることが発覚しないようにするために、本件電話隊に注意をしておかないといけないという趣旨のこ とが話題になった。Eが、被告人に対し、本件電話隊に警察から聴かれたらボランティアと言うよう注意しておいたほうが良いのではないかと言ったところ、被告人は「そうよね。」と答えた。 Bは、10月15日頃、a 事務所において、被告人から、「電話隊は選挙違反になっとやもんね。」「ボランティアじゃないとだめとやもんね。」いった趣旨のことを唐突に言われた。そこで、今更ボランティアと言われてもそんなこと言えない旨言うと、被告人は、「電話隊には自分が説明しておくね。」「選挙が終わって支払うけんが。」などと言われた。Bは、被告人から、どこの陣営でもやっていることだから大丈夫であるとの趣旨のことを聞いたので、被告人のことを特にとがめだてはしなかった。 被告人は、10月16日、a 事務所2階で本件電話隊として電話かけに従事していたF、Gらに対し、「これはあくまでボランティアということでお願いします。」「誰かから聞かれたらアルバイトではなくボランティアと言ってください。」などと口止めをした。Eは、その直後に同事務所2階から1階に降りてきた被告人と出会い、何をしに言っていたのか尋ねたところ、被告人は、「ちゃんと注意してきたけん。」と言ったので、ボランティアということを言っ 口止めをした。Eは、その直後に同事務所2階から1階に降りてきた被告人と出会い、何をしに言っていたのか尋ねたところ、被告人は、「ちゃんと注意してきたけん。」と言ったので、ボランティアということを言ってきたのかと尋ねると、被告人は肯定する返事をした。そこで、Eは、同事務所2階に行き、Gらに対して、「内緒にしといてね。」と言うとともに、口元に人差し指を持っていく仕草をしながら、「さっきKが言ったと思うけども、そのことをよろしくね。」と言った。また、Eは、自分の両手首で手錠を掛けられるような仕草をして、「こうなる可能性があるけんね。」と言った。 Gは、10月16日、同事務所2階において、L(以下「L」という。)から、電話隊のアルバイト代を公共職業安定所(ハローワーク)に申告する必要があるか尋ねられ、事務所関係者に尋ねたところ、被告人から「ハローワークのには書かんでくれ」「なんにも書かんでくれ。」と言われた。なお、その後、Lは、被告人から、Aの会社のアルバイトとして申告するのも駄目である旨も言われた。 Fは、10月16日、Dらに対し、LINEで、同月15日以降は自分たちのバイトは基本選挙違反になるので禁止であること、被告人と「師匠」(※Eのあだ名)からバイト代は支払われるが、名目上、ボランティア扱いでの作業になるのでよろしくと言われた旨のメッセージを送信した。また、Gも、同日、M、Nらに対し、(人により文面は異なるが)ハローワークに申請しないことや周囲の人にボランティアと言うようにと指示されたことなどを内容とするメッセージを送信した。 Dは、10月16日午後6時21分頃、Bに対し、電話で、本件電話隊の作業をアルバイトとしてすることは選挙違反になるのではないかと尋ねた。Bは、それに先立ち、被告人からどの陣営でもやっているから Dは、10月16日午後6時21分頃、Bに対し、電話で、本件電話隊の作業をアルバイトとしてすることは選挙違反になるのではないかと尋ねた。Bは、それに先立ち、被告人からどの陣営でもやっているから大丈夫だと聞かされていたことから、Dに対して、「大丈夫ですよ。どこの事務所もやっていることですから。 ボランティアということにしてください。」などと説明した。 被告人は、10月22日、Aに対し、電話隊の増員や電話機の増設を依頼し、Aは、同月24日までの間にその依頼に対応した。また、Bは、被告人から、同月26日にも、電話をかける人を集めてほしいと言われ、Dにアルバイトとして人集めを依頼した。 Aは、10月25日夕方、a 事務所において、Dに対し、電話かけをしていることを口外しないこと、Aの会社の名前を出さないこと、家族を含めボランティアと説明すること、他のメンバーにも周知することなどを指示した。その後、Dは、同事務所応接室で、AからCと引き合わされた際、AがCに対し、警察に捕まってもC側は知らないことにする旨話しているのを聞いた。 Aは、10月28日、警察がDの事情聴取をするとの情報を得て、その旨被告人やCに伝え、被告人と共にDに会い、本件電話隊はボランティアであると口裏を合わせるように言った。被告人、A及びBは、翌29日、Aの会社の事務所に集まり、電話で参加したCと、警察の事情聴取に備えた対策を話し合った。同日の話合いやその日以降各人が取調べ状況等を報告するなどした際、Cは、警察の 取調べには、シール貼りや証紙貼りはアルバイトだが、電話隊はボランティアである、Bが先に依頼されたシール貼りの人集めを電話隊と勘違いして人集めをしたという内容の嘘の説明をするよう繰り返し指示するなどし、その指示に沿った供述をするよう関係者に口裏合 電話隊はボランティアである、Bが先に依頼されたシール貼りの人集めを電話隊と勘違いして人集めをしたという内容の嘘の説明をするよう繰り返し指示するなどし、その指示に沿った供述をするよう関係者に口裏合わせを執拗に求めた。そのため、AとBは、当初はCの指示に沿った供述をしていた。しかし、その後、A及びBは、自身や被告人らは本件電話隊がアルバイトであることを認識していた旨供述を変遷させた。 2 B、A及びEの公判供述の信用性(弁護人の主張を踏まえての検討)弁護人は、被告人が、10月3日、Aに対し、相談半分、悩みの共有半分の気持ちから、「電話かけ切る人おらんやろか。」と発言したのを、Aがアルバイトの人集めを依頼されたと勘違いして本件電話隊を勧誘したのであって、被告人としては、そのような勧誘が選挙違反であることを知っているはずのAがアルバイトとして勧誘することは想定外であった旨主張する。そして、そのことは、被告人がAに対して本件電話隊の人集めを依頼する際、「有償」「アルバイト」という言葉を用いていないこととも整合するといい、被告人の供述に反し、10月3日に被告人に電話かけのアルバイトの時給等につき確認した旨をいうBの公判供述は信用できないとも主張する(その主張内容の詳細については、後記第2の2で述べる。)。 しかし、被告人は、Aに対して、本件電話隊の人集めを依頼したとされる場面において、「有償」「アルバイト」という言葉は出してはいないものの、逆にボランティアでなければならないとも言っておらず、これは、アルバイト等の言葉を出すことがはばかられたからであるとも考えられるのであって、弁護人が主張するように、アルバイト等の言葉を出していないからといって、そのような趣旨で人集めをする意図はなかったと直ちにいうことはできない。この点、Bの公判供述 らであるとも考えられるのであって、弁護人が主張するように、アルバイト等の言葉を出していないからといって、そのような趣旨で人集めをする意図はなかったと直ちにいうことはできない。この点、Bの公判供述によれば、Bは同日中に被告人に対しアルバイトの時給等の条件面等について確認したというのであるから、仮にこのようなBの公判供述が信用でき、上記事実が認められるならば、被告人は本件電話隊がアルバイトであることを、その時 点で確定的に認識していたことになる。そして、その際、被告人がアルバイトであることに特に異論を差し挟まず、最終的にBが提案した時給等を受け入れていることからすれば、更に進んで、被告人がAに対して本件電話隊の人集めを依頼した時点からアルバイトとして人集めをすることをも織り込んだ上で、そのような認識の下にAに人集めを依頼したことが強く推認できることにもなる。 以上を踏まえて、本件争点に関する立証上最も重要となるBの公判供述の信用性を中心に検討するに、Bが10月3日に被告人に本件電話隊の時給等の条件面につき確認した後、Dに電話をかけて、本件電話隊の人集めを依頼したという事実は、被告人の依頼をBに伝えた際に、時給1000円と話した上で詳しい条件面は被告人に確認するよう言った旨をいうAの公判供述とおおむね整合している。また、被告人は選対等の事務局長の立場にあり、かつ選挙運動に携わる労務者の人集めについても被告人の関与が認められ(本件電話隊の人集めと同時期あるいはその後の選挙運動期間中に本件電話隊以外のシール貼り等の他のアルバイトを集めていたのもBらであることなどから、被告人の関与が推認できる。)、本件電話隊の時給を含めた条件面の決定につきAやBに最終的な決定権限があったとは認め難いのであって、Bが被告人に伺いを立てたというのは、 いたのもBらであることなどから、被告人の関与が推認できる。)、本件電話隊の時給を含めた条件面の決定につきAやBに最終的な決定権限があったとは認め難いのであって、Bが被告人に伺いを立てたというのは、これら本件選挙における選挙運動の実態にも合っている(なお、時給の話題がAからBへの依頼の場面であったか否かに関してのAの公判供述は証人尋問の過程で変遷が見られるが、1000円という金額を自分から出したというのはAにとって不利に働く内容の供述であることから、この部分に関するAの公判供述は基本的に信用することができる。)。 さらに、BはDからアルバイト代の支払時期を尋ねられて回答しているところ、これも同じく上記のような被告人の立場、役割等と整合的である。 また、Bは、Dから電話隊をアルバイトですることが選挙違反になるのか尋ねられた際、どこの陣営でもやっているので大丈夫である旨答えているところ、本件選挙のC陣営の選挙運動に関して責任ある立場にもなく、選挙にも詳しくないBが自己の個人的な判断でDに対しそのような回答をできるとは考えに くく、それに先立ち被告人から同様の説明されていたことから、そのような説明をした旨をいうBの供述はそのような事実関係と合っている。 そして、Bは、同月15日頃、被告人から電話隊にボランティアと言うように説明しておく旨言われた旨供述するところ、そのような事実は、翌16日に被告人らが本件電話隊の構成員らに口止めをしたり、ハローワークに申告しないように言ったりした事実とも整合している。 以上のようなBが供述する一連の事実は、本件電話隊を構成するDらの検察官調書の内容やLINEの通信履歴等と照らし合わせても、大筋で合致しており、矛盾や齟齬は認められない。 加えて、Aは、駐車違反の話題を契機に本件電話隊に対する口止 、本件電話隊を構成するDらの検察官調書の内容やLINEの通信履歴等と照らし合わせても、大筋で合致しており、矛盾や齟齬は認められない。 加えて、Aは、駐車違反の話題を契機に本件電話隊に対する口止めが話題になった旨供述するところ、Eも同趣旨の供述をしていることから、この時期にa 事務所内でこのような会話がなされたことが認められる。これは、先に述べた被告人が口止めは自分がするなどと言っていた時期とも合っており、時系列的にも矛盾しない(なお、Eは、被告人とは長年来の付き合いがあり、殊更被告人に不利な供述をする動機もなく、その供述は、本件電話隊を構成するG、Dらの検察官調書の内容とも符合しており、信用性に疑問を生じさせる点は認められない。また、Aの公判供述には部分的にはやや曖昧な点も見られないではないものの、上記事実に関しては、AとEの供述は、基本的な部分につき、おおむね符合しており、Aの公判供述は信用できる。)その他、Bの公判供述に信用性に疑問を生じさせるような不自然、不合理な点は見受けられず、その供述は信用できる。 弁護人は、Bは10月3日に被告人にアルバイトの時給等の条件面を確認したというが、確認文言を一言一句記憶しておらず、被告人が時給を900円に値切ったという点は別の機会にEが長崎の最低賃金に言及した発言内容から着想を得て捏造したものであると主張する。しかし、Bは、当時の被告人との会話の主たる部分については相応に具体性をもった供述をしている。10月3日から証人尋問までに約5か月が経過していることを踏まえると、確認文言の一言一句につき 記憶が薄れて覚えていなくても不自然ではない。また、Bは時給の話が会話のどの段階で出たかははっきりと覚えていないと述べるが、仮に捏造するのであれば、その点も含めて確認文言を具体的に き 記憶が薄れて覚えていなくても不自然ではない。また、Bは時給の話が会話のどの段階で出たかははっきりと覚えていないと述べるが、仮に捏造するのであれば、その点も含めて確認文言を具体的に供述してもよいはずであって、そのようにはせず、曖昧なことは曖昧なまま供述しているのはBが記憶に従って供述している証左と見ることができる。他方、弁護人が主張する捏造の具体的な根拠は乏しい。 また、弁護人は、Bには虚偽供述の動機があるとも主張する。この点、弁護人が弁論において主張しているBの虚偽供述の動機が本件の証拠関係に即した主張になっているかは疑問であるが、その点を措くとしても、Bは、当初はBの勘違いであるとして全ての責任を押し付けられていたことからすれば、被告人らに対して恨みを抱いたとしても、それ自体不自然なことではなく、検察官が主張するようにBの刑事裁判が確定しているとの一事をもってBに虚偽供述の動機がないと軽々にいうことはできない。しかしながら、本件における証拠関係を通覧すると、Bの公判供述は、既述のとおり、被告人とBの立場や役割に照らして自然かつ合理的であるし、その後の経過を含めて、AやEの供述のほか、LINEの通信履歴等の客観的な証拠によっても支えられている。そして、当初口裏合わせに応じたが、取調べが進むにつれDらに迷惑がかかるし、本当のことを言わなければならないと思い直して、本当のことを言うことにした旨の供述の変遷理由に関する説明も不合理なものとはいえない。そうすると、抽象的にはBには虚偽供述の動機があるとはいえても、本件事実関係の下では、その可能性は否定することができる。 その他、弁護人が種々主張する点は、いずれもBの公判供述の信用性を動揺させるものではない。 第3 当裁判所の判断以上に基づき検討するに、既に述べたとおり 、その可能性は否定することができる。 その他、弁護人が種々主張する点は、いずれもBの公判供述の信用性を動揺させるものではない。 第3 当裁判所の判断以上に基づき検討するに、既に述べたとおり、10月3日にBからアルバイトの時給等の条件面等について確認された際の被告人の対応状況に照らせば、被告人は、Aに対して人集めを依頼した時点から、Aがアルバイトとして人集めをすることを織り 込んだ上で、そのような認識の下に、Aに対し本件電話隊の人集めを依頼したとの事実が強く推認される。そして、このことは、被告人が、選対等の事務局長の立場にあり、かつ選挙運動に従事する本件電話隊以外の選挙運動に携わる労務者の人集めにも関与していたこと、先に述べたようなA、B及びEらの間の選挙運動期間中における会話の内容のほか、同期間中、同人らと共にa 事務所に詰めており、本件電話隊の構成員とも当然に接触があったことから、その動向も当然把握していたと考えられること、選挙運動期間中に電話隊がアルバイトではないかとの疑念を持ったこと自体は被告人自身も公判廷で認めているところ、それにもかかわらず、本件電話隊がボランティアであるか否かの確認を一切行っていないこと、その一方で、同月15日頃、Eらと本件電話隊への口止めの必要性について話し合い、翌16日にはEに先立って被告人が本件電話隊の構成員に対し口止めをし、ハローワークに申告しないように言ってもいること、同月25日のCとAとの間の応接室におけるやり取りや同月28日以降における関係者間での口裏合わせなどに表れている関係者の行動状況等、本件関係各証拠から認められる一連の事実によっても補強されている。 第4 被告人の公判供述の信用性被告人は、先に述べた弁護人主張に沿った供述をし、本件電話隊がアルバイトであ る関係者の行動状況等、本件関係各証拠から認められる一連の事実によっても補強されている。 第4 被告人の公判供述の信用性被告人は、先に述べた弁護人主張に沿った供述をし、本件電話隊がアルバイトであることは10月29日になって初めて知ったとし、同月16日に本件電話隊にボランティアと言うよう注意したのはあくまで一般論として疑われたくなかったからであるなどと供述する。 しかし、「一般論として疑われたくなかった」という説明は余りに苦しい説明と言わざるを得ない。また、ボランティアだと思っていた本件電話隊が実はアルバイトであるという極めて重大な事実が判明したのに、AやDと深く話すこともせず、逆に口止めに及んでいるという経過も不自然である。そもそも、被告人の供述が真実であるならば、Dに対する口止めや、Bの勘違いであったなどといったその後なされた口裏合わせに及ぶ必要などないはずである。警察の捜査を察知するや、直ちにこのような行動に出ていること自体、被告人には、それ以前から本件電話隊がアルバイトであると の認識があったことを強くうかがわせる。加えて、前述したとおり、被告人は、公判廷において、選挙運動期間中に本件電話隊がアルバイトではないかと疑念を抱いたが、確認はしていないとか、Bが選挙に詳しくないことを知りつつ、BにはAが説明するはずであるから、AやBが選挙違反になるような人集めをすることはないと思っていたなどと曖昧な供述に終始しているが、既に述べたような被告人の立場や役割等に照らして不合理であり、納得のいくものではない。 したがって、被告人の公判供述は信用できない。 第5 結論以上によれば、冒頭に述べたように、被告人には、10月3日にAに対し、本件電話隊の人集めを依頼した時点で、本件電話隊に報酬として、金銭を供与することになると 公判供述は信用できない。 第5 結論以上によれば、冒頭に述べたように、被告人には、10月3日にAに対し、本件電話隊の人集めを依頼した時点で、本件電話隊に報酬として、金銭を供与することになるとの認識があり、被告人は、Aやその指示を受けてDに人集めを依頼したBとの間で、順次意思を通じ合ったことが認められる。そして、選対等の事務局長という立場にあって選挙活動において重要な役割を担っていた被告人が、AやBとの上記意思連絡に基づいて、Aに本件電話隊の人集めを指示するとともに、本件電話隊の活動のための体制を整えたり、口止めにも関与したりしているなどしていることからすれば、本件において、自己の犯罪として行ったといえるだけの重要な役割を果たしていると認められる。 したがって、被告人には、A及びBとの間で、金銭供与約束罪及び立候補届出前の選挙運動罪の共謀が認められ、これらの罪の共同正犯が成立する。 (量刑の理由)本件の内容は、判示のとおりであり、民主主義の根幹をなす選挙の公正を害する悪質な犯行である。被告人は、選挙運動に何度も関与した経験があり、本件選挙運動においても選対等の事務局長の立場にあったことから、国政選挙の公正を蔑ろにしたことは厳しい非難を免れない。また、警察の捜査を察知するや、共犯者らと口裏合わせに及んでおり、犯行後の情状も悪い。公判廷に至っても、なお弁解を弄しており、真摯な反省は見て取れない。 他方で、逮捕から保釈により釈放されるまでの約3か月半身柄拘束されて事実上の制裁を受けている。その他、前科前歴がないことなどの事情のほか、共犯者に対する科刑状況も踏まえ、主文のとおりの罰金刑に処することとした。 (求刑罰金50万円)令和7年5月27日長崎地方裁判所刑事部 主文 情のほか、共犯者に対する科刑状況も踏まえ、主文のとおりの罰金刑に処することとした。(求刑罰金50万円)令和7年5月27日長崎地方裁判所刑事部 裁判官太田寅彦
▼ クリックして全文を表示