平成27年4月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第771号商標権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成27年2月27日判決名古屋市<以下略>原告興和株式会社同訴訟代理人弁護士北原潤一同江幡奈歩同梶並彰一郎名古屋市<以下略>被告テバ製薬株式会社同訴訟代理人弁護士長沢幸男同笹本摂同向多美子同補佐人弁理士小谷武同伊東美穂同長谷川綱樹同永露祥生同木村吉宏 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告標章目録記載の標章を付した薬剤を販売してはならない。 2 被告は,前項記載の薬剤を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を付した薬剤を販売する被告の行為は,商標法3 2 被告は,前項記載の薬剤を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を付した薬剤を販売する被告の行為は,商標法37条2号により原告の有する商標権を侵害するものとみなされると主張して,同法36条1項及び2項に基づき,同薬剤の販売の差止め及び廃棄を求める事案である。 なお,被告は,本件訴訟の係属中に商標権の分割があったことに伴い,原告が平成27年2月27日の当審第5回弁論準備手続期日(以下,単に「第5回弁論準備手続期日」という。)において平成26年12月25日付け原告準備書面(3)を陳述したことについて,請求原因の変更(訴えの変更)に該当するとして,民事訴訟法143条4項に基づきその不許を求める申立てをした。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告及び被告は,いずれも医薬品等の製造・販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告は,「PITAVA」と標準文字で書してなる商標(以下「本件商標」という。)につき,別紙商標権目録記載1のとおり,指定商品を「薬剤」とする商標登録第4942833号に係る商標権(以下「本件商標権」という。)を有していたが,同商標権につき,平成26年11月17日,商標権の分割を申請した(以下,同申請に基づく手続を「本件分割手続」という。)。本件分割手続により,本件商標権は,同目録記載2のとおり,指定商品を「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする商標登録第4942833号の1に係る商標権(以下「原告商標権1」という。)となるとともに,本件商標権から,同目録記載3のとおり, 指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とす 標登録第4942833号の1に係る商標権(以下「原告商標権1」という。)となるとともに,本件商標権から,同目録記載3のとおり, 指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする商標登録第4942833号の2に係る商標権(以下「原告商標権2」という。)が分割された(甲1,2,19,20の1・2)。 (3) 被告は,別紙被告商品目録記載の販売名の商品(以下「被告商品」という。なお,被告商品の錠剤表面には,同目録の写真に示されるとおりの印字からなる標章〔以下「被告全体標章」という。〕があり,被告標章は,その一部である。)を販売している。 (4) 原告は,平成15年9月以降,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とするHMG-CoA還元酵素阻害剤につき,販売名を「リバロ錠1mg」,「リバロ錠2mg」,「リバロ錠4mg」,「リバロOD錠1mg」,「リバロOD錠2mg」又は「リバロOD錠4mg」とする先発医薬品(新薬)(以下「原告商品」という。)を製造販売してきた。その後,原告の提携先である日産化学工業株式会社の有していた上記有効成分に関する特許権(以下「本件特許権」という。)の存続期間が平成25年8月に満了したことから,多数の後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造販売が承認され,薬価収載のあった同年12月以降,その製造販売が開始された。被告商品は,当該後発医薬品の一つである(甲7,14,乙1,11,14の1ないし5,17の1・2,19,30,32,35の1・2,36,37,39,弁論の全趣旨)。 (5) 被告商品は,原告商標権2に係る商標登録の指定商品と同一である。 3 争点(1) 被告標章が本件商標と類似するか(2) 被告標章の使用が商標的使用に当たるか(3) 被告標章が普通名称などを普通に用いられる方法で表 に係る商標登録の指定商品と同一である。 3 争点(1) 被告標章が本件商標と類似するか(2) 被告標章の使用が商標的使用に当たるか(3) 被告標章が普通名称などを普通に用いられる方法で表示する商標に当たるか (4) 原告商標権2に係る商標登録が無効審判により無効とされるべきものと認められ,又は原告による原告商標権2の行使が権利の濫用に当たるか第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(被告標章が本件商標と類似するか)について【原告の主張】(1) 被告標章と本件商標との対比本件商標は,欧文字の「PITAVA」との外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが,特段の観念は生じない。他方,被告標章は,片仮名の「ピタバ」との外観を有し,その称呼は「ピタバ」であり,特段の観念は生じない。そうすると,本件商標と被告標章とは,外観が異なるものの,称呼が同一であり,特定の観念を生じない点も同一であるから,両者は類似する。 (2) 被告の主張に対してア被告は,被告全体標章を一体性のある結合標章のごとく「ピタバ1テバ」とみて,本件商標と対比すべきである旨主張する。しかし,被告商品には,①「ピタバ」,②「1」,③「テバ」の各文字が異なる段に分かれて付されており,「ピタバ」と「テバ」の間に識別力を持たない数字の「1」が入り,両者を分断していること,「ピタバ」は上段にアーチ状に,「テバ」は下段に直線状に表記されていることからすれば,外観上,上記①ないし③の各文字は,明らかに分離表記されており,これらを一体として捉えることにより特定の意味・観念を生じるものでもないから,被告全体標章を一体性のある結合標章のごとく「ピタバ1テバ」とみることは相当でない。 被告は,この点に関連して,患者を被告商品のような医療用医薬品の により特定の意味・観念を生じるものでもないから,被告全体標章を一体性のある結合標章のごとく「ピタバ1テバ」とみることは相当でない。 被告は,この点に関連して,患者を被告商品のような医療用医薬品の取引者,需要者(以下「需要者等」という。)とみるべきでないかのごと き主張もするが,医師や薬剤師などの医療関係者(以下「医療従事者」という。)のみならず,患者も,自らの意思と支出において当該医薬品を購入するものであるから,需要者等に当たるというべきである。 イ仮に,被告全体標章を一体性のある結合標章のごとく「ピタバ1テバ」とみて,本件商標と対比したとしても,上記アで述べたところによれば,「ピタバ」の文字は,他の文字と異なり,被告商品の錠剤の表示に接した者に強い印象を与えるから,被告の主張に係る「ピタバ1テバ」なる表示の要部といえるのであり,前記(1)のとおり,被告標章「ピタバ」と本件商標が称呼及び観念において共通することからすれば,被告全体標章は,本件商標と類似する。 【被告の主張】(1) 対比の対象についてア被告が被告商品において実際に使用している標章は,下記イのとおり,被告全体標章を一体として把握することにより,「ピタバ1テバ」とみるべきであり,被告標章(「ピタバ」)とみるべきではない。そして,被告全体標章(「ピタバ1テバ」)と本件商標(「PITAVA」)とを対比すれば,両者は,外観,称呼,観念いずれの点においても類似しない。 イ被告商品は,厚生労働大臣の指定に基づくいわゆる処方箋医薬品であり,医師の処方箋の交付又は指示を受けた者以外の者に販売又は授与できないことなど,薬事法その他の法令の規制に従った取引の実情が存在する。 すなわち,被告商品については,製造業者の出荷から病院や薬局(以下「医療機関」という。) 指示を受けた者以外の者に販売又は授与できないことなど,薬事法その他の法令の規制に従った取引の実情が存在する。 すなわち,被告商品については,製造業者の出荷から病院や薬局(以下「医療機関」という。)への納入までが流通過程であり,医療機関への納入から患者への支給までが医療従事者による医療の提供であって(医師の処方箋の交付又は指示を受けた者〔以下「特定の患者」という。〕以外の者には,販売又は授与できない。),処方箋による調剤後はもはや一 般への流通はなく,専ら特定の患者の治療に用いられる。このように,医療従事者が商品たる処方箋医薬品の購買を決定し,患者は,医療従事者から医療の提供として当該医薬品の支給を受けるにすぎないという取引の実情に照らせば,商品の選択・決定権を有する医療従事者が類否の判断の主体であり,商品の選択・決定権のない患者は類否の判断主体とはいえない。 そして,被告商品の錠剤は,PTPシートに包含され内袋に封入され又はボトルに充填された状態で,添付文書とともに外箱に入れられるから,類否判断の主体たる医療従事者とすれば,被告商品の包装(外箱,ボトル,内袋,PTPシート)及び添付文書に一体不可分に表示された被告商品の販売名の表示を繰り返し観察・認識し,これを前提に被告全体標章(「ピタバ1テバ」)を観察するから,被告全体標章を被告商品の販売名の略記として一連一体に理解するものであって,被告全体標章から被告標章(「ピタバ」)のみを抽出して観察・認識することはない。 ウこの点,原告は,被告全体標章を一体として「ピタバ1テバ」とみたとしても,その要部が「ピタバ」である旨主張する。 しかし,被告全体標章のうち,「ピタバ」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与える等の事情はなく,「ピタバ1テバ」から「ピタバ」の部分を としても,その要部が「ピタバ」である旨主張する。 しかし,被告全体標章のうち,「ピタバ」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与える等の事情はなく,「ピタバ1テバ」から「ピタバ」の部分を取り出して観察することは不相当である。被告全体標章のうち,「ピタバ」は有効成分「ピタバスタチン」を,数字の「1」は1mgの有効成分含量を,「テバ」は会社名を表しており,これらの要素があって初めて医療事故の防止が可能となるのであるから,被告全体標章を一体として捉えるのが取引の実情に沿う。 なお,仮に,「ピタバ」が要部になり得たとしても,少なくとも医療従事者は「ピタバ」から「ピタバスタチン」を想起するだけであり,「ピタバ」が処方箋医薬品である被告商品の出所識別に機能することはない。 (2) 被告標章について仮に,被告標章について議論するとしても,被告商品の需要者等である医療従事者は,被告商品の購買に際し,医薬情報担当者(いわゆるMR)から商品の機能及び効能,安全性等につき詳細な説明を受け,製造業者についても吟味するから,被告商品の出所は常に明らかであり,被告商品について出所の混同を生じる可能性は著しく低い。 また,仮に,患者の認識を問題にしたとしても,患者は,薬剤師の服薬指導,薬剤情報提供書,お薬手帳,後発医薬品情報提供書等によって,正式な販売名,効能,用法・用量等の情報を総合的に与えられた上で,被告商品を認識するから,被告標章に接することにより,出所の混同を生じる可能性は著しく低い。 したがって,仮に,本件商標と対比すべき対象を被告標章とし,類否判断の主体に患者を含めたとしても,被告商品に関する具体的な取引の実情に照らせば,被告標章と本件商標は,類似しない。 2 争点(2)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか)について 告標章とし,類否判断の主体に患者を含めたとしても,被告商品に関する具体的な取引の実情に照らせば,被告標章と本件商標は,類似しない。 2 争点(2)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか)について【原告の主張】(1) 被告標章は,少なくとも薬剤の購入決定の過程に影響を及ぼすことのできる患者が購入・使用する場面において出所識別機能を発揮しており,商標として使用されている。すなわち,被告商品のような高脂血症治療剤は,長期間にわたり反復して購入・服用されるものであるところ,そのような薬剤の場合,患者は,購入する薬剤を実質的に選択することができるといえるし,少なくとも購入する薬剤が決定される過程に影響を与えることができる。そして,購入決定権を有する者はもちろん,購入決定の過程に影響を及ぼす者との関係においても,当該表示が出所識別機能を発揮している場合には,商標的使用に当たるというべきであるから,被告標章の表示 が商標的使用に該当することは,明らかである。 被告は,商標的使用に当たらない旨主張するが,医療従事者のみが判断主体であるという誤った前提に基づくものであり,失当である。 (2) 患者は,自らの症状を治すために薬剤を服用し,薬剤の効果や副作用について興味を持つことはあるとしても,当該薬剤の化学物質である有効成分の名称が何であるかということには興味や知識を持っていないのが通常である。また,医療従事者も,患者に対して薬剤を処方するに際し,薬剤の効果や副作用についての説明をすることはあるが,通常,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはない。そうだとすれば,患者が,被告標章(「ピタバ」)に接したときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するとはいえない。むしろ,錠剤に数文字の片仮名が表示されている場合, かを説明することはない。そうだとすれば,患者が,被告標章(「ピタバ」)に接したときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するとはいえない。むしろ,錠剤に数文字の片仮名が表示されている場合,当該片仮名は薬剤の名称又はその一部を示すものであることが多いことに照らせば,被告標章(「ピタバ」)に接した患者も,「ピタバ」は薬剤の名称又はその一部であると認識するのが通常である。 商品に販売者の名称に係る標章と,それとは別に商品の名称に係る標章を併記することは,一般的に行われていることであり,片方に出所識別機能があるからといって,他方に出所識別機能がないということにはならないから,仮に,被告商品の錠剤表面の印字中の「テバ」の文字によって,患者が被告商品の出所を識別することがあるとしても,同印字中の被告標章(「ピタバ」)が出所識別機能を有しないことにはならないし,患者がこれを有効成分であると認識することにもならない。 仮に,患者が,被告商品のPTPシート等に付された「ピタバスタチンCa錠1mg『テバ』」の表示に接したうえで,被告標章(「ピタバ」)に接したときに,「ピタバ」が,販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg『テバ』」のうち「ピタバスタチンCa」の一部の表示あるいはそれに由 来する表示であると認識することがあったとしても,被告商品の有効成分の名称が何であるかということについて興味も知識もなく,説明も受けていないから,「ピタバ」を「有効成分としての」ピタバスタチンCaを意味するものと認識することはない。 (3) 被告は,「医療事故防止の機能を果たす表示である」から「商標」でないと主張するが,医療事故防止の表示であることが商標的使用でないことの根拠にはならない。そもそも被告は,「ピタバ1テバ」が被告商品の販売名たる「ピタバス 止の機能を果たす表示である」から「商標」でないと主張するが,医療事故防止の表示であることが商標的使用でないことの根拠にはならない。そもそも被告は,「ピタバ1テバ」が被告商品の販売名たる「ピタバスタチンカルシウム錠1mg『テバ』」の略記であると繰り返し述べており,「ピタバ1テバ」の表示を商標として使用していないなどと主張することはできない。 【被告の主張】(1)ア本件商標と対比すべき対象を被告全体標章(「ピタバ1テバ」)とするか,被告標章(「ピタバ」)とするかにかかわらず,これら(少なくとも,「ピタバ」の文字)は,取引において自他商品識別標識として機能するものではなく,被告商品の内容を理解させたり,医療事故を防止したりするための表示である。 イ商標類否(出所混同)の判断主体である医療従事者は,被告全体標章について有効成分・含量・屋号(又は被告商標について有効成分)を表したものであると理解するから,被告全体標章(又は被告標章)は商標として機能するものではない。また,被告商品の錠剤表面の印字(「ピタバ1テバ」)あるいは同印字中の「ピタバ」との表示は,医療従事者の目には触れないものであるし,医療従事者は,添付文書,MRの説明などから商品の機能及び効能,安全性等に関する詳細な情報を得た上で購買決定するのであるから,被告商品の錠剤表面の印字のみに基づいて購買決定することはない。 ウ患者についても,薬剤師の服薬指導,薬剤情報提供書,お薬手帳,後発医薬品情報提供書等によって,医薬品の正式な販売名,効能,用法・用量等の情報を総合的に与えられた上,患者は薬についての希望を医師に伝えたり,薬局で先発医薬品・後発医薬品の選択をするなど,処方される医薬品に対して意識的なのであるから,患者は,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の表 合的に与えられた上,患者は薬についての希望を医師に伝えたり,薬局で先発医薬品・後発医薬品の選択をするなど,処方される医薬品に対して意識的なのであるから,患者は,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の表示をもって,「有効成分としての」ピタバスタチンカルシウムを意味するものと認識するとともに,商品の品質,原材料の表示(説明的表示)であると理解する。 また,①錠剤上の表示は医療事故防止のための表示であること,②被告商品は,医師の処方箋が不可欠な,処方箋医薬品であり,患者が自ら錠剤の表示に基づいてその出所を識別して薬剤の処方を受けることはないこと,③患者が,薬局において,先発医薬品と後発医薬品の選択をする場合,あるいは,患者が医者に対して,効き目や副作用の点から薬の変更や新しい薬の処方を依頼するといった場合において,患者が薬剤の表面に付された表示に基づき,その出所を識別して薬剤の処方を受けるという取引の実情はないことに照らせば,被告商品(錠剤)上に表示された被告標章は,患者との関係においても,商標として使用されるものではない。 3 争点(3)(被告標章が普通名称などを普通に用いられる方法で表示する商標に当たるか)について【被告の主張】本件商標と対比すべき対象を被告標章(「ピタバ」)と解しても,被告標章の表示は,被告商品の「品質」,「原材料」を「普通に用いられる方法で表示」するものであり,原告商標権2の効力は及ばない(商標法26条1項2号)。 【原告の主張】争う。 4 争点(4)(原告商標権2に係る商標登録が無効審判により無効とされるべきものと認められ,又は原告による原告商標権2の行使が権利の濫用に当たるか)について【被告の主張】(1) 商標法4条1項16号に該当すること(本件商標権又は原告商標権1の行使 無効とされるべきものと認められ,又は原告による原告商標権2の行使が権利の濫用に当たるか)について【被告の主張】(1) 商標法4条1項16号に該当すること(本件商標権又は原告商標権1の行使につき)「ピタバ」及び「PITAVA」は,「ピタバスタチン」及び「PITAVASTATIN」の略称としてこれらと同一の意味に理解され,周知,慣用されている。このため,本件商標(「PITAVA」)を「ピタバスタチン」を含まない「薬剤」に使用した場合,あたかも「ピタバスタチン(カルシウム)剤」(以下「ピタバスタチンカルシウム製剤」もしくは「ピタバスタチン製剤」ということがある。)であるかのように品質の誤認を生じるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項16号に該当し,本件商標権又は原告商標権1に係る商標登録は,同法46条1項1号,5号の無効理由を有し,原告は,本件商標権又は原告商標権1を行使することができない(なお,被告は,原告が第5回弁論準備手続期日において平成26年12月25日付け原告準備書面(3)を陳述したことにつき,本件商標権に基づく請求を取り下げるとともに,原告商標権2に基づく請求を追加する旨の請求原因の変更を意味するから,これに異議を述べるとともに,民事訴訟法143条4項に基づきその不許を求める申立てをした。したがって,本件商標権又は原告商標権1に基づく請求が本件の審理の対象である。)。 (2) 商標法4条1項7号に該当すること(原告商標権2の行使につき) ア 「PITAVA」及び「ピタバ」は,医薬品の一般的名称たる「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」の略称として周知,慣用され,医療・製薬業界で用いられているところ,原告商標権2の指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に本件商標(「 「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」の略称として周知,慣用され,医療・製薬業界で用いられているところ,原告商標権2の指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に本件商標(「PITAVA」)を使用しても,医療従事者は本件商標を指定商品の内容(成分)表示としてしか認識できず,原告の出所を認識させ,自他商品の識別として機能することができない。 イ本件商標(「PITAVA」)と,医薬品の一般的名称(「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」)の略称(「PITAVA」及び「ピタバ」)とは,外観,称呼及び観念において類似し,混同を生ずるおそれがある。WHOは,一般名を保護する立場から,一般名に由来する商標の採用を避けるよう加盟各国に勧告しており(乙3の2の1),この趣旨に照らしても「PITAVA」の登録商標は,公序良俗に反している。 ウしたがって,指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする原告商標権2に係る商標登録が認められると,医薬品の一般的名称の略称の使用が制限され,公序良俗を害するおそれがあるから,本件商標は商標法4条1項7号に該当し,原告商標権2に係る商標登録は,同法46条1項1号,5号の無効理由を有し,原告は,原告商標権2を行使することができない。 (3) 権利濫用以下のアないしオのとおり,本件商標権(若しくは原告商標権1)又は原告商標権2に基づく原告の権利行使は権利の濫用である。 ア独占適応性を欠くパブリックドメインについての権利取得,行使であること後発医薬品である錠剤の限られたスペースの中で,誤投与・誤服用防止 のために販売名を略記することは社会的要請である。誤投与・誤服用防止のためには,錠剤上に販売名等の表記が求められており,錠剤という限られたスペ れたスペースの中で,誤投与・誤服用防止 のために販売名を略記することは社会的要請である。誤投与・誤服用防止のためには,錠剤上に販売名等の表記が求められており,錠剤という限られたスペースの中で販売名を表記する場合,行政上要請された販売名「ピタバスタチンカルシウム錠1mg『テバ』」を表記することは視認性の観点から問題があるから,その略記を行うものである。誤投与・誤服用防止のために,販売名を表示する被告錠剤では,視認性の点より,略記の表示以外の手段がないから,本件商標権又は原告商標権2に基づく請求は権利濫用として許されない。 イ本件商標が商標法3条1項3号に該当すること「PITAVA」が「PITAVASTATIN」の冒頭部分に一致し,後半部分の「STATIN」の語がスタチン系薬剤すなわち高脂血症治療薬を意味する記述的な部分である以上,冒頭の「PITAVA」の語は他のスタチン系薬剤との識別に必要な主要な部分となるので,本件商標(「PITAVA」)が,その査定時においても,指定商品(ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤)の原材料,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることは明らかである。 また,本件商標権の分割により,本件商標(「PITAVA」)は,その指定商品そのものである薬剤「ピタバスタチンカルシウム製剤」に使用されることになったもので,本件商標は,指定商品の「品質」「原材料」をそのまま記述的に表示するものにほかならない。 したがって,本件商標は,商標法3条1項3号に該当する。 ウ本件商標が商標法3条1項6号に該当すること「PITAVA」及び「ピタバ」は,医薬品の一般的名称(「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」)の略称として周知,慣用され,医療・製薬業界で用いられている 法3条1項6号に該当すること「PITAVA」及び「ピタバ」は,医薬品の一般的名称(「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」)の略称として周知,慣用され,医療・製薬業界で用いられているから,本件商標(「PITAVA」) を指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に使用した場合,需要者等たる医療従事者は,商品の有効成分の一般的名称の略称と理解するので,本件商標は,特定の出所を表示する機能を欠いており,商標法3条1項6号に該当する。 エ本件商標の不使用本件商標は,不使用取消審判により取り消されるべきことが明らかであるから,その商標登録に係る商標権に基づく差止請求は,権利の濫用に当たり許されない。すなわち,原告とキョーリンリメディオ株式会社(以下「キョーリンリメディオ」という。)の間で締結された平成25年12月19日付け「商標使用許諾契約書」による契約(以下「本件商標使用許諾契約」という。)は,本件商標の積極的な使用を許諾する契約ではなく,キョーリンリメディオが本件商標と類似する「ピタバ」の表示の使用を速やかに中止することを前提に,既に製造し在庫を保有している商品の限度内でその販売等に対する本件商標権侵害に基づく差止め等を行わないという,禁止権行使の猶予を合意したものと解される。他方,商標法50条1項の制度趣旨(実際に使用される商標の保護を通じて商標に化体されている商標権者の業務上の信用を保護するという商標制度の目的にそぐわない商標を整理すること)に照らせば,商標権者から禁止権行使の猶予を受けたにすぎない者は,同項所定の「通常使用権者」に当たらないから,キョーリンリメディオによる「ピタバ」の使用をもって同項にいう通常使用権者による本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用があ すぎない者は,同項所定の「通常使用権者」に当たらないから,キョーリンリメディオによる「ピタバ」の使用をもって同項にいう通常使用権者による本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用があるということはできない。さらに,キョーリンリメディオが使用した「ピタバ」の表示も医療事故防止のために「ピタバスタチン」の略語として使用されていたのであって,キョーリンリメディオという商品の出所を表示するものでも,もちろん原告の出所を表示するものでもないので, 自他商品識別のための商標として使用されたものではない。 したがって,本件商標権又は原告商標権1及び原告商標権2に係る商標登録は,不使用取消審判により取り消されるべきことが明らかである。 オ後発医薬品の普及を不当に阻み,先発医薬品市場を守るための訴訟であること(ア) 後発医薬品の普及促進は日本国の国策,施策であり,原告による本件訴訟は権利の濫用として制限されなければならない。 後発医薬品については,販売名等の類似性に起因する医療過誤防止のため,薬事行政上,有効成分の一般的名称,剤型,含有量,会社名(屋号等)からなる販売名の使用が要請されている。このようにして認められた販売名について,その略記を,誤投与,誤服用という医療過誤を防止するために錠剤上に表示するという適正な表示方法を,先発医薬品メーカーが保有する商標権によって阻止しようとすることは,国家政策に反し,商標権の濫用となる行為である。 原告は,先発医薬品メーカーとして,本件特許権の存続期間が満了した後に後発医薬品メーカーによって現在の事態が引き起こされることを本件商標登録出願当時に予期して,本件商標を登録しておいたということが推認できる。 (イ) また,医療,製薬に関わる学会,業界等の関係者によって,「PIT によって現在の事態が引き起こされることを本件商標登録出願当時に予期して,本件商標を登録しておいたということが推認できる。 (イ) また,医療,製薬に関わる学会,業界等の関係者によって,「PITAVASTATIN」(ピタバスタチン)」が「PITAVA(ピタバ)」と略称されるであろうことは誰の眼にも明らかなことであったのであり,原告が,国際一般名称ないし一般的名称である「PITAVASTATIN」(ピタバスタチン)」,「ピタバスタチンカルシウム」の要部であり略称とされるべき「PITAVA」の語を商標登録すること自体,非難されるべきであり,ましてやそのような商標権に基づいて, 本来許されるべき他人の使用を制限しようすることは,商標権の濫用にほかならない。 【原告の主張】(1) 商標法4条1項16号に該当するとの主張について本件請求は,原告商標権2に基づくものであるところ,同商標権に係る指定商品は「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」であって,ピタバスタチンカルシウムを含有しない薬剤は指定商品ではないから,被告が主張するような品質誤認の問題は生じず,本件請求に対する抗弁とはならない。 (2) 商標法4条1項7号に該当するとの主張について「ピタバ」は,需要者等,とりわけ患者において,「ピタバスタチンカルシウム」の略称であると認識されているとはいえず,「「ピタバ」及び「PITAVA」は,「ピタバスタチン」及び「PITAVASTATIN」の略称として,これらと同一の意味に理解され,周知,慣用されている」とはいえず,被告の主張はその前提を欠くものである。 (3) 権利濫用との主張について(ア) 独占適応性を欠くパブリックドメインについての権利取得,行使であるとの主張について被告は,「PITAVA」が「PIT 主張はその前提を欠くものである。 (3) 権利濫用との主張について(ア) 独占適応性を欠くパブリックドメインについての権利取得,行使であるとの主張について被告は,「PITAVA」が「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」の略称として,これらと同義に理解され,周知,慣用されている旨主張するが,当該前提自体が誤りである。 被告は,後発医薬品メーカーは,後発医薬品について販売名の自由な選択が許されておらず,医薬品の有効成分名等を使用することが行政上要請されているとも主張するが,錠剤にどのような表示をするかについては何ら制限がない。 加えて,被告は,「ピタバ」及び「PITAVA」は,「ピタバスタチン製剤」の製造販売において,他に選択する語が見つけ難い,代替が容易でない語である旨の主張もするが,「ピタバ」の表示をしている錠剤は61品目中14品目(約23%)であり,多くの後発医薬品企業は錠剤に「ピタバ」以外の様々な表示をしているのであって,「ピタバ」が「取引に際して必要適切な表示として何人もその使用を欲するもの」に該当しないことは明らかである。 (イ) 本件商標が商標法3条1項3号に該当するとの主張について「PITAVA」は,「PITAVASTATIN」及び「ピタバスタチン」の略称として,これらと同義に理解され,周知,慣用されているとの前提が誤りであり,被告の主張は失当である。 また,本件では,5年の除斥期間が経過しているため,商標法3条1項3号に該当することを理由とする無効審判を請求することができない以上,同号該当性を抗弁として主張することもできないと解すべきである。 (ウ) 本件商標が商標法3条1項6号に該当するとの主張について争う。 なお,同号に該当することを理由とする無効審判を請求することが 号該当性を抗弁として主張することもできないと解すべきである。 (ウ) 本件商標が商標法3条1項6号に該当するとの主張について争う。 なお,同号に該当することを理由とする無効審判を請求することができない以上,同号該当性を抗弁として主張することもできないと解すべきである。 (エ) 本件商標の不使用との主張について原告は,キョーリンリメディオに対して,本件商標使用許諾契約に基づき,本件商標の通常使用権を許諾しており,同社において「ピタバ」の使用実績がある。 (オ) 後発医薬品の普及を不当に阻み,先発医薬品市場を守るための訴訟であるとの主張について 原告は,単に,被告による被告標章の使用が原告商標権2を侵害するとして,その差止等を求めているだけであって,後発医薬品を販売すること自体を問題としているわけではない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被告標章の使用は,商標的使用に該当せず,また,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)に該当するから,原告商標権2に係る商標登録は,無効審判により無効とされるべきものであって,原告は原告商標権2を行使することができないから,原告の本件請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 なお,前記前提事実(2)のとおり,本件分割手続により,本件商標権は原告商標権1となるとともに,本件商標権から原告商標権2が分割されたという経緯があるところ,被告は,原告が第5回弁論準備手続期日において平成26年12月25日付け原告準備書面(3)を陳述したことにつき,本件商標権に基づく請求を取り下げるとともに,原告商標権2に基づく請求を追加する旨の請求原因の変更(訴えの変更)を意味するとした上,請求の取下げ(訴えの一部取下げ)に異議 3)を陳述したことにつき,本件商標権に基づく請求を取り下げるとともに,原告商標権2に基づく請求を追加する旨の請求原因の変更(訴えの変更)を意味するとした上,請求の取下げ(訴えの一部取下げ)に異議を述べるとともに,請求の追加につき民事訴訟法143条4項に基づきその不許を求める申立てをした。しかし,原告商標権2は,本件商標権から分割されたものであって,原告は,本件分割手続の前後を通じ,一貫して,被告商品が指定商品と同一である旨の主張をしていることからすれば,原告の上記陳述は,本件分割手続を踏まえて,訴訟物としての同一性を失わない範囲で請求原因を補正したにすぎず(原告は,本件商標権のうち,原告商標権2に分割された部分に基づく請求をしていたと解されるのであって,原告商標権1となった部分に基づく請求をしていたとは解されない。),請求原因の変更(訴えの変更)には当たらないと解するのが相当である(仮に,請求原因の変更〔訴えの変更〕に当たるとする被告の主張によ るべきであるとしても,原告商標権2に基づく請求と本件商標権に基づく請求とは,請求の基礎を同一とするものであり,著しく訴訟手続を遅滞させるものでないことは,明らかであるから,これを許さないとすべき理由はない。)。 2 認定事実(1) 前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告商品は,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医療用後発医薬品であり,直径6mm程の円形の錠剤である。その錠剤両面上部には,略円弧状に横書きで片仮名の「ピタバ」(被告標章)の文字が,錠剤の中央部には数字の「1」が,下部には片仮名の「テバ」の文字が表記されている(乙1)。 イ 「ピタバスタチンカルシウム」又は「PitavastatinCa ピタバ」(被告標章)の文字が,錠剤の中央部には数字の「1」が,下部には片仮名の「テバ」の文字が表記されている(乙1)。 イ 「ピタバスタチンカルシウム」又は「PitavastatinCalcium」は,医薬品の一般的名称(厚労省の医薬品名称調査会が定める医薬品の名称で「JAN」〔「JapaneseAcceptedNames」の略〕と称される。)であり(当初登録名は「ニスバスタチンカルシウム」(nisvastatincalcium)),「pitavastatin」は,国際一般名称(世界保健機構(WHO)が定める医薬品の名称で「INN」〔「InternationalNonproprietaryName」の略〕と称される。)である(乙2の1・2,3の2の1・2,弁論の全趣旨)。 ウ HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)系化合物が,高脂血症治療薬として有効であることは広く知られ,「ピタバスタチンカルシウム」は,従来よりも有効性に優れるスタチンとして開発された。 また,医学分野の学会発表や研究報告において,スタチン系化合物は,「スタチン」,「スタチン類」,「スタチン系」,「スタチン系薬剤」な どと呼ばれ,スタチン系化合物である「プラバスタチン」,「シンバスタチン」,「フルバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等は,「スタチン」を省略した上で,「プラバ」,「シンバ」,「フルバ」,「アトルバ」,「ロスバ」等と慣用的に称されることがあり,これらと同様に,「ピタバスタチン」又は「pitavastatin」も,「ピタバ」又は「pitava」と称されることがある(乙4,5の1ないし12,6の1の1・2,6の2ないし8,7の1,7の2の1・2,7の3,8の1ないし10)。 エ特許庁は, in」も,「ピタバ」又は「pitava」と称されることがある(乙4,5の1ないし12,6の1の1・2,6の2ないし8,7の1,7の2の1・2,7の3,8の1ないし10)。 エ特許庁は,原告を出願人とする「ピタバ」の標準文字からなる商標の登録出願(商願2013-080944)に対し,平成26年3月4日付け(起案日)で拒絶理由を通知した。その理由は,指定商品を取り扱う業界において,「ピタバ」の文字は,「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されていることから,指定商品中,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする薬剤」に使用したときは,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする商品」等の意味合いを理解させるにとどまり,単に商品の原材料,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるから商標法3条1項3号に該当し,上記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとして同法4条1項16号に該当するとした。 その後,上記拒絶理由が解消されなかったとして,同出願は拒絶査定された(乙9の1,9の2)。 オ平成17年9月22日付け薬食審査発第0922001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について」(以下「厚労省通知」という。)によれば,医療事故防止等のため,一般的名称を基本とした販売 名を命名する際の取扱いのうち,「(1)全般的事項」として,「販売名の記載にあたっては,含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこと。なお,一般的名称を基本とした記載を行わない場合は,その理由を明らかにする文書を承認申請書に添付して提出すること」とされ,「(2)語幹に に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこと。なお,一般的名称を基本とした記載を行わない場合は,その理由を明らかにする文書を承認申請書に添付して提出すること」とされ,「(2)語幹に関する事項」として,「有効成分の一般的名称については,その一般的名称の全てを記載することを原則とするが,当該有効成分が塩,エステル及び水和物等の場合にあっては,これらに関する記載を元素記号等を用いた略号等で記載して差し支えないこと。 また,他の製剤との混同を招かないと判断される場合にあっては,塩,エステル及び水和物等に関する記載を省略することが可能であること。」とされている(乙10)。 カ被告商品は,PTPシートに包含され,内袋に封入されて外箱に入れられるか,ボトルに入れられて販売され,PTPシート,内袋,外箱,ボトルには,すべて販売名である「ピタバスタチンカルシウム錠」,「1mg」,「テバ」の表示が記載されている(乙11)。 キ後発医薬品においては,誤投与,誤飲の医療事故防止の観点から,「ピタバスタチンカルシウム錠1mg」の錠剤上に,「ピタバ1アメル」,「SWピタバ1」,「ピタバ1杏林」,「1mgピタバMEEK」,「ピタバ1明治」などと販売名を略記しているものがあり,錠剤上の表記につき「一錠毎に成分名と含量を表示」と成分名を表示していると説明しているものもある(乙14の1ないし5,39)。 なお,ピタバスタチンカルシウム以外の薬剤でも,誤投与,誤飲防止のために,錠剤上に,販売名が略記されているものもある(乙15の1ないし7)。 ク被告商品は,処方箋医薬品であり,患者に処方箋医薬品が交付される際, 薬剤情報提供書(処方される薬剤の販売名,効能,用法・用量,副作用,他の薬等との相互作用に関する主な情報,写真,薬価 被告商品は,処方箋医薬品であり,患者に処方箋医薬品が交付される際, 薬剤情報提供書(処方される薬剤の販売名,効能,用法・用量,副作用,他の薬等との相互作用に関する主な情報,写真,薬価等が記載されたもの)が添付され,お薬手帳を保有する患者には,新たに処方される薬剤の販売名,効能,用法・用量等が記載され,後発医薬品については後発医薬品情報提供書が添付される(乙23,24,29の1,29の2,29の4)。 3 争点(2)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか)について(1) 前記前提事実及び上記2の認定事実によれば,被告商品の販売にあたっては,その外箱,内袋,PTPシートに,薬剤の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」,薬剤の有効成分の含有量である「1mg」,被告が販売する医薬品であることを示す被告会社名「テバ」が示されていることが認められるところ,これは,後発医薬品に関する厚労省通知に従って,医療事故防止のため,被告商品の販売名を,薬剤の有効成分を示す「ピタバスタチンカルシウム」としたものと認められ,薬剤に含有する有効成分に係る一般的名称を販売名として表記したものと認められる。さらに,一般に,誤飲防止等のため,錠剤の表面上に販売名,含有量等が記載されること,後発医薬品の販売名として他の製剤との混同を招かない場合には,塩に関する記載を省略することが可能であり,医学分野の学会発表や研究報告において「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として「ピタバ」を用いることがあること,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の片仮名文字は,ピタバスタチンカルシウムの略記であると認めるのが相当である。 このように,後発医薬品においては,厚労省通知に従い,基本的に,有効成分に係る一般的名称を販売名として付すこととされているか 名文字は,ピタバスタチンカルシウムの略記であると認めるのが相当である。 このように,後発医薬品においては,厚労省通知に従い,基本的に,有効成分に係る一般的名称を販売名として付すこととされているから,同一の有効成分や含量のものを用いている以上,同一の販売名にならざるを得ず,有効成分に係る一般的名称やその含有量の表示に当該商品の出所識別機能 を認めることは困難である。この点,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」は,「ピタバスタチンカルシウム」の略記として表示されていると認められることは上記のとおりであるから,単に一般的名称の略記として被告商品(錠剤)上において使用されている「ピタバ」(被告標章)の表記は,商標的使用に当たらないというべきである。 (2) この点,原告は,患者の認識を基準とすれば,販売名と認識し得るとしても,これを有効成分であるとの認識までは有しない旨主張する。 確かに,被告商品の最終の需要者である患者にとっては,被告商品(錠剤)上の表記が販売名であるのか,有効成分の表示であるかについては明確には認識できないともいえる。 しかし,被告商品は,「ピタバスタチンカルシウム錠 1mg 『テバ』」との記載のあるPTPシート,内袋,外箱,ボトルに入れられた状態で患者の手元に届けられるものであって,シートから取り出された錠剤として手渡されることが想定されているものではないから,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の文字を患者が認識した際には,PTPシート等に記載された「ピタバスタチンカルシウム錠」の頭部分の3文字を略記したものであると認識するものと解され,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の文字のみにより商品の出所を識別するものとは解されない。 また,原告は,患者の選択に基づき薬品を調剤することがあること等から患者を被告商品の取 認識するものと解され,被告商品(錠剤)上の「ピタバ」の文字のみにより商品の出所を識別するものとは解されない。 また,原告は,患者の選択に基づき薬品を調剤することがあること等から患者を被告商品の取引主体として基準とすべきと主張し,甲15ないし17を掲げるが,上記のとおり,患者は,医薬品の正式な販売名,効能,用法・用量等の情報を総合的に与えられた上で,被告商品を識別するのであって,被告商品(錠剤)上の表示に着目して被告商品を識別するとはいえないから,原告の主張は採用できない。 4 争点(4)(原告商標権2に係る商標登録が無効審判により無効とされるべき ものと認められ,又は原告による原告商標権2の行使が権利の濫用に当たるか)について(1) 商標法4条1項7号該当性についてア商標法4条1項7号は,商標登録を受けることができない商標として,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を規定しているところ,ある商標を指定商品又は指定役務について使用することを特定人に独占させることが著しく社会的妥当性を欠くと認められるような場合には,当該商標は,同号に該当するものと解するのが相当である。 イこれを本件についてみるに,前記前提事実,前記2の認定事実及び弁論の全趣旨(当裁判所に顕著な事実を含む。)を総合すれば,①本件商標を構成する「PITAVA」の文字は,医学分野の学会発表や研究報告において,「pitavastatin」(原告商品及び被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の英語表記〔小文字表記〕である。)の略称として用いられている「pitava」の大文字表記であること,②被告標章を構成する「ピタバ」の文字は,被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカ バスタチン」の英語表記〔小文字表記〕である。)の略称として用いられている「pitava」の大文字表記であること,②被告標章を構成する「ピタバ」の文字は,被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の略称として用いられるものであること,③原告は,平成15年9月以降,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする原告商品を製造販売してきたが,同商品の販売に当たり,本件商標を使用したことはないこと,④原告は,本件特許権の存続期間が平成25年8月をもって満了し,同年12月以降,原告商品に対する後発医薬品の製造販売が開始されたことを受けて,当該後発医薬品の錠剤自体に「ピタバ」との記載を付している会社(原告が本件商標につき通常使用権を許諾したとするキョーリンリメディオを除く。)に対して,商標権侵害訴訟を提起したこと,⑤上記後発医薬品(被 告商品を含む。)の錠剤に「ピタバ」との記載がされた趣旨は,誤投与・誤飲による医療事故防止等を目的とした厚労省通知の要請に従おうとしたものであることが,いずれも認められる。 そうとすれば,原告による本件商標に係る商標登録出願は,本件特許権の存続期間満了後,原告のライセンシー以外の者による後発医薬品の市場参入を妨げるという不当な目的でされたものであることが推認されるばかりか,本件商標を指定商品「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」に使用することを原告に独占させることは,薬剤の取違え(引いては,誤投与・誤服用による事故)を回避する手段が不当に制約されるおそれを生じさせるものであって,公共の利益に反し,著しく社会的妥当性を欠くと認めるのが相当である。 なお,付言するに,原告のような先発医薬品を製造・販売する者が後発医薬品の市場参入を阻止したい おそれを生じさせるものであって,公共の利益に反し,著しく社会的妥当性を欠くと認めるのが相当である。 なお,付言するに,原告のような先発医薬品を製造・販売する者が後発医薬品の市場参入を阻止したいと考えること自体は,無理からぬところであるが,その手段は,特許権など医薬品それ自体に関する権利の行使によるべきであって,化合物の一般的名称である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられる「PITAVA」の文字を標準文字で書してなる本件商標と,薬剤の取違えを回避するため被告商品の錠剤表面に印字された「ピタバ」(有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として用いられることは,前示のとおりである。)との文字からなる標章(被告標章)とが類似する旨主張することは,公益上,容認することができないというべきである。 (2) 小括上記検討したところによれば,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号,46条1項1号)に該当し,原告商標権2に係る商標登録は,無効審判により無効とされるべきものと 認められるから,原告は原告商標権2を行使することができない(商標法39条により準用される特許法104条の3項)。 第5 結論以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 なお,前述のとおり,原告の第5回弁論準備手続期日における平成26年12月25日付け原告準備書面(3)の陳述は,請求原因の変更(訴えの変更)には当たらないと解するのが相当であり,仮に,請求原因の変更(訴えの変更)に当たるとしても,請求の基礎を同一とし,著しく訴訟手続を遅滞させるものでないからこれを許さないとすべき理由はない。そして,被 には当たらないと解するのが相当であり,仮に,請求原因の変更(訴えの変更)に当たるとしても,請求の基礎を同一とし,著しく訴訟手続を遅滞させるものでないからこれを許さないとすべき理由はない。そして,被告の異議により,従前の訴えの取下げが効力を生じないため,原告商標権1に基づく請求があるとみたとしても,①ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤である被告商品は,原告商標権1に係る登録商標の指定商品「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」と同一ではないこと,②被告標章の使用は,既に説示したとおり,商標的使用に当たらないこと,③本件商標を構成する「PITAVA」の文字は,既に説示したとおり,医学分野の学会発表や研究報告において,「pitavastatin」(原告商品及び被告商品の有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,塩に関する記載を省略した「ピタバスタチン」の英語表記である。)の略称として用いられている「pitava」の大文字表記であるところ,これを原告商標権1に係る登録商標の指定商品「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」に使用すれば,「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」であるかのように品質の誤認を生じるおそれがあるから,同商標権に係る商標登録は,商標法4条1項16号に該当し,無効審判により無 効とされるべきものと認められ,原告は原告商標権1を行使することができないこと(商標法39条により準用される特許法104条の3項)からすれば,当該請求に理由がないことは,明らかである。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官本井修平は転補のため,署名押印できない。 裁判長裁判官 嶋末和秀 (別紙) 被告標章目録 (別紙)商標権目録 1 登録番号第4942833号出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日登録商標PITAVA(標準文字)商品及び役務の区分第5類指定商品薬剤 2 登録番号第4942833号の1出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日登録商標PITAVA(標準文字)商品及び役務の区分第5類指定商品薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く 3 登録番号第4942833号の2出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日(商標登録原簿の甲区欄〔原告を商標権者とする旨〕の登録は,平成26年12月2日)登録商標PITAVA(標準 平成17年8月30日登録日平成18年4月7日(商標登録原簿の甲区欄〔原告を商標権者とする旨〕の登録は,平成26年12月2日)登録商標 PITAVA(標準文字)商品及び役務の区分第5類指定商品ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤 (別紙) 被告商品目録 (販売名) ピタバスタチンカルシウム錠1mg「テバ」
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