平成28(ワ)468 伊方原発運転差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月7日 大分地方裁判所 棄却
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判決文本文319,732 文字)

判決主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は、愛媛県西宇和郡K町L番地Mにおいて、伊方発電所3号機の原子炉を運転してはならない。 第2 事案の概要本件は、原告らが、被告の設置・運用する発電用(軽水型)原子炉施設(以 下、発電用(軽水型)原子炉施設を単に「原子炉施設」といい、発電用(軽水型)原子炉を単に「原子炉」という。)である伊方発電所(以下「本件発電所」という。)3号機の原子炉(以下「本件原子炉」という。)及びその附属施設(以下、本件原子炉と併せて「本件原子炉施設」という。)は、地震及び火山の噴火に対する安全性を欠いており、その運転により重大な事故が発生し、これによ り大量の放射性物質が放出されて、原告らの生命、身体、生活の平穏等(以下、これらを併せて「原告らの生命等」という。)の重大な法益に対する侵害が生ずる具体的危険があるとして、人格権に基づく妨害予防請求として、本件原子炉の運転の差止めを求める事案である。 第3 前提事実(当事者間に争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により 容易に認められる事実) 1 当事者⑴ 原告らは、別紙1当事者目録記載の大分県内の各住所地に居住する者であり、いずれも本件発電所から概ね半径140km圏内に居住している。(弁論の全趣旨) ⑵ 被告は、四国4県において、小売電気事業(電気事業法2条1項2号)、一 般送配電事業(同項8号)及び発電事業(同項14号)を行う電気事業者(同項17号)であり、本件原子炉施設を含む発電設備を所有している。(弁論の全趣旨) 2 本件発電所の概要等⑴ 本件発電所 本件発電所は、四国の北西端に細長く 項14号)を行う電気事業者(同項17号)であり、本件原子炉施設を含む発電設備を所有している。(弁論の全趣旨) 2 本件発電所の概要等⑴ 本件発電所 本件発電所は、四国の北西端に細長く突出した佐田岬半島の付け根に位置し、瀬戸内海の伊予灘に面している。本件発電所に設置されている3機の原子炉(1号機ないし3号機)の一つ(3号機)が本件原子炉(定格電気出力89万kW)である。 本件原子炉は、昭和61年5月26日に原子炉設置変更(増設)許可を受 けた後、同年11月1日建設工事が開始され、平成6年12月15日から営業運転が開始された。その後、平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)で事故が発生したことを受け、被告は、平成25年7月8日、原子力規制委員会(以下「規制委員会」という。)に対し、本件原子炉施設につき、原子炉設置変更 許可申請(以下、その後の補正も併せて「本件申請」という。)をし、規制委員会は、平成27年7月15日、原子炉設置変更許可処分(以下「本件許可」という。)をした。 なお、1号機は平成28年5月10日に、2号機は平成30年5月23日にそれぞれ電気事業法上の発電事業の用に供する発電用の電気工作物として 廃止された。 (乙3、ヨ1、ヨ11[6-3-7頁]、ヨ13、弁論の全趣旨)⑵ 本件発電所の敷地周辺の中央構造線本件発電所敷地周辺地域は、中央構造線(以下「地質境界としての中央構造線」という。)によって、北側の領家帯・白亜紀和泉層群(内帯)と南側 の三波川帯(外帯)に区分されている。また、本件発電所が面している伊予 灘には、近畿地方の金剛山地の東縁から、和泉山脈の南縁、淡路島南部の海域を経て、四国北部を東西に横断し、 と南側 の三波川帯(外帯)に区分されている。また、本件発電所が面している伊予 灘には、近畿地方の金剛山地の東縁から、和泉山脈の南縁、淡路島南部の海域を経て、四国北部を東西に横断し、伊予灘、別府湾を経て由布院に達する長大な断層帯である中央構造線断層帯がある。 地質境界としての中央構造線が活断層であるかについては、当事者間に争いがある。 (甲83、乙20、ヨ11[6-3-19~6-3-21頁]) 3 原子力発電の仕組み等⑴ 核分裂の仕組み全ての物質は元素(原子)から成っており、原子の中心には原子核(陽子と中性子の集合体)がある。ウラン235の原子核が中性子を吸収すると、 原子核が分裂(核分裂)し、その際、膨大な熱エネルギーとともに放射性物質であるヨウ素131、キセノン133等の核分裂生成物及び2個又は3個の高速中性子(速度の速い中性子)が発生する。発生した中性子は、別のウラン235の原子核に吸収されて次の核分裂を生じさせ、その後も次々と核分裂が繰り返される(核分裂連鎖反応)。(乙ヨ2、弁論の全趣旨) ⑵ 原子力発電の仕組み原子力発電は、前記⑴のようなウラン235の核分裂連鎖反応によって持続的に生じる熱エネルギーを利用するものであり、原子炉において取り出した熱エネルギーによって蒸気を発生させ、この蒸気でタービンを回転させて発電を行う発電方法である。 ウラン235の原子核が核分裂する確率は、熱中性子(速度の遅い中性子)の場合に大きくなるため、核分裂連鎖反応を行わせるためには、高速中性子の速度を熱中性子の速度まで減速させる必要があり、このために減速材が用いられる。また、核分裂を安定的に持続させるためには、核分裂を起こす中性子の数を調整することが必要であり、このために中性子を吸収しやすい を熱中性子の速度まで減速させる必要があり、このために減速材が用いられる。また、核分裂を安定的に持続させるためには、核分裂を起こす中性子の数を調整することが必要であり、このために中性子を吸収しやすい性 質を持つ制御材が用いられる。(乙ヨ2、弁論の全趣旨) ⑶ 原子炉の種類原子炉のうち、減速材及び冷却材(炉心を冷却するとともに、原子炉で発生したエネルギーを取り出すための媒介となるもの)の両者の役割を果たすものとして軽水(普通の水)を用いるものを軽水炉という。軽水炉のうち、一次冷却系と二次冷却系を有し、原子炉で発生させた高温高圧の一次冷却材 の持つエネルギーを、蒸気発生器を介して二次冷却系に伝達し、二次冷却系で発生した蒸気をタービンに送って発電するものを加圧水型原子炉(PWR)というが、本件原子炉は、この加圧水型原子炉である。(乙ヨ2、弁論の全趣旨) 4 本件原子炉施設の設備 ⑴ 原子炉原子炉は、核分裂連鎖反応により発生する熱エネルギーを安全かつ有効に取り出すための設備である。原子炉内は、一次冷却材である軽水で満たされており、これを減速材として中性子を減速させることで燃料であるウラン235を核分裂させるとともに、制御材を用いて核分裂連鎖反応を制御してい る。原子炉を構成するものは、次のアないしウ等である。 ア原子炉容器原子炉容器は、低合金鋼及び低合金鍛鋼を材料とする容器であり、燃料集合体等を収納している。(乙ヨ11[8-3-97、8-5-4~8-5-6、8-5-183、8-5-261頁]) イ燃料集合体燃料集合体は、ペレットを燃料被覆管の中に詰めた燃料棒を束ねたものである。ペレットは、原子力発電の燃料となるウランと酸素との化合物である二酸化ウランの粉末をプレス装置で成型し イ燃料集合体燃料集合体は、ペレットを燃料被覆管の中に詰めた燃料棒を束ねたものである。ペレットは、原子力発電の燃料となるウランと酸素との化合物である二酸化ウランの粉末をプレス装置で成型し焼き固めたものが主に用いられており、二酸化ウランと二酸化プルトニウムの混合物質であるウラ ン・プルトニウム混合酸化物(MixedOxide)を用いた燃料も 使用されている。(乙ヨ11[8-3-7、8-3-8、8-3-74~8-3-80頁]、弁論の全趣旨)ウ制御材本件原子炉では、制御材として、ホウ素、制御棒等が用いられている。 ホウ素は、中性子を吸収しやすい性質があるため、一次冷却材に添加 し、一次冷却材のホウ素濃度を調整することによって、原子炉内の中性子の数を調整し、核分裂連鎖反応を安定した状態に制御する。一次冷却材のホウ素濃度の調整は、平常運転時においては、体積制御タンク、充てんポンプ、ホウ酸タンク、ホウ酸ポンプ等の設備から構成される化学体積制御設備で、濃度を調整したホウ酸水を一次冷却設備に注入するな どして行われる。(乙ヨ11[8-3-44、8-3-45、8-5-131~8-5-141、8-5-230~8-5-237頁]、弁論の全趣旨)制御棒は、中性子を吸収しやすい性質を持つ銀・インジウム・カドミウム合金を用いたものであり、本件原子炉では、燃料集合体の上部から 挿入できるよう組み込まれており、制御棒の先端は、常に燃料集合体の中に入った状態となっている。一つの燃料集合体に挿入される制御棒の全ては上部で束ねられており(制御棒クラスタ)、これを制御棒クラスタ駆動装置で保持するとともに、原子炉内で上下に駆動させることで、原子炉内の中性子の数を調整し、核分裂連鎖反応を制御する。通常運転時 部で束ねられており(制御棒クラスタ)、これを制御棒クラスタ駆動装置で保持するとともに、原子炉内で上下に駆動させることで、原子炉内の中性子の数を調整し、核分裂連鎖反応を制御する。通常運転時 には、ほぼ全ての制御棒が引き抜かれた状態で原子炉内の核分裂連鎖反応は安定しているが、タービン出力が変化するなど急な原子炉出力調整の必要が生じた際には自動で上下駆動し原子炉出力を安定的に制御することが予定されている。また、緊急時には、制御棒クラスタが自動的に原子炉内に挿入され、原子炉を停止させる仕組みになっている。(乙ヨ1 1[8-3-27~8-3-33、8-3-81頁]、弁論の全趣旨) ⑵ 原子炉の冷却設備ア一次冷却設備一次冷却設備(加圧器、蒸気発生器、一次冷却材ポンプ等)は、原子炉内において、核分裂により生じた熱エネルギーによって高温となった一次冷却材を蒸気発生器に送り、蒸気発生器内において一次冷却材の熱エネル ギーを二次冷却材に伝え、二次冷却材に熱エネルギーを伝えて低温になった一次冷却材を再び原子炉に戻し循環させる機能を持つ。なお、一次冷却設備による循環回路は、放射性物質を閉じ込めるために全体として一つの障壁を形成しており、原子炉冷却材圧力バウンダリと呼ばれる。(乙ヨ11[8-5-1~8-5-4、8-5-259、8-5-260、8-5- 266、8-5-267頁]、弁論の全趣旨)イ二次冷却設備二次冷却設備(主蒸気逃し弁、タービン、復水器、主給水ポンプ、補助給水設備等)は、蒸気発生器内で熱交換を行って一次冷却材を除熱するとともに、蒸気となった二次冷却材をタービンに送り、発電した後の蒸気を 水に変えた後で、再び蒸気発生器に戻す機能を持つ。 原子炉内の残留熱は、通常は、主給水ポンプを用いた二次 冷却材を除熱するとともに、蒸気となった二次冷却材をタービンに送り、発電した後の蒸気を 水に変えた後で、再び蒸気発生器に戻す機能を持つ。 原子炉内の残留熱は、通常は、主給水ポンプを用いた二次冷却材の循環により、蒸気発生器への二次冷却材の給水を継続して、原子炉の残留熱を一次冷却材から蒸気発生器を通じて二次冷却材へ伝えることなどで除去されるが、主給水ポンプが使えない場合などに備えて、蒸気発生器に給水 して、原子炉の冷却を可能とする設備として補助給水設備が存在する。そして、補助給水設備には、外部電源が失われた場合でも、非常用ディーゼル発電機により稼働させることができる電動補助給水ポンプと、外部電源及び非常用ディーゼル発電機からの電力供給が失われた場合に、蒸気発生器で発生する蒸気で稼働させることを予定しているタービン動補助給水 ポンプとがある。 (乙ヨ11[8-5-161~8-5-167、8-5-171~8-5-176、8-5-241、8-5-242、8-5-248~8-5-251、8-5-254、8-5-255頁]、弁論の全趣旨)⑶ 電気設備ア発電機 発電機は、二次冷却設備のタービンに同軸で直結され、タービンが回転するエネルギーを基に電気を発生させる設備であり、需要家への供給に加えて、本件原子炉施設内の機器に供給される。 (乙ヨ11[8-10-38、8-10-39頁]、弁論の全趣旨)イ外部電源 外部電源は、本件発電所の外部で発電した電気を本件原子炉施設に供給するための設備であり、発電機の停止中に本件原子炉施設内の機器を運転するのに必要な電気の供給源である。(乙ヨ11[8-10-33~8-10-38頁])ウ非常用ディーゼル発電機 非常用ディーゼル発電機は、発電機が停 停止中に本件原子炉施設内の機器を運転するのに必要な電気の供給源である。(乙ヨ11[8-10-33~8-10-38頁])ウ非常用ディーゼル発電機 非常用ディーゼル発電機は、発電機が停止し、かつ、外部電源が喪失した場合に、発電所の安全を確保するために必要な設備を起動するための設備である。(乙ヨ11[8-10-1、8-10-5~8-10-9、8-10-135、8-10-136頁])エ直流電源設備 直流電源設備は、2組のそれぞれ独立した蓄電池、充電器、直流コントロールセンタ等で構成され、発電機が停止し、かつ、外部電源及び非常用ディーゼル発電機からの電気の供給が喪失した場合に、原子炉の温度、圧力等を監視・制御するために必要な機器に電気を供給することを目的とするものである。(乙ヨ11[8-10-9、8-10-10、8-10-1 37、8-10-138頁]) ⑷ 工学的安全施設ア原子炉格納施設本件原子炉には、放射性物質を閉じ込める施設として、原子炉格納容器及びコンクリート遮へい壁が設けられている。 原子炉格納容器は、原子炉、一次冷却設備等を囲っている気密性の極め て高い密封容器で、炭素鋼を材料としており、胴部の厚さは約4.5cmである。原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する配管の破損により一次冷却材喪失事故(LOCA)等が発生した場合に圧力障壁となり、放射性物質の放出に対する障壁となる。 コンクリート遮へい壁は、原子炉格納容器の更に外側をコンクリートで 囲んでおり、胴部の厚さ(最大)は約140cmである。原子炉格納容器とコンクリート遮へい壁の間には、密閉された円環状空間であるアニュラス部を設け、二重格納の機能を持たせている。 (乙ヨ11[8-9-1~8-9-8、8-9-142、8 40cmである。原子炉格納容器とコンクリート遮へい壁の間には、密閉された円環状空間であるアニュラス部を設け、二重格納の機能を持たせている。 (乙ヨ11[8-9-1~8-9-8、8-9-142、8-9-191頁]) イ非常用炉心冷却設備非常用炉心冷却設備は、仮にLOCA等が発生して一次冷却材が減少し、原子炉を冷却する機能が低下した場合であっても、原子炉にホウ酸水を注入することで、燃料の重大な損傷を防止するための設備である。(乙ヨ11[8-5-28~8-5-35、8-5-195、8-5-196頁]) ウ原子炉格納容器スプレイ設備原子炉格納容器スプレイ設備は、LOCA等が発生した場合に、核分裂により生成された放射性ヨウ素を吸収しやすくなる薬剤を添加しながら原子炉格納容器内にホウ酸水を噴霧することで、原子炉格納容器内の水蒸気を凝固させて圧力上昇を抑えるとともに、原子炉格納容器内に浮遊する 放射性ヨウ素等を除去する機能を持つ。(乙ヨ11[8-9-11~8-9 -16、8-9-159、8-9-160頁])エアニュラス空気再循環設備アニュラス空気再循環設備は、LOCA等が発生した場合に、アニュラス部を負圧(容器内の内部の圧力が外部(大気圧)よりも低い状態)に保ちながら、原子炉格納容器からアニュラス部に漏えいした空気を浄化しな がら再循環し、この空気に含まれる放射性物質の外部への放出を抑制する。 (乙ヨ11[8-9-17~8-9-20、8-9-176、8-9-177頁]) 5 地震に関する基本的な知見⑴ 地震の仕組み等 ア地震の発生機序地震とは、大地に揺れをもたらす源(地下の岩盤破壊)をいい、地震動とは、地震によってもたらされる大地の揺れをいう。地球の全表面は、十数枚のプレ ⑴ 地震の仕組み等 ア地震の発生機序地震とは、大地に揺れをもたらす源(地下の岩盤破壊)をいい、地震動とは、地震によってもたらされる大地の揺れをいう。地球の全表面は、十数枚のプレート(巨大な板状の岩盤)で覆われているところ、これらの移動(プレート運動)によって地下の岩盤に歪みが蓄積され、その歪みに岩 盤が耐え切れなくなると、ある面(断層面)を境にして岩盤が破壊されて(ずれて)地震が発生する。(乙ヨ16、弁論の全趣旨)イ地震の規模及び地震動の指標マグニチュード地震の規模は、本来、地震動のほか、断層運動による岩石の破壊や摩 擦、地殻変動などに費やされたエネルギーの総量によるのが合理的であるが、技術的に困難であることから、地震の規模を表す指標として、以下のものが用いられている。 a (気象庁)マグニチュード(M)任意の距離にある任意の地震計で観測された地震波の最大振幅や周 期から簡便に推定するものを「マグニチュード(M)」(うち、気象庁 によるものを「気象庁マグニチュード」という。)という。 b モーメントマグニチュード(Mw)高性能な地震計による長周期の地震波形記録を用いた複雑な計算をして、断層運動の規模(震源断層の面積×ずれた量×岩石の硬さ)である地震モーメントを基に算出するものを「モーメントマグニチュー ド(Mw)」という。 (乙ヨ15、ヨ16、弁論の全趣旨)ガル地震動を表す指標としては、震度又は加速度が用いられるが、加速度とは、地震によって地盤が振動する速度の単位時間当たりの変化の割合 をいい、その単位はガルである。(弁論の全趣旨)⑵ 地震の発生様式地震は、①陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる「内陸地殻内地震」、②相接する2つの 単位時間当たりの変化の割合 をいい、その単位はガルである。(弁論の全趣旨)⑵ 地震の発生様式地震は、①陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる「内陸地殻内地震」、②相接する2つのプレートの境界面で発生する「プレート間地震」及び③沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する「海洋プレート内地震」 (「スラブ内地震」ともいう。)の3つの発生様式に分類される。(乙ヨ15、ヨ16)⑶ 地震動に影響を与える地域特性特定の地点における地震動に影響を与える地域特性には、①震源から放出される地震波の性質は断層の大きさ、断層面の破壊の仕方等によって決まる という地震の「震源特性」、②震源から放出された地震波が、震源からの距離とともにその振幅を減じながら地下の岩盤中を伝播していく際の伝播の仕方等を指す地震波の「伝播特性」及び③地震波が、硬い地盤から軟らかい地盤に伝わる際に振幅が大きくなる性質を持っているため、軟らかい地盤上の地点では、岩盤上の地点に比べて大きな揺れ(地震動)をもたらす性質を指す 地盤の「増幅特性」がある。(乙ヨ16、弁論の全趣旨) 6 従前の原子炉施設に対する規制等⑴ 原子炉立地審査指針(以下「立地審査指針」という。)の策定原子力委員会(原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)に関する行政の民主的な運営を図るため、内閣府に置かれた委員会(原子力委員会設置法1条))は、昭和39年5月27日、陸上に定置する原子炉の設 置に先立って行う安全審査の際、万一の事故に関連して、その立地条件の適否を判断するためのものとして、立地審査指針を策定した。 立地審査指針においては、原則的立地条件として、①「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんで 、その立地条件の適否を判断するためのものとして、立地審査指針を策定した。 立地審査指針においては、原則的立地条件として、①「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少 ないこと。」、②「原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること。」、③「原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること。」の3点(以下、①ないし③を「原則的立地条件①」ないし「原則的立地条件③」という。)が定められた。 また、立地審査指針においては、立地条件の適否を判断する際に、少なくとも、原子炉からある距離の範囲(重大事故の場合、もし、その距離だけ離れた地点に人がいつづけるならば、その人に放射線障害を与えるかもしれないと判断される距離までの範囲)内は非居住区域であること、原子炉からある距離の範囲(仮想事故の場合、何らの措置を講じなければ、範囲内にいる 公衆に著しい放射線災害を与えるかもしれないと判断される範囲)内であって、非居住区域の外側の地帯は低人口地帯であること、さらに、原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離(仮想事故の場合、全身線量の積算値が集団線量の見地から十分受け入れられる程度に小さい値になるような距離)だけ離れていることが満たされる必要があると定められた。 (乙18) ⑵ 原子炉施設に関する耐震設計審査指針の作成等ア原子力委員会は、昭和53年9月、安全審査の客観化を図るため、それまでの安全審査の経験を踏まえ、地震学、地質学等の知見を工学的に判断して「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を定めた(その ア原子力委員会は、昭和53年9月、安全審査の客観化を図るため、それまでの安全審査の経験を踏まえ、地震学、地質学等の知見を工学的に判断して「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を定めた(その後、一部改訂が行われたものも含めて「旧耐震指針」という。)。 旧耐震指針では、原子炉施設敷地の解放基盤表面(基盤面上の表層や構造物がないものと仮定した上で、基盤面に著しい高低差がなく、ほぼ水平であって相当な広がりのある基盤の表面)において考慮する基準地震動として、原則として応答スペクトルに基づく地震動評価手法を用いて、①「設計用最強地震」(過去に原子炉施設の敷地又はその近傍に影響を与えたと 考えられる地震が再び起こり、敷地及びその周辺に同様の影響を与えるおそれのある地震と近い将来敷地に影響を与えるおそれのある活動度の高い活断層による地震のうちから最も影響の大きいもの)によりもたらされる基準地震動S1、②「設計用限界地震」(地震学的見地に立脚し設計用最強地震を上回る地震について、過去の地震の発生状況、敷地周辺の活断層 の性質及び地震地体構造に基づき工学的見地からの検討を加え、最も影響の大きいもの)によりもたらされる基準地震動S2を選定するものとしていた。(甲68、乙ヨ19、弁論の全趣旨)ここで、応答スペクトルに基づく地震動評価は、距離減衰式に代表される地震のマグニチュードと震源又は震源断層からの距離の関係で地震動 特性を評価する手法であり、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)の震源が活動したと仮定した場合に、評価地点において想定される地震動を経験的に算出するものである。そして、距離減衰とは、地震が発生した場所(震源)から遠くなればなるほど、地震の揺れ(震度の大きさ)が弱くなるこ したと仮定した場合に、評価地点において想定される地震動を経験的に算出するものである。そして、距離減衰とは、地震が発生した場所(震源)から遠くなればなるほど、地震の揺れ(震度の大きさ)が弱くなることをいい、距離減衰式とは、地震 の揺れの強さと震源からの距離との関係を式に表したもので、過去の多く の地震データの統計的処理によって得られるものであり、地震のマグニチュードや震源からの距離などを距離減衰式に入力すると、震源からの距離に応じて、地震の揺れや震度を計算することができる。通常、距離減衰式は、震源特性や伝播特性の異なる多くの地震により、サイト特性の異なる多くの観測点で得られた記録を統計処理している。(乙98[251、25 2頁])イ被告は、本件原子炉施設につき、原子炉設置変更(増設)許可を申請するに当たって、旧耐震指針を踏まえて地震動評価を行い、基準地震動S1(最大加速度221ガル)及び基準地震動S2(最大加速度473ガル)を策定した。(乙ヨ20[6-5-30、6-5-31、6-5-106~ 6-5-110頁]、弁論の全趣旨)⑶ 旧耐震指針の改訂及び基準地震動の変更等ア 1995年兵庫県南部地震では、日本で初めて震源近傍で強震動が観測され、震源特性、伝播特性及び増幅特性が強震動やそれによる被害に大きく影響していることが明らかになり、これにより、地震学及び地震工学に 関する新たな知見が蓄積された。また、地震動評価手法に関する研究も進展し、構造物の耐震性を精緻に把握するには、応答スペクトルに基づく地震動評価だけでなく、時々刻々と変化する揺れを表現できる時刻歴波形による評価が極めて重要であり、震源特性、伝播特性及び増幅特性を反映した時刻歴波形を直接作成する断層モデルを用いた評価手法が重要なもので 動評価だけでなく、時々刻々と変化する揺れを表現できる時刻歴波形による評価が極めて重要であり、震源特性、伝播特性及び増幅特性を反映した時刻歴波形を直接作成する断層モデルを用いた評価手法が重要なもので あると位置付けられるようになった。この断層モデルを用いた手法による地震動評価とは、震源断層面を設定し、その震源断層面にアスペリティ(断層面上で通常は強く固着していて、ある時に急激にずれて(すべって)地震波を出す領域のうち、周囲に比べて特にすべり量が大きく強い地震波を出す領域)を配置し、ある一点の破壊開始点から、これが次第に破壊し、 揺れが伝わっていく様子を解析することにより地震動を計算する評価手法 である。具体的には、①震源断層面を設定(アスペリティの配置を含む。)して細かい小断層(要素面)に分割し、②ある特定の要素面から破壊が始まるものとして破壊開始点を設定し、③破壊開始点から破壊が各要素面に伝播し、分割された各要素面からの地震波が次々に評価地点に伝わることにより評価地点に生じる地震動を足し合わせ(この時アスペリティからの 地震波は周囲よりも強いものとなる。)、④その結果、評価地点での地震動が求められるものである。 原子力安全委員会(原子力利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画、審議及び決定することを任務として、内閣府に設置された組織(平成24年6月27日法律第47号による改正前の原子力基 本法4、5条)。規制委員会の設置に伴い廃止された。)は、平成18年9月19日、それまでにおける地震学及び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに原子炉施設の耐震設計技術の著しい改良及び進歩を反映し、旧耐震指針を全面的に見直したものとして「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「改訂耐震指 び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに原子炉施設の耐震設計技術の著しい改良及び進歩を反映し、旧耐震指針を全面的に見直したものとして「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「改訂耐震指針」という。)を定めた。 改訂耐震指針では、基準地震動を「基準地震動Ss」に一本化し、基準地震動Ssの策定に当たっては、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「震源を特定せず策定する地震動」に分けて策定することとし、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」については、応答スペクトルに基づく地震動評価のみならず、断層モデルを用いた手法による地震動 評価を行うことが要求されるようになった。 (甲69、乙98[254、255頁])、ヨ21、弁論の全趣旨)イ原子力安全・保安院(経済産業省資源エネルギー庁に設置された特別の機関(平成24年6月27日法律第47号による改正前の経済産業省設置法20条)。規制委員会の設置に伴い廃止された。)は、平成18年9月2 0日、各電力会社等に対し、稼働中及び建設中の原子炉施設等に対する改 訂耐震指針に照らした耐震安全評価(以下「耐震バックチェック」という。)の実施を指示した。 被告は、本件原子炉施設につき、改訂耐震指針を踏まえて地震動評価を行い、基準地震動Ss-1(最大加速度570ガル)及び基準地震動Ss-2(最大加速度413ガル)を策定し、これらは、原子力安全・保安院 により実施された耐震バックチェックに係る審議において、改訂耐震指針等に照らして妥当なものと判断された。 (乙ヨ14[20頁])⑷ 震源断層を特定した地震の強震動予測手法(レシピ)の作成また、1995年兵庫県南部地震による被害経験を活かすため、地震防災 対策特別措置法 (乙ヨ14[20頁])⑷ 震源断層を特定した地震の強震動予測手法(レシピ)の作成また、1995年兵庫県南部地震による被害経験を活かすため、地震防災 対策特別措置法7条(平成7年7月18日施行)により、当時の総理府(現・文部科学省)に地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)が設置された。地震本部地震調査委員会(以下「地震調査委員会」という。)は、強震動評価に関する検討結果から、強震動予測手法の構成要素となる震源特性、地下構造モデル、強震動計算、予測結果の検証の現状における手法や震源特 性パラメータの設定に当たっての考え方について、震源断層を特定した地震を想定した場合の強震動を高精度に予測するための「誰がやっても同じ答えが得られる標準的な方法論」を確立することを目指して取りまとめた「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」(以下「レシピ」という。)を作成した。また、地震調査委員会は、レシピの策定に当たり実際に発生し た2000年鳥取県西部地震及び2005年福岡県西方沖地震等の観測波形とこれらの地震の震源像を基にレシピを用いて行ったシミュレーション解析により得られる理論波形を比較検討した結果、整合的であることを確認した。 レシピは、その後、複数回、改訂等がされており、平成28年6月にも改訂、同年12月に修正され、平成29年4月にも改訂されている(以下、平 成28年6月改訂のレシピを「平成28年改訂レシピ」、同年12月修正のレ シピを「平成28年12月修正レシピ」、平成29年4月改訂のレシピを「平成29年改訂レシピ」とそれぞれいう。)。 (甲45、乙24、ヨ38、弁論の全趣旨) 7 東北地方太平洋沖地震及び福島第一原発における事故の概要等⑴ 平成23年 平成29年4月改訂のレシピを「平成29年改訂レシピ」とそれぞれいう。)。 (甲45、乙24、ヨ38、弁論の全趣旨) 7 東北地方太平洋沖地震及び福島第一原発における事故の概要等⑴ 平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生した。当時、福島第 一原発の各原子炉のうち1号機ないし3号機は運転中、4号機ないし6号機は停止中であったところ、東北地方太平洋沖地震による地震動を検知して上記1号機ないし3号機は直ちに停止した。その際、地震による送電鉄塔の倒壊などにより外部電源喪失状態となったものの、非常用ディーゼル発電機が起動して交流動力電源を供給し、原子炉の冷却がされていた。しかしながら、 その後、非常用ディーゼル発電機等の電気設備の多くが機能を喪失し、交流電源を駆動電源として作動するポンプ等の注水・冷却設備が使用できない状態となるなどした結果、1号機ないし3号機においては、冷却機能を失った原子炉の水位が低下し、炉心の露出から炉心溶解に至り、その過程で、大量に発生した水素が格納容器を経て原子炉建屋に漏えいし、1・3号機の原子 炉建屋で水素爆発が発生するなどし、放射性物質が外部に放出された(以下、これら一連の事象を併せて「福島第一原発事故」という。)。 福島第一原発事故の原因につき、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法により国会に設けられた調査委員会。以下「国会事故調」という。)が公表した国会事故調報告書では、 地震動による安全上重要な設備の損傷の可能性が指摘されるとともに、国会による継続監視が必要な事項として、現行の関係法令との関連性も含め、指針類の体系、決定手続、その後の運用を適正化するために、これらを直ちに抜本的に見直す必要があるなどとされた。その後、規制委員 国会による継続監視が必要な事項として、現行の関係法令との関連性も含め、指針類の体系、決定手続、その後の運用を適正化するために、これらを直ちに抜本的に見直す必要があるなどとされた。その後、規制委員会は、上記指摘を踏まえて検討した上で、平成26年10月、「東京電力福島第一原子力発電 所事故の分析中間報告書」を取りまとめ、上記可能性を否定し、津波に よる浸水により受電遮断器が開放して、非常用交流電源系統が機能喪失した旨評価し、また、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)が平成27年8月に取りまとめた「福島第一原子力発電所事故事務局長報告書」においても、日本における原子力発電所の耐震設計と建設に対する保守的なアプローチにより、発電所が十分な安全裕度を備えていたため、発電所の主要な安 全施設が地震によって引き起こされた地盤振動の影響を受けたことを示す兆候はないが、津波のような極端な外部洪水事象に対しては十分な安全裕度を設けていなかった旨の評価がされている。 (甲33、乙98[42~44頁]、ヨ73、ヨ86、ヨ232、弁論の全趣旨) ⑵ 福島第一原発事故により、大気へ放射性物質が放出されたところ、平成23年3月末までのヨウ素131とセシウム137の放出量は最大約90京ベクレルと推定され、同月16日までのキセノン133の放出量は、チェルノブイリ原発事故時の約1.7倍である1100京ベクレルと試算され、平成25年9月時点におけるセシウムの放出量は、毎時1000万ベクレルと評 価された。また、平成23年4月1日から同月6日までの間、福島第一原発2号機から、合計4700兆ベクレルの放射性物質を含む汚染水520㎥が海洋に流出し、同年5月10日から同月11日までの間、福島第一原発3号機から、合計20兆ベクレ から同月6日までの間、福島第一原発2号機から、合計4700兆ベクレルの放射性物質を含む汚染水520㎥が海洋に流出し、同年5月10日から同月11日までの間、福島第一原発3号機から、合計20兆ベクレルの放射性物質を含む汚染水250㎥が海洋に流出し、その後も、汚染水の海洋への流出は続き、平成28年3月23日にも、 1リットル当たりセシウム38万3000ベクレル、ベータ線物質48万ベクレルを含む汚染水5.3トンが海洋に流出した。 平成23年4月、原子力災害対策本部により、「警戒区域」、「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」が設定され、同年9月、「緊急時避難準備区域」の解除が行われ、同年12月には、「警戒区域」及び「計画的避難区域」 の見直しのほか、「避難指示解除準備区域」、「居住制限区域」(年間積載線量 が20mSvを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難の継続を求める地域)及び「帰還困難区域」(5年間を経過してもなお、年間積算線量が20mSvを下回らないおそれのある、当該時点で年間積算線量50mSv超の地域)が設定された。東北地方太平洋沖地震の避難者は、平成25年4月現在、約30万9000人、上記各区域からの避 難者は、同年2月20日時点で、福島県内に限っても約10万7000人に上った。 (甲100~103、106、109~119、171) 8 福島第一原発事故を踏まえた検討⑴ 原子力安全委員会における検討 原子力安全委員会においては、「原子力安全基準・指針専門部会」の下に設置された「安全設計審査指針等検討小委員会」において、平成23年7月15日から平成24年3月15日まで計13回にわたり、安全規制に関する検討が行われた。同小委員会では、安全設計審査指針及び関連指 設置された「安全設計審査指針等検討小委員会」において、平成23年7月15日から平成24年3月15日まで計13回にわたり、安全規制に関する検討が行われた。同小委員会では、安全設計審査指針及び関連指針類に反映させるべき事項として、全交流動力電源喪失対策及び最終的な熱の逃がし場で ある最終ヒートシンク喪失対策を中心に検討が行われ、検討に際しては、深層防護(一般に、安全に対する脅威から人を守ることを目的として、ある目標を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求めるもの)の考え方を安全確保の基本と位置付け、アメリカの規制動向や諸外国における事例が参照された。 また、重大事故等対策についても検討が行われ、平成4年5月に決定した「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」において、原子炉設置者が効果的なアクシデントマネージメントの自主的整備と万が一の場合にこれを的確に実施できるようにすることが強く奨励されていたにもかかわらず、福島第一原発事故 が発生したことなどを踏まえ、平成23年10月に「発電用軽水型原子炉施 設におけるシビアアクシデント対策について」を決定し、平成4年5月の上記決定を廃止するとともに、シビアアクシデントの発生防止、影響緩和に対して、規制上の要求や確認対象の範囲を拡大することを含めて安全確保策を強化すべきとして、具体的な方策及び施策については、原子力安全・保安院における検討を求めた。 さらに、改訂耐震指針は、当時の地質学、地形学、地震学、地盤工学、建築工学、機械工学等の専門家らにより検討されたものであったが、地震とその後の津波により福島第一原発事故が発生したことを受けて、原子力安全委員会 耐震指針は、当時の地質学、地形学、地震学、地盤工学、建築工学、機械工学等の専門家らにより検討されたものであったが、地震とその後の津波により福島第一原発事故が発生したことを受けて、原子力安全委員会は、上記改訂後に蓄積された知見、平成23年3月11日以降に発生した地震及び津波に係る知見並びに福島第一原発事故の教訓を踏まえ、地震及 び津波に対する安全確保策について検討することとし、専門的な審議を行うため、原子力安全基準・指針専門部会に地震・津波関連指針等検討小委員会(以下「地震等検討小委員会」という。)を設置した。同小委員会は、同年7月12日から平成24年2月29日にかけて計14回の会合を開催し、東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波に係る知見並びに福島第一原発事故の 教訓を整理したほか、耐震バックチェックによって得られた経験及び知見を整理した。また、地震本部、中央防災会議(内閣府)等における東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波についての検討結果に加えて、土木学会における検討状況、世界の津波の事例及びIAEAや米国原子力規制委員会(NRC)等の規制状況、福島第一原発事故に関連した調査報告書も踏まえて検 討を行った。 以上の検討を踏まえ、地震等検討小委員会は、同年3月14日付けで、津波防護設計の基本的な考え方や津波対策を検討する基礎となる基準津波の策定を義務付けるべき旨を盛り込んだ「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針及び関連の指針類に反映させるべき事項について(とりまとめ)」を取 りまとめた。 (乙98[45~47、49、50頁])⑵ 原子力安全・保安院における検討原子力安全・保安院は、福島第一原発事故の発生及び進展について、当時までに判明している事実関係を基に、工学的 (乙98[45~47、49、50頁])⑵ 原子力安全・保安院における検討原子力安全・保安院は、福島第一原発事故の発生及び進展について、当時までに判明している事実関係を基に、工学的な観点から、できる限り深く整理・分析することにより、技術的知見を体系的に抽出し、主に設備・手順に 係る必要な対策の方向性について検討することとし、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会」を設置して、平成23年10月24日から平成24年2月8日まで計8回にわたり、原子力安全・保安院の分析や考え方に対する専門家の意見を聴きながら、検討を進めた。そして、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に ついて(平成24年3月原子力安全・保安院)」において、今後の規制に反映すべきと考えられる事項として、30項目を取りまとめた。 また、原子力安全・保安院は、重大事故等対策に関しては、同年2月から同年8月にかけて、「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方に係る意見聴取会」を7回開催し、専門家や原子炉 設置者からの意見を聴取するとともに、原子力安全・保安院及び関係機関がこれまでに検討していたシビアアクシデントに関する知見、海外の規制情報、福島第一原発事故の技術的知見などを踏まえて、技術面でのシビアアクシデント対策の基本的考え方を検討・整理し、「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方について(現時点での検討状況)」 を報告書として取りまとめた。もっとも、同報告書は検討過程としての側面を有しており、用語や概念の厳密な整理にはまだ完全ではない点が残っていたため、シビアアクシデント対策規制については、今後、新たに設置される規制委員会に めた。もっとも、同報告書は検討過程としての側面を有しており、用語や概念の厳密な整理にはまだ完全ではない点が残っていたため、シビアアクシデント対策規制については、今後、新たに設置される規制委員会において検討が進められることとなった。 さらに、原子力安全・保安院は、平成23年4月、原子力安全委員会から 東北地方太平洋沖地震等の知見を反映して耐震安全性に影響を与える地震に 関して評価を行うよう求められたことを受け、同年9月、事業者から報告された東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波による原子力発電所への影響などの評価結果について、学識経験者の意見を踏まえた検討を行うことなどにより、地震・津波による原子力発電所への影響に関して的確な評価を行うため、「地震・津波の解析結果の評価に関する意見聴取会」(第2回から「地 震・津波に関する意見聴取会」と改称)及び「建築物・構造に関する意見聴取会」を設置し、審議を行った。 そして、これらの意見聴取会において、それぞれ報告書が取りまとめられ、平成24年2月、原子力安全委員会に報告された。 (乙98[46~48、50、51頁]) 9 規制委員会の設置等⑴ 規制委員会の設置福島第一原発事故を契機に明らかとなった原子力利用に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、原子力利用に おける事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務を一元的につかさどるとともに、その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務を一元的につかさどるとともに、その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する規制委員会を設置し、もって国民 の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、平成24年6月27日、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」という。)が制定され(同法1条)、同年9月19日、施行された。 同法2条により、国家行政組織法3条2項に基づく、いわゆる3条委員会として、規制委員会が設置され、規制委員会は、原子炉に関する規制をはじ め原子力利用における安全の確保を図るために必要な施策の策定・実施を一 元的につかさどり(設置法1条及び4条)、その所掌事務について、原子力規制委員会規則を制定することができ(同法26条)、その運営に当たっては、情報の公開を徹底する(同法25条)こととされた。また、規制委員会の事務を処理させるため、規制委員会の事務局として原子力規制庁(以下「規制庁」という。)が設置された(同法27条)。 規制委員会は、平成25年1月9日、「原子力規制委員会の組織理念」を作成し、「原子力規制委員会は、(中略)(福島第一原発事故)の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために、(中略)国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置された。原子力にかかわる者はすべからく高い倫理観を持ち、常に世界最高水準の安全を 目指さなければならない。我々は、これを自覚し、たゆまず努力することを誓う。」旨宣言した。 (乙ヨ74)⑵ 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 指さなければならない。我々は、これを自覚し、たゆまず努力することを誓う。」旨宣言した。 (乙ヨ74)⑵ 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正ア平成24年6月27日、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関 する法律が改正され(以下「本件改正」といい、本件改正前のものを「改正前原子炉等規制法」と、本件改正後、平成29年4月14日法律第15号による改正前のものを「原子炉等規制法」という。)、同法1条に「原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原 料物質、核燃料物質及び原子炉による災害を防止し」(同部分につき平成25年7月8日施行)、「原子炉の設置及び運転等に関し、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行う」(同部分につき平成24年9月19日施行)等の文言が明記された。また、本件改正により、原子炉の設置の許可申請があった場合、規制委員会は、規 制委員会規則で定める基準に適合するか等を審査すること(以下「適合性 審査」という。同法43条の3の6第1項4号)、規制委員会は、上記基準に適合していない場合には、原子炉の設置者に対して、使用停止等を命ずることができること(同法43条の3の23第1項。いわゆるバックフィット制度)、原子炉の運転期間は原則として40年とすること(同法43条の3の31(ただし、平成25年12月18日以降、同法43条の3の3 2))などの改正が行われた(いずれも平成25年7月8日施行)。 イこのほか、本件改正により、原子炉に係る規制枠組みが、概要、以下のとおり定められた。 原 法43条の3の3 2))などの改正が行われた(いずれも平成25年7月8日施行)。 イこのほか、本件改正により、原子炉に係る規制枠組みが、概要、以下のとおり定められた。 原子炉を設置しようとする者は、規制委員会の原子炉設置許可を受けることを要する(同法43条の3の5、43条の3の6)。 の許可を受けた原子炉設置者は、工事に着手する前に、その工事の計画について規制委員会の認可を受けなければならない(同法43条の3の9)。 原子炉設置者は、原子炉の運転開始前に、規制委員会の使用前検査を受け、これに合格する(同法43条の3の11)とともに、保安規定を 定め、規制委員会の認可を受けなければならない(同法43条の3の24)。 原子炉設置許可を受けた者が、同法43条の3の5第2項2号から5号まで又は8号から10号までに掲げる事項(原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備等)を変更しようとするときは、規制委員会の設 置変更許可(同法43条の3の8)を受けた上、必要により、工事計画(変更)認可、使用前検査及び保安規定(変更)認可を受けなければならない(同法43条の3の9、43条の3の11、43条の3の24)。 新規制基準の策定等⑴ 規制委員会による検討 ア規制委員会は、重大事故等対策、地震及び津波以外の自然現象への対策 に関する設計基準に加え、これまで原子炉設置許可の基準として用いられてきた原子力安全委員会が策定した安全設計審査指針等の内容を見直した上で、規制委員会が定めるべき基準を検討するため、戊1委員(当時。以下「戊1委員」という。)を中心とする発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム(第21回より、発電用軽水型原子炉の新規制基準に関 する検討 めるべき基準を検討するため、戊1委員(当時。以下「戊1委員」という。)を中心とする発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム(第21回より、発電用軽水型原子炉の新規制基準に関 する検討チームと改称。以下「原子炉施設等基準検討チーム」という。)を設けた。また、自然現象に対する設計基準のうち、地震及び津波対策については、規制委員会の前身である原子力安全委員会に設置された地震等検討小委員会の検討も踏まえた上で、規制委員会が定めるべき基準を検討するため、戊2委員長代理(当時。以下「戊2委員長代理」という。)を中心 とする発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム(以下「地震等基準検討チーム」という。)を設けた。 各検討チームにおいては、従来から原子力規制行政に携わり原子力規制に対して造詣が深い規制庁の職員が参加したほか、以下のとおり、関係分野の学識経験者についても中立性を確保しつつ有識者として同席を求め、 専門技術的知見に基づく意見等を集約する形で規制基準の見直しが行われた。 (乙98[51、52頁])イ原子炉施設等基準検討チームにおける検討原子炉施設等基準検討チームにおける検討は、原子力安全委員会の安全 設計指針等検討小委員会の構成員でもあった戊1委員を中心として行われ、中立的な立場から複数の外部専門家を関与させるため、シビアアクシデント解析等、関係分野の専門技術的知見を有する学識経験者4名が同チームに参加した。また、日本原子力研究開発機構安全研究センターにおいて研究主席の地位にある者(これらの者は、安全設計指針等検討小委員会 の構成委員でもあった。)についても、電気事業者等との関係での中立性の 確認が行われた上で、同チー センターにおいて研究主席の地位にある者(これらの者は、安全設計指針等検討小委員会 の構成委員でもあった。)についても、電気事業者等との関係での中立性の 確認が行われた上で、同チームに参加した。 原子炉施設等基準検討チームにおいては、平成24年10月25日から平成25年6月3日にかけて、原子炉施設の新規制基準(地震及び津波対策を除く。)策定のため、学識経験者らの参加の下、計23回の会合が開催され、福島第一原発事故から得られた教訓(共通要因による複数の安全機 能の同時喪失等)を踏まえ、設計基準事象に対応するための対策の強化を図る観点から、安全設計審査指針等の内容を見直した上で規則化等を検討することとされ、その際には、IAEA安全基準や欧米の規制状況等の海外の知見も勘案された。 また、原子炉等規制法が、重大事故等対策を新たに規制対象としたこと を踏まえ、原子炉施設等基準検討チームにおいては、重大事故等対策について重点的な検討を行うこととし、福島第一原発事故の教訓及び海外における規制等を勘案し、仮に、事故防止に係る安全確保対策を講じたにもかかわらず複数の安全機能の喪失などの事象が万が一発生したとしても、炉心損傷に至らせないための対策として、重大事故の発生防止対策、さらに 重大事故が発生した場合の拡大防止対策など、重大事故等対策に関する設備に係る要求事項及び重大事故等対策の有効性評価の考え方等について検討された。 そして、原子炉施設等基準検討チームは、検討結果を踏まえ、新規制基準の骨子案を作成し、これらについて、規制委員会が平成25年2月に行 政手続法に基づくものではない任意の意見公募手続を行った結果も踏まえ、基準案を取りまとめた。 (乙98[52~54頁])ウ地震等基準検討 規制委員会が平成25年2月に行 政手続法に基づくものではない任意の意見公募手続を行った結果も踏まえ、基準案を取りまとめた。 (乙98[52~54頁])ウ地震等基準検討チームにおける検討地震等基準検討チームにおける検討は、戊2委員長代理を中心として行 われ、原子力安全委員会における耐震指針等の報告書の検討に参画した有 識者のほか、東北地方太平洋沖地震以降、耐震関係の様々な見直しの場に参画し、基準の策定に貢献した有識者らの中から地震、津波及び地盤等の各種専門分野の専門技術的知見を有する学識経験者6名が選抜され、検討内容に応じて、地形学、地震、津波及び建築に関する学識経験者がチームに参加した。また、原子炉施設等基準検討チームと同様、これらの学識経 験者らについては、電気事業者等との関係での中立性の確認が行われた。 地震等基準検討チームにおいては、平成24年11月19日から平成25年6月6日までの間、原子炉施設の地震・津波に関わる新規制基準策定のため、学識経験者らの参加の下、計13回の会合が開催された。 地震等基準検討チームは、原子力安全委員会の下で地震等検討小委員会 が取りまとめた耐震指針等の改訂案のうち、地震及び津波に関わる安全設計方針として求められている各要件については、新たに策定する基準においても重要な構成要素となるものと評価するとともに、基準の骨子案を策定するに当たっては、上記改訂案の安全設計方針の各要件について改めて分類・整理し、必要な見直しを行った上で基準の骨子案の構成要素とする 方針を示した。そして、地震等基準検討チームは、上記検討方針に基づき、地震及び津波について、IAEA安全基準、アメリカ、フランス及びドイツの各規制内容のほか、福島第一原発事故を踏まえた国 る 方針を示した。そして、地震等基準検討チームは、上記検討方針に基づき、地震及び津波について、IAEA安全基準、アメリカ、フランス及びドイツの各規制内容のほか、福島第一原発事故を踏まえた国会及び政府等の事故調査委員会の主な指摘事項のうち耐震関係基準の内容に関するものを整理し、これらと改訂耐震指針とを比較した上で、国や地域等の特性に配 慮しつつ、規制として適切な内容を検討した。 また、地震等基準検討チームは、原子炉施設における安全対策への取組みの実態を確認するため、電気事業者に対するヒアリングを実施するとともに、東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波を受けた東北電力株式会社女川原子力発電所(以下「女川原発」という。)の現地調査を実施し、こ れらの結果も踏まえ、安全審査の高度化を図るべき事項についての検討を 進めた。そして、地震等基準検討チームは、検討結果を踏まえ、地震・津波に関する新規制基準の骨子案を作成し、これについて、規制委員会が平成25年2月に行政手続法に基づくものではない任意の意見公募手続を行った結果も踏まえ、基準案を取りまとめた。 (乙98[54~56頁]) ⑵ 規制委員会による新規制基準の策定規制委員会は、前記⑴イ、ウの基準案に対し、行政手続法に基づいて平成25年4月11日から1か月間の意見公募手続を行い、寄せられた意見について議論を加えた上で、新規制基準(各種規則及び当該規則の解釈並びに各種許可時の審査に用いる各種審査ガイドの総称であり、その一部は後記⑶の とおりである。)を策定した。そして、新規制基準は、同年7月8日、施行された。(乙98[56頁]、ヨ185、ヨ186)⑶ 新規制基準の概要ア原子炉設置許可(前記9⑵イ)については、原子炉等規制法43条の 定した。そして、新規制基準は、同年7月8日、施行された。(乙98[56頁]、ヨ185、ヨ186)⑶ 新規制基準の概要ア原子炉設置許可(前記9⑵イ)については、原子炉等規制法43条の3の6第1項各号に適合することが求められ、原子炉設置変更許可(前記 9⑵イ)についても、同法43条の3の8第2項により、同法43条の3の6第1項が準用されているところ、規制委員会は、同項4号(「発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」)所定の 「原子力規制委員会規則」として、実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(以下「設置許可基準規則」という。)を制定し、その解釈として、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(以下「設置許可基準規則解釈」という。)を定めた。(乙80、ヨ68) イ工事計画の認可(前記9⑵イ)については、原子炉等規制法43条の 3の9第3項各号に適合することが求められ、また、使用前検査(前記9⑵イ)については、同法43条の3の11第2項各号に適合することが求められるところ、規制委員会は、同法43条の3の9第3項2号(「発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合するものであること」)及び同法43条の3の11第2項2号(「第43条の3の14の技 術上の基準に適合するものであること」)所定の「技術上の基準」として、実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則を制定し、その解釈として、「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規 に適合するものであること」)所定の「技術上の基準」として、実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則を制定し、その解釈として、「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈」を定めた。(乙ヨ76)ウ地震に関する審査ガイド 規制委員会は、平成25年6月19日、原子炉施設の設置許可段階の耐震設計方針に関わる審査において、審査官等が設置許可基準規則及び設置許可基準規則解釈の趣旨を十分に踏まえ、基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用することを目的として、「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(以下、令和4年6月8日改正前のものを「地 震ガイド」といい、上記改正後のものを「令和4年地震ガイド」という。)を策定した。(甲70、乙ヨ39)規制委員会は、平成25年6月19日、原子炉施設の設置許可段階の審査において、審査官等が設置許可基準規則及び設置許可基準規則解釈の趣旨を十分に踏まえ、基準地震動等の策定並びに地盤の安定性評価等 に必要な調査及びその評価の妥当性を厳格に確認するために活用することを目的として、「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド」(以下、令和4年6月改正前後を併せて「地質ガイド」という。)を策定した。(乙81)エ火山に関する審査ガイド 規制委員会は、平成25年6月19日、新規制基準が求める火山の影響 により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であることの評価方法の一例を示すとともに、火山影響評価の妥当性を審査官が判断する際の参考とするため、「原子力発電所の火山影響評価ガイド」(以下「旧火山ガイド」という。)を策定した。(甲232) 11 地震に関する新規制基準の概要及び本件申請の概要 ⑴ 地震に関す する際の参考とするため、「原子力発電所の火山影響評価ガイド」(以下「旧火山ガイド」という。)を策定した。(甲232) 11 地震に関する新規制基準の概要及び本件申請の概要 ⑴ 地震に関する新規制基準の概要ア設置許可基準規則及び設置許可基準規則解釈別記2設置許可基準規則4条3項は、「耐震重要施設は、その供用中に当該耐震重要施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(以下「基準地震動による地震力」という。)に対して 安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」と規定し、設置許可基準規則解釈別記2は、「基準地震動」について、「最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なもの」であり(同別記2第4条5項柱書)、「敷地ごとに震源を特 定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定することとしている(同項1号)。(甲67、乙80、ヨ68)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、検討用地震を複数選 定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を行い、この結果に基づき策定することとしている(同項2号柱書)。 また、地震動評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域に おける特性を含む。)を十分に考慮し、その策定過程に伴う各種の不確か さ(震源断層の長 における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域に おける特性を含む。)を十分に考慮し、その策定過程に伴う各種の不確か さ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせる など適切な手法を用いて考慮することとしている(同項2号④、⑤)。 なお、内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討す るとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、上記各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、更に十分な余裕を考慮して基準地震動を策定することとしている(同項2号⑥)。 (甲67、乙80、ヨ68)「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定することとしている(同項 3号)。(甲67、乙80、ヨ68)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定す して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定することとしている(同項 3号)。(甲67、乙80、ヨ68)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の地震動評価においては、適用する評価手法に必要となる特性データに留意の上、地震波の伝播特性に係るものとして、①敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性 に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、 断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰特性を評価することとし、評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き三次元的な地下構造により検討すること、②上記①の評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調 査については、地域特性及び既往文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地質調査、ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施することとしている(同項4号)。(甲67、乙80、ヨ68)イ地震ガイド 地震ガイドにおける「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」に係る定めは、概要、以下のとおりであった。(甲70、乙ヨ39)a 策定方針「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定においては、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、 検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価により、それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定する必要がある。なお、地震動評 ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価により、それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定する必要がある。なお、地震動評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式、地震波の 伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)が十分に考慮されている必要がある。(地震ガイドⅠ.2.⑵、Ⅰ.3.1⑴)震源が敷地に近く、その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震については、断層モデルを用いた手法が重視されている必要がある(地震ガイドⅠ.3.1⑵)。 b 検討用地震の選定-震源特性パラメータの設定 震源特性パラメータの設定に当たっては、震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連付ける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮さ れている必要がある。(地震ガイドⅠ.3.2.3⑵。以下、同項全体を「本件ばらつき条項」という。)c 地震動評価-応答スペクトルに基づく地震動評価経験式(距離減衰式)の選定に当たっては、用いられている地震記録の地震規模、震源距離等から、適用条件、適用範囲について検討し た上で、経験式(距離減衰式)が適切に選定されていることを確認する。参照する距離減衰式に応じて適切なパラメータを設定する必要があり、併せて震源断層の広がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 (地震ガイドⅠ.3.3.1⑴①1)、2)) また、地震波伝播特性( があり、併せて震源断層の広がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 (地震ガイドⅠ.3.3.1⑴①1)、2)) また、地震波伝播特性(サイト特性)の評価に当たって、水平及び鉛直地震動の応答スペクトルは、参照する距離減衰式の特徴を踏まえ、敷地周辺の地下構造に基づく地震波の伝播特性(サイト特性)の影響を考慮して適切に評価されていることを確認する(地震ガイドⅠ.3. 3.1⑴②1))。 d 地震動評価-断層モデルを用いた手法による地震動評価⒜ 震源モデルの設定に当たり、震源断層のパラメータは、活断層調査結果等に基づき、レシピ等の最新の研究成果を考慮し設定されていることを確認する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷①1))。 ⒝ 震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、地表に変 位を伴う断層全体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を 考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する(地震ガイドⅠ. 3.3.2⑷④1))。 ⒞ 地下構造モデルの設定においては、地下構造(深部・浅部地下構 造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、地層の傾斜、断層、褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震発生層の上端深さ、地震基盤・解放基盤の位置や形状、地下構造の三次元不整形性、地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰特性が適切に評価されていることを確認する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤3))。 地震基盤までの三次元地下構造モデルの設定に当たっては、地震観測記録(鉛直アレイ地震動観測や水平アレイ地震動観測記録)、微動アレイ探 ることを確認する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤3))。 地震基盤までの三次元地下構造モデルの設定に当たっては、地震観測記録(鉛直アレイ地震動観測や水平アレイ地震動観測記録)、微動アレイ探査、重力探査、深層ボーリング、二次元あるいは三次元の適切な物理探査(反射法・屈折法地震探査)等のデータに基づき、ジョイントインバージョン解析手法など客観的・合理的な手段によ ってモデルが評価されていることを確認し、地下構造の評価の過程において、地下構造が水平成層構造と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討されていることを確認する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤4))。 特に、敷地及び敷地近傍においては鉛直アレイ地震動観測や水平 アレイ地震動観測記録及び物理探査データ等を追加して三次元地下構造モデルを詳細化するとともに、地震観測記録のシミュレーションによってモデルを修正するなど高精度化が図られていることを確認する。この場合、適切な地震観測記録がない場合も含めて、作成された三次元地下構造モデルの精度が地震動評価へ与える影響につ いて、適切に検討されていることを確認する(信頼性の高い地震動 評価が目的であるため、地下構造モデルの精度に囚われすぎないことに留意する。)。(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤5))e 不確かさの考慮⒜ 応答スペクトルに基づく地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評 価においては、用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性が考慮されている必要がある(地震ガイドⅠ.3.3.3⑴)。 ⒝ 断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて、震源特性パラメ れている必要がある(地震ガイドⅠ.3.3.3⑴)。 ⒝ 断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて、震源特性パラメータの不確かさについて、その設定の考え方 が明確にされていることを確認する。 (地震ガイドⅠ.3.3.3⑵)震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ及びそれらに係る考え方、解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には、敷地における地震動評価に大き な影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し、その結果を地震動評価に反映させることが必要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 (地震ガイドⅠ.3.3.⑵①1)) 地震動の評価過程に伴う不確かさについては、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評価においては、震源特性(震源モデル)、伝播特性(地殻・上部マントル構造)、サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確実さ要因を 偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して、分析が適切になさ れていることを確認する。(地震ガイドⅠ.3.3⑵②1)、2))地震ガイドの改正地震ガイドは、令和4年6月8日、以下の改正がされた(令和4年地震ガイド)。なお、令和4年地震ガイドは、これまでの規制委員会による審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものであり、地震ガイドの内 容を変更するものではないとされている 正がされた(令和4年地震ガイド)。なお、令和4年地震ガイドは、これまでの規制委員会による審査実績等を踏まえた表現の改善等を行うものであり、地震ガイドの内 容を変更するものではないとされている。 令和4年地震ガイドでは、本件ばらつき条項が削除され、経験式を用いる場合の留意事項、すなわち、経験式の適用条件、適用範囲について留意する旨が「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の「審査の方針」に総則的に記載された(令和4年地震ガイドⅠ.3.1.⑵)。そ して、同「審査の方針」の解説部分には、①地震動評価において、経験式として距離減衰式を参照する場合には、震源断層の広がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズム等の影響が考慮された上で、当該距離減衰式に応じた適切なパラメータが設定されていることに留意する必要があり、②複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然 であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものであるから、評価時点で適用実績が十分でなく、かつ、広く一般に使われているものではない経験式が選定されている場合には、その適用条件、適用範囲のほか、当該経験式の元となった観測データの特性、考え方等に留意する必要がある旨が記載された(令和4年 地震ガイドⅠ.3.1〔解説〕)。 また、不確かさの考慮に関しては、「基準地震動の策定に係る審査の基本方針」として、「基準地震動が、地震動評価に大きな影響を与えると考えられる不確かさを考慮して適切に策定されていることを、地震学及び地震工学的見地に基づく総合的な観点から判断する」ことが明確にされ た(令和4年地震ガイドI.2⑵)。 (乙388、389、393、396)ウ地質ガイド地質ガイドには、地震動評 的見地に基づく総合的な観点から判断する」ことが明確にされ た(令和4年地震ガイドI.2⑵)。 (乙388、389、393、396)ウ地質ガイド地質ガイドには、地震動評価のための地下構造調査に関し、概要、以下の定めがある。(甲208、乙81、394)地下構造(地盤構造、地盤物性)の性状は敷地ごとに異なるため、地 震動評価のための地下構造モデル作成に必要な地下構造調査に際しては、それぞれの敷地における適切な調査・手法が適用されていることを確認する。なお、ここにいう「適切な調査」とは、調査により取得された地下構造データに基づいて作成された地下構造モデルを用いて、比較的短周期領域における地震動を高い精度で評価可能な地下構造調査を意味す る。(地質ガイドⅠ.5.1⑴、〔解説〕⑷)敷地及び敷地周辺の調査については、地域特性、既往文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地質調査、ボーリング調査及び二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施されていることを確認する。(地質ガイドⅠ.5.1⑶) 地震動評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討されていることを地震ガイドにより確認する。(地質ガイドⅠ.5.1⑷)⑵ 地震動に関する本件申請の概要地震動に関する本件申請の概要は以下のとおりである。 ア敷地ごとに震源を特定して策定する地震動敷地地盤の評価被告は、本件発電所の敷地地盤における地震観測記録や本件原子炉付近におけるボーリング調査、深部ボーリング調査及び物理検層等の結果から、本件発電所の敷地地盤は特異な増幅特性を示さない堅硬な岩盤が 十分な広がりと深さを持っていることを確認したと 本件原子炉付近におけるボーリング調査、深部ボーリング調査及び物理検層等の結果から、本件発電所の敷地地盤は特異な増幅特性を示さない堅硬な岩盤が 十分な広がりと深さを持っていることを確認したとして、敷地標高と同 じ標高10mの位置に解放基盤表面を設定した。(乙ヨ11[6-3-73~6-3-84、6-3-282~6-3-304、6-3-326~6-3-362、6-5-20~6-5-23、6-5-145~6-5-148頁]、ヨ35)検討用地震の選定及び地震動評価 被告は、本件発電所敷地周辺における過去の被害地震を調査し、その規模、位置等に関する最新の知見を基に、同敷地における震度が震度5弱(平成8年以前は震度V)程度以上であったと推定される地震を選定し、これらの地震に、活断層の分布状況及び国の機関等による知見から敷地周辺において想定される地震を加え、地震発生様式ごとに整理・分 類し、検討用地震の候補とする地震を以下のとおり選定した上で、応答スペクトルに基づく地震動評価をして、それぞれ、敷地への影響が最も大きいと考えられる地震として、検討用地震を以下のとおり選定し、各地震動を評価した。 a 内陸地殻内地震 ⒜ 検討用地震の選定ⅰ 被告は、既往文献等を踏まえ、中央構造線断層帯のセグメント(最大規模の地震を発生させる単位にまとめた活断層の中で、分割放出型地震としてやや規模の小さな地震を発生させる単位(乙ヨ38))として、川上セグメント(断層長さ約36km)、伊予 セグメント(約23km)、本件発電所敷地前面海域の断層群(伊予灘セグメント。約42km。以下「敷地前面海域の断層群」という。)及び豊予海峡セグメント(約23km)が存在すること、各セグメントの間にジョグと呼ばれる断層破壊の末端( 所敷地前面海域の断層群(伊予灘セグメント。約42km。以下「敷地前面海域の断層群」という。)及び豊予海峡セグメント(約23km)が存在すること、各セグメントの間にジョグと呼ばれる断層破壊の末端(セグメントの境界。長さは約12km又は約13kmである。)を示唆する 地質構造が分布すると評価した。 被告は、これらも踏まえ、内陸 地殻内地震につき、中央構造線断層帯による地震として、敷地前面海域の断層群(断層の長さは、断層破壊の停止域とされる両端の引張性ジョグの中間まで断層破壊が及ぶ可能性を考慮し、セグメントの両端をそれぞれ引張性ジョグの中間まで延伸し、約54kmとする。)、伊予セグメント(敷地前面海域の断層群と同様の 考えに基づいて延伸し、約33kmとする。)、金剛山地東縁-伊予灘区間(約360km)及び石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)を検討用地震の候補として選定した。 また、被告は、別府湾-日出生断層帯、宇和海のF-21断層、五反田断層、伊予灘北方の上関断層F-15及び上関断層F-1 6による各地震も検討用地震の候補として選定した。 (乙ヨ11[6-3-43~6-3-59、6-3-261、6-5-16、6-5-17、6-5-58頁]、ヨ31[6頁])ⅱ その上で、被告は、敷地前面海域の断層群による地震を検討用地震に選定し、さらに、敷地前面海域の断層群が中央構造線断層 帯の一部であり、「中央構造線断層帯(金剛山地東縁-伊予灘)の長期評価(一部改訂)」(以下「中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)」という。)及び「別府-万年山断層帯の長期評価」(以下「別府-万年山断層帯長期評価」という。)において、中央構造線断層帯の連動や中央構造線断層帯と別府-万年山断層帯の連動の可能 性に言及 」という。)及び「別府-万年山断層帯の長期評価」(以下「別府-万年山断層帯長期評価」という。)において、中央構造線断層帯の連動や中央構造線断層帯と別府-万年山断層帯の連動の可能 性に言及されていることを踏まえ、これらの連動を含む区間を考慮した断層群による地震を検討用地震として選定した。 (乙ヨ11[6-5-29、6-5-30、6-5-163頁]、ヨ31[15頁])⒝ 基本震源モデルの設定 被告は、中央構造線断層帯(断層長さ約360km)と九州側の 別府-万年山断層帯とが連動するケース(約480km。以下「約480kmケース」という。)を基本としつつ、断層が部分破壊するケースも考慮し、川上セグメント、伊予セグメント及び敷地前面海域の断層群が連動するケース(約130kmであり、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)における石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間 に相当する。以下「約130kmケース」という。)及び敷地前面海域の断層群約42km及びその両端のジョグが半分連動するケース(約54km。以下「約54kmケース」という。)についても評価を行うこととした。 また、基本震源モデルにおける主なパラメータとして、本件発電 所敷地及び敷地周辺の屈折法地震探査結果等から、断層上端深さを2km、断層下端深さを15kmと設定した。断層位置(敷地からの距離)については、各種音源を用いた海上音波探査等の物理探査の結果から約8kmと想定した。断層傾斜角・すべり様式については、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)及び別府-万年山断層 帯長期評価並びに調査結果に基づき、主たる敷地前面海域の断層群等は鉛直(90度)の右横ずれ断層と設定した。 (乙ヨ11[6-5-31頁]、ヨ31[22、29、30頁])⒞ 応答スペ 断層 帯長期評価並びに調査結果に基づき、主たる敷地前面海域の断層群等は鉛直(90度)の右横ずれ断層と設定した。 (乙ヨ11[6-5-31頁]、ヨ31[22、29、30頁])⒞ 応答スペクトルに基づく地震動評価被告は、応答スペクトルに基づく地震動評価に当たっては、約4 80kmケース、約130kmケース及び約54kmケースに加え、念のため断層長さが約69kmで連動するケース(敷地前面海域の断層群と両端のジョグ全部が連動するケース。以下「約69kmケース」という。)も評価することとした。断層傾斜角については、上記⒝のとおり、基本ケースとして鉛直モデルを想定するとともに、 不確かさの考慮として断層傾斜角を北傾斜(傾斜角30度)とする モデル(北傾斜モデル)も想定し、これらを上記の断層の長さに関する4ケースと組み合わせた各ケースについて応答スペクトルに基づく地震動評価を行った。 被告は、地震規模について、断層長さと地震のマグニチュードとの関係を表す経験式である松田(1975)の式(以下「松田式」 という。)を用いて算出した上で、応答スペクトルに基づく地震動評価の際に適用する距離減衰式については、基本的にはNodaetal.(2002)が提案する応答スペクトルを求める手法である耐専式(耐専スペクトルともいう。乙ヨ31)を採用し、併せて、耐専式以外の9つの距離減衰式(以下「その他の距離減衰式」という。) でも評価を行った。被告は、敷地前面海域の断層群が敷地近傍に位置することから、検討ケースごとに距離及び地震規模の観点から、耐専式の適用性を吟味した上で、その他の距離減衰式や断層モデルを用いた手法による評価結果と対比して、耐専式の適用性の検証を行ったところ、約130kmケース、約69kmケー 離及び地震規模の観点から、耐専式の適用性を吟味した上で、その他の距離減衰式や断層モデルを用いた手法による評価結果と対比して、耐専式の適用性の検証を行ったところ、約130kmケース、約69kmケース及び約54 kmケースの各鉛直モデルついては、耐専式による評価結果が過大となったため、耐専式の適用範囲外にあると判断し、その他の距離減衰式を用いた評価を行った。他方、上記以外のケースについては、耐専式を適用した。 (乙ヨ11[6-5-36~6-5-39、6-5-102~6- 5-104、6-5-192~6-5-197頁]、ヨ31[95~142頁])⒟ 断層モデルを用いた手法による地震動評価ⅰ 被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価において必要な震源パラメータ(地震モーメント、平均応力降下量、アスペ リティの応力降下量等)を設定する上で用いるスケーリング則(断 層長さ、幅、面積、応力降下量、地震モーメント、アスペリティ面積等の間に存在する一定の相似則又はこれを経験的に関係式で示したもの)については、壇ほか(2011)を基本として採用した。また、被告は、スケーリング則として、壇ほか(2011)に加え、約480kmケース及び約130kmケースについては、 FujiiandMatsu’ura(2000)を、約54kmケースについては、入倉・三宅(2001)の式(以下「入倉・三宅式」という。)の地震モーメントとFujiiandMatsu’ura(2000)の平均応力降下量を組み合わせて用いる手法を併用した。(乙ヨ11[6-5-33頁]、ヨ31[2 3、25~27、37、44頁])ⅱ 被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価における不確かさの考慮に当たって、地震発生時の環境に 併用した。(乙ヨ11[6-5-33頁]、ヨ31[2 3、25~27、37、44頁])ⅱ 被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価における不確かさの考慮に当たって、地震発生時の環境に左右されて地震の度に変化する偶然的不確かさ(破壊開始点)及び調査精度や知見の限界を要因とする認識論的不確かさのうち平均モデルを事前に 特定し難いもの(アスペリティ深さ、断層長さ(連動))は、基本震源モデルに織り込んだ。他方、調査精度や知見の限界を要因とする認識論的不確かさのうち、事前の調査や経験式等に基づいて平均モデルを特定できる①アスペリティの応力降下量、②北傾斜モデル、③南傾斜モデル(傾斜角80度)、④破壊伝播速度及び⑤ アスペリティの平面位置については、独立した不確かさとして、基本震源モデルに重畳させて考慮した。 そして、地震規模について、約480kmケースでMw7.7~8.0、約130kmケースでMw7.4~7.8、約54kmケースでMw6.9~7.4と評価した。 (乙ヨ11[6-5-31~6-5-33、6-5-41、6- 5-42、6-5-70~6-5-93頁]、ヨ31[21~24、36~44、52~54、62~66、69~71、74~78、81~83、86頁])ⅲ 被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価を行うに当たっては、約480kmケースについて、統計的グリーン関数法 及び経験的グリーン関数法により評価し、両者を比較した上で、原子炉施設に影響の大きい周期0.1秒付近の地震動について厳しい結果を与えた経験的グリーン関数法を採用した。(乙ヨ11[6-5-41、6-5-42、6-5-201~6-5-223頁]、ヨ31[152~155頁]) b プレート間地震⒜ 検討用 しい結果を与えた経験的グリーン関数法を採用した。(乙ヨ11[6-5-41、6-5-42、6-5-201~6-5-223頁]、ヨ31[152~155頁]) b プレート間地震⒜ 検討用地震の選定被告は、プレート間地震につき、土佐その他南海・東海・西海諸道の地震(684年、M8 1/4)、宝永地震(1707年、M8. 6)、安政南海地震(1854年、M8.4)、想定南海地震(南海 トラフ長期評価、M8.4)、想定南海地震(中央防災会議(2003)、Mw8.6)、南海トラフの巨大地震(内閣府検討会(2012b)(陸側ケース)、Mw9.0)、日向灘の地震(1498年、M 7 1/4)、日向灘の地震(日向灘長期評価、M7.6)を検討用地震の候補として選定した上で、応答スペクトルに基づく地震動評 価をした結果、南海トラフの巨大地震(内閣府検討会(2012b)(陸側ケース)、Mw9.0)を検討用地震として選定した。(乙ヨ11[6-5-19、6-5-20、6-5-30、6-5-31、6-5-60、6-5-61、6-5-262、6-5-263頁]、ヨ31[9、17頁]) ⒝ 基本震源モデルの設定等 被告は、基本震源モデルとして、内閣府検討会(2012b)の南海トラフの巨大地震(陸側ケース)(Mw9.0)を採用した。 被告は、このモデルは、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震として、過去最大規模の宝永地震(M8.6)や中央防災会議(2003)の想定南海地震モデル(Mw8.6)を上回る 想定で作成されたモデルであるため、十分に不確かさが考慮されたものであると考えられるが、更に安全側の評価となるようにと、設定された強震動生成域に加え、更に敷地直下にも強震動生成域を追加配置する不確かさの考慮 されたモデルであるため、十分に不確かさが考慮されたものであると考えられるが、更に安全側の評価となるようにと、設定された強震動生成域に加え、更に敷地直下にも強震動生成域を追加配置する不確かさの考慮を行った。 (乙ヨ11[6-5-35、6-5-100、6-5-101頁]) ⒞ 応答スペクトルに基づく地震動評価内閣府検討会(2012b)が、南海トラフの巨大地震(Mw9. 0)の応答スペクトルに基づく地震動評価のパラメータとしてMw8.3を採用していることから、被告も、応答スペクトルに基づく地震動評価のパラメータとしては、Mw8.3を採用し、これに耐 専式を適用して評価した。(乙ヨ11[6-5-39、6-5-200頁])⒟ 断層モデルを用いた手法による地震動評価被告は、適切な要素地震が得られていないことや内閣府検討会(2012b)が統計的グリーン関数法を用いていることを踏まえ、統 計的グリーン関数法(短周期側地震動)と理論地震動(長周期側地震動)を周期2.5秒を接続周期としてハイブリッド合成法(短周期領域の評価に適している経験的グリーン関数法又は統計的グリーン関数法により計算した地震動と、長周期帯の評価に適している理論的手法により計算した地震動を組み合わせて広い周期帯で地震動 を評価する手法)により評価を行った。(乙ヨ11[6-5-40、 6-5-43、6-5-229頁])c 海洋プレート内地震⒜ 検討用地震の選定被告は、海洋プレート内地震につき、本件発電所敷地に与える影響が大きいと考えられる安芸灘~伊予灘~豊後水道で発生した16 49年安芸・伊予の地震(M6.9)、伊予西部の地震(1854年、M7.0)及び豊後水道の地震(1968年、M6.6)に加え、過去にフィリピン海プレー る安芸灘~伊予灘~豊後水道で発生した16 49年安芸・伊予の地震(M6.9)、伊予西部の地震(1854年、M7.0)及び豊後水道の地震(1968年、M6.6)に加え、過去にフィリピン海プレートで発生したと考えられる比較的規模の大きい地震である九州の深い地震(宮崎県西部の地震(1909年)を地震本部の地域区分の観点を踏まえ、敷地に与える影響が最も大 きいと考えられる位置に配置したもの。M7.3)、日向灘の浅い地震(日向・豊後の地震(1769年)を上記方法で配置したもの。 M7.4)及びアウターライズ地震(紀伊半島沖の地震(2004年)を上記方法で配置したもの。M7.4)を検討用地震の候補として選定した上で、応答スペクトルに基づく地震動評価をした結果、 1649年安芸・伊予の地震を検討用地震として選定した。(乙ヨ11[6-5-18、6-5-19、6-5-30、6-5-59、6-5-164頁]、ヨ31[7、8、16頁])⒝ 基本震源モデルの設定等被告は、1649年安芸・伊予の地震を検討用地震として選定し たが、基本震源モデルの設定に当たっては、地震発生位置と地震規模の不確かさをあらかじめ織り込むこととし、敷地下方に既往最大規模(伊予西部の地震(1854年、M7.0))の地震規模を仮定した「想定スラブ内地震」として地震動評価を行った。 不確かさの考慮に当たっては、2001年芸予地震(M6.7) に関する知見を考慮してアスペリティ位置と断層傾斜角を設定した ケース、想定する地震規模をM7.2としたケース、アスペリティ上端を断層上端(海洋性地殻上端)に配置したケース、敷地直下のやや東方の領域に低角共役断層(傾斜角30度)を想定したケース(M7.4)を設定した。 (乙ヨ11[6-5-33、6-5- アスペリティ上端を断層上端(海洋性地殻上端)に配置したケース、敷地直下のやや東方の領域に低角共役断層(傾斜角30度)を想定したケース(M7.4)を設定した。 (乙ヨ11[6-5-33、6-5-34、6-5-94~6-5 -99頁])⒞ 応答スペクトルに基づく地震動評価被告は、応答スペクトルに基づく地震動評価では、耐専式の適用範囲内にあることから、耐専式を適用して評価した。(乙ヨ11[6-5-39、6-5-198、6-5-199頁] ) ⒟ 断層モデルを用いた手法による地震動評価被告は、敷地で得られた2001年芸予地震の余震である安芸灘の地震の観測記録を要素地震とした経験的グリーン関数法により評価を行った。(乙ヨ11[6-5-42、6-5-43、6-5-224~6-5-228頁]) イ震源を特定せず策定する地震動被告は、震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内地震の震源近傍の観測記録を収集するに当たり、「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」(地震ガイドⅠ.4.2⑵)及び「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に一部の痕跡が確 認された地震」(同⑶)について検討を行った。 被告は、「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」については、2004年北海道留萌支庁南部地震の際に、K-NET港町観測点で観測した記録について、地盤調査及び基盤地震動の推定が行われており、信頼性の高い基盤地震動が得られているとして、これに不確かさを考慮した地震 動を「震源を特定せず策定する地震動」として採用した。また、「事前に活 断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に一部の痕跡が確認された地震」については、2000年鳥取県西部地震 を特定せず策定する地震動」として採用した。また、「事前に活 断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に一部の痕跡が確認された地震」については、2000年鳥取県西部地震では、活断層の成熟度の地域差や深部地下構造にも違いが認められたものの、大局的には本件発電所敷地と同じく西南日本の東西圧縮横ずれの応力場にあることなどを踏まえ、原子力安全に対する信頼向上の観点等から、より 保守的に同地震の観測記録を選定し、震源近傍に位置する鳥取県にある賀祥ダムの観測記録を「震源を特定せず策定する地震動」として採用した。 (乙ヨ11[6-5-43~6-5-47頁]、ヨ40、ヨ42)ウ基準地震動Ssの策定敷地ごとに震源を特定して策定する地震動 a 応答スペクトルに基づく基準地震動Ss被告は、応答スペクトルに基づく地震動評価により策定した基準地震動Ssについては、同評価によって算定された数多くの応答スペクトルを包絡するよう設計用応答スペクトルを設定し、基準地震動Ss-1(1波)(最大加速度650ガル)を策定した。(乙ヨ11[6- 5-48、6-5-107、6-5-233頁]、ヨ31[93~142、221~228頁])b 断層モデルを用いた手法による基準地震動Ss被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価により策定した基準地震動Ssについては、本件原子炉施設に与える影響が大きいケ ースとして、内陸地殻内地震のうち約480kmケースにおける壇ほか(2011)及びFujiiandMatsu‘ura(2000)に基づき、応力降下量の不確かさを考慮したケース並びに約54kmケースにおける入倉・三宅式に基づき、上記不確かさを考慮したケースを選定し、経験的グリーン関数法と理論地震動について ura(2000)に基づき、応力降下量の不確かさを考慮したケース並びに約54kmケースにおける入倉・三宅式に基づき、上記不確かさを考慮したケースを選定し、経験的グリーン関数法と理論地震動について、周 期0.8秒を接続周期としてハイブリッド合成を行った結果、前記⒜ の基準地震動Ss-1を一部の周期帯において超えた7ケースを基準地震動Ss-2-1~Ss-2-7(最大加速度579ガル)として選定した。 また、上記評価では、東西方向の地震動の周期0.2~0.3秒の付近で基準地震動Ss-1を超過する結果が得られたため、工学的判 断として、上記超過ケースのうち、超過する度合いが大きく、かつ、約480kmケースにおける壇ほか(2011)に基づき、応力降下量の不確かさを考慮したケース(アスペリティを中央下端とする。)について、東西方向と南北方向の地震波を入れ替えたケースを基準地震動Ss-2-8(最大加速度478ガル)として設定した。 なお、プレート間地震及び海洋プレート内地震では、基準地震動Ss-1を下回る結果となったことから、基準地震動Ss-2としては設定しなかった。 (乙ヨ11[6-5-48~6-5-50、6-5-110、6-5-238頁]、ヨ31[230~239頁]) 震源を特定せずに策定する地震動被告は、「震源を特定せず策定する地震動」の応答スペクトルのうち、2004年北海道留萌支庁南部地震を考慮した地震動及び2000年鳥取県西部地震(賀祥ダム)の観測記録については、一部の周期帯で基準地震動Ss-1を超えることから、基準地震動Ss-3-1(最大加速 度620ガル)及びSs-3-2(最大加速度531ガル)として選定した。(乙ヨ11[6-5-50、6-5-110頁])基準地震動Ssの を超えることから、基準地震動Ss-3-1(最大加速 度620ガル)及びSs-3-2(最大加速度531ガル)として選定した。(乙ヨ11[6-5-50、6-5-110頁])基準地震動Ssの策定被告は、前記及びにより、基準地震動Ss(最大加速度650ガル)を策定した(乙ヨ11[6-5-50、6-5-51、6-5-1 10、6-5-241~6-5-251頁]、ヨ31[241頁])。 12 火山に関する基本的な知見⑴ 火山噴火火山噴火は、マグマが地表面に到達することによって生じる現象である。 (乙138[117頁])⑵ マグマの性質 火山噴火の源となるマグマは、地殻やマントルを構成する岩石が溶けてできたものであり、最も多く含まれる化学成分は、二酸化ケイ素(SiO2。 シリカとも呼ばれる。)である。二酸化ケイ素は、マグマの種類によって含有量が異なり、マグマの粘性(粘り気)とも深い関係があることから、マグマを分類するときの基本成分となる。火山噴火は、マグマ中のメルト(液相) に溶け込んだ揮発性物質(水や二酸化炭素など)がマグマの上昇により減圧発泡して、急激に体積を増やして地表に噴出することにより発生するところ、一般に、マグマ内の二酸化ケイ素の量が多いほど粘性は高く、粘性の高いマグマほど揮発性成分がマグマから抜け出しにくいことから、粘性が高く揮発性成分を多く含んだマグマほど爆発的な噴火になりやすいとされている。 二酸化ケイ素の含有量によるマグマの分類は、マグマが冷え固まったときにできる火成岩にちなんで行われており、二酸化ケイ素の重量当たりの成分量が概ね70%以上を流紋岩質、63~70%をデイサイト質(石英安山岩)、52~63%を安山岩質(57%以下のものは玄武岩質安山岩とも呼 る火成岩にちなんで行われており、二酸化ケイ素の重量当たりの成分量が概ね70%以上を流紋岩質、63~70%をデイサイト質(石英安山岩)、52~63%を安山岩質(57%以下のものは玄武岩質安山岩とも呼ばれる。)、52%以下を玄武岩質という。デイサイト質以上の二酸化ケイ素含有 量を持つマグマは、長石、石英等の珪長質鉱物の溶融物に富むため珪長質マグマといい、これに対し、二酸化ケイ素含有量の少ないマグマは、カンラン石、輝石等の苦鉄質鉱物の溶融物に富むため苦鉄質マグマという。 (乙138[13、117、118、128、133頁]、139、140)⑶ 噴火規模 火山爆発指数(VolcanicExplosivityIndex。 以下「VEI」という。)は、噴火によって生じた火砕物の体積から噴火規模を段階別に分類するものであり、1回の噴出量が104㎥以下をVEI0、1012㎥(1000k㎥)以上をVEI8として、この間を噴出量が10倍増えるごとに1段階上がるように7段階に分けている。 (乙138[119頁]、151[8、9頁]) ⑷ 噴出物マグマが急速に発泡しながら爆発的に放出されると、多孔質の噴出物が生じ、デイサイト~流紋岩マグマでは淡色の軽石、玄武岩~安山岩マグマでは濃色のスコリアが生じる。(乙141[96頁]) 13 火山に関する新規制基準の概要及び本件申請の概要 ⑴ 火山に関する新規制基準の概要ア設置許可基準規則設置許可基準規則6条1項は、「安全施設(兼用キャスクを除く。)は、想定される自然現象(地震及び津波を除く。(中略))が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」と定めていると ころ、「想定される自然現象」には火山の影響も含まれる(設置許可基準 然現象(地震及び津波を除く。(中略))が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」と定めていると ころ、「想定される自然現象」には火山の影響も含まれる(設置許可基準規則解釈6条2項)。 また、設置許可基準規則6条2項は、「重要安全施設は、当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により当該重要安全施設に作用する衝撃及び設計基準事故時に生ずる応力を適切に 考慮したものでなければならない。」と定めているところ、「大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象」とは、「対象となる自然現象に対応して、最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるもの」をいう(設置許可基準規則解釈6条5項)。 (乙80) イ旧火山ガイド旧火山ガイドの概要は、以下のとおりであった。(甲232)原子力発電所に影響を及ぼす火山影響評価の流れ火山影響評価は、立地評価と影響評価の2段階で行う。 立地評価では、まず原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出を行 い、影響を及ぼし得る火山が抽出された場合には、抽出された火山の火山活動に関する個別評価を行う。すなわち、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間(原子力発電所に核燃料物質が存在する期間)中に影響を及ぼす可能性の評価を行う。 影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された場合は、火山活動のモ ニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うことを条件として、個々の火山事象に対する影響評価を行う。一方、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない場合は、原子力発電所の立地は不適と考えられる。 影響評価では、個々の火 対する影響評価を行う。一方、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない場合は、原子力発電所の立地は不適と考えられる。 影響評価では、個々の火山事象への設計対応及び運転対応の妥当性に ついて評価を行う。 (旧火山ガイド2.)原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出原子力発電所の地理的領域(原子力発電所から半径160kmの範囲の領域)に対して、文献調査等で第四紀(258万年前から現在までの 期間)に活動した火山を抽出する。 第四紀に活動した火山について、①文献調査、②地形・地質調査及び火山学的調査(詳細は後記a~c等)を行い、火山の活動履歴、噴火規模及びその影響範囲等を把握し、将来の火山活動可能性の評価を行う。 この際、地域特性、マグマの性質等により火山活動の特性や規模が異な ることから、個々の火山噴出物の種類、分布、地形、規模、噴火タイプ、 噴火パターン、活動間隔等を総合的に検討する必要があり、類似火山の活動を参照することも重要である。これらを踏まえ、完新世(第四紀の区分のうちで最も新しいものであり、1万1700年前から現在までの期間)に活動を行った火山は、将来活動の可能性のある火山とする。 他方、完新世に活動を行っていない火山は、上記①及び②の調査結果 を基に、当該火山の第四紀の噴火時期、噴火規模、活動の休止期間を示す階段ダイヤグラムを作成し、より古い時期の活動を評価する。この点、IAEASSG-21は、火山系の時間と量の関係、又は岩石学的傾向を基に評価することが可能であるとしている。例えば、時間と量の関係は、更新世(約258万年前から約1万年前までの期間)初期又はそ れより古い期間における火山活動の明確な衰弱傾向や明白な休止を 向を基に評価することが可能であるとしている。例えば、時間と量の関係は、更新世(約258万年前から約1万年前までの期間)初期又はそ れより古い期間における火山活動の明確な衰弱傾向や明白な休止を示す場合があり、こうした状況では、新たな火山活動の可能性が極めて低いということができるとしている。その結果、火山活動が終息する傾向が顕著であり、最後の活動終了からの期間が過去の最大休止期間より長い等、将来の活動可能性がないと判断できる場合は、後記の個別評価対 象外とし、当該火山については影響評価のみを行う。それ以外の火山は、将来の火山活動可能性が否定できない火山として、後記の個別評価対象の火山とする。 (旧火山ガイド3.)a 地形調査 既存の地形図、航空写真等を用いた判読及び海底地形データ等に基づき、火山地形の把握を行う。また、必要に応じて航空測量による最新データの取得を行うことも有効である。 b 地質調査文献調査及び地形調査によって、活動位置・規模・様式や噴出時期 等の活動履歴の評価に十分な情報が得られなかった場合、当該調査等 を行い、原子力発電所周辺の地理的領域の火山噴出物の噴出中心位置、噴出物種類、活動時期、噴出物(堆積物)分布等の評価に必要な情報を収集する。 調査においては、露頭又はボーリング若しくはピット掘削等により火山噴出物の試料採取・分析・年代測定等を行い、詳細な情報の収集・評価を実施する。 地質調査においては、別途実施する地質調査(例えば、原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-2007)に基づき実施する地質調査)の結果を参照することができる。 c 火山学的調査地質調査において、火山灰、火砕流、溶岩流等の火山噴出物(堆積 物)が認められた場合、火山 4601-2007)に基づき実施する地質調査)の結果を参照することができる。 c 火山学的調査地質調査において、火山灰、火砕流、溶岩流等の火山噴出物(堆積 物)が認められた場合、火山学的な調査を行う。 ⒜ 原子力発電所周辺で確認された火山灰については、以下の調査を行う。 ① 堆積物の範囲、厚さ、量、粒径及び分散軸を示す等層厚線図と等値線図 ② 堆積物の等価静荷重(湿潤及び乾燥)⒝ 原子力発電所近隣に影響を与えた可能性のある火砕流、火砕サージ又は火山性ブラストによって発生する識別可能な各堆積物については、以下の調査を行う。 ① 定置物の厚さ、量、密度及び空間分布 ② 重力によって動くか、又は火山性ブラストによって方向付けられる流動の方向と運動エネルギーに影響を与えた地形的特徴に関するデータ(こうした流動が測定可能な堆積物を残さずに通過した可能性のある区域も明らかにするのがよい。)原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価 a 前記で、将来の活動可能性があると評価した火山については、原 子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行う。ここでいう設計対応不可能な火山事象とは、①火砕物密度流(火山噴火で生じた火山ガス、火砕物の混合物が斜面を流れ下る現象の総称。すなわち、火砕流、サージ及びブラスト)、②溶岩流、③岩屑なだれ、地滑り及び斜面崩壊、④新しい火口 の開口並びに⑤地殻変動の5事象を指す。 この際、検討対象火山の活動を科学的に把握する観点から、過去の火山活動履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的及び地球化学的調査(詳細は後述⒜及び⒝)を行い、現在の火山の活動の状況も併せて評価することとする。具体的には 活動を科学的に把握する観点から、過去の火山活動履歴とともに、必要に応じて、地球物理学的及び地球化学的調査(詳細は後述⒜及び⒝)を行い、現在の火山の活動の状況も併せて評価することとする。具体的には、地球物理学的観点からは、検討 対象火山に関連するマグマ溜まりの規模や位置、マグマの供給系に関連する地下構造等について、地球化学的観点からは、検討対象火山の火山噴出物等について分析することにより、火山の活動状況を把握する。 (旧火山ガイド4.) ⒜ 地球物理学的調査地震波速度構造(地震探査の解析により求める地震波速度の空間分布)、重力構造(重力探査(精密な重力測定)により求める密度の空間分布)、比抵抗構造(電磁気探査により求める比抵抗の空間分布)、地震活動(火山周辺における地震発生現象)及び地殻変動(GPS 測量等により求める火山活動に伴う地殻の変形現象)に関する検討を実施し、マグマ溜まりの規模や位置、マグマの供給系に関係する地下構造等について調査する。 ⒝ 地球化学的調査火山ガス(噴気)の化学組成分析、温度などの情報から、地理的 領域に存在する火山の火山活動を調査する。 b 前記の調査結果と必要に応じて実施する上記地球物理学的及び地球化学的調査の結果を基に、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動可能性を総合的に評価する。評価の結果、検討対象火山の活動可能性が十分小さい場合には、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火 山を抽出し、後記の火山活動のモニタリングを実施し、運用期間中において火山活動を継続的に評価する。(旧火山ガイド4.1⑵)c 検討対象火山の活動可能性が十分小さいと判断できない場合は、調査結果から噴火規 、後記の火山活動のモニタリングを実施し、運用期間中において火山活動を継続的に評価する。(旧火山ガイド4.1⑵)c 検討対象火山の活動可能性が十分小さいと判断できない場合は、調査結果から噴火規模を推定し、調査結果から噴火規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模とする。 次に、設定した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する。評価では、検討対象火山の調査から噴火規模を設定した場合には、類似の火山における設計対応不可能な火山事象の影響範囲を参考に判断する。 過去最大の噴火規模から設定した場合には、検討対象火山での設計対 応不可能な火山事象の痕跡等から影響範囲を判断する。いずれの方法によっても影響範囲を判断できない場合には、設計対応不可能な火山事象の国内既往最大到達距離を影響範囲とする。設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は、原子力発電所の立地は不適と考えられる。十分小さいと評価 できる場合には、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山については、モニタリング対象とし、後記の火山活動のモニタリングを実施し、運用期間中に火山活動の継続的な評価を行う。 (旧火山ガイド4.1⑶) 火山活動のモニタリング 個別評価により運用期間中の火山活動の可能性が十分小さいと評価した火山であっても、設計対応不可能な火山事象が発電所に到達したと考えられる火山に対しては、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として運用期間中のモニタリングを行う。噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には、必要な判断・対応を えられる火山に対しては、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として運用期間中のモニタリングを行う。噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には、必要な判断・対応を とる必要がある。(旧火山ガイド5.)原子力発電所への火山事象の影響評価a 原子力発電所の運用期間中において設計対応不可能な火山事象によって原子力発電所の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された火山について、それが噴火した場合、原子力発電所の安全性に 影響を与える可能性のある火山事象を抽出し、その影響評価を行う。 上記「原子力発電所の安全性に影響を与える可能性のある火山事象」としては、降下火砕物(大きさ、形状、組成又は形成方法に関係なく、火山から噴出されたあらゆる種類の火山砕屑物で降下する物)などがある。 降下火砕物に関しては、火山抽出の結果にかかわらず、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合は考慮対象から除外する。また、降下火砕物は 浸食等で厚さが低く見積もられるケースがあるので、文献等も参考にして、第四紀火山の噴火による降下火砕物の堆積量を評価する。抽出された火山事象に対して、前記及びの調査結果等を踏まえて、原子力発電所への影響評価を行うための各事象の特性と規模を設定する。 (旧火山ガイド6.) b 降下火砕物の影響評価では、降下火砕物の堆積物量、堆積速度、堆 積期間及び火山灰等の特性などの設定並びに降雨等の同時期に想定される気象条件が火山灰等特性に及ぼす影響を考慮し、それらの原子炉施設又はそ 影響評価では、降下火砕物の堆積物量、堆積速度、堆 積期間及び火山灰等の特性などの設定並びに降雨等の同時期に想定される気象条件が火山灰等特性に及ぼす影響を考慮し、それらの原子炉施設又はその附属設備への影響(直接的影響及び間接的影響)を評価し、必要な場合には対策がとられ、求められている安全機能が担保されることを評価する。(旧火山ガイド6.1⑵) 原子力発電所内及びその周辺敷地において降下火砕物の堆積が確認されない場合は、①類似する火山の降下火砕物堆積物の情報を基に求める方法、②対象となる火山の噴火量、噴煙柱高、全体粒度分布及びその領域における風速分布の変動を高度及び関連パラメータの関数として、原子力発電所における降下火砕物の数値シミュレーションを行 うことより求める方法(数値シミュレーションに際しては、過去の噴火履歴等の関連パラメータ及び類似の火山降下火砕物堆積物等の情報を参考とすることができる。)により堆積物量を設定する。(旧火山ガイド解説-16.)c なお、直接的影響の確認事項としては、外気取入口からの火山灰の 侵入により、換気空調系統のフィルタの目詰まり、非常用ディーゼル発電機の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく、加えて中央制御室における居住環境を維持することなど4点が挙げられている。 (旧火山ガイド6.1⑶⒜)ウ旧火山ガイドの改正 規制委員会は、平成29年11月29日、旧火山ガイドを改正し(以下、上記改正後のものを「平成29年火山ガイド」という。)、前記イcの外気取入口から侵入する火山灰の想定に当たって用いる気中降下火砕物濃度の推定手法につき、降灰継続時間を仮定して降灰量から気中降下火砕物濃度を推定する手法(以下「3.1の手法」という。)又は数値シミュレー ションに 火山灰の想定に当たって用いる気中降下火砕物濃度の推定手法につき、降灰継続時間を仮定して降灰量から気中降下火砕物濃度を推定する手法(以下「3.1の手法」という。)又は数値シミュレー ションにより気中降下火砕物濃度を推定する手法(以下「3.2の手法」 という。)により推定することとした。 3.1の手法は、原子力発電所の敷地において運用期間中に想定される降下火砕物がある期間(降灰継続時間。原子力発電所敷地での降灰継続時間を合理的に説明できない場合は、24時間とする。)に堆積したと仮定して、降下火砕物の粒径の割合から求まる粒径ごとの堆積速度と粒径ごとの 終端速度(落下する物体が摩擦抵抗などを受けて、最終的に一定の速度になった時の速度)から算出される粒径ごとの気中濃度の総和を、気中降下火砕物濃度として求めるものである。他方、3.2の手法は、三次元の大気拡散シミュレーションにより設定座標点で粒径ごとに気中濃度の時間変化を算出し、得られた最大濃度を気中降下火砕物濃度とするものであり、 気象データの設定は、高層気象観測を実施している評価対象火山又は原子力発電所敷地に近い観測地におけるデータを基に、1年で最も原子力発電所敷地に対して影響のある月を抽出し、一定風を設定することとされている。そして、平成29年火山ガイドにおいては、3.1の手法では、降下火砕物の粒径の大小にかかわらず同時に降灰が起こると仮定しているこ と、粒子の凝集を考慮しないこと等から、3.2の手法では、原子力発電所への影響が大きい観測値に基づく気象条件を設定していること等から、いずれの推定値も実際の降灰現象と比較して保守的な値となっているため、いずれかの手法により気中降下火砕物濃度の推定することとされた。 なお、平成29年火山ガイドの内容は、気中降下 ていること等から、いずれの推定値も実際の降灰現象と比較して保守的な値となっているため、いずれかの手法により気中降下火砕物濃度の推定することとされた。 なお、平成29年火山ガイドの内容は、気中降下火砕物濃度の推定手法 以外の点については、旧火山ガイドの内容と同様である。 (甲27、乙84、弁論の全趣旨)エ規制庁による基本的な考え方の整理規制庁は、平成30年3月7日付けで「原子力発電所の火山影響評価ガイドにおける『設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価』に関す る基本的な考え方について」を策定し、従前より行ってきた平成29年火 山ガイドにおける「設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価」に関する考え方を整理した。その内容は、以下のとおりである。 設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価について設計対応不可能な火山事象については、当該事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいかどうかを評価する。過去 に巨大噴火(数十k㎥程度を超えるような噴火)が発生した火山については、「巨大噴火の可能性評価」を行った上で、「巨大噴火以外の火山活動の評価」を行う。 巨大噴火の可能性評価の考え方について巨大噴火は、広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすもので ある一方、その発生の可能性は低頻度な事象である。現在の火山学の知見に照らし合わせて考えた場合には、運用期間中に巨大噴火が発生する可能性が全くないとは言い切れないものの、これを想定した法規制や防災対策が原子力安全規制以外の分野で行われていない。したがって、巨大噴火によるリスクは、社会通念上容認される水準であると判断できる。 したがって、上記を考慮すれば、巨大噴火の可能性 制や防災対策が原子力安全規制以外の分野で行われていない。したがって、巨大噴火によるリスクは、社会通念上容認される水準であると判断できる。 したがって、上記を考慮すれば、巨大噴火の可能性の評価については、①現在の火山学の知見に照らした火山学的調査を十分に行った上で、火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないことが確認でき、かつ、②運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえない場合は、少なくとも運用期間中は、 「巨大噴火の可能性が十分に小さい」と判断できる。 巨大噴火以外の火山活動の評価の考え方について巨大噴火以外の火山活動について、その活動の可能性が十分小さいと判断できない場合には、火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価を行うこととなる。噴火の規模を特定することは一般に困難である ため、平成29年火山ガイドに従い、「検討対象火山の過去最大の噴火規 模」について火山事象の評価を行うこととなる。ここで「検討対象火山の過去最大の噴火規模」には、当該検討対象火山の最後の巨大噴火以降の最大規模を用いる。 火山活動のモニタリングについて火山活動のモニタリングは、「運用期間中の巨大噴火の可能性が十分小 さい」と評価して許可を行った場合にあっても、この評価とは別に、評価の根拠が継続していることを確認するため、評価時からの状態の変化を検知しようとするものである。 (甲213、乙244)オ平成29年火山ガイドの改正 規制委員会は、令和元年12月18日、平成29年火山ガイドを改正し(以下、上記改正後のものを「令和元年火山ガイド」という。)、主に、以下の点が変更された。なお、規制庁は、上記改正の趣旨は、平成29年火山ガイドの 令和元年12月18日、平成29年火山ガイドを改正し(以下、上記改正後のものを「令和元年火山ガイド」という。)、主に、以下の点が変更された。なお、規制庁は、上記改正の趣旨は、平成29年火山ガイドの各規定の趣旨及びこれに基づく審査実務の考え方を正確に、かつ、分かりやすく表現するために行うものであり、平成29年火山ガイド の要求内容を追加し又は変更するものではないとしている。 原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価について「火山活動に関する個別評価」は、設計対応不可能な火山事象が発生する時期及びその規模を的確に予測できることを前提とするものではな く、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価するものである旨の記載が追加された(令和元年火山ガイド解説-3.)。 また、検討対象火山(過去に巨大噴火が発生したものに限る。)の活動可能性の評価に当たり、巨大噴火については、噴火に至る過程が十分に解明されておらず、また発生すれば広域的な地域に重大かつ深刻な災害 を引き起こす火山活動であるが、低頻度な火山事象であり有史において 観測されたことがないこと等を踏まえて評価を行うことが適切であり、①当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価でき(以下「非切迫性の要件」という。)、②運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていない場合(以下「具体的根拠欠缺の要件」という。)は、運用期間中におけ る巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断できる旨の記載が追加され、解説部分には、上記①の評価に当たっては、現在の火山学の知見に照らした調査を尽くした上で、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まり の記載が追加され、解説部分には、上記①の評価に当たっては、現在の火山学の知見に照らした調査を尽くした上で、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等から総合的に評価を行うことが明記された(令和元年火 山ガイド4.1⑵、解説-11.)。そして、過去に巨大噴火が発生した火山(運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したものに限る。)については、当該火山の最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模における火山事象の到達可能性を評価する旨の記載が追加された(令和元年火山ガイド4.1⑶)。 さらに、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性が十分小さいとされた場合及び設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できる場合の火山活動のモニタリング及び火山活動の継続的な評価に関する記載が削除された。 火山活動のモニタリングについて 火山活動のモニタリングの目的について、「噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認すること」から「評価時から状態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認すること」と改められ、また、「噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には、必要な判断・対応をとる必要がある。」という記載が「モニタリングにより観 測データの有意な変化を把握した場合には、状況に応じた判断・対応を 行うこととする。」と改められた。(令和元年火山ガイド6.)原子力発電所への火山事象の影響評価について敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物のうち、考慮対象から除外される「降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合」という 発電所への火山事象の影響評価について敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物のうち、考慮対象から除外される「降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合」という記載が「降下火砕物の噴出源である火 山事象が同定でき、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分小さい場合」と改められた。(令和元年火山ガイド5.)なお、旧火山ガイド解説-16.で定められていた原子力発電所内及びその周辺敷地において降下火砕物の堆積が確認されない場合の降灰量 の設定方法(前記イb)は、令和元年火山ガイドでも定められている。 (令和元年火山ガイド解説-19.)(甲84、乙150、245)⑵ 火山に関する本件申請の概要火山に関する本件申請の概要は以下のとおりである。 ア立地評価影響を及ぼし得る火山の抽出被告は、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出において、本件発電所から半径160kmの地理的領域内にある42の第四紀火山のうち、完新世に活動を行った火山として、鶴見岳(本件発電所敷地との距 離85km)、由布岳(同89km)、九重山(同108km)、阿蘇(阿蘇カルデラ、阿蘇山、根子岳及び先阿蘇。同130km)、阿武火山群(同130km)を、完新世に活動を行っていないが、将来の火山活動可能性が否定できない火山として、姫島(同65km)及び高平火山群(同89km)を、それぞれ抽出した。 (乙ヨ11[6-8-3、6-8-4、 6-8-20~6-8-22頁]) 火山活動に関する個別評価a 鶴見岳鶴見岳は、大分県の別府湾西岸に位置する標高1375mの成層火山であり、約9万年前以前から活動を開始し、現在も噴気活動が認められる。南北 ) 火山活動に関する個別評価a 鶴見岳鶴見岳は、大分県の別府湾西岸に位置する標高1375mの成層火山であり、約9万年前以前から活動を開始し、現在も噴気活動が認められる。南北5kmにわたり連なる溶岩ドームの最南端に位置する鶴 見岳は厚い溶岩流の累積から成り、北端の伽藍岳には強い噴気活動がある。完新世以前の噴火規模についての報告はなく、完新世で最大規模の噴火は1万0600~7300年前の鶴見岳山頂溶岩噴火で、噴出量は0.15k㎥とされており、敷地に影響を及ぼす可能性のない溶岩主体の噴火である。鶴見岳を起源とする大規模火砕流は知られて おらず、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。 (乙235[17頁]、ヨ11[6-8-4、6-8-5頁])b 由布岳由布岳は、大分県の鶴見岳西方に位置する標高1583mの成層火山であり、数個の溶岩ドーム及び山頂溶岩から成る。由布岳は、約9 万年前より古い時代から活動を開始したが、完新世以前の噴火規模についての報告はなく、完新世で最大規模の噴火は約2000年前に発生した2ka噴火(噴出量0.207k㎥)であり、その後有史から現在に至るまで噴火活動は起きていない。由布岳の山麓には2ka噴火に伴う火砕流堆積物が分布するが、由布岳を起源とする大規模火砕 流は知られておらず、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。(乙235[18頁]、ヨ11[6-8-5、6-8-6頁])c 九重山九重山は、由布岳と阿蘇山の間の大分県西部に東西15kmにわたって分布する20以上の火山の集合であり、最高峰は中岳(標高17 91m)である。約20万年前以降に活動し、最新噴火は平成8年で ある。火山の多くは急峻な溶岩ドームで山体の周囲を主に火砕流から成る緩傾斜の裾野 集合であり、最高峰は中岳(標高17 91m)である。約20万年前以降に活動し、最新噴火は平成8年で ある。火山の多くは急峻な溶岩ドームで山体の周囲を主に火砕流から成る緩傾斜の裾野が取り巻き、平成7年に噴火が発生した星生山には活発な硫気孔群がある。九重山を起源とする最大規模の火砕流は、約5万年前に噴出したとされるもので(飯田火砕流)、その堆積物は、大分県から熊本県にかけての地域に分布し、最大層厚約200m、推定 分布面積約150k㎡、推定体積は約5k㎥と見積もられている。これらの火砕流堆積物の分布は九州内陸部に限られ、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。飯田火砕流堆積物は、広域テフラの九重第一軽石と対応し、火山灰の分布の長軸は四国南端方向で体積は2.03k㎥とされている。 また、九重山は、完新世にも頻繁にマグマを噴出しており、マグマを噴出した最後の活動として約1700年前に溶岩ドームが形成されているが、本件発電所敷地から遠く離れており、本件発電所に影響を及ぼすことはない。 (乙235[19頁]、ヨ11[6-8-6、6-8-7頁]) d 阿蘇⒜ 阿蘇カルデラは、熊本県東部で東西約17km、南北約25kmのカルデラである。阿蘇カルデラ周辺の火山としては、カルデラの中央部に阿蘇山が、東側に根子岳が位置し、縁辺部に先阿蘇の火山岩類が分布する。阿蘇山は、高岳(標高1592m)、中岳(標高1 506m)等の東西方向に連なる成層火山から成る火山群であり、根子岳(標高1433m)は、開析の進んだ成層火山である。 阿蘇では、約27万~約25万年前に阿蘇1噴火(噴出量50k㎥、VEI6)が、約14万年前に阿蘇2噴火(噴出量50k㎥、VEI6)が、約12万年前に阿蘇3噴火(噴出量150k㎥以上、 である。 阿蘇では、約27万~約25万年前に阿蘇1噴火(噴出量50k㎥、VEI6)が、約14万年前に阿蘇2噴火(噴出量50k㎥、VEI6)が、約12万年前に阿蘇3噴火(噴出量150k㎥以上、 VEI7)が、約9万~約8.5万年前に阿蘇4噴火(噴出量60 0k㎥以上、VEI7)があり、いずれも巨大噴火とされている。 (乙145、235[21、22頁]、ヨ11[6-8-7、6-8-8頁])⒝ 阿蘇1噴火ないし阿蘇3噴火による火砕流堆積物の分布範囲が大分県西部並びに熊本県北部及び中部にとどまるのに対し、阿蘇4噴 火による火砕流堆積物(以下「阿蘇4火砕流堆積物」といい、阿蘇2噴火ないし阿蘇4噴火による各火砕流を「阿蘇4火砕流」などという。)は、九州北部及び中部並びに山口県南部においても確認されており、広い範囲に分布している。 日本第四紀学会編「日本第四紀地図」(1987)及び町田・新井 (2011)は、阿蘇4火砕流堆積物の到達範囲を推定・図示しており、佐田岬半島まで到達した可能性を示唆しているが、その分布は方向によって偏りがあり、佐田岬半島において阿蘇4火砕流堆積物を確認したとの報告はない。 佐田岬半島では段丘面の発達が全般に悪いものの、狭小な海成段 丘が沿岸部に点在する。地表踏査結果によると、佐田岬半島に点在するM面(中位段丘面。約13万~6万年前までに海や川の作用によって形成された段丘面)の段丘堆積物を覆う風成層(風によって砂等が運搬されて堆積してできた層)は、阿蘇4テフラを混在するものの阿蘇4火砕流堆積物は確認されず、中位段丘に阿蘇4火砕流 堆積物が保存されている山口県とは状況が異なる。また、佐田岬半島の堆積環境のよい地点において、ボーリング調査を行ったが、阿蘇4火砕流堆積物は確認さ 堆積物は確認されず、中位段丘に阿蘇4火砕流 堆積物が保存されている山口県とは状況が異なる。また、佐田岬半島の堆積環境のよい地点において、ボーリング調査を行ったが、阿蘇4火砕流堆積物は確認されなかった。 本件発電所敷地と阿蘇カルデラの距離は約130kmであり、その間には、佐賀関半島、佐田岬半島等の地形的障害が認められる。 これらを総合的に判断し、阿蘇4火砕流は、本件発電所敷地まで 到達していないものと評価した。 (乙221、ヨ11[6-8-7~6-8-9頁]、弁論の全趣旨)⒞ 巨大噴火の最短の活動間隔(阿蘇2噴火と阿蘇3噴火の間の約2万年)は、最新の巨大噴火である阿蘇4噴火からの経過時間(約9万~約8.5万年前)よりも短い。 阿蘇4噴火以降の活動としては、約9万年前以降に阿蘇山が噴火活動を開始し、溶岩や火砕物を噴出する小規模噴火の繰り返しにより形成された火山体とともに、降下軽石を主体とする噴火が複数回認められ、Nagaoka(1988)を参考にすると、現在の阿蘇山の活動は、多様な噴火様式の小規模噴火を繰り返していること から、後カルデラ火山噴火ステージと判断される。 阿蘇カルデラの地下構造については、SudoandKong(2001)に示される地震波低速度領域と須藤ほか(2006)(乙187)における水準測量の結果から求められる圧力源(隆起や沈降の変動源であり、マグマ溜まりの存在を示すとされる。)の位 置がほとんど一致することから、中岳火口約3~4km西方の草千里南部の地約下6kmに小規模なマグマ溜まり(以下「地下約6kmのマグマ溜まり」という。)が認められるが、大規模なマグマ溜まりは認められない。高倉ほか(2000)によると、阿蘇カルデラの地下10km以浅にマグマと予想される 模なマグマ溜まり(以下「地下約6kmのマグマ溜まり」という。)が認められるが、大規模なマグマ溜まりは認められない。高倉ほか(2000)によると、阿蘇カルデラの地下10km以浅にマグマと予想される低比抵抗域が認められな い。三好ほか(2005)によると、阿蘇4噴火以降の火山岩の分布とそれらの組成から、カルデラ中心部で玄武岩質マグマが活動し、その周囲で珪長質マグマが活動しているという傾向があり、大規模な流紋岩質~デイサイト質マグマ溜まりは想定されないとされている。 また、国土地理院による電子基準点の解析結果によると、マグマ 溜まりの顕著な増大を示唆する基線変化は認められない。 以上を踏まえ、現在のマグマ溜まりは、巨大噴火直前の状態ではなく、今後も、現在の噴火ステージが継続するものと判断し、運用期間中の噴火規模については、後カルデラ火山噴火ステージである阿蘇山での既往最大噴火である阿蘇草千里ヶ浜噴火(噴出量約2k ㎥)を考慮することとした。そして、阿蘇山起源の火砕流堆積物の分布は阿蘇カルデラ内に限られることから、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。 (乙187、235[22~26頁]、ヨ11[6-8-9、6-8-10頁]) e 阿武火山群阿武火山群は山口県の日本海側に位置する約40の小火山体から構成される火山群である。約80万~約1万年前まで活動し、最新噴火は8800年前であり、190万~150万年前には先阿武火山活動があったとされる。過去の噴火規模(溶岩の体積)は0.001~0. 75k㎥であるが、本件発電所敷地から遠く影響はない。阿武火山群は小規模な溶岩噴出を主体とし、阿武火山群を起源とする大規模火砕流や広域火山灰は知られておらず、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。(乙 k㎥であるが、本件発電所敷地から遠く影響はない。阿武火山群は小規模な溶岩噴出を主体とし、阿武火山群を起源とする大規模火砕流や広域火山灰は知られておらず、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。(乙235[20頁]、ヨ11[6-8-10、6-8-11頁]) f 姫島姫島は、大分県北東部国東半島の北方約4km沖の周防灘に位置する東西約7km、南北約3kmの細長い島であり、標高267mの矢筈岳を最高峰とする火山群である。姫島を起源とする大規模火砕流は知られておらず、本件発電所に影響を及ぼす可能性はない。また、姫 島の活動時期は約30万~10万年前とされている。全活動期間の約 20万年間に7回以上の活動があり、平均活動間隔は数万年程度であるのに対して、最新活動から約10万年が経過していることなどを踏まえ、本件発電所の運用期間中に噴火することはないものと評価する。 (乙235[27、28頁]、ヨ11[6-8-11、6-8-12頁])g 高平火山群 高平火山群は鶴見岳と同じ位置にある古い火山群であり、新しい鶴見岳によって覆われている。少なくとも約9万年前以降は鶴見岳が活動している。したがって、その活動は鶴見岳に包含されているものと評価する。(乙235[17頁]、ヨ11[6-8-5頁])立地評価 被告は、上記を踏まえ、設計対応不可能な火山事象のうち、火砕物密度流については、個々の火山における運用期間中に考慮する噴火の火砕流堆積物の分布が九州又は山口県に限定されていることから、本件発電所に影響を及ぼす可能性はなく、それ以外の事象については、いずれも問題となるものではないと評価した。(乙ヨ11[6-8-12頁]) イ影響評価被告は、原子力発電所に影響を与える可能性のある火山事象と 可能性はなく、それ以外の事象については、いずれも問題となるものではないと評価した。(乙ヨ11[6-8-12頁]) イ影響評価被告は、原子力発電所に影響を与える可能性のある火山事象として、設計対応不可能な火山事象のほか、①降下火砕物、②火山性土砂流、火山泥流及び洪水、③火山から発生する飛来物(噴石)、④火山ガス、⑤津波及び静振、⑥大気現象、⑦火山性地震とこれに関連する事象並びに⑧熱水系及 び地下水の異常について、影響の有無を確認した。そのうち、①降下火砕物に関する被告の評価は以下のとおりである。 降下火砕物の最大層厚被告は、鶴見岳、由布岳、九重山、阿蘇及び阿武火山群の5つの火山について運用期間中の活動可能性を考慮し、原子力発電所の安全性に影 響を与える可能性について検討することとしたが、その際、地理的領域 外の火山も含めて検討することとした。 町田・新井(2011)によると、降下火砕物は、偏西風の影響で東方へ偏って分布することが多く、敷地へ到達したと考えられる主な降下火砕物は西方の九州に分布する第四紀火山を起源とする。 本件発電所敷地付近で厚さ5cmを超える降下火山灰はいずれも九州 のカルデラ火山(阿蘇カルデラ、加久藤カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラ及び鬼界カルデラ)を起源とするものであるが、これらのカルデラ火山は、いずれもマグマ溜まりの状況から巨大噴火直前の状態ではないため、運用期間中に同規模の噴火が発生し、その降下火砕物が本件発電所敷地に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価した。 町田・新井(2011)によると、地理的領域内の火山による降下火山灰の等層厚線図として、九重山を給源とする九重第一軽石と阿蘇山を給源とする草千里ヶ浜軽石とが示されており、前者については、火山灰 町田・新井(2011)によると、地理的領域内の火山による降下火山灰の等層厚線図として、九重山を給源とする九重第一軽石と阿蘇山を給源とする草千里ヶ浜軽石とが示されており、前者については、火山灰の堆積物が四国南西端の高知県宿毛市(以下「宿毛市」という。)で確認されているのに対し、後者については、阿蘇山を中心とする同心円状の 分布を示し、四国における堆積の報告は見られない。 被告は、地質調査の結果、本件発電所の南東約15kmに位置する愛媛県の宇和盆地(以下「宇和盆地」という。)の連続した細粒堆積物中に九重第一軽石と対応する火山灰層は認められず、本件発電所敷地付近への九重第一軽石の火山灰の降下厚さはほぼ0cmであると評価した。 また、被告は、須藤ほか(2007)が、宿毛市における九重第一軽石の報告地点の層厚を10cmとして、その噴出量を2.03k㎥と見積もっていることから、同噴出量と同等の噴火が起こった場合、現在の気象条件を考慮して、本件発電所敷地にどのような降灰が想定されるかにつき、数値シミュレーション(Tephra2)を行った。その結果、 被告は、ジェット気流がほぼ真西で安定する季節は本件発電所敷地にお ける降下厚さはほぼ0cmと評価されるが、風向きによっては厚さ数cmの降下火山灰が想定されると評価した。 その後、被告は、審査の過程において、規制委員会から、シミュレーションによる降下火砕物の厚さと既往文献による火山灰等層厚線図との整合性を検討して評価することを求められたことから、長岡・奥野(2 014)を参照して噴出量の想定を既存の知見より大きい6.2k㎥に変更して改めてシミュレーションを行ったところ、ジェット気流がほぼ真西で安定する季節は本件発電所敷地における降下厚さが0~数cmと評価され )を参照して噴出量の想定を既存の知見より大きい6.2k㎥に変更して改めてシミュレーションを行ったところ、ジェット気流がほぼ真西で安定する季節は本件発電所敷地における降下厚さが0~数cmと評価され、風向きによっては降下厚さが最大14cmとなった。 そこで、被告は、影響評価の前提となる降下火砕物の層厚を15cm と想定することとした。 (甲224[31~66頁]、231、乙226、426、ヨ11[6-8-13~6-8-17、6-8-24~6-8-30頁]、ヨ13)火山事象に対する安全性の確保被告は、降下火砕物の特徴等を踏まえ、降下火砕物の直接的影響と間 接的影響を考慮し、本件原子炉施設の安全性が損なわれないよう、安全対策として、①降下火砕物の直接的影響については、降下堆積物の荷重により構造健全性を失わず安全機能を損なわない設計とすること、構造物への化学的影響(腐食)、水循環系の閉塞、内部における摩耗等により安全機能を損なわない設計とすること、外気取入口からの降下火砕物の 侵入による機械的影響(閉塞)を考慮して、非常用ディーゼル発電機及び換気空調設備の外気取入口について開口部を下向きの構造にするとともに、フィルタを設置して降下火砕物が内部に侵入しにくい設計とすることとし、②間接的影響については、降下火砕物が送電設備の絶縁低下を生じさせることによる広範囲にわたる送電網の損傷に伴う外部電源喪 失及び発電所外での交通の途絶に伴うアクセス制限に対し、原子炉の停 止並びに停止後の原子炉及び使用済燃料ピットの冷却に係る機能を担うために必要となる電源の供給が非常用ディーゼル発電機により継続できる設計とすることとした。(乙ヨ11[8-1-344~8-1-358頁]) 14 規制委員会による審査等 ⑴ 係る機能を担うために必要となる電源の供給が非常用ディーゼル発電機により継続できる設計とすることとした。(乙ヨ11[8-1-344~8-1-358頁]) 14 規制委員会による審査等 ⑴ 規制委員会は、本件申請について、平成27年5月21日から同年6月19日までの間、規制委員会作成の本件原子炉施設の審査書案に対する科学的・技術的意見の公募手続(パブリックコメント)を実施した。その上で、規制委員会は、同年7月15日、①基準地震動につき、㋐本件発電所敷地及び敷地周辺の地下構造の評価に関して、調査の手法は、地質ガイドを踏まえてい るとともに、調査結果に基づき地下構造を水平成層かつ均質と評価し、一次元地下構造モデルを設定しており、当該地下構造モデルは地震波の伝播特性に与える影響を評価するに当たって適切なものであること、㋑「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価については、複数選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層 モデルを用いた手法による地震動評価を適切な方法で行っていること、㋒「震源を特定せず策定する地震動」の評価については、過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍における観測記録を精査し、各種の不確かさ及び敷地の地盤物性を考慮して策定していること、㋓「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」に関し、敷地の解 放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動として基準地震動を策定していることから、設置許可基準規則解釈別記2の規定にそれぞれ適合していることを確認したとし、②火山の影響に対する設計方針につき、㋐本件発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出は、階段ダイヤグラムの作成等により過去の火山活動履歴を評価して行われていること それぞれ適合していることを確認したとし、②火山の影響に対する設計方針につき、㋐本件発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出は、階段ダイヤグラムの作成等により過去の火山活動履歴を評価して行われていることから、旧火山ガイドを踏まえ ていることを確認し、㋑本件発電所の運用期間における火山活動に関する個 別評価は、活動履歴の把握、地球物理学的手法によるマグマ溜まりの存在や規模等に関する知見に基づいており、旧火山ガイドを踏まえていることを確認し、本件発電所の運用期間に設計対応不可能な火山事象が本件発電所に影響を及ぼす可能性は十分に小さいと評価していることは妥当であると判断し、㋒設計対応不可能な火山事象以外の火山事象の影響評価については、文献調 査、地質調査等により、本件発電所への影響を評価するとともに、数値シミュレーションによる降下火砕物の検討も行っていることから、旧火山ガイドを踏まえていることを確認したなどとして、本件申請は、新規制基準に適合しているものと認め(以下、本件申請に係る新規制基準への適合性審査を「本件適合性審査」という。)、本件許可をした。(乙37、ヨ13、ヨ77) また、規制委員会は、工事計画認可及び保安規定変更認可に係る各申請について、本件適合性審査と並行し、本件許可後も引き続き、審査を進め、工事計画については平成28年3月23日に、保安規定の変更については同年4月19日に、それぞれ認可処分をした。(乙ヨ45、ヨ78、ヨ79)⑵ その後、被告は、旧火山ガイドが平成29年火山ガイドに改正されたこと に伴い、3.1の手法を用いて気中降下火砕物濃度を3.1g/㎥と算定し、これを踏まえて、非常用ディーゼル発電機の吸気消音機に着脱可能な火山灰フィルタを設置して、気中降下火砕物濃度3.1g/㎥に対しても非 い、3.1の手法を用いて気中降下火砕物濃度を3.1g/㎥と算定し、これを踏まえて、非常用ディーゼル発電機の吸気消音機に着脱可能な火山灰フィルタを設置して、気中降下火砕物濃度3.1g/㎥に対しても非常用ディーゼル発電機2系統を同時に機能維持できるよう対策するなど安全確保対策を講じ、平成30年6月26日、保安規定変更認可申請を行った。これに 対し、規制委員会は、同年12月17日、認可処分をした。(乙226、227、230)第4 争点 1 司法審査の在り方 2 新規制基準の策定過程及び内容(後記3及び5以外)の合理性の有無 3 新規制基準(基準地震動策定部分)の合理性の有無 4 基準地震動に関する本件適合性審査の合理性の有無 5 令和元年火山ガイドの合理性の有無 6 火山事象に関する本件適合性審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無)第5 争点に関する当事者の主張 1 司法審査の在り方(原告らの主張)⑴ 主張立証責任の所在本件は、原子炉施設の安全性という高度に科学的、専門技術的な領域に関する訴訟であり、原子炉施設の構造上の特徴と安全性判断の前提となる想定 すべき自然災害の予想など極めて専門技術的判断が必要とされる上、上記安全性の問題は、万が一、事故が発生した場合には、原告らに甚大かつ回復不可能な被害をもたらすものであるという特異性があるところ、本件訴訟における差止要件の存在について、一般原則どおり、原告らに主張立証責任を負わせるのは、民事訴訟においても遵守されるべき公平の原則に反するという べきである。したがって、原告らは、福島第一原発事故程度の事故が発生し、本件原子炉により、原告らの生命等が侵害される理論的・潜在的な危険性があることを相当の科学的根拠に基づ 則に反するという べきである。したがって、原告らは、福島第一原発事故程度の事故が発生し、本件原子炉により、原告らの生命等が侵害される理論的・潜在的な危険性があることを相当の科学的根拠に基づいて明らかにすることで足り、その可能性がないこと、具体的には、本件原子炉に係る基準地震動の設定や火山事象の想定に瑕疵はなく、その運転期間中において、事故が発生する危険性がな いことについては、被告が高度の蓋然性をもって主張、立証すべきである。 なお、新規制基準は、後記2以降で主張するとおり、およそ科学的とはいい難い側面を有しているから、本件原子炉施設が新規制基準に適合していると確認されたことが、原子炉施設の安全性に関する被告の主張立証責任を軽減するものではない。 ⑵ 原子炉施設に求められる安全性の程度 原子炉施設の安全性が確保されないときは、過酷事故が発生し、数多くの人の生命等に重大な被害を及ぼすなど、深刻な事態が生じることが明らかであるから、上記安全性が確保されていない場合、上記理論的・潜在的な危険性があるといえる。そして、福島第一原発事故のように地域住民や地域環境に対して甚大かつ回復不可能な被害をもたらす過酷事故が現実に発生した以 上、このような事故は繰り返されてはならないのであって、原子炉施設に求められる安全性は、過酷事故を二度と起こさないという意味での限定的絶対的安全性、具体的には、深刻な災害が万が一にも起こらない程度の安全性と解すべきである。 ⑶ 安全性の判断に際して想定すべき自然災害の規模及び採用すべき知見 そして、原子炉施設の安全性に影響を与える地震や火山といった自然災害の発生時期及び規模につき、現在の科学的・技術的知見に基づいて正確に予想することは困難であるところ、予想を大きく上回 知見 そして、原子炉施設の安全性に影響を与える地震や火山といった自然災害の発生時期及び規模につき、現在の科学的・技術的知見に基づいて正確に予想することは困難であるところ、予想を大きく上回る地震と津波が発生した福島第一原発事故の教訓を踏まえ、最大規模を予想することの重要性が指摘されていることに照らすと、原子炉施設に求められる安全性の判断に当たっ ては、現在において最新の科学的・技術的知見に基づいて予想される最大規模の自然災害を想定するのが相当である。そして、上記のとおり、自然災害の発生時期及び規模の予想には限界があり、例えば、関東大震災(東京での大地震の発生可能性を指摘する見解が当時の日本地震学会の最高権威から批判されていた中で発生。)や東北地方太平洋沖地震(福島県沖での津波地震の 発生可能性を指摘する見解とこれを否定する見解がある中で発生。)のような歴史的事実が、支配的・通説的見解が必ずしも正しいとは限らないことを示していること等に鑑みれば、最大規模の自然災害を想定するに際し、科学的・技術的知見において見解の対立が認められる場合には、支配的・通説的な見解に全面的に依拠すべきではなく、より保守的な見解が考慮されるべき である。 (被告の主張)⑴ 主張立証責任の所在本件は、人格権に基づく妨害予防請求として本件原子炉の運転差止めを求める訴訟であるところ、人格権侵害に基づく妨害予防請求は、将来発生するか否か不確実な侵害の予測に基づいて相手方の権利行使を制約するものであ るから、単に理論的ないし抽象的に危険性が存在するだけでは足りず、人格権侵害による被害が生じる具体的危険性の存在が必要である。したがって、原告らの人格権、すなわち、原告らの生命等が侵害される具体的危険性の存在についての主張立 的に危険性が存在するだけでは足りず、人格権侵害による被害が生じる具体的危険性の存在が必要である。したがって、原告らの人格権、すなわち、原告らの生命等が侵害される具体的危険性の存在についての主張立証責任は、人格権に基づく差止訴訟の一般原則どおり、原告らが負担すべきである。 また、仮に、原告らの人格権侵害の具体的危険性の有無に関して被告が一定の主張立証責任を負うとしても、本件が、原子炉設置許可処分等の当否が問題となる行政訴訟ではなく、飽くまで人格権に基づく運転差止めの可否を争う民事訴訟であること、規制委員会が、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断として行った新規制基準への 適合性の判断は、客観性を有するものとして当然尊重されるべきであり、新規制基準への適合性が確認されたことは、原子炉施設の利用が許容される水準の安全性が確保されていることを示す極めて重要な事実というべきであるところ、本件原子炉施設は新規制基準への適合性が確認されていること、新規制基準の策定及び本件適合性審査を行ったのは被告ではなく規制委員会 (国)である上、本件適合性審査に係る資料等は公開されており、新規制基準の合理性並びに規制委員会の審査及び判断の合理性の点に関しては、原告らと被告との間に公平を害するほどの証拠の偏在があるとまでは認め難いこと等に鑑みれば、被告は、本件原子炉施設が新規制基準に適合していることについて相当の根拠、資料に基づいて主張、立証すれば足り、新規制基準が 不合理であることや規制委員会の審査及び判断が合理性を欠くことの主張立 証責任は、原告らがこれを負担すべきである。 ⑵ 原子炉施設に求められる安全性の程度現代社会における科学技術の利用には一定の危険性が内在しており、その危 断が合理性を欠くことの主張立 証責任は、原告らがこれを負担すべきである。 ⑵ 原子炉施設に求められる安全性の程度現代社会における科学技術の利用には一定の危険性が内在しており、その危険性が顕在化しないよう、いかに適切に管理できるかが問題とされているところ、この理は原子力発電においても異なるところはないから、上記具体 的危険性の有無は、原子力発電に内在する危険性を適切に管理できるかどうかで判断されるべきであり、原子炉施設に求められる安全性は、管理された危険性の程度が社会通念上許容されるものであること、すなわち、相対的安全性と解すべきである。 ⑶ 安全性の判断に際して想定すべき自然災害の規模及び採用すべき知見 前記⑵のとおり、原子炉施設に求められる安全性は相対的安全性であることからすると、本件原子炉施設の安全性を確保する上で想定すべき自然災害とは、原子炉施設の自然的立地条件に照らして科学的、専門技術的見地から合理的に予測し得る限りにおいて、これを超える規模の自然災害が発生することは、まず考えられないレベルの十分に保守的な規模のものをいうといえ る。 そして、原子力発電が高度に科学的、専門技術的なものである以上、原子炉施設に求められる上記安全性を評価するには、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であるところ、原子炉等規制法が、原子炉施設の安全性に関する基 準の策定及び適合性審査の権限を規制委員会に与えたのは、福島第一原発事故の教訓を踏まえるとともに、上記安全性の評価における特質を考慮し、上記基準の策定及び適合性審査につき、原子力利用における安全の確保に関する各専門分野の学識経験者等を擁し、中立公正な立場で独立した機関である規制委員会の もに、上記安全性の評価における特質を考慮し、上記基準の策定及び適合性審査につき、原子力利用における安全の確保に関する各専門分野の学識経験者等を擁し、中立公正な立場で独立した機関である規制委員会の科学的、専門技術的知見に基づく合理的判断に委ねる趣旨と解 される。そうすると、原子炉施設の安全性を判断するに当たって考慮すべき 自然現象等に関する科学的知見の採否の選択も、専門技術的知見を有する規制委員会の合理的な判断(専門技術的裁量)に委ねられているものと解される。具体的には、被告及び規制委員会が採用した知見に現在の通説的見解に照らして明白な誤りがあると判明し、この知見に基づけば安全性の判断が科学的真実に反するような場合には、基本とされるべき通説的見解からの逸脱 として厳しく判断されるものと考えるが、逆に、被告及び規制委員会が採用した知見に一定の合理性が認められるにもかかわらず、この知見に対する通説的見解ではない異論や批判が存在することをもって、採用した知見が不合理である又は合理性に疑いが残ると判断すべきではない。原告らが主張するように、専門家の間で意見の相違がある場合により保守的な見解を採用する ことは、専門的知識及び経験並びに識見を有する規制委員会の合理的な判断を軽視し、ひいては、絶対的安全性を求めることにもつながるから妥当でない。 そもそも、裁判所が、学説の当否のような科学的技術的問題について深く立ち入って、いずれの見解によるのが相当であるかなどといった判断をする ことは司法の審査能力を超える疑いがある上、上記のような判断は実質的に判断代置的な司法審査となり、原子炉等規制法が規制委員会に専門技術的裁量を認めた趣旨を没却することとなることから、相当でない。 2 新規制基準の策定過程及び内容(後記3及び 記のような判断は実質的に判断代置的な司法審査となり、原子炉等規制法が規制委員会に専門技術的裁量を認めた趣旨を没却することとなることから、相当でない。 2 新規制基準の策定過程及び内容(後記3及び5以外)の合理性の有無(原告らの主張) 新規制基準には、以下のとおり、策定過程及び内容に問題があり、不合理である。 ⑴ 新規制基準の策定過程の問題点ア中立公正性の欠如以下のとおり、新規制基準を策定した規制委員会の委員等及び規制委員 会を補助する規制庁の職員につき、中立公正性が欠如していることからす ると、規制委員会が、安全規制に関する独立性や専門性を発揮して、国民の生命・身体・財産・環境を守れるはずがなく、規制委員会が策定した新規制基準には策定過程上の瑕疵がある。 規制委員会の委員等の人選規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全等に資 するため、専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して、原子力利用の安全確保を図ることが求められているところ(設置法1条)、設置法7条7項3号及び4号は、規制委員会の中立公正性を確保するために、委員長及び委員については原子力事業者等の役員、従業員等であったことを欠格事由としている。しかるに、以下のとおり、規制委員会の委員の 中には、原子力事業者や原子力推進機関の出身者がおり、中立公正性を欠いている。 a 平成29年9月から委員長を務めていた戊1委員は、委員候補者となった当時、原子力事業者である日本原子力研究開発機構の副部長の職にあり、その前の委員長である戊3は、平成19年当時、原子力委 員会の委員長代理であり、政府の原子力政策を推進していた。 b 平成29年9月から委員長代理である戊4は、平成24年まで原子力事業者団体であ 前の委員長である戊3は、平成19年当時、原子力委 員会の委員長代理であり、政府の原子力政策を推進していた。 b 平成29年9月から委員長代理である戊4は、平成24年まで原子力事業者団体である日本原子力産業協会の役員の地位にあり、平成16年度から平成23年度までに原子力事業者や関係団体から約760万円の寄付や報酬を受け取っており、元委員である戊5は、放射性物 質の集荷・貯蔵処理を行う公益社団法人日本アイソトープ協会のプロジェクト主査であった。 規制庁の職員の出身官庁規制庁の発足当時、一般職員及び幹部職員の多くが、経済産業省、文部科学省(旧科学技術庁)、環境省、原子力安全・保安院という原子力推 進官庁の出身であった(一般職員につき455人中411人、幹部職員 につき7人中5人)。また、設置法附則6条2項は、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保すべく、規制庁の幹部職員及び職員につき、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めない旨規定していたが、その文言の抽象性等から原子力推進官庁出身者が同官庁に復帰する可能性が十分にある。 規制庁は、規制委員会の事務を処理する事務局であり(設置法27条1項)、規制委員会の中立公正な原子力規制行政を補助すべき立場にあるが、上記事情に照らすと、中立公正な補助は期待できない。 イ検討期間が不十分であること福島第一原発事故以前である平成18年9月に制定された改訂耐震指針 は、検討に5年を費やしたのに対し、49本の規則類により構成される新規制基準は、規制委員会が平成24年9月19日に発足してから、半年も経たないうちにパブリックコメントにかけ、その募集期間もわずか30日間であり、平成25年7月8日には施行されるなど、十分 成される新規制基準は、規制委員会が平成24年9月19日に発足してから、半年も経たないうちにパブリックコメントにかけ、その募集期間もわずか30日間であり、平成25年7月8日には施行されるなど、十分な検討期間も設けられずに策定されており、原子炉施設の安全を確保する機能を欠いてい る。 ⑵ 新規制基準の内容面の問題点(後記3及び5以外の問題点)ア福島第一原発事故の教訓を踏まえていないこと新規制基準は、福島第一原発事故の反省の下に成り立つべきもので、その前提として、福島第一原発事故の原因が十分究明される必要がある。し かしながら、福島第一原発事故の核心である格納容器内部は現時点でも高線量の放射線の影響下にあるため、十分な調査は不可能であり、事故の原因すらも特定できていない。 また、国会事故調報告書は、「国会による継続監視が必要な事項」として、「指針類の抜本的見直し」を掲げ、「現行の関係法令との関連性も含め、指 針類の体系、決定手続き、その後の運用を適正化するために、これらを直 ちに抜本的に見直す必要がある。」としている。しかしながら、新規制基準が掲げる敷地やその周辺の徹底的な調査を行うこと、最新の科学的・技術的知見を踏まえること、その上で、各種の不確かさの考慮や複数の手法を併用すること等は、いずれも新規制基準策定以前においても採用されていた項目であり、新規制基準は、抜本的見直しを経ておらず、従来の枠組み の範囲内での見直しをしたにすぎないものであって、国会事故調報告書に従っていない。このことは、被告が、本件原子炉施設について、新規制基準施行後も、基準地震動Ssについて従来の570ガルのまま本件申請をし、本件適合性審査を経た現在においても基準地震動Ssを650ガルにとどめていることに端的に現れて 本件原子炉施設について、新規制基準施行後も、基準地震動Ssについて従来の570ガルのまま本件申請をし、本件適合性審査を経た現在においても基準地震動Ssを650ガルにとどめていることに端的に現れている。 さらに、地震等基準検討チームの会合においては、検討用地震の選定基準の具体化や不確かさの考慮の定量化、体系化が提言され、外部有識者の賛同も得られたにもかかわらず、基準地震動の具体的な算出ルールは、時間切れで作ることができず、新規制基準自体は抽象的であり、どこまで厳しく規制するかは規制委員会の裁量次第とされたのであって、福島第一原 発事故以前と全く変わらない規制の在り方であり、許されない。 イ立地審査指針が含まれていないこと立地審査指針は、原子力発電所が事故を起こさないような立地、また、被害の拡大を防止することができる立地を示す重要な指針であり、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号は立地審査を行うことを要請してい るにもかかわらず、立地審査指針に関する改訂がないという新規制基準の不備のため、本件適合性審査において、立地審査が行われていない。 ウ共通要因故障を想定していないこと原子炉等が故障するに当たって、複数の安全機能に共通する要素に問題があったために、その複数の安全機能全てが故障すること(共通要因故障) は十分にあり得、実際、福島第一原発事故は、共通要因故障が一つの要因 となっている。このようなことからすれば、新規制基準において、共通要因故障が想定されるべきであるが、外部電源の喪失を除き、そのようになっておらず、不合理である。 (被告の主張)⑴ 新規制基準の策定過程の問題点との主張について ア中立公正性の欠如との主張について規制委員会の委員等の人選規制委員会は のようになっておらず、不合理である。 (被告の主張)⑴ 新規制基準の策定過程の問題点との主張について ア中立公正性の欠如との主張について規制委員会の委員等の人選規制委員会は、国家行政組織法3条2項に基づく、いわゆる3条委員会として高度の独立性が保障されているし(設置法2条)、委員の選任に当たっては、福島第一原発事故から学んでいない者は原子力行政に関わ る資格がないという観点から、過去に原子力を推進する組織に所属していた経歴も踏まえた上で、原子力の安全規制に対する高い問題意識と責任感のある人物が選ばれ、両議院において人選の理由を吟味の上、両議院の同意と内閣総理大臣による任命という民主的な手続を経て選任されており、規制委員会の委員等が中立公正性を欠いているとはいえない。 なお、設置法7条7項3号及び4号も規制委員会の委員が現に上記各号所定の職に就いていないことを求めているにすぎず、過去にこれらの職に就いていなかったことまでは求めていない。 規制庁の職員の出身官庁原子力推進官庁の出身者であることのみをもって独立性が欠如するも のではないし、制度上、原子力利用の推進と規制とを切り離す観点から、規制庁の幹部職員のみならず、それ以外の職員についても、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めないという人事異動に関するルール(設置法附則6条2項)が取り決められているほか、規制庁の職員を指揮命令監督する規制庁長官は、高度な独立性を有 する規制委員会委員長の命に基づいて庁務を掌理する仕組みとなってい るため(設置法27条)、規制当局としての独立性や専門性が確保されている。 イ検討期間が不十分であるとの主張について福島第一原発事故の直後から、原子力安全委員会や 仕組みとなってい るため(設置法27条)、規制当局としての独立性や専門性が確保されている。 イ検討期間が不十分であるとの主張について福島第一原発事故の直後から、原子力安全委員会や原子力安全・保安院において、事故原因の究明やそれに対する安全対策の検討が進められてき たこと、その後、規制委員会は、上記検討を引き継ぐ形で、透明性・中立性が確保された外部専門家も出席の上、約8か月間、原子炉施設等基準検討チームにおいて23回、地震等基準検討チームにおいて13回の会合を開催し、集中的に議論を重ねたこと、新規制基準の検討に当たっては、意見公募手続(パブリックコメント)が2度にわたって行われ、規制委員会 規則等に加え、同委員会の内規(審査基準に関する内規、規制基準に関連する内規及び許認可等の手続に関連する内規)についても、同手続の対象とされて、多数の意見が寄せられ、議論の素材とされたことなどに照らすと、新規制基準の検討期間が不十分であったとはいえない。 ⑵ 新規制基準の内容面の問題点(後記3及び5以外の問題点)との主張につ いてア福島第一原発事故の教訓を踏まえていないとの主張について福島第一原発事故については、国会、政府等の事故調査委員会がそれぞれ原因究明等を行って事故調査報告書等を取りまとめているところ、地震動による安全上重要な設備の損傷の可能性を指摘するのは国会事故調報 告書のみであり、上記可能性は、規制委員会による詳細な検討により否定されているのであって、IAEAの報告書も含め、福島第一原発事故の原因は津波による全交流電源の喪失と評価されている。また、規制委員会は、福島第一原発事故の全ての設備の故障、破損が具体的な位置や状態までは調査できない状態であるとの認識を示しつつも、事故の発生及び進展に は津波による全交流電源の喪失と評価されている。また、規制委員会は、福島第一原発事故の全ての設備の故障、破損が具体的な位置や状態までは調査できない状態であるとの認識を示しつつも、事故の発生及び進展に関 する基本的な事象は明らかにされており、これらの調査・検討結果により、 福島第一原発事故のような事故を再度起こさないため、地震、津波等の外部事象を含めた共通要因に起因する設備の故障を防止するための対策の強化や、重大事故等が発生した場合における対策の要求の必要性等の教訓は得られており、最新の科学的知見、海外の規制に関する最新知見等を結集することにより、新規制基準を策定することは可能であるとの考えを示 している。 これらの事情に照らせば、福島第一原発事故の原因究明がされていない中で策定された新規制基準が不合理であるとする原告らの主張には理由がない。 イ立地審査指針が含まれていないことについて 設置許可基準規則においては、立地審査指針における原則的立地条件①については、自然的条件ないし社会的条件に係る個別的な規定との関係で考慮され、原則的立地条件②については、原子炉等規制法43条の3の6第1項により要求事項とされた重大事故等対策自体の有効性を評価することがより適切であるため、採用されず、原則的立地条件③については、 既許可の発電所敷地内にめやす線量を超える地帯(低人口地帯)が収まっていたこと、原子力災害防止対策が強化されたため(原子力災害対策特別措置法等)、原子炉からある距離の範囲内に低人口地帯を設定する必要はなく、また、集団線量を考慮して人口密集地帯からある距離だけ離れていることを要求するのは、合理的でないことから、採用されなかったのであ って、立地審査指針を改訂し、これを適用する必要はない。 なく、また、集団線量を考慮して人口密集地帯からある距離だけ離れていることを要求するのは、合理的でないことから、採用されなかったのであ って、立地審査指針を改訂し、これを適用する必要はない。 ウ共通要因故障を想定していないとの主張について新規制基準の下では、地震、津波等による共通要因故障の発生を防止することができる設計が行われていること(設置許可基準規則12条)を前提に、偶発的な機器の故障、破損等に対する信頼性を確保するために、単 一故障を仮定しても安全性が確保されるよう多重性又は多様性及び独立 性をもたせた設計をすることが求められているのであって、想定を上回る地震等により共通要因故障に至る可能性があるのであれば、設計基準として自然的立地条件の把握をやり直すべきであり、安全上重要な設備が必然的に同時に故障する可能性があるのであれば、設備について独立性に係る設計をやり直すべきなのであって、設計基準として共通要因故障を考慮す ることは論理矛盾である。 3 新規制基準(基準地震動策定部分)の合理性の有無⑴ 基準地震動の科学的合理性の有無(原告らの主張)次のアないしエに照らせば、基準地震動は、それ自体が科学的合理性を欠 くものであるから、これを定めた新規制基準は不合理である。 ア地震の予測困難性基準地震動は、最新の科学的・技術的知見を踏まえて、地震学及び地震工学的見地から想定するものとされている(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項柱書)が、地震は、本質的には複雑系の問題であること、実験 ができず、過去のデータに学ぶほかないが、低頻度の自然現象であるため依拠すべき過去のデータが少ないこと等に照らすと、地震を科学的に予測することは困難である。このことは、B級断層としてしか評価されていな できず、過去のデータに学ぶほかないが、低頻度の自然現象であるため依拠すべき過去のデータが少ないこと等に照らすと、地震を科学的に予測することは困難である。このことは、B級断層としてしか評価されていなかった野島断層が震源となった1995年兵庫県南部地震、活断層の存在が知られていなかった2000年鳥取県西部地震(M7.3)及び200 8年岩手・宮城内陸地震(M7.2)が発生したこと、上記岩手・宮城内陸地震における基準地震動が4022ガルにも及ぶなど想定以上の地震が発生していることからも明らかである。 したがって、発生し得る地震規模の想定が可能であることを前提としている基準地震動は、それ自体、科学的合理性を欠くものである。 イ基準地震動の具体的算出方法の不明確性 新規制基準は、基準地震動の策定に当たって不確かさの考慮を求めているが、不確かさの考慮を求めること自体、最新の科学的・技術的知見や、地震学及び地震工学的見地からの想定が科学的に正確ではないことを前提としているし、不確かさをいかに考慮するかについては、具体的な基準が存在せず、主観的判断にならざるを得ない。また、規制委員会が定めた 地震ガイドには、経験式によって算出される平均値と実際に発生する地震の地震規模とがかい離する可能性を考慮すべきとする本件ばらつき条項が存在するところ、本件ばらつき条項が存在すること自体、想定すべき地震規模を具体的に特定することが困難であり、不確定性を含んでいることを示している。このように、基準地震動の具体的算出方法は不明確であり、 不確かさの考慮は社会的判断(割り切り)であって科学的なものではなく、現代科学における地震動予測の限界を科学的に補うことは到底できないのであって、基準地震動は科学的合理性を欠くものであるといえ 不確かさの考慮は社会的判断(割り切り)であって科学的なものではなく、現代科学における地震動予測の限界を科学的に補うことは到底できないのであって、基準地震動は科学的合理性を欠くものであるといえる。 なお、判定の基準となるべきものが抽象的で不明確であるのに、個別の審査が個別・具体的に行われるとするのは、論理的に破綻している。 ウ基準地震動を超過した事例の存在平成17年から平成23年までのわずか6年間に、次のとおり、4か所の原子力発電所に、5回にわたって基準地震動を超える地震(以下、それぞれ「超過事例①」ないし「超過事例⑤」という。)が頻発しており(ただし、( )内は、各地震発生当時の基準地震動)、それ以前にも、基準地震 動を上回る強震動が頻繁に発生した可能性が具体的に示唆される。このような超過事例の存在は、各発生当時における基準地震動の想定が誤りであり、基準地震動が前提としている強震動予測自体が全く信用できないもので、科学的根拠に基づく基準地震動の想定が困難であることを示している。 ① 平成17年8月16日宮城県沖地震(2005年宮城県沖地震。M7. 2) 女川原発南北方向316ガル観測(基準地震動S1:250ガル、基準地震動S2:375ガル)② 平成19年3月25日能登半島地震(2007年能登半島地震。M6. 9) 志賀原子力発電所(以下「志賀原発」という。)南北方向615ガル、東西方向637ガル観測(基準地震動S1:375ガル、基準地震動S2:490ガル)③ 同年7月16日新潟県中越沖地震(2007年新潟県中越沖地震。M6.8) 柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」という。)1699ガル観測(基準地震動S1:300ガル、基準地震動S2:450ガル) 県中越沖地震(2007年新潟県中越沖地震。M6.8) 柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽原発」という。)1699ガル観測(基準地震動S1:300ガル、基準地震動S2:450ガル)④ 平成23年3月11日東北地方太平洋沖地震(M9.0)福島第一原発2号機 550ガル観測(基準地震動438ガル) 福島第一原発3号機 507ガル観測(基準地震動441ガル)福島第一原発5号機 548ガル観測(基準地震動452ガル)⑤ 同日東北地方太平洋沖地震(M9.0)女川原発1号機 540ガル観測(基準地震動532ガル)女川原発2号機 607ガル観測(基準地震動594ガル) 女川原発3号機 573ガル観測(基準地震動512ガル)エ基準地震動の変動本件原子炉施設の建設当時の基準地震動は473ガルであるが、平成20年3月には570ガル、平成27年7月には650ガルと、建設当初から1.37倍に変更されており、他の原子力発電所の原子炉施設でも、基 準地震動の変動が認められ、柏崎刈羽原発においては、5倍にまで変更さ れている。各原子炉施設の建設当時と現在とにおいて、強震動予測における地震学及び地震工学の知見に大きな変遷がないにもかかわらず、基準地震動が変動しているのは、基準地震動自体が科学的合理性を欠くものであることを示している。 (被告の主張) 次のアないしエに照らせば、基準地震動は科学的合理性を欠くものではなく、これを定めた新規制基準は合理性を有する。 ア地震の予測困難性について現在の科学的知見の下で、地震の発生について理論的に完全な予測をすることが不可能であることは否定できない。しかしながら、基準地震動S sは、地震がいつ発生するかを予知できないことを前提に、すなわ 在の科学的知見の下で、地震の発生について理論的に完全な予測をすることが不可能であることは否定できない。しかしながら、基準地震動S sは、地震がいつ発生するかを予知できないことを前提に、すなわち、今日、明日にでも発生するかもしれないとの前提で、決定論的な考え方に基づき策定するものであって、地震の発生を予知できていないことは、基準地震動Ssの策定上、何ら問題にならず、また、地震の発生に関する過去のデータが限られていたとしても、これを補充するに足る複数の科学的知 見が存在しており、科学的根拠に基づいて保守的な地震動評価を行うことは十分に可能である。なお、1995年兵庫県南部地震については、同地震以前に刊行された「新編日本の活断層」において、淡路島から神戸市、西宮市、箕面市にかけて総延長70~80km程度の断層帯が図示されおり、実際の地震(総延長40km程度)よりも保守的な断層長さを想定し た評価は十分可能であったこと、2000年鳥取県西部地震及び2008年岩手・宮城内陸地震が、事前に活断層の存在が指摘されていなかった場所で発生したことを踏まえて、被告は、震源を特定せず策定する地震動評価において、これらの地震を適切に考慮して基準地震動Ssを策定していることからすると、上記各地震が、被告が基準地震動Ssを策定する上で 問題となる実例とはいえない。 したがって、地震の予測が困難であるからといって、基準地震動が科学的合理性に欠けることにはならない。 イ基準地震動の具体的算出方法の不明確性との主張について地域特性が異なる原子力発電所について適合性審査を行うに当たって、一義的に明確な基準又は定量的な基準を定めることは少なくとも現在の 科学技術水準では困難であるが、適切に不確かさを考慮することによって、 が異なる原子力発電所について適合性審査を行うに当たって、一義的に明確な基準又は定量的な基準を定めることは少なくとも現在の 科学技術水準では困難であるが、適切に不確かさを考慮することによって、十分に科学的合理性を有する評価をすることが可能である。なお、経験式は実際の地震観測記録等のデータを回帰分析し,それぞれの地震ごとの地域特性を捨象した科学的に有意な関係を表す関係式として作成されているため、経験式の作成の基となったデータと当該経験式から求まる値との 間にばらつきが生じるのは当然のことであり、それ自体は何ら問題ではなく、上記ばらつきを生じさせている要因を勘案して、経験式に存在するばらつきが過小評価につながることのないよう、地域特性を踏まえることにより保守的な評価をすることは可能である。本件ばらつき条項は、上記ばらつきが生じることを注意的に規定したものにすぎず、本件ばらつき条項 が存在することによって、不確かさの考慮が科学的なものではないとはいえない。 したがって、新規制基準における基準地震動の具体的算出方法が不明確であるとして、基準地震動が科学的合理性を欠くものであるとはいえない。 ウ基準地震動を超過した事例の存在について 超過事例①ないし⑤は、いずれも当該地点に固有の地域特性による影響が大きい事例であること、本件原子炉施設に最も影響を与える中央構造線断層帯による地震は内陸地殻内地震であり、地震発生様式の異なるプレート間地震に係る事例である超過事例①、④及び⑤は、本件原子炉施設における基準地震動Ssの信頼性を否定する根拠にはならないこと、超過事例 ①ないし③において超過したのは基準地震動S1又は基準地震動S2で あり、基準地震動Ssを超過した事例ではないこと、超過事例②及び③は、各原子力 する根拠にはならないこと、超過事例 ①ないし③において超過したのは基準地震動S1又は基準地震動S2で あり、基準地震動Ssを超過した事例ではないこと、超過事例②及び③は、各原子力発電所において基準地震動Ssの策定が進められている中で発生した事例であり、基準地震動Ssの策定には、上記各事例から得られた知見が反映されていることから、これらの事例があることをもって、基準地震動それ自体が不合理であることにはならない。 エ基準地震動の変動について被告や他の原子力発電所における基準地震動の変動は、1995年兵庫県南部地震を契機とした地震観測網の整備以降、地震動評価手法の急速な発展に伴い、これを反映してより保守的に考慮した結果にほかならず、基準地震動が科学的合理性を欠くことを示すものではない。 ⑵ 基準地震動の耐震設計基準としての合理性の有無(原告らの主張)ア国内では、平成12年以降の19年間において、1000ガルを超える強震動が複数回記録されており、本件原子炉施設の基準地震動とされている650ガルを超える強震動も、全国各地で数十回記録されているところ、 ハウスメーカーは、一般住宅耐震設計基準を定めるに当たって、強震動予測ではなく、国内における過去最大の地震動を前提としており、例えば、三井ホーム株式会社(以下「三井ホーム」という。)は耐震基準となる地震動を5115ガル、住友林業株式会社(以下「住友林業」という。)は3406ガルと設定している。 イまた、国内のダムに関する耐震性は、国土交通省河川局が平成17年3月に公表した「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)」(以下「ダム耐震指針」という。)において、「構造物の耐震性能は現在から将来にわたって当該地点で考えられ 、国土交通省河川局が平成17年3月に公表した「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)」(以下「ダム耐震指針」という。)において、「構造物の耐震性能は現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動として定義されたレベル2地震動を設定して照査する」とされている。 ウ安全性の見地からすれば、原子炉施設の耐震設計基準は、上記のような 一般住宅やダムの耐震設計よりも強度な耐震性が求められるべきであるが、新規制基準は、想定される地震規模という、より緩やかな耐震設計基準を定めるにとどまり不合理である。 (被告の主張)ア建築物の耐震性は地盤の条件によって大きく左右されるところ、一般住 宅は、地震動の増幅を生じさせやすい軟弱な表層地盤が存在する場所に建築される可能性があり、かつ、建築に当たって、大規模な基礎地盤の改良工事を行わないのが一般的であるのに対し、原子力発電所は、堅硬な岩盤等が存在する立地地点について詳細な調査を尽くした上で、大規模な地盤改良工事を実施して地震動の増幅をもたらす表層地盤を除去するなどして から建設されるのであって、地盤の条件に根本的な違いがあるから、これを無視して、ハウスメーカーの住宅の振動実験で用いられた加速度記録と原子力発電所の基準地震動を直接比較し、無条件に過去最大の地震規模や地震動を原子力発電所の設計においてそのまま採用すべきとするのは、地震ガイドにおいて地域特性の考慮が求められていることなどに反するもの であって、およそ科学的に合理性を有するものではない。 また、建築物の耐震性を比較するに当たっては、最大加速度のみならず、地震動の経時特性や周期特性も考慮しなければ意味がない上、原告らが挙げるハウスメーカーの最大加速度がいかなる条件で観測されたもの また、建築物の耐震性を比較するに当たっては、最大加速度のみならず、地震動の経時特性や周期特性も考慮しなければ意味がない上、原告らが挙げるハウスメーカーの最大加速度がいかなる条件で観測されたものかは判然としないところ、少なくとも三井ホームが掲げる最大加速度は、入力 地震動(構造物等の安全性を解析したり検証したりする際に用いる地表レベルにおける地震動)の数値ではないことが明らかであり、入力地震動である本件原子炉施設の基準地震動Ssと直接比較して耐震性を比較することはできない。 さらに、原告らが挙げるハウスメーカーの住宅の振動実験の事例は、建 築物の設計耐力(300~400ガル程度)ではなく、実耐力を示したも のであるにもかかわらず、設計耐力である新規制基準における基準地震動の最大加速度と比較することは誤っている。 イダム耐震指針においては、想定地震の選定に当たって、地震ガイドで必須とされているような保守的な設定や不確かさの考慮について具体的な規定はない。すなわち、地震ガイドでは、例えば、震源モデルの設定に当た り、アスペリティの位置や応力降下量等について保守的な設定が求められるとともに、「必要に応じて不確かさを組み合わせるなどの適切な手法を用いて評価すること」が要求されている一方で、ダム耐震指針では、保守的な設定や不確かさの考慮について、このような具体的な要求は規定されていない。 また、地震動評価に用いる手法に関しても、ダム耐震指針では、「少なくとも①経験的方法であるダムの距離減衰式(地震ガイドにおける「応答スペクトルに基づく地震動評価」に該当)による推定結果を得て、さらに、②半経験的方法や③理論的方法によって地震動が推定できる場合(これらは地震ガイドにおける「断層モデルを用いた手法によ おける「応答スペクトルに基づく地震動評価」に該当)による推定結果を得て、さらに、②半経験的方法や③理論的方法によって地震動が推定できる場合(これらは地震ガイドにおける「断層モデルを用いた手法による地震動評価」に該 当)には、それらの推定結果も含め総合的に判断して適切な地震動を設定する」と規定されているとおり、上記②や③の方法による地震動評価は努力目標的な位置付けとされているのに対し、地震ガイドでは、「応答スペクトルに基づく地震動評価」と「断層モデルを用いた手法による地震動評価」の両方の策定が求められており、ダム耐震指針よりも詳細な評価が要求さ れている。 このように、原子炉施設の地震動評価の方がダムの地震動評価よりも保守的で詳細な想定を要求していることは明らかである。 ウしたがって、一般住宅やダムの耐震設計と比較して、新規制基準における基準地震動が不合理であるとはいえない。 ⑶ 三次元地下構造調査に係る規定の合理性の有無(原告らの主張)後記アのとおり、三次元物理探査は、二次元物理探査と比較し、圧倒的に最先端の技術であり、その得られるデータの質、量の点ではるかに優れているのであって、原子炉施設の安全性の重要性を考慮すれば、三次元物理探査 が行われるべきであり、新規制基準も三次元物理探査を義務付けているものといえる。しかるに、新規制基準は、三次元地下構造調査の省略を許す例外規定を設けており(後記イ)、また、三次元物理探査を二次元物理探査と同列に規定しているのであって(後記ウ)、不合理である。 ア新規制基準が三次元物理探査を義務付けていること 二次元反射法探査と三次元反射法探査の正確性の相違物理探査の一種である反射法探査は、受振器が、測線直下の反射点からの振動だけでな ア新規制基準が三次元物理探査を義務付けていること 二次元反射法探査と三次元反射法探査の正確性の相違物理探査の一種である反射法探査は、受振器が、測線直下の反射点からの振動だけでなく、測線直下にない反射点からの振動をも観測することにより、本来存在するはずの活断層を見落とし、本来存在しないはずの安定的な地下構造を幻視する結果を生じさせるところ、これを解消す るためには、実際には存在しない反射点(偽の反射点)のデータを排除するための処理(マイグレーション処理)が必要であり、多数の反射点を高密度に観測し、かつ、多数の反射点を同時に処理する作業を行うことが考えられる。この点、二次元反射法探査のうち、1本の測線で反射法探査を実施し、地下構造を推測する場合、推測の精度としては低いた め、測線を複数本引く手法や、多数の測線を平行に並べる手法もあるが、それらの場合であっても、複数の測線の反射点を連立して推測処理するものではないため、偽の反射点から生じる問題点の解消は困難であり、測線同士をつなぐ等高線は飽くまでも予測にすぎず、また、地層が横にずれている場合には標高を把握できないため、ずれを予測しづらい。他 方、資源調査で主流となっている三次元反射法探査は、多数の震源と受 振器を設置するため、震源と受振器の組合せの数だけ反射点を得ることができ、得られた反射点で推測される地下構造の推測の組合せを連立的に処理することにより、より正確な地下構造の推測が可能であり、横ずれ断層も正確に把握することができる。実際にも、平成29年に、2016年熊本地震の原因究明調査のために6日間にわたって行われた三次 元反射法探査においては、二次元反射法探査においては把握できなかった横ずれ断層が確認され、また、令和2年3月に別府湾で に、2016年熊本地震の原因究明調査のために6日間にわたって行われた三次 元反射法探査においては、二次元反射法探査においては把握できなかった横ずれ断層が確認され、また、令和2年3月に別府湾で実施された海上三次元反射法探査においても、別府湾の地下構造が詳細に確認されている。 このように、三次元反射法探査は、二次元反射法探査と比較し、圧倒 的に最先端の技術であり、その得られるデータの質、量の点ではるかに優れている。 新規制基準が三次元物理探査を義務付けていることそして、原子力安全委員会が策定した「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」(平成22年)(以下「安全審査の手引き」 という。)は、地下構造調査に関し、解説部分において、「三次元的な地下構造を把握することが望ましい」と推奨事項として記載するにとどまっていた。これに対し、新規制基準の策定に係る地震等基準検討チームの会合では、2007年新潟県中越沖地震及び2009年駿河湾地震において、敷地下方の地下構造等の要因により地震波が増幅し、各基準地 震動を超過する事態が発生したことを踏まえ、サイト敷地の地下構造を詳細に調査し、伝播特性を把握することにより、より精密な基準地震動の策定に反映させることの必要性が認識され、専門家から、石油探査では三次元反射法探査が一般化していることを踏まえ、三次元物理探査による三次元地下構造の把握の必要性、重要性が指摘されたところ、同指 摘に対する異論は出されず、これらの検討を踏まえた結果、新規制基準 のうち設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号①は、「三次元的な地下構造により検討すること」を明確に義務付けるに至った。また、上記会合において、評価の手順を示したマニュアル作成の必要性が指摘され うち設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号①は、「三次元的な地下構造により検討すること」を明確に義務付けるに至った。また、上記会合において、評価の手順を示したマニュアル作成の必要性が指摘されたことを受けて、平成25年5月10日に策定公表された「サイト敷地の地下構造の詳細な把握の必要性について」においては、深部地下構造 調査のうち、「三次元地下構造調査」としては三次元反射法・屈折法地震探査のみが挙げられ、二次元反射法・屈折法地震探査は、「簡易地下構造調査」と位置付けられ「三次元地下構造調査」から除外されている上、二次元反射法・屈折法地震探査の場合には、これらに加え、電磁気探査、更に微動アレイ探査が必要となり、これに弾性波速度、比抵抗、電力等 の物性値の相関関係を加味して多次元のデータ間の関係を可視化し、三次元速度構造モデルを作成できるにとどまり、三次元速度構造モデルから、三次元ボリューム可視化、更には三次元地質構造モデルの作成に至ることはできないとされている。さらに、新規制基準案が確定した直後の平成25年5月10日に規制委員会が開催した「大飯発電所3・4号 機の現状に関する評価会合」(以下「大飯発電所評価会合」という。)においては、関西電力株式会社が主張する「地下構造が成層かつ均質である」と判断するためには、まずは三次元的な地下構造(ボリューム)データをもって評価を行い、それらの妥当性の根拠が十分に明示されている必要があるとされ、最低限必要な調査として、敷地内において約50 m格子間隔による単点微動測定を実施し、微動H/Vスペクトルによる卓越ピーク(周波数、振幅)の空間分布を評価することが求められている。 以上によると、新規制基準は、三次元的に地下構造を把握することを義務付けており、その調査としては、三 動H/Vスペクトルによる卓越ピーク(周波数、振幅)の空間分布を評価することが求められている。 以上によると、新規制基準は、三次元的に地下構造を把握することを義務付けており、その調査としては、三次元反射法・屈折法地震探査を 実施すべきとし、例外的に地下構造が成層(水平)かつ均質と判断され る場合には、省略することが許されるが、その判断をするに当たっても、三次元的な地下構造のデータを根拠とすることが求められていることからすると、三次元反射法・屈性法地震探査を実施する必要があるものといえる。 イ三次元地下構造調査の省略を許す例外規定を設けている点 しかるに、設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号①及び地質ガイドⅠ.5.1⑷は、「地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き」という規定を、地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤4)は、「地下構造が水平成層構造と認められる場合を除き」という規定により三次元的地下構造調査について一種の例外を認めているところ、「成層」、「均質」、「水平」といった 基準は曖昧で、その解釈次第では三次元物理探査の省略を広範に認めることになり、不合理である。 ウ三次元物理探査を二次元物理探査と同列に規定している点また、地下構造の評価に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査につき、設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号②、地質ガイドⅠ.5.1⑶ 及び地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤4)は、二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施すべき旨、二次元物理探査と三次元物理探査を同列に規定しており、安全審査の手引きの規定と実質的に変化がなく、三次元物理探査を二次元物理探査と並列的かつ択一的に規定する点においても、不合理である。 (被告の主張)地震等基準検討チームの会合 しており、安全審査の手引きの規定と実質的に変化がなく、三次元物理探査を二次元物理探査と並列的かつ択一的に規定する点においても、不合理である。 (被告の主張)地震等基準検討チームの会合において、三次元的な地下構造を把握することの重要性について議論、検討が尽くされた上で制定された設置許可基準規則解釈別記2、地質ガイド及び地震ガイドは、地震動の顕著な増幅をもたらす地域特性の有無を把握して地震動評価を行う観点から、地域特性及び既往 文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地質調査、ボ ーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を用いて、原子力発電所の敷地及び敷地周辺の地下構造について三次元的に把握することは求めているものの、三次元物理探査及び三次元地下構造モデルの作成を必須のものとして要求していない。これは、三次元的に敷地及び敷地近傍の地下構造を把握した上で、地下構造が水平成層かつ均質で、地震動の著しい増幅がなく、 原子力発電所の主要な設備の固有周期がある比較的短周期における地震動を高い精度で評価可能と認められる場合には、地震動評価上、一次元又は二次元の地下構造モデルを作成すれば足り、三次元物理探査等を駆使して精緻な三次元地下構造モデルを作成することは必要ないためであって、三次元的な地下構造の把握に関する新規制基準の定めに何ら不合理な点はない。 4 基準地震動に関する本件適合性審査の合理性の有無⑴ 本件発電所敷地の三次元的な地下構造の検討懈怠の有無(原告らの主張)本件発電所の敷地近傍は、南北方向に傾斜し、標高差は約220mであり、褶曲構造も見られるのであって、全く水平成層かつ均質ではないにもかかわ らず、被告は、地質調査とオフセットVSP(以下、反射法地震探査、オフ 近傍は、南北方向に傾斜し、標高差は約220mであり、褶曲構造も見られるのであって、全く水平成層かつ均質ではないにもかかわ らず、被告は、地質調査とオフセットVSP(以下、反射法地震探査、オフセットVSP探査及びトモグラフィ解析の総称として用いる。)の結果、本件発電所敷地の地盤が水平成層かつ均質であるとして三次元反射法探査を省略している。しかし、被告がその主張の根拠として挙げる資料は、三次元反射法探査の重要性が十分に認識されていなかった新規制基準策定以前の基準の 下で行われた適合性審査の際に提供されたものと変わらない上、速度構造が均質なものであれば、地質構造として多少の褶曲や傾斜があったとしても影響は小さいなどというのは、新規制基準の趣旨を矮小化して解釈するものであり許されないのであって、後記アのとおり、被告が実施した二次元反射法探査によって、三次元的な地下構造(ボリューム)データによる評価が行わ れているとは到底いえない。 また、被告が実施したオフセットVSP自体にも、後記イのとおり、不適切な部分がある。 ア単点微動測定の不実施規制委員会は、大飯発電所評価会合において、前記3⑶(原告らの主張)アのとおり、「地下構造が成層かつ均質である」と判断するために最低限 必要な調査として、敷地内において約50m格子間隔による単点微動測定を実施し、微動H/Vスペクトルによる卓越ピーク(周波数、振幅)の空間分布を評価する旨の見解を示している。しかしながら、被告は、上記単点微動測定を実施しておらず、三次元的な地下構造データによって地下構造が水平成層かつ均質であるとの評価を行っていない。 イ被告による本件発電所敷地の地下構造の評価の誤り被告実施の敷地内調査の方法及び結果評価の誤り被告は 造データによって地下構造が水平成層かつ均質であるとの評価を行っていない。 イ被告による本件発電所敷地の地下構造の評価の誤り被告実施の敷地内調査の方法及び結果評価の誤り被告は、以下のとおり、大雑把な調査、評価をしており、地質ガイドⅠ.5.1が求める「適切な調査」(調査により取得された地下構造データに基づいて作成された地下構造モデルを用いて、比較的短周期領域に おける地震動を高い精度で評価可能な地下構造調査)をしたとは到底いえず、地震ガイドⅠ.3.3.2⑷⑤4)、5)が定めるジョイントインバージョン解析手法など客観的・合理的な手段による評価のほか地震観測記録のシミュレーションによるモデルの修正等の高精度化も図っていない a 調査方法の誤り被告がオフセットVSPで利用した深部ボーリング孔は、本件原子炉の炉心から約1kmも離れており、本件原子炉施設の敷地の地下の1点すら正確に把握できていない。また、深部ボーリング孔の位置は、オフセットVSPで効果的な掘削箇所を予測してから決定されたもの でもない。さらに、オフセットVSPは敷地の東西方向に関してしか 行われていない上、その測線は本件原子炉建屋南東側をかすめるわずか1本にとどまっており、複数の測線によることを求める新規制基準に反するものであって、およそ三次元的な地下構造の把握は困難である。加えて、測線自体は折れ曲がっているにもかかわらず、解析結果は直線で表されており、その処理が適切に行われているか不明である。 被告によるPS検層及び密度検層も、同様に、本件原子炉の炉心から約1km離れた場所で行われており、不適切な方法で実施されている。 b 調査結果の評価の誤り被告は、以下のとおり、調査結果の都合の悪い部分を無視又は曲解 検層も、同様に、本件原子炉の炉心から約1km離れた場所で行われており、不適切な方法で実施されている。 b 調査結果の評価の誤り被告は、以下のとおり、調査結果の都合の悪い部分を無視又は曲解 し、被告の主張に沿って都合良く解釈している。 ⒜ 被告は、オフセットVSPの解析結果につき、①1号機ないし3号機の右側(北東側)の往復走時で0.5秒以浅における右肩上がりの急傾斜の反射面を見落としている、②CDPNo.65付近の反射面の不連続について速度フィルタ等が原因であると誤解釈を している、③偽りの地層間繰り返し波等を真の反射波と誤解釈しているといった誤った評価をしている。特に、上記①の急傾斜の反射面の存在及び上記②の反射面の不連続の存在は、それぞれ断層の存在を疑わせるものであり、本件発電所敷地及び敷地近傍の地下構造を水平成層かつ均質とする被告の評価は誤りである。 なお、被告は、上記②につき、速度フィルタの影響である旨主張するところ、速度フィルタを掛けることにより、背斜構造を見落としてしまう可能性も生じさせている。 ⒝ 被告の地下構造モデルの深度350~2000m部分は、本件原子炉の炉心から約1km離れた深部ボーリング孔におけるPS検層 (ダウンホール法)の結果に一定の深度(220m)を加算した上 でスライド(斜め平行移動)させることによって設定されているところ、この斜め平行移動による地下構造モデルの合理性を裏付けるためには、オフセットVSPの解析結果の反射面はむしろ水平であってはならないはずであり、被告の評価は誤っている。 なお、上記手法は、本件原子炉の炉心から約1kmも離れた場所 の大雑把なデータを斜めにスライドさせるものであって、不合理である。 ⒞ 被告が実施したダウンホー り、被告の評価は誤っている。 なお、上記手法は、本件原子炉の炉心から約1kmも離れた場所 の大雑把なデータを斜めにスライドさせるものであって、不合理である。 ⒞ 被告が実施したダウンホール法、サスペンション法という2種類のPS検層の調査結果は、本件原子炉の炉心で実施されているものも含め、かなりのかい離があるにもかかわらず、被告は、その原因 について精査、分析することなく、速度値はほぼ同等という誤った評価をし、反射波の伝播速度の連続的値を取るサスペンション法の結果を軽視して、反射波の伝播速度の平均値を取るダウンホール法のデータのみを基本的に地下構造モデルのP波速度、S波速度及びQ値に反映させている。しかも、ダウンホール法は、深度600~ 1280m、1280~2000m等と信じ難い間隔で行われ、精査とはいえないし、深度130~300mにおいてS波速度2.2km/s、P波速度4.6km/sと、特にS波速度が低下していることが確認されたにもかかわらず、これが地下構造モデルに反映されていない。 また、密度検層では深度1800~1900m付近において最小1.6g/c㎥程度まで密度が低下し、P波速度の低下も見られ、破砕帯(活断層の一種)である可能性があるにもかかわらず、これが考慮されていない。 このように、被告のPS検層及び密度検層の結果に関する評価に は誤りがある。 地震観測記録に基づく検討懈怠a 観測記録に基づく増幅特性の検討懈怠本件適合性審査において、本件発電所敷地内で得られた地震観測記録(平成9年10月から平成24年12月までの間に発生した3万3915回の内陸地殻内地震)のうち、比較的規模の大きい内陸地殻内 地震により増幅特性の検討をした結果、顕著な増幅はないと判断さ 測記録(平成9年10月から平成24年12月までの間に発生した3万3915回の内陸地殻内地震)のうち、比較的規模の大きい内陸地殻内 地震により増幅特性の検討をした結果、顕著な増幅はないと判断されたが、わずか5地震のデータ(南北・東西平均)に基づく検討にすぎない上、各データの震央距離が遠いため加速度も0.9ガルから3. 4ガルとかなり小さくなっており、増幅特性がないとは判断できない。 また、本件発電所敷地内で得られた地震観測記録を、地震波の到来方 向別に比較検討した結果、増幅特性が異なるような傾向はないと判断されたが、検討された15地震の多くは敷地南方の豊後水道における地震で、敷地西方は2地震、北方は1地震、東方も1地震しか記録がない上、敷地南方からの地震だけを見ても応答スペクトル比は10倍以上のかい離があり、震源特性が応答スペクトル比に大きく影響する ことが推認されるため、到来方向によって増幅特性に差があっても見分けられない可能性が高い。 上記のとおり、本件発電所敷地周辺地域での地震発生頻度は高いにもかかわらず、被告はわずか20地震のみに基づき、増幅特性を検討しており、その検討は粗雑にすぎる。 さらに、平成20年から令和3年の間には、微小地震よりも大きな地震が多数観測されているにもかかわらず、被告は、これらの地震につき、海洋プレート内地震であるとして検討の対象としていない。しかし、明確な地下構造が把握できていない上、実際に地震動が観測されている以上、プレート内地震であるか否かが本件原子炉施設の安全 性の判断に影響を与えるとはいえないのであるから、この点からも被 告の検討は不適切である。 b 伝達関数の評価の誤り被告は、地盤系地震計(C地点)における平成13年から平成18年までの観測 影響を与えるとはいえないのであるから、この点からも被 告の検討は不適切である。 b 伝達関数の評価の誤り被告は、地盤系地震計(C地点)における平成13年から平成18年までの観測記録のうち、最大加速度が10ガル以上の11地震の記録を平均した伝達関数を求め、これを地下構造モデルによる理論的伝 達関数と比較して「ほぼ整合していることを確認した」としているが、被告が作成した地下構造モデルによる理論的伝達関数は、観測記録から求まる伝達関数と4Hz、8Hz、12Hz付近で大きくかい離しており、整合的という評価は誤りである。したがって、本件発電所敷地の地盤が水平成層かつ均質であるとして被告が作成した地下構造モ デルは誤っている。 J-SHISMAPにおける地質構造等との比較防災科学技術研究所が公開しているJ-SHISMAP(以下「MAP」という。)を参照すると、本件発電所敷地内の表層地盤の増幅率は概ね0.5~2.0、敷地極近傍の範囲での地震基盤の深さは概ね30 0~1200mとなっており、均質でも水平でもないし、被告が本件適合性審査の際に示した「敷地近傍の地質構造(断面図)」によっても、本件発電所敷地近傍は、水平成層でも均質でもない。 ウこのように、被告は、三次元物理探査を実施しておらず、地下構造の把握は、不十分かつ新規制基準に反するものであるにもかかわらず、これを 是認した規制委員会の判断は不合理といわざるを得ない。 (被告の主張)ア被告による本件発電所敷地の地下構造の把握前記3⑶(被告の主張)のとおり、新規制基準は、原子力発電所の敷地及び敷地近傍の地下構造を三次元的に把握することは求めているものの、 三次元物理探査及び三次元地下構造モデルの作成を必須のものとして要 主張)のとおり、新規制基準は、原子力発電所の敷地及び敷地近傍の地下構造を三次元的に把握することは求めているものの、 三次元物理探査及び三次元地下構造モデルの作成を必須のものとして要 求していない。そして、被告は、以下のとおり、各種調査、検討結果に基づき、本件発電所敷地の地下構造が水平成層かつ均質であると評価したのであって、被告による本件発電所敷地の三次元的な地下構造の検討に懈怠はない。 被告は、本件原子炉施設の建設時に、本件原子炉設置位置付近におい て、地表地質調査、地表弾性波探査、ボーリング調査、試掘抗調査、掘削面観察等を実施し、本件発電所敷地の地質、地質構造を把握し、本件発電所敷地の地盤は、主に塩基性片岩から構成されており、非常に堅硬な岩盤であることを確認した。これに加えて、被告は、地下構造モデルの精度向上を図る目的で、平成22年から、深度2000mまでの深部 ボーリング調査を実施し、本件発電所敷地の地盤において、堅硬な塩基性片岩が深度数百mまで連続し、それ以深においても少なくとも2000mまでは堅硬かつ緻密な泥質片岩を主体とする結晶片岩が連続していること、塩基性片岩を主体とする地層とその下位の泥質片岩を主体とする地層の境界面が緩く北へ傾斜していることを確認した。さらに、被告 は、深部ボーリング孔を利用した物理検層やオフセットVSPの結果も併せて、本件発電所敷地の地下構造が水平成層かつ均質であると評価した。 また、被告は、伊予灘における南北方向の複数の海上音波探査及び屈折法探査の結果から、本件発電所敷地が位置する佐田岬半島へつながる 伊予灘の大局的な地質構造が佐田岬半島と平行する東西方向にほぼ一様であることを把握し、これらの大局的な調査の結果と伊予灘における三次元的な地下構造調 発電所敷地が位置する佐田岬半島へつながる 伊予灘の大局的な地質構造が佐田岬半島と平行する東西方向にほぼ一様であることを把握し、これらの大局的な調査の結果と伊予灘における三次元的な地下構造調査の結果並びに本件発電所敷地における地質調査やボーリング調査及び深部ボーリング調査の結果を総合して、本件発電所敷地の詳細な地質構造を把握し、南北方向を含めた地下構造モデルを作 成し、解析的な検討を行い、地震動の顕著な増幅をもたらす地下構造で はないことを確認した。 さらに、被告は、本件発電所敷地地盤において、昭和50年から実施している地震観測記録のうち、耐専式との比較が可能な比較的規模の大きい内陸地殻内地震を用いて、観測記録の応答スペクトルと耐専式により推定した応答スペクトルの比をとって増幅の有無の検討を行い、顕著 な増幅を示す地震がないことを確認するとともに、対象とする地震の規模をM2.0程度にまで広げて、地震波の到来方向によって特異性が見られないかの検討を行い、到来方向によっても増幅傾向が異ならないことを確認し、本件発電所敷地の地下構造が水平成層かつ均質であると推定した。 イ原告らの主張について単点微動測定の不実施について単点微動測定は、飽くまでも大飯発電所(及び高浜発電所)において最低限必要な調査とされたものにすぎない。すなわち、大飯発電所(及び高浜発電所)では、本件発電所を含む他の原子力発電所が相当年数か けて実施してきた地震観測をしておらず、このことが問題視されたことにより、短期的に地震観測記録を集めるための最低限必要な調査として単点微動測定を実施するよう求められたのであって、全ての原子力発電所において単点微動測定の実施が求められているものではない。このことは、規制委員会から、 観測記録を集めるための最低限必要な調査として単点微動測定を実施するよう求められたのであって、全ての原子力発電所において単点微動測定の実施が求められているものではない。このことは、規制委員会から、本件適合性審査に当たり、「オフセットVSP探 査、震度ボーリング、地震観測記録結果など敷地地下構造を三次元的に詳細に把握するために実施した内容の詳細を示すこと。」が求められるにとどまっていることからも明らかである。 被告による本件発電所敷地の地下構造の評価の誤りとの主張について a 被告実施の敷地内調査の方法の誤りとの主張について ⒜ 被告は、前記アのとおり、深部ボーリング調査以前の各種調査結果から、本件発電所敷地の地盤が主に塩基性片岩から構成される非常に堅硬な岩盤であることを確認しており、これを踏まえて、本件原子炉施設の耐震安全性評価の高度化の観点から深部基盤に起因する地震動の増幅について改めて検証するために、深部ボーリング 調査の実施に必要な用地が確保できる地点を掘削位置として選定したところ、これらの事情に照らせば、深部ボーリング孔の掘削位置が本件原子炉の炉心から約1km離れたことが問題であるとはいえない。また、被告は、オフセットVSPについて、本件発電所敷地が非常に狭くて急峻であり、環境的・技術的な制約が存在すること のほか、上記のとおり敷地の地盤が非常に堅硬な岩盤であることも踏まえて、地下構造の把握に必要かつ十分な情報が得られる1本の測線を設定しているのであって、オフセットVSPにおける測線が1本であることが問題になるものではなく、そもそも、被告は、オフセットVSPの結果のみならず、地表踏査、ボーリング調査、深 部ボーリング調査、二次元地下構造モデルによる解析的な検討等の一次元 1本であることが問題になるものではなく、そもそも、被告は、オフセットVSPの結果のみならず、地表踏査、ボーリング調査、深 部ボーリング調査、二次元地下構造モデルによる解析的な検討等の一次元及び二次元の調査結果に加えて、敷地で得られた地震観測記録の分析等を総合して、地下構造を三次元的に把握している。 ⒝ 地震動評価上の地下構造調査において最終的に求められるものは、地質構造の把握ではなく速度構造の把握であるところ、被告は、前 記アのとおり、南北方向において、豊富な調査を踏まえ、本件発電所敷地及び敷地近傍の地下構造を三次元的に把握し、地震動評価上、地下構造が水平成層かつ均質で、地震動の顕著な増幅がないことを確認している。したがって、被告による地下構造調査は、上記目的に照らせば、必要かつ十分であって、オフセットVSPを更に 南北方向で行う必要はない。 b 調査結果の評価の誤りとの主張について⒜ⅰ 原告らが断層の存在を疑わせるものとして指摘する反射法探査結果における右肩上がりの急傾斜の反射面は、反射法探査測線の端部の重合数が低下することによって見かけ上出現した表面波やS波等のノイズであり、断層の存在を示すものではない。なお、 被告の上記解釈は、規制委員会の審査会合で説明した上で、確認も受けている。 ⅱ 原告らが指摘する反射法探査結果のCDPNo.65付近に認められる反射面の不連続部については、解析測線と受振測線の位置が異なる影響及び速度フィルタの影響によって生じたもので あり、断層の存在を示すものとは考えられない。 ⅲ 仮に、オフセットVSPの解析結果の断面におけるほぼ水平な反射波に「偽りの地層間繰り返し波」、すなわち、重複反射あるいは多重反射(本来は境界面で反射した最初の波(真の反射 のとは考えられない。 ⅲ 仮に、オフセットVSPの解析結果の断面におけるほぼ水平な反射波に「偽りの地層間繰り返し波」、すなわち、重複反射あるいは多重反射(本来は境界面で反射した最初の波(真の反射波)を地表で観測すべきところを境界面や地表面で複数回反射した後で 観測したもの)が認められるとしても、このような反射波が真の反射波よりも深部に現れ、かつ、傾斜を強調する性質を有することを踏まえると、重複反射あるいは多重反射がほぼ水平になっているのは、結局のところ、実態としてほぼ水平の構造が存在することに変わりはない。 ⒝ 本件発電所敷地近傍は、東西断面ではほぼ水平、南北断面では北に緩く傾斜する地質構造となっているところ、斜め平行移動による地下構造モデルは、この地層境界面(岩相)の傾斜(泥質片岩主体層が出現する深度が、深部ボーリング地点で130m、本件原子炉の炉心付近におけるボーリング地点で350m)を考慮した地下構 造モデルである。これに対し、オフセットVSPで検知できるのは、 速度構造であって、上記地下構造モデルとは異なるものを評価しているのであるから、両者が一致しないことが問題になるものではない。 ⒞ⅰ ダウンホール法とサスペンション法では、観測する波の周波数帯や伝播経路が異なるため、速度値の違いが生じるのは当然のこ とであり、両者を比較する際には、両者が同様の傾向を示すかという観点から確認を行うのが適切である。被告は、かかる観点から両者を比較し、速度値が大局的に見て整合的であることをもって、速度値がほぼ同等であると評価したのであるから、被告の評価に誤りはない。 そして、被告は、ダウンホール法は、震源に比較的低周波数帯の波が用いられていることや伝播経路においてボーリング削孔によ ほぼ同等であると評価したのであるから、被告の評価に誤りはない。 そして、被告は、ダウンホール法は、震源に比較的低周波数帯の波が用いられていることや伝播経路においてボーリング削孔による孔壁付近の局所的な応力解放や孔壁崩壊・拡大の影響を受け難いことなどから、サスペンション法と比較して、より実際の地震波に近い周波数帯及び伝播経路の波による速度値が得られるこ とを踏まえ、ダウンホール法で得られた物性値を基に地下構造モデルを作成した。原告らは、ダウンホール法における速度層区間の長さを疑問視するが、地震動評価に用いる地下構造モデルの物性値としては、ダウンホール法で得られた結果を適切な速度層に区分した上で反映することが一般的であり、原告らの指摘は当を 得ない。 また、ダウンホール法の調査結果によれば、深度130~300mにおいてS波速度は若干低下しているが、本件原子炉建設時に取り除いた表層の風化部を除き、本件発電所敷地周辺は、大局的にS波速度2km/s以上という高いレベルで推移する堅硬か つ均質な地下構造を有しており、顕著な地震動の増幅は想定され ないから、地下構造モデルの作成に影響を及ぼすものではない。 ⅱ 原告らは、密度検層における深度1800~1900mでの密度やP波速度の低下をもって、破砕帯の可能性を指摘するが、上記手法は、ボーリング孔壁近傍の局所的なデータ(0.1m間隔)を連続的に取得するという測定手法の特性上、ボーリング削孔に 伴う応力解放によって発生する潜在割れ目や孔壁の局所的な崩壊・拡大などの影響を受けて速度値や密度値が低下することがあり、他方、深部ボーリング調査において、1800m以深の最深部においても連続した良好なコアが採取されており、深度2000mまで堅硬な岩盤が連続 拡大などの影響を受けて速度値や密度値が低下することがあり、他方、深部ボーリング調査において、1800m以深の最深部においても連続した良好なコアが採取されており、深度2000mまで堅硬な岩盤が連続していることが査読論文として公表さ れて学術的にも認められているのであって、破砕帯は存在しない。 なお、サスペンション法及び密度検層は、0.1mという短い間隔で行われているが、約2000mにわたって、大局的にS波速度2.2~3.3km/s、密度2.7~3.0g/c㎥で推移していると評価される地層の中にあって、0.1mという極めて 短い層厚で局所的にS波速度や密度が小さい箇所があるからといって、顕著な地震動の増幅は想定されない。 地震観測記録に基づく検討懈怠との主張についてa 観測記録に基づく増幅特性の検討懈怠との主張について本件発電所敷地から遠方で発生した地震は多数あるものの、敷地近 傍での地震活動は極めて低調で、発生した地震も大部分がM2.0程度以下の小規模な地震にとどまる。また、本件発電所敷地は、周辺の地盤と比べて極めて堅硬な岩盤で、地盤に起因する増幅が少ないため、敷地近傍で微小地震が発生した場合でも、地震動の増幅よりも、地震動の伝播距離に伴う減衰が勝り、地震計で観測できるほどの揺れが生 じないか、生じたとしても増幅特性の検討に用いることが難しいよう な極めて揺れが小さい地震動が大部分である。被告は、そのような中でも、敷地の増幅特性を検討するために、遠方の地震ではあるが規模の大きい内陸地殻内地震や規模の小さな地震ではあるが敷地近傍で発生した微小地震も積極的に活用して検討しているのであって、十分な検討を行っている。 なお、内陸地殻内地震は、一般的には深さ20km程度までの地下で地震が発 の小さな地震ではあるが敷地近傍で発生した微小地震も積極的に活用して検討しているのであって、十分な検討を行っている。 なお、内陸地殻内地震は、一般的には深さ20km程度までの地下で地震が発生するとされているところ、平成20年から令和3年の間に本件発電所敷地で観測された微小地震よりも大きい地震は、いずれも海洋プレート内地震や、20km以深の地震であるから、内陸地殻内地震の地震動評価に当たって検討する必要はない。 b 伝達関数の評価の誤りとの主張について被告が作成した地下構造モデルによる理論的伝達関数と観測記録から求まる伝達関数とはほぼ整合的であると評価でき、上記評価が誤りである旨の原告らの主張は、独自の見解にすぎない。 また、仮に、地下構造モデルの作成が不合理であったとしても、被 告は、中央構造線断層帯による地震及び1649年安芸・伊予の地震を対象とした断層モデルを用いた地震動評価では、経験的グリーン関数法による評価(敷地の観測記録を用いた評価)を行っており、本件発電所の地下に三次元的な褶曲構造があるのであれば、敷地での観測記録にはその影響が当然含まれることからすると、被告は上記影響を 踏まえた基準地震動Ssの評価を行っていることになるのであって、被告の評価が不合理ということにはならない。 MAPにおける地質構造等との比較MAPにおける表層地盤の増幅率の評価に当たっては約250mメッシュの微地形区分が基礎データとして用いられており、250mメッシ ュよりも細かい微地形の変化は捉えられないとされていること、地震基 盤の深さについては信頼性・精度が必ずしも全国一律でなく、今後一層の改良を図っていく必要があるとされていることからも明らかなとおり、MAPは、「概観的」な地震動予測地図を こと、地震基 盤の深さについては信頼性・精度が必ずしも全国一律でなく、今後一層の改良を図っていく必要があるとされていることからも明らかなとおり、MAPは、「概観的」な地震動予測地図を作成するための要素の一つにすぎない。これに対し、被告は、前記アのとおり、本件発電所敷地及び敷地周辺で稠密に行った各種調査結果を総合して、地震動評価上、敷地の 地下構造を水平成層かつ均質と評価しており、かつ、実際の観測データによっても地震動の顕著な増幅がない地下構造であることが裏付けられているのであるから、MAPを理由に本件発電所敷地が水平成層かつ均質でないということはできない。 ウ以上によると、本件発電所敷地及び敷地近傍は水平成層かつ均質である から、三次元物理探査を実施する必要はなく、被告の地下構造の把握は適切に行われており、これを是認した規制委員会の判断は合理性を有する。 ⑵ 内陸地殻内地震の地震動評価(原告らの主張)ア地質境界としての中央構造線が活断層であること 被告の調査が不十分であることa 測線間隔二次元反射法探査を用いて地下構造を把握するためには、10~50mという短い間隔で縦横に測線を引く必要があるが、被告が佐田岬半島北岸部における地下構造を把握するために参照した海上音波探査 は、二次元で行われ、かつ、測線間隔が約4kmと余りに粗く、三次元的な把握はおよそ不可能であり、活断層等を発見できていない。 b 音源及び振幅補正スパーカーを用いて昭和47年10月、昭和49年10月、昭和50年3月に実施された海上音波探査につき、平成8年に公表されたソ ノプローブを用いた調査によってその信用性が否定されていることか らすると、佐田岬半島北岸部における有効な海上音波探査は、平 に実施された海上音波探査につき、平成8年に公表されたソ ノプローブを用いた調査によってその信用性が否定されていることか らすると、佐田岬半島北岸部における有効な海上音波探査は、平成25年の海上音波探査(以下「平成25年海上音波探査」という。)以外には全く実施されていない。 そして、地表面の活断層は震源断層そのものではなく、地層深部に潜む震源断層を正確に捉えるためには、海上音波探査の音源として適 切な種類のエアガンを選択すべきであるが、被告が平成25年海上音波探査に利用した音源は、深度100m程度の記録しか取得することのできないジオパルス、ウォーターガンであり、それ以上深い地下構造を把握することはできない。また、元々記録が取れていない深度100m以下の地下の様子を振幅回復(深度が深くなって減衰した反射 波を増幅する補正処理)によって推測することはできない。 c 伝播速度被告は、海上音波探査の解析処理において深度変換を行う際、水中の音波の伝播速度と同じ1500m/sを用いているが、海底より深部の岩石中の伝播速度はより速いにもかかわらず、深度等で区分する こともなく、全てが水で構成されている前提で、地下構造を把握しようとしており、不適切である。 d 以上によると、被告の佐田岬半島北岸部における調査は不十分であり、これをもって、地質境界としての中央構造線が活断層ではないとはいえない。 中央構造線断層帯(金剛山地東縁-由布院)の長期評価(第二版)(以下「中央構造線断層帯長期評価(第二版)」という。)の記載中央構造線断層帯長期評価(第二版)においては、地質境界としての中央構造線について活断層の可能性及び今後の詳細な調査の必要性が指摘されており、被告の佐田岬半島北岸部における調査が不十分で )の記載中央構造線断層帯長期評価(第二版)においては、地質境界としての中央構造線について活断層の可能性及び今後の詳細な調査の必要性が指摘されており、被告の佐田岬半島北岸部における調査が不十分であり、 地質境界としての中央構造線が活断層であることが示唆されている。 なお、査読論文である高橋ほか(2020)は、平成16年に取得した深部を対象とした地震探査データの解析と同年及び平成25年に実施した海底下浅部を対象とした地震データに基づく堆積層内部の構造の把握にすぎず、また、上記データは、三次元反射法探査によるものではなく、かつ、反射法探査が十分に進化したとはいい難い古い時代のデータ にすぎないのであって、中央構造線断層帯長期評価(第二版)の見解を否定するに足りない。 規制委員会による確認について被告が、平成26年10月1日に実施された規制委員会のヒアリングにおいて、佐田岬半島北岸部の海底谷が活断層によって生じた地形でな いことの根拠として提出したとする四国電力(2014)は、ブーマーやチャープソナーといった深度100m以上の深さの構造が分からないものであるし、規制委員会の確認によっても、佐田岬半島北岸部の海底谷が活断層によって生じた地形でないことが確認されたにすぎず、地質境界としての中央構造線が活断層でないことが確認されたわけではない。 ハーフグラーベンの存在専門家により、地質境界としての中央構造線とされていた部分に、ハーフグラーベンと呼ばれる地質構造が形成されているところ、これが当該箇所の活断層の影響により生じた可能性があると指摘されており、地質境界としての中央構造線が活断層であることが裏付けられている。 以上のとおり、地質境界としての中央構造線が活断層である可能性も示 活断層の影響により生じた可能性があると指摘されており、地質境界としての中央構造線が活断層であることが裏付けられている。 以上のとおり、地質境界としての中央構造線が活断層である可能性も示唆されていることからすれば、活断層の有無を確認するには、佐田岬半島北岸部における三次元反射法探査を実施することが不可欠である。 しかしながら、被告は、三次元反射法探査を実施することなく、不十分な二次元反射法探査の結果に基づき、佐田岬半島北岸部に活断層は存在 しないと誤った評価をしており、これを是認した規制委員会の判断は不 合理である。 イ中央構造線断層帯の地震動の評価中央構造線断層帯は、全長480kmに及ぶ国内最大の活断層であるところ、国内において、上記大規模な活断層が地震を起こした記録がなく、地震規模を想定するに当たってデータが乏しく、活断層と認められたのも 近年であることもあり、被告による地震規模の想定は、以下のとおり、科学的根拠に乏しいものとなっている。 応答スペクトルに基づく地震動評価a 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)との比較被告は、地震規模につき、約130kmケースでMw7.4~7. 8、約480kmケースでMw7.7~8.0と想定している。これに対し、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)では、約130kmケースに相当する区間でMw7.4~8.0、断層長さ約360kmの区間でMw7.9~8.4と評価しており、これを基に約480kmの断層が活動した場合を推定すると、Mw8.0~8.5となる。 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)は、地震の専門家が検討を加えた政府の公式見解として公表され、一般防災のために最も起こりやすい地震を想定しているものであるから、原子炉施設の安全性評価にお 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)は、地震の専門家が検討を加えた政府の公式見解として公表され、一般防災のために最も起こりやすい地震を想定しているものであるから、原子炉施設の安全性評価においては厳守されるべきであるが、被告は、上記のとおり、これを大きく下回る地震規模の想定を行っている。 また、被告がその算定において依拠した室谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)の見解は、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)が公表される以前に発表された、主に海外のデータに基づくものであり、国内における長大断層に関する確立した知見であるとはいえない。 したがって、被告の想定する地震規模は過小評価であり、不合理で ある。 b 被告による推定手法の問題点⒜ セグメントの区分等による地震規模評価の問題点被告は、中央構造線断層帯の地震動評価において、約480kmケース及び約130kmケースについては、長さが80km以下に なるようにセグメントを区分し、上記区分ごとに松田式を適用して地震規模を算出し、これを武村式で地震モーメント(Mo)と合算した上で、再度武村式を用いて気象庁マグニチュード(M)に再変換する方法で上記各ケースの地震規模を設定している。上記算出方法は、長さが100kmを超える長大な活断層から発生する地震の すべり量は飽和するとの知見を前提にするものであるが、現段階において、上記のような知見は確立しておらず、すべり量が飽和しなければ、極めて強い揺れによって本件発電所で深刻な事態が発生し得ることは容易に想像できるのであるから、約480kmケース及び約130kmケースにおいても、そのまま松田式を適用して、地 震規模を想定すべきである。 また、被告は、約480kmケース、約130kmケー 易に想像できるのであるから、約480kmケース及び約130kmケースにおいても、そのまま松田式を適用して、地 震規模を想定すべきである。 また、被告は、約480kmケース、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースを想定しているが、実際の活断層の活動が上記4ケースのいずれかに当てはまるとは必ずしもいえない。また、被告の上記セグメント区分に基づく評価を前提とする と、約69kmケースよりも約480kmケースや約130kmケースの方が小さい地震動評価を導いているのであるから、約69kmケースと約130kmケースの中間に最も地震動が大きくなるケースが存在するはずであって、約100~130km程度を基本ケースとして想定すべきである。 以上によると、被告の地震規模の想定は過小評価であり、不合理 である。 ⒝ 松田式のばらつきを考慮していないこと本件ばらつき条項の趣旨は、経験式によって算出される平均値と実際に発生する地震の地震規模とがかい離する可能性を考慮すべきであり、安全性の見地から、より大きい方向でかい離する可能性を 想定すべきであるとするものである。 しかるに、被告は、地震規模を求めるために松田式を用いるに当たって、内包する不確かさ、すなわち、ばらつきを十分に考慮していない。 この点、被告は、約480kmケースを考慮していると主張する が、前記⒜のとおり、セグメントごとに区分した上で、それぞれの地震規模を合算するという方法により、断層長さに関する不確かさを考慮し尽くしているとはいえないところ、現に、約480kmケースの地震動評価が他のケースよりも小さくなっていること、松田式の基となったのは14地震についてのデータにすぎず、かつ、こ れらには480kmもの長大断層 いえないところ、現に、約480kmケースの地震動評価が他のケースよりも小さくなっていること、松田式の基となったのは14地震についてのデータにすぎず、かつ、こ れらには480kmもの長大断層に関するものは含まれていないことからすれば、松田式の有するばらつきは、長大地震の想定において大きいものではないとはいえず、約480kmケースを考慮したことをもって、松田式の有するばらつきが十分に考慮されたとはいえない。 ⒞ 耐専式の適用排除被告は、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルに関し、「極近距離」よりも近傍については耐専式におけるコントロールポイントが設けられていないこと、耐専式の適用性の検証に用いたデータが存在しない領域で内陸補正を考 慮してもその他の距離減衰式の適用結果と大きくかい離すること等 を理由に、耐専式の適用を排除して、国内外で汎用的に用いられている経験式であるとして、その他の距離減衰式を用いている。 しかしながら、コントロールポイントは、耐専式の成立当初は存在しておらず、後に便宜的に設定されたものにすぎないのであって、コントロールポイントの存在が耐専式の適用を排除する理由とはな らない。また、2000年鳥取県西部地震における賀祥ダムや1995年兵庫県南部地震における神戸大学の例のほかに、1999年トルコKocaeli地震SAKARYA観測点や台湾集集地震TCU071観測点の観測記録のように、被告が耐専式の適用を排除した約130kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルと概 ね一致する「極近距離」よりも近傍で発生した地震についても耐専式の適用結果と観測記録が整合しており、耐専式の適用を排除することに合理的理由があるとはいえない。さらに、被告 の各鉛直モデルと概 ね一致する「極近距離」よりも近傍で発生した地震についても耐専式の適用結果と観測記録が整合しており、耐専式の適用を排除することに合理的理由があるとはいえない。さらに、被告が耐専式の適用を排除したケースに用いたその他の距離減衰式は、いずれも、耐専式と異なり、断層距離10km程度から距離が短くなっても加速 度があまり変わらないものであって科学的裏付けがない上、地盤データ、地震規模及び距離が本件発電所敷地と整合せず、また、そのうち5つの距離減衰式については、海外での偏ったデータを基にしているにすぎず、高周波地震動への対応には問題があるとされているなど信頼性が確保されているとはいえないのであって、被告は、 想定される地震動の規模を小さく評価するためにその他の距離減衰式を恣意的に選定したものであり、不合理である。 加えて、後記⒠のとおり、断層傾斜角が南傾斜60~80度であれば、耐専式は十分適用可能である。 ⒟ 耐専式のばらつきにつき定量的上乗せをしていないこと 前記⒝のとおり、本件ばらつき条項の趣旨は、安全性の見地から、 経験式によって算出される平均値と実際に発生する地震の地震規模とが、より大きい方向でかい離する可能性を想定すべきであるとするものであることからすると、耐専式のばらつきにつき、定量的に上乗せをすべきである。 この点、被告は、内陸補正を行わないことで不確かさを考慮して いる、本件発電所周辺には、内陸地殻内地震が全国的な平均値よりも小さな地震動となる地域的な特性が認められるなどとして、耐専式のばらつきの定量的上乗せを行っていない。しかしながら、内陸補正係数は、国内のみならず国外の内陸地殻内地震の観測記録に基づき算出されているため、これを用いることで国内の地震につい などとして、耐専式のばらつきの定量的上乗せを行っていない。しかしながら、内陸補正係数は、国内のみならず国外の内陸地殻内地震の観測記録に基づき算出されているため、これを用いることで国内の地震について 適正な平均像が導かれるか疑問であるし、内陸補正をしなくても耐専式の評価を超えたデータは相当程度存在するのであるから、内陸補正を行わないことで、不確かさの考慮がされたとはいえない。また、被告は、他地域との比較データを示しておらず、上記地域特性の判断は科学的根拠を欠き、合理的でない。 したがって、被告が耐専式のばらつきについて定量的上乗せをしていないことは、新規制基準に反し不合理である。 ⒠ 南傾斜モデルを想定していないこと被告は、応答スペクトルに基づく地震動評価においては、断層傾斜角が鉛直であること等を理由に南傾斜モデルを考慮していない。 しかしながら、三次元物理探査は実施されておらず、断層傾斜角が鉛直であるとはいえないところ、原子力安全・保安院が本件発電所の敷地前面海域で行った海上音波探査の結果、敷地前面海域の活動層より南側の地形が隆起していることや本件発電所周辺のテクトニクス(岩石圏の動き)が圧縮場になっていることが判明しており、 南傾斜の可能性は高いと考えられ、60度程度傾斜している可能性 も否定できない。 そして、断層傾斜角が60~80度の南傾斜であれば、耐専式は十分に適用可能であるから、被告が、中央構造線断層帯の断層傾斜角について、これを鉛直とし、耐専式の適用を排除したのは、科学的根拠を欠く。 断層モデルを用いた手法による地震動評価の問題点a 壇ほか(2011)を採用した誤り⒜ 被告は、スケーリング則の適用に当たって、壇ほか(2011)を採用している。 しかし、 く。 断層モデルを用いた手法による地震動評価の問題点a 壇ほか(2011)を採用した誤り⒜ 被告は、スケーリング則の適用に当たって、壇ほか(2011)を採用している。 しかし、国内で発生する地震の断層パラメータを想定するには、 国内の地震データのみを用いるべきであるが、国内において、内陸の長大断層から発生した地震による強震記録は得られていないため、壇ほか(2011)を含む長大な横ずれ断層に対する強震動評価の現時点での体系は、仮定の上に仮定を重ねたものになっており、仮説にとどまる非科学的なものである。なお、壇ほか(2011)が 依拠する国外の地震データのうち、長大断層に関するものは2002年アラスカDenali地震のPS10観測点の記録のみであり、かつ、上記記録は、液状化の影響を受けたものであるから、データとしての信用性に乏しい。 ⒝ また、壇ほか(2011)は、アスペリティの動的応力降下量を 12.2Mpaと設定しているが、入江(2014)が国内のデータのみからアスペリティの動的応力降下量を15.2MPaと算出していること、レシピにおいて、暫定値ではあるものの、長大な横ずれ断層の数値が約14.4Mpaとされていること、宮腰ほか(2015)において、特に長大というわけでもない国内における最近 の内陸地殻内地震の横ずれ断層の平均値が12.8Mpaとされて いることからすれば、壇ほか(2011)が設定するアスペリティの動的応力降下量は、国内の長大断層の平均値としては過小に評価されている。 b 約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用した誤り 平成28年改訂レシピによれば、長大な断層における平均応力降 b 約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用した誤り 平成28年改訂レシピによれば、長大な断層における平均応力降下量の暫定値として、FujiiandMatsu’ura(2000)を参照して3.1MPaとすることの適用下限値及び断層幅と平均すべり量が飽和することを前提としたスケーリング則の適用下限値が、いずれもMo(地震モーメント)=1.8×1020(N・m)(震 源断層の面積に換算すると1800k㎡)とされているにもかかわらず、被告は、上記適用下限値を下回る約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースにおいて、FujiiandMatsu’ura(2000)に示された静的応力降下量を用いており、不適切である。 c 約54kmケースに入倉・三宅式を適用した誤り入倉・三宅式については、高角度の断層で発生する地震の場合、地震モーメントを過小評価してしまうという欠陥が従前から指摘されており、2016年熊本地震においてこの欠陥が明らかになったのであるから、松田式や2016年熊本地震の実測値と整合した武村式を用 いた方法との比較検討がされるべきであるが、被告は、これをせず入倉・三宅式を適用しており、地震モーメントが大きく算定されることを回避するものであって不適切である。 (被告の主張)ア地質境界としての中央構造線は活断層でないこと 被告の調査及び評価の概要 a 被告は、佐田岬半島北岸部において、測線間隔4km程度の海上音波探査により、中央構造線断層帯の位置や性状をまず把握した上で、湾内にまで入る地質境界としての中央構造線に直交する測線を多数配置するなどして、より稠密な海上音波探査を実施してお 隔4km程度の海上音波探査により、中央構造線断層帯の位置や性状をまず把握した上で、湾内にまで入る地質境界としての中央構造線に直交する測線を多数配置するなどして、より稠密な海上音波探査を実施しており、伊予灘において、被告及びその他の機関がこれまでに実施した海上音波探査の 全長は約6700kmと、他に例を見ないほどの高密度でされている。 そして、活断層であるか否かは、後期更新世以降(約12万~13万年前以降)の活動の有無によって判断されるため、海上音波探査のうち、活断層調査において特に重要となるのは、海底下浅部を調査対象とするブーマー、チャープソナー等を用いた音波探査であるところ、 被告は、佐田岬半島北岸部の湾内も含め、これらを利用し、ショートマルチチャンネルと呼ばれる最新の技術を用いて高解像度な海上音波探査記録を得た。このような高密度かつ高解像度な海上音波探査記録によると、活断層が分布しているのは、本件発電所敷地沖合約8~5kmの範囲であって、それよりも南側では、A層(現在堆積が進行中 の海底面を形成する地層)、D層(A層のすぐ下の更新世の中期から後期にかけて形成された地層)及びT層(鮮新世(約500万年前から約258万年前までの期間)の後期から更新世の前期にかけて形成された地層であって、D層の下位の堆積層)がそれぞれほぼ水平に分布し、仮に、三波川変成岩類の上面に沿って堆積層がずれ落ちるような 活動がこれまで繰り返されてきたのであれば見られるはずである三波川変成岩類の上面に向かって扇形となるような正断層運動を示す堆積層の変位の累積は見られず、T層が堆積した少なくとも約100万年前以降、佐田岬半島北岸部における地質境界としての中央構造線が活動していないといえること、D層のみに着目してみても堆積物が水平 層の変位の累積は見られず、T層が堆積した少なくとも約100万年前以降、佐田岬半島北岸部における地質境界としての中央構造線が活動していないといえること、D層のみに着目してみても堆積物が水平 に分布しており、少なくとも後期更新世以降に変位が生じていないこ とが明確に判別できること等から、被告は、佐田岬半島北岸部の地質境界としての中央構造線が活断層ではないと評価した。 b このような被告の評価は、伊予灘の地質構造に基づく検討からも支持される。すなわち、地質境界としての中央構造線は、三波川変成岩類と地下浅部における和泉層群及び地下深部における領家花こう岩類 との境界であり、前者は20~30度の低角、後者は約40度の中角とされているところ、横ずれの卓越する中央構造線断層帯では高角の断層が生じやすく、震源断層の上方(沖合約8km付近)にショートカットした形で高角の活断層(中央構造線断層帯)が生じているのであり、沿岸部で低角になる三波川変成岩類上面を覆う伊予灘の堆積層 が全て領家帯と一緒に横ずれして沿岸部に低角の活断層が生じることは力学的に不可能である。 c このような被告の評価については、複数の専門家が妥当である旨の意見を述べており、規制委員会も、中央構造線断層帯長期評価(第二版)の内容も踏まえた上で、被告の地震動評価の妥当性を確認してい る。また、佐田岬半島北岸部の地質境界としての中央構造線が活断層ではないことを取りまとめた論文である高橋ほか(2020)が、日本活断層学会が発行する「活断層研究」において査読論文として公表されたことにより、被告の評価の妥当性は学術的にも認められた。 原告らの主張について a 被告の調査が不十分であるとの主張について前記aのとおり、被告は、佐田岬半島北岸 して公表されたことにより、被告の評価の妥当性は学術的にも認められた。 原告らの主張について a 被告の調査が不十分であるとの主張について前記aのとおり、被告は、佐田岬半島北岸部において稠密な海上音波探査を実施し、高解像度な海上音波探査記録を得て、地質境界としての中央構造線が活断層ではないと評価しており、以下の各点も含め、被告の調査に不十分な点はない。 ⒜ 振幅補正について 被告が行った振幅補正は飽くまで、ブーマーやチャープソナーで取得した海底下浅部のデータ解析のために行われたものであり、海底下深部のデータを得るためではない。 ⒝ 伝播速度について海底下浅部は堆積物に海水が多く含まれる軟らかい層であり、水 中の音波の伝播速度である1500m/sを用いることは一般的な処理である。 b 中央構造線断層帯長期評価(第二版)の記載中央構造線断層帯長期評価(第二版)には、佐田岬半島北岸部の活断層の有無について調査の必要性を指摘する旨の記載があるが、これ は、被告が実施した佐田岬半島北岸部の海上音波探査記録(四国電力(2014))の存在が中央構造線断層帯長期評価の改訂に関わった委員に十分に知られておらず、改訂に当たって、上記記録が考慮されていなかったことによるものであるから、上記記載をもって、佐田岬半島北岸部に活断層が存在する可能性があるということはできない。 c ハーフグラーベンの不存在プレッシャーリッジ(地盤表面が凸上に膨らむ箇所)を伴う正のフラワー構造(圧縮性の構造)とグラーベン(溝状に落ち込む箇所)を伴う負のフラワー構造(伸張性の構造)とが共存する伊予灘の地質構造は、断層模型実験の結果から、横ずれ運動を示し、正断層成分はか なり小さいことが実証されて とグラーベン(溝状に落ち込む箇所)を伴う負のフラワー構造(伸張性の構造)とが共存する伊予灘の地質構造は、断層模型実験の結果から、横ずれ運動を示し、正断層成分はか なり小さいことが実証されているところ、このような地質構造を正断層変位が現れるハーフグラーベン構造で説明することはできないのであって、地質境界としての中央構造線にハーフグラーベンが存在するとはいえず、活断層の存在が推認されるものではない。 d 三次元反射法探査の不実施について 前記aのとおり、伊予灘では、総延長約6700kmに及ぶ高密 度かつ高解像度な海上音波探査が実施されており、被告は、これらの二次元探査結果等を基に地下構造を三次元的に把握した上で、地下深部の震源断層の傾斜角についても不確かさを考慮し、適切に地震動評価に反映している。また、前記aのとおり伊予灘で実施された海上音波探査によるデータは、佐田岬半島北岸部における活断層の有無を 判断するために必要かつ十分に得られており、このことは、多数の活断層調査の専門家及び専門機関も述べるとおりである。したがって、佐田岬半島北岸部において、活断層の有無を判断するために、更に三次元反射法探査を実施する必要はない。 なお、海上での三次元反射法探査では、一般に、調査船から数千m の長大な受振ケーブルを数百mの幅にわたって複数列曳航する必要があるため、広大な外洋での調査には適用性があるものの、伊予灘のように船舶の往来が多く、また漁業活動の盛んな内海で実施することは、航行安全及び漁業活動への影響の観点から現実的には極めて難しいため、一般的とはいえない。 以上によると、二次元反射法探査である海上音波探査の結果等に基づき、佐田岬半島北岸部に活断層は存在しないとした被告の評価及びこれ 点から現実的には極めて難しいため、一般的とはいえない。 以上によると、二次元反射法探査である海上音波探査の結果等に基づき、佐田岬半島北岸部に活断層は存在しないとした被告の評価及びこれを是認した規制委員会の判断に不合理な点はない。 イ中央構造線断層帯の地震動の評価被告は、前提事実11⑵アaのとおり、内陸地殻内地震につき、応答 スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルに基づく地震動評価を行った。 応答スペクトルに基づく地震動評価a 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)との比較について被告は、断層のすべり量について、堤・後藤(2006)による中 央構造線断層帯の地質調査結果に加え、室谷ほか(2009) 及び室 谷ほか(2010) の知見(長大断層に限れば、地表最大変位量は平均すべり量の概ね2~3倍であり、地表最大変位量は断層長さがほぼ100kmで約10mに飽和する。)と整合するように設定して、中央構造線断層帯による地震の規模を約480kmケースでMw7.7~8.0と評価したのに対し、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂) は、地表において確認された最大の変位量(地表最大変位量)(7m)が断層の平均すべり量と同じという仮定や、一部区間の断層の幅や平均すべり量が全長にわたって同一であるという仮定の下算出して、上記地震規模を360kmケースにおいてMw7.9~8.4と評価したのであって、上記知見に反するし、中央構造線断層帯長期評価(一 部改訂)自身、地表のずれの量は、地下の断層面におけるずれの量と同量ではない可能性があるとしている。また、平成29年に改訂された中央構造線断層帯長期評価(第二版)では、モーメントマグニチュードの算出方法が改められており、全長が約444kmのモーメント れの量と同量ではない可能性があるとしている。また、平成29年に改訂された中央構造線断層帯長期評価(第二版)では、モーメントマグニチュードの算出方法が改められており、全長が約444kmのモーメントマグニチュードの値は、Murotanietal.(2015) で求めた地震モーメントを用いてKanamori(1977) により算出し、断層傾斜が高角度の場合でMw7.8、中角度の場合でMw8.0と、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)の算出結果(Mw7.9~8.4)よりも、小さな値へと見直されている。 以上によると、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)の地震規模 より小さいことをもって、被告の地震規模の評価が過小であるとはいえない。 b 被告による推定手法の問題点との主張について⒜ セグメントの区分等による地震規模評価松田式は、数百kmに及ぶような長大断層に関するデータに基づ く経験式ではなく、基になったデータに起因して、その適用範囲は 長さ80km以下の断層に限られると考えられているところ、被告は、これを踏まえて、長さが概ね80km以下になるようにセグメントを区分し、上記区分ごとに算出した地震規模を合計する方法により断層全体の地震規模を求めた。この点、地震調査委員会による「活断層の長期評価手法」報告書において、断層長さが断層面の幅 の4倍を超える場合には長さが4倍を超えないように区分した区間が連動するモデルを設定して地震規模を算出する手法が示されていることや、レシピにおいて、同手法が、活断層長さが概ね80kmを超える場合に参考とすべき知見として示されていることからすれば、被告の上記算出方法が地震学的に合理性を有することは明らか である。 また、被告によるセグメント区分は、中央構造 概ね80kmを超える場合に参考とすべき知見として示されていることからすれば、被告の上記算出方法が地震学的に合理性を有することは明らか である。 また、被告によるセグメント区分は、中央構造線断層帯の活動セグメントを把握した上で、活動セグメントの連動等も考慮して行われたものであり、適切である。原告らは、約69kmケースと約130kmケースの中間に、最も地震動が大きくなるケースが存在す るはずである旨主張するが、単なる憶測にすぎないし、約480kmケース、約130kmケース及び約54kmケースの断層モデルを用いた手法による地震動評価の結果によれば、本件発電所敷地に最も大きな影響を及ぼすのは約54kmケースであるところ、断層長さが長くなり、震源断層面が大きくなったとしても、地震動の距 離減衰により、地震動の評価地点との距離が遠い断層面からの地震動の影響は極めて小さいものとなるため、それ以上断層長さを長くしても、基本的には地震動の大きさは変わらないことが分かっているから、上記主張には理由がない。なお、本来、耐専式を適用できないと判断すべき約69kmケースや約54kmケースにもあえて 保守的に耐専式を適用した結果、これらの方が、約480kmケー スや約130kmケースの評価結果より大きくなっている。また、そもそも、震源が敷地に近く、その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震については、断層モデルを用いた手法が重視されるべきである(地震ガイドⅠ.3.1⑵)。 ⒝ 松田式のばらつきを考慮していないとの主張について 松田式を含む経験式は、観測記録に含まれる地域特性を適切に捨象し、科学的に有意な関係性を導くものとして求められたものであるから、経験式の基となる観測記録と経験式とにばらつ いとの主張について 松田式を含む経験式は、観測記録に含まれる地域特性を適切に捨象し、科学的に有意な関係性を導くものとして求められたものであるから、経験式の基となる観測記録と経験式とにばらつきが生じるのは当然のことである(ただし、松田式については、非常にばらつきが小さく、震源断層長さと地震規模の間に強い相関関係がある。)。 このような経験式のばらつきをそのまま考慮することは、本件発電所の立地する地域とは全く地域特性の異なる地域で発生する地震に基づいて地震動評価を行うことになり、不合理である。 そして、松田式は、断層長さと地震のマグニチュードの関係を表す経験式であるところ、被告は、松田式のばらつきが生じる主たる 要因である断層幅について、詳細な調査を踏まえて、地震発生層の上端深さ2km、下端深さ15kmと保守的に設定するとともに、松田式を用いた地震動評価(耐専式による評価)において、本来、耐専式を適用すると過大評価となるケースについてもあえて耐専式を適用するなどして松田式のばらつきが本件発電所の地震動の過小 評価につながらないよう配慮しており、不合理な点はない。 ⒞ 耐専式の適用排除について距離減衰式は、過去の地震観測データを回帰分析することによって得られた一般法則を導く計算式であり、精度の高い予測を行うにはその基となった観測記録に係るデータベースの範囲で適用される べきであるところ、耐専式についても、そのデータベースである等 価震源距離で28~202kmの範囲を外れる場合には、その適用性を慎重に判断する必要がある。そして、耐専式の適用性に関する意見交換会では、等価震源距離が「極近距離」よりも近傍の地震への耐専式の適用に当たっては、観測記録やその他の距離減衰式による評価又は断層モデル 重に判断する必要がある。そして、耐専式の適用性に関する意見交換会では、等価震源距離が「極近距離」よりも近傍の地震への耐専式の適用に当たっては、観測記録やその他の距離減衰式による評価又は断層モデルを用いた手法による地震動評価と比較するな どして、個別に適用性を検証する必要があることが確認された。この点、1999年トルコKocaeli地震や台湾集集地震は、内陸補正をした結果、他の評価結果とのかい離が小さいことが確認された事例であり、内陸補正をしてもかい離が大きい場合に耐専式を適用できるかは別問題である。そして、被告は、上記意見交換会の 結論を踏まえて、等価震源距離が「極近距離」よりも近傍となるケースへの耐専式の適用性を個別に検証し、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルでは、内陸補正を行ってもその他の距離減衰式による評価結果と比べて明らかに過大評価になることを確認したことから、これらのケースについて 耐専式を適用することはできないと判断した。 また、上記各ケースについて被告が用いたその他の距離減衰式による地震動レベルは、断層モデルを用いた手法による地震動評価の結果と整合的であり、その他の距離減衰式同士の地震動レベルも概ね同等であった。 以上によると、被告が、上記の各ケースにつき、耐専式の適用を排除してその他の距離減衰式を採用したことに不合理な点はない。 ⒟ 耐専式のばらつきにつき定量的上乗せをしていないことについて前記3⑴(被告の主張)イのとおり、本件ばらつき条項は、経験式から求まる値とその基となる観測データにばらつきが生じるとい う当然のことを注意的に規定したものにすぎず、経験式によって算 出された数値に上乗せすることを求めるものではない。 そして 求まる値とその基となる観測データにばらつきが生じるとい う当然のことを注意的に規定したものにすぎず、経験式によって算 出された数値に上乗せすることを求めるものではない。 そして、耐専式は、観測地点の地域特性の違いに起因してばらつきが生じるところ、このばらつきをそのまま考慮することは、本件発電所の立地する地域とは特性の全く異なる他の地域で発生する地震に基づいて地震動評価をすることとなり、不合理である。この点、 被告は、本件発電所敷地の地域特性として、耐専式によって求まる地震動よりも小さめの地震動になると考えられる要素(内陸地殻内地震であり内陸補正を行うのが妥当であること、耐専式が前提とするS波速度2.2km/sよりも硬い地盤であることなど)があるにもかかわらず、あえてそれらを考慮しないことなどにより、十分 な保守性を確保しているのであって、被告が、耐専式につき定量的に上乗せをしていないことは不合理でない。 なお、内陸補正係数は、一般社団法人日本電気協会原子力規格委員会が定めた規格(JEAG4601)において採用されているものであり、規制委員会もその妥当性を認めており、信頼性の高い知 見といえる。 ⒠ 南傾斜モデルを想定していないことについて耐専式の適用において、断層面の南傾斜を想定すると、鉛直モデルよりも断層面が更に敷地に近くなり、等価震源距離も短くなるため、鉛直モデルでさえも等価震源距離が短すぎて耐専式の適用が困 難であった約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースについては、南傾斜を想定すると、適用範囲から更に外れることとなるのは自明であり、南傾斜を考慮する意味はない。また、不確かさとして考慮する断層傾斜角を南傾斜80度とすることについては、平成18年の旧耐震指針の 南傾斜を想定すると、適用範囲から更に外れることとなるのは自明であり、南傾斜を考慮する意味はない。また、不確かさとして考慮する断層傾斜角を南傾斜80度とすることについては、平成18年の旧耐震指針の改訂に伴って地震動評価を見直 した際(耐震バックチェック)、原子力安全委員会での有識者による 審査での議論を経て認められており、本件適合性審査においても、特段の異論なく承認され、中央構造線断層帯長期評価(第二版)でも、中央構造線断層帯の震源断層の傾斜角につき、北傾斜の可能性と鉛直の可能性が両論併記されているのみであることからすると、南傾斜80度は、十分に保守的かつ合理的な設定であり、南傾斜6 0度を考慮する必要はない。 なお、約480kmケースでは、南傾斜80度を考慮しても耐専式の適用が可能である可能性もあるが、長大断層のケースについては、等価震源距離が相当に長く、地震波の減衰が大きいため、南傾斜80度を想定し、等価震源距離が鉛直モデルより多少短くなると しても、地震動評価に与える影響は小さく、他のケースを大きく上回るような結果になることはないから、被告がこれを省略したことに不合理な点はない。 断層モデルを用いた手法による地震動評価a 壇ほか(2011)を採用したことについて ⒜ 壇ほか(2011)は、壇ほか(2012)、藤堂ほか(2012)、壇ほか(2016)による検証により妥当性が確保されており、被告自身も、壇ほか(2011)を用いた中央構造線断層帯の地震動評価結果と1999年トルコKocaeli地震や2008年四川地震の岩盤上の観測記録とを比較して整合的であることを確認し、 本件適合性審査でも確認を受けている。また、壇ほか(2011)の手法は、IAEAがSSG-9(IAEAの安全基 震や2008年四川地震の岩盤上の観測記録とを比較して整合的であることを確認し、 本件適合性審査でも確認を受けている。また、壇ほか(2011)の手法は、IAEAがSSG-9(IAEAの安全基準の一つであり、原子力発電所施設の地震ハザード評価に関する内容を規定したもの)を補完する目的で策定しているSafetyReportsSeriesNo.85で長大断層に対する新たな評価手法 として認められている。これらの事情に照らせば、壇ほか(201 1)は、信頼性のある手法である。 なお、壇ほか(2011)の妥当性の検証のうち、2002年アラスカDenali地震の記録を用いた検証においては、同地震のPS10観測点の表層地盤で液状化気味の影響を受けた最大加速度については比較の対象とされておらず、十分な検証がされている。 ⒝ また、壇ほか(2011)は地震モーメントや応力降下量といったパラメータを一連のものとして設定しており、それらを用いることで長大断層による地震動を再現できることなどが検証されているのであるから、壇ほか(2011)の設定するアスペリティの応力降下量が過小となるものではない。 b 約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用したことについてレシピは、長大断層の横長の断層面において円形の破壊面を想定することが困難であることに鑑みてFujiiandMatsu’ ura(2000)を用いることを提案しているところ、平成28年改訂レシピによると、原告ら主張の誤解が生じ兼ねなかったため、平成28年12月修正レシピにおいて、円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層等についてFujii 28年改訂レシピによると、原告ら主張の誤解が生じ兼ねなかったため、平成28年12月修正レシピにおいて、円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層等についてFujiiandMatsu’ura(2000)を用いることができる旨明 示された。したがって、約130kmケースの鉛直モデルや約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)の応力降下量(3.1MPa)を用いることは妥当である。 c 約54kmケースに入倉・三宅式を適用したことについて入倉・三宅式については、宮腰ほか(2015)により、平成7年 以降に発生した国内の内陸地殻内地震(Mw5.4~6.9)のデー タを用いて再評価を行った結果、Mw6.5以上で入倉・三宅式とよく一致することが確認されており、また、入倉ほか(2016)により、2016年熊本地震の観測データについても、入倉・三宅式と整合的であることが確認されている。 もっとも、入倉・三宅式が、断層幅や断層長さの設定いかんによっ ては、地震モーメントが小さめになるリスクがあり得ることは従来から知られていたため、被告は、中央構造線断層帯について、断層長さ及び断層幅を保守的に設定するとともに、断層傾斜角を北傾斜30度とする不確かさを考慮することにより、鉛直な断層に比して約4倍の地震モーメントを設定するなど、十分に保守的に地震動評価を行った 上、約54kmケースについては、壇ほか(2011)のスケーリング則も併用して評価しており、地震動を過小評価していない。 なお、レシピに挙げられた松田式を用いる手法は、一部の断層パラメータの設定を簡便化した方法としてレシピに追加されたものにすぎず、同手法による場合、調査により得られた震源断層の詳細な 価していない。 なお、レシピに挙げられた松田式を用いる手法は、一部の断層パラメータの設定を簡便化した方法としてレシピに追加されたものにすぎず、同手法による場合、調査により得られた震源断層の詳細な情報を 直接地震動評価に用いることができないばかりか、震源断層の長さや幅を仮想的に調整して震源断層モデルを設定することになるため、既に存在する詳細な震源断層(長さ、幅等)の情報と一致しない震源断層面を設定することになってしまうのであって、詳細な情報を用いる入倉・三宅式のスケーリング則を用いた手法の方が科学的に合理性の ある評価を行うことができ、松田式を用いる必要はない。 ⑶ プレート間地震の地震動評価(原告らの主張)ア地震規模の評価の誤り被告は、検討用地震として選定した南海トラフ巨大地震につき、応答ス ペクトルに基づく地震動評価を行うに当たり、地震規模をMw8.3と評 価している。しかしながら、地震本部は、南海トラフ長期評価(第二版)において、南海トラフ巨大地震につき、M8.0~9.0の地震が30年以内に60~70%の確率で発生すると公表しているのであるから、安全性確保の観点からは、上記数値の最大値であるM9.0を想定すべきである。被告は、南海トラフ巨大地震についてMw8.3を採用した根拠を内 閣府検討会(2012b)の見解に求めているが、内閣府検討会は、基本的には、一般防災を目的として、東北地方太平洋沖地震と同様の地震が南海トラフで起きた場合の震度分布等を検討しているにすぎず、より安全性に配慮する必要性のある個別施設については、個別の設計基準等に基づいた地震・津波の推計が改めて必要であることは内閣府検討会自身が認めて いるところであるから、同見解を地震規模の根拠とするのは誤りである。 要性のある個別施設については、個別の設計基準等に基づいた地震・津波の推計が改めて必要であることは内閣府検討会自身が認めて いるところであるから、同見解を地震規模の根拠とするのは誤りである。 イ地震の連動等に関する検討の欠如また、被告は、南海トラフ巨大地震の規模等を想定するに当たって、以下の各検討を欠いている。 東海から琉球海溝までの連動による超巨大地震の発生 地震規模と断層の動いた距離・面積には相関関係があるとされているところ、東北地方太平洋沖地震では、500kmの断層が動いたと言われているのに対し、南海トラフでは、複数の専門家により、少なくとも、御前崎から喜界島にかけての1000kmを超える領域を大きく変位させるようなM9.0クラスの超巨大地震が平均して約1700年の間隔 で発生した可能性がある旨の見解が示されている。しかるに、被告は、上記のような東海から琉球海溝までの連動による超巨大地震の発生可能性について検討をしていない。 地震セグメントの連動複数の専門家が、南海トラフにおいては、東海、東南海、南海地震の 3つの地震セグメントが、数~数十分の時間差で連動することについて も検討が必要であり、上記各セグメントが数分の時間差で連動した場合、強い揺れの継続時間が20~30分以上と長くなる可能性がある旨指摘しているところ、長時間の揺れは、減衰の少ない建物に長時間にわたって共振を起こし、材料疲労の蓄積などに大きな影響を与えるものと考えられており、また、平野部の液状化に及ぼす影響についても検討が必要 であるとされている。しかしながら、被告は、上記各セグメントの時間差連動及びこれによる長時間の地震動継続の問題を検討していない。 震源域の位置複数の専門家が、東北地方太平洋沖地震 が必要 であるとされている。しかしながら、被告は、上記各セグメントの時間差連動及びこれによる長時間の地震動継続の問題を検討していない。 震源域の位置複数の専門家が、東北地方太平洋沖地震域の外縁の上(プレート面の深さは60km以上)にあった福島第一原発が675ガルを観測したの であるから、南海トラフ巨大地震が起これば、同地震の震源域の北限の真上(プレート境界面の深さは約35km)に位置する本件発電所における地震動が570ガルを大きく超える可能性は否定できないと述べているが、被告は、上記見解を考慮していない。 発生様式を異にする地震の連動 1854年安政東海地震や、東北地方太平洋沖地震では、プレート間地震から、内陸地殻内地震、スラブ内地震が連動したように、M9.0クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合、余震とともにM8.0を超える中央構造線断層帯を震源とする巨大地震、スラブ内地震が連動することにより、想定をはるかに超える地震動が発生する可能性があり、その場 合、揺れの時間も相当長くなるはずであるが、被告は、そのような深刻な事態の発生を全く想定していない。 ウしたがって、南海トラフ巨大地震の地震規模に関する被告の想定は不十分であり、これを是認した規制委員会の判断は不合理である。 (被告の主張) ア地震規模の評価の誤りとの主張について 被告は、前提事実11⑵アbのとおり、南海トラフ巨大地震を検討用地震として選定し、内閣府検討会(2012b)に基づき、地震規模をMw8.3と想定して応答スペクトルに基づく地震動評価を行った。すなわち、内閣府検討会(2012b)は、距離減衰式がそもそも巨大地震に対して適用できるように作成されたものではないことを踏まえ、Mw8.0 を超える 応答スペクトルに基づく地震動評価を行った。すなわち、内閣府検討会(2012b)は、距離減衰式がそもそも巨大地震に対して適用できるように作成されたものではないことを踏まえ、Mw8.0 を超えるような巨大地震に対して距離減衰式を用いる場合に設定する地震規模に関して、東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)について、距離減衰式から求められる地震の規模であるパラメータMwが8.2~8.3程度であることから、南海トラフ巨大地震(Mw9.0)について、東北地方太平洋沖地震と同じMw8.3を採用しているところ、被告もこれに基 づき、Mw8.3を採用して評価を行った。そして、内閣府検討会(2012b)で示された南海トラフ巨大地震に係る強震断層モデル(Mw9. 0)は、科学的知見に基づき、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震及び津波を検討した結果によるものであり、過大評価となっている可能性すら留保されているのであって、一般防災用に平均的なレベルの ものとして策定されたものではないから、これに基づいた評価が過小評価となるものではない。また、被告は、個別の設計基準等であるところの地震ガイド等に基づき、内閣府検討会(2012b)のモデルに更に不確かさを考慮した評価を実施した。 イ地震の連動等に関する検討の欠如との主張について 東海から琉球海溝までの連動による超巨大地震の発生との主張について前記アのとおり、内閣府検討会(2012b)のモデルは、現在の科学的知見に基づいて想定される最大規模のものであり、これを上回る規模の地震の発生は考え難いし、被告は、固着域等に着目した分析、評価 を行った結果、南海トラフから琉球海溝の領域が連動する地震の発生可 能性を考慮する必要がないことを確認しており、被告の地震規模 生は考え難いし、被告は、固着域等に着目した分析、評価 を行った結果、南海トラフから琉球海溝の領域が連動する地震の発生可 能性を考慮する必要がないことを確認しており、被告の地震規模の想定に誤りはない。なお、南海トラフから琉球海溝の領域が連動する地震を想定しても、本件原子炉施設の地震動評価にとって支配的であるのは本件原子炉施設に近い南海トラフの領域であること及び本件原子炉施設の地震動評価において南海トラフ巨大地震による地震動は中央構造線断層 帯の地震による地震動に比べてかなり小さいものであることに鑑みれば、本件原子炉施設の基準地震動Ssの評価に影響することは考えられない。 地震セグメントの連動仮に、東海、東南海及び南海地震の3つの地震セグメントが時間差連動したとしても、東海及び東南海セグメントは本件発電所敷地から離れ ており、これらのセグメントから本件発電所敷地にもたらされる地震動は極めて小さいものと推察され、南海セグメントによる影響が支配的である本件発電所に大きな影響が生じることはない。また、上記連動により長周期地震動の継続時間が長くなることが懸念されるとしても、固有周期が短周期である原子炉施設への影響は小さい。 震源域の位置原告らが指摘する専門家らの見解は、いずれも具体的に地震動評価を行った結果に基づくものではなく、抽象的可能性を述べるにとどまる。 また、その点を措くとしても、原告らの主張は、本件発電所敷地は、福島第一原発と比較して、地震動の増幅が小さい地盤であること、福島第 一原発に地震動をもたらす厚く硬い太平洋プレートで発生する地震動は大きくなりやすいのに対し、本件発電所に地震動をもたらすフィリピン海プレートは比較的薄く軟らかいことなど、地域特性が大きく異なることを踏まえな 震動をもたらす厚く硬い太平洋プレートで発生する地震動は大きくなりやすいのに対し、本件発電所に地震動をもたらすフィリピン海プレートは比較的薄く軟らかいことなど、地域特性が大きく異なることを踏まえないものであって理由がない。 発生様式を異にする地震の連動 原告らの主張は、抽象的な可能性を指摘するものにすぎず、それを措 くとしても、南海トラフ巨大地震が発生したとしても、本件原子炉施設の安全上重要な設備は、弾性範囲(地震力によって一時的に変形しても、地震力を取り除くと元どおりになる範囲)にとどまるため、南海トラフ巨大地震から時間的に近接して再び強震動に襲われると仮定しても、安全性が損なわれることはない。 ウしたがって、南海トラフ巨大地震の地震規模に関する被告の想定は十分であり、これを是認した規制委員会の判断は合理性を有する。 ⑷ 海洋プレート内地震の地震動評価(原告らの主張)海溝部分より深部で発生するスラブ内地震については、プレート間地震に 比して、その実態が明らかにされておらず、短周期成分が多いことや、応力降下量が高いことから、本件原子炉施設に甚大な被害をもたらすおそれがあり、地震規模の想定に当たっても、十分に余裕をもった慎重な配慮が求められるべきである。 そして、予測地図(2014)において、本件発電所敷地の領域(安芸灘 ~伊予灘~豊後水道)における海洋プレート内地震の最大マグニチュードはM8.0となっていること、国内における観測史上最大の海洋プレート内地震である1994年北海道東方沖地震(M8.2)や1911年奄美大島近海の地震(M8.0)の地震規模に照らせば、海洋プレート内地震の基本震源モデルは、少なくともM8.0を基本とすべきである。 したがって、海洋プレート内地 震(M8.2)や1911年奄美大島近海の地震(M8.0)の地震規模に照らせば、海洋プレート内地震の基本震源モデルは、少なくともM8.0を基本とすべきである。 したがって、海洋プレート内地震に係る被告の基本震源モデルの設定は明らかに過小評価であり、これを是認した規制委員会の判断は不合理である。 (被告の主張)被告は、前提事実11⑵アcのとおり、1649年安芸・伊予の地震(M6.9)を検討用地震として選定し、基本震源モデルを設定し、応答スペク トルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を行 った。 そして、地震調査委員会の予測地図(2014)におけるM8.0という値については、飽くまで暫定値であると解されること、この値の根拠は、「1911.06.15 奄美大島近海と同程度の地震が発生し得ると仮定」されたものであるが、同地震は、最新の研究ではプレート間地震と評価されて おり、地震調査委員会においても、同様の見解が有力であるとする考えが示されていること、仮に、上記地震が海洋プレート内地震であったとしても、琉球海溝のプレートと本件発電所敷地のプレートの生成年代や厚さの違いから、同地震は本件発電所敷地周辺に想定されるものではないこと、地震調査委員会は、敷地周辺のフィリピン海プレートにM8.0の海洋プレート内地 震を想定するに当たって、「80km×80kmの矩形断層面」を想定しているところ、敷地周辺のフィリピン海プレートの厚さは30~40km程度であり、上記のように大きな水平矩形断層面を設定することは不可能であることからすると、本件発電所敷地周辺の海洋プレート内地震の地震動評価に当たって、参照することは適切でない。 したがって、海洋プレート内地震に係る被告の基本震源モデル 定することは不可能であることからすると、本件発電所敷地周辺の海洋プレート内地震の地震動評価に当たって、参照することは適切でない。 したがって、海洋プレート内地震に係る被告の基本震源モデルの設定は適切であり、規制委員会の判断は合理性を有する。 5 令和元年火山ガイドの合理性の有無(原告らの主張)⑴ 立地評価に係る令和元年火山ガイドの不合理性 ア巨大噴火の可能性評価の不合理性について原子力発電所の「運用期間」とは「原子力発電所に核燃料物質が存在する期間」であって(令和元年火山ガイド1.4⑷)、原則として40年とされる「運転期間」とは異なる概念であるところ、原子力発電所は、制御棒を挿入して稼働を停止しても、崩壊熱を発し続けるため、その間、燃料棒 を搬出することができず、さらに、現時点においては、使用済み核燃料物 質の搬出先も何ら具体的に定まっていないのであって、本件発電所に核燃料物質が存在する期間は数百年に及ぶ可能性が高く、検討対象火山の活動可能性評価は、このような極めて長期に及ぶスパンの中で行われなければならない。 この点、後記のように、多数の専門家が、現在の火山学では、原子力 発電所の運用期間という中長期的な期間において、火山噴火の時期及び規模を予測することは不可能であるとしており、火山噴火の中長期的予測の手法は確立していないのであって、現在の火山の状態から火山噴火の時期及び規模を予測することなどできない。したがって、検討対象火山の活動可能性評価に当たっては、これを前提に、少なくとも後期更新世以降に発 生した噴火については、基本的に運用期間中も発生する可能性を否定できないと考えるとか、噴火が起こらないというよほど確実な証拠が存在しない限りは、噴火の可能性を否定できないも 期更新世以降に発 生した噴火については、基本的に運用期間中も発生する可能性を否定できないと考えるとか、噴火が起こらないというよほど確実な証拠が存在しない限りは、噴火の可能性を否定できないものとして扱うなどする必要があり、そうすることが、確立された国際的な基準であるIAEAの原子力発電所の立地評価における火山ハザードに関する安全指針(SSG-21) にも合致するものである。 しかるに、旧火山ガイド及び平成29年火山ガイドは、将来の噴火の可能性(時期及び規模)を相当程度の正確さで予測できることを前提としていたため、複数の裁判所で不合理であると認定され、令和元年火山ガイドは、火山活動に関する個別評価で行うのは、「現在の火山の状態を評価する」 (令和元年火山ガイド解説-3.)ことであると認めるに至ったものの、現在の火山の状態を評価することが、検討対象火山の活動可能性が十分小さいと評価することにつながる理由は何ら説明されておらず、前述のとおり、最新の火山学の知見によっても、火山噴火の時期及び規模に関する的確な中長期的予測は困難である以上、現在の火山の状態から検討対象火山の活 動可能性の大小を評価することなどできない。また、そもそも、令和元年 火山ガイドにおける火山活動に関する個別評価の具体的手法は、旧火山ガイド及び平成29年火山ガイドにおける手法と同様であるから、令和元年火山ガイドは、依然として、噴火の時期及び規模について中長期的に予測できることを前提として、火山活動に関する個別評価に関し、過去に巨大噴火が発生した火山における巨大噴火とそれ以外の規模の噴火を区別し、 運用期間中における巨大噴火の可能性評価(以下、単に「巨大噴火の可能性評価」という。)につき、①「巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価 した火山における巨大噴火とそれ以外の規模の噴火を区別し、 運用期間中における巨大噴火の可能性評価(以下、単に「巨大噴火の可能性評価」という。)につき、①「巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価でき」(非切迫性の要件)、②「運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていない場合」(具体的根拠欠缺の要件)は、「運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さい と判断できる」としているところ、後記のとおり、上記各要件は、最新の火山学の上記知見に反している。 以上によると、令和元年火山ガイドは不合理である。 中長期的な予測が不可能であることa 噴火間隔又は階段ダイヤグラムを用いた評価について 令和元年火山ガイドは、火山の過去の活動履歴(噴火間隔ないし階段ダイヤグラム)を評価することで、検討対象火山の活動可能性を評価できるような記載となっている。 しかし、噴火間隔(階段ダイヤグラム)を活用して噴火時期を予測するには、マグマ供給率又は噴火噴出物放出率が一定であることが必 要条件であるところ、これが長期にわたって成立する保証はないこと、噴出物量の推定そのものに大きな誤差が含まれていること、噴火年代についても大きな誤差があることなどから、噴火間隔(階段ダイヤグラム)を用いて将来の活動可能性を予測することには相当に大きな不確実性があることが、多数の専門家により指摘されているところであ り、令和元年火山ガイドの上記記載は不合理である。 b 噴火ステージ論を用いた評価について噴火ステージ論に対しては、複数の専門家から噴火の予測に用いることにつき疑問が呈されており、噴火ステージ論を用いて将来の破局的噴火の発生可能性を否定することは非科学的であり、こ 用いた評価について噴火ステージ論に対しては、複数の専門家から噴火の予測に用いることにつき疑問が呈されており、噴火ステージ論を用いて将来の破局的噴火の発生可能性を否定することは非科学的であり、これを評価手法の一つとして位置付けている令和元年火山ガイドは不合理である。 c マグマ溜まりの状況に関する評価について地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりがなければ巨大噴火が起きないという知見は、確立した知見ではなく、10km以深のマグマ溜まりから巨大噴火のマグマが供給されることもあり得るし、阿蘇2火砕流及び阿蘇3火砕流が安山岩質であることからすれば、大規模な珪 長質マグマ溜まりがなくとも巨大噴火は発生するといえ、また、複数のマグマ溜まりから同時期に噴出して一つの巨大噴火を構成することも考えられる。 また、マグマ溜まりがシル(水平方向に薄く広がった貫入マグマ)の集合体である場合は、浮力よりもむしろ、地殻内のレオロジーや剛 性のコントラスト、応力場などがマグマの定置深度を支配するらしいと考えられており、浅い位置に扁平楕円体のマグマ溜まりがなくても噴火に至る場合がある。さらに、マグマ溜まりの大部分はマッシュ状(半固結状態)でほとんど流動できない状態にあり、その外縁は周辺の母岩と明確な区別はできないと考えられているのであって、マグマ 溜まりの位置、体積を正確に見積もることは困難である。 したがって、マグマ溜まりの状況から、破局的噴火が切迫しているか否かを判断することは困難であり、これが可能であることを前提とする令和元年火山ガイドは不合理である。 非切迫性の要件及び具体的根拠欠缺の要件について a 非切迫性の要件について 「巨大噴火が差し迫った状態ではない」ことにつき、具体的・客観的な基準は イドは不合理である。 非切迫性の要件及び具体的根拠欠缺の要件について a 非切迫性の要件について 「巨大噴火が差し迫った状態ではない」ことにつき、具体的・客観的な基準は何ら示されておらず、要件として曖昧不明確で恣意的な判断を許すものとなっている。また、原子炉施設の安全性確保のためには、少なくとも使用済核燃料を搬出する今後十数年の間に「巨大噴火が差し迫った状態ではない」と評価できる必要があるところ、前記 のとおり、火山噴火の時期及び規模を中長期的に予測することはできないのであって、非切迫性の要件は、現在の火山学の知見において不可能なことを要求するものといわざるを得ない。 b 具体的根拠欠缺の要件について前記のとおり、現在の火山学の水準に照らせば、火山噴火の時期 及び規模を中長期的に予測することは不可能なのであるから、「運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠」を示すことは不可能であって、具体的根拠欠缺の要件は、要件として機能しないものである。 イ巨大噴火に至らない噴火についての噴火規模の推定手法の不合理性につ いて令和元年火山ガイド(令和元年火山ガイド4.1⑶)は、検討対象火山の噴火規模の推定に当たって、調査結果から噴火規模を推定できない場合は、「検討対象火山の過去最大の噴火規模とする」としつつ、過去に巨大噴火が発生した火山で、巨大噴火の可能性が十分小さいと判断されたものに ついては、「当該火山の最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模とする」と定めるが、巨大噴火に関する上記推定方法は、何ら科学的合理性を有するものではない。原子炉施設の安全性確保という点からは、火山噴火の時期及び規模の中長期的予測が困難である以上、旧火山ガイド上、「調査結果から が、巨大噴火に関する上記推定方法は、何ら科学的合理性を有するものではない。原子炉施設の安全性確保という点からは、火山噴火の時期及び規模の中長期的予測が困難である以上、旧火山ガイド上、「調査結果から噴火の規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模と する」とされていたとおり、巨大噴火が発生した火山についても過去最大 の噴火規模を想定すべきであるし、仮に、破局的噴火については、社会通念を根拠として、例外的にこれを考慮しないとしても、破局的噴火に該当しない規模の噴火については、その中での最大の噴火規模、すなわち、少なくとも、破局的噴火に準じる規模(少なくとも数十k㎥の噴火)が想定されるべきである。 また、原子炉施設の安全性の判断に際し、巨大噴火については、その発生が低頻度の事象であること、被害が甚大であるにもかかわらず、これを想定した法規制や防災対策が原子力規制以外の分野では行われていないこと等を理由に、巨大噴火の活動可能性及び到達可能性が否定できないだけで立地不適とするのは社会通念に反するとの考えがあるが、社会通念は、 社会によるリスク受容の問題であるところ、リスク概念は発生確率と被害の大きさの積により求められるべきものであり、破局的噴火の発生頻度の小ささが危険度の小ささを意味するものではなく、これを前提として、巨大噴火の危険性をないことにする旨の社会的な合意(社会通念)は存在しない。したがって、令和元年火山ガイドが、立地評価にいう設計対応不可 能な火山事象に何らの限定を付していない(破局的噴火による火砕流を含めている。)にもかかわらず、内容が抽象的で世論調査に示された大多数の共通認識(原発再稼働反対の意見が賛成の意見を上回っている。)を無視しかねない社会通念という概念を用いて巨 的噴火による火砕流を含めている。)にもかかわらず、内容が抽象的で世論調査に示された大多数の共通認識(原発再稼働反対の意見が賛成の意見を上回っている。)を無視しかねない社会通念という概念を用いて巨大噴火に関する評価を限定的に解することは許されるべきではない。 ウモニタリングが立地評価の対象から外れたことに伴う保守的な修正がされていない点について旧火山ガイドにおいては、モニタリングは、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することが目的であり、「原子炉の運転停止、核燃料の搬出等を行うために監視」するものであることが明記され、立地評価の一部 として5項に位置付けられていた。このような旧火山ガイドにおけるモニ タリングの規定は、適合性審査時に、検討対象火山の活動可能性を評価することに加え、適合性審査後もモニタリングによって噴火につながる異常を把握することが担保されるからこそ、立地不適としないという位置付けであったことがうかがわれる。これに対し、令和元年火山ガイドにおいては、モニタリングは、評価時から状態の変化の検知により評価の根拠が維 持されていることを確認することを目的とするものとされて、立地評価とは別に6項に位置付けられ、「原子炉の運転停止、核燃料の搬出等を行うために監視」との文言が削除されるなど、モニタリングの位置付けが明らかに異なっている。 モニタリングによって噴火の兆候が把握できないことは多数の専門家 からも指摘されているとおりであり、モニタリングによって立地評価を担保することはできないから、旧火山ガイド自体が不合理であるところ、このような旧火山ガイドの不合理性を解消するためには、立地評価において、より保守的な基準を設けて不確実性を補うべきであるが、令和元年火山ガイドは、上記の から、旧火山ガイド自体が不合理であるところ、このような旧火山ガイドの不合理性を解消するためには、立地評価において、より保守的な基準を設けて不確実性を補うべきであるが、令和元年火山ガイドは、上記のとおり、モニタリングの位置付けを立地評価から外したの みで、何ら保守的な修正を行っていないのであるから、この点においても、不合理である。 ⑵ 影響評価に係る令和元年火山ガイドの不合理性令和元年火山ガイドは、気中降下火砕物の大気中濃度の推定手法として、3.1の手法及び3.2の手法のいずれかの手法によれば足りるとしている。 しかしながら、上記のうち採用した手法に基づく計算結果と比較して、採用しなかった手法に基づく計算結果の方が大きい値になる可能性があること、いずれの手法も、再飛散現象を考慮しておらず、3.1の手法は、凝縮によって単独では地表に到達し得ない細粒火砕物の落下を促進するという点を考慮していないなど、それ自体に大きな不定性が存在しており、降下火砕物検 討チームの会合において、委員から、常識的な範囲での想定である旨、保守 的な想定ではないことを認める発言もあったことからすると、少なくとも、両手法を採用した上で、いずれか大きい値を用いるのが最低条件であるにもかかわらず、いずれかの手法で足りるとする令和元年火山ガイドは、火山現象の不確実性に対して非保守的であり、不合理である。 (被告の主張) 前記1(被告の主張)のとおり、本件差止請求が認められるためには、原告らの人格権を侵害する具体的危険が存在することが必要であって、単に、令和元年火山ガイドが不合理であるのみでは、上記具体的危険が存在することが示されたとはいえない。 また、令和元年火山ガイドは、以下のとおり、合理的である。 ⑴ 立地評価に あって、単に、令和元年火山ガイドが不合理であるのみでは、上記具体的危険が存在することが示されたとはいえない。 また、令和元年火山ガイドは、以下のとおり、合理的である。 ⑴ 立地評価に係る令和元年火山ガイドの合理性ア巨大噴火の可能性評価について規制委員会による火山影響評価に係る適合性審査は、事業者の申請に係る火山影響評価の内容が原子炉等規制法43条の3の6第1項4号及び設置許可基準規則6条に適合するか否かを審査するものであって、令 和元年火山ガイドは、法規でも、行政手続法上の審査基準に該当するものでもなく、事業者の申請に係る火山影響評価に対する妥当性判断の一例を示した規制委員会の手引に過ぎない。したがって、令和元年火山ガイドの規定の合理性は、上記各法規の趣旨を踏まえて検討する必要がある。 この点、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号にいう「災害の防止上支障がないもの」とは、原子炉施設の位置、構造及び設備が、「相対的安全性」(前記1(被告の主張)⑵)を前提とした安全性を備えていることをいうものである。したがって、規制委員会が、安全審査における審査基準を策定し、その適合性を判断するに当たっては、科学的、専門 技術的知見のみならず、社会がどの程度の危険性であれば容認するかと いう観点(社会通念)も考慮に入れなければならず、その判断は、規制委員会の専門技術的裁量に委ねられているものと解するのが相当である。 そして、同号に基づき定められた設置許可基準規則6条1項は、「安全施設(略)は、想定される自然現象(略)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」、同条2項は「重要安全施 設は、当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により 自然現象(略)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」、同条2項は「重要安全施 設は、当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により当該重要安全施設に作用する衝撃及び設計基準事故時に生ずる応力を適切に考慮したものでなければならない。」と定め、上記「想定される自然現象」には、「火山の影響」が含まれ(設置許可基準規則解釈6条2項)、上記「大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される 自然現象」とは、「対象となる自然現象に対応して、最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるものをいう」とされているところ(設置許可基準規則解釈6条5項)、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号の上記趣旨によると、設置許可基準規則6条は、合理的に想定される自然現象を超えて、抽象的な危険まで考慮することを求める趣旨ではな い。 以上によると、巨大噴火については、それ以外の噴火との間で、発生頻度、被害の特徴やその程度、原子炉施設への影響、その他の社会的影響等の自然現象としての特徴に大きな相違がある上、その危険性に対する社会通念も全く異なっているため、原子炉等規制法43条の3の6第 1項4号及び設置許可基準規則6条は、いずれも、巨大噴火については、その発生可能性が相応の根拠をもって示されない限り、安全確保上これを想定しないことを許容していると解される。 そして、令和元年火山ガイドは、原子力災害の発生防止に万全を期する観点から、あえて巨大噴火を原子力規制の下に置いた上で、上記の 社会通念も考慮した専門技術的裁量によって、可能な限りで巨大噴火に 対する規制の枠組みを示したものであって、火山事象に対して原子炉施設の安全を確保するための規制の在り方として何ら 社会通念も考慮した専門技術的裁量によって、可能な限りで巨大噴火に 対する規制の枠組みを示したものであって、火山事象に対して原子炉施設の安全を確保するための規制の在り方として何ら不合理な点はない。 原告らの主張についてa 現在の火山の状態から火山噴火の時期及び規模を予測することなどできないにもかかわらず、これが可能であることを前提としていると の主張について令和元年火山ガイド(令和元年火山ガイド解説-3.)にも明記されているとおり、火山活動に関する個別評価は、設計対応不可能な火山事象が発生する時期及び規模を的確に予測できることを前提とするものではなく、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価 し、運用期間中における設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性が小さいかどうかを確認するものである。そして、後記⒜~⒞のように、検討対象火山の活動履歴や地球物理学的調査等を総合して現在の火山の状態を評価することは一定程度可能であることを踏まえ、検討対象火山の現在の活動状況が巨大噴火が差し迫った状態ではない と評価でき、かつ、原子力発電所の運用期間中に巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠もないのであれば、原子力発電所の運用期間中の巨大噴火の可能性は十分小さいと判断するとしているのであって、令和元年火山ガイドの定めは何ら不合理ではない。 ⒜ 噴火間隔又は階段ダイヤグラムを用いた評価について 数万年以上といった長い活動間隔を有する火山事象である巨大噴火の可能性を評価する上で、過去の長期にわたる火山活動履歴を精査し、当該火山の火山活動の変遷や特徴を知ることが重要であるところ、当該火山の活動間隔(噴火間隔)と最新の巨大噴火からの経過期間は、巨大噴火の可能性を評価す 上で、過去の長期にわたる火山活動履歴を精査し、当該火山の火山活動の変遷や特徴を知ることが重要であるところ、当該火山の活動間隔(噴火間隔)と最新の巨大噴火からの経過期間は、巨大噴火の可能性を評価する上での重要な基礎情報の一 つである。一方で、活動間隔(噴火間隔)による検討のみから直ち に巨大噴火の可能性を評価することはできないことから、被告は、後記6(被告の主張)⑴アのとおり、阿蘇の活動性に係る評価を行う上で、活動履歴や地球物理学的調査に基づく検討も行っている。 ⒝ 噴火ステージ論を用いた評価について巨大噴火が発生した複数のカルデラ火山において、巨大噴火に向 けたマグマの進化を示唆する噴火の態様の変化が指摘されていることからすれば、別のカルデラ火山の噴火履歴を参照して、現在の状態について検討することも一つの検討として有効である。 ⒞ マグマ溜まりの状況に関する評価について現在の火山学におけるごく一般的な知見において、巨大噴火には、 揮発性物質が高濃度であり、かつ揮発性物質がマグマ内から放出されにくく効率的にマグマの破砕が進むという特性を有している膨大な珪長質マグマの蓄積を必要とするとされているところ、密度が小さい珪長質マグマの浮力中立点が浅いことや、環状割れ目に沿って陥没する大型カルデラの生成機構等を踏まえれば、巨大噴火のマグ マ溜まりは地下浅部に達していると考えられている。なお、阿蘇2噴火ないし阿蘇4噴火についても、大局的に上部に珪長質マグマ、下部に苦鉄質マグマが密度的に安定成層した層状マグマ溜まりがあったと考えられており、いずれにおいても、珪長質マグマを大量に噴出している。 そして、マッシュ状の部分だけを明確に区別して検出することが困難であるとしても、全体としてメルト及びマッ りがあったと考えられており、いずれにおいても、珪長質マグマを大量に噴出している。 そして、マッシュ状の部分だけを明確に区別して検出することが困難であるとしても、全体としてメルト及びマッシュ状のマグマを含む領域を把握することは可能である。 b 非切迫性の要件について令和元年火山ガイドは、「巨大噴火が差し迫った状態ではない」こと の評価に当たっては、現在の火山の状態を評価すること、「現在の火山 学の知見に照らした調査を尽くした上で、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等から総合的に評価を行う」(令和元年火山ガイド解説-11.)こととして上記要件において考慮すべき点を明確にしているのであって、要件として曖昧不明確で恣意的な判断 を許すとの原告らの指摘は当たらない。また、令和元年火山ガイドは、中長期的な火山噴火の予測が困難であることを前提とした上で巨大噴火の可能性評価を行うことを明らかにしているのであって、上記の要件が火山噴火の時期及び規模を相当前の時点で相当程度の正確さで予測することを求めているかのように解釈することは、原告らの独自の 見解にすぎない上、現在の火山学においては、過去の巨大噴火に係る地質学的な調査や岩石学的な調査等の積み重ねによって、前記⒞のとおり、巨大噴火の発生に先立って、大規模な珪長質マグマ溜まりが地下浅部に存在することが必要であるなど近い将来における巨大噴火の可能性評価に資する知見が一定程度蓄積されており、このことは、工 学的観点からも支持されているのであるから、上記要件は何ら不合理なものではない。 c 具体的根拠欠缺の要件について前記bのとおり、現在の火山学においては巨大噴火の可能 り、このことは、工 学的観点からも支持されているのであるから、上記要件は何ら不合理なものではない。 c 具体的根拠欠缺の要件について前記bのとおり、現在の火山学においては巨大噴火の可能性評価に資する知見が一定程度蓄積されているところ、このような現在の火山 学的な知見に照らして「火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではない」ことを評価することが可能であるということは、検討対象火山に関する知見を収集する中で、当該火山において巨大噴火が差し迫った状態ではないことを示す知見が得られる場合だけでなく、巨大噴火が差し迫った状態であることを支持する知見が得られる場合 もあり得るということを意味する。規制委員会も、現在の火山学の知 見自体が、進歩していくものであることからすれば、現在の火山学の知見に照らした調査を尽くしたとしても、なお新たに巨大噴火の可能性に関する科学的知見が得られることもあり得ると考えられ、かかる知見が火山学に合理性のある具体的な根拠であれば当然参酌すべき旨述べている。 したがって、上記の要件は、現在の火山学の水準に照らして不可能な要求を行うものではない。 イ巨大噴火に至らない噴火についての噴火規模の推定手法の合理性について巨大噴火に伴うカルデラ崩壊後には、巨大噴火前と比較して噴出物や噴 火活動の変化がしばしば観察されることが指摘されており、実際、巨大噴火を機にマグマ供給系、活動様式の変化が指摘される火山は国内でも多く見られる。また、火山学的には、巨大噴火と巨大噴火に至らない噴火とでは、異なったメカニズムで発生すると考えられており、両者の噴火規模にも大きな差があることが示唆されている。さらに、信頼性のあるデータベ ースである「日本の火山(第3版) 噴火に至らない噴火とでは、異なったメカニズムで発生すると考えられており、両者の噴火規模にも大きな差があることが示唆されている。さらに、信頼性のあるデータベ ースである「日本の火山(第3版)」においても多くのカルデラ火山と後カルデラ火山とが別の火山として整理されている。これらの事情に照らせば、巨大噴火につき、最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模の噴火を考慮するとする規定は、火山学的知見を踏まえた工学的な判断として合理性を有するものであるといえる。 なお、令和元年火山ガイド上、巨大噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出し、大量の火砕流となるような噴火であり、その規模として噴出物の量が数十k㎥程度を超えるようなものと定義されている(令和元年火山ガイド解説-10.)ところ、原告らが主張する巨大噴火に準ずる規模は、これとほぼ同一視し得るものであり、巨大噴火の規模の下限が示されたか らといって、反対解釈的に当該規模を少しでも下回るものは巨大噴火では なく当然に想定の範疇に含めるべきとするのは科学的な議論ではなく、妥当でない。 また、巨大噴火に至らないがこれに準ずる規模の噴火を考慮しないことをもって、原告らの人格権を侵害する具体的危険が存在することにはならない。 ウモニタリングの規定に伴う問題点との主張について旧火山ガイドにおけるモニタリングの規定は、規制委員会の下で発足した原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム(以下「モニタリング検討チーム」という。)における議論状況からも分かるように、検討対象火山が運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価 できる場合であっても、当該評価の根拠が継続していることを確認することを目的としており、モニタリングによって、確実に、時間的 に、検討対象火山が運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価 できる場合であっても、当該評価の根拠が継続していることを確認することを目的としており、モニタリングによって、確実に、時間的余裕をもって巨大噴火の兆候を把握できることを念頭に置くものではない。そして、令和元年火山ガイドは、平成29年火山ガイドの各規定の趣旨及び審査実務の考え方を正確に、かつ、分かりやすく表現するために行われたもので あり、火山ガイドとしての要求内容を追加し又は変更するものではなく、原告らの主張は前提において誤っている。 ⑵ 影響評価に係る令和元年火山ガイドの合理性について令和元年火山ガイドにおける気中降下火砕物濃度の算定手法は、3.1の手法及び3.2の手法のいずれによっても、実際の降灰現象と比較して保守 的な値となるものであるから、いずれかの手法による旨の令和元年火山ガイドの定めは不合理ではない。 6 火山事象に関する本件適合性審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無)(原告らの主張) ⑴ 立地評価に関する本件適合性審査の不合理性 ア阿蘇における巨大噴火の可能性評価の誤り被告は、阿蘇につき、①噴火履歴の特徴(活動間隔)、②噴火履歴の特徴(噴火ステージ)、③地下構造(マグマ溜まりの状況)により、運用期間中における巨大噴火の可能性が小さいと評価しているが、このような被告の評価は、以下のとおり、不合理であるから、これを是認した規制委員会の 判断も不合理である。 噴火履歴の特徴(活動間隔)を用いた評価について被告は、最短の活動間隔(阿蘇2噴火と阿蘇3噴火の間の約2万年)が最新の破局的噴火からの経過時間(阿蘇4噴火から現在までの間の約9万年)に比べて短いことを阿蘇の活動可能性を否定す いた評価について被告は、最短の活動間隔(阿蘇2噴火と阿蘇3噴火の間の約2万年)が最新の破局的噴火からの経過時間(阿蘇4噴火から現在までの間の約9万年)に比べて短いことを阿蘇の活動可能性を否定する根拠として挙 げる。しかしながら、被告は、阿蘇と同じく破局的噴火を発生させた姶良カルデラについて、破局的噴火の活動間隔(約6万年以上)は最新の破局的噴火からの経過時間(約3万年)に比べて十分長いとして、破局的噴火の可能性を否定しているところ、被告の上記評価によれば、破局的噴火の最短の活動間隔が最新の破局的噴火からの経過時間に比べて長 ければ十分な時間的余裕があり、短ければ破局的噴火を発生させる供給系ではなくなるというのであって、いずれにしても破局的噴火を考慮しなくてもよいという結論を導くこととなり、非科学的である。実際、阿蘇1噴火から阿蘇2噴火までの活動間隔は約11万年であり、阿蘇4噴火から約9万年が経過しただけで、阿蘇が「破局的噴火を発生させる供 給系ではなくなった」などとはいえない。そもそも、前記5(原告らの主張)⑴アのとおり、噴火間隔(ないし階段ダイヤグラム)を用いて将来の活動可能性を予測することには相当に大きな不確実性が伴うのであって、保守的に考えれば、最短噴火間隔である2万年を経過した阿蘇は、既に再噴火の可能性がある時期に到達したと考えるべきである。 噴火履歴の特徴(噴火ステージ)による評価について 被告は、Nagaoka(1988)を参考に、阿蘇の現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく、後カルデラ火山噴火ステージにあり、今後も継続すると判断しているが、上記知見は、テフラ層序(地層の形成された順序、新旧関係)などの地質調査結果に見られる定性的傾向を整理するための作業仮設的 はなく、後カルデラ火山噴火ステージにあり、今後も継続すると判断しているが、上記知見は、テフラ層序(地層の形成された順序、新旧関係)などの地質調査結果に見られる定性的傾向を整理するための作業仮設的概念であって、必ずしも観測事実や物 理法則によって科学的かつ客観的に実証されたものではなく、複数の専門家が、巨大噴火の可能性評価の根拠たりえないとしている。したがって、Nagaoka(1988)の知見を用いて阿蘇における巨大噴火の可能性を評価することは非科学的である。 地下構造(マグマ溜まりの状況)による評価について 被告は、阿蘇の地下には、巨大噴火を発生させるようなマグマ溜まりは存在しないと評価しているが、前記5(原告らの主張)⑴アcのとおり、地下構造は複雑で、マグマ溜まりの位置や体積を正確に把握することはできないにもかかわらず、これが把握できるかのように評価している点で不合理である。 また、被告が依拠する地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりがなければ巨大噴火が起きないという知見は、前記5(原告らの主張)⑴アcのとおり、確立した知見ではなく、10km以深のマグマ溜まりから巨大噴火のマグマが供給されることもあり得るし、阿蘇2火砕流及び阿蘇3火砕流が安山岩質であることからすれば、大規模な珪長質マグマ溜 まりがなくとも巨大噴火は発生するといえ、また、複数のマグマ溜まりから同時期に噴出して一つの巨大噴火を構成することも考えられる。 さらに、草千里南部のマグマ溜まりの下には、500k㎥の巨大な低速度領域があることが検知されているところ、これがマグマ溜まりで巨大噴火を引き起こす可能性もある。 このように、現在の阿蘇のマグマ溜まりの状況から、巨大噴火の活動 可能性を評価することはできない。 されているところ、これがマグマ溜まりで巨大噴火を引き起こす可能性もある。 このように、現在の阿蘇のマグマ溜まりの状況から、巨大噴火の活動 可能性を評価することはできない。 イ火砕流の到達可能性評価前記アのとおり、被告による阿蘇における巨大噴火の可能性評価は不合理であり、巨大噴火の可能性が小さいと評価できない以上、令和元年火山ガイドに従えば、阿蘇における噴火規模は阿蘇4噴火を想定した上 で、火砕流の到達可能性を評価すべきであり、仮に、巨大噴火を想定する必要がないとしても、少なくとも巨大噴火に準ずる規模(噴出量80~90k㎥)を想定すべきである。 町田・新井(2011)及び「大規模カルデラ噴火影響範囲表示マップ」は、阿蘇4火砕流が、佐田岬半島の根本付近まで到達していたと評 価している。また、町田・新井(2011)の著者の一人である戊6東京都立大学名誉教授(以下「戊6教授」という。)は、火砕流は、斜面を乗り越えながら流動する厚くて熱い紛体流であることから、阿蘇4火砕流は、噴出口から概ね同心円状に広がったとみられるところ、約150km離れた山口県秋吉台まで到達していることからすると、噴出中心か ら約150kmの範囲内に火砕流が到達したとみるのはごく常識的な判断であるとして、阿蘇から約132km離れた本件発電所に阿蘇4火砕流が到達した可能性を指摘している。これらに加え、阿蘇から本件発電所までの間に火砕流を遮る障壁となるものも存在しないから、本件発電所に阿蘇4火砕流が到達していなかったとは到底考えられず、阿蘇にお ける火砕流が本件発電所に到達する可能性が十分小さいとは評価できない。 被告は、阿蘇4火砕流が佐田岬半島にまで到達していない根拠として、佐田岬半島における調査によって阿蘇4火砕 、阿蘇にお ける火砕流が本件発電所に到達する可能性が十分小さいとは評価できない。 被告は、阿蘇4火砕流が佐田岬半島にまで到達していない根拠として、佐田岬半島における調査によって阿蘇4火砕流堆積物が存在しないことを確認していることを挙げるが、テフラは侵食されやすく、また、風化 されやすい特質を有しているところ、阿蘇4噴火からは約9万年もの期 間が経過しており、風化・侵食によって火砕流堆積物が残存しない可能性があること、佐田岬半島のように急斜面からなる山地では堆積物が残存しにくいことなども踏まえると、阿蘇4火砕流堆積物がないことをもって阿蘇4火砕流が本件発電所敷地に到達していないとはいえない。 ウ以上より、阿蘇において阿蘇4噴火規模の噴火が発生する可能性があり、 同規模の噴火が発生した場合には、その火砕流が阿蘇から約130kmの範囲に位置する本件発電所に到達する可能性が十分に小さいと評価できないのであるから、本件発電所は立地不適となる。それにもかかわらず、被告の立地評価を是認した規制委員会の判断は不合理である。 ⑵ 影響評価に関する本件適合性審査の不合理性 以下のとおり、被告の降下火砕物量の想定は誤っているところ、被告の想定を上回る大量の降灰に対して、本件発電所は、安全機能を維持できず、過酷事故につながる具体的危険が存在することは明らかである。 ア想定されるべき噴火規模の誤り原子炉施設の安全性確保を判断するに当たっては、より安全側に立って 考えるべきであるから、降下火砕物の影響評価に当たっても、過去最大の噴火である阿蘇4噴火を想定すべきである(その場合、阿蘇4噴火の降下火砕物の層厚は、北海道東部で15cm、宇和盆地で1mであるから、被告の評価(15cm)が過小であることは明らか っても、過去最大の噴火である阿蘇4噴火を想定すべきである(その場合、阿蘇4噴火の降下火砕物の層厚は、北海道東部で15cm、宇和盆地で1mであるから、被告の評価(15cm)が過小であることは明らかである。)。 また、仮に、阿蘇4噴火のような破局的噴火については社会通念上想定 から外すとしても、少なくとも、破局的噴火に準ずる規模(噴出量80~90k㎥程度)の噴火が想定されるべきであり、被告の想定の十数倍程度の降下火砕物が本件発電所敷地に到達することとなる。しかしながら、被告は、阿蘇については、阿蘇4噴火後に発生した最大の噴火である阿蘇草千里ヶ浜噴火(噴出量約2k㎥)の規模と同程度の規模を想定した上で、 本件発電所により大きな影響を及ぼす噴火として九重山において約5万 年前に発生したVEI5規模の九重第一軽石噴火を想定しており、噴火規模について明らかに過小に評価している。 イ降下火砕物の最大層厚に関する評価の誤り被告は、九重第一軽石噴火の噴出量を6.2k㎥と見積もり、これを前提とした降灰シミュレーションを行い、敷地において考慮すべき降下火砕 物の厚さを15cmと評価しているが、このような被告の評価は、以下のとおり、過小評価の疑いがある。 火山噴出物の体積は、ある地点において確認されている堆積層の厚さから、合理的と考えられる等層厚線を大雑把に引き、面積と厚さにより体積を求めるものであるところ、風化等の影響もあって堆積層が確認で きることの方がまれであるため、観測点が少ないほど大雑把なものとならざるを得ず、また、新たな堆積層が確認されて等層厚線が変われば、簡単に大幅に数値が変わり得るような不定性の大きいもので、これを正確に把握することは困難であり、実際、被告は、当初、九重第一軽石噴火による噴出量 、また、新たな堆積層が確認されて等層厚線が変われば、簡単に大幅に数値が変わり得るような不定性の大きいもので、これを正確に把握することは困難であり、実際、被告は、当初、九重第一軽石噴火による噴出量を2.03k㎥と見積もっていた。 また、同噴火については、VEI6(噴出量10k㎥以上)であった可能性も指摘されている。 さらに、熊原・長岡(2002)、長岡・奥野(2014)及びウェブサイト「日本の活火山九重火山地質図」のように、九重山から約140km東に位置する宿毛市付近で約20cmの降灰があったことを示す 文献等が複数存在するところ、約5万年の間に大量の火山ガラス質の降下火砕物が風化により消滅したというのであって、実現象としては20cmより厚かった可能性がある。 このように、不定性が大きい噴出量について、あたかも確実なものであるかのように考えてシミュレーションを行い、その結果から最大層厚 を決めるのは、不定性に対する保守的評価として不十分であって不当で ある。 本件発電所敷地方向を風下とした場合には、九重山から約108kmしか離れていない本件発電所敷地に20cmを上回る降灰は十分あり得る以上、これを前提に、保守的に層厚の評価をすべきであり、これを下回る被告の評価は、原子力発電所に求められる安全の水準に達しないも のである。 令和元年火山ガイドの解説-19.は、降下火砕物の層厚について、敷地内及びその周辺で降下火砕物の堆積が観測されない場合は、ⅰ類似する火山の降下火砕物堆積物の情報を基に求める、ⅱ降下火砕物の数値シミュレーションを行うことにより求めることとしており、被告は、本 件発電所敷地における層厚をほぼ0cmと評価した上で、上記ⅱの方法により最大層厚を15cmと設定している。 降下火砕物の数値シミュレーションを行うことにより求めることとしており、被告は、本 件発電所敷地における層厚をほぼ0cmと評価した上で、上記ⅱの方法により最大層厚を15cmと設定している。 しかし、前記のとおり噴出量は極めて不定性の大きい概念であり、ⅱの方法のみによって最大層厚を決定するのは保守的ではなく、令和元年火山ガイドが上記ⅰ又はⅱのいずれかの方法としていないとおり、ⅰ の方法も併せて検討すべきである。そして、ⅰの方法を検討すると、九重第一軽石噴火と噴出量が類似した火山噴火であって、かつ、遠方に大量の降灰をもたらした噴火として、御嶽山(御嶽伊那噴火。VEI5程度(>1k㎥))があり、この噴火においては、190km遠方にまで火山灰が到達し、20cmの等層厚線は概ね150km程度まで達してお り、火口から約100kmの地点(九重山と本件発電所の距離に近い地点)において、20cmを優に超える降灰があったことは確実であるから、九重第一軽石についても、保守的に考えれば30cm以上、少なくとも20~30cm程度の最大層厚を設定すべきである。 また、ⅱの方法に関しても、令和元年火山ガイドは、数値シミュレー ションに際し、類似の火山降下火砕物堆積物等の情報を参考とすること ができるとしているが、不定性を前提に保守的な評価を行うのであれば、上記類似火山のシミュレーションを行い、これを踏まえて最大層厚を決定すべきであるが、被告はこれを行っていない。 以上のとおり、被告による最大層厚の評価には誤りがあり、これを是認した規制委員会の判断は不合理である。 ウ気中降下火砕物濃度の評価に関する誤り気中降下火砕物濃度の評価を誤ると、非常用ディーゼル発電機に設置されたフィルタが目詰まりを起こし 是認した規制委員会の判断は不合理である。 ウ気中降下火砕物濃度の評価に関する誤り気中降下火砕物濃度の評価を誤ると、非常用ディーゼル発電機に設置されたフィルタが目詰まりを起こして非常用ディーゼル発電機が機能喪失して冷却機能を喪失したり、中央制御室等に大量の降下火砕物が侵入して異常発生時における人的対応が困難になったりして、深刻な事故に つながる可能性が否定できない。そして、前記5(原告らの主張)⑵のとおり、気中降下火砕物濃度の推定手法に大きな不定性が存在する以上、被告は、複数の試算を行い、保守的な数値を採用して上記濃度を設定すべきであるのにこれを怠り、以下のとおり、安易に実測値や類似火山の数値よりも非保守的となるシミュレーション結果を採用して上記濃度を 設定しており、不合理である。 a 被告は、気中降下火砕物濃度推定において、シミュレーションソフトであるTephra2によって粒径分布を計算したとして、実際の降灰や他の類似火山の事例よりも大きい粒子の割合が多くなるような粒径分布を用いて計算し、本件原子炉における気中濃度の最大値は3. 1g/㎥との評価を行っている。 しかしながら、初歩的な科学的経験則に照らせば、粒子が大きくなればなるほど降灰速度が速くなり、粒子が気中に留まっている時間が短くなる結果、気中濃度が小さくなるはずであり、粒径の大きい分布を用いて濃度計算を行うのは濃度の過小評価につながる。 b また、被告が設定した粒径分布によれば、粒径125~500μm (1~3φ)の粒子が全体の89.32%を占め、粒径62.5μm(4φ)未満の粒子はわずか2%弱しかない。しかし、初歩的な科学的経験則に照らして、火口から遠方になればなるほど細かな粒径の降下火砕物の割合が大きくなる が全体の89.32%を占め、粒径62.5μm(4φ)未満の粒子はわずか2%弱しかない。しかし、初歩的な科学的経験則に照らして、火口から遠方になればなるほど細かな粒径の降下火砕物の割合が大きくなるはずであるから、九重山から約108km離れた本件発電所敷地においては、更に細かな粒子の割合が大きく なる可能性があるのであって、被告の粒径分布計算の信頼性には大きな疑問がある。 以上によると、被告による気中降下火砕物濃度の推定には明らかな誤りがあり、これを是認した規制委員会の判断は不合理である。 (被告の主張) ⑴ 立地評価に関する本件適合性審査の合理性ア阿蘇における巨大噴火の可能性評価阿蘇の活動履歴に基づく検討a 前記5(被告の主張)⑴アa⒞のとおり、巨大噴火が発生するには、大規模な珪長質マグマ溜まりが必要であるというのが一般的によ く知られた知見である。そして、地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが形成されると、玄武岩質マグマはこれを突き抜けて地表に達することができないため、その直上の地表には玄武岩質マグマの活動の空白域ができることが予想されているところ、阿蘇4噴火後の後カルデラ期の噴出物の種類ごとの分布によると、カルデラ中央部において玄武 岩質マグマが活動し、その周囲で珪長質マグマが活動しているという傾向があり、地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在しないことが示されている。また、阿蘇山で噴出した溶岩によると、阿蘇4噴火後、2万年前までの噴火頻度の高い時期は珪長質マグマの噴出量が多くなっていたが、1万年前以降は、噴火頻度の高い時期も含めて玄武岩質 の噴火が卓越しており、珪長質マグマの生産率が減少したものと考え られる。さらに、マグマの成因の違いを示す指標となる微量元素であ 万年前以降は、噴火頻度の高い時期も含めて玄武岩質 の噴火が卓越しており、珪長質マグマの生産率が減少したものと考え られる。さらに、マグマの成因の違いを示す指標となる微量元素であるストロンチウム同位体比及び微量元素の含有量の違いから、カルデラ形成期以前と後カルデラ期との間では、マグマの生成状況が異なっているといえ、阿蘇4噴火によるカルデラの形成を境に、火山直下のマグマ供給系に大きな変化があったことが推察される。加えて、後カ ルデラ期の噴出物の岩質の多様性等から、後カルデラ期には、カルデラ形成期の大規模なマグマ溜まりが、阿蘇4噴火による陥没カルデラの形成に伴う天井の崩壊によって分割され、複数の独立した小規模マグマ溜まりが形成されたと考えられる。 上記事情に鑑みれば、現在の阿蘇には、巨大噴火が発生するに足る 大規模な珪長質マグマ溜まりが存在するとは認められない。 b 次に、噴火態様をみるに、宇和盆地の火山灰の堆積層によると、阿蘇2噴火の少し前から阿蘇4噴火の間の約5万年間に12回降灰しているなど、カルデラ形成期(阿蘇1噴火から阿蘇4噴火までの期間)には、相当程度大規模な噴火が繰り返されたことが推定され、阿蘇2 噴火から阿蘇3噴火前にかけて、より珪長質な組成に変化する傾向が、阿蘇3噴火から阿蘇4噴火前にかけて苦鉄質な噴火から珪長質な噴火に移行し、噴火の規模が大きくなっていく傾向があった。他方、後カルデラ期(約9万年前以降)には、宇和盆地に阿蘇起源の降灰は示されておらず、次第に珪長質な噴火(軽石の噴出)が減る傾向にあり、 約3万年前以降はVEI4以上の珪長質な噴火は認められず、1万年前以降は、玄武岩質の噴火が卓越して活動しており、後カルデラ期とカルデラ形成期以前とで阿蘇の活動性に変化が生じていると にあり、 約3万年前以降はVEI4以上の珪長質な噴火は認められず、1万年前以降は、玄武岩質の噴火が卓越して活動しており、後カルデラ期とカルデラ形成期以前とで阿蘇の活動性に変化が生じていると考えられる。 c また、カルデラ噴火の前兆現象として数百年前にカルデラ噴火と組 成の類似する珪長質マグマの流出的噴火が発生すると推定するとの知 見があるところ、現在の阿蘇にはこのような前兆現象は認められない。 地球物理学的調査に基づく検討阿蘇カルデラは内陸に位置してカルデラ湖もないことから多様な調査が可能であるという特性があり、阿蘇における地球物理学的な検討については、地震学的な探査、MT探査、測地学的な調査等、他のカルデ ラ火山と比較しても非常に多彩な手法による綿密な調査が行われており、それら特性の異なる各種調査の結果は以下のとおりである。 a 阿蘇の地下浅部には、中岳から約3~4km西の草千里付近の地下約6km付近に地下約6kmのマグマ溜まりがあるものの、同マグマ溜まりから中岳へ供給する火道が連続しているため、深部に貫入した 苦鉄質マグマがあまり進化しないままに深い部分から直接噴出しており、中深度の地殻に停滞しておらず、大量の珪長質マグマを生成することができる長寿命のマグマシステムの特性を示していないと評価されている。また、マグマ溜まりの周辺の母岩は、マグマからの影響により強度が下がり、地震が発生しやすいところ、地下約6kmのマグ マ溜まりの中心周辺でも地震活動が認められ、地下約6kmのマグマ溜まりはカルデラ内に大きく広がるものではない。さらに、地下約6kmのマグマ溜まりは、継続的な火山ガスの放出により全体として縮小傾向にある。よって、地下約6kmのマグマ溜まりは、巨大噴火を引き マ溜まりはカルデラ内に大きく広がるものではない。さらに、地下約6kmのマグマ溜まりは、継続的な火山ガスの放出により全体として縮小傾向にある。よって、地下約6kmのマグマ溜まりは、巨大噴火を引き起こすような大規模な珪長質マグマ溜まりではない。 なお、原告らが指摘する草千里南部のマグマ溜まりの下に存在する500k㎥の低速度領域は、熱源と対応せず、新たな溶融マグマは生成されていないとされているし、仮に、マグマ溜まりであるとしても、当該低速度領域は地下15~25km程度と非常に深い位置にあるところ、地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが必要であるとの一般 的な知見に照らせば、上記マグマ溜まりが巨大噴火を起こすとは考え 難い。 b また、阿蘇カルデラ内では、複数の機関によって多数の測地学的手法による火山観測が行われ、火山活動に伴う地殻変動が観測されているところ、これらの観測データと地下構造等に関する既往の知見等から、阿蘇で大規模なカルデラ噴火が起こるような状態ではないと推定 されている。また、巨大噴火の前兆現象として、地殻の中~上部に巨大な珪長質岩体~マグマ溜まりを形成する際には、広域的な地盤上昇を伴うとされているところ、阿蘇では、逆にカルデラ全体の地盤が沈降している。 前記及びの各事情を踏まえて総合的に判断すると、現在の阿蘇に は巨大噴火を起こす大規模な珪長質マグマ溜まりは準備されておらず、巨大噴火のマグマ溜まりの準備期間と比較してはるかに短期間である本件発電所の運用期間中に、急速に大噴火の準備が完了することは考え難いのであって、現在の阿蘇の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価できる。また、本件発電所の運用期間中における阿蘇の巨大 噴火の可能性を示す科学的に合理性のあ が完了することは考え難いのであって、現在の阿蘇の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価できる。また、本件発電所の運用期間中における阿蘇の巨大 噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠は得られていない。したがって、本件発電所の運用期間中における阿蘇の巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断できる。このことは、多くの専門家等の見解によっても支持されており、世界的な火山学の権威も、将来100年間において阿蘇4噴火の規模の噴火が発生する確率はゼロであるとしてい る。 イ火砕流の到達可能性評価立地評価において阿蘇4噴火を考慮する必要がないことは前記アのとおりである。このことを措くとしても、佐田岬半島を含む四国において阿蘇4火砕流堆積物を確認したとの知見がないこと、被告による佐田岬半島の 調査によっても阿蘇4火砕流堆積物が確認されておらず、阿蘇4火砕流堆 積物が確認されているのは、本件発電所敷地に最も近い場所でも、大分市及び大分県臼杵市であり、海を隔てて50km以上離れていること、阿蘇と本件発電所敷地の間には約130kmの距離があり、その間に存在する佐賀関半島、佐田岬半島等が地形的な障害になり得るところ、阿蘇4火砕流堆積物の分布状況・層厚からすると、阿蘇4火砕流は、阿蘇4噴火の当 時から阿蘇の東方に存在していた標高750~800m程度の大野山地や佐賀関半島を地形的障害として、その南側へは大量に流下する一方、その北側の阿蘇4火砕流堆積物の層厚は比較的薄く、佐賀関半島の北側東端部で消滅し、佐田岬半島に到達していないと推定されることを総合的に考慮すると、阿蘇4火砕流が本件発電所敷地に到達した可能性はない。 ⑵ 影響評価に関する本件適合性審査の合理性被告は、降下火砕物の設計層厚を1 島に到達していないと推定されることを総合的に考慮すると、阿蘇4火砕流が本件発電所敷地に到達した可能性はない。 ⑵ 影響評価に関する本件適合性審査の合理性被告は、降下火砕物の設計層厚を15cmと設定したところ、上記設定は、以下のとおり、現在の火山学の知見を踏まえて設定された十分な保守性を保つ妥当なものである。なお、被告は、降下火砕物に対する安全裕度評価を行い、実現象よりも厳しい条件設定の下で、少なくとも70cmの降下火砕物 の堆積厚さに対して本件原子炉の冷却が可能であることを確認している。 ア想定されるべき噴火規模被告は、前記⑴のとおり、活動履歴に基づく検討や地球物理学的調査に基づく検討の結果から、阿蘇における巨大噴火の活動可能性は十分に小さいと評価し、阿蘇4噴火を契機とする火山活動の変化を踏まえ、阿蘇につ いて、後カルデラ期既往最大の噴火である約3万年前に発生した阿蘇草千里ヶ浜噴火(VEI5)を考慮した。阿蘇の直近1万年間の火山活動は、苦鉄質の噴火が卓越する傾向にあり(最大噴火規模はVEI3程度)、専門家により、今後の阿蘇の火山活動は、1930年代のような大規模なものではないと推定されていることからすれば、阿蘇草千里ヶ浜噴火を考慮し たことは十分保守的なものとなっており、合理的である。その上で、被告 は、降下火砕物の影響評価をするに当たって、阿蘇よりも本件発電所に近く、かつ、阿蘇草千里ヶ浜噴火よりも噴火規模の大きい九重山における約5万年前の九重第一軽石噴火の噴火規模を想定しているのであるから、かかる被告の評価に誤りはない。 イ降下火砕物の最大層厚に関する評価 被告は、九重第一軽石について、地質記録によれば、本件発電所の周辺で堆積厚さは、ほぼ0cmであることを確認した。その かる被告の評価に誤りはない。 イ降下火砕物の最大層厚に関する評価 被告は、九重第一軽石について、地質記録によれば、本件発電所の周辺で堆積厚さは、ほぼ0cmであることを確認した。その上で、ジェット気流が、本来は安定して吹き難い九重山から本件発電所の方角に、降灰中、連続して吹き続けるという非常に保守的な条件設定に加え、宿毛市で確認された20cmの堆積層厚を前提に、噴出量として、保守的な6.2k㎥ を提唱する長岡・奥野(2014)の知見を採用してシミュレーションを行った結果、本件発電所敷地における降下火砕物の層厚は最大で14cmとなったことから、これに更なる保守性を加味して、降下火砕物の層厚として15cmを設定した。過去60万年間以上の長期にわたる噴火履歴が高精度に記録されている宇和盆地の火山灰データを見ても、阿蘇4噴火と いった九州のカルデラ火山における極めて大きな噴出量の巨大噴火でさえ、30~40cm のオーダーであり、巨大噴火を除けば、層厚15cmを超える火山灰は認められないのであって、本件発電所の設計層厚15cm を上回る火山灰が本件発電所において堆積することは想定し難い。 なお、宿毛市の約20cmの露頭は降下火砕物が水流等によって二次的 に改変を受けた再堆積物であって、純粋な火山灰の層厚ではないから、本来、これをそのまま火山灰の層厚とみることはできない。また、火山灰は、風の影響を強く受けて各地に堆積するものであるところ、九重山から見てジェット気流が卓越しやすい方角にある宿毛市(九重山から見て東方向)と本件発電所の方角(九重山から見て北東方向)における降灰を同一視す ることはできないし、九重第一軽石の噴火当時と現在では気象条件が異な る。これらの事情に照らせば、宿毛市付近で約 と本件発電所の方角(九重山から見て北東方向)における降灰を同一視す ることはできないし、九重第一軽石の噴火当時と現在では気象条件が異な る。これらの事情に照らせば、宿毛市付近で約20cmの降灰があるからといって、本件発電所敷地に20cmを上回る降灰が十分あり得るとはいえない。 ウ気中降下火砕物濃度の評価被告による気中降下火砕物濃度の算定手法は、本来は、粒径の小さな降 下火砕物は降下速度が非常に小さいため地表に降下してくるまでに相当な時間を要すると考えられ、24時間以内には降下できないものもあるところ、降下火砕物の粒径の大小にかかわらず、あえて24時間のうちに同時に降灰すると仮定している点で保守的な算定方法となっている。また、粒径の小さな降下火砕物は凝集して降下するところ、凝集することで粒径 が大きくなった降下火砕物は終端速度が大きくなるため、上記の算定式からすれば終端速度が大きい方が気中降下火砕物濃度は小さくなるにもかかわらず、あえて凝集を考慮していない点でも保守的な算定方法となっている。 第6 当裁判所の判断 1 争点1(司法審査の在り方)について⑴ 人格権に基づく妨害予防請求が認められるためには、保護法益に対する侵害が生ずる具体的危険があると認められる必要があると解される。そこで、本件についてみるに、原子炉は、原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内 部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって(前提事実3)、原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設周辺の住民等の生命、身体等に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあるところ、本件 3)、原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設周辺の住民等の生命、身体等に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあるところ、本件原子炉は、加圧水型原子炉であり、その定格電気出力は89万kWであって、炉心の燃料とし ては二酸化ウランのほか、ウラン・プルトニウム混合酸化物が用いられ、炉 心内において、放射性物質であるヨウ素131、キセノン133等の核分裂生成物が発生すること(前提事実2⑴、3、4⑴イ)からすると、本件原子炉施設の安全性が確保されていない場合、周辺住民らの生命、身体等に重大な危害を及ぼすおそれがあると認めるのが相当である。そして、その危害の重大性に鑑みると、上記おそれがあること、すなわち、本件原子炉施設の安 全性が確保されていると認められないことをもって、前述の保護法益に対する侵害が生ずる具体的危険があるものと認めるのが相当である。 ⑵ そこで、以下、規制委員会により設置又は変更の許可がされた原子炉施設につき安全性が確保されているか否かの判断方法について検討する。 福島第一原発事故の反省と教訓を踏まえて設置された規制委員会は(設置 法1条)、核原料物質及び核燃料物質の使用に関する規制その他これらに関する安全の確保に関すること等を所掌事務とし(同法4条)、その所掌事務について、原子力規制委員会規則を制定することができ(同法26条)、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない(同法25条)とされ、また、規制委員会の委員長及び委員は、 原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議員の同意を得て、内閣総理大臣が任命し(同法7条1項)、独立 た、規制委員会の委員長及び委員は、 原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議員の同意を得て、内閣総理大臣が任命し(同法7条1項)、独立してその職権を行うものとされた(同法5条)。 そして、原子炉等規制法は、原子炉の設置又は変更をしようとする者は、規制委員会の許可を受けなければならないものとし(同法43条の3の5第 1項、同法43条の3の8第1項)、規制委員会は、原子炉の設置又は変更の許可申請が、同法43条の3の6第1項各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ許可してはならず(同項、同法43条の3の8第2項)、「発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないもの として原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」につ き審査を行うものと定めているところ(同法43条の3の6第1項4号、同法43条の3の8第2項)、原子炉の設置又は変更の許可の基準として、上記のように定められた趣旨は、前述のとおり、原子炉施設の安全性が確保されないときは、深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み、上記災害が万が一にも起こらないようにするため、事前に原子炉施設の位置、構造及び 設備の安全性につき、科学的、専門技術的見地から、基準を策定した上で、原子炉の設置又は変更の許可の段階で、申請に係る原子炉施設の上記安全性につき、科学的、専門技術的見地から、十分な審査を行わせることにあるものと解される。 上記の原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び審査は、当該原子炉施 設そのものの工学的安全性、平常運転時における周辺住民等及び周辺環境への放射線の影響、事故時におけ あるものと解される。 上記の原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び審査は、当該原子炉施 設そのものの工学的安全性、平常運転時における周辺住民等及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置(予定)場所の地形、地質、気象等の自然的条件及び当該原子炉設置者の技術的能力等との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、上記基準及び審査の対象には、地震、火山の噴火といった自然災害の発生な ど将来の予測に係る事項も含まれているのであって、上記基準の策定及び審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。そして、同法43条の3の6第1項4号が、規制委員会が、安全性に関する基準を規則で定めた上で、上記基準に適合するかを審査する 旨定めているのは、このような原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び審査の特質を考慮し、原子炉施設の安全性に関する上記基準の策定及び基準への適合性については、想定すべき自然災害の規模も含め、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する委員長及び委員が、独立してその職権を行う規制委員会の科学的、専門技術的知見 に基づく判断に委ねる趣旨と解するのが相当である。 以上の点を考慮すると、規制委員会において、その専門技術的な検討を踏まえて策定された安全性に関する基準、すなわち、新規制基準に適合すると判断された原子炉施設について、その安全性が確保されているか否かについては、新規制基準及び上記判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、新規制基準に不合理な 炉施設について、その安全性が確保されているか否かについては、新規制基準及び上記判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、新規制基準に不合理な 点があり、あるいは当該原子炉施設が新規制基準に適合するとした規制委員会の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があると認められる場合には、上記判断に不合理な点があるものとして、当該原子炉施設は安全性を具備していないものと認めるのが相当である。もっとも、科学的、専門技術的知見は日々進歩するところ、前述のとおり、原子炉施設の安全性が確保されない場合の 危害の重大性に鑑みると、規制委員会により、具体的審査基準に適合するとの判断がされた後に、最新の科学的、専門技術的知見を踏まえて、上記基準が改訂され、かつ、改訂後の上記基準に不合理な点が認められない場合には、原子炉施設の安全性が確保されていると認められるためには、当該原子炉施設が改訂後の上記基準に適合していることも必要であると解するのが相当で ある。 ⑶ そして、人格権に基づく妨害予防請求における主張立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、原子炉の設置又は変更につき許可を得た事業者は、原子炉施設の安全性に関する科学的、専門技術的知見及び資料を十分に保有しているものと認められ、他方、原子炉施設の周辺住民は、規制委 員会によりその保有する情報の公開がされていることを踏まえてもなお、これらの科学的、専門技術的知見及び資料を十分に保有しているとはいい難いことなどの点を考慮すると、規制委員会によって、本件原子炉施設について新規制基準に適合する旨の判断が示されている本件においては、被告において、まず、上記判断に当たって依拠された具体的審査基準であるところの新 規制基準及び規制委員 よって、本件原子炉施設について新規制基準に適合する旨の判断が示されている本件においては、被告において、まず、上記判断に当たって依拠された具体的審査基準であるところの新 規制基準及び規制委員会の判断に不合理な点がないこと(上記判断後に上記 基準が改訂された場合は、改訂後の上記基準に不合理な点がないこと及び改訂後の上記基準に適合していること)を相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告がこの主張、立証を尽くさない場合には、新規制基準又は規制委員会がした上記判断に不合理な点があり(上記判断後に上記基準が改訂された場合は、改訂後の上記基準に不合理な点があり、又は、改訂 後の上記基準に適合しておらず)、当該原子炉施設が安全性を欠いていることが事実上推認されるというべきである。 他方、被告が上記の主張、立証を尽くした場合には、原告らにおいて、本件原子炉施設が安全性を欠いていることについて、具体的に主張、立証する必要があるというべきである。 そこで、以下、上記説示の判断枠組みに即して検討していく。 2 争点2(新規制基準の策定過程及び内容(後記3及び5以外)の合理性の有無)について⑴ 前提事実(前提事実8、9、10⑴、⑵)規制委員会の設置に先立ち、原子力安全委員会では平成23年7月から、 原子力安全・保安院では同年10月から、福島第一原発事故の調査結果、専門家の意見、海外の規制状況等を踏まえて、原子炉施設の安全規制に関する検討が行われ、平成24年9月に設置された規制委員会は、各検討チームにおいて、関係分野の学識経験者も関与の下、原子力安全委員会及び原子力安全・保安院での上記検討結果のほか、各事故調査報告書の指摘事項を踏まえ、 約8か月間、回数にして13回及び23回にわたって検討を重ね 関係分野の学識経験者も関与の下、原子力安全委員会及び原子力安全・保安院での上記検討結果のほか、各事故調査報告書の指摘事項を踏まえ、 約8か月間、回数にして13回及び23回にわたって検討を重ね、新規制基準の骨子案を作成した。そして、規制委員会は、平成25年2月に任意の意見公募手続を実施し、その結果を踏まえて新規制基準の案を取りまとめ、同案につき、同年4月11日から1か月間の行政手続法上の意見公募手続を実施し、その結果も検討した上で、新規制基準を策定した。 ⑵ 判断 原告らは、新規制基準は、その策定過程及び内容に問題があり、不合理である旨主張するため、以下、原告らの主張を踏まえ、新規制基準に不合理な点がないかにつき検討する。 ア新規制基準の策定過程の問題点中立公正性の欠如との主張について a 規制委員会の委員等の人選原告らは、第5の2(原告らの主張)⑴アのとおり、規制委員会の委員長及び委員の中には、原子力事業者や原子力推進機関の出身者がおり、中立公正性を欠いている旨主張する。 しかしながら、設置法は、原子炉を設置する法人等の役員又は従業 者等であることを委員長及び委員の欠格事由としているものの、過去にそのような地位にあったことを欠格事由とはしていない(同法7条7項3号、4号)。そして、規制委員会の委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内 閣総理大臣により任命されるところ(同条1項)、人選に当たっては、福島第一原発事故から学んでいない者は原子力行政に関わる資格がないという観点から、その経歴も踏まえて、検討が進められた上で、両議院において同意がされ、内閣総理大臣によっ 条1項)、人選に当たっては、福島第一原発事故から学んでいない者は原子力行政に関わる資格がないという観点から、その経歴も踏まえて、検討が進められた上で、両議院において同意がされ、内閣総理大臣によって任命されており(乙ヨ182、ヨ183)、上記経歴を有することのみをもって、不適切な 者が任命されたものとは認め難い。また、規制委員会は、内閣府に設置された原子力安全委員会(前提事実6⑶ア)及び経済産業省資源エネルギー庁に設置された原子力安全・保安院(前提事実6⑶イ)と異なり、国家行政組織法3条2項に基づく、いわゆる3条委員会として高度の独立性が保障されているのであるから、規制委員会の委員長及 び委員に過去に原子力事業者や原子力推進機関の出身者が含まれるか らといって、規制委員会の中立公正性が損なわれるものとも認められない。 b 規制庁の職員の出身官庁原告らは、第5の2(原告らの主張)⑴アのとおり、規制庁の発足当時、規制庁の職員の多くが原子力推進官庁の出身者であったこと 等からすれば、規制委員会の中立公正な原子力規制行政を補助すべき立場にある規制庁による中立公正な補助は期待できない旨主張する。 しかしながら、規制庁は、規制委員会委員長の命を受けて事務局として規制委員会の事務を処理するにすぎない上(設置法27条)、規制庁の職員は、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を 確保する観点から、幹部職員のみならずそれ以外の職員についても、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めないこととされている(同法附則6条2項)のであるから、規制庁の職員の出身官庁のみをもって、規制庁による規制委員会の中立公正な補助が期待できないものとは認められない。また、原告らは、同法附 則6 こととされている(同法附則6条2項)のであるから、規制庁の職員の出身官庁のみをもって、規制庁による規制委員会の中立公正な補助が期待できないものとは認められない。また、原告らは、同法附 則6条2項の文言の抽象性等から原子力推進官庁の出身者が同官庁に復帰する可能性が十分にある旨主張するが、抽象的可能性を指摘するにとどまり、上記結論を左右するものとは認め難い。 検討期間が不十分であるとの主張について原告らは、第5の2(原告らの主張)⑴イのとおり、新規制基準は、 十分な検討期間も設けられずに策定されており、原子炉施設の安全を確保する機能を欠いている旨主張する。 しかしながら、新規制基準の策定過程(前記⑴)に照らせば、規制委員会による検討期間や行政手続法上の意見公募手続の実施期間のみを取り上げて新規制基準の検討期間が不十分であるとは認められない。 イ新規制基準の内容面に関する問題点 福島第一原発事故の教訓を踏まえていないとの主張について原告らは、第5の2(原告らの主張)⑵アのとおり、新規制基準は、福島第一原発事故の反省の下に成り立つべきもので、その前提として、事故の原因が十分究明される必要があるが、事故の原因すらも特定できておらず、その内容も従来の枠組みの範囲内での見直しをしたものにす ぎず、抜本的見直しを求める国会事故調報告書に従っていない旨主張する。 しかしながら、福島第一原発事故については、国会、政府等の事故調査委員会がそれぞれ原因究明等を行って事故調査報告書を取りまとめているところ、新規制基準は、福島第一原発事故の全ての設備の故障、破 損につき、具体的な位置や状態までは調査できていないことを前提に、上記各事故調査報告書により福島第一原発事故の発生及び進展に関する基本的な事 制基準は、福島第一原発事故の全ての設備の故障、破 損につき、具体的な位置や状態までは調査できていないことを前提に、上記各事故調査報告書により福島第一原発事故の発生及び進展に関する基本的な事象が明らかにされていることを踏まえ、学識経験者も関与の下、最新の科学的知見、海外の規制に関する最新知見等も考慮して策定されたことが認められる(前提事実8~10、乙98)。このような新規 制基準の策定過程に鑑みれば、福島第一原発事故について一部の点が未解明であるとしても、そのことだけをもって、新規制基準が不合理であるとは認められない。 また、確かに、国会事故調報告書において、国会による継続監視が必要な事項として、現行の関係法令との関連性も含め、指針類の体系、決 定手続、その後の運用を適正化するために、これらを直ちに抜本的に見直す必要があるとされたことが認められる(前提事実7⑴)。この点、新規制基準が福島第一原発事故の調査結果のほか、専門家の意見や海外の規制状況等も踏まえて策定されたことは前述のとおりであるところ、その内容をみても、基準地震動の策定について、後記3⑵アのとおり、 改訂耐震指針と比べてより高度化するなどしていることが認められるこ とからすると、新規制基準の内容が、国会事故調報告書の上記指摘に反しているとは認められない。 さらに、原告らは、基準地震動の具体的な算出ルールがなく、新規制基準自体が抽象的であり、福島第一原発事故以前と全く変わらない規制の在り方である旨も主張するが、後記3⑵アのとおり、新規制基準の 規定内容が抽象的であることが直ちに問題になるものとも認められない。 立地審査指針が含まれていないことについて原告らは、第5の2(原告らの主張)⑵イのとおり、原子炉等規制法43条の3 の 規定内容が抽象的であることが直ちに問題になるものとも認められない。 立地審査指針が含まれていないことについて原告らは、第5の2(原告らの主張)⑵イのとおり、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号は立地審査を行うことを要請しているにもかかわらず、立地審査指針に関する改訂がないという新規制基準の不備の ため、本件適合性審査において、立地審査が行われていない旨主張する。 この点、立地審査指針は、改正前原子炉等規制法24条1項4号(原子炉等規制法43条の3の6第1項4号に相当)における「災害の防止上支障がないものであること」の基準を具体的に記載した指針の一つであるところ、原則的立地条件①として、「大きな事故の誘因となるような 事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。」、原則的立地条件②として、「原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること。」、原則的立地条件③として「原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措 置を講じうる環境にあること。」と定めていたことが認められる(前提事実6⑴)。他方、規制委員会が制定した設置許可基準規則においては、立地審査指針は採用されず、同規則の解釈である設置許可基準規則解釈においても立地審査指針の引用はなく、新規制基準において立地審査指針を適用することは予定されていないことが認められる(乙98[385 頁])。 そこで検討するに、証拠(乙98)によれば、改正前原子炉等規制法の下で、自主的対策として奨励されていた原子炉施設の重大事故等対策は、本件改正により法的要求事項とされており(原子炉等規制法43条の3の6第1項、同法 、証拠(乙98)によれば、改正前原子炉等規制法の下で、自主的対策として奨励されていた原子炉施設の重大事故等対策は、本件改正により法的要求事項とされており(原子炉等規制法43条の3の6第1項、同法43条の3の22第1項)、これを踏まえて、設置許可基準規則や設置許可基準規則解釈が制定されたことが認められる。 そして、立地審査指針が要求していた原則的立地条件①については、新規制基準においては、例えば、耐震重要施設を断層の露頭のある地盤や火砕物密度流が到達するおそれがある場所等に設置しようとする場合は、立地不適と評価するなど(同規則3条3項、設置許可基準規則解釈別記1第3条3項、令和元年火山ガイド5.2)、地盤の安定性(同規則3条) や地震等による損傷の防止(同規則4条~6条)などの自然的条件ないし社会的条件に係る個別の規定との関係で考慮することとし、原則的立地条件②については、無条件に原子炉格納容器が健全であることを前提に評価しているとの批判もあり、他方、本件改正により、福島第一原発事故を踏まえて重大事故等対策が法的要求事項とされたことから、その ような前提による評価よりも、炉心の著しい損傷や原子炉格納容器破損に至りかねない事象を具体的に想定した上で、重大事故等対策自体の有効性を評価する方がより適切に「災害の防止上支障がないこと」について判断できると評価し、原則的立地条件③については、めやす線量を超える地帯である低人口地帯は、既許可の原子炉施設では原子力発電所内 に収まっていたこと、原子力災害対策特別措置法等により原子力災害防止対策の強化がされていることなどから、原則的立地条件③のために低人口地帯を設定することはその役割を終えたと判断し、また、社会的影響の観点から、集団線量を考慮して、人口密集地帯からある距離だけ 害防止対策の強化がされていることなどから、原則的立地条件③のために低人口地帯を設定することはその役割を終えたと判断し、また、社会的影響の観点から、集団線量を考慮して、人口密集地帯からある距離だけ離れていることを要求することは合理的ではないと判断し、新規制基準に おいては立地審査指針が採用されなかったことが認められる。 以上によると、立地審査指針における原則的立地条件のうち、その内容に合理性が認められるものについては、現在の法体系において、考慮・判断されているといえるから、新規制基準の下で、立地審査指針に基づく立地審査が行われていないことをもって、新規制基準が不合理であるとは認められない。 共通要因故障を想定していないとの主張について原告らは、第5の2(原告らの主張)⑵ウのとおり、新規制基準において、共通要因故障が想定されるべきであるが、外部電源の喪失を除き、そのようになっておらず、不合理である旨主張する。 しかしながら、証拠(乙98)によれば、設置許可基準規則は、設計 基準対象施設(原子炉施設のうち、運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し、又はこれらの拡大を防止するために必要となるもの(同規則2条2項7号))については、共通要因(二以上の系統又は機器に同時に影響を及ぼすことによりその機能を失わせる要因(同項18号))となることが想定される地震等の外部事象によって安全機能を有 する系統が複数同時に故障しないことを求めている(同規則3条~9条)。 加えて、同規則は、重要度が特に高い安全機能を有する系統については、当該系統を構成する機械又は器具の単一故障(単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと(従属要因(単一の原因によって確実に系統又は機器に故障を発生さ 機能を有する系統については、当該系統を構成する機械又は器具の単一故障(単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと(従属要因(単一の原因によって確実に系統又は機器に故障を発生させることとなる要因(同規則 2条2項18号))による多重故障を含む。))が発生した場合であって、外部電源が利用できない場合においても機能できるよう、当該系統を構成する機械又は器具の機能、構造及び動作原理を考慮して、多重性(同一の機能を有し、かつ、同一の構造、動作原理その他の性質を有する二以上の系統又は機器が同一の原子炉施設に存在すること(同項17号)) 又は多様性(同一の機能を有する二以上の系統又は機器が、想定される 環境条件及び運転状態において、これらの構造、動作原理その他の性質が異なることにより、共通要因又は従属要因によって同時にその機能が損なわれないこと(同項18号))を確保し、及び独立性(二以上の系統又は機器が、想定される環境条件及び運転状態において、物理的方法その他の方法によりそれぞれ互いに分離することにより、共通要因又は従 属要因によって同時にその機能が損なわれないこと(同項19号))を確保することを求めている(同規則12条2項)。 このように、同規則は、共通要因による故障を防止することができる設計が行われていることを前提にして、単一故障を仮定してもなお安全性が確保される設計を求めているものと認められるから、原告らの上記 主張は前提において誤っており、採用できない。 ウ以上によると、原告らの上記各主張によって、新規制基準の策定過程及び内容について不合理な点があるとは認められない。 そして、新規制基準の策定過程(前記⑴)を踏まえると、新規制基準は、関係分野の学識経験者の科学的、専門技術的知見 張によって、新規制基準の策定過程及び内容について不合理な点があるとは認められない。 そして、新規制基準の策定過程(前記⑴)を踏まえると、新規制基準は、関係分野の学識経験者の科学的、専門技術的知見に基づく意見等を集約し、 複数回にわたる意見公募を行った上で、現在の科学技術水準を踏まえた科学的合理的な基準として策定されたものとみることができ、他に、その策定過程及び内容面(後記3及び5を除く。)に不合理な点はないものと認められる。 3 争点3(新規制基準(基準地震動策定部分)の合理性の有無)について ⑴ 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア新規制基準における基準地震動の概要新規制基準は、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺 の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的 見地から想定することが適切なものとすることを前提として、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「震源を特定せず策定する地震動」の双方を検討して基準地震動を策定することとしている。具体的には、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について検討用地震を複数選定し、検討用 地震ごとに、不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を行い、「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、敷地の地盤物性を加味した応答スペクトルを設定して策定するものとしている。ま た、新規制基準は、これらの策定に当たって、策定過程に伴う各種の不確かさを考慮す 震源近傍における観測記録を収集し、敷地の地盤物性を加味した応答スペクトルを設定して策定するものとしている。ま た、新規制基準は、これらの策定に当たって、策定過程に伴う各種の不確かさを考慮することを明確に要求している。(前提事実11⑴)イ基準地震動の超過事例超過事例①平成17年8月16日、宮城県沖でM7.2のプレート間地震(20 05年宮城県沖地震)が発生したところ、女川原発では、同地震による岩盤中の観測記録から解析的に上部地盤の影響を取り除いて求めた解放基盤表面の地震動(以下「はぎとり波」という。)の応答スペクトルが、一部の周期において基準地震動S2(最大加速度375ガル)を上回った。その要因は、上記地震では短周期成分の卓越が顕著な傾向にあるこ とが認められており、宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域特性によるものと考えられている。(乙55、ヨ24、弁論の全趣旨)超過事例②平成19年3月25日、能登半島でM6.9の内陸地殻内地震(2007年能登半島地震)が発生したところ、志賀原発では、同地震による はぎとり波の応答スペクトルが、長周期側の一部の周期(周期0.6秒 付近)において基準地震動S2(最大加速度490ガル)を上回った。 その要因は、能登半島地震の震源周辺における多数の観測記録の検討結果や微動アレイ探査から推定される敷地地盤の地下構造に鑑み、地盤深部からの増幅特性によるものと考えられている。(乙56、ヨ26、弁論の全趣旨) 超過事例③同年7月16日、新潟県中越沖でM6.8の内陸地殻内地震(2007年新潟県中越沖地震)が発生したところ、柏崎刈羽原発では、同地震による原子炉建屋基礎版上での観測記録から推定される解放基盤表面における地震動が基準地震動 県中越沖でM6.8の内陸地殻内地震(2007年新潟県中越沖地震)が発生したところ、柏崎刈羽原発では、同地震による原子炉建屋基礎版上での観測記録から推定される解放基盤表面における地震動が基準地震動S2(最大加速度450ガル)を上回る16 99ガル(1号機)であった。その要因としては、①上記地震は逆断層型の地震であり、通常より1.5倍程度強い揺れを生じさせるものであったこと、②周辺地盤深部における堆積層の厚さと傾き(不整形性)の影響により、地震波が屈折して集まるため、地震動が2倍程度増幅する傾向があったこと、③敷地地下の古い褶曲構造のために、解放基盤表面 での地震動につき、1号機の方が5号機より2倍程度増幅したことが挙げられている。なお、同地震のほか2009年駿河湾地震を契機として、地下構造を詳細に調査して、伝播特性を把握し、より精密な基準地震動の策定に反映させることの必要性が認識されるようになり、この知見が新規制基準に反映されている。(甲36、乙ヨ25、ヨ95、弁論の全趣 旨)超過事例④及び⑤平成23年3月11日、日本海溝付近でM9.0のプレート間地震(東北地方太平洋沖地震)が発生したところ、福島第一原発では、解放基盤表面の深度に最も近い地中観測記録のはぎとり波の応答スペクトルが、 一部の周期で基準地震動Ss(最大加速度600ガル)を上回り、女川 原発では、解放基盤表面の深度に最も近い地中観測記録及び同観測記録から解析的に求めたはぎとり波の応答スペクトルのいずれもが、一部の周期において基準地震動Ss(最大加速度580ガル)を上回った。 前記の宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域特性については、最新の知見においても、平成8年から平成23年7月21日ま での岩手県沖、宮城県 Ss(最大加速度580ガル)を上回った。 前記の宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域特性については、最新の知見においても、平成8年から平成23年7月21日ま での岩手県沖、宮城県沖、茨城県沖で発生したMw6.0以上、震源深さ60km以下のプレート間地震のデータを用いて検討した結果、同様の傾向が見られることが示されており、超過事例④及び⑤にもこのような傾向が妥当する。 (乙57、58、ヨ28~ヨ30、ヨ94、弁論の全趣旨) ウハウスメーカーによる一般住宅の加速度三井ホームは、モデルハウスにつき、2階建耐震実験の結果、加振最大加速度5115ガル、3階建耐震実験の結果、加振最大加速度4176ガルに耐えられたとしている。なお、上記数値は、入力地震動の数値ではなく、実験時に振動台で計測された実測値である。また、住友林業は、3階 建実物大モデルで震動実験を実施した結果、3460ガルをクリアしたとしている。(甲75、76)エダム耐震指針の定めダム耐震指針は、ダムの耐震性能につき、ダム地点ごとに個別にレベル2地震動(ダム地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の 強さを持つ地震動)を設定し、そのレベル2地震動に対し、ダム本体及び関連構造物等において、地震時に損傷が生じたとしても、ダムの貯水機能が維持されるとともに、生じた損傷が修復可能な範囲にとどまるような耐震性能を備えていることを要求している。 そして、レベル2地震動の設定に当たっては、ダム地点周辺において過 去に発生した地震や周辺に分布する活断層やプレート境界等に関する情 報について文献資料等により十分な調査を行い、同調査結果に基づき、当該ダムに最も大きな影響を及ぼす可能性のある地震を想定地震として選定し、少 に分布する活断層やプレート境界等に関する情 報について文献資料等により十分な調査を行い、同調査結果に基づき、当該ダムに最も大きな影響を及ぼす可能性のある地震を想定地震として選定し、少なくとも①経験的方法であるダムの距離減衰式(基準地震動策定における応答スペクトルに基づく地震動評価に対応する。)による推定結果を得て、更に、②経験的グリーン関数法や統計的グリーン関数法などの 半経験的方法や③理論的方法(②及び③のいずれも基準地震動策定における断層モデルを用いた手法による地震動評価に対応する。)によって地震動が推定できる場合には、それらの推定結果も含めて総合的に判断して地震動を評価することが基本とされている。もっとも、ダム地点又はその近傍で過去に実際に観測された最大の地震動及び照査用下限加速度応答ス ペクトル(地震の震源となる活断層が地表面に現れていない場合を想定して、最低限考慮すべき水平地震動を加速度応答スペクトルとして設定したもの)を有する地震動が、想定地震から推定される地震動よりも影響が大きいと予想される場合には、その影響も考慮してレベル2地震動を設定することとされている。 なお、新規制基準と異なり、ダム耐震指針には、レベル2地震動の策定に当たって、各種の不確かさ(震源断層の長さ等)を考慮すべきとする具体的な規定は存在しない。 (甲72、乙14)⑵ 判断 原告らは、以下のとおり、新規制基準(基準地震動策定部分)は不合理である旨主張する。そこで、以下、原告らの主張を踏まえ、新規制基準(基準地震動策定部分)に不合理な点がないか検討する。 ア基準地震動の科学的合理性の有無地震の予測困難性との主張について 原告らは、第5の3⑴(原告ら 告らの主張を踏まえ、新規制基準(基準地震動策定部分)に不合理な点がないか検討する。 ア基準地震動の科学的合理性の有無地震の予測困難性との主張について 原告らは、第5の3⑴(原告らの主張)アのとおり、B級断層と評価 されていた断層が震源となった1995年兵庫県南部地震、活断層の存在が知られていなかった2000年鳥取県西部地震(M7.3)及び2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)が発生したことからも明らかなとおり、地震を科学的に予測することは困難であるから、発生し得る地震規模の想定が可能であることを前提としている基準地震動は科学的 合理性を欠く旨主張する。 確かに、地震は、本質的には複雑系の問題であり、実験できるものではなく過去のデータに学ぶほかないが、低頻度の自然現象で依拠すべき過去のデータが少ないこと(甲3、73)からすると、将来発生する地震の規模につき正確に予測することは困難であると認められる。もっと も、新規制基準における基準地震動は、上記予測が困難であることを前提に、最新の科学的・技術的知見に基づき、各種の不確かさを保守的に考慮しながら複数の手法を併用して発生し得る地震動を評価した上で、その結果を総合し、最も厳しい評価結果を基準地震動として採用するものであると認められる(前提事実11⑴、前記⑴ア)。そうすると、基準 地震動は、将来発生する地震の規模を正確に予測するものではなく、上記規模を科学的・技術的知見に基づき、保守的に評価するものであるから、上記予測が困難であるからといって、基準地震動が科学的合理性に欠けるものとは認められない。そして、上記科学的・技術的知見については、1995年兵庫県南部地震を契機として、国は全国的に強震観測 網の強化に努め、防災科学技術研究所はK 震動が科学的合理性に欠けるものとは認められない。そして、上記科学的・技術的知見については、1995年兵庫県南部地震を契機として、国は全国的に強震観測 網の強化に努め、防災科学技術研究所はK-NET、KIK-NETを張り巡らし、全国の市町村にも気象庁の震度計が設置されて、地震の観測記録が増加するとともに(乙109)、地震学及び地震工学に関する新たな知見が蓄積され、地震動評価手法に関する研究も進展し、応答スペクトルに基づく地震動評価のみならず、断層モデルを用いた評価手法の 重要性が認識されて改訂耐震指針が定められ(前提事実6⑶)、さらに、 超過事例③ないし⑤から得られた知見(地下構造を詳細に調査して、伝播特性を把握し、より精密な基準地震動の策定に反映させることの必要性など)等を踏まえ、新規制基準が策定されたことが認められる(前提事実11⑴、前記⑴イ)。このように、新規制基準は、最新の科学的・技術的知見を踏まえたものであると認められるところ、原告らが指摘す る1995年兵庫県南部地震、2000年鳥取県西部地震及び2008年岩手・宮城内陸地震は、いずれも新規制基準の策定前に発生したものであることからすると、上記各地震の存在をもって、新規制基準における基準地震動が科学的合理性に欠けるものとは認められない。 基準地震動の具体的算出方法の不明確性との主張について 原告らは、第5の3⑴(原告らの主張)イのとおり、基準地震動の策定に当たって不確かさの考慮を求めること自体、最新の科学的・技術的知見や、地震学及び地震工学的見地からの想定が科学的に正確ではないことを前提としているし、不確かさの考慮については、具体的な基準が存在せず、主観的判断にならざるを得ない、また、本件ばらつき条項が 存在すること自体 工学的見地からの想定が科学的に正確ではないことを前提としているし、不確かさの考慮については、具体的な基準が存在せず、主観的判断にならざるを得ない、また、本件ばらつき条項が 存在すること自体、想定すべき地震規模を具体的に特定することが困難であり、不確定性を含んでおり、基準地震動は科学的合理性を欠くものである旨主張する。 a しかしながら、前記のとおり、新規制基準は、将来発生する地震の規模を正確に予測することが困難であることを前提に、これを補う ために、科学的・技術的知見に基づき、各種の不確かさを保守的に考慮して基準地震動を策定する旨定めているのであって、不確かさの考慮を求めることをもって、基準地震動の科学的合理性が否定されるものとは認められない。そして、自然的立地条件や原子炉の型式等が原子力発電所ごとに異なることに鑑みれば、不確かさの考慮について一 義的に明確又は定量的な基準を定めることは困難であるといえるとこ ろ、新規制基準の適合性審査においては、高度の独立性が保障されている規制委員会が、最新の科学的、専門技術的知見に基づき、上記自然的立地条件や原子炉の型式等の個別具体的な事情を踏まえて、不確かさの考慮が適切にされているかについても個別具体的に審議、検討するのであるから、不確かさの考慮に関する具体的な基準が存在しな いことをもって、基準地震動それ自体が科学的合理性を欠くものであるとも認められない。 b また、地震ガイドに本件ばらつき条項が存在した点については、経験式は、実際の地震観測記録等の観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表すものであり、経験式の基となったデータが有 する地域特性は様々であるため、かかる地域特性の違いが反映されて、経験式の作成の基となったデータと当該 タに基づいて複数の物理量等の相関を式として表すものであり、経験式の基となったデータが有 する地域特性は様々であるため、かかる地域特性の違いが反映されて、経験式の作成の基となったデータと当該経験式から求まる値との間には、当然にばらつきが生じるところ、本件ばらつき条項の第1文は、経験式の適用範囲について十分な検討を求め、第2文は、経験式の適用範囲を確認する際の留意点として、経験式が平均値としての地震規 模を与えるものであることから、当該経験式の適用範囲を単に確認するのみではなく、より慎重に、当該経験式の前提とされた観測データとの間のかい離の度合い(すなわち、経験式が有するばらつき)までを踏まえる必要があることを確認的に規定したものであり(乙98)、これらは上記で述べた経験式が有する当然の性質を規定したものにす ぎない。そして、経験式にはこのようなばらつきが生じることを踏まえて、規制委員会により、上記a記載の適合性審査がされるのであるから、本件ばらつき条項の存在をもって、基準地震動の算出方法が不明確であり、科学的合理性を欠くとは認められない。 基準地震動の超過事例の存在について 原告らは、第5の3⑴(原告らの主張)ウのとおり、平成17年から 平成23年までのわずか6年間に、4か所の原子力発電所で超過事例①ないし⑤が発生しており、各発生当時における基準地震動の想定が誤りであり、科学的根拠に基づく基準地震動の想定が困難であることを示している旨主張する。 しかしながら、超過事例①ないし③は、いずれも旧耐震指針下におけ る基準地震動S2を超えるものであって基準地震動Ssを超過したものではない(前記⑴イ~、弁論の全趣旨)。すなわち、旧耐震指針では、基本的に、応答スペクトルに基づく地震動評価の 指針下におけ る基準地震動S2を超えるものであって基準地震動Ssを超過したものではない(前記⑴イ~、弁論の全趣旨)。すなわち、旧耐震指針では、基本的に、応答スペクトルに基づく地震動評価のみによって基準地震動を策定することを求めていた(前提事実6⑵ア)のに対し、新規制基準では、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せ ず策定する地震動」の双方を考慮し、地下構造を詳細に把握するなどした上で、前者の地震動については、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価をした上で、基準地震動を策定することを求めており(前提事実11⑴)、旧耐震指針と新規制基準における基準地震動はその策定方法が大きく異なっているから、超過 事例①ないし③が存在することをもって、基準地震動の想定が困難であるとして、新規制基準における基準地震動の合理性も否定されるものとはいえない。 また、超過事例④及び⑤は、改訂耐震指針における基準地震動Ssを超過した事例であるところ(前記⑴イ)、新規制基準における基準地震 動は、超過事例④及び⑤のほか、超過事例③から得られた知見等を踏まえ、活断層等の解釈を明確化したり、地下構造による地震波の増幅、伝播特性の考慮に関し、より詳細な調査・検討を求めたりするもので、改訂耐震指針における基準地震動と比較して、より高度化したものとなっていることが認められる(前提事実11⑴、前記⑴イ)。そうすると、 超過事例④及び⑤についても、これらが存在することをもって、基準地 震動の想定が困難であるとして、新規制基準における基準地震動の合理性も否定されるものとはいえない。 基準地震動の変動について原告らは、第5の3⑴(原告らの主張)エのとおり、強震動 震動の想定が困難であるとして、新規制基準における基準地震動の合理性も否定されるものとはいえない。 基準地震動の変動について原告らは、第5の3⑴(原告らの主張)エのとおり、強震動予測における地震学及び地震工学の知見に大きな変遷がないにもかかわらず、本 件原子炉施設や他の原子力発電所の基準地震動が変動しているのは、基準地震動自体が科学的合理性を欠くものであることを示している旨主張する。 確かに、本件原子炉施設の基準地震動は、旧耐震指針の下では最大加速度473ガル(基準地震動S2)、改訂耐震指針の下では最大加速度5 70ガル(基準地震動Ss-1)、新規制基準の下では最大加速度650ガル(基準地震動Ss)と変動していることが認められる(前提事実6⑵イ、⑶イ、11⑵ウ)。しかしながら、基準地震動の策定方法については、前記において認定したとおり、科学的知見の発展に伴って見直されているのであって、強震動予測における地震学及び地震工学の知見に 大きな変遷がないとの原告らの主張はその前提を欠くものであり、原告らの上記主張によって、基準地震動が科学的合理性を欠くものとは認められない。 以上検討したところによると、基準地震動は科学的合理性を有するものであると認められるから、基準地震動を定めていることをもって、新 規制基準が不合理であるとは認められない。 イ基準地震動の耐震設計基準としての合理性の有無原告らは、第5の3⑵(原告らの主張)のとおり、ハウスメーカーは、一般住宅耐震設計基準を定めるに当たって、強震動予測ではなく、国内における過去最大の地震動を前提としており、ダム耐震指針も現在から 将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動を設定 することを求めているにも 動予測ではなく、国内における過去最大の地震動を前提としており、ダム耐震指針も現在から 将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動を設定 することを求めているにもかかわらず、新規制基準は、想定される地震規模というより緩やかな耐震設計基準を定めるにとどまり不合理である旨主張する。 この点、建築基準法は最大加速度300~400ガル程度の地震動に対する設計を要求していることになるところ、1995年兵庫県南部地 震や東北地方太平洋沖地震等において、これを上回る地震記録が多数観測されていながら、大破、倒壊といった大きな被害が見られないのは、計算上考慮していない部材が力を負担するなど、建築物全体としては計算以上の余力があり、同法に基づく設計上の耐力(設計耐力)よりも大きな地震力に耐えることができる、すなわち、設計耐力より実耐力が大 きいからである(乙108)。このように、設計耐力と実耐力は異なるところ、原告らが指摘するハウスメーカーの一般住宅の振動実験に基づく最大加速度(前記⑴ウ)は実耐力を示すものであるのに対し、原子炉施設の基準地震動は設計耐力であるから、両者はそもそも比較対象となるものではない(乙303)。 更に付言するに、建築物の耐震設計は、当該地点における地域特性、特に、地震動の増幅特性に影響を与える地盤の条件に大きく左右されるところ、一般住宅は、大規模な基礎地盤の改良工事が行われないまま、新しい堆積層(沖積層)が厚く分布している平野部、埋立地、盛土上など柔らかい地盤の上に建築されることが多い(乙294、302)のに 対し、原子力発電所は、地震動の増幅をもたらさない堅硬な岩盤等が存在する立地地点を選定し、当該地点について詳細な調査を尽くした上で、大規模な基礎地盤の改良工事 が多い(乙294、302)のに 対し、原子力発電所は、地震動の増幅をもたらさない堅硬な岩盤等が存在する立地地点を選定し、当該地点について詳細な調査を尽くした上で、大規模な基礎地盤の改良工事等を実施して地震動の増幅をもたらす表層地盤を除去するなどしてから建設されているのであって(弁論の全趣旨)、両者には、立地する地盤の条件に根本的な違いが認められる(乙303)。 また、地震動の最大加速度が2000ガルを超えたにもかかわらず、 観測地点に近接した建築物にほぼ被害が生じなかった事例が存在しているように(乙109)、1995年兵庫県南部地震以降の顕著な地震記録の検討の結果、最大加速度及び最大速度のいずれかのみが大きくても被害には結び付きにくいとの見解が示されているところであって(乙304)、建築物の耐震性は、最大加速度のみならず、地震動の経時特性(揺 れが時間とともにどう変化するか)、周期特性(建築物の固有周期に対応する揺れがどのようなものであるか)や建築物の固有周期も考慮することが必要である(乙303、弁論の全趣旨)。 以上によると、一般住宅の上記実耐力と地盤条件や建物の固有周期の異なる原子炉施設の基準地震動(設計耐力)とを直接比較することは不 合理であり(乙303)、原告らの上記主張をもって、新規制基準における基準地震動が不合理であるとは認められない。 次に、ダム耐震指針においては、新規制基準と異なり、各種の不確かさを考慮すべきとする具体的規定は存在していない(前記⑴エ)。また、地震動評価の手法についても、新規制基準における基準地震動では、応 答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価の双方の策定が求められている(前提事実11⑴ア)のに対し、ダム耐震指針で も、新規制基準における基準地震動では、応 答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価の双方の策定が求められている(前提事実11⑴ア)のに対し、ダム耐震指針では、応答スペクトルに基づく地震動評価に相当する経験的方法であるダムの距離減衰式による地震動評価は求められているものの、断層モデルを用いた手法による地震動評価に相当する半経験的 方法や理論的方法については努力目標的な位置付けがされるにとどまっていることが認められる(前記⑴エ)。これらの規定内容に照らせば、新規制基準における基準地震動の方がダムの耐震設計よりも保守的で詳細な想定を要求していることは明らかであるから、ダム耐震指針と比較して新規制基準における基準地震動が不合理であるとは認められない。 したがって、一般住宅の実耐力やダム耐震設計と比較して、新規制基 準における基準地震動が不合理であるとは認められない。 ウ三次元地下構造調査に係る規定の合理性の有無原告らは、第5の3⑶(原告らの主張)のとおり、三次元物理探査は、二次元物理探査と比較し、圧倒的に最先端の技術であり、その得られるデータの量、質の点ではるかに優れており、新規制基準は、このような三次 元物理探査により三次元的に地下構造を把握することを求め、例外的に、地下構造が水平成層かつ均質の場合には、三次元物理探査を省略することができる旨規定しているところ、「水平」、「成層」、「均質」といった基準は曖昧で、その解釈次第では、三次元物理探査の省略を広範に認めることになる点、また、地下構造の評価に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査 につき、二次元物理探査と三次元物理探査を並列的かつ択一的に規定している点において不合理である旨主張する。 確かに、三次元 なる点、また、地下構造の評価に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査 につき、二次元物理探査と三次元物理探査を並列的かつ択一的に規定している点において不合理である旨主張する。 確かに、三次元物理探査の方が二次元物理探査よりも詳細なデータを得ることができ、石油探査においては、三次元物理探査が実施されるのが一般的であることが認められる(甲38、201、202、証人丁1)。 もっとも、新規制基準の策定過程をみると、2007年新潟県中越沖地震及び2009年駿河湾地震で敷地下方の地下構造等の要因による地震波の増幅が確認され、地下構造を詳細に調査して伝播特性を把握し、より精密な基準地震動の策定に反映させることの必要性が認識されたことを受けて、地震等基準検討チームの会合において地下構造の調査手法につい て議論され、その際、外部有識者である戊7国立大学法人高知大学海洋コア総合研究センターセンター長から石油業界では一般的に陸上で三次元探査をしているとして、三次元物理探査を実施すべきである旨の意見も出され、そのような意見も踏まえて議論された結果、原子力発電所敷地の地下構造を従来よりも詳細に調査して、地震波の伝播特性をしっかり把握し、 精密な基準地震動の策定に活かすことが必要であるとの認識に至ったこ とが認められる(前記⑴イ、甲35、乙82)。そして、新規制基準は、このような認識を踏まえ、地震動評価の過程における敷地及び敷地周辺の地下構造の把握につき、原則として、三次元的な地下構造により検討することを要求するが、地震観測記録の分析、各種調査及び二次元又は三次元の物理探査等により三次元的に地下構造を調査した結果、地下構造が水平 成層かつ均質と認められる場合には、一次元又は二次元のある程度簡易的な地下構造モデルで 録の分析、各種調査及び二次元又は三次元の物理探査等により三次元的に地下構造を調査した結果、地下構造が水平 成層かつ均質と認められる場合には、一次元又は二次元のある程度簡易的な地下構造モデルでも基準地震動の策定にほとんど影響がないため、地下構造モデルを一次元又は二次元のものとすることができる旨定めたことが認められる(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号、前提事実11⑴、乙82)。これは、地下構造につき「水平成層構造が想定可能なこと があらかじめわかっている場合には、水平成層構造に対する強震動の理論計算がはるかに容易であるから、三次元的に不均質なモデルをあえて作成することは適切でない。」とする平成29年改訂レシピ2.2.2の考え方(甲45[24~26頁]、乙24[24~26頁])とも整合するものである。 すなわち、石油探査等の資源探査においては、当該資源の位置を正確に把握することが重要であることから、三次元物理探査が一般的に行われているのに対し、基準地震動の策定においては、地下構造の影響による地震波の伝播特性を把握し、これを踏まえた地下構造モデルを作成することが重要であるところ、新規制基準は、このような観点から、三次元物理探査 によることなく、地震観測記録の分析、各種調査及び二次元物理探査等を適切に組み合わせることによって、地下構造が水平成層かつ均質であると判断することは可能であり、その場合、地震波の伝播特性への影響がほとんどないことから、地下構造モデルを一次元又は二次元のものとすることができるとするものであると認められ、不合理な点は認められない。 この点、原告らは、地下構造が成層(水平)かつ均質であると判断する に当たっても、三次元反射法・屈折法地震探査を行う必要がある理由として、 認められ、不合理な点は認められない。 この点、原告らは、地下構造が成層(水平)かつ均質であると判断する に当たっても、三次元反射法・屈折法地震探査を行う必要がある理由として、①設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号①が「三次元的な地下構造により検討すること」を義務付けていること、②新規制基準策定に先立つ平成25年5月10日に策定公表された「サイト敷地の地下構造の詳細な把握の必要性について」において、三次元地下構造調査から、二次元 反射法・屈折法地震探査が除外されており、また、上記探査に加え、電磁気探査、更に微動アレイ探査をしても三次元速度構造モデルを作成できるにとどまるとされていること、③大飯発電所評価会合において、「地下構造が成層かつ均質である」と判断するために、三次元的な地下構造データをもって評価を行う必要があるとされたことを挙げる。 しかし、上記①の点については、設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号①は、「評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き」三次元的な地下構造により検討することを要求しているものであって、常に三次元物理探査を実施することを要求しているものではないことは明らかである。 また、上記②の点については、「サイト敷地の地下構造の詳細な把握の必要性について」(甲36)には、地下構造調査の方法に関し、二次元反射法・屈折法地震探査等による簡易地下構造調査と三次元反射法・屈折法地震探査等による三次元地下構造調査が挙げられているが、地下構造の把握に当たって、簡易地下構造調査によることを排除する趣旨の記載であるとは認 められない(乙82[10頁])。加えて、前述のとおり、地下構造の調査は、地震波の伝播特性を把握するためであるところ、三次元速度構造モ 易地下構造調査によることを排除する趣旨の記載であるとは認 められない(乙82[10頁])。加えて、前述のとおり、地下構造の調査は、地震波の伝播特性を把握するためであるところ、三次元速度構造モデルにより、上記伝播特性を把握することが可能であることからすると、簡易地下構造調査では三次元速度構造モデルを作成できるにとどまるからといって、地下構造を把握するに当たって、三次元物理探査が必要である ものとも認められない。 さらに、上記③の点については、大飯発電所評価会合においては、規制委員会が、他の原子力発電所(本件発電所を含む。)が長年にわたり地震観測を実施しているにもかかわらず、これを実施していない大飯発電所に対し、最低限必要な調査として、浅部地下構造における三次元的な構造を評価(確認)するため、敷地内において約50m格子間隔による単点微動測 定を実施し、微動H/Vスペクトルによる卓越ピーク(周波数、振幅)の空間分布を評価する(これにより大きな空間変動がない場合、地下構造を水平成層構造として近似できる。)ことを求めたものと認められ(甲36、乙82、90)、三次元物理探査を求めたものとは認められない。 以上によると、原告らが主張するように、新規制基準が原則として三次 元物理探査の実施により三次元的に地下構造を把握するよう求めているものとは認められない。 そうすると、原告らの主張は、そもそも、三次元的地下構造調査に係る新規制基準の規定の解釈に誤りがある。そして、新規制基準が「水平」、「成層」、「均質」である場合の例外規定を設けた上記趣旨からすると、上記例 外に該当するか否かは、地震波の伝播特性に影響を与える地下構造であるかという観点から判断されるものであることは明らかであるから、上記基準が曖昧であ 例外規定を設けた上記趣旨からすると、上記例 外に該当するか否かは、地震波の伝播特性に影響を与える地下構造であるかという観点から判断されるものであることは明らかであるから、上記基準が曖昧であるとは認められず、上記例外規定を設けたことをもって、新規制基準が不合理であるとは認められない。 また、上記説示したところに照らせば、三次元物理探査をしなければ上 記目的に照らした三次元的な地下構造の把握ができないものとは認められないから、地下構造の評価に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査につき、二次元物理探査と三次元物理探査を並列的に規定している点に何ら不合理な点はない。 エ以上検討したところによると、原告らの上記各主張を踏まえても、各種 の不確かさを考慮しながら複数の手法を併用して地震動を評価した上で、 その結果を総合し、最も厳しい評価結果を基準地震動として採用することとしている新規制基準が定める基準地震動の策定手法に不合理な点はないものと認められる。 4 争点4(基準地震動に関する本件適合性審査の合理性の有無)について本件発電所敷地の三次元的な地下構造の検討懈怠の有無 ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 本件発電所敷地における主たる調査手法の概要a 弾性波探査(反射法探査) 弾性波探査とは、地下を伝わる弾性波が地層の境界面で屈折や反射などの現象を生じることを利用して地下構造を調査するための手法をいうところ、被告は、本件発電所敷地において、反射法地震探査及びオフセットVSP探査を実施し、反射法解析、VSP解析及びトモグラフィ解析を行った(オフセットVSP)。 ⒜ 反射法地震探査(陸域で実施するもの)は、地表で発振して、地 、反射法地震探査及びオフセットVSP探査を実施し、反射法解析、VSP解析及びトモグラフィ解析を行った(オフセットVSP)。 ⒜ 反射法地震探査(陸域で実施するもの)は、地表で発振して、地下の地盤物性の異なる境界面(反射面)から跳ね返ってきた反射波を地表に設置した受振器で観測、解析することにより、地表測線下の地下構造(速度構造)を調査する探査手法である。 ⒝ オフセットVSP探査は、地表で発振して、反射面から跳ね返っ てくる反射波をボーリング孔内の受振器で観測、解析することにより、ボーリング孔周辺の地下構造(速度構造)を調査する探査手法である。 ⒞ 反射法解析及びVSP解析の結果は、いずれも反射面が縞状に表現され、上記縞状が不連続であったり、ずれが生じたりしている場 合には断層の存在が推定され、歪みや傾斜が見られる場合には褶曲 構造の存在などが推定される。 なお、反射法地震探査とオフセットVSP探査を比較すると、後者の方が、受振器を反射面の近傍に設置でき、反射波の経路が短くなることから、一般に、ノイズが小さく分解能の高い記録を得ることができるとされている。 ⒟ トモグラフィ解析は、弾性波が地表の発振点から地中を伝播して地表及びボーリング孔内の受振器へ最初に到達するまでの時間(初動走時間)を基に地盤の速度構造を解明する解析手法である。 ⒠ オフセットVSPの解析結果を総合することにより、敷地の地下構造を精度良く把握することができる。 (乙334[40、41頁]、338[2,18~20頁]、弁論の全趣旨)b 物理検層物理検層は、ボーリング孔内に各種測定器(検層器)を降下させ、検層器から得られる物理量(速度、密度、温度等)を用いて、地層中の 地質情報を連続的に計測する手 弁論の全趣旨)b 物理検層物理検層は、ボーリング孔内に各種測定器(検層器)を降下させ、検層器から得られる物理量(速度、密度、温度等)を用いて、地層中の 地質情報を連続的に計測する手法であり、PS検層や密度検層がある。 ⒜ PS検層ボーリング孔を利用して地盤内を伝播するP波及びS波の速度(地盤及び岩盤中を伝わる弾性波のうち、縦波をP波、横波(せん断波)をS波といい、P波の伝播する速度をP波速度、S波の伝播 する速度をS波速度という。)を測定する手法をPS検層という。 ⅰ ダウンホール法ダウンホール法は、比較的低周波数帯の波(震源)を用い、地表で発振してボーリング孔内の受振器で受振することにより比較的長い区間の平均的な速度を測定する手法である。 サスペンション法と比較すると、実際に観測される地震波に近 い周波数帯における速度値を得ることができる。 ⅱ サスペンション法サスペンション法は、比較的高周波数帯の波(震源)を用い、測定器をボーリング孔内に挿入して発受振を行うことにより孔壁近傍の局所区間の速度を測定する手法である。 サスペンション法は、孔壁近傍の局所的な速度値を得る手法であるため、ダウンホール法よりも高い速度値を示す部分も多いが、ボーリング削孔に伴う応力解放によって発生する潜在割れ目や孔壁の局所的な崩壊・拡大などの影響を受けて速度値が低下する部分もあり、速度値にばらつきが生じることがある。 (乙348[3頁])⒝ 密度検層密度検層は、測定器をボーリング孔内に挿入して孔内の地層密度の変化を連続的に測定する手法である。 密度検層もサスペンション法と同様に、測定時に孔壁が局所的に 崩壊・拡大した影響などを受けることがある。 (乙348[5頁]、ヨ35 して孔内の地層密度の変化を連続的に測定する手法である。 密度検層もサスペンション法と同様に、測定時に孔壁が局所的に 崩壊・拡大した影響などを受けることがある。 (乙348[5頁]、ヨ35[38頁]、弁論の全趣旨)被告による本件発電所敷地の地下構造評価a 本件原子炉施設建設時の調査による評価⒜ 被告は、本件原子炉施設の建設に当たって、本件発電所の1号機 及び2号機の建設の際に行った調査に加えて、以下の各調査等を行った。 ⅰ 地表地質調査 被告は、地表地質調査を実施し、既往文献調査、地形調査や後記各調査、検討結果と併せて地質図を作成した。 ⅱ 地表弾性波探査 被告は、本件原子炉設置位置付近で34測線(既往調査含む。)、総延長約1万4600mにわたる地表弾性波探査を実施し、5m間隔の測点で観測したP波速度から地盤の伝播速度分布を把握するなどして、本件原子炉設置位置付近の地質・地質構造を検討した。 ⅲ ボーリング調査被告は、本件原子炉の炉心付近において、基本的に約50m間隔で、最深深度500m、孔数約150孔、総掘進長約7900mのボーリング調査を行い、採取したボーリングコアの性状を詳細に観察した地質柱状図を作成するとともに、他の孔や試掘抗、 地表の地質情報を併せて地質平面図・断面図を作成するなどして、敷地の地質・地質構造を把握した。 ⅳ 試掘抗調査被告は、ボーリング調査等によって得られた敷地の地質・地質構造を直接観察するため、本件原子炉設置位置の直上部で十字に 交わる南北方向約110m、東西方向約150mを中心とした合計約300mの試掘抗を掘削し、地盤を構成する岩石及びその分布、断層の有無、片理面(結晶が一定方向に配列して生じる面状の構造を片理といい 交わる南北方向約110m、東西方向約150mを中心とした合計約300mの試掘抗を掘削し、地盤を構成する岩石及びその分布、断層の有無、片理面(結晶が一定方向に配列して生じる面状の構造を片理といい、その面を片理面という。)の走向・傾斜等を直接確認した。 ⅴ 掘削面観察被告は、本件原子炉の基礎岩盤の掘削面において、基礎地盤の構成岩種及びその分布、断層の有無、片理面の走向・傾斜等を直接確認した。 ⅵ 地盤物性の測定 被告は、上記試掘抗やボーリング孔を利用して、地盤のP波速 度、S波速度といった地盤物性を測定した。 ⒝ 被告は、これらの調査から、本件発電所敷地の地盤は、三波川変成岩類のうち主に塩基性片岩から成り、片理の発達があるものの、一般に剥離性が弱く塊状かつ堅硬である、敷地及び敷地近傍では片理面の傾斜が緩やかである、基礎岩盤には顕著な破砕部などは認め られないなどと判断した。また、本件原子炉の炉心付近の地盤におけるS波速度は2.6km/sであったため、地震基盤(S波速度3km/s以上やP波速度5km/s以上が目安とされ、それより深部では地盤構造が地震動に大きく影響しないとされる。)に相当する非常に堅硬な岩盤であると判断した。 (乙334[25、26頁]、ヨ11[6-3-73~6-3-85、6-3-93、6-3-94、6-3-141、6-3-282、6-3-284~6-3-286、6-3-299、6-3-301、6-3-324~6-3-381頁]、ヨ35[57頁])b 深部ボーリング調査等による評価 ⒜ 深部ボーリング調査ⅰ 被告は、平成22年、地震動評価のための地下構造モデルの精度向上を図り、深部地盤に起因する地震動の増幅の有無を改めて検証する目的で、深部ボーリン 等による評価 ⒜ 深部ボーリング調査ⅰ 被告は、平成22年、地震動評価のための地下構造モデルの精度向上を図り、深部地盤に起因する地震動の増幅の有無を改めて検証する目的で、深部ボーリング調査を実施することとしたところ、深度2000mに及ぶボーリング掘削を行うには、高さ約5 0mに及ぶ設備類等を用いるため小さな工場程度のスペースが必要になるが、本件原子炉付近では上記のようなスペースを確保することは困難であった。そこで、被告は、前記aの調査結果により、本件発電所敷地の地盤が三波川変成岩類のうち主に塩基性片岩から成り、地震動の顕著な増幅が発生するとは考え難い堅硬な ものであると把握していたことも踏まえ、本件原子炉にできる限 り近く、かつ、必要なスペースが確保できる本件原子炉の炉心から約1km離れた本件発電所敷地の南西部(荷揚岸壁付近)に掘削位置を選定し、深度2000m、500m、160m及び5mの4孔のボーリング孔を掘削した。 ボーリング調査は、一般的に、地下深部になるほどコアの採取 が難しく、コア形状も劣化しやすいとされるが、深度2000mの深部ボーリング調査では、1800m以深の最深部においても連続したコアが採取でき、コアの採取率は99.4%であり、コアの性状も良好であった。被告は、外部有識者として地質学の専門家である戊8岡山大学名誉教授(当時は准教授。以下「戊8教 授」という。)の関与の下、上記コアを観察し、地質柱状図を作成するなどして地質構造について検討を行った。 ⅱ 被告は、深部ボーリング調査の結果、本件発電所敷地地下は、深度約50~2000mまで堅硬かつ緻密な結晶片岩(片理のある広域変成岩)が連続しており、敷地の地盤を構成する塩基性片 岩の下位に三波川変成岩類のうち主 ング調査の結果、本件発電所敷地地下は、深度約50~2000mまで堅硬かつ緻密な結晶片岩(片理のある広域変成岩)が連続しており、敷地の地盤を構成する塩基性片 岩の下位に三波川変成岩類のうち主に泥質片岩が分布し、塩基性片岩、珪質片岩、砂質片岩等の薄層が存在することを確認した。 被告は、上記コアの地質と敷地周辺の地質につき、地層の重なり方に着目した地表踏査や岩石サンプルの分析・比較も併せて行った結果、敷地深部の泥質片岩主体層が敷地の東方~南東方に位 置する大洲地域及び八幡浜地域の泥質片岩主体層と対比でき、敷地の西方に位置する三崎地域の泥質片岩主体層が敷地地表付近の塩基性片岩主体層の上位にあると評価し、敷地周辺の地質・地質構造は、佐田岬半島に沿う方向にほぼ水平で極めて緩く西へ傾斜するものと判断した。また、敷地近傍に広く分布する塩基性片岩 には、その片理面と調和的に挟まる連続性の良い珪質片岩の薄層 が見られることから、それらを露頭で判別、追跡した結果、敷地近傍の地質構造が佐田岬半島に沿う方向にほぼ水平であるとともに、佐田岬半島に直交する方向には背斜構造(凸状)を示し、佐田岬半島の北部に位置する本件発電所地点では緩く北へ傾斜すると判断した。さらに、被告は、深部ボーリング調査の結果と本件 原子炉の炉心付近のボーリング調査(前記a)の結果と比較したところ、深部ボーリング調査地点では深度約130m以深が、本件原子炉の炉心付近では深度約350m以深が泥質片岩主体となっていたことから、地表部の塩基性片岩を主体とする地層とその下位の泥質片岩を主体とする地層の境界面は緩く北へ傾斜してい ると判断した。 (乙21[66~78頁]、322[3~34頁]、323、334[29~38頁]、348[5頁]、ヨ11[6- の下位の泥質片岩を主体とする地層の境界面は緩く北へ傾斜してい ると判断した。 (乙21[66~78頁]、322[3~34頁]、323、334[29~38頁]、348[5頁]、ヨ11[6-3-74、6-3-75頁]、ヨ35[24~36頁]、証人丁2)⒝ PS検層、密度検層及びオフセットVSP 被告は、深部ボーリング孔を利用して、PS検層及び密度検層を行い、深部ボーリング調査の結果を確認した後、物理探査における世界的な権威である戊9京都大学名誉教授の助言を受けながら、オフセットVSPを実施した。 ⅰ PS検層の結果 (ⅰ) ダウンホール法被告は、深度方向に約10mごとに受振器を移動させながら、PS検層(ダウンホール法)を実施した。その結果、S波速度は、地表部(深度50~130m。塩基性片岩主体)で2.4km/s、その下位(深度130~300m。泥質片岩主体) で2.2km/s、それ以深(泥質片岩主体)で2.6~3. 3km/sを示し、基本的に地下深部に至るに連れて漸増していたところ、P波速度も、地表部で5.0km/s、その下位で4.6km/s、それ以深で4.7~5.5km/sと同様の傾向を示したことから、地震動増幅の要因となるインピーダンス比は小さいものと判断した。 (ⅱ) サスペンション法被告は、0.1m間隔でサスペンション法を実施した。被告は、サスペンション法の結果につき、ダウンホール法による速度値とほぼ同等であり、地下浅部から地下深部まで非常に速い速度(S波速度2.2~3.3kⅿ/s)を示し、深度方向に 漸増するものの、地震動増幅の要因となるインピーダンス比は小さいものと評価した。 ⅱ 密度検層の結果被告は、0.1m間隔で密度検層を実施した。密度検層 3.3kⅿ/s)を示し、深度方向に 漸増するものの、地震動増幅の要因となるインピーダンス比は小さいものと評価した。 ⅱ 密度検層の結果被告は、0.1m間隔で密度検層を実施した。密度検層の結果、地盤密度は、深度50~130mで平均2.78g/c㎥、深度 130~300mで平均2.67g/c㎥、深度300~620mで平均2.73g/c㎥、深度620~1280mで平均2. 73g/c㎥、深度1280~2000mで平均2.72g/c㎥と、概ね2.7~3.0g/c㎥を示したことから、被告は、岩種に応じてやや変化するものの、深度方向への大局的な増減傾 向は認められないと判断した。 もっとも、深度1800~1900m付近において、最小1. 6g/c㎥程度まで低下している部分があった。 ⅲ オフセットVSPの結果オフセットVSPの実施に当たって、本件発電所敷地には、非 常に狭くて急峻で平坦地に乏しく、発振器及び受振器が配置でき る場所が限られるという環境的・技術的な制約があったところ、被告は、深部ボーリング孔を利用した物理検層と併せて最も効果的な調査を行うという観点から、深部ボーリング孔が位置する敷地の西端から既往調査がされている本件原子炉付近を通過し、敷地の東端に至るように1本の測線を設定した。 そして、被告は、反射法地震探査により得られた実際のCMP(発振器と受振器の中点の位置)の分布や、本件原子炉の位置等を踏まえて、深部ボーリング孔を起点とし、本件発電所敷地東端を終点とする直線状の解析測線を設定した上で、上記解析測線に沿った解析用のCMPを設定し、上記解析測線に直交する方向の 実際のCMPの記録を上記解析用のCMPに集めて解析を行った。 また、被告は、オフセットVSP探査により得られ た上で、上記解析測線に沿った解析用のCMPを設定し、上記解析測線に直交する方向の 実際のCMPの記録を上記解析用のCMPに集めて解析を行った。 また、被告は、オフセットVSP探査により得られた記録を、発振点と受振点との位置関係及び地盤の速度構造から求められる反射点に投影して二次元的な疑似反射断面を作成するVSP-CMPマッピング法を用いて解析を行った。 被告は、その結果によると、地下深部までほぼ水平な反射面が連続しており、地震動の顕著な増幅の要因となる褶曲構造及び低速度域は認められないと判断した。また、被告は、上記各探査データに対してトモグラフィ解析も実施し、解析範囲の地盤は、埋立土などの極浅部を除くとP波速度が5km/s程度以上と非常 に大きく、かつ、均質であると判断した。被告は、反射法地震探査及びオフセットVSP探査による水平な反射面がトモグラフィ解析範囲外も含めた探査断面全体にわたって連続して確認されるとして、敷地地盤の速度構造は、全体に乱れがなく均質であり、地震動の顕著な増幅の要因となり得るような低速度層は認められ ないと判断した。 もっとも、反射法地震探査結果のCDPNo.65付近には、反射面の不連続部があった。 (乙21[34~36頁]、322[51~95頁]、323[6頁]、334[39~41頁]、338[5、16頁]、348、ヨ11[6-3-74、6-3-75、6-3-83、6-3-300、 6-3-302、6-3-303、6-5-20、6-5-21頁]、ヨ35[26、37~45、54~57頁]、証人丁2)⒞ 被告は、このような各種調査結果を総合的に考慮して、本件発電所敷地の地下構造が地震動の顕著な増幅をもたらすものではなく、水平成層かつ均質であると評価した 37~45、54~57頁]、証人丁2)⒞ 被告は、このような各種調査結果を総合的に考慮して、本件発電所敷地の地下構造が地震動の顕著な増幅をもたらすものではなく、水平成層かつ均質であると評価した。 (乙ヨ11[6-5-21頁]、 ヨ35)c 二次元地下構造モデルを用いた解析的検討被告は、伊予灘における南北方向の複数の海上音波探査及び屈折法地震探査の結果(後記ア)から、本件発電所敷地が位置する佐田岬半島へつながる伊予灘の大局的な地質構造が佐田岬半島と平行する 東西方向にほぼ一様であると判断し、これらの結果と後記⑵アの伊予灘における三次元的な地下構造調査の結果並びに前記a及びbの敷地近傍における地表地質調査や敷地におけるボーリング調査及び深部ボーリング調査の結果を総合して、本件発電所敷地近傍の地下構造を把握した。そして、被告は、敷地近傍の地下構造が、大局的には佐田 岬半島と平行する東西方向にほぼ水平であり、これと直交する南北方向で地層の傾斜が最大となることを踏まえ、南北方向の二次元地下構造モデル(なお、地下構造モデルに反映された物性値は、ダウンホール法の結果に基づくものである。)を設定し、地下深部からの地震動の顕著な増幅がないこと、地震動の到来方向によって伝播特性が異なる 傾向がないことを解析的に確認した。(乙334[48頁]、ヨ35[5 1~53頁])d 地震観測記録による評価被告は、本件発電所敷地の地盤において、昭和50年から地震観測(強震及び微小地震)を実施しており、多数の地震観測記録を得ているところ、比較的振幅の大きな地震は、全て海洋プレート内地震であ り、内陸地殻内地震及びプレート間地震について振幅の大きな記録は得られておらず、また、敷地近傍(本件発電所から半径 測記録を得ているところ、比較的振幅の大きな地震は、全て海洋プレート内地震であ り、内陸地殻内地震及びプレート間地震について振幅の大きな記録は得られておらず、また、敷地近傍(本件発電所から半径5km)での地震活動は極めて低調で、発生地震もM2.0程度以下の小規模なものとなっていると評価した。 被告は、そのような中で、耐専式との比較が可能な内陸地殻内地震 を用いて、観測記録の応答スペクトルと耐専式により推定した応答スペクトルの比をとって、増幅特性の検討を行うこととし、比較的規模の大きい内陸地殻内地震(1995年兵庫県南部地震、1997年鹿児島県北西部地震、1997年山口県北部地震、2000年鳥取県西部地震及び2005年福岡県西方沖地震の5地震)により得られた地 震観測記録を基に上記検討をした結果、いずれの地震も短周期側では観測値が予測値よりも小さい傾向を示しており、顕著な増幅はないと評価した。この観測値が予測値よりも小さい理由としては、本件発電所敷地の地盤が耐専式の想定する地盤よりも硬いこと、いずれも遠地の地震であり観測記録の最大振幅が小さいことが考えられた。 また、被告は、微小地震計で観測した地震記録を用いて、対象とする内陸地殻内地震をM2.0程度にまで拡大し(震央を豊後水道とする10地震、愛媛県南西部とする2地震、伊予灘とする2地震及び周防灘とする1地震)、地震波の到来方向によって特異性が見られないか確認するため、地震の発生地域を敷地の北方、東方、南方及び西方に 分けて検討を行った結果、地震規模が小さく耐専式の適用範囲外であ るため観測値と予測値との整合が悪く断定的な評価はできないものの、到来方向によって増幅特性が異なる傾向は確認されないと評価した。 なお、2014年3月14日伊予灘 専式の適用範囲外であ るため観測値と予測値との整合が悪く断定的な評価はできないものの、到来方向によって増幅特性が異なる傾向は確認されないと評価した。 なお、2014年3月14日伊予灘地震は、本件発電所敷地の地下2000mで49ガル、地下5mで65ガルを計測したが、はぎとり解析(地震の観測記録を用い、上部地盤を取り除いた仮想の地表面に おける地震動を算出する方法)を実施したところ、地下2000mのはぎとり波は94ガル、地下5mのはぎとり波は69ガルとなっており、本件発電所敷地の地下構造は地震動の顕著な増幅特性がなく、むしろ、地震動が減衰する特性を有していることが確認された。 (乙21[23、24頁]、86[35頁]、334[46、47頁]、 ヨ11[6-5-21~6-5-23、6-5-62~6-5-66、6-5-140~6-5-148頁]、ヨ35[1~6頁])e 以上により、被告は、本件発電所敷地の地下構造は特異な地盤増幅を示すものではないと判断した。また、被告は、地下構造モデルから理論的に求まる伝達関数と敷地の地盤系地震計(C地点)における平 成13年から平成18年までの観測記録のうち、最大加速度が10ガル以上の11地震の記録を平均した伝達関数がほぼ整合していると判断した。(乙ヨ35)被告による敷地内断層の有無の評価本件発電所敷地及びその近傍には小規模な断層が観察されるが、これ らの断層の破砕部はほとんどが10cm未満で、大部分が固結して軟質部を含まず、片理の引きずりが見られるなど地下深所で形成された特徴を示している。被告は、本件原子炉施設付近の敷地内断層のうち、肉眼観察、物理試験、針貫入試験の結果、断層内物質が粘土状の軟質部を含まない岩石化していると考えられる断層につき、研磨片観察 成された特徴を示している。被告は、本件原子炉施設付近の敷地内断層のうち、肉眼観察、物理試験、針貫入試験の結果、断層内物質が粘土状の軟質部を含まない岩石化していると考えられる断層につき、研磨片観察及び薄片観 察を行ったところ、地下深部で活動して以降に地表付近での脆性破壊を 受けていないことから、これらの断層は、古い時代に地下深部で生成した断層が地表付近に位置して以降の新しい時代には活動しておらず、将来活動する可能性のある断層等には該当しないと判断した。また、上記以外の軟質部を含む断層についても、研磨片観察、薄片観察、深部ボーリング調査、Ⅹ線分析結果等によると、上記軟質部は、地下水の作用に より形成されたものであり、上記断層の活動時期は後期更新世よりもはるかに古く、将来活動する可能性のある断層等には該当しないと判断した。(乙ヨ11[6-3-77~6-3-82、6-3-94~6-3-99頁])イ判断 被告は、本件発電所敷地の地下構造は、顕著な増幅特性がなく、水平成層かつ均質であると評価し、規制委員会はこれを是認したことが認められるところ(前提事実14)、原告らは、以下のとおり、被告は、三次元的な地下構造の検討を懈怠しており、被告による本件発電所敷地の地下構造の把握は不十分かつ新規制基準に反するものであるにもかかわらず、これ を是認した規制委員会の判断は不合理である旨主張する。以下、原告らの主張を踏まえ、被告の上記評価並びにこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点がないか検討する。 単点微動測定の不実施について原告らは、第5の4(原告らの主張)アのとおり、規制委員会が、 地下構造を成層かつ均質と判断するために、最低限必要な調査として、単点微動測定の実施を挙げている 単点微動測定の不実施について原告らは、第5の4(原告らの主張)アのとおり、規制委員会が、 地下構造を成層かつ均質と判断するために、最低限必要な調査として、単点微動測定の実施を挙げているにもかかわらず、被告はこれを実施していない旨主張する。 しかしながら、前記3ウのとおり、規制委員会は、地震観測を実施していない大飯発電所に対し、最低限必要な調査として、単点微動測定 の実施を求めたにすぎず、全ての原子力発電所に対して、その実施を求 めたわけではないことが認められる。このことは、規制委員会が、本件適合性審査の過程で、単点微動測定を実施していない被告に対し、オフセットVSP探査、深部ボーリング調査、地震観測記録結果など敷地の地下構造を三次元的に把握するために実施した内容の詳細を示すよう求めるにとどまり、単点微動測定の実施を求めていないこと(乙83)か らも裏付けられている。 したがって、原告らの上記主張はその前提において誤っており、採用できない。 被告による本件発電所敷地の地下構造の評価についてa 被告実施の敷地内調査の方法及び結果評価について ⒜ 調査方法について原告らは、第5の4(原告らの主張)イaのとおり、①オフセットVSP、PS検層及び密度検層で利用した深部ボーリング孔は、本件原子炉の炉心から約1kmも離れている上、効果的な掘削箇所を予測してからその位置が決定されたものでもなく、不適切で ある、②オフセットVSPは、敷地の東西方向に関してしか行われていない上、測線もわずか1本にとどまり、複数の測線によることを求める新規制基準に反しており、三次元的な地下構造の把握は困難であるし、測線自体は折れ曲がっているにもかかわらず、解析結果は直線で表され、その処理が適切に行 か1本にとどまり、複数の測線によることを求める新規制基準に反しており、三次元的な地下構造の把握は困難であるし、測線自体は折れ曲がっているにもかかわらず、解析結果は直線で表され、その処理が適切に行われているかも不明である として、新規制基準である地質ガイドが求める「適切な調査」がされていない旨主張し、これに沿う石油探査等の物理探査を専門とする戊10京都大学工学部工学研究科名誉教授(以下「戊10教授」という。)作成に係る意見書(甲38。以下「戊10意見書」という。)を提出し、戊10教授もこれに沿う証言をする。 ⅰ 深部ボーリング孔の位置(上記①)について 確かに、本件原子炉施設の基準地震動策定のための地下構造の把握という観点からは、オフセットVSP、PS検層及び密度検層のいずれについても、本件原子炉付近で深部ボーリング調査を実施することが望ましいことは否定できない。しかしながら、深度2000mに及ぶ深部ボーリング調査を実施するには、小さな 工場程度のスペースを確保することが必要となるものと認められるところ、被告は、本件原子炉付近において上記のようなスペースを確保することは困難であったため、本件原子炉にできる限り近く、かつ、必要なスペースが確保できる本件原子炉から約1km離れた場所を深部ボーリング孔の掘削位置として選定したこと が認められる(前記アb⒜ⅰ)。このような物理的制約があったことに加え、深部ボーリング調査の実施時点では、既に、本件原子炉施設の建設に当たって実施した各種調査結果により、本件発電所敷地の地盤は、三波川変成岩類のうち主に塩基性片岩から成り、一般に剥離性が弱く塊状かつ堅硬であり、そのS波速度から、 地震基盤に相当する非常に堅硬な岩盤であることが確認されており、深部ボ 電所敷地の地盤は、三波川変成岩類のうち主に塩基性片岩から成り、一般に剥離性が弱く塊状かつ堅硬であり、そのS波速度から、 地震基盤に相当する非常に堅硬な岩盤であることが確認されており、深部ボーリング調査は、これを前提に、地震動評価のための地下構造モデルの精度向上を図り、深部地盤に起因する地震動の増幅の有無を改めて検証する目的で実施されたものであること(前記アa、b)も踏まえると、被告が選定した上記掘削位置 をもって、地質ガイドが求める「適切な調査」がされていないとは認められない。 ⅱ 測線(上記②)について(ⅰ) 測線が東西方向に1本である点についてオフセットVSPは東西方向に1本の測線を設定して実施さ れているところ、被告は、本件発電所敷地が非常に狭くて急峻 で平坦地に乏しく、発振器及び受振器が配置できる場所が限られるという環境的・技術的制約があることを踏まえ、深部ボーリング孔を利用した物理検層と併せて最も効果的な調査を行うべく、深部ボーリング孔が位置する敷地の西端から既往調査がされている本件原子炉付近を通過し、敷地の東端に至るように 1本の測線を設定したことが認められる(前記アb⒝ⅲ)。そして、オフセットVSPは、地震動の増幅をもたらすような地下構造の有無を改めて検証するための一資料であり(前記アb⒜)、同探査の実施時点では、既に、本件原子炉施設建設時の各種調査結果や深部ボーリング孔を利用した物理検層の結果等 により、敷地近傍の地質構造は、佐田岬半島に沿う方向(東西方向)にほぼ水平で、緩く北へ傾斜しているものの(前記アc)、本件発電所敷地の地盤が主に三波川変成岩類から成り、地震動の顕著な増幅が発生するとは考え難い堅硬な岩盤であることが確認されていたこと(前記アa、b)を で、緩く北へ傾斜しているものの(前記アc)、本件発電所敷地の地盤が主に三波川変成岩類から成り、地震動の顕著な増幅が発生するとは考え難い堅硬な岩盤であることが確認されていたこと(前記アa、b)を踏まえると、被 告が設定した東西方向に1本の測線によっても、地震動の増幅をもたらすような地下構造の有無を確認する上で必要かつ十分な情報を得ることは可能であると認められ(乙348、349)、また、新規制基準が、複数の測線によることを求めていると認めるに足りる証拠もないことからすると、測線が東西方向に1 本のみであることをもって、オフセットVSPが不適切であり、新規制基準に反しているとは認められない。 (ⅱ) 測線が折れ曲がっている点について上記の測線の設定経緯に照らせば、測線自体が折れ曲がっていることは不適切であるとはいえない。また、解析結果が直線 で表されている点については、被告は、反射法地震探査につき、 解析測線に沿った解析用のCMPを設定し、解析測線に直交する方向の実際のCMPの記録を上記解析用のCMPに集めて解析を行い、また、オフセットVSP探査につき、VSP-CMPマッピング法により解析しているところ(前記アb⒝ⅲ)、上記各解析処理が不適切であると認めるに足りる証拠もない。 ⅲ 以上によると、被告の敷地内調査の方法に不合理な点は認められない。 ⒝ 調査結果の評価についてⅰ 原告らは、第5の4(原告らの主張)イb⒜のとおり、オフセットVSPの解析結果につき、①1号機ないし3号機の右側 (北東側)の往復走時で0.5秒以浅における右肩上がりの急傾斜の反射面を見落としており、活断層が存在する可能性がある、②CDPNo.65付近の反射面の不連続について速度フィルタ等が原因である (北東側)の往復走時で0.5秒以浅における右肩上がりの急傾斜の反射面を見落としており、活断層が存在する可能性がある、②CDPNo.65付近の反射面の不連続について速度フィルタ等が原因であると誤解釈をしている、③偽りの地層間繰り返し波等を真の反射波と誤解釈しているといった誤りがある旨主張し、 これに沿う戊10意見書を提出し、また、戊10教授もこれに沿う証言をする。 (ⅰ) 右肩上がりの急傾斜の反射面(上記①)について戊10教授が断層の存在が疑われるとして示す右肩上がりの解釈線(甲38・図8)は、反射法地震探査の解析結果であり、 測線端部の重合数を低下させた結果、重合数が低下するに従って、左側に位置を移しながら、より顕著に現れているところ、断層面が存在した場合、反射法地震探査面上の反射面の位置が重合数の低下によって移動することはあり得ないことからすると、戊10教授が示した上記解釈線は、断層面からの反射波や 回折波ではなく、ノイズ(表面波やS波等)であると認められ る(乙322[72頁]、348、349)。 (ⅱ) CDPNo.65付近の反射面の不連続(上記②)についてCDPNo.65付近に認められる反射面の不連続部分(前記アb⒝ⅲ)については、反射法地震探査の解析結果である ところ、解析測線が受振測線に近づくに従い目立たなくなっていること、また、反射法地震探査結果の解析の際にノイズ(表面波やS波等)の影響を除去するために適用されている速度フィルタを外すと同不連続部分が目立たなくなることからすると、解析測線と受振測線の位置が異なる影響及び速度フィルタの影 響により生じたものと認められ、断層の存在をうかがわせるものとは認められない(乙322[86~89頁]、348、34 ことからすると、解析測線と受振測線の位置が異なる影響及び速度フィルタの影 響により生じたものと認められ、断層の存在をうかがわせるものとは認められない(乙322[86~89頁]、348、349)。 なお、原告らは、速度フィルタの適用により背斜構造を見落としてしまう可能性がある旨主張し、戊10教授も速度フィル タは通常の反射法の処理では使われない旨証言するが、地震本部が示す反射法データ処理の流れにおいても、速度フィルタの一種である「時間-空間フィルタ」が明記されており、速度フィルタの適用は一般的なものであると認められ(乙348)、速度フィルタを適用したことをもって、被告の調査方法が不適切 であるとは認められない。 (ⅲ) 偽りの地層間繰り返し波等を真の反射波と誤解釈しているとの点(上記③)について原告らが主張する「偽りの地層間の繰り返し波」とは、重複反射又は多重反射であって、本来は境界面で反射した最初の波 を観測すべきところを境界面や地表面で複数回反射した波を地 表で受振したものを指すところ、そのような偽りの反射波には、緩い傾斜角が多重反射では強調される性質が存在することが認められる(乙92)。このような偽りの反射波の性質に鑑みれば、仮に、原告らが指摘する反射波に偽りの地層間の繰り返し波が含まれていたとしても、オフセットVSPの解析結果がほぼ水 平な反射面を描き出している以上、真の反射波は更に水平であることになるから、被告の地下構造の評価に影響を与えるものではない(乙348、349)。 ( ⅳ) 以上検討したところによると、被告によるオフセットVSPの解析結果の評価に不合理な点があるとは認められない。 ⅱ 斜め平行移動による地下構造モデルについて原告らは、第5の4( ⅳ) 以上検討したところによると、被告によるオフセットVSPの解析結果の評価に不合理な点があるとは認められない。 ⅱ 斜め平行移動による地下構造モデルについて原告らは、第5の4(原告らの主張)イb⒝のとおり、被告が作成した斜め平行移動による地下構造モデルの合理性を裏付けるためには、オフセットVSPの解析結果の反射面はむしろ水平であってはならないはずであり、被告の評価は誤っている旨主 張し、これに沿う戊10意見書を提出するとともに、戊10教授もこれに沿う証言をする。 しかしながら、被告が作成した地下構造モデルは、地層境界面(泥質片岩主体層が出現する面)の深度が、深部ボーリング調査地点では約130m、本件原子炉の炉心付近では約350mとな っており、地質構造が緩く北へ傾斜していると推定されることを踏まえたものである(前記アb⒜、c)のに対し、オフセットVSPは、速度構造を確認するものであって(前記アa⒜、⒝)、両者は異なるものを評価しているから、両者が一致しないことは何ら矛盾するものではなく、被告の評価が誤りであることにはな らない。 なお、原告らは、被告作成の地下構造モデルは、本件原子炉の炉心から約1kmも離れた場所の大雑把なデータを斜めにスライドさせるものであって、不合理である旨主張するが、上記地層境界は明瞭で区別しやすいことに加え、上記地層境界面の対比は地質学の専門家である戊8教授の関与の下で行われた科学的根拠に 基づくものであること(前記アb⒜、乙323)に照らせば、上記地下構造モデルが不合理であるとは認められない。 ⅲ PS検層及び密度検層の評価の誤りについて原告らは、第5の4(原告らの主張)イb⒞のとおり、①被告が実施したダウンホール法とサスペンシ 上記地下構造モデルが不合理であるとは認められない。 ⅲ PS検層及び密度検層の評価の誤りについて原告らは、第5の4(原告らの主張)イb⒞のとおり、①被告が実施したダウンホール法とサスペンション法によるPS検 層の調査結果にはかなりのかい離があるにもかかわらず、被告は、速度値はほぼ同等という誤った評価をし、反射波の伝播速度の平均値を取るダウンホール法のデータのみを地下構造モデルに反映させている、②ダウンホール法は深度600~1280m、1280~2000m等と信じ難い間隔で行われ、精査とはいえない し、深度130~300mにおいて、特にS波速度が低下しているにもかかわらず、これが地下構造モデルに反映されていない、③深度1800~1900m付近において密度検層による密度が低下し、P波速度の低下も見られ、破砕帯の可能性があるにもかかわらず、これが考慮されていない旨主張し、これに沿う戊10 意見書を提出するとともに、戊10教授もこれに沿う証言をする。 (ⅰ) ダウンホール法とサスペンション法の結果(上記①)についてダウンホール法とサスペンション法は、観測する波の周波数や伝播経路が異なっており(前記アb⒜)、これによって観測 される速度値にも違いが生ずることからすると、両者を比較す る際には、各深度に応じた速度結果を直接比較するのではなく、両者が同様の傾向を示すか否かという観点から確認を行うことが適切である。このような観点から、両者の速度値(特にS波速度)を確認すると、サスペンション法の数値がダウンホール法の数値を下回る部分もあるものの、地下浅部から地下深部ま で非常に速い速度(S波速度2.2~3.3km/s)を示し、深度方向に漸増するが、地震動増幅の要因となるインピーダン 数値がダウンホール法の数値を下回る部分もあるものの、地下浅部から地下深部ま で非常に速い速度(S波速度2.2~3.3km/s)を示し、深度方向に漸増するが、地震動増幅の要因となるインピーダンス比が小さいなど、大局的な傾向はほぼ整合的であるから(前記アb⒝ⅰ)、速度値はほぼ同等であるとした被告の評価は合理的であると認められる(乙348、349、ヨ35[43頁])。 また、サスペンション法は、孔壁近傍の局所的な速度値を得る手法であるため、ボーリング削孔に伴う応力解放によって発生する潜在割れ目や孔壁の局所的な崩壊・拡大などの影響を受けて速度値が低下する部分もあり、速度値にばらつきが生じることがあるのに対し、ダウンホール法は、比較的低周波数帯の波 を用いて、比較的長い区間の平均的な速度を測定する方法であるため、サスペンション法と比較すると、実際に観測される地震波に近い周波数帯における速度値を得ることができること(前記アb⒜)に照らせば、被告が地下構造モデルの物性値につき、ダウンホール法の結果を採用したことが不合理である とは認められない。 ( ⅱ) ダウンホール法の結果(上記②)について地震動評価に用いる地下構造モデルの物性値としては、ダウンホール法で得られた結果を適切な速度層に区分した上で反映することが一般的であるところ(乙348)、被告は、約10m ごとに受振器を移動させながらダウンホール法を実施した上で、 深部ボーリング調査により判明した地質構造を踏まえて、速度層区間を設定したものと認められ(前記アb⒝ⅰ(ⅰ))、上記速度層区間が不適切であるとは認められない。 また、確かに、PS検層(ダウンホール法)の結果によれば、深度130~300mにおけるS波速度が低下していることが られ(前記アb⒝ⅰ(ⅰ))、上記速度層区間が不適切であるとは認められない。 また、確かに、PS検層(ダウンホール法)の結果によれば、深度130~300mにおけるS波速度が低下していることが 認められるが、2.2km/sに低下したにとどまり、本件発電所敷地の地表部(深度50~130m)から深度2000mまでの速度分布全体を大局的にみると、S波速度が2km/s以上で推移している上(前記アb⒝ⅰ(ⅰ))、2014年3月14日伊予灘地震の観測記録からも、本件発電所敷地の地下構造 は地震動の顕著な増幅特性はなく、むしろ地震動が減衰する特性を有していることが確認されているのであるから(前記アd)、S波速度の上記低下をもって、被告の評価が誤りであるとは認められない。 ⅳ 深度1800~1900m付近の密度及びP波速度の低下(上 記③)についてサスペンション法と密度検層を実施するに当たっては、いずれも、ボーリング孔壁近傍の0.1m間隔という局所的なデータを連続的に取得するという測定手法の特性上、ボーリング削孔に伴う応力解放によって発生する潜在割れ目や孔壁の局所的な崩壊・ 拡大などの影響を受けて速度値や密度値が低下する部分もあるのであるから(前記アb)、速度及び密度の低下が直ちに破砕帯が存在する可能性を示すものとは認められない。そして、本件発電所敷地の深部ボーリング調査によるコア採取率は99.4%と極めて高く、コアの性状も良好であったところ、地質学の専門家で ある戊8教授の関与の下、かかるコアの性状を観察した結果、顕 著な破砕帯の存在はなく、深部まで堅硬な地盤となっており、地震動評価に影響を及ぼすようなものはないことが確認されていることからすると(前記アb⒜ⅰ、乙323、348、349)、 、顕 著な破砕帯の存在はなく、深部まで堅硬な地盤となっており、地震動評価に影響を及ぼすようなものはないことが確認されていることからすると(前記アb⒜ⅰ、乙323、348、349)、原告らが指摘する低下部分は、サスペンション法と密度検層の上記特性によるものと考えるのが合理的である。また、そもそも、 本件発電所敷地は、サスペンション法及び密度検層により0.1mという短い間隔で分析を行った結果、深度2000mにわたって、大局的にS波速度2.2km/s以上、密度2.7~3.0g/c㎥で推移していると評価できる地層であるから(前記アb⒝ⅰ(ⅱ)、ⅱ)、0.1mという短い間隔で局所的にP波速度や密 度が小さい箇所(前記アb⒝ⅱ)があったからといって、顕著な地震動の増幅は想定されないといえる。 ⅴ 以上によると、原告らによる上記各主張を踏まえても、被告による各種敷地内調査の結果に関する評価に不合理な点は認められない。 b 地震観測記録に基づく検討について⒜ 観測記録に基づく増幅特性の検討について原告らは、第5の4(原告らの主張)イaのとおり、①本件発電所敷地周辺では、平成9年10月から平成24年12月までに、3万3915回の内陸地殻内地震が発生しているにもかかわらず、 被告は、そのうちわずか20地震のみに基づき、増幅特性を検討し、②平成20年から令和3年の間に微小地震よりも大きな地震が多数観測されているにもかかわらず、被告は、これらの地震につき、海洋プレート内地震であるとして検討の対象としておらず、被告の増幅特性の検討は不適切である旨主張する。 上記①の点につき、本件発電所敷地周辺では、平成9年10月1 日から平成24年12月31日までに、深度20km以浅で内陸地殻 、被告の増幅特性の検討は不適切である旨主張する。 上記①の点につき、本件発電所敷地周辺では、平成9年10月1 日から平成24年12月31日までに、深度20km以浅で内陸地殻内地震が3万3915回発生しているものの、同観測記録は、気象庁が観測した当該期間中の全ての地震を示すものにすぎず、本件発電所敷地で実際に揺れを観測した地震を示すものではない(乙21[23頁]、弁論の全趣旨)。そして、上記地震のうち、本件発電 所から半径5km内で発生した地震はいずれもM3未満であり、大部分がM2.0程度以下の小規模な地震のみであったところ(乙21)、被告は、そのような中でも、本件発電所敷地での地震観測記録を用いて敷地の増幅特性を検討するべく、遠方ではあるが比較的規模の大きい内陸地殻内地震に加え、地震規模が小さく耐専式の適用 範囲外ではあるが敷地近傍で発生した上記小規模な地震も活用して増幅特性を検討しているのであって(前記アd)、かかる検討方法が不合理であるとは認められない。 また、上記②の点については、内陸地殻内地震は、一般的に、深度20km程度までの地下で発生するものと考えられているところ (乙365、ヨ15。なお、被告は、後記⑶アaのとおり、本件発電所敷地周辺における内陸地殻内地震の地震発生層(断層)の下端深さを15kmと評価している。)、原告らが指摘する本件発電所敷地付近で平成20年から令和3年までの間に観測されたとする微小地震よりも大きな地震(甲198)は、いずれも深度40~70 kmで発生しており、海洋プレート内地震であると認められる(乙366)。そうすると、被告が、耐専式との比較が可能な内陸地殻内地震を用いて、観測記録の応答スペクトルと耐専式により推定した応答スペクトルの比をとって おり、海洋プレート内地震であると認められる(乙366)。そうすると、被告が、耐専式との比較が可能な内陸地殻内地震を用いて、観測記録の応答スペクトルと耐専式により推定した応答スペクトルの比をとって、本件発電所敷地における増幅特性の検討を行うに当たって(前記アd)、海洋プレート内地震である上 記微小地震よりも大きな地震を参照していないことが不合理である とは認められない。 ⒝ 伝達関数の評価について原告らは、第5の4(原告らの主張)イbのとおり、被告は、観測記録から求まる伝達関数と、地下構造モデルによる理論的伝達関数とが「ほぼ整合していることを確認した」としているが、被告 が作成した地下構造モデルによる理論的伝達関数は、観測記録から求まる伝達関数と4Hz、8Hz、12Hz付近で大きくかい離しており、整合的という評価は誤りである旨主張し、これに沿う戊10意見書を提出する。 確かに、証拠(乙ヨ35)によると、ピーク部分である上記各H z付近において理論的伝達関数の方が観測記録から求まる伝達関数よりも振幅が大きいことが認められるものの、数値の増減の傾向は全体として一致しており、数値も上記の部分以外は概ね一致していると認められることからすると、概ね整合するとの被告の評価が不合理であるとは認められない。 cMAPにおける地質構造等との比較について原告らは、第5の4(原告らの主張)イのとおり、MAPを参照すると、本件発電所敷地内の表層地盤の増幅率は、概ね0.5~2. 0、敷地極近傍の範囲での地震基盤の深さは概ね300~1200mとなっており、均質でも水平でもないし、被告が本件適合性審査の際 に示した「敷地近傍の地質構造(断面図)」によっても、本件発電所敷地近傍は、水平成層でも均 震基盤の深さは概ね300~1200mとなっており、均質でも水平でもないし、被告が本件適合性審査の際 に示した「敷地近傍の地質構造(断面図)」によっても、本件発電所敷地近傍は、水平成層でも均質でもない旨主張する。 しかしながら、MAPで提供されている情報は、250mメッシュごとの代表的な値で、250mメッシュよりも細かい微地形の変化は捉えられず、地震基盤の深さについては、信頼性・精度は必ずしも全 国一律ではなく、今後一層の改良を図っていく必要があるとされてお り(乙74[39頁]、93)、飽くまで概観的な地震動予測地図を作成するためのものにすぎないことが認められる。他方、被告による評価は、既に説示したとおり、本件発電所敷地及び敷地周辺における各種調査結果に基づくものであることからすると、MAPの記載が、被告による評価を否定するに足りるものとは認められない。 また、確かに、被告が本件適合性審査の際に示した「敷地近傍の地質構造(断面図)」(乙ヨ35[33頁])の南北断面では、本件発電所敷地の地下構造はやや傾斜していることが認められる。しかし、前記 ウにおいて認定・説示したとおり、地下構造が水平成層かつ均質である場合、地下構造モデルを一次元又は二次元とすることで足りる とする趣旨は、上記の場合、地震動に影響を与える伝播特性への影響がほとんどないためであることからすると、水平成層かつ均質であるか否かは、伝播特性に影響を与える構造であるか否かの観点から検討するものであって、地質構造自体とは異なる観点から評価するものである。そして、前記アのとおり、各種調査結果を基に、本件発電所 敷地の地下構造は、地震動の顕著な増幅をもたらすものではないことが確認されていることからすると、本件発電所敷地の地下構造 ものである。そして、前記アのとおり、各種調査結果を基に、本件発電所 敷地の地下構造は、地震動の顕著な増幅をもたらすものではないことが確認されていることからすると、本件発電所敷地の地下構造につき、上記南北傾斜が認められるものの、地震動評価上は、水平成層かつ均質であるとした被告の評価が不合理であるとは認められない。 以上のとおり、原告らの上記各主張をもって、被告が、三次元物理探 査を実施することなくした本件発電所敷地の地下構造の評価が不合理であるとは認められない。そして、被告は、本件原子炉施設建設時に、各種調査結果から、本件発電所敷地の地盤が非常に堅硬な岩盤であることを把握し(前記アa)、地下構造モデルの精度向上を図る目的で、専門家の関与の下で実施した深部ボーリング調査及び深部ボーリング孔を利 用したオフセットVSP及び物理検層の各結果を総合して地下構造を把 握し、本件発電所の地下構造が地震動の顕著な増幅をもたらすものではなく、水平成層かつ均質であると改めて評価し(前記アb)、更に、解析的な検討結果(前記アc)、地震観測記録の検討結果(前記アd)も踏まえて、本件発電所敷地の地下構造は、顕著な増幅特性がなく、水平成層かつ均質であると評価したことが認められるところ、このような 被告の評価に不合理な点は見当たらず、これを是認した規制委員会の判断及びその過程にも、不合理な点はないものと認められる。 内陸地殻内地震の地震動評価(地質境界としての中央構造線が活断層であるか)ア認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 地質境界としての中央構造線地質境界としての中央構造線とは、日本列島の骨格が形成された約7000万年前以前に形成されたと 事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 地質境界としての中央構造線地質境界としての中央構造線とは、日本列島の骨格が形成された約7000万年前以前に形成されたと考えられる西南日本の中央部をほぼ縦 断する地質構造上の境界線であり、四国地方においては、四国山地北麓をほぼ東西に走り、愛媛県西条市丹原町鞍瀬付近で南へ曲がり(桜樹屈曲)、湾曲しながら同県伊予市双海町上灘付近から海中に没しており、本件発電所敷地周辺地域は、北側の領家帯・白亜紀和泉層群(内帯)と南側の三波川帯(外帯)に区分されている。地質境界としての中央構造線 は、上記桜樹屈曲から上灘付近で海中に没するまでの間については新生代第三紀の末期(約1000万年前)以降は全く活動していないことが確認されている。(前提事実2⑵、乙116、弁論の全趣旨)断層に関する基本的知見等a 断層運動とその種類 プレート運動による伸張の力や圧縮の力は、地下の岩盤に歪みを蓄 積させる。その歪みに岩盤が耐え切れなくなると、ある面を境にして岩盤が急激に破壊され、地震が発生する。その破壊された面を断層面といい、既存の断層を動かしたり、新たに断層を作ったりする動きを断層運動という。 断層運動は、地下の岩盤に働く力の向きの違いにより、断層面を挟 んだ両側の岩盤に異なる動きを生じさせるため、①正断層型、②逆断層型、③横ずれ断層型の3つの基本的なパターンに分けられる。 ①正断層型は、水平の方向に岩盤が引っ張られることにより、断層面を境にして、上側の岩盤が下へ滑り落ちる動きをしたものをいう。 ②逆断層型は、水平の方向から岩盤が圧縮されたため、断層面を挟ん で上側の岩盤がずり上がる(上側の岩盤が下側の岩盤に乗り上 、断層面を境にして、上側の岩盤が下へ滑り落ちる動きをしたものをいう。 ②逆断層型は、水平の方向から岩盤が圧縮されたため、断層面を挟ん で上側の岩盤がずり上がる(上側の岩盤が下側の岩盤に乗り上がる)動きをしたものをいう。③横ずれ断層型は、岩盤に圧縮や伸張がかかって、断層面を挟んで、それぞれの岩盤が逆方向にずれる動きをしたものをいい、断層面を挟んで向かい側の岩盤が右側にずれたものを「右横ずれ断層」、左側にずれたものを「左横ずれ断層」と呼ぶ。また、正 断層と逆断層は、いずれも断層面に沿って岩盤が上下にずれる動きをするので、「横ずれ断層」に対して「縦ずれ断層」に分類される。 (乙ヨ15、ヨ16、弁論の全趣旨)b ハーフグラーベン伸長応力場で岩盤が水平方向に引っ張られると、正断層に区切られ た岩盤が沈降して溝が形成されるが、両側の正断層によって形成される溝をグラーベン(地溝)という。これに対し、ハーフグラーベンとは、正断層が片側のみでき、上盤がずり落ちることによって形成される溝(半地溝)をいう。(甲203)c 活断層に関係する新規制基準の定め ⒜ 設置許可基準規則は、耐震重要施設及び兼用キャスクは、変位が 生ずるおそれがない地盤に設けなければならないと規定し(同規則3条3項)、設置許可基準規則解釈別記1は、上記変位をもたらす「将来活動する可能性のある断層等」とは、後期更新世以降(約12万~13万年前以降)の活動が否定できない断層等であり、その認定に当たって、後期更新世の地形面又は地層が欠如する等、後期更新 世以降の活動性が明確に判断できない場合には、中期更新世以降(約40万年前以降)まで遡って地形、地質・地質構造及び応力場等を総合的に検討した上で活動性を評価することなどを規定している 期更新 世以降の活動性が明確に判断できない場合には、中期更新世以降(約40万年前以降)まで遡って地形、地質・地質構造及び応力場等を総合的に検討した上で活動性を評価することなどを規定している(同別記1第3条3項)。(乙80)⒝ 地質ガイドにも、「将来活動する可能性のある断層等」の認定に関 し、上記⒜と同様の定めがあり(地質ガイドⅠ.2.1、)、その解説においては、後期更新世以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定でき、この判断をより明確なものとするため、活 動性を評価した年代より古い(中期更新世までの)地形面や地層にずれや変形が生じていないことが念のため調査されていることが重要である旨の記載などがある(地質ガイドⅠ.2.1〔解説〕)。 (甲208、乙81、394)海上音波探査 a 海上音波探査の概要海上音波探査(海域での反射法地震探査)は、海面付近の水中から海底に向けて音波を発し、海底、堆積層、基盤岩等からの反射音波を観測して海底下の地質構造を調査する手法であり、具体的には、船で発振器及び受振器を曳航し、発振器から出た音波が海底下の地層の境 界等で反射し、戻ってきたものを検知することにより、地層の重なり 及び連続性を調査するものである。 海上音波探査には、反射波を一つの受振器で記録するシングルチャンネル方式と複数の受振器で記録するマルチチャンネル方式がある。 このうち、マルチチャンネル方式は、従来、長大なケーブルを曳航して調査するものであったが、最新の調査手法であるショートマルチチ ャンネル方式は、短いケーブルを用いるものであるため、沿岸部や る。 このうち、マルチチャンネル方式は、従来、長大なケーブルを曳航して調査するものであったが、最新の調査手法であるショートマルチチ ャンネル方式は、短いケーブルを用いるものであるため、沿岸部や内湾での調査も可能となった。 (乙338、弁論の全趣旨)b 海上音波探査における音源海上音波探査は、音波を発する音源の周波数によって、調査範囲、 精度等が異なってくるところ、通常、周波数が低くなるにつれて分解能が低くなる一方、可探深度は深くなり、周波数が高くなるにつれて分解能が高くなる一方、可探深度が浅くなるとされる。具体的には、エアガン(可探深度:海底下数km程度まで)、ウォーターガン(可探深度:浅部からやや深部まで)、スパーカー(可探深度:海底下300 m程度まで)、ブーマー(可探深度:海底下100m程度まで)、ソノプローブ(可探深度:海底下数十m程度まで)、チャープソナー(可探深度:海底下25m程度まで)の順番に周波数が高くなり、分解能が高くなる。 各音源による記録の特徴としては、チャープソナーとソノプローブ を音源とした場合には、極浅部の堆積層内の反射面も明瞭に捉えることができるため、新しい時代の断層運動の解明等に有効であり、ブーマーを音源とした場合には、後期更新世以降の地層を含めた比較的浅い地層の内部構造を明瞭に捉えることができる。また、スパーカーやウォーターガンを音源とした場合、ブーマーより深部まで捉えること ができるため、深部から浅部に至る地下構造を把握するのに有用であ り、エアガンを音源とした場合は、海底下数kmまでの深部構造を議論する上で有効な記録を得ることができる。 (乙329、334[55、56頁]、338)c 地質ガイドにおける海上音波探査に関する記載等⒜ 地質 源とした場合は、海底下数kmまでの深部構造を議論する上で有効な記録を得ることができる。 (乙329、334[55、56頁]、338)c 地質ガイドにおける海上音波探査に関する記載等⒜ 地質ガイドは、内陸地殻内地震に係る海域における調査について、 適切な各種の調査技術を組み合わせた十分な調査が実施されていること、広域的な海底地形と海底地質構造から深部の活断層を含め活断層の位置・形状が推定されていること及びその根拠が明らかにされていること等を求め(地質ガイドⅠ.4.2.2)、詳細な内容については海上音波探査マニュアルを参照すること(地質ガイドⅠ. 4.2.2〔解説〕)を定めている。(甲208、乙81、394)⒝ 地質ガイド添付の海上音波探査マニュアルは、測線配置に関し、音波探査には、大局的な地質・地質構造の解明を目的とする調査と断層の活動性の評価を目的とする調査があるため、それぞれの目的に応じた適切な測線が配置され、調査を行っていることを確認する 必要があるとし、①地質構造を大局的に捉えるための格子状の測線のほかに、敷地に与える影響の大きな断層については、断層の端点、断層の三次元形状及び断層相互の三次元的位置関係を正確に把握するため、より密な測線配置となっているか、測線が断層に対して直角に近い角度で配置されているか、最新の文献や海底地形図等を用 いて測線配置を検討しているか、活断層の端部と認定されている場所の延長付近においても、活断層を見逃すことがないよう、調査及び検討が十分に行われているかを確認すること、②陸域と海域の境界部においては、適切な調査により、陸域と海域の地質構造が連続的に把握されているか確認することと定めている(海上音波探査マ ニュアル1. )。 また、海上音波探 陸域と海域の境界部においては、適切な調査により、陸域と海域の地質構造が連続的に把握されているか確認することと定めている(海上音波探査マ ニュアル1. )。 また、海上音波探査の音源に関し、調査対象海域の水深、地質状況及び調査目的に応じた音源を選択して調査していることを確認する必要があると定め、浅部を詳細に把握できる高分解能の音源(例えばブーマー)とエネルギーが大きく深部の調査に適した音源(例えばエアガンやウォーターガン)という異なる種類の音源を用いた 調査を適切に組み合わせることで、活動性の評価をより正確に行うことが可能となるとしている(同1. ①)。 さらに、高分解能調査に関し、断層の端部等で、中期又は後期更新世以降の活動性を慎重に評価する必要がある場合には、分解能が高く、かつ、反射面が明瞭なデータを取得する必要があり、これに は、ブーマー等の高分解能の音源を用いたマルチチャンネル調査によるSN比(雑音量(noise)に対する信号量(Signal)の比)の高いデータの取得が効果的であるとしている(同1.②)。 (甲208、乙81、394)伊予灘における調査 伊予灘では、被告だけでなく、国土地理院、産業技術総合研究所、大学研究グループによって、以下を含む、調査対象深度及び分解能の異なる各種の音源を用いた総延長約6700kmに及ぶ海上音波探査が実施されている。 a 深部地震探査 深部を対象とした地震探査として、平成16年、海上音波探査及び屈折法探査(以下、上記各探査を併せて「平成16年深部地震探査」という。)が実施された。上記海上音波探査は、エアガンを音源とし、48チャンネル、チャンネル間隔12.5mのマルチチャンネル方式で行われ、上記屈折法探査は、エアガンを音源とし、 16年深部地震探査」という。)が実施された。上記海上音波探査は、エアガンを音源とし、48チャンネル、チャンネル間隔12.5mのマルチチャンネル方式で行われ、上記屈折法探査は、エアガンを音源とし、上記海上音波探 査と同一に設定した測線上の海底に約1200~1700m間隔で合 計9個又は10個の受振器を設置し、その直上を25m間隔で発振して行われた。 本件発電所の沖合には、北西から南東方向の直線(佐田岬半島に垂直方向)の測線(乙第312号証におけるY-10測線)が引かれた。 b 浅部海上音波探査 ⒜ 平成16年の海上音波探査(以下、平成16年深部地震探査と併せて「平成16年地震探査」という。)浅部を対象とした地震探査として、平成16年、上記aと同一の測線を佐田岬半島沿岸まで延伸して、ウォーターガンを音源とした海上音波探査が行われるとともに、沿岸部について、同測線を用い て、ブーマーを音源とした海上音波探査が行われた。いずれもシングルチャンネル方式で行われた。 ⒝ 平成25年海上音波探査等被告は、平成25年、佐田岬半島北岸部の海陸境界部における更なるデータ拡充・信頼性向上の観点から、海底地形調査と平成25 年海上音波探査を実施した。被告は、平成25年海上音波探査の実施に当たって、8チャンネル、チャンネル間隔2.5mのショートマルチチャンネル方式を採用し、8つの受振器を配置して捉えた反射波を重合する(複数個の記録を足し合わせることでシグナルを強調するとともにノイズを低減する)仕様とした。また、海岸線が入 り組んで多数の湾が形成されているという佐田岬半島北岸部の地形を利用して、同湾内にまで入る測線を1km程度の間隔で縦横に設定した上で、ブーマー及びチャープソナーを音源とし 。また、海岸線が入 り組んで多数の湾が形成されているという佐田岬半島北岸部の地形を利用して、同湾内にまで入る測線を1km程度の間隔で縦横に設定した上で、ブーマー及びチャープソナーを音源として選択した。 (乙21[7頁]、22、114、115、312、334[62頁]、証人丁2) 被告による中央構造線の性状の把握a 活断層の有無及びその位置被告は、前記の各海上音波探査記録を基に、以下のとおり、本件発電所敷地前面海域における中央構造線断層帯の位置を検討した。 ⒜ 浅部地下構造 本件発電所敷地の沖合約8km付近に位置する2つの断層はいずれも高角度であり、これらの断層間には地溝が形成され、その南側の地層が副次的な断層を伴いながら北へ傾斜している。これらの断面において、断層分布域の南北でD層(更新統)上面の顕著な標高差は認められず、横ずれの卓越する断層運動が推定される。 また、瀬戸沖(本件発電所の約6km南西地点)のように、部分的に北縁が北落ち断層となる区間の海底地質断面では、T層(伊予灘層。上部鮮新統~下部更新統)の背斜構造が認められ、その頂部は浸食を受けて平坦でA層(沖積層)及びD層が欠如している。この背斜構造は平面的に断層の走向方向に長軸をもつ高まりとして確 認され、断層バルジと考えられる。断層バルジは愛媛県八幡浜市保内町喜木津沖に1か所、同県伊方町瀬戸沖に2か所見られ、伊予灘には断層バルジと地溝が交互に配列する。 これらの断層群はいずれも後期更新世以降の地層に変位を与えており、高角度の活断層と評価される。 ⒝ 深部地下構造平成16年深部地震探査の南端付近の地下深部には佐田岬半島に広く分布する三波川変成岩類の存在が推認され、その上面は北へ傾斜する。一方、 り、高角度の活断層と評価される。 ⒝ 深部地下構造平成16年深部地震探査の南端付近の地下深部には佐田岬半島に広く分布する三波川変成岩類の存在が推認され、その上面は北へ傾斜する。一方、同探査の北端付近の地下深部には領家花こう岩類の存在が推定され、その上面は緩く南へ傾斜している。両者が会合す る地点(本件発電所敷地から約8km)において両岩類の上面は最 も深くなる。和泉層群はこの窪地の上に分布し、さらに堆積層(新第三紀~第四紀の堆積物)がこれらを厚く覆っている。幅を持って雁行配列する活断層(前記⒜)は、いずれも堆積層内で高角度であり、地下深部で三波川変成岩類と領家花こう岩類の会合地点へ収れんする。また、三波川変成岩類は、その上面が領家花こう岩類との 会合地点からさらに北へ傾斜して連続するように見え、地質境界断層としての中央構造線が北傾斜であることが示唆される。 ⒞ 以上のとおり、伊予灘における下部更新統上面(T層上面)には、中央構造線断層帯に属する敷地前面海域の断層群(敷地の沖合約8km)の右横ずれに伴う変形構造(地溝とバルジの直線的な配列) が明瞭に認められて成熟度の高い活断層であることを示し、中央構造線断層帯より南側には活断層による累積的な変形は認められない。 中央構造線断層帯が成熟した活断層へ進化しているため周辺に別の活断層が発達しないと評価される。 (乙21、22、ヨ11[6-3-36~6-3-39、6-3-7 0~6-3-73、6-3-217、6-3-218頁])b 四国電力(2014)の提出被告は、本件適合性審査の過程で、規制委員会から、佐田岬半島北岸部に海底谷という活断層を疑わせる地形が見られることを踏まえ、佐田岬半島北岸部の海陸境界に極めて近い領域を含む詳細な海上 4)の提出被告は、本件適合性審査の過程で、規制委員会から、佐田岬半島北岸部に海底谷という活断層を疑わせる地形が見られることを踏まえ、佐田岬半島北岸部の海陸境界に極めて近い領域を含む詳細な海上音波 探査記録を提出するよう求められ、平成26年10月1日、規制委員会によるヒアリングにおいて、佐田岬半島北岸部における海上音波探査の実施状況等につき記載した四国電力(2014)を提出し、上記海底谷は、潮流による浸食を受けて形成されたものであって、活断層によって生じたものではない旨説明した。 その後、規制委員会は、佐田岬半島北岸部で実施された海上音波探 査等の結果を踏まえ、本件発電所敷地近傍及び敷地において、震源として考慮する活断層は認められないと評価した。 (乙114、130[38頁]、334[66、67頁]、346、ヨ13[12、13頁])中央構造線断層帯長期評価(第二版)の記載 地震調査委員会長期評価部会(以下「長期評価部会」という。)及びその下部組織である活断層分科会における議論を経て平成29年12月19日に改訂された中央構造線断層帯長期評価(第二版)には、以下の各記載がある。 a 断層帯の位置及び形態 中央構造線断層帯は、奈良県香芝市から愛媛県伊予市まで四国北部を東西に横断し、伊予灘に達している。中央構造線断層帯は更に西に延び、別府湾を経て大分県由布市に至る全長約444kmの長大な断層であるところ、過去の活動時期や断層の形状等の違い、平均的なずれの速度などから、全体が10の区間に分けられる。その10区間は、 ①金剛山地東縁区間(約16km)、②五条谷区間(約29km)、③根来区間(約27km)、④紀淡海峡-鳴門海峡区間(約42km)、⑤讃岐山脈南縁東部区間(約52km)、 る。その10区間は、 ①金剛山地東縁区間(約16km)、②五条谷区間(約29km)、③根来区間(約27km)、④紀淡海峡-鳴門海峡区間(約42km)、⑤讃岐山脈南縁東部区間(約52km)、⑥讃岐山脈南縁西部区間(約82km)、⑦石鎚山脈北縁区間(約29km)、⑧石鎚山脈北縁西部区間(約41km)、⑨伊予灘区間(約88km)、⑩豊予海峡-由布 院区間(約61km)である。 中央構造線断層帯は、全体として右横ずれを主体とし、上下方向のずれを伴う断層帯であるが、断層帯の最東端の金剛山地東縁区間(①)では断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層で、断層帯の西端部の豊予海峡-由布院区間(⑩)では主として北側低下の正断層 である。 (甲83[1、11頁]、乙20[1、11頁])b 中央構造線断層帯に関するこれまでの主な調査研究中央構造線は西南日本を内帯と外帯に分ける重要な地質境界線であり、中生代後期以降、多様な断層活動を経てきたとされている。第四紀後期には、ほぼ一様に右横ずれ成分の卓越する断層運動を行ってお り、特に四国から紀伊半島西部にかけての地域では明瞭な断層変位地形が連続的に認められる。 本断層帯における主な物理探査、地形・地質調査として、伊予灘においては、堤ほか(1990)、小川ほか(1992)、三浦ほか(2001)、大塚ほか(2001)、七山ほか(2002)、四国電力(2 015)などの調査が実施されている。 (甲83[26頁]、乙20[26頁])c 中央構造線そのものの活動に伴う断層「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の成果は重要である。佐賀関半島先端を通る別府湾 口における探査測線(H測線)及び大野川測線の反射法断 に伴う断層「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の成果は重要である。佐賀関半島先端を通る別府湾 口における探査測線(H測線)及び大野川測線の反射法断面には、三波川帯と領家帯上面の接合部より浅部の中央構造線の上盤に位置する別府湾充填新期堆積層内にも強い変形が認められる。また中央構造線直近でかつ中央構造線と同一方向の佐賀関断層もC級ではあるが活断層である。これらのことから三波川帯と領家帯上面の接合部以浅の中 央構造線も活断層である可能性を考慮に入れておくことが必要であると考えられる。伊予灘南縁、佐田岬半島沿岸の中央構造線については現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる。(甲83[31頁]、乙20[31頁]、27[413、415頁]) 高橋ほか(2020)の査読論文としての受理高橋ほか(2020)は、前記の各探査結果を踏まえ、伊予灘の中央構造線及び中央構造線活断層系の分布及び活動性について以下のとおりの検討を加え、査読論文として受理された。(乙312)a 地震探査結果 ⒜ 平成16年深部地震探査の結果本件発電所敷地前面海域を含む伊予灘中部の地質構造は次のとおりである。 S層(三波川変成岩類)上面は、平成16年深部地震探査の南端の表層付近から測点番号(以下、測点番号の記載は乙第312号証 による。)450(判決注:沖合約8km)付近の深度2000m付近に向かって20度程度で北傾斜し、更に北方の深度3000m付近まで断続的に認められ、測点番号300(判決注:沖合約11km)までの間にR層(領家花こう岩類)の下位に潜り込む構造を呈している。Iz層(和泉層群)上面は、上記南端より約 に北方の深度3000m付近まで断続的に認められ、測点番号300(判決注:沖合約11km)までの間にR層(領家花こう岩類)の下位に潜り込む構造を呈している。Iz層(和泉層群)上面は、上記南端より約1km北方 から測点番号600(判決注:沖合約4km)までの範囲では、深度200~400m付近にあり、ほぼ水平であり、更に北方では上面の深度を増しつつ、概ねR層とS層の会合部付近まで追跡される。 Iz層を覆うN層(新第三系及び第四系)は、後述の沖合の断層付近を除き概ね水平である。 R層とS層は、測点番号400~500付近(判決注:沖合約8km)で会合し、それらの上面は両者の会合部で深度2000~2500mに達する。会合部付近では、上位のN層中の反射面に不連続や下位ほど傾斜が大きくなる系統的なたわみが認められることから、これらの不連続部及びたわみを断層と判断した。本件発電所敷 地前面の伊方沖の測線(Y-10測線)では、R層とS層の会合部 付近(測点番号440付近)に、ほぼ鉛直にN層を切断し海底面に達する2条の断層を確認でき、これら2条の断層に挟まれた領域は相対的に沈降する凹地状の構造を呈している。 また、これらの明瞭な断層の南方(測点番号450~530付近)にも、Iz層やN層の反射面に不連続が認められる。これらの不連 続部は、表層付近(海底下300m程度以浅)のみを変位させる断層と、表層付近には変位が達していない伏在断層とに分けられる。 前者は高角度であり、後者は中角度から高角度の北傾斜で、北落ちの正断層成分を持つと考えられる。 (乙312[20~23頁]) ⒝ 浅部地震探査の結果測点番号1(断面南端)の深度約150mから測点番号16(判決注:沖合約3km)の深度約300m付近にかけて内部 つと考えられる。 (乙312[20~23頁]) ⒝ 浅部地震探査の結果測点番号1(断面南端)の深度約150mから測点番号16(判決注:沖合約3km)の深度約300m付近にかけて内部反射の乏しい音響基盤(測点番号1~7付近がS層、測点番号7~16付近がIz層に相当)が認められる。音響基盤の上位には、音響基盤に オンラップするほぼ水平な反射面が認められ、N層に相当する。測点番号25(判決注:沖合約5km)より北側のN層には、海底面まで達する反射面の不連続や下位ほど傾斜が大きくなる系統的なたわみが認められ、前記⒜の海底面に達する断層ともほぼ対応することから、断層と判断される。 Y-10測線の延長線上の測線を用いて実施されたブーマー・シングルチャンネル方式音波探査では、本件発電所の敷地前面(測点番号7より南東側)で表層部が10m程度削剥され、幅約1kmの海底谷が形成されているが、その下位に認められるN層の明瞭な反射面は、ほぼ水平である。さらに、上記海底谷を横断し南方の湾内 まで達するブーマー・マルチチャンネル方式音波探査の結果によれ ば、N層の明瞭な反射面が、北に傾斜するS層上面を覆ってほぼ水平に分布している。 (乙312[24、25頁])b 考察⒜ 伊予灘の深部地震探査断面における地質境界断層と活断層 深部地震探査結果及び地層対比結果を基に推定した伊予灘の地質断面図は、三波川変成岩類の上面が佐田岬半島沿岸から緩く北に傾斜し、伊予灘沖合で領家花こう岩類と会合し(この地質境界断層を「R/S境界」という。)、伊予灘中部では、三波川変成岩類上面が更に領家花こう岩類の下位に延びる構造を示すものとなっており、 従来の伊予灘中部の地震探査結果に基づく構造に関する報 質境界断層を「R/S境界」という。)、伊予灘中部では、三波川変成岩類上面が更に領家花こう岩類の下位に延びる構造を示すものとなっており、 従来の伊予灘中部の地震探査結果に基づく構造に関する報告や、伊予灘に隣接する別府湾や四国東部における地震探査結果に基づく構造と類似する。また、伊予灘においては、三波川変成岩類及び領家花こう岩類の上位に和泉層群が分布し、三波川変成岩類と和泉層群が北傾斜する地質境界断層(この地質境界断層を「Iz/S境界」 という。)で接する。上記両地質境界断層が地質境界としての中央構造線と認識されている。 一方、新第三系及び第四系(N層)には海底面まで変位を及ぼす複数の活断層群が認められる。これらの断層は、後期更新世以降に活動した中央構造線活断層系に相当する。他の断層と比較して変位 の累積が特に顕著で海底面まで達する高角断層が認められ、中央構造線活断層系の主断層と考えられる。これら高角な主断層に挟まれた新第三系及び第四系には凸状や凹地状の構造が認められ、これらは中央構造線活断層系の右横ずれ運動に伴う隆起や沈降によって生じた変形構造と考えられる。また、これらの主断層の下方延長は、 領家花こう岩類と三波川変成岩類の会合部付近に収れんしているよ うにみえることから、中央構造線活断層系の活動はR/S境界の活動に関連している可能性がある。 伊予灘中部では、中央構造線活断層系の主断層の数km南側に複数の断層が分布するが、このうち北落ちの正断層成分を持つ海底面まで達しない伏在断層群は、伊予灘中部における下部更新統の上面 には、これらと対応する変形構造が認められないことから、これらの伏在断層群は少なくとも第四紀の後半には活動していないと考えられる。上記伏在断層群の存在は、現在の中央構造線 ける下部更新統の上面 には、これらと対応する変形構造が認められないことから、これらの伏在断層群は少なくとも第四紀の後半には活動していないと考えられる。上記伏在断層群の存在は、現在の中央構造線活断層系を形成する右横ずれ成分主体の断層活動ではなく、過去に北落ちの正断層成分主体の断層活動があったことを示唆する。 (乙312[27~29頁])⒝ 四国北西部から伊予灘にかけての中央構造線の分布及び活動性R/S境界上端は、厚さ2000~3000mの新第三系及び第四系並びに一部では和泉層群に覆われる。その分布は、伊予断層の海域延長付近から別府湾東部まで北東-南西方向にほぼ直線的に延 び、中央構造線活断層系の分布と概ね一致する。言い換えれば、伊予灘における中央構造線活断層系は、海底面下約2000~3000mにあるR/S境界上端付近から海底面までの堆積層を高角に切る断層である。ただし、更に深部では、中央構造線活断層系の断層面がそのまま高角で三波川変成岩類を切断するのか、R/S境界に 沿って北傾斜の断層面に収れんするのかについて、今回検討した深部地震探査結果からは判断できない。 Iz/S境界上端は、伊予灘中部では厚さ300m程度の新第三系及び第四系に覆われる。その分布は、大局的には海岸線に沿って北東-南西方向に延びるが、直線性に乏しく大きく湾曲し、中央構 造線活断層系の分布とは対応しない。 また、伊予灘中部の浅部音波探査断面では、沖合の新第三系及び第四系に中央構造線活断層系による変形構造が明瞭に求められる。 一方で、Iz/S境界上端付近を含む沿岸部では、新第三系及び第四系は和泉層群及び三波川変成岩類をほぼ水平に覆っており、中央構造線断層帯長期評価(第二版)においてIz/S境界が活断層で ある 。 一方で、Iz/S境界上端付近を含む沿岸部では、新第三系及び第四系は和泉層群及び三波川変成岩類をほぼ水平に覆っており、中央構造線断層帯長期評価(第二版)においてIz/S境界が活断層で ある可能性を指摘する根拠とした別府湾から豊予海峡で見られるような強い変形構造は認められない。Iz/S境界の浅部延長にあたる佐田岬半島北岸には、幅約1kmの海底谷が認められ、その分布は豊予海峡北側の海釜付近まで達しているが、その下位の地層はほぼ水平で、活構造を示唆する累積的な変形は認められないことから、 この海底谷は潮流の作用により形成された構造である可能性が高い。 以上によれば、伊予灘中部では、Iz/S境界に第四紀以降の活動はないと判断される。 (乙312[29、30頁])イ判断 被告は、平成25年海上音波探査の記録のほか、これまでに被告及び各種機関が実施してきた海上音波探査記録に基づき、中央構造線断層帯の性状を把握し、中央構造線断層帯(敷地の沖合約8km)より南側には活断層による累積的な変形は認められないこと等を踏まえて、地質境界としての中央構造線が活断層でなく、佐田岬半島北岸部に活断層は存在しないと 評価し(前記ア、)、また、査読論文として受理された高橋ほか(2020)に加え、多数の専門家らも、これまでに佐田岬半島北岸部で実施された深部及び浅部の海上音波探査記録を総合した結果から、佐田岬半島北岸部では活構造を示す累積的な変形は認められず、地質境界としての中央構造線(Iz/S境界)が活断層でないと評価していることが認められ、 上記専門家らとしては、①地震地質学及び地形学の専門家であり、長期評 価部会の委員として中央構造線断層帯長期評価の改訂にも携わった戊11首都大学東京名誉教授(以下「戊11教 れ、 上記専門家らとしては、①地震地質学及び地形学の専門家であり、長期評 価部会の委員として中央構造線断層帯長期評価の改訂にも携わった戊11首都大学東京名誉教授(以下「戊11教授」という。)(乙112)、②構造地質学、地震地質学、第四紀学を専門とし、産業技術総合研究所活断層研究センター長、地質調査総合センター長、地震調査委員会の委員等を務め、伊予灘海域における海上音波探査等に携わり、また、中央構造線断層 帯長期評価の改訂の議論にオブザーバーとして関わった産業技術総合研究所特別顧問名誉リサーチャーである戊12氏(乙115)、③岩石学、地質学、火山学、環境科学等の専門家である戊13愛媛大学教授(以下「戊13教授」という。)(乙116)、④応用地球科学(構造地質学、応用地質学)の専門家である戊14山口大学大学院元教授(以下「戊14元教授」 という。)(乙119)、⑤変動地形学及び地質学の専門家であり、長期評価部会の委員として中央構造線断層帯長期評価の改訂にも携わった戊15広島大学大学院教授(以下「戊15教授」という。)(乙120)、⑥電力中央研究所の参事であり、長年にわたり断層模型実験に取り組んできた戊16氏(以下「戊16氏」という。)(乙121)、⑦応用地質学、地質工学、 地盤災害、地域防災等の専門家である戊17香川大学教授(乙310)、⑧変動地形学、活断層研究、古地震学、第四紀学の専門家であり、中央構造線断層帯研究の第一人者である戊18京都大学名誉教授(以下「戊18教授」という。)(乙311)、⑨かつて産業技術総合研究所の活断層・火山研究部門の地震災害予測研究グループ研究グループ長として日本各地の活 断層調査に取り組み、現在は、地震予知総合研究振興会地震防災調査研究部部長を務める戊19氏(以 技術総合研究所の活断層・火山研究部門の地震災害予測研究グループ研究グループ長として日本各地の活 断層調査に取り組み、現在は、地震予知総合研究振興会地震防災調査研究部部長を務める戊19氏(以下「戊19氏」という。)(乙344)らが挙げられる(以下、同人らを併せて「地質学専門家ら」という。)(前記ア、乙112、115、116、119~121、310、311、344)。 これに対し、原告らは、地質境界としての中央構造線は活断層である可 能性があるにもかかわらず、被告は、三次元反射法探査を実施しておらず、 以下のとおり、被告による調査及び評価は誤っている旨主張する。そこで、以下、原告らの主張を踏まえ、被告の上記評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点がないか検討する。 被告の調査についてa 測線間隔約4kmの二次元反射法探査を実施したとの主張について ⒜ 原告らは、第5の4(原告らの主張)アaのとおり、二次元反射法探査を用いて地下構造を把握するためには、10~50mという短い間隔で縦横に測線を引く必要があるが、被告が佐田岬半島北岸部における地下構造を把握するために参照した海上音波探査は、二次元で行われ、かつ、測線間隔が約4kmと余りに粗く、三次元 的な把握はおよそ不可能である旨主張し、戊10教授もこれに沿う証言をする。 しかしながら、被告は、佐田岬半島北岸部において、測線間隔約1km間隔の測線を縦横に設定した平成25年海上音波探査を実施しており(前記アb⒝)、原告らの上記主張はその前提に誤りがあ る。そして、伊予灘では、平成25年海上音波探査等、被告を含む各種調査機関により、入り組んだ湾状地形の中まで、複数の調査対象深度及び分解能の異なる各種の音源を の上記主張はその前提に誤りがあ る。そして、伊予灘では、平成25年海上音波探査等、被告を含む各種調査機関により、入り組んだ湾状地形の中まで、複数の調査対象深度及び分解能の異なる各種の音源を用いた音波探査が他に類のない高密度で実施され、高解像度の音波探査記録が得られており、これを基に断層の三次元的な連続分布の精密な情報が得られている などと、地質学専門家らによって評価されており(乙112、115、116、119~121、310、311、344)、また、規制庁も、令和2年3月4日付け「『中央構造線断層帯(金剛山地東縁-由布院)の長期評価(第二版)』の知見に関する技術情報検討会の検討結果等について」において、「既許可(判決注:本件許可)で実 施されている調査は、評価に必要な数量が実施され、必要な結果も 得られていることから、追加調査の必要はなく、改めて事業者に対して指示する必要はないと考えている。」旨記載しており(乙135)、その手法の合理性が認められている。 また、海上音波探査を実施するに当たって、10~15mという短い間隔で測線を引く必要があることにつき、合理的根拠は示され ていない。 以上によると、原告らの主張によるも、被告が地質境界としての中央構造線が活断層ではなく、佐田岬半島北岸部に活断層はないと評価するに当たって依拠した海上音波探査が、二次元反射法地震探査であることや、その測線間隔により、不合理であるとは認められ ない。 ⒝ なお、原告らは、戊19氏は、①共同執筆者として関与した、八代海における日奈久断層帯調査のための三次元物理探査に係る論文(猪野ほか(2018))では、二次元物理探査では把握できなかったデータを三次元物理探査では把握することができたとして、三次 元物理 海における日奈久断層帯調査のための三次元物理探査に係る論文(猪野ほか(2018))では、二次元物理探査では把握できなかったデータを三次元物理探査では把握することができたとして、三次 元物理探査の優位性を評価しているにもかかわらず、佐田岬半島北岸部における調査としては、二次元物理探査でも十分である旨の見解を述べている、②地質ガイド(まえがき5.)が、可能な限り、最先端の調査手法、すなわち、二次元物理探査より三次元物理探査を実施するよう求めているにもかかわらず、被告が実施した二次元物 理探査は十分であるとして新規制基準に反する見解を示しているなどとして、戊19氏作成に係る意見書(乙344)の信用性を争う。 しかしながら、上記①の点につき、八代海(日奈久断層帯海域部)においては、ブーマーを音源とする二次元物理探査(マルチチャンネル方式)を実施した楮原ほか(2011)によって活断層の分布 が明らかになっていたところ(乙375)、猪野ほか(2018)が 実施した三次元物理探査は、2016年熊本地震の発生を受けて、上記活断層の局所的な変形様式を解明するために行われたものであるのに対し(甲204、乙369)、被告が実施した海上音波探査は、佐田岬半島北岸部(伊予灘)における耐震設計上考慮すべき活断層の有無(以下、単に「佐田岬半島北岸部における活断層の有無」と いう。)を確認することを目的とするものであって、調査目的を異にするから、猪野ほか(2018)で三次元物理探査の有用性を評価した一方で、被告の実施した海上音波探査(二次元物理探査)が十分であると述べることは何ら矛盾するものではない。 また、上記②の点につき、地質ガイドは「まえがき5.」において、 基準地震動の策定等に関する調査に当たっては、調査手法の 二次元物理探査)が十分であると述べることは何ら矛盾するものではない。 また、上記②の点につき、地質ガイドは「まえがき5.」において、 基準地震動の策定等に関する調査に当たっては、調査手法の適用条件及び精度等に配慮し、目的に応じた調査手法により実施されることが必要であり、可能な限り、最先端の調査手法が用いられていることが重要である旨規定している(乙81、394)ところ、その文言に照らせば、いかなる調査条件下においても一律に最先端の調 査手法を用いることが必須であると要求しているとは解されない。 そして、既に説示したとおり、佐田岬半島北岸部を含む伊予灘では、被告及び各種機関が実施してきた高密度かつ高解像度の海上音波探査が実施されており、後記bで述べるとおり、佐田岬半島北岸部における活断層の有無を確認するために重要なD層(更新統。深度1 00~150m程度)以浅の地下構造を適切な音源を用いて把握していることからすれば、佐田岬半島北岸部における活断層の有無の確認のために三次元物理探査を実施する必要性は認められず、戊19氏の見解が地質ガイドに反するものであるとも認められない。 原告らは、その他、戊19氏の意見書の信用性に疑念を差し挟む 事情をるる指摘するが、いずれもその前提を欠いていたり、具体的 根拠に基づかないものであったりするのであって、戊19氏の意見書の信用性を左右しない。 上記検討したところに加え、前述のとおり、戊19氏以外の多数の地質学専門家らが、被告の評価手法の合理性を認めていることも踏まえると、戊19氏作成に係る意見書の信用性は否定されない。 b 音源及び振幅補正等について原告らは、第5の4(原告らの主張)アbのとおり、①佐田岬半島北岸部における有効な海上音波探査は、平 戊19氏作成に係る意見書の信用性は否定されない。 b 音源及び振幅補正等について原告らは、第5の4(原告らの主張)アbのとおり、①佐田岬半島北岸部における有効な海上音波探査は、平成25年海上音波探査以外には全く実施されていない、②地層深部に潜む震源断層を正確に捉えるためには、海上音波探査の音源として適切な種類のエアガンを 選択すべきであるが、被告が平成25年海上音波探査に利用したジオパルス(ブーマーと同等品(乙115[4頁]))、ウォーターガンは深度の深い地下構造を把握できないから不適切であり、元々記録が取れていない深度100m以下の地下の様子を振幅回復によって推測することもできない旨主張し、戊10教授もこれに沿う証言をする。 しかし、上記①の点につき、既に説示したとおり、佐田岬半島北岸部を含む伊予灘では、平成25年海上音波探査のみならず、平成16年地震探査により、新第三系及び第四系に明瞭な変位を与え海底まで達する断層群や、その南東部分では地質境界を覆う新第三系及び第四系がほぼ水平であることが記録されているなど(乙312[24頁])、 被告及び各種機関によって、総延長約6700kmに及ぶ海上音波探査がされているのであるから、原告らの指摘は当たらない。 また、上記②の点については、平成25年海上音波探査に先立ち、エアガンを音源とした平成16年深部地震探査が実施され、深部地下構造は既に把握されていたのであって(前記アa、a⒝)、原告ら の上記主張はその前提を欠いている。加えて、平成25年海上音波探 査は、佐田岬半島北岸部の海陸境界部における更なるデータ拡充・信頼性向上の観点から実施されたところ(前記アb⒝)、活断層の認定に当たっては、後期更新世以降の断層の活動の有無によっ 探 査は、佐田岬半島北岸部の海陸境界部における更なるデータ拡充・信頼性向上の観点から実施されたところ(前記アb⒝)、活断層の認定に当たっては、後期更新世以降の断層の活動の有無によって判断され、場合によっては、中期更新世以降の地層の活動性も評価することとされていることからすると(設置許可基準規則解釈別記1第3条3項、 地質ガイドⅠ.2.参照、前記アc)、佐田岬半島北岸部については、更新世に相当する堆積層であるD層(深度100~150m程度)の上部以浅に活断層の痕跡を示す堆積層の変位・変形があるかを確認するために、深度150m程度までの内部の構造を明瞭に捉えた記録が重要であるといえる。そして、海上音波探査マニュアルにおいては、 海上音波探査の音源は、調査対象海域の水深、地質状況及び調査目的に応じた音源を選択する必要があり、浅部を詳細に把握できる高分解能音源(例えばブーマー)とエネルギーが大きく深部の調査に適した音源(例えばエアガンやウォーターガン)という異なる種類の音源を用いた調査を適切に組み合わせることとされているところ(海上音波 探査マニュアル1. ①、前記アc⒝)、平成25年海上音波探査で利用したブーマーは、可探深度を海底下100m程度までとし、後期更新世以降の地層を含めた比較的浅い地層の内部構造を明瞭に捉えることができるものであり、チャープソナーは、可探深度を海底下25m程度までとし、極浅部の堆積層内の反射面も明瞭に捉えることがで きるものであるところ(前記アb)、現に、平成25年海上音波探査により、D層のみならず、その下部の約100万年前以前の地層を含むT層まで高解像度の記録が得られていること(乙115[8、9頁])からすると、被告が、これらを音源として選択したことは、深度15 査により、D層のみならず、その下部の約100万年前以前の地層を含むT層まで高解像度の記録が得られていること(乙115[8、9頁])からすると、被告が、これらを音源として選択したことは、深度150m程度までの内部の構造を明瞭に捉えるという上記目的に照らすと 適切であるといえる。この点、被告が選択した音源が適切であること は、前述のとおり、地質学専門家らがこれを認めていることに加え、長期評価部会の海域活断層評価手法等検討分科会の主査を務める戊20氏が、ブーマーやチャープソナーを用いることで活断層を確実に認定することができる旨の見解を示していること(乙118、374)からも裏付けられている。このように、活断層の認定という上記目的 に照らせば、被告が、平成25年海上音波探査において、ブーマー及びチャープソナーを音源として選択したことは合理的であり、不適切であるとは認められない。 また、被告がブーマー及びチャープソナーにおいて取得した海底下浅部のデータを解析する際に行った振幅補正は、飽くまでも調査対象 深度、すなわち、深度150m程度までの海底下浅部の適切なデータを得るために行われたものであり、より以深の海底下深部のデータを得るために行われたものではないから、原告らの主張はその前提において誤りがある。 以上によると、被告が地質境界としての中央構造線が活断層ではな く、佐田岬半島北岸部に活断層はないと評価するに当たって依拠した海上音波探査は、平成25年海上音波探査にとどまるものではなく、また、原告らの上記主張によるも、平成25年海上音波探査が、その音源や振幅補正により、不合理であるとは認められない。 c 伝播速度について 原告らは、第5の4(原告らの主張)アcのとおり、被告は、海上音波探 よるも、平成25年海上音波探査が、その音源や振幅補正により、不合理であるとは認められない。 c 伝播速度について 原告らは、第5の4(原告らの主張)アcのとおり、被告は、海上音波探査の解析処理において深度変換を行う際、水中の音波の伝播速度と同じ1500m/sを用いているが、海底より深部の岩石中の伝播速度はより速いにもかかわらず、全てが水で構成されている前提で、地下構造を把握しようとすることは不適切である旨主張する。 しかしながら、既に説示したとおり、佐田岬半島北岸部における活 断層の有無を判断するに当たっては、D層(深度100~150m程度)の上部以浅における堆積層の変位・変形の有無を確認することが重要であるところ、このような海底下浅部は、堆積物に海水が多く含まれる軟らかい層であり、水中の音波の伝播速度である1500m/sを用いて深度変換をすることは一般的な解析処理であると認められ る(乙344[11頁]、347[4頁]、375~378)。なお、そもそも、後期更新世以降の堆積層の変位・変形の有無の確認は、海上音波探査記録の深度変換前の時間断面で行うことができるのであって、深度変換は大きな意味を持たないから、1500m/sを用いて深度変換をしたからといって、被告による活断層の有無の評価に影響を与 えるものとは認められない。 以上によると、原告らの上記主張によるも、平成25年海上音波探査の解析処理が、深度変換を行う際に被告が用いた伝播速度により、不合理であるとは認められない。 d 以上検討したところによると、佐田岬半島北岸部における被告の調 査及びその解析に不十分な点は認められない。 中央構造線断層帯長期評価(第二版)の記載について原告らは、第5の4(原告らの主張)アのと ころによると、佐田岬半島北岸部における被告の調 査及びその解析に不十分な点は認められない。 中央構造線断層帯長期評価(第二版)の記載について原告らは、第5の4(原告らの主張)アのとおり、中央構造線断層帯長期評価(第二版)において、被告の佐田岬半島北岸部における調査が不十分であり、地質境界としての中央構造線が活断層であることが 示唆されている旨主張する。 確かに、中央構造線断層帯長期評価(第二版)には、「伊予灘南縁、佐田岬半島沿岸の中央構造線については現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる。」と記載されていることが認められ(前記アc、甲83[31頁]、 乙20[31頁])、これを前提にすると、被告及び各種機関による佐田 岬半島北岸部における海上音波探査が不十分であり、佐田岬半島北岸部の地質境界としての中央構造線が活断層であるかどうかを判断することができないことを指摘しているようにも思える。 この点、中央構造線断層帯長期評価(第二版)の改訂経緯を見ると、平成29年1月16日に行われた第226回長期評価部会・第66回活 断層分科会合同会において、委員の一人から、「伊予灘について。これは希望だが、中央構造線のなかでは、佐田岬ギリギリの地質境界の断層の四国電力の探査が終わっていないか、少なくともデータが公表されていない。」との発言がされ(乙126の8[参考資料1])、また、同年8月8日行われた第73回活断層分科会において、委員の一人から「伊予灘 付近の構造について、技術的に調査可能であるにも関わらず、浅い部分や海岸付近の構造がわかっていない。今後はより正確なデータを得るための調査が必要になるだろう。」との発言がされたが、平成25年 付近の構造について、技術的に調査可能であるにも関わらず、浅い部分や海岸付近の構造がわかっていない。今後はより正確なデータを得るための調査が必要になるだろう。」との発言がされたが、平成25年海上音波探査が実施されていることにつき説明はされなかったこと(乙126の16[参考資料1-2])、中央構造線断層帯長期評価(第二版)にお いて、伊予灘における主な物理探査、地形・地質調査として、四国電力(2015)が挙げられている一方で、佐田岬半島北岸部での海上音波探査の実施状況等につき記載した四国電力(2014)が挙げられていないこと(甲83、乙20)に加え、長期評価部会の委員として中央構造線断層帯長期評価の改訂に携わった戊11教授及び戊15教授が、中 央構造線断層帯長期評価(第二版)には、四国電力(2014)の存在を見落としたまま主張された内容が、一つの見解として残されたものである旨の見解を述べていること(乙112[4、5頁]、120[3~5頁])や、規制委員会の委員も、四国電力(2014)はヒアリング資料にすぎず、取りまとめ資料である四国電力(2015)に盛り込まれて いなかった上、検索しにくい状態であった旨述べていること(乙130 [37~40頁])からすると、委員らが、平成25年海上音波探査が実施されていることを認識しないまま、中央構造線断層帯長期評価(第二版)に上記記載がされたものと認められるから、上記記載をもって、佐田岬半島北岸部における海上音波探査が十分に実施されていないなどと認めることはできない。 なお、原告らは、査読論文である高橋ほか(2020)が参照したデータが三次元反射法探査によるものではなく、反射法探査が十分に進化したとはいい難い時代の古い時代のデータであり、中央構造線断層帯 なお、原告らは、査読論文である高橋ほか(2020)が参照したデータが三次元反射法探査によるものではなく、反射法探査が十分に進化したとはいい難い時代の古い時代のデータであり、中央構造線断層帯長期評価(第二版)の見解を否定するに足りない旨も主張する。しかしながら、前述のとおり、地質学専門家らが、探査手法の合理性につき認め ていることに加え、高橋ほか(2020)が参照した平成25年海上音波探査の記録は、最新の調査手法であるマルチチャンネル方式を用いて実施されたものであり、古い時代のデータであるともいえず、原告らの上記主張は採用できない。 規制委員会による確認について 原告らは、第5の4(原告らの主張)アのとおり、平成26年10月1日に実施された規制委員会のヒアリングにおいて提出された四国電力(2014)は、深度100m以上の深さが分からないものであるし、佐田岬半島北岸部の海底谷が活断層によって生じた地形でないことが確認されたにすぎず、地質境界としての中央構造線断層帯が活断層で ないことが確認されたわけではない旨主張する。 しかしながら、既に説示したとおり、伊予灘における活断層の有無の確認という目的からすれば、四国電力(2014)、すなわち、平成25年海上音波探査の記録は、D層以浅の地下構造を明瞭に捉えたものであり、十分なものであると認められる。また、本件申請に係る申請書には、 本件発電所において、「最も影響の大きい活断層は敷地の沖合約8kmを 通過する中央構造線断層帯であ」る旨、「中央構造線断層帯より南側には活断層による累積的な変形は認められない。」旨明示されるとともに、海上音波探査記録に基づき作成された海底地質断面図も記載されていること(乙ヨ11[6-3-71、6-3-72 構造線断層帯より南側には活断層による累積的な変形は認められない。」旨明示されるとともに、海上音波探査記録に基づき作成された海底地質断面図も記載されていること(乙ヨ11[6-3-71、6-3-72、6-3-217頁])、本件申請に係る審査書には「海上音波探査(略)等を行い(略)、敷地近傍 及び敷地において、震源として考慮する活断層は認められないと評価した。」旨記載されていること(乙ヨ13[12、13頁])、規制委員会の委員である戊21委員自身が、規制委員会に対し、ヒアリング資料として四国電力(2014)が提出されたところ、委員らは、本件発電所の直近、東側及び西側の測線全ての音波探査断面を見て、活動性のある断 層はないことを確認した旨明確に述べていること(乙130[38頁])が認められることからすると、規制委員会が、地質境界としての中央構造線断層帯が活断層ではないとの被告の評価を是認したことは明らかであって、原告らの上記主張は採用できない。 ハーフグラーベンの存在について 原告らは、第5の4(原告らの主張)アのとおり、ハーフグラーベンの存在から佐田岬半島北岸部における地質境界としての中央構造線が活断層である旨主張し、これに沿う戊22愛媛大学名誉教授の見解(甲203)を提出する。 しかしながら、ハーフグラーベンは、正断層運動によって生じるもの であるところ(前記アb)、中央構造線断層帯では右横ずれ断層成分が卓越する運動が行われており(前記アa、b)、ハーフグラーベンの存在を基礎付けることは困難であることや、佐田岬半島北岸部の海上音波探査記録によっても本件発電所沖合約8kmより南側では地層が水平に堆積しており(前記アa)、ハーフグラーベンの形成に伴って生じるは ずの堆積構造(正断層運動を示す 佐田岬半島北岸部の海上音波探査記録によっても本件発電所沖合約8kmより南側では地層が水平に堆積しており(前記アa)、ハーフグラーベンの形成に伴って生じるは ずの堆積構造(正断層運動を示す扇状の堆積構造)が認められないこと から、地質学等の専門家である戊11教授(乙112)、戊14元教授(乙119)、戊16氏(乙121)及び戊18教授(乙311)は、佐田岬半島北岸部の地質構造をハーフグラーベンで説明できないとの見解を示しているところ、上記各見解の合理性を否定するに足りる証拠はない。 以上によると、原告らの上記主張は、採用できない。 以上によると、原告らの上記各主張によっても、被告による佐田岬半島北岸部の調査が不十分で、その評価が誤っているとは認められない。 そして、上記認定のとおり、被告は、高密度かつ高解像度で実施された平成25年海上音波探査等の結果を踏まえ、本件原子力発電所敷地の沖合約8kmに位置する中央構造線断層帯より南側には、活断層による累 積的な変形は認められないことなどから、佐田岬半島北岸部には活断層はないと評価しているところ、地質学専門家らによっても同様の評価がされているのであって、上記評価は合理的なものであると認められる。 よって、被告の上記評価並びにこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点はないものと認められる。 ⑶ 内陸地殻内地震の地震動評価(中央構造線断層帯の地震動の評価)ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 応答スペクトルに基づく地震動評価 応答スペクトルに基づく地震動評価は、距離減衰式に代表される地震のマグニチュードと震源又は震源断層からの距離の関係で地震動特性を評価する手法であり、多く 応答スペクトルに基づく地震動評価 応答スペクトルに基づく地震動評価は、距離減衰式に代表される地震のマグニチュードと震源又は震源断層からの距離の関係で地震動特性を評価する手法であり、多くの地震観測データに基づいて策定され、数少ないパラメータで評価するものである。(前提事実6⑵、乙98)a 松田式の概要 松田式(LogL=0.6M-2.9)は、国内の内陸部に発生し た1891年濃尾地震以後1970年秋田県南東部地震までの14地震のデータ(うち1964年新潟地震の断層長さ100kmを除き、断層長さ80km以下である。)から得られた断層長さと地震の気象庁マグニチュードとの関係を表す経験式であり、日本列島の地殻内地震の断層長さと気象庁マグニチュードとの関係式と比較すると、Mo≧ 6.8の地震について、傾き及び絶対値ともほぼ一致し、日本列島における地殻内地震の震源断層に対し適用性が高いとされている。 なお、松田式は、応答スペクトルに基づく地震動評価のみならず、地震モーメント(Mo)の経験的関係式である武村式(武村(1990))を用いることにより、断層モデルを用いた手法による地震動評価にも 用いられる。 (甲45[5頁]、乙24[5頁]、33、38、326)b 耐専式の概要⒜ 耐専式は、解放基盤相当の硬い岩盤における観測記録(震源距離の範囲は28~202km(乙ヨ31[110頁]、ヨ36[45頁])) に基づいて策定された距離減衰式であり、マグニチュード(気象庁マグニチュード)、等価震源距離(特定の1点(点震源)から全ての地震波のエネルギーが放出されたと仮定し、実際に広がりのある断層面全体から観測点に到達するエネルギーと点震源から到達するエネルギーとが等しくなる点震源から観測点までの距 定の1点(点震源)から全ての地震波のエネルギーが放出されたと仮定し、実際に広がりのある断層面全体から観測点に到達するエネルギーと点震源から到達するエネルギーとが等しくなる点震源から観測点までの距離)及び評価地 点の地盤のP波速度、S波速度から評価地点の水平方向及び鉛直方向の地震動の応答スペクトルを評価するものである。 耐専式では、マグニチュードと等価震源距離とが与えられると、特定の8つの周期に対する応答値が求まり、8つの周期とその周期に対する応答値を、横軸を周期、縦軸を速度応答としたグラフ上に プロットし、それら8つの点を結ぶことにより、地震基盤における 応答スペクトルが得られる。 上記8つの周期に対する応答値は「コントロールポイント」と呼ばれ、各コントロールポイントの値は、あらかじめ、マグニチュードと等価震源距離との組合せによって定められている。具体的には、4段階のマグニチュード、すなわち、M6、M7、M8及びM8. 5について、それぞれ「遠距離」、「中距離」、「近距離」及び「極近距離」の4種類の等価震源距離が設定されている。もっとも、設定されていない任意のマグニチュードと等価震源距離に対するコントロールポイントの値についても、得られた応答値を基にマグニチュードと等価震源距離とで補正して求めることができる。 (乙ヨ36、弁論の全趣旨)⒝ 距離減衰式で用いる主要なパラメータの一つである距離について、多くの距離減衰式が評価地点と震源との最短距離を用いるのに対し、耐専式では、等価震源距離を用いるため、震源断層面の面的な広がりや断層面の不均質性(アスペリティ分布)を評価に反映すること が可能である。また、震源断層の近傍では、断層破壊の指向性効果(NFRD効果)と呼ばれる破壊の進行方向で 、震源断層面の面的な広がりや断層面の不均質性(アスペリティ分布)を評価に反映すること が可能である。また、震源断層の近傍では、断層破壊の指向性効果(NFRD効果)と呼ばれる破壊の進行方向で地震波の振幅が大きくなる現象が指摘されるところ、一般的な距離減衰式では、このような特性を考慮できないのに対し、耐専式では、応答スペクトルに反映させることが可能である。さらに、耐専式の回帰式策定に用い られた観測記録は、海溝型地震、すなわち、海洋プレート内地震及びプレート間地震が多く含まれているところ、過去の地震の知見から、内陸地殻内地震の地震動レベルは、海溝型地震と比べて小さいという特性が確認されており、この特性を反映するため、耐専式による評価では、内陸地殻内地震の地震動レベルを算定するための補 正係数(短周期側に0.6を乗じるもの。以下、この補正を「内陸 補正」といい、補正係数を「内陸補正係数」という。)が提案されている。 なお、耐専式は、地震規模及び等価震源距離から地震動レベルを求めるものであるため、等価震源距離が遠い長い断層での地震動レベルより等価震源距離が近い短い断層での地震動レベルが大きくな る可能性があるという特性を有する点に留意する必要がある。 (乙34、ヨ36、ヨ94、弁論の全趣旨)⒞ 原子力安全委員会の下で平成21年5月22日に行われた応答スペクトルに基づく地震動評価に関する専門家との意見交換会では、耐専式の「極近距離」よりも近傍に関しては、観測データが少なく、 コントロールポイントも設けられていないことから、現時点では、耐専式を適用することが基本的に想定されておらず、そのような地震に対する耐専式の適用の可否に当たっては、他の距離減衰式の評価結果又は断層モデルを用いた手法による地 られていないことから、現時点では、耐専式を適用することが基本的に想定されておらず、そのような地震に対する耐専式の適用の可否に当たっては、他の距離減衰式の評価結果又は断層モデルを用いた手法による地震動評価結果と比較するなどして、総合的に判断を行う必要がある旨の意見が出された。 そして、原子力安全委員会も、上記意見交換会を踏まえ、震源が敷地に近い場合の応答スペクトルに基づく地震動評価について、応答スペクトルによる手法は経験的手法であり、用いられたデータの質・量によってその適用範囲を慎重に吟味することが重要であり、特に、震源が敷地に近い場合にはより慎重な対応が必要となるため、上記 場合には、適用可能な各種の応答スペクトルによる手法を用いた評価結果や断層モデルを用いた手法による地震動評価結果等を踏まえ、総合的な判断を行う必要があると整理した。(乙34~36)断層モデルを用いた手法による地震動評価断層モデルを用いた手法による地震動評価では、以下のとおり、震源 特性パラメータを設定することにより、詳細な地震動評価が可能である。 a 新規制基準の考え方(断層モデルを用いた手法による地震動評価の手順)⒜ 基本震源モデルの策定断層モデルを用いた手法による地震動評価をするに当たっては、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定 したモデル(基本震源モデル)をまず策定し、地震動評価を行う(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号④ⅱ))。震源特性パラメータについては、詳細な活断層調査結果等に基づき、レシピ等の最新の研究成果を考慮し設定する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷①1))。 この際、基準地震動の策定過程における敷地での地震動評価に大き な影響を与えると考えられる支配的 結果等に基づき、レシピ等の最新の研究成果を考慮し設定する(地震ガイドⅠ.3.3.2⑷①1))。 この際、基準地震動の策定過程における敷地での地震動評価に大き な影響を与えると考えられる支配的なパラメータである震源断層の長さ、活断層群の連動、地震発生層の上端深さ・下端深さ等について分析した上で保守性を考慮する。基本震源モデルに保守性を考慮することについては、「適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定」(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号④ⅱ))すること とした上で、地質ガイドにおいて具体的にその確認事項が例示されており、適合性審査においては、基本震源モデルの震源断層が、当該原子炉施設の地震動を評価するにあたり適切かつ保守的に設定されたものであることを確認する。 ⒝ 基本震源モデルへの不確かさの考慮 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」について、基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、 応力降下量及び破壊開始点等の不確かさ並びにこれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価 に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分 析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮する(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号⑤)。 支配的なパラメータの中でも特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点等が重要であり、これらのパラメータが震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する(地震ガ イドⅠ.3.3.3⑵①1))。 ⒞ 震源から敷地直下までの地震波の伝播過程の評価断層モデルを用いた手法では、震源 タが震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する(地震ガ イドⅠ.3.3.3⑵①1))。 ⒞ 震源から敷地直下までの地震波の伝播過程の評価断層モデルを用いた手法では、震源から解放基盤表面までの伝播特性を評価することが必要であるところ、伝播特性を評価するに当たっては、グリーン関数(震源に単位の力が作用したときの観測点 での応答)を採用しており、強震動予測においては、 グリーン関数の設定方法として、経験的グリーン関数法及び統計的グリーン関数法が広く用いられている。 経験的グリーン関数法は、伝播過程を評価するために想定する断層の震源域において、実際に発生した中小地震の敷地における観測 波形を要素波(グリーン関数)として、想定する断層の破壊過程に応じて足し合わせることで、大きな地震による地震動を計算する方法であり、あらかじめ評価地点における適切な観測記録を入手する必要がある。 統計的グリーン関数法は、多数の観測記録を統計処理した結果を 基に平均的特性を持つ波形を算出し、当該波形を要素波として、大きな地震による揺れを計算する方法であり、評価地点における観測記録をあらかじめ入手する必要はないが、評価地点固有の特性に応じた震動特性が反映されにくい。 ⒟ 震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価 内陸地殻内地震について、震源が敷地に極めて近い場合には、地 下構造の不均質性が地震波の伝播特性に対し、より大きな影響を与える可能性があり、かつ、内陸地殻内地震は再来期間が長く震源極近傍の観測記録が十分に得られていないことなどから、評価手法に不確定性が伴うため、前記⒜~⒞に加え、より詳細な検討を行った上で基準地震動を策定することが求められている(設置許可基準規 則の解釈別記2第 測記録が十分に得られていないことなどから、評価手法に不確定性が伴うため、前記⒜~⒞に加え、より詳細な検討を行った上で基準地震動を策定することが求められている(設置許可基準規 則の解釈別記2第4条5項2号⑥、地震ガイドⅠ.3.3.2⑷④)。 (乙98[257~261頁])b スケーリング則及び関連知見各種パラメータの設定に当たってのスケーリング則及び関連知見には、以下のようなものがある。 ⒜ 壇ほか(2011)ⅰ 壇ほか(2011)は、既存の手法である円形クラックを前提とする応力降下量の評価式を、内陸地殻内地震のうち、全長が極めて長い横ずれ断層等に適用することに問題があることを踏まえ、Irieetal.(2010)による平均動的応力降下量と 震源断層面積及び地震モーメントとの関係式(断層長さ15~100kmの横ずれ断層につき動力学的断層破壊シミュレーションから導かれた式)を用いて、横ずれ断層による内陸地殻内地震(国内9地震(震源断層長さ17~114km(=80km+34km))、海外13地震(震源断層長さ49~432km))のデータ から、平均動的応力降下量を3.4MPa、アスペリティの動的応力降下量を12.2MPaと算出し(ただし、断層幅は15kmと仮定している。)、これらを長大横ずれ断層のパラメータの既定値として設定することを提案している。(乙328、ヨ37)ⅱ 壇ほか(2012)は、壇ほか(2011)に従って、活断層 の長さが25km、50km、100km、200km及び40 0kmの5つの場合のアスペリティモデルのパラメータを算定した上で、活断層の長さが50km、100km及び400kmの3つの場合の強震動を統計的グリーン関数法により試算し、2000年鳥取県西部 0kmの5つの場合のアスペリティモデルのパラメータを算定した上で、活断層の長さが50km、100km及び400kmの3つの場合の強震動を統計的グリーン関数法により試算し、2000年鳥取県西部地震の記録、2002年アラスカDenali地震の記録及び最大加速度と最大速度に関する既往の距離減衰式 である司・翠川(1999)の式と比較したところ、整合する結果が得られ、壇ほか(2011)が妥当である旨の見解を示している。なお、壇ほか(2012)は、2002年アラスカDenali地震のPS10観測点の記録に関し、同観測点の最大加速度については、地盤の非線形挙動の影響を受けてかなり小さくな っているため、比較の対象としておらず、同観測点の試算強震動の最大速度について観測記録と比較し、整合していることを確認したとしている。(乙39)また、藤堂ほか(2012)は、壇ほか(2011)を用いて、断層長さ360kmの中央構造線の断層モデルを設定し、統計的 グリーン関数法によって強震動を試算した結果、司・翠川(1999)の距離減衰式による推定値及び長大断層による2002年アラスカDenali地震の断層近傍記録とよく対応したことから、壇ほか(2011)は妥当である旨の見解を示している。(乙40) さらに、壇ほか(2016)は、壇ほか(2011)が海外の地震に適用できるかを検証するために、1999年トルコKocaeli地震を対象とした震源モデルを作成し、統計的グリーン関数法による地震動評価結果と観測記録との比較を行ったところ、整合する結果が得られ、壇ほか(2011)は妥当である旨の見 解を示している。(乙41) 加えて、IAEAがSSG-9を補完する目的で策定しているSafetyReports 整合する結果が得られ、壇ほか(2011)は妥当である旨の見 解を示している。(乙41) 加えて、IAEAがSSG-9を補完する目的で策定しているSafetyReportsSeriesNo.85では、内陸地殻内地震の断層モデルを用いた地震動評価における断層パラメータの設定に関し、長大断層に対する新たな評価手法として壇ほか(2011)が紹介されている。(乙42、弁論の全趣旨) ⒝ 入江(2014)壇ほか(2011)の共著者の一人である戊23氏の弘前大学大学院理工学研究科博士論文である入江(2014)は、壇ほか(2011)がデータとして使用した国内の9つの内陸地殻内地震のデータのみを用いて平均動的応力降下量とアスペリティの動的応力降 下量の各相乗平均を求めてみたところ、平均動的応力降下量3.8MPa、アスペリティの動的応力降下量15.2MPaとなったことを示すとともに、「本来、日本で発生する地震の断層パラメータを想定するには、日本の地震データのみを用いるべきである」との見解を示しているが、これに続けて、国内の地震データでは1891 年濃尾地震が最大であり、長大断層の規模のデータがやや不足しているとして、壇ほか(2011)が示す国外の地震も含めた動的応力降下量を断層パラメータの算定に用いている。 (甲80[4-65、4-66頁]、乙99[4-66頁])⒞ FujiiandMatsu’ura(2000) FujiiandMatsu’ura(2000)は、長大横ずれ断層に係る知見であり、断層形状(断層幅と断層長さ)と地震モーメントとの関係式を提案するとともに、長大な横ずれ断層による内陸地殻内地震の観測データに基づく回帰計算により、震源断層全体の静的応力降下量(レシピで 見であり、断層形状(断層幅と断層長さ)と地震モーメントとの関係式を提案するとともに、長大な横ずれ断層による内陸地殻内地震の観測データに基づく回帰計算により、震源断層全体の静的応力降下量(レシピでは単に「静的応力降下量」と記 されることもある。また、「平均応力降下量」と言われることもある。) を3.1MPaと設定することなどを提案するものである。(乙327、ヨ38)⒟ 宮腰ほか(2015)宮腰ほか(2015)は、平成7年から平成25年に国内で発生した18(うち、横ずれ断層は9つであり、その断層長さは8~6 4kmである。)の内陸地殻内地震(Mw5.4~6.9)の強震動記録を用いて解析した結果、横ずれ断層のアスペリティ領域における平均応力降下量を12.8MPaとしている。(乙45)⒠ 入倉・三宅(2001)入倉・三宅(2001)は、強震動予測に必要なパラメータ設定 の方法及びその手順を提案したものである。入倉・三宅(2001)は、内陸の活断層地震の断層幅は、地震規模が小さいとき断層長さに比例し、ある規模以上の地震に対して飽和して一定値となることから、①地震規模が小さい領域(Mo=7.5×1018(N・m)以下)においては、地震規模と震源断層の面積の経験的関係式であ るSomervilleetal. (1999)の式(Mo=(震源断層の面積÷2.23×1015)3/2×10-7)に従い、②ある程度規模が大きくなり、断層幅が飽和した場合(Mo=7.5×1018(N・m)以上)は、入倉・三宅式(Mo=(震源断層の面積÷4.24×1011)2×10-7)に従うことを提案するものであ る。 なお、入倉・三宅(2001)は、主として北米の地震データに基づいているものの、平成7年 (Mo=(震源断層の面積÷4.24×1011)2×10-7)に従うことを提案するものであ る。 なお、入倉・三宅(2001)は、主として北米の地震データに基づいているものの、平成7年から平成25年までに発生した国内の18の内陸地殻内地震(Mw5.4~6.9)のデータを用いて震源パラメータに係る既往のスケーリング則の再評価を行った結果 として、断層破壊面積と地震モーメントの関係はMw6.5以下で Somervilleetal.(1999)の式と、Mw6. 5以上で入倉・三宅式と、それぞれよく一致することが確認され、2016年熊本地震の観測データについても入倉・三宅式と整合的であることが確認された。 (乙45、46、284、ヨ38) ⒡ 室谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)ⅰ 室谷ほか(2009)は、国内の長さ80kmを超える長大断層で発生し、地震波形記録を用いて解析が行われたデータが1891年濃尾地震のみであることから、海外の長大断層で発生し、地震波形を用いて解析が行われた8地震のデータ、また、地表で の調査から得られた断層長さ、地表での最大変位量のデータも併せて収集し、これらのデータと信頼性のある地中の断層長が得られている41地震のデータを比較し、長大断層に関するスケーリング則の検討を行った結果、長大断層に限ると、震源断層での平均すべり量(地震により破壊した地下の震源断層面のずれの量) と地表での最大変位量は2~3倍の関係になるとしている。 なお、長大断層に関しては、観測事例が少なく、国内では1例のみであることから、今後は、データの蓄積とともにメカニズムの違いの影響やアスペリティに関する微視的断層パラメータの関係式などについて検討する必要があるとしている。 、観測事例が少なく、国内では1例のみであることから、今後は、データの蓄積とともにメカニズムの違いの影響やアスペリティに関する微視的断層パラメータの関係式などについて検討する必要があるとしている。 (乙ヨ90)ⅱ また、室谷ほか(2010)は、世界の内陸で発生した長さ80kmを超えるような長大断層での地震や近年発生した中規模地震のうち、地震波形を用いて解析が行われ、かつ、地表地震断層の調査が行われている11地震のデータを収集し、これらのデー タに、地中の断層長が得られている40地震の信頼性のあるデー タを加え、長大断層に関するスケーリング則について検討を行った結果、長大断層に限ると、地表での最大変位量は震源断層での平均すべり量の概ね2~3倍に収まり、震源断層での最大すべり量とはほぼ1対1の比例関係になる、地表での最大変位量は断層長さほぼ100kmで約10mに飽和するとしている。なお、室 谷ほか(2010)は、Murotanietal.(2015)によって査読論文化された。(乙ヨ91、弁論の全趣旨)c 震源断層モデルの設定に関するレシピの概要⒜ 平成28年改訂レシピ平成28年改訂レシピは、強震動予測につき、①特性化震源モデ ル(強震動を再現するために必要な震源の特性を主要なパラメータで表した震源モデル)の設定、②地下構造モデルの作成、③強震動計算、④予測結果の検証の4つの過程から行うこととしているところ、特性化震源モデルの設定につき、㋐断層全体の形状や規模を示す巨視的震源特性、㋑主として震源断層の不均質性を示す微視的震 源特性、㋒破壊過程を示すその他の震源特性という3つの震源特性を考慮して、震源特性パラメータを設定するとしている。 ⅰ 巨視的震源特性(断層全体の形状や して震源断層の不均質性を示す微視的震 源特性、㋒破壊過程を示すその他の震源特性という3つの震源特性を考慮して、震源特性パラメータを設定するとしている。 ⅰ 巨視的震源特性(断層全体の形状や規模)の考慮平成28年改訂レシピは、活断層で発生する地震における震源断層モデルの巨視的震源特性に関するパラメータとして、震源断 層モデルの位置と構造(位置、走向、セグメント)、震源断層モデルの大きさ(長さ・幅)・深さ・傾斜角、地震規模及び震源断層モデルの平均すべり量を設定することとしている。 (乙ヨ38[2頁])(ⅰ) 「過去の地震記録などに基づき震源断層を推定する場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」 上記の場合の地震規模(地震モーメント(Mo))は、地震モ ーメント(Mo)と震源断層の面積(S)との経験的関係により算出することを定めている(以下、後記⒝の表現の微修正されたものを含めて、この方法を「レシピの方法」という。)。 具体的には、①一次的には、Somervilleetal.(1999)により算出するが、②地震モーメントが大きい 地震のうち、Mo=7.5×1018(N・m)(Mw6.5相当)以上、Mo=1.8×1020(N・m)(Mw7.4相当)以下の地震については、入倉・三宅式を適用し、③Mo=1.8×1020(N・m)を上回る地震では、Murotanietal.(2015)の式(Mo=S×1017)を適用することを 定めている。(乙ヨ38[3、4頁])(ⅱ) 「地表の活断層の情報をもとに簡便化した方法で震源断層を推定する場合」上記の場合の地震規模(地震モーメント(Mo))については、地震調査委員会の長期評価による地震規模(気象庁マグニチュ 地表の活断層の情報をもとに簡便化した方法で震源断層を推定する場合」上記の場合の地震規模(地震モーメント(Mo))については、地震調査委員会の長期評価による地震規模(気象庁マグニチュ ードと等価)と地震モーメント(Mo)の経験的関係式である武村式を用いて算出し、その前提となる気象庁マグニチュードについては、松田式により求めることとするが、活断層長さが概ね80kmを超える場合は、松田式の基になったデータの分布により、松田式の適用範囲を逸脱するおそれがあるため、例え ば、レシピの方法や「『活断層の長期評価手法(暫定版)』報告書」(以下「活断層長期評価手法報告書」という。)記載の方法など、過去の地震の例を参考にしながら、適宜適切な方法でマグニチュード(地震モーメント)を算定する必要があると定めている(以下、後記⒝の表現の微修正されたものを含めて、 この方法を「レシピの方法」という。)。そして、活断層長期 評価手法報告書には、長さが100kmを超えるような長大な活断層について、断層長さが断層面の幅の4倍に満たない場合には、松田式に基づき地震規模を想定するが、これを超える場合には、長さが4倍を超えないように区分した区間が連動するモデルを設定して地震規模を算出する手法が示されている。 なお、レシピの方法は、レシピが平成20年4月に改訂された際に追加されたものであるが、これは、従来のレシピが、断層帯を個別に取り上げて詳細に強震動評価を行うことを目的としてまとめられてきたのに対し、多くの断層帯を対象として一括して計算する場合や対象とする断層帯における詳細な情報 に乏しい場合であっても強震動の時刻歴を計算できるようにするため、一部の断層パラメータの設定を簡便化した方法として追加されたもので 一括して計算する場合や対象とする断層帯における詳細な情報 に乏しい場合であっても強震動の時刻歴を計算できるようにするため、一部の断層パラメータの設定を簡便化した方法として追加されたものである。 (甲49[26頁]、乙96[26頁]、106[2-1頁]、ヨ38[5頁]) ⅱ 微視的震源特性(主として震源断層の不均質性)の考慮平成28年改訂レシピは、活断層で発生する地震における震源断層モデルの微視的震源特性に関するパラメータとして、アスペリティの位置・個数、アスペリティの面積、アスペリティ及び背景領域の平均すべり量、アスペリティ及び背景領域の実効応力等 を設定することとしている。 そして、震源断層全体及びアスペリティの静的応力降下量と実効応力及び背景領域の実効応力の設定に当たって、円形破壊面を仮定し難い長大断層に関し、Somervilleetal. (1999)に基づき、震源断層全体の面積とアスペリティの総 面積の比率(アスペリティ面積比)を22%としている。また、 震源断層全体の静的応力降下量については、FujiiandMatsu’ura(2000)が、観測データに基づく回帰計算により、内陸の長大な横ずれ断層の静的応力降下量として3. 1MPaを設定しており、これを前提にアスペリティの静的応力降下量を算出すると約14.4MPaとなり、既往の調査、研究 成果とおおよそ対応する数値となるところ、上記値の適用範囲等については、横ずれ断層を対象とし、いくつかの条件下で導出された値であることを踏まえて今後十分検討してく必要があるものの、長大断層の静的応力降下量に関する新たな知見が得られるまでは暫定値として3.1MPaを与えることとしている。さらに、 平成28年改訂レシピは、この 踏まえて今後十分検討してく必要があるものの、長大断層の静的応力降下量に関する新たな知見が得られるまでは暫定値として3.1MPaを与えることとしている。さらに、 平成28年改訂レシピは、この円形破壊面を仮定せずアスペリティ面積比を22%、震源断層全体の静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは、暫定的に、断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層の地震を対象とする旨を定めている。 (乙ヨ38[8、11、12頁])⒝ 平成28年12月修正レシピ平成28年12月修正レシピは、平成28年改訂レシピを修正したものであるが、内容を変更することなく表現の微修正を図った点として、以下の2点が含まれていた。 ⅰ 巨視的震源特性の設定に関し、平成28年改訂レシピの「過去の地震記録などに基づき震源断層を推定する場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」及び「地表の活断層の情報をもとに簡便化した方法で震源断層を推定する場合」との記載が「過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判 断して震源断層モデルを設定する場合」及び「長期評価され た地表の活断層長さ等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」との記載にそれぞれ改められた。 ⅱ 円形破壊面を仮定せずアスペリティ面積比を22%、震源断層全体の静的応力降下量を3.1MPaと設定する取扱いにつき、平成28年改訂レシピの記載によれば、Mo=1.8×1020 (N・m)を上回らない場合には適用できないと誤解されるおそれがあったことから、①断層幅と平均すべり量とが飽和する場合の目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層、②①に該当しなくとも、アスペリティ面積比が大き には適用できないと誤解されるおそれがあったことから、①断層幅と平均すべり量とが飽和する場合の目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層、②①に該当しなくとも、アスペリティ面積比が大きくなったり、背景領域の応力降下量が負になったりするなど、非現実的なパラメ ータ設定になり、円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層等の2つの場合に上記取扱いの適用が可能である旨の記載に改められた。 (乙101、107、弁論の全趣旨)⒞ 平成29年改訂レシピ 平成29年改訂レシピは、震源断層モデルの設定に関し、平成28年改訂レシピ及びその表現の微修正を図った平成28年12月修正レシピの内容を維持している。(甲45[3~5、11、12頁]、乙24[3~5、11、12頁])中央構造線断層帯の断層形状及び地震規模に関する中央構造線断層 帯長期評価の概要中央構造線断層帯の断層形状及び地震規模に関する中央構造線断層帯長期評価の概要は、以下のとおりである。 a 断層形状(中央構造線断層帯長期評価(第二版))⒜ 伊予灘区間の断層の浅部の傾斜角 大野ほか(1997)により行われた反射法地震探査の結果によ ると、伊予灘における少なくとも深さ約2km以浅の活断層帯は高角である。また、四国電力(2015)は伊予灘区間の海域部で詳細な音波探査を行い、中央構造線断層帯の横ずれ運動に対応するフラワーストラクチャーを確認するとともに、同断層帯下部が深度2kmの三波川帯と領家帯との境界(北傾斜)に収れんすると解釈さ れている。以上のことから、伊予灘区間では深さ2km以浅では高角度で北傾斜の可能性がある。(甲83[30、31頁]、乙20[30、31頁])⒝ 中央構造 境界(北傾斜)に収れんすると解釈さ れている。以上のことから、伊予灘区間では深さ2km以浅では高角度で北傾斜の可能性がある。(甲83[30、31頁]、乙20[30、31頁])⒝ 中央構造線断層帯の断層の深部の傾斜角中央構造線の特に五条谷区間から伊予灘区間における断層深部の 傾斜角について、中角度(約40度)あるいは高角度(ないしほぼ鉛直)と評価する点について、これまでに指摘された根拠と現時点での評価は、次のとおりである。 ⅰ 中角度であるとする根拠の要旨伊予灘から別府湾に至る地域で行われた多数の反射法地震探査 等の成果によって、中角度傾斜の中央構造線の活動による可能性のある現在の成長する狭長な半地溝堆積盆地の存在が確認されている。盆地中央部を走る高角な中央構造線断層(活断層帯)は下方延長で中央構造線を切断していない。さらに、中央構造線の北側の堆積層に傾動沈降運動が認められるが、これは傾斜した断層 面の滑りに伴うロールオーバー構造と解釈される。地下深部で中角度に傾斜した横ずれ断層面が地表付近で高角度になることは、不自然ではない。また、GNSS観測(人工衛星から送られてくる電波を受信している地点の位置を測る測量方法)に基づく地殻変動からの傾斜角の推定では35~50度で北に傾斜する断層の モデルが最適と推定されている。このことは中央構造線の物質境 界が力学境界であることを示唆するものである。 ⅱ 高角度であるとする根拠の要旨トレンチ調査及びボーリング調査、反射法地震探査に基づくと地表付近の断層の傾斜は高角度であり、しかも地表の断層のトレースが直線的であることから、地表付近では高角度の断層が連続 していることを示している。地表付近の中央構造線断層帯が中角度であれば、地表の 付近の断層の傾斜は高角度であり、しかも地表の断層のトレースが直線的であることから、地表付近では高角度の断層が連続 していることを示している。地表付近の中央構造線断層帯が中角度であれば、地表の起伏に伴って断層走向は変わるはずであるが、そのような事実はない。また、讃岐山脈南縁東部区間における反射断面の結果から中角度の傾斜角が推定されているが、反射断面から見える境界は地質境界を意味しており、活断層であると断定 できない。さらに、第四紀以降の上下方向のずれの向きは、活断層のトレースに沿って北側低下と南側低下が混在し、典型的な横ずれ断層の上下変位パターンを示しており、中角度の断層面が純粋な横ずれ運動を生じるとの考えとは矛盾する。 ⅲ 地震本部の見解 中央構造線断層帯の傾斜角について、中角度か高角度かの判断根拠がいくつかあるため、現時点では両論を併記することとした。しかしながら、以下のような考察に基づき、中角度の可能性が高いと判断した。 中央構造線が地下深部まで中角傾斜であること、中央構造線断 層帯(活断層)が高角傾斜であることは両論とも一致している。 議論が分かれるのは次の2点である。第1に、高角な中央構造線断層帯と中央構造線はどのような関係かということである。第2に、中角である中央構造線が横ずれ卓越の運動を担えるかということである。 第1の点については、反射法地震探査断面が多数公表されてい るが、それらの中で高角である中央構造線断層帯(活断層)が下方において中角である中央構造線を切断していることを示す事実は確認されていない。第2の点については、①中央構造線は数千万年間以上にわたって断層活動を行ってきたと推定され、断層の強度や摩擦係数等が他の断層より小さいと想像される。②35~ を示す事実は確認されていない。第2の点については、①中央構造線は数千万年間以上にわたって断層活動を行ってきたと推定され、断層の強度や摩擦係数等が他の断層より小さいと想像される。②35~ 50度で北に傾斜する断層モデルにより、GNSSによる地殻変動が説明可能であるという報告がある。また、実際に2013年にパキスタンで発生したバルチスタン地震も最初の破壊が75度の傾斜角で、その後破壊が45度でほぼ純粋な横ずれをしたと主張する例もある。 中央構造線断層帯が下方において中角である中央構造線を切断している事実が確認されないことと、400km以上にわたる中央構造線に平行してごく近傍にのみ活断層帯が随伴する事実は、中角である中央構造線の活動に伴って浅部における中央構造線断層帯(活断層)が形成・成長しているという考えを支持する。さ らに中央構造線より南側の三波川帯や四万十帯などの外帯には活断層はほとんど存在せず、その延長部が中央構造線直下に分布することは高角の断層が形成しにくいことを示唆している。 今後、中央構造線断層帯の深部における傾斜角について更なる調査を実施する必要があり、その結果に基づいて、断層深部の傾 斜角を見直す可能性があることは留意されたい。 (甲83[32、33頁]、乙20[32、33頁])b 地震規模⒜ 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)は、中央構造線断層帯全 体の断層長さを約360kmとし、過去の活動時期の違いなどから、 ①金剛山地東縁区間(約23km)、②和泉山脈南縁区間(約44~52km)、③紀淡海峡-鳴門海峡区間(約43~51km)、④讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部区間(約130km)、⑤石鎚山脈北縁区間(約30km)、⑥石 (約23km)、②和泉山脈南縁区間(約44~52km)、③紀淡海峡-鳴門海峡区間(約43~51km)、④讃岐山脈南縁-石鎚山脈北縁東部区間(約130km)、⑤石鎚山脈北縁区間(約30km)、⑥石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)の6の活動区間に分けた。 ⅰ マグニチュードその上で、これらが4ないし6の区間に分かれて活動する可能性だけでなく、全体が同時に破壊する可能性があり、四国全域や断層帯全域が同時に活動する場合、その長さは200km以上となり、松田式の適用外となるところ、松田式によれば、断層長さ 80kmでM8.0となることから、このような断層が非常に長い区間である④及び⑥の区間や中央構造線断層帯全体が活動した場合は、M8.0又はそれ以上と評価した。 ⅱ モーメントマグニチュードまた、参考として、以下のとおり、モーメントマグニチュード も求めた。 (ⅰ) ⑥の区間(石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間。約130km)が個別に活動した場合断層幅を20~30km(断層幅が不明であることから④の区間の数値と同じと仮定)、断層の平均すべり量を2~7m(地 表の変位量を平均すべり量と同量とし、最大値は④の区間の地表最大変位量と同じと仮定)として、Kanamori(1977)を用いてMw7.4~8.0と評価した。もっとも、地表のずれの量(変位量)は、地下の断層面におけるすべり量と同量ではない可能性があり、また、仮に同量であったとしても、 強震動を起こす実効的なずれの量とは異なる可能性もあるため、 強震動の計算を行う場合等には、この点に十分留意する必要があるとしている。 (ⅱ) ④~⑥の区間が活動した場合④~⑥の各区間のモーメントの和から算出し、Mw7.8~8.2と評価した。 強震動の計算を行う場合等には、この点に十分留意する必要があるとしている。 (ⅱ) ④~⑥の区間が活動した場合④~⑥の各区間のモーメントの和から算出し、Mw7.8~8.2と評価した。 (ⅲ) 中央構造線断層帯全体(約360km)が活動した場合㋐①~⑥の各区間のモーメントマグニチュードを求めるに当たり各区間においてそれぞれ推定した平均すべり量を基に算出したモーメントの総和から求めたケース(M7.9~8.3)と、㋑最大の想定として、平均すべり量を全ての区間で7m(地 表最大変位量)と仮定して各区間においてモーメントを算出し、その総和から求めたケース(M8.1~8.4)の2つのケースから推定し、Mw7.9~8.4と評価した。 (甲79[1~4、22、30、31枚目]、乙ヨ33[1、2、11、38、77、78頁]) ⒝ 中央構造線断層帯長期評価(第二版)中央構造線断層帯長期評価(第二版)は、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)を見直し、豊予海峡-由布院も中央構造線断層帯と評価して断層帯全体長さを約444kmとするとともに、10の活動区間に改め、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)における 石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)を石鎚山脈北縁西部区間(41km)と伊予灘区間(88km)に分けた。 ⅰ マグニチュードその上で、上記区間が7ないし10の区間に分かれて活動する可能性や、全体が同時に破壊する可能性があり、活動区間が断層 全体の場合には断層長さは400km以上となるところ、松田式 の適用範囲は断層長さ80km以下とされていることから、単独区間及び同時に複数の区間が活動する場合で、かつ、断層長さが80kmを超える場合については松田式の適用範囲外とし、松田式を の適用範囲は断層長さ80km以下とされていることから、単独区間及び同時に複数の区間が活動する場合で、かつ、断層長さが80kmを超える場合については松田式の適用範囲外とし、松田式を求める際に用いた最大長さ80kmとその時のマグニチュード(M8.0)を基に、M8.0又はそれ以上と評価した。 ⅱ モーメントマグニチュードまた、参考として、以下のとおり、モーメントマグニチュードも求めた。 (ⅰ) 伊予灘区間(88km)が個別に活動した場合断層長さが80kmを超え、断層傾斜角を中角とした場合の 断層面積が1800k㎡を超えることから、断層傾斜角を40度、断層幅を23kmとして断層面積を計算し、Murotanietal.(2015)を適用してMw7.5と評価した。 (ⅱ) 中央構造線断層帯全体(約444km)が活動した場合 Murotanietal.(2015)で求めた地震モーメントを用いてKanamori(1977)によって算出し、中央構造線断層帯の傾斜角を40度と仮定した場合(地震発生層の下端深さを全体にわたり15kmと仮定し、断層幅を23.1kmとしている。)をMw8.0、傾斜角が深部にわた り高角とした場合(金剛山地東縁区間の断層幅を23.1km、それ以外の区間の断層幅を15kmとしている。)をMw7.8と評価した。 (甲83[58、72、73頁]、乙20[58、72、73頁])被告による中央構造線断層帯の断層形状及び地震規模の評価 被告は、中央構造線断層帯の断層形状及び地震規模につき、以下のと おり評価した。 a 中央構造線断層帯の断層形状⒜ 地震発生層の厚さⅰ 地震発生層の上端深さ被告は、気象庁一元化震源(平成9年10月~平成23 状及び地震規模につき、以下のと おり評価した。 a 中央構造線断層帯の断層形状⒜ 地震発生層の厚さⅰ 地震発生層の上端深さ被告は、気象庁一元化震源(平成9年10月~平成23年12 月)のうち、本件発電所を中心に半径100km程度、深さ50km以浅で発生した地震に基づき検討した結果、本件発電所周辺における内陸地殻内地震は、深さ2~12kmで発生していると評価した。 また、上記気象庁一元化震源のうち深さ25km以浅の地震に 基づき検討した結果、本件発電所敷地及び敷地近傍における地震発生層の上端を示すとされるD10%を5~6kmと評価した。 さらに、一般的に、地震発生層の上端深さはP波速度が6km/s相当の地層上面に対応すると言われているところ、PS検層(ダウンホール法)の結果、P波速度は、深度1280~200 0mにおいて約5.5km/sであることから、6km/sの地層上面の深さは少なくとも2km以深であり、これに対し、三波川変成岩類と領家花こう岩類との会合部の深さ(地質境界としての中央構造線)は、屈折法地震探査の結果から、浅くとも2km程度と推定されるとした。 そして、被告は、以上の知見により、地震発生層の上端深さは、5km程度と判断されるが、中央構造線断層帯における断層上端深さを2kmと設定したことを考慮し、内陸地殻内地震の地震動評価で用いる地震発生層の上端深さを2kmと設定した。 (乙ヨ11[6-5-24~6-5-25頁]、弁論の全趣旨) ⅱ 地震発生層の下端深さ 本件発電所周辺における内陸地殻内地震の発生状況は、上記ⅰのとおり、深さ2~12kmである。 地震発生層の下端深さは、地殻内部の温度分布に支配されていると考えられているところ、Vp/Vs比の 本件発電所周辺における内陸地殻内地震の発生状況は、上記ⅰのとおり、深さ2~12kmである。 地震発生層の下端深さは、地殻内部の温度分布に支配されていると考えられているところ、Vp/Vs比の大きい領域は、地殻内部が高温であるため地殻物質の溶融化によりP波速度には大き な変化がないが、S波速度が急激に低下していることを示すものと考えられる。そして、弘瀬ほか(2007)が行った地震波トモグラフィ解析結果によると、本件発電所敷地周辺では、深さ15~25km付近にかけて高Vp/Vs比領域が確認され、やや南方の地殻内地震は低Vp/Vs比領域で発生し、下限(15k m程度)を高Vp/Vs領域で制限されているように見えるとした。 また、地下の広域的な熱構造を示す指標の一つであるキュリー点深度(岩石が磁性を失うキュリー点温度(約580℃)に達する深度)は、大久保(1984)によると、本件発電所敷地周辺 では約11kmとされていること、本蔵ほか(1988)は、過去の大地震の断層モデルの断層面の下端深度は平均的にはキュリー点深度より1.3倍深いという結果を示し、さらに、偏差等も考慮し、断層面の下端はキュリー点深度の1.5倍と仮定していることからすると、敷地周辺における地震発生層の下端深さは、 11km×1.5=16.5kmとなるとした。 さらに、地震発生層の下端を示すとされるD90%は、伊藤(2006)によると、12~14kmと浅くなっている。 加えて、地震が発生する下端深さは、地下の温度とも密接な関係があるところ、キュリー点深度との対比から算出した敷地にお ける地殻熱量は80mW/㎡、深部ボーリングの採掘で取得した 地温勾配及び岩石コアの熱伝導率を用いて算出した地殻熱流量は74mW/㎡であり、T 点深度との対比から算出した敷地にお ける地殻熱量は80mW/㎡、深部ボーリングの採掘で取得した 地温勾配及び岩石コアの熱伝導率を用いて算出した地殻熱流量は74mW/㎡であり、Tanaka(2004)の知見に照らし合わせると、敷地周辺のD90%は15km程度と推定されるとした。 被告は、以上に加え、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂) も踏まえ、地震発生層の下端深さを15kmと判断した。 (乙ヨ11[6-5-25~6-5-28、6-5-159頁]、弁論の全趣旨)ⅲ 地震発生層の厚さ被告は、上記ⅰ及びⅱのとおり、中央構造線断層帯及び本件発 電所敷地周辺における内陸地殻内地震について、上端深さを2km、下端深さを15kmとし、地震発生層の厚さを13kmと評価した。(乙ヨ11[6-5-28頁])⒝ 断層傾斜角被告は、変動地形学的には、敷地前面海域の断層群の分布域にお いて、D層上面には南北方向で顕著な高低差は認められず、横ずれ断層の活動によって形成される典型的な地形、すなわち地溝やバルジが交互に並び、その長軸方向が非常に直線的な配列を示すこと(乙23)から、少なくとも海底下浅部における活断層はほぼ鉛直と評価した。そして、特に、三波川変成岩類と領家花こう岩類の会合部 が存在する沖合約8kmの地点のほぼ鉛直の活断層には、変位の累積性が顕著に見られることなどから、地下深部の震源断層も鉛直である方が自然であると考えた。 次に、地震学的には、近年国内外で発生した横ずれ断層による主な地震では震源断層はいずれもほぼ鉛直であることが明らかにされ ているとともに、緩く(低角度に)傾斜する断層面を横ずれさせる ような応力場は考えにくく、一般的に、横ずれ断層の震源断層面は鉛直である はいずれもほぼ鉛直であることが明らかにされ ているとともに、緩く(低角度に)傾斜する断層面を横ずれさせる ような応力場は考えにくく、一般的に、横ずれ断層の震源断層面は鉛直であると考えられていること、敷地前面海域の海底地形は、地溝とバルジが交互に直線的に配列するなど、典型的な横ずれ断層の特徴が示されていること、本件発電所が立地する四国北西部は横ずれ断層が卓越する地域であることが示されていることを踏まえると、 敷地前面海域の中央構造線断層帯の震源断層は鉛直である可能性が高いとした。 さらに、地球物理学的には、海上音波探査記録から海底下浅部の断層はいずれも高角度(鉛直に近い)であることが確認され、また、当該海上音波探査による探査断面を対象にアトリビュート解析によ る断層傾斜角の検討を実施した結果、海底下浅部に見られる高角度の断層の下方において、北傾斜する地質境界断層(地質境界としての中央構造線)が高角度の断層によって変位を受けている可能性が示唆されるとした。 被告は、以上の結果を総合的に勘案して、敷地前面海域の断層群 の震源断層の傾斜角を鉛直と評価した。 (乙ヨ11[6-3-59~6-3-66、6-3-211~6-3-229、6-3-260~6-3-276頁])⒞ セグメント区分長大活断層系のセグメント区分の考え方につき、「原子力発電所の 活断層系評価技術-長大活断層系のセグメンテーション」(土木学会、2003)では、幾何学的、地質・構造地質学的セグメント区分の基準として、断層の屈曲、断層の分岐及び他の断層との交差、第四紀堆積盆、断層の変位センス及び変位速度等が示され、また、挙動セグメント区分の基準として、古地震の破壊区間、平均活動間隔、 イベント時の断層変位量等が示されて の分岐及び他の断層との交差、第四紀堆積盆、断層の変位センス及び変位速度等が示され、また、挙動セグメント区分の基準として、古地震の破壊区間、平均活動間隔、 イベント時の断層変位量等が示されている。被告は、既往文献によ り、重信引張性ジョグ、串沖引張性ジョグ及び三崎沖引張性ジョグに顕著な第四紀堆積盆が形成されており、前二者では和泉層群上面に数百m以上の標高差があることや、後者の西に位置する豊予海峡セグメントでは北落ちの正断層成分が優勢であり、東側では南落ちの断層と北落ちの断層が交互に現れること、活動間隔が川上断層を 含む東部とその西部で異なる可能性があること、串沖引張性ジョグの活動回数が少なく、伊予断層が起こした地震の中には断層破壊が串沖引張性ジョグに及ばなかったものがあると推定されていること、各断層の横ずれ変位量は、川上-小松断層の約4mに対して、重信断層は約2.5m、伊予断層は約2mとされていることなどから、 四国北西部の中央構造線断層帯につき、東から川上セグメント(約36km)、重信引張性ジョグ(約12km)、伊予セグメント(約23km)、串沖引張性ジョグ(約13km)、敷地前面海域の断層群(伊予灘セグメント。約42km)、三崎沖引張性ジョグ(約13km)、豊予海峡セグメント(約23km)が存在すると評価した。 (前提事実11⑵アa⒜、乙ヨ11[6-3-51~6-3-59頁])b 応答スペクトルに基づく地震動評価⒜ 地震規模の算出被告は、約480kmケースを基本としつつ、約130kmケー ス及び約54kmケースについて評価を行い、約69kmケースについても念のため検討することとした。 そして、応答スペクトルに基づく地震動評価で基本的に採用した耐専式が、地震規模の想定とし ス及び約54kmケースについて評価を行い、約69kmケースについても念のため検討することとした。 そして、応答スペクトルに基づく地震動評価で基本的に採用した耐専式が、地震規模の想定として気象庁マグニチュードを用いていることから、地震規模は断層長さから松田式を適用して気象庁マグ ニチュードを算定したが、そのうち、断層長さが80kmを超える ケース、すなわち、約480kmケース及び約130kmケースについては、長さが80km以下になるように区分し、区分したセグメントごとに松田式を適用して気象庁マグニチュードを算出し、これらを武村式の適用により地震モーメントに変換した上で合算し、再度、武村式を適用して断層全体の気象庁マグニチュードを算出し た。かかる被告の算出手法により、約480kmケースではM8. 5、約130kmケースではM8.1、約69kmケースではM7. 9、約54kmケースではM7.7と算出された。 (前提事実11⑵アa⒝、⒞、乙95、ヨ31)⒝ 耐専式の適用の可否の検討 次に、被告は、上記各ケース(断層長さ)それぞれにつき、鉛直モデル及び北傾斜モデルを検討することとした。他方、南傾斜モデルについては、約480kmケースにおいては、等価震源距離が大きいため、約130kmケース及び約54kmケースにおいては、後述のとおり、等価震源距離ではなく、断層最短距離を用いたその 他の距離減衰式で評価するため、地震動は鉛直モデルと同じになるとして、検討の対象としなかった。 そして、被告は、距離減衰式については、①解放基盤表面の地震動として評価できること、②水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること、③震源の広がりを考慮できること、④敷地における地 震観測記録を用いて地 は、距離減衰式については、①解放基盤表面の地震動として評価できること、②水平方向及び鉛直方向の地震動が評価できること、③震源の広がりを考慮できること、④敷地における地 震観測記録を用いて地域特性等が考慮できること等の理由から、基本的に耐専式を採用することとし、上記各ケースにつき、以下のとおり、耐専式の適用の可否等について検討した。なお、本件発電所敷地の地盤は、S波速度2.6km/sを示しており、耐専式が前提とするS波速度2.2km/sの地盤よりも堅硬であるが、この ことは、耐専式の適用に当たっては特に考慮しなかった。 ⅰ 約480kmケースについて被告は、約480kmケースの鉛直モデル及び北傾斜モデルともに耐専式の適用範囲内であることを確認した。 次に、約480kmケースでは、内陸補正を考慮した場合に、その他の距離減衰式の地震動レベルと整合的であるが、内陸補正 を考慮しない場合でも、その他の距離減衰式の地震動レベルとのかい離は比較的大きくないこと、その他の距離減衰式の評価結果が断層モデルを用いた手法による地震動評価結果ともほぼ整合的であることを確認した。 被告は、これらの結果から、約480kmケースについては、 鉛直モデル及び北傾斜モデルともに内陸補正を考慮せずに耐専式を適用して評価した。 ⅱ 約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケース被告は、上記各ケースは、いずれも「極近距離」よりも近傍であり、基本的には耐専式の適用範囲外にあること、特に、鉛直モ デルについては耐専式の検証に用いた観測記録がない範囲であることを確認した上で、耐専式による評価結果とその他の距離減衰式による評価結果及び断層モデルを用いた手法による地震動評価結果とを比較して、耐専式の適用の可否につい 検証に用いた観測記録がない範囲であることを確認した上で、耐専式による評価結果とその他の距離減衰式による評価結果及び断層モデルを用いた手法による地震動評価結果とを比較して、耐専式の適用の可否について検証した。 (ⅰ) 鉛直モデル 各鉛直モデルにおいては、内陸補正を考慮しない場合、考慮した場合のいずれもが、その他の距離減衰式の地震動レベルと大きくかい離していることを確認した。そこで、いずれも耐専式の適用範囲外とした。 そして、その他の距離減衰式同士の結果が概ね同等であった ことや、断層モデルを用いた手法による地震動評価結果(ただ し、約130kmケース及び約54kmケース)とも整合的であったことから、その他の距離減衰式を採用した。 (ⅱ) 北傾斜モデル各北傾斜モデルにおいては、内陸補正を考慮した場合には、その他の距離減衰式の地震動レベルと比較的整合的であるが、 内陸補正を考慮しない場合にはかい離が大きく、過大評価となっていることから、内陸補正を考慮するのが適切であると評価した。そして、その他の距離減衰式の評価結果は、断層モデルを用いた手法による地震動評価結果とほぼ整合的であった。 そこで、内陸補正を考慮した上で耐専式を適用することが適 切であるが、被告は、保守的に、内陸補正を考慮せずに耐専式を適用して評価した。 (前提事実11⑵アa⒞、乙ヨ31[95、110~132頁]、弁論の全趣旨)⒞ 上記⒜及び⒝の結果をまとめると、以下のとおりである。 鉛直モデル北傾斜モデルM約480kmケース耐専式(内陸補正なし)耐専式(内陸補正なし)8.5約130kmケースその他の距離減衰式耐専式(内陸補正なし)8.1約69km M約480kmケース耐専式(内陸補正なし)耐専式(内陸補正なし)8.5約130kmケースその他の距離減衰式耐専式(内陸補正なし)8.1約69kmケースその他の距離減衰式耐専式(内陸補正なし)7.9約54kmケースその他の距離減衰式耐専式(内陸補正なし)7.7⒟ 基準地震動Ss-1の策定被告が、上記⒞の方法で応答スペクトルに基づく地震動評価を行 って基準地震動Ss-1を算定したところ、最大値は650ガルとなった。(前提事実11⑵ウa)c 断層モデルを用いた手法による地震動評価⒜ 基本震源モデルの策定ⅰ スケーリング則の選定 被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価において必要な震源パラメータを設定する上で用いるスケーリング則については、壇ほか(2011)は、これに基づく設定値が、地質調査に基づく地表最大変位量(2~7m程度)と整合的であること、地震モーメント(Mo)規模、平均応力降下量、アスペリティの 応力降下量の3つのパラメータを一連で設定できること、異なる長さの断層(約480kmケース、約130kmケース及び約54kmケース)に対して適用可能であり、断層長さの影響を同一の手法で評価できることから、壇ほか(2011)を基本として採用するとともに、約480kmケース及び約130kmケース については、FujiiandMatsu’ura(2000)のスケーリング則を、約54kmケースについては、入倉・三宅(2001)の地震モーメントとFujiiandMatsu’ura(2000)の平均応力降下量を組み合わせて用いる手法を併用することとした。(乙ヨ11[6-5-33頁]、 ヨ3 倉・三宅(2001)の地震モーメントとFujiiandMatsu’ura(2000)の平均応力降下量を組み合わせて用いる手法を併用することとした。(乙ヨ11[6-5-33頁]、 ヨ31[23、25~27、37、44頁])ⅱ 平均すべり量の設定被告は、四国西部の中央構造線断層帯における地表の変位量が2~4mであるとする堤・後藤(2006)による中央構造線断層帯の地質調査結果(乙ヨ89)に加え、地表最大変位量は平均 すべり量の概ね2~3倍であり、断層長さが約100kmで約1 0mに飽和する旨の室谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)の知見(前記アb⒡)から導かれる長大断層の平均すべり量(約3~5m)に整合するように、約480kmケースで2. 62~5.83m、約130kmケースで2.67~4.27mと設定した。(乙48[13頁]、ヨ31[54、57~83頁]、 ヨ89、弁論の全趣旨)⒝ 不確かさの考慮ⅰ 基本モデルに考慮する不確かさ被告は、断層モデルを用いた手法による地震動評価における不確かさの考慮に当たって、地震発生時の環境に左右されて地震の 度に変化する偶然的不確かさ(破壊開始点)及び調査精度や知見の限界を要因とする認識論的不確かさのうち平均モデルを事前に特定し難いもの(アスペリティ深さ、断層長さ(連動))は、基本震源モデルに織り込むこととした。具体的には、約480kmケース、約130kmケース及び約54kmケースを全て基本震源 モデルとして位置付けるとともに、アスペリティ深さについては、保守的に断層上端に配置し、破壊開始点については、事前の特定が困難なため、地震動評価への影響が大きくなるよう断層東下端、中央下端及び西下端の3か所設定(ただし、地震動評価に最も影 ィ深さについては、保守的に断層上端に配置し、破壊開始点については、事前の特定が困難なため、地震動評価への影響が大きくなるよう断層東下端、中央下端及び西下端の3か所設定(ただし、地震動評価に最も影響が大きい応力降下量の不確かさを考慮するに当たっては5か所 設定)することとした。 ⅱ 独立で考慮する不確かさ他方、調査精度や知見の限界を要因とする認識論的不確かさのうち、事前の調査や経験式等に基づいて平均モデルを特定できる①アスペリティの応力降下量、②北傾斜モデル、③南傾斜モデル、 ④破壊伝播速度及び⑤アスペリティの平面位置については、以下 のとおり、独立した不確かさとして、基本震源モデルに重畳させて考慮することとした。 (ⅰ) アスペリティの応力降下量(上記①)2007年新潟県中越沖地震の震源特性として、短周期レベルが平均的な値の1.5倍程度大きかったという知見がある。 この知見は、ひずみ集中帯に位置する逆断層タイプの地震という地域性によるものと考えられるところであり、本来であれば、過去の地震観測記録に基づいて本件発電所敷地周辺で発生する地震の震源特性の分析を行うべきであるが、本件発電所敷地周辺では、規模の大きい内陸地殻内地震は発生していないことを 踏まえ、上記知見に基づき、アスペリティの応力降下量につき基本震源モデルの1.5倍又は20MPaとした場合の評価を行った。 (ⅱ) 北傾斜モデル(上記②)敷地前面海域の断層群の震源断層は横ずれ断層と推定される ため、傾斜角が高角度である可能性が高いが、中央構造線断層帯が北へ傾斜する地質境界としての中央構造線と一致する可能性を完全には否定できないとして、傾斜角90度のほか、北に30度傾斜させた場合の評価も行った。 (ⅲ) 南傾斜モ 性が高いが、中央構造線断層帯が北へ傾斜する地質境界としての中央構造線と一致する可能性を完全には否定できないとして、傾斜角90度のほか、北に30度傾斜させた場合の評価も行った。 (ⅲ) 南傾斜モデル(上記③) 断層傾斜角のばらつきを踏まえ、本件発電所敷地側に傾斜する場合を考慮し、横ずれ断層について南に80度傾斜させた場合も評価した。 (ⅳ) 破壊伝播速度(上記④)海外の長大な活断層の破壊伝播速度に関する知見を踏まえ、 約480kmケース及び約130kmケースについては、Vr (破壊伝播速度)=Vs(地震発生層のS波速度)の場合の評価を行い、約54kmケースについては、宮腰ほか(2003)の知見を踏まえて、Vr=0.87Vsの場合の評価を行った。 (ⅴ) アスペリティの平面位置(上記⑤)基本的にはジョグにアスペリティは想定されないものの、完 全には否定できないことから、本件発電所敷地正面のジョグにアスペリティを配置する場合の評価を行った。 (乙ヨ11[6-5-31~6-5-33、6-5-41、6-5-42、6-5-70~6-5-93頁]、ヨ31[20~24、36~44頁]) ⒞ 地震規模の評価結果被告は、約480kmケースでMw7.7~8.0、約130kmケースでMw7.4~7.8、約54kmケースでMw6.9~7.4と評価した。(前提事実11⑵アa⒟ⅱ)⒟ 地震動評価 約480kmケースについて、統計的グリーン関数法及び経験的グリーン関数法により評価し、両者を比較した上で、原子炉施設に影響の大きい周期0.1秒付近の地震動について厳しい結果を与えた経験的グリーン関数法を採用して、地震動評価を行った。(前提事実11⑵アa⒟ⅲ) ⒠ 基準地震動Ss- た上で、原子炉施設に影響の大きい周期0.1秒付近の地震動について厳しい結果を与えた経験的グリーン関数法を採用して、地震動評価を行った。(前提事実11⑵アa⒟ⅲ) ⒠ 基準地震動Ss-2の策定断層モデルを用いた手法による地震動評価の結果のうち、本件原子炉施設に与える影響が大きいケースとして、内陸地殻内地震のうち約480kmケースにおける壇ほか(2011)及びFujiiandMatsu‘ura(2000)に基づき、応力降下量の 不確かさを考慮したケース並びに約54kmケースにおける入倉・ 三宅式に基づき、上記不確かさを考慮したケースを選定し、経験的グリーン関数法と理論地震動についてハイブリッド合成を行った。 被告は、その結果及び工学的判断を踏まえ、基準地震動Ss-2(8ケース)を策定したところ、その最大値は579ガルであった。(前提事実11⑵ウb) イ判断以下、原告らの主張を踏まえ、中央構造線断層帯の基準地震動に関する被告の評価並びにこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点がないか検討する。 応答スペクトルに基づく地震動評価 a 中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)との比較について原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イaのとおり、被告は、約130kmケースでMw7.4~7.8、約480kmケースでMw7.7~8.0と地震規模を想定しているが、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)と比較して過小であり、また、被告が依拠した室 谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)の知見は、主に海外のデータに基づくものであり、国内における長大断層に関する確立した知見であるともいえない旨主張する。この点、原告らは、上記の点につき、応答スペクトルに基づく地震動評価の 2010)の知見は、主に海外のデータに基づくものであり、国内における長大断層に関する確立した知見であるともいえない旨主張する。この点、原告らは、上記の点につき、応答スペクトルに基づく地震動評価の問題点として主張するが、原告らが指摘するMwの値や上記知見の活用は、断層モデルにおける ものと認められることから、以下、これを前提に検討する。 確かに、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)が、石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)が活動した場合の地震規模をMw7.4~8.0、中央構造線断層帯全体(約360km)が活動した場合の地震規模をMw7.9~8.4と想定している(前記アb⒜ ⅱ(ⅰ)、(ⅲ))のに対し、被告は、約130kmケースでMw7.4~7. 8、約480kmケースでMw7.7~8.0と想定しており(前記アc⒞)、Mwの値のみを単純に比較すれば、被告の地震規模の想定が過小になっているようにも見える(ただし、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)は、長さ480kmの断層が活動した場合の地震規模を想定しておらず、約480kmケースについては中央構造線断層 帯長期評価(一部改訂)と適切に比較することは困難である。)。 この点、両者が想定する地震規模の違いは、断層の平均すべり量の相違等に起因するものと考えられる。 すなわち、平均すべり量につき、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)は、地表最大変位量が断層の平均すべり量と同じという仮定や、 一部区間の断層幅や断層の平均すべり量が全長にわたって同一であるという仮定に基づき、石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)が活動した場合の平均すべり量を2~7m、中央構造線断層帯全体が活動した場合の平均すべり量を全ての区間で7mと仮定している(前記アb いう仮定に基づき、石鎚山脈北縁西部-伊予灘区間(約130km)が活動した場合の平均すべり量を2~7m、中央構造線断層帯全体が活動した場合の平均すべり量を全ての区間で7mと仮定している(前記アb⒜ⅱ(ⅰ)、(ⅲ))。これに対し、被告は、四国西部の中央構造線断 層帯における地表の変位量が2~4mであるとする堤・後藤(2006)による中央構造線断層帯の地質調査結果に加え、地表最大変位量は平均すべり量の概ね2~3倍であり、断層長さが約100kmで約10mに飽和する旨の室谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)の知見(前記アb⒡)から導かれる長大断層の平均すべり量(約3 ~5m)に整合するよう各ケースの平均すべり量を約130kmケースで2.67~4.27m、約480kmケースで2.62~5.83mと設定したことが認められ(前記アc⒜)、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)と被告が設定した断層の平均すべり量には相違がある。 そして、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)自体が、地表の変 位量と断層の平均すべり量とは同量でない可能性があるため、強震動の計算を行う場合等は、この点に留意する必要がある旨述べているのに対し(前記アb⒜ⅱ(ⅰ))、被告が参照した室谷ほか(2009)及び室谷ほか(2010)は、主に海外の長大断層で発生した地震のデータを中心に検討したものではあるものの(前記アb⒡)、室谷ほか (2010)が査読論文化されたMurotanietal.(2015)が平成28年改訂レシピ以降のレシピで採用され(前記アb⒡ⅱ、アc)、中央構造線断層帯長期評価(第二版)においても断層長さが80kmを超える活動区間の地震規模の想定に当たって、Murotanietal. (2015)が用いられ 採用され(前記アb⒡ⅱ、アc)、中央構造線断層帯長期評価(第二版)においても断層長さが80kmを超える活動区間の地震規模の想定に当たって、Murotanietal. (2015)が用いられているとおり(前 記アb⒝ⅱ(ⅱ))、妥当性が確認されている知見であるといえることからすると、被告による断層の平均すべり量の設定及びこれに基づく地震規模の評価は合理性を有するものと認められる。これは、中央構造線断層帯長期評価(第二版)が、中央構造線断層帯全体(約444km)が活動した場合につき、傾斜角を40度とした場合をMw8.0、 傾斜角を高角とした場合をMw7.8と評価しており(前記アb⒝ⅱ(ⅱ))、被告の上記評価と整合することからも裏付けられているといえる。 以上によると、被告の地震規模の想定が中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)の想定を下回っていることをもって、被告の上記評価が 不合理であるとは認められない。 b 被告による推定手法について⒜ セグメントの区分等による地震規模評価について原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イb⒜のとおり、①約480kmケース及び約130kmケースに関する被告の地震規模 の算出方法は、長さが100kmを超える長大な活断層から発生す る地震のすべり量は飽和するとの確立していない知見を前提とするものであるが、上記両ケースにおいても、そのまま松田式を適用して、地震規模を想定すべきである、②実際の活断層の活動が被告想定の4ケースのいずれかに当てはまるとは必ずしもいえず、被告のセグメント区分に基づく評価を前提とすると、約69kmケースよ りも約480kmケースや約130kmケースの方が小さい地震動評価を導いているのであるから、約69kmケースと約130k ず、被告のセグメント区分に基づく評価を前提とすると、約69kmケースよ りも約480kmケースや約130kmケースの方が小さい地震動評価を導いているのであるから、約69kmケースと約130kmケースの中間に最も地震動が大きくなるケースが存在するはずであり、約100~130km程度を基本ケースとして想定すべきである旨主張する。 しかしながら、上記①の点(松田式をそのまま適用しなかった点)につき、平成28年改訂レシピは、断層長さが概ね80kmを超える場合は、松田式の基になったデータの分布により、松田式の適用範囲を逸脱するおそれがあるとして、活断層長期評価手法報告書に示された手法等を参考にしながら、マグニチュードを算定するよう 求めており、活断層長期評価手法報告書では、長さが100kmを超えるような長大な活断層について、断層長さが断層面の4倍を超える場合には、長さが4倍を超えないように区分した区間が連動するモデルを設定して地震規模を算出する手法が示されている(前記アc⒜ⅰ(ⅱ))。また、中央構造線断層帯長期評価(第二版)も、断 層長さが80kmを超える場合には、松田式の適用範囲外として松田式を求める際に用いた最大長さ80kmとその時のマグニチュード(M8.0)を基に、M8.0又はそれ以上と評価している(前記アb⒝ⅰ)。 これらのことからすれば、断層長さが80kmを超える場合に松 田式をそのまま適用することは想定されていないものと認められる。 そうすると、被告が、このような松田式の適用範囲を踏まえて、約480kmケース及び約130kmケースに松田式を適用するに当たって、長さが80km以下になるように区分し、区分したセグメントごとに松田式を適用し、武村式を介した上で、その総和をもっ 踏まえて、約480kmケース及び約130kmケースに松田式を適用するに当たって、長さが80km以下になるように区分し、区分したセグメントごとに松田式を適用し、武村式を介した上で、その総和をもって気象庁マグニチュードを算出したこと(すなわち、原告らが主張 するような長大断層におけるすべり量の飽和を考慮したものではない。)は、上記報告書記載の断層を区分した上で、各区間が連動するモデルを設定して地震規模を算出する手法にも沿うものであり、不合理であるとは認められない。このことは、被告による地震動の評価が、約480kmケースではM8.5、約130kmケースでは M8.1と、いずれも中央構造線断層帯長期評価(第二版)の評価(M8.0又はそれ以上)に沿うものであることからも裏付けられているといえる。 また、上記②の点(約100~130km程度を基本ケースとして想定すべきとする点)については、被告による既往文献等を踏ま えたセグメント区分自体(前記アa⒞)については、特段不合理な点は認められない。そうすると、被告が、約480kmケースを基本としつつ、断層が部分破壊するケースも考慮して、川上セグメント、伊予セグメント及び敷地前面海域の断層群が連動する約130kmケース、敷地前面海域の断層群が活動する約54kmケース、 更には、敷地前面海域の断層群と両端のジョグ全部が連動する約69kmケースを想定して地震規模を想定したことは合理的であると認められる。このように、被告によるセグメント区分が不合理であると認められない以上、約69kmケースよりも約480kmケースや約130kmケースの方が小さい地震動評価を導いていること のみをもって、約69kmケースと約130kmケースの中間に最 も地震動が大きくなるケー ケースよりも約480kmケースや約130kmケースの方が小さい地震動評価を導いていること のみをもって、約69kmケースと約130kmケースの中間に最 も地震動が大きくなるケースが存在する合理的根拠があるものとは認め難く、約100~130km程度を基本ケースとして想定すべきであるとは認められない。 なお、応答スペクトルに基づく地震動評価において、約69kmケース及び約54kmケースの地震動評価の方が約480kmケー スや約130kmケースの地震動評価より大きくなっているのは、約69kmケース及び約54kmケースは、約480kmケースとは異なり基本的に耐専式の適用範囲外であるにもかかわらずあえて耐専式が適用されていることや(前記アb⒝)、約480kmケース及び約130kmケースよりも等価震源距離が近く(乙ヨ31[1 30頁])、等価震源距離が近くなるほど地震動レベルが大きくなるという耐専式の特性(前記アb⒝)が現れたものと考えられるから、このような結果が生じたことが被告の地震動評価が不合理であることに直ちに結びつくものとは認められない。 以上によると、①約480kmケース及び約130kmケースに おいてそのまま松田式を適用しなかったこと、②約100~130kmケース程度を基本ケースとして想定しなかったことをもって、被告の評価が不合理であるとは認められない。 ⒝ 松田式のばらつきの考慮について原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イb⒝のとおり、本件 ばらつき条項の趣旨は、経験式によって算出される平均値と実際に発生する地震の地震規模とがかい離する可能性を考慮し、安全性の見地から、より大きい方向でかい離する可能性を想定すべきとするものであるところ、約480kmケースを考慮したとしても される平均値と実際に発生する地震の地震規模とがかい離する可能性を考慮し、安全性の見地から、より大きい方向でかい離する可能性を想定すべきとするものであるところ、約480kmケースを考慮したとしても、セグメントごとに区分した上で、それぞれの地震規模を合算するという 方法により、断層長さに関する不確かさを考慮し尽くしているとは いえず、現に、地震動評価が他のケースよりも小さくなっていることなどからすれば、被告は、松田式の有するばらつきを十分に考慮していない旨主張する。 この点、前記3⑵アbで説示したとおり、経験式は、基となるデータの地域特性の相違によってばらつきが生じるものである。 そして、設置許可基準規則解釈別記2は、本件ばらつき条項のように経験式が有するばらつきに言及していない一方で、基準地震動の策定に当たっては、地域特性を十分に踏まえて、各種の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確か さ並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)につき、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分類した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮することを求めており(前提事実11⑴ア)、経験式が有する上記ばらつきを補うために、 地域特性を踏まえた不確かさを考慮することで、保守的な地震動評価をすることを求めているものと解される。 また、地震ガイドでは、本件ばらつき条項が定められているところ(前提事実11⑴イb)、同条項が、経験式の有する当然の性質を確認し、適用範囲の検討の際の留意点を注意的に規定したにすぎ ないものであるこ ガイドでは、本件ばらつき条項が定められているところ(前提事実11⑴イb)、同条項が、経験式の有する当然の性質を確認し、適用範囲の検討の際の留意点を注意的に規定したにすぎ ないものであることは、前記3⑵アbで説示したとおりであり、経験式が有するばらつきを経験式の適用結果に定量的に上乗せすることを求めているものとは解されず(このような手法は、経験式それ自体を修正することになる上、地震の地域特性を軽視することにもなり、妥当でない。)、設置許可基準規則解釈別記2と同様、経験 式のばらつきを補うために、地域特性を踏まえた不確かさを考慮す ることを求めているものと解される。地震ガイドがこのような立場を取っていることは、地震ガイドの表現の改善が行われた令和4年地震ガイドにおいて、本件ばらつき条項が削除され、経験式の適用条件、適用範囲について確認することが留意事項として挙げられ、その解説部分に、経験式の基となった観測データにばらつきが存在 するのは当然であるとして、適用条件、適用範囲、基となったデータの特性等への留意が必要である旨記載されたことや基準地震動の策定に係る審査の基本方針として、地震動評価に大きな影響を与えると考えられる不確かさを適切に考慮しているかを総合的に判断することが明示されたこと(前提事実11⑴イ)からも裏付けられ ている。 したがって、新規制基準は、経験式のばらつきにつき、地域特性を踏まえた不確かさを考慮することで保守的に地震動評価をすることを求めているということができる(このような解釈は、基準地震動の策定に当たって、経験式が有するばらつきは、経験式を用いる 際に設定するパラメータの不確かさによって生じるもので、この不確かさを考慮することでばらつきが考慮されると考えられている 基準地震動の策定に当たって、経験式が有するばらつきは、経験式を用いる 際に設定するパラメータの不確かさによって生じるもので、この不確かさを考慮することでばらつきが考慮されると考えられている旨を複数の専門家が指摘していること(乙350~352)とも整合的である。)。 そこで、上記のような考え方に照らし、松田式の有するばらつき につき、不確かさの考慮が適切に行われているか検討するに、まず、松田式は、Mo≧6.8の地震について、日本列島における地殻内地震の震源断層に対し適用性が高いとされており(前記アa)、そもそも、ばらつきは大きいものではないと認められる。 そして、地震規模は断層長さだけでなく断層幅にも左右されるこ と、松田式は、断層長さと地震規模(気象庁マグニチュード)との 関係を表す経験式であり、断層幅のデータが用いられていないこと(前記アa)から、ばらつきの原因として断層幅も考えられるところ、被告は、前記アa⒜で認定したとおり、中央構造線断層帯の断層厚さを保守的に設定した上で、北傾斜モデルについても評価したことが認められる。 また、被告は、中央構造線断層帯長期評価(一部改訂)及び別府-万年山断層帯長期評価などを踏まえ、約480kmケース、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースを断層長さとして設定し(前提事実11⑵アa⒞)、各ケースに松田式を適用して地震規模を想定し、耐専式の適用範囲外になるケース(約1 30kmケース、約69kmケース及び約54kmケース)にもあえて耐専式を適用するなどして応答スペクトルに基づく地震動評価を行い、本来行うべき内陸補正も行っていないこと(前記アb⒝)が認められる。 以上によると、被告は、松田式が有するばらつきを )にもあえて耐専式を適用するなどして応答スペクトルに基づく地震動評価を行い、本来行うべき内陸補正も行っていないこと(前記アb⒝)が認められる。 以上によると、被告は、松田式が有するばらつきを補うために、 地域特性を踏まえた不確かさを適切に考慮しているものと認められる。なお、約480kmケース及び約130kmケースについて長さが80km以下になるように区分した上で、松田式を適用したことが不合理でないこと、上記両ケースの地震動評価が約69kmケース及び約54kmケースよりも小さくなることが直ちに不合理に なるものではないことは、前記⒜で説示したとおりである。 したがって、被告が、松田式のばらつきを十分に考慮していないものとは認められない。 ⒞ 耐専式の適用排除について原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イb⒞のとおり、約1 30kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直 モデルに関し、耐専式の適用を排除したことに合理的理由はなく、また、これらのケースについて耐専式の適用に代わって適用したその他の距離減衰式の選定は恣意的であり、不合理である旨主張する。 しかしながら、耐専式を含む距離減衰式は、過去の地震観測データを回帰分析することによって得られた一般法則を導く計算式であ り、精度の高い予測を行うには、その基となった観測記録に係るデータベース(地震規模、観測点と断層との距離、観測地点の地盤データ等)の範囲で適用されるべきものであるから、評価対象となる地震規模や観測点との距離等がデータベースの範囲を外れる場合には、当該距離減衰式の適用可能性を慎重に検証する必要があり、地 震ガイドにおいても、用いられている地震記録の地震規模、震源距離等から、適用条件、適用範囲につい データベースの範囲を外れる場合には、当該距離減衰式の適用可能性を慎重に検証する必要があり、地 震ガイドにおいても、用いられている地震記録の地震規模、震源距離等から、適用条件、適用範囲について検討した上で、距離減衰式が適切に選定されていることを確認することが定められている(地震ガイドⅠ.3.3.1⑴①1)、前提事実11⑴イc)。そして、耐専式については、コントロールポイントが設定された「極近距離」 よりも近傍の地震については、観測データが少なく、コントロールポイントも設けられていないことから、耐専式を適用することが基本的に想定されておらず、そのような地震に対する耐専式の適用の可否に当たっては、他の距離減衰式の評価結果又は断層モデルを用いた手法による地震動評価結果と比較するなどして、総合的に判断 を行う必要があるとされている(前記アb⒞)。 被告は、前記アb⒝のとおり、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースが、いずれも「極近距離」よりも近傍であり、基本的には耐専式の適用範囲外であることを前提に、これらのケースの各モデルにおいて、内陸補正を考慮しない場合と考 慮した場合の双方について、その他の距離減衰式の評価結果や断層 モデルを用いた手法による地震動評価結果と比較しながら耐専式の適用可能性を検証し、上記各ケースの各鉛直モデルについては、その他の距離減衰式同士の結果については概ね同等であり、また、震源が敷地に近く、その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震について重視されている必要があるとされている 断層モデルを用いた手法による地震動評価(前提事実11⑴イa)の結果とも整合的であったのに対し、耐専式を適用した場合は、内陸補正を考慮しても他の評価結果と 視されている必要があるとされている 断層モデルを用いた手法による地震動評価(前提事実11⑴イa)の結果とも整合的であったのに対し、耐専式を適用した場合は、内陸補正を考慮しても他の評価結果とのかい離が大きいことから、いずれも耐専式の適用範囲外と判断したこと(前記アb⒝ⅱ)からすると、かかる被告の評価は、上記耐専式の適用可能性の検証手法 を踏まえたものであり、合理的であるといえ、また、被告がその他の距離減衰式を恣意的に選択したとも認められない。 なお、原告らは、コントロールポイントが成立当初は存在しておらず、後に便宜的に設定されたものにすぎないのであって、上記3ケースの各鉛直モデルに対して耐専式の適用を排除する理由になら ない旨主張するが、上記のとおり、経験式である耐専式は、その基となった観測記録に係るデータベースの範囲で適用されるべきものであり、耐専式の「極近距離」よりも近傍については、コントロールポイントの有無にかかわらず、そもそも観測データが少なく、基本的に耐専式を適用することは想定されていないのであるから、原 告らの指摘は当たらない。また、原告らが指摘する2000年鳥取県西部地震の賀祥ダム、1995年兵庫県南部地震における神戸大学、1999年トルコKocaeli地震SAKARYA観測点、台湾集集地震TCU071観測点については、内陸補正を考慮した結果、耐専式の適用可能性が示唆されているが、これらの事例も踏 まえた上で、「極近距離」よりも近傍については、耐専式の適用可能 性を十分に検証する必要があるとされており(乙34、35)、近年、震源近傍の地震観測記録が得られ、耐専式の適用範囲の拡大に向けて研究が進められているにとどまること(甲55)からすると、上記各地震の存在等をもって、「 必要があるとされており(乙34、35)、近年、震源近傍の地震観測記録が得られ、耐専式の適用範囲の拡大に向けて研究が進められているにとどまること(甲55)からすると、上記各地震の存在等をもって、「極近距離」よりも近傍についても耐専式が適用可能であるとは認められない。さらに、原告らは、その他 の距離減衰式は、いずれも、断層距離10km程度から距離が短くなっても加速度があまり変わらないものであって科学的裏付けがない上、地盤データ、地震規模及び距離が本件発電所敷地と整合せず、また、そのうち5つの距離減衰式については、海外での偏ったデータを基にしているにすぎず、高周波地震動への対応には問題がある とされているなど信頼性が確保されているとはいえない旨主張するが、前述のとおり、その他の距離減衰式同士の結果が概ね同等であるのみならず、震源が敷地に近い場合に重視される必要があるとされている断層モデルを用いた手法による地震動評価の結果とも整合していることからすると、その他の距離減衰式が信頼性に欠けるも のとは認められない。 したがって、被告が約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルについて耐専式の適用を排除してその他の距離減衰式を適用したことが不合理であるとは認められない。 ⒟ 耐専式のばらつきについて原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イb⒟のとおり、被告は、耐専式のばらつきについて定量的上乗せをしておらず、内陸補正を行わないことで不確かさを考慮したとする被告の手法は、新規制基準に反し不合理である旨主張する。 しかしながら、新規制基準が、経験式が有するばらつきにつき、 定量的な上乗せをすることを求めておらず、地域特性を踏まえた不確かさを適切に考慮することで保守 理である旨主張する。 しかしながら、新規制基準が、経験式が有するばらつきにつき、 定量的な上乗せをすることを求めておらず、地域特性を踏まえた不確かさを適切に考慮することで保守的に地震動評価をすることを求めていることは前記⒝で説示したとおりである。 そこで、被告が、保守的に地震動評価をしているかについてみるに、内陸地殻内地震の地震動レベルは、海溝型地震と比べて小さい という特性を反映するため、耐専式による評価では、内陸地殻内地震の地震動レベルを算定するための内陸補正係数が提案されているところ(前記アb⒝)、内陸補正係数は、耐専式を内陸地殻内地震に適用する際、対象とする地震の震源メカニズム等を過去の事例と照らし合わせ、妥当性を確認した上で、内陸補正係数を乗じること で、地震動の平均的な特性を表すことができるとして、一般社団法人日本電気協会原子力規格委員会が定めた規格において採用され、規制委員会もその妥当性を認めているものである(乙15[246頁]、98[253頁]、ヨ36[47頁])。そして、本件発電所敷地の地盤(S波速度2.6km/s)は、耐専式が前提とする地盤 (S波速度2.2km/s)より堅硬であり(前記アb⒝)、地震動の増幅がより抑えられることからすると、内陸補正係数を乗じるのが相当であるといえるところ、現に、被告が耐専式が適用可能であると判断した約480kmケースの鉛直モデル及び北傾斜モデル並びに約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケー スの各北傾斜モデルについて、内陸補正を考慮した場合、その他の距離減衰式の地震動レベルと比較的整合的であった。したがって、本来であれば、内陸補正を考慮するのが妥当であるが、被告は、あえて保守的に内陸補正を考慮していないことが認め 補正を考慮した場合、その他の距離減衰式の地震動レベルと比較的整合的であった。したがって、本来であれば、内陸補正を考慮するのが妥当であるが、被告は、あえて保守的に内陸補正を考慮していないことが認められる(前記アb⒝)。また、上記のとおり、本件発電所敷地の地盤が、耐専式が 前提とする地盤より堅硬で、地震動の増幅がより抑えられるにもか かわらず、被告は、これを考慮することなく耐専式を適用している(前記アb⒝)(なお、原告らは、被告は、他地域との比較データを示しておらず、本件発電所周辺には、内陸地殻内地震が全国的な平均値よりも小さな地震動となる地域特性があるとの被告の判断に科学的根拠はない旨主張するが、上記S波速度によると、上記科学 的根拠があるものと認められる。)。 以上によると、被告による地震動評価は保守的にされたものと認められ、被告が、耐専式のばらつきについて定量的に上乗せをしていないことをもって、新規制基準に反し不合理であるとは認められない。 ⒠ 南傾斜モデルを想定していないことについて原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イb⒠のとおり、中央構造線断層帯は、南傾斜の可能性は高いと考えられ、60度程度傾斜している可能性も否定できないにもかかわらず、被告が、断層傾斜角について、これを鉛直とし、耐専式の適用を排除したのは、科 学的根拠を欠くものである旨主張する。 この点、中央構造線断層帯長期評価(第二版)においても、断層深部の傾斜角が中角度(北傾斜約40度)又は高角度(ないしほぼ鉛直)と両論併記されるにとどまり、南傾斜である可能性については指摘されていない(前記アa⒝)。 もっとも、原告らが提出する戊24高知大学防災推進センター特任教授作成に係る意見書(甲16)に と両論併記されるにとどまり、南傾斜である可能性については指摘されていない(前記アa⒝)。 もっとも、原告らが提出する戊24高知大学防災推進センター特任教授作成に係る意見書(甲16)には、本件発電所側(南側)の標高が少なくとも5m高くなっていること、佐田岬半島沿いには、中位及び高位の段丘面が明瞭に配列していることから、佐田岬半島が安定して隆起し続けていると認められ、南側が上盤となる南傾斜 の逆断層成分を含む断層であることが示されており、南傾斜角80 度を考慮すべきである旨の記載部分がある。また、改訂耐震指針の下で地震動評価を見直した際に、原子力安全委員会での有識者による審査の際、傾斜角80度程度の南傾斜モデルを考慮すべきである旨の意見も出されたことが認められる(乙97[21~31頁])。 他方、南傾斜60度とすることが相当であることを認めるに足りる 的確な証拠はない。 そこで、念のため、南傾斜モデル(80度)につき検討するに、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースについては、各鉛直モデルが耐専式の適用範囲外であった以上(前記)、これよりも断層面が更に敷地に近くなり、等価震源距離が短い南傾 斜モデル(80度)は一層耐専式の適用範囲外となるのであって、南傾斜モデルを考慮したとしても、耐専式を適用すべきことにはならないから、南傾斜モデルを考慮せず、断層傾斜角を鉛直として耐専式の適用を排除したことをもって、被告の評価が科学的根拠を欠くとは認められない。 以上によると、被告が、応答スペクトルに基づく地震動評価に当たって、南傾斜モデルを考慮せず、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルにおいて耐専式の適用を排除したことが、科学的根拠を欠 応答スペクトルに基づく地震動評価に当たって、南傾斜モデルを考慮せず、約130kmケース、約69kmケース及び約54kmケースの各鉛直モデルにおいて耐専式の適用を排除したことが、科学的根拠を欠き不合理であるとは認められない。 なお、被告は、約480kmケースでは、鉛直モデルにおいて耐専式を適用しており(前記アb⒝ⅰ)、南傾斜モデル(80度)でも耐専式を適用することは可能ではあるが、等価震源距離が相当に長く、地震波の減衰が大きくなることから、南傾斜モデル(80度)を想定しても地震動評価に与える影響が小さいため、(乙ヨ31[9 5頁])、南傾斜モデル(80度)を想定する必要性があるとは認め られない。 断層モデルを用いた手法による地震動評価a 壇ほか(2011)を採用したことについて⒜ 原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イa⒜のとおり、壇ほか(2011)は、国内の地震データに基づくものではなく、仮定 の上に仮定を重ねた非科学的なものであり、その依拠する長大断層に関するデータは液状化の影響を受けた2002年アラスカDenali地震のPS10観測点のみでデータとしての信用性に乏しい旨主張し、これに沿う土木工学の立場から強震動予測に係る研究と実務に20年ほど携わってきた戊25氏の意見書(甲54)を提出 する。 しかしながら、壇ほか(2011)は、壇ほか(2012)、藤堂ほか(2012)及び壇ほか(2016)によって妥当性が確認されている上、IAEA策定のSafetyReportsSeriesNo.85でも紹介されており(前記アb⒜)、信頼性 のある手法であると認められる。なお、壇ほか(2012)は、2002年アラスカDenali地震のPS10観測点の最大加速度に riesNo.85でも紹介されており(前記アb⒜)、信頼性 のある手法であると認められる。なお、壇ほか(2012)は、2002年アラスカDenali地震のPS10観測点の最大加速度については、地盤の非線形挙動の影響(表層地盤の液状化気味の影響)を受けてかなり小さくなっているため、比較の対象とせず、同観測点の最大速度について観測記録と比較し、整合していることを 確認していることからすると(前記アb⒜ⅱ)、壇ほか(2011)が不適切なデータを用いた信用性に乏しいものであるとは認められない。 そして、壇ほか(2011)については、2000年鳥取県西部地震の記録とも整合する結果が得られていることからすると(前記 アb⒜ⅱ)、国内で発生する地震動の評価に用いることができるも のと認められる。この点、入江(2014)は、「本来、日本で発生する地震の断層パラメータを想定するには、日本の地震データのみを用いるべきである」との見解を示しつつ、国内では長大断層の規模のデータがやや不足しているとして、壇ほか(2011)が示す国外の地震も含めた平均動的応力降下量を断層パラメータの算定に 用いており(前記アb⒝)、後者の方が合理的であると判断したものと評価できることからすると、入江(2014)において上記見解が示されていることをもって、被告が、断層モデルを用いた手法による地震動評価に当たって壇ほか(2011)を適用したことが不合理であるとは認められない。 ⒝ 原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イa⒝のとおり、入江(2014)、レシピ及び宮腰ほか(2015)で言及される数値と比較して、壇ほか(2011)が設定するアスペリティの動的応力降下量12.2MPaは、国内の長大断層の平均値としては過小に おり、入江(2014)、レシピ及び宮腰ほか(2015)で言及される数値と比較して、壇ほか(2011)が設定するアスペリティの動的応力降下量12.2MPaは、国内の長大断層の平均値としては過小に評価されている旨主張する。 確かに、壇ほか(2011)は、アスペリティの動的応力降下量を12.2MPaと算出しているのに対し(前記アb⒜ⅰ)、入江(2014)は、壇ほか(2011)のデータのうち国内のデータのみを用いてアスペリティの動的応力降下量を15.2MPaとしていること(前記アb⒝)、レシピは、暫定値ではあるものの、ア スペリティの静的応力降下量につき、FujiiandMatsu‘ura(2000)の示す震源断層全体の静的応力降下量3. 1MPaを基に算定して約14.4MPaとしていること(前記アc⒜ⅱ)、宮腰ほか(2015)は、断層長さ8~64kmの国内における内陸地殻内地震の横ずれ断層のアスペリティの平均応力降 下量を12.8MPaとしていること(前記アb⒟)が認められ る。 しかし、入江(2014)については、前記⒜において説示したとおり、国内のデータのみを用いて算出した上記動的応力降下量より、壇ほか(2011)が示す国外の地震も含めた動的応力降下量の方が合理的であると判断したものと評価できることからすると、 壇ほか(2011)の数値が、入江(2014)の数値を下回っていることをもって、壇ほか(2011)が、アスペリティの動的応力降下量を過小に評価するものとは認められない。 また、レシピの上記数値は、アスペリティの静的応力降下量であること、宮腰ほか(2015)の数値についても、アスペリティの 静的応力降下量を求めるMadariaga(1979)の式を用いて算出されており( の上記数値は、アスペリティの静的応力降下量であること、宮腰ほか(2015)の数値についても、アスペリティの 静的応力降下量を求めるMadariaga(1979)の式を用いて算出されており(乙24、45)、アスペリティの静的応力降下量であると認められることからすると、壇ほか(2011)のアスペリティの動的応力降下量が、上記各アスペリティの静的応力降下量を下回っていることをもって、直ちに過小評価であると認めるこ とはできない。 そして、壇ほか(2011)の示すアスペリティの動的応力降下量は、前記⒜で説示したとおり、妥当性が検証されているのであって、過小に評価された不合理なものであるとは認められない。 なお、そもそも、被告は、約480kmケース及び約130km ケースについては、FujiiandMatsu’ura(2000)のスケーリング則を、約54kmケースについては、FujiiandMatsu’ura(2000)の平均応力降下量を組み合わせて用いる手法も併用しており(前記アc⒜ⅰ)、FujiiandMatsu’ura(2000)の平均応力降 下量3.1Mpaから導かれるアスペリティの静的応力降下量14. 4Mpaをパラメータとして設定し、さらに、不確かさの考慮として、アスペリティの応力降下量を基本震源モデルの1.5倍の21. 6Mpaと設定した場合の評価も行っていることからすると(前記アc⒝ⅱ(ⅰ))、壇ほか(2011)が設定するアスペリティの動的応力降下量が仮に過小であったとしても、これをもって、被告によ る地震動評価の結論が左右されるものとは認められない。 b 約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を れをもって、被告によ る地震動評価の結論が左右されるものとは認められない。 b 約130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用したことについて原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イbのとおり、被告が約 130kmケースの鉛直モデル及び約54kmケースでFujiiandMatsu’ura(2000)に示された静的応力降下量を用いたことは、いずれも、平成28年改訂レシピに示された適用下限値を下回っており不適切である旨主張する。 この点、平成28年改訂レシピでは、円形破壊面を仮定せずアスペ リティ面積比を22%、静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは、暫定的に、断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層の地震を対象としているところ(前記アc⒜ⅱ)、これは、平成28年改訂レシピ以降の地震モーメント(Mo)と震源断層面積(S)との関係式、すなわち、レシピ の方法の③に当たるMurotanietal. (2015)(Mo=S×1017)(前記アc⒜ⅰ(ⅰ))に照らすと、断層面積としては1800k㎡を上回る地震ということになる。そうすると、断層面積が1800k㎡を下回る約54kmケースの鉛直モデル、北傾斜モデル及び南傾斜モデル(乙ヨ31[92頁])並びに約130kmケース の鉛直モデル(乙ヨ31[81頁])については、Fujiiand Matsu’ura(2000)を適用できないようにも思われる。 しかしながら、平成28年改訂レシピの表現の修正を行った平成28年12月修正レシピ及びその内容を維持している平成29年改訂レシピにおいて、円形の破壊面を仮定せずアスペ できないようにも思われる。 しかしながら、平成28年改訂レシピの表現の修正を行った平成28年12月修正レシピ及びその内容を維持している平成29年改訂レシピにおいて、円形の破壊面を仮定せずアスペリティ面積比を22%、静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは、断層幅と平均すべり 量とが飽和する場合の目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層だけでなく、アスペリティ面積比が大きくなったり、背景領域の応力降下量が負になったりするなど、円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層等の2つの場合に適用できるとされていること(前記アc⒝、⒞)からすれば、Fu jiiandMatsu’ura(2000)の適用の可否は、円形の破壊面を仮定することが適当でないといえるかどうかによるものと認められる。 そこで、本件について検討すると、約54kmケースの鉛直モデル及び南傾斜モデルの断層幅(鉛直モデルでは13km、南傾斜モデル では13.2km(乙ヨ31[92頁]))からすれば、断層長さは、断層幅の約4倍であり、震源断層の形状を面積(鉛直モデルにつき約702k㎡、南傾斜モデルにつき約712.8k㎡)が等価な円形に置き換えてみると、その直径は、いずれも約30kmと断層幅を優に超えており、円形の破壊面を仮定することが適当でないといえる。こ れは、予測地図(2014)において、震源断層の長さ(約84km)が震源断層の幅(約24km)の約3.5倍となる長岡平野西縁断層帯に対してFujiiandMatsu’ura(2000)が適用されていること(乙102)にも整合している。そして、約54kmケースよりも長い断層を想定した約130kmケースは円形の破 壊面を仮定することが一層適当でない tsu’ura(2000)が適用されていること(乙102)にも整合している。そして、約54kmケースよりも長い断層を想定した約130kmケースは円形の破 壊面を仮定することが一層適当でないことは明らかである。 そうすると、約54kmケースの鉛直モデル及び南傾斜モデル並びに約130kmケースの鉛直モデルについて、FujiiandMatsu’ura(2000)を適用することは合理性を有するものと認められる。 また、証拠(乙ヨ31)及び弁論の全趣旨によれば、約54kmケ ースの北傾斜モデルについては、断層の傾斜角を北傾斜とすることによる影響を考慮するために設定したモデルであり、震源断層の傾斜角以外の条件面で基本モデル、すなわち、鉛直モデルとの平仄をとる観点から、FujiiandMatsu’ura(2000)を適用したことが認められるから、FujiiandMatsu’u ra(2000)を適用したことが不合理であるとはいえない。 なお、文部科学省研究開発局地震・防災研究課調査員作成に係る電子メールにおいて、平成28年12月修正レシピに関し、FujiiandMatsu’ura(2000)に基づく応力降下量の設定は、新たな知見が得られるまでの当面の暫定的な扱いであり、推奨と までいえるものではない旨記載されていることが認められるが(甲58)、暫定的な取扱いとすること自体は肯定されているのであって、上記電子メールの記載をもって、FujiiandMatsu’ura(2000)の適用が否定されるものではない。 したがって、被告が、約130kmケースの鉛直モデル及び約54 kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用したことに不合理な点は認められな るものではない。 したがって、被告が、約130kmケースの鉛直モデル及び約54 kmケースについてFujiiandMatsu’ura(2000)を適用したことに不合理な点は認められない。 c 約54kmケースについて入倉・三宅式を適用したことについて原告らは、第5の4⑵(原告らの主張)イcのとおり、入倉・三宅式については、高角度の断層で発生する地震の場合に、地震モーメ ントを過小評価するおそれが指摘されていることからすれば、松田式 や武村式を用いた方法との比較検討がされるべきであるが、被告はこれをしておらず、不適切である旨主張する。 この点、入倉・三宅式が地震モーメントを過小評価するおそれがあることは従来から指摘されているが(乙104)、他方で、入倉・三宅式は、平成7年から平成25年までに発生した国内の18の内陸地殻 内地震(Mw5.4~6.9)のデータを用いて再評価を行った結果、Mw6.5以上でよく一致することが確認され、2016年熊本地震の観測データとも整合的であることが確認されている(前記アb⒠)。 また、この点を措くとしても、被告は、約54kmケースについては、入倉・三宅式を適用した場合だけでなく、より地震モーメントが大き くなる壇ほか(2011)を適用して検討していること(乙ヨ31[86、92頁])からすると、約54kmケースに入倉・三宅式を適用したことにより、被告による地震動評価の結論が左右されるものとは認められない。 さらに、原告らが比較検討すべきと指摘する手法は、レシピの方 法を指すと解されるところ、同方法は、多くの断層帯を対象として一括して計算する場合や対象とする断層帯における詳細な情報に乏しい場合であっても強震動の時刻歴を計算できるようにするため、一部 方 法を指すと解されるところ、同方法は、多くの断層帯を対象として一括して計算する場合や対象とする断層帯における詳細な情報に乏しい場合であっても強震動の時刻歴を計算できるようにするため、一部の断層パラメータの設定を簡便化した方法としてレシピに追加されたものにすぎず(前記アc⒜ⅰ(ⅱ))、中央構造線断層帯の位置・形状・活 動性等について詳細な調査がされている本件においては、かかる詳細な情報に基づいて震源断層モデルを設定するレシピの方法の方が、より精度の高い基準地震動を策定することが可能であるといえるから、レシピの方法も用いる必要があるとは認められない(なお、平成28年12月修正レシピは、平成28年改訂レシピの内容を変更せずに、 表現の修正を行ったにとどまり(前記アc⒝)、平成28年12月修 正レシピにより、レシピの方法の位置付けが変わったものではない。)。 以上によると、被告が、レシピの方法と比較することなく、入倉・三宅式を適用したことをもって、不合理であるとは認められない。 小括 以上によると、原告らの上記各主張によるも、被告による内陸地殻内地震(中央構造線断層帯)の地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点があるとは認められないところ、前提事実11⑵アa及び前記アに照らせば、被告は、内陸地殻内地震(中央構造線断層帯)の地震動評価において、保守的な観点から、基本 震源モデルを複数設定し、妥当性が検証された知見を参照して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を行ったことが認められるのであって、被告の上記地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点はないものと認められる。 評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を行ったことが認められるのであって、被告の上記地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点はないものと認められる。 ⑷ プレート間地震の地震動評価ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 内閣府検討会(2012b)は、南海トラフにおける強震断層モデル につき、強震断層域全体を4領域に分割し、各領域ごとの地震モーメントの総和により強震断層モデル全体の地震モーメントを求めると地震規模はMw9.0となり、強震動生成域を4ケース(基本ケース、東側ケース、西側ケース及び陸側ケース)に分けて震度分布を推計すると、強震動生成域を可能性がある範囲で最も陸域側(プレート境界面の深い側) の場所に設定した陸側ケースにおいて、強震動生成域がそれぞれの地域 の内陸直下にあるため全体的に震度が大きくなり、震度7以上が想定される地域が他のケースより広くなったとしている。また、中央防災会議(2003)によると、震度分布の推計のうち経験的手法はMw8.0より大きな地震に対して適用できるように作成されたものではないが、過去のMw8.0を超える地震の震度分布と比較すると、全体的には距 離減衰の関係は成立していると考えられ、検討した東海・東南海・南海地震はMw8.7の地震であったが、経験的手法のパラメータMw8. 0を仮定するとその震度分布をよく説明し、Mw9.0の東北地方太平洋沖地震の震度分布に適用されている経験式のパラメータMwは8.2~8.3であることから、南海トラフ巨大地震の検討に用いる経験的手 法のパラメータをMw8.3と設定したとしている。(乙61)なお、内閣府検討会(2012b)は、 式のパラメータMwは8.2~8.3であることから、南海トラフ巨大地震の検討に用いる経験的手 法のパラメータをMw8.3と設定したとしている。(乙61)なお、内閣府検討会(2012b)は、内閣府検討会で検討した強震断層モデルは、Mw9.0クラスの巨大地震の中でも最大クラスのものであり、今回構築した強震断層モデルは、設定する断層パラメータの幅が大きく、今回仮定したパラメータによっては、想定より大きな強震動 を生成する強震断層モデルとなっている可能性も否定できないとしており、その一次報告である内閣府検討会(2012a)も、同報告で公表した震度分布は、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震を検討すべきであるといった考え方に沿って推計したものであるとしている。(乙60、61) 南海トラフ長期評価(第二版)は、M8.0~9.0クラスの地震が今後30年以内に60~70%の確率で発生するとしている。 (甲11の1~11の3)被告は、プレート間地震の地震動評価に当たって、基本震源モデルとして、内閣府検討会(2012b)の南海トラフの巨大地震(陸側ケー ス、Mw9.0)を採用した上で、内閣府検討会(2012b)が、南 海トラフの巨大地震の検討に用いる経験的手法のパラメータをMw8. 3と設定したことを踏まえ、応答スペクトルに基づく地震動評価に当たって、地震規模をMw8.3と設定した。(前提事実11⑵アb⒞、前記)イ判断 以下、原告らの主張を踏まえ、被告の上記評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点がないか検討する。 地震規模の評価について原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)アのとおり、南海トラフ長期評価(第二版)が、南海トラフ巨大地震につき、M 規制委員会の判断及びその過程に不合理な点がないか検討する。 地震規模の評価について原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)アのとおり、南海トラフ長期評価(第二版)が、南海トラフ巨大地震につき、M8.0~9.0の地 震が30年以内に60~70%の確率で発生すると公表しているところ、安全性確保の観点からは上記数値の最大値であるM9.0を想定すべきである、被告が地震規模の評価の根拠とする内閣府検討会(2012b)の見解は、基本的には一般防災を目的とするものであり、同見解を根拠とするのは誤りである旨主張する。 しかしながら、まず、前記アのとおり、内閣府検討会(2012b)の南海トラフの巨大地震(陸側ケース)については、内閣府検討会が、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震を検討すべきであるとの考え方に沿って推計した南海トラフで発生し得る最大クラスのものであり、想定より大きな強震動を生成する強震断層モデルとなっている 可能性、すなわち、過大評価になっている可能性すら指摘されていることが認められ、一般防災を目的とするものであって、地震規模を過小評価しているなどとは認められない。よって、被告が、内閣府検討会(2012b)の南海トラフの巨大地震(陸側ケース、Mw9.0)を基本震源モデルとして採用したことが不合理であるとは認められない。 そして、内閣府検討会(2012b)の経験的手法はMw8.0より 大きな地震に対して適用できるように作成されたものではないが、全体的には距離減衰の関係は成立していると考えられるところ、Mw9.0の東北地方太平洋沖地震の震度分布に適用されている経験式のパラメータMwは8.2~8.3であることからすると、被告が、応答スペクトルに基づく地震動評価に当たって、南海トラフ巨 れるところ、Mw9.0の東北地方太平洋沖地震の震度分布に適用されている経験式のパラメータMwは8.2~8.3であることからすると、被告が、応答スペクトルに基づく地震動評価に当たって、南海トラフ巨大地震の検討に用いる 経験的手法のパラメータをMw8.3と設定したこと(前記ア)が不合理であるとは認められない。 地震の連動等に関する検討の欠如との主張についてa 東海から琉球海溝までの連動による巨大地震の発生との主張について 原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)イのとおり、南海トラフでは、複数の専門家により、少なくとも、御前崎から喜界島にかけての1000kmを超える領域を大きく変位させるようなM9クラスの超巨大地震が平均して1700年の間隔で発生した可能性がある旨の見解が示されているにもかかわらず、これを検討していない旨主張す る。 この点、原告らの上記主張に沿う専門家の見解が存在することが認められる(甲12、13)ものの、既に説示したとおり、内閣府検討会(2012b)の強震断層モデルは、あらゆる可能性を考慮して南海トラフで発生し得る最大クラスのものとして推計されたものである から、内閣府検討会(2012b)の想定を上回る規模の地震が発生するとは直ちには認め難い(上記専門家ら自身、隆起地形の存在から上記超巨大地震が過去に発生した可能性があるとする見解については、不確かなデータを利用したものであり、超巨大地震の存在の積極的な証拠ではない(甲12)、南海トラフで始まった破壊が、琉球海溝へ伝 わる可能性は残る(甲13)とするにとどまっている。)。また、仮に、 南海トラフから琉球海溝の領域が連動した場合を想定したとしても、琉球海溝の領域は、本件発電所敷地から更に離れる方向に位置し、その地 る(甲13)とするにとどまっている。)。また、仮に、 南海トラフから琉球海溝の領域が連動した場合を想定したとしても、琉球海溝の領域は、本件発電所敷地から更に離れる方向に位置し、その地震動の大きさは、本件発電所敷地に到達するまでに減衰することが見込まれ、結局のところ、南海トラフの領域による地震動が、本件原子炉施設の地震動評価に当たって支配的になるといえ、上記専門家 自身、上記超巨大地震の規模につき、Mw9.0クラスとしているのであって(甲12)、被告の南海トラフの巨大地震の規模の想定(Mw9.0)と異なるものではないことも踏まえると、被告が上記連動を考慮しなかったことが不合理であるとは認められない。 b 地震セグメントの連動について 原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)イのとおり、南海トラフにおける東海、東南海及び南海の3つの地震セグメントの時間差連動並びにこれによる長時間の地震動継続の問題について考慮していない旨主張する。 しかしながら、原告らが指摘する専門家の見解(甲14)は、上記 3つの地震セグメントからほぼ等しい距離にある名古屋や大阪の平野を前提とするものであるところ、本件発電所敷地は、上記3つのセグメントから等しい距離にあるとは認められず、仮に、上記3つの地震セグメントが時間差連動したとしても、本件発電所敷地から離れている東海及び東南海セグメントの地震動の大きさは、本件発電所敷地に 到達するまでに相当程度減衰され、結局のところ、南海セグメントが本件原子炉施設の地震動評価に当たって支配的になるといえるから、上記3つの地震セグメントの時間差連動が本件原子炉施設に大きな影響を及ぼすとは認め難い。 したがって、被告においてセグメントの時間差連動及びこれによる 長時間の地震動継 になるといえるから、上記3つの地震セグメントの時間差連動が本件原子炉施設に大きな影響を及ぼすとは認め難い。 したがって、被告においてセグメントの時間差連動及びこれによる 長時間の地震動継続を考慮しなかったことが不合理であるとは認めら れない。 c 震源域の位置について原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)イのとおり、複数の専門家が、東北地方太平洋沖地震域の外縁の上にあった福島第一原発が675ガルを観測したのであるから、南海トラフ巨大地震が起これば、 同地震の震源域の北限の真上に位置する本件発電所における地震動が570ガルを大きく超える可能性は否定できないと述べているにもかかわらず、被告は、これを考慮していない旨主張する。 この点、原告らは、上記専門家らとして戊26神戸大学名誉教授及び戊27東京大学地震研究所教授を挙げるが、前者については、そも そも同見解を認めるに足りる証拠が提出されておらず、後者については、新聞記事において、「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災の原因地震)は震源が沖合で、陸上の揺れはそれほど大きくなかった。一方、南海トラフ巨大地震は震源域が一部で陸の下にかかっており、東北地方と同じ規模の地震が起きれば、もっと強く揺れるはずだ。」と抽象的 な可能性を指摘するにすぎない(甲15)。 また、その点を措くとしても、本件発電所敷地の地盤(解放基盤表面)におけるS波速度は2.6km/sであり(前記⑴アa⒝)、福島第一原発における解放基盤表面のS波速度810m/s(乙63)と比較して地震動の増幅が小さい地盤であること、震源特性として、 本件発電所に地震動をもたらすフィリピン海プレートは形成年代が新しいため厚さ30~40kmと比較的薄く軟らかいのに対し、福島第一原発に地震動を の増幅が小さい地盤であること、震源特性として、 本件発電所に地震動をもたらすフィリピン海プレートは形成年代が新しいため厚さ30~40kmと比較的薄く軟らかいのに対し、福島第一原発に地震動をもたらす太平洋プレートは形成年代が古く、厚さ70~100kmと厚く硬いため、太平洋プレートで発生する地震動(プレート間地震)の方が大きくなりやすいこと(乙24、64~67、 ヨ94)を踏まえると、震源域の位置のみをもって、被告の地震動評 価の合理性が否定されるものとは認められない。 d 発生様式を異にする地震の連動について原告らは、第5の4⑶(原告らの主張)イのとおり、M9クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合、余震とともにM8を超える中央構造線断層帯を震源とする巨大地震、スラブ内地震が連動すること により、想定をはるかに超える地震動が発生する可能性があり、その場合、揺れの時間も相当長くなるはずであるが、被告は、これを全く想定していない旨主張する。 しかしながら、プレート間地震である南海トラフの巨大地震を契機として、内陸地殻内地震である中央構造線断層帯による地震、さらに 海洋プレート内地震までが連動して発生する可能性を認めるに足りる的確な証拠はない。また、本件原子炉施設は、弾性設計用地震動Sd(基準地震動との応答スペクトルの比率が0.5を下回らないよう基準地震動Ssに係数0.53を乗じて設定)による地震力及び静的地震力のいずれか大きい方の地震力に対して、おおむね弾性状態にある ことが確認されていること(乙78[4、9、19、22頁]、ヨ11[8-1-826、8-1-827頁]、ヨ44、弁論の全趣旨)、すなわち、本件原子炉施設は、南海トラフの巨大地震、内陸地殻内地震(中央構造線断層帯)、16 と(乙78[4、9、19、22頁]、ヨ11[8-1-826、8-1-827頁]、ヨ44、弁論の全趣旨)、すなわち、本件原子炉施設は、南海トラフの巨大地震、内陸地殻内地震(中央構造線断層帯)、1649年安芸・伊予の地震それぞれにつき、弾性範囲内で挙動し,塑性変形(弾性範囲を超えて元に戻らなくなる 変形)に至ることはないと考えられることからすると、仮に、上記連動が生じ、時間的に近接して強震動が発生しても、本件原子炉施設の安全性に影響を及ぼすものとは認められない。以上によると、被告が、地震動の評価に当たって上記連動を想定しなかったことにより、上記評価の合理性が否定されるものとは認め難い。 以上によると、原告らの上記各主張によるも、被告のプレート間地震 の地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点は認められず、前提事実11⑵アb及び前記アに照らせば、上記地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点はないものと認められる。 ⑸ 海洋プレート内地震の地震動評価 ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 予測地図(2014)の記載予測地図(2014)は、長期評価部会による活断層や海溝付近で発 生する地震についての長期評価で設定された領域を参考に、フィリピン海プレートのプレート間及び海洋プレート内の震源断層をあらかじめ特定しにくい地震の地域区分の一つとして、安芸灘~伊予灘~豊後水道の領域を設定している。そして、円形の断面層ではなく、80km×80kmの矩形断層面を配置し、1911年奄美大島近海地震を設定根拠と して、最大マグニチュードをM8.0と評価している(なお、予測地図(2014 る。そして、円形の断面層ではなく、80km×80kmの矩形断層面を配置し、1911年奄美大島近海地震を設定根拠と して、最大マグニチュードをM8.0と評価している(なお、予測地図(2014)では、M8.0の設定根拠を「長期評価」、すなわち、日向灘長期評価に求めている旨記載されているが、日向灘長期評価における安芸灘~伊予灘~豊後水道のプレート内地震の想定規模はM6.7~7. 4とされており(甲18[12頁])、整合しないこと、予測地図(20 13)では、安芸灘~伊予灘~豊後水道における最大マグニチュードM8.0の設定根拠が「1911.06.15奄美大島近海と同程度の地震が発生し得ると仮定」とされていること(乙75[57頁])を踏まえると、予測地図(2014)における最大マグニチュードM8.0の設定根拠も、予測地図(2013)と同様、1911年奄美大島近海地震 であり、「長期評価」との記載は誤記であると解される。)。また、予測地 図(2014)は、海洋プレート内地震等の発生領域においては、震源断層をあらかじめ特定しにくい地震の最大規模は、領域区分ごとに領域の面積に比例した値を設定するにとどまっており、現時点では飽くまで暫定値が設定されている状況であり、今後、地下構造(プレート構造)に関する知見をはじめとした、最新の科学的知見を踏まえた長期評価を 踏まえて、上記最大規模の設定を行うことが必要であるとしている。(乙73[5、110~120、384頁]、75)地震本部は、平成27年1月30日更新の「日本の地震活動改訂版ドラフト」において、1911年奄美大島近海地震につき、従来は、沈み込んだプレート内のやや深い地震と考えられていたが、最新の研究に よれば、震源域の位置が浅いプレート間地震という考え 改訂版ドラフト」において、1911年奄美大島近海地震につき、従来は、沈み込んだプレート内のやや深い地震と考えられていたが、最新の研究に よれば、震源域の位置が浅いプレート間地震という考えが有力視されている旨記載している。(乙76)被告は、1649年安芸・伊予の地震(M6.9)を検討用地震として設定し、基本震源モデルの設定に当たって、地震発生位置と規模の不確かさをあらかじめ織り込むこととし、敷地下方に既往最大規模(18 54年伊予西部地震のM7.0)の地震を仮定するなどして、「想定スラブ内地震」として地震動評価を行い、さらに、2001年芸予地震(M6.7)を再現したモデルをM7.0に較正したケース、敷地の真下に想定する地震規模をM7.2としたケース、アスペリティの位置を断層上端に配置したケース、敷地東方の領域に水平に近い断層面を考慮した ケース(M7.4)を不確かさの考慮として設定した上で、これらについても地震動評価を行った。(前提事実11⑵アc⒝)イ判断原告らは、第5の4⑷(原告らの主張)のとおり、①予測地図(2014)において、本件発電所敷地の領域における海洋プレート内地震の最大 マグニチュードがM8.0となっていること、②国内における観測史上最 大のプレート内地震である1994年北海道東方沖地震(M8.2)や1911年奄美大島近海の地震(M8.0)の地震規模に照らせば、海洋内プレート地震の基本震源モデルは、少なくともM8.0とすべきであり、被告の評価は過小評価である旨主張する。 上記①の点については、予測地図(2014)が本件発電所敷地の領域 である安芸灘~伊予灘~豊後水道の最大マグニチュードをM8.0とした根拠は、1911年奄美大島近海地震にあると認められるところ( 上記①の点については、予測地図(2014)が本件発電所敷地の領域 である安芸灘~伊予灘~豊後水道の最大マグニチュードをM8.0とした根拠は、1911年奄美大島近海地震にあると認められるところ(前記ア)、同地震は、最新の研究によれば、震源域の位置が浅いプレート間地震という考えが有力視されていることからすると(前記ア)、予測地図(2014)の上記数値は発生様式の異なる地震の規模を根拠としている可能 性がある。 また、予測地図(2014)は、80km×80kmの矩形断層面を設定して安芸灘~伊予灘~豊後水道の地震規模をM8.0と想定しているところ、震源断層をあらかじめ特定しにくい地震の最大規模は、領域区分ごとに領域の面積に比例した値を設定するにとどまっており、現時点では飽 くまで暫定値が設定されている状況で、今後、地下構造(プレート構造)に関する知見をはじめとした最新の科学的知見を踏まえた長期評価を踏まえて、震源断層をあらかじめ特定しにくい地震の最大規模の設定を行うことが必要であるとされていること(前記ア)からすれば、上記地震規模は飽くまで暫定的な数値にすぎない。さらに、本件発電所敷地周辺のフ ィリピン海プレートの厚さは30~40kmであるため(前記⑷イc)、上記プレート内に80km×80kmの矩形断層面が発生するためには、プレートを長辺方向に薄く裂くような破裂が生じる必要があるところ、そのような破裂が生じることは想定し難く、現にそのような破裂が生じた事例の存在を認めるに足りる証拠もない。 以上によると、本件発電所敷地の領域である安芸灘~伊予灘~豊後水道 の最大マグニチュードをM8.0とすることに科学的合理性は見出し難く、これを直ちに採用すべきであるとは認められない。 上記②の点につい 発電所敷地の領域である安芸灘~伊予灘~豊後水道 の最大マグニチュードをM8.0とすることに科学的合理性は見出し難く、これを直ちに採用すべきであるとは認められない。 上記②の点については、1994年北海道東方沖地震(M8.2)については、震源特性等が類似するか明らかでなく、また、1911年奄美大島近海地震(M8.0)については、上記のとおり、震源域の位置が浅い プレート間地震という考えが有力視されているから、海洋プレート内地震の地震動評価に当たって、いずれも参考とすべき地震と認めるに足りない。 以上によると、原告らの上記主張によるも、被告の海洋プレート内地震の地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点は認められないところ、前提事実11⑵アc及び前記アに照ら せば、上記地震動評価ひいてはこれを是認した規制委員会の判断及びその過程に不合理な点はないものと認められる。 小括よって、基準地震動の策定に関する本件適合性審査に不合理な点はないものと認められる。 5 争点5(令和元年火山ガイドの合理性)について⑴ 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア巨大噴火に関する知見 巨大噴火の発生頻度等a 国内においては、数十k㎥以上の噴出物を放出するような巨大噴火は6000年から1万年に1回程度の頻度で発生し、VEI7(噴出量100k㎥)程度以上の噴火は1万年に1回程度発生しているとされているところ、この種の噴火の最終活動は約7300年前の鬼界カ ルデラ噴火(VEI7)である。(甲29[220頁]、216[57 5頁]、乙138[120頁]、144[707頁])b また、噴火規模と噴火 最終活動は約7300年前の鬼界カ ルデラ噴火(VEI7)である。(甲29[220頁]、216[57 5頁]、乙138[120頁]、144[707頁])b また、噴火規模と噴火頻度との間には負の相関関係が認められ、規模の大きな噴火ほど発生頻度は低くなるが、噴火規模と噴火頻度の間の逆相関関係は直線的ではなく、VEI6付近を境に2つの頻度分布に区分でき、VEI6以上においてより噴火頻度が低くなる。このよ うな噴火規模と頻度分布の不連続性から、ある一定規模よりも大きな噴火、すなわち、巨大噴火が、それよりも小さい通常の噴火とは異なるメカニズムで発生するものと考えられている。 (甲210[102頁]、乙154[102頁]、201[56頁])巨大噴火の発生機序 日本列島の地殻は、上部の花こう岩質(安山岩質~珪長質の岩石が主体)と下部の玄武岩質から構成されているところ、マントルが部分溶解して発生した玄武岩質マグマが大量に地殻下部に付加され、その熱により地殻下部が部分溶融して珪長質マグマが発生する。珪長質マグマは、低温で粘性が高いため、一気に地殻中を上昇して噴火することはできず、 徐々に浮力で上昇して地殻上部に移動し、その結果、地殻上部には、珪長質物質(液体~固体)の割合が増大する。このようなサイクルが繰り返されると、地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが形成される。そして、マグマ溜まりに存在する数十~100k㎥の大量の珪長質マグマが、減圧発泡し、急激な体積の膨張に伴ってその一部が地表に噴出する ことにより巨大噴火が発生する。 なお、小林(2017)は、マグマ溜まりの形成後、巨大噴火に至る機序については、マグマ溜まりを取り巻く地殻応力が限界を超えて地殻に破壊が生じ、割れ目火道が形成され、前兆的な り巨大噴火が発生する。 なお、小林(2017)は、マグマ溜まりの形成後、巨大噴火に至る機序については、マグマ溜まりを取り巻く地殻応力が限界を超えて地殻に破壊が生じ、割れ目火道が形成され、前兆的な噴火としてマグマ噴火(主に、爆発的でない溶岩が流出する形式の噴火)が引き起こされるこ とにより、マグマ溜まり全体が減圧され、発泡もマグマ溜まりの下方に 徐々に伝搬するようになり、その結果、地盤の上昇が加速し、この状態が100~数百年続くと、マグマ溜まり内の気泡の核形成が更に進み、最終的に発泡した軽石が激しく噴出するカルデラ噴火へと発展するものと考えられるとの見解を示している。 (甲210[104頁]、乙153[8、33、34頁]、154[10 4頁]、158、159)巨大噴火によるカルデラの形成カルデラとは、火口よりも大きなほぼ円形又は円弧状の輪郭の火山性凹地形であり、直径が2km以上のものをいうところ、およそVEI6以上の巨大噴火で見られるようになり、過去のVEI7を超える大規模 噴火では、ほぼ例外なく形成されている。 カルデラは、プリニー式噴火(粘性が高く揮発性成分にも富む珪長質マグマが盛大に発泡して連続的に噴出し、噴煙が1万mを超える上空まで立ち上がり、大量の火山灰や軽石が放出される噴火様式。VEI3~7)又は火砕流噴火で地下のマグマ溜まりが減圧し、天井部が重力不安 定となって環状割れ目に沿って沈下し、より大量の火山灰や軽石が噴出する結果、地下のマグマが急激に失われるため、噴出と並行して地下に生じた空間に地表が陥没して形成される。このようにカルデラを形成する噴火をカルデラ噴火という。 カルデラ噴火が生じるには、珪長質マグマの移動・集積に要するタイ ムスケールからすると、噴出量又はこ た空間に地表が陥没して形成される。このようにカルデラを形成する噴火をカルデラ噴火という。 カルデラ噴火が生じるには、珪長質マグマの移動・集積に要するタイ ムスケールからすると、噴出量又はこれを超える数十~100k㎥の珪長質マグマを噴火期間中に生成・集積させながら噴出させることは不可能であること、地表が陥没し得る体積と空間的な広がりがマグマ溜まり内に必要であることから、あらかじめ地下に巨大なマグマ溜まりが形成されている必要がある。 (甲210[104、105、109頁]、乙138[44、120、1 33、136~138頁]、153[1頁]、154[104、105、109頁]、158[283頁]、159[825、826頁]、407、418)巨大噴火のマグマ溜まりに関する知見a 位置・形状 珪長質マグマは、前記のとおり浮力で上昇するところ、周囲の母岩との密度差がなくなる(浮力中立となる)地下数~10kmにおいてマグマ溜まりを形成すると考えられており、また、大型カルデラの生成機構(前記)から、多くのマグマ溜まりは地下浅部に扁平形状で存在すると考えられている。(甲210[104頁]、乙147[3 1頁]、153[8頁]、154[104頁]、185[19、20頁]、159)⒜ 浮力中立と異なる見解東宮(2016)は、岩石学的手法により推定される噴火直前のマグマ溜まりは、島弧火山の場合には深さ4~12km程度に求ま っていることが多く、地球物理学的・岩石学的に求めたマグマ溜まり深度を島弧ごとにコンパイルしたデータのうち、岩石学的推定に限ると、ほとんどが深さ3~10kmとなっているとし、マグマ溜まりの位置については、従前、浮力中立で説明がされることが多かったが、実際にはそう を島弧ごとにコンパイルしたデータのうち、岩石学的推定に限ると、ほとんどが深さ3~10kmとなっているとし、マグマ溜まりの位置については、従前、浮力中立で説明がされることが多かったが、実際にはそう単純ではなく、また、マグマ溜まりがシル(水 平方向に薄く広がった貫入マグマ)の集合体である場合は、浮力よりもむしろ、地殻内のレオロジーや剛性のコントラスト、応力場などがマグマの定置深度を支配するらしいとの見解を示している。 (甲211、乙162)⒝ カルデラの生成機構との整合性 規制庁長官官房技術基盤グループ地震・津波研究部門が平成25 年度から平成30年度まで行った火山活動に関する調査・研究の成果を取りまとめた令和元年5月付け「安全研究成果報告火山影響評価に係る科学的知見の整備」(以下「安全研究成果報告」という。)は、噴火直前のマグマ溜まりの深さを噴出物の化学組成から推定したところ、鬼界カルデラ、阿蘇カルデラ及び姶良カルデラについて、 いずれも概ね深さ10kmよりも浅い場所に蓄積していたと考えられ、この値は、カルデラ地形がマグマの大量噴出によりマグマ溜まりの天井崩壊によって形成されたとするモデルから制約されるマグマ溜まりの深さと調和的であるとしている。(乙418)⒞ 形状 三浦・和田(2007)は、マグマ溜まりにつき、強い水平圧縮応力により、地殻内ではシル状貫入岩体が形成されやすいとしている。(乙158)b 性状⒜ 東宮(2016)は、近年では、マグマ溜まりの大部分はマッシ ュ状(結晶含有量が40~50%以上)であり、ほとんど流動できない状態にあるだろうというのが少なくとも岩石学者の間での共通見解になってきているとしており、マッシュ状のままでは噴火できないとしている。 結晶含有量が40~50%以上)であり、ほとんど流動できない状態にあるだろうというのが少なくとも岩石学者の間での共通見解になってきているとしており、マッシュ状のままでは噴火できないとしている。 そして、噴火に至るためにはマッシュの再活性化が必要であると ころ、その過程としては、マッシュ下部に高温マグマが定置して成層マグマ溜まりを形成した後、両者の境界に粘性が低い流動層を発達させ、数か月から数十年という短期間にマグマ溜まり全体のオーバーターンが起きてそのまま噴火に至ることがあると予想されるとしている。 (甲211、乙162) ⒝ 荒牧(2003)は、マグマが地表に噴出せず、地下浅部(上部地殻)で固結したものが大型花こう岩体(バソリス)であり、長さ数百km、幅数十kmの広さがあるが、直径数~30kmくらいの火成岩体の集合であることが分かっており、個々の火成岩体が、大型カルデラを生じるマグマ溜まりに相当するとしている。 (乙159) c マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火までの期間⒜ 文部科学省測地学分科会は、巨大噴火の研究(物質科学的な検討)により、カルデラ形成噴火では噴火の数百年前から大規模珪長質マグマの集積過程が進行しているなどの準備過程が明らかになったとしている。(乙203) ⒝ 菅野・石橋(2017)は、マグマ混合から噴火までのタイムスケールは、カルデラを形成する噴火と形成しない噴火との間で系統的に異なり、前者ではマグマ混合から噴火まで数百~数千年の拡散時間を示す結晶を含むのに対し、後者では、数日~数十年オーダーの拡散時間を示す結晶のみが含まれるところ、この違いは両者の間 でのマグマ蓄積・噴火メカニズムの違いを反映している可能性があるとしている。(乙20 含むのに対し、後者では、数日~数十年オーダーの拡散時間を示す結晶のみが含まれるところ、この違いは両者の間 でのマグマ蓄積・噴火メカニズムの違いを反映している可能性があるとしている。(乙201)⒞ 小林(2017)は、マグマ溜まりは、珪長質マグマが数万年から数十万年という長い年月をかけて蓄積されるとしている。また、大規模珪長質マグマにおける滞留時間は60万~100万年を超え る場合があるする見解もある。(乙138[36頁]、153)マグマ溜まりの探査手法等aDr.戊28SSG-21などのIAEAの火山に係る安全ガイドの主著者であり、米国原子力規制委員会において科学技術に関する上級顧問も務め た地球物理学、地質学、火山学及び地球内部化学の専門家であるDr. 戊28(以下「Dr.戊28」という。)は、2018年(平成30年)3月26日付け文書において、以下のような見解を示している。 現在の地球物理学的手法(地震波トモグラフィ(地震波により地球内部の波の伝播速度の構造を求める手法)など)を用いれば、大規模な溶融した岩体の存在を容易に検出できる。 また、仮に、地下に大規模なマグマ溜まりが存在しているとすれば、大量の低密度の物質が高密度の岩盤を通り抜けて上昇しようとすることに伴って発生する応力のため、地表での調査や衛星による測定により、地表面が上方へ変形する明確な兆候が示されるはずである。 (乙209、210、212) b 産業技術総合研究所作成に係る平成27年3月付け「平成26年度火山影響評価に係る知見の整備成果報告書」現在、マグマ溜まりの探査の主力となっているのは、自然地震を用いた地震探査やMT法(電気伝導度の違い(比抵抗構造)を調査して地下に存在する流体などの存在を調 影響評価に係る知見の整備成果報告書」現在、マグマ溜まりの探査の主力となっているのは、自然地震を用いた地震探査やMT法(電気伝導度の違い(比抵抗構造)を調査して地下に存在する流体などの存在を調査する技術)による電磁探査であ り、それらによって求められているマグマ溜まりの描像としては、全て部分溶融したメルトを含むマッシュ状のマグマ溜まりである。ただし、MT法の場合、ケイ酸塩メルトと溶存成分を多く含んだ酸性の水では電気伝導度があまり変わらないため、マグマ溜まりの候補として解析された領域において、空隙をメルトが満たしているのか、その他 の水等の液体が満たしているのかを区別することは困難である。他方、地震波の場合は、メルトと水の粘性率が異なることから、P波とS波を観測すれば、ある程度の違いを明らかにすることはできる。(乙252)c 安全研究成果報告 ⒜ 平成27年度から平成30年度にカルデラ火山の地下構造の調査 として、阿蘇カルデラにおいてMT法、姶良カルデラにおいて地震波速度構造による地下構造調査を実施したところ、それぞれ低比抵抗領域、低速度領域が存在することが明らかになり、調査に適した地球物理学的観測を行うことでカルデラ地下での高温のマグマ等の流体の存在を示唆する低比抵抗領域や低速度領域を従前と比べより 明らかにできることが示された。 ⒝ 現在、地下深部に存在している圧力源の上面深さの情報を得るとともに、その圧力源に起因する変動を観測する手法が有効で、この深さが10kmより浅くなった場合は、深部圧力源の上昇や部分的なマグマ貫入等があったことが推察され、地下構造に変化が生じた と考えられる。 (乙418)d 文部科学省測地学分科会マグマ溜まりや火道などの構造や物質科学的特性、 力源の上昇や部分的なマグマ貫入等があったことが推察され、地下構造に変化が生じた と考えられる。 (乙418)d 文部科学省測地学分科会マグマ溜まりや火道などの構造や物質科学的特性、火山周辺の応力・ひずみの時空間分布を明らかにし、火山噴火現象のモデル化の研究を 進めるためには、地震・地殻変動観測や電磁気探査などを実施することが重要である。(乙203)巨大噴火前後における火山活動の変遷等a 前兆現象⒜ Tsujietal.(2017)は、宇和盆地に堆積された 第四紀の爆発的火山活動による堆積物の確認により、阿蘇1噴火、阿蘇2噴火、阿蘇3噴火、阿多カルデラ噴火、阿蘇4噴火等のカルデラ噴火に先立って、複数の組成的に類似したテフラが先行して噴出していることから、大規模噴火に先立ち、長期間、同じ火山から、大規模噴火と組成が類似したマグマが噴出する可能性が示唆される としている。(乙180) ⒝ 米国の請願審査委員会(PRB)は、2009年(平成21年)、米国地質調査所(USGS)による、イエローストーン地域につき、カルデラの大部分の地下において、大量のマグマの貫入や脱ガスを示す強い前兆現象がない中では、次の巨大なカルデラ形成噴火の可能性は、計算上有意となるしきい値を下回るものと見ることができ るとの評価を踏まえ、イエローストーンカルデラの噴火が差し迫っていることに係る新しい証拠を提出できていないと結論付け、米国原子力規制委員会による更なる調査を求めるには不十分であると判断した。(乙251)b マグマの組成の変化 ⒜ 巨大噴火に伴うカルデラ崩壊後、ニュージーランドのタウポ火山地帯、ワイオミング州のイエローストーン、カリフォルニア州のロングバレーなどの地域で、噴出 251)b マグマの組成の変化 ⒜ 巨大噴火に伴うカルデラ崩壊後、ニュージーランドのタウポ火山地帯、ワイオミング州のイエローストーン、カリフォルニア州のロングバレーなどの地域で、噴出物や噴火活動の変化が観察されているところ、上記変化には、化学的又は同位体的に異なる新しいメルトの供給と噴火頻度の変化を含んでおり、場合によっては、上記変 化は、カルデラ崩壊後のシステムの再編成に起因しているとの指摘がある。(乙403)⒝ IAEAの技術文書であるTECDOC-1795(乙211)の作成に関与した戊29氏(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門所属)は、国内にあるVEI7クラスの巨大噴火を経験したカ ルデラ(屈斜路カルデラ、支笏カルデラ、洞爺カルデラ、十和田カルデラ、阿蘇カルデラ、姶良カルデラ及び鬼界カルデラ)の最後の破局的噴火以降の噴火履歴を公表文献から定量化し、各カルデラの火山活動の推移に関し考察したところ、後カルデラ火山活動には多様性が認められるが、いずれも、カルデラ形成期と後カルデラ期で マグマの化学組成に不一致が認められ、カルデラ形成後にマグマ供 給系が新たに形成されたものと考えられるとしている。(乙401)⒞ カルデラを形成するマグマシステムは、噴火したマグマの組成と物理的特性、噴火の頻度、空間的分布と噴火の規模及び深部のマグマ貯留層の構造などに顕著な変化を伴い、繰り返しの進化の経路をたどることが多く(例えば、コスーニシロス火山複合体、タウポ火 山、カトラ、ヴァレスカルデラ、サルトリーニ)、カルデラ崩壊後の段階では、大部分が空になって結晶化した浅い貯留層に深部からのマグマの再充填により、進化していない組成のマグマによる小規模かつ頻繁な噴火が発生し、これらの組成のマグマは、 リーニ)、カルデラ崩壊後の段階では、大部分が空になって結晶化した浅い貯留層に深部からのマグマの再充填により、進化していない組成のマグマによる小規模かつ頻繁な噴火が発生し、これらの組成のマグマは、潜在的により珪長質で揮発性に富んだ端成分に向かって進化し、新しいサイクル を開始する可能性があるとの指摘(乙248)や、イタリアのイスキア火山では、約2万年間にわたって浅い深度(4~6km)に蓄積されていたマグマにより破局的なカルデラ噴火に至り、その後の火山活動は、進化の乏しい新しいマグマにより引き起こされたとの指摘(乙404)がある。 c その他⒜ IAEAの技術文書であるTECDOC-1795は、あらゆる火山ハザード評価において重要な部分は、過去の活動パターンが、現在及び将来において予想される活動パターンと火山システムの観点で一致しているかどうかを判断することである、過去の火山事象 の形成につながった地質条件が将来も発生するか、あるいは、地質環境が変化したことで過去の火山事象の一部又は全てがその新しい環境下では発生しないと想定されるかどうかであるとしている。 (乙211[訳文1頁])⒝ 産業技術総合研究所地質調査総合センター作成の日本の第四紀火 山に係るデータベース(「日本の火山(第3版)」)においては、先カ ルデラ火山、カルデラ火山及び後カルデラ火山に可能な限り区分されている。(乙409、410)Nagaoka(1988)の知見及びこれに対する批判aNagaoka(1988)姶良カルデラ、阿多カルデラ等の南九州のカルデラ火山の第四紀後 期の噴火サイクルは、①プリニー式噴火サイクル(単発のプリニー式噴火又は中規模火砕流を伴ったプリニー式噴火のフェーズ)、②大規模火砕流サ ルデラ、阿多カルデラ等の南九州のカルデラ火山の第四紀後 期の噴火サイクルは、①プリニー式噴火サイクル(単発のプリニー式噴火又は中規模火砕流を伴ったプリニー式噴火のフェーズ)、②大規模火砕流サイクル(プリニー式噴火、マグマ水蒸気爆発や中規模火砕流、大規模火砕流のフェーズ)、③中規模火砕流サイクル(単発の中規模火砕流のフェーズ)、④小規模噴火のサイクル(ブルカノ式噴火(主に粘 性が高く揮発性成分の含有量の多い安山岩質マグマが間欠的に爆発的噴火を起こし、火山灰や火山岩塊を放出するとともに、粘り気の高い厚い溶岩が流出する噴火様式。VEI2~4(乙138[120、132頁]))、ストロンボリ式噴火(流動性の低いマグマが間欠的に小爆発を繰り返し、火砕丘を形成したり、溶岩を流出したりする噴火様式。 VEI1~2(乙138[120、131、132頁]))や溶岩流出のフェーズ。 「後カルデラ噴火火山ステージ」と言われることもある。)の4つに分類される。 姶良カルデラ及び阿多カルデラにおいては、②に先行する10万年間に①に相当する噴火が何度か連続的に発生し、②後の1万年間に③ に相当する噴火が数回発生しており、①から④は5~8万年続く噴火のマルチサイクルを形成している。 (乙247)bNagaoka(1988)の知見に対する批判Nagaoka(1988)の知見に対しては、Nagaoka(1 988)における噴火ステージとは、テフラ層序について整理するた めの作業仮説にすぎず、実際のマグマ溜まり内で生じる物理・化学過程に基づいた立証がされているわけではなく、将来の噴火規模の予測のためには使えない概念であるといった批判がある。(甲92、94、212)イ規制委員会における検討状況 り内で生じる物理・化学過程に基づいた立証がされているわけではなく、将来の噴火規模の予測のためには使えない概念であるといった批判がある。(甲92、94、212)イ規制委員会における検討状況 検討チームでの検討状況モニタリング検討チームの平成26年8月25日の第1回会合では、参加者から、以下のような発言がされた。 a 戊30京都大学名誉教授巨大噴火は何らかの前駆現象が数か月、あるいは数年前に発生する 可能性が高い。ただ、前駆現象が出たからといって、巨大噴火になるとは限らない。 巨大噴火が起きる10年、20年前に分かるというような発言も聞くが、実際にはそう単純ではない。顕著な異変が起きた後、異変がおさまったといっても、その後、大きな噴火が起こり得る。 (甲87[11、12頁]、214[11頁])b 戊22東北大学東北アジア研究センター教授(地球科学の専門家)火山噴火につき、地質・地形の調査、地震の観測、地殻変動の観測、地球化学的な又は岩石学的な調査により、ある程度の予測はできるのではないかと思うが、通常の噴火でも予知は難しく,巨大噴火の場合 はなおさら難しいであろうと思う。(甲87[24、27頁]、214[27頁])c 戊31東京大学地震研究所火山噴火予知研究センター教授(以下「戊31教授」という。)巨大噴火の時期や規模を予測することは、現在の火山学では極めて 困難、無理である。火山ガイドにおいては、その異常を見つけ、現状 と変わらないかどうかを確認するということであるが、その異常が、バックグラウンドの「ゆらぎ」の範囲である可能性がある。実は我々はバックグラウンドについての知識を持っていないので、それほど異常ではない現象を異常と思い込んでしまう危険性がある。 が、その異常が、バックグラウンドの「ゆらぎ」の範囲である可能性がある。実は我々はバックグラウンドについての知識を持っていないので、それほど異常ではない現象を異常と思い込んでしまう危険性がある。 マグマ溜まりの深さというのは、実は今10kmとしているが、も っと深いかもしれない。そうすると蓄積量自身の計算が狂ってくるわけであるから、モニタリングの観測網の整備と同時に、その理解を進める必要がある。また、マグマ溜まりの増減はモニタリングできるかもしれないが、そもそも、どの程度溜まっているのかは分からない。 その点については,トモグラフィ、レシーバ関数解析、散乱解析によ って、ある程度の推定ができるように技術を開発する必要がある。 カルデラ噴火には必ず前兆があり、直前には、見かけ上は明らかに大きな変動が出ると考えられる。そういう意味で、通常の避難には間に合うが、ここで要求されている燃料の搬出等に間に合うだけのリードタイム(数年あるいは10年という単位)では、とてもこの現象は 見えるものではない。 仮に、モニタリングで異常が見つかった場合に、その異常が何に基づいてどのような意味を持つのかという理解が、今の火山学では非常に不十分である。ゆらぎなのか、本当にカルデラに向けた兆候なのか、その点に注意する必要がある。 (甲87[28~32頁]、214[28~32頁])d 戊32東京大学名誉教授(専門はマグマ学、火山学。元気象庁火山噴火予知連絡会会長。以下「戊32教授」という。)例えば、マグマ溜まりが100k㎥溜まっているということを今の時点で推定する手法というのは、ほとんどないと理解している。マグ マ量100k㎥というと、面積として60~100k㎡の下に厚さ1 kmぐらいの液体であるマグマが存在す うことを今の時点で推定する手法というのは、ほとんどないと理解している。マグ マ量100k㎥というと、面積として60~100k㎡の下に厚さ1 kmぐらいの液体であるマグマが存在することとなるが、これを今の地震学的手法で探査できるかというと、なかなか難しいというのが探査の専門家の意見である。 ある異常現象をつかまえたときに、それが巨大噴火に至るのか、小さな規模の噴火で終わってしまうのか、あるいは噴火未遂になるのか ということを判断する基準を我々は持っていないため、モニタリングは厳しい。 (甲87[34、35頁]、214[34、35頁]、乙165[96頁])モニタリング検討チームは、平成27年7月31日付けで、「原子力施 設に係る巨大噴火を対象とした火山活動のモニタリングに関する基本的考え方」(以下「モニタリングに関する基本的考え方」という。)を作成して、モニタリング検討チームの検討結果を取りまとめたところ、以下のような記載がある。 国内の通常の火山活動については、気象庁が防災の観点から110の 活火山について「噴火警報・予報」を発表することになっているが、噴火がいつ・どのような規模で起きるかといった的確な予測は困難な状況にある。また、未知の巨大噴火に対応した監視・観測体制は設けられていない。 VEI6以上の巨大噴火に関しては発生が低頻度であり、モニタリン グ観測例がほとんどなく、中長期的な噴火予測の手法は確立していない。 しかし、巨大噴火には何らかの短期的前駆現象が発生することが予想され、モニタリングによって異常現象として捉えられる可能性は高い。ただし、モニタリングで異常が認められたとしても、いつ・どの程度の規模の噴火に至るのか、あるいは定常状態からの「ゆらぎ」の範囲なのか モニタリングによって異常現象として捉えられる可能性は高い。ただし、モニタリングで異常が認められたとしても、いつ・どの程度の規模の噴火に至るのか、あるいは定常状態からの「ゆらぎ」の範囲なのか 識別できないおそれがある。 (甲88[別添11頁])ウ噴火予測に関する専門家の見解戊32教授戊32教授は、前記イdに加え、以下のような見解を示している。 a 火山噴火の長期予測については明確な手法は確立していない。カル デラ噴火について、科学的な切迫度を求める手法は存在せず、原子力発電所の稼働期間中にカルデラ噴火の影響を被る可能性が高いか低いかという判定そのものが不可能なはずである。(甲29[219、220頁])b 階段ダイヤグラムについて 階段ダイヤグラムを活用して噴火時期を予測するには、マグマ供給率又は噴火噴出物放出率が一定であることが必要条件であるが、これが長期的にわたって成立する保証はない。特に数千年から数万年という長期間においてはこのような前提が成立することは確かめられていない。また、階段ダイヤグラムの基になる噴出物量の推定そのものに 大きな誤差が含まれていること、噴火年代についても大きな誤差があることから、数万年レベルの噴火履歴から原子力発電所の稼働期間である数十年単位の噴火可能性を階段ダイヤグラムで議論すること自体に無理がある。(甲29[219頁])c 噴火間隔について 特定地域の平均的噴火発生期間から噴火の頻度を求めること自体には問題があるわけではない。しかし、適切な噴火発生モデルを想定することなく、特定のカルデラ火山の最終噴火からの経年が平均発生間隔より短いから、次の噴火まで余裕があるというのは合理的でない。 適切な噴火発生モデルを提 はない。しかし、適切な噴火発生モデルを想定することなく、特定のカルデラ火山の最終噴火からの経年が平均発生間隔より短いから、次の噴火まで余裕があるというのは合理的でない。 適切な噴火発生モデルを提示できない段階で切迫度を検討するとし たら、平均発生間隔に依拠することなく、カルデラ噴火が複数回発生 した阿蘇山では最短間隔が2万年であることを考慮し、最終噴火から2万年を経過している以上、既に再噴火の可能性がある時期に到達したと考えるべきである。(甲216[577頁])d モニタリングについて多くの場合、モニタリングによって火山活動の異常を捉えることは 可能であるが、その異常が破局噴火につながるのか、通常の噴火なのか、それとも噴火未遂に終わるのかなどを判定することは困難である。 いずれにせよ、モニタリングによって把握された異常から、数十年先に起こる事象を正しく予測することは不可能である。(甲216[577頁]) 戊33氏火山学、火山防災を専門とする静岡大学防災総合センターの戊33氏は、以下のような見解を示している。 a 実際にVEI7以上の噴火を機器観測した例は世界の歴史上になく、現代火山学は、どのような観測事実があれば大規模カルデラ噴火を予 測できるか(あるいは未遂に終わるか)についての知見をほとんど持ち合わせていない。個々の火山や噴火には固有の癖があり、その癖の原因がほとんど解明できていないことは、火山学の共通理解である。 (甲92[190頁])b 綿密な機器観測網の下で大規模なマグマ上昇があった場合に限って、 数日~数十日前に噴火を予知できる場合もあるというのが、火山学の偽らざる現状である。機器観測によって数十年以上前に噴火を予測できた例は皆無である。一方、巨大噴火直前の噴 あった場合に限って、 数日~数十日前に噴火を予知できる場合もあるというのが、火山学の偽らざる現状である。機器観測によって数十年以上前に噴火を予測できた例は皆無である。一方、巨大噴火直前の噴出物の特徴を調べることによって、後知恵的に経験則を見つけようとする研究も進行中であるが、まだわずかな事例を積み重ねているだけで一般化には至ってい ない。カルデラ火山の巨大噴火の予測技術の実用化は、おそらく今後 いくつかの巨大噴火を実際に経験し、噴火前後の過程の一部始終を調査・観測してからでないと達成できないであろう。 こうした現状を考えれば、「少なくとも数十年以上前に(破局的噴火の)兆候を検知できる」という主張は荒唐無稽である。 日本のどこかでカルデラ火山の巨大噴火(VEI7程度以上)が起 きる確率はおおよそ1万年に1回程度であり、最新のものは鬼界カルデラの7300年前の巨大噴火であることからすると、今後1万年間に日本列島のどこかでカルデラ火山の巨大噴火が起きる確率は、ほぼ100%とみてよい。今後100年間では1%程度になる。 (甲216[574、575頁]) 戊34氏神戸大学海洋底探査センターの戊34氏は、以下のような見解を示している。 巨大噴火の活動間隔は「周期」という概念が適用できないほどに不揃いであり、最後のイベントからの経過時間を将来の噴火の切迫度を示す 指標として使うことができない。 現時点では、マグマ溜まりの位置や大きさ、そして形を正確に捉えた例はなく、これを目指した観測は始まったばかりである。ましてや、巨大噴火の場合にどのような前兆現象が認められるかは、巨大噴火をこれまで一度も観測した経験をもたない我々には知る由もなく、同様に、あ る種の地殻変動が観測されたとしても かりである。ましてや、巨大噴火の場合にどのような前兆現象が認められるかは、巨大噴火をこれまで一度も観測した経験をもたない我々には知る由もなく、同様に、あ る種の地殻変動が観測されたとしても、どの程度巨大噴火の切迫度が高いか、言い換えれば何年後にどの規模の巨大噴火が起きるかは全く予測できない。 (甲63、218)戊35氏 火山研究者として、長年にわたり、阿蘇と九重を中心に火山の観測、 調査、研究に取り組んできた戊35氏(以下「戊35氏」という。)は、以下のような見解を示している。 現在の科学研究では、火山についての噴火の時期も規模も形態様式も、また、推移や継続時間も予測することはできないというのが、大多数の火山研究者の共通認識である。地下のマグマ溜まりの規模や性状を把握 し、その火山における噴火の潜在能力を評価しようというのは、噴火の中長期の予測を可能にする方法として、大きな方向性としては間違っていないと思われる。しかし、現状の火山についての科学研究では、それでその火山の今後数十年間における最大規模の噴火を評価することはできない。 また、近時の通説的見解では、マグマ溜まりはその周辺の母岩(地殻)と比較的明瞭な壁のようなもので仕切られているのではなく、マグマ溜まりの大部分はマッシュ状(半固結状態)でほとんど流動できない状態にあり、その外縁は周辺の母岩と明瞭な区別はできないと考えられており、地下のマグマ溜まりの体積を地下構造探査によって精度良く求める ことはできない。 さらに、10kmより深い部分にマグマ溜まりがあり、それが全体として非常に大きな噴火を引き起こす可能性も否定できない。 加えて、手法の違いにより、マグマ溜まりの溶融割合の上限値と下限値には非常に さらに、10kmより深い部分にマグマ溜まりがあり、それが全体として非常に大きな噴火を引き起こす可能性も否定できない。 加えて、手法の違いにより、マグマ溜まりの溶融割合の上限値と下限値には非常に大きな幅が生じ得るのであって、溶融割合から安易に噴火 規模を推定すべきではない。 (甲212)⑵ 判断ア立地評価に係る令和元年火山ガイドの合理性の有無について巨大噴火の可能性評価について 令和元年火山ガイドは、巨大噴火については、低頻度な火山事象であ り有史において観測されたことがないこと等を踏まえて評価を行うことが適切であるとして、過去に巨大噴火が発生した検討対象火山については、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等から総合的に評価して、当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状 態ではないと評価でき(非切迫性の要件)、かつ、現在の火山学の知見に照らした調査を尽くした上で、上記評価ができたとしても、火山学の知見の進歩により、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られた場合、当然これを考慮すべきであることから、上記具体的な根拠が得られていない場合(具体的根拠欠缺 の要件)には、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断できるとしている(前提事実13⑴オ、乙98、令和元年火山ガイド4.1⑵、解説-11.)。 この点、科学技術を利用した各種の装置、施設等の利用には、常に何らかの程度の事故発生等の危険性を伴っているが、その危険性(事故等 の起きる確率)が社会通念上容認できる水準以下であると考えられる場合に、又は、その危険性の 種の装置、施設等の利用には、常に何らかの程度の事故発生等の危険性を伴っているが、その危険性(事故等 の起きる確率)が社会通念上容認できる水準以下であると考えられる場合に、又は、その危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合に、その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとの比較衡量の上で、これを一応安全なものであるとして利用しているのであって、このような相対的安全性の考え方は、原子炉施設の 安全についても妥当するというべきである。そして、前記1⑵において説示したとおり、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号が、規制委員会が、安全性に関する基準を規則で定めた上で、上記基準に適合するかを審査する旨定めているのは、原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び基準への適合性については、規制委員会の科学的、専門技術的知 見に基づく判断に委ねる趣旨と解するのが相当であることからすると、 上記危険性(事故等の起きる確率)が社会通念上容認できる水準以下であるかの判断についても、規制委員会の科学的、専門技術的知見に基づく判断に委ねるものと解される。 このような相対的安全性の考え方を前提に、巨大噴火の可能性評価についてみるに、国内において、噴出量数十k㎥以上を超えるような巨大 噴火は6000年から1万年に1回程度の頻度で発生し、VEI7程度以上の噴火は1万年に1回の頻度で発生していると指摘されており(前記⑴アa)、その発生頻度は極めて低いと認められる。そうすると、現在の火山の状態を評価して、当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価でき(非切迫性の要件)、かつ、火山学の知 見の進歩を踏まえても、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的 山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価でき(非切迫性の要件)、かつ、火山学の知 見の進歩を踏まえても、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られていない場合(具体的根拠欠缺の要件)に、巨大噴火の危険性(巨大噴火が発生する確率)が社会通念上容認できる水準以下であるとして、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断できるとすることは、巨大噴火を想定した 法規制や防災対策が原子力安全規制以外の分野で行われていないことも踏まえると、相応の合理性を有しているものと評価できる。 これに対し、原告らは、リスク概念は発生確率と被害の大きさの積により求められるべきものであり、破局的噴火の発生頻度の小ささが危険度の小ささを意味するものではなく、これを前提として、巨大噴火の危 険性をないことにする旨の社会的な合意(社会通念)は存在しないなどとして、原子炉施設に求められる安全性は、限定的絶対的安全性(深刻な災害が万が一に起こらない程度の安全性)である旨主張する(第5の1(原告らの主張)⑵、第5の5(原告らの主張)⑴イ)。この点、原子炉施設の安全性が確保されないときは深刻な災害を引き起こすおそれが あることから、上記災害が万が一にも起こらないようにするため、上記 危険性(事故等の起きる確率)が社会通念上容認できる水準以下であるとの判断が合理的にされているかについては厳格に判断される必要があることはいうまでもないが、上記災害の深刻さをもって、相対的安全性の考え方自体が否定されるものとは認め難い。 また、原告らは、最新の火山学の知見によっても、火山噴火の時期及 び規模に関する的確な中長期的予測は困難である以上、現在の火山の状態から検討対象火山 の考え方自体が否定されるものとは認め難い。 また、原告らは、最新の火山学の知見によっても、火山噴火の時期及 び規模に関する的確な中長期的予測は困難である以上、現在の火山の状態から検討対象火山の活動可能性の大小を評価することなどできないのであって、非切迫性の要件及び具体的根拠欠缺の要件は、上記知見に反している旨主張する(第5の5(原告らの主張)⑴ア)。 確かに、火山噴火の時期及び規模を的確に中長期的に予測することに ついては、最新の火山学の知見によっても困難であることが、複数の専門家のみならず、規制委員会の下、発足したモニタリング検討チームによるモニタリングに関する基本的考え方においても言及され(前記⑴イ、ウ)、令和元年火山ガイドもこれを前提としているところであって(前提事実13⑴オ)、上記中長期的予測の手法が確立していない以上、現在 の火山の状態を評価して火山噴火の時期及び規模を的確に予測することはできないものと認められる。 そこで、以下、火山噴火の時期及び規模を的確に中長期的に予測できずとも、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間、現在のマグマ溜まりの状況、地殻変動の観測データ等か ら総合的に評価することにより、当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価すること(非切迫性の要件)に不合理な点がないかといった観点から、令和元年火山ガイドに不合理な点がないかにつき検討する。 a 現在のマグマ溜まりの状況について ⒜ 大規模な珪長質マグマ溜まりの位置・形状等について ⅰ 巨大噴火は、マグマ溜まりに存在する数十~100k㎥の大量の珪長質マグマが、減圧発泡し、急激な体積の膨張に伴ってその一部が地表に噴出することにより発生するところ、この 等について ⅰ 巨大噴火は、マグマ溜まりに存在する数十~100k㎥の大量の珪長質マグマが、減圧発泡し、急激な体積の膨張に伴ってその一部が地表に噴出することにより発生するところ、このような大規模な珪長質マグマ溜まりは、浮力中立となる地下浅部(地下数~10km程度)に扁平形状(シル状)で存在するものと考えら れている(前記⑴ア、a)。そして、このような知見は、巨大噴火を引き起こす珪長質マグマは低温で粘性が高く、一気に地殻中を上昇することはできないこと(前記⑴ア)や、巨大噴火により形成される直径2km以上に及ぶカルデラが、マグマの大量噴出により生じた地下の空間に地表が陥没して形成されること (前記⑴ア)と整合しており、不合理な点は見当たらない。 ⅱ(ⅰ) これに対し、原告らは、第5の5⑴アcのとおり、①地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりがなければ巨大噴火が起きないという知見は、確立した知見ではなく、10km以深のマグマ溜まりから巨大噴火のマグマが供給されることもあり得る し、②阿蘇2火砕流及び阿蘇3火砕流が安山岩質であることからすれば、大規模な珪長質マグマ溜まりがなくとも巨大噴火は発生するといえ、また、③複数のマグマ溜まりから同時期に噴出して一つの巨大噴火を構成することも考えられる旨主張する。 この点、上記①の点については、確かに、戊31教授が、モ ニタリング検討チームの会合において、マグマ溜まりの深さというのは、実は今10kmとしているが、もっと深いかもしれないと発言したこと(前記⑴イc)や、戊35氏が、10kmより深い部分にマグマ溜まりがあり、それが全体として非常に大きな噴火を引き起こす可能性も否定できないとの見解を示 していること(前記⑴ウ)が認められる。 )や、戊35氏が、10kmより深い部分にマグマ溜まりがあり、それが全体として非常に大きな噴火を引き起こす可能性も否定できないとの見解を示 していること(前記⑴ウ)が認められる。 しかしながら、戊31教授の上記発言及び戊35氏の上記見解は、可能性を指摘するにとどまるものであって、具体的な科学的根拠が示されているわけではない。また、戊35氏自身、陥没カルデラ形成時の噴火活動は、地下数kmに大規模な珪長質のマグマ溜まりができることから始まる、玄武岩質マグマは、 その密度が珪長質マグマより大きいので、珪長質マグマを突き抜けることができない旨、巨大噴火に至るには、大規模な珪長質マグマ溜まりが地下浅部に存在することが必要であるという上記知見に沿う見解を示していることも認められる(乙421[70、83頁])。以上によると、上記発言等により、上記知 見の信用性が否定されるものとは認め難い。 次に、上記②の点については、確かに、原告らが指摘するとおり、阿蘇2火砕流及び阿蘇3火砕流には安山岩質マグマが含まれていることが認められるものの、阿蘇2噴火及び阿蘇3噴火は、いずれも、大局的に、上部に珪長質マグマ、下部に苦鉄 質マグマが密度的に安定成層した層状マグマ溜まりからの噴火であると考えられており、いずれの噴火においても、噴火初期に珪長質マグマの噴出が認められるから(後記6⑴アb)、阿蘇2火砕流及び阿蘇3火砕流に安山岩質マグマが含まれていることをもって、大規模な珪長質マグマ溜まりがなくとも巨大噴 火が発生することが根拠付けられるものとは認められない。 また、上記③の点については、仮に、マグマ溜まりが複数であったとしても、過去のVEI7を超える大規模噴火では、ほぼ例外なくカルデラが形成されているところ、 とが根拠付けられるものとは認められない。 また、上記③の点については、仮に、マグマ溜まりが複数であったとしても、過去のVEI7を超える大規模噴火では、ほぼ例外なくカルデラが形成されているところ、カルデラが形成されるためには、地表が陥没し得る体積と空間的な広がりがマ グマ溜まり内に必要であり(前記⑴ア)、少なくとも一つの空 間的にひとまとまりのマグマ溜まりの存在が示唆されるのであって(乙154[105頁])、巨大噴火が発生するために、大規模な珪長質マグマ溜まりが不要であるとは認め難い。 (ⅱ) また、原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アcのとおり、マグマ溜まりがシルの集合体である場合は、地殻内のレオ ロジーや剛性のコントラスト、応力場などがマグマの定置深度を支配するらしいと考えられており、浅い位置に扁平楕円体のマグマ溜まりがなくても噴火に至る場合がある旨主張する。 この点、確かに、東宮(2016)において、マグマ溜まりがシルの集合体である場合は、浮力よりもむしろ、地殻内のレ オロジーや剛性のコントラスト、応力場などがマグマの定置深度を支配するらしいとの見解が示されていることが認められるが、東宮(2016)は、岩石学的手法又は岩石学的推定により求まるマグマ溜まりの深度は4~12km程度、又はほとんど3~10kmであるとも指摘しており(前記⑴アa⒜)、地 下浅部にマグマ溜まりが存在せずとも、巨大噴火が発生する可能性を示唆しているものとは認められない。そうすると、東宮(2016)の上記見解によって、巨大噴火に至るには大規模な珪長質マグマ溜まりが地下浅部に存在することが必要であるとの上記知見が否定されるものではない。 ⒝ マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火に至る期間について前記⒜のと 巨大噴火に至るには大規模な珪長質マグマ溜まりが地下浅部に存在することが必要であるとの上記知見が否定されるものではない。 ⒝ マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火に至る期間について前記⒜のとおり、巨大噴火が発生するには、大規模な珪長質マグマ溜まりが必要であるところ、珪長質マグマは、低温で粘性が高いため、一気に地殻中を上昇して噴火することはできず、徐々に浮力で上昇して地殻上部に移動し、このようなサイクルが繰り返される ことにより、地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが形成される と考えられている(前記⑴ア)。そして、マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火に至る期間については、物質科学的な検討の結果、カルデラ形成噴火では、噴火の数百年前から大規模珪長質マグマの集積過程が進行しているとの指摘(前記⑴アc⒜)のほか、カルデラを形成する噴火の場合、マグマ混合から噴火まで数百~数千年の拡散 時間を示す結晶を含むとの見解(同⒝)、マグマ溜まりは、数万年から数十万年という長い年月をかけて蓄積されるとの見解(同⒞)もあるところであって、マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火に至るには、少なくとも数百年という原子力発電所の運用期間を上回る時間を要するとするのが一般的な知見であると認められる。 この点、東宮(2016)は、数か月から数十年という短期間にマグマ溜まり全体のオーバーターンが起きてそのまま噴火に至ることがあると予想されるとしている(前記⑴アb⒜)が、上記見解は、地下浅部にマッシュ状の巨大マグマ溜まりが既に存在していることを前提に、マッシュの再活性化の機序を説明しているものであ って、短期間で地下浅部に巨大マグマ溜まりが形成されることを示すものとは認められない。 なお、原告らは、「運用期間」は、原子力発電所に 前提に、マッシュの再活性化の機序を説明しているものであ って、短期間で地下浅部に巨大マグマ溜まりが形成されることを示すものとは認められない。 なお、原告らは、「運用期間」は、原子力発電所に核燃料物質が存在する期間であり、数百年にも及ぶ可能性がある旨主張するが、モニタリング検討チームでの議論や専門家の見解が、「運用期間」が数 百年であることを前提にしていることはうかがわれず(甲28、62、87)、運転期間(原則40年)に加え、核燃料物質の搬出期間も考慮しても、運用期間が数百年に及ぶものとは認め難い。 ⒞ 大規模な珪長質マグマ溜まりの探査についてそして、マグマ溜まりについては、地球物理学的手法(地震波ト モグラフィ、MT法等)によって検出できるとされており、現に、 各種探査により検出されていることが認められる(前記⑴ア、後記6⑴アb)。 この点、原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アcのとおり、マッシュ状となっているマグマ溜まりの位置、体積を正確に見積もることは困難である旨主張する。 確かに、モニタリング検討チームの第1回会合においては、専門家らから、マグマ溜まりがどの程度溜まっているかを探査するのは困難である旨の発言がされ(前記⑴イc、d)、また、マグマ溜まりの位置や大きさ、形を正確に捉えた例はないとの指摘(前記⑴ウ)や、マッシュ状のマグマ溜まりの外縁は周辺の母岩と明瞭な区 別ができず、地下のマグマ溜まりの体積を地下構造探査によって精度よく求めることはできないといった指摘(前記⑴ウ)がされていることが認められ、マッシュが主体の領域とメルトが主体の領域の線引きやマグマ溜まりと周囲の母岩との明確な線引きは困難であり、マッシュ状のマグマ溜まりのみを明確に区別して検出し、正確 )がされていることが認められ、マッシュが主体の領域とメルトが主体の領域の線引きやマグマ溜まりと周囲の母岩との明確な線引きは困難であり、マッシュ状のマグマ溜まりのみを明確に区別して検出し、正確 にその形状や体積を見積もることが困難であることは否定できない。 しかし、全体として、メルト及びマッシュ状のマグマを含む領域を把握すること自体は可能であると認められるから(前記⑴アb)、地下浅部における大規模な珪長質マグマ溜まりの有無を把握することは可能であると認められる。 ⒟ 以上によると、巨大噴火が発生するには、地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在することが必要であるところ、マグマ溜まりの蓄積から巨大噴火に至るまでに、原子力発電所の運用期間を上回る時間を要するとの一般的な知見があることからすると、地球物理学的手法等により、地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが存 在するものとは認められない場合には、他の評価結果も総合考慮し た上で、非切迫性の要件を満たすものと評価することは合理的であると認められる。 b 地殻変動の観測データによる評価について地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在すれば、地表面が上昇することが認められるから(前記⑴アa)、当該火山の現在の活動状況 は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価するために、現在のマグマ溜まりの状況等に加え、地殻変動の観測データも評価することは合理的であると認められる。 c 検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間 原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アaのとおり、噴火間隔又は階段ダイヤグラムを用いて将来の活動可能性を予測することには相当に大きな不確実性が伴うにもかかわらず、これを評価することで活動可 原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アaのとおり、噴火間隔又は階段ダイヤグラムを用いて将来の活動可能性を予測することには相当に大きな不確実性が伴うにもかかわらず、これを評価することで活動可能性を評価できるかのような令和元年火山ガイドの定めは不合理である旨主張する。 確かに、原子力発電所の稼働期間である数十年単位の噴火可能性を階段ダイヤグラムで議論することは困難である旨が指摘されている(前記⑴ウb)ほか、火山の活動間隔のみから運用期間中における巨大噴火の可能性の大小を評価することが困難であることは被告も認めるところである。しかしながら、巨大噴火が発生した火山につき、 過去の長期にわたる当該火山の活動履歴を精査し、火山の活動間隔と最新の巨大噴火からの経過期間を把握することは、運用期間中における巨大噴火の可能性を評価する上での重要な基礎情報の一つであるといえるから、現在のマグマ溜まりの状況や地殻変動の観測データ等に加えて、火山の活動間隔又は階段ダイヤグラムや、最後の巨大噴火か らの経過時間も考慮すること自体に不合理な点はない。 d 噴火タイプ、噴火パターン等原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アbのとおり、噴火ステージ論を巨大噴火の可能性評価の評価手法の一つとして位置付けている令和元年火山ガイドの定めは不合理であるとも主張するところ、令和元年火山ガイドは、検討対象火山の活動可能性の評価に当たって、 噴火タイプ、噴火パターン等を考慮要素として挙げているが(令和元年火山ガイド3.及び4.1⑵、前提事実13⑴イ、、オ)、噴火ステージ論(Nagaoka(1988)の知見)を考慮することまで明示的に要求しているとは解されない。また、火山ごとに火山活動の特性や規模が異なることからすれば、噴 提事実13⑴イ、、オ)、噴火ステージ論(Nagaoka(1988)の知見)を考慮することまで明示的に要求しているとは解されない。また、火山ごとに火山活動の特性や規模が異なることからすれば、噴火タイプ、噴火パターンを 考慮することは、当該火山の活動可能性を評価する上で、重要な基礎情報の一つであるといえるし、IAEAの技術文書であるTECDOC-1795も、「あらゆる火山ハザード評価において重要な部分は、過去の活動パターンが、現在及び将来において予想される活動パターンと火山システムの観点で一致しているかどうかを判断することであ る。」と述べているように(前記⑴アc⒜)、検討対象火山の活動可能性を評価するに当たって、噴火タイプや噴火パターンをも考慮すること自体が不合理であるとは認められない。 e 小括⒜ 前記a~dにおいて検討したところによると、現在のマグマ溜ま りの状況(地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在しないこと等)、地殻変動の観測データ、検討対象火山における巨大噴火の活動間隔、最後の巨大噴火からの経過時間等から総合的に評価して、当該火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと評価すること(非切迫性の要件)は合理的であると認められる。 この点、原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アaのとおり、 非切迫性の要件につき、具体的・客観的基準が何ら示されておらず、要件として曖昧不明確で恣意的な判断を許すものとなっている上、火山噴火の時期及び規模の中長期的予測が困難である現在の火山学の知見において不可能なことを要求するものである旨主張する。 しかしながら、令和元年火山ガイドは、巨大噴火が差し迫った状 態ではないことを評価するに当たって、現在の火山学の知見に照ら 火山学の知見において不可能なことを要求するものである旨主張する。 しかしながら、令和元年火山ガイドは、巨大噴火が差し迫った状 態ではないことを評価するに当たって、現在の火山学の知見に照らした調査を尽くした上で、前述のとおり、検討対象火山における現在のマグマ溜まりの状況等を総合的に評価することを求めているから(令和元年火山ガイド解説-11.)、非切迫性の要件につき、何ら具体的・客観的な基準が示されていないとの指摘は当たらない。 また、既に説示したとおり、非切迫性の要件は、火山噴火の時期及び規模の中長期的予測を前提とするものではない上、運用期間中における巨大噴火の可能性の評価に資する火山学の知見は一定程度蓄積されているのであるから、非切迫性の要件は、現在の火山学の知見において不可能なことを要求するものであるとも認められない。 ⒝ そして、火山学の知見の進歩により、運用期間中における巨大噴火の可能性を示す科学的に合理性のある具体的な根拠が得られた場合、当然これを考慮すべきであることからすると、巨大噴火の可能性が十分に小さいと評価するに当たって、上記具体的な根拠が得られていないことを要求すること(具体的根拠欠缺の要件)もまた合 理的であると認められる。 この点、原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴アbのとおり、現在の火山学の水準に照らせば、火山噴火の時期及び規模を中長期的に予測することは不可能なのであるから、上記具体的な根拠を示すことは不可能であって、具体的根拠欠缺の要件は、要件として機 能しないものである旨主張するが、前述のとおり、具体的根拠欠缺 の要件は、火山学の知見の進歩により、上記具体的な根拠が得られた場合について言及したものであって、現在の火山学の水準を前提とする原告らの上 る旨主張するが、前述のとおり、具体的根拠欠缺 の要件は、火山学の知見の進歩により、上記具体的な根拠が得られた場合について言及したものであって、現在の火山学の水準を前提とする原告らの上記主張は理由がない。 ⒞ 以上によると、非切迫性の要件及び具体的根拠欠缺の要件を満たす場合、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判 断できるとする令和元年火山ガイドに不合理な点はないものと認められる。 巨大噴火に至らない噴火についての噴火規模の推定手法についてa 令和元年火山ガイドは、過去に巨大噴火が発生した火山で、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したものについ ては、その評価を行うに当たって、当該火山の最後の巨大噴火以降の最大規模とする旨定めているところ(令和元年火山ガイド4.1⑶、前提事実13⑴オ)、巨大噴火に伴うカルデラ崩壊後には、噴出物や噴火活動の変化が観察されることがあり、実際、巨大噴火を機にマグマ供給系、活動様式の変化が見られる火山が多数指摘されていること (前記⑴アb)、噴火規模と噴火頻度の間の逆相関関係が直線的ではなく、VEI6付近を境に2つの頻度分布に区分できることから、巨大噴火が、それよりも小さい通常の噴火とは異なるメカニズムで発生するものと考えられており(前記⑴アb)、信頼性のあるデータベースとして参照される「日本の火山(第3版)」においても多くのカルデ ラ火山と後カルデラ火山とが別の火山として整理されていること(前記⑴アc⒝)からすれば、過去に巨大噴火が発生した火山のうち、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したものについて、最後の巨大噴火とそれ以降の通常の噴火とを区別することには合理性があるものと認められる。そして、運用期 が発生した火山のうち、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したものについて、最後の巨大噴火とそれ以降の通常の噴火とを区別することには合理性があるものと認められる。そして、運用期間中における巨 大噴火の可能性は十分に小さいと判断した火山について、調査結果か ら噴火規模が推定できない場合は、保守的に過去最大の噴火規模を設定する旨の規定(令和元年火山ガイド4.1⑶、前提事実13⑴イb、オ)と同様の考え方を採用して、その評価に当たって、最後の巨大噴火以降の最大規模を想定する点についても合理性があるものと認められる。 b これに対し、原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴イのとおり、運用期間中における巨大噴火の可能性が十分小さいと判断された火山に係る噴火規模については、少なくとも破局的噴火に準じる規模(少なくとも数十k㎥の噴火)が想定されるべきである旨主張する。 しかしながら、原告らが少なくとも想定すべきであると主張する破 局的噴火に準じる規模(少なくとも数十k㎥の噴火)は、令和元年火山ガイドが定める巨大噴火の規模(数十k㎥程度を超えるような噴火。 前提事実13⑴エ)とほぼ同一視できるものであるところ、前述のとおり、巨大噴火が、それよりも小さい通常の噴火とは異なるメカニズムで発生するものと考えられていることからすると、運用期間中に おける巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断された火山について、上記破局的噴火に準じる規模を想定することに科学的合理的根拠があるとは認められない。 モニタリングが立地評価の対象から外されたことに伴う保守的な修正がされていないとの主張について 原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴ウのとおり、モニタリングによって噴火の兆候が把握できないことは多数の専 立地評価の対象から外されたことに伴う保守的な修正がされていないとの主張について 原告らは、第5の5(原告らの主張)⑴ウのとおり、モニタリングによって噴火の兆候が把握できないことは多数の専門家が指摘しており、モニタリングによって立地評価を担保することができないにもかかわらず、これを可能とする旧火山ガイドは不合理であるところ、令和元年火山ガイドは、モニタリングの位置付けを立地評価から外したのみで、上 記のような旧火山ガイドの不合理性を解消するために何ら保守的な修正 を行っておらず、不合理である旨主張する。 確かに、旧火山ガイドと令和元年火山ガイドとでは、モニタリングの規定の位置が異なっており(甲84、232、乙150)、一見すると、その位置付けに変更があったようにも思われる。しかしながら、令和元年火山ガイドは、旧火山ガイド(ないし平成29年火山ガイド)の内容 を変更するものではない(前提事実13⑴オ、乙411)。すなわち、令和元年火山ガイドは、モニタリングの目的について、「評価時から状態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認すること」と明記しているところ(令和元年火山ガイド6.、前提事実13⑴オ)、令和元年火山ガイド以前においても、モニタリングの目的は、個別評価 により運用期間中の火山活動の可能性が十分に小さい旨の立地評価が既にされている火山について、運転期間中の火山の活動可能性及び設計対応不可能な火山事象の影響可能性が十分に小さいとの評価の根拠が継続していることを確認するものであって、飽くまで火山の状態の変化を検知することが目的とされており(前提事実13⑴エ、乙15[313 ~315頁]、98[350~352頁])、モニタリングによって噴火の時期や規模を予測すること 、飽くまで火山の状態の変化を検知することが目的とされており(前提事実13⑴エ、乙15[313 ~315頁]、98[350~352頁])、モニタリングによって噴火の時期や規模を予測することを目的としていたものではないから、モニタリングの規定が立地評価の一内容であったとは認められない。 したがって、原告らの主張は、その前提となるモニタリングの規定の解釈に誤りがあり、採用できない。 イ影響評価に係る令和元年火山ガイドの合理性の有無原告らは、第5の5(原告らの主張)⑵のとおり、令和元年火山ガイドの影響評価において、気中降下火砕物濃度の推定手法として、3.1の手法又は3.2の手法のいずれかの手法によれば足りるとしているところ、いずれも必ずしも保守的な値になっているとは限らず、基準として不合理 である旨主張する。 しかしながら、令和元年火山ガイドは、3.1の手法及び3.2の手法のいずれについても大きな不確実さを含んでいることを前提に、これらの手法を安全施設の機能維持が可能かどうかを評価するために用いており、3.1の手法については、細粒な降下火砕物は単独で落下することがほぼできないにもかかわらず(乙141[94頁])、降下火砕物の粒径の大小 にかかわらず同時に降灰が起こると仮定していること、細粒な降下火砕物は凝集して終端速度を獲得して速やかに降下し始め、気中降下火砕物濃度は小さくなるにもかかわらず(乙141[94頁])、粒子の凝集を考慮しないこととしていること等から、3.2の手法については、原子力発電所への影響が大きい観測値に基づく気象条件を設定していること等から、い ずれの手法による推定値も実際の降灰現象と比較して保守的な値になっているとして、いずれかの手法を用いれば足りる旨を規 発電所への影響が大きい観測値に基づく気象条件を設定していること等から、い ずれの手法による推定値も実際の降灰現象と比較して保守的な値になっているとして、いずれかの手法を用いれば足りる旨を規定していることが認められる(前提事実13⑴ウ)。そして、このような令和元年火山ガイドの定めが不合理であることを示す具体的根拠が示されているとは認められない。 なお、原告らは、降下火砕物検討チームの会合において、保守的な想定ではないことを認める発言があったことなどを指摘するが、これを的確に認めるに足りる証拠はなく、また、仮に、そのような発言があったとしても、それも踏まえた上で、最終的に3.1の手法又は3.2の手法のいずれかの手法を用いれば足りる旨の規定となっているのであるから、上記結 論は左右されない。 ウ結論前記ア及びイのとおり、原告らの上記各主張を踏まえても、巨大噴火に関する令和元年火山ガイドの規定に不合理な点は認められない。加えて、令和元年火山ガイドは、立地評価及び影響評価を行うという判断枠組み、 検討対象火山の活動可能性を評価するという枠組み、設計対応可能な火山 事象と設計対応不可能な火山事象の選定の枠組み、降下火砕物の最大層厚の設定方法等についてIAEAの安全基準SSG-21(乙210)にも整合しており、令和元年火山ガイドに不合理な点はないものと認められる。 6 争点6(火山事象に関する本件適合性審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無))について 立地評価に関する本件適合性審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無)ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 阿蘇における巨大噴火a 阿蘇火 審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無)ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 阿蘇における巨大噴火a 阿蘇火山は、以下の合計4回の巨大噴火を起こしているところ、阿蘇4噴火は、第四紀における国内最大の噴火である。(前提事実13アd⒜、乙145、165)⒜ 阿蘇1噴火(約27万~約25万年前) VEI6、噴出量50k㎥⒝ 阿蘇2噴火(約14万年前)VEI6、噴出量50k㎥⒞ 阿蘇3噴火(約12万年前)VEI7、噴出量150k㎥以上 ⒟ 阿蘇4噴火(約9万~約8.5万年前)VEI7、噴出量600k㎥以上b 阿蘇2噴火、阿蘇3噴火及び阿蘇4噴火時のマグマ溜まりは、上部の相対的に低密度の珪長質マグマと下部の相対的に高密度の苦鉄質マグマで構成される成層したマグマ溜まりであったと考えられており、 噴火初期は珪長質マグマが噴出するが、珪長質マグマの大部分が噴出 した後に最終的に苦鉄質マグマが噴出したとされている。(乙157、170、181[3、4頁]、183)c 阿蘇3噴火後、苦鉄質マグマの活動期間があり、その後、阿蘇4噴火にかけて、珪長質へと変化したとされている。(乙181[4頁]、182、418) 阿蘇4噴火後(後カルデラ期)の阿蘇の火山活動の概要a 阿蘇4噴火により形成された直径約20kmのカルデラの中心付近に、中央火口丘として数多くの火山がほぼ東西方向に配列して形成されており、うち中岳が有史以降も火山活動を繰り返している。(乙165、171) b 噴火規模等阿蘇4噴火以降、約7万年前までの約2万年間は、軽石及びスコリアを噴出する噴火を間欠的に繰り返し、約8 うち中岳が有史以降も火山活動を繰り返している。(乙165、171) b 噴火規模等阿蘇4噴火以降、約7万年前までの約2万年間は、軽石及びスコリアを噴出する噴火を間欠的に繰り返し、約8.5万年前にVEI4~5程度の軽石、約8万年前にVEI4程度の軽石を噴出したが、次第に、軽石の噴出が減少し、6回のVEI4の噴火の後、約4万年前に VEI4の軽石、約3.1万年前に阿蘇4噴火以降最大級の噴火である草千里ヶ浜軽石(VEI5)を噴出した後は、VEI4以上の噴火は発生していないとされている。(乙146[210~212頁])また、宇和盆地においては、阿蘇1噴火から阿蘇4噴火までの約20万年間に、18回の阿蘇起源の火山灰が確認されているが、阿蘇4 噴火以降は、阿蘇起源の火山灰は確認されていない。(乙180、184)c マグマの組成上記bのとおり、珪長質マグマによる軽石の噴出は次第に減少し、1万年前以降は、珪長質マグマの活動を伴わない主に玄武岩質マグマ による噴火によって特徴付けられている。(乙168[99頁]、17 2、174、175[6-5頁]、177)また、阿蘇4火砕流堆積物の火口は17個以上あり、それぞれ組成幅が限られた火山噴出物を生産していることから、カルデラ形成時の山体陥没によって大規模なマグマ溜まりが分断され、小さなマグマ溜まりが複数個できたとの見解(乙172[270、282頁])、阿蘇 4火砕流堆積物のストロンチウム同位体比は著しく均質であり、単一の大規模なマグマ溜まりにより生成されたと考えられるのに対し、後カルデラ期の火山噴出物のストロンチウム同位体比は、幅広いため、複数の独立した小規模なマグマ溜まりによるものと考えられるとの見解(乙175~177)、後カルデラ期噴出物 れたと考えられるのに対し、後カルデラ期の火山噴出物のストロンチウム同位体比は、幅広いため、複数の独立した小規模なマグマ溜まりによるものと考えられるとの見解(乙175~177)、後カルデラ期噴出物のストロンチウム同位体 比は阿蘇4噴火のマグマのそれとは大きく異なっていることから,阿蘇4噴火のマグマはカルデラ形成で枯渇し,後カルデラ期火山活動には関与していないとの見解(乙401[16頁])などがある。 さらに、三好ほか(2005)等は、現在地表で確認できる各火口からの噴出物によると、カルデラ中心部で玄武岩質マグマの活動が活 発であり、その周囲でより珪長質なマグマが活動している傾向があるところ、地下に大規模な珪長質マグマ溜まりがある場合、玄武岩質マグマがこれを突き抜けて地表に達することはできないことから、近年の阿蘇カルデラの地下には、大規模な珪長質マグマの蓄積がないことを示すとの見解を示している。(乙163[141、146頁]、17 2)現在の阿蘇の状況に関する調査等a マグマの組成産業技術総合研究所「平成29年度原子力規制庁委託成果報告書火山影響評価に係る技術知見の整備」は、マントルから供給された苦 鉄質マグマが結晶分化を行いつつ、珪長質マグマが生成する各過程に おいて放出される熱水の組成について単純なモデルを用いて計算した結果、阿蘇カルデラの地下には苦鉄質マグマが存在し、珪長質マグマは存在しない可能性が強く示唆されたとしている。(乙207)また、安全研究成果は、阿蘇カルデラの深部流体の化学組成を分析することにより、カルデラの中央及び南側に苦鉄質マグマが供給され ていることを示唆する結果が得られ、現在の中岳の火山活動と整合することを示したとしている。(乙418)b 地 の化学組成を分析することにより、カルデラの中央及び南側に苦鉄質マグマが供給され ていることを示唆する結果が得られ、現在の中岳の火山活動と整合することを示したとしている。(乙418)b 地下約6kmのマグマ溜まり等についての評価⒜ 地下約6kmのマグマ溜まり地震波は、流体で充填されたマグマ溜まりを通過する際に速度が 低下するとともに減衰を起こすため、低速度異常域は、マグマの存在を示唆し、一方、マグマ溜まり周辺の母岩はマグマからの影響を受けて強度を下げ、火山性地震が発生しやすくなっているところ(乙138[51頁])、SudoandKong(2001)は、地震波トモグラフィの結果、中岳火口の西3km(草千里)の地下 約6kmに直径2~3kmの低速度領域(地下約6kmのマグマ溜まり)が存在することを明らかにした。(乙167[21頁])⒝ 地下約15kmの変動源平成15年、国土地理院のGNSS観測網によりカルデラ中央部が盛り上がる地殻変動が捉えられ、その変動源(以下「地下約15 kmの変動源」という。)はシル状であり、深さは約15kmであることが明らかになった(国土地理院(2004)。(乙167[5、21頁]、190)。 ⒞ 地下約6kmのマグマ溜まり及び地下約15kmの変動源等についての評価 ⅰ 須藤ほか(2006) 火山活動の活発化に伴う大きな地盤変動は、現在の活動火口である中岳火口付近では確認できないこと、中央火口丘山腹から中岳火口へ続く水準測量(水準点間の高さの差を測る測量(乙167[8頁]))の測線では、草千里周辺で沈降が長期間確認できること、水準測量の結果推定される減圧力源の位置(中岳火口から 西方へ3~4km離れた草千里南部付近)が、地下約6kmの る測量(乙167[8頁]))の測線では、草千里周辺で沈降が長期間確認できること、水準測量の結果推定される減圧力源の位置(中岳火口から 西方へ3~4km離れた草千里南部付近)が、地下約6kmのマグマ溜まりと一致しており、上記減圧力源はマグマ溜まりの収縮を示していると考えられることから、阿蘇火山では、草千里南部のマグマ溜まりから中岳火口まで火山ガスの上昇経路が定常的に確保されており、ガス放出に伴う火山性微動が常時観測され、活 動期にはマグマが中岳火口へ供給されても火口付近では地盤が大きく変動しない開放型となっていると考えられる。(乙187)ⅱ Hataetal.(2016)阿蘇カルデラにおけるマグマ溜まりの検出を目的としたMT探査の結果、一連の比抵抗異常を示す空間的範囲は地下約6kmの マグマ溜まりと非常によく一致しており、比抵抗異常は地下約15kmの変動源の上方に位置しているから、マグマ溜まりの位置と広がりを表している。また、深さ10km超まで中岳から北に延びる上部地殻内の著しい低比抵抗異常が火道である可能性を示している。(乙190) ⅲ Nobileetal.(2017)平成5年から平成23年のInSAR観測(人工衛星に搭載したSAR(合成開口レーダ)を用いて同一地点を2回観測し、2回の観測データの差をとることにより地表の変位を測定する技術)によると、平成8年から平成10年にかけて阿蘇カルデラ中央直 下の深度4~5kmの位置にマグマ源の収縮を示唆する定常的な 沈下傾向が認められ、これから推定される収縮源の位置は、地下約6kmのマグマ溜まり、須藤ほか(2006)の減圧力源と概ね一致している。また、得られたデータは、収縮源の体積が噴出量に類似していることを示唆してい められ、これから推定される収縮源の位置は、地下約6kmのマグマ溜まり、須藤ほか(2006)の減圧力源と概ね一致している。また、得られたデータは、収縮源の体積が噴出量に類似していることを示唆している。(乙189)ⅳ Abeetal.(2017) 阿蘇カルデラ内及びその周辺に位置する観測点で得られた地震波形データを用いたレシーバ関数解析(物性境界でのP波からS波への変換に着目して地下構造を調査する手法(乙252)。以下「本件レシーバ関数解析」という。)を実施し、地殻のS波速度構造を推定した結果、阿蘇カルデラの中央火口丘の東側の深さ8~ 15kmにおいて地震波低速度領域(LA)が検出され、GPS解析でも深さ15.5kmにシル状の変形源が検出されており、LAの直下の深さ15~25kmに深部低周波地震の群発活動が認められる。同群発活動の領域から上昇してシル状の変形源に蓄積されるメルトは、固結しているかもしれないし,部分溶融物的 にメルトが存在するかもしれない。LAは300k㎥で、含まれている物質が熱水ではなく全て溶解しているマグマだったとしても、その量は45k㎥(15%程度)である。 また、中央火口丘東側を除いた阿蘇カルデラ周辺の深さ15~23kmにおける地震波低速度領域(LB)も検出されたが、そ の直下には熱源の上昇を示す現象は認められないため、熱源が存在しておらず、LBの中ではメルトが新たに生成されていないと思われる。 推定された速度構造によると、これらの地震波低速度領域は最大で15%のメルト又は30%の水を含むと解釈される。 LA及びLBの体積は数百k㎥を超える可能性があり、仮に部 分溶融度が10%を超える場合には、数十k㎥以上のマグマを含む可能性がある。LA及び を含むと解釈される。 LA及びLBの体積は数百k㎥を超える可能性があり、仮に部 分溶融度が10%を超える場合には、数十k㎥以上のマグマを含む可能性がある。LA及び(又は)LBは、過去の大規模噴火の間に噴出したマグマの生成及び貯留場所である可能性があり、将来の噴火でマグマを供給する可能性がある。 (乙167[21頁]、420) ⅴ 松島ほか(2019)阿蘇の地下構造を求める目的で、阿蘇カルデラ内外で、平成27年に56測点及び平成28年に46測点で実施した広帯域MT探査法により得たデータ(Hataetal.(2016、1018))によると、中岳下から深度15km程度まで延びる円柱 状の低比抵抗体は、その一部が地下約6kmのマグマ溜まりと重なっており、地下約15kmの変動源や深部低周波地震(気象庁)に向かって延びているように見えることから、深部のマグマ溜まりから中岳へ延びるマグマ供給系と解釈されている。有史以来、頻繁に噴火活動を繰り返している中岳第一火口と上記低比抵抗体 の関係を明らかにすべく、平成29年から平成30年にかけて、中岳第一火口付近の9測点で実施した広域MT探査法により得たデータを加えて、改めて比抵抗構造解析を行った結果、上記低比抵抗体の最上部は中岳第一火口直下に位置しており、また、その深度は海水準付近となり、平成26年の噴出物の分析から推定さ れたマグマの深度の上限が海水準付近であることと良い一致を示していることから、上記低比抵抗体は中岳第一火口にマグマを供給する火道であると推測される。(乙191)c 地殻変動⒜ 平成16年から平成29年までのGPS基線長グラフによると、 地下約6kmのマグマ溜まりの直上を挟む基線長につき、平成16 る火道であると推測される。(乙191)c 地殻変動⒜ 平成16年から平成29年までのGPS基線長グラフによると、 地下約6kmのマグマ溜まりの直上を挟む基線長につき、平成16 年以降短縮していたが平成25年には停滞し、平成26年7月以降は、延びと短縮を繰り返し、延びが観測された後、水蒸気噴火(VEI1より小さい)が発生している。(乙167[23頁])⒝ 阿蘇カルデラ周辺では、平成16年、平成20年、平成24年に水準測量が実施され、平成16年~平成24年に草千里付近の沈降 が捉えられているが、平成20年~平成24年の沈降量は、平成16年~平成20年の沈降量の約6割に減少している。 また、草千里の標高は、水準測量データ及びGPS観測点の高度によると1930年代は平成29年現在より10cm以上高かった。 (乙167[25、26頁]) ⒞ 国土地理院のGNSS連続観測点(電子基準点)のうち、阿蘇カルデラ内に設置された3点とカルデラ周辺に設置された数点の座標値を用いて上下変動の時間変化を検討したところ、平成9年以降2016年熊本地震までカルデラ内は沈降傾向にある。(乙200)各種調査結果等を踏まえた専門家らの見解 a 大倉(2017)阿蘇カルデラには、地下約6kmのマグマ溜まりと地下約15kmの変動源が存在し、本件レシーバ関数解析の結果によれば、地下約15kmの変動源の直上にLAが存在することから、地下約15kmの変動源は、水又は溶融したマグマの存在する領域の底部に当たるもの であり、最大45k㎥のマグマの一部分が存在しているのみであろうと考えられる。また、GPS基線長の短縮量の減少と水準測量による草千里の沈降量の減少(前記c⒜、⒝)は、いずれも地下約6kmの であり、最大45k㎥のマグマの一部分が存在しているのみであろうと考えられる。また、GPS基線長の短縮量の減少と水準測量による草千里の沈降量の減少(前記c⒜、⒝)は、いずれも地下約6kmのマグマ溜まりの収縮量が減少していることに対応すると考えられる。 さらに、1930年代の草千里側の標高は、平成29年現在より10 cm以上高かったこと(前記c⒝)からすると、現在のマグマ総量 は1930年代と比べて約1000万㎥(0.01k㎥)少なくなっており、その縮小の理由は、継続的な火山ガスの放出によって説明可能である。 これらのことから、今後の阿蘇の火山活動は、1930年代のような大規模なものではなく、ましてや大規模なカルデラ噴火が起こるよ うな状態ではないと推定される。 (乙167)b 戊13教授岩石学、地質学、火山学等の専門家である戊13教授は、以下のような見解を示している。 現在の阿蘇火山の噴火活動は、過去の破局噴火直前の状況と大きく異なり、苦鉄質マグマの活動を主体とした静穏な状況であることが地質学及び岩石学的に示されており、地球物理学的データから推定されている現在のマグマ溜まりが小規模かつ苦鉄質マグマであること及び地殻変動データから昭和5年以降でマグマ溜まりが収縮している傾向 にあることからも支持される。現在の阿蘇火山の状態は、これらの多角的な科学的データによる客観的な総合的判断に基づくと、破局噴火を起こすような大規模な珪長質マグマ溜まりが存在している可能性は非常に低い。今後、収縮している現在のマグマ溜まりが膨張に転じ、あるいは新たなマグマ溜まりが形成され、破局噴火を起こすような大 規模な珪長質マグマ溜まりを形成すると仮定しても、過去の破局噴火前に前駆 い。今後、収縮している現在のマグマ溜まりが膨張に転じ、あるいは新たなマグマ溜まりが形成され、破局噴火を起こすような大 規模な珪長質マグマ溜まりを形成すると仮定しても、過去の破局噴火前に前駆的な噴火が1万年以上前から起きていたことに鑑みれば、それには数千~数万年の期間を要すると考えられる。 本件発電所の運用期間中に破局噴火が起こる可能性は極めて低く、阿蘇4規模の破局噴火の可能性は更に低いと評価される。 (乙181) c 小林(2017)現在の阿蘇において、マグマ溜まりの形成による地盤の上昇や前兆的な噴火等の前兆現象(前記5ア)が見られないことから、今後数百年以内にカルデラ噴火が発生することはないであろう。 (乙153)dDr.戊28 Dr.戊28は、以下のような見解を示している。 現在の阿蘇のマグマ供給系では、阿蘇4噴火時と比較すると、より少量のより深部の玄武岩質マグマが浸入している。これらの玄武岩質マグマは独立した挙動を示す小規模で分離したマグマ溜まりを形成しているため、阿蘇4噴火のような噴火が発生するためには、上記マグ マ供給系に重大な変化が起こる必要があるが、数年から数十年の期間に、そのような重大な変化が起こることは不可能である。 また、地下に阿蘇4噴火を起こしたような大規模な(すなわち200k㎥を超えるような)マグマ溜まりが存在しているとすれば、地殻よりも低密度な大量のマグマが上昇しようとする力で地表面には上方 への変形が見られるはずであるが、阿蘇では、地表での調査(須藤ほか(2006))や、衛星による測定(Nobileetal.(2017))によると、わずかな沈降が示されるのみである。 さらに、地球物理学的手法(地震波トモグラフィ等) は、地表での調査(須藤ほか(2006))や、衛星による測定(Nobileetal.(2017))によると、わずかな沈降が示されるのみである。 さらに、地球物理学的手法(地震波トモグラフィ等)によって、いくつかの小規模なマグマ溜まり等(LAは約45k㎥と推定)が検出 されているにもかかわらず、より検出しやすい大規模なマグマ溜まりを示唆する兆候は何ら検出されていないことから、阿蘇の地下には、大規模なマグマ溜まりは存在しないと結論付けることができる。 阿蘇山のマグマ供給系の現状を踏まえると、入手可能な技術的知見は、阿蘇4噴火のような噴火は、本件発電所の安全性評価上考慮すべ き事象ではないことを示していると考える。 (乙212)ePrf.戊36火山学の権威で、SSG-21の著者でもある英国ブリストル大学のPrf.戊36は、以下のような見解を示している。 過去3万年間、阿蘇は玄武岩質マグマを噴出する火山であり、阿蘇 における火山活動は、玄武岩質マグマやそれに伴う揮発成分を活動中の中岳火口へ供給するマグマ溜まりと火道の開放システムでほぼ連続しており、そこには珪長質マグマが生成されているという証拠はない。 カルデラ形成期には、膨大な量の珪長質マグマを生成するため、中部地殻における苦鉄質安山岩マグマの停滞により、カルデラ全体に匹敵 する面積を持つ高温帯の形成が必要であるが、そのようなシステムが現存する証拠はない。深さ15~23kmで確認される大規模な地震異常域(判決注:LB)は、長周期地震や地殻変動などの他の地球物理学的兆候に欠けるため、力学的に活動的なシステムではないことが示唆され、阿蘇火砕流のマグマ溜まりを生成した中部地殻の高温帯の 熱い部分の残存物ではないかと推測される。阿 変動などの他の地球物理学的兆候に欠けるため、力学的に活動的なシステムではないことが示唆され、阿蘇火砕流のマグマ溜まりを生成した中部地殻の高温帯の 熱い部分の残存物ではないかと推測される。阿蘇カルデラ地下の地震発生帯は、カルデラの北部、西部、南部で深さ8~12kmまで広がり、中岳下にある上部地殻の地震及び比抵抗異常域に向かって約5kmまで浅くなり、中岳の地下の地震及び比抵抗異常に隣接した場所で消失しており、カルデラを形成するような大規模な浅部マグマ溜まり は存在せず、中岳の地下に高温領域が集中して存在することを示している。これらの証拠や議論からすると、阿蘇において、将来100年間に阿蘇4規模の噴火が発生する確率はゼロと評価される。 (乙206の2、210、213)f 戊35氏 戊35氏は、以下のような見解を示している。 ⒜ 10kmより深い部分に更にマグマ溜まりがあり、それが全体として非常に大きな噴火を引き起こす可能性も否定できない。安部祐希氏の博士号論文(Abe(2012))では、草千里南部のマグマ溜まりの下には、体積500k㎥の巨大な低速度領域があることが検知されており、こういった低速度領域がマグマ溜まりであり、近 い将来にVEI7級の噴火を引き起こす可能性も、決して否定はできない。 また、一般的に、地下構造は複雑であるため、噴出物から地下のマグマ溜まりの性質を精度よく推定することはできない。 以上によると、現段階では、阿蘇カルデラにおいて、近い将来に カルデラ噴火を引き起こすようなマグマ溜まりは、あるともないとも確定的な判断はできない。 ⒝ 一般的に、阿蘇は、現在「後カルデラ火山活動期」などと言われることはあるが、それは地質学的な噴火履歴の評価にすぎず、近い将来阿蘇5噴 マグマ溜まりは、あるともないとも確定的な判断はできない。 ⒝ 一般的に、阿蘇は、現在「後カルデラ火山活動期」などと言われることはあるが、それは地質学的な噴火履歴の評価にすぎず、近い将来阿蘇5噴火が起き、「先カルデラ期」や「カルデラ形成期」など と評価し直される可能性は,火山学的には全く否定できない。 ⒞ 阿蘇については、約26万年前以降、VEI7級の噴火を4回繰り返しており、原子力発電所に求められる安全性の程度も踏まえると、いずれVEI7級の阿蘇4噴火と同規模の阿蘇5噴火はあるとみるのが、常識的で科学的な評価である。ただ、現在の火山学では、 それが数年後なのか、数万年後なのかは分からないということである。 (甲212)g 戊6教授第四紀学を専門分野とし、特に、テフラを広域的な鍵層として研究 してきた戊6教授は、以下のような見解を示している。 カルデラの地下で今何が起こっていて、どんなことが破局的噴火の前兆現象なのか、誰も分からない状態であるから、近い将来噴火が起こる確率は0に近いとは断言し難い。噴火間隔がいくらかは、年代値に大きな幅があり、阿蘇カルデラの場合は過去4回の大噴火の時間間隔は一定ではない。 (甲94、217)イ判断被告は、前提事実13アdのとおり、阿蘇における巨大噴火の最短の活動間隔が、最新の巨大噴火である阿蘇4噴火からの経過時間よりも短いこと、阿蘇4噴火以降、多様な噴火様式の小規模噴火を繰り返しており、 Nagaoka(1988)を参考にすると、後カルデラ火山噴火ステージと判断されること、阿蘇カルデラの地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在するとは認められないこと等を踏まえ、阿蘇における現在のマグマ溜まりは、巨大噴火直 )を参考にすると、後カルデラ火山噴火ステージと判断されること、阿蘇カルデラの地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在するとは認められないこと等を踏まえ、阿蘇における現在のマグマ溜まりは、巨大噴火直前の状態ではないと評価した上で、阿蘇4噴火以降の最大規模の噴火である阿蘇草千里ヶ浜噴火を考慮し、阿蘇における設計 対応不可能な火山事象が本件発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価したことが認められる。 そこで、以下、原告らの主張を踏まえ、上記評価に不合理な点がないかにつき検討する。 現在のマグマ溜まりの状況について a マグマの組成阿蘇においては現在でも中岳が火山活動を繰り返しているところ(前記アa)、阿蘇4噴火以降、珪長質マグマによる軽石の噴出は次第に減少し、1万年前以降は、珪長質マグマの活動を伴わない主に玄武岩質マグマ溜まりによる噴火によって特徴付けられている(前記ア c)。そして、地下に大規模な珪長質マグマ溜まりがある場合、玄武 岩質マグマ(苦鉄質マグマ)がこれを突き抜けて地表に達することはできないから、近年の阿蘇カルデラの地下には、大規模な珪長質マグマの蓄積がないことを示すとの見解が示されている(前記アc)。また、深部流体の化学組成の分析等により、阿蘇カルデラの地下に苦鉄質マグマが存在するとの評価もされている(前記アa)。 b マグマ溜まりの規模、形状等⒜ 地震波は、流体で充填されたマグマ溜まりを通過する際に速度が低下するとともに減衰を起こすため、低速度異常域は、マグマの存在を示唆するところ(前記アb⒜)、阿蘇においては、地下約6kmのマグマ溜まり(直径2~3km)、LA(300k㎥)、LBと いう地震波低速度領域が検出され、また、地殻変動の変動源と マの存在を示唆するところ(前記アb⒜)、阿蘇においては、地下約6kmのマグマ溜まり(直径2~3km)、LA(300k㎥)、LBと いう地震波低速度領域が検出され、また、地殻変動の変動源として、地下約15kmの変動源の存在も明らかになっている(前記アb)が、これらを超える大規模なマグマ溜まりは検出されていない。 そして、地下約6kmのマグマ溜まりを除き、いずれも地下約15km以深に存在し(前記アb⒝、⒞ⅳ)、地下浅部に存在すると は認められない上、この点を措くとしても、LAについては、含まれている物質が熱水ではなく全て溶解しているマグマであったとしても、その量は45k㎥と評価されるにとどまっている(前記アb⒞ⅳ)。 次に、原告らが、第5の6(原告らの主張)アのとおり、巨 大噴火を引き起こす可能性がある旨主張し、戊35氏も近い将来にVEI7級の噴火を引き起こす可能性があると指摘する500k㎥の巨大な低速度領域(前記アf⒜)は、証拠(甲212[添付図表3頁]、乙420)によると、LBに相当するものであると認められるところ、Abeetal.(2017)においては、LBが 将来の噴火でマグマを供給する可能性を示唆しつつも、LBの下部 には、熱源が存在しておらず、LBの中ではメルト、すなわち、溶融マグマが新たに生成されていないものと考えられており、LBが、本件発電所の運用期間中に巨大噴火を起こす具体的可能性を有するマグマ溜まりであるとは評価されていないし(前記アb⒞ⅳ)、Abeetal.(2017)は、LAとLBを合せて数百k㎥を 超える可能性があり、仮に部分溶融度が10%を超える場合には、数十k㎥以上のマグマを含む可能性があるというにとどまっており(前記アb⒞ⅳ)、LB (2017)は、LAとLBを合せて数百k㎥を 超える可能性があり、仮に部分溶融度が10%を超える場合には、数十k㎥以上のマグマを含む可能性があるというにとどまっており(前記アb⒞ⅳ)、LBの存在をもって、500k㎥の巨大なマグマ溜まりがあるものとも認め難い。 また、地下約6kmのマグマ溜まり及び地下約15kmの変動源 については、各種地球物理学的調査の結果、中岳の火口に火道でつながっていると考えられることや(前記アb⒞ⅱ、v)、地下約6kmのマグマ溜まり付近に定常的な沈降傾向があり、草千里は1930年代から平成29年までに10cm以上沈降していること(前記アb⒞ⅰ、ⅲ、c⒞)などから、中岳の火口から、地下約6k mのマグマ溜まりからの火山ガスが継続的に放出されることにより、マグマが減少して地盤が沈降しているとの見解が示されている(前記アb⒞ⅰ、ⅲ、a)。この点、噴出量の乏しい水蒸気噴火においても、その前兆現象として基線長の伸びが認められており(前記アc⒜)、大規模なマグマ溜まりが存在する場合、地盤の上昇が認 められてしかるべきところ(前記アc、d)、かえって、地盤が沈降していることは、地下に大規模なマグマ溜まりが存在しないことを示唆しているものと認められる。 ⒝ さらに、阿蘇4噴火の火砕流堆積物のストロンチウム同位体は著しく均質であり、単一の大規模なマグマ溜まりにより生成されたと 考えられるのに対し、後カルデラ期の火山噴出物のストロンチウム 同位体比は幅広いことや、阿蘇4噴火により形成された阿蘇カルデラ内に火口は17個以上あるところ、それぞれ組成幅が限られた火山の噴出物を生産していることから、阿蘇4噴火後の噴火は、阿蘇噴火によるカルデラ形成時の山体陥没によって大規模なマ り形成された阿蘇カルデラ内に火口は17個以上あるところ、それぞれ組成幅が限られた火山の噴出物を生産していることから、阿蘇4噴火後の噴火は、阿蘇噴火によるカルデラ形成時の山体陥没によって大規模なマグマ溜まりが分断されるなどしてできた複数の独立した小規模なマグマ溜ま りによる噴火であるとの見解も示されている(前記アc)。 ⒞ 加えて、阿蘇1噴火ないし阿蘇4噴火等のカルデラ噴火に先立って、複数の組成的に類似したテフラが先行して噴出していることから、大規模噴火に先立ち、長期間、同じ火山から、大規模噴火と組成が類似したマグマが噴出する可能性が示唆されているところ(前 記5⑴アa⒜)、阿蘇においては、約3.1万年前の草千里ヶ浜軽石以降、このような前兆的な噴火は認められていない(前記アb、c)。 c 以上の知見を総合すると、阿蘇4噴火以降の火山噴出物の化学組成から、カルデラ中央部は玄武岩質火山活動で特徴付けられており、ま た、地下約6kmのマグマ溜まりは全体として縮小傾向にあり、阿蘇の地下浅部に大規模な珪長質マグマ溜まりは存在しないと考えられることからすれば、被告による阿蘇のマグマ溜まりは巨大噴火直前の状態ではないとの評価は、科学的合理的根拠によって裏付けられているものと認められる(なお、第5の6(原告らの主張)アのうち、 上記において判断した以外の部分については、前記5において判断したとおりである。)。 巨大噴火の活動間隔について原告らは、第5の6(原告らの主張)アのとおり、被告が、阿蘇における巨大噴火の噴火間隔から阿蘇の活動可能性を否定していること は不合理である旨主張する。 この点、噴火間隔のみから運用期間中における巨大噴火の可能性の大小を評価することは困難であるものの の噴火間隔から阿蘇の活動可能性を否定していること は不合理である旨主張する。 この点、噴火間隔のみから運用期間中における巨大噴火の可能性の大小を評価することは困難であるものの、火山の活動間隔を考慮すること自体に不合理な点がないことは、前記5⑵アcで説示したとおりである。そして、被告は、前記のとおり、阿蘇における巨大噴火の最短の活動間隔が、最新の巨大噴火である阿蘇4噴火からの経過時間よりも短い ことも一考慮要素としつつ、阿蘇カルデラの地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが存在するとは認められないこと等も踏まえ、総合的に阿蘇における巨大噴火の可能性を評価しているのであるから、巨大噴火の活動間隔も考慮したことをもって、このような被告の評価が不合理になるものとは認められない。 Nagaoka(1988)の知見を用いた点について原告らは、第5の6(原告らの主張)アのとおり、被告が、巨大噴火の可能性評価に用いることについて疑問が呈されているNagaoka(1988)の知見を用いて阿蘇における巨大噴火の可能性を評価することは非科学的である旨主張する。 この点、Nagaoka(1988)の知見は、南九州のカルデラ火山の第四紀後期の噴火サイクルが、プリニー式噴火サイクル、大規模火砕流サイクル、中規模火砕流サイクル、小規模噴火のサイクルの4つに分類されることを提唱するものであるが(前記5アa)、かかる知見に対し、Nagaoka(1988)における噴火ステージとは、テフ ラ層序について整理するための作業仮説にすぎず、将来の噴火の予測のためには使えない概念である旨の批判があること(前記5アb)からすると、Nagaoka(1988)を用いて阿蘇における巨大噴火の可能性を評価するのは相当 めの作業仮説にすぎず、将来の噴火の予測のためには使えない概念である旨の批判があること(前記5アb)からすると、Nagaoka(1988)を用いて阿蘇における巨大噴火の可能性を評価するのは相当とは認め難い。もっとも、前記5アdで説示したとおり、噴火タイプ、噴火パターンに着目した検討を行うこ と自体に不合理な点はなく、また、被告は、本件適合性審査の途中段階 までNagaoka(1988)の知見を考慮することなく、阿蘇における巨大噴火の可能性は十分小さいと評価していたのであって(乙235)、Nagaoka(1988)の知見を重視して、阿蘇における巨大噴火の可能性を評価したものではなく、巨大噴火の活動間隔のほか、阿蘇カルデラの地下のマグマ溜まりの状況等を踏まえ、総合的に阿蘇にお ける巨大噴火の可能性を評価したものであるから、Nagaoka(1988)の知見も重ねて考慮したことをもって、被告の評価が不合理になるものとは認められない。 以上によると、原告らの主張を踏まえても、被告が、阿蘇における現在のマグマ溜まりは、巨大噴火直前の状態ではないと評価し、阿蘇につ き、本件発電所の運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断したことは合理的である。そして、前記5アにおいて説示したとおり、運用期間中における巨大噴火の可能性は十分に小さいと判断した火山について、評価を行うに当たって、最後の巨大噴火以降の最大規模を想定することについては合理性があると認められるところ、阿蘇 における阿蘇4噴火以降の最大規模の噴火は、阿蘇草千里ヶ浜噴火であるから(前記アb)、被告が、阿蘇4噴火ではなく、阿蘇草千里ヶ浜噴火を想定して、阿蘇における設計対応不可能な火山事象の評価したことは、本件適合性審査後に改訂 規模の噴火は、阿蘇草千里ヶ浜噴火であるから(前記アb)、被告が、阿蘇4噴火ではなく、阿蘇草千里ヶ浜噴火を想定して、阿蘇における設計対応不可能な火山事象の評価したことは、本件適合性審査後に改訂された令和元年火山ガイドに適合しており、不合理な点はないものと認められる。 影響評価に関する本件適合性審査の合理性の有無(令和元年火山ガイドへの適合性の有無)ア認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 九重第一軽石噴火 a 九重第一軽石は、約5.4万年前に、本件発電所の南西約108kmに位置する九重山で起こったVEI5規模のプリニー式噴火によって放出された降下軽石である。(乙425、426、430)b 長岡・奥野(2014)も依拠する熊原・長岡(2002)は、九重山から約140km東~東南東に位置する宿毛市において、九重第 一軽石による火山灰層と考えられる層厚20cmの小川テフラ(宿毛市小川。Loc.1)及び層厚40cmの小川テフラ(宿毛市神有。 Loc.2)がそれぞれ確認されたところ、これらは、鉱物組成・含有鉱物の屈折率の一致から、九重第一軽石と対比できること、Loc. 1については、火山灰層中には非火山性の細粒砂が混入していること、 Loc.2については、四万十帯起源の砂粒が混入しており水流によって二次的に形成された可能性が高いことをそれぞれ指摘している。 (甲223、乙424、426[55頁])c 辻ほか(2017)は、九重第一軽石は、推定火口から東から東南東方向の主軸を有しており、宿毛市においては、層厚10cm相当の 砂サイズ火山灰として認識されるとしている。(乙430)また、辻ほか(2019)は、多数の露頭の調査で得られたデー 東から東南東方向の主軸を有しており、宿毛市においては、層厚10cm相当の 砂サイズ火山灰として認識されるとしている。(乙430)また、辻ほか(2019)は、多数の露頭の調査で得られたデータを踏まえると、九重第一軽石の噴出量は、2.74~4.39k㎥程度と見積もられるとしている。(乙425)宇和盆地における火山灰データ 宇和盆地は、九州起源の火山灰が長期的かつ高精度に記録されている国内屈指の場所であり、九州の火山噴火史を知る上で重要な地域であるとされている。そして、宇和盆地で深度120mまで掘削されたボーリングに基づく火山灰データでは、約70万年間にわたる堆積物が連続的に存在することが明らかとなっているところ、上記データによれば、降 灰層厚は、阿蘇4噴火(噴出量600k㎥以上、VEI7)が31cm、 阿蘇3噴火(噴出量150k㎥以上、VEI7)が13cm、阿蘇2噴火(噴出量50k㎥以上、VEI6)が22cm、阿蘇1噴火(同上)が9cmとなっている。(乙179、181[4頁])平成29年火山ガイドを踏まえた被告の検討被告は、平成29年火山ガイドへの改正を踏まえ、非常用ディーゼル 発電機の吸気消音器フィルタの閉塞の有無に関し、設置許可段階での降灰量(層厚)の数値シミュレーション(Tephra2)との連続性の観点から、3.1の手法により気中降下火砕物濃度を推定した。 具体的には、被告は、気中降下火砕物濃度の算出に用いる降下火砕物の層厚につき、文献調査及び地質調査では敷地付近で想定する九重第一 軽石の降下火砕物はほぼ0cmと評価されており、ジェット気流がほぼ真西で安定する季節は、本件発電所敷地における降下厚さはほぼ0cmと評価されるが、風向きによっては本件発電所敷地において厚さ 軽石の降下火砕物はほぼ0cmと評価されており、ジェット気流がほぼ真西で安定する季節は、本件発電所敷地における降下厚さはほぼ0cmと評価されるが、風向きによっては本件発電所敷地において厚さ数cmの降下火山灰が想定されるため、風速、風向、噴煙柱の高さにつき不確かさを考慮し、噴出量を長岡・奥野(2014)の6.2k㎥としてし た数値シミュレーション(Tephra2)の計算結果が14cmであることを踏まえて、保守的に15cmと評価した。また、降灰継続時間については、平成29年火山ガイドに従って、24時間(その全量が24時間のうちに降下してくる。)と仮定した。そして、数値シミュレーション(Tephra2)による粒径分布を用い、降下火砕物の粒径ごと に当該粒径の粒子が降下火砕物全体の中に占める割合を設定し、総降灰量に当該割合を乗じることで粒径ごとの降下火砕物の降灰量を算出し、これを上記降灰継続時間で除して、粒径ごとの堆積速度を算出し、さらに、これを当該粒径ごとの降下火砕物の終端速度で除して、粒径ごとの気中濃度を算出し、これらを合計して気中降下火砕物濃度を3.1g/ ㎥とした。 なお、被告は、3.2の手法については、数値シミュレーション(三次元の大気拡散シミュレーション)で使用する噴煙高さの設定や噴出率の時間変化等に課題を残しており、結果の妥当性を判断することが困難であるとして採用しなかった。 (前提事実13イ、甲224、231、乙226、426、弁論の 全趣旨)イ判断被告は、阿蘇を含む九州のカルデラ火山は、いずれもマグマ溜まりの状況から巨大噴火直前の状態ではなく、運用期間中に同規模の噴火が発生し、その降下火砕物が本件原子炉施設に影響を及ぼす可能性は十分に 小さいと評 含む九州のカルデラ火山は、いずれもマグマ溜まりの状況から巨大噴火直前の状態ではなく、運用期間中に同規模の噴火が発生し、その降下火砕物が本件原子炉施設に影響を及ぼす可能性は十分に 小さいと評価し、阿蘇については、阿蘇4噴火以降の最大規模の噴火である阿蘇草千里ヶ浜噴火を想定しているところ、阿蘇に関する被告の上記評価に不合理な点がないことは前記において説示したとおりである。 そして、被告は、九重第一軽石噴火の火山灰の堆積物が宿毛市で確認される一方で、阿蘇草千里ヶ浜噴火の火山灰の堆積物が四国で報告され ていないことなどから、本件原子炉施設により大きな影響を与えるものとして九重第一軽石噴火を基準とし、長岡・奥野(2014)を参照して同噴火の噴出量を約6.2k㎥と想定した上で、数値シミュレーション(Tephra2)を行い、風速、風向、噴煙柱の高さについて不確かさを考慮した上で、風向きによっては降下厚さが最大14cmとなる ことを踏まえ、降下火砕物の最大層厚を15cmに設定している(前提事実13イ)が、上記噴出量は、宿毛市で確認された非火山性の細粒砂も混入している堆積層厚20cm(前記アb)を前提としたものであって、それ自体が保守的な想定であると認められる。 そうすると、被告の降下火砕物の最大層厚の設定は、各種不確かさを 考慮した上、保守的な噴出量を前提にしたシミュレーション結果を踏ま えて保守的に設定されたものであると認められ、合理的であると認められる。 これに対し、原告らは、以下のとおり、被告による降下火砕物量の想定は誤っている旨主張するので、以下、検討する(なお、想定すべき噴火規模(第5の6(原告らの主張)ア)については、既に説示済みで あるため繰り返さない。)。 a 降下火砕物の 下火砕物量の想定は誤っている旨主張するので、以下、検討する(なお、想定すべき噴火規模(第5の6(原告らの主張)ア)については、既に説示済みで あるため繰り返さない。)。 a 降下火砕物の最大層厚に関する評価について原告らは、第5の6(被告の主張)イのとおり、①火山噴出物の体積を正確に把握することは困難であるにもかかわらず、あたかも確実なものであるかのように考えてシミュレーションを行い、その結果 から最大層厚を決めるのは、不定性に対する保守的評価として不十分である、②九重山から見てより遠方にある宿毛市において約20cmの降灰があったことを示す文献等が複数存在するところ、風化による消滅を考慮すると、実現象としては20cmより厚かった可能性もあり、本件発電所敷地に20cmを上回る降灰は十分あり得る、③九重 第一軽石噴火と噴出量が類似し、かつ、遠方に大量の降灰をもたらした御嶽山の御嶽伊那噴火(VEI5程度)では、火口から約100kmの地点(九重山と本件発電所の距離までと概ね同等の距離)において20cmを優に超える降灰があったことは確実であることに照らすと、少なくとも20~30cm程度の最大層厚を設定すべきである旨 指摘し、被告の降下火砕物の最大層厚の評価は過小評価の疑いがある旨主張する。 まず、上記①の点につき、確かに、被告は、九重第一軽石噴火の噴出量の想定を当初の2.03k㎥から6.2k㎥に変更しており(前提事実13イ)、火山噴出物の体積を正確に把握することが困難で あることは否定できない。しかしながら、前記でも述べたように、 被告が設定した噴出量6.2k㎥自体が保守的な設定となっている上、本件発電所の南東に位置し、九州起源の火山灰が長期的かつ高精度に記録されている宇和盆地 ながら、前記でも述べたように、 被告が設定した噴出量6.2k㎥自体が保守的な設定となっている上、本件発電所の南東に位置し、九州起源の火山灰が長期的かつ高精度に記録されている宇和盆地における降灰層厚は、噴出量が600k㎥以上(VEI7)とされる阿蘇4噴火でも31cm、噴出量が150k㎥以上(VEI7)とされる阿蘇3噴火で13cm、噴出量が50k ㎥以上(VEI6)とされる阿蘇2噴火で22cm、同阿蘇1噴火で9cmであること(前記ア)からすれば、VEI5(噴出量1~10k㎥)規模である九重第一軽石噴火による降下火砕物の層厚が15cmを超えることは考え難い。なお、九重第一軽石噴火の噴火規模についてVEI6以上である可能性を指摘する文献もあるが(甲221)、 その具体的根拠は明らかでない上、より最近の知見である辻ほか(2019)において、九重第一軽石の多数の露頭の調査で得られたデータを踏まえた結果、その噴出量が2.74~4.39k㎥程度と見積もられていること(前記アc)に照らすと、九重第一軽石噴火の噴火規模がVEI6以上である可能性を考慮する必要性があるものとは 認められない。 また、上記②の点につき、原告らが指摘するとおり、長岡・奥野(2014)及びこれが依拠する熊原・長岡(2002)は、宿毛市において、九重第一軽石による火山灰層と考えられる層厚20cmのLoc.1を確認しているが、同文献は、Loc.1につき、火山灰層中 に非火山性の細粒砂が混入していると指摘しており(前記アb)、より最近の知見である辻ほか(2017)が、宿毛市において、九重第一軽石が層厚10cm相当の砂サイズの火山灰として認識されると指摘していること(前記アc)に照らせば、Loc.1の層厚がそのまま九重第一軽石噴火に ある辻ほか(2017)が、宿毛市において、九重第一軽石が層厚10cm相当の砂サイズの火山灰として認識されると指摘していること(前記アc)に照らせば、Loc.1の層厚がそのまま九重第一軽石噴火による火山灰の層厚を示すものとはいえない。 加えて、火山灰は、風の影響を強く受けて堆積するものであるところ、 九重山から見てジェット気流が卓越しやすい東方向にある宿毛市と、九重山から見て北東方向にある本件発電所敷地とは方角が異なること(前記アa、b)も踏まえると、上記層厚20cmの記載をもって、九重第一軽石噴火と同規模の噴火が発生した場合に、本件発電所敷地にも層厚15cmを超える火山灰が堆積する可能性が十分にあるとは 認められない。 さらに、上記③の点につき、令和元年火山ガイドは、原子力発電所内及びその周辺地域において降下火砕物の堆積が観測されない場合の降灰量の設定方法として、①類似する火山の降下火砕物堆積物の情報を基に求める方法と②数値シミュレーションを行うことにより求める 方法(数値シミュレーションに際しては、過去の噴火履歴等の関連パラメータ及び類似の火山降下火砕物堆積物等の情報を参考とすることができる。)の2つの方法を挙げており、程度の差はあれ、いずれの方法においても類似する火山を考慮する旨定めていることが認められる(令和元年火山ガイド解説-19、前提事実13イb、オ)。し かしながら、原告らが類似する火山として主張する御嶽山の噴火については、噴火規模は類似しているものの、水蒸気噴火(地下水がマグマに直接触れることなくマグマの熱によって水蒸気となり、それが爆発的に噴出する現象。乙140[69頁]、148)であり、九重第一軽石と噴火様式を異にしていると認められ、また、気流の影響など地 マに直接触れることなくマグマの熱によって水蒸気となり、それが爆発的に噴出する現象。乙140[69頁]、148)であり、九重第一軽石と噴火様式を異にしていると認められ、また、気流の影響など地 理的条件も異なることを踏まえると、御嶽山の御嶽伊那噴火における降灰量を九重第一軽石噴火による本件発電所敷地における降灰量に当てはめることは相当でないというべきである。そうすると、被告が、令和元年火山ガイドの解説-19における上記①の方法を考慮しなかったこと、上記②の方法において類似の火山として御嶽山の御嶽伊那 噴火を考慮しなかったことが不合理であるとは認められない。 b 気中降下火砕物濃度の評価について原告らは、第5の6(原告らの主張)ウのとおり、被告が数値シミュレーション(Tephra2)を用いて実際の降灰や他の類似火山の事例よりも大きい粒子の割合が多くなるような粒径分布を用いて気中降下火砕物濃度の計算を行っていることや、九重山から約108 km離れた本件発電所敷地では、細かな粒子の割合が大きくなるはずであるにもかかわらず、被告が設定した粒径分布によると、粒径が4φ未満の粒子がわずか2%であることから、被告による気中降下火砕物濃度の推定は不合理である旨主張する。 しかしながら、数値シミュレーション(Tephra2)による粒 径分布が実際の降灰や他の類似火山の事例における粒径分布よりも大きい粒子の割合が多いと認めるに足りる的確な証拠はない。 また、確かに、火山灰は、噴火口からの距離に応じて細粒化するものの、粒径が4φ(62.5μm=1/16mm)未満の粒子は、凝集して降下すると認められることからすると(乙141[94頁]、1 49)、凝集して粒径が大きくなった降下火砕物の終端速度が大きくなる結 径が4φ(62.5μm=1/16mm)未満の粒子は、凝集して降下すると認められることからすると(乙141[94頁]、1 49)、凝集して粒径が大きくなった降下火砕物の終端速度が大きくなる結果、気中降下火砕物濃度は小さくなるから、原告らが主張するような微細粒子の割合が大きくなったからといって、降下火砕物の気中濃度が大幅に増えるものとは認められない。 以上によると、原告らの上記各主張を踏まえても、被告による降下火 砕物の影響評価は令和元年火山ガイドに適合しているものと認められる。 7 まとめ以上によると、基準地震動の策定につき、新規制基準及び本件適合性審査に不合理な点はないものと認められ、また、令和元年火山ガイドに不合理な点はないものと認められるところ、被告による火山事象の評価は、これに適合して いるものと認められる。そして、他に、本件原子炉施設が安全性を欠いている と認めるに足りる証拠はないことからすると、本件原子炉施設に安全性に欠けるところがあり、原告らの生命等の重大な保護法益に対する侵害が生ずる具体的危険があるとは認められない。 第7 結論以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらをいずれも 棄却することとして、主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官武智舞子 裁判官森 朋美 裁判官山西健太 別紙2文献等目録【地震関係】・伊藤(2006):「地震発生層の深さ分布と活断層のセグメンテーションとの関係」伊藤潔 ・猪野ほか(2018):「超高分解能三次元地震探査(UHR3D)-日奈久断層帯海域部における実施例 伊藤(2006):「地震発生層の深さ分布と活断層のセグメンテーションとの関係」伊藤潔 ・猪野ほか(2018):「超高分解能三次元地震探査(UHR3D)-日奈久断層帯海域部における実施例-」猪野滋・須田茂幸・菊地秀邦・大川史郎・阿部信太郎・大上隆史(甲204、乙369)・入江(2014):「動力学的断層破壊シミュレーションを用いた内陸横ずれ断層の強震動予測のための震源特性に関する研究」入江紀嘉(甲80、乙99) ・入倉ほか(2016):「日本国内の内陸地殻内地震の震源パラメータのスケーリング則の検証-2016年熊本地震(Mj7.3)への適用-」入倉孝次郎・宮腰研・吉田邦一・釜江克宏(乙46)・入倉・三宅(2001):「シナリオ地震の強震動予測」入倉孝次郎・三宅弘恵(乙284) 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