平成12(わ)810 暴力行為等処罰に関する法律違反,恐喝

裁判年月日・裁判所
平成13年11月7日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,613 文字)

判決平成13年11月7日神戸地方裁判所平成12年(わ)第810号暴力行為等処罰に関する法律違反,恐喝被告事件 主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数のうち100日を刑に算入する。 訴訟費用は被告人に負担させる。 理由 (犯罪事実)被告人は,指定暴力団h代目A組i代目B組若頭補佐をしているものであるが,C土木を経営するD(当時34歳)及び土建業のE(当時32歳)と共謀の上,兵庫県宝塚市内のF川右岸地区の土木建設業者らで組織する「G会」において,兵庫県及び宝塚市発注にかかる公共工事の入札に際し,談合により落札業者を決定していたことを知るや,第1 平成11年12月20日午後3時ころから同日午後6時ころまでの間,兵庫県宝塚市Ha番b号のI協会で,J土木事務所が同月21日に執行するF川水系F川河川災害復旧工事の指名競争入札に関し談合調整役として出席していた前記G会相談役K(当時52歳),同L(当時51歳)及び同MことN(当時50歳)に対し,被告人が,「わしはBのO(注:被告人の氏)いうもんや。お前らが談合やっとることは全部分かっとる。このことは親分も兄貴分も知っとる。宝塚はわしらの縄張りや。これからはわしらが仕切る。文句言う奴おったら,めいめいの会社を若いもんに潰さすぞ。お前ら勝手に決めてええようにしとる。」等と語気鋭く言った上,机を叩きながら,「談合の話をマスコミに全部流す。街宣車持っているところに持って行くぞ。」等と怒号し,Eが,「Oさんの言うとおりにせんかったら,わしが報告する。」等と,更にDが,「わしらが談合していることは全部Oさんは知っとる。この中で裏切る者がおったら,直ぐにOさんに報告する。わしの会社はいつ潰れ が,「Oさんの言うとおりにせんかったら,わしが報告する。」等と,更にDが,「わしらが談合していることは全部Oさんは知っとる。この中で裏切る者がおったら,直ぐにOさんに報告する。わしの会社はいつ潰れてもええんや。」等と語気鋭く言って,Kらの身体,自由,名誉及び財産等にどのような危害を加えるかも知れないような気勢を示し,もって,団体の威力を示して脅迫し,第2 前記G会の談合結果の判明する株式会社K工務店(代表取締役K)の貸借表を脅し取ろうと企て,同月27日午後8時30分ころから同日午後10時ころまでの間,同県西宮市PQc番d先路上に駐車中の普通乗用自動車内で,前記株式会社K工務店営業部長R(当時51歳)に対し,被告人が,「ちゃんと知ってることみな話さんと殺すぞ。」等と語気鋭く言った上,Eが,「言わなあかんで。腹くくってしゃべれ。」等と語気鋭く言って,Rの右こめかみ付近に1回頭突きをする暴行を加え,更に,Dが,「貸借表あるやろ。」と言い,被告人が,「それ(貸借表)を出せ。俺はKを潰すんや。これは男の意地や。お前,嫁はんも子供もおるやろ。」等と語気鋭く言って前記貸借表の引渡しを要求し,もしその要求に応じなければR及びその親族の生命,身体等にどのような危害を加えるかも知れない気勢を示してRを恐ろしがらせ,その結果,翌同月28日午後1時ころ,同市Se丁目f番g号Tの戊駐車場で,DがRから貸借表1冊の交付を受けてこれを脅し取った。 (証拠)省略(争点に対する判断)第1 第1及び第2の事実について,被告人は,捜査段階及び公判を通じ,第1の脅迫行為も第2の恐喝行為もしていないし,D及びEとも共謀をしていない旨述べ,弁護人も,これに沿い,被告人は無罪である旨主張する。 第2 第1の暴力行為等処罰に関する法律違反の事実について 1 前掲関係証拠によ 2の恐喝行為もしていないし,D及びEとも共謀をしていない旨述べ,弁護人も,これに沿い,被告人は無罪である旨主張する。 第2 第1の暴力行為等処罰に関する法律違反の事実について 1 前掲関係証拠によれば,次のとおりの事実が認められる。 (1) 被告人は,指定暴力団h代目A組i代目B組若頭補佐をしているものである。 (2) Dは,土建業C土木を経営し,宝塚市のF川右岸の土建業者27社で組織する親睦団体「G会」の会員であった。G会では,公共工事に関し,落札業者を指名業者間で話し合って決める談合を行っていたところ,Dは,G会における落札業者(いわゆる本命)の決定が一部の業者に偏っており,自分の会社には指名工事が落札できない等として,G会の本命業者の決定方法に不満を持っていた。 (3) Eは,土建業を営み,Dの下で下請け仕事をする等していた。EとDとは,互いに土建業の運転資金を融通しあって資金繰りをしていた。 (4) 平成11年12月14日ころ,C土木,U組,V興業,W組等の8社が,J土木事務所からF川河川敷復旧工事の指名を受けた。U組では,不渡手形を出して事実上倒産し,前記工事の入札を辞退しようとしていたところ,Dは,EをU組の代理人として(名義を借りて)U組が前記工事を落札できれば,U組の資金繰りができる上に,C土木やEもその下請け工事に入ることができると考え,Eもこれに賛成したことから,U組代表者αのことβの承諾を得て,Eが,U組の代理人として,前記工事の入札に参加することにした。ところで,G会では,前記工事は,点数制と地域性により,W組が落札予定業者になることは,業者間の暗黙の了解事項であった。しかし,DとEは,前記工事を取るため,G会の談合のルールには従わず,前記工事の入札に際しては,自由競争(いわゆる叩き合い)で臨むことに 組が落札予定業者になることは,業者間の暗黙の了解事項であった。しかし,DとEは,前記工事を取るため,G会の談合のルールには従わず,前記工事の入札に際しては,自由競争(いわゆる叩き合い)で臨むことに決めた。 (5) G会では,同月17日,I協会に前記指名業者7社(1社欠席)が集まり,談合の話し合いをした。話し合いでは,G会においては河川敷工事は点数制により落札業者を決めており,今回の前記工事については点数と地域性からW組を本命(落札業者)とする旨の説明がされた。しかし,EとDは,前記決定方法に納得せず,前記のとおり自由競争で行く旨言い,そこで,談合がまとまらない場合に調停役をする相談役である株式会社V興業代表取締役のMことNが,Eに対し,「ルールに従わんかったら,28対1でG会を敵に回すことになる。」等と発言したが,EとDは,納得せず,結局話し合いはつかなかった。 (6) そこで,G会では,同月20日に再度談合の話し合いをするため,I協会に集まることになった。同月18日,DとEは,このことについて電話で話し合った際,G会の相談役である株式会社K工務店代表取締役のKが20日当日出席するという話になった。Eは,Kが,暴力団X組の相談役であり,E一人では,Kに太刀打ちできない旨の話をし,Dに対し,「うちのOさんに言うわ。もしもめたらケツ持ってくれと頼んどくわ。」と言って,暴力団B組若頭補佐の被告人に応援を依頼する旨言い,Dも,暴力団B組若頭補佐の被告人がバックに付いてくれれば,KもMも文句は言えないだろうと考え,これに賛成し,Eに被告人へ連絡することを依頼した。 (7) G会では,同月20日の前記談合の話し合いを,同日午後2時から,I協会で開くことに決め,相談役であるK,L組経営者のL,Mの3名も出席することになった。ところで,D ることを依頼した。 (7) G会では,同月20日の前記談合の話し合いを,同日午後2時から,I協会で開くことに決め,相談役であるK,L組経営者のL,Mの3名も出席することになった。ところで,Dは,同日午前11時ころ,電話でEに,前記話し合いの開始時刻を知らせ,その際,Kが出席することも伝えた。これを受けてEは,電話で被告人に対し,「Kが作っている会から脅された。入札で談合を断ったらかましを入れられた。今日話し合いがあるが,Kも出てくる。何とか助けてくれ。」と言って協力方を依頼し,被告人は,「わしも他から聞いて,G会のことは知っている。 Kというのは,XのKやな。」等と言い,「分かった。できるだけ早く行ったる。」と答え,協力方を承諾した。 (8) 同月20日午後2時すぎころ,DとEは,I協会へ行った。同協会1階で,EとDは,L,K,G会会長である株式会社Y建設取締役のYと話し合いをし,Lから,点数制の内容や落札業者選定のルールについて説明を受けたが納得せず,その後,Eは,Mに対し,同月17日のMの前記発言について,「お前,この前何言うたんや。勝負するんやったら,いつでも勝負したる。」等と言い,「あれは脅迫と違う。」と言うMと大声で言い合いになった。このEらの大声を聞いたDは,同協会付近に待機していた被告人を携帯電話で呼んだ。そして,Dは,「ここからはやくざの話しになる。堅気の者は帰ってくれ。」等と言った。Dが電話をしてからすぐの同日午後3時ころ,被告人が,配下の若衆2人を連れて,同協会に入って来た。被告人は,若衆2人に指示して外で見張りをさせ,「堅気の人間は帰せ。」と言った後,K,M,Lに2階会議室に行くように命じ,Kらと一緒に2階に上がった。 (9) 2階会議室では,被告人とEは,会議用長テーブルを挟んで,K,Mと向き合って せ,「堅気の人間は帰せ。」と言った後,K,M,Lに2階会議室に行くように命じ,Kらと一緒に2階に上がった。 (9) 2階会議室では,被告人とEは,会議用長テーブルを挟んで,K,Mと向き合って座り,応接用のソファーにDとLが座った。被告人は,K,M,Lに対し,「わしはBのO言うもんや。」と言い,さらに,「お前らが談合をやっとることは全部分かっとる。このことは親分も兄貴分も知っとる。宝塚はわしらの縄張りや。これからはわしらが仕切る。文句言う奴おったら,めいめいの会社を若いもんに潰さすぞ。お前ら勝手に決めてええようにしとる。」等と怒鳴り付け,テーブルを思い切り叩きながら,「談合の話をマスコミに全部流す。街宣車持っているところに持っていくぞ。」等と怒鳴り付けた。Eは,「Oさんの言うとおりにせんかったら,わしが報告する。」等と言い,Dは,「わしらが談合していることは全部Oさんは知っとる。こん中で裏切る者がおったら,すぐにOさんに報告する。わしの会社はいつ潰れてもええんや。」等と言った。この間,被告人は,K,L,Mに対し,「お前らが相談役しとるのを他の会員は納得してへん。お前ら相談役やめえ。 相談役は選挙で選べ。」等と言って,G会の相談役をやめるように要求し,また,Eは,「お前らの談合の話はテープにとってある。」と言って,カセットテープレコーダーを取り出し,談合の状況を録音してあるという録音テープを再生する態度を示す等した。Kらは,G会がやくざの被告人に食い物にされると考えると,被告人の要求に応じることはできないと思ったが,これを断るとどのような目にあわされるか分からないので,「相談役を下りろと言われても,独断では決められない。 みんなと相談して決める。」旨答えた。同日午後6時ころ,被告人は,「次の時までよう考えて,ええ返事せい。」と言って,D わされるか分からないので,「相談役を下りろと言われても,独断では決められない。 みんなと相談して決める。」旨答えた。同日午後6時ころ,被告人は,「次の時までよう考えて,ええ返事せい。」と言って,D,Eと共に,同協会から出ていった。 2 前掲関係証拠,ことに被害者であるK,L,MことN,共犯者であるD,Eの検察官調書の供述は,いずれも具体的かつ詳細で,迫真性に富んでいる上,ほぼ一致していること,証人K,L,MことNは,公判でも,記憶の減退や被告人の面前で証言することによる被告人に対する恐れ等があるものの,検察官調書でした供述と概ね同旨の証言を繰り返していること,K,L,MことN,D,Eには,被告人を陥れるために虚偽の供述をする理由や必要性が存しないこと等に照らすと,以上の被害者K,L,MことNの検察官調書及び証言,共犯者D,Eの検察官調書は,いずれもその信用性は高いと認められる。 これに対し,被告人は,捜査段階及び公判を通じ,被告人は,やくざのKに対し,やくざとして対応しただけであって,第1の脅迫行為はしていないと否認するが,前記1に認定した事実に全く反していること,ことに,共犯者であるD,Eの検察官調書の供述にも反していること,被告人は,公判で,警察が,被告人を陥れるために,被害者や共犯者の供述を合わせて供述調書を作成した旨供述するが,被告人は,その根拠となることを言った者の名前を挙げることができない上に,被告人を陥れる理由や必要性も全く説明することができないのであって,警察が被告人を陥れようとしているという前記被告人の供述は,全くの言いがかりにすぎないというほかないことに照らすと,被告人の捜査段階及び公判の供述は,到底信用することができない。 3 なお,第1の事実に認定した被告人の発言は,客観的にみて,土建業者であるK,L いがかりにすぎないというほかないことに照らすと,被告人の捜査段階及び公判の供述は,到底信用することができない。 3 なお,第1の事実に認定した被告人の発言は,客観的にみて,土建業者であるK,L,MことNを畏怖させるに足りるものであるから,脅迫罪にいう脅迫行為に該当することは明らかである。 4 以上のとおりであって,前掲関係証拠によれば,第1の団体の威力を示して脅迫した暴力行為等処罰に関する法律違反の事実は,優に認めることができる。 第3 第2の恐喝の事実について 1 前掲関係証拠によれば,次の事実が認められる。 (1) 前記第2・1に認定したような事態に立ち至ったため,その後,K,M,Lの3名は,善後策を話し合い,やくざの被告人の要求は結局は金であり,被告人の要求には絶対に屈しないこと,万一の時には警察に相談することを決めた。 (2) そして,G会では,同年12月27日,Zホテルで,Kらを支持する役員と会員15社が集まり,臨時の会合を開き,前記のような被告人の要求に対する対応を協議し,被告人にG会を仕切らせるという要求には応じないこと,Kらは相談役を辞任し,選挙で新しい相談役を選任するが,それまでは旧相談役が在任することを決めた。 (3) これに対し,U組やD,Eは,前記臨時の会合に呼ばれていなかったことから,被告人,DとEは,同臨時会合における話の内容を知るため,同日午後1時ころ,U組事務所で,同臨時会合に呼ばれている有限会社W組代表取締役のWにMD録音機を渡して,同臨時会合における話の内容を録音することを依頼した。Dは,同日午後5時ころ,C土木事務所で,Wから同臨時会合の話を録音したMDを受け取り,同事務所に来たEも,共に前記MDを再生して聞いたところ,同臨時会合の話の内容は,Dらがやくざを使ってG会を仕切ろうとしてい 後5時ころ,C土木事務所で,Wから同臨時会合の話を録音したMDを受け取り,同事務所に来たEも,共に前記MDを再生して聞いたところ,同臨時会合の話の内容は,Dらがやくざを使ってG会を仕切ろうとしているとか,金をやくざに払わなければならず,そうなると警察も黙っていない,というものであり,KやMらがG会の相談役を辞めるという話はなく,DとEが考えていたのとは全く正反対の内容のものであった。 (4) そこで,Dは,被告人に電話をして前記録音の内容を話したところ,同日午後6時ころ,被告人は,C土木事務所に来て,前記MDを再生して聞いた。そして,前記録音を聞いた被告人は,「全然分かってへんな,こいつらは。めくってしまうで。こいつらはもういっぺん締め上げないかんな。」と言うと,Dは,被告人に対し,「Kの営業のRいうのが貸借表を持っています。Rを捕まえたら貸借表を取れますよ。これさえあれば,こいつら潰れますよ。」と言った。被告人は,Dに対し,貸借表が何か尋ね,Dが,貸借表は,談合の貸し借りが全部のっている資料であると答えて教え,「これさえあれば,Kは潰れる。」と言った。それで,被告人は,DとEに対し,「貸借表あったらこいつら潰せるねんな。それさえあったら,こっちのもんや。Rを捕まえて貸借表を手に入れよう。」と言い,被告人,D,Eは,株式会社K工務店営業部長のRを捕まえて,貸借表を入手することに決めた。そこで,Dは,同日午後7時ころ,Rの携帯電話に電話をして,Rを飲酒に誘うという口実で,同日午後7時30分ころにRの行きつけのスナック甲に来るように,Rを呼び出した。そして,被告人,D,Eは,Dが,Rを捕まえて,被告人とEの待っている場所へ連れて来ることに決めた。被告人は,Dに対し,被告人の配下の若衆の乙と丙を連れて行くように言い,乙と丙に対し,Dと一 出した。そして,被告人,D,Eは,Dが,Rを捕まえて,被告人とEの待っている場所へ連れて来ることに決めた。被告人は,Dに対し,被告人の配下の若衆の乙と丙を連れて行くように言い,乙と丙に対し,Dと一緒に行くように命じた。 (5) Dと乙,丙は,甲付近路上に駐車した乗用車内で,Rが到着するのを待っていたところ,同日午後8時ころ,Rの運転する乗用車が,同店の駐車場に入って来た。乙と丙は,降車して歩いて来るRの両腕をすれ違いざまに捕まえ,Dの運転する乗用車の後部座席にRを乗せ,両側からRを挟むようにして乗り込むや,Dは,直ちに乗用車を発進させた。途中,D運転車両は,被告人とEの乗った乗用車と落ち合い,その後は被告人の乗車車両がD運転車両を先導し,同日午後8時30分ころ,六甲山に向かう途中の西宮市PQc番d先の,人気のない山中の暗い測道に至り,2台とも同所に駐車した。 (6) そして,Rは,Dに言われて被告人の乗車車両の助手席後部座席に移った。同車両には,被告人は,助手席に乗っており,Eが運転席後部座席に,Dが運転席にそれぞれ乗り込み,乙と丙が,同車両の外に立って見張りをしていた。同車内で,被告人は,乗り込んだRの方に身体をねじって向いて,Rに対し,どすの利いた声で,「わしはOいうもんや。ちゃんと知ってることみな話さんと殺すぞ。」等と言い,Eは,Rの胸ぐらを右手で掴み,Rの右こめかみ付近に1回頭突きをして,「言わなあかんで。腹くくってしゃべれ。」等と言った。Rは,被告人もEも一見してやくざであり,逆らうと本当に殺されてしまうと恐れた。被告人は,Rに対し,談合の実情や宝塚市長,市会議員とK社長との関係等について質問した。次いで,Dが,Rに対し,「貸借表あるやろ。」と言い,Rが,あると答えると,被告人は,「それ(貸借表)を出せ。」と言い,R に対し,談合の実情や宝塚市長,市会議員とK社長との関係等について質問した。次いで,Dが,Rに対し,「貸借表あるやろ。」と言い,Rが,あると答えると,被告人は,「それ(貸借表)を出せ。」と言い,Rが断ると,被告人は,「俺はKを潰すんや。これは男の意地や。お前,嫁はんも子供もおるやろ。」等と言って,暗に,貸借表を渡さなければ,Rだけでなく,Rの家族にも危害が及ぶ旨言って,Rに貸借表を渡すように要求した。Rは,最初渋っていたが,これを断るとRや家族が殺されたり,あるいはどんなひどい目にあわされるかも知れないと恐れ,やむなく被告人の要求を受け入れて貸借表を渡すことを承諾した。すると,被告人は,Rに対し,貸借表はDに渡すように言った。その後,同日午後10時ころ,被告人らは,Rを宝塚市丁の消防署付近で降車させたが,その際,被告人は,Rに対し,「貸借表ちゃんとDに渡しといてくれ。」と念を押して言った。そのとき,Eが,「まだ借用書があるんやで。」と言ったことから,Rは,それは以前Dから借金をした際の借用書であり,既にDに全額返済していたので,その旨Dに言うと,Dは黙っていた。 (7) 翌同月28日午前1時30分ころ,Rは,Dと共に,K工務店事務所から貸借表を持ち出した。そして,Rは,Eが前記のとおり借用書のことを持ち出したことから,それが悪用されることを考えて借用書の返還を求めたが,Dが前記借用書を所持していなかったため,Rは,前記借用書と引き換えに貸借表をDに手渡すことにし,その後の同月28日午後1時ころ,R方マンションの駐車場で,前記借用書と引き換えに,Dに貸借表を交付した。Rとしては,Dに貸借表を渡すのは,前記のとおり,R自身やその家族の身の危険を避けるためであり,前記借用書と引き換えにしたのは,この機会に借用書も返してもらおうと考えたに えに,Dに貸借表を交付した。Rとしては,Dに貸借表を渡すのは,前記のとおり,R自身やその家族の身の危険を避けるためであり,前記借用書と引き換えにしたのは,この機会に借用書も返してもらおうと考えたにすぎず,被告人らに脅されていなければ,借用書を返してくれるといっても,貸借表を渡すことはしなかった。 (8) Dは,貸借表をC土木事務所に持ち帰った。翌同月29日午後1時すぎころ,Eは,同事務所で,前記貸借表を確認した。そして,EとDは,相談の上,同事務所のコピー機で,貸借表をコピーした。被告人は,同日午後2時30分ころ,「Rが何か持ってきたか。」と言って同事務所に来た。Dが,Rから貸借表を受け取ったことを言うと,被告人は,そのコピーを要求し,Dから貸借表のコピーを受け取った。 (9) 同月30日午前7時ころ,Dは,R方マンションの駐車場で,Rに貸借表を返したが,その際,Rは,Dに対し,腹立ち紛れに,「酒代ぐらい出せ。」と言って,Dから3万円を受け取った。 2 前掲関係証拠,ことに,被害者であるR,共謀状況に関する目撃者であるW,共犯者であるD,Eの検察官調書の供述は,いずれも具体的かつ詳細で,迫真性に富んでいること,証人Rは,公判でも,記憶の減退や被告人の面前で証言することによる被告人に対する恐れ等があるものの,検察官調書でした供述と概ね同旨の証言を繰り返していること,R,W,D,Eには,被告人を陥れるために虚偽の供述をする理由や必要性が存しないこと等に照らすと,以上の被害者であるRの検察官調書及び証言,共謀状況の目撃者であるW,共犯者であるD,Eの検察官調書は,いずれもその信用性は高いと認められる。 これに対し,被告人は,捜査段階及び公判を通じ,第2の恐喝行為はしていないと否認するが,前記1に認定した事実に全く反していること るD,Eの検察官調書は,いずれもその信用性は高いと認められる。 これに対し,被告人は,捜査段階及び公判を通じ,第2の恐喝行為はしていないと否認するが,前記1に認定した事実に全く反していること,ことに共犯者であるD,Eの検察官調書の供述にも反していること,被告人は,捜査段階及び公判で,約10分間ほど車外に出て,小便をしたり,たばこを吸っていたので,Rに対し,貸借表を要求したことは知らない旨供述するが,この点は,共犯者のEが,公判で,被告人が車外に出たことはない旨証言しているだけでなく,被告人が,公判で,被告人の若衆の丙が,車外に出た被告人のたばこに火をつけてくれたと述べているところ,丙の検察官調書謄本(26号証)によっても,そのようなことは認められない(丙は,乙と共に,被告人に命じられて,車外に出てきたRに小便をさせてやったことを供述しているだけである。)こと等に照らすと,被告人の捜査段階及び公判の供述は,到底信用することができない。 3 弁護人は,Rは,Dに対し,借用書との引き換えによって貸借表を交付すると共に,現金の要求もしているのであるから,RがDに貸借表を交付したのは,被告人らの脅迫に基づく瑕疵ある意思表示に基づく財産的処分行為によるものとはいえず,Rの任意の意思に基づくものであって,被告人らの脅迫行為とRのDへの貸借表の交付との間には因果関係がなく,恐喝未遂にとどまる旨主張する。 しかし,前記1(7)に認定したとおり,Rが,Dに対し,貸借表を交付したのは,被告人らの要求を断れば,R自身やその家族が殺されたり,あるいはどのようなひどい目にあわされるかも知れないと恐れ,R自身やその家族の身の危険を避けるためやむを得ず交付したものであって,借用書を返してくれるといっても,貸借表を渡すことはしなかったことが認められ,この事 なひどい目にあわされるかも知れないと恐れ,R自身やその家族の身の危険を避けるためやむを得ず交付したものであって,借用書を返してくれるといっても,貸借表を渡すことはしなかったことが認められ,この事実によれば,被告人らの脅迫行為とRのDへの貸借表の交付との間に因果関係があることは明白である。 また,Rが,Dに対し,現金を要求したのは,前記1(9)に認定したとおり,Dから貸借表を返してもらった際のことであったと認められるから,RがDに現金を要求したことは,恐喝罪の成立を左右しないことは明らかである。 よって,弁護人の前記主張は,理由がない。 4 以上のとおりであって,前掲関係証拠によれば,第2の恐喝の事実は,優に認めることができる。 (法令の適用)罰条第1の行為被害者ごとに刑法60条,暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法222条)第2の行為刑法60条,249条1項観念的競合第1 刑法54条1項前段,10条(1罪として犯情の最も重いKに対する暴力行為等処罰に関する法律違反罪の刑で処断)刑種の選択第1の罪懲役刑併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条,47条ただし書(重い第2の罪の刑に加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の負担刑訴法181条1項本文平成13年11月7日神戸地方裁判所裁判官白神文弘

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