平成11(ワ)18763 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成13年10月26日 東京地方裁判所
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判決文本文11,280 文字)

口頭弁論終結日平成13年7月13日 主文 1 被告は,原告に対し,金460万円及びこれに対する平成10年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金1億6576万6771円及びこれに対する平成10年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が被告に対して振り出した小切手は,弁済又は免責的債務引受により原因関係上の債権が消滅したので,被告としてはこの小切手を支払呈示に回さない義務を負うにもかかわらず,被告の従業員がこの小切手を支払呈示に回してしまったために,原告は銀行取引停止処分を受けて事実上倒産したとして,原告が被告に対して,民法715条の使用者責任に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠で認定した事実については,証拠を()内に示す。)(1) 当事者原告は,建築請負業,土木工事業,産業廃棄物処理業等を営む資本金1000万円の株式会社であり,平成10年当時,東京都知事,X県知事及びY県知事から,産業廃棄物収集運搬業の許可を得ていた(甲1ないし4)。 被告は,資金の貸付業務等を営む株式会社である。 (2) 原告・被告間の金銭消費貸借契約と,同債務についての連帯根保証ア原告は,平成9年10月6日から同10年2月6日にかけて,合計10回にわたり被告から合計1000万円を借り受けた。その貸付日,貸付金額,最終返済日及び原告が支払のために振り出した小切手は,別紙(以下別紙 は,平成9年10月6日から同10年2月6日にかけて,合計10回にわたり被告から合計1000万円を借り受けた。その貸付日,貸付金額,最終返済日及び原告が支払のために振り出した小切手は,別紙(以下別紙省略)一覧表のとおりである(争いがない)。 イ原告代表者A,B株式会社及び同社代表取締役Cは,平成9年10月6日,被告に対し,限度額を500万円として,原告の被告に対する債務を連帯根保証した。 ウ A及びCは,平成10年1月5日,被告に対する連帯根保証の限度額を700万円に増額し,同日,新たにDが原告の被告に対する債務を限度額700万円で連帯根保証した。 (3) 原告の1回目の不渡り原告は,被告に対する債務のうち,小切手の支払日が平成9年12月5日,同10年1月5日及び同年2月5日になっている合計200万円の小切手については,決済してこれを支払った(甲6,35)。 しかし,原告は,同年3月5日,被告から支払呈示された別紙一覧表No. 4及び5の小切手(券面額合計150万円)については資金繰りがつかず,1回目の不渡りを出した。 (4) 原告の2回目の不渡り平成10年5月6日,被告の従業員は,別紙一覧表No.9の小切手(額面100万円,以下「本件小切手」という。)を支払場所に呈示したが,原告は資金繰りがつかず,2回目の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けた(争いがない)。 2 争点(1) B株式会社の代位弁済による原告の被告に対する債務消滅の有無(2) B株式会社と被告との間の免責的債務引受契約の成否(3) 原告の損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(原告の主張)B株式会社は,平成10年4月2日,新たに被告から700万円を借り入れ,こ 約の成否(3) 原告の損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(原告の主張)B株式会社は,平成10年4月2日,新たに被告から700万円を借り入れ,これをもって,原告の被告に対する残債務全額を被告に代位弁済した。したがって,原告の小切手振り出しの原因関係上の債務は弁済により消滅しており,被告は小切手を支払呈示せずに原告に返還すべき義務を負っていた。それにもかかわらず,被告従業員が本件小切手を支払呈示したことは,少なくとも過失があったというべきであり,原告に対する不法行為を構成する。 (被告の主張)被告は,同日,B株式会社に対して,700万円を貸し渡してはいない。B株式会社は,同日,被告との間で,原告の債務を併存的に引き受ける旨の契約を締結しただけである。 したがって,B株式会社が被告に対して原告の債務を代位弁済したという事実もない。 (2) 争点(2)について(原告の主張)B株式会社は,平成10年4月2日,被告との間で,原告の残債務をB株式会社が引き受ける旨の免責的債務引受契約を締結した。したがって,原告の小切手振り出しの原因関係上の債務は消滅しており,被告は小切手を支払呈示せずに原告に返還すべき義務を負っていた。それにもかかわらず,被告従業員が本件小切手を支払呈示したのは,原告に対する過失による不法行為に該当する。 (被告の主張)被告がB株式会社との間で締結したのは,免責的債務引受契約ではなく,併存的債務引受契約である。 (3) 争点(3)について(原告の主張)原告は,被告従業員の本件小切手の支払呈示によって銀行取引停止処分を受け,倒産したのであるが,倒産により以下の損害を蒙った。 ア営業損害 1億50 3)について(原告の主張)原告は,被告従業員の本件小切手の支払呈示によって銀行取引停止処分を受け,倒産したのであるが,倒産により以下の損害を蒙った。 ア営業損害 1億5069万7065円付加価値とは,企業の生産高からその生産のために他の企業から買い入れて消費した原材料等の外部購入価格を差し引いて算出されるものであって,ここでは税引前当期利益に人件費を加算した数値をいうが,原告が銀行取引停止処分を受ける直前の3年間の原告の付加価値額の平均は,年間5023万2355円であった。原告は,本件小切手の支払呈示がなければ,少なくとも3年間は正常な企業活動を維持できたのであるから,銀行取引停止処分を受けた後3年間の原告の付加価値額が損害となる。 イ弁護士費用 1506万9706円ウ合計 1億6576万6771円(被告の主張)原告は,平成10年3月5日の時点で既に1回目の取引停止処分を受けており,本件小切手の支払呈示がなくても倒産することは確実であった。したがって,原告に営業損害は発生しないし,営業損害を前提とする弁護士費用も小切手の支払呈示と因果関係のある損害ではない。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実前記第2の1(争いのない事実等)に加え,本件各証拠(甲7,28ないし35,37,43,44,47,49,50,55,57,59ないし60の3,61の1,62,乙1ないし12,21,22,証人C,同E,なお,書証は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 債権譲渡の承諾原告,A,C,B株式会社及びDは,被告との各契約に際し,債権担保の趣旨で,期限の利益を失ったときは,被告に対する債務の弁済に充てるため,第三 事実が認められる。 (1) 債権譲渡の承諾原告,A,C,B株式会社及びDは,被告との各契約に際し,債権担保の趣旨で,期限の利益を失ったときは,被告に対する債務の弁済に充てるため,第三債務者に対して有する債権を被告に譲渡すること,その際の第三債務者に対する通知に関しては,被告の定める書類により債権譲渡通知書を作成して,これを被告に交付し,債権譲渡手続事務の一切を被告に委ねることを約した(乙4ないし6〔14条〕参照)。 (2) 原告の1回目の不渡りの後の状況ア前記争いのない事実等のとおり,原告は,平成10年3月5日,1回目の小切手不渡りに陥った。これにより,原告は期限の利益を喪失し,同月10日時点における被告に対する残元金額は,800万円であった(甲56)。被告M営業所所長のEは,Aに連絡を取ろうとしたが,Aの妻によると,Aは金策のために友人のところへ行っているということで,直接の連絡がとれなかった。 被告従業員は,同月6日,C及びDに対しても電話で債務弁済の督促を試みたが,連絡を取ることができなかった(乙22)。そこで,被告は,同月9日,原告の売掛先に対して,前記(1)の約定に基づき,売買代金債権を原告から被告に移転する旨の債権譲渡通知を発送するとともに,連帯保証人であるC,D及びB株式会社に対して,内容証明郵便による督促状(甲57)を発送した。 イ A,Aの妻,Aの知人及びCは,同月13日,被告M営業所を訪れ,所長E及び従業員Hと,債務の弁済方法について話し合った。Eは,Aらに対し,Aと連帯保証人らとの間で協力して,一括返済をするよう求めたが,Aは,一括返済は難しいとして,月額100万円の分割弁済案を提示した。しかし,Eは,Aの分割返済案を拒否し,C及びB株式会社に対して,保 と連帯保証人らとの間で協力して,一括返済をするよう求めたが,Aは,一括返済は難しいとして,月額100万円の分割弁済案を提示した。しかし,Eは,Aの分割返済案を拒否し,C及びB株式会社に対して,保証債務の一括履行を求めたが,Cは,まず原告からの返済を望み,返済の意思を示さなかったため,話し合いはまとまらなかった。そこで,Eは,Aらに対し,とりあえず同月16日までに100万円の内入弁済と,追加担保を入れるよう提案し,Aらもこれを一応検討するとのことで,散会した。 ウ Aの妻は,同月16日,Hに電話をかけ,100万円の内入弁済も,追加担保の差入れも無理である旨伝えた。Eは,Hに対し,A本人と連絡を取るよう指示したが,連絡は取れなかった。また,E自身もCに電話をかけたが,連絡は取れなかった。 なお,被告が,原告ないしAに対して,同日以降,債務履行の督促をしたことはない。 エ Eは,同月17日にDと連絡を取ったが,Dは債務の返済は不能である旨回答した。さらに,Eは,Cに数回電話で連絡を取ろうとしたが,連絡がつかなかった。そこで,Eは,同日,B株式会社との間の前記(1)の約定に基づき,B株式会社の売掛先であるK企業団及びM市に対し,売買代金債権をB株式会社から被告に移転する旨の債権譲渡通知書(甲58,59)を発送した。B株式会社は,従来公共機関の建物の清掃委託業務を請け負っていたが,特にこの時期は,K企業団及びM市に対する1年間の清掃業務委託契約の入札時期であったところ,被告からの前記通知の影響で,入札指名から外されてしまった。 オ Cは,B株式会社のこのような窮状にかんがみ,B株式会社が保証人として原告の債務を代位弁済する方向もやむを得ないものと考え,同月18日にK企業団に対して(甲60の1 されてしまった。 オ Cは,B株式会社のこのような窮状にかんがみ,B株式会社が保証人として原告の債務を代位弁済する方向もやむを得ないものと考え,同月18日にK企業団に対して(甲60の1ないし3),同月19日にM市に対して(甲61の1ないし3),それぞれ債権譲渡通知を撤回する旨の内容証明郵便を発送するとともに,同月20日,Eに電話をかけ,50万円の保証債務を履行する代わりに,被告がしたK企業団とM市に対する債権譲渡通知を即刻撤回することを求めた。 Eは,本来であれば,債権譲渡通知は債務者から入金があってから撤回するのであるが,B株式会社が官公庁であるK企業団及びM市からの取引を失えば,被告への弁済の原資も得られなくなると考えて,これを承諾し,C及びB株式会社は連名で,債権譲渡通知書撤回にあたり,①B株式会社が被告に対して同月31日までに100万円を支払うこと,②同月21日までに同月31日を支払期日とする額面100万円の手形又は小切手を被告に差し入れること,③同月25日までに被告の納得する人的担保を追加した上で,債務切替契約を締結すること,以上の事項を不履行したときは,被告が必要と認めるいかなる債権保全措置をとられても一切異議を述べない旨の記載された念書(甲7,62)を被告に差し入れた。そこで,被告は,同日,K企業団及びM市に対し,債権譲受撤回通知書(甲63,64)を送付した。 カ Cは,同月23日,被告M営業所を訪れ,原告の債務のうち50万円を代位弁済した(甲43)。その際,Cは,同月31日に約束の50万円を入金すること,人的担保を追加することを確認した。ところが,Cは,同月31日,被告M営業所を訪れた際,Eに対し,支払う予定であった50万円を支払うことも,人的担保を追加することもできない旨伝えた を入金すること,人的担保を追加することを確認した。ところが,Cは,同月31日,被告M営業所を訪れた際,Eに対し,支払う予定であった50万円を支払うことも,人的担保を追加することもできない旨伝えた。Eは,仕方なく,Cに対し,50万円の支払期限を4月2日まで延長するとともに,人的担保の追加を再度強く求めた。 (3) B株式会社と被告の契約ア C,D,F及びAの実子であるGは,同年4月2日,被告M営業所を訪れ,Cが約束の50万円を支払った後に,残債務の返済方法について話し合った。 Eは,当初,残債務700万円のうち500万円をB株式会社が支払い,残額の200万円をDが分割で支払うよう提案したが,Dは分割金の支払を拒み続けたため,結局,その分も含めて残額全部をB株式会社で面倒をみることとなった。 イその後,関係者は契約書類を作成することとなった。その際,Cは,B株式会社名義で,被告に対する700万円の借用証書(乙12)に記名押印した。 B株式会社は,平成10年4月2日付け(保証)債務弁済契約証書(乙8ないし10)を取り交わしたが,同証書にはB株式会社が被告から700万円を借り入れ,同額の金員の交付を受けた旨の記載並びにB株式会社が被告に対し,同年5月から平成11年1月まで,毎月5日限り,700万円の元金と利息の分割金を支払う旨の記載がある。C,D,F及びGは,B株式会社の被告に対する債務を,700万円を極度額として連帯根保証する旨の手形割引・金銭消費貸借契約等継続取引に関する承諾書並びに限度付き根保証承諾書(乙1ないし3),連帯根保証確認書等(乙7の1ないし3,11の1ないし3)に署名押印した。これに対し,被告は,B株式会社に対し,754万5627円の領収証(甲44)を作成・交付した。その領収証には,Eの指示を ,連帯根保証確認書等(乙7の1ないし3,11の1ないし3)に署名押印した。これに対し,被告は,B株式会社に対し,754万5627円の領収証(甲44)を作成・交付した。その領収証には,Eの指示を受けた被告M営業所営業事務従業員Iにより,「本日の入金をもって貴殿(社)の本件に関する保証債務はすべて終了いたしました」との手書きの記載がなされているほか,「債務弁済金」欄の「完済」の部分と,「利息」欄に丸がつけられ,債務者である原告の保証人としての代位弁済である旨と,融資残高はゼロである旨の記載がある。 ウ被告従業員Hは,原告から預かった小切手及び関係書類については,1週間か10日位でCに返還する旨を申し述べて,Cらに対して,本件小切手を返還しなかった。そこで,FがHに対し,これを書面化することを求めたところ,Hは,会社の方針でそのような書類は出せないと答えたため,Fは,Hからもらった名刺(甲45)の裏に「4/2 書類,小切手 1週間ぐらいでベスト小のにもどす 『M営業所ではないため』 一筆はかけない」と記載しておいた。 (4) 原告の2回目の不渡りア被告は,同月23日,前記(3)のB株式会社の被告に対する債務について,第1回支払日の元利金が60万0750円であるのにもかかわらず,誤って支払金額が64万5350円であるとの記載がある返済金振込用紙(甲49)を,B株式会社に送付した。 イ B株式会社は,同年5月6日,振込用紙の誤記に気付き,金銭の支払いを止めるとともに,被告M営業所従業員に対して,電話で請求額が誤っている旨指摘したところ,同従業員は,正しい振込用紙を郵送するのでそれで返済するよう申し出た。 ウ他方で,被告従業員は,同日,原告に対して小切手債権を行使することとし,本件小 額が誤っている旨指摘したところ,同従業員は,正しい振込用紙を郵送するのでそれで返済するよう申し出た。 ウ他方で,被告従業員は,同日,原告に対して小切手債権を行使することとし,本件小切手を支払場所であるN銀行M支店に呈示したところ,前記争いのない事実等のとおり,原告は資金繰りがつかず,2回目の不渡りとなって銀行取引停止処分を受けた。 エ Cは,同月7日,第1回目の支払金を持参し,かつ本件小切手を支払に回したことにつき抗議すべく被告M営業所に赴いたところ,同営業所従業員は,「小切手が回ってしまったことを調査しているので,時間が欲しい,第1回目の支払分は,払わなくてもよい。」との対応であった。 2 争点に対する判断(1) 争点(1)及び(2)についてア上記認定事実,ことに,平成10年4月2日の書類作成の際に,B株式会社名義の700万円の借用証書が作成されていること,B株式会社は,同日,被告との間で(保証)債務弁済契約証書を取り交わしたが,同証書にはB株式会社が被告から700万円を借り入れ,同額の金員の交付を受けた旨の記載があること,被告は,同日,B株式会社に対し,754万5627円の領収証を作成・交付したこと,その領収証には,Eの指示を受けた被告M営業所従業員Iにより,「本日の入金をもって貴殿(社)の本件に関する保証債務はすべて終了いたしました」との手書きの記載がなされているほか,「債務弁済金」欄の「完済」の部分と,「利息」欄に丸がつけられ,債務者である原告の保証人としての代位弁済である旨と,融資残高はゼロである旨の記載があること,被告は,第1回目の小切手不渡り以降,Aが金策に出ていたことから同人と連絡が取れなかったこともあり,平成10年3月17日ころからB株式会社など連帯保証人に対す 資残高はゼロである旨の記載があること,被告は,第1回目の小切手不渡り以降,Aが金策に出ていたことから同人と連絡が取れなかったこともあり,平成10年3月17日ころからB株式会社など連帯保証人に対する請求の姿勢を強め,以後原告に対する内容証明郵便による督促等はしなかったことなどの諸事情に照らせば,被告は,当時,既に原告からの実質的な回収は見込めないことを認識したうえで,B株式会社を主債務者とする新たな消費貸借契約を締結し,同社及びその連帯保証人から原告の本件債務を回収することを望み,B株式会社は,被告の求めに応じ,被告から700万円を借り受けた上で,これに手持ち資金を加えて,原告の被告に対する残債務754万5627円を代位弁済したものと認めるのが相当である。 イこれに対して,証拠(乙21,22,証人E)中には,B株式会社は,当日,被告から新たに金銭を借り受けたのではなく,原告の債務を併存的に引き受けたのであるが,被告M営業所には,当時,併存的債務引受用の契約書が存在しなかったため,通常の消費貸借契約書を代わりに用いたに過ぎない旨,及び領収証(甲44)中の「本日の入金をもって貴殿(社)の本件に関する保証債務はすべて終了いたしました」との手書きの記載についても,B株式会社が債務を弁済したことを示すものではなく,B株式会社に併存的債務引受契約による債務が発生したこと及びこれに伴って保証債務の履行が終了したことを確認する意味でIに書かせたものであるとの供述ないし供述記載部分がある。 しかしながら,併存的債務引受用の契約書がないために,消費貸借契約書を併存的債務引受契約書として代替させるのであれば,契約書の中に併存的債務引受である旨を記載するのが通常であるにもかかわらず,証拠上かかる記載が見当たらないこと(甲32ない いために,消費貸借契約書を併存的債務引受契約書として代替させるのであれば,契約書の中に併存的債務引受である旨を記載するのが通常であるにもかかわらず,証拠上かかる記載が見当たらないこと(甲32ないし34,乙8ないし10),領収証(甲44)にも,併存的債務引受契約が締結されたことは記載されておらず,かえって,債務弁済金欄の「完済」の部分に丸がされ,融資残高がゼロであるとの記載があること,証人Eは,その記載の意味につき,一般的には主たる債務者の残債務額を記載するものであると供述していることなどからすれば,前記供述ないし供述記載部分は直ちに採用することができない。 また,被告は,同日,本件小切手をCらに対して返還しなかったことは,前記認定事実のとおりであるが,前記認定事実及び証拠(甲45,55,証人C)によれば,Cらが小切手等の書類の返還を求めたところ,Hが,本件小切手は別の場所で管理しており,現時点で被告M営業所にはないので,後日返還すると述べたことが認められる。 そうとすれば,本件小切手が返還されなかった事実は,B株式会社が原告の被告に対する債務を代位弁済した事実を左右するものではない。 ウしたがって,争点(2)について判断するまでもなく,被告の原告に対する貸金債権は,平成10年4月2日のB株式会社の代位弁済によって消滅したと解される。 そうすると,被告従業員が原告に対する貸金債権を有しないにもかかわらず,原告の振り出した本件小切手を支払呈示に回したのは,少なくとも過失があり,原告に対する不法行為に該当すると解するのが相当である。 (2) 争点(3)についてア付加価値を基準とする営業損害について原告は,損益計算書上の税引前当期利益に人 に対する不法行為に該当すると解するのが相当である。 (2) 争点(3)についてア付加価値を基準とする営業損害について原告は,損益計算書上の税引前当期利益に人件費を加算した付加価値を基準として,本件不渡事故が起こらなければ,原告が少なくとも営業を続けられたであろう3年間分の付加価値が原告の営業損害であり,損害額であると主張し,証拠(甲10,35,36)中には,これに沿う部分が存する。 しかしながら,そもそも付加価値という概念は,企業が自己の営業活動によって,新たに作り出した価値一般を指すものと解されるところ,これは当該企業の社会的価値を評価する基準とはなり得るとしても,不法行為により企業が倒産させられたことによって,企業そのものが受けた損害を評価する基準として採用するのは相当でないものと考えられる。 のみならず,原告がその根拠として使用した平成8年10月1日から平成9年9月30日までの原告の損益計算書(甲39)には,負債がゼロと記載されているところ,証拠(乙23,証人C)によれば,本件不渡事故の時点で,原告の債務は概算で4792万円(J所有の不動産の担保提供分として3000万円,B株式会社等に対する債務として1092万円,平成10年3月分と4月分の未払い賃金として合計700万円)は存在していたことが認められるから,その約8か月前の負債がゼロであるとは考え難く,損益計算書の記載自体の信用性が極めて疑われる。 また,前記前提となる事実によれば,原告は本件不渡事故の前に既に第1回目の不渡りを出しており,その後は,代表者Aが資金繰りに奔走しながら本件不渡りを回避できなかったのであるから,原告が本件不渡事故がなかったならば,今後3年間も営業を継続できたもの 故の前に既に第1回目の不渡りを出しており,その後は,代表者Aが資金繰りに奔走しながら本件不渡りを回避できなかったのであるから,原告が本件不渡事故がなかったならば,今後3年間も営業を継続できたものと推認することはできず,これを認めるに足りる証拠もない。そうすると,原告主張の損害は,その基礎数値が全く不正確であるといわざるを得ない。 したがって,原告の付加価値を基準とする営業損害の主張は,到底採用することができない。 イ財産的損害についてそこで,原告の被った財産的損害について検討するに,前記争いのない事実等及び前提となる事実によれば,原告は本件不渡事故の前に既に第1回目の小切手不渡りを出しており,その後は,代表者Aが資金繰りに奔走している状況が認められるうえ,従業員給与の支払にも窮し,多額の地方税の滞納があった状況であり(乙21),また,本件不渡事故の際も,100万円の小切手債務請求に対して全く資金を用意できなかったのであるから,本件不渡事故がなくとも早晩倒産する蓋然性が大であったことが認められる。 したがって,本件不渡事故により原告に財産的損害が生じたことを認めることはできない。 ウ無形の損害(ア) しかしながら,法人は,名誉毀損ないし信用毀損に基づいて,無形の損害の賠償を請求することができると解されるところ(最高裁判所昭和39年1月28日第一小法廷判決参照),被告は,その時点においては,原告が未だ銀行取引停止処分を受ける原因が存しないのに,原因関係上の権利を喪失した,債権としての実体を有しない小切手を行使して,原告に銀行取引停止処分を受けさせ,もって,本件不渡事故により,原告の信用を著しく毀損したことが認められる。 係上の権利を喪失した,債権としての実体を有しない小切手を行使して,原告に銀行取引停止処分を受けさせ,もって,本件不渡事故により,原告の信用を著しく毀損したことが認められる。 したがって,原告は,被告に対し,信用毀損に基づいて,無形の損害の賠償を請求することができると解するのが相当である。 (イ) そして,証拠(甲17ないし21,22の1,2,35)によれば,原告は,本件不渡事故により,銀行取引停止処分を受けたことが原因で,産業廃棄物処理業等の業務を実質的に行うことができなくなったこと,取引先であるLから,工事中であったZ県庁舎JV工事事務所の現場への入場を停止されたこと,平成7年度から下請二次業者として取引を続行していたKから取引関係を断たれたこと,原告がX県M市で計画していた焼却炉設置についても,工事途中で本件不渡事故が起こったために工事が中止され,原告が相手方に支払った一部金900万円が無駄になったことが認められる。 (ウ) 以上の事情を総合勘案すれば,本件不渡事故によって原告が被った無形の損害は,金400万円と認めるのが相当である。 エ弁護士費用原告が原告訴訟代理人に本件訴訟の提起,追行を委任したことは明らかであるところ,本件事案の性質,審理の経過及び認容額等に鑑みると,本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,金60万円と認めるのが相当である。 3 結論以上によれば,原告の請求は,金460万円及びこれに対する平成10年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部 みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部裁判長裁判官小磯武男 裁判官尾崎智子裁判官大谷太

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