- 1 -平成22年2月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第5610号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成21年12月22日判決名古屋市〈以下略〉原告トーヨーキッチンアンドリビング株式会社同訴訟代理人弁護士志波邦男同訴訟代理人弁理士高野俊彦広島市〈以下略〉被告株式会社松岡製作所同訴訟代理人弁護士大本和則主文 被告は,原告に対し,1万8000円及びこれに対する平成21年2月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを1000分し,その999を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告は,別紙物件目録記載の商品名「3StepSink」という名称のシステムキッチンのシンクを製造し,販売し,販売のために展示してはならない。 被告は,前項のシステムキッチンのシンクを廃棄せよ。 被告は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成21年2月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要- 2 -本件は,発明の名称を「流し台のシンク」とする特許権を有する原告が,被告において,前記特許権に係る請求項1及び2記載の発明の技術的範囲に属するシステムキッチンのシンクを製造販売しているとして,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,同シンクの製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条,特許法102条1項又は2項に基づき,損害金3000万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支 るとともに,民法709条,特許法102条1項又は2項に基づき,損害金3000万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 争いのない事実( )当事者 原告は,システムキッチンの製造,販売等を目的とする株式会社である。 被告は,オーダーキッチン及びステンレス製品の製造,販売等を目的とする株式会社である。 ( )原告の特許権 原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。 特許番号第3169870号発明の名称流し台のシンク出願番号特願平9-322218出願年月日平成9年11月6日登録年月日平成13年3月16日特許請求の範囲【請求項1】(同請求項に記載された発明を,以下「本件発明1」という。)「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成- 3 -されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする流し台のシンク。」【請求項2】(同請求項に記載された発明を,以下「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本件発明」という。)「前記中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にスライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。 「前記中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にスライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。」( )構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件を,それぞれ「構成要件A1」等という。)。 ア本件発明1A1前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,B1前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,C1前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっているD1ことを特徴とする流し台のシンク。 イ本件発明2- 4 -A2前記中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にスライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されてなるB2ことを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。 ( )被告の行為 ア被告は,平成17年11月ころから,商品名「3DMシンク」の名称で,平成20年7月ころから,商品名「3StepSink」の名称で,システムキッチン(以下「被告製品」という。)を製造,販売している。 イ被告は,平成18年4月ころ,別紙図面記載のシステムキッチン(アイランドカウンター型,以下「本件侵害品」という。)1台を,製造,販売した。 本件侵害品のシンクは,本件発明の構成要件をすべて充足する。 ( )本件発明と被告製品との対比 被告製品のシンクは,本件発明1の構成要件C1を除き,本件発明1及 いう。)1台を,製造,販売した。 本件侵害品のシンクは,本件発明の構成要件をすべて充足する。 ( )本件発明と被告製品との対比 被告製品のシンクは,本件発明1の構成要件C1を除き,本件発明1及び本件発明2のその余の構成要件を充足する。 争点 ( )侵害論 リブ(段部)が,壁面を構成する金属板を折り曲げて加工し,壁面と一体的に形成されたものであり,かつ,リブ(段部)の下部に傾斜面があるという被告製品の構成が,「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)を充足するか(構成要件C1の解釈)。 ( )損害論 ア被告製品の製造,販売による損害額(特許法102条1項)イ本件侵害品の製造,販売による損害額(特許法102条2項)第3争点に対する当事者の主張- 5 - 争点( )(侵害論) リブ(段部)が,壁面を構成する金属板を折り曲げて加工し,壁面と一体的に形成されたものであり,かつ,リブ(段部)の下部に傾斜面があるという被告製品の構成が,「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)を充足するか(構成要件C1の解釈)。 (原告)被告製品の構成は,別紙物件目録記載のとおりであるところ,次のとおり,構成要件C1を充足する。 ( )上側段部と中側段部との間は,全長にわたり傾斜面でなくともよいこと。 本件発明は,後方側壁面の上側段部と下側(中側)段部の間が,下方に向かうにつれて奥方に向かって延びる傾斜面になっていればよく,上側段部と下側(中側)段部の間は,「上下方向全長にわたって」傾斜面となっていなくてもよいので の上側段部と下側(中側)段部の間が,下方に向かうにつれて奥方に向かって延びる傾斜面になっていればよく,上側段部と下側(中側)段部の間は,「上下方向全長にわたって」傾斜面となっていなくてもよいのであり,壁面の一部(下側(中側)段部上方付近の壁面)が垂直になっていてもよい。 本件発明のシンクは,前方側と後方側の壁面の各々上側段部と下側(中側)段部が形成され,上側段部同士の水平方向の間隔と下側(中側)段部同士の水平方向の間隔が同一になるように設けられ,かつ,後方側壁面に傾斜面が形成されていればよいのであり,上側段部同士の水平方向の間隔と下側(中側)段部同士の水平方向の間隔が同一になっている限り,後方側壁面の形状は,特に限定されない。 上側段部と中側段部の間の傾斜面が後方壁面の一部であったとしても,シンク内にて2枚の同一プレートを上側段部及び中側段部のいずれにも掛け渡すことを可能とする手段として,上側段部と中側段部との幅がほぼ同一となるように,傾斜面が存在すればよい。その傾斜面が,後方側壁面の下まで伸びているか,一部しかないかは,構成要件C1を充足するか否かを左右しな- 6 -い。 したがって,本件特許のシンクは,被告製品のように,前方と後方の壁面の形状が対称形になっているものも含む。 ( )リブ(段部)の下面が後方側の壁面を構成すること。 被告製品の後方側壁面のリブ(段部)の下部には傾斜面が形成されており,このリブ(段部)は,シンクの左右(水平)方向のほぼ全長にわたって形成されている。すなわち,このリブ(段部)は,横幅の狭い突起といえるものではなく,シンクの水平方向のほぼ全長にわたって形成され,その下部の傾斜面も,当然にシンクの水平方向のほぼ全長にわたって形成されている。また,この傾斜面を含むリブ(段部)は,シンクの後方側壁面を構成 ではなく,シンクの水平方向のほぼ全長にわたって形成され,その下部の傾斜面も,当然にシンクの水平方向のほぼ全長にわたって形成されている。また,この傾斜面を含むリブ(段部)は,シンクの後方側壁面を構成する金属板を折り曲げ加工して形成されたものであり,壁面を構成することは明らかである。 仮に,当該リブ(段部)が,別紙「シンク用リブの分類別の比較図」における「リブの分類段差の工法(1)」の左側の図(A:別パーツ付けのリブ)のように,金属板からなる壁面に,リブを構成する別部材を取り付けて固定した構成であれば,この別部材の下部に傾斜面が存在していたとしても,本件発明の技術的範囲に含まれない。また,前記別紙における「リブの分類段差の工法(1)」の右側の図(B:四角のリブ)のように,リブ(段部)が壁面を構成する金属板を折り曲げて加工し,壁面と一体的に形成されていたとしても,リブ(段部)の下部が水平になっていて傾斜面がない場合は,同様に,本件発明の技術的範囲に含まれない。 しかしながら,被告製品のように,リブ(段部)が,壁面を構成する金属板を折り曲げて加工し,壁面と一体的に形成されており,かつ,リブ(段部)の下部に傾斜面がある場合は,その傾斜面が下方まで延びている場合であっても(前記別紙における「リブの分類段差の工法(2)」の右側の図(D:TOYOKITCHEN3Dシンクのリブ),その傾斜面が途中- 7 -で終わり,その下が垂直面になっている場合であっても(同左側の図(C:松岡製作所3DMシンクのリブ)),本件発明の技術的範囲に含まれることになる。 ( )小括 以上のとおり,本件発明における壁面の傾斜面は,上側段部の下方のすべての壁面を構成する必要はなく,被告製品のように,リブ(段部)の下方の一部が傾斜面であるならば,その下に,更に 。 ( )小括 以上のとおり,本件発明における壁面の傾斜面は,上側段部の下方のすべての壁面を構成する必要はなく,被告製品のように,リブ(段部)の下方の一部が傾斜面であるならば,その下に,更に傾斜面でない垂直面を介して中側段部に至るように後方壁面を構成したとしても,構成要件C1を充足することになる。すなわち,リブ(段部)の下面に傾斜面が存在する限り,上側段部と中側段部とに,同一のプレートを掛け渡すように載置できるようにするという本件発明の目的を達成できるのであるから,被告が棚受けと称する被告製品のリブの下面は,構成要件C1を充足する。 したがって,被告製品の逆V字形状のリブ(段部)は,後方側壁面に存在して傾斜面を有する以上,構成要件C1を充足する。 ( )被告の主張について 被告は,被告製品のリブ(段部)は壁面となっていないと主張するが,同リブは,後方壁面と一体成形されたリブであり,シンクの左右(水平)方向のほぼ全長にわたって形成されているものであるから,少なくとも後方壁面の一部を構成していることは明らかである。仮に,このリブ(段部)の下面の傾斜面を取り去った場合,後方壁面が左右方向のほぼ全長にわたって大きく穴が空いてしまい,シンクの後方壁面が成立しなくなってしまう。 また,被告は,被告製品のリブが棚受けであると主張するが,本件発明1において,段部は,上側と中側の段部のそれぞれに,同一のプレート(同一の幅を有するプレート)を掛け渡して載置できるようにしたものであるから,棚受けと同じ目的,機能を持つものであり,リブ(段部)が棚受けを目的として設けられたものであるとしても,そのことにより,構成要件C1を充足- 8 -しないことにはならない。 (被告)本件発明は,「後の壁面である後方側の『壁面』は,上側段部と中側段部との間が,『 して設けられたものであるとしても,そのことにより,構成要件C1を充足- 8 -しないことにはならない。 (被告)本件発明は,「後の壁面である後方側の『壁面』は,上側段部と中側段部との間が,『下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面』となっている」ことを特徴とするが,被告製品は,「シンク内の相対向する内縁面の位置に,それぞれ断面形状が逆V字状の突起段部を設けた流し台シンク」であり,上側の突起段部と下側の突起段部との間は『垂直面』であって,傾斜面になっていない。 したがって,被告製品は,構成要件C1を充足せず,本件特許権を侵害しない。 ( )被告製品の後方側の壁面は,垂直面であり,上側段部と中側段部との間 が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面になっていない。 ( )被告製品のリブは棚受けであり,リブの下面は壁面でない。 被告製品の突起(リブ)は,プレートをどの段でも共用できるように棚受けの突起物として設けたものであり,壁面より奥方ではなく前方に出ており,前方側壁面も後方側壁面も移動させていない。原告は,リブを別部材で取り付ければ壁面でなく,金属板を折り曲げて形成されたら壁面となると主張するが,失当である。 壁という概念は,室と室との隔てとする所を示すものであり,突起物は,壁ではない。壁は,仕切りを役割とするものである。リブは,プレートを受けることを役割とする棚であり,仕切りを役割としていない。リブを壁とする原告の主張は,明らかに誤っている。 そして,リブが三角形で下部が斜めになっていることを捉え,本件特許権を侵害するという原告の主張も,失当である。リブが四角形や長方形となっている場合に本件特許権の侵害とならないのであれば,リブが三角形となっていても,同様のはずである。 - 9 -本件特許は,「後方側の 害するという原告の主張も,失当である。リブが四角形や長方形となっている場合に本件特許権の侵害とならないのであれば,リブが三角形となっていても,同様のはずである。 - 9 -本件特許は,「後方側の壁面」は「前記上側段部と前記中側段部との間」が,「下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面」となっていることが特徴であり,突起物であるリブが三角形であることは,これに当たらない。被告製品において棚受けの形状を三角形としているのは,プレートを上下に移動するためではなく,単に形状美と加工のしやすさからにすぎない。 また,本件特許は,「前記上側段部と前記中側段部との間」が「下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面」となっているのであり,「段部である上側リブと下側リブの間」が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜でなければ,本件特許の侵害になることはない。段部であるリブそのものは,問題とならない。リブが壁面とならないことは前記のとおりであるが,リブの下面が斜めとなっていても,それはあくまでも棚受けであって,「後方側の壁面」が「下方に向かうに『つれて』,奥方に向かって『延びる傾斜面』」でないことは,誰が見ても明らかである。 ( )小括 このように,被告製品の突起段部(リブ)は,壁面でなく,上側の突起段部(リブ)と下側の突起段部(リブ)との間は,垂直面であり傾斜面となっていないから,本件発明の「後の壁面である後方側の『壁面』は,上側段部と中側段部との間が,『下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面』となっている」という構成要件C1を充足せず,本件特許権を侵害しない。 ( )原告の主張について 原告は,傾斜面が後方壁面の一部であっても,シンク内で2枚の同一プレートを上側段部及び中側段部のいずれにも掛け渡すことを可 件C1を充足せず,本件特許権を侵害しない。 ( )原告の主張について 原告は,傾斜面が後方壁面の一部であっても,シンク内で2枚の同一プレートを上側段部及び中側段部のいずれにも掛け渡すことを可能とする手段として,上側段部と中側段部との幅がほぼ同一となるように,傾斜面が存在すればよく,その傾斜面が,上側段部と中側段部の間の全長にわたっているか,その一部しかないかにより,構成要件C1の充足性は左右されないと主張す- 10 -る。 本件特許の出願当初の【請求項1】は,「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれも同一の調理プレート等のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなることを特徴とする流し台のシンク。」,【請求項2】は,「前記前後の壁面の少なくとも一方の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。」というものであった(乙9の1)。しかしながら,請求項1は,請求項3とともに,拒絶理由通知書(乙9の2)において,特開平07-204113号公報(乙14)及び特開平02-144009号公報(乙15)に基づき,特許法29条2項により特許を受けることができないとされた。これに対し,原告は,【請求項1】を「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は 記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする流し台のシンク。」と補正して,特許査定を受けたものである。 したがって,シンク内で2枚の同一プレートを上側段部及び中側段部のいずれにも掛け渡すことが可能であるという目的,機能を強調して,構成要件C1の充足性をいう原告の主張は,前記出願経過に照らして失当である。 そして,構成要件C1は,あくまでも「後方側の壁面」が「前記上側段部と前記中側段部との間」において,「下方に向かうにつれて」,つまり,下方に行くに従って徐々に「奥方に向かって延びる傾斜面」となっていること- 11 -を特徴とするものである。これに対し,被告製品は,プレートをどの段でも共用できるよう棚受けを設けたものにすぎず,前方側壁面も後方側壁面も移動させておらず,構成要件C1に該当するとはいい難い。 原告は,被告製品の逆V字形状の段部(リブ)が後方側壁面に存在して傾斜面になっている限り,構成要件C1を充足すると主張するが,構成要件C1を意図的に曲解するものであり,到底許されるものではない。 争点( )(損害論) ( )被告製品の製造,販売による損害額(特許法102条1項) (原告)被告は,平成17年11月から同21年2月までの間に,少なくとも39台の被告製品を製造,販売した。原告は,被告の侵害行為がなければ,被告製品と同数のシステムキッチンを販売することができた。そして,原告のシステムキッチン1台当たりの販売価格は,150万円を下らず,その粗利益率は,50%であ た。原告は,被告の侵害行為がなければ,被告製品と同数のシステムキッチンを販売することができた。そして,原告のシステムキッチン1台当たりの販売価格は,150万円を下らず,その粗利益率は,50%であるので,被告の侵害行為による原告の逸失利益は,1台当たり75万円を下らず,前記期間に被告が被告製品を製造,販売しなければ原告が得られた利益は,少なくとも2925万円(75万円×39台)を下らない。 したがって,原告は,被告製品の製造,販売により,少なくとも2925万円(75万円×39台)の損害を被った(特許法102条1項)。 (被告)否認又は争う。 ( )本件侵害品の製造,販売による損害額(特許法102条2項) (原告)ア原告の損害額被告は,本件侵害品1台を製造,販売したことを認めているが,その販売価格を150万円,粗利益率を50%とすれば,被告が本件侵害品の製- 12 -造,販売により得た利益の額は,少なくとも75万円を下回らない。 したがって,原告は,本件侵害品1台の製造,販売により,75万円の損害を被った(特許法102条2項)。 イ被告の主張に対する反論被告は,本件侵害品の売上高(販売価格)が58万3000円,その原価が46万7000円,利益額が粗利益率を原価の15%として7万0050円(販売価格に対する粗利益率は12%)と主張する。 しかしながら,被告は,本件侵害品以外にも2台の侵害品を製造,販売しているところ,これらは,販売価格38万2000円(利益額7万4000円),販売価格19万8000円(利益額4万9000円)としており,販売価格に対する利益率を計算すると,それぞれ19%,25%となる。 本件侵害品の原価に対する利益率15%(販売価格に対する利益率12%)は,これらと比較して低い数値となっているが,これは,被告が原 販売価格に対する利益率を計算すると,それぞれ19%,25%となる。 本件侵害品の原価に対する利益率15%(販売価格に対する利益率12%)は,これらと比較して低い数値となっているが,これは,被告が原価を高く想定した結果と推測され,少なくとも本件侵害品の販売価格に対する利益率は,19%ないし25%と推測される。 また,本件侵害品は,本件特許の実施品である原告の製品(以下「原告製品」という。)を模倣したものであり,その売上高(販売価格58万3000円)に対する本件発明の寄与率は,100%と見るべきである。原告製品は,「シンク内のプレートを上段及び中段で自由に交換配置可能とし,自由に交換可能なプレートによってシンク内にて料理を作るための各種作業を可能ならしめた画期的・独創的なシンク」に特徴を有するシステムキッチンのカウンターであり,本件侵害品は,原告製品の特徴をそっくり模倣したものである。そして,本件侵害品に当該特徴がなければ,顧客は注文していないから,当該特徴こそが本件侵害品の売上げに100%貢献した(被告の侵害行為により被告が得た利益に対して100%貢献し- 13 -た。)というべきである。 よって,本件侵害品の売上高に対する本件発明の寄与率は,100%とみるべきである。 以上によれば,本件侵害品の製造,販売による被告の利益は,前記のとおり,販売価格に対する利益率を19%ないし25%としても,少なくとも11万0770円ないし14万5750円を下ることはない。 (被告)ア被告の利益額被告が顧客の注文により平成18年4月に製造した本件侵害品におけるシンクは,本件特許権を侵害するものであるが,本件侵害品の製造単価は,58万3000円であり(乙16),内訳明細書(乙17)のとおり,そのうちシンクの製造単価は,12万円である。そして,被告が けるシンクは,本件特許権を侵害するものであるが,本件侵害品の製造単価は,58万3000円であり(乙16),内訳明細書(乙17)のとおり,そのうちシンクの製造単価は,12万円である。そして,被告がシンクを製造,販売することにより得た利益は,シンクの製造単価の15%の1万8000円である。 イ原告の主張に対する反論原告は,本件侵害品全体の販売価格に対する利益を賠償の対象としているが,本件では,シンクの特許権の侵害が問題となっているのであるから,損害額は,シンクを製造,販売することにより得た利益とすべきであり,本件侵害品全体の利益とするのは,過大請求である。 第4当裁判所の判断 争点( )(侵害論)について 原告は,本件発明1の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)とは,上側段部と中側段部との間が,全長にわたって傾斜面となっている必要はなく,被告製品のように,リブ(段部)が,壁面を構成する金属板を折り曲げて加工され,壁面と一体的に形成されて- 14 -おり,かつ,リブ(段部)の下部に傾斜面がある場合は,構成要件C1を充足すると主張する。 そこで,構成要件C1の技術的意義を検討する。 まず,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないところ(特許法70条1項),特許請求の範囲に記載された用語の意義は,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して解釈すべきであるから(特許法70条2項),構成要件C1の意義を解釈するに当たっては,本件明細書中の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」と ,構成要件C1の意義を解釈するに当たっては,本件明細書中の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」との記載部分及びこれに関連する記載部分について検討するとともに,後記(2)のとおり,【請求項1】(本件発明1)は,本件特許の出願経過において,構成要件C1の部分が補正されているから,この点についても,併せて検討する必要がある。 (1)本件明細書の記載(甲2)本件明細書の【発明の詳細な説明】には,次の記載がある(甲2)。 ア【発明が解決しようとする課題】「ところで,上記従来の流し台21のシンク22にあっては,・・・第1の調理プレート25は,上側段部23,23にのみ載置でき,中側段部24,24には載置できず,また同様に,第2の調理プレート26は,中側段部24,24にのみ載置でき,上側段部23,23には載置できなかった。 その結果,上側段部用と中側段部用との,両方の専用の調理プレートを用意する必要があった。」(2頁3欄1行ないし15行【0003】)「この発明は,上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり,その目的とするところは,上側段部と中側段部とのそれぞれに,上側あるいは中側専用の調理プレート等のプレートを用意する必要のない,流し台のシンクを提供することにある。」(2頁3欄16行ないし20行【00- 15 -04】)イ【課題を解決するための手段】「この発明に係る流し台のシンクは,前記目的を達成するために,次の構成からなる。すなわち,請求項1に記載の発明は,前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されている。そして,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように, に記載の発明は,前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されている。そして,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている。こうして,後の壁面である後方側の壁面は,上側段部と中側段部との間が,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面でつながって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されており,それら上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すようにして載置することができる。」(2頁3欄22行ないし38行【0005】)ウ【発明の実施の形態】「シンク8gは,図4にて明示するように,その後方側の壁面8iが,シンク8gの開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されている。 具体的には,後方側の壁面8iは,第2の段部8bから下が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている。シンク8gの手前側の壁面8hは,第2の段部8bから下が,鉛直に下りる鉛直面となっている。そして,シンクの左右の壁面8k,8mは,鉛直に下りる鉛直面となっている。さらに,シンクの前後の壁面8h,8iの,深さ方向の中程に,その前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって,中側段部8n,8nが形成されている。これら上側段部8f,8f(第1の段部8a,8a)と中側段部8n,8nとは,そのいずれにも同一の調理プレート等の- 16 -プレートを,掛け渡すようにして載置できるように,上側段部8f,8f(第1の段部8a,8a)の前後の間隔と中 8a,8a)と中側段部8n,8nとは,そのいずれにも同一の調理プレート等の- 16 -プレートを,掛け渡すようにして載置できるように,上側段部8f,8f(第1の段部8a,8a)の前後の間隔と中側段部8n,8nの前後の間隔とが,ほぼ同一に形成されている。こうして,シンクの後方側の壁面8iの傾斜面は,中側段部8nにより,上部傾斜面8pと下部傾斜面8qとに分断されている。同様にして,シンク8gの手前側の壁面8hの鉛直面は,中側段部8nによって,上部鉛直面8rと下部鉛直面8sとに分断されている。また,シンク8gの底面8tには,第1の排水口8uが設けられている。」(2頁4欄35行ないし3頁5欄7頁【0010】)「以上の構成からなる流し台の作用効果について説明する。まず,シンク8gによっては,そのシンク8gは,後方側の壁面8iが,開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されおり,シンク8gの内部空間は,その開口部8jから奥方に広がっている。したがって,開口部8jを広げることなく,内部空間を広くすることができ,この内部空間が広くなったシンク8gで,大きな調理器具や食材を洗う等することが楽にできる。また,シンク8gの内部空間は,後方側に広がっているので,その内部空間を,開口部8jを通して,シンク8gで調理器具や食材を洗う等の作業をする者は,容易に見ることができる。したがって,作業をする者は,シンク8gでの調理器具や食材を洗う等の作業を支障なく行うことができる。 また,後方側の壁面8iは,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面(上部傾斜面8pおよび下部傾斜面8q)となっていており,その壁面8iは,徐々に奥方に向かうので,その壁面8iの清掃を容易に行うことができる。」(4頁7欄33行ないし50行【0018】)「なお,本発明は,上述し pおよび下部傾斜面8q)となっていており,その壁面8iは,徐々に奥方に向かうので,その壁面8iの清掃を容易に行うことができる。」(4頁7欄33行ないし50行【0018】)「なお,本発明は,上述した実施の形態に限定されるわけではなく,その他種々の変更が可能である。…また,シンク8gの後方側の壁面8iは,上側段部8fと中側段部8nとの間が,第2の段部8bを経由して,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる上部傾斜面8pとなっていなく- 17 -とも,上側段部8fと中側段部8nとに同一のプレートが掛け渡すことができるよう,奥方に延びるように形成されているものであればよく,その形状は任意である。」(6頁11欄7行ないし23行【0027】)エ【発明の効果】「請求項1に記載された流し台のシンクによれば,上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すようにして載置することができるので,それら上側段部と中側段部とのそれぞれに,上側あるいは中側専用のプレートを用意する必要がない。また,後の壁面である後方側の壁面につき,上側段部と中側段部との間を,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面でつなぐことにより,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易にほぼ同一にすることができる。」(6頁11欄34行ないし6頁12欄8行【0029】)( )本件特許の出願経過(乙9の1ないし3) ア出願当初の【特許請求の範囲】の記載(乙9の1)本件特許の出願当初の【特許請求の範囲】の記載は,次のとおりである。 【請求項1】「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一の調理プレート等のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記 に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一の調理プレート等のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなることを特徴とする流し台のシンク。」【請求項2】「前記前後の壁面の少なくとも一方の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。」【請求項3】- 18 -「前記中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にスライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の流し台のシンク。」イ拒絶理由通知(乙9の2)特許庁審査官は,原告に対し,本件特許の出願当初の【特許請求の範囲】のうち,【請求項1】に係る発明は,特開平07-204113号公報(乙14)又は特開平02-144009号公報(乙15)に記載された発明に基づいて,また,【請求項3】に係る発明は,特開平07-204113号公報(乙14)に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶理由通知書を送付した。 ウ拒絶理由に対する補正(乙9の3)原告は,拒絶理由通知書に対し,【特許請求の範囲】の記載を次のとおり補正し,特許査定を受けた。 【請求項1】「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように, 定を受けた。 【請求項1】「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする流し台のシンク。」【請求項2】「前記中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にス- 19 -ライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の流し台のシンク。」【請求項3】削除( )検討 ア本件明細書の【発明が解決しようとする課題】の記載,【課題を解決するための手段】の「後の壁面である後方側の壁面は,上側段部と中側段部との間が,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面でつながって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されており,それら上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すようにして載置することができる。」との記載(2頁3欄32行ないし38行【0005】)から,本件発明の目的は,上側段部と中側段部のそれぞれに,上側あるいは中側専用の調理プレート等のプレートを各別に用意する必要があるという,従来技術の課題を解決することであると認められる。また,本件発明1の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)との構成も,この課題を解決し,上側あるいは中側専用のプレートを用意する必要 面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)との構成も,この課題を解決し,上側あるいは中側専用のプレートを用意する必要のない流し台シンクを提供するために,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とをほぼ同一に形成し,同一のプレートを,選択的に上側段部と中側段部とに掛け渡して載置することができるための構成であると理解することができる。 さらに,本件明細書の【発明の実施の形態】の「本発明は,上述した実施の形態に限定されるわけではなく,その他種々の変更が可能である。…また,シンク8gの後方側の壁面8iは,上側段部8fと中側段部8nと- 20 -の間が,第2の段部8bを経由して,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる上部傾斜面8pとなっていなくとも,上側段部8fと中側段部8nとに同一のプレートが掛け渡すことができるよう,奥方に延びるように形成されているものであればよく,その形状は任意である。」との記載(6頁11欄7行ないし23行【0027】),本件明細書の【発明の効果】の「後の壁面である後方側の壁面につき,上側段部と中側段部との間を,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面でつなぐことにより,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易にほぼ同一にすることができる。」との記載(6頁12欄3行ないし8行【0029】)から,後方側の壁面は,上側段部と中側段部の前後の間隔とを同一にして,各段部に同一のプレートを掛け渡すことができるように,下方に向かうにつれて奥方に延びるように形成されているものであれば,本件明細書に記載された実施形態に限られるものでなく,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易にほぼ同一にすることができる形状のものであれ て奥方に延びるように形成されているものであれば,本件明細書に記載された実施形態に限られるものでなく,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易にほぼ同一にすることができる形状のものであればよいことが理解できる。 イしかしながら,他方,【発明の実施の形態】の「シンク8gは,図4にて明示するように,その後方側の壁面8iが,シンク8gの開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されている。具体的には,後方側の壁面8iは,第2の段部8bから下が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている。…こうして,シンクの後方側の壁面8iの傾斜面は,中側段部8nにより,上部傾斜面8pと下部傾斜面8qとに分断されている。」(2頁4欄35行ないし3頁5欄6行【0010】)との記載及び「後方側の壁面8iは,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面(上部傾斜面8pおよび下部傾斜面8q)となっており,その壁面8iは,徐々に奥方に向かうので,その壁面8iの清掃を容易に行うことができる。」との記載(4頁7欄46行ないし50行【001- 21 -8】)並びに【図4】からは,後方側の壁面の傾斜面が,上側段部の下の第2の段部である8bから下の部分が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっており,その傾斜面は,中側段部まで続き,さらに,中側段部により分断されるものの,中側段部から下の部分まで続くような形態のものであることが理解でき,この傾斜面(上側段部と中側段部の間を含む。)は,奥行き方向に一定の長さを有した左右の幅のある連続性をもった傾斜面であることが理解できる。 また,【発明の実施の形態】の「後方側の壁面8iが,開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されており,シンク8gの内部空間は,その開口部8jから奥方に 性をもった傾斜面であることが理解できる。 また,【発明の実施の形態】の「後方側の壁面8iが,開口部8jよりも下部が奥方に延びるように形成されており,シンク8gの内部空間は,その開口部8jから奥方に広がっている。したがって,開口部8jを広げることなく,内部空間を広くすることができ,この内部空間が広くなったシンク8gで,大きな調理器具や食材を洗う等することが楽にできる。また,シンク8gの内部空間は,後方側に広がっているので,その内部空間を,開口部8jを通して,シンク8gで調理器具や食材を洗う等の作業をする者は,容易に見ることができる。」(4頁7欄35行ないし44行【0018】)との記載から,傾斜面となっている後方側の壁面は,開口部よりも下部が奥方に延びるように形成されることにより,開口部よりも奥方に向けて「内部空間」という一定の広がりをもった空間が形成されるようなものであること,この「内部空間」は,後方側に広がることにより,シンク内で大きな調理器具や食材を洗うなどの作業を行うことが容易になるとともに,当該作業を行う者が,開口部を通じて,その空間を容易に見ることができるようなものであり,傾斜面となっている後方側の壁面も,そのような内部空間を形成すべきものであることが理解できる。 ウさらに,前記( )のとおり,原告は,本件特許の出願当初の【特許請求 の範囲】において,【請求項1】を「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段- 22 -部のいずれも同一の調理プレート等のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなることを特徴とする流し台のシンク。」として,上側段部と下側段部に同一のプレートを載置するこ ようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなることを特徴とする流し台のシンク。」として,上側段部と下側段部に同一のプレートを載置することが可能となるように,上側段部同士と中側段部同士との幅がほぼ同一に形成された流し台のシンクとして特許請求の範囲に記載していたところ,特許庁審査官から,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶理由通知を受け,【請求項1】を,「前後の壁面の,上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されて,前記上側段部および前記中側段部のいずれにも同一のプレートを,掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されてなり,かつ,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっていることを特徴とする流し台のシンク。」と補正し,出願当初の【請求項1】の構成のうち,構成要件C1の構成を有するものに限定することにより,特許庁審査官の指摘した特許法29条2項の規定に該当するという拒絶理由を回避して,特許査定を受けたものであることが認められる。 エ以上のような本件明細書の記載,図面及び出願経過に照らせば,「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)という構成は,後方側の壁面の傾斜面が,中側段部によりその上部と下部とが分断されるように後方側の壁面の全面にわたるような,本件明細書に記載された実施形態のような形状のものに限られないと解されるものの,その傾斜面は,少なくとも,下方に向かうにつれて奥方に向かって延 とが分断されるように後方側の壁面の全面にわたるような,本件明細書に記載された実施形態のような形状のものに限られないと解されるものの,その傾斜面は,少なくとも,下方に向かうにつれて奥方に向かって延びることにより,シンク内に奥方に向けて一定の広がりを有する- 23 -「内部空間」を形成するような,ある程度の面積(奥行き方向の長さと左右方向の幅)と垂直方向に対する傾斜角度を有するものでなければならないと解するのが相当である。 したがって,構成要件C1の「下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面」とは,上側段部と中側段部との間において,下方に向かうにつれて奥方に延びることにより,奥方に向けて一定の広がりを有する「内部空間」を形成するような,ある程度の面積と傾斜角度を有する傾斜面を意味すると解するのが相当である。 オこれを被告製品についてみるに,証拠(甲11,12)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の後方側の壁面は,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易にほぼ同一にすることができる形状であるものの,原告自身も認めるとおり,上側段部と中側段部の間は,そのほとんどが垂直の壁面のままであって,上側段部の下面のみが傾斜面となっているものと認められる。したがって,被告製品の上側段部の下面の傾斜面は,段部(リブ)を形成するに当たり,段部(リブ)の下面が傾斜したものにすぎず,奥方に向けて一定の広がりを有する空間を形成するような,ある程度の面積と傾斜角度を有する傾斜面であるということはできない。 したがって,被告製品は,「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)という構成を充足すると認めることはできない。 カ原告は,上側段部同 側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」(構成要件C1)という構成を充足すると認めることはできない。 カ原告は,上側段部同士の水平方向の間隔と下側(中側)段部同士の水平方向の間隔が同一になっている限り,後方側壁面の形状は,特に限定されず,また,シンク内にて2枚の同一プレートを上側段部及び中側段部のいずれにも掛け渡すことが可能となるように,上側段部と中側段部との幅がほぼ同一であるような傾斜面が存在すればよいとして,同一のプレートを- 24 -掛け渡すように載置できるという目的,機能を持つものであれば,リブ(段部)の下面であっても,傾斜面が存在する限り,構成要件C1を充足すると主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,構成要件C1は,上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すようにして載置することができるようにするために,上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されるという出願当初の【請求項1】の構成について,特許庁審査官から特許法29条2項の規定に該当するとの拒絶理由通知を受けたことにより,これを回避するものとして,出願当初の【請求項1】の構成を限定するものとして加えられたものであるところ,構成要件C1の意義を解釈するに当たり,同一のプレートを掛け渡すように載置できるという目的を達成することができれば,リブ(段部)の下面であっても,傾斜面が存在すれば,構成要件C1を充足するという原告の前記主張は,同一のプレートを掛け渡すように載置できるという目的のみを殊更に強調し,補正により加えられた構成要件C1の構成には何ら技術的意義はないと主張するに等しく,前記のような出願の経過を無視するものであって,これを採用することができない 置できるという目的のみを殊更に強調し,補正により加えられた構成要件C1の構成には何ら技術的意義はないと主張するに等しく,前記のような出願の経過を無視するものであって,これを採用することができないことは明らかである。 ( )小括 以上によれば,被告製品は,本件発明の構成要件C1を充足せず,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められないから,争点( )(侵害論)に ついての原告の主張は,理由がない。 したがって,争点( )ア(被告製品の製造,販売による損害額(特許法1 02条1項))について判断するまでもなく,被告製品が本件特許権を侵害することを理由とする損害賠償請求は,理由がない。 争点( )イ(本件侵害品の製造,販売による損害額)について ( )特許法102条2項の適用があること - 25 -前記第2の1(争いのない事実)( )のとおり,原告は,システムキッチ ンの製造,販売等を目的とする株式会社であり,同( )イのとおり,本件侵 害品のシンクは,本件発明の構成要件をすべて充足し,本件特許権を侵害するものであるところ,証拠(甲3,4,13,18ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件発明の実施品を製造,販売しており,被告が本件侵害品のシンクの製造,販売をしなければ,原告が得られたであろう利益があると認められ,原告は,被告による本件侵害品の製造,販売により損害を被ったと認められるから,特許法102条2項により,被告の侵害行為により受けた利益の額を,原告の損害の額と推定することができる。 ( )特許法102条2項の適用による被告の利益の額(原告の損害額) ア証拠(甲31,乙16,17)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成18年4月ころ,本件侵害品を製造し,得意先に販売したこと,本件侵害品である 2項の適用による被告の利益の額(原告の損害額) ア証拠(甲31,乙16,17)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成18年4月ころ,本件侵害品を製造し,得意先に販売したこと,本件侵害品であるシステムキッチン(アイランドカウンター)の販売単価は58万3000円であり,本件侵害品全体の製造原価は46万7000円,そのシンク部分の製造原価は12万円であること,被告は,本件侵害品の販売により,製造原価の15パーセントの粗利を得たこと(本件侵害品全体につき7万0050円,シンクにつき1万8000円)が認められる。 そして,本件発明は,プレートを載置することができる,流し台のシンクに関するものであって(甲2,本件明細書の【発明の属する技術分野】),本件侵害品のうち,本件特許権の侵害となるのは,シンク部分のみであるから,被告が本件侵害品の製造,販売をして,本件特許権を侵害したことにより受けた利益の額は,本件侵害品の製造,販売により被告が得た利益のうちシンクに係る部分であると解すべきである。 また,被告は,前記粗利の額である1万8000円が,本件侵害品の製造,販売により被告が得た利益のうちシンクに係る部分であることを認めていることから,これが,特許法102条2項に規定する,被告が特許権- 26 -の侵害行為により受けた利益の額と認めるのが相当である。 したがって,特許法102条2項により,前記1万8000円が,本件侵害品の製造,販売により原告の被った損害の額であると推定される。 イ原告は,本件侵害品の売上げに対する本件発明の寄与率は100%と見るべきであり,原告の損害と推定される被告の得た利益の額も,本件侵害品全体を基に算出すべきと主張する。 しかしながら,証拠(甲31,乙16,17)によれば,本件侵害品は,ガス開口部などシンク以外の構成要素も あり,原告の損害と推定される被告の得た利益の額も,本件侵害品全体を基に算出すべきと主張する。 しかしながら,証拠(甲31,乙16,17)によれば,本件侵害品は,ガス開口部などシンク以外の構成要素も有するシステムキッチン(アイランドカウンター)であり,シンク以外の部分は,流し台のシンクに関する本件発明と無関係であると認められる。そして,本件侵害品の売上げに対する本件発明の寄与率が,100%であると認めるに足りる客観的証拠もない。 よって,原告の前記主張は,採用することができない。 ウまた,原告は,被告が本件特許権の侵害を認めていた,本件侵害品以外の2台の侵害品の販売価格に対する利益率(19%ないし25%)と比較すると,本件侵害品の販売価格に対する利益率(12%)は低く,本件侵害品の販売価格に対する利益率は,少なくとも19%ないし25%と推測されると主張する。 しかしながら,本件侵害品の利益(粗利)が製造単価の15%であるとの被告の主張及びこれに沿う内容の証拠(乙16,17)が直ちに不合理なものとはいい難く,また,弁論の全趣旨によれば,シンクを含むシステムキッチンの取引先(販売先)が末端の一般消費者であるか販売店等であるかといった取引の個別事情により,当該取引における利益率も変動し得るものであることが推認される。一方,本件侵害品の利益率が19%ないし25%であると認めるに足りる客観的証拠もない。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。 - 27 -エ以上によれば,原告は,被告の侵害行為(本件侵害品の製造,販売)により,1万8000円の損害を被ったと認めることができる。 ( )小括 以上によれば,本件侵害品が本件特許権を侵害することを理由とする損害賠償請求は,損害金1万8000円及びこれに対する不法行為の後の日であ 00円の損害を被ったと認めることができる。 ( )小括 以上によれば,本件侵害品が本件特許権を侵害することを理由とする損害賠償請求は,損害金1万8000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は,理由がない。 第5 結論 以上の次第で,原告の請求は,損害賠償金1万8000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年2月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官坂本三郎- 28 -裁判官岩崎慎- 29 -物件目録別紙図面(図1ないし図4)及び構成の説明に記載したシンクを有するシステムキッチン 図面の説明図1は,シンク部分を上から見た平面図である。 図2は,シンク部分のA-A’断面図である。 図3は,シンク部分のB-B’断面図である。 図4は,シンク部分のB-B’断面図の部分拡大図である。 なお,図中の数値は,各部の寸法(mm)を表し,概算である。 構成の説明( )図1ないし4に示すように,シンク内部の前後の壁面の上部に上側段部が, 深さ方向の中程に中側段部が形成されている。 ( )前記構成において,前記上側段部及び前記中側段部のいずれにも同一のプ レートを掛け渡すようにして載置できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されている。 また,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥 できるように,前記上側段部の前後の間隔と前記中側段部の前後の間隔とがほぼ同一に形成されている。 また,前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面を形成するシンク構造を有している。 (3)さらに,中側段部は,その中側段部に載置される前記プレートが左右にスライド可能となるよう,前記前後の壁面の左右方向のほぼ全域にわたって形成されている。 - 30 -
▼ クリックして全文を表示