主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して1250万円及びこれに対する平成13年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,詐欺罪の被告人として起訴され,上告審で無罪判決を言い渡された原告が,当該刑事事件について,①検察官の公訴提起が違法であった,②証人が偽証した,③警察官が証人に対して偽証を教唆した,また,・検察官が警察官に証人予定者に会うことを違法に許可したとして,被告国及び被告宮崎県には国家賠償法1条1項,同証人には民法709条に基づく各損害賠償責任があると主張し,さらに,これらの各行為が共同不法行為(民法719条)に該当すると主張して,被告らに対し,損害金(慰謝料及び弁護士費用)合計1250万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年7月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯しての支払を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに甲1号証の1ないし3,甲3号証,甲4号証の1,2,甲5号証,甲6号証及び弁論の全趣旨により認めることができる事実)(1) 本件交通事故及び本件証明書の行使原告は,平成5年5月10日当時,健康食品のマルチ販売を営むB株式会社の特約販売店として稼働していたが,同日,普通乗用自動車を運転中,普通乗用自動車(以下「加害車両」という。)に追突されるという交通事故(以下「本件交通事故」という。)に遭遇した。 原告は,加害車両の所有者がC農協との間で締結していた自動車共済契約に基づき,休業損害補償金の支払請求をした。その際,平成5年8月2日に保険代理業を営む知人のDに依頼して,原告が同年5月10日から同年7月30日までの71日間 農協との間で締結していた自動車共済契約に基づき,休業損害補償金の支払請求をした。その際,平成5年8月2日に保険代理業を営む知人のDに依頼して,原告が同年5月10日から同年7月30日までの71日間,B株式会社を欠勤した旨のB株式会社発行の休業損害証明書(以下「本件証明書」という。)を作成してもらい,B株式会社の元上司のEに本件証明書に押印してもらったうえ,同年8月2日から同年9月22日までの間に,C農協の係員(被告Aほか)に本件証明書を提出した。 しかし,現実には,原告は,平成5年5月22日にB株式会社の特約代理店を辞め,同年6月4日から有限会社F塗装店(以下「F塗装店」という。)に勤務しており,本件証明書の記載内容は事実に反していた。 県共済農協連合会は,本件証明書の記載内容が真実であることを前提として,平成5年5月10日から同年7月30日までの71日間の休業損害補償金77万7450円を,同年10月28日,原告に支払った。 (2) 本件公訴提起平成8年に至り,原告は前記休業損害補償金の受領について,内容虚偽の休業損害証明書を使用して前記休業損害補償金を騙し取った詐欺(以下「本件被疑事実」という。)の嫌疑を受け,同年11月20日逮捕された。 本件被疑事実にかかる被疑事件の送致を受けた宮崎地方検察庁においては,G検察官が同事件を担当し,平成8年11月29日本件被疑事実について,詐欺の罪名により原告を起訴した(以下「本件公訴提起」といい,同起訴にかかる被告事件を以下「本件刑事事件」,同被告事件の公訴事実を以下「本件公訴事実」とそれぞれいう。)。 原告は,逮捕された後起訴されるまでの間,一貫して本件被疑事実を認める供述をしていた。 (3) 本件警察官調書の作成宮崎県警察本部のH警察官は,前記捜査の過程で,C農協の共済課主任で 。)。 原告は,逮捕された後起訴されるまでの間,一貫して本件被疑事実を認める供述をしていた。 (3) 本件警察官調書の作成宮崎県警察本部のH警察官は,前記捜査の過程で,C農協の共済課主任であった被告Aから事情聴取を行い,平成8年11月12日付け供述調書(以下「本件警察官調書」という。)を作成した。 本件警察官調書には,①原告が,平成5年8月初旬ころ共済金支払請求手続のためC農協を訪れ被告Aと面会した際,原告が本件交通事故後転職したことを話したので,原告に対して両方の会社から休業損害証明書を作成してもらって提出するよう説明したと記憶している,②それから2,3週間して,原告が休業損害証明書2通を提出したが,そのうち1通をはねつけて原告に返した等の同被告の供述が記載されている。 (4) 本件刑事事件の経過ア原告は,本件刑事事件の公判において,欺罔の故意がないことはもとより,C農協での手続申請の際に自己の転職の事実を告げており,欺罔及び騙取行為がないことも明らかであるとして,無罪を主張した。 イ本件警察官調書は,一審裁判所の審理において,G検察官から証拠調べの請求がされたが,原告の弁護人が不同意の意見を述べたため,平成9年2月19日,第2回公判期日において,被告Aの証人尋問が実施された。 被告Aの証人尋問に先立ち,H警察官らは,G検察官の許可を得たうえで,平成9年1月16日,宮崎県警察L警察署において,被告Aに面接した。 被告Aは,証人尋問において,①原告から転職の事実を聞いていないと思う,②原告が持参した休業損害証明書は1通だけであり,原告が2通を持ってきて,そのうち1通をはねつけた記憶はない等の証言(以下「本件証言」という。)をした。 本件証言に対し,原告の弁護人からの請求により,本件警察官調書が,刑事訴訟法328条に あり,原告が2通を持ってきて,そのうち1通をはねつけた記憶はない等の証言(以下「本件証言」という。)をした。 本件証言に対し,原告の弁護人からの請求により,本件警察官調書が,刑事訴訟法328条に基づき,本件証言の証明力を減殺するための証拠として取り調べられた。 本件警察官調書は,控訴審裁判所の審理においては,実質的証拠として取り調べが行われた。 ウ宮崎地方裁判所(以下「一審裁判所」という。事件名平成8年・第223号)は,平成10年4月8日,原告に対し,詐欺の罪により,懲役1年6月,執行猶予3年とする判決を言い渡した(以下「一審判決」という。)。 原告からの控訴(平成10年・第33号詐欺被告事件)に対して,福岡高等裁判所宮崎支部(以下「控訴審裁判所」という。)は,平成11年11月4日,これを棄却した(以下「控訴審判決」という。)。 原告からの上告(平成11年・第1614号詐欺被告事件)に対して,最高裁判所は,平成13年1月25日,被告人(本件原告)に詐欺の故意があったと認めるには合理的な疑いが残るなどとして,一審判決及び控訴審判決を破棄し,原告を無罪とする判決を言い渡した(以下「上告審判決」という。)。 2 争点本件争点は以下のとおりである。 (1) 本件公訴提起に違法があったか。すなわち,G検察官において,本件警察官調書の記載内容から,原告の詐欺の故意または被告Aが誤信した事実の存在を疑い,有罪判決を期待し得る合理的な根拠がないと判断すべきではなかったか。 または,この記載内容に関して原告及び被告Aからさらに事情聴取を行うなどさらに捜査を尽くすべきであったか。 (2) 被告Aが本件証言において偽証したか。 (3) H警察官らが被告Aに対し偽証を教唆したか。 (4) G検察官が,H警察官らが被告Aに対する証人尋問前に に捜査を尽くすべきであったか。 (2) 被告Aが本件証言において偽証したか。 (3) H警察官らが被告Aに対し偽証を教唆したか。 (4) G検察官が,H警察官らが被告Aに対する証人尋問前に同被告に対して接触することを許可したことが違法か。 (5) 違法行為と損害との間の因果関係(6) 原告の損害額 3 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件公訴提起に違法があったか。)について〔原告の主張〕本件警察官調書の記載内容からすれば,原告に詐欺の故意があることまたは被告Aが誤信した事実が疑われ,有罪判決を期待し得る合理的な根拠がないと判断されるべきである。詐欺の故意の存在を認めた原告の自白調書が存在するが,これらの信用性に疑いがあることはその記載内容自体等から明らかである。 よって,G検察官において,本件警察官調書の記載内容から,有罪判決を期待し得る合理的な根拠がないと判断し本件公訴の提起をすべきでないとの判断を行うべきであり,少なくとも,本件警察官調書の記載内容に関して原告及び被告Aからさらに事情聴取を行うなどさらに捜査を尽くすべきであった。 ア本件警察官調書の記載内容について(ア) 本件警察官調書には,以下の内容の被告Aの供述が記載されている。 ① 原告が,被告Aに,転職したことを話したので,同被告が,原告に両方の会社から休業損害証明書を作成して貰って提出するよう説明したと記憶している。 ② 原告が,休業損害証明書2通を提出したのを覚えている。 ③ 被告Aが,提出された休業損害証明書を点検し,そのうち1通の本件証明書は受理したが,別の1通は,同被告がはねつけて原告に返したことを記憶している。 (イ) G検察官は,本件警察官調書の前記記載から,原告が,被告Aに対し,B株式会社を退職して転職したことを告げたこ 明書は受理したが,別の1通は,同被告がはねつけて原告に返したことを記憶している。 (イ) G検察官は,本件警察官調書の前記記載から,原告が,被告Aに対し,B株式会社を退職して転職したことを告げたこと,同人の説明に従い,転職前後の休業損害証明書2通を提出したことから,被告Aが転職した事実を秘しておらず,説明に従った行動をしていることから詐欺の故意がなかったと判断すべきであった。 また,被告Aが本件証明書のみを受け取って残る1通をはねつけたことから,同被告が本件証明書に真実と違う内容が記載されていることを認識しており,誤信したことはないと判断すべきであった。 少なくとも,G検察官は,本件警察官調書の記載内容から,被告Aに詐欺の故意があったことなどを疑い,以下の点などについて捜査を尽くすべきであった。 ① G検察官は,被告Aが原告から転職の事実を聞いていたにもかかわらず,なぜ本件証明書のみで手続を進めたのか,ひいては,本件証明書に真実と違う内容が記載されていることを認識していたのではないかと疑い,検察官として自ら被告Aへの事情聴取をすべきであった。 ② また,G検察官は,原告に対しても,原告が被告Aに転職の事実を話したのかどうか,話したとするとその趣旨,目的は何だったのか,被告Aから説明したとおり転職前後の両方の会社から証明書を作成してもらおうとしたか否かについて確認すべきであった。説明どおりに両方の会社から説明書をもらおうとしたのであれば,共済金を不正に請求する意思がなかったのではないかとの合理的な疑いを生じるからである。 ③ さらに,G検察官は,被告Aに対して,提出された2通の休業損害証明書の1通を返したことについて,その際,本件証明書の記載内容について原告に説明を求めたのか,求めなかったとすればなぜかを確認すべきであった。また,原告に対し 告Aに対して,提出された2通の休業損害証明書の1通を返したことについて,その際,本件証明書の記載内容について原告に説明を求めたのか,求めなかったとすればなぜかを確認すべきであった。また,原告に対しても提出した2通はいずれも受理されたのか,返されたとするとその際原告は異を唱えたのか,また,被告Aのこのような対応についてどのように思ったのかを確認すべきであった。原告が,以前に転職の事実を告げていたので,被告Aが本件証明書の内容が真実でないことを認識したうえで手続を進めているものと思い,必要な書類を提出すれば担当者が正当な補償金の額を算定してくれるものと思っていたとすれば,原告に不正請求の意思がなかったのではないかとの合理的な疑いが生じることになるからである。 イ原告の自白調書について原告の自白調書(以下「本件自白調書」という。)には,以下のとおり,矛盾,不自然,不合理な点が多数存在し,秘密の暴露もないことから,その存在によって,原告の嫌疑の存在を裏付けるには不十分であった。 (ア) 本件自白調書では,サラ金などから借金し,経済的に困窮していたことが詐欺の動機とされている。 しかし,仮に経済的困窮が詐欺の動機であったとするなら,共済金額を引き上げるために,不必要な入院をしたり,通院期間を引き延ばしたり,示談において慰謝料額の引き上げを保険会社に要求するなど金銭に執着する態度を示すはずであるが,原告は,完治していないのに,治療を打ち切り,示談においては,すべてDに一任し,慰謝料額の引き上げなどを要求しておらず,金銭に執着する態度を示していない。 また,原告と両親,弟らとは良好な関係にあり,住所地もさほど遠くはなかったことや,原告が,当時21歳であったことからすると,経済的に困窮した場合には,まず,両親や弟らに対し援助を求めることが自 。 また,原告と両親,弟らとは良好な関係にあり,住所地もさほど遠くはなかったことや,原告が,当時21歳であったことからすると,経済的に困窮した場合には,まず,両親や弟らに対し援助を求めることが自然であるのに,これをせずに詐欺を企てたというのは不自然である。 さらに,原告がB株式会社を退職した理由は,人を騙すような仕事が嫌になったためであり,このような理由で退職し,その後間もない人間が,詐欺を企てたというのは,不自然である。 (イ) 本件自白調書によれば,原告は,B株式会社の元上司のEに本件証明書に押印してもらった後,保険代理店のDを騙して,同証明書に虚偽の事項を記入させ,さらに,C農協の担当者に対し,真実の記載があるものと装って同証明書を提出し,同担当者の上司に共済金の支払の決済をさせたというものである。このような行為をする者の人間像は,保険のプロや世知にたけた元上司らを相手を騙し通すだけの狡猾な,世知にたけた人物で,保険に関する知識も相当豊富な者である。しかし,原告は,本件交通事故が初めてであったので,父に対し,保険の手続について相談したほどであり,当時21歳で,金銭に執着していたということもなく,このような人間像とはかけ離れている。 (ウ) 本件自白調書によれば,原告は,保険代理店のDを騙して休業損害証明書に虚偽の事項を記入させたことになる。 しかし,原告が詐欺を企てたなら,保険のプロであるDに虚偽の事項を記入させるなどという,犯行発覚の危険が大きく,迂遠である方法を取る必要はなく,自ら,必要事項を記入すれば足りたのであるから,本件自白調書における犯行態様は不自然である。 (エ) 本件自白調書において,一貫している部分は,休業損害証明書が本件休業損害証明書だけであり,同証明書には,実際の就業期間よりも長期の欠勤期間が記載され, 調書における犯行態様は不自然である。 (エ) 本件自白調書において,一貫している部分は,休業損害証明書が本件休業損害証明書だけであり,同証明書には,実際の就業期間よりも長期の欠勤期間が記載され,これに基づき,原告が余分の休業損害補償金を受け取ったことであるが,これらは,捜査機関が原告を取り調べる前に把握していたものであり,秘密の暴露はない。 (オ) 原告の平成8年11月26日付け警察官調書には,原告が自ら示談書に署名押印した旨の供述が記載され,その際の状況や原告の心理につき具体的な記載がされていたのに,翌日に作成された警察官調書では,原告が自ら示談書に署名押印したのではなく,Dに依頼したなどと全面的に改められてしまっている。これは,平成8年11月26日付け警察官調書において,原告が自ら体験しない事実を供述したことになるが,警察官の誘導なしにこのような供述がされることはあり得ない。 したがって,本件自白調書は,警察官の誘導に基づき作成されたことが明らかである。 〔被告国の主張〕ア本件公訴の提起は合理的であり,何ら違法と評価されるものではない。 (ア) 原告は,逮捕前,本件証明書にB株式会社の特約代理店を辞めた後の期間についても休業期間として記載されていることについて,休業期間を治療期間と間違えていたと弁解したほかは,本件公訴の提起まで,一貫して,詐欺の故意を含む本件公訴事実を認めており,少しでも多くの共済金をもらいたいと思い,保険代理店のDをして,休業損害証明書用紙に虚偽の休業期間を記載させたうえ,これが虚偽であることを秘して被告Aに提出し,共済金を騙し取ったという内容の事実申立書も任意に作成した。 原告が本件証明書にB株式会社の特約代理店を辞めた後も勤務しているかのような休業期間が記載されていることを認識していたことは,B株式会 ,共済金を騙し取ったという内容の事実申立書も任意に作成した。 原告が本件証明書にB株式会社の特約代理店を辞めた後も勤務しているかのような休業期間が記載されていることを認識していたことは,B株式会社の上位の販売店を営んでいたEやF塗装店の代表取締役Iの供述,Dの「原告は,病院への通院期間ではなく,間違いなくB株式会社の仕事ができないんで休んでいた期間として私に説明しておりました。」という供述から明らかである。 そして,被告Aにおいて,本件証明書を真実の記載がされているものとして取り扱ったことからすると,原告が被告Aに対して,本件証明書に虚偽の休業期間が記載がされていることを認識させるような言動を取っていなかったと推認される。 (イ) 一審裁判所及び控訴審裁判所は,本件刑事事件において,原告に有罪の判決を言い渡した。上告審である最高裁判所は,詐欺の故意が認められないとして,原告を無罪とする判決を言い渡したが,詐欺の外形的事実があることは認めている。 (ウ) よって,本件警察官調書の記載内容から,原告に詐欺の故意があったことなどを疑うべきであったということはできない。 イさらなる捜査の必要性について(ア) 一般に,検察官が事件関係者を自ら取り調べるか否かは,その裁量に委ねられているから,取り調べをしなかったことを直ちに違法ということはできない。 さらに,原告は,本件公訴の提起前,休業損害証明書を2通提出したと供述したことはなく,本件証明書の他に休業損害証明書を提出したことを窺わせる資料もなかったことや,詐欺の外形的事実が認められている状況下で,原告が,本件公訴提起まで一貫して詐欺の故意を認めていたことから,G検察官が本件警察官調書の記載に特に疑問を抱く理由はなかった。したがって,さらなる捜査の必要性があったとはいえない。 (イ) なお,原 が,本件公訴提起まで一貫して詐欺の故意を認めていたことから,G検察官が本件警察官調書の記載に特に疑問を抱く理由はなかった。したがって,さらなる捜査の必要性があったとはいえない。 (イ) なお,原告の検察官に対する供述調書にC農協に手続に行った際に受けた説明などの記述があることや,原告自身,質問されたことを認めていることから,G検察官が本件証明書提出時の状況等を聴取したことは明らかである。 (2) 争点(2)(被告Aが本件証言において偽証したか。)について〔原告の主張〕ア被告Aは,本件警察官調書においては,後記(ア)のとおり真実を述べていたにもかかわらず,本件証言においては,供述を変遷させ,後記(イ)のとおり偽証した。 (ア) 本件警察官調書の記載① 被告Aは,原告と最初にあった機会に休業損害証明書の用紙を2通位渡した。 ② 原告が,転職したことを話したので,前記①の行動を取った。 ③ 原告は,2~3週間後,休業損害証明書を2通提出した。 ④ そのうち,本件証明書とは別の休業損害証明書は,同被告が頭からはねつけて原告に返した。別の休業損害証明書には,事故後のことが記入されていた。 (イ) 本件証言における偽証部分① 原告に渡した休業損害証明書の用紙は1通である。 ② 原告から転職の事実を聞いた記憶はない。 ③ 原告から提出を受けた休業損害証明書は1通だけである。 ④ 原告が2通持ってきた休業損害証明書の1通をはねつけた記憶もない。 イ前記偽証部分は,前記本件警察官調書の記載内容と全く異なるうえ,被告Aは,本件証言において,供述が変遷した理由について,本件警察官調書作成時には安易に考えていたなどと供述しているが,安易に考えていて細部にわたる具体的な供述をするはずはなく,その説明は不合理である。 また,被告Aは,本件証言において,原告に対 いて,本件警察官調書作成時には安易に考えていたなどと供述しているが,安易に考えていて細部にわたる具体的な供述をするはずはなく,その説明は不合理である。 また,被告Aは,本件証言において,原告に対し休業損害証明書の用紙を1通だけ渡し,同人から1通だけ受け取ったと供述し,転職の事実を聞いたことがないと供述する根拠として,休業損害証明書のコピーが1通しか残っていないことを理由としているが,はねつけて返したため最終的に受け取らなかった休業損害証明書のコピーを取ることはあり得ず,論理的に明白に無意味な弁解である。そして,これを指摘されながら証言を維持し続けた。 さらに,被告Aは,本訴の本人尋問における供述中で,本件証言で本件警察官調書の内容と異なる供述をした理由として,本件証言時点ではほとんど記憶を失っていて漠然とした印象しか残っていなかったとする趣旨の供述をしているが,そうであれば本件証言中でもそのように供述すべきであるのに,前記内容を明言している。よって,同被告が,本件証言を本件警察官調書の内容を覆し否定しようとの明確な目的意識を持って故意に記憶に反する証言をした事実が外形上明らかである。 原告による共済金請求は鉛筆書きのものを含む2通の休業損害証明書が提出され,そのうち1通をはねつけるという個性的な事案であり,被告Aは明確な記憶を保持していた。したがって,本件警察官調書にあるような具体的な供述を警察官に対して提供できたのである。 被告Aは,本件警察調書中,休業証明書を2通提出することを求めたとする記述に関する質問をどこで受けたかについて,本件証言においては電話で質問を受けたと明言しているのに,本訴の本人尋問ではそのように断言できる根拠がないことを認めている。これは,同被告が本件証言において弁護人からの追及をかわそうとして偽証したも 件証言においては電話で質問を受けたと明言しているのに,本訴の本人尋問ではそのように断言できる根拠がないことを認めている。これは,同被告が本件証言において弁護人からの追及をかわそうとして偽証したものであることが明白であり,本訴の本人尋問の際にも偽証が認められる。このような偽証の存在は本件証言における前記の供述部分も偽証であることを裏付ける。 被告Aには,仮に同記載部分のとおりの事実を認めると,背任罪に問われる危険があり,これを避けるため,原告を冤罪に陥れてでもかかる危険を避けるという偽証の強い動機があった。 さらに,本訴における本人尋問において,本件警察官調書作成時の対応について真剣に対応したかわからないと供述したり,真剣にやっていなかったと供述していることから被告Aの不誠実さが明らかである。 これらの事情からすれば,被告Aが偽証したことは明らかである。 〔被告Aの主張〕本件警察官調書は,被告Aが,警察官から,一般的な事故の処理について尋ねられ,一般的な処理について回答した供述が本件における処理として記載された結果,被告Aの記憶する事実と異なる記載となったものである。 被告Aは,証人尋問前に,本件警察官調書を読んで,記憶に反することが多々あったので,尋問においては,自己の記憶どおりに証言した。 〔被告県の主張〕ア本件警察官調書には後記ウのとおり信用性がなく,後記エのとおり被告Aが原告から転職したことを聞いたという事実はない。本件警察官調書に信用性があるとする控訴審判決の認定は誤っている。 イまた,被告Aは,本件証人尋問前,本件警察官調書を読み,これに疑念を抱き,じっくり考えて呼び起こした記憶に基づき証言したのであり,偽証の事実はない。 なお,被告Aは,提出された休業損害証明書の通数につき,本件警察官調書では2通とされてい 調書を読み,これに疑念を抱き,じっくり考えて呼び起こした記憶に基づき証言したのであり,偽証の事実はない。 なお,被告Aは,提出された休業損害証明書の通数につき,本件警察官調書では2通とされているのに,1通と記憶していると証言したことの理由につき,コピーが1通しかないと証言し,控訴審判決において,同証言が信用性がないと評価されているが,これは,検察官が無理に理由を尋ねたため,被告Aが返答に窮して理由をこじつけて供述したことによるものである。 ウ本件警察官調書の信用性について本件警察官調書は,以下のとおり,その内容及び作成の経緯からすれば,信用性がないと評価されるべきである。 (ア) 本件警察官調書の記載には,その内容自体矛盾していたり,不自然な箇所が多くみられる。 すなわち,①一方で,被告Aが,原告が転職した事実を原告から聞いたとの記載がありながら,他方で,同事実を警察官から聞いたとする記載もある。②被告Aは,いつかは覚えていないが,転職したことを聞いた旨記載されているが,被告Aが1回目以前に原告と応対したことはなく,1回目であれば,このときと特定できるはずである。③被告Aが,原告から転職したことを告げられたため,原告に対し,転職後の休業損害補償金も支払うことができるので両方の会社から作成してもらってくるようにと言って,休業損害証明書用紙を2通位渡したと記載されている一方で,原告から提出された2通の休業損害証明書のうち1通を事故後の分はみれないと言って,突き返したと記載され,これにつき原告が異議を唱えたという記載はない。④被告Aが休業損害証明書を突き返した理由につき,一方で,B株式会社分と転職先分の収入と併せた分で休業補償費を支払って貰いために2通提出したと思ったと記載されているが,他方で,突き返した別の休業損害証明書にはB 損害証明書を突き返した理由につき,一方で,B株式会社分と転職先分の収入と併せた分で休業補償費を支払って貰いために2通提出したと思ったと記載されているが,他方で,突き返した別の休業損害証明書にはB株式会社発行の休業損害証明書の休業期間と重複していたと記載されており,被告Aが休業損害証明書を突き返した理由が不明である。 (イ) また,本件警察官調書が作成された経緯は,以下のとおりであり,内容が不正確な調書が作成されるべき経緯があった。 捜査機関は,平成8年7月ころ,内偵捜査を開始し,その後間もなく,①F塗装店が遅くとも平成5年3,4月ころまでには原告を自然退職取り扱いにしたこと,②原告が同年5月22日B株式会社の特約代理店を辞めたこと,③原告が同年6月4日付けでF塗装店に再雇用されたことを知った。この結果,捜査機関は,原告が転職したことを前提に捜査を進めた。 H警察官は,被告Aから,C農協において,4,5回,事情聴取をしたが,勤務時間中であったため,被告Aが電話や来客に応対したため,落ち着いて事情を聴取することはできなかった。 H警察官は,被告Aから,電話でも事情を聴取し,転職した場合の休業損害補償金の請求手続を尋ねた。被告Aは,H警察官の質問を,2か所について休業損害がある場合の手続,または転職した場合の一般的な手続についての質問と理解し,「実際に損害があった場合には,2か所分の休業損害証明書を提出して貰えれば損害として認める」と回答した。 被告Aは,原告についての記憶も全くない状態で,H警察官から質問を受けて,わずかに記憶を喚起できる状態であった。 H警察官は,当初,被告Aの供述調書を作成する意図はなく,事情聴取をしていたが,しばらくして,同人が原告と応対していたことが判明し,調書を作成する必要性を感ずるようになった。 H警 態であった。 H警察官は,当初,被告Aの供述調書を作成する意図はなく,事情聴取をしていたが,しばらくして,同人が原告と応対していたことが判明し,調書を作成する必要性を感ずるようになった。 H警察官は,宮崎南警察署で,以上のような経過で入手した知識をまとめた後,平成8年11月12日,C農協において,本件警察官調書を作成した。被告Aは,本件警察官調書作成当時,勤務時間中で共済金手続処理で忙しく,じっくり確認する時間的,精神的余裕はなかったし,裁判になるというようなことは念頭になく,安易に対応した。 このような経緯からすれば,本件警察官調書の作成者であるH警察官及び供述者の被告Aが,原告がF塗装店に籍があると思っていたことに気づかなかったことと,原告が企てた二重請求の手続が転職した場合の請求手続と外形的に一致したことが原因で,原告が転職したことを前提とする本件警察官調書が作成されてしまったと考えられる。 エ被告Aが原告から転職したことを聞いたという事実はない控訴審判決は,原告が,被告Aに対し,転職したことを告げたと認定しているが,前記のとおり本件警察官調書に信用性がないことに加えて,以下の事情から,その認定は誤りである。 被告Aは,原告ではなく警察官から転職のことを聞いたと繰り返し供述している。 原告は,休業損害補償金等の共済金請求手続について,Dから会社に作成してもらった休業損害証明書が必要という説明を受けたとか,また,Jから説明を受けたとか,被告Aから説明を受けたとか,曖昧な供述をしている。 もし,原告が被告Aから,転職があった場合の手続の説明を受けたのであれば,同時に,転職の事実を証明するため,転職後の会社の職業証明書,事故後の明細書などを持参するよう説明を受け,この説明に従った行動を取るはずである。ところが,原告の供述 の手続の説明を受けたのであれば,同時に,転職の事実を証明するため,転職後の会社の職業証明書,事故後の明細書などを持参するよう説明を受け,この説明に従った行動を取るはずである。ところが,原告の供述によれば,原告は,被告Aに対し,F塗装店の平成4年10月ないし12月あたりの3通の給料明細書と自ら鉛筆で記載した休業損害証明書と本件証明書の5通だけを提出したのであって,被告Aの説明に従っていない。 また,原告の供述によれば,原告は,本件証明書とは別の休業損害証明書の「欠勤前3ヶ月間に支給した月例給与」欄には,平成4年10月ないし12月分のF塗装店の給与額を記載したというのであるから,同証明書に添付した給料明細表の休職期間も交通事故日から通院中止日までと記載したはずである。 Iの供述調書には,F塗装店は,遅くとも平成5年3,4月ころ,原告を自然退職処分にしたとあるが,自然退職処分というのは,解雇等の明確な意思表示をせず,退職したものとして取り扱ったということであり,原告は,退職取り扱いとされていることを知らず,F塗装店に籍があるものと思っていた。したがって,原告には,転職したという認識がなかった。 F塗装店が,原告からの休業損害証明書の作成依頼を拒否したのは,原告が,退職取り扱いとなっていた期間を休業期間に含めた休業損害証明書の作成を依頼したため,これを不正なものとして拒否したのであり,原告が,被告Aの説明どおり,同年6月4日以後の職業証明書または給与明細書の作成を依頼していれば,これを拒否したとは考えられない。 以上によると,原告が,被告Aに対し,転職したことを告げたことはなく,本件証明書と鉛筆書きの休業損害証明書を提出して二重に休業損害補償金の請求をしようとしたというのが真相であり,被告Aは,鉛筆書きの休業損害証明書を突き返した際に, ,転職したことを告げたことはなく,本件証明書と鉛筆書きの休業損害証明書を提出して二重に休業損害補償金の請求をしようとしたというのが真相であり,被告Aは,鉛筆書きの休業損害証明書を突き返した際に,事故後の分はみられないと言ったのではなく,印鑑のないものはみれないと言ったと考えられる。 (3) 争点(3)(H警察官らが被告Aに対し偽証を教唆したか。)について〔原告の主張〕ア H警察官らによる被告Aに対する偽証の教唆G検察官は,一審裁判所の第1回公判期日において,被告Aの証人尋問を請求し,採用された。 捜査機関は,このとき,被告Aが本件警察官調書と同様の供述をすれば,原告が無罪となる蓋然性があると危惧し,同警察官調書の作成者であるH警察官らにおいて,被告Aに対し,原告から転職したことを聞いたことはなく,また,休業損害証明書は1通しか受け取らなかった等の証言をさせる必要があると考え,G検察官から被告Aとの事前面接をすることの許可を得て,平成9年1月16日,同人をL警察署に呼び出し,転職の事実を聞いたことがなく,休業損害証明書も1通しか受け取らなかったなどという具体的な事実関係を教示し,これに従った供述をするよう求めた。被告Aは,これに応じて偽証をした。 イ前記偽証教唆の事実は,以下の各事実から明らかである。 (ア) H警察官は,一審裁判所の審理において,被告AをL警察署に呼び出した理由として,本当の記憶を呼び戻してもらうと思ったと供述する。同供述は,本件警察官調書の記載が同人の記憶に反するものであることを認識していたことを意味するものであるが,同警察官が本件警察官調書記載の供述内容が真実だと考えて同調書を作成したことと矛盾するものである。これは,H警察官が,呼び出しの時点では,偽証教唆の必要に迫られていたために,本件警察官調書が被 るが,同警察官が本件警察官調書記載の供述内容が真実だと考えて同調書を作成したことと矛盾するものである。これは,H警察官が,呼び出しの時点では,偽証教唆の必要に迫られていたために,本件警察官調書が被告Aの記憶ではあるはずがないという思いを抱いていたことを意味する。 (イ) H警察官は,一審裁判所の審理において,被告Aが本件警察官調書の内容を全然覚えていない感じだったとしながら,直後に,同被告が本件警察官調書を見て初めて,自分の供述内容と違うと言い出したと供述し,また,同被告が,思い出したと言う話のときには,確信を持って話をしていたなどと供述するなど,供述内容が支離滅裂である。 (ウ) H警察官は,一審裁判所の審理において,被告Aを呼び出し,本件警察官調書を見せたことについて,反省の弁を述べている。これは偽証教唆の事実の存在を前提として認めていることになる。 (エ) 被告Aは,本訴の本人尋問において,本件警察官調書を,警察官から手渡されたのではなく,一応こうなっていますよと指し示されたと供述しているが,これは,本当の記憶を呼び戻してもらおうとする配慮を窺わせる態度ではない。 〔被告県の主張〕ア前記のとおり,被告Aの本件証言には偽証はない。 イ H警察官らが被告Aに面接した経緯についてH警察官らが,平成9年1月16日,被告Aに面接した目的は,本件警察官調書を閲覧させて,同調書を作成した当時の記憶を甦らせて,同調書の記載どおりの証言をしてもらおうとしたことにある。H警察官らは,本件警察官調書が本件公訴事実の立証に必要不可欠なものと認識していた。 ところが,被告Aは,本件警察官調書を読んで,同調書の記載に記憶と異なるところがあると言い出したため,H警察官は,驚いたものの,自己の記憶に従って証言するよう言って,面接を打ち切った。 したがって, ころが,被告Aは,本件警察官調書を読んで,同調書の記載に記憶と異なるところがあると言い出したため,H警察官は,驚いたものの,自己の記憶に従って証言するよう言って,面接を打ち切った。 したがって,H警察官らが被告Aに対し虚偽の事実の証言を教唆した事実はない。 (4) 争点(4)(G検察官が,警察官が証人尋問前に被告Aに対して接触することを許可したことが違法か。)について〔原告の主張〕ア G検察官は,H警察官らが,被告Aの証人尋問が決定された後,同人に対し接触することを許可した。 警察官が,証人尋問の実施が決定された後,その証人に接触することは,そのこと自体,証人の証言内容に重大な影響を及ぼす可能性が高く,裁判を誤らせるおそれが強いから,許されるべきではない。公訴の追行を検察官に一任する刑事訴訟法247条の趣旨も,このような警察官の行き過ぎた行為を許さないことを意味する。 したがって,G検察官が前記許可をしたことは違法である。 イ刑事訴訟法193条3項は,検察官が,捜査段階で,司法警察員を指揮して捜査の補助をさせることができることを規定しているのであって,公訴提起後については範囲外である。 また,いわゆる証人テストの規定である刑事訴訟規則191条の3は,文理上,証人テストをする主体を証人尋問を請求した検察官又は弁護人に限っており,警察官を挙げていない。このように警察官を挙げていないのは,証人テストは尋問を行う検察官自ら行うことに意味があるとともに,警察官にこれをさせれば証言内容を歪めてしまうおそれがあることに基づくものである。したがって,被告国の前記主張は理由がない。 〔被告国の主張〕ア刑事訴訟法247条は,公訴の提起及び追行を検察官に属することを定めた規定であるが,起訴後における任意の補充捜査を制限するものではなく,検察官 ,被告国の前記主張は理由がない。 〔被告国の主張〕ア刑事訴訟法247条は,公訴の提起及び追行を検察官に属することを定めた規定であるが,起訴後における任意の補充捜査を制限するものではなく,検察官が,司法警察員をして,参考人の取り調べ等を行わせることを禁止するものではない。 イ検察官が,司法警察員に指示して,証人尋問予定者の証人テストを行うことは,刑事訴訟法197条1項及び193条3項,刑事訴訟規則191条の3に基づくものであり,適法である。 (5) 争点(5)(違法行為と損害との間の因果関係)について〔被告県の主張〕一審裁判所は,本件警察官調書を事実認定の証拠として採用しなかったのは,原告の弁護人が不同意の意見を述べたからであり,被告Aの本件証言の結果ではないから,同人の証言によって原告を有罪とする一審判決が言い渡されたということはできない。また,控訴審判決は本件証言を排斥のうえ,有罪の結論を示したもので,本件証言は原告を有罪と認定したことについてさして重要な意味を持たない。 よって,本件証言と原告の損害との間に相当因果関係はないから,仮に本件証言について警察官の教唆があったとしても,同教唆と原告の損害との間にも相当因果関係はない。 〔被告Aの主張〕原告が本件刑事事件で最高裁判所までの刑事手続を余儀なくされたことの原因は,すべて原告の行為にある。 本件証明書の休業期間は明らかに虚偽の内容であり,この内容で休業損害証明書を作成するようDに依頼したのは原告自身である。そして,本件証明書の提出によって,不当な利益を得たのも原告自身である。 原告が被告Aに転職の事実を告げたことが無罪の根拠となると考えたのであれば,検察官による本件警察官調書の証拠調べ請求に同意すべきだったのに,原告はこれを不同意とした。また,原告の行為は本件 ある。 原告が被告Aに転職の事実を告げたことが無罪の根拠となると考えたのであれば,検察官による本件警察官調書の証拠調べ請求に同意すべきだったのに,原告はこれを不同意とした。また,原告の行為は本件警察官調書の内容を前提としても有罪とされ得た(控訴審判決)。 すべては原告自身の行為に起因しているのであり,それにもかかわらず,原告が迷惑をかけた関係者らに損害賠償請求をするのは不当である。 〔原告の主張〕被告らの主張を争う。 (6) 争点(6)(原告の損害額)について〔原告の主張〕原告は,前記各違法行為により,以下の合計1250万円の損害を被った。 ア慰謝料 1000万円原告は,本件各違法行為により,上告審で無罪判決を得るまでに,公訴提起から約4年間もの長期化,困難化した刑事手続を強いられ,一審及び控訴審においては有罪判決さえ受けた。この間,原告は,刑事被告人としての地位に置かれ,これにより社会的信用や名誉は著しく傷つけられ,就業の機会を失い,裁判の準備等のため多大な費用,時間と労力を負担させられ,公判においては,検察官による容赦のない反対尋問にさらされるなど,筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被った。そして,このような苦痛は親族や婚約者にまで及んだ。このような精神的苦痛は,到底,金銭で賄えるものではないが,あえて慰謝料として金銭に評価すると,1000万円を下るものではない。 イ弁護士費用合計250万円(ア) 本件刑事事件のための弁護士費用 150万円(イ) 本件訴訟のための弁護士費用 100万円〔被告らの主張〕原告の主張を争う。 第3 争点に対する判断 1 本件経緯について前記前提事実に,甲1号証の1ないし3,甲3号証,甲4号証の1,2,甲5号証,甲6号証,甲8号証,甲9号証,被告A本人尋問の結果及びその他以下 争う。 第3 争点に対する判断 1 本件経緯について前記前提事実に,甲1号証の1ないし3,甲3号証,甲4号証の1,2,甲5号証,甲6号証,甲8号証,甲9号証,被告A本人尋問の結果及びその他以下の各項目に掲記する証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば,本件刑事事件に関する原告に対する捜査,本件公訴提起及び公判の経緯等について,以下の各事実を認定することができる。 (1) 原告に対する捜査宮崎南警察署は,平成8年4月18日,自動車保険料率算定会宮崎調査事務所所長から,原告が,平成5年5月10日,同年10月19日,平成6年8月20日及び平成7年6月16日にそれぞれ交通事故に遭い,その都度,被害車両の運転者または同乗者として,保険金の請求をしているとの情報提供を受けたことから,保険金詐欺の疑いがあるとして,捜査を開始した。 その捜査過程において,原告が本件交通事故の共済金を請求するために,事実に反する内容が記載された本件証明書を提出していることが判明し,原告は,本件被疑事実について嫌疑を受けることとなった。 原告は,平成8年11月19日,警察官による取り調べに対し,当初,本件被疑事実を認めたが,その後,本件証明書の休業期間を治療期間と誤解して自分で記載したと弁解して嫌疑を否認する態度を示した。 原告は,平成8年11月20日,同警察署の警察官による取調べに対し,受け取る休業損害補償額を水増しするために,本件証明書に虚偽の休業期間を記入させたと供述した。同日,原告は,本件被疑事実により逮捕された。 原告は,逮捕後,起訴されるまでの間,捜査官からの取調べに対し,一貫して本件被疑事実を認める供述をしていた(供述内容は後記のとおり。)。 (2) 本件警察官調書の作成本件被疑事実に対する捜査の過程で,H警察官により被告Aに対する事情聴取が行 取調べに対し,一貫して本件被疑事実を認める供述をしていた(供述内容は後記のとおり。)。 (2) 本件警察官調書の作成本件被疑事実に対する捜査の過程で,H警察官により被告Aに対する事情聴取が行われ,平成8年11月12日付け本件警察官調書が作成された。その作成経緯及び内容は以下のとおりである。 ア作成の経緯H警察官は,平成8年7月ころ,被告Aに対する事情聴取を始めたが,当初は,被告Aが原告と応対したことを知らなかったため,一般的な共済金請求手続についてだけを聴取していた。 その後,H警察官は,平成8年9月ないし10月ころ,被告Aに対し,原告が本件交通事故後に転職していた事実を告げたうえ,転職した場合の一般的な休業損害補償金の請求手続を聴取した。そして,このころ,H警察官は,被告Aが本件証明書の受け取りに際し,原告と応対していたことを知り,同人の供述調書を作成する必要があると考え,被告Aに対し,電話や面接で事情聴取を行った。面接での事情聴取は,H警察官が被告Aの勤務するC農協に赴く形で行われ,合計4,5回,1回あたり20分ないし1時間程度だったが,面接の時間帯が被告Aの勤務時間中で,被告Aが電話応対や窓口での客への応対で忙しくしていたこともあり,面接が中断することもあった。H警察官は,このような事情聴取を経たうえで,その結果をまとめて,本件警察官調書の原案を作成した。 H警察官は,平成8年11月12日,被告Aの勤務時間中,C農協の応接コーナーにおいて,被告Aに対し,本件警察官調書の原案について閲読させる方法ではなく,読み聞かせる方法でその内容を確認させた。 被告Aは,休業損害金の本来の担当が共済課長補佐のJであったため,同被告に対する事情聴取の結果が裁判の証拠として使われることまでは念頭に置かないまま,H警察官の事情聴取に でその内容を確認させた。 被告Aは,休業損害金の本来の担当が共済課長補佐のJであったため,同被告に対する事情聴取の結果が裁判の証拠として使われることまでは念頭に置かないまま,H警察官の事情聴取に応じていた。 イ調書の内容(甲5号証,「私」とは被告Aを意味する。)原告は,若い女性と一緒にC農協に来て,最初に販売報酬支払明細書,販売実績証明書を提出した。この書類は提出日に,私が受け取っていると記憶している。原告が最初に販売報酬支払明細書当の提出をされたのは平成5年8月に入ってからだったと思う。 しかし,私は,この書類では,月例給与額が明確でないこと,欠勤期間が不明であることから,原告に,「この書類では,月例給与額や欠勤期間がわからず,休業補償費の計算ができないので休業損害証明書を作成して貰って提出してください。」というようなことを言って,C農協で使用している休業損害証明書の用紙を2枚位渡した。 その際に,原告が,交通事故にあった後,いつかは覚えていないが,転職したことを私に話したので,私は原告に両方の会社から休業損害証明書を作成して貰って提出するよう説明したと記憶している。 両方の会社から休業損害証明書を作成して貰って提出するようお願いしたのは,交通事故の怪我や治療等のため仕事ができなかった場合は,転職先で休業損害証明書を作成してもらえば,職が変わっても休業補償費を支払うことができるからである。 それから2,3週間して,C農協に原告が若い女性と来て,休業損害証明書を2通提出したのは覚えている。 休業損害証明書の提出日は,はっきり覚えていないが,B株式会社発行の休業損害証明書が平成5年8月2日付となっているので,その日付以降であることは間違いないと思う。 そのとき,提出された休業損害証明書を点検したが,今回受理をしたB株式会社 いないが,B株式会社発行の休業損害証明書が平成5年8月2日付となっているので,その日付以降であることは間違いないと思う。 そのとき,提出された休業損害証明書を点検したが,今回受理をしたB株式会社発行の1通は内容が記入されていたが,別の分は,私が頭からはねつけて原告に返したことを記憶している。その時に,私が,原告に「交通事故後の分はみれんよ。」というようなことを言ったが,それは,交通事故後の職場の給料もB株式会社同様に高額であり,その分と事故前の収入と併せた分で,休業補償費を支払ってもらいたいために原告が休業損害証明書を2通提出したと思ったので,休業補償費は事故前の職場の3ヶ月分だけの給料を基礎に算定をするので,事故後の新しい職場の給料分までは支払うことができないという意味で言った。 別の休業損害証明書については,会社名とか内容は覚えていないが,「頭からはねつけた」と記憶していることから,B株式会社発行の休業損害証明書で今回の事故の共済金請求に必要な部分は網羅されており,別の休業損害証明書には,事故後のことが記入されていたと記憶している。 つまり,本人に返した別の休業損害証明書には,B株式会社発行の休業損害証明書の休業期間と重複したり,今回支払われる共済金額の計算に必要な記載部分はないと,私が判断し,原告に返したものと記憶している。 B株式会社の休業損害証明書には,前記の者(原告)は,交通事故により平成5年5月10日から7月30日まで71日間欠勤した,その期間の給与は支給しないと記入されていた。 警察の方の話では,平成5年5月22日に原告がB株式会社を辞め,同年6月4日にF塗装店に就職しているとのことであるが,これが事実ならB株式会社発行の休業損害証明書は,欠勤期間が虚偽の証明書ということになり,県共済連とC農協は騙されたことに がB株式会社を辞め,同年6月4日にF塗装店に就職しているとのことであるが,これが事実ならB株式会社発行の休業損害証明書は,欠勤期間が虚偽の証明書ということになり,県共済連とC農協は騙されたことになる。 もし,この休業損害証明書の内容が虚偽であったり偽造文書であることが最初からわかっておれば,私はこの書類を受理することはないし,C農協や県共済連は共済金の支払も行っていない。 (3) 本件公訴提起の基礎となった証拠資料本件公訴の提起までに収集された証拠資料のうち原告が被告Aに転職について説明した事実の存否等,原告の欺罔の意思の存否または被告Aが誤信した事実の存否に関係し得るものの概要及びその内容の要旨は以下のとおりである(甲5号証,甲7号証,甲10号証ないし甲18号証,乙1号証ないし乙3号証,乙5号証ないし乙7号証)。 ア Dの検察官調書(乙1号証)Dは,平成8年11月26日,検察官からの事情聴取において,概ね次のように供述した。(「私」とはDを意味する。)休業損害証明書は,私が原告のために必要事項を代書してやったものに間違いない。 問原告は,この5月10日から7月30日までの71日間という期間を,原告が怪我の治療のため病院に通院した期間であると誤解していたような節はなかったか。 答原告は,病院への通院期間ではなく,間違いなくB株式会社の仕事ができないで休んでいた期間として私に説明していた。 と言えるのも,5月10日から7月30日まで,全ての日を欠勤したとなれば,合計日数は71日を上回ることになる。71日間となっているのは,その間の日曜日に当たる日を差し引いた日数なのである。 私がこの日曜日を差し引いた日数を書き込むと,原告は,不満そうに「全部の日を書いて欲しい。日曜日も働くのに 。71日間となっているのは,その間の日曜日に当たる日を差し引いた日数なのである。 私がこの日曜日を差し引いた日数を書き込むと,原告は,不満そうに「全部の日を書いて欲しい。日曜日も働くのに。」というようなことを言った。それで私は,原告に「無理を言ったらいかんよ。日曜日くらい休むじゃろ。常識的な判断をしなければいけないよ。」などと叱った。 このやり取りからも分かるように,原告はB株式会社の仕事をできずに欠勤していた日が合計71日間であるということは分かっていたはずである。 平成5年5月22日をもってB株式会社の仕事を辞めているのであれば,休業損害証明書に書くべき欠勤期間というのは,5月22日までということになる。原告は,私が事情を知らないことをいいことに,嘘の記載をさせたことになる。 イ Iの検察官調書(乙3号証)Iは,平成8年11月25日,検察官からの事情聴取において,概ね次のように供述した。(「私」とはIを意味する。)最初に原告が相談に来たのは平成5年5月19日のことであった。 B株式会社というマルチ商法を辞めたいということで,B株式会社の代理店のEという男との間で起きている問題について解決策の相談を受けた。そのときの内容が私のメモに書かれている。 メモによれば,5月の22日に,私が原告のためにEと話し合っていること,話し合いの結果,この日をもって原告がB株式会社を辞めることができたということが分かる。 そして,再び平成5年6月4日から,F塗装店で雇い入れた。 ウ被告Aの平成8年11月12日付け警察官調書(本件警察官調書)内容は,前記1(2)イのとおりである。 エ原告の供述調書(ア) 平成8年11月19日付け警察官調書(甲10号証)原告は,平成8年11月1 成8年11月12日付け警察官調書(本件警察官調書)内容は,前記1(2)イのとおりである。 エ原告の供述調書(ア) 平成8年11月19日付け警察官調書(甲10号証)原告は,平成8年11月19日,警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私」とは原告を意味する。)私は,事故後2週間前後位経って,B株式会社を辞めているので,休業損害証明書の欠勤期間が平成5年7月30日まで欠勤となっているのは,明らかに間違っている。 この欠勤期間を私が書き込んだ時の事を思い出すよう努力したが,私の記憶としては,事故日から,病院での治療最終日を書けばいいと思って書き込んだのではないかと思う。 本日の取調べで私は,最初のうち「お金に困っていて少しでも多く,保険金が出るように嘘の欠勤期間を書いた。」と述べていたが,よく考えてみたところ,事故の日から,治療最終日を書けばいいと勝手に思い込んで,このように書き込んだような気がする。 (イ) 平成8年11月20日付け警察官調書(甲11号証)原告は,平成8年11月20日,警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私」とは原告を意味する。)昨日の取調べでは,最初嘘の期間を書いたと,一部本当のことを言っていたが,取調べを受けている途中で逃げの心になって,どうにか罪をのがれられないだろうかという気持ちになり,勘違いで書き込んだとの言い訳に変えた。 しかし,今日の取調べで警察の人からいろいろ説明を受け本当の事を言おうと考え直し,逃げの心を止めることにした。 少しでも日数を増やせば,お金がもらえるし,当時,借金も多くあったので嘘の期間をDさんに言った。 (ウ) 弁解録取書(乙6号証)原告は,平成8年11月21日の検察官に対す ことにした。 少しでも日数を増やせば,お金がもらえるし,当時,借金も多くあったので嘘の期間をDさんに言った。 (ウ) 弁解録取書(乙6号証)原告は,平成8年11月21日の検察官に対する弁解録取時に,被疑事実に間違いがない,休業損害証明書に書く欠勤期間を実際の日数よりも長く書いて保険金をたくさんもらおうと思ったと供述した。 (エ) 平成8年11月22日付け警察官調書(甲12号証)原告は,平成8年11月22日の警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のような供述をした。(「私」とは原告を意味する。)最初に警察で取調べを受けた11月19日は,休業損害証明書の休業期間がB株式会社を辞めているのに,長く休んだようになっているとの指摘を受けた。そこで,言い逃れる方法として考え出したのが,休業期間を通院期間と勘違いして書いたことにしようという嘘だった。 取調べを受けている最中に悩んだ末に思い切ってその嘘を言おうと決心し,「通院期間と勘違いして書いた。保険金を騙し取る気持ちなど全くなかった。」と,嘘を言った。 私は,翌日つまり11月20日の取調べでもその嘘を言い続けた。休業損害証明書の記載者についても,本当は,Dが全部書いてくれたことを知っていながら,「休業期間の欄は,私が,給料欄の数字を真似して書いた。」と嘘を言った。 警察の人から,Dが覚えている内容と,私の説明する内容が違うとか,真似をした数字にしては,あまりにも,似ているなど,次々と矛盾点を質問され,「これ以上嘘を言っても駄目だ」と思うようになり,その日の昼過ぎの取調べで本当の事を話し始めた。 (オ) 平成8年11月25日付け警察官調書(甲16号証)原告は,平成8年11月25日,警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私 日の昼過ぎの取調べで本当の事を話し始めた。 (オ) 平成8年11月25日付け警察官調書(甲16号証)原告は,平成8年11月25日,警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私」とは原告を意味する。)はっきりと覚えていない部分があるが,当時のC農協で私の交通事故を担当したのは,Jという名前の人と,もう一人の男の人だった。 C農協に行った時に休業損害証明書を出すように言われて,休業損害証明書の用紙を2枚か3枚もらっています。 それはたぶん「治療が終わったら出して下さい」と言われたような気がするので,用紙をもらったのは,私がまだM外科に通院中の時であったと思う。 この時に農協の人から休業損害証明書は事故前3か月間の収入と,事故後に仕事を休んだ期間を勤め先から書いてもらうようにとの説明を受けている。 そして同時に,事故の怪我によって仕事を休めば,仕事を休んだ期間にもらえなかった給料などの収入については保険金が出るという説明も受け,私自身理解している。 問題は休業した期間であり,交通事故から約10日後にB株式会社の特約代理店の仕事を既に辞めているため,どんなにすれば保険金が多くもらえるかを考えるようになった。 そのように考え始めたのは,M外科での通院中のことであり,どちらかと言えば,通院が終わる前,つまり7月下旬頃だったと思う。 その頃は,F塗装店に時々仕事に行っていたが,お金にも非常に困っていたので,少しでも多くの保険金をもらう為には,収入の多かったB株式会社を辞めていることを隠し,B株式会社を通院期間中にずっと休んだようにすればいいという事を考えついた。 考えついたのは7月下旬頃でしたが,いよいよそれを本当に実行に移そうと考えたのは 会社を辞めていることを隠し,B株式会社を通院期間中にずっと休んだようにすればいいという事を考えついた。 考えついたのは7月下旬頃でしたが,いよいよそれを本当に実行に移そうと考えたのは,M外科での治療が打切りになり,通院をやめてからだった。 私がDにC農協でもらってきた休業損害証明書の用紙2枚位と,事故前3か月分のB株式会社明細書3枚を見せたところ,意外とスムーズに休業損害証明書の内容を書き込んでくれることになった。 DからB株式会社を休んだ期間を質問された時,本当は平成5年5月22日に辞めていたのに,保険金を多くもらおうと思っていた為,その前に考えていた「B株式会社を辞めていることを隠し,B株式会社を通院期間中にずっと休んだようにすること」を,Dさんに気付かれないように「事故にあった平成5年5月10日から,7月30日まで休みました。」と本当にB株式会社の仕事をずっと休んでいたように言った。 次に,B株式会社代理店のEから休業損害証明書の作成者の所に印鑑などを押してもらわねば,正式な書類として出来上がらないので,E宅へ行き頼むことにした。 私が平成5年5月22日の話し合いでB株式会社の仕事を辞めたことを誰よりも知っているのが,E自身であることから,B株式会社での休業期間が平成5年7月30日までとなっている休業損害証明書に印鑑を押してくれるかどうかは,Eが気付いて駄目になるかもしれないという気持ちもあった。結果として,Eは,休業期間の部分を見ずに気付かなかったものと思う。 休業期間を長くすることによって,保険金を多くもらおうと思っていた私は,Eさんがその事に気付かなかったことにうまくいったと思った。 (カ) 平成8年11月26日付け警察官調書(甲17号証)原告は,平成8 間を長くすることによって,保険金を多くもらおうと思っていた私は,Eさんがその事に気付かなかったことにうまくいったと思った。 (カ) 平成8年11月26日付け警察官調書(甲17号証)原告は,平成8年11月26日,警察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私」とは原告を意味する。)嘘の内容の休業損害証明書が出来上がり,その休業損害証明書をC農協に提出したのは,たぶんEから印鑑を押してもらうなどしてから何日か後であったと思う。 C農協へは一人で行ったような記憶がある。 私としては,こんな嘘の書類を出してもいいのかなと,罪の意識を持ちながら,当時お金に非常に困っていたので,少しでも保険金が欲しいと思い,私が持ってきた嘘の内容の休業損害証明書と明細書つまり販売報酬支払明細書と販売実績証明書を係の人に提出した。 私が提出した相手は,私達の交通事故を担当していたJという人か,もう一人の男の人のどちらかだった。受け取った書類をその人が確認し,私に対して休業損害証明書の内容が正しいものであるかなどの質問はなかった。 嘘の休業期間になっている休業損害証明書をC農協に提出した私は,それをC農協の人がスムーズに受け取ってくれた為,こんな嘘の書類を出してしまったが,「そんな悪いことをしてもいいのかな。」という気持ちだった。 (キ) 平成8年11月28日付け検察官調書(甲7号証)原告は,平成8年11月28日,検察官に対する取調べにおいて,概ね以下のように供述した。(「私」とは原告を意味する。)C農協に手続に行ったところ,休業損害保証金については,休業損害証明書の用紙を渡され,必要事項を会社に書いてもらって提出するように説明を受けた。 そして,提出する際には,事故 C農協に手続に行ったところ,休業損害保証金については,休業損害証明書の用紙を渡され,必要事項を会社に書いてもらって提出するように説明を受けた。 そして,提出する際には,事故前3ヶ月間の収入を証明する書類を会社から貰って,一緒に提出するようにと説明を受けた。 それ以外にもいろんな説明を受けたり,必要な書類を貰ったかもしれないが,よく覚えていない。 休業損害証明書の欠勤期間欄に書くべき期間を,実際の期間よりも多く書き,現金を騙し取った。 この証明書の欠勤期間を見れば,私は福岡での交通事故の結果平成5年5月10日から7月30日までの合計71日間B株式会社特約販売店の仕事を休んだということになっているが,実際には,同特約店の仕事は平成5年5月22日をもって辞めていた。そして,6月4日からは,以前務めていたF塗装店にもう一度雇ってもらい働いていた。 B株式会社の仕事を休んだのは5月22日までで,それ以降はより多くの保険金を貰うために水増しして書いたということになる。 この証明書は,嘘の内容を書いたもので,本当の証明にはなっておらず,いわば保険金を騙し取るための道具に過ぎない。この騙す道具である休業損害証明書を農協に提出して係の人を上手く騙せて,保険金を受け取ることになれば詐欺になることは分かっていた。 私は,事故後B株式会社の仕事を辞めF塗装店に務めたので,F塗装店に入社後の欠勤期間を証明してもらおうと社長にお願いした。しかし,社長は,交通事故自体は入社前のことだから,F塗装店とは関係ないと言って,証明書を書かないと言った。 それで,残るはB株式会社における休業補償ということになり,できるだけ多くの金が欲しい私は実際の仕事を休んだ日よりも長く書 から,F塗装店とは関係ないと言って,証明書を書かないと言った。 それで,残るはB株式会社における休業補償ということになり,できるだけ多くの金が欲しい私は実際の仕事を休んだ日よりも長く書いて,たくさん金を貰ってやろうという悪い気を起こしてしまった。 私は,この休業損害証明書とその他必要書類を持ってC農協に保険金を請求しに行った。 休業損害証明書をC農協の係の人に提出するときも嘘がばれないかどうか不安で仕方なかった。しかし,証明するEの署名がある以上,農協の人が嘘であることを容易に見破ることはできないだろうと思い,かえってビクビクする方がおかしいので,堂々と提出した。 案の定,係の人は私の提出した損害証明書がデタラメなものであることに気付かずに,すんなりと手続が終わったように思う。 (4) 本件公訴提起(甲3号証)G検察官は,平成8年11月29日,本件被疑事実について,詐欺の罪名により原告を起訴した。本件公訴事実の要旨は以下のとおりである。 被告人(本件原告)は,本件交通事故により負傷したことを奇貨として,加害車両の所有者がC農協との間で締結していた自動車共済を利用して,休業損害補償金名下に共済金を騙取しようと企て,真実はB株式会社特約販売店の仕事を平成5年5月22日をもって辞め,同年6月4日からF塗装店で稼働しているにもかかわらず,それを秘して,継続してB株式会社特約販売店として稼働しており前記負傷のために休業中であるかの如く装い,同年8月2日から同年9月22日までの間に,C農協において,自己が同年5月10日から同年7月30日まで,B株式会社特約販売店の営業を休業した旨記載した内容虚偽の休業損害証明書を提出して休業損害補償金の支払を請求し,同農協共済課主任被告A及び同共済課長補佐Jをして,その旨誤信させて,休業 0日まで,B株式会社特約販売店の営業を休業した旨記載した内容虚偽の休業損害証明書を提出して休業損害補償金の支払を請求し,同農協共済課主任被告A及び同共済課長補佐Jをして,その旨誤信させて,休業損害補償金の支払手続をとらせ,共済金支払の決定権者である県共済農協連合会自動車部長Kをして,前記休業損害証明書の記載が真実であり,同連合会が被告人に対し,同年5月10日から同年7月30日までの71日間の休業損害補償金支払の義務を負うものと誤信させて共済金支払の決定をさせ,よって,同年10月28日,同連合会から休業損害補償金名下に77万7450円の送金を受けてこれを騙取した。 (5) 公判の経緯本件刑事事件の公判においては,被告人である原告が,原告には欺罔の故意がなく,原告が本件交通事故後,B株式会社特約代理店を辞めて転職した事実をC農協職員の被告Aに告げており,欺罔及び騙取行為もないから無罪であると主張し,原告が被告Aに転職の事実を告げたかどうか,そして,詐欺の故意があったかどうかが争点となった。 そして,証拠上は,被告Aの供述について,本件警察官調書と本件証言のいずれに信用性があるか,原告の供述について,欺罔の故意などを自白した捜査段階での供述調書と,これを否定し,本件証明書を提出する際に,そこに記載されている欠勤期間にF塗装店の分も含まれていることを説明したとする公判での供述のいずれに信用性があるかが,主要な争点となった。 ア本件証言(甲6号証)被告Aは,一審裁判所の第2回公判において,証人として以下の内容の証言(本件証言)をした。 原告に会ったのは2回である。 1回目に会ったときは女性と一緒であった。 1回目に会ったとき,休業損害証明書の用紙を渡した。渡した枚数は,はっきりした記憶はないが,女性も一緒に来たという気がした 原告に会ったのは2回である。 1回目に会ったときは女性と一緒であった。 1回目に会ったとき,休業損害証明書の用紙を渡した。渡した枚数は,はっきりした記憶はないが,女性も一緒に来たという気がしたので2枚ほど渡したのかなと思っていた。しかし,今考えると1枚しか預かっていないので1枚だったような気がする。書類を預かった場合には,県の共済連に支払請求をするために必ずコピーするが,関係書類を見てみるとコピーは1枚しか残っていないので,多分1枚しか渡していないと思う。 1回目に会ったときに,原告から,交通事故の後,B株式会社を辞めたとか,転職をしたということを聞いたことは記憶にない。この点について,本件警察官調書の内容と今の記憶が違う理由は,本件警察官調書においては,警察が調べに来たときに,そういう形で説明に来られて調査をしていたので,そうなのかなという感じで答えていると思う。現在の記憶では聞いていないと思う。現在の記憶が確かだという根拠は,休業損害証明書の控えが1枚しかないということで,もし転職していることを聞いていれば,対応の際に別の会社のものでも必ずコピーしておくので,それがないということなので,転職していることを聞いていなかったのだと思う。 原告に対して,2つの会社から休業損害証明書を作成してもらってくるよう説明した記憶はない。転職のことを聞いていないのであれば,休業損害証明書は1枚で済むので,説明していないと思う。この点について,本件警察官調書の内容と今の記憶が違う理由は,本件警察官調書においては,警察官から,もし転職があって2か所で休業損害が出る場合にはどうするのかと問われたときに,実際に損害があった場合には2か所分の休業損害証明書を提出してもらえば損害として認めるという話をしていたのでその部分が記載されたのだろうと思う。 損害が出る場合にはどうするのかと問われたときに,実際に損害があった場合には2か所分の休業損害証明書を提出してもらえば損害として認めるという話をしていたのでその部分が記載されたのだろうと思う。 2回目に会ったとき,原告は休業損害証明書を持ってきた。枚数は,コピーしてあるのが1枚なので,1枚だったと思う。その1枚は本件証明書である。 2回目に会ったときに原告から,B株式会社を辞めたとか,転職したということを聞いていない。その根拠はコピーが1枚しかないということである。転職の話を聞いていれば,前の会社を辞めた日付で休業損害証明書を作成してもらい,後の会社の方の証明書も持ってくるように言ったと思う。 原告がB株式会社を辞めた後,別の会社に勤めていることは警察から聞いた。 イ原告の公判における供述(甲19号証ないし甲26号証)原告は,本件公判において,以下のとおり供述した。 農協には2回ほど行った。 最初に行ったときに,事故当時はB株式会社に勤めていたが,今はF塗装店に勤めているというふうに説明した。これに対して,農協の職員からは,転職しているのであれば,両方の会社の休業損害証明書をもらってくるように言われた。そして,2通の休業損害証明書の用紙をもらった。 1通は本件証明書で,Dに書いてもらった。もう1通のF塗装店分は,社長から,同社と関係ない事故だからとの理由で判子をもらえなかった。そのことについてはDに説明した。 F塗装店分の休業損害証明書用紙に,休業期間部分を自分で記入した。 農協の人にわかってもらうために,自分で説明しようと思って書いた。これを本件証明書と共に農協に提出した。提出するに際して,F塗装店の方では印鑑がもらえなかったことと,本件証明書の方に通院期間は総て書かれていること,それと,F塗装店の分も本件証明書に入ってい た。これを本件証明書と共に農協に提出した。提出するに際して,F塗装店の方では印鑑がもらえなかったことと,本件証明書の方に通院期間は総て書かれていること,それと,F塗装店の分も本件証明書に入っているということを説明した記憶がある。 F塗装店の方が給料が少なかったので,自分としてはB株式会社の金額でもらったら多いというような感覚があったので,ちゃんと説明した。 提出した2通のうちF塗装店分を,印鑑がないとやっぱり認められないということで返された。本件証明書だけでいいというようなことを言われた。 以上の経緯は保釈後に自分の彼女と話をしてみたり,弁護人から本件警察官調書を見せてもらったりして思い出したもので,警察や検察庁での取り調べ時点では思い出せなかった。 ウ一審判決(甲1号証の1)一審裁判所は,平成10年4月8日,①被告Aの供述について,本件警察官調書は本件証言の信用性を争うための刑事訴訟法328条に基づく証拠として採用のうえ,同調書上,同被告が1回目に2つの会社から休業損害をもらって提出するように頼んだ理由や2回目に2通の休業損害証明書が提出されて1通をはねつけたとする理由について具体的に述べられていて,これに反する公判での同証言の信用性に問題があるとの弁護人の主張に対し,被告Aが偽証をしてまで原告を罪に陥れるだけの理由が認められないこと,本件警察官調書作成のための被告Aからの事情聴取の経緯からすれば被告Aの記憶に反する不正確な内容の調書が作成されことが充分考えられるとの理由で本件証言の信用性を認め,②原告の供述については,捜査段階での自白を記載した供述調書の信用性を認め,転職した事実を農協担当者に伝えたとする公判における供述の信用性を否定し,③原告が被告Aに転職の事実を告げた事実はなかったと認定して,本件公訴事実について での自白を記載した供述調書の信用性を認め,転職した事実を農協担当者に伝えたとする公判における供述の信用性を否定し,③原告が被告Aに転職の事実を告げた事実はなかったと認定して,本件公訴事実について原告を有罪と認定し,原告に対し,懲役1年6月,執行猶予3年とする判決を言い渡した。 エ控訴審判決(甲1号証の2)控訴審裁判所は,平成11年11月4日,①本件証言について,本件警察官調書の内容と異なる供述をする理由として,本件証明書のコピーしか控えとして残っていないことを原告が本件証明書と別の休業証明書を提出していないことや転職の事実を聞いていないことの根拠にしていることが不合理であり,真実に反する内容の本件警察官調書が作成された理由として警察官から転職の事実を聞かされていたので,原告から転職の事実を聞かされたものと思って供述したなどとする点が奇異であるなどとして信用性を否定し,本件警察官調書に信用性を認め,これに沿う部分の原告の公判供述等を総合し,②事実認定において,原告が共済金の請求手続のため最初にC農協に赴いた際,応対した被告Aに事故後転職していることを告げた事実,その際,被告Aから休業損害証明書用紙を2枚位渡され,両方の会社から休業損害証明書を作成してもらい提出するよう説明を受けた事実,原告がF塗装店から休業損害証明書の作成を拒否されたため,F塗装店の関係では自ら休業損害証明書用紙に,欠勤の期間欄にB株式会社を辞めた日の翌日である平成5年5月23日または現実にF塗装店で稼働を始めた日である同年6月4日から同年7月30日まで欠勤したことを鉛筆で記載した書面を作成した事実,原告がその後,C農協に赴き,応対した被告Aに対して,本件証明書等と共にこの書面及び以前F塗装店で就業していた時期の給与明細書などの書類を提出した事実,その際,被告 筆で記載した書面を作成した事実,原告がその後,C農協に赴き,応対した被告Aに対して,本件証明書等と共にこの書面及び以前F塗装店で就業していた時期の給与明細書などの書類を提出した事実,その際,被告Aが,交通事故後の分はみられないと言って原告が作成したF塗装店にかかる書面の受理を拒否した事実を認定しつつ,さらに,原告が本件証明書等を提出する際,本件証明書に記載された欠勤期間が虚偽であることを被告Aに積極的に告知しなかった事実を認定のうえ,③本件証明書等を提出した際に,原告が同被告に対して,そこに記載されている欠勤期間にF塗装店の分も含まれていることを説明したとする原告の公判供述及び原告の友人の控訴審における証言の信用性を否定し,④以上の認定事実からすれば,原告の捜査段階の自白調書を考慮しなくても,原告が被告Aに内容虚偽の本件証明書を提出して休業損害補償金の支払請求をした際,同証明書の内容が虚偽であることを充分告知せずに請求しており,これが欺罔行為にあたると認められるとして,原告からの控訴を棄却した。 オ上告審判決(甲1号証の3)最高裁判所第1小法廷は,平成13年1月25日,①控訴審判決の認定事実のうち前記エ②の事実は証拠上明らかであるとし,本件証明書の提出行為を取り出してみれば,外形的には詐欺の欺罔行為と目される点があったことは否定し難いところであるとしつつ,②a共済金の不正請求をするのであれば本件証明書とB株式会社の収入を証する書面だけを提出すればよいのに,同時にF塗装店関係の書面を提出しているのは不正請求を行うにしては不可解である,b原告がF塗装店分の休業収入損害を二重に請求しようとしていた疑いについては,F塗装店分の休業損害証明書が鉛筆書きで代表者印もないものであるから,原告がこれにより休業損害補償金を二重に払ってもらえる 原告がF塗装店分の休業収入損害を二重に請求しようとしていた疑いについては,F塗装店分の休業損害証明書が鉛筆書きで代表者印もないものであるから,原告がこれにより休業損害補償金を二重に払ってもらえると期待していたとは考え難い,c被告Aから2通の書面の関係について問いただされれば,本件証明書の休業期間の記載に虚偽があることを告げざるを得ず,原告自身もそのような意思であったと考える余地が多分にある,dそうすると,原告は被告Aの指示に従い,F塗装店分の休業損害証明書の提出も必要と考えこれに代わるものとして鉛筆書きの書面を提出したに過ぎず,補償金の額については担当者の判断に委ねる意思であったと認めるのが合理的である,e被告Aが,F塗装店分の書面を突き返す一方で本件証明書の内容を問いただすことはなかったが,原告としては,以前被告Aに転職の事実を告げていたので,共済金支払手続の担当者である同被告が本件証明書の内容が事実でないことを認識したうえで手続を進めているものと思い,これにあえて異を唱えなかったと見る余地が多分にある,以上,本件共済金支払請求の際の被告人の行動及び被告Aの対応を総合的に考慮すると,原告に積極的に共済金を不正に受給しようというまでの意思があったとは認め難く,詐欺の故意があったと認めるには合理的な疑いが残るとして,刑事訴訟法411条3号により一審判決及び控訴審判決を破棄し,原告を無罪とする判決を言い渡した。 2 争点(1)(本件公訴提起に違法があったか。)について(1) 公訴提起時の検察官の心証は,その性質上,判決時における裁判官の心証と異なり,同時点における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りると解されるから(最2小判昭和53年10月20日民集32巻7号1367頁),刑事事件において 異なり,同時点における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りると解されるから(最2小判昭和53年10月20日民集32巻7号1367頁),刑事事件において無罪の判決が確定したというだけでは,直ちに検察官の公訴提起が違法になるということはない。公訴の提起時において,検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば,同公訴の提起は違法性を欠くものと解するのが相当である(最1小判平成元年6月29日民集43巻6号664頁)。 (2) これを前記前提事実及び本件において認定した事実関係を前提に検討するに,確かに,本件警察官調書には,被告Aが,当初原告から転職の事実を話され,休業損害証明書用紙を2通位交付したとする点及び2通の休業損害証明書が提出され,その1通の受理を拒否したとする点において他の供述証拠に記載のない事実が含まれていたこと,及び,被告Aが原告から転職した旨聞かされ,同被告において,転職前と転職後の両方の会社から休業損害証明書を作成してもらうよう原告に説明したとしながら,原告が提出した2通の休業損害証明書のうち1通を頭からはねつけた理由について,一方で,原告がB株式会社の休業損害と事故後の職場の休業損害を併せて請求していると思ったとし,他方で,別の休業損害証明書には,B株式会社発行の休業損害証明書の休業期間と重複したり,今回支払われる共済金額の計算に必要な記載部分はない旨判断したとしている点等の整合していない内容を含んでいることからすれば,検察官において,これらの点の疑義を事前に解消することがより望ましかったことは,その後の本件刑事事件の経過を見ても明らかである。 しかし,原告が平成5年5月22日 い内容を含んでいることからすれば,検察官において,これらの点の疑義を事前に解消することがより望ましかったことは,その後の本件刑事事件の経過を見ても明らかである。 しかし,原告が平成5年5月22日にB株式会社の特約代理店を辞めていたにもかかわらず,同年5月10日から同年7月30日までの71日間,B株式会社を休業したとの本件証明書をC農協に提出し,これに基づき,休業損害補償金の支払を受けたとの外形的には詐欺の欺罔行為と目される客観的事実が存在していたこと,本件に関して格別の利害関係を有しているとは認められないDが,本件証明書の作成経緯につき,検察官に対し,原告が,B株式会社の特約代理店を既に辞めていたことを秘して,同年5月10日から同年7月30日までの間,同特約代理店の仕事を休業したとDに説明したことから,この説明に従って本件証明書を作成した旨供述していたこと,原告においても,本件被疑事実につき,逮捕される前日である同年11月19日の警察官に対する任意の取調べにおいて,欠勤期間を通院期間と勘違いした旨弁解したものの,その翌日である同月20日に自白して以降,逮捕された同日から本件公訴事実で起訴された同月29日までの10日間,一貫して欺罔の意思を有していたことを自白していたうえ,その自白の内容も自らDに虚偽の欠勤期間を告げて本件証明書の記載をさせ,虚偽の内容であることを認識してこれをC農協の担当者に提出したという内容のものであって本件公訴提起時点において存在していた関係者の供述等の証拠との関係でも整合しており,強要や誘導等により虚偽の自白が引き出されていることを強く疑うべき供述内容の矛盾ないし変遷は認められない(原告の指摘する事実のみでは原告の自白が強要や誘導等により引き出された虚偽の自白と疑うべきであったとまでは言えない。)こと,原告 れていることを強く疑うべき供述内容の矛盾ないし変遷は認められない(原告の指摘する事実のみでは原告の自白が強要や誘導等により引き出された虚偽の自白と疑うべきであったとまでは言えない。)こと,原告が本件証明書をC農協に提出した際,被告A等のC農協の担当者に本件証明書の内容が虚偽である旨告げたことや原告が本件証明書のほかに作成者の押印がない一見して特殊な休業損害証明書を作成していた事実を窺わせる事実が原告の供述や本件公訴提起時点において存在していた関係者の供述等の証拠に一切含まれていないものであったこと,さらに,本件警察官調書についても,その内容を全体的に把握すると,被告Aにおいて,本件証明書に真実の記載がされているものと誤信していたと読み取れるもので,欺罔行為の存在を疑うに足りる内容のものではないことなどの本件公訴提起当時の証拠資料の状況からすれば,G検察官がAに対する事情聴取を実施することなく,原告に有罪と認めるに足りる嫌疑があると判断して,本件警察官調書の記載内容に関してさらなる捜査を行うことなく本件公訴提起をしたことは,その時点での判断としては合理的なものであったといえ,本件公訴提起に違法性はないものと解される。 なお,本件警察官調書の記載のとおり,原告が,当初にC農協に赴いた際に転職した事実を農協の担当者に述べたことがあったり,休業損害証明書を提出して共済金請求をする手続をする際に,複数の証明書を提出した事実があったとしても,これらの事実から論理的に当然に原告に本件被疑事実に関する欺罔の意思がなかったことにはならず,当時の原告の供述内容及び関係者の供述内容に照らせば,これらの事実が存在しても本件被疑事実の存在と整合性を欠くものではないから,当時の原告の供述内容及び関係者の供述内容を前提とする限り,原告に欺罔の意思があったこ 内容及び関係者の供述内容に照らせば,これらの事実が存在しても本件被疑事実の存在と整合性を欠くものではないから,当時の原告の供述内容及び関係者の供述内容を前提とする限り,原告に欺罔の意思があったことに合理的な疑いがあったとまではいえない。 (3) よって,本件公訴提起に違法があったと認めることはできず,本件公訴提起の違法を請求の原因とする原告の損害賠償請求は理由がない。 3 争点(2)及び(3)(被告Aが偽証したか及び警察官が同被告に対し偽証を教唆したか。)について(1) 原告が指摘するように,被告Aの本件証言における以下の供述の内容は,本件警察官調書の記載内容と明白に相違し,かつ,控訴審判決において信用性を否定され,上告審判決もこれを前提とした判示をしていることは,前記認定のとおりである。 原告に渡した休業損害証明書の用紙は1通である。 原告から転職の事実を聞いた記憶はない。 原告から提出を受けた休業損害証明書は1通だけである。 原告が2通持ってきた休業損害証明書の1通をはねつけた記憶もない。 (2) しかし,本件では前記各点について真実を確定するための客観的証拠がなく,被告Aに偽証があったかどうかは,原告の各供述と同被告の各供述に関する諸事情を検討してこれを判断するほかない。 ア被告Aの証言内容の不合理性及び供述態度の不誠実さ等について原告は,被告Aによる同被告の供述の変遷理由に対する説明内容が不合理であると主張する。 確かに,被告Aが本件証言中で供述している供述の変遷の理由には,控訴審判決においても指摘されているとおり不自然な点があり,本件証言は,原告を有罪とするための事実認定の根拠としては採用し難いものといえる。 しかし,前記認定の本件警察官調書作成の経緯及び同調書中の提出を受けた休業損害証明書の1通をはねつけた理由 があり,本件証言は,原告を有罪とするための事実認定の根拠としては採用し難いものといえる。 しかし,前記認定の本件警察官調書作成の経緯及び同調書中の提出を受けた休業損害証明書の1通をはねつけた理由の説明が一見整合しない内容のままで残されていることからすれば,本件警察官調書の作成に際して,事情聴取にあたった警察官においては,原告が事故後現実に転職していることを認識したうえで,当初転職があった場合の一般的な事務手続についても被告Aから聴取し,その後,同被告が本件に直接関わっていたことが判明した後も,これを踏まえ,現実に残されている休業損害証明書の控えが1通であることとの整合性を考えながら供述を誘導して調書を作成し,同被告においても,同被告が本件証言において供述しているとおり(甲6号証),当該事情聴取の結果が後日刑事訴訟手続において犯罪の成否を左右する重要な証拠とされることの予見を欠いたまま,残されていた関係書類の内容を十分に確認せずに細部の具体的な供述を含む不確実な内容の供述をし,調書の読み聞けの際にも内容の正確さに十分注意を払うことなく安易に署名押印した結果として,不正確な調書が作成された可能性も否定することはできない。 また,被告Aが,転職の話を聞いていないなどと供述する根拠として,休業損害証明書のコピーが1通しか残っていないとの事実を挙げた件については,同被告の職務において事故後に転職があって転職後の休業損害が問題となる場合は転職先の職場の休業損害証明書または職業証明書等の提出を求め,提出された書面が何ら関係のない書類であればはねつけることはあっても,このような場合でない限りその控えを残しておく取り扱いをしていること(甲6号証により認定)との関係で見れば,通常の事例であれば,転職の話があれば,転職先の書面の提出を求め,その控えを とはあっても,このような場合でない限りその控えを残しておく取り扱いをしていること(甲6号証により認定)との関係で見れば,通常の事例であれば,転職の話があれば,転職先の書面の提出を求め,その控えを残すことになるのであるから,これが残っていないことから転職の話がなかったことを推論することは格別不合理なことではない。そして,被告Aが転職先の書面を突き返したという事実を前提にして初めて不合理な理由づけとなるところ,本件証言に際して前記根拠を述べた時点では,突き返したとされる書面が就業先の押印もなく鉛筆で休業期間等が記入されていた不適格な書面であることはまだ明示されていない(甲5号証及び甲6号証により認定)ために,提出された書面を突き返したことについて明確な記憶がなかった同被告が,話題になっている転職先の休業損害証明書を就業先の押印等を備えた通常の書面と考えて推論して供述しているとも考えられるから,ことさらに偽証を隠蔽する趣旨の供述とまでは言えず,同被告の説明が一見不合理な根拠づけであるとしても,これを理由として本件証言の内容が虚偽であるとまで認定する根拠にはできない。 さらに,原告が指摘するとおり,被告Aの証言からすれば,同被告は本件警察官調書の作成に際しての対応に不誠実さがあったことになるが,そのことから本件証言に偽証があったことまでを推認することはできない。 その他,被告Aの本件証言中の発言内容及び本件における本人尋問における供述中に同被告が本件証言において偽証をしたと認めるに足りる根拠はない。原告の主張するその余の事情は,被告Aが本件証言において偽証したことを推認するには足りない。 イ偽証の動機について被告Aが偽証をしたとすればその動機が問題となるところ,原告は,同被告には,仮に本件警察官調書記載のとおりの事実を認めると,背 において偽証したことを推認するには足りない。 イ偽証の動機について被告Aが偽証をしたとすればその動機が問題となるところ,原告は,同被告には,仮に本件警察官調書記載のとおりの事実を認めると,背任罪に問われる危険があり,原告を冤罪に陥れてでもこれを避けるという偽証の強い動機があったと主張する。 しかし,被告Aが本件証明書の記載内容が虚偽であることを認識して不正な請求に荷担した事実があって初めて同被告の刑事責任が問題となり得るところ,本件警察官調書には同被告が本件証明書の記載内容が虚偽であることを認識していなかったことが記載されており,本件警察官調書に記載された事実を認めると刑事責任に問われる危険があるとする原告の主張は理由がない。 そして,被告Aに,ことさらに同被告の認識していた事実に反する証言をすべき動機があったことを認めるに足りる証拠はない。 ウその他,本件証言中の前記各供述について,被告Aが自己の記憶に反することを知りながらあえて虚偽の証言をしたとまで認めるに足りる証拠または事情は存在しない。 (3) よって,被告Aに偽証があったことを請求の原因とする原告の損害賠償請求は理由がなく,したがって,同被告に偽証があったことが前提となるH警察官らによる偽証の教唆があったことを請求の原因とする原告の損害賠償請求もその前提を欠き理由がない。 4 争点(4)(G検察官が,警察官が証人尋問前に被告Aに対して接触することを許可したことが違法か。)について原告は,G検察官が,H警察官らが証人尋問前に被告Aに対して接触することを許可したことが,刑事訴訟法247条の趣旨等に照らし,違法であると主張するが,警察官が証人尋問前に証人予定者に接触することについて,その当否は問題とされる余地があるとしても,刑事訴訟法上禁止されていると解すべき根拠 刑事訴訟法247条の趣旨等に照らし,違法であると主張するが,警察官が証人尋問前に証人予定者に接触することについて,その当否は問題とされる余地があるとしても,刑事訴訟法上禁止されていると解すべき根拠はないから,原告の前記主張は採用できない。 よって,前記許可が違法であることを請求の原因とする原告の損害賠償請求も理由がない。 第4 結論以上のとおりであって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 宮崎地方裁判所民事第2部裁判長裁判官中山顕裕裁判官細野敦裁判官矢作泰幸
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