令和2(受)1518 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月18日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成30(ネ)2650
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判決文本文2,262 文字)

- 1 - 令和2年(受)第1518号 損害賠償請求事件 令和4年1月18日 第三小法廷判決 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人古田茂,同坂田真吾,同志賀厚介の上告受理申立て理由第4について 1 本件は,被上告人Y1(以下「被上告人会社」という。)の株主であった上 告人が,被上告人会社の違法な新株発行等により自己の保有する株式の価値が低下 して損害を被ったとして,被上告人会社の代表取締役である被上告人Y2に対して は民法709条等に基づき,被上告人会社に対しては会社法350条等に基づき, 損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 被上告人会社は,平成25年3月,その代表取締役である被上告人Y2に募 集株式を割り当ててこれを発行した(以下「本件新株発行」という。)。本件新株 発行は,被上告人Y2が主導して,専ら上告人を被上告人会社から排除する目的で 行われたものであり,上告人が保有していた被上告人会社の株式の価値を著しく毀 損するものであった。 上告人は,平成27年3月,本件新株発行が違法であるとして,被上告人ら に対し,不法行為に基づき,損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を 求めて本件訴訟を提起し,その訴状は,同年4月,被上告人らにそれぞれ送達され た。 上告人は,平成27年6月25日,被上告人らに対し,民法405条に基づ き,上記の損害賠償債務について同日までに発生した遅延損害金を元本に組み入れ る旨の意思表示をした。 3 原審は,本件新株発行について不法行為が成立するとして,上告人の請求の - 2 405条に基づ き,上記の損害賠償債務について同日までに発生した遅延損害金を元本に組み入れ る旨の意思表示をした。 3 原審は,本件新株発行について不法行為が成立するとして,上告人の請求の - 2 - うち被上告人Y2に対する民法709条に基づく損害賠償請求及び被上告人会社に 対する会社法350条に基づく損害賠償請求をそれぞれ一部認容したが,その際, 不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金について民法405条は適用又は類推 適用されず,上記2 の遅延損害金を元本に組み入れることはできない旨の判断を した。 4 所論は,不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金に民法405条が適用 又は類推適用されないとすれば,損害賠償をしない怠慢な債務者を保護することに なるなどとして,原審の上記判断には法令の解釈適用の誤り及び判例違反がある旨 をいうものである。 5 民法405条は,いわゆる重利の特約がされていない場合においても,一定 の要件の下に,債権者の一方的な意思表示により利息を元本に組み入れることがで きるものとしている。これは,債務者において著しく利息の支払を延滞しているに もかかわらず,その延滞利息に対して利息を付すことができないとすれば,債権者 は,利息を使用することができないため少なからぬ損害を受けることになることか ら,利息の支払の延滞に対して特に債権者の保護を図る趣旨に出たものと解され る。そして,遅延損害金であっても,貸金債務の履行遅滞により生ずるものについ ては,その性質等に照らし,上記の趣旨が当てはまるということができる(大審院 昭和16年(オ)第653号同17年2月4日判決・民集21巻107頁参照)。 これに対し,不法行為に基づく損害賠償債務は,貸金債務とは異なり,債務者に とって履行すべき債務の額が定かではないことが少なくないから,債務者がその履 同17年2月4日判決・民集21巻107頁参照)。 これに対し,不法行為に基づく損害賠償債務は,貸金債務とは異なり,債務者に とって履行すべき債務の額が定かではないことが少なくないから,債務者がその履 行遅滞により生ずる遅延損害金を支払わなかったからといって,一概に債務者を責 めることはできない。また,不法行為に基づく損害賠償債務については,何らの催 告を要することなく不法行為の時から遅延損害金が発生すると解されており(最高 裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号 1834頁参照),上記遅延損害金の元本への組入れを認めてまで債権者の保護を 図る必要性も乏しい。そうすると,不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金に - 3 - ついては,民法405条の上記趣旨は妥当しないというべきである。 したがって,不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条の適 用又は類推適用により元本に組み入れることはできないと解するのが相当である。 6 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。所論引用の 上記大審院判例は,事案を異にし,本件に適切でない。論旨は採用することができ ない。 なお,上告人のその余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定 において排除された。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 林 道晴 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宇賀克也 裁判官 長嶺安政 裁判官 渡 惠理子)

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