昭和41(行ウ)7 所得金額更正処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和47年2月24日 京都地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一、当事者双方の求めた裁判 一、原告 1 被告が昭和三八年二月二〇日付でなした原告の昭和三四年ないし三六年分所得 税の各総所

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○ 主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一、当事者双方の求めた裁判一、原告1 被告が昭和三八年二月二〇日付でなした原告の昭和三四年ないし三六年分所得税の各総所得金額を金八、一三九、四二〇円、金五、四九二、三八七円、金五、三五四、四〇七円と更正した処分のうち、それぞれ金七、三六三、一一二円、金三、八七八、七一三円、金一、五三四、六〇五円を越える部分を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決。 二、被告主文同旨の判決。 第二、原告の請求原因一、原告は、別表一(一)欄記載の各年月日に被告に対し、その昭和三四年ないし三六年分所得税の各総所得金額を、それぞれ同表(二)欄記載のとおり確定申告したところ、被告は、昭和三八年二月二〇日右申告にかかる各年分の総所得金額を、それぞれ同表(三)欄記載のとおり更正する旨の処分(以下、本件更正処分という。)をなした。 そこで、原告は、被告に対し、同年三月一八日異議申立をしたところ、被告は同年四月二三日これを棄却したので、原告は同年五月一四日大阪国税局長に対し審査請求をしたが、同局長は昭和四一年二月二八日付でこれを棄却し、そのころその旨原告に通知してきた。 二、しかしながら、本件更正処分のうち、原告の右各申告額を越える部分は、原告の所得金額を過大に認定した違法があるから、取消されるべきである。 第三、被告の答弁および主張(答弁)請求原因第一項の事実は認めるが、第二項は争う。 (主張)一、原告は、生糸撚糸の卸販売を業とする青色申告者であるが、原告の昭和三四年ないし三六年分(以下、本件各係争年分という。)の所得としては、別表二の(一)ないし(三)欄記載のとおりの配当所得、不動産所得、譲渡所得があり、右のほかに、同表(四)欄記載の事業所得があつた。右事業所得の明細は別表 以下、本件各係争年分という。)の所得としては、別表二の(一)ないし(三)欄記載のとおりの配当所得、不動産所得、譲渡所得があり、右のほかに、同表(四)欄記載の事業所得があつた。右事業所得の明細は別表三に示すとおりであつて、(一)欄記載の収入金額から(二)欄記載の必要経費額を差引くと(三)欄の事業所得金額が得られる。 しかるところ、原告は、本件各係争年分の事業所得にかかる必要経費として、右別表三(二)欄に記載したもののほか、別表四記載の各金額を計上して確定申告してきた。しかしながら、右申告にかかる別表四記載の各金額は、つぎは述べる理由でいずれも必要経費に該当するものとは認められないから、原告の本件各係争年分の事業所得は前記別表二(四)欄記載のとおりとなり、したがつて、その各総所得金額は同表(五)欄記載のとおりとなる。 よつて、右各総所得金額の範囲内でなされた本件更正処分はすべて適法である(別表一(三)欄記載の各更正額と別表二(五)欄記載の各総所得金額との間に差異が生じたのは、本件更正処分時において、別表四記載の金額を算出するに際し誤算があつたためである)。 二、別表四記載の各金額が必要経費と認められない理由はつぎのとおりである。 1 「借入金に対する支払利息の一部」について(一) 別表四(一)欄記載の「借入金に対する支払利息の一部」、の明細は別表五に記載のとおりであるが、右支払利息の元本たる銀行借入金は、いずれも借入と同時にその全額を定期預金としたものであつて(以下、このような借入金を本件両建分借入金、同じく預金を本件両建預金という。)、事業目的には何ら活用されておらず、したがつて、右は事実上必要とする資金の調達には当らないから、これに対する支払利息は、旧所得税法(昭和四〇年三月三一日法律第三三号による改正前のもの、以下同じ。)第一〇条第二 何ら活用されておらず、したがつて、右は事実上必要とする資金の調達には当らないから、これに対する支払利息は、旧所得税法(昭和四〇年三月三一日法律第三三号による改正前のもの、以下同じ。)第一〇条第二項に規定する「事実上収入を得るための必要経費」ということはできない。 (二) 原告の本件両建分借入金がその事業目的とは関連性がなく、事実上必要なものでなかつたことは、(1)原告の本件両建預金の無担保性(その判断基準として、本件両建預金の設定前と設定後における各債務割合の比較の結果)、(2)本件両建預金設定の動機ないし目的、すなわち利子分離課税の利用による租税回避の目的、(3)両建分を含む原告の銀行借入金および定期預金等の推移という三つの観点からこれを明らかにすることができる。すなわち、(1) 本件両建預金の無担保性本件両建分借入金は、借入と同時にその全額を定期預金としたものであつて、現実に金銭の授受を伴う消費貸借ではなく、単なる帳簿上の操作にすぎないものであるから、それが直接事業資金として使用されることは本来ありえない。 したがつて、本件両建分借入金が事業目的と関連し、あるいは事業の遂行に役立つているといい得るためには、本件両建預金が担保的機能を果たすことによつて、現実に事業に使用されている借入額および手形割引額または借入枠および手形割引枠が増大したとか、あるいは、本件両建預金設定前には借入金を担保する定期預金が皆無であつたため、特に定期預金の必要を生じたとかの事情が必要である。 しかるに、本件両建預金はかかる担保性を有していない。このことは、原告の各取引銀行別の取引経過について、債務残高(借入額および手形割引額)の定期預金残高に対する割合(以下、債務割合という。)をみることによつて判断することができる。すなわち、別表九の(一)ないし(五)は、 引銀行別の取引経過について、債務残高(借入額および手形割引額)の定期預金残高に対する割合(以下、債務割合という。)をみることによつて判断することができる。すなわち、別表九の(一)ないし(五)は、原告の銀行取引経過を表わしたものであり、右表にもとずいて算定した本件両建預金設定前における債務割合と、右設定後における債務割合および両建分を除いた債務割合とを取引銀行別に要約すると、別表六に記載のとおりであるが、右比較から明らかなように、本件両建預金設定後における債務割合は右設定前における債務割合に比べて大幅に減少し、設定後における両建分を除いた債務割合でさえ設定前における債務割合とほぼ等しいか、むしろそれより減少している。これは、本件両建預金がいわゆる担保性を有していないことを示すものであり、その反面として、本件両建分借入金が事業とは関連性のないことを示すものにほかならない。 (2) 本件両建預金設定の動機ないし目的本件両建預金が前記のとおり何ら担保性を有していないのに、本件両建分借入金を事業目的に関連するものとして取扱うことにすると、右両建分借入金の支払利息は全額必要経費に算入されるのに対し、右両建預金の受取利息は、利子所得の分離課税により一〇〇分の一〇という低い税率の恩典を受けることになるので(昭和三四年ないし三六年当時の租税特別措置法第三条)、原告は事業上不必要な両建預金を増加することによつて、不当に租税回避による利益を図ることができるわけである。 これを具体的にみると、原告が本件両建預金によつて得る利益は、別表七に示すとおり、本件両建分借入金の支払利息を必要経費に算入することによつて免れる税額、すなわち本件両建預金を設定しなかつたものとして計上した税額(同表(一)欄)と本件両建分借入金の支払利息を必要経費に算入した場合の税額(同表( 金の支払利息を必要経費に算入することによつて免れる税額、すなわち本件両建預金を設定しなかつたものとして計上した税額(同表(一)欄)と本件両建分借入金の支払利息を必要経費に算入した場合の税額(同表(二)欄)との差額(同表(三)欄。ただし、右各税額には所得税、事業税、府市民税を含む。)から、本件両建預金設定により負担する損失、すなわち本件両建分借入金の支払利息(同表(四)欄)と本件両建預金の受取利息(同表(五)欄。ただし、源泉税引後のもの。)との差額(同表(六)欄)を控除することによつて得られるが、こうして算出した原告の利益は同表(七)欄記載の各金額となる。 右の事実によれば、原告の本件両建預金設定の動機ないし目的は、まさしく利子分離課税を利用して租税回避による利益を図つたものにほかならないものということができる。 (3) 銀行借入金および定期預金等の推移本件関係の前記五銀行分について、両建分を含む銀行借入金および定期預金等の推移を示すと、別表八に記載のとおりである。右の推移によれば、本件係争年分にあたる昭和三四年から三六年にかけては、借入金および定期預金は本件両建預金の設定によつて急速に増加しているのに対し、手形割引額は漸増に止まつているが、被告の調査が行なわれた昭和三七年には、借入金および定期預金は右両建預金の解消によつて急速に減少し、法人組織後の昭和三八年三月三一日には、原告が滋賀銀行西陣支店を除いて両建預金を全て解消したため借入金は激減しているのに対し、手形割引額は依然として増加の傾向にあることが分る。ことに、原告が法人組織後両建預金を全面的に解消した真の動機は、法人には利子分離課税の適用がなく、租税負担の軽減に役立たないことにあるものと考えられる。 右のような推移をみても、原告の本件両建預金が事業上の必要に基づくものでなく、租税 面的に解消した真の動機は、法人には利子分離課税の適用がなく、租税負担の軽減に役立たないことにあるものと考えられる。 右のような推移をみても、原告の本件両建預金が事業上の必要に基づくものでなく、租税回避の目的に出たものであることを看取するに十分である。 2 「旅費の一部」について被告において否認した別表四(二)欄記載の昭和三六年分「旅費の一部」金三三七、三〇〇円は、原告が昭和三六年一一月に東南アジア視察旅行と称してなした旅行の費用の一部であるが、原告の経営する事業は海外商社等との取引関係がないから、右旅行は事業上の出張旅行とは認められず、単なる観光旅行にすぎないというべく、したがつて、右旅行の費用は旧所得税法第一〇条第二項に規定する「事業上収入を得るための必要経費」ということはできない。 第四、被告の主張に対する原告の答弁および反論(答弁)一、被告の主張第一項の事実のうち、原告が生糸撚糸の卸販売を業とする青色申告者であること、原告の本件各係争年分の配当所得、不動産所得、譲渡所得の各金額および事業所得にかかる収入金額が被告主張のとおりであること、原告が本件各係争年分の事業所得にかかる必要経費として、別表三(二)欄記載の金額のほかに別表四記載の各金額を計上して確定申告したことは認めるが、その余の事実は否認する。 原告の本件各係争年分の事業所得にかかる必要経費は、別表三(二)欄記載の各金額に別表四記載の各金額を加えたものであり、したがつて、本件各係争年分の事業所得ひいては総所得金額は、被告主張の各金額から右別表四記載の各金額を差引いたものとなる。 二、被告の主張第二項について1 「借入金に対する支払利息の一部」について(一) 被告の主張第二項1(一)の事実のうち、別表四(一)欄記載の「借入金に対する支払利息の一部」の明細が別表五記載のとおり 、被告の主張第二項について1 「借入金に対する支払利息の一部」について(一) 被告の主張第二項1(一)の事実のうち、別表四(一)欄記載の「借入金に対する支払利息の一部」の明細が別表五記載のとおりであり、右支払利息の元本たる銀行借入金が、被告主張のとおり、いずれも借入と伺時にその全額を定期預金にしたいわゆる両建分借入金であることは認めるが、その余の事実は否認する。 (二) 同(二)の主張は争う。すなわち、(1) 同(二)(1)の事実のうち、本件両建分借入金は借入と同時にその全額を定期預金としたものであつて、現実に金銭の授受を伴う消費貸借ではないこと、原告の銀行取引経過が別表九の(一)ないし(五)記載のとおりであり、被告主張の各債務割合を要約したものが別表六記載のとおりであることは認めるが、その余の事実は否認する。 被告は、本件両建分借入金が事業資金として使用されることは本来あり得ないと主張するが、拘束預金の解放により資金として獲得できる場合がある。また、原告の本件両建預金は、民法所定の債権質の手続を完全に充足した「正式担保」か、あるいは一部右要件を欠き預金証書のみを占有する「略式担保」であつて、いずれも担保性を有している。 なお、本件両建分借入金が事業目的と関連し、事業上必要であつたか否かは、後述のとおり、本件両建預金の発生原因となつた事実を考慮して判断すべきもので、被告主張のように債務割合の比較から決せられるべきものではないが、仮りに債務割合を利用できるとしても、被告主張の別表六は、原告の事業の実態と企業一般の常識を無視した不当な統計である。すなわち、被告は、右別表六および九において、本件両建分借入金の設定時点を基準として債務割合を算出しているが、原告の業種における生糸の取引はいわゆる季節取引であるから、もし債務割合を利用するのであ すなわち、被告は、右別表六および九において、本件両建分借入金の設定時点を基準として債務割合を算出しているが、原告の業種における生糸の取引はいわゆる季節取引であるから、もし債務割合を利用するのであれば、季節を単位としてこれを算出すべきである。 (2) 同(二)(2)の事実のうち、本件両建分借入金が事業目的に関連するものとして取扱われると、本件両建預金の受取利息は、利子所得の分離課税により被告主張の税率の適用を受けることになること、その場合の原告の得失の計算関係が被告主張のごとく別表七記載のとおりとなることは認めるが、その余の事実は否認する。 原告が租税回避の目的で両建預金を紛飾して利子分離課税制度を濫用したという例外的な場合はともかく、そうでない本件において、原告が被告主張のような恩典にあずかることは税法上当然容認されているのに(ちなみに、分離課税による直接の受益者は銀行であつて、原告の利益はその反射的な利益にすぎない。)、右の恩典を楯にとつて本件両建預金を租税回避の目的と結びつけてその支払利息を否認したのは、租税回避を恐れるの余り徒に感情に走つて、税法を不当に解釈運用したものといわざるをえない。 仮りに被告の論法で行くならば、支払利息ばかりを否認せず、支払利息と受取利息との差額を否認すべきである。 (3) 同(二)(3)の事実のうち、本件関係の五銀行分についての両建分を含む銀行借入金および定期預金等の推移が被告主張のとおりであることは認めるが、その余の事実は否認する。 原告は、本件更正処分によつて多大の損害を蒙つたうえ、銀行との間に実質上の両建預金取引が続く限りその後も引続き同様の更正処分を受けるおそれがあつたので、昭和三八年会社組織(仲直商事株式会社)に切換え、本件両建分借入金をこれに引継いだものである。 2 「旅費の一部」について 預金取引が続く限りその後も引続き同様の更正処分を受けるおそれがあつたので、昭和三八年会社組織(仲直商事株式会社)に切換え、本件両建分借入金をこれに引継いだものである。 2 「旅費の一部」について被告の主張第二項2の事実は認める。 (原告の反論)本件両建分借入金が事実上必要であつたか否かは、つぎのような本件両建預金の発生原因となつた事実を考慮して判断すべきである。 すなわち、原告は、生糸撚糸の卸売を業としていたものであるところ、本件係争年分にあたる昭和三四年ないし三六年中に、市況と生糸相場の悪化により荒利益率が減少したので、その損害を回復すべく売上の増加を図つたのであるが、売上代金の回収は受取手形によつているため、右売上の増加は受取手形の増加をもたらした。 そこで、その増加した受取手形な現金化するため、取引銀行に対して従来の手形割引枠、被担保最高限度額を増大してもらう金融取引上の必要が生じ、不動産担保の提供のほかに預金担保の提供が必要となつた。 しかも、原告がその取引銀行から営業資金を借入れるに際して、右銀行が貸付金の安全性の確保と後記営業上の理由から、原告の必要とする資金の三分の一程を余分に貸付け、その余分の貸付金を拘束預金とすることを強要するため、原告はやむなく本件両建預金を設定したものである。もし本件両建預金を拒絶すれば、原告は資金の借入ができず、対銀行関係の取引を円滑に行なえなくなる事情にあつた。右銀行はこのようにして預金の実績を上げると同時に、両建預金分についても支払利息を取ることによつて表面利息以上に高い実質利息を取るわけである。 以上のような本件両建預金の発生原因となつた事実を考慮すれば、本件両建分借入金は事実上必要であつたものであり、したがつてこれに対する支払利息は必要経費と認めるべきである。 第五、原告の反論に対する被告の のような本件両建預金の発生原因となつた事実を考慮すれば、本件両建分借入金は事実上必要であつたものであり、したがつてこれに対する支払利息は必要経費と認めるべきである。 第五、原告の反論に対する被告の答弁原告が反論として主張する事実は否認する。 原告は拘束預金の解放により資金を獲得出来る場合があると主張するが、定期預金を借入金と相殺しないで解放することはあり得ない。 また、原告は、売上の増加↓受取手形の増加↓手形割引の増加↓定期預金の増加という図式を用いて本件両建預金の増加を説明しようとしているが、右説明は何ら本件両建預金の必要性を理由づけるものではない。本件両建預金の必要性を判断するには、前記の被告主張のような債務割合を検討しなければならないのである。 原告は実質利息という言葉を持出しで本件両建分借入金に対する支払利息の経費性を説明しようとしているが、これまた何ら理由となるものではない。両建分が含まれている場合、借入金と預金との利息の差額が両建分を除いた実際に事業資金として使用しうる借入金に対する負担となるため表面利息に対し実質利息が高くなるけれども、これは債務割合からみて両建預金が必要不可欠な場合の話であつて、本件では両建預金の設定により負担が高くなつても、支払利息の方が経費として認められるならば、受取利息の方で利子分離課税によりそれを上回る利益があることを狙つて本件両建預金を設定しているのであるから前提が異るのである。 第六、証拠(省略)○ 理由一、請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。 二、原告の昭和三四年ないし三六年分(本件各係争年分)の各総所得金額について、被告は、これを別表二(五)欄記載の各金額であると主張し、原告は別表一(二)欄記載の申告額のとおりであると主張するので、以下検討する。 原告は、生糸撚糸の卸販売を業とする青 )の各総所得金額について、被告は、これを別表二(五)欄記載の各金額であると主張し、原告は別表一(二)欄記載の申告額のとおりであると主張するので、以下検討する。 原告は、生糸撚糸の卸販売を業とする青色申告者であり、その本件各係争年分の配当所得、不動産所得、譲渡所得の各金額がそれぞれ別表二(一)ないし(三)欄記載のとおりであることは当事者間に争いがない。そして、旧所得税法第九条第一項第四号、第一〇条第二項によれば、事業所得金額は、当該事業にかかるその年中の総収入金額から、これを得るために必要な経費(以下、単に必要経費という。)を控除した金額であるところ、原告の本件各係争年分の事業所得にかかる総収入金額が別表三(一)欄記載のとおりであり、これに対応する必要経費が同表(二)欄記載の各金額を下らないことについては当事者間に争いがない。 三、被告は、原告が必要経費として申告した別表四記載の各金額が必要経費に該当しないと主張し、原告はこれを争うので、以下判断する。 1、「借入金に対する支払利息の一部」について(一) 別表四(一)欄記載の「借入金に対する支払利息の一部」の明細が別表五記載のとおりであることは当事者間に争いがない。したがつて、右支払利息が必要経費に該当するかどうかは、その元本たる銀行借入金が原告の事業目的と関連性を有し、事業上必要なものと認められるか否かによつて決せられるものと解される。 (二) ところで、右銀行借入金が借入と同時にその全額を定期預金としたいわゆる両建分借入金であることは当事者間に争いがないところ、成立に争いのない甲第三ないし第五号証および当裁判所に顕著な事実によれば、従来金融取引上とかく問題とされてきた両建分借入金およびこれに対応する両建預金と呼ばれるものは、金融機関が貸付をするに際し、貸付金の担保として、借受人に対し、右 証および当裁判所に顕著な事実によれば、従来金融取引上とかく問題とされてきた両建分借入金およびこれに対応する両建預金と呼ばれるものは、金融機関が貸付をするに際し、貸付金の担保として、借受人に対し、右貸付金の一部を預金とすることを強制してこれを拘束し、払出を制限している場合の借入金および預金のことをいうものとされている。右の場合、借入金の一部は両建預金として拘束されるが、その残部は借受人が資金として利用し得るわけである。しかるに、本件においては、借入と同時に定期預金を設定したいわゆる即時両建であり、しかも借入金の全額を預金としたものであること前記のとおりであるから、右通常の場合とは異り、原告は、本件両建預金の設定に際して何ら直接使用し得る資金を得ていないことは明らかである。原告は、本件両建預金の拘束性を解くことによつて資金を獲得できる場合があると主張するけれども、差引計算の中で最も確実かつ簡便な方法とされている当該両建預金と貸付金との相殺をしないで、預金の拘束のみを解除することは金融取引の常識上ほとんど考えられないところである。 したがつて、右に説示した限度においては、本件両建分借入金は原告の事業目的と関連性を有していないものといわざるを得ないが、しかし、本件両建分借入金が直接事業資金として利用されることはないとしても、本件両建預金の設定により、現実に原告の事業に使用されている借入額および手形割引額または借入枠および手形割引枠(以下、一括して債務総額ともいう。)が増大したとか、右の増大がみられないとしても、従前の債務総額を維持するために、それまでの担保に加えて、新たに本件両建預金設定の必要性が生じたなど、何らかの意味で本件両建預金が損保的機能を果すことにより事業資金獲得に寄与していること、すなわち本件両建預金について、被告の使用している意 担保に加えて、新たに本件両建預金設定の必要性が生じたなど、何らかの意味で本件両建預金が損保的機能を果すことにより事業資金獲得に寄与していること、すなわち本件両建預金について、被告の使用している意味での担保性が認められるとすれば、なお本件両建預金ひいては本件両建分借入金は、原告の事業目的と関連し、事業の遂行上必要なものであつたという余地がある。 (三) そこで、右の点について考察するに、(1) まず、右のごとき本件両建預金の担保性の有無を判断するためには、原告の銀行取引経過なかんずく債務残高(借入額および手形割引額)の定期預金残高に対する割合(以下債務割合という。)の推移を各取引銀行別に検討することが有益であると考えられるところ、右の経過を取引銀行別に表示したものが別表九の(一)ないし(五)であることについては当事者間に争いがない。右各表の記載ならびに成立に争いのない甲第一号証の一ないし三六によれば、原告の資金の調達は大部分商業手形の割引によつており、手形貸付による借入金(別表九(6)欄)は、京都銀行を除き、本件両建分借入金発生以前は皆無であること、原告の債務額の担保とみられる定期預金は、本件両建預金設定開始前から相当額存在していること、定期預金残高合計額の増加分のうち、本件両建預金の占める割合は大きいが、本件両建預金を除く即時両建によらない定期預金(同表(4)欄)もまた増えていること、定期預金残高の増大に伴つて借入金残高および手形割引残高も増加しているが、右のうち借入金残高の増加分の殆んどの部分は本件両建分借入金であること(同表(6)欄の借入金残高のうち、同表(3)欄に相当する額が本件両建分借入金である。)、債務割合の推移をみると、本件両建預金および本件両建分借入金を含めた場合(同表(8)欄)、本件両建預金設定後の債務割合は、設定前 金残高のうち、同表(3)欄に相当する額が本件両建分借入金である。)、債務割合の推移をみると、本件両建預金および本件両建分借入金を含めた場合(同表(8)欄)、本件両建預金設定後の債務割合は、設定前のそれに比して総じて低い数値を示しており、二倍にも満たないものが多くみられること(このことは、定期預金残高が債務残高の五〇パーセントを越えることを意味している。)、これに対し、本件両建預金および本件両建分借入金を除外した場合の債務割合(同表(9)欄)は、およそ本件両建預金設定前の数値を維持しているか、むしろわずかに低下の傾向を示していること(右債務割合の対比を要約したものが別表六記載のとおりであることは当事者間に争いがない。)が看取できる。 右の事実によれば、本件両建預金の設定による定期預金総額の増加割合に対応するだけの借入金および手形割引額の増加が認められないということができる。原告は、原告の業種における生糸の取引はいわゆる季節取引であるから、季節を単位としてその間の債務割合を算出して比較すべきであると主張するが、前記別表九の各表は、債務額につき各期間中の最高額を表示したものであるから、原告主張の右方法で債務割合を算出しても同表に基づくそれと大差はなく、何ら右の結論を左右するものとは思われない。 (2) つぎに、本件両建分借入金が原告の事業目的に関連するものとして取扱われると、右借入金の支払利息は全額必要経費に算入されるのに対し、本件両建預金の受取利息は、本件各係争年分当時の租税特別措置法第三条に基づく利子所得の分離課税により一〇〇分の一〇という低い税率の適用を受けることになること、その結果、原告は、本件両建分借入金が事業目的に関連しないものとして取扱われる場合に比して、別表七の(七)欄記載の各金額の利益を得ることになることは当事者間に争い 税率の適用を受けることになること、その結果、原告は、本件両建分借入金が事業目的に関連しないものとして取扱われる場合に比して、別表七の(七)欄記載の各金額の利益を得ることになることは当事者間に争いがないところ、証人Aの証言および同証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証によれば、昭和三七年八月ごろ、当時上京税務署に勤務していたAが原告の本件係争年分の所得税について調査に赴いた際、原告が同人に対し、「本件のような両建預金を設定すれば、利子分離課税制度により税務対策上有利になるということを富士銀行の人に教えてもらつた。 11こうすれば、事業の方は赤字でも、預金利息がたまつているから懐勘定としては悪くはない。」という趣旨の発言をしたことが認められ、右認定に反する証拠はない。 (3) 別表五に記載した原告の五取引銀行分について、昭和三四年から同四一年にかけての銀行借入金等の推移を指数で表示したものが別表八記載のとおりであることは当事者間に争いがないところ、右の表ならびに成立に争いのない甲第六号証の一ないし五および証人Bの証言によれば、原告は、昭和三八年一月ごろ個人経営から法人組織に改組し、仲直商事株式会社を設立したこと、本件両建預金および本件両建分借入金は昭和三七年以降急速に解消され、右組織変更のなされた昭和三八年中にはその殆んどが消滅していること(法人には前記利子分離課税の適用はない。)、それにもかかわらず手形割引額は依然として順調に増大していることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。 右(1)ないし(3)の事実を総合すれば、原告において他に特段の事情を主張立証しない限り、本件両建預金は、借入金および手形割引枠の維持増大のための担保として銀行側の強要により設定されたものではなく、利子分離課税制度を利用して租税回避を図る目的で原 て他に特段の事情を主張立証しない限り、本件両建預金は、借入金および手形割引枠の維持増大のための担保として銀行側の強要により設定されたものではなく、利子分離課税制度を利用して租税回避を図る目的で原告が任意に設定したものであつて、前記担保性を有しないものと推認するのが相当である。 原告が、前記第四の(反論)において強調する本件両建預金の発生原因たる事実は、右の特段の事情の主張と解し得るので案ずるに、甲第一号証の一ないし三、三四ないし三六によれば、本件両建預金の一部について担保権が設定されていることがうかがえるけれども、右は原告の意を受けた取引銀行側が単に形式上のみこれを設定したものとも考え得るから、右の一事をもつて直ちに本件両建預金が本件両建分借入金以外の借入金または手形割引額に対してまで実質的にも担保性を有するものとまでは認めることができず、原告の右主張に副う証人Bの証言は、前記(1)ないし(3)の事実に照らしてたやすく信用し難い。また、原告の右主張に合致するかにみえる鑑定人Cの鑑定の結果も、両建分以外の借入金および預金と本件のような全額両建の場合とを区別することなく論じたものであり、本件両建預金の設定と借入金および手形割引額等の増大との因果関係についての分析も十分になされていないので、採用することができない。 そうすると、原告は、他に何ら右特段の事情を認めるに足りる証拠を提出しないから、本件両建預金の担保性は、これを否定するほかない。 (四) 以上の次第であるから、本件両建分借入金は、原告の事業目的と関連し、事業の遂行上必要なものであつたということはできず、したがつて、これに対する支払利息は必要経費に該当するものとはいえない。 2、「旅費の一部」について別表四(二)欄記載の昭和三六年分「旅費の一部」金三三七、三〇〇円は、原告が昭和三六 ことはできず、したがつて、これに対する支払利息は必要経費に該当するものとはいえない。 2、「旅費の一部」について別表四(二)欄記載の昭和三六年分「旅費の一部」金三三七、三〇〇円は、原告が昭和三六年一一月に東南アジア視察旅行と称してなした旅行の費用の一部であること、および原告の事業は海外商社等との取引関係がなく、右旅行は観光旅行にすぎないことは原告の自認するところである。 したがつて、右旅費の一部が必要経費に該当しないことは明らかである。 四、そうすると、別表四記載の各金額はいずれも必要経費に該当しないから、原告の本件各係争年分の事業所得にかかる必要経費は別表三(二)欄記載の各金額、事業所得金額は同表(三)欄記載の各金額となり、したがつて、原告の本件各係争年分の総所得金額は、被告主張のとおり、別表二(五)欄記載のとおりとなる。 五、よつて、いずれも右各総所得金額の範囲内でなされた本件更正処分はすべて適法であつて、その取消を求める原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官山田常雄伊藤博鳥越健治)

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