平成24(ラ)337 債権差押命令及び転付命令の申立却下決定に対する執行抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成24年9月20日 名古屋高等裁判所 その他
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判決文本文3,939 文字)

名古屋高等裁判所平成24年(ラ)第337号債権差押命令及び転付命令の申立却下決定に対する執行抗告事件(原審・岐阜地方裁判所平成24年(ル)第487号,同年(ヲ)第5号) 主文 1 原決定を取り消す。 2 抗告人の申立てにより,別紙請求債権目録(添付省略)記載の債権の弁済に充てるため,同目録記載の執行力のある債務名義の正本に基づき,相手方が第三債務者に対して有する別紙差押債権目録1記載の債権を差し押さえる。 3 相手方は,前項により差し押さえられた債権について,取立てその他の処分をしてはならない。 4 第三債務者は,第2項により差し押さえられた債権について,相手方に対し弁済をしてはならない。 5 抗告人の申立てにより,第2項により差し押さえられた債権を,支払に代えて券面額で抗告人に転付する。 6 申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。 理由 第1 抗告の趣旨及び理由別紙執行抗告状及び抗告理由書(いずれも写し)(添付省略)に記載のとおりである。 第2 事案の概要本件は,抗告人が,相手方に対し抗告人への金銭支払を命じた判決に基づく強制執行として,相手方が第三債務者に対して有する預金債権の差押え及び転付命令を求める申立て(以下「本件申立て」という。)をした事案である。 抗告人は,差し押さえるべき債権(以下「差押債権」という。)について,各第三債務者の「複数の店舗に預金債権があるときは,預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする。なお,預金債権額合計の最も大きな店舗が複数あるときは,そのうち支店番号の最も若い店舗の預金債権を対象とする。」と表示した上,当該店舗の預 は,預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする。なお,預金債権額合計の最も大きな店舗が複数あるときは,そのうち支店番号の最も若い店舗の預金債権を対象とする。」と表示した上,当該店舗の預金債権については,先行の差押え又は仮差押えの有無,預金の種類等による順位付けをしている。 原審が,上記のような差押債権の表示では第三債務者に過度の負担が生じるので,差押債権の特定を欠き,本件申立ては不適法であるとして却下したところ,これを不服とする抗告人が執行抗告をした。 抗告人は,当審において,差押債権の特定のため,相手方の住所,氏名の読み仮名,生年月日を特定し,差押債権目録を別紙差押債権目録1のとおり補正した。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,本件申立てにおいて差押債権の特定に欠けるところはなく,抗告人の本件申立ては理由があると判断する。その理由は,次のとおりである。 1 民事執行規則133条2項は,債権差押命令の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは,差押債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項を明らかにしなければならないと規定している。そして,債権差押命令は,債務者に対し差押債権の取立てその他の処分を禁止するとともに,第三債務者に対し差押債権の債務者ヘの弁済を禁止することを内容とし(民事執行法145条1項),その効力は差押命令が第三債務者に送達された時点で直ちに生じ(同条4項),差押えの競合の有無についてもその時点が基準となる(同法156条2項参照)。これらの民事執行法の定めにかんがみると,民事執行規則133条2項の求める差押債権の特定とは,「債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に 執行規則133条2項の求める差押債権の特定とは,「債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるもの」でなければならないと解するのが相当であり,この要請を満たさない債権差押命令の申立ては,差押債権の特定を欠き不適法というべきである(最高裁判所平成23年(許)第34号同年9月20日第三小法廷決定・裁判所時報1540号1頁)。 2 これを本件についてみるに,本件申立ては,差押債権を「第三債務者の複数の店舗に預金債権があるときは,預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする。なお,預金債権額合計の最も大きな店舗が複数あるときは,そのうち支店番号の最も若い店舗の預金債権を対象とする。」と表示したものであり(以下,差押債権をこのように表示することを「預金額最大店舗指定方式」という。),大規模な金融機関である第三債務者のすべての店舗を対象に含むものではあるが,預金債権額合計の最も大きな店舗(ただし,これが複数あるときは,そのうち支店番号が最も若い店舗)が決まりさえすれば,その後の処理は,第三債務者の複数の店舗のうちの一つをその名称により個別具体的に特定して表示した場合(以下,これを「支店名個別特定方式」という。)と同様になる。すなわち,預金額最大店舗指定方式における第三債務者とされた金融機関の負担は,支店名個別特定方式(これが執行実務において一般的に採用されているものであることは,当裁判所に顕著である。)による場合に比し,当該金融機関の店舗の中で預金債権額合計の最も大きな店舗を特定する作業(ただし,これが複数あるときは,そのうち支店番号が最も若い店舗を特定する作業が加わ ,当裁判所に顕著である。)による場合に比し,当該金融機関の店舗の中で預金債権額合計の最も大きな店舗を特定する作業(ただし,これが複数あるときは,そのうち支店番号が最も若い店舗を特定する作業が加わる。)及び第三債務者の本店に送達された債権差押命令の写しを当該店舗にファクシミリ等により転送する作業が加わるだけであって,全店一括順位付け方式のように,先順位の店舗の預金債権のすべてについて,その存否及び先行の差押え又は仮差押えの有無,定期預金,普通預金等の種別,差押命令送達時点での残高等を調査して,差押えの効力が生じる預金債権の総額を把握する作業が完了しない限り,後順位の店舗の預金債権に差押えの効力が生じるか否かが判明せず,それまでの間第三債務者が不安定な状態に置かれることはない。そうすると,預金額最大店舗指定方式における差押債権が特定を欠くかどうかは,上記作業のために第三債務者がどの程度の時間及び労力を要するかにより判断されることになる。 この点については,一件記録によれば,銀行では,顧客を管理するため,CIFシステムを利用していること,同システムによれば,少なくとも個人については,氏名,氏名の読み仮名,生年月日,住所が特定されれば,速やかに顧客の預金口座の存在を把握することができること,これをもとに銀行各店舗の残高照会をして預金額最大店舗を特定するのにはさほどの時間と労力を要しないことが認められる。 なお,証拠(甲1)によれば,抗告人が,本件申立てに先立ち,本件の申立代理人弁護士に依頼して,第三債務者に対し,照会事項を「平成24年6月1日及び本照会日現在,相手方の預金口座がありますか。ありましたら,その口座を特定する事項(支店名・預金の種別,口座番号及び当該口座の残高を全てご教示ください。平成24年6月1日及び本照会日 年6月1日及び本照会日現在,相手方の預金口座がありますか。ありましたら,その口座を特定する事項(支店名・預金の種別,口座番号及び当該口座の残高を全てご教示ください。平成24年6月1日及び本照会日現在,貴行が相手方に対して有する債権はありますか。ありましたら,その金額をご教示ください。」とする弁護士法23条の2に基づく照会の手続を取ったこと,上記照会に対し,第三債務者は相手方の同意が確認できないことを理由に上記照会事項への回答をしなかったことが認められる。 以上のとおり,差押債務者である相手方が個人で,氏名の読み仮名,住所,生年月日が特定されている場合においては,預金額最大店舗指定方式は,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものと認めるのが相当である。 以上によれば,差押債務者である相手方の氏名,その読み仮名,住所,生年月日が特定されている本件申立てにおいて差押債権の特定に欠けることはないと解するのが相当である。 3 そして,債権差押命令及び転付命令を発令するために要する他の要件について検討するに,一件記録によれば,これを充足しているものと認められる。 第4 結論以上によれば,抗告人の本件申立ては理由があり,これを却下した原決定は相当でないから,抗告人の執行抗告に基づいて原決定を取り消し,債権差押命令及び転付命令を発することとして,主文のとおり決定する。 平成24年9月20日名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官長門栄吉裁判官内田計 決定する。 平成24年9月20日名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官長門栄吉裁判官内田計一裁判官中丸隆(別紙)差押債権目録1金153万5140円相手方(住所岐阜市AB丁目C番D,氏名E,生年月日昭和F年G月H日生により特定される個人)が第三債務者株式会社I銀行に対して有する下記預金債権及び同預金に対する預入日から本命令送達時までに発生した利息債権のうち,下記に記載する順序に従い,頭書金額に満つるまで(以下省略)

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