- 1 -令和4年(行ヒ)第10号消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件令和5年3月6日第一小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 第1 事案の概要 1 本件は、不動産の売買等を目的とする株式会社である上告人が、平成26年4月1日から同27年3月31日まで、同年4月1日から同28年3月31日まで及び同年4月1日から同29年3月31日までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(以下「本件各課税仕入れ」という。)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告(以下「本件各申告」という。)をしたところ、麹町税務署長から、その全額を控除することはできないとして更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたことから、被上告人を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 消費税法(平成27年9月30日以前に行った課税仕入れについては同年法律第9号による改正前のもの、同年10月1日以降に行った課税仕入れについては同24年法律第68号3条による改正前のもの。以下同じ。)30条1項1号は、事業者が国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において よる改正前のもの。以下同じ。)30条1項1号は、事業者が国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において- 2 -行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨を規定する。同条2項1号は、当該課税期間における課税売上高が5億円を超える場合又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たない場合において、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税対応課税仕入れ」という。)、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの(以下「非課税対応課税仕入れ」という。)及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「共通対応課税仕入れ」という。)の区分(以下「用途区分」という。)が明らかにされているときは、控除する課税仕入れに係る消費税額(以下「控除対象仕入税額」という。)は、同条1項の規定にかかわらず、課税対応課税仕入れに係る消費税額に、共通対応課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する方法(以下「個別対応方式」という。)により計算した金額とする旨を規定する。 また、消費税法30条3項本文は、個別対応方式による場合において、課税売上割合に準ずる割合で、当該事業者の営む事業の種類等に応じ合理的に算定されるものであって、かつ、所轄の税務署長の承認を受けたものがあるときは、当該課税売上割合に代えて、当該割合(以下単に「課税売上割合に準ずる割合」という。)を用いて控除対象仕入税額を計算する旨を規定する。 上告人は、本件各課税期間において、事業として、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されているマンショ 「課税売上割合に準ずる割合」という。)を用いて控除対象仕入税額を計算する旨を規定する。 上告人は、本件各課税期間において、事業として、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されているマンション合計84棟(以下「本件各建物」という。)を購入した(本件各課税仕入れ)。上告人は、転売までの間、本件各建物を棚卸資産として計上し、その賃料を収受した。 上告人は、本件各課税期間の消費税等について、個別対応方式により、本件各課税仕入れが課税対応課税仕入れに区分されることを前提に、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を控除対象仕入税額として本件各申告をした。これに対し、麹町税務署長は、平成30年7月30日付けで、本件各課税仕入れは、課税資産の譲渡- 3 -等である建物の転売のみならず、その他の資産の譲渡等である住宅の貸付けにも要するものであるから、共通対応課税仕入れに区分されるべきであり、控除対象仕入税額は、上記消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるなどとして、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。 税務当局は、平成7年頃、関係機関からの照会に対し、仮に一時的に賃貸用に供されるとしても、継続して棚卸資産として処理し、将来的には全て分譲することとしている住宅の購入については、課税対応課税仕入れに該当するものとして取り扱って差し支えない旨の回答をし、同9年頃、関係機関からの照会に対し、賃借人が居住している状態でマンションを購入した場合でも、転売目的で購入したことが明らかであれば、課税対応課税仕入れに該当する旨の回答をした。 他方、平成17年以降、税務当局の職員が執筆した公刊物等において、事業者の最終的な目的は中古マンションの転売であっても、転売までの間に非課税売上げである家賃が発生する場合には、中古マンショ した。 他方、平成17年以降、税務当局の職員が執筆した公刊物等において、事業者の最終的な目的は中古マンションの転売であっても、転売までの間に非課税売上げである家賃が発生する場合には、中古マンションの購入は共通対応課税仕入れに該当する旨の見解が示され、また、本件各申告当時に公表されていた複数の国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例において、本件各課税仕入れと同様の建物の取得の用途区分につき、上記と同様の見解に基づく税務当局側の主張が採用されていた。 第2 上告代理人大石篤史ほかの上告受理申立て理由第二について 1 消費税法は、生産、流通等の各段階で二重、三重に税が課されて税負担が累積することを防止し、経済に対する中立性を確保するため(税制改革法10条2項)、課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除するものとしている(消費税法30条1項1号)。もっとも、同法は、所定の場合において当該課税期間中に行った課税仕入れにつき用途区分が明らかにされていないときは、課税仕入れに係る消費税額に、課税売上割合、すなわち、課税期間中の所定の売上げの総額に占める課税資産の譲渡等に係る売上げの割合を乗じて計算する方法により控除対象仕入税額を計算するものとし(同条2項2号)、また、帳簿及び請求書等の保存がない場合には原則として当該- 4 -課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないものとする(同条7項)など、課税の明確性の確保や適正な徴税の実現といった他の目的との調和を図るため、税負担の累積が生じても課税仕入れに係る消費税額の全部又は一部が控除されない場合があることを予定しているものということができる。 そして、個別対応方式により控除対象仕入税額を計算する場合において、税負担の累積が生ずる課税資産の譲渡等 る消費税額の全部又は一部が控除されない場合があることを予定しているものということができる。 そして、個別対応方式により控除対象仕入税額を計算する場合において、税負担の累積が生ずる課税資産の譲渡等と累積が生じないその他の資産の譲渡等の双方に対応する課税仕入れにつき一律に課税売上割合を用いることは、課税の明確性の確保の観点から一般に合理的といえるのであり、課税売上割合を用いることが当該事業者の事業の状況に照らして合理的といえない場合には、課税売上割合に準ずる割合を適切に用いることにより個別に是正を図ることが予定されていると解されることにも鑑みれば、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方に対応する課税仕入れは、当該事業に関する事情等を問うことなく、共通対応課税仕入れに該当すると解するのが消費税法の趣旨に沿うものというべきである。このように解することは、課税仕入れを課税資産の譲渡等「にのみ」要するもの(課税対応課税仕入れ)、その他の資産の譲渡等「にのみ」要するもの(非課税対応課税仕入れ)及び両者「に共通して」要するもの(共通対応課税仕入れ)に区分する同条2項1号の文理に照らしても自然であるということができる。 そうすると、課税対応課税仕入れとは、当該事業者の事業において課税資産の譲渡等にのみ対応する課税仕入れをいい、課税資産の譲渡等のみならずその他の資産の譲渡等にも対応する課税仕入れは、全て共通対応課税仕入れに該当すると解するのが相当である。 2 前記事実関係等によれば、本件各課税仕入れは上告人が転売目的で本件各建物を購入したものであるが、本件各建物はその購入時から全部又は一部が住宅として賃貸されており、上告人は、転売までの間、その賃料を収受したというのである。そうすると、上告人の事業において、本件各課税仕入れは、課税資産の譲渡等 本件各建物はその購入時から全部又は一部が住宅として賃貸されており、上告人は、転売までの間、その賃料を収受したというのである。そうすると、上告人の事業において、本件各課税仕入れは、課税資産の譲渡等である本件各建物の転売のみならず、その他の資産の譲渡等である本件各建物の住- 5 -宅としての賃貸にも対応するものであるということができる。 よって、本件各課税仕入れは、その上告人の事業における位置付けや上告人の意図等にかかわらず、共通対応課税仕入れに該当するというべきである。 3 以上によれば、本件各課税仕入れに係る控除対象仕入税額は、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるというべきである。所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。 第3 上告代理人大石篤史ほかの上告受理申立て理由第三について 1 国税通則法65条4項1号(本件各課税期間のうち平成28年4月1日から同29年3月31日までの課税期間以外の課税期間については同28年法律第15号による改正前の同項。以下、同改正の前後を通じて「国税通則法65条4項」という。)にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに過少申告による納税義務違反の発生を防止して適正な申告納税の実現を図るという過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁参照)。 2 前記事実関係等によれば、税務当局は、遅くとも平成17年以降、本件各 ものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁参照)。 2 前記事実関係等によれば、税務当局は、遅くとも平成17年以降、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを、当該建物が住宅として賃貸されること(その他の資産の譲渡等に対応すること)に着目して共通対応課税仕入れに区分すべきであるとの見解を採っており、そのことは、本件各申告当時、税務当局の職員が執筆した公刊物や、公表されている国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例を通じて、一般の納税者も知り得たものということができる。他方、税務当局が平成7年頃にした関係機関からの照会に対する回答は、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを、事業者が当該建物の転売を目的とすることに着目して課税対応課税仕入れに区- 6 -分したものとも理解し得るものの、前提となる事実関係が明らかでなく、必ずしも上記見解と矛盾するものとはいえない。また、税務当局は、平成9年頃、関係機関からの照会に対し、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分すべき旨の回答をしているが、このことから、直ちに、税務当局が一般的に当該課税仕入れを事業者の目的に着目して課税対応課税仕入れに区分する取扱いをしていたものということはできないし、上記回答が公表されるなどしたとの事情もうかがわれない。 そうすると、平成17年以降、税務当局が、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを当該建物が住宅として賃貸されることに着目して共通対応課税仕入れに区分する取扱いを周知するなどの積極的な措置を講じていないとしても、事業者としては、上記取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったということができる。 そして、上記取扱いは消費税法30条2項1号の文理等に照らして自然であると な措置を講じていないとしても、事業者としては、上記取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったということができる。 そして、上記取扱いは消費税法30条2項1号の文理等に照らして自然であるといえ、本件各申告当時、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを事業者の目的に着目して課税対応課税仕入れに区分すべきものとした裁判例等があったともうかがわれないこと等をも考慮すれば、上告人が本件各申告において本件各課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分して控除対象仕入税額の計算をしたことにつき、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるということはできない。 3 以上によれば、本件各申告において、上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできない。 所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。 第4 結論以上のとおりであるから、論旨はいずれも採用することができない。 - 7 -よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官安浪亮介裁判官山口厚裁判官深山卓也裁判官岡正晶裁判官堺徹)
▼ クリックして全文を表示