令和2(行ウ)180 不当利得返還履行請求事件(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
令和5年11月16日 東京地方裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-92851.txt

判決文本文9,989 文字)

令和5年11月16日判決言渡令和2年(行ウ)第180号不当利得返還履行請求事件(住民訴訟) 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用のうち、補助参加により生じた費用は補助 参加人の負担とし、その余の費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、補助参加人に対し、2億9500万円及びうち2000万円に対する平成25年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち300 0万円に対する平成26年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち3000万円に対する平成27年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち5000万円に対する平成28年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち8000万円に対する平成29年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち8500万円に対する平成 30年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をα市に支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要本件は、α市の住民である原告らが、α市が補助参加人に対して平成24年度から平成29年度までに6回にわたって交付した助成金合計2億9500万 円は、補助参加人による不正請求を原因とするものであり、各交付決定を取り消すべきものであると主張して、被告(α市長)に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、補助参加人に対して不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として上記助成金相当額及びこれに対する各交付日からの遅延損害金又は利息金を支払うよう請求することを求める事案である。 1 前提事実 当事者間に争いがない事実、後掲証拠(以下、証拠番号は特に掲記しない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣 遅延損害金又は利息金を支払うよう請求することを求める事案である。 1 前提事実 当事者間に争いがない事実、後掲証拠(以下、証拠番号は特に掲記しない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実は、次のとおりである。 ⑴ 当事者等ア原告らは、いずれもα市の住民である。 イ被告は、α市の執行機関である。 ウ補助参加人は、平成21 年3 月24 日に東京都知事の認可を受けて設立された土地区画整理組合である。 エ Aは、平成21年6月3日までα市の副市長の職にあった者であり、平成24年5月1日、補助参加人の理事長相談役に就任した。Aは、同年4 月1日から平成31年3月31日までの間は、α市の臨時職員としても雇用されていた。 ⑵ 補助参加人に対する助成金の交付ア α市は、補助参加人に対し、α市土地区画整理事業助成要綱(甲8、乙11の2。以下「本件要綱」という。)に基づき、平成21年度から平成3 0年度まで、以下のとおり合計4億1100万円のα市土地区画整理組合助成金(以下「助成金」という。)を交付した。 年度金額交付決定日(乙4)交付日(甲40)平成21 年度 600 万円平成21 年10 月15 日平成21 年12 月11 日平成22 年度 1000 万円平成22 年 9 月15 日平成23 年 4 月15 日平成23 年度 2000 万円平成23 年 6 月 9 日平成24 年 5 月11 日平成24 年度 2000 万円平成24 年 6 月15 日平成25 年 1 月 9 日平成25 年度 3000 万円平成25 年 5 月 2 日平成26 年 2 月24 日平成26 年度3000 000 万円平成24 年 6 月15 日平成25 年 1 月 9 日平成25 年度 3000 万円平成25 年 5 月 2 日平成26 年 2 月24 日平成26 年度 3000 万円平成26 年 6 月 6 日平成27 年 4 月 9 日平成27 年度 5000 万円平成27 年 6 月26 日平成28 年 4 月 8 日 平成28 年度 8000 万円平成29 年 1 月19 日平成29 年 4 月26 日平成29 年度 8500 万円平成29 年 7 月13 日平成30 年 5 月11 日平成30 年度 8000 万円平成30 年10 月 2 日平成31 年 4 月12 日イ本件要綱13条は、助成金の決定取消し及び返還について、市長は、助成金の交付を受けた者が次のからのいずれかに該当すると認めたときは、助成金の交付決定の全部又は一部を取り消すことができ、この場合において、既に助成金が交付されているときは、その全部又は一部を返還させることができる旨を定めている。 正当な理由がなく事業の施行を著しく遅延させたとき(1号)偽りその他不正な行為により助成を受けたとき(2号)事業を中止し、又は廃止したとき(3号)本件要綱その他の法令に違反したとき(4号)⑶ Aの勤務実態等に関する調査 ア令和元年6 月5 日、複数の新聞において、Aが兼業の許可を受けないまま、α市からは臨時職員として、補助参加人からは理事長相談役としてそれぞれ報酬を受け取っていたことが、地方公務員法の兼業禁止規定に違反する可能性があるとの内容の報道がされた(甲11)。 イ α市議会は、令和元年6月10日、Aの勤務実態や報酬等について、α 市による調査及び解明を求める旨の 、地方公務員法の兼業禁止規定に違反する可能性があるとの内容の報道がされた(甲11)。 イ α市議会は、令和元年6月10日、Aの勤務実態や報酬等について、α 市による調査及び解明を求める旨の決議をした。 α市議会の上記決議に基づいて設置された第三者実態調査委員会は、被告に対し、令和2年2月3日付け報告書を提出した(甲14。以下「本件委員会報告書」という。)。本件委員会報告書には、Aが報酬を得て補助参加人の理事長相談役として事務に従事したことは、兼業禁止を定める地方 公務員法38条に違反すること、補助参加人に助成金を交付する必要性があったか疑問があること等の記載がある。(甲12、14)⑷ 住民監査請求 ア原告らを含むα市の住民は、令和2年3月30日、α市がAに対して平成24年4月から平成31年3月までにα市の臨時職員としての給与を支払ったことは、兼業禁止を定めた地方公務員法38条に違反するものであり、この支払によってα市は同給与相当額の損害を被ったなどと主張して、α市監査委員に対し、被告においてAに対する損害賠償請求をするなどの 必要な措置を講じるよう勧告することを求める住民監査請求をした(甲24。以下「本件監査請求」という。)。 イ α市監査委員は、令和2年4月8日、本件監査請求は、Aに地方公務員法38条に違反する行為があったとして、本件要綱13条4号に基づき、α市から支払われた助成金の返還を補助参加人に対して請求する等の必要 な措置を講じるように勧告することを求めているものと解した上で、補助参加人の運営は財務会計行為に当たらず、住民監査請求の対象にならないなどと判断して、本件監査請求を却下した。この結果は、同日、原告らを含む本件監査請求の請求人に通知された。(甲22)⑸ 本件訴訟の提起等( 営は財務会計行為に当たらず、住民監査請求の対象にならないなどと判断して、本件監査請求を却下した。この結果は、同日、原告らを含む本件監査請求の請求人に通知された。(甲22)⑸ 本件訴訟の提起等(顕著な事実) ア原告らは、令和2年5月8日、本件訴訟を提起した。原告らは、本件訴訟において、当初、補助参加人が交付を受けた助成金全額(合計4億1100万円)が不当利得に該当すると主張して、被告に対し、補助参加人に同額及びこれに対する利息金を支払うよう請求することを求めていた。 イ補助参加人は、令和2年9月24日、被告を補助するため本件訴訟に参 加した。 ⑹ 本件訴訟提起後の経過ア被告は、令和2年8月から同年9月にかけて、警視庁に対し、Aが補助参加人から得ていた報酬の計算が不合理で、過大である等の相談をした。 イ警視庁刑事部捜査第二課司法警察員警部は、令和3年1月19日付けで 「給与等の会計処理分析報告書」を作成した(甲37。以下「本件捜査報 告書」という。)。本件捜査報告書には、平成24年度から令和元年度にかけて、A及び補助参加人の職員が、同人らに対する給与等が過大に支給されていることを隠ぺいするために、同人らに対する給与等の支出を、本来計上されるべき勘定科目である給与等として計上せず、調査設計費等の他の勘定科目に付け替えるという偽装の会計処理を行っていた旨の記載があ る(以下、A及び補助参加人の職員が行ったとされる偽装の会計処理を「本件科目偽装」という。)。 ウ被告は、令和3年2月15日、警視庁に対し、A及び補助参加人の職員が、本件科目偽装を内容とする事業計画書等を提出して平成30年度の助成金交付を申請した行為が詐欺罪に当たると思料するので告訴する旨の告 訴状を提出した(乙1 視庁に対し、A及び補助参加人の職員が、本件科目偽装を内容とする事業計画書等を提出して平成30年度の助成金交付を申請した行為が詐欺罪に当たると思料するので告訴する旨の告 訴状を提出した(乙11)。 エ A及び補助参加人の職員は、令和3年2月17日、α市から平成30年度の助成金8000万円を詐取したとして逮捕され、令和3年3月10日、東京地方裁判所立川支部に起訴された。同裁判所同支部は、上記職員については同年10月21日に、Aについては同年11月18日に、それぞれ 有罪判決を言い渡した。 オ被告は、令和3年7月5日付けで、補助参加人に対し、平成30年度の助成金相当額8000万円及びこれに対する交付日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求した(甲29)。 補助参加人は、同年8月2日、α市に対し、被告から請求を受けた上記 助成金相当額及び遅延損害金の合計8923万0451円を支払った(甲30)。 カ原告らは、本件訴訟が書面による準備手続に付されていた令和4年10月31日、上記エの刑事事件の記録を謄写して入手した本件捜査報告書を書証として提出し、また、本件捜査報告書等に依拠し、Aが平成24年度 から令和元年度にかけて本件科目偽装を行っていた旨の主張を記載した同 日付け第6準備書面を提出した。そして、原告らは、令和5年3月2日の本件口頭弁論期日において、同準備書面を陳述するとともに、α市は補助参加人に対して平成24年度から平成29年度までの助成金(合計2億9500万円。以下「本件助成金」という。)相当額につき本件科目偽装を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有し、 被告はこれらの請求権の行使を違法に怠っている(従前の主張をこの主張に改める)旨記載された 。)相当額につき本件科目偽装を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有し、 被告はこれらの請求権の行使を違法に怠っている(従前の主張をこの主張に改める)旨記載された同年2月22日付け第7準備書面を陳述した。(顕著な事実)キ原告らは、令和5年4月20日の本件口頭弁論期日において、本件訴訟における請求を上記第1のものに減縮する旨記載された同年3月16日付 け「請求の減縮申立書」及び同月27日付け「請求の減縮訂正の申立書」をそれぞれ陳述した。被告は、同口頭弁論期日において、本件捜査報告書が本件訴訟の書証として提出されるまで、本件助成金の各交付申請に関して本件科目偽装が行われたという認識はなかったと主張した。 (顕著な事実)ク被告は、令和5年7月6日、本件科目偽装を理由として、本件要綱1 3条2号に基づき、本件助成金の各交付決定を取り消した(乙19、丙2)。 被告は、令和5年7月10日、補助参加人に対し、内容証明郵便により、本件助成金の各交付決定の取消しを通知するとともに、本件助成金の合計額に相当する2億9500万円及び各交付日から支払済みまで年 5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求した(以下「本件支払請求」という。)。また、被告は、同年9月1日、補助参加人に対し、内容証明郵便により、改めて本件助成金の各交付決定の取消しを通知するとともに、上記金額を90日以内に支払うよう請求した。(乙19、21~23、丙2) 2 争点 ⑴ 本案前の争点ア相当な期間内に監査請求をしたといえるか(争点1)イ訴えの利益の存否(争点2)⑵ 本案に関する争点α市の補助参加人に対する請求権の有無(争点3) 3 当事者の主張⑴ 争点1(相当な期間内に監査請 請求をしたといえるか(争点1)イ訴えの利益の存否(争点2)⑵ 本案に関する争点α市の補助参加人に対する請求権の有無(争点3) 3 当事者の主張⑴ 争点1(相当な期間内に監査請求をしたといえるか)について(原告らの主張)助成金交付の適法性について初めて疑問を呈したのは本件委員会報告書であり、本件委員会報告書が提出されるまでは、一般の住民が相当高度の注意 力を尽くしたとしても、監査請求をするに足りる程度に助成金の交付が違法、不当であることを知ることはできなかった。原告らは、本件委員会報告書が被告に提出されてから2か月以内に本件監査請求をしたのであるから、相当な期間内に監査請求をしたといえる。 (被告の主張) 本件監査請求は、本件助成金の交付決定日から1年以上経過後に行われており、監査請求すべき期間を徒過したものである。 また、助成金交付の必要性や補助参加人の運営手法の適法性に対しては、平成31年3月に行われたα市の議会や予算特別委員会において疑問が示されており、このことからすると、原告らは、同月又は予算特別委員会の議事 録が公開された令和元年6月には、監査請求をするに足りる程度に助成金交付に係る財務会計行為の内容を知ることができた。ところが、本件監査請求は令和2年3月に行われたものであるから、相当な期間内に監査請求がされたとはいえない。 ⑵ 争点2(訴えの利益の存否)について (原告らの主張) ア被告は、補助参加人に対して本件支払請求をしているが、原告らは、後記イ及びウのとおり、本件訴訟の訴えの利益をなお有する。 イ被告は、警視庁に告訴状を提出した時点(前提事実⑹ウ)又は本件訴訟に原告らの第6準備書面が提出された時点(前提事実⑹カ)において、新たな事情の変 ウのとおり、本件訴訟の訴えの利益をなお有する。 イ被告は、警視庁に告訴状を提出した時点(前提事実⑹ウ)又は本件訴訟に原告らの第6準備書面が提出された時点(前提事実⑹カ)において、新たな事情の変化が生じたとして、補助参加人に対して本件助成金相当額の 返還請求をすることが可能であった。ところが、被告は、上記各時点では同返還請求を行わなかったにもかかわらず、令和5年7月になってようやく本件助成金の各交付決定を取り消し、本件支払請求をした。新たな事情の変化があったわけではないのに、被告が補助参加人に対してこのような請求をすることは、本件助成金の各交付は適法であるとの従前の主張を被 告が転換したことを意味するから、補助参加人との関係で信義則又は禁反言に悖る行為であり、許されない。したがって、本件訴訟における訴えの利益の判断は、被告が本件支払請求をした事実については考慮に入れずになされるべきである。 ウ住民訴訟の目的は、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住 民に対し、財務会計上の行為の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することにある。ところが、住民訴訟の係属中に執行機関が損害賠償又は不当利得返還の請求をした場合に当該訴訟の訴えの利益が失われると解するならば、判決によって地方財務行政の運営の違法性を確定することができ なくなり、上記住民訴訟の目的に反する。したがって、訴訟の係属中に執行機関が損害賠償又は不当利得返還の請求をしても、当該訴訟の訴えの利益は失われないと解すべきである。 (被告の主張)被告は、補助参加人に対し、本件訴訟において原告らが義務付けを求める 内容のとおりの請求(本件支払請求)を行ったものであるから、本件訴訟の 益は失われないと解すべきである。 (被告の主張)被告は、補助参加人に対し、本件訴訟において原告らが義務付けを求める 内容のとおりの請求(本件支払請求)を行ったものであるから、本件訴訟の 訴えの利益は否定されるべきである。 ⑶ 争点3(α市の補助参加人に対する請求権の有無)について(原告らの主張)ア補助参加人の理事長相談役であったAは、被告に対し、本件科目偽装を内容とする事業計画書を提出して本件助成金の交付を申請し、その交付を 受けた。したがって、補助参加人は、詐欺により本件助成金の交付を受けたものであるから、α市は、補助参加人に対し、本件助成金相当額の不法行為に基づく損害賠償請求権及び各交付日からの遅延損害金請求権を有する。 イまた、補助参加人は、本件科目偽装という「偽りその他不正な行為によ り助成を受けた」ものであるから、被告は、本件要綱13条2号に基づき、本件助成金の各交付決定を取り消すべきである。そうすると、本件助成金の各交付は法律上の原因を欠くことになるから、α市は、補助参加人に対し、本件助成金相当額の不当利得返還請求権及び各交付日からの利息金請求権を有する。 (被告の主張)ア平成30年度の助成金交付については、その申請に先立ち、補助参加人から予算要望があったが、本件助成金の各交付申請については予算要望がなかった。したがって、平成30年度の助成金の交付申請が不法行為に該当するからといって、本件助成金の各交付申請が不法行為に該当するとは いえない。 イまた、平成24年度及び平成25年度の助成金の各交付決定は、本件科目偽装を内容とする事業計画書がα市に到達する前に行われたものであるから、本件科目偽装との間には因果関係がない。 ウ補助参加人は、Aが本件助成金の各交 び平成25年度の助成金の各交付決定は、本件科目偽装を内容とする事業計画書がα市に到達する前に行われたものであるから、本件科目偽装との間には因果関係がない。 ウ補助参加人は、Aが本件助成金の各交付申請に際して本件科目偽装を行 っていたことを知らなかったから、本件助成金の各交付が法律上の原因を 欠くことにつき善意である。 (補助参加人の主張)ア補助参加人の代表者である理事長が自ら本件科目偽装を行ったことはないから、補助参加人は、α市に対して不法行為責任を負わない。 イ補助参加人は、Aが本件助成金の各交付申請に際して本件科目偽装を行 っていたことを知らなかったから、本件助成金の各交付が法律上の原因を欠くことにつき善意である。 第3 当裁判所の判断 1 争点2(訴えの利益の存否)について⑴ 前提事実⑹クのとおり、被告は、令和5年7月6日に本件助成金の各交付 決定を取り消した上で、同月10日、補助参加人に対し、本件助成金の合計額に相当する2億9500万円及び各交付日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求したものであり(本件支払請求)、これは、不法行為に基づく本件助成金相当額の損害賠償請求及び各交付日からの遅延損害金請求と解される。そうすると、本件支払請求は、本件訴訟で原告らが 被告に対して補助参加人に請求するよう求めているものと一致し、本件訴訟において原告らの求めている内容は全て実現したものといえるから、本件訴訟について原告らの訴えの利益を認めることはできない。 ⑵ア原告らは、被告による本件支払請求は、補助参加人との関係で信義則又は禁反言に悖る行為であって許されない旨の主張をする。 しかし、この主張は、被告と補助参加人との関係をいうものであって、原告らの提起 、被告による本件支払請求は、補助参加人との関係で信義則又は禁反言に悖る行為であって許されない旨の主張をする。 しかし、この主張は、被告と補助参加人との関係をいうものであって、原告らの提起した本件訴訟の訴えの利益の有無には直接関係のない事柄である。 この点を措くとしても、本件訴訟においては、前提事実⑹カのとおり、原告らが、本件捜査報告書を入手して書証として提出し、これに依拠しつ つ、α市は補助参加人に対して本件助成金相当額につき不法行為に基づく 損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有する旨の主張をしたところ、前提事実⑹キ及びクのとおり、被告は、本件捜査報告書が本件訴訟の書証として提出されるまで、本件助成金の各交付申請に関して本件科目偽装が行われたという認識はなかったと主張した上で、その後、令和5年7月に本件助成金の各交付決定を取り消し、補助参加人に対して本件支払請求を しているのである。そうすると、本件においては、原告らによる本件捜査報告書の提出及びこれを踏まえた主張という新たな事情が生じたことを踏まえ、被告において、補助参加人に対し、原告らが被告に対して義務付けを求めた内容のとおりの請求をするに至ったものといえるのであり、被告が警視庁に告訴状を提出した時点又は本件訴訟に原告らの第6準備書 面が提出された時点であれば許容される補助参加人に対する支払請求(原告らはこのような前提に立っているものと解される。)が、上記各時点を過ぎると許容されなくなると解する根拠は見当たらないから、本件支払請求が信義則や禁反言に悖る行為であるとはいえない。 イ原告らは、住民訴訟の係属中に執行機関が損害賠償又は不当利得返還の 請求をした場合に当該訴訟の訴えの利益が失われると解するならば、判決によって地方財務行政の運 る行為であるとはいえない。 イ原告らは、住民訴訟の係属中に執行機関が損害賠償又は不当利得返還の 請求をした場合に当該訴訟の訴えの利益が失われると解するならば、判決によって地方財務行政の運営の違法性を確定することができなくなり、住民訴訟の目的に反する旨の主張をする。しかし、本件においては、本件訴訟の経過(前提事実⑹カないしク)のとおり、住民たる原告らの訴訟活動を通じて、原告らが判決によって求めようとしていた本件支払請求が実現 していることから、既に地方財務行政の適正な運営が図られたものといえる(本件支払請求に係る債権については、α市が地方自治法242条の3第2項に基づく訴訟の提起を義務付けられることはないが、被告において、地方自治法施行令171条の2に従って同債権を適切に管理することになるものと解される。)。したがって、本件訴訟の訴えの利益が失われたと判 断することが、住民訴訟の目的に反するものとはいえない。 ⑶ なお、争点3(α市の補助参加人に対する請求権の有無)についての被告の主張は上記第2の3⑶(被告の主張)のとおりであるが、同主張は、被告が本件支払請求をする前からされていたものであって、本件訴訟の経緯等に照らすと、本来は撤回されるべきものが形式上残存しているにすぎないものと認めるのが相当であり、本件支払請求の有効性や信用性等に影響を与える ものではない。 2 まとめ以上によれば、本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、不適法である。 第4 結論 以上の次第で、本件訴えは不適法であるから、これを却下することとする。 なお、訴訟費用の負担については、上記第3の1イのとおり、原告らの訴訟活動を通じて本件支払請求が実現したこと等に鑑み、行政事件訴訟法7条、民訴法62条、6 であるから、これを却下することとする。 なお、訴訟費用の負担については、上記第3の1イのとおり、原告らの訴訟活動を通じて本件支払請求が実現したこと等に鑑み、行政事件訴訟法7条、民訴法62条、66条を適用して、補助参加によって生じた費用は補助参加人の負担とし、その余の訴訟費用は被告の負担とするのが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官品田幸男 裁判官横井靖世 裁判官彦田まり恵(別紙省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る