令和4(ワ)9538 旧取締役に対する損害賠償請求事件 ほか

裁判年月日・裁判所
令和6年10月10日 東京地方裁判所
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判決文本文95,019 文字)

- 1 - 令和6年10月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第9538号旧取締役に対する損害賠償請求事件(本訴事件)令和4年(ワ)第70037号退職慰労金請求事件(反訴事件)口頭弁論終結日令和6年7月17日判決 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して3000万円及びこれに対する令和4年5月8日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告A、被告B及び被告Dは、原告に対し、連帯して290 0万円及びこれに対する令和4年5月8日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 被告B、被告C及び被告Dは、原告に対し、連帯して2億2859万9000円及びこれに対する令和4年5月8日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 4 原告は、被告Aに対し、2億6105万円及びこれに対する令和元年7月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 原告は、被告Bに対し、2880万円及びこれに対する令和元年7月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支 払え。 6 原告のその余の本訴請求並びに被告A及び被告Bのその余の反訴請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は、本訴事件について生じた部分は、これを20分し、その8を被告B及び被告Dの負担とし、その3を被告Cの 負担とし、その1を被告Aの負担とし、その余は原告の負担と- 2 - し、反訴事件について生じた部分は、全て原告の負担とする。 8 この判決は、第1項から第5項までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 は原告の負担と- 2 - し、反訴事件について生じた部分は、全て原告の負担とする。 8 この判決は、第1項から第5項までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴事件被告らは、原告に対し、連帯して4億8233万8829円及びこれに対する令和4年5月8日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 反訴事件⑴ 原告は、被告Aに対し、2億6105万円及びこれに対する令和元年7月 25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ⑵ 原告は、被告Bに対し、2880万円及びこれに対する令和元年7月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本訴事件は、放送事業等を行う株式会社である原告が、デジタルラジオ番組 放送等の新規事業を行う上で子会社として設立した放送・通信サービスの提供等を行うTOKYOSMARTCAST株式会社(以下「本件会社」という。)について、①本件会社を原告の持分法適用関連会社とする内容の平成29年3月期及び平成30年3月期の連結計算書類を作成等したこと、②平成30年2月及び3月に金銭信託契約を利用して本件会社に合計2億3000万円の貸付 けを行ったこと、③原告によるラジオ番組放送に係る商流に本件会社を原告の代理店として関与させたことについて、当時原告の取締役であった被告らに任務懈怠責任がある旨を主張して、被告らに対し、会社法423条1項に基づく損害賠償として、4億8233万8829円及びこれに対する訴状送達日の翌日である令和4年5月8日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅 延損害金の連帯支払を求める事案である。 - 3 - 反訴事件は、被告A及 円及びこれに対する訴状送達日の翌日である令和4年5月8日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅 延損害金の連帯支払を求める事案である。 - 3 - 反訴事件は、被告A及び被告Bが、原告に対し、取締役の退職慰労金として、被告Aについては2億6105万円及びこれに対する令和元年7月25日から支払済みまで商事法定利率(平成29年法律第45号による改正前の商法514条所定のもの。以下同じ。)である年6分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告Bについては2880万円及びこれに対する同日から支払済みまで上 記同旨の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠〔以下、特に断らない限り枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)⑴ 当事者等 ア原告(甲1)原告は、昭和45年3月に設立された、放送法による基幹放送事業及びその他の放送事業等を目的とする株式会社である。原告は、取締役会、監査役会及び会計監査人を設置し、その発行する全ての株式に譲渡制限のあるいわゆる非公開会社であり、資本金の額が13億3500万円の大会社 である。また、原告の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までである。 イ被告ら(甲1、2)(ア) 被告A被告Aは、昭和49年に原告に入社し、平成3年6月に原告の取締役 に就任し、平成9年6月から常務取締役、平成13年6月から専務取締役、平成17年6月から代表取締役社長を務めた後、平成25年6月からは代表取締役会長を務め、令和元年6月25日に任期満了により取締役を退任した。 (イ) 被告B 被告Bは、日本航空株式 から代表取締役社長を務めた後、平成25年6月からは代表取締役会長を務め、令和元年6月25日に任期満了により取締役を退任した。 (イ) 被告B 被告Bは、日本航空株式会社の取締役などを歴任した後、平成23年- 4 - 6月から原告の顧問等を務めるようになり、平成25年6月からは原告の代表取締役社長を務め、令和元年6月25日に任期満了により取締役を退任した。 (ウ) 被告D被告Dは、昭和60年に原告に入社し、平成23年6月に原告の取締 役に就任し、平成25年6月から常務取締役を務めた後、平成27年6月からは専務取締役を務め、令和元年6月25日に任期満了により取締役を退任した。 また、被告Dは、平成27年3月に、本件会社の取締役に就任し、同月から同社の取締役会長を務め、平成30年6月29日からは代表取締 役会長を務め、令和元年6月28日に任期満了により取締役を退任した。 (エ) 被告C被告Cは、昭和59年に原告に入社した後、平成27年6月に原告の常務取締役に就任して、原告の経営企画室及びグループ経営管理室を所管して、経営企画、経理及び財務を統括し、令和元年6月25日に任期 満了により取締役を退任した。 ウ本件会社(甲2)本件会社は、平成27年1月23日に原告の完全子会社として設立された、放送番組の企画、制作及び販売、出版、録音、録画、アプリケーションソフトウェア等の企画、制作、複製及び販売並びにこれらの放送・通信 を通じたサービスの提供等を目的とする株式会社である。本件会社は、設立時からE(以下「E」という。)が代表取締役を務めており、また、上記イ(ウ)のとおり、一時期、被告Dも同社の代表取締役を を通じたサービスの提供等を目的とする株式会社である。本件会社は、設立時からE(以下「E」という。)が代表取締役を務めており、また、上記イ(ウ)のとおり、一時期、被告Dも同社の代表取締役を務めていた。 本件会社は、令和元年9月に放送事業を終了し、同年10月7日に株主総会の決議によって解散し、令和2年2月27日に特別清算開始の命令を 受けて、同年9月11日に特別清算終結の決定が確定した。 - 5 - ⑵ i-dio 事業の概要(甲15の1〔8頁〕、乙1)i-dio 事業(以下「本件事業」という。)とは、i-dio 放送を用いて、デジタルラジオ番組の放送や各種のサービスの提供を行う事業である。また、i-dio 放送とは、地上アナログテレビ放送が終了したことに伴い、空白のできた周波数帯のうち、99MHzを超え108MHz以下の周波数帯であるV HF-Low帯を利用して行う、V-Lowマルチメディア放送(地上波デジタル放送)である。 本件事業においては、(ア)デジタルラジオ番組放送等のいわゆるBtoC事業を行うことのほか、例えば、(イ)高速道路会社が走行中の車両に交通情報やサービスエリアの店舗情報等を配信するためのサービスの提供を行うなど、 i-dio 放送を活用して企業向けの情報配信サービスの提供を行う等のBtoB事業及び(ウ)地方自治体が住民に緊急地震速報や津波速報等の防災情報を配信するためのサービスの提供を行うなど、i-dio 放送を活用して地方自治体向けに防災情報システムに係るサービスの提供を行う等のBtoG事業を行うことなどが想定されていた。 本件事業では、おおむね以下のとおりの方法で収益をあげることが予定されていた。 ① 持株会社として株式 ービスの提供を行う等のBtoG事業を行うことなどが想定されていた。 本件事業では、おおむね以下のとおりの方法で収益をあげることが予定されていた。 ① 持株会社として株式会社ジャパンマルチメディア放送(設立時の商号はBIC株式会社である。以下、商号変更の前後を問わず「JMB社」という。)を設立する。 ② JMB社は、完全子会社として、認定基幹放送事業者(放送法2条21号)に対して基幹放送局設備の提供を行う基幹放送局提供事業者(同条24号)として株式会社VIP(以下「VIP社」という。)を設立する。VIP社は、いわゆるハード事業者として、鉄塔、放送基地局等の基幹放送局設備(以下、単に「放送設備」ということがある。)を整備し、 これを保有する。 - 6 - ③ VIP社は、認定基幹放送事業者となるマルチメディア放送株式会社に対し、基幹放送局設備(放送設備)を提供し、その対価として電波利用料及び設備利用料を収受する。マルチメディア放送株式会社は、いわゆるソフト事業者であり、全国の各地域(東京、北日本、中日本、大阪、中国・四国及び九州・沖縄)の合計6社の会社に分かれ、その主要な株 主には、JMB社のほか、各地域におけるFM放送局や地元の有力企業等がなる(以下、これらのマルチメディア放送株式会社を指して「MM各社」という。)。 ④ MM各社は、コンテンツプロバイダー事業者(以下「CP」という。)に対し、i-dio 放送の帯域を貸与し、その対価として帯域使用料を収受 する。 ⑤ CP各社は、貸与を受けた帯域を利用して、デジタルラジオ番組の放送を行ってスポンサー収入や広告収入を得たり、当該帯域を利用した情報配信サービスの提供を行って利用料を得るなどして、 る。 ⑤ CP各社は、貸与を受けた帯域を利用して、デジタルラジオ番組の放送を行ってスポンサー収入や広告収入を得たり、当該帯域を利用した情報配信サービスの提供を行って利用料を得るなどして、収益を得る。 ⑶ 本件事業の進行等に関する事実経過の概要 ア原告は、平成25年3月、本件事業に参入する方針を公表した。 イ原告は、平成26年1月16日、JMB社を設立した。なお、JMB社の発行済株式総数に占める原告の持株比率は、平成31年3月末日時点で約27%であった。 ウ原告は、平成27年1月23日、CPとして、本件会社を設立した。 エ i-dio 放送の開始時期について、原告の当初の計画では、平成26年7月頃には九州・沖縄ブロックで、同年12月頃には近畿ブロックで、平成27年3月頃には東京ブロックで開始することを予定していた。 しかし、i-dio 放送の放送波と航空無線との電波の混信問題が発生したことなどから、i-dio 放送の開始時期は当初の計画から遅れることとなっ た。その後、平成28年3月に総務省からの認定を受けて、東京、大阪及- 7 - び九州・沖縄の各ブロックで放送波の発信ができる状態となり、平成28年7月には中日本ブロックで、平成30年5月には北日本ブロックで、同年6月には中国・四国ブロックで、それぞれ放送波の発信ができる状態となった。 オ本件会社は、原告の平成28年3月期の連結計算書類においては、原告 の連結子会社とされていたが、平成29年3月期の連結計算書類及び平成30年3月期の連結計算書類においては、原告の連結子会社ではなく持分法適用関連会社とされた。(甲7、13)カ本件会社は、原告が株式会社三井住友銀行(以下「三井住友銀 の連結計算書類及び平成30年3月期の連結計算書類においては、原告の連結子会社ではなく持分法適用関連会社とされた。(甲7、13)カ本件会社は、原告が株式会社三井住友銀行(以下「三井住友銀行」という。)との間で締結していた金銭信託契約(以下、契約の更新又は変更の前 後を問わず、「本件金銭信託契約」という。)を利用して、同銀行から、平成30年2月26日に5500万円を、同年3月22日に1億7500万円を、それぞれ借り入れた(以下、この2つの借入れを「本件個別貸付」という。)。(甲26)キ原告は、平成30年5月、全国農業協同組合連合会(以下「JA」とい う。)をスポンサーとする新たなラジオ番組の放送を開始したところ、その際、本件会社を原告側の代理店として商流に加えた。 ク平成31年4月、原告の内部通報窓口及び会計監査人に対して、原告と本件会社との間の取引の適切性に関する通報があり、これを契機として、令和元年5月10日開催の取締役会において、社外の専門家を委員とする 第三者委員会(以下「本件第三者委員会」という。)を設置する旨の決議がされた。(甲15の1〔1頁〕)ケ被告らは、令和元年6月25日に原告の取締役を退任した。その後、原告は、同年9月の取締役会において、本件事業から撤退することを決議した。 ⑷ 退職慰労金の支給決定- 8 - ア平成27年6月25日に開催された原告の定時株主総会において、被告A及び被告Bを含む取締役に対し、各人の就任時から上記株主総会の終結時までの期間に対応する退職慰労金を原告の「役員退任慰労金内規」に基づいて支給し、支給時期は取締役退任の時とし、支給金額は取締役会に一任する旨の決議がされた。(乙9) イ上記株主総会の直後に までの期間に対応する退職慰労金を原告の「役員退任慰労金内規」に基づいて支給し、支給時期は取締役退任の時とし、支給金額は取締役会に一任する旨の決議がされた。(乙9) イ上記株主総会の直後に開催された原告の取締役会において、退職慰労金の個別支給額及びその支給時期は、報酬委員会の審議を経て代表取締役が決定する旨の決議がされ、上記取締役会の直後に開催された報酬委員会において、退職慰労金の具体的金額、方法等は代表取締役に一任することが承認された。(乙10、12) ウ平成27年7月24日、当時の代表取締役である被告Bは、各取締役の退職慰労金の具体的金額を決定し、被告Aについては2億6105万円、被告Bについては2880万円と決定した。(乙13) 2 争点⑴ 本訴事件 ア被告らの任務懈怠責任の有無(ア) 請求原因1(争点1の1)本件会社を原告の持分法適用関連会社とする内容の平成29年3月期及び平成30年3月期の連結計算書類を作成等したことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか。 (イ) 請求原因2(争点1の2)本件個別貸付が行われたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか。 (ウ) 請求原因3(争点1の3)ラジオ番組の放送に係る商流に本件会社を原告の代理店として関与さ せたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか。 - 9 - イ相当因果関係のある損害の発生及びその額(争点2)⑵ 反訴事件被告A及び被告Bの退職慰労金請求権の有無(争点3)第3 当事者の主張 1 争点1の1(請求原因1-本件会社を原告の持分法適用関連会社とする内容 の平成29年3月期及び平成30年3月期 被告A及び被告Bの退職慰労金請求権の有無(争点3)第3 当事者の主張 1 争点1の1(請求原因1-本件会社を原告の持分法適用関連会社とする内容 の平成29年3月期及び平成30年3月期の連結計算書類を作成等したことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか)について(原告の主張)⑴ 平成29年3月期の連結計算書類における連結外しア平成29年3月期の連結計算書類の作成経緯 平成28年3月末時点において、原告及び原告の連結子会社であるジグノシステムジャパン株式会社(以下「ジグノ社」という。)は、両社で併せて、本件会社の発行済株式総数の50%に相当する株式(以下、本件会社の株式を指して「本件株式」という。)を保有しており、原告は、同年3月期の連結計算書類において本件会社を原告の連結子会社として扱ってい た。被告A及び被告Bは、本件会社が原告の連結子会社のままでいると、当時拡大し続けていた本件会社の損失額がそのまま原告の連結計算書類に反映されてしまい、連結営業損益が大幅に悪化してしまうことや、本来、本件事業のCPには外部企業にも出資をしてもらうことが必要とされていたにもかかわらず、原告のグループ会社以外からの出資を獲得できてい ないことが明らかとなってしまうことから、本件会社を原告の連結子会社ではなく持分法適用関連会社とすべきとの方針を立てており、被告D及び被告Cに対しても、そのための施策を検討するよう指示をしていた。 被告Bは、平成29年3月、旧知の仲であったF(以下「F」という。)に本件会社への出資を要請し、これを受けて、Fは、同月27日に、自身 が代表取締役を務める株式会社エムエムアイ(以下「MMI社」という。)- 10 - において、同月30日を払 いう。)に本件会社への出資を要請し、これを受けて、Fは、同月27日に、自身 が代表取締役を務める株式会社エムエムアイ(以下「MMI社」という。)- 10 - において、同月30日を払込期日として、払込金額1億5000万円で本件株式3000株を引き受けることを了承した。MMI社は、同日、上記払込金額の払込みを実行し、本件株式3000株を引き受けた。これにより、同月末時点における原告及びジグノ社の本件株式の持株比率は、合計38.5%まで減少した。そのため、本件会社を持分法適用関連会社とす る内容の原告の平成29年3月期の連結計算書類が作成され、同年5月25日の取締役会において、同連結計算書類は承認された。 イ MMI社による引受期間は3か月間であり、3か月経過後には払込金額を同社に返還する旨の合意があったこと被告BとFとの間では、裏約束として、上記アの本件株式3000株の 引受期間は平成29年6月末までの短期間(3か月間)のものであり、その期間経過後にはMMI社が保有する本件株式を原告又は原告のグループ会社が買い取ることでMMI社が払込金額の返還を受けられるようにする旨の合意(以下「本件合意1」という。)がされていた。その結果、同月には、ジグノ社はMMI社が保有する本件株式3000株のうち200 0株を買い取り、その際、ジグノ社は、MMI社に対し、本件株式2000株分の払込金額に相当する1億円を支払った。 被告BとFとの間で本件合意1がされていた事実は、MMI社の担当者から本件会社の担当者に送信された平成29年5月25日付けのメール(甲8)に「引受期間は三か月間とうかがっておりますが、6月末までと 考えておけば宜しいでしょうか。」との記載があることなどから明らかである。 当者に送信された平成29年5月25日付けのメール(甲8)に「引受期間は三か月間とうかがっておりますが、6月末までと 考えておけば宜しいでしょうか。」との記載があることなどから明らかである。なお、MMI社が本件株式を2000株しか買い取らなかったことは、本件合意1がされた後に事後的な合意があったからにすぎない。 そして、被告Bは、平成29年6月8日に上記メールを被告A、被告D及び被告Cに転送していることからすると、同被告らにおいても、本件合 意1が存在していることを認識していたといえる。 - 11 - それにもかかわらず、被告らは、本件会社を持分法適用関連会社とする内容の原告の平成29年3月期の連結計算書類を訂正することなく、これを同年6月19日の株主総会に提出し、その報告を行った。 ウ被告らに任務懈怠責任があること(ア) 会社法431条に違反すること MMI社による本件株式3000株の引受けに際して本件合意1がされていたことに照らすと、当該株式は、MMI社の名義ではあるが、原告がその計算において保有する株式であったといえる。その場合、平成29年3月期末時点における原告及びジグノ社の本件株式の持株比率は、合計で38.5%ではなく、約61.6%となる。また、本件会社の取 締役7名中6名が原告又はジグノ社の(元)役職員であった。そのため、「連結会計基準」第7項⑴又は⑵②及び第6項の規定を適用すると、本件会社は原告の連結子会社であると評価すべきであった。それにもかかわらず、原告の平成29年3月期の連結計算書類は、本件会社を持分法適用関連会社とする内容であったため、本件会社が連結子会社であれば 原告の連結営業損益に反映されていたはずの本件会社の営業損失が わらず、原告の平成29年3月期の連結計算書類は、本件会社を持分法適用関連会社とする内容であったため、本件会社が連結子会社であれば 原告の連結営業損益に反映されていたはずの本件会社の営業損失が、持分割合の限度でしか反映されなくなり、その結果、原告の連結営業利益において約3億8300万円、当期純利益において約5900万円が過大に計上されてしまった。このような会計処理は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」である連結会計基準に反するものであるから、 会社法431条に違反する。 (イ) 被告Bの責任被告Bは、Fとの間で自ら本件合意1をし、上記(ア)の違法な会計処理を実行させ、虚偽の内容の連結計算書類を作成させたことから、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (ウ) 被告A、被告D及び被告Cの責任- 12 - 被告A、被告D及び被告Cは、上記イのとおり、遅くとも平成29年6月8日には本件合意1の存在を認識していた。そうすると、同被告らは、遅くとも同日時点において、取締役会で承認された連結計算書類が連結会計基準に違反していることを認識していたのであるから、同日以降、速やかに同連結計算書類の訂正を行い、法令違反を是正すべき義務 があった。それにもかかわらず、同被告らは、上記連結計算書類の訂正を行うことなく、同月19日の株主総会において、これを提出し、その報告を行った。したがって、同被告らは、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類における連結外し ア平成30年3月期の連結計算書類の作成経緯等平成29年8月末時点において、原告及びジグノ社は、両社で併せ う。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類における連結外し ア平成30年3月期の連結計算書類の作成経緯等平成29年8月末時点において、原告及びジグノ社は、両社で併せて、本件会社の発行済株式総数の45.7%に相当する本件株式を保有していた。 本件会社の代表取締役であるEは、平成30年3月頃、ジグノ社の連結 子会社であり、本件株式200株を保有する株式会社オニオン(以下「オニオン社」という。)の代表取締役であるG(以下「G」という。)に対し、ジグノ社が保有するオニオン社の株式のうち、オニオン社がジグノ社の連結子会社から外れるために必要な数のオニオン社株式をGに譲渡することと引き換えに、オニオン社にジグノ社から本件株式1400株を譲り受 けてもらうことを考え、事前に被告A、被告B及び被告Dと協議を行い、その承諾を得た上で、Gに対し、その旨の提案を行った。これに対し、Gからは、オニオン社が譲り受ける本件株式については同年6月末までに原告らが買い取ることを文書化することなどの条件が提示され、これを受けて、Eは、被告A、被告B及び被告Dと協議を行い、その結果、オニオン 社の本件株式の保有期間を1年程度とするよう交渉することとなった。ま- 13 - た、被告Dは、オニオン社から本件株式を買い取る義務を負担することとなる原告のグループ会社を探すこととなり、結局、原告の連結子会社である株式会社メディアコミュニケーションズ(以下「メディコム社」という。)が上記義務を負担することとなった。 このような経緯の後、本件会社、オニオン社及びメディコム社の間にお いて、平成30年3月26日、①Gがジグノ社からオニオン社の株式125株を譲り受けること及びオニオン社がジグノ社から本件 このような経緯の後、本件会社、オニオン社及びメディコム社の間にお いて、平成30年3月26日、①Gがジグノ社からオニオン社の株式125株を譲り受けること及びオニオン社がジグノ社から本件株式1400株を譲り受けることを効力発生の停止条件とすること、②オニオン社は、本件会社に対して書面で請求することにより、平成31年4月末日において、オニオン社が保有する本件株式1600株又はその一部を1株当たり 5万円で買い取ることを請求できること、③メディコム社は、本件会社の連帯保証人となることなどを内容とする合意書(甲12の2。以下「本件合意書2」という。)が締結された。 オニオン社は、平成30年3月末までに、本件合意書2のとおり、ジグノ社から本件株式1400株を譲り受けた。これにより、同月末時点にお ける原告及びジグノ社の本件株式の持株比率は、合計35.2%まで減少した。そのため、本件会社を持分法適用関連会社とする内容の原告の平成30年3月期の連結計算書類が作成され、同連結計算書類は同年5月29日の取締役会において承認された。なお、オニオン社は、平成31年4月25日、本件会社及びメディコム社に対し、本件合意書2に基づいて、オ ニオン社が保有する本件株式1600株を買い取るよう請求をした。 イ被告らに任務懈怠責任があること(ア) 会社法431条に違反することオニオン社による本件株式1400株の譲受けに際して本件合意書2が締結されていたことに照らすと、当該株式は、オニオン社の名義では あるが、原告がその計算において保有する株式であったといえる。その- 14 - 場合、平成30年3月期末時点における原告及びジグノ社の本件株式の持株比率は、合計で35.2%ではなく、約 あるが、原告がその計算において保有する株式であったといえる。その- 14 - 場合、平成30年3月期末時点における原告及びジグノ社の本件株式の持株比率は、合計で35.2%ではなく、約45.1%となる。また、本件会社の取締役9名中7名が、原告又はジグノ社の(元)役職員であった。そのため、「連結会計基準」第7項⑵②及び第6項の規定を適用すると、本件会社は原告の連結子会社であると評価すべきであった。それ にもかかわらず、原告の平成30年3月期の連結計算書類は、本件会社を持分法適用関連会社とする内容であったため、原告の連結営業利益において約4億4500万円、当期純利益において約1億4800万円が過大に計上されてしまった。このような会計処理は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」である連結会計基準に反するものであるか ら、会社法431条に違反する。 (イ) 被告A、被告B及び被告Dの責任被告A、被告B及び被告Dは、Eを含めた協議等を行うことにより、意を通じた上で、本件会社及びメディコム社をしてオニオン社との間で本件合意書2を締結させ、上記(ア)のとおり法令に違反する虚偽の内容 の連結計算書類を作成させたことから、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (ウ) 被告Cの責任取締役会を構成する取締役は、他の取締役による業務執行を監視し、必要があれば、取締役会を招集することを求め、又は自らこれを招集し、 取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする義務を負っている。 被告Cは、平成29年3月期及び平成30年3月期のいずれの決算時においても、経理・財務担当の取締役として、連結計算書類の作成及び会計監査人との折衝等を担 ようにする義務を負っている。 被告Cは、平成29年3月期及び平成30年3月期のいずれの決算時においても、経理・財務担当の取締役として、連結計算書類の作成及び会計監査人との折衝等を担当する立場にあった。そして、上記⑴イのと おり、被告Cは、平成29年3月期末の直前に行われたMMI社による- 15 - 本件株式の引受けには、その引受期間を一時的なものとする旨の本件合意1が伴っていることを認識していた。そのため、被告Cとしては、平成30年3月期の決算時においても、同じくその期末の直前に行われたオニオン社に対する本件株式の譲渡について、同様の合意が伴っていないかを確認すべき立場にあった。そうすると、被告Cは、本件合意書2 の内容を知っていたか、少なくともそれを察知すべきであったといえることから、監視義務の一環として、虚偽の内容の連結計算書類が作成されることを阻止すべき義務を負っていた。それにもかかわらず、被告Cは、この義務を怠ったことから、監視義務違反があるといえ、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (被告A・被告B・被告Cの主張)⑴ 平成29年3月期の連結計算書類についてア MMI社が平成29年3月に本件株式3000株を引き受けた際に、被告BとFとの間でその引受期間を6月末までにする旨の本件合意1がされたという事実はない。 Fは、本件事業の将来性を見出し、自らも本件事業に参画するべく、MMI社をして本件株式の引受けを行ったものである。ところが、その後、原告は、MMI社において緊急の大型事業買収案件が発生したため可能な限り資金の集約化を図らなければならなくなったことから、同社の財務担当者から、その旨の要望が伝えられた。これに対し、被告B その後、原告は、MMI社において緊急の大型事業買収案件が発生したため可能な限り資金の集約化を図らなければならなくなったことから、同社の財務担当者から、その旨の要望が伝えられた。これに対し、被告Bは、Fに対し て本件株式の売却は応諾できないなどと述べて再検討を求めたところ、MMI社から、同社の資金に余裕が出た場合には本件株式を買い戻すことを前提に本件株式2000株のみを売却したいとの提案があった。この提案の内容であれば、引き続きFによる本件事業への関与が期待できると考えられたため、本件株式2000株をジグノ社がMMI社から買い取ること となった。また、MMI社はその後に上記2000株のうち600株を買- 16 - い戻している。このように、MMI社は長期保有を目的に本件株式を引き受けていたのであり、引受後に本件株式2000株をジグノ社に譲渡したのは、本件合意1があったからではなく、事後的な事情が生じたからにすぎない。また、原告が指摘するメール(甲8)は、MMI社による本件株式2000株の譲渡について原告及び本件会社が一応承諾した後に送信 されたものであるから、本件合意1の存在を裏付けるものではない。 被告Aらを含む原告経営陣は、本件会社の設立当初から、本件事業が公益性の高い事業であることに鑑み、本件会社を原告の連結子会社とし続けることはその公共性に反するため適切ではなく、本件事業に賛同する外部企業からの出資を募り、いずれは本件会社を原告の持分法適用関連会社と することが適切であるという方針を採ってはいたが、被告らにおいて、本件会社の損失額が原告の連結計算書類に反映されることを回避しようとする考えなどは全くなかった。 イ上記アのとおり、被告BがFとの間で原告主張のような本件合意1をした が、被告らにおいて、本件会社の損失額が原告の連結計算書類に反映されることを回避しようとする考えなどは全くなかった。 イ上記アのとおり、被告BがFとの間で原告主張のような本件合意1をした事実は存在せず、そうである以上、被告A及び被告Cがそのような事実 を認識していたということはあり得ない。そのため、被告A、被告B及び被告Cが、違法な会計処理を行って虚偽の内容の連結計算書類を作成させたとか、その訂正を怠ったということもない。 したがって、被告A、被告B及び被告Cに任務懈怠責任はない。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類について ア被告A、被告B及び被告Cは、本件合意書2の存在を一切知らされておらず、その内容を認識していなかった。 被告A及び被告Bは、令和元年5月10日取締役会において、監査役からの報告を受けて初めてその存在を知り、その取締役会の後に、被告Dに命じてその提示を受けた。また、被告Cも、このような取引があることに ついて何ら承知していなかった。本件合意書2は、本件会社の代表取締役- 17 - を務めていたEや被告Dが独断で締結したものにすぎない。 イ上記アのとおり、被告A及び被告Bは、本件合意書2の締結に関与しておらず、その内容を認識していなかったことから、虚偽の内容の連結計算書類を作成したとはいえない。また、被告Cにおいても、Eらが独断で行った本件合意書2の締結の事実及びその内容を知る端緒もなかったこと から、被告Cに監視義務違反はない。 したがって、被告A、被告B及び被告Cに任務懈怠責任はない。 (被告Dの主張)⑴ 平成29年3月期の連結計算書類について被告DはMMI社による本件株式3000株の引受けに関して したがって、被告A、被告B及び被告Cに任務懈怠責任はない。 (被告Dの主張)⑴ 平成29年3月期の連結計算書類について被告DはMMI社による本件株式3000株の引受けに関して何ら関与を していないため、その詳細は不明であるが、同社は、平成29年6月末が経過した後も、本件株式3000株のうち1000株についてはそのまま保有し、残る2000株についても、自ら希望してそのうちの600株を買い戻しているのであり、引受期間を一時的にする旨の原告主張の本件合意1とは異なる経過を辿っていることからすると、本件合意1がされた当時、引受期 間を一時的とするとの内容が確定的なものであったとはいえない。そのため、取締役会で承認された原告の平成29年3月期の連結計算書類が連結会計基準に反しているとはいえず、少なくとも、被告Dにそのような認識はなかった。 したがって、被告Dには上記連結計算書類の訂正を行うべき義務があった とはいえず、任務懈怠責任を負わない。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類について本件会社が、オニオン社及びメディコム社との間において、本件合意書2を締結したことは事実である。 しかし、その締結の当時、オニオン社が、実際に平成31年4月末日に本 件株式の買取りを請求することになるかどうかは不確定であったし、被告D- 18 - としても、そのような場合に備えて、原告のグループ会社以外の出資先を探そうとしていた。そうである以上、オニオン社が平成30年に譲り受けた本件株式1400株の保有を前提に本件会社を持分法適用関連会社とする内容は、実態に反したものではないから、連結会計基準に反しているとはいえず、少なくとも、被告Dにそのような認識はなかった。 1400株の保有を前提に本件会社を持分法適用関連会社とする内容は、実態に反したものではないから、連結会計基準に反しているとはいえず、少なくとも、被告Dにそのような認識はなかった。 したがって、被告Dが虚偽の内容の連結計算書類を作成させたということはなく、その認識もないから、任務懈怠責任を負わない。 2 争点1の2(請求原因2-本件個別貸付が行われたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか)について(原告の主張) ⑴ 事実経過ア原告と三井住友銀行との間の本件金銭信託契約の締結原告は、三井住友銀行との間で、原告が同銀行に金銭を信託し、同銀行がその運用を行うとの内容の本件金銭信託契約を締結していた。本件金銭信託契約では、信託金の運用方法の一つとして、原告グループ会社の数社 が貸付先として定められており、また、仮に貸付先が返済不能となった場合には、その全額が原告の負担となり、三井住友銀行は補填義務を負わないとされていた。そのため、本件金銭信託契約に基づく信託金を原資とする貸付けは、原告から原告グループ会社に直接貸付けを行う場合と同様の回収不能リスクを原告が負うものであった。原告は、平成28年12月2 6日に被告らを承認者に含む稟議決裁を経て、同月30日付けで、三井住友銀行との間で、本件金銭信託契約の貸付先に本件会社を加えるとともに、本件会社に対する貸付限度額を3億5000万円とする旨の本件金銭信託契約の変更契約を締結した。 イ本件会社の資金繰りの悪化及び借入れの実行 本件会社の手元資金は、平成28年4月以降、急速に減少し続け、平成- 19 - 29年1月には資金ショートとなるおそれが生じていた。そのため、本件会社は、同月31日、本件 本件会社の手元資金は、平成28年4月以降、急速に減少し続け、平成- 19 - 29年1月には資金ショートとなるおそれが生じていた。そのため、本件会社は、同月31日、本件金銭信託契約を利用して、三井住友銀行から1億2000万円を借り入れた。 ところが、その後も本件会社の資金繰りは、次のとおり厳しいものであった。すなわち、本件会社の平成29年4月から同年10月までの累計営 業損失は約2億0300万円であり、平成30年2月末時点に至っては、平成29年4月から平成30年2月までの累計営業損失は3億7000万円にまで達し、約9200万円の債務超過に陥っていた。その一方で、当時、JMB社グループにおいては、i-dio 放送の放送波を各地域に十分に行き渡らせることができていない状況にあり、本件会社において、本件 事業により収益改善に繋がるような売上を得る具体的な方策を立てることができない状況であった。 このような状況の下、Eは、本件会社の取締役会長を務めていた被告Dに対し、本件会社が本件金銭信託契約を利用した借入れを行うことについて原告の承諾を得るよう求めた。被告Dは、被告A及び被告Bにその旨の 報告・相談を行い、被告A及び被告Bから承諾を得た上で、本件金銭信託契約を利用して、三井住友銀行から、平成30年2月28日に5500万円、同年3月22日に1億7500万円を借り入れた(本件個別貸付)。 ウ借入れ後の経緯本件会社は、合計3回(合計3億5000万円)の借入れを受けた後も その経営及び財務の状況が上向くことはなく、平成30年4月から平成31年1月までの累計営業損失は2億7900万円に達し、同月には約4億3900万円の債務超過に陥っていた。その後、匿名通報 も その経営及び財務の状況が上向くことはなく、平成30年4月から平成31年1月までの累計営業損失は2億7900万円に達し、同月には約4億3900万円の債務超過に陥っていた。その後、匿名通報をきっかけとして、本件会社に関する被告らの不正行為が発覚し、令和元年6月に被告らは退任することとなった。原告は同年9月に本件事業から撤退することを 決定し、同月27日には、三井住友銀行との間の本件金銭信託契約の解約- 20 - 合意を行い、同契約に基づき三井住友銀行が本件会社に有していた合計3億5000万円の貸金債権は、現状のまま原告に引き継がれることとなった。その後、本件会社は、令和元年10月7日に解散し、令和2年2月27日に特別清算が開始されたものの、原告は本件会社に対する債権総額6億8662万0858円のうち2657万3925円(弁済率3.87%) しか回収することができなかった。 ⑵ 被告らに任務懈怠責任があることア被告A、被告B及び被告Dの責任(ア) 被告A、被告B及び被告Dは、本件個別貸付の実行を決定したこと上記⑴イの事実によれば、被告A、被告B及び被告Dは、平成30年 2月及び3月の本件個別貸付の実行を決定したといえる。 これに対し、被告A及び被告Bはこのような決定をしたことを否認する。しかし、本件事業は原告にとって重要な新規事業であり、被告A及び被告Bにとって当時実質的に唯一のCPであった本件会社の資金繰りの状況等は大きな関心事であったはずであり、現に被告DやEから頻繁 かつ詳細な報告を受けて指示を出していた(例えば、被告Bは平成30年5月に被告Dから本件会社の詳細な資金繰りの状況を説明したメール〔甲33〕を受領している。)。また、被告Aは、三 Eから頻繁 かつ詳細な報告を受けて指示を出していた(例えば、被告Bは平成30年5月に被告Dから本件会社の詳細な資金繰りの状況を説明したメール〔甲33〕を受領している。)。また、被告Aは、三井住友銀行との本件金銭信託契約の貸付先に本件会社を加える旨の変更契約を締結する際には、原告職務権限規程上は必要がないのに、自らもその稟議書(甲22) の決裁に加わっていたこと、被告Bについては、被告Dから、平成30年3月の個別貸付の実行の承認を求める内容のメール(甲34)を受領していたこと、被告A及び被告Bは、上記個別貸付の直後に、本件金銭信託契約の更新についての稟議書(甲35)に決裁の押印をしているところ、同稟議書には、本件会社の借入状況として、本件個別貸付が行わ れていることが記載された資料が添付されていたことからすれば、被告- 21 - A及び被告Bは、本件個別貸付を行うことについて事前に承諾していたと推認することができる。 (イ) 経営判断原則に照らし善管注意義務違反があること取締役は、会社に対して忠実義務及び善管注意義務を負っており、その経営判断には一定の裁量があるものの、取締役の判断の前提となった 事実認識に重要かつ不注意な誤りがあった場合や、その判断の過程及び内容が著しく不合理である場合には、善管注意義務違反に問われることになる。そして、本件において、少なくとも、本件金銭信託契約を利用した本件会社に対する本件個別貸付の実行を決定した判断については、被告A、被告B及び被告Dに善管注意義務違反がある。 ○a ①本件会社は、平成29年4月から平成30年2月までの累計営業損失が3億7000万円に達しており、同月28日に借り入れた5500万円を支払に回した後の手元資金 がある。 ○a ①本件会社は、平成29年4月から平成30年2月までの累計営業損失が3億7000万円に達しており、同月28日に借り入れた5500万円を支払に回した後の手元資金ですらかろうじて約850万円となるほどに資金繰りに困窮した状況であり、同月時点で約9200万円もの債務超過に陥っていたこと、②原告の会計監査人による平成 30年1月17日付け中間レビューにおいては、本件会社の実質純資産額が当該期末時点で簿価から50%下落する状況になり、減損処理が必要になる可能性がある旨の指摘がされており、被告ら自身も本件会社に貸付けを行えば会計監査人から貸倒引当金の計上を指導されかねない状況であると認識していたこと等に照らすと、平成30年2月 及び3月の本件個別貸付の当時、本件会社の経営状況は極めて厳しく、本件個別貸付が回収不能となる可能性が極めて高いことは明白であった。 ○b 平成30年2月及び3月の本件個別貸付の当時、JMB社グループにおいては、i-dio 放送波を各地域に十分に行き渡らせることができ ていないなど、i-dio 放送波及び受信端末の普及状況の改善を見込む- 22 - ことが困難な状況であり、そのため、本件会社においても、BtoC事業で十分な収入(デジタルラジオ番組によるスポンサー収入等)を得るなどして収益を改善させる余地はなかった。また、他の収益源としていたインバウンド事業である「八六東京」との名称の事業や、BtoB事業についても、収益化には程遠い状況にあり、実際、その売上実 績は事業計画での目標値に遥かに及ばない状況であった。そのため、本件個別貸付を実行したところで、その後に再び本件会社の資金繰りが悪化することは明白であり、その返済の目途が立つはずもない状 上実 績は事業計画での目標値に遥かに及ばない状況であった。そのため、本件個別貸付を実行したところで、その後に再び本件会社の資金繰りが悪化することは明白であり、その返済の目途が立つはずもない状況であった。 ○c 本件事業全体における本件会社を含めたCPの位置付けに照らすと、 本件会社に対する本件個別貸付を実行したところで、CPの数が増加して本件事業全体(JMB社、VIP社及び各MM各社等のJMBグループ)の収益が増加することには繋がらなかった。そして、JMB社等が破綻してしまうと、いずれにせよ本件会社が破綻することになることは明白であった。 これらの事情を踏まえると、被告A、被告B及び被告Dには、本件会社に資金投下をするとしても、その際には、原告として本件会社又は本件事業に対して幾らまで資金投下を行うのか(どこまでのリスクを負うのか)、資金投下先は本件会社でよいのか(JMBグループへの支援等、他の方法による本件事業への援助を行うべきでないか等)、当該資金投下 はどれほどの期間についての支援なのか(いつ資金投下の要否などを再検討するのか等)、あるいは、これ以上の資金投下はせずに本件事業から撤退すべきでないのかといった観点からの検討を行うべき義務があった。 それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、上記観点からの検討を行うこともなく、また、取締役会に対する報告すら行うこともなく、 漫然と本件個別貸付の実行を決定したのであるから、その判断過程及び- 23 - 判断内容は著しく不合理であったといえる。 したがって、被告A、被告B及び被告Dには善管注意義務違反がある。 (ウ) 取締役会決議を経なかった法令違反(会社法362条4項柱書き)があること 合理であったといえる。 したがって、被告A、被告B及び被告Dには善管注意義務違反がある。 (ウ) 取締役会決議を経なかった法令違反(会社法362条4項柱書き)があること上記(イ)の事情のほか、原告は本件会社に1億4700万円の増資を した際には取締役会決議がされていたことなどからすると、本件個別貸付の実行を決定することは、「重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書き)に該当するから、あらかじめ取締役会決議を経る必要があった。それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、取締役会決議を経ることなく本件個別貸付の実行を決定したことから、法令違反に よる善管注意義務違反がある。 (エ) 結論以上のとおり、被告A、被告B及び被告Dは、この点に関し、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 イ被告Cの責任 被告Cは、平成30年2月及び3月の本件個別貸付の当時、経理・財務担当の取締役として、原告によるグループ会社への貸付等を所管する立場にあった。また、被告Cは、平成28年12月に原告が三井住友銀行との本件金銭信託契約の貸付先に本件会社を加えた際には、その決裁に関与していた。そのため、被告Cは、本件個別貸付が実行される際には、本件会 社からの回収可能性や、上記ア(イ)の観点について十分な検討を行った上で、その実行の可否を判断すべき義務(監視義務)を負っていた。それにもかかわらず、被告Cはこれを怠ったことから、監視義務違反がある。 したがって、被告Cは、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (被告A・被告B・被告Cの主張)- 24 - ⑴ 事実経過等 る。 したがって、被告Cは、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (被告A・被告B・被告Cの主張)- 24 - ⑴ 事実経過等本件事業は、ラジオ放送のデジタル化や、通信と放送の融合・連携といった、原告のみならず、放送業界全体として取り組むべき新たな事業というべきものであった。また、本件会社は、本件事業の利便性や社会貢献に資する事業を展開し、様々な事業の可能性があることを具体的に示すことにより、 CPを増やすことに寄与するとともに、新たなビジネスモデルを導入することで本件事業を更に発展させていくことが期待されていたものであり、本件事業の成功において極めて重要な役割を担っていた。もっとも、本件事業は、航空無線との電波の混信問題などの被告らの責めに帰さない原因により、放送設備の整備が思うように進まず、当初の予定よりi-dio 放送の開始は遅れ ていた。しかし、平成30年頃には、本件会社において、国内向けのBtoC事業だけではなく、例えば、訪日中国人客をターゲットに中国語で日本の観光や文化に関する情報を配信する「八六東京」との名称のインバウンド事業が展開されていたほか、カーシェア車両にi-dio 専用の受信チューナーを内蔵させて駐車場の空き情報などを即時配信するサービスや、高速道路会社と 提携をして、走行中の車両に必要な情報を即時配信するサービスの提供などの企業向けの事業に加え、電波を用いることで従来の防災無線よりも確実に、かつ、適切に、音声・映像・データを住民に届けることができる防災対策サービスの提供などの自治体向けの事業なども進められていた。その上、当時は各地域での放送設備の開設も進みつつある状況にあり、平成31年4月に は札幌親局の開局も予 に届けることができる防災対策サービスの提供などの自治体向けの事業なども進められていた。その上、当時は各地域での放送設備の開設も進みつつある状況にあり、平成31年4月に は札幌親局の開局も予定され、これにより全国の全てのブロックにおいてi-dio 放送の開始が見込まれる状況にあった。このように、平成30年当時には、放送設備の整備の広がりも相まって、本件会社の数多くの事業が具体化しつつあり、大規模な新規事業である本件事業に対する原告のそれまでの投資が実を結びつつあったのであり、売上増加による収益化が見込まれる状況 となっていた。 - 25 - 本件会社の資金調達については、外部企業からの資金提供や本件事業の売上増加によることが大前提ではあったが、平成28年以降、本件会社の資金繰りは悪化し、資金調達が喫緊の課題となっていたため、被告D、被告C及び経理・財務の担当者は、本件会社の資金ショートを避けるための最終手段、いわばセーフティネットとして、原告と三井住友銀行との間の本件金銭信託 契約を利用することを考え、その貸付先に本件会社を加えることとしていた。 平成30年2月及び3月の本件個別貸付は、上記のとおり、本件事業の収益化の目途が立っているという当時の状況を適切に勘案した上で、本件会社の資金ショートにより本件事業がとん挫してしまうことを防ぐべく、セーフティネットとして用意されていた本件金銭信託契約を利用して実行されたも のであるから、その判断の過程及び内容は合理的なものであったといえる。 また、本件個別貸付については、原告においてその実行のために稟議等の必要はなかったことから、被告A及び被告Bがその実行の意思決定をしたということはない。 ⑵ 被告A、被告B及び被告Cに責任がないこと 本件個別貸付については、原告においてその実行のために稟議等の必要はなかったことから、被告A及び被告Bがその実行の意思決定をしたということはない。 ⑵ 被告A、被告B及び被告Cに責任がないこと ア本件個別貸付の実行を決定していないこと本件個別貸付は、本件会社の代表取締役を務めていたE及び被告Dが実行したものであり、被告A及び被告Bがその実行を決定したことはないから、原告の主張は前提を欠いている。 イ経営判断原則に照らして善管注意義務違反がないこと 被告Cについても、本件個別貸付の実行に関与していない上、上記⑴のとおり、本件個別貸付の実行の判断の過程及び内容には、当時の状況に照らして著しく不合理な点はないから、被告Cに監視義務違反が成立することはない。 ウ取締役会決議を経なかった法令違反はないこと 本件個別貸付の合計金額(2億3000万円)は、原告の総資産額の1- 26 - 00分の1を下回る金額であった。そのため、原告の職務権限規程上、取締役会に付議する必要はなかったから、取締役会決議を経ていなかったとしても、会社法362条4項柱書きには違反しない。 ⑶ 結論したがって、被告A、被告B及び被告Cに任務懈怠責任はない。 (被告Dの主張)⑴ 経営判断原則に照らして善管注意義務違反がないこと本件会社は、本件事業の放送波及び受信端末の普及に依存するBtoC事業のみならず、BtoB事業にも注力し、実際にも複数の収益事業が実現し始めていた。平成31年4月には令和2年以降の大きな営業利益を見込んだ事業 計画が作成されており、被告Dはその達成に向けて全力で邁進していた。また、本件会社は、本件事業以外にも収益 業が実現し始めていた。平成31年4月には令和2年以降の大きな営業利益を見込んだ事業 計画が作成されており、被告Dはその達成に向けて全力で邁進していた。また、本件会社は、本件事業以外にも収益を獲得する方法を模索しており、平成30年5月にはJAによるラジオ番組の商流に原告の代理店として参入することで手数料収益を得ることもできた。このような事情に鑑みれば、平成30年2月及び3月当時、本件会社の資金繰りの状況が厳しかったのは確か であるが、それを乗り切れば、資金繰り及び収益性が改善し、後日、本件個別貸付に係る貸付金を回収する余地は十分にあったといえる。回収可能性がなかった旨をいう原告の主張は短絡的な視点に立つものにすぎない。 加えて、本件事業は、ラジオ業界の市場規模が年々縮小している中で、旧来のアナログ放送ではなく、そのデジタル化を図り、これを防災分野も含め た様々な分野で活用することで、原告のみならず、ラジオ業界全体の生き残りをかけた重要な事業であり、社会的にも大きな意義のある事業であった。 また、原告グループは、このような意義を有する本件事業に対してそれまでに100億円規模の投資を行ってきたことや、本件事業は、原告グループ以外の複数の会社も資本参加をしており、かつ、総務省からも継続性を前提に 事業の認可を受けていたことにも照らすと、仮にi-dio 放送の開始から僅か- 27 - 2年で本件事業を終了させてしまうと、原告は金銭面で巨額の損失を被るのみならず、資本参加をした他社はもとより、監督官庁である総務省や、世間一般からの信用を決定的に失うことが必至であった。そして、当時有力なほぼ唯一のCPであった本件会社が破綻してしまえば、JMB社グループは本件会社からの帯域使用料が得られなくなり、即座に資金繰り 世間一般からの信用を決定的に失うことが必至であった。そして、当時有力なほぼ唯一のCPであった本件会社が破綻してしまえば、JMB社グループは本件会社からの帯域使用料が得られなくなり、即座に資金繰りに窮することに なるから、JMBグループの破綻及び本件事業の破綻に直結するものであった。 このように、本件個別貸付は、上記のようなリスク・ベネフィットを適切に勘案した上で、本件会社の資金ショート、ひいては本件事業の破綻を回避するために緊急に行われたものであるから、その判断の過程及び内容に不合 理な点はなく、経営判断の裁量を逸脱するものではない。 したがって、被告Dに善管注意義務違反はない。 ⑵ 取締役会決議を経なかった法令違反はないこと平成30年3月末日時点の原告の総資産額は約367億円であった一方、同月までに三井住友銀行との本件金銭信託契約を利用して本件会社に貸し付 けられた金額の合計は3億5000万円であり、総資産額の100分の1を下回っていたことから、原告の職務権限規程上の取締役会への付議基準を満たしていなかった。この付議基準は、業務執行の機動性と会社財務の健全性の両立の観点から設けられているものであるのに、仮に個別取引におけるリスクを勘案してその都度付議の要否が変わると解してしまうと、このような 基準を設ける意味が失われかねない。 したがって、本件個別貸付に際して取締役会決議を経ていなかったとしても、会社法362条4項柱書きには違反しない。 ⑶ 結論したがって、被告Dに任務懈怠責任はない。 3 争点1の3(請求原因3-ラジオ番組の放送に係る商流に本件会社を原告の- 28 - 代理店として関与させたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか 被告Dに任務懈怠責任はない。 3 争点1の3(請求原因3-ラジオ番組の放送に係る商流に本件会社を原告の- 28 - 代理店として関与させたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか)について(原告の主張)⑴ 事実経過原告は、平成30年5月、JAをスポンサーとする新たなラジオ番組の放 送を開始することとなった。同番組に関する契約締結に当たっては、JAは、そのグループ会社である株式会社全農事業サポート(以下「ZBS社」という。)が代理店となり、JAと原告との間の商流に参加させることを予定していた。その際、被告Dは、本件会社を原告側の代理店として商流に加えることで、本件会社がZBS社から番組提供料(スポンサーが放送局に支払う電 波料及び製作費)を受領した後、当該番組提供料から代理店手数料を控除した金額を原告に媒体購入費として支払う形とし、これにより、本件会社において番組提供料相当額を売上げとして計上できるとともに、当該金員を手持資金とすることを企図し、被告A及び被告Bからの事前の承諾を得た上で、同月1日付けで、ZBS社が本件会社に広告出稿に係る業務を委託する内容 の業務委託契約を締結するなどして、上記の商流を実現させた。 しかし、本件会社は、資金繰りに窮する状態になっていたことから、原告に対して負う媒体購入費の支払債務について、平成30年5月放送分については支払期限である翌月末に支払うことができたものの、同年6月放送分については2か月遅れた同年9月末に、同年7月放送分については3か月遅れ た同年11月末にようやく支払われるような状態であり、同年8月放送分から平成31年3月放送分までの合計1億7746万5600円の媒体購入費については、原告に全く支払われなかった。被告 月遅れ た同年11月末にようやく支払われるような状態であり、同年8月放送分から平成31年3月放送分までの合計1億7746万5600円の媒体購入費については、原告に全く支払われなかった。被告Dは、本件会社が負う他の債務の弁済を優先させ、原告に対する媒体購入費の支払を止めることについて、被告A及び被告Bから事前の承諾を得ていた。 ⑵ 被告A、被告B及び被告Dの責任- 29 - ア経営判断原則に照らし善管注意義務違反があること(ア) 平成30年5月に本件会社を商流に加えたことについて本件会社を代理店として商流に加えた場合、ZBS社から本件会社に支払われる番組提供料が一旦本件会社に留保されることとなるため、原告は本件会社からの媒体購入費の回収不能リスクを負担する一方、それ に見合ったメリットを享受できるわけではなかった。仮に本件会社が一定の代理店業務を行っており、原告から代理店手数料を受領することに何らかの合理性があるとしても、本件会社を商流に加える方法ではなく、ZBS社から支払われる番組提供料を直接原告が受領する仕組みとした上で、本件会社に対する代理店手数料は別途原告から支払うといった商 流にすることも可能であった。そして、前記2(原告の主張)⑵ア(イ)のとおりの本件会社の経営状況等に照らすと、被告A、被告B及び被告Dには、仮に本件会社を救済する趣旨で商流に加えるとしても、原告として媒体購入費の回収不能を覚悟して本件会社を商流に加えるのか、他の方法による本件事業への資金投入をすべきではないのか、あるいは、こ れ以上の資金投入はせずに本件事業から撤退すべきではないのかといった観点からの検討を行うべき義務があった。それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、上 すべきではないのか、あるいは、こ れ以上の資金投入はせずに本件事業から撤退すべきではないのかといった観点からの検討を行うべき義務があった。それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、上記観点からの検討を行うこともなく、また、取締役会への報告すら行うこともなく、漫然と本件会社を代理店として商流に加えるスキームを採用したものであり、その判断過程及び判断内 容は著しく不合理であった。 したがって、被告A、被告B及び被告Dには善管注意義務違反がある。 (イ) 平成30年7月末以降に速やかに商流を変えなかったことについて上記⑴のとおり、本件会社は、平成30年6月放送分の媒体購入費を支払期限であった同年7月末に原告に支払うことが困難となっていた。 このように、同月時点では、本件会社に対する債権が回収不能になる確- 30 - 実性がより高まっていたのであるから、被告A、被告B及び被告Dには、本件会社を代理店として加える商流を解消した上で、ZBS社から支払われる番組提供料を原告が直接受領し、本件会社に対する代理店手数料は別途原告から支払うといった商流に変更すべき義務があった。それにもかかわらず、同被告らは、本件会社を加えた商流を解消することなく、 本件会社から原告に対する媒体購入費の支払の遅滞を容認し続けたのであるから、その判断過程及び判断内容は著しく不合理であった。 したがって、被告A、被告B及び被告Dには善管注意義務違反がある。 イ取締役会決議を経なかった法令違反(会社法362条4項柱書き)があること 本件会社を商流に加えることは、本件会社に対して年額約2億6600万円(月額約2218万円)もの信用供与を行うに等しいものであった。 そして 会社法362条4項柱書き)があること 本件会社を商流に加えることは、本件会社に対して年額約2億6600万円(月額約2218万円)もの信用供与を行うに等しいものであった。 そして、本件会社の資金不足の状況は平成30年5月及び7月当時も改善されておらず、本件会社に対する媒体購入費に係る債権は回収不能となる危険性が極めて高かった上に、一時的に本件会社の資金繰りを支援したと ころで、本件事業全体の改善には繋がらず、これが破綻した場合には本件会社も破綻してしまう状況であった。これらの事情に照らすと、同年5月に本件会社を商流に加えるとの判断や、同年7月に支払遅滞が生じた後も本件商流を継続するとの判断については、「重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書き)に該当するから、あらかじめ取締役会決議を経る 必要があった。それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、取締役会決議を経ることなく、上記の各判断を行ったことから、法令違反がある。 ウ結論したがって、被告A、被告B及び被告Dは、この点に関し、会社法42 3条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 - 31 - ⑶ 被告Cの責任本件会社は預金の出納業務を原告に委託しており、平成30年当時は、原告の経理担当者が本件会社の預金の出納業務を行っていた。そのため、同経理担当者の上長に当たる被告Cは、本件会社の出入金状況を把握し、少なくともこれを把握できる立場にあった。また、被告Cは、当時、経理・財務担 当の取締役として、原告の本件会社に対する媒体購入費に係る債権の回収状況を注視し、回収困難となるおそれが生じた場合には、速やかに他の業務執行取締役に報告し、対応を検討すべき立場にあった。そして、上記⑴の事実 役として、原告の本件会社に対する媒体購入費に係る債権の回収状況を注視し、回収困難となるおそれが生じた場合には、速やかに他の業務執行取締役に報告し、対応を検討すべき立場にあった。そして、上記⑴の事実経過によれば、遅くとも平成30年7月末の時点では、被告Cは、本件会社による同年6月放送分の媒体購入費の支払が遅滞していたことを認識し、又 は認識できたのであるから、被告Cには、速やかに遅滞の事実を他の業務執行取締役に報告し、対応を検討すべき義務(監視義務)があった。それにもかかわらず、被告Cはこの義務を怠ったことから、監視義務違反がある。 したがって、被告Cは、会社法423条1項に基づき、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (被告A・被告B・被告Cの主張)⑴ 事実経過等平成30年5月のJAによるラジオ番組放送に係る取引において本件会社を原告の代理店として商流に加えることについて、被告A及び被告Bが承諾していたという事実はない。このような個別取引は、原告の職務権限規程上、 会長又は社長の決裁を要するとはされておらず、被告D及び当時の担当取締役の権限において進めることが可能であった。 また、本件会社が原告に対する媒体購入費の支払を遅滞させることについて、被告A及び被告Bが承諾をしていたという事実もない。原告においては、未回収が3か月を超えた場合には、当該未回収先がリスト化され、執行役員 会で報告されることとなっていたところ、平成30年10月頃の執行役員会- 32 - において、本件会社に対する媒体購入費の支払の遅滞がリストに記載されていたことから、被告A及び被告Bは、このときに初めて本件会社が原告の代理店として関与していることを認識した。被告Aは未収金が増えていることについ 社に対する媒体購入費の支払の遅滞がリストに記載されていたことから、被告A及び被告Bは、このときに初めて本件会社が原告の代理店として関与していることを認識した。被告Aは未収金が増えていることについて被告Dに質問したところ、被告Dは2か月後には回収できる旨を回答していた。また、原告の職務権限規程上、このような未収金の回収につい て責任を負うのは営業局とされていたところ、経理部門担当の被告Cは、毎月未収金の回収に向けた定例会議を営業局とで行った上で、媒体購入費の回収を図るよう被告Dに要請をしていた。 ⑵ 被告A、被告B及び被告Cに責任がないこと上記⑴のとおり、被告A及び被告Bは平成30年5月の時点で本件会社を 代理店として商流に加えることについての認識を有していなかったから、原告の主張は前提を欠いている。また、同年7月以降についても、被告A及び被告Bが本件会社の原告に対する媒体購入費の支払の遅滞を事前に承諾していた事実もない。 未収金の回収は担当取締役の権限において行われるものであり、原告では、 長期の未収金の回収状況については執行役員会に適切に報告される仕組みがとられていた。加えて、上記取引の企画提案を行った本件会社がその商流に加わることはむしろ自然なことであり、JAもこのような商流とすることに同意していたことにも照らすと、平成30年7月以降、被告A及び被告Bにおいて媒体購入費の支払の遅滞を認識していたとしても、上記商流を解消し なかったことは、何ら不合理なことではなかった。 また、被告Cについても、上記商流自体にそもそも合理性があったことや、上記⑴のとおり、被告Cは、本件会社に対する未収金の回収状況を適切に把握した上で、その責任を負う被告Dらに対してその回収の指示を出しており、 についても、上記商流自体にそもそも合理性があったことや、上記⑴のとおり、被告Cは、本件会社に対する未収金の回収状況を適切に把握した上で、その責任を負う被告Dらに対してその回収の指示を出しており、十分なリスク管理体制もとられていたことからすると、被告Cに監視義務違 反はない。 - 33 - ⑶ 結論したがって、被告A、被告B及び被告Cに任務懈怠責任はない。 (被告Dの主張)JAによるラジオ番組放送に係る取引において、ZBS社及び本件会社がそれぞれスポンサー側とメディア側という役割分担をして共に代理店として商流 に参加することは、この種の取引において、また、これまでも同一の商流が採られていた原告においても、全く違和感のないことであり、このような商流とすることはJAも理解をしていた。また、当該取引は、地上波メディアである原告だけでは番組が若者に届きにくいことから、本件会社を活用してインターネット配信を行うことにより、デジタルネイティブである若者層に番組を届け るという本件会社が行った提案をきっかけに始まったものであり、本件会社は、単なる代理店としてだけではなく、メディアとしての役割も期待されて商流の中に参加していたのであるから、本件会社が商流に加わることはむしろ自然であった。被告Dはこのような事情を勘案した上で本件会社を商流の中に加えたのであるから、その判断の過程及び内容に著しく不合理な点はない。 また、結果的に媒体購入費の支払が遅滞したことは事実ではあるが、上記の事情があることに加えて、前記2(被告Dの主張)⑴のとおり、当時、被告Dは、本件会社の事業の拡大に努める一方、外部からの増資や借入れを試み、何とか資金調達を行って媒体購入費を支払うことを予定していたものであり、商 加えて、前記2(被告Dの主張)⑴のとおり、当時、被告Dは、本件会社の事業の拡大に努める一方、外部からの増資や借入れを試み、何とか資金調達を行って媒体購入費を支払うことを予定していたものであり、商流を維持することで媒体購入費の回収ができなくなるリスクと、あえて商流を 変えることで本件事業を破綻させかねないというリスクとを勘案した上で、商流を維持していたものであるから、その判断の過程及び内容に著しく不合理な点はない。 したがって、被告Dに任務懈怠責任はない。 4 争点2(相当因果関係のある損害の発生及びその額)について (原告の主張)- 34 - 被告らの任務懈怠責任と相当因果関係のある損害の額は、下記⑴から⑸までの合計4億8233万8829円である。 ⑴ 本件第三者委員会の調査費用 7864万2147円原告は、被告らによる前記1~3の任務懈怠行為に関する内部告発をきっかけとして、外部の専門家を委員とする本件第三者委員会を設置し、被告ら による不正行為の有無やその内容等についての調査をすることを余儀なくされた。原告は、多数の株主が存在する大会社である上に、放送事業という公共性の高い事業を行っていることや、不正行為に経営陣の上層部が加担していたことに照らすと、中立的な立場に立つ外部の専門家を委員とする調査組織を設置して、内部告発に係る不正行為にとどまらず、その他にも不正行為 がないか網羅的な調査を行った上で、事案の解明及び責任の所在等を明らかにして今後の防止策を講じることは、相当かつ通常必要な措置であったといえる。また、原告は、会計監査人から、平成29年3月期及び平成30年3月期の過年度修正の要否を判断するため及び平成31年3月期の監査を行うための前提として第三者委員会 かつ通常必要な措置であったといえる。また、原告は、会計監査人から、平成29年3月期及び平成30年3月期の過年度修正の要否を判断するため及び平成31年3月期の監査を行うための前提として第三者委員会による調査を行うことが必要である旨の意見 を受けていたのであるから、その意味においても、中立的な専門家による調査が行われることは不可欠であった。 したがって、被告らによる前記1~3の任務懈怠責任と本件第三者委員会の調査費用7864万2147円の支出との間には相当因果関係がある。 ⑵ 追加監査費用 1100万円 前記1~3の被告らの任務懈怠行為が発覚したことによって、会計監査人において、平成29年3月期及び平成30年3月期の過年度修正を行うとともに、その修正を前提に平成31年3月期の監査報告を改めて行う必要が生じた。また、その際には、不正監査の観点から、通常の監査とは異なる精密な追加監査を行わざるを得なくなった。 したがって、被告らによる前記1~3の任務懈怠責任と追加監査費用11- 35 - 00万円の支出との間には相当因果関係がある。 ⑶ 信用損害 100万円前記1~3の被告らの任務懈怠行為については、上記⑴の本件第三者委員会による調査報告書の公表や報道等を通じて広く社会に広まり、これにより原告の信用が毀損された。 したがって、被告らによる前記1~3の任務懈怠責任と信用毀損の発生との間には相当因果関係があり、その損害額は100万円を下らない。 ⑷ 回収不能となった個別貸付金 2億2109万9000円前記2の被告らによる任務懈怠行為があったため、合計2億3000万円(平成30年2月の5500万円、同年3月の1億7500万円の合計)の なった個別貸付金 2億2109万9000円前記2の被告らによる任務懈怠行為があったため、合計2億3000万円(平成30年2月の5500万円、同年3月の1億7500万円の合計)の 本件個別貸付が実行された。原告は、本件会社の特別清算の手続において、本件会社に対する債権総額のうちの3.87%しか回収することができなかったことからすると、本件個別貸付に係る貸付金の合計2億3000万円に上記割合3.87%を乗じた額を減じた2億2109万9000円が回収不能になったといえる。 したがって、被告らによる前記2の任務懈怠責任と個別貸付金2億2109万9000円が回収不能となったこととの間には相当因果関係がある。 ⑸ 回収不能となった媒体購入費 1億7059万7682円前記3の被告らによる任務懈怠行為があったため、原告は、本件会社からの平成30年8月放送分から平成31年3月放送分までの合計1億7746 万5600円の媒体購入費の支払を受けられなくなった。そうすると、この媒体購入費1億7746万5600円に上記⑷の弁済率3.87%を乗じた額を減じた1億7059万7682円が回収不能になったといえる。 したがって、被告らによる前記3の任務懈怠責任と媒体購入費1億7059万7682円が回収不能となったこととの間には相当因果関係がある。 (被告A・被告B・被告Cの主張)- 36 - ⑴ 本件第三者委員会の調査費用について原告は上場企業ではなく、正式な内部調査も経ていなかったのであるから、いきなり多額の費用をかけて外部の者による第三者委員会を設置しなければならない合理的な理由があったとはいえない。また、原告としては、第三者委員会による調査を経るまでもなく、内部調 ったのであるから、いきなり多額の費用をかけて外部の者による第三者委員会を設置しなければならない合理的な理由があったとはいえない。また、原告としては、第三者委員会による調査を経るまでもなく、内部調査を尽くした上で、株主総会で 株主の過半数の賛成を得て、計算書類の承認を得る方法もあり得た。 したがって、原告主張の任務懈怠責任と本件第三者委員会の調査費用の支出との間に相当因果関係はない。 ⑵ 追加監査費用について上記⑴のとおり、仮に原告において正式な内部調査が実施されていれば、 追加監査を行う必要まではないとの結論となった可能性も十分にあった。また、仮に会計監査人による適正意見が得られなかったとしても、内部調査を尽くした上で、株主総会で株主の過半数の賛成を得て、計算書類の承認を得る方法もあり得た。 したがって、原告主張の任務懈怠責任と追加監査費用の支出との間に相当 因果関係はない。 ⑶ 信用損害について本件第三者委員会による調査報告書は外部に開示されることは予定されておらず、監査役会もその公表には反対していた。原告の現経営陣が、その任意の判断に基づき、上記調査報告書を公表したにすぎない。 したがって、原告主張の任務懈怠責任と信用損害の発生との間に相当因果関係はない。 ⑷ 回収不能となった個別貸付金について前記2(被告A・被告B・被告Cの主張)⑴のとおり、本件会社は、遅くとも平成31年4月頃には、売上高が増加して収益化が十分に見込まれる状 況となっていた。それにもかかわらず、原告の現経営陣は、判断を見誤り、- 37 - その任意の判断に基づき、本件会社を解散した。仮に本件事業が継続されていれば、本件会社から個別貸付金の回収をするこ なっていた。それにもかかわらず、原告の現経営陣は、判断を見誤り、- 37 - その任意の判断に基づき、本件会社を解散した。仮に本件事業が継続されていれば、本件会社から個別貸付金の回収をすることができた。 したがって、原告主張の任務懈怠責任と個別貸付金が回収不能となったこととの間に相当因果関係はない。 ⑸ 回収不能となった媒体購入費について 上記⑷と同様、仮に本件事業が継続されていれば、原告は本件会社から媒体購入費の回収をすることができた。 したがって、原告主張の任務懈怠責任と当該媒体購入費が回収不能となったこととの間に相当因果関係はない。 (被告Dの主張) 否認ないし争う。 本件事業の終了や本件会社の特別清算といった事態は、原告の現経営陣による経営判断に基づく結果に過ぎない。前記2(被告Dの主張)⑴の事情に照らすと、仮に本件事業を継続していれば、本件個別貸付に係る貸付金や媒体購入費を回収することができた可能性も十分にあったから、原告主張の任務懈怠責 任とこれらが回収不能になったこととの間に相当因果関係はない。 5 争点3(被告A及び被告Bの退職慰労金請求権の有無)について(被告A・被告Bの主張)⑴ 被告A及び被告Bの退職慰労金請求権が発生したこと平成27年6月25日に原告の定時株主総会が開催され、被告A及び被告 Bに退職慰労金を支給する旨の決議が承認可決された。その直後に開催された取締役会においては、退職慰労金の個別支給額とその支払時期は代表取締役が決定するとの決議がされ、代表取締役である被告Bは、同年7月24日、被告A及び被告Bの退職慰労金の具体的金額を、それぞれ、2億6105万円及び2880万円と決定した。 は代表取締役が決定するとの決議がされ、代表取締役である被告Bは、同年7月24日、被告A及び被告Bの退職慰労金の具体的金額を、それぞれ、2億6105万円及び2880万円と決定した。 このようにして、被告A及び被告Bに上記金額の退職慰労金請求権が発生- 38 - した。また、その支給時期は、退任日付より1か月以内とされていたところ、被告A及び被告Bは、いずれも令和元年6月25日に取締役を退任したことから、遅くとも退職慰労金請求権の期限(確定期限)となる同年7月24日が到来した。 したがって、被告A及び被告Bは、原告に対し、退職慰労金及びこれに対 する上記弁済期の翌日である令和元年7月25日からの遅延損害金の支払を求めることができる。 ⑵ 原告の主張に対する反論ア稟議書(乙13)及び役員退任慰労金内規(乙8)の趣旨について平成27年6月25日の取締役会では、退職慰労金の個別支給額とその 支払時期を代表取締役が決定するとの決議がされていたところ、その稟議書(乙13)には「贈呈時期は退任の時とし、振込日は退任日付より1か月以内とする」と明記されている以上、原告が指摘する「※支払時期等については贈呈の際に改めて稟議にて伺うことといたします。」との部分については、退任日から1か月以内に具体的な支給日について改めて稟議す ることを確認的に記載したものにすぎず、具体的に発生した退職慰労金請求権を事後的に減額又は不支給とする可能性を留保する趣旨のものではない。また、原告の役員退任慰労金内規(乙8)第8条の規定は、その規定振りに照らすと、株主総会や取締役会において退職慰労金の支給を決定する段階でのみ適用されるものであるから、既に発生した退職慰労金請求 権を事後的に減額又 金内規(乙8)第8条の規定は、その規定振りに照らすと、株主総会や取締役会において退職慰労金の支給を決定する段階でのみ適用されるものであるから、既に発生した退職慰労金請求 権を事後的に減額又は不支給とする根拠にはならない。 イ任務懈怠が発生し又は発覚した場合には退職慰労金を減額又は不支給とする旨の合意があったとの原告の主張について被告A及び被告Bと原告との間において、任務懈怠が発生し又は発覚した場合には退職慰労金を減額又は不支給とする旨の合意は存在しない。 上記アの事情に加え、仮に役員に任務懈怠があったことが発覚した場合- 39 - には、当該役員に対して損害賠償請求等を行うことができるのであるから、たとえ既に発生した退職慰労金請求権を事後的に減額又は不支給とできないとしても、そのことが著しく不当・不公正であるとはいえないこと、会社に雇用され、その指揮命令下にある労働者と、会社と委任関係にあり、取締役としての義務が課されている役員とを同列に扱うことはできない ことからすると、原告の指摘する事情をもって、上記合意があったことを推認させるとはいえない。 (原告の主張)⑴ 退職慰労金請求権は未だに発生していないこと被告A及び被告Bの退職慰労金の支給についての稟議書(乙13)には、 「※支払時期等については贈呈の際に改めて稟議にて伺うことといたします。」との留保が付されており、正式な支給日は定められていない。そして、原告の役員退任慰労金内規(乙8)第8条には、退任慰労金は任務懈怠により会社に損害を与えた場合等にはその程度に応じて減額又は支給しないことがある旨の支給制限の規定があるところ、被告A及び被告Bに対する退職慰 労金は、原告において退職慰労金制度 金は任務懈怠により会社に損害を与えた場合等にはその程度に応じて減額又は支給しないことがある旨の支給制限の規定があるところ、被告A及び被告Bに対する退職慰 労金は、原告において退職慰労金制度を廃止することに伴う打切り支給として行うものであり、両被告を含め、その支給の対象となる役員は、支給決定後にも引き続き役員の地位に留まることが予定されていたのであるから、当該役員が現実に退任するまでの間に任務懈怠等によって会社に損害を与える事態が発生する可能性があり得たのであり、その場合には、同条が適用され ることが想定されていたといえる。そうすると、上記稟議書の留保部分は、上記内規第8条の規定を適用して退職慰労金を減額又は不支給とする余地を残す趣旨が含まれていたといえる。 したがって、再度の稟議がされていない以上、被告A及び被告Bの退職慰労金請求権は未だに発生していない。 ⑵ 原告は被告A及び被告Bに任務懈怠があったことを理由として退職慰労金- 40 - の支払を拒絶することができること仮に退職慰労金請求権が発生していたとしても、①上記⑴のとおり、原告の役員退任慰労金内規には退職慰労金の支給制限に関する規定(第8条)があり、しかも、本件においては、当該役員が現実に退任するまでの間に任務懈怠によって会社に損害を与える事態が発生する可能性があり得たこと、② 退職慰労金の支給決定を行う際に、今後任務懈怠があった場合にはその支給を制限する旨の決議を行うことは通常期待できないのだから、明示の留保がない限り、事後的な減額又は不支給が認められないと解するのは不合理かつ不当であること、③退職慰労金支給決定より前に任務懈怠が発生かつ発覚していた場合には、上記内規に基づき支給を制限することが可能であったにも 的な減額又は不支給が認められないと解するのは不合理かつ不当であること、③退職慰労金支給決定より前に任務懈怠が発生かつ発覚していた場合には、上記内規に基づき支給を制限することが可能であったにも かかわらず、同支給決定より後にこれが発生し又は発覚した場合には一切減額又は不支給ができなくなってしまうことは、著しく不当かつ不公平な結果となること、④法令により手厚い保護が与えられている労働者でさえ、非違行為等が発覚した場合には、使用者と労働者との間で明示的な合意がされていない場合であっても、事後的に退職金の減額又は不支給とすることが可能 である場合があると解されていることに照らすと、原告と被告A及び被告Bとの間においては、退職慰労金の打切り支給の決定後であっても任務懈怠が発生し又は発覚した場合には、上記内規第8条の規定に基づき当該退職慰労金を減額又は不支給とすることができる旨の合意があったというべきである。 そして、前記1~4(原告の主張)のとおり、被告A及び被告Bは任務懈怠 行為によって原告に損害を与えたことから、両被告に退職慰労金請求権は発生していないか、少なくとも同請求権は消滅した。 ⑶ 以上のとおり、被告A及び被告Bに退職慰労金請求権はない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1の1に関する認定事実 前記前提事実、証拠(甲92、乙38~40、丙5、証人E、被告A本人、- 41 - 被告B本人、被告C本人、被告D本人及び後掲各証拠〔ただし、以下の認定に反する部分は除く。〕)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 平成29年3月期におけるMMI社による本件株式の引受け等ア本件会社は、平成27年1月23日に原告の完全子会社として設立されたところ、その設立当初から、被告 の事実が認められる。 ⑴ 平成29年3月期におけるMMI社による本件株式の引受け等ア本件会社は、平成27年1月23日に原告の完全子会社として設立されたところ、その設立当初から、被告らは、本件会社が行う事業の公共性等 に鑑み、原告のグループ会社以外の者からの出資を募り、いずれは本件会社を原告の持分法適用関連会社とすることを方針としていた。(甲3)イ(ア) 平成28年3月末日の時点で、原告のグループ会社(原告及び原告の連結子会社であるジグノ社)が保有する本件株式の持株比率は50%であったことから、原告は、同年3月期の連結計算書類において、本件会 社を原告の連結子会社として扱っていた。 (イ) 平成28年11月24日開催の原告の取締役会において平成29年3月期上期の中間決算が承認された。この中間決算では、本件会社は原告の持分法適用関連会社として扱われており、被告Cは、その理由として、同年3月期の下期に本件会社に増資の計画があるためであると説明をし た。(甲5)ウ被告Bは、平成29年3月下旬、旧知の仲であったFに対し、本件会社への出資を要請した。 MMI社(当時の代表取締役はFであった。)は、平成29年3月27日、本件会社との間において、同月30日を払込期日として、払込金額1億5 000万円(1株当たり5万円)で本件株式3000株を引き受ける内容の募集株式総数引受契約を締結した。MMI社は、同日、上記払込金額の払込みを実行し、本件株式3000株を引き受けた(以下「本件株式引受け」という。)。(甲6)エ本件株式引受けに伴い、原告及び原告の子会社(ジグノ社)が保有する 本件株式の持株比率は38.5%であると計算された。 - 42 - オ 受け」という。)。(甲6)エ本件株式引受けに伴い、原告及び原告の子会社(ジグノ社)が保有する 本件株式の持株比率は38.5%であると計算された。 - 42 - オ平成29年5月25日開催の原告の取締役会において、本件会社を原告の持分法適用関連会社とする平成29年3月期の連結計算書類が承認された。同連結計算書類には、会計年度中に実施された本件会社の第三者割当増資により原告の持株比率が低下したことから、本会計年度から本件会社を連結範囲から除外した旨の注記が付されていた。(甲7) カ被告Bは、平成29年6月8日、被告C、被告A及び被告Dらを宛先として、下記(ア)~(ウ)のメールを転送した上で、被告D及び被告Cに対し、本件会社とMMI社との間で既に今月内に本件株式に関する決済が話されているようであるため、一旦決済せざるを得ないかもしれない旨、Fと話をしたが、Fは、会社間の約束事は変更なくやるべしという事業者とし ての常識にこだわっているため、返済を前提とした代案を急いで検討するよう指示する内容のメールを送信した。(甲8)なお、被告Aは、自らが受信したメールについては秘書に印刷をさせたものに目を通しており、営業時間の終了後に受信したメールについては、翌営業日にその内容を確認していた。 (ア) 平成29年5月25日:H幹(MMI社の担当者。以下「H」という。)→I浩之(本件会社の担当者。以下「I」という。)「先般引受けを致しました御社の株式についてですが、引受期間は三か月間とうかがっておりますが、6月末までと考えておけば宜しいでしょうか。月を跨いで7月になると考えておけば宜しいでしょうか。」 (イ) 平成29年5月26日:I→H 期間は三か月間とうかがっておりますが、6月末までと考えておけば宜しいでしょうか。月を跨いで7月になると考えておけば宜しいでしょうか。」 (イ) 平成29年5月26日:I→H「当初予定通り6月末までということを社内で確認いたしました。」(ウ) 平成29年6月8日:H→I「決済日は6月30日と考えておけば良いでしょうか。決済日が決定しているようであれば教えてください。」 キ平成29年6月19日開催の定時株主総会において、平成29年3月期- 43 - の連結計算書類(上記オ)が承認された。 ク MMI社は、平成29年6月、ジグノ社に対し、本件株式2000株を1億円で譲渡した。その後、MMI社は、ジグノ社から、本件株式600株の譲渡を受けた。 ケ被告Bは、平成29年11月18日、Eに対し、MMI社に関するメー ルに対する返信として、「3月に有期限で融資を出資形態で1億5千でしたかしてくれた時の約束事で、常識的な利息は払うことでMくんが了解し、増資が実施されましたので、その処理について月曜に協議する予定です。」との内容のメールを送信した。(甲9の1)コ平成30年1月11日、被告B、被告D及びEの間において、下記(ア)~ (エ)のメールのやり取りが行われた。(甲9の2)(ア) 午後3時32分:E→被告B及び被告D「F社長とのコンサル料の件ですが、現状のSMBCとの借入金利1. 3%をベースに交渉しようと考えています。一応バッファとして上限1. 5%にしたいと考えます。」 (イ) 午後6時51分:被告B→E「支払いは、FさんにTS顧問になってもらい、例えば来月から1年間とかで月々分割で処 ッファとして上限1. 5%にしたいと考えます。」 (イ) 午後6時51分:被告B→E「支払いは、FさんにTS顧問になってもらい、例えば来月から1年間とかで月々分割で処理する方法もあるのではないでしょうか?」、「どうせ支払うお金なら、顧問料にして、実際も顧問の意識でTSをこれから1年間は支える働きをしてくれることが期待できるからですが、、」 (ウ) 午後10時08分:E→被告B「F社長とお話ししたのですが、金額については、400万円。支払いは月10万とかで40回払いとかでも可。コンサル料名目で構わない。 でしたので、今後のF社長との協業やシナジーを考えれば『顧問』でも構わないと思います。金額については、当初段階でB社長とお話し されたとのことですが如何でしょうか?」- 44 - (エ) 午後11時19分:被告B→E「金額については話しておりません。ただ常識的な線として長プラにプラスした常識的なプレミアムだと思います。あとはTSの顧問として実質的に役に立ってもらえるならその分を加算していくということなのではないかと思いますし、」 サ本件会社とFは、平成30年1月31日、報酬総額を396万円、契約期間を平成29年10月1日から令和元年9月30日までの2年間として、本件会社がFに対して顧問業務を委託する内容の顧問契約を締結した。 (甲10)⑵ 平成30年3月期におけるオニオン社による本件株式の取得等 ア平成30年3月12日から同月24日にかけて、下記(ア)~(コ)のメールのやり取りが行われた。(甲11、甲91の1、4~7)(ア) 平成30年3月12日午後11時19分:E→被告B「オニオンG社 から同月24日にかけて、下記(ア)~(コ)のメールのやり取りが行われた。(甲11、甲91の1、4~7)(ア) 平成30年3月12日午後11時19分:E→被告B「オニオンG社長、Jさん(財務担当者)と打ち合わせしまして、条件付きで基本合意しました。」、「基本合意内容は、1.今月早めにジグノ が保有する218株をオニオンが買い取る。2.TSの株を上記手続き後にジグノから今月中に7000万円分買い取る。3.2018年6月末までにTFMあるいはJMB他が責任をもって買い取る。→なんらかの文書が必要。」、「課題というか条件があります。〔中略〕2. オニオンも上記のように自転車操業なので6月末までが限界です。あ と利子分の処理が必要です。」(イ) 平成30年3月13日午前0時02分:被告B→E「明日、Aさんも交え意見交換をしましょう。最大の難関は、株式の長期保有でなく、短期的なブリッジであることだと思います。」(ウ) 平成30年3月13日午後10時29分:E→被告A 「G社長と話しました。今日の段階で『今月中の1億円』の目途は立っ- 45 - たそうです。」、「ダメもとで1億円の枠内で全株取得でなくともなんとかならないか?の話を引き続き交渉していますが『買取単価での落としどころ』がないとこの交渉はまとまりません。」(エ) 平成30年3月15日午後10時07分:E→被告B(cc:被告A)「ジグノK社長、〔中略〕と今回のスキームのすり合わせと簿価の確認を 行いました。」、「ジグノさんとは上記で合意したのですが、監査法人がどう判断するか?となり、L執行役員にスキーム全体を話しましたところ「NG」と判断されました。理由は、6月末でオニ 価の確認を 行いました。」、「ジグノさんとは上記で合意したのですが、監査法人がどう判断するか?となり、L執行役員にスキーム全体を話しましたところ「NG」と判断されました。理由は、6月末でオニオンがTSの株を7,000万円で他社に売却することは、明らかにMMIと同じ決算外しと判断される。という理由とのことです。最低でも2期以上 保持と言われましたがご存知のようにオニオンはキャッシュフローがないのでとても2年も借り入れを継続できません。」(オ) 平成30年3月16日午前0時41分:被告B→E「オニオンは仕組み的には理論的に成立するのではないかと考えますが、数ヶ月での株式再売却は指摘の通り、監査法人と厳しいやりとりにな るのは想像できます。果たして、ジグノの所有株式を最低でも何株譲渡しなければ、持分法適用関連会社にとどめられないものか、を探ることをCさんに依頼していますので、フォロー願います。」(カ) 平成30年3月16日午前10時17分:E→被告B(cc:被告A)「オニオン作戦ですが2年は無理だと思います。もし『1年』で監査法 人がOKならば『TFMグループによる利子補償あり』でG社長に再度交渉してみます。」(キ) 平成30年3月19日午後6時20分:E→被告B及び被告D(cc:被告A)「オニオンG社長から『今回の話は断念したい』と相談がありました。 『簿価の件』『借入期間の件』『+αの件』で周囲からも意見され熱が- 46 - 冷めてきたようです。」(ク) 平成30年3月24日午前10時27分:被告D→被告A、被告B及びE「会長、社長」、「TFMグループのために、という事で了承(快諾)頂きました。メールでの うです。」(ク) 平成30年3月24日午前10時27分:被告D→被告A、被告B及びE「会長、社長」、「TFMグループのために、という事で了承(快諾)頂きました。メールでの詳しい報告は差し控えますが、内容についても理 解して頂いております。」(ケ) 平成30年3月24日午前11時02分:E→被告D(cc:被告A及び被告B)「ありがとうございます。株式会社メディアコミュニケーションズ代表取締役で進めます。月曜日午前中が勝負なのでよろしくお願い します。」(コ) 平成30年3月24日午後12時35分:被告B→E(cc:被告D及び被告A)(上記(ク)のメールに返信する形で)「Dさん、ご苦労様でした。この後、全ての手続き完了には書類を整えるなど所定の形式が必要と理解 しますが、よろしくお願いします。そして、Lさん、Mさんの十分な理解促進を確保するべく向き合ってやってください。」イオニオン社、本件会社及び原告の連結子会社であるメディコム社は、平成30年3月26日、○a オニオン社の代表取締役であるGがジグノ社からジグノ社が保有するオニオン社株式125株を同月28日に譲り受ける こと及び○b オニオン社がジグノ社からジグノ社が保有する本件株式1400株を譲り受けることを停止条件として、①オニオン社は、本件会社に対し、書面で請求することにより、平成31年4月末日において、オニオン社が保有している本件株式の全部(1600株)又はその一部を1株5万円で買い取ることを請求することができ、本件会社はこれを買い受ける ものとすること、②メディコム社は、本件会社をして、上記①の義務を履- 47 - 行させるものとし、本件会社がこれ 万円で買い取ることを請求することができ、本件会社はこれを買い受ける ものとすること、②メディコム社は、本件会社をして、上記①の義務を履- 47 - 行させるものとし、本件会社がこれを履行しない場合には、本件会社に代わって、上記①に定める条件でオニオン社から本件株式を買い受けるか、責任をもって買受先を探すものとすること、③本件会社は、オニオン社に対し、本件会社の業務に関するクリエイティブ監修業務を委託するものとし、その期間は、平成30年4月1日から平成31年4月30日まで、そ の対価は、総額210万円とすることなどを内容とする本件合意書2を交わした。(甲12の2)ウオニオン社は、遅くとも平成30年3月末日までに、ジグノ社から、ジグノ社が保有する本件株式1400株を譲り受けた(以下「本件株式譲渡」という。)。 本件株式譲渡に伴い、原告及び原告の子会社(ジグノ社)が保有する本件株式の持株比率は35.2%であると計算された。 エ平成30年5月29日開催の原告の取締役会において、本件会社を原告の持分法適用関連会社とする平成30年3月期の連結計算書類が承認された。この連結計算書類は同年開催の定時株主総会で承認された。(甲13、 乙34)オオニオン社は、平成31年4月25日付けで、本件会社に対し、本件合意書2に基づき、オニオン社が保有する全ての本件株式(1600株)を買い取るよう請求した。(甲14)⑶ 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(甲17) 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に当たる企業会計基準委員会が作成及び公表する「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)は、連結財務諸表制度における子会社の 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に当たる企業会計基準委員会が作成及び公表する「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)は、連結財務諸表制度における子会社の範囲について、以下の内容を定めている(会社法431条、444条3項、会社計算規則3条、金融商品取引法193条、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則1 条1項、3項等参照)。 - 48 - ア 「用語の定義」第6項 「親会社」とは、他の企業の財務及び影響又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している企業をいい、「子会社」とは、当該他の企業をいう。親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の意 思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなす。 第7項 「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいう。ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認 められる企業は、この限りでない。 ⑴ 他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業⑵ 他の企業の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有している企業であって、かつ、次のい ずれかの要件に該当する企業① 〔略〕② 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者で自己が他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他こ れに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること た者で自己が他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他こ れに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること③~⑤ 〔略〕イ 「連結財務諸表作成における一般基準」第13項親会社は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含める。 2 争点1の1(本件会社を原告の持分法適用関連会社とする内容の平成29年 3月期及び平成30年3月期の連結計算書類を作成等したことについて、被告- 49 - らが任務懈怠責任を負うか)についての判断⑴ 平成29年3月期の連結計算書類について原告は、「MMI社による本件株式引受けの際、被告BとFとの間では、MMI社による引受期間を3か月間とし、その経過後には本件株式を原告又は原告グループ会社が買い取ることで払込金額を同社に返還する旨の本件合意 1があり、そのため、本件会社を原告の持分法適用関連会社とした平成29年3月期の連結計算書類に係る会計処理は連結会計基準に反するものであるから、そのような内容の連結計算書類を作成させ、又は定時株主総会に提出するなどした被告らには任務懈怠責任がある。」旨を主張する。 そこで、以下では、本件合意1の有無について検討し(下記ア)、平成29 年3月期の連結計算書類に係る会計処理が連結会計基準に反するか否か等について検討をした上で(下記イ)、被告らの任務懈怠責任の有無を検討する(下記ウ)。 ア本件合意1の有無について(ア) 前記1の認定事実によれば、次の点を指摘することができる。 ○a 前記1⑴ケの認定事実によれば、被告Bは、平成29年11月18日、Eに対し、同年3月に行われたMMI社 (ア) 前記1の認定事実によれば、次の点を指摘することができる。 ○a 前記1⑴ケの認定事実によれば、被告Bは、平成29年11月18日、Eに対し、同年3月に行われたMMI社による本件株式引受けについて、これは出資形態ではあるが実質は3か月間の有期限の融資であり、その際に常識的な利息を支払うことが約束されていた旨のメールを送信したことが認められる。これは、本件株式引受けについて、 実質的には出資ではなく、期限付きでMMI社が本件会社に対して資金を提供(融資)するものであり、それに対して常識的な利息相当額の金銭を支払うということが、被告BとFとの間において共通の認識となっていたことを端的に示している。 ○b 前記1⑴ケ~サの認定事実によれば、本件会社とFが顧問契約を締 結した平成30年1月31日の直前頃に、①被告BとEは、Fのコン- 50 - サル料について市中金利をベースとした交渉をしようと考えている旨(同⑴コ(ア))、②上記コンサル料はいずれにせよ支払う必要があるものであり、コンサル料とは名目的なものにすぎないから、支払名目は何であっても構わない旨(同(イ)(ウ))、③Fとしては、その金額については当初の段階で既に被告Bと話をしているとの認識を有している様 子であった旨(同(ウ))、④当該金額については、長期プライムレートをベースにした上で、本件会社の顧問として実質的に役に立った部分があれば、その分を加算していくことになる旨(同(エ))のやり取りをしていたことが認められる。このやり取りの内容と上記○a の事情とを併せて考慮すれば、被告BとFは、本件株式引受けに際して、本件株 式引受けは実質的には本件会社に対する1億5000万円の期限付きの資金提供であり、Fに対し り取りの内容と上記○a の事情とを併せて考慮すれば、被告BとFは、本件株式引受けに際して、本件株 式引受けは実質的には本件会社に対する1億5000万円の期限付きの資金提供であり、Fに対してはそれに対する見返りとしての金銭を支払うことを合意しており、被告BとEは、その金額は市中金利をベースとするが、顧問料名目として、実質的に役立った部分があれば、その分を加算することについての話をしていたものと合理的に理解す ることができる。 ○c 前記1⑴カの認定事実のとおり、MMI社による本件株式引受けについて、同社の担当者は、その引受期間は3か月間と聞いている旨の内容のメールを送信し、これに対して、本件会社の担当者は、本件会社の社内でも引受期間は当初の予定どおり6月末までとの認識である 旨の内容を返信している。これは、本件株式引受けの当時、その引受期間は同年6月末までの3か月間であり、その経過後には払込金額を返還する旨の合意がされていたと理解するのが自然な内容であり、本件株式引受けが実質的には有期限の資金提供であったことを強く推認させる事実である。 (イ) 上記○a ~○c の事情を総合すれば、被告BとFは、本件株式引受けに際- 51 - して、MMI社による引受期間を3か月間とし、その期間経過後には本件株式を原告又は原告グループ会社が買い取ることで払込金額を同社に返還する旨の本件合意1がされていたと認められる。 (ウ) これに対し、被告Bは、本件合意1の存在を否認し、本件株式引受けが行われた後に、MMI社において大型の事業買収案件が発生し、資金 の集約化を図る必要が生じたため、本件株式を売却したい旨の連絡を受けたことから、Fと協議を行った結果、本件株式2000株のみを が行われた後に、MMI社において大型の事業買収案件が発生し、資金 の集約化を図る必要が生じたため、本件株式を売却したい旨の連絡を受けたことから、Fと協議を行った結果、本件株式2000株のみを売却することとなった旨、前記1⑴カのメールは、被告D及び被告Cに対して、その譲受人をどうするかなどの実行方法を検討するよう指示を出したものであって、本件合意1があったからではない旨を供述する。 しかし、仮に被告Bが供述するような経緯があったのであれば、その経緯を含めて被告D及び被告Cに指示を出すことが自然であるのに、単に前記1⑴カ(ア)~(ウ)のメールを転送するだけで、上記経緯に関する説明がされていないことは不自然である。むしろ、これらのメールの全体からすれば、本件株式引受けの際には引受期間を3か月間とする旨の本 件合意1が存在しており、そのことが本件会社及びMMI社との間の共通の認識となっていたこと、MMI社は、本件合意1に基づいて払込金額の返金を求めてきたため、被告Bは、その翻意を促そうとしたものの、Fは、会社間の約束事である本件合意1は変更なく実行するべきとの態度であったことから、被告D及び被告Cに対し、本件合意1に従い払込 金額の返済を行うこと及びそれを前提に本件株式の引受先の検討を行うことを指示したことを意味していると理解する方がはるかに自然であるといえる。そもそも、仮に本件合意1が存在しないとすれば、MMI社が、突如、本件会社に対して引き受けたばかりの本件株式の買取りを求めることや、本件会社においてその求めを一部なりとも受け入れること は不自然であるし、上記○a ~○c の内容のやり取りについて合理的な説明- 52 - をすることは困難である。 したがって、被告Bの 求めを一部なりとも受け入れること は不自然であるし、上記○a ~○c の内容のやり取りについて合理的な説明- 52 - をすることは困難である。 したがって、被告Bの上記供述等を採用することはできない。 (エ) 被告らは、MMI社が、ジグノ社に対し、本件株式引受けで引き受けた本件株式3000株のうち、2000株しか譲渡せず、その後にはそのうちの600株の再譲渡を受けていること(前記1⑴ク)は、本件合 意1が存在しないことを裏付ける旨を主張する。 しかし、前記1⑴カ及びコの一連のメールのやり取り等に照らすと、本件合意1がされた後に、被告Bとの協議等を踏まえて、MMI社が本件株式を一部保有し続けることが事後的に決まったものであると解することも十分に可能であるから、上記事実が上記(イ)の認定判断を左右す るとはいえない。 イ平成29年3月期の連結計算書類に係る会計処理が連結会計基準に反するか否か等について上記アのとおり、本件株式引受けの当時、MMI社による引受期間は3か月間であり、その経過後には本件株式を原告又は原告グループ会社が買 い取ることで払込金額を同社に返還する旨の本件合意1がされていたことが認められ、本件株式引受けは、実質的には有期限の資金提供であったと認められる。このような実質に照らすと、連結会計基準を適用するに当たっては、MMI社が保有する本件株式3000株については、原告又はその子会社がその計算において保有する株式であったと認めるのが相当 である。そして、証拠(甲15の1〔10頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件株式引受けの直前において、本件会社の発行済株式総数は1万株であり、そのうち、原告が3000株を、ジグノ社が2000株を である。そして、証拠(甲15の1〔10頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件株式引受けの直前において、本件会社の発行済株式総数は1万株であり、そのうち、原告が3000株を、ジグノ社が2000株を保有していたことが認められる。そうすると、平成29年3月末日時点においては、その直前に本件株式3000株の本件株式引受けが行われたことに伴い、 原告及びその子会社であるジグノ社の持株比率は、約61.5%(原告及- 53 - びジグノ社の合計保有株式数8000株/発行済株式総数1万3000株)となっていたと認められる。したがって、連結会計基準(前記1⑶)によれば、本件会社は原告の「子会社」に当たり、原告において連結財務諸表(連結計算書類)を作成するに当たっては、本件会社を連結の範囲に含める必要があった。しかし、原告の平成29年3月期の連結計算書類に おいては、本件会社を原告の子会社ではなく持分法適用関連会社としていること(前記1⑴オ)からすると、この点で、会社法431条に違反した会計処理がされたものと認められ、その結果、原告の連結営業利益が約3億8300万円過大に計上されたことが認められる(甲15の1〔20頁〕)。 ウ被告らの任務懈怠責任の有無について(ア) 被告Bについて上記ア及びイによれば、被告Bは、本件合意1の存在を認識していたこと、それにもかかわらず、本件会社を原告の持分法適用関連会社とする違法な会計処理がされた平成29年3月期の連結計算書類について、 取締役会において承認し、これを定時株主総会に提出したことが認められる。そうすると、被告Bは、法令違反行為を行ったものとして、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (イ) 被告A、被告D及び被告Cについて これを定時株主総会に提出したことが認められる。そうすると、被告Bは、法令違反行為を行ったものとして、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (イ) 被告A、被告D及び被告Cについて前記1⑴カの認定事実によれば、被告A、被告D及び被告Cは、平成 29年6月8日、被告Bから、MMI社による本件株式引受けの当時、その引受期間は3か月間であり、その経過後には本件株式を原告又は原告グループ会社が買い取ることで払込金額を同社に返還する旨の本件合意1がされていたこと、MMI社が同合意に基づいてその実行を求めてきており、Fは会社間の約束事は変更なく実行するべきとの態度であっ たことから、払込金額の返済を行うこと及びそれを前提に本件株式の引- 54 - 受先の検討を行うよう指示を出す内容のメールを受信したことが認められる。そうすると、被告A、被告D及び被告Cは、遅くとも同日の時点では、本件合意1の存在、ひいては本件株式引受けが実質的には有期限の資金提供であり、当該期限の到来時には原告又は原告グループ会社がMMI社から本件株式を買い取ることにより本件株式引受けに係る払込 金額を返還しなければならないことの認識を有していたと認められる。 それにもかかわらず、被告A、被告D及び被告Cは、本件会社を原告の持分法適用関連会社とする違法な会計処理がされた平成29年3月期の連結計算書類について、本件株式引受けに伴い原告の持株比率が低下したことから、当該会計年度から本件会社を連結範囲から除外した旨の注 記を付した上で、平成29年6月19日開催の定時株主総会に提出し、これを訂正しなかったこと(前記1⑴オ、キ)から、法令違反行為を行ったものとして、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類につ 6月19日開催の定時株主総会に提出し、これを訂正しなかったこと(前記1⑴オ、キ)から、法令違反行為を行ったものとして、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 ⑵ 平成30年3月期の連結計算書類について原告は、「本件株式譲渡に際して本件会社が本件株式を買い取る旨の内容 の本件合意書2が交わされていたことからすると、本件会社を原告の持分法適用関連会社とした平成30年3月期の連結計算書類に係る会計処理は連結会計基準に反するものであり、被告A、被告B及び被告Dは、本件合意書2の内容を認識しておきながら、このような内容の連結計算書類を作成させた任務懈怠責任があり、被告Cはその監視を怠った任務懈怠責任がある。」旨を 主張する。 そこで、以下では、平成30年3月期の連結計算書類に係る会計処理が連結会計基準に反するか否か等について検討し(下記ア)、本件合意書2の内容についての被告A、被告B及び被告Dの認識の有無について検討した上で(下記イ)、被告らの任務懈怠責任の有無を検討する(下記ウ)。 ア平成30年3月期の連結計算書類に係る会計処理が連結会計基準に反す- 55 - るか否か等について前記1⑵イ及びウの認定事実のとおり、オニオン社は、遅くとも平成30年3月末日までには、ジグノ社から、ジグノ社が保有する本件株式1400株を譲り受けた(本件株式譲渡)ところ、本件株式譲渡に際しては、オニオン社、本件会社及び本件会社の連結子会社であるメディコム社との 間において、オニオン社は平成31年4月末日において書面で請求することによりその保有する本件株式の全部又は一部を買い取るよう請求することができ、本件会社又はメディコム社がその買取義務を負う旨の本件合意書2を締結していたことが認められる。こ において書面で請求することによりその保有する本件株式の全部又は一部を買い取るよう請求することができ、本件会社又はメディコム社がその買取義務を負う旨の本件合意書2を締結していたことが認められる。このように、本件株式譲渡が平成30年3月期の期末直前に行われたものであり、その際にあえて原告又 は原告グループ会社が本件株式の買取義務を負う旨の本件合意書2が交わされていることに加えて、①原告の連結子会社であるジグノ社が本件株式引受け後にMMI社から本件株式の譲渡を受けたこと(前記1⑴ク)に伴い、本件会社が原告の連結子会社に該当する可能性が生じたことから、原告と監査法人との間で、平成30年3月期の中間決算における本件会社 の取扱いに関して協議が行われたところ、同年3月期の中間決算(平成29年9月)と最終決算(平成30年3月)との間で本件会社の取扱いが異なるのは望ましくないとの判断から、平成30年3月末日までにジグノ社が原告のグループ会社以外の者に本件株式を譲渡することを前提に、中間決算では本件会社を原告の連結子会社とはしないとの方針とされていた こと(乙40〔3~4頁〕、被告C本人〔2~3頁〕)、②後記3⑽の認定事実のとおり、原告は、上記監査法人から、同年1月17日に行われた同年3月期に係る中間(連結)財務諸表のレビュー結果を記載した報告書において、中間決算時には本件会社を持分法適用関連会社としているが、最終決算時までに原告のグループ会社の持株比率が低下しなかった場合には、 期首に遡って本件会社を連結子会社として計上する必要がある旨の報告- 56 - を受けていたことに照らすと、平成30年3月の期末当時、被告らとしては、原告のグループ会社が保有する本件株式の持株比率を引き下げる必要に迫られていたと推認することが ある旨の報告- 56 - を受けていたことに照らすと、平成30年3月の期末当時、被告らとしては、原告のグループ会社が保有する本件株式の持株比率を引き下げる必要に迫られていたと推認することができ、このことも踏まえれば、本件株式譲渡は、実質的には、平成30年3月期において本件会社を原告の持分法適用関連会社とするために、期末時点での原告グループ会社の本件株式の 持株比率を引き下げることを企図して、本件株式の名義を一時的にオニオン社に移すための取引にすぎないものであったと認められる。このような実質に照らすと、連結会計基準を適用するに当たっては、オニオン社がジグノ社から取得した本件株式1400株については、ジグノ社がその計算において保有する株式であったと認めるのが相当である。そして、証拠(甲 15の1〔10~11頁〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件株式譲渡の直前において、本件会社の発行済株式総数は1万4200株であり、そのうち、原告が3000株を、ジグノ社が上記1400株を含め3400株を保有していたことが認められる。そうすると、平成30年3月末日時点においては、原告及びその子会社であるジグノ社の持株比率は、約45.1% (原告及びジグノ社の合計保有株式数6400株/発行済株式総数1万4200株)となっていたと認められ、また、本件会社の取締役は9名であり、そのうち7名が原告又はジグノ社の役員若しくは使用人又は役員若しくは使用人であった者であることが認められる。したがって、連結会計基準(前記1⑶)によれば、本件会社は原告の「子会社」に当たり、原告 において連結財務諸表(連結計算書類)を作成するに当たっては、本件会社を連結の範囲に含める必要があった。しかし、原告の平成30年3月期の連結計算書類においては、本件会社を 社」に当たり、原告 において連結財務諸表(連結計算書類)を作成するに当たっては、本件会社を連結の範囲に含める必要があった。しかし、原告の平成30年3月期の連結計算書類においては、本件会社を原告の子会社ではなく持分法適用関連会社としていること(前記1⑵エ)からすると、この点で、会社法431条に違反した会計処理がされたものと認められ、その結果、原告の連 結営業利益が約4億4400万円過大に計上されたことが認められる。 - 57 - (甲15の1〔23頁〕)これに対し、被告Dは、本件株式譲渡当時はオニオン社が本件株式の買取りを請求するかは不確定であったから、本件会社を持分法適用関連会社として行った会計処理に誤りはない旨を主張する。確かに、本件合意書2の内容は、オニオン社が書面で請求することにより同社が保有する本件株 式を買い取るよう請求することができるというものであった(前記1⑵イ)。しかし、上記のとおり、平成30年3月期の期末当時、被告らは、原告グループ会社の本件株式の持株比率を引き下げる必要に迫られていたことや、本件株式譲渡が期末直前に実行されていることに照らすと、本件株式譲渡は、原告側の積極的な働きかけにより実現したものと推認するこ とができること、また、Gは、その交渉の当初から、オニオン社の資金繰り等の問題により一定期間の経過後には原告側で責任をもって本件株式を買い取る旨を書面にしておくよう求めていたことからすれば、オニオン社が本件合意書2に基づき本件株式の買取りを請求することは、ほぼ確実であったとみられ、そうすると、本件株式譲渡は、期末時点での原告グル ープ会社の持株比率を引き下げるために、本件株式の名義を一時的にオニオン社に移すための取引であったと評価するのが相当であるといえる。 とみられ、そうすると、本件株式譲渡は、期末時点での原告グル ープ会社の持株比率を引き下げるために、本件株式の名義を一時的にオニオン社に移すための取引であったと評価するのが相当であるといえる。したがって、被告Dの主張を採用することはできない。 イ本件合意書2の内容についての被告A、被告B及び被告Dの認識の有無について (ア) 被告Dについて証拠(被告D本人〔23、29~33頁〕)によれば、被告Dは、メディコム社を本件株式の買取義務の連帯保証人とするための交渉を行っていたこと、本件合意書2の締結に際しては、自ら本件合意書2の記載内容にあらかじめ目を通していたことが認められることから、被告Dは本 件合意書2の内容を認識していたと認められる。 - 58 - (イ) 被告Bについて被告Dは、本件株式譲渡に関しては、自身は連帯保証人を探すところから関与したが、被告A及び被告Bは本件合意書2の内容を分かった上で連帯保証人をどうするか話し合っていた旨、被告Aの指示で原告グループ会社の数社に連帯保証人になるよう打診し、最終的にはメディコム 社が連帯保証人になることとなった旨を供述している(被告D本人〔23、31~33頁〕、丙5〔6頁〕)。そして、前記認定事実によれば、本件合意書2の締結に先立ち、被告Bは、①○a Eから、Gとの間において、オニオン社がジグノ社から本件株式を買い取る代わりに、平成30年6月末までに、原告又は原告グループ会社が本件株式をオニオン社から買 い取ることを書面化する必要がある旨の本件合意書2の内容と大筋で符合する内容の基本合意に達した旨の報告を受けていたこと(前記1⑵ア(ア))、○b Eとの間において、オニオン社がジグノ社からの本件 い取ることを書面化する必要がある旨の本件合意書2の内容と大筋で符合する内容の基本合意に達した旨の報告を受けていたこと(前記1⑵ア(ア))、○b Eとの間において、オニオン社がジグノ社からの本件株式の保有期間を平成30年6月までとしてしまうと、MMI社による本件株式引受けと同じ連結外しであると判断されかねないことから、監査法人に よる指導を避けるためにはオニオン社による保有期間を延ばす必要がある旨の内容のやり取りをしていたこと(前記1⑵ア(イ)(エ)(オ)(カ))からすると、被告Bは、当初よりオニオン社による本件株式の保有期間やオニオン社からの買受人に関する協議に関与し、その内容を把握していたと推認されること、②被告Bは、被告Dから、メディコム社のN(以下 「N」という。)で進める旨のメールを受信しているところ、実際に本件合意書2ではメディコム社が本件株式の買取義務の連帯保証人となっており(前記1⑵ア(ケ)(コ)、イ)、被告Bにおいて、メディコム社が連帯保証人となること及びその保証内容として本件会社がオニオン社から本件株式を買い取る義務を負っていることを把握していたと考えるのが自然 であること、他方で、③E及び被告Dにおいて、オニオン社による本件- 59 - 株式の取得に向けた状況について、被告Bに随時報告をしておきながら、本件会社が本件株式の買取義務を負うことやメディコム社がその連帯保証人となることなどの本件合意書2の内容の重要な部分について、被告Bとの間で情報を共有しなかったとは考え難い上、上記アのとおり原告グループ会社の持株比率には関心を抱いていたであろう被告Bにおいて、 誰が買受人となったかなどについて確認をしていなかったとも考え難いことからすれば、被告Bは、本件合意書2の内容を認識していたと グループ会社の持株比率には関心を抱いていたであろう被告Bにおいて、 誰が買受人となったかなどについて確認をしていなかったとも考え難いことからすれば、被告Bは、本件合意書2の内容を認識していたと認められる。 これに対し、被告Bは、本件合意書2の内容を令和元年5月の取締役会まで知らなかった旨、被告Dから、Gからはオニオン社は大きな会社 ではないので何か資金繰りに困ったときとか、相談事があったときの相談相手を立てて欲しいとの要望を受けており、その相談相手としてNを立ててはどうかとの相談はあったが、Nが連帯保証人になるといった話はなかった旨を供述する(被告B本人〔5~8頁〕)。しかし、現にメディコム社は本件合意書2を締結した上で本件会社による本件株式の買取 義務の連帯保証人となっているのであるから、当然、その交渉を担当していた被告Dにおいては、メディコム社の代表取締役であるNに対し、メディコム社が連帯保証人となることやその具体的な保証内容等についての説明を行っていたと推認されるところ、被告Dがメディコム社のNに対してそのような説明を行っておきながら、被告A及び被告Bに対し てはメディコム社が単なるオニオン社の相談相手である趣旨の説明をすることは不自然であるから、被告Bの上記供述を採用することはできない。 また、被告Bは、仮に被告Bらが本件合意書2の内容を知っていたとすれば、オニオンから買取請求がされ得る平成31年4月末日までに本 件株式の引受先を探すなど、本件会社が再び原告の連結子会社となるこ- 60 - とを回避するための行動を必死にとるはずであるのに、被告Bらがこのような行動をとっていないことは、本件合意書2の内容を認識していなかったからにほかならないと主張する。しかし、本 - 60 - とを回避するための行動を必死にとるはずであるのに、被告Bらがこのような行動をとっていないことは、本件合意書2の内容を認識していなかったからにほかならないと主張する。しかし、本件株式譲渡が実行された平成30年3月期の当時は、監査法人から、期末までに原告グループ会社の本件会社の持株比率が低下させなければ、期首に遡って本件会 社を原告の連結子会社として計上する必要がある旨の報告を受けていた(後記3⑽)のであり、その当時と平成31年4月頃とでは状況が異なっていたことからすると、仮に被告Bらの本件株式の引受先を探すことに対する態度に違いがあったとしても、そのことが必ずしも不自然であるとはいえない。したがって、被告Bの上記主張は採用できない。 (ウ) 被告Aについて被告Dが上記(イ)の供述をしていることに加えて、前記認定事実及び証拠(被告A本人〔2~3頁〕)によれば、本件合意書2の締結に先立ち、被告Aは、①○a オニオン社がジグノ社から本件株式を買い取る方針についての報告を受けていたこと(前記1⑵ア(ウ))、○b Eから、オニオン社 がジグノ社からの本件株式の保有期間を平成30年6月までとしてしまうと、MMI社による本件株式引受けと同じ連結外しであると判断されかねないことから、監査法人による指導を避けるためには、オニオン社による本件株式の保有期間を延ばす必要がある旨の内容のメールを受信していること(前記1⑵ア(エ)(カ))からすると、被告Aは、ジグノ社か らオニオン社に対する本件株式の譲渡に際しては、MMI社による本件株式引受けの際と同様に、原告グループ会社による本件株式の買取りが協議の俎上に載せられていることを認識していたと推認されること、②被告Aは、被告Dから、メデ 株式の譲渡に際しては、MMI社による本件株式引受けの際と同様に、原告グループ会社による本件株式の買取りが協議の俎上に載せられていることを認識していたと推認されること、②被告Aは、被告Dから、メディコム社のNで進める旨のメールを受信しているところ、実際に本件合意書2ではメディコム社が本件株式の買取 義務の連帯保証人となっており(前記1⑵ア(ケ)(コ)、イ)、被告Aにおい- 61 - ても、メディコム社が連帯保証人となること及びその保証内容として本件会社がオニオン社から本件株式を買い取る義務を負っていることを把握していたと考えるのが自然であること、他方で、③E及び被告Dにおいて、オニオン社による本件株式の取得に向けた状況について、被告Aにも随時報告をしておきながら、本件会社が本件株式の買取義務を負う ことやメディコム社がその連帯保証人となることなどの本件合意書2の内容の重要な部分について、被告Aとの間で情報を共有しなかったとは考え難い上、原告グループ会社の持株比率には関心を抱いていたであろう被告Aにおいて、誰が買受人となったかなどについて確認をしていなかったとも考え難いことからすれば、被告Aは、本件合意書2の内容を 認識していたと認められる。 これに対し、被告Aは、本件合意書2の内容を令和元年5月の取締役会まで知らなかった旨、被告Dから、Gからはオニオン社は大きな会社ではないので資金繰りに困ったときに相談に乗ってくれる人を立てて欲しいとの要望を受けているとの相談があり、それに対して、被告Bから、 Nが苦労人だからいいのではないかとの話があったが、Nが連帯保証人になるとの話はなかった旨を供述する(被告A本人〔4~5頁〕)。しかし、上記(イ)の説示のとおり、被告Dが一方ではメディコム社のNに対し 苦労人だからいいのではないかとの話があったが、Nが連帯保証人になるとの話はなかった旨を供述する(被告A本人〔4~5頁〕)。しかし、上記(イ)の説示のとおり、被告Dが一方ではメディコム社のNに対して連帯保証の具体的な内容等の説明を行っておきながら、被告A及び被告Bに対してメディコム社が単なるオニオン社の相談相手である趣旨の 説明をするのは不自然であるから、被告Aの上記供述を採用することはできない。 ウ被告らの任務懈怠責任の有無について(ア) 被告A、被告B及び被告Dについて上記ア及びイによれば、被告A、被告B及び被告Dは、本件合意書2 の内容を認識しており、そのため、ジグノ社からオニオン社に対する本- 62 - 件株式譲渡が、実質的には、平成30年3月期において本件会社を原告の持分法適用関連会社とするために、期末時点での原告グループ会社の本件株式の持株比率を引き下げることを企図して、本件株式の名義を一時的にオニオン社に移すための取引にすぎなかったことを認識していたと認められる。それにもかかわらず、被告A、被告B及び被告Dは、本 件会社を原告の持分法適用関連会社とする違法な会計処理がされた平成30年3月期の連結計算書類について、取締役会において承認した上、これを定時株主総会に提出したことが認められること(前記1⑵エ)から、法令違反行為を行ったものとして、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 (イ) 被告Cについて原告は、「被告Cは、平成29年3月期の期末直前に行われた本件株式引受けに際して本件合意1がされていたことを認識していたのであるから、平成30年3月期の期末直前に行われた本件株式譲渡時においても、原告グループ会社がオニオン社から本件株式の買取義 行われた本件株式引受けに際して本件合意1がされていたことを認識していたのであるから、平成30年3月期の期末直前に行われた本件株式譲渡時においても、原告グループ会社がオニオン社から本件株式の買取義務を負う旨の本件 合意書2の内容を知っていたか、少なくともそのような内容の合意がされていることを察知すべきであったから、他の取締役の職務執行に対する監視義務の一環として、虚偽の内容のある連結計算書類が作成されることを阻止すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠った監視義務違反がある。」旨を主張する。 しかし、被告Cは、オニオン社が譲り受けた本件株式を本件会社が買い戻すとか、メディコム社が連帯保証をするというような話は全く聞いておらず、本件合意書2については令和元年5月10日の臨時取締役会が終わった後に初めて見た旨供述しているところ、①被告Cは、本件株式譲渡に際して、被告A、被告B、被告D及びEの間で行われた一連の メールのやり取りには加わっていなかったこと(前記1⑵カ)、②本件株- 63 - 式を原告のグループ会社以外に譲渡し、これにより原告グループ会社の持株比率を引き下げ、本件会社を原告の持分法適用関連会社にしようとすること自体は、特段問題視すべき行為ではない上、本件株式引受けと本件株式譲渡とでは、取引の相手方や内容が全く異なっていることに照らすと、本件株式引受け時に本件合意1がされていたこと(上記⑴ア) や、本件株式譲渡が期末の直前の時期に行われていること(前記1⑵ウ)をもって、直ちに本件株式譲渡時に原告グループ会社が本件株式の買取義務を負う旨の内容の合意が交わされるおそれが高かったとまではいえず、被告Cの上記供述の信用性を否定することはできないし、被告Cが上記合意がされていることを察 渡時に原告グループ会社が本件株式の買取義務を負う旨の内容の合意が交わされるおそれが高かったとまではいえず、被告Cの上記供述の信用性を否定することはできないし、被告Cが上記合意がされていることを察知すべきであったとはいえない。また、 原告は、前記1⑵(エ)のとおり、被告Cの部下に当たるLがオニオン社からの買戻しは決算外しと判断される旨指摘しているから、被告Cとしても連結外しとなる合意が存在していないか確認すべきであった旨を主張するが、Lによる指摘を被告Cが認識していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、原告が指摘するこれらの事情から、被告 Cが本件合意書2の内容を認識していたとか、これを認識すべきであったと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は採用することができない。 したがって、被告Cに監視義務違反は認められない。 ⑶ 小括 以上によれば、被告らは、平成29年3月期の連結計算書類の作成等について任務懈怠責任を負い、また、被告A、被告B及び被告Dは、平成30年3月期の連結計算書類の作成等について任務懈怠責任を負う(以下、これらの任務懈怠を指して「本件任務懈怠1」という。)。 3 争点1の2及び争点1の3に関する認定事実 前記前提事実、証拠(甲92、乙38~40、丙5、証人E、被告A本人、- 64 - 被告B本人、被告C本人、被告D本人及び後掲各証拠〔ただし、以下の認定に反する部分は除く。〕)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件事業の特性及び原告の参入の経緯等(甲15の1〔7~8頁〕、乙21)ア本件事業は、地上アナログテレビ放送に用いられていた周波数帯の一部を利用したV-Lowマルチメデ られる。 ⑴ 本件事業の特性及び原告の参入の経緯等(甲15の1〔7~8頁〕、乙21)ア本件事業は、地上アナログテレビ放送に用いられていた周波数帯の一部を利用したV-Lowマルチメディア放送を中核とするものであり、不特 定多数に情報を提供する「放送」と、個別にデータを送る「通信」とを融合させ、音声や映像に加えて、画像、文字、データ等の様々な情報を組み合わせて視聴者・受信者に届けるという新たな技術手法を活用するものであり、原告は、このような本件事業について、売上がピーク時の平成3年頃から右肩下がりの状況にあったラジオ業界において、従来のラジオに依 存したビジネスモデルから脱却し、新たなビジネスモデルを創出し得るものであり、また、災害多発国である我が国の防災情報伝達の新たな手法として活用するといった社会貢献にも寄与し得る事業であると位置付け、平成25年3月、本件事業に参入する方針を公表した。 原告は、平成26年1月16日、持株会社としてJMB社(当時の商号 はBIC株式会社)を設立し、JMB社は、同日、ハード事業者としてVIP社を設立した。 イ原告は、平成26年2月25日開催の取締役会において、本件事業の全体計画の承認決議を行った。その計画では、①VIP社において、平成26年度中に九州・沖縄ブロック、近畿ブロック、関東・甲信越ブロックで 放送設備の整備を開始し、平成30年度が始まるまでに東海・北陸ブロック、中国・四国ブロック、東北ブロック、北海道ブロックでの整備を終え、i-dio 放送の全国における世帯カバー率を77.9%まで拡大させること、②i-dio 放送を、平成26年7月頃には九州・沖縄ブロックで、同年12月頃には近畿ブロックで、平成27年3月には東京ブロックで開始するこ 国における世帯カバー率を77.9%まで拡大させること、②i-dio 放送を、平成26年7月頃には九州・沖縄ブロックで、同年12月頃には近畿ブロックで、平成27年3月には東京ブロックで開始するこ と、③受信端末について、平成30年度末までに累計で、スマートフォン・- 65 - タブレット型を1000万台、Wi-Fiチューナー・ルーター型を230万台、車載型を70万台普及させることなどが計画されていた。 ウ原告においては、毎週金曜日に、社内規程に定められた執行役員会議等の会議体とは別に、本件事業の進捗状況について議論する会議が開かれており、その会議には本件事業に関与する執行役員らが出席していた。また、 これとは別の機会に、Eは、被告Aの執務室に赴き、被告Aや被告Bに対し、本件会社の資金繰りの状況などについて相談することがあった。 ⑵ 本件会社の設立の経緯等(甲2~4、89)ア平成26年12月頃、総務省との折衝を担当していた原告の取締役から、基幹放送事業者(ソフト事業者)の認定の申請の前にCPが内定していな いと申請自体が受理されない旨の情報がもたらされたことを受けて、被告A、被告B及びEを含めた原告の関係者が協議を行い、急遽、原告が独自のCPを設立することが決定された。 イ原告は、平成27年1月23日、CPとして、本件会社を設立した。 設立に当たっては、Eが代表取締役社長に就任し、その後、被告Dが代 表権のない取締役会長に就任して、原告との協議及び交渉の窓口を務めることとなった。また、本件会社の出納業務は原告に委託され、原告ではグループ経営管理室長がその業務を担当し、被告Cが同室を所管する取締役であった。 ウ本件会社は、i-dio 放送を用いた新たなビジネス た。また、本件会社の出納業務は原告に委託され、原告ではグループ経営管理室長がその業務を担当し、被告Cが同室を所管する取締役であった。 ウ本件会社は、i-dio 放送を用いた新たなビジネスモデルに基づくサービ スを展開していくことが期待されており、上記の経緯から当初は原告の完全子会社として設立されたものではあったが、将来的には、JMB社への出資者を始めとするコンソーシアム(共同事業体)を結成した上で、第三者による出資を募ることが想定されていた。本件会社は、平成27年中に約2億3000万円の第三者割当増資を実施し、原告は、取締役会決議を 経た上で、そのうち1億4700万円の増資を引き受けた。 - 66 - ⑶ 航空無線との混信問題の発生VIP社は、平成26年7月15日には放送基地局の開設計画の認定を受けていたが、その後、i-dio 放送の放送波と周波数帯が隣接する航空無線との電波の混信問題が発生し、国土交通省との間で協議を行う必要が生じたことなどから、放送設備の整備は当初の計画よりも大幅に遅れ、i-dio 放送の 開始時期も当初の計画から遅れることとなった。 ⑷ 本件会社の資金繰りの状況(甲66、90、乙25)本件会社が本件事業において売上を増やしていくためには、放送設備を整備してi-dio 放送を受信することができる地域を広げていくとともに、その受信端末の普及を図る必要があった。本件会社は、放送設備の整備状況の遅 れなどを受けて、その普及が進むまでの間の収益を確保するために、スマートフォンやパソコンなどの端末にダウンロードされた専用のアプリケーションを通じて番組を配信するという、(放送ではなく)通信による方法でスポンサー収入を獲得しようとするなどしたものの、大きな収益源を獲得 フォンやパソコンなどの端末にダウンロードされた専用のアプリケーションを通じて番組を配信するという、(放送ではなく)通信による方法でスポンサー収入を獲得しようとするなどしたものの、大きな収益源を獲得できないでいた。他方で、本件会社は、平成28年3月29日、MM各社の1つであ る東京マルチメディア放送株式会社との間において、帯域賃貸借契約を締結しており、同年6月以降、同社に対し、帯域使用料として月額約3800万円の支払義務を負担するなどしていた。 そのため、本件会社は、平成28年頃以降、慢性的な資金不足に陥っており、資金調達が経営上の課題となっていた。 ⑸ 本件会社の事業計画本件会社は、平成28年度以降、事業計画を作成しているが、実績が事業計画に及ばず、下記のとおり、毎年その内容が修正されていた(単位は「百万円」)。 ア平成28年6月3日付け事業計画(甲36、39) 平成29年3月期売上 802 営業利益 △383- 67 - 平成30年3月期売上 3,128 営業利益 △157平成31年3月期売上 5,383 営業利益 539令和2年3月期売上 6,952 営業利益 968イ平成29年3月29日付け事業計画(甲39)平成30年3月期売上 634 営業利益 △99 平成31年3月期売上 1,291 営業利益 80令和2年3月期売上 2,656 営業利益 716ウ平成30年3月30日付け事業計画(甲40)平成31年3月期売上 348 営業利益 △191 2年3月期売上 2,656 営業利益 716ウ平成30年3月30日付け事業計画(甲40)平成31年3月期売上 348 営業利益 △191令和2年3月期売上 998 営業利益 △17 令和3年3月期売上 1,523 営業利益 260⑹ 本件会社の財務状況及び経営状況本件会社の財務状況及び経営状況は、次のとおりであった(単位は「百万円」)。 ア本件会社の財務状況(貸借対照表) (ア) 平成28年3月末時点(甲19の1)現金及び預金 439 純資産 453(イ) 平成28年9月末時点(甲19の2)現金及び預金 103 純資産 252(ウ) 平成29年3月末時点(甲37の1) 現金及び預金 235 純資産 220(エ) 平成30年2月末時点(甲25の2)現金及び預金 8 純資産 △91(オ) 平成31年3月末時点(甲41の1)現金及び預金 19 純資産 △451 イ本件会社の経営状況(損益計算書)- 68 - (ア) 平成29年3月期通期(平成28年4月~平成29年3月)(甲37の1)売上 70 営業利益 △383(イ) 平成30年3月期中間期(平成29年4月~同年9月)(甲25の1)売上 80 営業利益 △170 (ウ) 平成30年3月期通期(平成29年4月~平成30年3月)(甲38の1)売上 101 営業利益 の1)売上 80 営業利益 △170 (ウ) 平成30年3月期通期(平成29年4月~平成30年3月)(甲38の1)売上 101 営業利益 △444(エ) 平成31年3月期通期(平成30年4月~平成31年3月)(甲41の1) 売上 406 営業利益 △290⑺ 原告と三井住友銀行との間の本件金銭信託契約(甲20~22)ア原告は、平成15年度以降、三井住友銀行との間で締結した本件金銭信託契約を6か月ごとに更新していた。本件金銭信託契約には、原告を委託者、三井住友銀行を受託者とすること(第1条)、信託金額を定めた上で、 主として貸付金又は国債若しくは地方債を信託財産の運用対象とすること(第3条)、受託者は、信託財産の運用に関し、元本の補填及び利益の補足は一切行わないこと(第13条)などが規定され、その付則では、信託財産の貸付先が指定されていた(第2条第2項)。このように、本件金銭信託契約による信託金の指定貸付先に対する貸付けは、形式的には三井住友 銀行が当事者となって行うものではあったが、その貸倒れの危険は原告が負担する内容となっており、また、実際の運用においては原告の事前の承認がなければ指定貸付先に対する貸付けが行われることはなかった。 イ本件会社においては、外部企業からの出資や本件事業の売上の増加等によって資金調達を行うことを原則的な方針としていたが、被告らは、本件 会社が手元資金の不足で資金ショートを引き起こすことを回避するため- 69 - に、本件会社に対して本件金銭信託契約を利用した貸付けを行える状態としておくべく、平成28年12月、本件金銭信託契約の指定貸付先を変更して本件会社を追 き起こすことを回避するため- 69 - に、本件会社に対して本件金銭信託契約を利用した貸付けを行える状態としておくべく、平成28年12月、本件金銭信託契約の指定貸付先を変更して本件会社を追加した上で、その貸付限度額を3.5億円とする旨の原告の社内稟議を行い(その稟議書には、被告A、被告B、被告D及び被告Cの決裁印が押印されている。)、同月30日、原告と三井住友銀行の間に おいて、同内容の本件金銭信託契約が締結された。 ⑻ 原告の職務権限規程(甲32)原告の職務権限規程(以下「本件職務権限規程」という。)においては、多額の貸付け(総資産の100分の1に相当する額以上の貸付け)については、総務部が担当部門となり、社長の決定事項、会長への報告事項、取締役会の 承認事項とされており、これ未満の金額の貸付けについては、グループ経営管理室が担当部門となり、社長の決定事項とされていた。 ⑼ 本件会社の1億2000円の借入れ(甲24)本件会社は、平成29年1月に資金ショートを引き起こすおそれが生じたことから、同月31日、本件金銭信託契約を利用して、三井住友銀行から、 1億2000万円の借入れを受けた。その弁済予定日は当初同年3月31日とされていたが、弁済予定日が到来する度に3か月間ずつ延長された。 ⑽ 会計監査人による原告の平成30年3月期に係る中間の財務諸表のレビュー結果(甲27)原告の会計監査人は、平成30年1月17日、原告の監査役会に対し、平 成30年3月期に係る中間(連結)財務諸表のレビュー結果を報告した。同報告書には、本件株式を含む原告保有株式の一部について、期末の時点で実質純資産額が簿価から50%を超えて下落する可能性があり、仮にそうなった場合には、減損処理が必 務諸表のレビュー結果を報告した。同報告書には、本件株式を含む原告保有株式の一部について、期末の時点で実質純資産額が簿価から50%を超えて下落する可能性があり、仮にそうなった場合には、減損処理が必要となる可能性がある旨、本件株式については、同月までにグループ会社以外への売却を予定し、出資割合が40%未満にな る見込みであったため、中間期では本件会社を持分法適用関連会社として連- 70 - 結上取り込んでいるが、当期中に出資割合が低下しなかった場合等、期末の状況次第では、期首に遡って、本件会社を連結子会社として取り込む必要がある旨が記載されていた。 ⑾ 本件会社の5500万円及び1億7500円の借入れア被告Dは、平成30年2月21日、被告Bに対し、「TSC(注:本件会 社)に三井住友銀行から借り入れを行いたいと思っております。2月分の不足分が51,000千円、3月分までの不足分が合計で181,000千円。3月にはGSJ(注:ジグノ社)からの融資が実現する前提で、まずは2月分の不足分を借り入れしようと考えますが、進めてよろしいでしょうか。明日中に手続きを進めれば週明けに着金し今月の支払いが可能で すので、お願い申し上げます。明日の朝、明細をお持ちします。」との内容のメールを送信した。翌日、被告Bは、被告Dから、本件会社の資金繰りの状況等についての説明を受け、本件会社に対して本件金銭信託契約を利用して貸し付けを行うことを承諾した。(甲34の1)イ本件会社は、平成30年2月26日、本件金銭信託契約を利用して、三 井住友銀行から、弁済予定日を同年3月20日として、5500万円の借入れを受けた(本件個別貸付のうち平成30年2月の個別貸付)。この借入れについて、原告の取締役会における事前の承認 して、三 井住友銀行から、弁済予定日を同年3月20日として、5500万円の借入れを受けた(本件個別貸付のうち平成30年2月の個別貸付)。この借入れについて、原告の取締役会における事前の承認決議はされておらず、また、借入れの実行後に原告の取締役会に対する報告もされなかった。(甲26の1) ウ被告Dは、平成30年3月13日、被告Bに対し、まずは本件会社の借入上限額まで借入れ作業を進めようと考えている旨、それと同時に、本件金銭信託契約の総額を6億円から8億円程度に引き上げることを検討している旨、本件会社の今期不足分は計算中であるが、総額で1億3000万円ほどである旨、明日相談させていただきたい旨の内容のメールを送信 した。(甲34の2)- 71 - エ被告Bは、平成30年3月19日頃、被告Dに対し、Eを始め本件会社の幹部には、債務超過となっている本件会社に貸付けを行うことは貸付側である原告が監査法人から貸倒引当金の計上を指導されかねない状況にあることを深刻に受け止めて欲しい旨の内容のメールを送信した。(甲62) オ本件会社は、平成30年3月22日、本件金銭信託契約を利用して、三井住友銀行から、弁済予定日を同月30日として、1億7500万円の借入れを受けた(本件個別貸付のうち平成30年3月の個別貸付)。この借入れについて、原告の取締役会における事前の承認決議はされておらず、また、借入れの実行後に原告の取締役会に対する報告もされなかった。(甲2 6の2)⑿ 本件金銭信託契約の変更の稟議本件金銭信託契約の期間が平成30年3月末に満了するのに伴い、同月26日、原告社内において、契約期間を同年9月28日まで延長させるとともに、指定貸付先間の貸付限度額の配分を変 の変更の稟議本件金銭信託契約の期間が平成30年3月末に満了するのに伴い、同月26日、原告社内において、契約期間を同年9月28日まで延長させるとともに、指定貸付先間の貸付限度額の配分を変更し、本件会社の貸付限度額を3 億5000万円から4億5000万円に変更する内容の稟議が行われた(稟議書には、被告A、被告B、被告D及び被告Cの決裁印が押印されている。)。 この稟議書には、指定貸付先各社の借入残高及び運用状況の一覧表が添付されており、本件会社の借入状況として、1億2000万円、5500万円及び1億7500万円の借入残高があることや、その利息額などが記載されて いた。(甲35)⒀ JAをスポンサーとするラジオ番組放送の開始原告は、平成30年5月、JAをスポンサーとする新たなラジオ番組の放送を開始した(同年5月及び6月は単発の放送であったが、同年7月以降は毎週平日朝のレギュラー放送となった。以下「本件番組」という。)。本件番 組は、本件会社がインターネット配信を行うことで若年層に視聴層を広げる- 72 - という企画を契機として始動したものであり、JAの要望を受けて、ZBS社がJAの代理店となり、本件会社が原告の代理店として関与することとなった。これにより、①ZBS社は、本件会社に対して番組提供料(番組スポンサーが放送局に支払う電波料及び製作費)を支払い、本件会社からは代理店手数料を受領する、②本件会社は、原告に対して媒体購入費を支払い、原 告からは代理店手数料(電波料の20%及び製作費の10%)を受領する(以下、本件会社が原告に支払うべき媒体購入費から、原告が本件会社に支払うべき代理店手数料を控除した費用を指して「本件媒体購入費」という。)という商流(以下「本件商流」という。)が採 %)を受領する(以下、本件会社が原告に支払うべき媒体購入費から、原告が本件会社に支払うべき代理店手数料を控除した費用を指して「本件媒体購入費」という。)という商流(以下「本件商流」という。)が採られることとなった。本件媒体購入費の支払日は、当初、放送実施日の属する月の翌月末とされ、その金額は、 平成30年5月及び6月の放送分は月額635万0400円、同年7月以降の放送分は月額2218万3200円であった。なお、原告(代表者は被告B)と本件会社(代表者はE)は、平成31年3月29日付けで本件媒体購入費の支払等に関する「放送広告業務取扱契約書」を締結しているところ、同契約書においては、本件媒体購入費の支払日は放送実施日の属する月の翌 翌々月末と延長されており、同契約書の内容は平成30年4月1日から遡って効力を有する旨が規定されていた。(甲31、85)⒁ 本件媒体購入費の支払の遅滞ア本件会社は、平成30年5月放送分の本件媒体購入費については、約定の支払日に支払うことができたが、資金繰りの問題から、翌月以降の放送 分については、約定の支払日に支払うことが困難となっていた。Eは、平成30年5月30日、被告Bに対し、本件会社の資金状況の一覧表を添付した上で、このままでは6月に資金ショートする旨のメールを送信した。 (甲33)イ被告Dは、平成30年8月1日、被告Bに対し、本件会社の債務の支払 に関し、「7月の支払につきまして、TFM(注:原告) 9,971,0- 73 - 00円 MMT(注:東京マルチメディア放送株式会社) 6,206,000円〔中略〕の支払いを待ってもらうよう各社にお願いしました。」、「当社につきましてもB社長にお願いする次第です。」とのメールを送信した。 (甲63) マルチメディア放送株式会社) 6,206,000円〔中略〕の支払いを待ってもらうよう各社にお願いしました。」、「当社につきましてもB社長にお願いする次第です。」とのメールを送信した。 (甲63)ウ本件会社は、平成30年6月及び7月放送分の本件媒体購入費は約定の 支払日から数か月程度遅れて支払うことができたが、同年8月から平成31年3月までの放送分の本件媒体購入費については支払をしなかった。 ⒂ 平成31年3月28日開催の原告の取締役会での議論(乙26)平成31年3月28日開催の原告の取締役会において、収支概況として本件会社からの売掛金が滞留している旨などの報告がされたほか、JMB社の 連結3社(JMB社、VIP社及び東京マルチメディア放送株式会社)の資金調達の状況等に関する説明が行われた。出席した取締役及び監査役からは、本件事業の将来は理解するが、足元で多額の資金調達をしなければならず、原告が日本政策投資銀行から融資を受けて貸し付けた30億円が焦げ付かないか心配である旨、本件事業のプランには夢があるが、短期的な部分で原告 に累が及ぶことを懸念する旨、本件会社から売掛金の回収ができないと全体計画に影響がある旨、JMB社の連結売上高の3割を本件会社が占めるのであるから本件会社の各年度別の収益の見込みを出して欲しい旨などの意見が出された。 ⒃ 平成31年4月23日開催の原告の取締役会での議論(甲55、乙4、2 7)平成31年4月23日開催の原告の取締役会において、JMB社の連結3社の資金調達に関し、このままでは同年5月末には約1.2億円、令和2年3月末には約18.8億円、令和3年5月末には最大約33.8億円の資金ショートに陥る可能性がある旨が報告された。続いて、被告Dからは、 資金調達に関し、このままでは同年5月末には約1.2億円、令和2年3月末には約18.8億円、令和3年5月末には最大約33.8億円の資金ショートに陥る可能性がある旨が報告された。続いて、被告Dからは、本件 会社の資金調達に関し、平成31年3月末の資金残高が1900万円であり、- 74 - 同年5月には1億円の借入予定があり、同月の「八六東京」事業の営業譲渡益1億7700万円がある旨、今後の方針として、原告に対する未払金2億3400万円は平成31年度中に、本件金銭信託契約を利用した借入金3億5000万円は令和3年度までにそれぞれ完済し、平成31年度中には2億円の増資を実施する予定である旨が報告された。 被告Bは、①本件事業については、今年4月の札幌親局の開局により全国7ブロック全ての地域でサービスが開始されることになり、これにより、インフラの整備段階であるフェーズ1から、収益化を図るフェーズ2に移り、将来の価値が見えてきた旨、②本件会社は、新しい事業を提供する重要な会社であり、その事業は現実化しつつあるが、事業継続には支援が必要で、本 件職務権限規程の範囲内で本件金銭信託契約を利用して借入れを行ったが、本来、取締役会に対して適時に開示すべきであった旨、③本件事業から撤退するとなると、FM放送のデジタル化が失われるのみならず、広範囲の補償問題やインフラ撤去費用の発生等、原告に与える影響は大きい一方、数年で収益化できる段階まできているので、フェーズ2に進むのがよいと考えてい る旨、④JMB社の連結3社において予想される資金不足額の最大の額(33.8億円)を上回る35億円の融資枠をJMB社が受け、その融資枠を原告が保証することについて決議をしてほしい旨などを述べた。出席した取締役からは、これまで時間をか 想される資金不足額の最大の額(33.8億円)を上回る35億円の融資枠をJMB社が受け、その融資枠を原告が保証することについて決議をしてほしい旨などを述べた。出席した取締役からは、これまで時間をかけて本件事業に取り組んできたが、投資の回収が一向に進んでいない中で更に35億円の融資を回収できるのか読めない旨 などの意見が出され、JMB社が実際に資金の借入れを行う際には原告の取締役会による承認を得ることなど条件に、JMB社の融資枠を保証することが承認された一方、令和元年5月分及び6月分のJMB社の事業資金として原告が2億円を融資することについては決議に至らず、次回の取締役会にて継続して審議されることとなった。 ⒄ 令和元年5月10日開催の原告の取締役会での議論(甲56、乙28)- 75 - 令和元年5月10日開催の原告の取締役会において、冒頭、監査役から、①同年4月にあった内部通報に基づき、監査役会では本件会社に関連する取引について法令違反等がないか確認作業を行ってきたが、本件株式の不自然な移動があり、会計監査人からは粉飾決算の疑いが指摘された旨、②会計監査人からの意見は、○a 第三者委員会を設置して連結外しを中心とした調査及 び原因解明を求める、○b 平成30年度の決算については、本件会社を子会社として連結決算に取り込む過年度修正及び本件会社への貸付金及び未収入金を貸倒引当金として計上することが必至である、○c 監査報告書は第三者委員会からの報告を受けてから作成する必要があるというものであった旨などが報告された。原告の取締役会は、第三者委員会を設置することを決議し、続 いて、継続審議となっていたJMB社に対する融資の件について議論がされたが、第三者委員会による調査結果を踏まえて改めて取 報告された。原告の取締役会は、第三者委員会を設置することを決議し、続 いて、継続審議となっていたJMB社に対する融資の件について議論がされたが、第三者委員会による調査結果を踏まえて改めて取締役会に諮られることとなった。 ⒅ 本件第三者委員会による調査(甲15)原告は、社外の弁護士2名及び公認会計士1名を委員とする本件第三者委 員会を設置した。本件第三者委員会は、令和元年5月14日から予備調査を行った後、同年6月12日から同年7月30日まで本調査を行い、同年8月8日、原告に対し、原告の平成29年3月期及び平成30年3月期の連結計算書類では本件会社が意図的に連結対象から外されている旨などが記載された調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)を提出した。 4 争点1の2(請求原因2-本件個別貸付が行われたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか)についての判断⑴ 原告は、「平成30年2月及び3月に行われた本件個別貸付の実行を決定した被告A、被告B及び被告Dには、当該決定について、経営判断原則に照らし善管注意義務違反があり、また、「重要な業務執行の決定」に当たるにも かかわらず、取締役会決議を経なかった法令違反(会社法362条4項柱書- 76 - き)があり、経理・財務の担当取締役であった被告Cには、上記決定について監視義務がある。」旨を主張する。 そこで、以下では、まず本件会社の取締役として本件個別貸付の実行を決定した被告Dの任務懈怠責任の有無について検討した上で(下記⑵)、被告B及び被告Aが同決定をしたか否か(下記⑶)並びに両被告の任務懈怠責任の 有無について検討し(下記⑷)、被告Cの任務懈怠責任の有無について検討する(下記⑸)。 ⑵ 被告Dの任務懈怠責任 告B及び被告Aが同決定をしたか否か(下記⑶)並びに両被告の任務懈怠責任の 有無について検討し(下記⑷)、被告Cの任務懈怠責任の有無について検討する(下記⑸)。 ⑵ 被告Dの任務懈怠責任の有無についてア被告Dの善管注意義務違反の有無について(ア) 取締役は、会社の業務を遂行するに当たっては、善良な管理者の注意 義務(善管注意義務)を負っており(会社法330条、民法644条)、善管注意義務違反があった場合には、その任務を怠ったものとして、これにより会社に生じた損害を賠償する責任を負う(会社法423条1項)。 そして、取締役の経営判断に属する事項については、将来予測にわたる経営上の専門的、政策的な判断に委ねられるべき事項であることから、 たとえ経営判断の結果として会社に損害が生じることがあったとしても、そのことから直ちに当該判断を行った取締役に善管注意義務違反があったと解するべきではなく、それが善管注意義務違反に当たるか否かについては、当該判断の過程、内容に著しく不合理な点があったかどうかとの観点から行うことが相当である。そこで、以下ではこの観点から被告 Dの善管注意義務違反の有無を検討する。 (イ) 証拠(丙5、被告D本人)によれば、被告Dは、本件個別貸付の実行を決定した平成30年2月ないし3月当時、本件会社では複数の事業が進行しており、同時点の資金繰りさえ乗り切ることができれば、いずれ収益性が改善し、後日、本件個別貸付の貸付金を回収することができる と考えられたこと、他方で、本件個別貸付を実行しなければ、本件会社- 77 - は資金ショートを引き起こして破綻してしまい、これはJMB社グループの破綻及び本件事業の破綻に直結する事態であり、そのような事態が生じた場合に 個別貸付を実行しなければ、本件会社- 77 - は資金ショートを引き起こして破綻してしまい、これはJMB社グループの破綻及び本件事業の破綻に直結する事態であり、そのような事態が生じた場合には、原告は多大な経済的損失や信用の喪失を受けるおそれがあったことを勘案し、本件個別貸付の実行を決定したことが認められる。 本件個別貸付が実行された平成30年2月ないし3月当時の本件会社及び本件事業をめぐる状況について、以下の事情があることが認められる。 ○a 航空無線との電波の混信問題の解消に向けた動き前記前提事実⑶エ、前記3⑶及び証拠(甲66~67、乙25)によ れば、i-dio 放送の放送波と航空無線との電波の混信問題の発生により、放送設備の整備及びi-dio 放送の開始時期は当初の計画よりも遅れが生じていたものの、平成27年7月には周波数帯の間隔を離すことで混信を防ぐ措置を講じることが可能となり、平成28年3月には総務省からの認定を受けて東京、大阪及び九州・沖縄の各ブロックで放送波の発信 ができる状態となり、その後、平成28年7月には中日本ブロックで、平成30年5月には北日本ブロックで、同年6月には中国・四国ブロックでも放送波の発信ができる状態となり、また、各地域における放送局開局のための予備免許の交付及び本免許の交付が順次進められていたことが認められる。 ○bi-dio 放送の受信エリア、放送設備の整備及び受信端末の普及の状況証拠(甲43、67、乙25~26)によれば、平成28年12月時点のi-dio 放送の受信エリアの状況(地域ごとの世帯カバー率)は、北海道、東北、中国・四国地域が0%、関東・甲信越地域が72.4%、東海・北陸地域 7、乙25~26)によれば、平成28年12月時点のi-dio 放送の受信エリアの状況(地域ごとの世帯カバー率)は、北海道、東北、中国・四国地域が0%、関東・甲信越地域が72.4%、東海・北陸地域が62.1%、近畿地域が73.5%、九州・沖縄地域 が33.6%であったのに対し、平成30年3月時点に至っても、北海- 78 - 道、東北、中国・四国地域が0%、関東・甲信越地域が72.4%、東海・北陸地域が67.5%、近畿地域が79.4%、九州・沖縄地域が34.3%であった。 放送設備の整備の状況は、平成30年3月末日時点において、全国で12放送局(親局として、東京局、名古屋局、大阪局及び福岡局、中継 局として、秦野局、檜原局、静岡局、浜松局、加古川局、北九州局、久留米局及び宗像局)が既に開設されており、同年5月には、仙台親局及び喜多方中継局が、同年6月には、広島親局の開局が予定されていた。 (なお、被告らは、平成31年4月には札幌親局の開局が予定されていたと主張するが、いつの時点でその開局が予定されていたのかは不明で あり、平成30年2月ないし3月当時にその予定があったことを認めるに足りる証拠はない。)受信端末の普及状況は、平成28年12月時点において、スマートフォン・タブレット型が約2200台、Wi-Fiチューナー・ルーター型が約8万台、車載型が約100台供給され、平成30年3月時点にお いては、それぞれ約4400台、約8万台、約211台が供給されていた。なお、同月時点では、同年度末までに、それぞれ約983万台、約69万台、約70万台の供給がされるとの予測がされていたが、平成31年3月末時点では、それぞれ約8900台、約8万台、約250台の供給にとどまっていた。 、それぞれ約983万台、約69万台、約70万台の供給がされるとの予測がされていたが、平成31年3月末時点では、それぞれ約8900台、約8万台、約250台の供給にとどまっていた。 ○c 本件会社の事業の状況等平成30年2月及び3月の当時、本件事業における有力なCPは、本件会社と株式会社アマネク・テレマティクスデザインの2社だけであった。(弁論の全趣旨)本件会社は、平成30年2月及び3月の当時、BtoC事業として、同 年2月から、訪日中国人客をターゲットに日本の観光や文化に関する情- 79 - 報を配信する「八六東京」との名称の事業を開始していたほか、BtoB事業として、空港、駅、路線バス、JAグループの各拠点などに設置されたデジタルサイネージを通じて様々な情報の配信等を行い、その設置先から帯域使用料等を収受する事業の実証実験が進められるなどしていた。(乙2〔12~38頁〕) ○d 本件会社の経営状況及び財務状況本件会社は、平成28年以降継続して損失を計上しており、平成29年3月期通期には約3億8300万円、平成30年3月期の中間期には約1億7000万円、同年3月期通期には約4億4000万円もの多額の営業損失を計上していた(前記3⑹イ)。 また、本件会社の現預金は、平成28年3月末時点で約4億3900万円であったが、同年9月末時点には約1億0300万円となり、平成29年1月には資金ショートを引き起こすおそれが生じ、本件金銭信託契約を利用して1億2000万円の借入れを受けるなどしたため、同年3月末時点では約2億3500万円となっていたが、平成30年2月末 時点には約800万円にまで減少し、同時点で9100万円の 託契約を利用して1億2000万円の借入れを受けるなどしたため、同年3月末時点では約2億3500万円となっていたが、平成30年2月末 時点には約800万円にまで減少し、同時点で9100万円の債務超過となっていた(前記3⑹ア、⑼)。 (ウ) 上記○a ~○d によれば、航空無線との混信問題により、放送設備の整備等は当初の計画から遅延していたものの、平成27年7月には混信を防ぐ措置を講じることが可能となり、平成28年3月以降、i-dio 放送波 の発信ができる状態となった地域が拡大していき、放送局の開局のための免許の交付作業も順次進められていたこと、本件個別貸付が実行された平成30年2月及び3月当時には、一定数の放送局が既に開設されており、その後も新たな親局及び中継局の開設が予定されていたこと、本件会社においては、「八六東京」事業が実際にサービスの提供を開始して いたほか、企業向けの様々な事業の実証実験も進められていたことが認- 80 - められる。本件会社及び本件事業をめぐるこれらの状況に照らすと、確かに、本件個別貸付の実行が決定された当時において、その具体的な時期は不明ながらも、いずれは本件会社が本件事業でそれなりの売上及び利益を上げる可能性はあったと認められる。 しかし、平成30年2月及び3月当時におけるi-dio 放送の受信エリ アの状況、受信端末の普及状況及び本件会社の事業の進捗状況等(前記3⑴イ、上記○b ○c )に照らすと、本件会社が本件事業で十分な売上及び利益を上げるようになるまでには依然相当の期間を要することが合理的に見込まれる状況にあったといえ、実際、本件会社が作成した同月30日付けの事業計画においても、本件会社が営業利益を計上するのは令和 3年3月期 になるまでには依然相当の期間を要することが合理的に見込まれる状況にあったといえ、実際、本件会社が作成した同月30日付けの事業計画においても、本件会社が営業利益を計上するのは令和 3年3月期の事業年度以降であると予測されていた(前記3⑸ウ)。このように、本件会社が本件個別貸付を受けた場合にその借入金の十分な返済原資を獲得するようになるまでには依然相当の期間を要することが合理的に予測できたことに加えて、本件会社は、平成28年頃以降、慢性的な資金不足となっていたのであり(前記3⑷)、具体的には、本件会社 は資金ショートのおそれから平成29年1月31日に本件金銭信託契約を利用して1億2000万円の借入れを受けていたにもかかわらず、その後も継続して多額の営業損失を計上し続け、上記借入れを受けてから僅か約1年1か月後となる平成30年2月末日時点では、現預金が約800万円まで減少し、極めて厳しい資金繰りの状況であった上に、91 00万円もの債務超過に陥っており(上記○d )、第三者から新たな借入れや出資を受けるなどして資金調達を行うことも困難な状況にあったといえることにも照らすと、たとえ本件個別貸付を実行したところで、その弁済予定日における返済は不可能であったことはもとより、本件会社は、早晩、再び資金不足に陥り、資金ショートを引き起こすおそれが極めて 高かったといえるし、そのことについても容易に予測することができた- 81 - と認められる。このことは、本件会社において、現に、本件個別貸付の実行から僅か3か月後の同年6月には資金ショートのおそれが生じ(前記3⒁ア)、同年7月には635万0400円程度の本件媒体購入費の支払すら遅滞に陥り、同年8月分以降は一切本件媒体購入費の支払ができない状態となっていること(前記 には資金ショートのおそれが生じ(前記3⒁ア)、同年7月には635万0400円程度の本件媒体購入費の支払すら遅滞に陥り、同年8月分以降は一切本件媒体購入費の支払ができない状態となっていること(前記3⒀、⒁ウ)からも裏付けられる。 また、本件個別貸付の金額は合計2億3000万円とそれなりに高い金額であり、原告がその貸倒れの危険を負担していたものであった(前記3⑺ア)。 これらの事情の下において取締役に一般的に期待される水準に照らすと、原告の取締役である被告Dとしては、本件個別貸付の実行を決定す るに際しては、現在及び将来の本件会社の経営状況及び財務状況のみならず、本件会社が上げる売上及び利益の見込み(十分な返済原資を獲得できる見込みや時期等)、返済原資を獲得するまでの本件会社の収支の状況及び資金繰りの予測、本件会社に対する追加支援の要否及びその金額等に関する情報を合理的な範囲で収集・分析及び検討する必要があった といえる。 それにもかかわらず、被告Dは、本件個別貸付の実行を決定した当時、その貸付金について、具体的な返済の目途は立っていなかった旨、いつ回収できるようになるのかは分からなかった旨、(本件会社の目の前のキャッシュを何とか調達することに注力しており、その先の)回収までの 本件会社の収支や資金繰りについてのシミュレーションはできていなかった旨を供述しており(被告D本人〔16、41~42頁〕)、被告Dにおいて、上記情報についての合理的な収集・分析及び検討をしていなかったものと認められる。 したがって、被告Dが本件個別貸付の実行を決定したことには、原告 の取締役としての判断の過程に著しく不合理な点があったと認められる。 - 82 - と認められる。 したがって、被告Dが本件個別貸付の実行を決定したことには、原告 の取締役としての判断の過程に著しく不合理な点があったと認められる。 - 82 - (エ) 次に、本件個別貸付の実行を決定した判断の内容に著しく不合理な点があったかどうかを検討するに、被告Dは、本件個別貸付を実行しなければ本件会社は資金ショートを引き起こして破綻していた旨、本件会社の破綻はJMB社グループの破綻及び本件事業の破綻に直結する事態であり、そのような事態が生じると、原告は多大な経済的損失等を被るお それがあった旨を供述している(上記(イ))。確かに本件個別貸付が実行された当時、本件会社は本件事業における2つの有力なCPのうちの1社であり(上記○c )、本件会社は、新たなビジネスモデルの展開の役割が期待されており、実際にも様々な事業の実証実験を行い、本件会社が支払う帯域使用料はJMB社グループの重要な収益源にもなっていたこと (前記3⑵ウ、⒂、上記○c )などからすると、本件会社が資金ショートを引き起こした場合には、JMB社グループの経営に一定の悪影響を及ぼすことが推認される。 しかし、本件個別貸付の決定をしたその当時において、本件会社が資金ショートを引き起こした場合に本件事業及びJMB社グループに具体 的にどのような内容、程度の影響が生じるものと予測されていたのか定かではない。また、仮に被告Dの上記供述のとおり、本件会社の資金ショートがJMB社グループ及び本件事業の存続それ自体に直結するものであるとすれば、本件個別貸付を行ったところで、本件会社が早晩再び資金ショートを引き起こすおそれが極めて高かったにもかかわらず、そ の後の本件会社の収支や資金繰りについて十分な検討をするこ のであるとすれば、本件個別貸付を行ったところで、本件会社が早晩再び資金ショートを引き起こすおそれが極めて高かったにもかかわらず、そ の後の本件会社の収支や資金繰りについて十分な検討をすることもなく、本件個別貸付の実行を決定すること(上記(ウ))は、尚のこと不合理であるといわざるを得ない。そもそも、仮に本件会社の資金繰りの状況が本件事業等の存続に直結し得るのであれば、その状況は原告(被告ら以外の役員)にとって極めて重大な関心事であったはずであるにもかかわら ず、被告らは、原告の取締役会において、本件個別貸付を行うことにつ- 83 - いて、本件会社の具体的な資金繰りの状況等に関する説明を行った上で、実行に先立ちその承認を受けたり、事後的な報告をすることがなかったという経緯(前記3⑾イ、オ、⒃)や、平成31年4月23日開催の取締役会までの間に、被告ら以外の役員に対して、上記状況等に関する説明を行い、その審議に供したことを認めるに足りる証拠もないことに照 らすと、本件会社の資金ショートが本件事業等の破綻に直結する旨の上記供述の内容を重くみることはできないというべきである。 また、取締役会長として本件会社の資金調達を担っていた被告Dにおいて、本件個別貸付の実行を決定した当時、その貸付金の具体的な返済の目途は立っていなかった旨、貸付金をいつ回収できるようになるのか は分からなかった旨などの供述をしていること(上記(ウ))に鑑みると、その当時、本件会社の売上及び利益の見込み(十分な返済原資を獲得できる見込みや時期等)、返済原資を獲得するまでの本件会社の収支の状況及び資金繰りの予測、追加支援の要否及びその金額等については客観的にも不明な状況であったと認めるほかない。 そうすると、本 時期等)、返済原資を獲得するまでの本件会社の収支の状況及び資金繰りの予測、追加支援の要否及びその金額等については客観的にも不明な状況であったと認めるほかない。 そうすると、本件会社が資金ショートを引き起こした場合にはJMB社グループの経営に一定の悪影響を及ぼすおそれがあったことなどを考慮したとしても、そのような状況下で本件個別貸付の実行を決定した判断の内容には著しく不合理な点があったと認められる。 (オ) 以上によれば、被告Dは、本件個別貸付の実行を決定したことについ て善管注意義務違反があったと認められ、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 イ被告Dの法令違反の有無について(ア) 原告は、本件個別貸付の決定が会社法362条4項柱書きの「重要な業務執行の決定」に該当する旨を主張するところ、本件個別貸付は、同 項柱書きの「業務執行」の例示である「財産の処分」に当たることから、- 84 - これが「重要な財産の処分」(同項1号)に該当するか否かを検討するに、「重要な財産の処分」に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である(最高裁平成5年(オ)第595号同6年1月2 0日第一小法廷判決・民集48巻1号1頁)。 (イ) これを本件について検討すると、①本件個別貸付の金額は合計2億3000万円であり、これは、平成30年3月期の末日時点での原告の総資産である約387億円(乙34)の1%を下回る金額であったこと(このことは、本件金銭信託契約を利用した貸付金の総額3億5000万で みても変わらない。)、②本件金銭信託契 日時点での原告の総資産である約387億円(乙34)の1%を下回る金額であったこと(このことは、本件金銭信託契約を利用した貸付金の総額3億5000万で みても変わらない。)、②本件金銭信託契約を利用してグループ会社に貸付けを行うことは、原告の営業のため通常行われる取引に属するものといえること、③本件職務権限規程によれば、総資産の100分の1に相当する額未満の貸付けについては、取締役会への付議事項とはされておらず(前記3⑻)、原告における従来の取扱いにおいても取締役会による 承認決議は不要とされていたことからすれば、本件会社の資金繰りが厳しく、弁済予定日に本件個別貸付の貸付金の返済が不可能であったこと(上記ア(ウ))などをしん酌したとしても、本件個別貸付が「重要な財産の処分」に該当すると認めることはできない。そして、これを踏まえるとすると、本件個別貸付の実行の決定が「重要な業務執行の決定」に該 当するとも認められない。 これに対し、原告は、本件金銭信託契約の指定貸付先に本件会社を追加し、その貸付限度額として3.5億円の枠を設定する際に(前記3⑺イ)、○a 被告D及び被告Cは、原告のグループ経営管理室長から、本件会社に指定貸付先を変更するのはリスクが高いことから、少なくとも取締 役会で報告すべきである旨のメールを受け取っていたこと(甲21)、○b- 85 - 原告が本件事業に参入した当初の平成26年2月25日開催の取締役会において、原告のJMB社に対する債務保証枠は42.5億円までとする旨の決議をしていたところ(乙21)、被告Aは、本件会社に対する3. 5億円の貸付限度額の設定は上記債務保証枠の上限を超えてしまうことになるから、取締役会に諮る必要があると考えていたこと(被告A本人 〔1 していたところ(乙21)、被告Aは、本件会社に対する3. 5億円の貸付限度額の設定は上記債務保証枠の上限を超えてしまうことになるから、取締役会に諮る必要があると考えていたこと(被告A本人 〔10~14頁〕)からすると、本件個別貸付の実行の決定は「重要な業務執行の決定」に当たると主張する。確かに、これらの事情等を勘案すれば、本件個別貸付の実行を取締役会に諮っておくことはあり得る選択肢ではあるといえるとしても、他方で、本件個別貸付の金額、性質及び原告における従来の取扱い等の事情(上記①~③)に照らすと、会社法 362条4項柱書きの「重要な業務執行の決定」に当たると認めることはできない。 また、原告は、原告が本件会社の第三者割当増資を引き受けた際には取締役会決議を行っていたから(前記3⑵ウ)、本件個別貸付の実行に際しても取締役会決議を得る必要があった旨を主張する。しかし、会社の 資本政策に関わる出資とグループ会社に対する貸付けとでは、取引の性質が全く違うことからすると、原告の上記主張は採用できない。 (ウ) 以上によれば、被告Dが取締役会決議を経ることなく本件個別貸付を実行したことについて、法令(会社法362条4項)違反があったとは認められない。(そのため、被告B及び被告Aについても、この点の法令 違反は認められない。)⑶ 被告B及び被告Aが本件個別貸付の実行を決定したか否かについてア被告Bについて前記3⑾の認定事実によれば、被告Bは、本件個別貸付の実行に先立ち、被告Dから、本件会社の資金不足額の説明や、その不足分を補うために本 件金銭信託契約を利用した貸付けを行ってよいか確認する旨のメールを- 86 - 受領していたこと、その翌日には、被告Dから、直接 、本件会社の資金不足額の説明や、その不足分を補うために本 件金銭信託契約を利用した貸付けを行ってよいか確認する旨のメールを- 86 - 受領していたこと、その翌日には、被告Dから、直接、本件会社の財産状況の詳細等についての説明を受けた上で、本件個別貸付を行うことを承諾したことが認められる。これらの事実によれば、被告Bは、被告Dと共に本件個別貸付の実行を決定したと認めることができる。 これに対し、被告Bは、本件個別貸付の実行を決定していないと主張し、 その陳述書には、本件個別貸付の実行の直前に被告Dから簡潔な報告を受けたことがあったようにも思うが、本件個別貸付の実行には社長の承認は不要であるから、被告Bには拒絶する権限はなかったという供述記載部分がある(乙39〔25頁〕)。 しかし、①前記3⒀の認定事実及び証拠(甲92〔16頁〕、被告B本人 〔24頁〕、被告D本人〔18頁〕)によれば、被告Bは、本件金銭信託契約における本件会社への貸付限度額を3億5000万円から4億5000万円に変更した後、被告Dは、その増額分を利用して本件会社に対して更なる貸付けを行おうとして、その旨被告Bに相談したこと、その際、被告Bはこれを認めなかったことから、本件会社に対する追加の貸付けは実 行されなかったことが認められ、これらの事実に照らすと、被告Bは、少なくとも本件金銭信託契約を利用した個別貸付を実行するか否かを実質的に決定することのできる立場にあったといえること、②本件個別貸付は、形式的には三井住友銀行が契約当事者となって行われるものであったが、その貸倒れの危険は原告が負担する内容となっていたにもかかわらず(前 記3⑺ア)、本件職務権限規程上、その決定権限が誰にあるのかは必ずしも明らかでなく、被告 者となって行われるものであったが、その貸倒れの危険は原告が負担する内容となっていたにもかかわらず(前 記3⑺ア)、本件職務権限規程上、その決定権限が誰にあるのかは必ずしも明らかでなく、被告Dのみの判断でその貸付けを決定できたのかは判然としないこと(かえって、本件職務権限規程上では同様の危険が生じるはずの「多額でない金額の貸付け」の決定権限は社長とされている。)からすれば、被告Bに本件個別貸付を決定する権限がなかったからその実行を決定 していない旨をいう上記供述記載部分を採用することはできない。 - 87 - イ被告Aについて原告は、「原告の代表取締役会長を務める被告Aにとって、本件会社の資金繰り等の状況は大きな関心事であり、被告DやEから頻繁かつ詳細にその報告を受けて指示を出していたこと、被告Aは、本件職務権限規程上は自らに決定権限がないにもかかわらず、本件金銭信託契約に係る稟議書に 決裁の押印をしていること、平成30年3月26日付けの稟議書には本件個別貸付が行われていることが記載された資料が添付されていたのに、被告Aは、異議をとどめることなく、当該稟議書に決裁の押印をしており、被告Aが本件個別貸付を認識していなかったとは考え難いことからすると、被告Aは、本件個別貸付を行うことを事前に承諾していたと推認する ことができ、そのため、被告Dと共に本件個別貸付の実行を決定したといえる。」旨を主張する。 これに対し、被告Aは、本件個別貸付を実行することを決定していないと主張し、その陳述書には、本件個別貸付を行うことについて事前の相談はなく、平成30年3月26日付けの稟議書の決裁を行うまで本件個別貸 付が行われていたことを知らなかったという供述記載部分がある(乙38〔24~ には、本件個別貸付を行うことについて事前の相談はなく、平成30年3月26日付けの稟議書の決裁を行うまで本件個別貸 付が行われていたことを知らなかったという供述記載部分がある(乙38〔24~26頁〕)。 そこで検討するに、確かに、前記認定事実(前記3⑺イ、⑻及び⑿)のとおり、被告Aは、本件職務権限規程上は自らに決定権限がなかったにもかかわらず、本件会社を本件金銭信託契約の貸付先に追加する旨の稟議書 及び本件会社に対する貸付限度額を変更する旨の稟議書に自ら決裁印を押していること、しかも、後者の稟議書には本件個別貸付が実行されたことが記載された資料が添付されていたことが認められる一方、被告Aがこれに異議をとどめた形跡は窺われない。しかし、これらの事実は、本件個別貸付を行うことが被告Aの意向に反していないことを窺わせる事情に なり得るとしても、そのことから直ちに被告Aが本件個別貸付を行うこと- 88 - を事前に認識した上でその承諾をしたことを推認させるものとはいえない。加えて、本件個別貸付を実行した被告D、被告B及びEは、いずれにおいても、本件個別貸付の実行に先立ち、被告Aに対して、本件個別貸付を実行する旨を伝えた上でその承諾を得たといった具体的な供述をしていないことに照らすと、原告が指摘する上記事実をもって、被告Aが本件 個別貸付を実行することを事前に認識してこれを承諾し、本件個別貸付の実行を決定したと認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ⑷ 被告A及び被告Bの任務懈怠責任の有無についてア被告Aについて 上記⑶イのとおり、被告Aが本件個別貸付の実行を決定したとは認めらない。そのため、原告の主張はその前提とする事実を欠くことになるから、被告Aに ついてア被告Aについて 上記⑶イのとおり、被告Aが本件個別貸付の実行を決定したとは認めらない。そのため、原告の主張はその前提とする事実を欠くことになるから、被告Aに原告主張の任務懈怠責任は認められない。 イ被告Bについて本件会社は本件事業における2つの有力なCPのうちの1社であり(上 記⑵ア(イ)○c )、原告の代表取締役社長を務めていた被告Bにとって、本件会社の財務状況及び経営状況は大きな関心事であったとみられること、原告の取締役会の配布資料には、定期的に、本件会社を含め、原告の全ての連結子会社及び持分法適用関連会社の売上高、営業利益、経常利益及び当期純利益等が一枚にまとめられた資料が含まれていたこと(甲74、77、 乙24、31~35)、被告Bは、Eから本件会社の資金繰りの状況についての相談を受けることがあり(前記3⑴ウ)、本件個別貸付の直前には、被告Dから、本件会社の財産状況の詳細等についての説明を受けていたこと(前記3⑾ア、ウ)、実際に被告Bは本件会社が債務超過に陥っていることを認識していたこと(前記3⑾エ)などに照らすと、本件個別貸付を実行 した当時、被告Bは、上記⑵ア(ウ)の本件会社の財務状況及び経営状況、す- 89 - なわち、本件会社が本件個別貸付を受けた場合に、その借入金の十分な返済原資を獲得するようになるまでには依然として相当の期間を要することや、たとえ本件個別貸付を実行したところで、本件会社は、早晩再び資金不足に陥り、資金ショートを引き起こすおそれが極めて高かったことを容易に認識することができたと認められる。それにもかかわらず、被告B が、現在及び将来の本件会社の経営状況及び財務状況のほか、本件会社の売上及び利益の見込み(十分な おそれが極めて高かったことを容易に認識することができたと認められる。それにもかかわらず、被告B が、現在及び将来の本件会社の経営状況及び財務状況のほか、本件会社の売上及び利益の見込み(十分な返済原資を獲得できる見込みや時期等)、返済原資を獲得するまでの本件会社の収支の状況及び資金繰りの予測、本件会社に対する追加支援の要否及びその金額等に関する情報について合理的な範囲の収集・分析及び検討を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、被告Bが本件個別貸付の実行を決定した判断の過程には著しく不合理な点があったと認められ、また、上記⑵ア(エ)のとおり、その判断の内容には著しく不合理な点があったと認められる。 これに対し、被告Bは、被告Dから本件個別貸付の相談を受けたのはその実行の直前であり、本件会社の目の前の資金ショートを回避するには本 件個別貸付を行うほかなかった旨を主張する。しかし、本件金銭信託を利用して本件会社に貸付けを行う可能性は平成28年12月に本件会社に対して3.5億円の貸付限度額を設定した当時(前記3⑺イ)から想定されていたのであるから、上記情報の合理的な検討等を行う時間的余裕がなかったとはいえず、上記判断を左右しない。 したがって、被告Bは、本件個別貸付の実行を決定したことについて善管注意義務違反があったと認められ、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 ⑸ 被告Cの任務懈怠責任の有無について被告Cは、経営企画室及びグループ経営管理室を所管し、主に経営企画、経理及び財務を統括する取締役であったこと(前記前提事実⑴イ(エ))、また、 本件会社の出納業務は原告に委託されており、その業務は被告Cが所管する- 90 - 原告のグループ経営管理室長が担当してい を統括する取締役であったこと(前記前提事実⑴イ(エ))、また、 本件会社の出納業務は原告に委託されており、その業務は被告Cが所管する- 90 - 原告のグループ経営管理室長が担当していたこと(前記3⑵イ)などからすれば、被告Cは、上記⑵ア(ウ)の本件会社の財務状況及び経営状況、すなわち、本件会社が本件個別貸付を受けた場合に、その借入金の十分な返済原資を獲得するようになるまでには依然として相当の期間を要することや、たとえ本件個別貸付を実行したところで、本件会社は、早晩再び資金不足に陥り、資 金ショートを引き起こすおそれが極めて高かったことを容易に認識することができたと認められる。そして、被告Cは、本件個別貸付に先立ち、被告Dからその内容の説明を受けているところ(乙40〔8頁〕)、取締役会長として本件会社の資金調達を担っていた被告Dにおいて、本件個別貸付の当時、貸付金の具体的な返済の目途は立っていなかった旨、貸付金をいつ回収でき るようになるのかは分からなかった旨などの供述をしている以上(上記⑵ア(ウ))、被告Cは、被告Dにおいて、現在及び将来の本件会社の経営状況及び財務状況のほか、本件会社の売上及び利益の見込み(十分な返済原資を獲得できる見込みや時期等)、返済原資を獲得するまでの本件会社の収支の状況及び資金繰りの予測、本件会社に対する追加支援の要否及びその金額等に関 する情報について合理的な範囲での収集・分析及び検討が行われていないことを認識することができたと認められる。そうすると、上記役職にある被告Cには、その職務を遂行するに当たっての善管注意義務(監視義務)の一環として、このように判断の過程に著しく不合理な点のある本件個別貸付の実行を止めさせる義務があったと認められ、それにもかかわらず、被告Cはこ 務を遂行するに当たっての善管注意義務(監視義務)の一環として、このように判断の過程に著しく不合理な点のある本件個別貸付の実行を止めさせる義務があったと認められ、それにもかかわらず、被告Cはこ の義務を怠ったものと認められる。 これに対し、被告Cは、被告Dから本件個別貸付の相談を受けたのはその実行の直前であり、本件会社の目の前の資金ショートを回避するには本件個別貸付を行うことはやむを得なかった旨を主張する。しかし、本件個別貸付を行ったところで本件会社が早晩再び資金ショートを引き起こすおそれが極 めて高かったといった状況下において本件個別貸付を実行するとの判断の過- 91 - 程及び内容に著しく不合理な点があることは上記⑵ア(エ)の説示のとおりであるから、その実行を知らされたのが直前であったとしても、そのことからこれを阻止する必要がなかったということはできず、監視義務違反があるとの上記評価を覆すに足りる事情になるとはいえない。 したがって、被告Cは、本件個別貸付が実行されたことについて善管注意 義務違反(監視義務違反)があったと認められ、原告に対し、任務懈怠責任を負う。 ⑹ 小括以上によれば、被告D、被告B及び被告Cは、本件個別貸付の実行について任務懈怠責任を負う(以下、この任務懈怠を指して「本件任務懈怠2」と いい、本件任務懈怠1と併せて「本件各任務懈怠」という。)。 5 争点1の3(ラジオ番組の放送に係る商流に本件会社を原告の代理店として関与させたことについて、被告らが任務懈怠責任を負うか)についての判断⑴ 原告は、「被告A、被告B及び被告Dが、本件番組が開始された平成30年5月に本件会社を本件商流に加えたこと及び本件媒体購入費の支払に遅滞が 生じた同年7 責任を負うか)についての判断⑴ 原告は、「被告A、被告B及び被告Dが、本件番組が開始された平成30年5月に本件会社を本件商流に加えたこと及び本件媒体購入費の支払に遅滞が 生じた同年7月以降に速やかに本件会社を本件商流から外した商流に変更しなかったことには、経営判断原則に照らし善管注意義務違反があり、また、「重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書き)に当たるにもかかわらず、取締役会決議を経なかった法令違反があり、経理・財務の担当取締役であった被告Cには、上記の決定について監視義務がある。」旨を主張する。 そこで、以下では、まず本件会社の取締役として本件商流に本件会社を関与させる等の決定をした被告Dの任務懈怠責任の有無について検討した上で(下記⑵)、被告A、被告B及び被告Cの任務懈怠責任の有無について検討する(下記⑶)。 ⑵ 被告Dの任務懈怠責任の有無について ア被告Dの善管注意義務違反の有無について- 92 - 証拠(丙5、被告D本人)によれば、被告Dは、○a 本件会社がメディア側の代理店として本件商流に加わることは、同種の取引や原告の過去の取引からして、一般的な形態であり、本件会社の提案によって本件番組が始まった等の経緯からしても、本件会社が本件商流に加わることがむしろ自然かつ合理的であったため、本件会社を本件商流に加えることにしたこと、 ○b 本件媒体購入費の支払遅滞が生じた当時、本件会社は何とかして資金調達を行い、その支払を行う予定であり、本件商流を維持することによって本件媒体購入費の回収が未払いとなるリスクと本件商流を変えることで本件事業を破綻させかねないというリスクのほか、本件商流はJAとの間で成立している取引であり、本件会社が原告に本件媒 することによって本件媒体購入費の回収が未払いとなるリスクと本件商流を変えることで本件事業を破綻させかねないというリスクのほか、本件商流はJAとの間で成立している取引であり、本件会社が原告に本件媒体購入費の支払がで きていないこととは別の問題であることなどを勘案した上で、本件商流を維持したことが認められる。 本件商流が採用された経緯等に関し、証拠(甲92〔16~17頁〕、丙4〔9~10頁〕、証人E〔37頁〕、被告D本人〔5~7頁〕)によれば、①ラジオ番組の放送に係る取引では、スポンサー側の代理店とメディア側 の代理店が取引の商流に参加することは通常あり得る形態であり、原告は過去にも本件商流と同様の商流を採用していたこと、②本件番組は、デジタルネイティブ世代である若年層に番組を届けるために本件会社がインターネットで番組を配信するという、本件会社の提案を受けて始まったものであり、原告は本件会社が配信する本件番組を二次利用して放送する立 場にあったこと、③本件商流を組むに際しては実際にJAの承諾を得ていたこと、④本件会社は、本件商流の中で、CMの準備等の本件番組の放送に係る原告の代理店業務を現に行っていたことが認められる。これらの事情に照らすと、本件番組の放送に関して本件会社が原告の代理店として本件商流に加わることは自然かつ合理的であったといえる。このことに加え て、本件商流は対外的な取引関係を含むものであるのに対し、本件媒体購- 93 - 入費の支払遅滞の問題は、基本的には原告グループ会社の内部の問題であるといえることも考慮すると、前記4⑵ア(ウ)で説示したとおり、被告Dが本件会社において近く本件媒体購入費を回収することができたと考えたことや、本件会社の資金ショートが本件事業等の破綻に直結するこ るといえることも考慮すると、前記4⑵ア(ウ)で説示したとおり、被告Dが本件会社において近く本件媒体購入費を回収することができたと考えたことや、本件会社の資金ショートが本件事業等の破綻に直結することを重視したことには不合理な点があるとしても、本件番組に関して本件会社が 商流に加わるのが自然かつ合理的であるとして本件商流を採ったことや、JAとの関係も踏まえて本件商流から本件会社を外す変更をしなかったことについて、その判断の過程、内容に著しく不合理な点があったとまで認めることはできない。 したがって、被告Dに善管注意義務違反は認められない。 イ被告Dの法令違反の有無について本件において、①本件媒体購入費の金額は、平成30年5月及び6月の放送分は月額635万0400円、同年7月以降の放送分は月額2218万3200円であったところ(前記3⒀)、その金額は年額にしても原告の総資産の1%を下回る金額であること(乙34)、②本件番組の放送に係る 取引については原告の営業のため通常行われる取引に属するものといえること、③本件職務権限規程上、同取引は営業担当取締役の権限で行うことが可能とされ、取締役会への付議事項とはされていなかったこと(甲32、乙40〔8頁〕)からすれば、本件会社の資金繰りが厳しい状況にあったこと(前記4⑵ア(ウ))などをしん酌したとしても、本件番組の開始時に 本件会社を本件商流に加えたことや、本件媒体購入費の支払遅滞が生じた後に本件会社を本件商流から外した商流に変更をしなかったことが「重要な業務執行の決定」に該当すると認めることはできない。 なお、原告は、被告Dが本件会社の代表取締役に就任した平成30年6月29日以降、本件番組に係る取引は利益相反取引に当たるから、取締役 会の 業務執行の決定」に該当すると認めることはできない。 なお、原告は、被告Dが本件会社の代表取締役に就任した平成30年6月29日以降、本件番組に係る取引は利益相反取引に当たるから、取締役 会の承認を受ける必要があったと主張する。しかし、原告は、この主張を- 94 - 訴訟提起段階からすることができたにもかかわらず、集中証拠調べを経た後、弁論の終結が予定されていた口頭弁論期日において同主張をしたものであるから、少なくとも重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法であると認められ、かつ、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められるから、これを却下することとする(民訴法157条1項)。 したがって、被告Dに法令違反は認められない。 ウ以上によれば、被告Dは任務懈怠責任を負わない。 ⑶ 被告A、被告B及び被告Cの任務懈怠責任の有無についてア被告A及び被告Bについて上記⑵によれば、その余の点について判断するまでもなく、被告A及び 被告Bに善管注意義務違反及び法令違反があったとは認められない。 したがって、被告A及び被告Bは任務懈怠責任を負わない。 イ被告Cについて上記⑵のとおり、被告Dが本件番組の開始時に本件商流を採用したこと及び本件媒体購入費の支払遅滞が生じた後に本件商流を変更しなかった こと自体に善管注意義務違反が成立するものではないから、その判断に関して被告Cの監視義務違反が成立することはない。また、証拠(乙40〔8~9頁〕、被告C本人〔16頁〕)によれば、本件媒体購入費が支払遅滞となった以降、その債権は、原告における未収金の管理体制に従い、リスト化された上で、平成30年10月頃開催の執行役員会において報告されて 被告C本人〔16頁〕)によれば、本件媒体購入費が支払遅滞となった以降、その債権は、原告における未収金の管理体制に従い、リスト化された上で、平成30年10月頃開催の執行役員会において報告されて いたこと、被告Cは、本件職務権限規程上未収金の回収についての責任を負う営業局との間で、上記債権の回収に向けた会議を行い、その回収の要請をしていたことが認められる。このように、本件媒体購入費の支払が遅滞して以降、その事実は適切に業務執行取締役らとの間で共有されていた上に、被告Cは、その回収に向けて自身の所掌に照らし必要な対応をとっ ていたと認められることから、被告Cに善管注意義務違反ないし監視義務- 95 - 違反があったとは認められない。 したがって、被告Cは任務懈怠責任を負わない。 6 争点2(相当因果関係のある損害の発生及びその額)について⑴ 本件第三者委員会の調査費用について前記3⒄⒅、証拠(甲15)及び弁論の全趣旨によれば、平成31年4月 にあった内部通報を契機として、原告の監査役会は、本件会社に関連する取引について法令違反等がないか検討を行ったところ、本件株式の不自然な移動が発覚したこと、原告の会計監査人からは、粉飾決算の疑いが指摘され、第三者委員会を設置して連結外しを中心とした調査等を行うことを求める旨などの意見が出されていたこと、これらを受けて、原告の取締役会は第三者 委員会を設置することを決議し、この取締役会決議に基づいて、社外の弁護士2名及び公認会計士1名を委員とする本件第三者委員会が設置されるに至ったこと、本件第三者委員会は、予備調査を行った後、令和元年6月12日から同年7月30日にかけて、①過年度の原告の連結決算における本件会社の取扱いとその処理内容に関する調査及 委員会が設置されるに至ったこと、本件第三者委員会は、予備調査を行った後、令和元年6月12日から同年7月30日にかけて、①過年度の原告の連結決算における本件会社の取扱いとその処理内容に関する調査及び本件個別貸付に関する事実関係と その問題点の調査、②上記①以外の原告と本件会社との取引全般に関する問題点の調査、③上記①②に関し、原告の役員の関与の有無及び内容とその問題点の調査、④上記①②に類似し、本件第三者委員会による調査の目的との関係で調査の必要が合理的に認められる類似問題があるときは、それに関する調査、⑤原因分析及び再発防止策の提言、⑥その他本件第三者委員会が調 査の過程で必要と認め、原告の監査役会と協議の上で決定した事項の調査を目的とした調査を行い、同年8月8日、原告に対し、本件調査報告書を提出したこと、原告は本件第三者委員会による調査費用として、7864万2147円を支払ったことが認められる。 原告は、非公開会社ではあるが、大企業であり、多数の関係者が存在する 上、放送事業という公共性・公益性の高い事業を行う株式会社であること(前- 96 - 記前提事実1⑴ア)、本件第三者委員会による調査の主たる対象となった本件各任務懈怠は、原告が多額の投資を行う新規事業である本件事業に関して生じたものであり、原告の経営に多大な影響を与えるのみならず、社会一般に対しても相応の影響を及ぼし得るものであること、本件任務懈怠には、原告の上層部の役員である被告らが関係していたこと、本件第三者委員会によ る調査事項には、連結外しの有無や過年度決算の適法性・適正性などの事項が含まれており、会計知識などの専門的な知見を要することなどに照らすと、原告において、本件各任務懈怠に関する調査を透明性をもって公正かつ効果的に行う 外しの有無や過年度決算の適法性・適正性などの事項が含まれており、会計知識などの専門的な知見を要することなどに照らすと、原告において、本件各任務懈怠に関する調査を透明性をもって公正かつ効果的に行うために社外の中立的な専門家による調査を依頼するとともに、その原因分析や再発防止策に関する報告を受ける必要があったと認められる。そ して、本件第三者委員会による調査の内容や経緯、本件調査報告書の内容(本件調査報告書には本件各任務懈怠以外の行為についても相当な分量が割かれている。)等に照らすと、○a 上記調査費用の約3割に当たる2350万円の限度で本件任務懈怠1のうちの平成29年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任との間の相当因果関係を認め、○b 同じく上記調査費用の約3割に当た る2350万円の限度で本件任務懈怠1のうちの平成30年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任との間の相当因果関係を認め、○c 上記調査費用の約1割に当たる750万円の限度で本件任務懈怠2との間の相当因果関係を認めるのが相当である。 したがって、本件任務懈怠1及び本件任務懈怠2の責任を負う被告B及び 被告Dは5450万円の限度で、本件任務懈怠1の責任を負う被告Aは4700万円の限度で、本件任務懈怠1のうちの平成29年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任と本件任務懈怠2の責任を負う被告Cは3100万円の限度で、それぞれ責任を負う。 ⑵ 追加監査費用について 証拠(甲15~16)及び前記2によれば、平成29年3月期及び平成3- 97 - 0年3月期の原告の連結計算書類の作成に当たっては、本来、本件会社を原告の子会社として連結会計処理を行うべきであったにもかかわらず、持分法適用関連会社として連結会計処理がされたこ - 97 - 0年3月期の原告の連結計算書類の作成に当たっては、本来、本件会社を原告の子会社として連結会計処理を行うべきであったにもかかわらず、持分法適用関連会社として連結会計処理がされたことから、原告は、各期の過年度決算の訂正を行うとともに、平成31年3月期の連結計算書類の作成においても、同年3月期の期首残高について、前期末の利益剰余金残高にそれ以前 の誤謬の訂正に伴う累積的影響額を調整するなどの必要が生じたこと、原告は、これらの追加の監査費用として、1100万円を支払ったことが認められる。このような経緯等に照らすと、上記監査費用1100万円は、本件任務懈怠1によって通常生ずる損害であると認められ、本件任務懈怠1のうち、平成29年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任と、平成30年3月期 の連結計算書類の作成等に係る責任との間においては、それぞれ、その5割に当たる550万円の限度で相当因果関係があるものと認めるのが相当である。他方で、上記監査費用が本件任務懈怠2から通常生ずるものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告A、被告B及び被告Dは1100万円全額について、被 告Cは550万円の限度で、それぞれ責任を負う。 ⑶ 信用損害についてア証拠(甲16の1、甲18)によれば、原告は、本件調査報告書をウェブサイト上に掲載するとともに、過年度の平成29年3月期及び平成30年3月期の原告の連結計算書類について訂正を行った旨などを公表した こと、原告において不正な会計処理が行われていた事実は、新聞等による報道がされたことが認められる。そうすると、原告は、本件任務懈怠1によって信用毀損の損害を受けたと認められ、その毀損の内容及び程度を勘案すれば、本件任務懈怠1のうちの平成2 いた事実は、新聞等による報道がされたことが認められる。そうすると、原告は、本件任務懈怠1によって信用毀損の損害を受けたと認められ、その毀損の内容及び程度を勘案すれば、本件任務懈怠1のうちの平成29年3月期の連結計算書類に係る部分のみを考慮しても、その金額が100万円を下ることはない。 したがって、本件任務懈怠1のうち、平成29年3月期の連結計算書類- 98 - の作成等に係る責任と信用損害100万円の発生との間には相当因果関係があり、被告らは同金額の責任を負う。 イこれに対し、被告A、被告B及び被告Cは、本件調査報告書は外部に開示されることは予定されておらず、原告の現経営陣がその任意の判断に基づきこれを公表したにすぎないから、信用損害の発生と本件任務懈怠1と の間に相当因果関係はない旨を主張する。 しかし、原告は、大企業であり、多数の関係者が存在する上、放送事業という公共性・公益性の高い事業を行う株式会社であること(上記⑴)に加え、証拠(甲64~65)及び前記3⒄の認定事実によれば、原告は、例年、自社のウェブサイト上に決算報告書を公表していたこと、平成31 年3月期の監査報告書の提出は、本件第三者委員会による調査結果を受けてから行われることとなり、そのため、同年3月期の決算報告書を例年通りの時期に公表することができなくなっていたこと、そうしたことから、原告のウェブサイト上には、同年3月期の決算報告書については本件第三者委員会による調査報告があるまでその公表を延期する旨の記事を掲載 していたことが認められる。このような経緯に照らすと、原告が本件調査報告書を公表したことは自然かつ合理的な行動といえることから、上記主張は採用できない。 ⑷ 回収不能となった個別貸付金につい していたことが認められる。このような経緯に照らすと、原告が本件調査報告書を公表したことは自然かつ合理的な行動といえることから、上記主張は採用できない。 ⑷ 回収不能となった個別貸付金についてア前記前提事実⑴ウ及び証拠(甲2、30)によれば、本件会社は、令和 元年10月7日に株主総会の決議によって解散し、令和2年2月27日に特別清算開始の命令を受け、同年9月11日に特別清算終結の決定が確定したこと、特別清算手続においては、原告が本件会社に対して有していた総債権額6億8662万0858円のうち、弁済された金額は2657万3925円(弁済率は約3.87%)であったことが認められる。そうす ると、本件個別貸付による貸付金の合計2億3000万円から、この貸付- 99 - 金額に上記弁済率を乗じた890万1000円を控除した2億2109万9000円が回収不能になったと認められ、これは本件任務懈怠2と相当因果関係のある損害であると認められる。 イこれに対し、被告B、被告C及び被告Dは、本件会社は、遅くとも平成31年4月頃には本件事業により売上が増加して収益化が十分に見込ま れる状況であったにもかかわらず、原告の現経営陣が、その任意の判断に基づいて本件会社を解散したものであり、仮に本件会社が本件事業を継続していれば、原告は本件会社から本件個別貸付の貸付金を回収することができたはずであるから、当該貸付金が回収不能になったことと本件任務懈怠2との間に相当因果関係はない旨を主張する。 しかし、本件会社を解散する旨の株主総会決議がされた令和元年10月7日当時、本件会社の債務超過額は6億8923万5393円にまで及んでおり、平成31年4月1日から同年10月7日までの当期純損失も2億3744 件会社を解散する旨の株主総会決議がされた令和元年10月7日当時、本件会社の債務超過額は6億8923万5393円にまで及んでおり、平成31年4月1日から同年10月7日までの当期純損失も2億3744万7860円と相当多額であったこと(甲42の1)、他方で、このような財務状況及び経営状況の中で、本件会社が本件個別貸付の貸付金 の弁済をすることができたと認めるに足りる的確な証拠はないことからすると、原告がそのまま本件会社から上記貸付金を回収することは極めて困難であったといえるから、上記主張を採用することはできない。 ⑸ 回収不能となった媒体購入費について前記5のとおり、請求原因3について被告らの任務懈怠責任は認められな い。 ⑹ 小括ア請求原因1のうち、平成29年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任について被告らは、原告に対し、連帯して3000万円の損害賠償責任を負う。 イ請求原因1のうち、平成30年3月期の連結計算書類の作成等に係る責- 100 - 任について被告A、被告B及び被告Dは、原告に対し、連帯して2900万円の損害賠償責任を負う。 ウ請求原因2について被告B、被告C及び被告Dは、原告に対し、連帯して2億2859万9 000円の損害賠償責任を負う。 7 争点3(被告A及び被告Bの退職慰労金請求権の有無)について⑴ 認定事実前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア役員退任慰労金内規(乙8)原告の役員退任慰労金内規(以下「本件内規」という。)には、以下の内容が規定されていた。 (ア) 第2条(慰労金額の決定) ア役員退任慰労金内規(乙8)原告の役員退任慰労金内規(以下「本件内規」という。)には、以下の内容が規定されていた。 (ア) 第2条(慰労金額の決定)退任した役員に支給する慰労金は、株主総会の決議に従い、本件内 規を勘案の上、取締役分については取締役会の決議に、監査役分については監査役の協議により決定した額とする。 (イ) 第4条(退任慰労金の計算方法)第1項退任慰労金は、退任時の報酬月額に在任月数を乗じたものを基礎額とし、これに定率係数30/100 を乗じた金額とす る。〔以下略〕第2項 〔略〕(ウ) 第8条(退任慰労金の支給制限)退任慰労金は、任務の懈怠で会社に損害を与えた場合、職務上の機密事項を外部に洩らすなど、又は会社の信用を著しく傷つける行為 があった場合など、その程度に応じて減額又は支給しないことがあ- 101 - る。 イ被告A及び被告Bに対する退職慰労金の支給決定に係る事実経過(ア) 平成27年5月26日、原告の取締役会において、役員の退職慰労金制度を廃止する旨の決議がされた。 (イ) 平成27年6月25日、原告の定時株主総会において、「役員退任慰労 金制度廃止に伴う打切り支給の件」が承認可決された。同議案の内容は、被告A及び被告Bを含め、上記株主総会で重任となる取締役8名及び在任中の監査役3名に対し、その功労に報いるために、各人の就任時から上記株主総会の終結時までの期間に対応する退職慰労金を本件内規に基づいて贈呈するというものであり、贈呈の時期は各取締役及び監査役の 退任の時とし、取締役に対する金額は取締役会に一任するという内容で 株主総会の終結時までの期間に対応する退職慰労金を本件内規に基づいて贈呈するというものであり、贈呈の時期は各取締役及び監査役の 退任の時とし、取締役に対する金額は取締役会に一任するという内容であった。(乙9)上記株主総会の直後に開催された取締役会において、退職慰労金の個別支給額及びその支給時期は、報酬委員会の審議を経て、代表取締役が決定する旨の決議がされた。(乙10) 上記取締役会の直後に開催された報酬委員会において、退職慰労金の個別支給額及び方法等は代表取締役に一任することが承認された。 (乙12)(ウ) 平成27年7月24日、当時の代表取締役である被告Bは、各取締役らの就任日から上記(イ)の株主総会決議の日(同年6月25日)までの在 任期間等を勘案した上で、それぞれの退職慰労金の具体的金額を決定し、被告Aについては2億6105万円、被告Bについては2880万円と決定した。この決定に係る稟議書(以下「本件稟議書」という。)には、取締役ごとの退職慰労金の具体的な金額が記載されていたほか、贈呈の時期は、「退任の時」とし、振込日は、本件内規に準じて「退任日付より 1か月以内」とするとの記載があり、その記載の下には、「※支払時期等- 102 - については贈呈の際に改めて稟議にて伺うことといたします。」との記載がされていた。(乙13、14)⑵ 判断ア前記認定事実イによれば、①原告の株主総会において、被告A及び被告Bに対して退職慰労金を支給すること、その具体的な支給時期は退任の時 とし、具体的な支給額は、本件内規に従いその決定を取締役会に一任することの決議がされたこと、②その直後に開催された取締役会において、当該退職慰労金の個別支給額及びその支給時 支給時期は退任の時 とし、具体的な支給額は、本件内規に従いその決定を取締役会に一任することの決議がされたこと、②その直後に開催された取締役会において、当該退職慰労金の個別支給額及びその支給時期は、代表取締役が決定する旨の決議がされたこと、③同取締役会決議を受けて、代表取締役である被告Bは、被告Aにつき2億6105万円、被告Bにつき2880万円と個別 支給額を決定し、支払期日を退任日付から1か月以内とするとの決定をしたことが認められる。そうすると、被告A及び被告Bは、この時点で、原告に対し、それぞれ上記金額の退職慰労金請求権(以下「本件退職慰労金請求権」という。)を具体的権利として取得したと認められる。 そして、両被告は令和元年6月25日に原告の取締役を退任しているこ と(前記前提事実⑴イ(ア)(イ))からすると、本件退職慰労金請求権は、1か月後の同年7月25日を支払期限とするものと認められ、同請求権は、同日が経過した同月26日から履行遅滞に陥ったと認められる。(したがって、同月25日からの遅延損害金の支払を求める被告A及び被告Bの請求は、同日分の遅延損害金に係る限度で理由がない。) 以上によれば、被告A及び被告Bは、それぞれ、原告に対し、上記金額の退職慰労金及びこれに対する支払期限の翌日である令和元年7月26日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができると認められる。 イ(ア) これに対し、原告は、被告A及び被告Bが請求する退職慰労金は、退 職慰労金制度の廃止に伴う打切り支給としてのものであり、その支給の- 103 - 対象となる役員については、支給決定後においても引き続き役員としてとどまるのであるから、現実に退任するまでの 職慰労金制度の廃止に伴う打切り支給としてのものであり、その支給の- 103 - 対象となる役員については、支給決定後においても引き続き役員としてとどまるのであるから、現実に退任するまでの間に本件内規第8条の支給制限に該当する事由が発生する可能性があったことに照らすと、本件稟議書の「※支払時期等については贈呈の際に改めて稟議にて伺うことといたします。」との留保は、本件内規第8条を適用して支給制限をする 余地を残す趣旨が含まれていたと解されることから、本件退職慰労金請求権は未だ発生していない旨を主張する。 しかし、本件稟議書には、退職慰労金の個別支給額やその支払時期が明確に記載されている一方、支給の対象となる役員が現実に退任するまでの間に生じた事由に対しても本件内規第8条が適用される可能性のあ ることを示す直接的な記載はなく、本件退職慰労金請求権の支給決定に至るまでの間に、そのような検討や議論がされたことを窺わせる証拠もない。また、本件退職慰労金請求権は、支給対象となる役員の就任日から支給決議を行った株主総会の終結時までの功労に報いるために、その間の在任期間に応じて支給されるものであり、それより後の在任期間中 の稼働分については考慮されていないことにも照らすと、上記「※」部分については、被告A及び被告Bが主張するように、贈呈の時期、すなわち将来支給対象の役員の退任が現実となった際に改めて稟議手続を確認的に行う趣旨を記載したにすぎないものと解するのが相当であり、本件退職慰労金請求権に対して本件内規第8条の支給制限の規定を適用す る余地を残す趣旨であったと認めることはできない。したがって、原告の上記主張を採用することはできず、本件退職慰労金支給権は既に確定的に発生したものというほかはない。 給制限の規定を適用す る余地を残す趣旨であったと認めることはできない。したがって、原告の上記主張を採用することはできず、本件退職慰労金支給権は既に確定的に発生したものというほかはない。 (イ) 原告は、上記(ア)の事情があることのほか、①退職慰労金の支給決定前に任務懈怠が発覚していた場合には、本件内規第8条を適用して支給制 限をすることができるのに、支給決定後に発覚した場合にはそれが一切- 104 - できなくなることは、著しく不当かつ不公平な結果となること、②法令により手厚い保護が与えられている労働者でさえ、非違行為等が発覚した場合には事後的に退職金を減額又は不支給とすることができる場合があると解されていることに照らすと、原告と被告A及び被告Bとの間においては、本件退職慰労金請求権について、その支給決議後に任務懈怠 が発生し又は発覚した場合にも、本件内規第8条の規定に基づきこれを減額又は不支給とすることができる旨の明示又は黙示の合意があったと解される旨を主張する。 しかし、原告と被告A及び被告Bとの間において、本件退職慰労金請求権について原告主張の合意があったことを認めるに足りる証拠はない (上記(ア)のとおり、本件退職慰労金請求権の支給決定に至るまでの間に、支給の対象となる役員が現実に退任するまでの間に生じた事由に対しても本件内規第8条が適用される可能性があることに関する検討や議論がされたことを窺わせる証拠はなく、原告が上記合意をした形跡は見当たらないし、ましてや、被告A及び被告Bがあえてそのような合意を したとは容易にはいえないにもかかわらず、これを認めるに足りる証拠はない。)。仮に原告の主張するように退職慰労金の支給決議後の減額又は不支給を可能としたいのであれば、本 えてそのような合意を したとは容易にはいえないにもかかわらず、これを認めるに足りる証拠はない。)。仮に原告の主張するように退職慰労金の支給決議後の減額又は不支給を可能としたいのであれば、本来、それについて(事後的な減額又は不支給の決定が、いつまで、どのような手続により可能となるのかといった点も含めて)原告の内規等で明確に規定しておくべき筋合い であったことに加えて、本件退職慰労金請求権は、支給対象となる役員の就任日からその支給決議を行った株主総会の終結時までの功労に報いるために、その間の在任期間に応じて支給されるものであり、それより後の在任期間中の稼働分については考慮されていないことをも踏まえると、少なくとも本件のように退職慰労金の支給決議よりも後に発生した 事由を理由にその支給を制限することができないことをもって、著しく- 105 - 不当又は不公平であるということはできない。また、労働者について事後的に判明した非違行為等によって退職金の減額等ができる場合があるとの見解があることが、直ちに上記合意の有無と関わることともいえない。したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 (ウ) 原告は、原告の令和5年6月27日開催の株主総会において、被告ら の善管注意義務違反に当たる行為が本件内規第8条に定める不支給事由に該当するとして、圧倒的多数をもって被告A及び被告Bに対する退職慰労金請求権を不支給にする旨の決議を行ったと主張する。 しかし、被告A及び被告Bの原告に対する本件退職慰労金請求権は、前示のとおり法的に具体的権利として発生している以上、その後の原告 の株主総会決議によってこれを一方的に奪うことはできないから、同決議により本件退職慰労金請求権が消滅したとは認められない は、前示のとおり法的に具体的権利として発生している以上、その後の原告 の株主総会決議によってこれを一方的に奪うことはできないから、同決議により本件退職慰労金請求権が消滅したとは認められない。 (エ) 他に原告がるる主張する点も、前記アの判断を覆すものではなく、本件において、既発生の本件退職慰労金請求権について弁済を止める法的な根拠はない。 第5 結論以上によれば、本訴事件について、原告の請求は、会社法423条1項に基づき、①請求原因1のうち、平成29年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任として、被告らに対し、連帯して3000万及びこれに対する訴状送達日の翌日である令和4年5月8日から支払済みまで民法所定の年3分の割合によ る遅延損害金の支払を求め、②請求原因1のうち、平成30年3月期の連結計算書類の作成等に係る責任として、被告A、被告B及び被告Dに対し、連帯して2900万円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求め、③請求原因2に係る責任として、被告B、被告C及び被告Dに対し、連帯して2億2859万9000円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求め る限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却すること- 106 - とする。 反訴事件について、被告A及び被告Bの請求は、原告に対し、被告Aについては2億6105万円及びこれに対する支払期限の翌日である令和元年7月26日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告Bについては2880万円及びこれに対する上記と同様の遅延 損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとする。 よって、主文のとおり判決する Bについては2880万円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとする。よって、主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官笹本哲朗 裁判官滝澤英治 裁判官松井馨太朗 以上

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