平成18(行ウ)165 損害賠償等請求事件(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
平成21年5月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文38,394 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち次の各部分をいずれも却下する。 (1) 被告に対し,a市道路公社がA株式会社から駐車場施設を買い取るため金融機関から借り入れた47億円についてa市が当該金融機関との間で締結した保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分(2) 被告に対し,大阪地方裁判所平成16年(特ノ)第21号ないし第34号特定調停申立て事件の調停に基づきa市が負担するA株式会社の同調停申立て事件の相手方金融機関に対する残債務に係る損失補償債務の履行の差止めを求める部分 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,A株式会社及びBに対し,連帯して15億円及びこれに対する平成17年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 被告は,A株式会社及びBに対し,連帯して71億2837万9000円及びこれに対する平成17年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 被告は,a市道路公社がA株式会社から駐車場施設を買い取るため金融機関から借り入れた47億円についてa市が当該金融機関との間で締結した保証契約に基づく保証債務を履行してはならない。 被告は,大阪地方裁判所平成16年(特ノ)第21号ないし第34号特定調停申立て事件の調停に基づきa市が負担するA株式会社の同調停申立て事件の相手方金融機関に対する残債務に係る損失補償債務を履行してはならない。 - 2 -第2事案の概要 本件は,a市が,同市が出資して設立されたいわゆる第三セクターであるA株式会社(以下「A」という。)の再建に関し,A及びその債権者である金融機関等との間で,同市がAに対して有する債権を劣後債権化するとともに,金融機関等がA して設立されたいわゆる第三セクターであるA株式会社(以下「A」という。)の再建に関し,A及びその債権者である金融機関等との間で,同市がAに対して有する債権を劣後債権化するとともに,金融機関等がAに対して有する債権について同市が損失補償債務を負担し,さらに,同市がAに対して追加出資すること等を内容とする特定調停を成立させ,同市が,同特定調停に基づき,Aに対し追加出資するとともに,同特定調停を受けてa市道路公社がAから駐車場を買い受けるための資金として同公社が金融機関から借り入れた債務につき金融機関との間で保証契約を締結したことについて,a市の住民である原告らが,a市による上記特定調停の受諾,同調停に基づくAに対する追加出資及びa市道路公社の駐車場購入のための借入債務に係る保証契約の締結はいずれも違法であり,これによってa市は上記追加出資額相当額(15億円)及び上記劣後債権化に係る債権額相当額(71億2387万9000円)の損害を被り,Aはこれらと同額の利得を得たなどと主張して,被告(a市長)に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時a市長の職にあったBに対しては不法行為に基づく損害賠償の請求を,Aに対しては不当利得返還の請求をそれぞれすることを求めるとともに,同項1号に基づき,上記保証契約に基づく保証債務の履行の差止め及び上記特定調停に基づく損失補償債務の履行の差止めを求めた住民訴訟である。 前提事実(1) 当事者等ア原告らは,a市の住民である。なお,原告X1は,a市内に主たる事務所を有する権利能力なき社団である。 イ被告は,a市の市長である。 ウBは,平成15年12月19日から平成19年12月18日までの間,a市長の職にあった者である。 エAは,後記(2)アのN通改造計画を推進する目的で平成4年5月にa市が資 は,a市の市長である。 ウBは,平成15年12月19日から平成19年12月18日までの間,a市長の職にあった者である。 エAは,後記(2)アのN通改造計画を推進する目的で平成4年5月にa市が資- 3 -本金9億1500万円のうち4億円を出資していわゆる第三セクターとして設立された株式会社である。なお,同社の設立時の商号は「A’株式会社」であったが,平成12年3月に現商号に変更された。 (2) 本件特定調停に至る経緯等アa市は,平成3年12月,地下鉄7号線の延伸を契機として,c筋からd筋までの間のN通を改造する,N通改造計画を策定した。N通改造計画は,地下4階に地下鉄を建設し,地下鉄の上部及び側方の空間を利用して,地下1階に地下街を,地下2階及び3階並びに地下4階の一部に駐車場(新設駐車場)を整備するとともに,地上の道路の景観整備を実施しようとするものであった。 イAは,設立後の平成4年10月からN通改造工事として公共地下歩道を含む地下街(以下「N地下街」という。)及び新設駐車場(以下「N駐車場」という。)の建設工事を開始し,平成9年5月,N地下街及びN駐車場が開業した。なお,N駐車場のうちの一部はa市がその建設工事を行った上a市道路公社がこれを承継し,開業後はAがこれを一体的に管理運営してきた。また,Aは,平成4年6月に既設駐車場(以下「東N駐車場」という。)を承継してその管理運営を行ってきた。 ウAは,平成16年3月末時点において,N地下街の104の店舗用区画のテナント入居率が100パーセントであったものの,借入金残高約326億2500万円,債務超過約14億3700万円,当期損失約2億7200万円,未処理損失約33億3700万円の状況にあった。 エAは,平成16年11月1日,今後の資金繰りの目処が付かなくなったとして,大 万円,債務超過約14億3700万円,当期損失約2億7200万円,未処理損失約33億3700万円の状況にあった。 エAは,平成16年11月1日,今後の資金繰りの目処が付かなくなったとして,大阪地方裁判所に対し,株式会社C銀行,株式会社D銀行,株式会社E,株式会社F銀行,G信託銀行株式会社,株式会社H,C信託銀行株式会社,株式会社I銀行,株式会社J銀行,J信託銀行株式会社(以下,これらの10金融機関を併せて「市中金融機関」という。),日本政策投資銀行,a市農業協同組合,株式会社a市開発公社及びa市を相手方として,特定調停を申し立てた(当庁平成16年- 4 -(特ノ)第21ないし第34号特定調停申立て事件)。 オ大阪地方裁判所は,平成17年5月13日及び同年6月14日,上記特定調停申立て事件につき,調停案及びその修正案をそれぞれ提示したところ,同年6月28日の同事件の期日において,同事件当事者及び同事件参加人a市道路公社は,いずれも,上記調停案を受諾し,同調停案どおりの調停条項(以下「本件調停条項」という。)を内容とする特定調停(以下「本件特定調停」という。)が成立した。 (3) 本件調停条項の概要本件調停条項の概要は,次のとおりである。 ア駐車場の売却Aとa市道路公社は,本調停手続において,Aがa市道路公社に対しAの所有する駐車場施設(N駐車場の一部及び東N駐車場。以下「本件駐車場」という。)を平成17年12月末日限り代金47億円で売り渡し,a市道路公社はこれを買い受けることを合意する。 イ市中金融機関関係市中金融機関はAに対し同社の市中金融機関に対する借入金等債務元金合計146億33万2000円のうち合計69億5073万2000円を免除する。 Aは,市中金融機関に対し,平成17年12月末日限り,上記免除後の借入金等債務元 社の市中金融機関に対する借入金等債務元金合計146億33万2000円のうち合計69億5073万2000円を免除する。 Aは,市中金融機関に対し,平成17年12月末日限り,上記免除後の借入金等債務元金のうち合計10億円を一括弁済する。 Aは,市中金融機関に対し,上記免除後の借入金等債務元金から上記一括弁済額を控除した残額を平成17年9月末日から平成47年3月末日まで毎年9月及び3月の各末日限り60回に分割し,a市縁故証書貸付金利による利息を付して支払う。 ウ日本政策投資銀行関係Aは,日本政策投資銀行に対し,平成17年12月末日限り同社の日本政策投資銀行に対する借入金等債務元金合計61億3040万円のうち37億円を一括弁済する。 - 5 -Aは,日本政策投資銀行に対し,借入金等債務元金から上記一括弁済額を控除した残額を平成17年9月末日から平成47年3月末日まで毎年9月及び3月の各末日限り60回に分割して支払う。 エa市関係(ア) Aとa市は,Aのa市に対する借入金債務元金71億2837万9000円の全額を劣後債権とする(以下,上記劣後債権を「本件劣後債権」といい,上記借入金債務の劣後債権化を「本件劣後債権化」という。)。 Aは,市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する本調停における免除後の債務が完済されるまでは本件劣後債権に係る元本の全部又は一部をa市に対して支払わないものとし,また,市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する期限の到来した本調停における免除後の支払債務につき未払額が存在する場合には,その支払完了までa市に対し本件劣後債権に係る一切の支払を行わないものとする。 Aは,a市に対し,平成47年4月以降,本件劣後債権を分割弁済する。具体的な弁済方法についてはAとa市において別途協議の上これを定める。 Aは,a市に対し,平成18年 一切の支払を行わないものとする。 Aは,a市に対し,平成47年4月以降,本件劣後債権を分割弁済する。具体的な弁済方法についてはAとa市において別途協議の上これを定める。 Aは,a市に対し,平成18年3月から平成47年3月まで毎年3月末日限り(年1回),劣後債権の有利子債務元金に対し年率0.03%の固定金利による利息を後払いで支払う。 (イ) a市は,市中金融機関のAに対する上記イの免除後の貸金等債権元本並びにこれに対する利息及び損害金債権並びに日本政策投資銀行のAに対する貸金等債権(以下,上記各貸金等債権を「各優先債権」という。)の元本並びにこれに対する利息及び損害金の一部又は全部について,担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生した場合には,当該回収不能が発生した各優先債権を保有する債権者(以下「各優先債権者」という。)に対して当該回収不能額を損失としてその損失額を補償する(以下「本件損失補償条項」という。)。 (ウ) a市は,a市農業協同組合がAに対して有する劣後債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金債権の一部又は全部について回収努力をしてもなお回収不能- 6 -が発生した場合には,当該回収不能額を損失としてその損失額を補償する。 (エ) a市は,平成17年9月末日までに,Aに対し,15億円の出資を行う。 オa市農業協同組合及び株式会社a市開発公社関係Aとa市農業協同組合及び株式会社a市開発公社は,Aのa市農業協同組合に対する借入金債務元金12億円及び株式会社a市開発公社に対する借入金債務元金26億8000万円の全額を劣後債権化し,Aは,a市農業協同組合及び株式会社a市開発公社に対し,平成47年4月以降,上記劣後債権を分割弁済するとともに(具体的な弁済方法については別途協議の上これを定める。),平成18年3月から平 権化し,Aは,a市農業協同組合及び株式会社a市開発公社に対し,平成47年4月以降,上記劣後債権を分割弁済するとともに(具体的な弁済方法については別途協議の上これを定める。),平成18年3月から平成47年3月まで毎年3月末日限り(年1回),劣後債権の残元金に対し年率0.06%の固定金利による利息を後払いで支払う。 (4) a市のAに対する追加出資a市は,本件調停条項に従って,平成17年9月26日,Aに対し,15億円を追加出資(以下「本件追加出資」という。)した。 (5) Aによる本件駐車場の売却Aは,a市道路公社に対し,平成17年9月30日,本件駐車場を代金47億円で売り渡した。 (6) 本件保証契約の締結a市道路公社は,上記(5)の本件駐車場の購入に先立ち,平成17年9月27日,株式会社D銀行及び株式会社C銀行から上記の購入代金に諸費用を加えた合計47億9500万円を借り受けた。 a市は,同日,地方道路公社法28条に基づき,株式会社D銀行及び株式会社C銀行との間で,a市道路公社の上記借入金債務を保証する旨の契約(以下「本件保証契約」という。)を締結した。 (7) 住民監査請求及び本件訴えア原告らは,a市監査委員に対し,平成18年6月27日,本件調停条項に基づく本件追加出資,本件特定調停による本件劣後債権化及び本件損失補償条項の約- 7 -定並びに本件保証契約がいずれも地方自治法,地方財政法,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(以下「財政援助制限法」という。)に違反し違法であるとして,本件追加出資によりa市が被った損害の賠償,補填を市長ら関係職員に命じ,Aから上記出資金相当額を返還させ,a市が損失補償を行うことのないよう未然に勧告するなど適切な措置をとることを求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 イ を市長ら関係職員に命じ,Aから上記出資金相当額を返還させ,a市が損失補償を行うことのないよう未然に勧告するなど適切な措置をとることを求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 イa市監査委員は,本件監査請求について,平成18年8月23日付けで原告らに対し請求に理由がない旨の監査結果の通知をした。 ウ原告らは,平成18年9月22日,本件訴えを提起した。 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,①本件差止め請求に係る訴えの適否(本案前の争点),②本件追加出資の適否,③本件劣後債権化の適否,④本件債務保証の適否,⑤本件損失補償の適否,であり,争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1) 本件差止め請求に係る訴えの適否(争点①)(被告の主張)本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分及び本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,いずれも,地方自治法242条1項にいう「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」の要件を欠き,不適法である。 すなわち,保証契約や損失補償契約の場合,契約が締結されただけでは当該契約に基づく支出が行われるか否かは不明であり,契約当事者が契約の履行を強いられるのは,保証契約であれば主債務者の債務不履行時,損失補償契約であれば損失補償要件の成就時である。特に,本件損失補償条項においては,債権者が担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生したことという厳格な要件が定められている上,市中金融機関及び日本政策投資銀行はAの所有する不動産について抵当権及び根抵当権を有している。また,本件保証契約に係る債権者は株式会社D- 8 -銀行や株式会社C銀行という大銀行であるから,主債務の履行が不可能又は困難と 投資銀行はAの所有する不動産について抵当権及び根抵当権を有している。また,本件保証契約に係る債権者は株式会社D- 8 -銀行や株式会社C銀行という大銀行であるから,主債務の履行が不可能又は困難となる事由が生じていないにもかかわらず保証人が保証債務の履行を請求されこれを余儀なくされるような事態は想定し得ない。しかるに,現時点において,本件保証契約に係る主債務者の債務不履行又は本件損失補償条項に定められた要件の成就という事実は存在しないから,本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分及び本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,いずれも,地方自治法242条1項にいう「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」の要件を欠き,不適法である。 (原告らの主張)後記のとおり,本件保証契約及び本件損失補償条項は違法であり,これに基づく支出(その履行)は違法であるところ,保証契約が締結されると保証人は常に主債務者と同様の履行義務を負い,また,損失補償契約が締結されるとその条件成就により必然的に履行義務が発生するのであり,この時点で違法な支出(履行)を差し止めても何ら支障がないから,相当の確実さをもって違法な財務会計上の行為が行われることが予測される場合に当たるというべきである。したがって,本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分及び本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,いずれも,適法である。 (2) 本件追加出資の適否(争点②)(原告らの主張)アそもそも,本件特定調停は,a市に不合理な財政負担を強いるものであるから,その受諾行為は,地方自治法2条14項,地方財政法2条,4条1項に違反し,a市長の裁量権の範囲を逸脱するもので らの主張)アそもそも,本件特定調停は,a市に不合理な財政負担を強いるものであるから,その受諾行為は,地方自治法2条14項,地方財政法2条,4条1項に違反し,a市長の裁量権の範囲を逸脱するものであって,違法である。 すなわち,本件特定調停により,a市は,Aに対する15億円の追加出資義務,市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する損失補償義務及びa市道路公社を主債務者とする47億9500万円の借入金についての保証債務を負うことになるとともに,同市のAに対する残債権71億2837万9000円が30年後から元本の- 9 -償還が始まる劣後債権となる。しかも,本件特定調停における再建計画の見通しは甘く,Aの再建計画の実現可能性は非常に乏しいのであって,上記劣後債権(本件劣後債権)の回収可能性もないか極めて低いし,また,上記追加出資(本件追加出資)に対する配当も,30年後に再建計画が成就するまでは無配が確実であり,成就しても直ちに配当が可能であるか否か不明であって,その経済的価値はないに等しいのみならず,本件損失補償条項に基づいてa市が損失補償債務を負うことになる危険が極めて大きい。さらに,a市並びにa市と一体的な関係にあるa市農業協同組合及びa市開発公社のAに対する債権の金利は年0.03%ないし0.06%と極めて低い水準に抑えられており,いわゆる逆ざや現象が生じることによりa市が損失を被る仕組みになっている。他方で,市中金融機関及び日本政策投資銀行は,担保権に加えてa市による損失補償の利益をも得て,一部免除後の債権(市中金融機関の場合は47.6%)を確実に確保することができる。このように,本件特定調停は,本来平等の取扱いを受けるべき債権者のうち,市中金融機関及び日本政策投資銀行のみが確実な債権回収という利益を享受し,a市のみが特定調停成立前よ 確実に確保することができる。このように,本件特定調停は,本来平等の取扱いを受けるべき債権者のうち,市中金融機関及び日本政策投資銀行のみが確実な債権回収という利益を享受し,a市のみが特定調停成立前よりも多大の負担を負うものである。これに対し,Aが破産した場合には,a市は,Aに対する上記債権についてほとんど配当を受けることができないものの,それ以上に債務を負担することはない。そうであるとすれば,本件特定調停は,a市にとっての経済的利益はなく,財政的負担の方がはるかに大きい,それ自体不合理なものというべきである。のみならず,後記のとおり,a市道路公社が本件駐車場だけを買い取る必要はなく,ましてや,駐車場がなくなり単なるショッピングモールと化したAをa市が追加出資を行ってまで存続させる理由はない。被告は,本件特定調停により法的倒産手続の場合の不利益を回避することができる旨主張するが,このような不利益は各債権者らがひとしく甘受すべきものである。被告は,各テナントの保証金等返還請求権が毀損される旨主張するが,任意売却を行うことにより新所有者に保証金等返還債務を承継させる処理は一般的に行われているところであり,競売等によりその全額の回収は困難となったとしても,そのような危険は各テナン- 10 -トがひとしく甘受すべきものである。 イ経営破綻したAに追加出資することは,同社の金融機関に対する債務返済処理のためのものにすぎないから,本件調停条項中a市の本件追加出資に関する条項は,それ自体違法である。 仮に本件追加出資がAの事業の継続,再建のために必要な資金であるとしても,本来は株主平等の原則にのっとり出資比率に応じて同社の株主が応分の負担をすべきところをひとりa市民にのみその負担を負わせるものであるから,必要性,合理性を欠き,地方自治法2条14項, あるとしても,本来は株主平等の原則にのっとり出資比率に応じて同社の株主が応分の負担をすべきところをひとりa市民にのみその負担を負わせるものであるから,必要性,合理性を欠き,地方自治法2条14項,地方財政法2条,4条1項に違反し,違法である。 (被告の主張)ア地方自治法2条14項等は,地方公共団体がその事務処理において準拠すべき指針を定めた規定であり,その抽象的性格に照らしても,これらの規定該当性に関する判断は,行為者の広範な裁量にゆだねられており,その逸脱又は濫用が認められる場合に限り,当該行為は違法になるというべきである。 イAは,①N通の地下に東西方向の歩行者通路を整備し,地域開発に資すること,②商業地域として地下街を建設し,地域の活性化を図ること,③a市駐車基本計画に基づく駐車場整備の一端を担うこと,④地上街路整備により,都市景観の向上を図ること,⑤公共駐車場の管理運営及び公共地下歩道の維持管理を行い,公共施設としての良好な使用性を確保すること,というa市の行政目的を担う公共的役割を果たすために設立された第三セクターであり,その設立後,N地下街及びN駐車場の整備,その管理運営を通じて,上記の役割を果たしてきた。この公共的役割は,本件駐車場の売却後においても変わるところがない。すなわち,N地下街は,地下交通ネットワークの形成を担う重要な交通拠点となっている上,N地区の活性化の中心的施設としての役割を果たしており,a市の施策にとって重要な施設となっている。そうであるところ,N地下街の店舗部と公共地下歩道とは構造面,機能面で一体となった施設であり,これを一体として管理することが必要不- 11 -可欠である。また,そもそも,地下街の管理運営については,防災,他の公共施設との管理運営上の調整等の公益的観点が強く要求される 体となった施設であり,これを一体として管理することが必要不- 11 -可欠である。また,そもそも,地下街の管理運営については,防災,他の公共施設との管理運営上の調整等の公益的観点が強く要求される。Aは,上記のようなa市にとって重要な意義を有する公共性の高い施設であるN地下街を管理運営することにより,その公共的役割を果たしているとともに,市民に対する憩いの場の提供,快適かつ安全な歩行者空間を創出している。 ウ本件特定調停が成立せずAが法的倒産手続に至った場合,a市にとっては,N地下街テナントの保証金等返還請求権の毀損,金融機関等のa市に対する信用の失墜,a市のAに対する債権の無価値化,などの不利益が存在した。 まず,平成16年3月末時点において,N地下街のテナント及び一般取引業者等もAに対して多額の債権を有しており,他方で,Aの資産のうち大きな割合を占める不動産には金融機関のための担保が設定されていたことから,法的倒産手続の場合には,担保によって保全される部分を除いてほとんどすべての債権に対する配当が期待できない状況であり,とりわけ,中小企業が大半を占めるテナントの保証金等返還請求権が毀損されることとなった。すなわち,Aは,N地下街の開業に当たって,建設事業資金の一部に充てるべく,賃料100か月分相当額の保証金等を受け入れていたところ,テナントとの間の賃貸借契約において,敷金については,賃貸借契約が終了し,テナントが明渡しを履行した日から3か月以内に,テナントのAに対する一切の債務を差し引いた残額を返還することとされ,敷引は設定されておらず,また,保証金については,テナントの都合で賃貸借契約が解約された場合においては,Aが新たに出店者を決定し,その出店者が保証金の払込みを完了しない限り,契約期間開始日から10年間据え置き,以後,15年 また,保証金については,テナントの都合で賃貸借契約が解約された場合においては,Aが新たに出店者を決定し,その出店者が保証金の払込みを完了しない限り,契約期間開始日から10年間据え置き,以後,15年間で均等弁済することとされていた。そして,実際にも,これらの保証金等は,N地下街等の建設事業資金に充てられた。これらによれば,テナントのAに対する上記保証金等の返還請求権は,金銭消費貸借契約に基づく貸金債権であることが明らかであるから,仮に任意売却が行われたとしても,上記保証金等の返還債務は新所有者に承継されないこととなる。そうすると,Aについて法的倒産手続がされた場合には,上記保証金- 12 -等の返還請求権が毀損されない事態はおよそ想定し得ないというべきである。Aの設立及び運営に主導的な役割を果たしてきたa市にとって,中小企業が大半を占める多数の入居テナントに著しい損害を及ぼすことは,経済政策的な観点からも,a市に対する信用の観点からも,是認し難い事態であり,とり得ない選択肢であった。 また,Aの事業に果たしてきたa市の役割にかんがみると,仮にAが法的倒産手続に移行すると,金融機関その他の第三者のa市に対する信用が失墜し,a市の進める施策への第三者の協力姿勢が消極的になり,a市や他の第三セクター等の資金調達や金利低減に深刻な懸念が生じるなど,今後,a市がその行政目的を達成するに当たり,計り知れない悪影響を被るおそれがあった。 さらに,Aが破産に陥った場合には,a市のAに対する約71億2837万円もの高額債権が完全に無価値となる。 エ他方で,本件特定調停によってひとりa市のみが財政的負担を強いられたわけではなく,市中金融機関は,総額約70億円の債務免除を強いられた上,返済条件の見直しをも行っているのである。 また,本件特定調停におけるAの再 定調停によってひとりa市のみが財政的負担を強いられたわけではなく,市中金融機関は,総額約70億円の債務免除を強いられた上,返済条件の見直しをも行っているのである。 また,本件特定調停におけるAの再建計画の実現可能性については,裁判所(調停委員会)の委嘱を受けて同再建計画の経済的合理性及び実現可能性についての鑑定を行った監査法人は,その実現可能性を判断するに当たって考慮すべき諸要素について個別具体的に詳細な分析を行った上で,その総括として,同再建計画の実現可能性を否定することはできないと判断している上,特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律15条により,本件特定調停に係る調停案の内容の公正,妥当性及び経済的合理性は担保されている。のみならず,実際にも,本件特定調停成立後の平成17年度及び平成18年度におけるAの財務実績は,営業収益及び当期利益ともに同再建計画の事業計画を達成している。 オ以上のとおり,a市は,その行政目的を担う公益性の高いAの事業継続を図るとともに,法的倒産手続に伴う不利益を回避すべく,本件特定調停における調停案を受諾したものであり,また,受諾に至るまでに適正かつ慎重な手続を履践して- 13 -いるから,a市の本件特定調停の受諾行為についてa市長の裁量権の逸脱又は濫用はなく,また,これについてa市長の過失を認める余地はない。 したがって,本件特定調停に基づく義務履行行為である本件追加出資も違法ではない。 (3) 本件劣後債権化の適否(争点③)(原告らの主張)そもそも,地下街経営は,人口減少,高齢化,生活様式の変化により,将来に大きなリスク要因を抱えているものであることからすれば,a市のAに対する貸付債権を劣後債権として別除権の設定もなく30年にもわたり返済猶予することを内容とする本件調停条項中本件劣後債権 より,将来に大きなリスク要因を抱えているものであることからすれば,a市のAに対する貸付債権を劣後債権として別除権の設定もなく30年にもわたり返済猶予することを内容とする本件調停条項中本件劣後債権化に関する条項は,実質的には貸付債権の放棄に等しく,地方財政法4条2項,8条に違反し違法である。 (被告の主張)本件劣後債権化については,本件特定調停受諾行為以外に財務会計上の行為を観念することはできないところ,前記(2)(被告の主張)のとおり,a市の本件特定調停受諾行為についてa市長の裁量権の逸脱又は濫用はないから,本件特定調停受諾行為は違法ではなく,また,これについてa市長の過失を認める余地はない。 (4) 本件債務保証の適否(争点④)(原告らの主張)a市のように鉄軌道の発達している地域では,高齢化社会の到来でドライバー人口の減少,環境対策としてのマイカー規制等の変動要因により,駐車場ビジネスの将来は極めて不安定な見通しとされている。本件駐車場は,Aの再建計画に不可欠なほどに採算性の優れた物件ではない(収益性の高い物件であれば再建を企図しているAがこれを売却する経済的メリットはなかったはずである。)ことからすれば,本件駐車場の取得はa市道路公社にとって資金繰り上プラス要因になるものとは見込まれないから,同公社に約48億円を超える元利金債務を負担させる必要性,合理性はない。近い将来,a市がその保証債務の履行を免れるために,a市道路公社- 14 -に対する補助金等の公金の支出をもって対処せざるを得なくなるが,これは,要するに,地方道路公社法の目的とは無関係に,a市が,同公社への支配力を濫用して,同公社を通じてAに迂回融資をするに等しいものである。したがって,本件保証契約の締結は,地方自治法2条14項,地方財政法2条,4条1項に違反し違法であ は無関係に,a市が,同公社への支配力を濫用して,同公社を通じてAに迂回融資をするに等しいものである。したがって,本件保証契約の締結は,地方自治法2条14項,地方財政法2条,4条1項に違反し違法である。 なお,被告は,N駐車場のうちa市道路公社の所有に係る部分と本件駐車場との一体的管理の必要性をいうが,同公社以外の者が本件駐車場を取得したとしても,Aが同公社との間で行っていたのと同様の協定を締結するなどしてこれを一体的に管理していくことは可能なはずである。 (被告の主張)本件駐車場は,総合的な路上駐車問題対策を推進すべく策定されたa市駐車基本計画及びN地区における路上駐車問題の抜本的解決を図るべく策定されたN通改造計画に基づき整備された駐車場であり,地下鉄施設とも接続するa市の中核的な都市施設,公共駐車場として高度の公共的役割を担い重要な機能を果たしてきた。他方,a市道路公社は,平成6年6月に地方道路公社法に基づき建設大臣の認可を受けて設立された法人であるところ,同法は,駐車場の建設及び管理を地方道路公社の業務の一つとして規定しており,同公社は,自らが事業主体となって公共駐車場整備を進めるとともにa市が整備した公共駐車場を引き継ぐなど同市が推進する路上駐車問題対策の一翼を担っている。これらからすれば,a市道路公社が本件駐車場を取得することは,正に同公社の目的及び役割に沿うものであり,ひいてはa市の道路行政に寄与するものであった。さらに,本件駐車場とN駐車場のうちa市道路公社が所有する部分は地理的に隣接しているにとどまらず機能的構造的一体性を有していることからすれば,本件駐車場を同公社以外の者が取得した場合にはN駐車場及び東N駐車場が有効に機能せずa市の道路行政に多大な悪影響が生じるおそれがあり,N駐車場の一部を所有する同公社が本件駐車 していることからすれば,本件駐車場を同公社以外の者が取得した場合にはN駐車場及び東N駐車場が有効に機能せずa市の道路行政に多大な悪影響が生じるおそれがあり,N駐車場の一部を所有する同公社が本件駐車場の売却先となることは,両駐車場の効率的かつ一体的な運営という観点から極めて自然な選択であった。そ- 15 -うであるところ,本件特定調停においては,Aの市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する一括弁済の資金を捻出するためにa市道路公社が本件駐車場を取得することが不可欠の前提とされており,同公社においてその購入資金を確実に調達することが求められていた。これらの点を踏まえて,a市は,a市道路公社の本件駐車場の取得資金の借入について本件保証契約を締結したものである。以上に加えて,地方道路公社の長期借入金については行政通達(昭和45年12月8日付け建設省道政発第101号「地方道路公社法の施行について」)において設立団体である地方公共団体が原則としてすべて保証し,良好な条件で民間資金を導入することができるよう協力すべきことが求められていること,本件駐車場の取得価格も裁判所(調停委員会)の委嘱を受けて実施された不動産鑑定において評価された適正価格であることをも併せ考えると,本件保証契約の締結についてa市長に裁量権の濫用又は逸脱を認めるべき理由はない。また,地方公共団体の支出や契約その他の一切の行為についての相手方である私人の利益や取引の安全等を無視してまで地方自治法2条14項等の規定を強行法規と解すべき理由もないから,本件保証契約の私法上の効力を否定すべき理由もない。さらに,a市が本件保証契約を解消することができる特殊な事情等も存在しない。 (5) 本件損失補償の適否(争点⑤)(原告らの主張)そもそも,財政援助制限法3条が保証契約を禁止する趣旨は, 由もない。さらに,a市が本件保証契約を解消することができる特殊な事情等も存在しない。 (5) 本件損失補償の適否(争点⑤)(原告らの主張)そもそも,財政援助制限法3条が保証契約を禁止する趣旨は,保証契約がその契約締結の際には保証人が将来負うことになる負担の有無及び程度が明らかでなく,また,保証人の負担が主債務者が主債務を履行するかどうかという保証人が必ずしも関知し得ない事情により左右されるという性質を有するものであること,保証契約を政府や地方公共団体が行えば,当面の支出を伴わずに一定の経済的な効果を上げ得ることから,ともすれば安易に流れやすいという弊害を否定することができないことから,政府又は地方公共団体の不確定な債務がむやみに増加することを防止し,もって財政の健全化を図ることにある。本件損失補償条項は,Aが市中金融機- 16 -関及び日本政策投資銀行のAに対する各優先債権の弁済ができなかった場合に最終的にa市が各優先債権者に対しAに代わって残存債務(損失確定額)を支払うという内容であるから,その本質は市中金融機関及び日本政策投資銀行のための債務保証そのものであって,財政援助制限法3条の上記趣旨からすれば,同条により禁止されているものである。したがって,本件損失補償条項は,強行法規である財政援助制限法3条に違反し,地方自治法2条16項,17項により私法上も無効であり,また,公序良俗に違反し無効である。 (被告の主張)保証契約と損失補償契約は異なる契約類型であるところ,財政援助制限法3条は地方公共団体による法人の債務についての保証契約を禁止しており損失補償契約は禁止していないから,本件損失補償条項は同条に違反しない。 すなわち,保証契約は,主債務の存在が前提となり,保証債務は主債務に対する附従性を有する。また,保証債務は主債務と同一 しており損失補償契約は禁止していないから,本件損失補償条項は同条に違反しない。 すなわち,保証契約は,主債務の存在が前提となり,保証債務は主債務に対する附従性を有する。また,保証債務は主債務と同一の内容を有しており,保証人は主債務者と同一の内容を履行することとなる。これに対し,損失補償契約においては,損失補償債務は保証契約におけるような附従性や内容的同一性は認められない。このように,保証契約と損失補償契約とは,その内容及び効果を異にするものであって,別個の契約類型として認識されており,民法上も,損失補償契約は保証契約とは別個の概念として位置づけられている損害担保契約の一類型と解されている。財政援助制限法制定時においても,政府等により債務保証とは別に損失補償が行われていたところ(産業組合中央金庫特別融資及損失補償法5条等),財政援助制限法3条は債務保証のみを禁止の対象とするものであり,損失補償が同条に違反しないことは明らかである。本件損失補償条項に基づくa市の市中金融機関等に対する損失補償債務についてもAの市中金融機関等に対する債務への附従性も内容的同一性も認められないから,財政援助制限法3条が禁止する保証債務に該当するものではない。 第3当裁判所の判断- 17 - 判断の前提となる事実関係前提事実に加えて乙2,3,15,16,18ないし20,22,23,25,31,32,36,37,43,44,48ないし50,53(枝番を含む。),54,57,58,60,証人Kの証言及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) N通は,昭和30年代から40年代にかけてN川を埋め立て,a市の中心部を東西に結ぶ幅員50mないし60mの幹線道路として整備された。N通の北側は繊維関係の卸売業が集積するe地区であり,高密度の市街地を形成して 和30年代から40年代にかけてN川を埋め立て,a市の中心部を東西に結ぶ幅員50mないし60mの幹線道路として整備された。N通の北側は繊維関係の卸売業が集積するe地区であり,高密度の市街地を形成しているが,平成3年ころにはビルの建て替え,高層化が進み,通勤や交通流動が増加していた。 N通の南側は,f筋を中心とする小売商業地区が形成され,gを中心とする繁華街に連担し,平成3年ころにはその中間に位置する地域もアメリカ村,ヨーロッパ村と呼ばれるファッション街が形成されつつあった。 上記のとおり,N通周辺地区は,南北都市軸と東西都市軸の結節点に位置し,都心の新しい核としての発展が期待されていたが,平成3年当時,南北軸の道路に比べて道路整備が遅れていた。とりわけ,同地区には日本道路公団の設置した駐車場以外に大規模な駐車場がないことなどにより,路上駐車が多く,幹線道路の容量低下による交通渋滞や区画道路における歩行者の安全性の欠如といった問題が生じており,また,N通のうちc筋以東の幅員13mの中央部分に設置されていた上記既設駐車場についても,h筋とd筋に近接している出入り口があるためこれらの道路の交通混雑を悪化させる原因の一つともなっていた。 a市は,従来は,市内への交通流入を防ぐ意味で公共駐車場整備を抑制していたが,平成3年4月,駐車需要の抑制,駐車スペースの有効利用と拡大等を基本方針とするa市駐車基本計画を策定し,駐車スペースの拡大の一環として,約3500台分の公的駐車場を整備することを打ち出すとともに,N通地下を公的駐車場の整備対象用地の一つとして位置づけた。また,平成3年当時,a市においては,a市高速鉄道7号線(地下鉄7号線)をiからj地区を通過しk,l地区を経由してN- 18 -通の地下を通りfまで延伸整備する計画が策定されており,これによれ た。また,平成3年当時,a市においては,a市高速鉄道7号線(地下鉄7号線)をiからj地区を通過しk,l地区を経由してN- 18 -通の地下を通りfまで延伸整備する計画が策定されており,これによれば,地下鉄7号線は既設5路線と連絡される結果,利用者の利便性及び沿線地域の交通の便が飛躍的に向上し地域の活性化に寄与するものと期待されていた。そして,周辺地域の活性化が進む中で,N通についても,景観整備,にぎわいのある歩行者空間の創出を求める事業推進の要望が存していた。 そのため,a市は,平成3年12月,地下鉄7号線の延伸を契機として,c筋からd筋までの間のN通を改造する,N通改造計画を策定した。N通改造計画は,N通周辺地区において,駐車需要への対応や快適な歩行者空間の創出,良好な道路機能の確保,都市機能の向上などを目的として,既設の駐車場の容量の増加や区域,構造の変更を行うとともに,地下街を構成する公共地下歩道・N東西線を追加し,合わせて,地上部の都市計画道路・p線の幅員を変更するものであった。すなわち,同計画は,駐車政策の一環として駐車場の駐車容量の拡大を図ること(駐車対策),c筋,d筋間において地下レベルでの快適な歩行者空間ネットワークの形成と併せて地下街の整備を図ること(地下歩行者空間の確保),既設駐車場を整備拡充する地下駐車場へ収容し地上部を景観整備すること(地上部の景観対策),を基本的な考え方とするもので,その内容は,地下4階に地下鉄を建設し,地下鉄の上部及び側方の空間を利用して,地下1階に地下街を,地下2階及び3階並びに地下4階の一部に駐車場を整備し,もって地下鉄・地下駐車場・地下街を一体的に整備するとともに,地上の道路の景観整備を実施しようとするものであった。このうち,地下駐車場の整備については,上記c筋,d筋間の既設駐車場の 駐車場を整備し,もって地下鉄・地下駐車場・地下街を一体的に整備するとともに,地上の道路の景観整備を実施しようとするものであった。このうち,地下駐車場の整備については,上記c筋,d筋間の既設駐車場の地上部及び地下部をすべて撤去して新たにh筋,d筋間に地下3層式の駐車場(N駐車場)を設置して容量拡大を図るとともに,d筋,q筋間の既設駐車場(東N駐車場。地上1層,地下2層式)は残置するというものであり,公共地下歩道の整備については,c筋,d筋間において地下街の一部となる公共地下歩道を整備するというものであり,地上部の整備については,c筋,d筋間の延長約750mの区間について,幅員を現在の37mないし55mから49mないし55mに変更するというものであって,予- 19 -定事業期間は平成4年度から平成7年度までとされていた。 N通改造計画に基づく事業(N通改造事業)の実施主体については,駐車場と地下街の整備を同一主体が行うことが有利であるところ,当時,「地下街の取扱いについて」(昭和48年7月31日建設省都計発第71号,消防安第1号,警察庁乙交発第5号,鉄総第304号)通達に基づき定められた「地下街に関する基本方針について」(昭和49年6月28日建設省都計発第60号・建設省道政発第53号・建設省住指発第554号)において,地下街の設置者は,原則として国,地方公共団体又はこれに準ずる公法人又はこれらからおおむね3分の1以上の出資を受けている法人でなければならないとされていたこと,当該事業が地域開発という公共性と商業開発という収益事業の両面性を有していたこと,国等からの各種支援制度(助成制度や無利子融資制度)を受けられる点において資金面で有利であること,などから,新たな第三セクターを設立することとされた。 (2) a市は,平成4年2月,N通改造計 こと,国等からの各種支援制度(助成制度や無利子融資制度)を受けられる点において資金面で有利であること,などから,新たな第三セクターを設立することとされた。 (2) a市は,平成4年2月,N通改造計画に係る公共地下歩道及び駐車場について都市計画変更の承認を得,同年5月,N通改造計画を推進するための第三セクターとしてAが設立された。上記のとおり,N通整備事業は,N通のc筋からd筋までの区間(延長約750m)の地下に幅約37m,高さ約26mの地下4層式一体構造物を建設するものであって,地下1階部分に店舗面積約9500㎡を有する地下街,地下2階ないし4階部分に収容台数1030台の駐車場(N駐車場),地下4階の一部に地下鉄等を建設するものとされ,このうち駐車場(N駐車場)部分については,500台分(h筋からn筋までの間の部分)についてa市が,530台分(n筋からd筋までの間の部分)についてAがそれぞれ事業主体となって新設整備を行い,既設駐車場(東N駐車場)はAがこれを承継してその整備を行うものとされた。同年7月,Aを施行者とする都市計画道路事業(公共地下歩道)及び都市計画駐車場事業(N駐車場)の認可がされ,Aは,同年10月,公共地下歩道を含むN地下街及びN駐車場のうちA施工部分(以下「A駐車場」という。)の本体工事に着手した。また,a市も,同月,N駐車場(同市施工部分)の本体工事に着手- 20 -した。これらの工事は,平成9年に完成し,同年5月,a市道路公社は,a市から,N駐車場のうち同市施工に係る駐車場部分(以下「道路公社駐車場」という。)を承継し,これらの駐車場部分を併せたN駐車場及びN地下街が開業した。その後,Aは,平成12年10月から平成13年3月にかけて事業費約9億円を投じて東N駐車場の改装工事を行い,同年4月に収容台数270台を擁 ,これらの駐車場部分を併せたN駐車場及びN地下街が開業した。その後,Aは,平成12年10月から平成13年3月にかけて事業費約9億円を投じて東N駐車場の改装工事を行い,同年4月に収容台数270台を擁する改装駐車場が完成した。 (3) 完成したN駐車場は,地下4階に建設された地下鉄及び地下1階に整備されたN地下街と一体の構造物である地下3層式(地下2階ないし4階)駐車場であって,その西端部分において地下鉄f駅と,その東端部分において地下鉄N橋駅とそれぞれ接続する構造となっており,東行車両の出入り口は道路公社駐車場側にのみ,西行車両の出入り口はA駐車場側にのみ設置されていた。a市道路公社とAは,N駐車場が一体的に建設されたことにかんがみ,N駐車場の開業に際し,平成9年5月21日,「N駐車場の管理並びに運営に関する協定」を締結することにより,道路公社駐車場及びA駐車場を含むN駐車場の全体をAにおいて一体的に管理運営することを約し,以後,AにおいてN駐車場を一体的に管理運営してきた。 また,Aは,平成4年6月に東N駐車場を承継してその管理運営を行ってきた。 他方,N地下街については,公共地下歩道をa市に帰属させた上Aにおいて同社の所有に係る店舗部分と併せて一体的に管理運営を行ってきた。 (4) 平成13年3月時点におけるN通の1日(平日の8時から19時)当たりの歩行者交通量(3万1773人)は,開業前の平成4年5月時点(1万4165人)の約2.2倍となり,そのうち約76%(2万4122人)が公共地下歩道を利用している。また,駐車場(N駐車場及び東N駐車場)の整備により,平成12年以降,路上駐車台数は平成元年当時の約6割の水準で減少しており,また,平均渋滞時間も約30分となるなど,大きな改善がみられたほか,f駅からN橋駅まで歩車の立体分離という形で地 整備により,平成12年以降,路上駐車台数は平成元年当時の約6割の水準で減少しており,また,平均渋滞時間も約30分となるなど,大きな改善がみられたほか,f駅からN橋駅まで歩車の立体分離という形で地下歩行者ネットワークが形成されたことにより,地下鉄乗降客の交通利便性が向上し,歩行者空間の連続性が高まった。 - 21 -(5) AのN通改造事業の施行に要した建設資金約440億円は,資本金19億円(設立後の増資により平成8年7月には資本金の額が19億円となった。),国からの補助金約34億円,店舗入居者(テナント)の入店保証金約90億円及び借入金約297億円によりまかなわれた。これらのうち,入店保証金については,賃貸借契約において月額家賃の100か月分を保証金として交付するものとされ,敷金部分については,敷引は設定されず,賃貸借契約の終了による明渡しの完了から3か月以内に賃借人のAに対する債務を控除した残額を返還し,保証金部分については,契約開始から10年間据え置いた後,以後15年間に毎年1回均等割額を返還し,賃貸借契約がAの都合で解約された場合には,賃借人が明渡しを完全に履行した日から3か月以内に賃借人のAに対する債務を控除した残額を返還し,テナントの都合で解約された場合には,Aがその賃借人に代わる出店者を決定し,その出店者が保証金の払込みを完了したときは,明渡しを完全に履行した日から6か月以内に賃借人のAに対する債務を控除した残額を返還するが,そうでない限り,契約開始から10年間据え置いた後,以後15年間に毎年1回均等割額を返還するものとされていた。また,借入金には市中金融機関からの借入のほか日本政策投資銀行の無利子貸付制度に基づく借入金等が存した。そして,市中金融機関からの借入金については,Aの所有する不動産(総資産簿価の約76%を占め た。また,借入金には市中金融機関からの借入のほか日本政策投資銀行の無利子貸付制度に基づく借入金等が存した。そして,市中金融機関からの借入金については,Aの所有する不動産(総資産簿価の約76%を占めていた。)に市中金融機関等のための担保権が設定されていた。 (6) Aの賃貸料収入は,開業後2年目及び3年間は連続して減収となったが,同社において,入店保証金を直近における近隣の不動産賃貸借契約相場に合わせたり,契約形態を通常の建物賃貸借契約から定期建物賃貸借契約に移行させるなどの経営努力を行った結果,平成12年3月期以降現在に至るまでテナントの空きが経常的に生じたことはなく,平成16年3月末時点においてN地下街の店舗用区画(104)のテナント入居率は100%となり,平成13年3月期以降の賃貸料収入は比較的安定した推移を示していた。もっとも,平成16年3月末時点における入居テナント(104店舗)のうち資本金1億円以上のテナントは19店舗にとどまって- 22 -いた。 他方,入店保証金の残高は,開業当初は約89億9600万円であったが,契約内容の見直しや分割返済が始まったことにより,平成16年3月末時点では約36億3200万円まで減少していた。もっとも,この入店保証金の返還はAの資金繰りにとって大きな負担となっていた。 (7) Aは,開業後,a市から借入金及び財政支援を,市中金融機関から借入等を受け,これらに依拠して運営してきたが,開業後の平成10年3月期の経常損失が8億9552万7000円,当期利益が31億4781万2000円,平成11年3月期の経常損失が11億2005万円,当期損失が12億0828万3000円,平成12年3月期の経常損失が11億9593万6000円,当期損失が13億3666万8000円,平成13年3月期の経常損失が11億52 損失が11億2005万円,当期損失が12億0828万3000円,平成12年3月期の経常損失が11億9593万6000円,当期損失が13億3666万8000円,平成13年3月期の経常損失が11億5248万9000円,当期損失が13億2025万6000円,平成14年3月期の経常損失が10億2725万4000円,当期損失が5億5584万3000円,平成15年3月期の経常損失が9億2725万2000円,当期損失が4億0969万2000円,平成16年3月期の経常損失が7億8928万1000円,当期損失が2億7298万7000円と推移し,平成14年3月期,平成15年3月期及び平成16年3月期にそれぞれa市から4億8967万3000円,5億1905万円及び5億1778万3000円の補助金の交付を受けたが,年々資金残高が減少し,平成16年3月期の現金及び現金同等物期末残高は7億6241万7000円,同年9月末における現金及び現金同等物期末残高は2億7325万1000円となっていた。他方,平成16年3月末時点におけるAの負債状況は,借入金債務が約326億2558万円(うちa市からの借入金債務は約71億円),預り保証金返還債務が約36億3182万円,その他の債務が約10億7195万円の合計約373億2935万円となっていた。 後記(11)の再建計画鑑定書においては,上記経常損失の主たる原因は,減価償却費負担と支払利息負担にあると考えられ,そのうちの減価償却費は資金流出を伴わ- 23 -ない費用であって償却前・税引前の段階では平成14年3月期以後利益を計上することができる体質であった(そのため減価償却費負担がAが債務弁済不能のおそれのある状況に陥った直接的な原因ではない。)が,支払利息負担に加えて毎期発生する多額の入店保証金の返還がAの営業キャッシュフロ とができる体質であった(そのため減価償却費負担がAが債務弁済不能のおそれのある状況に陥った直接的な原因ではない。)が,支払利息負担に加えて毎期発生する多額の入店保証金の返還がAの営業キャッシュフローを圧迫し,当該営業キャッシュフローでは財務活動によるキャッシュフローのマイナス(借入金の返済)を補うことができず,その結果,年々手許資金が減少し,弁済不能のおそれがある状況に陥ったものであり,上記a市からの補助金収入がなければ営業キャッシュフロー段階でも多額のマイナスが生じ債務弁済不能のおそれがある状況に陥る時期が早まったということができるとされている。 (8) 平成16年11月1日,Aは,今後の資金繰りの目処が付かなくなったとして,大阪地方裁判所に対し,市中金融機関並びに日本政策投資銀行,a市農業協同組合,株式会社a市開発公社及びa市を相手方として,債務額を確定して相当額の減免を受けた上その支払方法を協定することを求める本件特定調停を申し立てた。 なお,a市は,本件特定調停申立時において,Aの株式3万8000株中1万6000株(議決権比率42.11%)を保有して筆頭株主の地位を占めていた上,同社の最大の債権者であり,同年3月末時点におけるa市の同社に対する貸付金は同社の借入金総額326億2558万円のうち約71億2838万円を占めていた。 (9) 大阪地方裁判所(調停委員会)は,本件特定調停申立て事件について,平成16年12月17日,平成17年2月25日,同年3月25日及び同年4月25日の各期日を重ねた上,同月29日,全当事者に対して個別の意見聴取を実施し,同年5月13日,全当事者に対して調停案の提示を行い,さらに,同年6月14日,修正調停案の提示を行った。なお,この間,平成16年12月7日付けでAから提出された「事業計画及び資金計画」(以下 施し,同年5月13日,全当事者に対して調停案の提示を行い,さらに,同年6月14日,修正調停案の提示を行った。なお,この間,平成16年12月7日付けでAから提出された「事業計画及び資金計画」(以下「再建計画」という。)についてL監査法人に対する再建計画の経済的合理性と実現可能性の検討を鑑定事項とする鑑定が委嘱されるとともに,再建計画において売却するものとされたA駐車場及び東N駐車場の価格について財団法人M研究所に対する鑑定評価の委嘱がされた。 - 24 -(10) 本件特定調停においてAが提出した再建計画の概要は,次のとおりであった。 ア平成17年度にAの所有するA駐車場及び東N駐車場をa市道路公社に対しその平成16年度固定資産税評価額である合計33億8790万1000円で売却する。 イa市から平成17年度に15億円の追加出資を受ける。 ウ担保権者である金融機関に対し平成17年度に上記駐車場売却代金でもって一括弁済をするほか,地下街の収益により84億6400万円を原則として平成17年度から平成46年度まで(30年)長期分割弁済し(そのうち平成17年度から平成26年度までに長期弁済総額の5分の1を均等弁済し,平成27年度から平成46年度までに長期弁済総額の5分の4を均等弁済する。),91億6900万円の債務免除を要請するとともに,a市,株式会社a市開発公社及びa市農業協同組合の債権合計110億0800万円の劣後債権化を要請する。 エ事業計画の年数を平成17年度から平成46年度までの30年に設定し,売上計画については,賃貸料収入について平成15年度実績を基礎に平成16年度を12億2100万円とし,平成20年度まで毎年前年比1%減少とし,平成21年度以降は前年度と同額とする。営業費用については,駐車場売却による人件費削減計画を策定し, 5年度実績を基礎に平成16年度を12億2100万円とし,平成20年度まで毎年前年比1%減少とし,平成21年度以降は前年度と同額とする。営業費用については,駐車場売却による人件費削減計画を策定し,平成19年度までに1億6400万円まで削減(約40%削減)し,平成21年度から5年ごとに1%増加するものとし,物件費も平成21年度から5年ごとに1%増加するものとし,既存の有形固定資産に加え長期修繕費に係る減価償却費を計上し,支払利息については,金融機関に対しては平成26年度まで1. 5%,平成27年度から平成36年度まで3.0%,平成37年度から平成46年度まで4.0%とし,株式会社a市開発公社及びa市農業協同組合に対しては平成46年度まで1.075%とし,a市(有利子部分)に対しては平成46年度まで0.25%とする。 オ資金計画について,上記アないしウのほか,長期修繕費として,社団法人建- 25 -築・設備維持保全推進協会方式(BELCA方式)を基に地下街の耐用年数(75年)等を考慮して30年間で33億3700万円を計上し,また,入店保証金について,現状の預かり保証金敷金が高額となっていることから,随時契約更新時に定期借家契約へ移行し保証金の額を適正金額に変更することを想定して,平成23年度までに総額27億6800万円を返済する。 (11) 前記(9)の委嘱を受けてL監査法人から平成17年2月24日付けで提出された再建計画鑑定書における意見の概要は,次のとおりである。 ア再建計画の実現可能性(ア) 30年という計画期間における事業再建の実現可能性A地下街の長期使用に耐え得る設備能力を前提として,Aの達成可能な事業収益能力を考慮する限り,30年間の期間をもって再建計画の実現可能性がないということはできず,債務の現実的な弁済能力からすれば, A地下街の長期使用に耐え得る設備能力を前提として,Aの達成可能な事業収益能力を考慮する限り,30年間の期間をもって再建計画の実現可能性がないということはできず,債務の現実的な弁済能力からすれば,むしろ必要な合理的期間ともいうことができる。 (イ) 売上計画の実現可能性現在の経営環境が大きく変動しないと推測することができる範囲内である平成20年度までは一定の推定に基づき売上高を予想し,それ以降の事業年度については固定化しているのは,将来の動向を考える場合,増加要因と減少要因の双方が考えられることに配慮したものであって,その売上計画の実現可能性を否定することはできない。 (ウ) 営業費用に関する計画の実現可能性人件費及び物件費の推移予測は,現実的かつ合理的な判断に基づくもので,その実現可能性を否定することはできない。また,減価償却費とその他費用については,資金収支に及ぼす影響がない(又は重要性がない)ということで,再建計画に重要な影響を及ぼすものではないと判断する。 (エ) 支払利息に関する計画の実現可能性金融機関及びa市(有利子部分)に対する支払利息については,Aの作成してい- 26 -る再建計画では支払能力に問題はないと考えられる。 a市開発公社及びa市農業協同組合については,1.075%の固定金利で再建計画を作成しているところ,再建計画は30年間という長期にわたるもので,金利水準の変動が再建計画に及ぼす影響を無視することは適当ではないから,Aの今後の資金繰りや損益計画をより確実なものにするためには,金利変動の少ない安定的なものにすることで,金利に対する変動要因を排除しておくことが望ましい。 (オ) 資金計画の実現可能性仮にa市からの15億円の出資が受けられないとすれば,Aは平成20年度に資金ショートすることが見込まれるため,a市 で,金利に対する変動要因を排除しておくことが望ましい。 (オ) 資金計画の実現可能性仮にa市からの15億円の出資が受けられないとすれば,Aは平成20年度に資金ショートすることが見込まれるため,a市からの上記金額の出資あるいはこれに代わる資金手当は必須であり,この見込みが立たない場合における資金計画の実現可能性はない。 駐車場売買そのものの成否及び実際に売買される価額と再建計画における想定価額との差異状況いかんによっては,一括弁済金額に大幅な変更が生じ,資金計画全体を見直さなければならない事態もあり得る。 長期修繕費を正確に見積もることは難しいため,恣意性の介入する余地の少ないベルカ方式をベースに必要と認められる補正を加えて算定している点において,長期修繕費計画については根拠があり,その実現可能性を否定することはできない。 債務弁済不能の状況に至った主な原因の一つであった入店保証金について,平成23年度以降返済負担が実質的になくなると想定しているのは,開業当初に締結した契約内容の切替えがほぼ完了する見通しに立ったもので,根拠のあるものである。 入店保証金が算定している相場相当額は,現時点における近隣の不動産相場からみても妥当なものであり,交通の利便性がある商業集積地という立地条件からも,入店保証金額の見積もりとしては適当であると考えられる。長期的な見通しとして,保証金制度に重大な変革が生じるきざしは今のところ見当たらず,Aの想定を否定する根拠はない。 債務免除益課税は,現状の再建計画を前提とする限り,資金計画の実現可能性の- 27 -妨げとはならない。 (カ) 結論Aが作成した再建計画について,その実現可能性を否定することはできないものといえる。 イ再建計画の経済的合理性(ア) 破産手続との比較Aが仮に破産に至れば,破産したという事実 い。 (カ) 結論Aが作成した再建計画について,その実現可能性を否定することはできないものといえる。 イ再建計画の経済的合理性(ア) 破産手続との比較Aが仮に破産に至れば,破産したという事実による信用不安に加えて,テナントの保証金,敷金が一定範囲で毀損する可能性があるため,その後の集客力は限りなく衰え,地下街事業の継続可能性ひいては事業譲渡の実現可能性は極めて低くなるというべきである。仮にテナントの保証金,敷金を全額承継する地下街の買受人が現れたとしても,買受人に承継される保証金,敷金返還請求権の金額分について担保権者への弁済額は減少することとなる。さらに,仮に破産管財人がAの資産を最終的に売却することができたとしても,正常な状態における収益価格からは大幅な減額が予測され,無担保債権者への配当が零と見込まれることはもとより,担保権者への弁済もAの再建計画から大幅に下方修正したものになろう。よって,Aの再建計画が破産の場合と比較して債権者にとって高い経済的合理性を有するのは明らかである。 (イ) 民事再生,会社更生手続との比較仮にAが民事再生や会社更生手続といった再建型法的整理を行った場合についても,テナントの保証金,敷金が一定範囲で毀損する可能性があるのは破産と同様であり,その後の地下街事業の継続可能性は全く保証できない。また,これらの法的手続が予定する再建期間ではAの再建計画が予定している弁済金額を捻出することは理論的に不可能である。そして,担保権者においては敷金が法律上一定範囲で保護されていることに加えて,テナント保護のために事実上敷金,保証金債務を買受人に承継させざるを得ない場合を想定すべきであり,担保権処分による回収可能金額はAの再建計画が予定している弁済金額と比較して相当程度低くなることが予測- 28 -される。よ 敷金,保証金債務を買受人に承継させざるを得ない場合を想定すべきであり,担保権処分による回収可能金額はAの再建計画が予定している弁済金額と比較して相当程度低くなることが予測- 28 -される。よって,Aの再建計画が,民事再生や会社更生の場合と比較して,債権者にとって高い経済的合理性を有するのは明らかである。 (ウ) 駐車場を売却しない場合との比較駐車場を売却しない場合の予測(仮定シミュレーション)においては,そもそも平成39年度から資金ショートに陥る資金予測となっているところ,資金ショート分を何らかの手段によって補填することができ,かつ,事業運営を円滑に行うことができるだけの手許資金を確保することができるならば,劣後債権者を除く金融機関にとっては,要請される債権放棄額が低い仮定シミュレーションの方が経済的合理性が高いということになろうが,Aが債務弁済不能のおそれがある現在の状況に陥った原因を検証する限り,Aがより確実な事業再建を達成するためには,債務を可能な限り圧縮させることと,事業規模を縮小することによって30年という比較的長期の再建計画期間において発生し得る不確定要素を可及的に排除することが求められるのであり,それからすれば,再建計画自体の経済的合理性としては,駐車場を売却することを基本方針とするAの再建計画は評価に値する。 (12) 前記(9)の委嘱を受けて財団法人M研究所が平成17年2月24日付けで提出した不動産鑑定評価書によれば,A駐車場(N駐車場のうちA所有部分)の平成16年11月1日時点における一括処分の場合の正常価格は37億円,東N駐車場の上記時点における正常価格は10億円とされていた。 (13) 本件特定調停において裁判所(調停委員会)が提示した調停案の内容は,上記(12)の鑑定評価に従って駐車場売却による一括弁済額を 東N駐車場の上記時点における正常価格は10億円とされていた。 (13) 本件特定調停において裁判所(調停委員会)が提示した調停案の内容は,上記(12)の鑑定評価に従って駐車場売却による一括弁済額を47億円とし,市中金融機関に対する債務免除額を合計69億5073万2000円とし(したがって,市中金融機関がAから弁済を受ける金額は債権額の約52.4%である。),市中金融機関に対する長期弁済の支払利息の利率を基準金利に年率0.5%の貸出スプレッドを加算した率(a市縁故証書貸付金利)とし,a市農業協同組合及び株式会社a市開発公社に対する各劣後債権の支払利息の利率をいずれも0.06%の固定金利とし,a市に対する劣後債権の支払利息の利率を0.03%の固定金利とする- 29 -などといった点を除いて,Aの前記再建計画に基本的に沿うものであった。 (14) a市議会は,平成17年5月27日の本会議において,裁判所(調停委員会)が提示した調停案を受諾する旨の決議をし,同年6月28日の同事件の期日において,前提事実(3)のとおりの内容の本件調停条項による本件特定調停が成立した。 (15) 本件特定調停成立後,Aの地下街収入は,平成18年3月期が16億2089万6000円,平成19年3月期が15億8859万3000円,平成20年3月期が15億7942万円となって,再建計画における見込額(平成18年3月期につき12億0900万円,平成19年3月期につき11億9700万円,平成20年3月期につき11億8500万円)を上回り,当期損益も,平成18年3月期が-151億9467万9000円,平成19年3月期が4億1240万2000円,平成20年3月期が4億2307万5000円となって,いずれも再建計画における見込額(平成18年3月期につき-170億4500万円,平成 67万9000円,平成19年3月期が4億1240万2000円,平成20年3月期が4億2307万5000円となって,いずれも再建計画における見込額(平成18年3月期につき-170億4500万円,平成19年3月期につき3億6900万円,平成20年3月期につき3億6500万円)を上回った。 また,Aの平成18年3月期,平成19年3月期及び平成20年3月期における各入店保証金残高(それぞれ27億6700万円,25億4400万円及び20億2900万円)は,いずれも,再建計画における見込額(それぞれ32億3100万円,28億7400万円及び25億9300万円)を大きく下回っており,再建計画における見込みよりも入店保証金の返済が進んでいる。 本件差止め請求に係る訴えの適否(争点①)(1) 地方自治法242条の2第1項1号所定の訴えを提起するためには,「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」であることを要するところ(同法242条1項),その趣旨は,同号所定の請求は,将来の不作為給付を求めるものであるから,当該行為が行われる蓋然性がなければ訴えの利益があるとはいえないことにあると解される。その趣旨からすれば,「当該行為がなされる- 30 -ことが相当の確実さをもって予測される場合」に該当するためには,当該行為がされる可能性,危険性等が相当の確実さをもって客観的に推測される程度に具体性を備えていることを要すると解すべきである。 (2) そこで,まず,本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分について検討すると,前記認定事実によれば,本件保証契約は,本件調停条項に基づき,a市道路公社がAから本件駐車場を代金47億円で買い受けるに当たり,a市道路公社が,株式会社D銀行及び株式会社C銀行(ともに本件特定調停 前記認定事実によれば,本件保証契約は,本件調停条項に基づき,a市道路公社がAから本件駐車場を代金47億円で買い受けるに当たり,a市道路公社が,株式会社D銀行及び株式会社C銀行(ともに本件特定調停の相手方当事者である。)から上記代金に諸費用を加えた合計47億9500万円を借り受けた借入金債務について,a市が,地方道路公社法28条に基づき,上記2銀行に対して保証債務の負担を約したものである。上記のような本件保証契約の締結に至る経緯,本件保証契約に基づく保証債務の内容に加えて,主債務者であるa市道路公社が上記借入金債務の元本又はその利息の支払を遅滞するなどその主債務の履行が困難な状態に陥っている様子は証拠上全くうかがわれないことをも併せ考えると,仮に本件保証契約に基づいてa市の負担した保証債務が連帯保証債務であるとしても,本件保証契約に基づく保証債務の履行がされる可能性,危険性が相当の確実さをもって客観的に推測される程度に具体性を備えているということは到底できない。したがって,本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分は,「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」の要件を欠くから,その余の点について判断するまでもなく,不適法というべきである。 (3) 次に,本件訴えのうち本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分について検討すると,前記認定事実によれば,本件損失補償条項は,市中金融機関のAに対する免除後の貸金等債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金債権並びに日本政策投資銀行のAに対する貸金等債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金の一部又は全部について,担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生した場合には,当該回収不能が発生した各優先債権を保有- 31 対する貸金等債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金の一部又は全部について,担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生した場合には,当該回収不能が発生した各優先債権を保有- 31 -する各優先債権者に対してa市が当該回収不能額を損失としてその損失額を補償するという内容のものであり,各優先債権者において担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生することが損失補償債務の履行の条件とされている。 そうであるところ,前記認定事実によれば,本件特定調停成立後,Aの地下街収入は,再建計画における見込額を上回り,当期損益も,再建計画における見込額を上回っているというのであり,同社が本件特定調停に定められた市中金融機関又は日本政策投資銀行(各優先債権者)に対する各優先債権の弁済の全部又は一部を遅滞した事実を認めるに足りる証拠もない。そうであるとすれば,本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行がされる可能性,危険性が相当の確実さをもって客観的に推測される程度に具体性を備えているということは到底できないから,本件訴えのうち本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」の要件を欠くことが明らかであり,その余の点について判断するまでもなく,不適法というべきである。 a市の本件特定調停受諾行為の適否(争点②及び③)(1) 原告らの被告に対する地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求は,a市のAに対する15億円の追加出資(本件追加出資)及びa市のAに対する貸金債権の劣後債権化(本件劣後債権化)が違法であるとして,被告a市長に対し,当時a市長の職にあったBに対し損害賠償の請求をすること及びAに対し不当利得返還の請求をすることを求めるものであるとこ る貸金債権の劣後債権化(本件劣後債権化)が違法であるとして,被告a市長に対し,当時a市長の職にあったBに対し損害賠償の請求をすること及びAに対し不当利得返還の請求をすることを求めるものであるところ,前記認定事実によれば,本件追加出資は,本件特定調停に基づくa市の義務の履行としてされたものであり,本件劣後債権化は,本件調停条項の内容を成すものであって,本件特定調停の成立によりその効力が生じたものである。そこで,以下においては,本件特定調停をa市長が受諾した行為(契約の締結)の適否について検討する。 (2) 前記認定事実によれば,本件調停条項のうちa市に係る部分は,a市がAに対して15億円の追加出資を行い(本件追加出資),a市の同社に対する貸金債権- 32 -元本71億2837万9000円の全額を劣後債権として(本件劣後債権化),平成47年3月末限り同社の市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する債務が完済されるまでその支払を受けることができないものとし,その間の金利を年率0.03%の固定金利とし,市中金融機関のAに対する免除後の貸金等債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金債権並びに日本政策投資銀行のAに対する貸金等債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金の一部又は全部について,担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生した場合には,当該回収不能が発生した各優先債権を保有する各優先債権者に対してa市が当該回収不能額を損失としてその損失額を補償するというものである。これに対し,本件調停条項のうち市中金融機関及び日本政策投資銀行に係る部分は,市中金融機関においてAに対する貸金等債権合計146億33万2000円のうち合計69億5073万2000円(47.6%)を免除し,免除後の債権等債権の元本については,Aにおいて,同社が本 る部分は,市中金融機関においてAに対する貸金等債権合計146億33万2000円のうち合計69億5073万2000円(47.6%)を免除し,免除後の債権等債権の元本については,Aにおいて,同社が本件調停条項に基づき本件駐車場をa市道路公社に売却した代金47億円のうち合計10億円をもって一括弁済し,その残額について平成47年3月末日まで30年間にわたり60回に分割しa市縁故証書貸付金利による利息を付して支払うものとし,日本政策投資銀行のAに対する債権(無利子融資を含む。)元本については,Aにおいて,上記駐車場売却代金のうち合計37億円をもって一括弁済し,その残額を平成47年3月末日まで30年間にわたり60回に分割して支払うというものである。 以上のような本件調停条項の内容にかんがみると,本件特定調停によって,市中金融機関は,Aに対する貸金等債権元本のうち合計で約47.6%の債務免除を強いられるものの,その余の部分については,一部(約13.1%)につき一括弁済を受けた上,長期分割弁済部分についてもa市の損失補償(本件損失補償条項)により最終的にはその回収が確保されるものとされており,また,日本政策投資銀行は,Aに対する貸金等債権元本の一部につき一括弁済を受けた上,長期分割弁済部分についてもa市の損失補償(本件損失補償条項)により最終的にはその回収が確- 33 -保されるものとされているのに対し,a市は,Aに対する貸金債権元本の全額が存続するものとされているものの,その全額が劣後債権とされて,平成47年3月末限り同社の市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する債務が完済されるまでその支払を受けることができないものとされた上,その間の金利も年率0.03%の固定金利に抑えられ,さらに,Aに対する15億円の追加出資義務を負うとともに,市中金融機関 行に対する債務が完済されるまでその支払を受けることができないものとされた上,その間の金利も年率0.03%の固定金利に抑えられ,さらに,Aに対する15億円の追加出資義務を負うとともに,市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する損失補償義務を負うことになる。そうすると,本件特定調停がa市にとって経済的合理性を有するものということができるか否かは,本件特定調停が前提としたAの再建計画の実現可能性のいかんによるということができる。 そこで,本件特定調停が前提としたAの再建計画の実現可能性について検討すると,前記認定事実によれば,本件調停条項の内容は,Aが裁判所に提出した再建計画に基本的に沿うものであり(ただし,上記再建計画においては,駐車場売却による一括弁済額を47億円ではなく33億8790万1000円とし,また,市中金融機関等に対する債務免除要請額を69億5073万2000円ではなく91億6900万円とするなどしている。),上記再建計画は,計画年数を平成17年度から平成46年度までの30年に設定した上,Aの事業から駐車場経営を切り離して専ら地下街経営とし,地下街の賃貸料収入を収益の基礎に据え,当該収益でもって上記30年間で市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する借入金等債務(免除及び一括弁済後のもの)の分割弁済を行うとともに,建設資金を賄う関係上高額に設定されていた入店保証金(保証金及び敷金)について,随時契約更新時に定期借家契約へ移行し保証金の額を適正金額に変更するなどして,平成16年3月末時点で総額36億3200万円あった入店保証金債務を平成23年度までに総額27億6800万円を返済することにより,入店保証金の返還圧力の減殺を図ることなどを骨子とするものであるということができる。 そうであるところ,前記認定事実によれば,N地下街は,その西 年度までに総額27億6800万円を返済することにより,入店保証金の返還圧力の減殺を図ることなどを骨子とするものであるということができる。 そうであるところ,前記認定事実によれば,N地下街は,その西端部分において地下鉄f駅と,その東端部分において地下鉄N橋駅とそれぞれ接続し,f駅からN- 34 -橋駅まで歩車の立体分離という形での地下歩行者ネットワークを形成するものであって,地下街としての立地条件に優れているということができ,実際にも,少なくとも平成12年3月期以降現在に至るまでテナントの空きが経常的に生じたことはないというのである。そして,上記のような立地条件が上記計画期間において大きく変化するような事態はにわかに考え難い。また,N地下街は,強度のみならず耐震性,防災性においても優れた構造となっていて,長期使用に耐え得る設備能力を有するものと認められる(乙31,弁論の全趣旨)。さらに,地下街経営における経費についてみても,上記計画期間において経費の構造が大きく変化することは考え難く,年月の経過とともに施設,設備が老朽化し賃貸料収入に比して維持管理のための経費が相対的に増加する傾向が一般に認められるものの,人件費を平成21年度から5年ごとに1%増加するものとし,物件費も平成21年度から5年ごとに1%増加するものとし,長期修繕費として,社団法人建築・設備維持保全推進協会方式(BELCA方式)を基に地下街の耐用年数(75年)等を考慮して上記計画期間(30年間)で33億3700万円を計上し,既存の有形固定資産に加え長期修繕費に係る減価償却費を計上するものとしている上記再建計画の内容が直ちに不合理であるということはできない。 他方で,前記認定事実によれば,Aが平成9年5月の開業から約7年半後に事実上破綻し本件特定調停を申し立てるに至った主な要 るものとしている上記再建計画の内容が直ちに不合理であるということはできない。 他方で,前記認定事実によれば,Aが平成9年5月の開業から約7年半後に事実上破綻し本件特定調停を申し立てるに至った主な要因は,借入金に係る支払利息負担に加えて毎期発生する多額の入店保証金の返還が同社の営業キャッシュフローを圧迫し,当該営業キャッシュフローでは財務活動によるキャッシュフローのマイナス(借入金の返済)を補うことができず,その結果,年々手許資金が減少し,弁済不能のおそれがある状況に陥ったことによるものと認められるところ,上記再建計画及びこれを受けた本件調停条項においては,本件駐車場の売却代金によるAの市中金融機関及び日本政策投資銀行に対する借入金債務元本の一括弁済及び同社の市中金融機関等に対する借入金債務元本の大幅免除(約47.6%)等により同社のこれら債権者(各優先債権者)に対する借入金債務に係る支払利息負担が相当程度- 35 -軽減される上,平成16年3月末時点で総額36億3200万円あった入店保証金債務が平成23年度までに約8億6400万円にまで圧縮されることになるのであるから,入店保証金の圧縮が計画どおり進捗する限りにおいて,上記の破綻要因が除去されることになるということができる。そして,前記認定事実によれば,本件特定調停成立後,Aの地下街収入は上記再建計画における見込額を上回り,Aの入店保証金の返済も上記再建計画における見込みよりも進んでいるというのである。 以上によれば,本件特定調停が前提とする上記再建計画の実現可能性には相当の根拠があるということができる。 なお,原告らは,市中金融機関等に対する支払利息は将来的な金利水準をあまりにも低く予測するものである旨主張するが,金利水準が上昇するような経済状況の下においては,名目的な賃料収入の上昇 とができる。 なお,原告らは,市中金融機関等に対する支払利息は将来的な金利水準をあまりにも低く予測するものである旨主張するが,金利水準が上昇するような経済状況の下においては,名目的な賃料収入の上昇を始めその他の収支項目も連動して変動するものと容易に推認されるから,原告らが主張するような金利水準の上昇が本件調停条項に基づく各優先債権者に対する借入金の返済計画に支障を来す事態は考え難いというべきである(証人Kの証言参照)。 以上のとおり,本件特定調停が前提とする上記再建計画の実現可能性には相当の根拠があるいうことができるから,本件調停条項は,上記再建計画期間中のa市のAに対する貸金債権の金利が年率0.03%の固定金利に抑えられているなどの点をしんしゃくしても,a市にとって相応の経済的合理性を有するものということができるのであり,原告らが主張するように,本件調停条項が,市中金融機関及び日本政策投資銀行のみが確実な債権回収という利益を享受し,a市のみが本件特定調停成立前よりも多大の負担を負うものであって,a市にとって経済的利益がなく,それ自体不合理なものであるということはできない。このことに加えて,前記のようなf駅からN橋駅まで歩車の立体分離という形での地下歩行者ネットワークの形成というN地下街の機能にかんがみると,a市の出資する第三セクター(A)において公共地下歩道を店舗部と一体として維持,確保していくことに公益上の必要性がないとはいえないこと,前記1(1)において認定した事実によれば,Aの設立目- 36 -的であるN通改造事業がa市の交通政策,道路行政等の遂行と密接な関係を有する公共性の高いものであったといえることをも併せ考えると,本件特定調停を受諾したa市長の判断が,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項等の趣旨に照らして,その裁量 路行政等の遂行と密接な関係を有する公共性の高いものであったといえることをも併せ考えると,本件特定調停を受諾したa市長の判断が,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項等の趣旨に照らして,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 原告らは,本件調停条項に基づきa市道路公社がAから本件駐車場を47億円で買い受けるために金融機関から購入資金を借り入れるについてa市が保証債務を負担することになることをも本件調停条項がa市にとって経済的利益を欠き不合理であることの根拠として主張するが,本件特定調停における本件駐車場のa市道路公社に対する売却が同公社の購入資金の借入債務についてのa市の保証を前提とするものであったとしても,a市による本件保証契約の締結自体は地方道路公社法28条に基づくものであるところ,前記認定事実によれば,そもそも,本件駐車場は,N通の交通渋滞を解消し歩行の安全確保を図るというa市の交通政策に基づき,N通改造計画の一環としてN駐車場のうちa市道路公社の所有部分(道路公社駐車場)と一体として整備され,所期の目的どおり路上駐車台数の減少及び渋滞の緩和を実現してきたのであって,本件駐車場をa市道路公社において取得した上,道路公社駐車場と一体として管理運営していくことは,地方道路公社法の目的に沿うとともに(同法1条,21条2項2号),a市の交通政策にも資するものということができる上,前記のとおり,a市道路公社の主債務(金融機関からの上記借入債務)の履行が困難であるような事情も証拠上うかがわれないことをも併せ考えると,a市長が本件保証契約の締結を前提とする本件特定調停を受諾したことが,合理性を欠き,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 (3) もっとも,本件特定調停に先立って裁 a市長が本件保証契約の締結を前提とする本件特定調停を受諾したことが,合理性を欠き,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 (3) もっとも,本件特定調停に先立って裁判所(調停委員会)が調停当事者に示した平成17年5月13日付け調停案においては,「調停案提示に至る経緯」として,「実質的な事業推進主体であるa市による追加出資ないしは損失補填がなされることが,申立人の再建にとって,必要不可欠な要素であり,いわばその前提条件- 37 -とも言うべきものであることは,全当事者が等しく認識しているところである。」,「当調停委員会は,本件調停を成立させる方途として,駐車場継続保有案を選択肢として残す余地はなく,相手方a市によって損失補償がなされることを前提として,鑑定によっても経済的合理性が高いと判断されている駐車場売却案(相手方らとりわけa市の行政にも資する案である。)によって,弁済計画案を策定するほかないとの決断をするに至った。」とされており,本件調停条項の内容にかんがみても,本件損失補償条項が本件特定調停の重要な要素を成しているとみる余地もなくはない。 そこで,本件損失補償条項が原告らが主張するとおり財政援助制限法3条に違反し無効か否かについて検討する。 財政援助制限法(昭和21年法律第24号)は,戦後財政再建のため,国庫負担の累増を防止するとともに,企業の自主的活動を促進することを目的として制定された法律であり,同法3条が政府又は地方公共団体による会社その他の法人の債務についての保証契約を禁止しているのもその趣旨に出たものであると解される。そうであるところ,本件損失補償条項のように,債務の全部又は一部が弁済不能となって債権者が損失を被ったときに当該債務者に代わって当該債権者に対しその損失を補償することを約す たものであると解される。そうであるところ,本件損失補償条項のように,債務の全部又は一部が弁済不能となって債権者が損失を被ったときに当該債務者に代わって当該債権者に対しその損失を補償することを約する損失補償契約は,民法上の保証契約とはその内容及び効果を異にする契約類型であることに加えて,地方自治法は,地方公共団体の法人に対する財政的援助の方法として支払の保証と損失補償を区別して規定している(199条7項,221条3項)ことなどをも併せ考えると,財政援助制限法3条は,政府又は地方公共団体の会社その他の法人の債務についての民法上の保証契約の締結を禁止するものであって,保証契約とはその内容及び効果を異にする損失補償契約の締結については同条の直接規律するところではないと解するのが相当であり,そのように解しても,上記同条の趣旨を直ちに損なうものではないというべきである(行政解釈も,損失補償については財政援助制限法3条の規制するところではないとしている。昭和29年5月12日付け自丁行発第65号大分県総務部長あて自治- 38 -省行政課長回答。乙13)。前記のとおり,本件損失補償条項は,市中金融機関及び日本政策投資銀行がAに対する各優先債権について同社の所有物件に担保権(抵当権又は根抵当権)を有することを前提に,市中金融機関及び日本政策投資銀行のAに対する各優先債権の元本並びにこれに対する利息及び損害金の全部又は一部について,担保物件の処分などの回収努力をしてもなお回収不能が発生した場合に,a市において当該回収不能が発生した各優先債権を保有する債権者(各優先債権者)に対して当該回収不能額を損失としてその損失額を補償するというものであって,その内容にかんがみると,本件損失補償条項が民法上の保証契約の実質を有するということはできず,その内容が財政援助 先債権者)に対して当該回収不能額を損失としてその損失額を補償するというものであって,その内容にかんがみると,本件損失補償条項が民法上の保証契約の実質を有するということはできず,その内容が財政援助制限法3条の上記趣旨を損なうものであるということもできない。 そうであるとすれば,本件損失補償条項は財政援助制限法3条に違反するということはできないから,本件損失補償条項が同条に違反し無効であることを前提に本件調停条項の全体を違法,無効ということもできないというべきである。 (4) 以上検討したところによれば,本件特定調停を受諾したa市長の判断が,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項等の趣旨に照らして,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできず,また,本件調停条項が財政援助制限法3条に違反し違法ということもできない。 そうであるとすれば,本件調停条項に基づくa市の義務の履行としてされた本件追加出資が違法であるということはできず,また,本件調停条項の内容を成す本件劣後債権化が違法であるということもできない。したがって,a市のAに対する15億円の追加出資(本件追加出資)及びa市のAに対する貸金債権の劣後債権化(本件劣後債権化)が違法であるとして,被告a市長に対し,当時a市長の職にあったBに対し損害賠償の請求をすること及びAに対し不当利得返還の請求をすることを求める原告らの地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求は,いずれも,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 結論 - 39 -以上によれば,本件訴えのうち本件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分及び本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,不適法であるから,これを却下し,原告らの被告に対するその余の請求は,いず 件保証契約に基づく保証債務の履行の差止めを求める部分及び本件損失補償条項に基づく損失補償債務の履行の差止めを求める部分は,不適法であるから,これを却下し,原告らの被告に対するその余の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官西川知一郎裁判官徳地淳裁判官釜村健太

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