【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人等の連帯負担とする。 事 実 控訴人両名は「原判決を取消す。被控訴A村長が、被控訴人Bに対して、原判決
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人等の連帯負担とする。 事実 控訴人両名は「原判決を取消す。被控訴A村長が、被控訴人Bに対して、原判決添附別紙目録記載の土地並びに立木を売却した行為は、無効であることを確認する。右物件につき、被控訴人Bが被控訴人Cに対してなしたる売却行為は、無効であることを確認する。被控訴人Cと被控訴会社加賀屋商店は、右物件につき、昭和二十三年一月二十八日徳島地方法務局中枝出張所においてなした被控訴会社のための所有権取得登記の抹消登記手続をせよ。被控訴A村と被控訴人Cは、右物件につき、昭和二十三年一月二十日徳島地方法務局中枝出張所においてなした、被控訴人Cのための所有権取得登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人両名は、控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上及び法律上の陳述は、(一) 控訴人等において(1) 控訴人Dは、地方自治法第二百四十三条の二の第四項に基いて、本件訴訟を提起しているのである。 即ち右訴訟の前提である同法条の第一項による監査請求は同控訴人のみがなしたのであるから、同控訴人のみが訴の適格者である。控訴人Eは右監査請求をしたのでないから、同法条による訴を提起したものではない。 控訴人Eは、後記の理由により、本件を行政事件訴訟特例法(以下単に特例法という)第一条の「公法上の権利関係に関する訴」として提起しているものである。 そうして、右両訴訟はいずれも、特例法の「公法上の権利関係に関する訴」であるから、同法第一条民事訴訟法第百三十二条によつて、併合して審理を求めた。 右併合の結果、共同訴訟人となつた控訴人両名は、いずれも両個の訴訟の結果について、それぞれ利害関係 権利関係に関する訴」であるから、同法第一条民事訴訟法第百三十二条によつて、併合して審理を求めた。 右併合の結果、共同訴訟人となつた控訴人両名は、いずれも両個の訴訟の結果について、それぞれ利害関係を有するから当然各自互に補助参加の関係に立つて、訴訟を遂行するものである。 (2) 前記地方自治法第二百四十三条の二は昭和二十三年八月一日から施行せられたのであるが、同法条第四項による裁判の請求権は、憲法地方自治法の精神からいつて地方自治法の施行以後の事項については遡つて当然行使ができる。 又右法条による訴には、最高裁判所の規則により特例法の適用があり、前記のように、その性質は同法第一条の「公法上の権利関係に関する訴」に該当するものである。 そうして、右特例法附則第二項には「この法律はこの法律施行前に生じた事項にもこれを適用する。」と規定されているのであるから、その附則によつても、昭和二十二年八月八日になされた本件違法な売却行為にも遡及して適用されるのである。 (3) 控訴人Eの本件訴の法律上の根拠は、次のようなものである。 その実質的要件は、(イ) 地方公共団体の長たるA村長の為した公の行為であること。 (ロ) 地方公共団体の財産たる西尾村有小学校基本財産の処分に関する行為であること。 (ハ) 地方自治法第二百十三条及び第二百四十三条に明かに違反してなされた違法行為であり。 同法第二条第五、六項により当然無効となる行為である。 等の理由により、その争訟は、特例法第一条の「公法上の権利関係に関する訴」に該当する。 そうして、その訴において、請求趣旨記載の裁判を求める権利は、次のような法律上の理由による。 そもそも、地方公共団体の経済的基礎をなす、公金、財産等は、本来その地方公共団体の住民が納付する租税、公課及び手数料等の収入に て、請求趣旨記載の裁判を求める権利は、次のような法律上の理由による。 そもそも、地方公共団体の経済的基礎をなす、公金、財産等は、本来その地方公共団体の住民が納付する租税、公課及び手数料等の収入によつて結成せられ、その使用管理又は処分は、法律及び住民の多数意見の発現である条例の定めるところに従い、専ら住民全体の利益のために行われる性質のものであるから、地方公共団体の住民の公僕たる村長が、法律や条例の規定に違反して、私利を図る目的でその任務に背いて管理処分等をする場合には、住民は実質上の被害者となるのである。これを匡正する適当な方法を講ずる必要が生ずる訳であり、これが匡正を求める権利が即ち訴権である。この訴権は地方自治法第十条第一項第十二条第七十五条等即ち住民としての権利(公権)に基き、憲法及び地方自治法施行の時から、住民各自が享有していたものである。 この匡正の方法は、単に無効の確認のみでなく、その取消や損害の補てんにも及び得るものである。仮令自治法第二百四十三条の二のような規定がなくとも、元来住民は住民権に基いて、同規定にあるような救済方法が訴求できる。 そうしてこの訴は前記のように、特例法第一条の「公法上の権利関係に関する訴」であるから、同法附則第二項により、遡及して適用せられるから、本件売却行為にも適用がある。 (二) 被控訴代理人両名は、控訴人等の右法律上の主張に対し、(1) 地方自治法第二百四十三条の二第四項による住民訴権は、昭和二十三年法律第一七九号によつて住民に与えられたものであるから、同法の施行された同年八月一日以後に発生した事項について、適用があるのであつて、その以前の事項については、特に遡及規定のない限り、遡及して適用されることはあり得ない。 右法条に基く訴が、最高裁判所の規定の定めるところに従つて、特例法の 生した事項について、適用があるのであつて、その以前の事項については、特に遡及規定のない限り、遡及して適用されることはあり得ない。 右法条に基く訴が、最高裁判所の規定の定めるところに従つて、特例法の適用あることは、当然であるが同法附則第二項の規定は、同法の施行された昭和二十三年七月十五日以前に実体法により、訴権があり、その訴権を発動せしむるにたりる事実が存する場合においてのみ、訴訟手続の性質上遡及して、適用せられることを規定したものに過ぎないのであつて控訴人等のこれに反するような主張は失当である。 (2) 地方自治法第二百四十三条の二のような規定によらず、単に抽象的な住民権に基いて、控訴人Eの主張するような訴権が発生するものではない。従つて同控訴人の主張は全然理由がない。 以上の外は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。 証拠として、控訴人等は甲第二号より第六号(同第一号は欠番)第七号の一、二、第八号、第九、十号の各一より三、第十一、十二号、第十三号の一、二、第十四号、第十五号の一、二、第十六、十七、十八号、第十九号の一より三、第二十号より第二十二号、検甲第一号の一、二、第二号の一より四を提出し、原審証人Fの証言及び当審における証人G、H、Iの各証言の一部並びに被控訴人Bの供述の一部を援用し、乙号各証の成立を認めると述べ、被控訴代理人等は、乙第一、二号証の各一より三を提出し、原審証人F、G(第一、二回)、J、K、当審証人H、G、Iの各証言及び当審における被控訴人Bの訊問の結果を援用し、甲第九号証の一より三は不知、その他の甲号各証(検号も含む)はその成立を認めると述べた。 理由 被控訴人A村長(当時F在任)が西尾村の基本財産である原判決添附別紙目録記載の物件を、昭和二十二年八月八日被控訴人B 号各証(検号も含む)はその成立を認めると述べた。 理由 被控訴人A村長(当時F在任)が西尾村の基本財産である原判決添附別紙目録記載の物件を、昭和二十二年八月八日被控訴人Bに対し、随意契約により代金十四万五千円で売却し、同被控訴人がこれを被控訴人Cに対し、代金二十四万円で転売の上、被控訴村長の委任状により、昭和二十三年一月十日徳島地方法務局中枝出張所において、中間登記を省略して、直接被控訴A村より被控訴人Cに所有権移転登記手続をなしたが、右Cは本物件を更に被控訴株式会社加賀屋商店に売却の上、同年一月二十八日右中枝出張所においてその旨の所有権移転登記手続をなしたことは、当事者間に争がない。 控訴人Dは、右A村長のなした村有基本財産の売却行為は、地方自治法第二百十三条及び第二百四十三条に違反してなされた無効な契約であるとして、昭和二十四年三月十一日地方自治法第二百四十三条の二により同村監査委員Lに対し、監査の請求をなしたところ、同委員はこれに対しその措置を講じないので、同条第四項に基いて、本訴請求に及んだものであること。又控訴人Eも、右A村長のなした村有基本財産の売却行為は、控訴人D主張同様の違法な処分であることを理由とし、同村の住民たる資格において、地方自治法等の規定によりその請求趣旨記載の裁判請求権があることを主張し、行政事件訴訟特例法第一条の「公法上の権利関係に関する訴」に該当するものとして、本訴請求をなしたことは、それぞれ本件記録により明かである。被控訴人等は、本件A村長の売却処分は、地方自治法第二百四十三条の二の規定の公布施行前に行われたものであるから、同規定の適用がない。従つて控訴人Dには同規定による裁判請求権がない。次に控訴人Eにその主張のような裁判請求権があることは、これを否認すると主張するので、 の規定の公布施行前に行われたものであるから、同規定の適用がない。従つて控訴人Dには同規定による裁判請求権がない。次に控訴人Eにその主張のような裁判請求権があることは、これを否認すると主張するので、先ず控訴人等の裁判請求権の有無について判断する。 (一) 控訴人Dの裁判請求権について。 同控訴人が監査請求の対象とした、被控訴A村長の前記売却行為のなされたのは、昭和二十二年八月八日(登記手続の履行があつたのは昭和二十三年一月十日)であることは前示のとおり当事者に争がない。地方自治法第二百四十三条の二の規定が、昭和二十三年七月二十日法律第一七九号として、公布せられ、同年八月一日から施行された「地方自治法の一部を改正する法律」による新設規定であることは、顕著なる事実であるから、同規定は前記売却行為後に公布施行されたことになるわけである。 そうして右法律第一七九号には、右法条の遡及効を認めるべき旨の別段の規定はない。 すると本法条がその公布施行前の右売却行為についても、適用せらるべきであるかどうかについて考えてみる。 それには、同規定の本質にふれる必要がある。 本規定は地方公共団体の住民に対して、その団体の職員の違法又は権限を超えた行為に関し、当該行為の制限若しくは禁止、その取消若しくは無効及びこれに伴う損害の補てんに関する裁判請求権を認めたものである。 地方公共団体の住民は、単にその住民の資格があるからといつて、自分が具体的に関与もしていないところの公共団体と第三間者において行われた法律関係の形成についてなされた、その団体の職員の行為の適法性を争い、その制限禁止等を請求する具体的な法律上の利益は一般的には有しないものである。 このように当事者に裁判を求めるで法律上の利益のない事項は、裁判所法第三条第一項の「一切の法律上の争訟」には該 を争い、その制限禁止等を請求する具体的な法律上の利益は一般的には有しないものである。 このように当事者に裁判を求めるで法律上の利益のない事項は、裁判所法第三条第一項の「一切の法律上の争訟」には該当しないものであるから、裁判権の発動を促すためには、法律において、特にその権限が与えられることを要する。 <要旨第一>従つて、本規定による裁判請求権は、地方公共団体の職員の違法若しくは、権限外の行為を防止し、又は匡</要旨第一>正する手段として当該地方公共団体を組成する住民に特に与えられた訴権である。元来これらの腐敗行為の防止及び匡正はこれをなした当該職員自からが或は正当なる権限ある当該地方公共団体の機関並びに監督の権限ある行政庁において、なし得べきところであるが、これ等の者がその措置を講じないところから、当該住民に対して、その住民たる資格において、新に地方自治法により、このような訴権が与えられたものである。それであるから、一種の公法上の権利というべきであろう。 この権利の行使が非訟事件としてではなく、争訟事件としての取扱をすべきであることは、その権利の設定の趣旨からいうて当事者間に争のあることが当然に予想され、これが公権的な裁断を必要とするからである。 その訴訟の対象となる地方公共団体の職員の行為は、営造物の使用に関する点を除いては、概ね私法上の行為であると考えられるが、しかし訴訟の意図するところは、前説明のように地方自治制に関連する経済的腐敗行為の防止及び匡正を図るため、その住民に対し裁判権の発動を求めさせる点にある。 それ故にその権利の行使は、住民の個人的利益のためというよりはむしろ、住民全体の利益、即ち地方公共団体の長、出納長、収入役その他の職員が公金を違法不正に支出し、又その財産を違法不正に使用売却して、地方公共団体に経済的損失を 、住民の個人的利益のためというよりはむしろ、住民全体の利益、即ち地方公共団体の長、出納長、収入役その他の職員が公金を違法不正に支出し、又その財産を違法不正に使用売却して、地方公共団体に経済的損失を蒙らしめることを、防止又は匡正することは、終局において地方公共団体の諸経費を負担する納税者であるところの住民の全体の利益であるから、住民全体のためになさるべきものであるといわねばならない。従つてその訴訟手続は公益尊重の見地から、職権主義の加味されている行政事件訴訟手続によるべきことが適当である。 最高裁判所がその訴訟手続を特例法によるべきものとしたのは、この見地から理解せらるべきである。 それで、本規定による訴は同法第一条の「公法上の法律関係に関する訴訟」と解し、かの選挙人による選挙に関する訴訟と同様いわゆる「民衆訴訟」に類するものというべきであろう。 <要旨第二>本裁判権の性質が以上説示のとおり、地方自治法の改正法により新設された同法第二百四十三条の二により</要旨第二>創設された公法上の権利であるのだからこの権利の設定されない以前の事項についてもこの権利が行使できるとするならば必ずその旨の規定がなければならない。その遡及規定の存しないこと前説明のとおりである。法律は一般にその施行以後の事項についてのみ適用する趣旨であるとする「法律不遡及」の原則からいつても、又特にこの権利の行使の結果は対象たる行為が取消され或は無効とされ若しくは相手方に対し損害の補てんが命ぜられるので、このことは一応安定したところの相手方の権利地位に動揺を与えるものであること極めて明瞭である。だからこのような規定はその性質上も遡及効を認めるべきものではない。 以上の理由により控訴人Dには本件売却処分について、地方自治法第二百四十三条の二の裁判請求権はないものといわね 極めて明瞭である。だからこのような規定はその性質上も遡及効を認めるべきものではない。 以上の理由により控訴人Dには本件売却処分について、地方自治法第二百四十三条の二の裁判請求権はないものといわねばならない。 <要旨第三>もつとも、特例法附則第二項には控訴人等主張のように「この法律は、この法律施行前に生じた事項につい</要旨第三>ても、これを適用する……」とあるが、これは「この法律」即ち特例法は、訴訟手続に関する法規だから、同法施行前に発生した訴訟物についても、当事者に訴権がある以上はその訴権の実施の手続規定である特例法は遡及して適用せられる趣旨の「附則」である。 訴権即ち裁判請求権の内容をなすところの具体的の権利義務或は法律の関係は、すべて実体法によつて制定されるものであるから、手続法たるこの特例法の関するところではない。 だから実体法を離れて、具体的の訴訟物(裁判請求権の内容)があるはずはないのだから、手続法たるこの法律によつて、具体的の訴訟物を制定するに等しい。控訴人等の本法の附則による地方自治法第二百四十三条の二の遡及論は、その理由のないこと論ずるまでもない。 (二) 控訴人Eの裁判請求権について。 同控訴人の主張は、その理解に苦しむところであるが、本件売却行為は、公法上の処分であり、従つて特例法第一条の「公法上の権利関係に関する訴」として提訴ができること。次に住民の資格において、請求趣旨のとおりの裁判請求権があるとするもののようである。 一体本件被控訴村長がなした、村有の基本財産たる山林の売却処分は行政行為であるだろうか。 市町村基本財産の売却については、売却すべきかどうか又売却の方法等について、地方自治法第二百十三条第二百四十三条により、条例その他市町村議会の議決による等一定の公法上の制限があるが、しかしその売却行 市町村基本財産の売却については、売却すべきかどうか又売却の方法等について、地方自治法第二百十三条第二百四十三条により、条例その他市町村議会の議決による等一定の公法上の制限があるが、しかしその売却行為そのものは、売主たる市町村と買主たる私人間に全く同等の立場において締結される私法上の売買契約であり、当事者間には一般に私法自治が許されるものであつて、かの農地法による農地の買上、売渡等とは趣を異にするものであるといわねばならない。それだから、その売却行為については、一般的に私法である民法の適用を受けるものである。 たゞ市町村の機関が基本財産の売却行為をするについては、前述のように、市町村議会の同意を得る等の公法上の制限があるため、議会の同意等を得ることによつて初めて、その機関は有効に財産処分の権限を享有するに至るものであるから、若しこの法律上の制限に違背して売却行為がなされた場合は、無権限な私法上の行為として、民法上の原則により、無効であるに過ぎない。 従つて、無効を争う訴は、一般的な私法自治の原則の支配する民事訴訟法上の手続によるべきものであること、多く論ずるまでもない。控訴人Eが本件売却処分を行政行為であるとする点は以上の理由により失当である。 地方公共団体の住民は、単に住民であるという資格のみで、本件のような基本財産の売却処分について、その団体の職員の行為の適法性を争い、その無効の確認及び損害の補てん等請求趣旨記載の裁判を求める法律上の利益を有するものではない。 従つてこのような裁判請求権は法律の特別の規定、即ち地方自治法第二百四十三条の二のような規定が必要であること前記控訴人Dの裁判請求権の判断のところで詳しく述べた通りである。 控訴人Eはその裁判請求権の存在を地方自治法の第十条第一項第十二条第七十五条等の諸規定に求めているが 二のような規定が必要であること前記控訴人Dの裁判請求権の判断のところで詳しく述べた通りである。 控訴人Eはその裁判請求権の存在を地方自治法の第十条第一項第十二条第七十五条等の諸規定に求めているがその見解は、全く独自のものであつて、首肯する価値はない。 以上の理由により、結局控訴人等には、本件についての裁判請求権がないことになるのである。 従つて控訴人等の本訴請求は、既にこの点において理由がないから、本案について判断を進めるまでもなく、失当とて、これを棄却すべきものである。原判決は結果において同一の判断となるから、本件控訴を棄却する。 よつて民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条第九十三条に従つて、主文のとおり判決する。 (裁判長判事石丸友二郎判事萩原敏一判事呉屋愛永)
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