平成24(わ)8 殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反,火薬類取締法違反

裁判年月日・裁判所
平成24年12月11日 大分地方裁判所 大分地方裁判所
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判決文本文4,995 文字)

主文 被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中240日をその刑に算入する。 甲株式会社で保管中の実包143発(大分地方検察庁平成24年領第80号符号1の1,2の1,3の1,4の1,9の1,10の1,11の1,12の1,14の1,17の1,18の1,19の1,19の3,20の1,21の1,22の1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は,かねてから違法な罠を山中に仕掛け,猪等を捕獲していたものであるが,平成23年12月20日午後1時30分頃,大分県臼杵市所在の乙警察署丙警察官駐在所から北方約2キロメートルの山中において,A(当時36歳)から狩猟方法について注意され,警察等に通報されそうになったことに憤慨し,同人が所持していた散弾銃を使用して同人を射殺しようと決意し,同人の背後から前記散弾銃を同人に向け,銃弾2発を発射し,うち1発を同人の左肩に命中させたが,入院加療約1か月を要する銃創,左肩開放粉砕骨折,骨軟部重度欠損の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 第2 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日,大分県臼杵市所在の乙警察署丙警察官駐在所から北方約2キロメートルの山中において,猟銃である前記第1の散弾銃1丁を所持した。 第3 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日頃,宮崎県延岡市所在の被告人方コンテナ倉庫内において,火薬類である散弾銃の実包165発(大分地方検察庁平成24年領第80号符号1の1,2の1,3の1,4の1,9の1,10の1,11の1,12の1,14の1,17の1,18の1,19の1,19の3,20の1,21の1,22の1はその一部)を所持した。 (証拠の標目) 省略 (事実認定の補足説明) 1 弁護人の主張判示第1について,弁護人は,被告人が,被害 ,19の1,19の3,20の1,21の1,22の1はその一部)を所持した。 (証拠の標目) 省略 (事実認定の補足説明) 1 弁護人の主張判示第1について,弁護人は,被告人が,被害者を脅すつもりで本件猟銃を発砲したところ,その反動で本件猟銃が大きく跳ね上がり,その際,意図せず2発目が発射され,これが被害者に命中したものであると主張し,被告人もこれに沿う内容の供述をしている。 しかし,当裁判所は,前掲各証拠によって判示第1のとおりの罪となるべき事実を認定することができると判断した。以下,補足して説明する。 2 前提となる事実⑴ 発射された銃弾の数等関係各証拠によれば,押収された本件猟銃の薬室内には空になった薬莢が2つ残っていたことが認められ,被告人自身も銃弾を2発込め,判示第1の際にそのいずれもが発射されたと供述していることからすれば,犯行時,本件猟銃から2発の銃弾が発射されたものと認められる。 ⑵ 本件猟銃等の構造ア B証人の供述によれば,①本件で発射された銃弾は散弾ではなく,大型の動物を1発で殺すことができるスラッグ弾というものであること,②本件猟銃の引き金は,競技用の銃よりも重くなっていること,③本件猟銃は上下二連式といわれる型のもので,1発目を発射した際の反動を受け止めることにより,撃鉄の切替装置が作動すれば,引き金を2度引くことのみで2発目を発射することができることなどが認められる。 前記⑴のとおり,銃弾が2発発射されていることからすれば,被告人は,1発目が発射された際,その反動を受け止めることができる体勢であったと認められ,そうすると,銃の重みや動きによって指を動かさなくても引き金が引き込まれる状態になったとは認められず,意図して2回引き金を引いたものと認められる。 イこれに対し, 勢であったと認められ,そうすると,銃の重みや動きによって指を動かさなくても引き金が引き込まれる状態になったとは認められず,意図して2回引き金を引いたものと認められる。 イこれに対し,弁護人は,被告人が,本件猟銃を右手で握り,人差し指を引き金にかけ,先台を左手で軽く支える状態で発砲したことから,その反動で銃身が大きく跳ね上がり,さらに銃身が下がる際に意図せず2発目が発射され,これが被害者に命中した旨主張する。 しかし,前記のとおり,1発目の発射の反動を受け止めなければ切替装置が作動せず,2発目の銃弾を発射することはできない。弁護人の上記主張は,本件猟銃の構造と矛盾している。 ⑶ 被告人と被害者の位置関係等ア被告人が現場近くで猪の罠を仕掛けるなどしていたことからすれば,被告人は現場周辺の地形や状況を覚えていたものと認められ,被告人はこうした記憶に基づいて被告人と被害者の位置を特定することができたといえる。C証人も,被告人が,現場での犯行再現時,尾根や猪を捕獲した場所を手がかりにして任意に被告人と被害者の位置を指示したと供述する。また,被告人は,公判廷でも,これらの位置については特段争っておらず,被害者までの距離は約6から7メートルであったと供述している。そうすると,犯行時の被告人と被害者の位置は,概ねそれぞれ甲67号証添付の見取図第1図記載の「⑨」及び「コ」のとおりであり,その距離は約6から7メートルであると認められる。 イなお,甲67号証添付の犯行再現写真では,被害者は,被告人に背を向けた状態で,左方向を向いて屈んでいるが,被告人は,公判廷において,被害者はこちらに背を向け,やや右を向いて立っていたと供述している。この点については,被害者の供述も背後から撃たれたこと以外はあいまいであり,被害者の姿勢については るが,被告人は,公判廷において,被害者はこちらに背を向け,やや右を向いて立っていたと供述している。この点については,被害者の供述も背後から撃たれたこと以外はあいまいであり,被害者の姿勢については,銃創のある左肩側面を被告人の側に向けていたという以上に特定することはできない。 ⑷ 現場付近の木の傷ア関係各証拠によれば,被告人が指示した本件猟銃の発砲位置から,約20 メートル下方の木に,長さ約7.5センチメートル,最大幅約4センチメートルの弾痕様の傷が付いていること,現場の周辺で同様の傷が付いた木は他に見当たらなかったこと,この傷は,犯行の2日後に発見された時点で比較的新しく,形状は半筒状で,斜面の上から斜めに入っており,その形状等からスラッグ弾などの一発弾によるものであることが認められる。 さらに,獲物を確実に仕留めるために使用される一発弾で木が傷付けられるのは稀であると考えられるから,この木の傷は,本件犯行の際に発射された銃弾によるものと認められる。 イまた,B証人によれば,人体を貫通した銃弾は威力が落ち,木に上記のような傷をつけることはないこと,この木の傷には血痕等が付着していなかったことが認められる。また,甲63号証によれば,約1から2センチメートル大の銃弾の破片が約4個被害者の左肩から摘出されている。以上によれば,この木の傷は,被害者の左肩に当たったのとは別個の銃弾によるものと認められる。 ウそして,被告人が指示した被告人と被害者の位置と,この木の弾痕からすれば,2発の銃弾の軌道は,甲60号証添付の写真②のとおりではないものの,それと大きくずれるものではないと認められる。 ⑸ 犯行後の被告人の行動ア犯行後の被告人の行動について,被害者は,①被告人は,発砲後,すぐに被害者に近寄ってきて,「お前は生きと はないものの,それと大きくずれるものではないと認められる。 ⑸ 犯行後の被告人の行動ア犯行後の被告人の行動について,被害者は,①被告人は,発砲後,すぐに被害者に近寄ってきて,「お前は生きとったらいけん。お前を殺して俺も死ぬ。」などと言い,被害者に本件猟銃を向けて一度引き金を引いた,②しかし,銃弾は発射されず,被告人は,何度もがちゃがちゃと引き金を引いていた,③それが滑稽に思えたので,被告人に対し,「馬鹿。」と言った,④そうすると,被告人に本件猟銃の銃床で何度も頭部を殴られた,と供述している。 イ被害者は,銃を向けられた時に死を覚悟し,これらの光景を覚えておこう としたと供述しており,内容も具体的かつ詳細であって,信用性は高い。 他方,被告人はこの点を否認しているが,犯行後の行動についての被告人の供述は,①銃弾が命中した後も被害者は倒れていない,②その後,被害者の方から斜面を駆け昇ってきた,③被害者に多量の出血は見られず,重傷を負っていたことには気付かなかったなど,客観的状況に照らして不自然な点が多く,信用できない。 3 殺意の有無等⑴ 前記2によれば,被告人は,約6から7メートルという至近距離から意図して2回引き金を引き,殺傷能力が高いとわかっているスラッグ弾を被害者のいる方向に向けて2発発射したものと認められる。さらに,犯行の直後,より近い位置で被害者に向けて引き金を引いている。 こうした犯行態様等に照らせば,被告人は,被害者を殺そうと考え,本件猟銃を被害者に向け,銃弾2発を発射したことが明らかである。 ⑵ これに対し,被告人は,被害者を殺すしかないと考えたものの思いとどまり,脅しのため,発砲直前に本件猟銃を10ないし15度左に逸らして引き金を引いたと供述しているが,被害者に当てるつもりがないのであれば,も 対し,被告人は,被害者を殺すしかないと考えたものの思いとどまり,脅しのため,発砲直前に本件猟銃を10ないし15度左に逸らして引き金を引いたと供述しているが,被害者に当てるつもりがないのであれば,もっと大きく逸らすはずである。また,逸らすのであれば不安定な持ち方をして銃を構えていたというのも不自然である。 また,弁護人は,被告人が被害者を殺そうとして本件猟銃を発砲していれば,確実に致命傷を与えることができたはずであると主張するが,銃弾は頭や心臓に近い左肩に当たっており,被害者の姿勢や動作等によって,死亡の結果が生じなかったに過ぎないといえる。 さらに,弁護人は,被告人が,犯行の後,被害者のために,飲み物や止血用のタオル等を手渡したり,道案内をしていることなどが殺意と矛盾するとも主張するが,被害者に向けて発砲した後,我に返るなどしてこのような行動をとることも不思議ではない。 (法令の適用)罰条判示第1の所為刑法203条,199条判示第2の所為銃砲刀剣類所持等取締法31条の11第1項1号,3条1項判示第3の所為火薬類取締法59条2号,21条刑種の選択判示第1の罪有期懲役刑を選択判示第2,第3の罪いずれも懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)(なお,判示第2の罪は判示第1の罪と1罪として処断すべきであるという弁護人の主張は採用できない。)未決勾留日数刑法21条没収刑法19条1項1号,2項本文(判示第3の罪の組成物)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件殺人未遂は,被告人が,被害者に向けて,約6から7メートルの至近距離か 法19条1項1号,2項本文(判示第3の罪の組成物)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件殺人未遂は,被告人が,被害者に向けて,約6から7メートルの至近距離から,殺傷能力の高いスラッグ弾を2発発射し,そのうち1発を左肩に命中させたものである。被害者は左肩の機能を失い,今後の生活に重大な不安を抱えている。また,撃たれた後にさらに銃口を向けられるなどした恐怖感が今なお続いている。危険な犯行で,結果は極めて重大である。被害者に違法な罠を通報されたくなかったという動機も身勝手である。 他方,いわゆる銃器犯罪ではあるが,人を殺傷するために銃を用意して及んだというものではない。 被告人が銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪及び火薬類取締法違反の罪を犯してい ることを考慮しても,主文の刑を科すのが相当である。 (求刑-懲役14年実包143発の没収)平成24年12月11日大分地方裁判所刑事部 裁判長裁判官真鍋秀永 裁判官開發礼子 裁判官前川悠

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