令和6(あ)1161 窃盗、強盗致傷被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年7月7日 最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 仙台高等裁判所 令和5(う)149
ファイル
hanrei-pdf-94261.txt

判決文本文1,947 文字)

- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中210日を本刑に算入する。 理由 弁護人鈴木敏彦の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお、原判決は、第1審裁判所が強盗致傷の被害者の検察官調書抄本を刑訴法321条1項2号前段により採用したこと(以下「本件証拠決定」という。)について、証拠能力をいまだ獲得していない証拠を採用し、事実認定に供した違法があるとして、同法397条1項、379条により第1審判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して自判し、第1審判決と同じ犯罪事実を前提に、第1審判決よりも軽い刑を言い渡している。しかしながら、原判決は、原審における事実の取調べの結果も踏まえ、本件証拠決定の時点で既に被害者が供述不能の情況にあったとも説示しており、結局のところ、本件証拠決定の時点で同法321条1項2号前段の要件を満たしていたと認めている。そうすると、原判決は、本件証拠決定それ自体が違法であるとはいえないにもかかわらず、同法379条に規定する事由があるとして第1審判決を破棄したことに帰し、このような原判決の判断には同法397条1項、379条の解釈適用を誤った違法がある。もっとも、本件上告は被告人の申立てに係るものであり、前記違法は同法411条を適用すべきものとは認められない。 よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。なお、裁判官渡辺惠理子、同平木正洋の補足意見がある。 裁判官渡辺惠理子、同平木正洋の補足意見は、次のとおりであ 1条1項ただし書、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。なお、裁判官渡辺惠理子、同平木正洋の補足意見がある。 裁判官渡辺惠理子、同平木正洋の補足意見は、次のとおりである。 令和6年(あ)第1161号窃盗、強盗致傷被告事件令和7年7月7日第三小法廷決定- 2 -私たちは、法廷意見に賛同するものであるが、原判決が第1審判決と同じ犯罪事実を前提に、第1審判決よりも軽い刑を言い渡したことに関し、補足して意見を述べておきたい。 控訴裁判所が第1審判決を破棄して有罪の自判をする際には、自判する時期を基準として自ら量刑判断をすることになるが、破棄の理由が第1審判決の量刑判断の基礎となる事実の認定に変動を生じさせるものではない場合には、基本的に第1審判決の量刑判断を尊重すべきであり、第1審判決と異なる刑を言い渡すときは、第1審判決と異なる結論に至った実質的な理由を示すべきものと考える。そうでなければ、量刑不当(刑訴法381条)を理由とする破棄について、裁判員制度の導入を契機とする議論等を通じて形成され、積み重ねられてきた裁判実務上の共通認識、すなわち、量刑判断の前提となる事実の認定・評価が明らかに不合理であるときや、行為責任又は公平性の観点などからみて明らかに不合理であるときを除き、第1審判決の量刑判断を尊重するという考え方と相いれない結果となりかねないことが懸念される。また、第1審判決と異なる量刑判断をした実質的な理由を示すことは、裁判の内容等に応じて適切な理由を付すべきことを求める刑訴法44条1項の趣旨にもかなうことになる。もっとも、これに対しては、およそ控訴裁判所が第1審判決を破棄して自判する以上、破棄の理由が量刑判断の基礎となる事実の認定に変動を生じさせるものではない場合であっても、特に理由を示 かなうことになる。もっとも、これに対しては、およそ控訴裁判所が第1審判決を破棄して自判する以上、破棄の理由が量刑判断の基礎となる事実の認定に変動を生じさせるものではない場合であっても、特に理由を示すことなく第1審判決と異なる刑を言い渡すことに何ら問題はないとする考えもあり得る。しかしながら、このような考え方は、控訴裁判所の役割が、第1審の審理及び判決のどこに法定の破棄事由があるのかを審査し、その結果に応じた適切な措置を講じることにあると解されることからすると、形式的に過ぎ、相当ではない。 本件では、第1審判決に原判決の指摘する破棄事由は認められないから、そもそも原審が自判する前提を欠くことになるが、原判決は、その判文全体をみても、第1審判決と同じ量刑判断の基礎となる事実を認定しながらなお異なる量刑判断をした実質的な理由を示しているとはいえず、以上のような観点からも問題があること- 3 -を指摘しておきたい。 (裁判長裁判官渡辺惠理子裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官石兼公博裁判官平木正洋)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る