- 1 -令和6年7月25日宣告令和3年(わ)第163号 医師法違反被告事件判決 主文 5被告人を罰金30万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。 理由 【罪となるべき事実】10被告人は、「Aクリニック」を開業していた医師であるが、Bと共謀の上、Bに対する健康診断を実施していないにもかかわらず、平成30年10月11日午後0時33分頃、宮城県柴田郡内の医療法人C病院医師室において、パーソナルコンピュータを用いて健康診断個人票データの氏名欄に「B」、胸部エックス線検査及び心電図検査欄に各「異常なし」、医師の診断欄に「特記すべき異常なし」、医師の15意見欄に「就労に問題なし」と記載し、健康診断実施医師氏名欄に「被告人(被告人の氏名を漢字で表記)」と記名するとともに「被告人(被告人の氏を漢字で表記)」の印影を表示し、医療機関名欄に「Aクリニック」、診断年月日欄に「平成30年7月14日」と記載するなどして作成したBに対する平成30年7月14日付け健康診断個人票データを電子メールに添付してBに送信した上、Bが、同年10月1201日午後0時43分頃、前記個人票データを山形県東根市内のBが当時勤務していた医療法人D病院の総務課に設置されたファックスに送信し、その頃、ファックス用紙に印字された健康診断個人票1通を情を知らない同病院担当者に交付し、もって医師が自ら診察しないで診断書を交付した。 【証拠の標目】25省略 - 2 -【争点に対する判断】弁護人は、本件がBの主導の下でBの利益のためだけに実行されたことからすれば、本件の主犯はBとい いで診断書を交付した。 【証拠の標目】25省略 - 2 -【争点に対する判断】弁護人は、本件がBの主導の下でBの利益のためだけに実行されたことからすれば、本件の主犯はBというべきであり、かつ、Bを処罰することについて法律上何ら障壁がないにもかかわらず、検察官が、合理的な理由なく、Bを起訴することなく被告人のみを起訴しているとして、被告人に対する起訴は、不公平な差別的起訴5であり、検察官の訴追裁量権を逸脱したものであって、公訴権の濫用に該当し、公訴を棄却すべきであると主張する。 しかし、検察官の訴追裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合があり得るとしても、それは例えば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られると解される(最高裁昭和55年12月17日第一小法廷決定・刑集3104巻7号672頁参照)ところ、必要的共犯の不処罰に関する判例(最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決・刑集22巻13号1625頁)に鑑みてBを起訴しなかった旨の検察官の主張や、被告人が本件の共同正犯の罪責を負うことに変わりないことなどを踏まえれば、本件が上記のような極限的な場合に当たると認められないことは明らかであり、弁護人の上記主張は採用できない。 15【法令の適用】省略【量刑の理由】1 本件は、被告人が共犯者と共謀して、共犯者の診断書を無診察で作成して共犯者の勤務先に交付した事案である。 202 診断書の社会的信用性を害する悪質な犯行であるし、共犯者との従前の関係性や被告人の発達特性に関する弁護人の主張を踏まえても、被告人が共犯者の依頼に従わざるを得なかったような状況にはなかったと認められ、共犯者の依頼を軽々しく引き受け、数年間にわたって同様の犯行を繰り返す中で本件犯行に及んだ被 る弁護人の主張を踏まえても、被告人が共犯者の依頼に従わざるを得なかったような状況にはなかったと認められ、共犯者の依頼を軽々しく引き受け、数年間にわたって同様の犯行を繰り返す中で本件犯行に及んだ被告人の意思決定は強い非難に値する。 253 そこで、以上の事情を基に、被告人が事実を認めて反省の弁を述べていること - 3 -など本件に現れた一切の事情も含めて総合考慮して主文のとおり量刑した。 (求刑・罰金50万円)令和6年7月25日京都地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官 川上 宏5裁判官 檀上信介裁判官 中谷 洸 10
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