平成19(行ウ)83 行政文書不開示決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年8月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,449 文字)

主文 本件訴えのうち,総務大臣が原告らに対してした開示決定を行わない旨の処分の取消しを求める訴え,総務大臣に対して開示決定の義務付けを求める訴え及び総務大臣が開示しないことが違法であることの確認を求める訴えをいずれも却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求1(1)主位的請求総務大臣が,原告らに対してした資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書の開示決定を行わない旨の処分を取り消す。 (2)予備的請求ア総務大臣は,原告らの総務大臣に対する資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書に対する行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づく開示請求について,何らの処分も行わないことが違法であることを確認する。 イ総務大臣は,原告らの総務大臣に対する資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書に対する行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づく開示請求について,同収支報告書の要旨が公表される前に直ちに開示せよ。 ウ総務大臣は,原告らの総務大臣に対する資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書に対する行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づく開示請求について,同収支報告書の要旨が公表される前に直ちに開示しないことが違法であることを確認する。 被告は,原告らに対し,それぞれ1万円を支払え。 第2事案の概要本件は,原告らが,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)3条に基づき,資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書の開示を請求したところ,総務大臣が開示決定を行 政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)3条に基づき,資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」の平成18年分の収支報告書の開示を請求したところ,総務大臣が開示決定を行わない旨の処分をしたと主張して,その取消し(請求の趣旨1(1))を求め,予備的に,総務大臣が,本件開示請求に対し何ら応答していないとして,不作為の違法確認(請求の趣旨1(2)ア)と開示決定の義務付け(請求の趣旨1(2)イ)を求めるとともに,公法上の当事者訴訟として,開示しないことの違法確認(請求の趣旨1(2)ウ)を求め,併せて,収支報告書の要旨が公表される前に開示しないことについて国家賠償(請求の趣旨1(2))を求める事案である。 法令の定め(1)情報公開法アこの法律は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする(1条)。 イ何人も,同法の定めるところにより,行政機関の長に対し,当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる(3条)。 ウ行政機関の長は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に同法5条各号所定の情報(不開示情報)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない(5条)。 エ行政機関の長は,開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨及び開示の実施に関 し政令で定める事項を書面により通知しなければならない(9条)。 オ開示決定等は,一定の場合を除き,開示請求があっ を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨及び開示の実施に関 し政令で定める事項を書面により通知しなければならない(9条)。 オ開示決定等は,一定の場合を除き,開示請求があった日から30日以内にしなければならない(10条)。 (2)政治資金規正法アこの法律は,議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ,政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため,政治団体の届出,政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより,政治活動の公明と公正を確保し,もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする(1条)。 イこの法律は,政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ,その収支の状況を明らかにすることを旨とし,これに対する判断は国民にゆだね,いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように,適切に運用されなければならない(2条1項)。 政治団体は,その責任を自覚し,その政治資金の収受に当たっては,いやしくも国民の疑惑を招くことのないように,この法律に基づいて公明正大に行わなければならない(2条2項)。 ウ総務大臣又は都道府県の選挙管理委員会は,政治団体に係るその年における収入,支出その他の事項を記載した報告書を受理したときは,総務省令の定めるところにより,その要旨を公表しなければならない(20条1項)。 エ上記報告書又はこれに添付し,若しくは併せて提出すべき書面(以下「収支報告書等」という。)で20条1項の規定により当該報告書の要旨が公表される前のものに係る情報公開 ばならない(20条1項)。 エ上記報告書又はこれに添付し,若しくは併せて提出すべき書面(以下「収支報告書等」という。)で20条1項の規定により当該報告書の要旨が公表される前のものに係る情報公開法3条の規定による開示の請求があ った場合においては,当該要旨が公表される日前は同法9条1項の決定を行わない(20条の3第1項)。 開示決定等は,一定の場合を除き,開示請求があった日から同法20条1項の規定により要旨が公表された日から同日後30日を経過する日までの間にしなければならない(20条の3第2項)。 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)(1)平成17年分の収支報告書に関する訴訟についてア原告Aは,平成18年4月3日,情報公開法3条,4条1項に基づき,総務大臣に対して,清和政策研究会及び平成研究会が政治資金規正法に基づいて提出した平成17年分の収支報告書の開示を請求した(甲4)。 イ総務大臣は,同月26日付けで,原告Aに対し,上記報告書に情報公開法5条6号に該当する情報(事務支障情報)が記載されていることを理由として,上記報告書を不開示とする処分をした(甲4)。 ウ原告Aは,同年5月2日,大阪地方裁判所に上記処分の取消しを求める訴え(平成18年(行ウ)第75号)を提起し,同裁判所は,同年8月10日,上記処分を取り消すとの認容判決(以下「別件判決」という。)をした(甲4)。 エ被告は,これを不服とし,大阪高等裁判所に控訴し(平成18年(行コ)第89号),平成19年2月23日,同裁判所は,現段階において開示決定がされたことを理由として,別件判決を取り消して,上記ウの訴えを却下するとの判決をした(甲7。もっとも,同判決は,上記処分を取り消すべきものとした別件判決 23日,同裁判所は,現段階において開示決定がされたことを理由として,別件判決を取り消して,上記ウの訴えを却下するとの判決をした(甲7。もっとも,同判決は,上記処分を取り消すべきものとした別件判決の判旨は正当であるとして,訴訟費用は控訴人(被告)の負担とした。)。 (2)政治資金規正法の法律改正についてア第165回国会において,政治資金規正法の収支報告書の要旨の公表期 限(原則として当該報告書は提出された年の9月30日まで)を法定するとともに(政治資金規正法20条1項後段),情報公開法の特例として,要旨が公表される前の収支報告書等について,情報公開法の規定による開示請求があった場合においても,当該要旨が公表される日前は情報公開法9条1項の開示決定を行わないこととされ(政治資金規正法20条の3第1項),所要の読替規定を置き(同第2項),併せて,都道府県における情報公開条例等に基づく開示請求の取扱いについても国と同様とするものとされる(同第3項)改正が行われた(平成18年法律第113号。以下「本件改正」という。なお,本件改正による改正後の法律を「改正法」ということもある。乙B1)。 イ改正法は,平成19年1月1日に施行され,平成18年分の収支報告書等から適用されることとなった(改正法附則1条1号,5条,6条)。 (3)平成18年分の収支報告書に関する訴訟(本件訴え)についてア原告A及び原告Bは,平成19年4月5日付けで,原告Cは,同月6日付けで,原告Dは,同年5月7日付けで,それぞれ,総務大臣に対し,情報公開法3条,4条1項に基づき,松岡利勝新世紀政経懇話会が政治資金規正法に基づいて提出した平成18年分の収支報告書(以下「本件報告書」という。)の開示を請求(本件開示請求)した(甲2,乙A2の1,A3の1,A4の1)。 イ総 松岡利勝新世紀政経懇話会が政治資金規正法に基づいて提出した平成18年分の収支報告書(以下「本件報告書」という。)の開示を請求(本件開示請求)した(甲2,乙A2の1,A3の1,A4の1)。 イ総務省自治行政局選挙部政治資金課係長のEは,平成19年4月18日,原告A,原告B,原告Cに対し,同政治資金課収支公開室のF事務官は,同年5月22日,原告Dに対し,それぞれ,政治資金規正法20条の3第1項の規定により,同法20条1項で規定する収支報告書の要旨の公表前は,開示決定ができないことを伝えた(乙A1の1,A2の2,A3の2,A4の2)。 ウ総務省自治行政局選挙部政治資金課収支公開室は,原告A,原告C及び 原告Bが文書による回答を求めたため,平成19年4月25日付けで,原告A及び原告Cに対し,同年5月10日付けで,原告Bに対し,上記(2)の説明等が記載された文書を郵送した(以下,上記イの連絡と併せて「本件連絡」という。)(甲3,乙A1の1,A2の3,A2の4,A3の2,A3の3)。 エ原告らは,平成19年5月11日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 争点及び当事者の主張(1)開示決定を行わない旨の処分の取消しを求める訴えの適法性(請求の趣旨1(1))(原告らの主張)本件連絡は,開示決定を行わない旨の処分に該当する。 (被告の主張)政治資金規正法は,収支報告書等については,その要旨が公表されるまでは情報公開法による開示決定を行わないことを定め(同法20条の3第1項),開示決定等の期限に関する読替規定(同第2項)を置いたことから,本件開示請求に対しては,収支報告書の要旨が公表された日から30日以内に必要な処分をすれば足りる。 そして,本件連絡は,行政手続法9条1項の趣旨に照らし,原告らに対し,本件改正の内容や処分行政庁の対応等 開示請求に対しては,収支報告書の要旨が公表された日から30日以内に必要な処分をすれば足りる。 そして,本件連絡は,行政手続法9条1項の趣旨に照らし,原告らに対し,本件改正の内容や処分行政庁の対応等を説明したものにすぎない。 したがって,本件連絡が行政処分でないことは明らかである。 (2)本件報告書の開示決定の義務付けを求める訴えの適法性(請求の趣旨1(2)イ)(被告の主張)不作為の違法確認の訴えに併合して提起された義務付けの訴えは,行政事件訴訟法37条の3第1項1号にいう「当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。」に該当すると きに限り,提起することができる。 そして,後記(5)(被告の主張)のとおり,不作為の違法確認の訴えには理由がないから,開示決定の義務付けを求める訴えは不適法である。 (原告らの主張)争う。 (3)本件報告書をその要旨公表前に開示しないことの違法確認を求める訴えの適法性(請求の趣旨1(2)ウ)(被告の主張)原告らは,行政事件訴訟法4条の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,開示しないことの違法確認を求めているが,情報公開法上の開示請求に対する応答を問題とする行政処分の発動をめぐる訴訟であるから,抗告訴訟を選択すべきである。 したがって,確認の利益がなく,却下されるべきである。 (原告らの主張)争う。 (4)開示決定を行わない旨の処分(本件連絡)の違法性(請求の趣旨1(1))(原告らの主張)本件改正及びそれに基づく本件連絡は,民主主義の根本に違反し,「知る権利」を侵害して違法である。 (被告の主張)争う。 (5)本件開示請求に対し何ら処分をしていない総務大臣の不作為の違法の有無(請求の趣旨1(2)ア)(被告の主張)ア政治資金規正法は,収支報告書等 を侵害して違法である。 (被告の主張)争う。 (5)本件開示請求に対し何ら処分をしていない総務大臣の不作為の違法の有無(請求の趣旨1(2)ア)(被告の主張)ア政治資金規正法は,収支報告書等については,その要旨が公表されるまでは情報公開法による開示決定を行わないことを定め(同法20条の3第 1項),開示決定等の期限に関する読替規定(同第2項)を置いたことから,本件開示請求に対しては,収支報告書の要旨が公表された日から30日以内に必要な処分をすれば足りる。 イ原告らは,同改正法が,憲法上保障された「知る権利」を侵害し,憲法21条に違反すると主張する。しかし,以下のとおり,原告らの主張には理由がない。 (ア)情報公開法は,国民が直接に行政機関が保有する情報の開示を請求し得る権利としての「知る権利」を憲法上の権利として具体化したものではなく,政府に対する情報公開請求権は,情報公開法によって創設された法律上の権利にすぎない。そうすると,国民に対して,これを付与するか否か,付与するとしてもいかなる限度で,あるいはいかなる要件の下で付与するかについては,立法政策の問題であり,憲法違反の問題はおよそ生じえないというべきである。 したがって,改正法が「知る権利」を侵害するとして憲法21条に違反するとの原告らの主張は,その前提からして失当である。 (イ)その点を措くとしても,改正法の目的は,収支報告書には,形式上の不備や記載もれが多数あるため,審査中の収支報告書を公にすると,国民に政治資金の収支に関する的確でない情報が流布し,政治資金の収支に関する国民の監視と批判が適性に行われないおそれがあり,ひいては,収支公開事務の適性な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,収支報告書に形式上の不備がある場合や記載事項が不十分である場合の形式審査が終わ る国民の監視と批判が適性に行われないおそれがあり,ひいては,収支公開事務の適性な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,収支報告書に形式上の不備がある場合や記載事項が不十分である場合の形式審査が終わり,その要旨が公表される前の開示を制限し,もって,国民に政治資金の収支に関する的確でない情報が流布することを防ぎ,政治資金の収支に関する国民の監視と批判が適性に行われることを企図してされたものであり,その目的は正当である。 しかも,改正法は,収支報告書等について,要旨が公表される日前は 情報公開法9条1項の決定を行わないと定める一方で(同法20条の3第1項),要旨の公表の時期について,特別の事情がある場合を除き,当該報告書が提出された年の9月30日までに公表すると定めており(同法20条1項後段),開示されない不利益も6か月程度にとどめられていることからすれば,直ちに開示されない不利益は必要最小限度にとどめられている。 原告らは,情報公開法5条6号該当性について判断した別件判決を引用して,本件改正の目的が正当でないと主張するが,別件判決は,業務の適性な執行に「支障を及ぼすおそれがある」(同法5条6号)に該当するためには,「実質的な支障がある蓋然性がある」ことが必要とした上で,その蓋然性の有無について判断したもので,本件改正の目的の正当性に言及したものではない。 したがって,同判決を引用して,本件改正の目的の正当性を否定する原告らの主張は失当である。 (原告らの主張)ア被告は,改正法に基づいて,本件開示請求に対しては,収支報告書の要旨が公表された日から30日以内に必要な処分をすれば足りると主張するが,以下のとおり,本件改正は憲法に違反するから,本件開示請求に対し,何らの処分もしないのは違法である。 イ憲法21条は,国民は,国家や地方公共団 から30日以内に必要な処分をすれば足りると主張するが,以下のとおり,本件改正は憲法に違反するから,本件開示請求に対し,何らの処分もしないのは違法である。 イ憲法21条は,国民は,国家や地方公共団体が保有する情報を国民に流さなければ,重要な情報を受け取ることができないことからすれば,情報開示請求権としての「知る権利」を保障しているというべきである。 また,国民主権原理(憲法1条)や議会制民主主義(憲法43条等)等の憲法全体の趣旨からも「知る権利」が導き出される。 上記の「知る権利」は抽象的な権利にとどまるものであるが,情報公開法や政治資金規正法によって具体化している。すなわち,情報公開法は, 「知る権利」を明記していないものの,実質的には「行政文書の開示を請求する権利」(1条),「開示請求権」(3条)としているし,政治資金規正法も,「知る権利」を明記していないものの,「国民の不断の監視と批判」(1条)を期待していることから,「知る権利」を具体化したものといえる。 そうすると,本件改正は,改正前には,開示請求権を保障されていた収支報告書等の情報公開請求権について,開示時期を遅らせるものであるから,憲法上の「知る権利」を侵害し,違法である。 ウ国会議員の収支報告書等の開示は,国民の「知る権利」を保障するとともに,政治的判断のための素材を提供することになるから,情報公開法及び政治資金規正法を改正する際には,目的が正当でなければならず,かつ,その目的を達成するための手段は,合理性や必要性がなければならない。 そうすると,本件改正につき,目的に正当性がなかったり,目的を達成するための手段に合理性や必要性がなければ,裁量権を逸脱,濫用したものというべきである。 そして,被告が主張する本件改正の立法目的は,政治資金の収支の公開強化に資するため 性がなかったり,目的を達成するための手段に合理性や必要性がなければ,裁量権を逸脱,濫用したものというべきである。 そして,被告が主張する本件改正の立法目的は,政治資金の収支の公開強化に資するために,要旨の公表を同時期に行われるようにするためであるとの国会の説明と一致しない。また,本件改正が行われる前に言い渡された別件判決は,不備のある収支報告書等が国民の目に触れたとしても,それを読んだ国民が当該政治団体の収支や活動について誤った印象を持つという事態は考えにくいなどと判断していた。また,46都道府県のうち,45道府県で事前の開示が行われていることは,要旨の公表前に開示しても支障がなかったことを意味しており,被告の主張する立法目的の基礎となる事実が存在しないというべきである。むしろ,本件改正は,都道府県の事前開示をも禁止し,総務省の収支報告書の要旨の公表前の違法な不開 示を正当化しようとするものであり,国会議員が自己の都合のよいように本件改正を行ったものである。したがって,本件改正は,正当な目的なく行われたもので,裁量権の逸脱,濫用であり,違法である。 また,本件改正の目的が正当であるとしても,不備のない収支報告書等も含めて一律に要旨の公表前には開示しないという点で,その手段においても合理性や必要性がない。国会での説明とおり,本件改正の目的が,政治資金の収支の公開強化に資するためである場合は,要旨の公表前の収支報告書等の開示を一切拒否することと合理的関連性がない。 したがって,本件改正は,立法裁量権を逸脱濫用したものであり,原告らの憲法上の「知る権利」を不当に制限するから無効である。 (6)本件報告書の開示決定の義務付けの可否(請求の趣旨1(2)イ)(原告らの主張)本件改正は,上記(5)のとおり,違法,無効な法律であり,かつ,本件 「知る権利」を不当に制限するから無効である。 (6)本件報告書の開示決定の義務付けの可否(請求の趣旨1(2)イ)(原告らの主張)本件改正は,上記(5)のとおり,違法,無効な法律であり,かつ,本件報告書は非開示事由にも該当しないから,総務大臣は,開示決定をすべきことが明らかである(行政事件訴訟法37条の2第5項)。 (被告の主張)争う。 (7)本件報告書をその要旨公表前に開示しないことの違法性の有無(請求の趣旨1(2)ウ)(原告らの主張)本件改正は,上記(5)のとおり,違法,無効な法律であり,かつ,本件報告書は非開示事由にも該当しないから,総務大臣は,開示決定をすべきことが明らかである。 (被告の主張)争う。 (8)国家賠償請求の可否(請求の趣旨2) (原告らの主張)総務大臣は,上記(4)のとおり,違法な処分をしたので,原告らの「知る権利」が侵害され,精神的苦痛を受けた。 その損害額は1万円が相当である。 (被告の主張)争う。 第3争点に対する判断 開示決定を行わない旨の処分の取消しを求める訴えの適法性(請求の趣旨1(1))について原告らは,本件連絡が開示決定を行わない旨の処分に該当するとして,その取消しを求めている。しかし,前記前提事実記載のとおり,本件連絡は,政治資金規正法20条の3の第1項の規定により,同法20条1項で規定する収支報告書の要旨の公表前は,開示決定ができないことを伝えるものにすぎないから,これをもって,開示決定を行わない旨の処分がされたということはできない。 したがって,原告らの請求の趣旨1(1)に係る訴えは,訴えの対象を欠き,不適法である。 本件報告書をその要旨公表前に開示しないことの違法確認を求める訴えの適法性(請求の趣旨1(2)ウ)について原告らは,行政事件訴訟法4条の公法上の法律 る訴えは,訴えの対象を欠き,不適法である。 本件報告書をその要旨公表前に開示しないことの違法確認を求める訴えの適法性(請求の趣旨1(2)ウ)について原告らは,行政事件訴訟法4条の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,開示しないことの違法確認を求めている。そして,確認の訴えについては,他により適切な訴えによってその目的を達成することができる場合には,確認の利益を欠き不適法であるというべきである。 原告らは,本件開示請求に対して何ら応答がないとして,不作為の違法確認(請求の趣旨1(2)ア)及び義務付け(請求の趣旨1(2)イ)を求める訴えを提起しており,少なくとも本件報告書が開示されていない現時点において,この 義務付け請求に係る訴えの方がより直截で適切な訴えであることは明らかである。 したがって,原告らの請求の趣旨1(2)ウに係る訴えは,確認の利益を欠き,不適法である。 本件開示請求に対し何ら処分をしていない総務大臣の不作為の違法の有無(請求の趣旨1(2)ア)について(1)総務大臣は,原告らの本件開示請求に対し,何らの処分もしていないが,改正法は,収支報告書等については,要旨が公表されるまでは情報公開法による開示決定を行わないことを定め(同法20条の3第1項),開示決定等の期限に関する読替規定(同第2項)を置いており,収支報告書等の開示請求に対しては,収支報告書の要旨が公表された日以前は,何らの処分も行わないことを規定している。 そうすると,上記要旨が公表されていない現時点において,本件開示請求に対して総務大臣が何らの処分を行わないことは,上記改正法の規定に沿ったものというべきであるから,この不作為をもって違法であるということはできない。 (2)原告らは,改正法の規定が違憲であるとして,総務大臣が何らの処分を行わな わないことは,上記改正法の規定に沿ったものというべきであるから,この不作為をもって違法であるということはできない。 (2)原告らは,改正法の規定が違憲であるとして,総務大臣が何らの処分を行わない不作為が違法であると主張するので,以下検討する。 ア原告らは,改正法の規定が憲法21条や国民主権原理(憲法1条)及び議会制民主主義(憲法43条等参照)などの憲法全体の趣旨から導き出される憲法上の「知る権利」を侵害すると主張する。 そこで検討するに,憲法21条は,表現の自由を保障しているところ,民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達,交流の確保という基本的原理を実効あるものにし,国民各人が公的な情報に接し,これを摂取する機会をもつことは,その者が自由な意思形成を行い,それを表現していく上で有意義なものであるから,「知る権利」は,憲法21条の派生原理 として導かれるものというべきである。 もっとも,「知る権利」のうち,能動的権利としての側面である行政機関に対する情報公開請求権は,自由権の側面としての「知る権利(自由)」とは異なり,憲法上一定の具体的内容の権利として保障されていると解釈することはできず,それ自体は,一般的抽象的な権利にとどまり,法律や条例による制度化を待って初めて具体的な権利になると解される。 そして,国民や住民に対して情報公開請求権をいかなる限度でどのような要件・手続の下に付与するかなどは,いずれも立法政策の問題であり,具体的な情報公開請求権の内容・範囲等は,制定された法律や条例の定めるところによって決まるものである。この意味で,国民や住民に付与された具体的な情報公開請求権は,制定された法律や条例によって創設された権利というべきである。 したがって,情報公開法や情報公開条例によって制定された情報公開請求権について,これ ,国民や住民に付与された具体的な情報公開請求権は,制定された法律や条例によって創設された権利というべきである。 したがって,情報公開法や情報公開条例によって制定された情報公開請求権について,これらを憲法上の「知る権利」を具体化するものと表現できるとしても,情報公開法や情報公開条例によって認められた具体的公開請求権は,そのまま憲法上の具体的権利になるものではなく,その権利の性質は,あくまで法律上,条例上の請求権であるというべきである。 イよって,原告らが収支報告書等について従前有していた情報公開請求権の内容が,改正法の規定により,公開時期の点で後退したことは原告らの主張するとおりであるが,これをもって改正法の規定が,原告らの憲法上の「知る権利」を侵害する規定であると解することはできない。 原告らは,本件改正は立法裁量を逸脱濫用したものであり,原告らの憲法上の「知る権利」を不当に制限するから無効であるとも主張するが,上記のとおり,情報公開法の制定によって原告らが憲法上具体的権利としての「知る権利」を取得するものではないから,原告らの上記主張は,その前提を欠き,理由がない。 (3)したがって,原告らの上記請求(請求の趣旨1(2)ア)は理由がない。 本件報告書の開示決定の義務付けを求める訴えの適法性(請求の趣旨1(2)イ)について不作為の違法確認の訴えと併合して提起された義務付けの訴えは,当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされない場合に限り,提起することができる(行政事件訴訟法37条の3第1項1号)。そして,前記3記載のとおり,総務大臣の不作為が違法であると認めることはできないから,本件開示請求に対し,相当期間内に何らの処分がされない場合には当たらない。 したがって,原告らの上記義務付けの訴 。そして,前記3記載のとおり,総務大臣の不作為が違法であると認めることはできないから,本件開示請求に対し,相当期間内に何らの処分がされない場合には当たらない。 したがって,原告らの上記義務付けの訴え(請求の趣旨1(2)イ)は,不適法である。 国家賠償請求の可否(請求の趣旨2)について原告らは,総務大臣は,本件連絡を違法な処分であるとして,これにより原告らの「知る権利」が侵害され,精神的苦痛を受けたと主張する。 しかし,本件連絡は,前記1記載のとおり,原告らに対し,改正法の内容や総務大臣の処分が収支報告書の要旨の告知後にされることを連絡したにすぎず,本件連絡によって,原告らの何らかの法律上の権利や利益が侵害されたということはできない。 仮に,上記原告らの主張を,本件開示請求に対し,収支報告書の要旨の公表までに総務大臣が何らの処分をしない不作為を違法であると主張していると善解するとしても,それが改正法の規定に基づく取扱いであり,前記3記載のとおり,本件改正が違憲であるとはいえない以上,本件改正に従って開示を遅らせたことについて,違法な不作為を認めることはできない。 したがって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの上記請求(請求の趣旨2)は理由がない。 結論 以上のとおり,原告らの訴えのうち,総務大臣が原告らに対してした開示決定を行わない旨の処分の取消しを求める訴え,本件報告書について開示決定の義務付けを求める訴え及び本件報告書を要旨公表前に開示しないことの違法確認を求める訴えは,不適法であるから,これらをいずれも却下することとし,その余の請求は,理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一裁判官森永亜湖 その余の請求は,理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一裁判官森永亜湖

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