- 1 -主文本件上告を棄却する。 理由 弁護人大野敢,同坂井慶の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論にかんがみ,職権で判断する。 本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,大阪証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株券オプションを対象として,有価証券オプション取引を行ったこと等につき,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項3号及び8号違反の罪(以下「本罪」という。)に問われた事案である。 所論は,本罪が成立するためには,特定の銘柄についての価格操作ないし相場操縦の目的が必要であり,同項柱書きにいう「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」は,特定の銘柄について上記価格操作等の目的がある場合に限って認められるべきであるから,大阪証券取引所における株券オプション市場全体の出来高を操作したにとどまる被告人には,本罪は成立しないと主張する。しかしながら,被告人が大阪証券取引所の株券オプション市場全体の出来高を引き上げる意図であったとしても,現実に行われた取引は,特定の銘柄の出来高の操作にほかならない。そして,このように出来高が操作された場合に生じ得る弊害等にかんがみれば,出来高に関し他人に誤解を生じさせる目的も,上記「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」に当たり,特定の銘柄についての価格操作- 2 -ないし相場操縦の目的を伴わない場合でも,本罪は成立すると解すべきである。 所論は,同項3号につき,いわゆる自己両建ての有価証券オプション取引,すな に当たり,特定の銘柄についての価格操作- 2 -ないし相場操縦の目的を伴わない場合でも,本罪は成立すると解すべきである。 所論は,同項3号につき,いわゆる自己両建ての有価証券オプション取引,すなわち,ある者が,特定の銘柄のオプションを一定数量付与し,これと同時期に,同一銘柄のオプションを同数量取得する取引は,同取引により売建玉と買建玉が発生し,これらが,その後転売等により別々に処分され得ることなどから,同号にいう「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引」には当たらないと主張するが,そのように解すべき理由はなく,上記のような自己両建ての有価証券オプション取引は,上記「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引」に当たると解すべきであって,同取引の結果として売建玉と買建玉が発生し,これらが後に別々に処分され得ることは,その解釈に影響を及ぼさないというべきである。 以上と同旨の原判断は正当である。 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官横尾和子裁判官泉徳治裁判官才口千晴)
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