平成31(ネ)345 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和元年6月27日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所 平成28(ワ)9729
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判決文本文15,387 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次の第2,3項の限度で取り消す。 2 被控訴人らは,控訴人aに対し,連帯して2700万円及びこれに対する平成20年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人らは,控訴人bに対し,連帯して300万円及びこれに対する平成20年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 控訴に至る経緯等控訴人aは,A子に対する強制わいせつ,強姦の容疑で逮捕され,同罪で大阪地方裁判所に起訴され,刑事裁判の結果,同罪で懲役12年の有罪判決を受け,控訴審,上告審においても同有罪判決が維持され確定したが,上記一審判 決から5年余りが経過した後,A子及び目撃者であるB男の供述が虚偽であったことが明らかになったとして大阪地方裁判所に再審を請求して再審開始決定を受け,再審の裁判において無罪判決を受けて確定した。 本件は,控訴人aとその妻である同bが,被控訴人ら 判決行為に違法があり,共同不法行為を構成するとして,国家賠償法1条1項に基づき,控訴人aにつき損害1億1210万8540円,控訴人bにつき損害2894万円及びこれらに対する不法行為日(最初の起訴がされた日)である平成20年9月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,さらに,控訴人aが,被控訴人国に対し,上記再 審開始手続において裁判所が検察官に対し証拠一覧表の交付を命じたにもか かわらず検察官がこれに応じなかった行為には,控訴人aの証拠一覧表を利用する権利を侵害する違法があるとして,国家賠償法1条1項に基づき, て裁判所が検察官に対し証拠一覧表の交付を命じたにもか かわらず検察官がこれに応じなかった行為には,控訴人aの証拠一覧表を利用する権利を侵害する違法があるとして,国家賠償法1条1項に基づき,精神的損害300万円及びこれに対する不法行為日(交付拒否行為の日)である平成27年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,警察官,検察官,裁判官による上記各行為は,いずれも国家賠償法上の違法には当たらないとして,控訴人らの請求をいずれも棄却した。 そこで,控訴人らは,原判決の一部(控訴人aにつき2700万円,控訴人bにつき300万円及びこれらに対する遅延損害金の請求を棄却した部分)を不服として,本件控訴を提起した。 なお,本判決(引用に係る原判決を含む。)においては,主な固有名詞について,原判決別紙「略語一覧表」記載のとおり表記する。 2 前提事実当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,次のとおりである。 控訴人らの家族関係(甲8の1,甲37の2・4頁,甲39の1・別紙3,甲40の2・1頁,乙13別紙速記録・1頁,乙17)ア控訴人a(昭和18年生)及び控訴人bは,夫婦である。 イ cは,控訴人bとその元夫との間の実子である。 ウ A子(平成5年生)及びA子の実兄であるB男(平成3年生)は,cとそ の元夫との間の実子であるが,控訴人a及び実祖母である控訴人bと養子縁組をしている。 エ cは,元夫が暴力を振るうことから,平成7年頃,A子及びB男を控訴人らに預けて元夫から逃れ,平成9年頃,元夫と離婚して,dと再婚し,dとの間に3人の子をもうけてe県内で生活していた。 A子らは,平成7年頃 を振るうことから,平成7年頃,A子及びB男を控訴人らに預けて元夫から逃れ,平成9年頃,元夫と離婚して,dと再婚し,dとの間に3人の子をもうけてe県内で生活していた。 A子らは,平成7年頃から本件刑事事件の捜査が行われた平成20年頃ま での間,控訴人らの自宅(市営住宅)において,控訴人ら及び控訴人aの実母(ただし,平成18年6月1日死亡)と共に生活していた。 なお,A子及びB男は,平成21年7月頃,dとも養子縁組をしている。 本件刑事事件の捜査及び公判の経過ア A子は,平成20年8月26日,f警察署の司法警察員に対し,控訴人a から強制わいせつの被害を受けたとして,本件強制わいせつ事件につき告訴した。また,同月27日には,cも,A子から被害状況を聞き取ったとして,本件強制わいせつ事件につき告訴した(甲8の1)。 イ控訴人aは,平成20年9月頃,本件強制わいせつ事件の被疑者として逮捕,勾留され,同月30日に,大阪地方検察庁検察官g検事により強制わい せつ罪で大阪地方裁判所に起訴された。その際の起訴状記載の公訴事実は下記のとおりである(甲6の1,52の1,54)。 記控訴人aは,強いてわいせつな行為をしようと企て,平成20年7月上旬ころ,h市内の市営住宅の控訴人a方において,同居している養女であるA 子(当時14年)に対し,その背後から両腕でその身体に抱き付き,両手で衣服の上から両乳房をつかんで揉み,もって強いてわいせつな行為をしたものである。 ウ A子は,平成20年9月29日,大阪地方検察庁検察官に対し,控訴人aから強姦の被害を受けたとして,本件強姦事件につき告訴した。また,同年 10月6日には,cも,A子から被害状況を聞き取ったとして,本件強姦事件につき告訴した(甲8の1)。 エ 対し,控訴人aから強姦の被害を受けたとして,本件強姦事件につき告訴した。また,同年 10月6日には,cも,A子から被害状況を聞き取ったとして,本件強姦事件につき告訴した(甲8の1)。 エ控訴人aは,平成20年10月頃,本件強姦事件の被疑者として逮捕,勾留され,同年11月12日にg検事により強姦罪で大阪地方裁判所に追起訴された。その際の起訴状記載の公訴事実は下記のとおりである(甲6の2, 52の2,54)。 記控訴人aは,h市の市営住宅の控訴人a方でA子(平成5年生)と同居していたものであるが第1 平成16年11月21日ころ,控訴人a方において,A子(当時11年)が13歳未満であることを知りながら,同女を強いて姦淫しようと 企て,同女に対し,その肩等をつかんであお向けに押し倒し,無理やり衣服をはぎ取るなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫し第2 平成20年4月14日ころ,控訴人a方において,前記犯行及びその後繰り返し行った虐待行為等によりA子(当時14年)が控訴人aを極 度に畏怖しているのに乗じ,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,前同様の暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫したものである。 オ大阪地方裁判所は,控訴人aに対し,平成21年5月15日,強制わいせつ罪及び強姦罪で懲役12年の有罪判決を言い渡し,これに対し,控訴人a は控訴,上告したが,平成22年7月21日に大阪高等裁判所によって控訴棄却の判決,平成23年4月21日に最高裁判所によって上告棄却の決定がされ,本件第1審の有罪判決が確定した。上記有罪判決における罪となるべき事実は,概ね上記各起訴状記載の公訴事実と同一である(甲3ないし5)。 本件再審請求審及び本件再審の経過等 の決定がされ,本件第1審の有罪判決が確定した。上記有罪判決における罪となるべき事実は,概ね上記各起訴状記載の公訴事実と同一である(甲3ないし5)。 本件再審請求審及び本件再審の経過等 ア控訴人aは,平成26年9月12日,A子らの供述が虚偽であったことが明らかとなったとして,大阪地方裁判所に再審を請求した(甲28)。 イ控訴人aは,平成26年11月18日,刑の執行が停止され,釈放された(甲29,54)。 ウ大阪地方裁判所は,控訴人aに対し,平成27年2月27日,再審開始の 決定をし,さらに同年10月16日に本件再審において無罪判決を言い渡し, 同判決は確定した(甲1,2)。なお,上記再審開始手続において,大阪地方裁判所は,同手続を担当していた大阪地方検察庁検察官i検事らに対し,証拠一覧表の交付を命じたが,同検察官はこれに応じなかった。 エ控訴人aは,平成27年11月12日,大阪地方裁判所に対し,刑事補償を請求し,平成28年2月18日,2826万2500円の刑事補償の決定 を受けた(甲54)。 オ控訴人らは,平成28年10月5日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点争点は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の3(原判決5頁9行目から14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の4(原判決5頁16行目から15頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,証拠(原判決掲記のもの及び後掲のもの)及び弁論の全趣旨によって認定できる事実は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由 引用する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,証拠(原判決掲記のもの及び後掲のもの)及び弁論の全趣旨によって認定できる事実は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第 3 当裁判所の判断」の1(原判決15頁15行目から27頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決15頁18行目の「甲」の次に「1,2,」を加える。 同26行目の「j」の次に「(以下「j」という。)」を加える。 同16頁5行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「なお,k産婦人科受診にかかる情報は,本件各公訴提起時点で,捜査機関に伝えられることはなかった。」 同16頁8行目の「g検事は,」の次に,次のとおり加える。 「警察官に対し,適切な産婦人科医を選定してA子に当該産婦人科医の診察を受けさせるように指示した。 g検事は,」同13行目の「(乙7・8頁)。」の次に「しかし,g検事は,警察官を通じて既にA子にlクリニックを受診させる手配を済ませていたことなどから,cの 上記供述に出た産婦人科の名称や診断結果を聴取せず,本件カルテも入手しなかった。」を加える。 同14行目の「g検事の指示により,」を削る。 同18行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「g検事は,「処女膜裂傷」には陳旧性のものを含むと理解していたため,本 件診断書の記載内容に特段の疑問を抱くことなく,m医師から診断の具体的内容について直接聴取することもなかった(乙19,証人g)。」同22行目の「甲39の2・32頁)。」の次に「しかし,これらの事実は,捜査機関には本件再審において判明したことであって,g検事は,本件各公訴提起時点では,認識していなかった。」を加える。 同17 の「甲39の2・32頁)。」の次に「しかし,これらの事実は,捜査機関には本件再審において判明したことであって,g検事は,本件各公訴提起時点では,認識していなかった。」を加える。 同17頁10行目から11行目にかけての「もらいました。」の次に「その結果,処女膜が破れているという結果だったということを聞きました。」を加える。 同16行目及び17行目の「A子ら」の次に「及び関係者ら」を加える。 同19行目の「D」の次に「,E」を加え,「乙8,9号証」を「乙7ないし 9号証」と改める。 同20頁11行目の「はっきりと」の前に次のとおり加える。 「私は,小学校6年生のころ,おじいちゃんから初めて強姦されました。そして,その後も,胸を触られたり,おしりを触られたり,やはり部屋で無理やり犯されたりしました。何度も同じようなことがあったので,それぞれがい つの時期かは,はっきりと覚えていません。」 同18行目の「思います。」,」の次に,次のとおり加える。 「「私は,普段,おじいちゃんに言い返したりすると,おじいちゃんからビンタをされたりしたことがあり,おじいちゃんの言うことをきかないと,ビンタなどされるかもしれないと思っていました。また,私は,これまでもおじいちゃんから胸を触られたり,犯されたりしてきたときに,おじいちゃんから, 首を押さえつけられて『言ったら殺す』などと言われたり,『仕返しにくる』などと言われていたので,もしおじいちゃんの言うことをきかないと,ビンタよりひどい暴力をふるわれるかもしれないと思い,怖くなりました。」,「私は,おじいちゃんが部屋に入ってくるだけで,以前犯されたときの痛みや,あのおそろしい状況が,思い出したくなくても頭に思い浮かんでしまい,体 が固まってしまいまし い,怖くなりました。」,「私は,おじいちゃんが部屋に入ってくるだけで,以前犯されたときの痛みや,あのおそろしい状況が,思い出したくなくても頭に思い浮かんでしまい,体 が固まってしまいました。ですから,私は,その場から立ち上がることすらできませんでした。」」同22頁1行目の「7日,」の次に「g検事に対し,」を加える。 同23頁17行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「オ jの供述(乙5) jは,平成20年9月26日,g検事に対し,「夏休み前の(平成20年)7月中旬ころだったと思いますが,私の家に,A子がたびたび泊まりに来ていたことがありました。そして,私の家に来たときに,A子は,泣きながらおじいちゃんがお尻触るから,もう帰りたくないと言いました。私は,これを聞いて驚きました。というのは,以前,cも控訴人aから同じような被害 に遭ったことがあるので,私は,bに,ちゃんと気をつけてやりなさいよなどと,たびたび注意していました」,「以前,cが被害に遭ったときに,控訴人aが私に対して,土下座をして謝ったこともありました。ですから,私は,まさか孫にあたるA子に,同じようなことをするとは,思ってもみませんでした。そこで,私は,A子に対して,それだったら,もうここにいなさいと, A子を私のところで預かることにしました。」等と述べた。 カ cの供述(乙7)cは,平成20年9月25日,g検事に対し,「A子が,私と現在の夫との間の子供に対して,性的虐待をしたことがありました。私は,その当時,A子が祖父から性的な暴行を受けているということは知らなかったので,突然,A子がそのようなことをしたことにびっくりして怖くなりました。」,「私は, 平成20年6月ころだったと思いますが,jさんから電話がかかっ 性的な暴行を受けているということは知らなかったので,突然,A子がそのようなことをしたことにびっくりして怖くなりました。」,「私は, 平成20年6月ころだったと思いますが,jさんから電話がかかってきたときに,A子が泣きながら,控訴人aからお尻を触られたなどと言ってきたなどと聞きました。私は,これを聞いて,とてもA子のことが心配になりました。というのも,私が高校生のころ,やはり控訴人aから強姦されたことがあり,また,胸やお尻を触られたこともたびたびあったからでした。」,「私 は,Eさんに電話をかけました。Eさんというのは,美容院のお客さんです。 私が電話をかけると,Eさんは,A子が大変なことになっているから,ちょっと出て来てなどと言ったことから,私は,その日の夜,Eさんと会いました。そのとき,Eさんから,A子が控訴人aから商店街で追いかけられていたことがあり,そのとき,A子の服が乱れていたということや,そのとき, 控訴人aが『させたら銭やる』などと言っていたこと,その追いかけて行った際に,控訴人aが転んで,額と膝に怪我をしたことなどを聞きました。」,「(平成20年)9月に入ってからですが,電話をしていたときに,私は,A子に再び,強姦されたことはないかと聞きました。というのは,私は,やはりA子の態度が腑に落ちませんでしたし,夫も何か引っかかるようで,念の ため,娘を産婦人科へ連れて行ったことがありました。」,「私は,娘に対して,『お母さんが命をかけて守ってあげるから,思い切って話をしてみたら。 お母さんもされたことがあるから,話づらいのはわかるけど,言いたいことがあったら,言って。取り返しのつかないことになったら困るから。絶対お母さんが,守ってあげるから。』などと言いました。すると,娘は,ワーッと 泣き出し,控 話づらいのはわかるけど,言いたいことがあったら,言って。取り返しのつかないことになったら困るから。絶対お母さんが,守ってあげるから。』などと言いました。すると,娘は,ワーッと 泣き出し,控訴人aから無理矢理押し倒され,強姦されたことを話しました。」 等と述べた。 本件刑事事件の捜査時における控訴人aの供述の概要(乙6,12)一方,控訴人aは,平成20年9月26日及び同年10月30日,g検事に対し,「(A子の体に今年に入ってから触れたということはあるか)ありません」,「(今回,A子達が,あなたのことを訴えたのは,なぜだと思うか)多分,cの 25年前の遺恨が続いていたのかと。(25年前のことというのは,あなたとcとが性交渉を持ったときのことか)はい。(あなたは,以前,このときのことを,cの方が自分の体の上にのってきて,合意の元で性交渉を持ったと話していたが,それがなぜ遺恨になるのか)そういう事実は,25年前は話していなくて,私が一方的に犯したと周囲の者には話していました。」,「(25年前のこ とは,あなたが一方的に犯したということだったのか)合意です。」,「私が強姦したという話も,目撃者がいると刑事さんから聞きましたが,私は,恥ずかしながら糖尿病にかかっており,医学的にはインポテンツという状態で,10年ほど前から妻とも性交渉を持っておりません。(あなたは,糖尿病になると,インポテンツという状態になると思っているのか)主治医の先生から,そのよう に言われました」,「今回の(強姦)事件についてですが,まず,私には,身体的にこのような犯行をすることが無理です。というのは,私は,以前,糖尿病でn病院や,その後,o診療所に通っていました。そして,10年くらい前だと思いますが,私がそのo診療所のp先生に,自分が ,身体的にこのような犯行をすることが無理です。というのは,私は,以前,糖尿病でn病院や,その後,o診療所に通っていました。そして,10年くらい前だと思いますが,私がそのo診療所のp先生に,自分が勃起しなくなったことについて,相談したことがありました。」,「先生は,(インポテンツと書かれてい る)ポスターを見ながら,私に,勃起しなくなったのは,糖尿病が原因であるという話をしました。私が,糖尿病にかかっていることや,インポテンツになったことは,私の妻しか知らないことです。」,「cが私に対して持っている遺恨というのは,以前もお話ししましたが,25年前のことです。」等と述べた。 g検事による捜査内容と本件各公訴提起までの判断過程等(乙19,証人g) g検事は,本件刑事事件について,防犯カメラ,精液等の客観証拠がないこ とから,A子の供述が立証の中心であり,B男の供述がA子の供述を直接裏付ける最重要証拠であると考え,A子及びB男を複数回取り調べ,供述調書を作成した。その結果,A子及びB男の供述内容や供述態度等から,その供述の信用性に疑問を差し挟むような事情は見当たらないと判断し,特にA子の供述は,性交経験がなく,インターネット等で性交に関する知識を得ることができるよ うな状況にもない者が,作り話や想像で供述できるような内容ではなく,実際に被害に遭った者しか語り得ないような具体的なものであると考えた。 さらに,g検事は,警察官に指示するなどして,A子及びB男の各供述の信用性を裏付けるための捜査として,A子の被害状況の再現実況見分,B男の目撃状況の再現実況見分,被害日時特定のための捜査,A子から被害を打ち明け られたとするjやcからの事情聴取などを実施した。 一方で,控訴人aは,捜査当初から一貫して本件刑事事 況見分,B男の目撃状況の再現実況見分,被害日時特定のための捜査,A子から被害を打ち明け られたとするjやcからの事情聴取などを実施した。 一方で,控訴人aは,捜査当初から一貫して本件刑事事件を否認していたが,インポテンツで勃起しないことを否認の根拠とし,「10年位前にo診療所のp医師に勃起しなくなったことについて相談したところ,糖尿病を原因とするインポテンツである旨の説明を受けた」と供述していた。そこで,g検事は, 裏付け捜査として,警察官に指示してo診療所に照会したところ,同診療所の所長から,「患者から医師にそのような相談があれば,間違いなくカルテに記載されているが,控訴人aのカルテにかかる記載はない」旨の回答が,また上記p医師から,「控訴人aからインポテンツに関する相談を受けた覚えはない」旨の回答が得られたため,控訴人aの上記供述内容は,虚偽であると判断した。 さらに,g検事は,これら捜査を通じて,A子及びB男にはあえて虚偽を述べてまで控訴人aを罪に陥れる動機は見当たらないと判断し,他方で,控訴人a自身,25年前に妻の実子であるcと性交渉をもった事実は認めていたことから,控訴人aは身内であっても性交に及ぶ性癖を有するものと判断した。 なお,g検事は,平成20年9月25日,cから,A子を産婦人科へ連れて 行ったことがある旨告げられていたが,その時点で,cへの取調べの主眼がA 子からの被害申告の流れを確認することであったこと,A子がcらに強姦被害を打ち明ける前に,cがA子を産婦人科へ連れて行ったことにつき,処女膜裂傷の有無の確認目的とは考えていなかったこと,しかも,既に警察官に指示して,A子をlクリニックのm医師に診察させており,同医師による診察結果の報告が期待できる状況にあったことから,あえて ,処女膜裂傷の有無の確認目的とは考えていなかったこと,しかも,既に警察官に指示して,A子をlクリニックのm医師に診察させており,同医師による診察結果の報告が期待できる状況にあったことから,あえて上記医療機関を具体的に特定 した上で病状照会等を行うなどして本件カルテを収集しようとは考えなかった。また,本件診断書の「処女膜裂傷」との診断結果については,A子の性交経験が裏付けられたが,既に強姦被害に遭ってから相当期間が経過していたため,治癒後の陳旧性の裂傷を意味するものと理解し,何の疑問も持たなかった。 また,A子が上記診察の際の状況を説明しながら,付き添ってくれたおばさん が手を握ってくれたので我慢して検査をしてもらい,処女膜が破れているという結果だったと聞いた旨供述していたことから,m医師による診察状況にも特段の問題はないと考えて,その信用性につき何ら疑問を抱かなかった。そのため,g検事は,m医師から診察の状況や結果を直接聴取する必要があるとは考えず,それ以上に補充捜査を行わなかった。 g検事は,上記捜査の結果を踏まえ,A子及びB男の供述は信用性が高く,他方で,控訴人aの供述には虚偽の事実が含まれているから,信用することができないと考え,本件刑事事件につき控訴人aを有罪と認めることができる嫌疑があると判断して,本件各公訴提起をした。」 ぞれ改める。 同24頁6行目の「信用できる」の次に「が,他方で,控訴人aの証言及び控訴人bの証言はいずれも信用性が低いなど」を加える。 同6行目から7行目にかけての「aの罪となるべき事実を認定して,強制わいせつ罪及び強姦罪で」を加える。 2 争点1(警察官による本件刑事事件にかかる捜査の違法性)について 当裁判所も,警察官による本件刑事事件に の罪となるべき事実を認定して,強制わいせつ罪及び強姦罪で」を加える。 2 争点1(警察官による本件刑事事件にかかる捜査の違法性)について 当裁判所も,警察官による本件刑事事件にかかる捜査につき,国家賠償法上の違法には当たらないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第 3 当裁判所の判断」の2(原判決27頁15行目から29頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決27頁24行目の「担当した」から26行目の「15頁),」までを削り,28頁2行目,7行目及び1 0行目の各「まで」を削り,23行目の「したがって,」を「その他,A子やcから担当警察官に対し,q医院を受診したことや処女膜が破れていないとの診断を受けたことを伝えたとの事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると,」と改める。 3 争点2(g検事による公訴提起の違法性)について 当裁判所も,g検事による公訴提起につき,国家賠償法上の違法には当たらないと判断するが,その理由は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の3(原判決29頁5行目から36頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決29頁12行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「本件各公訴提起の違法性判断に当たって検討すべき事項本件各公訴提起時において,捜査を担当したg検事が現に収集した証拠資料のうち,有罪を証する直接証拠は,被害者であるA子の供述及びこれを裏付ける被害状況を目撃したとするB男の供述であり,これに対し,控訴人aは,これを否認する供述をしていた( g検事は,A子及びB男の供述の信用性を検討し,両供述が概ね合致していたこと,さらに,A子の供述は,性交経験 するB男の供述であり,これに対し,控訴人aは,これを否認する供述をしていた( g検事は,A子及びB男の供述の信用性を検討し,両供述が概ね合致していたこと,さらに,A子の供述は,性交経験がない者の作り話でなく,実際に被害に遭った者しか語り得ない具体的なものと考えたこと,他方,被害時期に関する供述の変遷などの信用性を減殺する事情も検討した結果,上記信用性を否定する事情といえないと考えたこと,さらに,jやcからの事情聴取の結果か らもA子及びB男の供述を裏付ける供述が得られたと考えたこと,以上から, A子及びB男の供述の信用性に疑問を差し挟むような事情は見当たらないとg)。 また,g検事は,警察官に指示して産婦人科医のm医師によるA子の「処女膜裂傷」との診断結果を得た結果,A子の供述が裏付けられたと判断した(認g)。 他方,g検事は,裏付け捜査の結果,控訴人aがインポデンツであるという控訴人aの供述は虚偽であると判断した そこで,g検事は,これら一連の捜査の結果,A子及びB男の供述の信用性が高いが,控訴人aの供述の信用性は低いと判断し,本件刑事事件につき控訴人aを有罪と認めることができる嫌疑があるとして本件各公訴提起に至った ものである(乙19,証人g)。 もっとも,本件各公訴提起時には,客観的証拠として,A子の処女膜が破れていないと記載された本件カルテが存在していたが,g検事は,cから,A子を産婦人科に連れていったことを聴取しながら,当該産婦人科の名称,所在や診断結果等を捜査しておらず,本件カルテを収集していなかったし,また,m 医師から,本件診断書の作成経緯について聴取していなかった。 再審では,本件カルテが証拠調べされ,再審判決では,本件カルテの記載により,A子及びB男の捜査 を収集していなかったし,また,m 医師から,本件診断書の作成経緯について聴取していなかった。 再審では,本件カルテが証拠調べされ,再審判決では,本件カルテの記載により,A子及びB男の捜査段階の供述が大きく減殺されると判断されただけでなく,捜査段階等で虚偽の供述をしたとするA子及びB男の各新供述が信用できると判断された(甲1,2)。 以上を踏まえると,本件各公訴提起の違法性の判断に当たっては,本件各公訴提起時において,①g検事が通常要求される捜査を遂行したといえるか,とりわけ,本件カルテが通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料に当たるか,②A子,B男,控訴人aの各供述の信用性についてのg検事の判断に不合理な点はなかったかの検討が重要となる。以下検討する。 同13行目を次のとおり改める。 g検事が通常要求される捜査を遂行したといえるか」同20行目の「に理解するのがひとまず自然であるといえるが,」を「か,初回の性交によって生じた処女膜裂傷が治癒した後に見られる陳旧性のものも含む趣旨かは不明である。」と改める。 同23行目の「証人g・6頁)。」の次に「ところ,その信用性を疑うだけの 事情は認められない」を加える。 同30頁11行目の「陳旧性のものを含む趣旨に」を「,m医師が適切に診断して記載したものであって,陳旧性のものを含む,すなわち損傷治癒後の後遺所見と」と改める。 同13行目から同31頁3行目までを削る。 同31頁4行目の「このような捜査」を「m医師から直接聴取し,診察状況等を確認するという捜査」と改める。 同15行目の「本件診断書」から16行目の「状況」までを「A子の供述の信用性に疑問を差し挟む事情はなく,かつ,警察官に対して適切な産婦人科を選定し ,診察状況等を確認するという捜査」と改める。 同15行目の「本件診断書」から16行目の「状況」までを「A子の供述の信用性に疑問を差し挟む事情はなく,かつ,警察官に対して適切な産婦人科を選定してA子にその診察を受けさせるように指示した結果提出された本件診 断書の記載内容が上記のとおり「処女膜裂傷」というものであって,A子が性交経験を有することを裏付けており,A子の供述と矛盾するようなものではなかったという状況」と改める。 同19行目から20行目にかけての「診察状況等」を「本件診断書の作成に至る経緯,診察状況や診察結果の具体的内容等」と改める。 同32頁6行目の「結果としては誤っていたものの,少なくとも」を削る。 同7行目の「と理解される」を「とも理解され得る」と改める。 同13行目の「A子の」の前に「本件カルテの記載内容と食い違う内容の本件診断書及び」を加える。 同14行目の「捜査状況」の次に「に加え,本件診断書の「処女膜裂傷」と の診断結果によりA子の性交経験が裏付けられたと考え,A子もg検事に対し, 同診断では,処女膜が破れているという結果だったと聞いた旨供述していたという状況」を加える。 同22行目から同33頁14行目までを次のとおり改める。 「たしかに,年少者の強姦被害について高度な専門性を有する医師がA子を診察すれば,A子の性器,とりわけ処女膜の状態を的確に把握し,A子が供 述する内容を前提とした場合の処女膜の状態と矛盾する所見が観察できた可能性が高く(乙16,弁論の全趣旨),したがって,A子の供述の信用性に重大な疑問を生じさせることになったと考えられるから,客観的証拠を重視するという姿勢からは,当該医師による診察が望ましかったといえる。 しかしながら,本件では, たがって,A子の供述の信用性に重大な疑問を生じさせることになったと考えられるから,客観的証拠を重視するという姿勢からは,当該医師による診察が望ましかったといえる。 しかしながら,本件では,g検事は,警察官に指示した結果,事後的に見 れば問題があったことがうかがえるが,当時としては医師が適切に診察して作成されたと考えられた本件診断書を入手しており,そこには「処女膜裂傷」と記載され,A子の供述と矛盾するようなものではなかったのであるから,そのような状況のもとで,さらに高度な専門性を有する医師の診察を受けさせることが通常要求される捜査であったとまでは認められない。 エしたがって,控訴人ら主張の証拠資料は,いずれも通常要求される捜査を遂行すれば収集し得たものとはいえず,ほかに,g検事が本件各公訴提起時までに通常要求される捜査を怠ったと評価すべき事情の存在を認めるに足りる証拠はない。」同15行目の「合理的な」の前に「本件各公訴提起時の証拠資料を前提とし た」を加える。 同18行目の「いた」を「おり,一方,実母であるcは,A子らを控訴人らに預けたまま,再婚相手及び再婚相手との間の3人の子とともに遠く離れたe県内で生活していた」を加える。 同19行目の「陥れる」を「陥れ,あるいは,実母であるcの働きかけに影 響を受けて」と改める。 同34頁12行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「さらに,A子らの供述は,A子から被害を打ち明けられたとするjやcの供述によっても裏付けられていたものであったと認められる。」同22行目から23行目にかけての「のであって」の次に「(この点は一貫していた。)」と加える。 同35頁18行目の「しかし,」から22行目の「(甲3,12)。」までを「 と認められる。」同22行目から23行目にかけての「のであって」の次に「(この点は一貫していた。)」と加える。 同35頁18行目の「しかし,」から22行目の「(甲3,12)。」までを「しかしながら,g検事は,警察官に指示して控訴人aが通院していたというo診療所に照会した結果,同診療所の所長から,『患者から医師にそのような相談があれば,間違いなくカルテに記載されているが,控訴人aのカルテにかかる記載はない』旨の回答,さらには,p医師から,『控訴人aからインポテンツに 関する相談を受けた覚えはない』旨の回答を得ていたと認められる(認定事実」と改める。 同24行目の「に至った」から「できない。」までを「をもったことにつき,当時の検察官の判断過程として合理性が認められるというべきである。」と改める。 同25行目の「g検事が,」から同36頁5行目の「考える。」までを「g検事が,本件各公訴提起に当たり,その時点で収集した各種の証拠資料を総合勘案して控訴人aに有罪と認められる嫌疑があると判断したことは,合理的な根拠を欠いていたということはできない。」と改める。 4 争点3(本件公判検事らによる公訴維持及び勾留継続の違法性)について 当裁判所も,本件公判検事らによる公訴維持及び勾留継続につき,国家賠償法上の違法には当たらないと判断するが,その理由は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の4(原判決36頁8行目から37頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決36頁22行目の「立証」の前に「直接」を加える。 同24行目の末尾に,「また,r検事において,本件診断書の診察結果に問題 があるとか,cが別の産婦人科に受診させたことにつ 原判決36頁22行目の「立証」の前に「直接」を加える。 同24行目の末尾に,「また,r検事において,本件診断書の診察結果に問題 があるとか,cが別の産婦人科に受診させたことについて何らかの補充捜査が必要になってきたと判断すべき状況にあったと認めることもできない。」を加える。 同25行目の「したがって,」の次に「本件第1審において,控訴人aにつき有罪と認められる嫌疑を覆すような特段の事情があったとは認められないか ら,」を加える。 同26行目から同37頁1行目にかけての「合理的であると認められる。」を「合理的な根拠を欠いていたということはできない。」と改める。 同37頁8行目の「加えて」から11行目にかけての「からすると」までを「したがって」と改める。 同13行目の「とは認められない。」を「とまでは認められず,本件控訴審においても,控訴人aにつき有罪と認められる嫌疑を覆すような特段の事情があったとは認められない。」と改める。 5 争点4(本件担当裁判所による判決行為の違法性)について当裁判所も,本件担当裁判所による判決行為につき,国家賠償法上の違法には 当たらないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の5(原判決37頁17行目から38頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決37頁22行目の「これらの点を指摘する」を削る。 6 争点5(本件交付拒否行為の違法性)について 当裁判所も,本件交付拒否行為につき,国家賠償法上の違法には当たらないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の6(原判決38頁10行目から40頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 上の違法には当たらないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の6(原判決38頁10行目から40頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,控訴人らの請求は いずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第6民事部裁判長裁判官中本敏嗣 裁判官橋詰均 裁判官三島恭子

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