【DRY-RUN】主 文 原判決を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 事 実 一 申立 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控
主 文 原判決を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 事 実 一 申立 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控 訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 二 主張 次のとおり付加するほかは原判決該当欄記載のとおりである(ただし、原判決五 枚目裏末行の三条」を「三一条」と改める)からこれを引用する。 (一) 控訴人 控訴人総裁の行う懲戒処分は恣意にわたるなど、社会通念に照らし合理性を欠く 場合を除き裁量が認められているところ、被控訴人の行為は、高度の公共性を有す る控訴人の職員として要求される社会からの廉潔性を損い、控訴人職員としての適 格に欠けるものであるから、本件免職処分に何ら違法な点はない。 (二) 被控訴人 控訴人のした懲戒処分例を検討すれば、威力業務妨害罪で懲役三月執行猶予三年 の有罪確定判決を受けながら停職一か月となつた事例(乙第四〇号証の二二番の事 例)があり、公職選挙法違反の事例では免職されることはないし、傷害罪や賭博罪 などを犯しても免職されない例があり、本件は軽微な事案であることを考えれば、 免職処分は重きに失し、裁量の範囲を逸脱したものである。 三 証拠(省略) 理 由 一 被控訴人は、昭和二〇年八月に控訴人の職員として採用され、山陽本線小郡駅 配車係として勤務していたが、昭和三八年六月一日に岩国市で開催された岩国基地 撤去要求山口県民大会に引続いて行われたデモ行進に際し、警備の警察官に暴行を 加え、加療三日を要する傷害を与えた、との犯罪事実で公務執行妨害罪、傷害罪に よる懲役五月執行猶予一年の有罪判決が昭和四四年一月五日に確定したこと、控訴 人の総裁は、昭和四四年一一月三〇日に被控訴人に対し右有罪確定判決を受けたこ 与えた、との犯罪事実で公務執行妨害罪、傷害罪に よる懲役五月執行猶予一年の有罪判決が昭和四四年一月五日に確定したこと、控訴 人の総裁は、昭和四四年一一月三〇日に被控訴人に対し右有罪確定判決を受けたこ とを理由として国鉄法三一条により懲戒免職の処分をしたこと、以上の事実は当事 者間に争いがない。 二 いずれも成立に争いのない甲第一ないし第一四号証、乙第一号証、第三号証、 第五ないし第七号証、第八号証の一、二、第九号証の一ないし三、第一〇、一一号 証、第一二、一三号証の各一、二、第一七ないし第二八号証、第二九号証の一、 二、第三〇号証の一、二(一は一、二に分れる)、第三一号証の一ないし四(三は 一ないし四に分れる)、第三二号証の一ないし三(二は一ないし三に分れる)、第 三三号証の一ないし五(四は一、二に分れる)、第三四号証の一ないし四(三は一 ないし五に分れる)、第三五号証の一ないし六(四は一ないし六に、五は一、二に 分れる)、第三六号証の一ないし三(三は一ないし四に分れる)、第三七号証の一 ないし六(三は一ないし八に、四は一ないし七に分れる)、第三八号証の一ないし 四(三は一ないし四に分れる)、第三九号証の一ないし三(二は一、二に分れ る)、第四〇号証(乙号証のうち、第二九号証の一、第三一、第三二号証の各一、 第三三号証の一、三、第三五号証の一、二、第三九号証の一については原本の存在 も争いがない)、原審証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、当審 証人I、同J、同K、同Lの各証言、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結 果(以上のうち以下の認定に反する部分は措信できない)を総合すれば、次のとお り認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。 1 安保条約廃棄平和と民主主義を守る山口県民会議及び原水爆禁止山口県協議会 は、昭和三八年六月一日に岩国市錦帯橋畔で、岩国基 ない)を総合すれば、次のとお り認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。 1 安保条約廃棄平和と民主主義を守る山口県民会議及び原水爆禁止山口県協議会 は、昭和三八年六月一日に岩国市錦帯橋畔で、岩国基地撤去、沖繩返還等の諸要求 を掲げる集会を開き、続いて同所から岩国基地前を経て岩国駅前まで集団示威行進 を行い、千数百名がこれに参加した。右集団示威行進については、事前に主催責任 者から許可申請がされ、山口県公安委員会は条例に基いて「行進中はうず巻行進、 蛇行進を行つたり、又はことさらに道路一杯に拡がり、交通の妨害となるような方 法で行進しないこと」などの条件を付し、又、岩国警察署長は道路交通法に基いて 前同旨の条件を付してこれを許可した。 2 被控訴人はその所属する労働組合の上部機関の指示で、同僚組合員などと共に 右集会及び集団示威行進に参加し、右集団示威行進は岩国基地前道路で座込みやう ず巻行進をして、警備の警察官と若干の摩擦があつたほかは平穏に推移し、岩国駅 前で順次流れ解散をはじめたが、被控訴人が属していた国鉄関係の労働組合員など で構成された百名位の集団は岩国駅前に差しかかつた際掛声をかけながら蛇行進を はじめた。 3 警察当局は、当日、相当数の警察官を配備して警備にあたり、M警部補(当時 四五才)も下関警察署から派遣されて第一中隊第三小隊長として警備していたが、 前記集団が蛇行進をはじめ、警察官の拡声器による再三の中止の警告にもかかわら ず、中止しなかつたので、許可条件に違反し、交通の妨害になるため、上司の指示 により岩国駅前いづみ書店前車道で、部下の警察官三十余名を指揮して右集団に近 付き規制をはじめた。 4 被控訴人は、警察官の規制開始に立腹し、抗議していたが、いきなり、M警部 補に対してその左足を一回足蹴りして加療三日間を要する左大腿打撲傷の傷害を与 え、右警 揮して右集団に近 付き規制をはじめた。 4 被控訴人は、警察官の規制開始に立腹し、抗議していたが、いきなり、M警部 補に対してその左足を一回足蹴りして加療三日間を要する左大腿打撲傷の傷害を与 え、右警察官らに現行犯逮捕された。右逮捕に際してはこれを阻もうとする行進参 加者らと警察官らとの間でもみあいが生じてしばらく混乱し、相前後して、他の参 加者一人も警察官に暴行を加えた疑で逮捕された。 5 被控訴人は、逮捕後の勾留を経て、同年一二月一七日に起訴され、終始暴行の 事実を否認したが、昭和四〇年一二月八日に山口地方裁判所で前記有罪判決を受 け、広島高等裁判所における控訴審も控訴棄却の判決によつて前記のように右判決 が確定した。 6 被控訴人はその間約九日間逮捕勾留されたが、右期間は年次有給休暇扱いを受 け、被控訴人の前記職場では他の勤務者に勤務交替などの影響は生じたものの業務 上の支障は発生しなかつた。被控訴人は昭和三八年六月一〇日頃から勤務に復帰し たが、前記起訴にともない、同年一二月二〇日付で国鉄法三〇条一項二号により休 職となり、これと前後して、同法三一条により、昭和三七年四月一日に三月間俸給 一〇分の一減給処分、同三九年一一月一日、同四〇年四月二四日、同年六月一六日 の三回にわたり戒告処分を受けた。 7 控訴人は、職員につき禁錮刑以上の有罪判決が確定したときは概ね免職の懲戒 処分に付していたところ、被控訴人の前記判決確定については、被控訴人からの報 告が特になかつたので、その後も被控訴人に対する前記起訴休職処分が続き、俸給 の六割を支給していたが、昭和四四年九月頃になつて、右判決確定を知り、所管の 担当者が被控訴人に対する懲戒に関して検討をはじめ、被控訴人が職員としての品 位を傷つけ、その行為が著しく不都合であり、就業規則六六条一七号に該当するも のとして被控訴人の行為 右判決確定を知り、所管の 担当者が被控訴人に対する懲戒に関して検討をはじめ、被控訴人が職員としての品 位を傷つけ、その行為が著しく不都合であり、就業規則六六条一七号に該当するも のとして被控訴人の行為の内容、反省の有無、懲戒処分の他の職員に及ぼす影響、 企業秩序維持、懲戒処分歴、従前の懲戒処分例との均衡など諸般の事情を考慮のう え、免職処分にすることに決定し、前記のように発令した。 三 以上の事実関係のもとで本件懲戒処分の効力に関連して検討をすすめる。 1 本件懲戒処分の性質 控訴人は、本件懲戒処分は行政処分であつて、重大かつ明白な瑕疵がない限り当 然に無効となるものではない、と主張する。 しかしながら、控訴人は公法上の法人であり、その経営する鉄道事業を中心とす る事業は高度の公共性を有するものではあるが、その行う事業は経済的活動を内容 とし、公権力の行使という性格を有しないものであり、国家機関による規制も監督 的、後見的なものであることに照らすと、一般的に控訴人の機関が行政庁としての 性格を有し、その行為が行政処分ないしはこれに準じるものと解することはでき ず、また右のように解すべき実定法上の根拠もなく、かえつて、本件懲戒処分は私 法上の行為の性格を有するものと解するのが相当であり、控訴人の右主張は採用で きない。 2 懲戒事由該当の点 被控訴人の前記行為は職場外でなされたもので職務遂行に関係はないが、公務執 行中の警察官に対し暴行を加えて傷害を与えたもので、国鉄法三一条一項一号及び これに基づく国鉄就業規則六六条一七号所定の懲戒事由である「その他著しく不都 合な行いがあつたとき」に該当することが明らかである。 被控訴人は、前記行為は私生活上のものであるから右懲戒事由に該当しない、と 主張する。しかしながら、控訴人のように極めて高度の公共性を有し、公共の利益 と密 あつたとき」に該当することが明らかである。 被控訴人は、前記行為は私生活上のものであるから右懲戒事由に該当しない、と 主張する。しかしながら、控訴人のように極めて高度の公共性を有し、公共の利益 と密接な関係のある企業体においては、事業の円滑な運営の確保とともにその廉潔 性の保持が社会から要請あるいは期待されているから右「著しく不都合な行いがあ つたとき」には、控訴人の右社会的評価を低下、毀損するおそれがあると客観的に 認められる限り、職場外の職務遂行に関係のない行為のうちで著しく不都合なもの と評価されるものを含むと解するのが相当であつて、右規定には具体的な業務阻害 等の発生を要求しているとは解されないから被控訴人の右主張は採用できない。 3 免職処分の相当性の点 被控訴人は、本件免職処分は裁量権の範囲を逸脱し、又は権利の濫用に当るもの として無効である、と主張する。 国鉄法三一条一項は懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の四種類を、懲 戒事由として「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」 と規定しているが、具体的基準の定めはなく、右業務上の規程である控訴人の就業 規則六六条は具体的懲戒事由を定めているが、各懲戒処分毎の懲戒事由の定めはな いところ、このような場合、懲戒権者は、懲戒事由に該当する行為の外形的なもの のほか、原因、動機、状況、結果等のほか、当該職員について前記二、7末段記載 のような諸般の事情を斟酌したうえ、企業秩序の維持確保の見地から相当と判断す る処分を選択できるのであつて、当該処分が社会通念上、当該行為との対比におい て甚しく均衡を失して合理性を欠くものでない限り、その裁量権の範囲内にあるも のとして是認されるべきものである。 右見地から本件を検討すると、被控訴人の行為は傷害罪をともなつた公務執行妨 害罪にあたる軽視し得 均衡を失して合理性を欠くものでない限り、その裁量権の範囲内にあるも のとして是認されるべきものである。 右見地から本件を検討すると、被控訴人の行為は傷害罪をともなつた公務執行妨 害罪にあたる軽視し得ない犯罪行為であり、単に偶然的なものとはいえず、懲役五 月執行猶予一年の有罪判決が確定しているのであり、前記懲戒処分歴も無視し得な いものであり、懲戒処分のうち免職処分についてはその重要性に鑑み特に慎重な配 慮を要することなどを勘案しても、控訴人の総裁が被控訴人に対し本件行為につき 免職処分を選択した判断が甚しく均衡を失して合理性を欠くものとするには足り ず、裁量権の範囲を超えた違法なものあるいは権利の濫用にあたるとは認め難い。 なお、前記判断は前掲乙第四〇号証によつて認められるところの威力業務妨害罪 で懲役三月執行猶予三年の有罪確定判決を受けた者で停職一か月の処分で済んだ例 (もつとも、右事件は控訴人中国支社管内ではない多治見で発生し、処分は一審有 罪判決言渡前に行われた)があること、前掲C、Fの各証言と弁論の全趣旨によつ て認められるところの、公職選挙法違反の罪を犯した者が免職となつたことはない 事実を参酌しても左右し得ないものである。 四 そうすると、被控訴人の本訴請求はその余の判断をするまでもなく失当として 棄却すべきものであり、これを認容した原判決は不当であるからこれを取消し、被 控訴人の請求を棄却することとし、民訴法九六条、八九条を適用して主文のとおり 判決する。 (裁判官 辻川利正 白石嘉孝 梶本俊明)
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