【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差戻す。 理 由 検事提出の上告趣意書は末尾添附のとおりであるが、右の上告趣意に対し当裁判 所は
主文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差戻す。 理由 検事提出の上告趣意書は末尾添附のとおりであるが、右の上告趣意に対し当裁判所は次のとおり判断する。 検事の上告趣意第一点、第二点について。 所論は結局、原審の裁量に属する証拠の取捨判断を非難し、延いて事実誤認を主張するものである。そして原審の認定判断が経験則に反するものとは未だ解し難いのである。それ故論旨はすべて採用することができない。 同第三点について。 (一)刑法二三四条業務妨害罪にいう業務の「妨害」とは現に業務妨害の結果の発生を必要とせず、業務を妨害するに足る行為あるをもつて足るものであり、又「業務」とは具体的個々の現実に執行している業務のみに止まらず、広く被害者の当該業務における地位に鑑みその任として遂行すべき業務をも指称するものと解するを相当とするのである。しかるに原審は当時工場長Aが工場事務所の二階専務室内において現実に執務をしていたか否かの点並びにその点に関する被告人の具体的認識の有無について判断説示をするに止まり、広く工場長たる地位に鑑みその任として遂行すべき業務の範囲並びにその業務の遂行を阻害することについての認識の有無について判断を加えることなく、たやすく業務妨害罪の成立を否定したものであつて、従つて原判決には刑法二三四条の業務妨害罪に関する業務の意義に関し法令の解釈を誤つたか、又はこの点に関する審理不尽乃至理由不備の違法があるものといわねばならない。(被告人が専務室内において生産計画事務に従事中のA工場長の業務の執行を妨害したものであるとの本件公訴事実中には、第一審判決認定のご- 1 -とく「工場長の生産計画事務その他会社内における執務を妨害した」との事実をも包含するものと解するを相当とすべ 長の業務の執行を妨害したものであるとの本件公訴事実中には、第一審判決認定のご- 1 -とく「工場長の生産計画事務その他会社内における執務を妨害した」との事実をも包含するものと解するを相当とすべきであるのみならず、原審における検事の公訴事実の陳述は「第一審判決認定の事実と同一」となつているところである)。されば論旨は理由があり、原判決は既にこの点において破棄を免かれないものである。 (二)次に原審は被告人の行為は刑法二三四条業務妨害罪の威力に該当しないと判断したのであるが、同条の「威力」とは犯人の威勢、人数及び四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解するを相当とするものであり、且つ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきものである。この点につき原判決は「………以上の供述(工場長A、経理課長B、新聞記者Cの各供述の意)並びに物証(会談中の写真の意)を綜合判断すれば工場長Aは経理課長B、専務秘書Dらと最初の侵入を受けた際極力之を阻止したのであるが、効なきを観念し遂に其の素志に反するけれども事態の成行を察知し会見の腹を定め丸テーブルの前の一脚に腰を落し入室者の一団と対席し彼らの去るまで其の質問に身をさらして辛抱をする決意をしたことが肯認される。即ち彼のこの意思決定の動因となつた事実は第一次入室者の不法侵入行為であるが、彼が着席しいよいよ入室者の全部を迎え取つて之と相対した時以後の彼の立場は最早単なる威力をもつて身心を圧迫され意思の自由を拘束されて已むを得ず業務を抛棄している状態ではなく、先に述べた彼の決意に因る彼の自由な意思に基礎を置いているのであり対談中団体側が継続的に威迫的な態度や言動でも示す為め動き 心を圧迫され意思の自由を拘束されて已むを得ず業務を抛棄している状態ではなく、先に述べた彼の決意に因る彼の自由な意思に基礎を置いているのであり対談中団体側が継続的に威迫的な態度や言動でも示す為め動きの取れないようなものでないこと及び団体側の態度は時偶彌次を飛ばすもののいた外は普通の交渉におけるものと殆んど異ならない様子のものであつたことは彼自身及びBの前記供述を綜合して之を認めうるのみでなく、前記Cの供述並びに証第三号写真の状況を参考すれば更に強く肯定せられるところである。会見当初の其の場の緊張や危- 2 -惧の念は不法な侵入行為の余勢の漂う為であり次第にこれが薄らいだということは団体側が会見中格別の不法な威力を示すことのなかつたことを雄弁に物語るものと云わなければならない。」と判示しているのであるが、右判示自体これが上示の威力に該当しないものとはいいえないのであつて、即ち業務妨害罪の威力の有無は被害者の主観的条件の如何によつて左右されるべきものではないといわなければならないのである。されば右前示判示事実をもつて業務妨害罪の要件たる威力に該当しないとした原判決は、この点に関し法令の解釈を誤つたものというの外はなく、論旨は理由があり原判決はこの点においても破棄を免かれないものといわねばならない。 そして被告人に対する業務妨害罪は建造物侵入罪と牽連犯の関係にあるものとして起訴せられたものであるから(両者を有罪とした第一審判決も右は手段結果の関係に立つものとして刑法五四条一項後段、一〇条を適用している)、業務妨害の点について破棄すべき違法ある以上、原判決の全部について破棄すべきものとする。 よつて旧刑訴四四七条、四四八条の二に従い、全裁判官一致の意見によつて主文のとおり判決する。 公判関与検事松本武裕。 昭和二八年一月三〇日 、原判決の全部について破棄すべきものとする。 よつて旧刑訴四四七条、四四八条の二に従い、全裁判官一致の意見によつて主文のとおり判決する。 公判関与検事松本武裕。 昭和二八年一月三〇日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎裁判官谷村唯一郎- 3 -
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