令和3年6月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第14407号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和3年4月22日判決原告有成精密股份有限公司 同訴訟代理人弁護士石部 尚被告 A被告株式会社バリューゾーン上記2名訴訟代理人弁護士橘田 歩 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,228万2687円及びこれに対する平 成28年5月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,別紙1商標権目録記載1及び2の各商標権(以下,併せて「原告各商標権」といい,原告各商標権に係る商標を併せて「原告各商標」という。)を有する原告が,被告らに対し,被告らが別紙2被告標章目録記載の標章(赤 枠で囲んだ部分。以下「被告標章」という。)を付した太陽光発電モジュールを共同して販売しており,当該行為は原告各商標と類似する商標を使用したものとして原告各商標権の侵害に当たると主張して,商標権侵害の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して,商標法38条1項によって算定される損害金228万2687円及びこれに対する不法行為後の日である平成2 8年5月28日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 7円及びこれに対する不法行為後の日である平成2 8年5月28日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)ア原告は,機械設備,電子部品,発電・送電・配電機械等の製造等を業とする会社であり,ウィンアイコ・ジャパン株式会社(以下「ウィンアイ コ・ジャパン」という。)は,日本における原告の販売会社である。 イ被告A(以下「被告A」という。)は,平成26年6月23日から平成30年10月15日までの間,原告において勤務した。 被告Aは,平成27年11月16日,被告株式会社バリューゾーン(設立時の商号は「KTC株式会社」。以下,商号変更の前後を問わず「被告 会社」という。)を設立し,その代表取締役に就任した。 (2) 原告は,原告各商標の商標権者である(甲1)。 (3) 遅くとも平成31年3月頃までには,(住所は省略)所在の土地(以下「本件土地」という。)上に,被告標章が付された太陽光発電モジュール768枚(以下「本件モジュール」)が設置されていた(甲6,8,弁論の全 趣旨)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 原告各商標権の侵害行為の有無(争点1)(原告の主張)被告らは,原告以外の会社が製造し,原告各商標に類似する被告標章を付 した本件モジュールを,株式会社アスカ(平成29年9月28日以前の商号は「有限会社アスカ」。以下,商号変更の前後を問わず「アスカ」という。)に対して販売した。 したがって,被告らは,共同して た本件モジュールを,株式会社アスカ(平成29年9月28日以前の商号は「有限会社アスカ」。以下,商号変更の前後を問わず「アスカ」という。)に対して販売した。 したがって,被告らは,共同して,原告各商標権に係る指定商品である太陽光発電モジュールに原告各商標に類似する被告標章を付した本件モジュー ルを譲渡したから,原告各商標権を侵害したものとみなされる(商標法37 条1号,2条3項2号)。 (被告らの主張)被告会社がアスカ又はその窓口代理業務を担う株式会社イー・マックスに対してパワーコンディショナーを販売したことはあるが,本件モジュールは販売していない。 (2) 損害額(争点2)(原告の主張)原告が製造販売する原告各商標を付した太陽光発電モジュール1枚当たりの原告の利益は2972.249円であるから,被告らが本件モジュールを販売したことについて,商標法38条1項による損害額は228万2687 円(2972.249円×768枚)である。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告各商標権の侵害行為の有無)について (1) 証拠(甲6,8ないし17,19,22ないし24,26,29,30)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告Aは,平成26年6月23日から平成30年10月15日までの間,原告において勤務し,原告が製造した太陽光発電モジュールの販売等を行った(甲11,弁論の全趣旨)。 イ被告Aは,平成28年5月9日,アスカの担当者であるB(以下「B」という。)に対し,被告会社の営業のためのメールアドレスを使用して,株式会社安川電機が製造するパワーコンディショナー(以下「安 イ被告Aは,平成28年5月9日,アスカの担当者であるB(以下「B」という。)に対し,被告会社の営業のためのメールアドレスを使用して,株式会社安川電機が製造するパワーコンディショナー(以下「安川電機製パワコン」という。)に係る被告会社作成名義の見積書と,原告が製造する太陽光発電モジュールに係るウィンアイコ・ジャパン作成名義の価格表 とを併せて送付した(甲12)。 その後,被告会社とアスカとの間で,安川電機製パワコンについての売買契約が成立し,被告Aは,同月16日,Bに対し,改めて作成した安川電機製パワコンに係る見積書及び請求書を送付した(甲13)。 被告会社は,エステルース株式会社を介して安川電機製パワコンを調達し,同年7月19日,アスカに対し,これを引き渡した(甲14ないし1 7)。 ウ合同会社ライジングSの代表者であるC(以下「C」という。)は,平成28年9月頃,沖縄電力株式会社との間で,本件土地上にある太陽光発電設備において発電された電気を同年8月29日から同社に供給することを合意し(甲19),同年9月21日,有限会社ジンリキから,本件土地 を購入した(甲6)。 合同会社ライジングSは,平成30年4月25日,Cから,本件土地を購入した(甲6)。 エ合同会社ライジングSは,本件モジュールに不具合が生じたことから,本件モジュールに付された被告標章を見て,原告がこれを製造したと考え, 平成31年3月15日,ウィンアイコ・ジャパンに対して連絡をした(甲22,26,29,30)。 ウィンアイコ・ジャパン及び原告は,上記連絡を受けて,原告が製造していない本件モジュールに被告標章が付され,安川電機製パワコンとともに本件土地上に設置され,太陽光発電設備と 9,30)。 ウィンアイコ・ジャパン及び原告は,上記連絡を受けて,原告が製造していない本件モジュールに被告標章が付され,安川電機製パワコンとともに本件土地上に設置され,太陽光発電設備として稼働していたことを知っ た(甲8ないし10,23,24,29,30)(2) 前記(1)イないしエのとおり,平成28年7月19日に被告会社がアスカに対して安川電機製パワコンを納入したこと,同年9月頃にCが本件土地上にある太陽光発電設備において発電された電気を沖縄電力株式会社に供給する契約を締結したこと,平成31年3月頃に被告標章が付された本件モジュー ル及び安川電機製パワコンを含む太陽光発電設備が本件土地上に存在したこ とからすると,平成28年7月頃から同年9月頃までの間に被告標章が付された本件モジュール及び安川電機製パワコンを含む太陽光発電設備が本件土地上に設置されたと推認するのが相当である。 しかし,前記(1)イのとおり,被告Aは,アスカの担当者であるBに対し,安川電機製パワコンの見積書と共に,当時ウィンアイコ・ジャパンが販売し ていた原告製造に係る太陽光発電モジュールの価格表を示し,その後,被告会社は,アスカに対し,安川電機製パワコンを販売したと認められるものの,それ以上には,被告らが,その頃,太陽光発電モジュールを調達して,これをアスカに納入したことをうかがわせる証拠はなく,本件全証拠によっても,被告らが本件モジュールを販売したことを認めることはできない。 (3) 原告は,① 太陽光発電モジュールを販売することなく,パワーコンディショナーのみを販売することはあり得ない,② 被告Aは,原告が付与したメールアドレスを用いずに,本来記載されるはずの見積番号の記載のない価格表(甲12)をBに ールを販売することなく,パワーコンディショナーのみを販売することはあり得ない,② 被告Aは,原告が付与したメールアドレスを用いずに,本来記載されるはずの見積番号の記載のない価格表(甲12)をBに送付し,本件モジュールに係る取引を隠蔽しようとした,③ 被告ら以外に,原告各商標に類似する被告標章を付することができた者は いないと主張し,これらの事実から被告会社が原告の製品の模造品である本件モジュールを販売していたことが推認される旨主張する。 しかし,上記①について,原告は太陽光発電モジュールの製造会社であるところ,必ずしも太陽光発電モジュールとパワーコンディショナーとを併せて同一の会社から購入する必要はないと認められること(弁論の全趣旨)か らすると,被告会社がアスカに対して安川電機製パワコンのみを販売したことが不自然であるとはいえない。 また,上記②について,ウィンアイコ・ジャパンの太陽光発電モジュールの見積書には,通常,見積番号が付されていることが認められるが(甲33),被告AがBに対して示した価格表(甲12)は,原告製の太陽光発電 モジュールの種類や品名,品番等を一覧表にした「モジュール価格表」と題 するものであり,具体的な製品,数量等を前提として購入金額の目安を記載した見積書とは性質を異にする文書であるから,上記価格表に見積番号が記載されていなかったことが不自然であるとはいえない。そして,被告Aが,ウィンアイコ・ジャパン名義の価格表を送付する際に,原告から付与されたメールアドレスを使用せず,被告会社の営業のためのメールアドレスを使用 したことも,上記価格表の送付を被告会社名義のパワーコンディショナーの見積書の送付と同時に行ったという事情を考慮すれば,不自然であるとまではいえない。した 社の営業のためのメールアドレスを使用 したことも,上記価格表の送付を被告会社名義のパワーコンディショナーの見積書の送付と同時に行ったという事情を考慮すれば,不自然であるとまではいえない。したがって,それらの事実によって,被告Aが本件モジュールに係る取引を隠蔽しようとしたとの事実を認めることはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。 さらに,上記③について,被告らのみが被告標章のラベルを作成できたことを認めるに足りる証拠はない。 以上のとおり,原告が指摘する上記の各事実を考慮しても,それらによって被告会社が原告の製品の模造品を販売していたことが推認されるとはいえず,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 原告訴訟代理人石部尚弁護士作成に係る電話聴取報告書(甲34)には,同弁護士がBから聴取した内容として,アスカが被告Aを介して安川電機製パワコンのほかに太陽光発電モジュールを購入した旨の記載がある。 しかし,上記電話聴取報告書では,B自身,太陽光発電モジュールの価格表は手元に残っていたものの,見積書や納品書は見当たらないと述べたとさ れている上,納品された太陽光発電モジュールを確認していないと述べたともされている。さらに,B自身が既に被告標章の付された本件モジュールを別途調達した可能性も否定できないというべきである。そうすると,アスカが被告Aを介して太陽光発電モジュールを購入したとの事実を認定するには,上記電話聴取報告書のみでは十分ではなく,Bの証人尋問等によって,より 具体的な事実が明らかにされる必要があるといえる。 したがって,上記電話聴取報告書を直ちに採用することはできず,他に被告らが本件モジュールをアスカに販売したことを認めるに足りる証拠はない 具体的な事実が明らかにされる必要があるといえる。したがって,上記電話聴取報告書を直ちに採用することはできず,他に被告らが本件モジュールをアスカに販売したことを認めるに足りる証拠はない。以上のとおり,被告らが本件モジュールを譲渡したとは認められず,被告らによる被告標章の使用の事実は認められないから,被告らが原告各商標権を侵害したとは認められない。 2 結論 よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 矢野紀夫 (別紙1) 商標権目録省略(別紙2) 被告標章目録省略
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