令和3(行コ)79 障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消等、障害基礎年金支給停止処分取消、障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月19日 大阪高等裁判所 破棄自判 大阪地方裁判所 平成29(行ウ)230
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判決文本文48,136 文字)

令和3年(行コ)第79号障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消等、障害基礎年金支給停止処分取消、障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消請求控訴事件令和6年4月19日大阪高等裁判所第14民事部判決 主文 1 原判決を取り消す。 2 厚生労働大臣が令和元年5月10日付けで控訴人X1、控訴人X2、控訴人X3、控訴人X4、控訴人X6、控訴人X7及び控訴人X8に対してした障害基礎年金の支給を停止する旨の各処分をいずれも取り消す。 3 厚生労働大臣が令和元年5月10日付けで控訴人X9に対してした障害基礎年金の支給停止を解除しない旨の処分を取り消す。 4 厚生労働大臣は、控訴人X9に対し、平成28年11月から障害基礎年金の支給停止を解除する旨の処分をせよ。 5 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 略語・略称 (1) 特記しない限り原判決の例によるほか、次の略称を加える。 1審原告X5…大阪地方裁判所令和元年(行ウ)第96号事件原告X5(原審で確定)控訴人ら7名…控訴人X1、控訴人X2、控訴人X3、控訴人X4、控訴人X6、控訴人X7及び控訴人X8 基本的事項…障害認定基準の「第2 障害認定に当たっての基本的事項」 の「1 障害の程度」の1~3級に関する記載(原判決6頁20行目~7頁15行目)代謝疾患認定基準…障害認定基準の「第3 障害認定に当たっての基準」の「第1章障害等級認定基準」の「第15節代謝疾患による障害」の「1認定基準」(同7頁16行目~8頁2行目) 代謝疾患認定要領…障害認定基準の「第3 障害認定に当 に当たっての基準」の「第1章障害等級認定基準」の「第15節代謝疾患による障害」の「1認定基準」(同7頁16行目~8頁2行目) 代謝疾患認定要領…障害認定基準の「第3 障害認定に当たっての基準」の「第1章障害等級認定基準」の「第15節代謝疾患による障害」の「2認定要領」(同8頁3行目~同10頁12行目)一般状態区分表…代謝疾患認定要領(4)の一般状態区分表(同8頁~9頁の表) 3級指標…代謝疾患認定要領(5)アイウのうち、一般状態区分表の該当性を除く部分の指標(同9頁9行目~17行目(同頁の表部分を除く行数))平成28年改訂…代謝障害認定要領の平成28年の改訂(代謝障害認定要領に3級指標を含ませるなどした改訂)(2) 原判決の引用部分中、次の略称は次のとおり読み替える。 原告ら8名…控訴人ら7名原告X5…1審原告X5 2 経緯(1) 控訴人ら及び1審原告X5は、いずれも1型糖尿病に罹患し、障害等級(国民年金法(法)30条2項による委任を受けた国民年金法施行令(令)別表 に定める障害等級)2級に該当する程度の障害の状態にあるとして、障害基礎年金の受給を受けていた。しかし、平成28年に、控訴人ら7名及び1審原告X5については、それぞれ支給停止処分(前件各支給停止処分)がされ、控訴人X9については、平成21年にされていた支給停止処分につき、支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分(前件不解除処分、前件各支 給停止処分と併せて前件各処分)がされた。 (2) 平成29年、控訴人ら7名及び1審原告X5は前件各支給停止処分の取消しを求め(大阪地方裁判所同年(行ウ)第220号、第223~229号事件)、控訴人X9は前件不解除処分の取消し及び行政事 (2) 平成29年、控訴人ら7名及び1審原告X5は前件各支給停止処分の取消しを求め(大阪地方裁判所同年(行ウ)第220号、第223~229号事件)、控訴人X9は前件不解除処分の取消し及び行政事件訴訟法(行訴法)3条6項2号に基づき支給停止を解除する処分をすべき旨を命ずること(同号所定の義務付け)を求めて(1審甲事件)、訴訟を提起した。大阪地方裁判所は、 平成31年、控訴人ら7名及び1審原告X5の請求について、前件各支給停止処分は行政手続法(行手法)14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法であるとして、前件各支給停止処分を取り消すとともに、1審甲事件について、行訴法37条の3第6項前段に基づき、前件不解除処分の取消しを求める訴えについてのみ、前件不解除処分は行手法8条1項本文の定め る理由提示の要件を欠き、違法であるとして、前件不解除処分を取り消す旨の判決をし(前件判決)、前件判決は確定した。 (3) 厚生労働大臣は、令和元年、控訴人ら7名及び1審原告X5に対し、それぞれ支給停止処分(本件各支給停止処分)をするとともに、控訴人X9に対し、支給停止を解除しない旨の処分(本件不解除処分、本件各支給停止処分と併 せて本件各処分)をした。 (4) 控訴人ら7名及び1審原告X5は、同年、本件各支給停止処分は、前件判決の反復禁止効に反するほか、支給停止事由を欠き、行手法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠くなどの理由により違法であると主張して、その取消しを求めて、1審乙事件の訴えを提起した。また、控訴人X9も、同年、 甲事件の義務付けの訴えに、本件不解除処分は、前件判決の反復禁止効に反するほか、支給停止解除事由があり、行手法8条1項本文の定める理由提示の要件を欠くなどの理由により違法であると主張して、行訴法 甲事件の義務付けの訴えに、本件不解除処分は、前件判決の反復禁止効に反するほか、支給停止解除事由があり、行手法8条1項本文の定める理由提示の要件を欠くなどの理由により違法であると主張して、行訴法19条に基づき、本件不解除処分の取消しを求める訴えを追加的に併合提起した(1審丙事件)。 (5) 原審は、令和3年、本件各処分につき、前件判決の反復禁止効への抵触、行 手法の定める理由提示の要件を欠く、権限の濫用といった違法はなく、控訴人ら及び1審原告X5が主張する平等原則違反、授権的行政行為の撤回として許されない旨の主張は前提を欠くと判断した上で、控訴人ら7名には支給停止事由があり、控訴人X9には支給停止解除事由がないが、1審原告X5には支給停止事由がないと判断し、1審原告X5に係る本件各支給停止処分 を取り消し、控訴人ら7名に係る本件各支給停止処分及び控訴人X9に対する本件不解除処分の取消を求める請求をいずれも棄却し、控訴人X9の義務付けの訴えを本件不解除が適法であることを理由として却下した。 (6) 控訴人らは、原判決を不服として各控訴した。 被控訴人は、1審原告X5の請求を認容した原判決に対し控訴しなかった ので、原判決は、1審原告X5の訴えにつき確定している。 (7) 控訴人らは、当審において、控訴人ら7名につき支給停止事由があるとはいえないこと、控訴人X9につき支給停止解除事由があることにつき、主に主張を補充した。 3 関係法令等の定め・前提事実 関係法令等の定め・前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに証拠(書証のうち枝番のあるものは、特に断らない限り、全枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「1 関 な事実並びに証拠(書証のうち枝番のあるものは、特に断らない限り、全枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「1 関係法令等の定め」(原判決3頁22行目~11頁6行目)及び「2 前提事実」(原判決同頁9行目~16頁15行目) に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決6頁13行目の「残すもの」を」の次に「、14号において、「傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣の定めるもの」を、それぞれ」を、同7頁14行目の「も のとする。」の次に「また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限 を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。」をそれぞれ加える。 4 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、(1)本件各処分が前件判決の反復禁止効(行訴法33条1項)に抵触するか、(2)本件各処分が権限の濫用であって許されないものであるとい えるか、(3)控訴人らについて支給停止事由(控訴人ら7名)又は支給停止解除事由(控訴人X9)があるか、(4)本件各処分が平等原則に違反するか、(5)本件各処分が理由提示義務に違反するか、(6)本件各支給停止処分が授益的行政行為の撤回として許されないものであるといえるか、である。 上記各争点に関する当事者の主張の要旨ないし骨子は、原判決の「事実及び 理由」の「第2 事案の概要」の「4 争点に関する当事者の主張の要旨」(原判決16頁26行目~37頁15行目、なお別紙原告らの障害の状態(同107頁~123頁)を含む。)の記載を引用するほ 理由」の「第2 事案の概要」の「4 争点に関する当事者の主張の要旨」(原判決16頁26行目~37頁15行目、なお別紙原告らの障害の状態(同107頁~123頁)を含む。)の記載を引用するほか、次の争点(3)に関する当審における補充主張の骨子のとおりである。 (1) 控訴人らの当審における補充主張の骨子 ア基本的事項を障害等級の判断に用いることは不合理である。基本的事項の記載と例示は、昭和41年以来ほぼ変わっておらず、生活水準、社会生活環境等の変化や、障害者権利条約を基礎とする障害者に対する障害観に対応していない。 イ代謝障害認定基準及び代謝障害認定要領は、次の点からみて、違法かつ 不合理な審査基準である。 (ア) 代謝障害認定基準において、1年以上の療養や長期にわたる安静の必要を等級認定の要件としていることは、令に違反する。また、代謝疾患の特性に照らして不合理である。 (イ) 代謝障害認定要領は、平成28年改訂により3級指標を含むようにな り、機能障害の程度が判断の要素とされたのに、代謝障害認定基準は、 変更が加えられなかった結果、疾患の病状のみを判断の要素とするままになっており、両者の一体性が失われた。 (ウ) 代謝障害認定要領は、代謝障害認定基準が定める療養や長期にわたる安静の必要を具体化する定めや、障害の程度を合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況 等を十分考慮し、総合的に認定するものとしていることを反映していない。 (エ) 3級指標は、重篤な障害の状態にあるかを判断する基準であり、他の障害による認定との均衡を失し、公平性が確保されていない。3級指標の医学的知見は平成28年改訂のための専門家会合における議論に基づく 標は、重篤な障害の状態にあるかを判断する基準であり、他の障害による認定との均衡を失し、公平性が確保されていない。3級指標の医学的知見は平成28年改訂のための専門家会合における議論に基づく ものであるが、インスリンの絶対的欠乏ではなく枯渇を前提とした点、重症低血糖を無自覚性低血糖のうち意識障害により自己回復ができないものに限定した点等は、同会合における厚生労働省担当者の誘導によるものであるし、同担当者は、傷病が治らないものについての3級の要件が「労働の制限」であるのに、糖尿病患者の3級が「労働の著しい制限」 を受ける程度であるとの誤解をさせる説明をしており、同会合に参加した専門家の間で上記担当者が誘導をした点などが3級として適当なのかにつき議論がされていない。 また、重症低血糖のうち意識障害により自己回復ができないものを指標としている点は、意識障害により自己回復できないという概念が明確 なものとはいえないのに加え、高血糖・低血糖のときの具体的な症状は単純明快に分類できるものではなく、自らブドウ糖を補食できない状態が意識障害によるものなのかは自身も家族も判別できないなど、合理的とはいえない。また、意識障害により自己回復ができない重症低血糖に該当するとはされない低血糖を判断要素としないことになってしまい、 総合的な認定をすることができない。 (オ) 一般状態区分表は、1型糖尿病患者の一般状態を評価するには不適当である。1型糖尿病の病態は、血糖コントロールが困難で、インスリン療法下であっても、血糖値が1日のうちにも大きく変動して、高血糖・低血糖を繰り返すものである。高血糖・低血糖状態のときは介助が必要と評価され、そのような状態を毎日のように経験しているが、血糖値が正 常閾値内であるときは通常の うちにも大きく変動して、高血糖・低血糖を繰り返すものである。高血糖・低血糖状態のときは介助が必要と評価され、そのような状態を毎日のように経験しているが、血糖値が正 常閾値内であるときは通常の活動ができるというものであり、一般状態区分表では、このような血糖コントロールの困難さを評価することができず、適切ではない。 ウ控訴人らが、令別表の2級15号の「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」の状態にある かどうかを判断するに当たって考慮すべき重要な諸要素は、上記のような1型糖尿病の病態を踏まえると、①従前の認定時との状況等の変化の有無、②内因性インスリンの枯渇ないし欠乏の程度、③インスリン補給の頻度、④低血糖・高血糖に伴う臨床症状の有無・程度、臨床症状からの回復のため要する時間、臨床症状の頻度・予測困難性、⑤低血糖への無自覚性、過 去の重症低血糖の経験、⑥血糖コントロールの状態、⑦援助・介助の必要性(障害支援区分シミュレーションによる判定)と整理することができる。 これらの諸要素を踏まえれば、控訴人らの障害は、いずれも令別表の2級に該当する状態にあったというべきである。 (2) 被控訴人の当審における補充主張の骨子 ア基本的事項につき、控訴人らは生活水準、社会生活環境等の変化等を理由に不合理であると主張するが、生活水準、社会生活環境の変化は千差万別であり、一般化できるようなものではないから、これにより基本的事項が不合理となるものではない。 イ代謝障害認定基準及び代謝障害認定要領は、法の趣旨に沿った合理的な ものである。 (ア) 身体内部の器官に何らかの障害がある内部障害について、日常生活に与える制限の程度等を認定するに当たっては、各器 び代謝障害認定要領は、法の趣旨に沿った合理的な ものである。 (ア) 身体内部の器官に何らかの障害がある内部障害について、日常生活に与える制限の程度等を認定するに当たっては、各器官の機能障害と、それに伴う病状の両面から総合的に判断することを要する。各器官の機能障害の重症度については、主に各種検査成績の確認から判断し、機能障害に伴う病状については、機能障害から生じる症状のみならず、機能障害 に対する一定の治療後も長期にわたって残存している症状や、継続治療の下で経常的に存在している症状、合併症等を確認し、これらを総合的に勘案して判断することになる。そして、内部障害の各疾患の特性・治療療養の方法に応じ、機能障害と病状とを明確に切り分けることが困難であることを踏まえて、専門的技術的な観点から、個々の疾病ごとの認 定基準及び認定要領が設けられており、代謝障害認定基準・代謝障害認定要領も同様である。 代謝障害認定基準・代謝障害認定要領は、糖尿病については、1型・2型とも対象疾患であることを確認した上で、「必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもの」が少なくとも3級と 認定すべき障害の状態であることを示し、内因性のインスリン分泌能、継続して必要なインスリン治療が行われていること、血糖コントロールの困難度合いなどについて、診断書の記載により確認し、症状、検査成績及び具体的な日常生活等を総合考慮することによって、日常生活に与える制限の程度等を総合的に判断して障害の状態を判断するという、当 てはめの指標を示すものである。このような代謝障害認定基準・代謝障害認定要領は、令及び厚年法施行令が定める障害の状態の内容を具体化した統一的な基準として、合理的である。 (イ) 代謝障害認定基準に てはめの指標を示すものである。このような代謝障害認定基準・代謝障害認定要領は、令及び厚年法施行令が定める障害の状態の内容を具体化した統一的な基準として、合理的である。 (イ) 代謝障害認定基準において、1年以上の療養や長期にわたる安静の必要を等級認定の要件としているのは、代謝障害認定基準が、糖尿病以外の 代謝疾患全般も対象としていることから、総論的に定めたものにすぎず、 1型糖尿病が身体の機能の障害であることを否定するものではなく、代謝疾患認定要領に基づいて3級に相当する場合に上記要件への該当が否定されることもない。 (ウ) 3級指標のうち、血清Cペプチド値はインスリン分泌能を客観的に評価するもので、血糖コントロールの困難さの指標となり、意識障害により 自己回復ができない重症低血糖及び糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群の所見は、インスリン治療下で血糖コントロールがどの程度できているかを客観的に評価するための指標である。重症低血糖のうち意識障害により自己回復ができないものを指標としているのは、1型糖尿病患者が血糖自己測定を継続して適切に自己管理を行い、自身の 低血糖の症状を熟知していて低血糖の前兆があるとブドウ糖を摂取するなどして重症低血糖を回避することができるとされており(平野医師意見書(乙共20))、予測不能なものを含めても患者自身で対処できない重症の低血糖症状が頻回に起こることは極めて少なく、他者の介入が必要な程度の症状は、1型糖尿病患者が低血糖に気付かないまま血糖値 が下がり、いきなり意識障害を起こして対処行動を取ることができないような場合であるからである。 このように、3級指標は1型糖尿病の病態像及び1型糖尿病患者の実態を踏まえた合理的なものである。 (エ) 一般状態区分 障害を起こして対処行動を取ることができないような場合であるからである。 このように、3級指標は1型糖尿病の病態像及び1型糖尿病患者の実態を踏まえた合理的なものである。 (エ) 一般状態区分表は、平常時における日常生活の制限度合いを確認するた めに用いるものである。一時的な症状の増悪は、治療で改善することが見込まれるものであって、障害等級の認定は、そのような増悪した症状をもってするのは適切でなく、経常的に存在している症状の有無と程度、それに伴う日常生活の制限度合いに応じて行われるべきであり、一般状態区分表のア~オはその程度を示すものとして合理的である。 1型糖尿病の患者については、インスリン療法下にあっても、血糖値 の日内変動や日々の変動が大きく、そのコントロールが困難であるという特性を有する疾患であることからすれば、平常時の状態として、1日のうちに高血糖や低血糖の所見があり、それに対する自己対処が適時行われていることを前提とした上で、上記高血糖や低血糖の所見の有無と程度、それに伴う日常生活の制限度合いを、一般状態区分表により評価 することができる。低血糖発作や急性合併症の症状は、一時的な症状の増悪であるので、これらがあるというだけで障害等級の認定をするのは適切でない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は、本件各処分が前件判決の拘束力(反復禁止効)を理由として違 法になることはない(争点(1))が、控訴人ら7名には支給停止事由があるとはいえず、控訴人X9には支給停止解除事由があるから、その余の控訴人らの主張につき判断するまでもなく、本件各処分はいずれも違法であって、その取消を求める請求は理由があり、厚生労働大臣は控訴人X9につき支給停止を解除する旨の処分をしなければならないことが明ら 控訴人らの主張につき判断するまでもなく、本件各処分はいずれも違法であって、その取消を求める請求は理由があり、厚生労働大臣は控訴人X9につき支給停止を解除する旨の処分をしなければならないことが明らかであるから、義務付けの訴え も適法であり理由があるものと判断する。 その理由は、次のとおりである。 1 争点(1)についての認定説示は、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「1」(原判決37頁19行目~40頁15行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 1型糖尿病に関する知見等この点についての認定事実は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「4」の「(1) 1型糖尿病に関する知見等」(原判決43頁5行目~48頁1行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決45頁1行目末尾に「いったん破壊された膵β細胞は再生せず、イン スリンの生成がなくなってしまうため、1型糖尿病患者は、インスリン注射によるインスリンの補充(インスリン療法)が生涯必須となる。現時点で根治は難しいとされている。(甲共38、39、乙共20)」を加える。 (2) 原判決46頁8行目末尾に改行して次のとおり加える。 「 1型糖尿病患者は、日々、食事や運動による血糖変動を予測し、インスリ ンを注入することになるが、食事の量・内容や運動の強度、体調等によって血糖変動のパターンや度合いは区々であり、それに合わせてインスリンを注入するタイミングや量を調整する必要がある。皮下の糖濃度を測定できる持続血糖モニター(CGM)を併用するインスリンポンプ療法は、基礎インスリンの注入量を時間ごとに変更して24時間持続的に注入することにより、 頻回注射療法と 要がある。皮下の糖濃度を測定できる持続血糖モニター(CGM)を併用するインスリンポンプ療法は、基礎インスリンの注入量を時間ごとに変更して24時間持続的に注入することにより、 頻回注射療法と比べて血糖の安定化につながる可能性のある治療法であるが、これによっても血糖コントロールが困難な場合もある。1型糖尿病では、内因性インスリン分泌が完全に欠乏しているため、インスリン療法によって良好な血糖コントロールを維持することが最大の課題となる。これは、注射によって体外から補充されたインスリン量が、自己の膵臓から分泌されるイン スリンとは異なり、必ずしも血糖に応じた必要量に合致しない(過剰であったり、不足したりする)からである。インスリン療法下にある1型糖尿病患者は、食後に血糖が極めて高く上昇し、夜間に低血糖が起こりやすいことから、毎日定期的に血糖自己測定(SMBG)を行うことによって患者ごとの血糖日内変動の特徴を把握し、インスリン投与量を適宜調整することで血糖 をコントロールするとともに未然に低血糖の発生を予防する必要がある。 インスリン療法を行うと、体外から注入するインスリンの過剰によって容易に低血糖状態になり得る。人は、血糖値が60mg/dL 程度のレベルに低下すると、動悸や発汗、振戦、蒼白、頻脈、空腹感などの自律神経症状が出現する。自律神経症状が出現することによって、人は低血糖を自覚できるので、 自ら糖分を摂取することによって低血糖から回復する契機を得られることに なる。しかし、低血糖拮抗応答(健常人が有する低血糖に対応して血糖を上昇させる機序)の作用ないし糖分補給がないまま血糖値が54mg/dL 未満の重症低血糖に至ると、頭痛、かすみ目、複視、倦怠感、眠気、認知能力の低下等の中枢神経症状が出現し、そ 血糖に対応して血糖を上昇させる機序)の作用ないし糖分補給がないまま血糖値が54mg/dL 未満の重症低血糖に至ると、頭痛、かすみ目、複視、倦怠感、眠気、認知能力の低下等の中枢神経症状が出現し、その症状によっては、自力で糖分補給等を行って低血糖から回復することが困難な状態となる。自力回復が困難になる前に、 患者が低血糖を自覚でき、かつ速やかな糖質補給など適切な対処を行えれば、重症低血糖を防ぐことはできるが、糖尿病の罹患期間が長期化すると、上記の自律神経症状が生じる血糖閾値や症状が変化し、患者が低血糖症状を自覚できないまま、さらに血糖が低下する事態を招くことがあり、これを無自覚性低血糖という。 重症低血糖は臨床的重要性が高く、さらに臨床上回避すべき最も危険度の高い低血糖は、回復に第三者の助けを必要とする重症低血糖であるとされている。重症低血糖の状態が続くと、血糖値が30mg/dL 前後で昏睡に至り、心血管疾患が誘発され、また、認知機能の低下や神経症状が後遺する場合も経験される。 (甲共59の2、3、乙共20)」(3) 原判決48頁1行目末尾に改行して次のとおり加える。 「カなお、近年血糖コントロールを反映する新たな指標として、TIR、TAR、TBRの活用が提唱されている。これは、持続血糖モニター(CGM)の普及に伴い血糖変動が可視化されて、CGM指標を取り入れる試み が進んだことによるもので、具体的には、70~180mg/dLを目標範囲内として、この範囲にある時間をTIR(timeinrange)、TIRより高血糖域にある時間をTAR(timeaboverange)、低血糖域にある時間をTBR(timebelowrange)と定義し、それぞれの時間を時間/日もしくはその割合(%)で表現 Rより高血糖域にある時間をTAR(timeaboverange)、低血糖域にある時間をTBR(timebelowrange)と定義し、それぞれの時間を時間/日もしくはその割合(%)で表現し用いることが推奨され、TIRを70%以上、TBR(70mg/dL未満) を4%未満、TAR(180mg/dL超)を25%未満とすることが目標値とし て示されている。なお、TARは181~250mg/dLのレベル1と250mg/dL超のレベル2、TBRは54~69mg/dLのレベル1と54mg/dL未満のレベル2の、それぞれ2段階に分類されている。(甲共100)」 3 支給停止処分の要件この点についての認定説示は、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判 所の判断」の「4」の「(2) 支給停止処分の要件」(原判決48頁3行目~51頁25行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 糖尿病による障害が2級に該当する程度の障害の状態に該当するか否かの判断方法(1) 厚生労働大臣による令別表・厚年法施行令別表第一所定の障害等級の認定 は、障害認定基準に従って行われているところ、障害認定基準は、行政規則であり、法的拘束力はないものの、各種障害に関する医学的知見を総合して定められたものであり、その内容は一定の合理性を有するものであると認めることができる。また、障害年金給付の公平を確保するためには、障害の程度の認定が医学的知見を踏まえて一定の合理的基準に従って行われる必要が あり、障害認定基準は実際に統一的な基準として用いられている。そうすると、障害基礎年金の支給要件である障害の状態の具体的な認定は、特段の事情がない限り、障害認定基準に沿って行うのが相当である。 (2) 障害認定基準には、障害一般におけ として用いられている。そうすると、障害基礎年金の支給要件である障害の状態の具体的な認定は、特段の事情がない限り、障害認定基準に沿って行うのが相当である。 (2) 障害認定基準には、障害一般における令別表・厚年法施行令別表第一所定の障害等級の各級の障害の状態の基本として、基本的事項の記載があり、これ に加えて各種障害ごとに認定基準を設けていて、基本的事項の内容は原判決を引用した前記関係法令等の定めのとおりである。そして、具体的な障害ごとの認定基準のうち、控訴人らが罹患する1型糖尿病に関する代謝障害認定基準と代謝障害認定要領の内容は、原判決を引用した前記関係法令等の定めのとおりであり、代謝障害認定基準と代謝障害認定要領は、障害認定基準の 「第15節代謝疾患による障害」を構成する項目として定められているから、 形式的にみて一体のものである。このような障害認定基準の定めからすれば、基本的事項は、障害の程度を認定する場合における「障害の状態の基本」を示したものにすぎず、糖尿病を含む代謝障害について具体的な障害の程度を認定する場合においては、代謝障害認定基準と代謝障害認定要領を参照すべきものと考えられる。そして、代謝障害認定要領は、3級指標及び一般状態 区分表を含むものであり、「糖尿病の基準を定める」との文言が含まれているから、代謝障害認定基準を糖尿病に関してより具体化・客観化したものと捉えられる。基本的事項には、2級について「労働により収入を得ることができない程度のもの」との文言があるが、これは「日常生活が著しい制限を受ける」程度を示すための指標の一つとして労働の状況を参照しているもの であるし、代謝障害認定基準や代謝障害認定要領においては、2級に関し労働の制限への言及がないことに照らせば、上記文言は字義に ける」程度を示すための指標の一つとして労働の状況を参照しているもの であるし、代謝障害認定基準や代謝障害認定要領においては、2級に関し労働の制限への言及がないことに照らせば、上記文言は字義に基づいて解釈すべきものではなく、日常生活が著しい制限を受けるか否かの認定において、労働の状況を参照するときの指針として考慮すれば足り、その限度で合理性を有するというべきである。 また、代謝障害認定基準においては、令別表・厚年法施行令別表第一所定の各級の文言のうち、「身体の機能の障害」が前各号と同等以上と認められる状態である旨の部分が除かれている。この点は、代謝障害が身体の機能の障害ではないとの趣旨に基づくものではなく、代謝障害の程度は呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患による内部障害と同様に、各器官の機能障害と、そ れに伴う病状の両面から総合的に判断されるものであり、等級該当性の判断に当たっては、各器官の障害の重症度については主に各種検査成績の確認から判断され、病状は、機能障害から生じる症状その他のこれに伴う諸症状を総合的に判断する趣旨のものと理解することができ、基準として合理性を有するといえる。 代謝障害認定要領は、「糖尿病による障害の程度は、合併症の有無及びそ の程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。」としつつ、「糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、次のいずれかに該当するものを3級と認定する。」とも定め、次のいずれかとして3級指標と一般状態区分表該当性を挙げるものであり、両者の関係が 必ずしも明らかでない。しかし、代謝障害認定基準についての上記理解を踏まえれば、3級指標は、前者 。」とも定め、次のいずれかとして3級指標と一般状態区分表該当性を挙げるものであり、両者の関係が 必ずしも明らかでない。しかし、代謝障害認定基準についての上記理解を踏まえれば、3級指標は、前者の部分の代謝のコントロール状態という機能障害の程度を判断するための具体的な基準であり、一般状態区分表該当性は、主に具体的な日常生活状況等という病状の程度を判断するための基準であると理解することができ、やはり基準として合理性を有するといえる。 なお、被控訴人は、3級指標の一つにいう「意識障害により自己回復ができない重症低血糖」とは、意識障害により自力ではブドウ糖摂取などで症状改善を図ることができずに他者からのブドウ糖やグルカゴンの注射といった介入を必要とする程度の低血糖状態を指し(令和3年11月16日付け答弁書〈27頁〉)、上記意識障害は、低血糖が原因で意識が清明でなくなった 状態を指すところ、必ずしも意識消失や昏睡に限定されない(令和4年6月30日付け被控訴人第1準備書面〈6頁〉)旨主張している。また、被控訴人は、同種別件訴訟(大阪地方裁判所令和3年(行ウ)第46号事件)において、「1型糖尿病患者は、基本的には自力で低血糖状態の改善を図り、回復に至ることからすれば、低血糖状態から「自己回復できない」状態にある 場合のほとんどにおいて、意識が清明でない(意識障害を来している)状態にあると判断されるものである」旨の見解を示している(甲共97、98)。 (3) 控訴人らは、3級指標の内容について、これを定めた平成28年改訂に当たり開催された専門家会合における議論について批判し、その内容が合理性を欠く旨主張するが、平成28年改訂は、従前の基準では、「インスリンを使 用してもなお血糖のコントロールの不良なものは、3級とす 開催された専門家会合における議論について批判し、その内容が合理性を欠く旨主張するが、平成28年改訂は、従前の基準では、「インスリンを使 用してもなお血糖のコントロールの不良なものは、3級とする」とし、イン スリン治療時におけるHbA1c及び空腹時血糖値が高血糖の所見であることを参考とすることとされていたものを、低血糖の所見も用いるように具体的な基準を定めたものであって、上記の1型糖尿病に関する知見等に照らし合理的である。また、基準値については、複数の専門家による議論を踏まえたものであって、合理性を欠くものとは認められない。したがって、控訴人らの 上記主張を採用することはできない。 (4) 一般状態区分表は、障害認定基準において、第10~16、18節(呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、代謝疾患、悪性新生物、その他の疾患)において同内容のものが用いられており、概ね1級は一般状態区分表のオに該当するもの、2級は一般状態区分表のエ又はウに該当する もの、3級は一般状態区分表のウ又はイに該当するもの、とされている。 控訴人らは、基本的事項については不合理である、一般状態区分表についても1型糖尿病患者の一般状態を評価するには不適当である旨主張するが、これらは、基準としてみると抽象的なものにすぎない上、いずれも他の疾患と共通の内容となっているから、その当てはめに当たっては、上記内容の趣 旨を踏まえ、1型糖尿病の特性を勘案して柔軟に解釈するのが相当であり、合理性を欠くものとまではいえない。 (5) 代謝障害認定要領は、2級該当性については具体的な基準を示さず、「症状、検査成績及び具体的な日常生活等によっては、さらに上位等級に認定する。」とのみ定める。そうすると、上位等級該当性については、症 代謝障害認定要領は、2級該当性については具体的な基準を示さず、「症状、検査成績及び具体的な日常生活等によっては、さらに上位等級に認定する。」とのみ定める。そうすると、上位等級該当性については、症状、検査成績と いう機能障害の程度、具体的な日常生活状況という病状の程度を総合的に考慮して、令別表の2級15号の「日常生活が著しい制限を受ける」か否かを判断すべきことになる。この場合において、機能障害の程度と病状の程度とは、一定の相関性があると考えられるとはいえ、必ずしも両者とも3級の程度を上回る必要はなく、3級該当性を認めた上で、症状、検査成績及び具体 的な日常生活等を総合的に考慮した上で「日常生活が著しい制限を受ける」 か否かを判断することとなる。 (6) 被控訴人は、一般状態区分表は平常時における日常生活の制限度合いを確認するために用いるものであり、1型糖尿病の患者については、その病態に照らし、平常時の状態として、1日のうちに高血糖や低血糖の所見があり、それに対する自己対処が適時行われていることを前提とした上で、上記高血糖 や低血糖の所見の有無と程度、それに伴う日常生活の制限度合いを、一般状態区分表により評価すべきである旨主張する。 しかし、上記に認定した1型糖尿病に関する知見等を踏まえれば、重症低血糖は、適切な対処ができなければ昏睡に至るなど、その場の状況によっては生命にかかわる危険のある症状であるため、1型糖尿病患者にとってその 予防は極めて重要であり、これを回避するため血糖値を継続的に計測するなどして対応する必要がある。そして、特に1日のうちにも血糖値が大きく変動し、高血糖・低血糖を繰り返すような場合には、ほとんど常時上記の対応をする必要があることになって、第三者の介助が必要となることもあり て対応する必要がある。そして、特に1日のうちにも血糖値が大きく変動し、高血糖・低血糖を繰り返すような場合には、ほとんど常時上記の対応をする必要があることになって、第三者の介助が必要となることもあり得るから、そのこと自体が日常生活を制限するものとなる。したがって、平常時 の状態としては、自己対処等が適時行われたことによる血糖値の結果のみならず、そのような自己対処等の必要も含めて、日常生活の制限度合いを評価すべきである。 (7) そうすると、1型糖尿病患者について2級該当性を判断するにあたっては、1型糖尿病は膵β細胞が何らかの理由により破壊されインスリン分泌が欠乏・ 枯渇して発症する糖尿病であり、いったん破壊された膵β細胞は再生せず、内因性インスリン分泌が完全に欠乏して治らないものであること、そのため、1型糖尿病患者はインスリン療法が生涯にわたり生命を維持するため必須となるが、血糖コントロールに努めてもなお、1日のうちに血糖値が大きく変動し、高血糖・低血糖を繰り返し、安定値の時間が少ない場合には、ほとん ど常時、血糖値を計測し、血糖値に応じた補食やインスリン投与などの自己 対処を要する上、程度によっては第三者の介助が必要となることもあり得ること、したがって、平常時の状態としては、自己対処等が適時行われたことによる血糖値の結果のみならず、血糖コントロールの負担を含めて、日常生活の制限度合いを評価すべきであること、昏睡などにまで至らなくても、高血糖・低血糖の症状が出ると、回復のために一定時間を要するなど日常生活 が大きく損なわれること、無自覚に高血糖・低血糖となることも少なくないため、常に不安を抱え、食事、行動、仕事などに関して慎重な配慮を要する生活を強いられることなど、1型糖尿病の特性、血糖コントロールの 大きく損なわれること、無自覚に高血糖・低血糖となることも少なくないため、常に不安を抱え、食事、行動、仕事などに関して慎重な配慮を要する生活を強いられることなど、1型糖尿病の特性、血糖コントロールの状態、症状、労働の状況を含む具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的な認定の下、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加 えることを必要とする程度か否かを判断すべきである。 5 各控訴人についての検討以下の検討は、基準時におけるものであるが、基準時の前後において各控訴人の症状に大きな変化はないと認められること(弁論の全趣旨)を前提に、基準時以後の状況も含めて認定している。 (1) 控訴人X1についてア 3級該当性(乙A1)控訴人X1は、平成▲年生まれの男性で、平成16年に1型糖尿病を発症した(甲A6)。証拠(乙A1)によれば、基準時(平成28年7月13日)における控訴人X1の障害の状態は、インスリン療法により生命を 維持している状態であるが、血糖変動が著しいため低血糖発作が多く、自己管理が不能であること、インスリン分泌は枯渇しており、随時の血清Cペプチド値は0.03ng/mL であること、一般状態区分表のイ、ウ、エに該当し、血糖値で活動力が左右され、低血糖発作が起こるとオに該当する状態になることが認められるから、基準時において少なくとも3級に該当して いる。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲A7、11~13、乙A1、証人W)(ア) インスリン療法の状況通常、毎食前と就寝前の1日4回、血糖値を測定した上で、インスリンを投与する。 血糖値は、指に専用の穿刺器具の針により採血し、血液をチップに吸引させて測定する(以下、この血糖値測定方法を 通常、毎食前と就寝前の1日4回、血糖値を測定した上で、インスリンを投与する。 血糖値は、指に専用の穿刺器具の針により採血し、血液をチップに吸引させて測定する(以下、この血糖値測定方法を「採血式」という。)。 インスリンの投与は注射を用い、インスリン製剤が入ったカートリッジを注射器に装着し、アルコール消毒をし、測定した血糖値と、その後の食事の内容から米飯、肉、野菜等の種類ごとのグラム数に対応した単位 数を計算してインスリン量を注射器のダイヤルで調整して、腹部などに注射する。食後に血糖値が下がっていない感覚があるときは、更に血糖値を測定し、必要であればインスリンを注射する(このように注射を打つことを「追い打ち」と呼んでいる。)。追い打ちをする頻度は週2~3回程度である。控訴人X1には、広汎性発達障害があるため、上記の インスリン量の計算は大きな負担となっているほか、注射を忘れてしまうこともあるため、家族による確認が必要となっている。 血糖値が300mg/dL 以上の高血糖になりやすく、インスリンを投与しても血糖値が下がらないことがあり、そのような場合は追加でインスリンを注射することもある。また、通常の1日4回のほか、体調が悪いと きにも血糖値を測定し、高血糖であればインスリンを注射する。 (イ) 血糖値の変動及び症状意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年2、3回あるとの診断がされている(乙A1)が、控訴人X1は学習障害等の診断を受けており、自己回復できない重症低血糖がどのような状態のことを指すの か理解できていない可能性があり、また、言語的コミュニケーションが 難しい広汎性発達障害であることを踏まえると、主治医の問診に的確に対応できていたかは疑問であって、上記診断において か理解できていない可能性があり、また、言語的コミュニケーションが 難しい広汎性発達障害であることを踏まえると、主治医の問診に的確に対応できていたかは疑問であって、上記診断において、月に3~4回程度低血糖により動けなくなり、週に3回程度、家族から補食の援助を受けていたとの実態が反映されず、意識消失・昏睡といった重篤な意識障害によるものに限った回数が記載された可能性がある。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 上記アのとおり、血糖変動が著しいため低血糖発作が多く、自己管理は不能である。血糖値が300~400mg/dL といった高血糖となることもしばしばある。平成30年11月1日から同月30日までの間にセンサー型血糖測定器をつけて測定したデータ(甲A7)では(以下、この血糖 値測定方法を「センサー式」という。)、記録が得られた19日の間に、70mg/dL 未満の低血糖に17回なり、そのうち6回は54mg/dL 未満の重症低血糖になっている。また、ほぼ毎日250mg/dL を超える高血糖になり、重症低血糖となった日に高血糖にもなっていることが多い。測定総時間中180mg/dL を超える高血糖であった時間は53.6%、うち 250mg/dL を超える高血糖であった時間は27.5%であり、70mg/dL 未満の低血糖であった時間は5.0%、うち54mg/dL未満の重症低血糖であった時間は1.9%であり、いずれもTAR、TBRにおける目標値を逸脱し、高血糖の逸脱が大きい。 低血糖症状については、月に3、4回程度、身体がだるくなって意識 が朦朧となったり、思考力が急激に低下して自分が何をしていたのかが分からなくなったり、家族からみて様子がおかしく動けなくなったりと 糖症状については、月に3、4回程度、身体がだるくなって意識 が朦朧となったり、思考力が急激に低下して自分が何をしていたのかが分からなくなったり、家族からみて様子がおかしく動けなくなったりといった意識障害を伴う程度の症状が生じる。そのほか、手の震え、しびれ、ふらつき、高血糖のときとは異なる頭痛といった低血糖症状が生じる。無自覚のうちに低血糖になることもある。低血糖症状が生じたとき は、糖分を含む飲み物、食べ物を補食し、20分程度横になって休むこ とが多い。補食の際、意識が朦朧となったり、手が震えたりしてペットボトルの蓋や食べ物の袋を自力で開けられず、家族が助けることも週3回程度ある。 高血糖になると、喉が異常に渇く、頻尿、しんどくなる、激しい頭痛といった症状が起こる。週に1~2回程度起こる激しい頭痛に対しては 鎮痛剤を服用しているが、徐々に薬が効かなくなってきており、その量が増えている。 血糖値の高低についての自覚症状は、測定した血糖値の高低と必ずしも一致しない。 ウ日常生活の状況等(甲A11、12、乙A1、証人W、弁論の全趣旨) (ア) 生活環境基準時当時、実家で両親と同居していた。令和元年に結婚し令和2年に子をもうけているが、常に誰かが支援できるようにと両親との同居を続けている。独居の経験はない。 (イ) 就労 高校に入学した16歳の時に学習障害と診断され、療育手帳(第2種知的障害者)を取得し、高校卒業後はO職業能力開発センターを修了した。 平成23年頃から、24時間営業のファストフードの飲食店で、ホールや簡単な調理のアルバイトに従事し、勤務時間は3~4ないし7~8 時間であった。勤務先からは夜勤に入らないように配慮を受けていたほか、勤務中に低血 4時間営業のファストフードの飲食店で、ホールや簡単な調理のアルバイトに従事し、勤務時間は3~4ないし7~8 時間であった。勤務先からは夜勤に入らないように配慮を受けていたほか、勤務中に低血糖になることを予防するため、出勤前に食事をしたり、インスリンの量を調整して高血糖の状態にしたりし、それでも勤務中に低血糖になった場合には、短時間現場を離れて、予めポケットに入れている甘いものを補食したり、ジュースを飲んだりして休憩するといった 方法で対応していた。 平成31年1月、上記アルバイト先とは別の飲食店に正社員として就職したが、数時間の休憩はあるものの出社してから退社するまでの時間が12時間を超えることもあるなど拘束時間が長く、血糖コントロールが難しくなり、高血糖・低血糖に頻繁になった上、精神状態も悪化したことから、令和元年9月末で上記飲食店を退職した。その後、元のアル バイト先の飲食店でアルバイトとして勤務している。 (ウ) その他広汎性発達障害を有しており、インスリンの注射量の計算の負担が大きいほか、自覚症状を家族に伝えられない可能性がある。 糖尿病網膜症(単純期)、末梢神経障害による下肢触覚低下、糖尿病 性歯周病の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性)控訴人X1の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.03ng/mL であり、インスリン分泌機能はほぼ完全に障害されているといえ、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙A1)。 インスリン療法においては、毎食前に、血糖値の測定と、食事の品目と量を単位数化した計算に基づくインスリン量の調整をする必要があり、そのような調整を経ても食後の血糖値が下がらずインスリンを追加投与 インスリン療法においては、毎食前に、血糖値の測定と、食事の品目と量を単位数化した計算に基づくインスリン量の調整をする必要があり、そのような調整を経ても食後の血糖値が下がらずインスリンを追加投与することも日常的であるが、控訴人X1には広汎性発達障害があるため、上記の日常的な対処の負担が大きく、家族による確認が必要である。これに加 えて、血糖値の変動が激しく、毎日のように高血糖、重症低血糖を含む低血糖になり、自覚症状が実際の血糖値の高低と必ずしも一致しないため、自覚症状があるたびに血糖値を測定して、高血糖の場合はインスリンの注射、低血糖の場合は糖分を含む飲食物の補食と休憩といった対処をする必要がある。また、低血糖症状によっては、補食のための家族の援助が必要 となることがあり、対応しなければ重症化し昏睡から死に至る危険がある こと、症状の発生につき特に前兆や規則性がないことから、家族は日常的に控訴人X1への援助が必要となる事態が起こり得ることを想定して、必要な援助を適時に行える態勢を整えておく必要がある。 アルバイトの仕事については、夜勤に入らないという勤務先の配慮や、短時間の休憩が許されるという職場環境があることや、高血糖のリスクを 取りながら低血糖状態になることを予防することでようやく可能となっている。 そうすると、控訴人X1については、アルバイトの仕事に従事できているとはいえ、毎日のように起きる、自覚症状と必ずしも一致しない激しい血糖値の変動に対応するため、頻繁に血糖値の測定、インスリン注射、糖 分を含む飲食物の補食と休憩といった自己対処等を行う必要があることから、日常生活は大きく制限されており、上記の仕事もこのような制限が許容される職場環境と、高血糖のリスクを取った上での予防的な対処 分を含む飲食物の補食と休憩といった自己対処等を行う必要があることから、日常生活は大きく制限されており、上記の仕事もこのような制限が許容される職場環境と、高血糖のリスクを取った上での予防的な対処によってようやく可能となっているものである。そして、家族においても、日常的に介護のための態勢を整えておく必要があることにも照らすと、障害の 程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (2) 控訴人X2についてア 3級該当性(乙B1)控訴人X2は、平成▲年生まれの女性で、平成11年に1型糖尿病を発 症した(甲B7)。証拠(乙B1)によれば、基準時(平成28年7月5日)における控訴人X2の障害の状態は、生命維持のためインスリン療法を行っているが、血糖変動が著しいためコントロール不能であること、インスリン不足で、随時の血清Cペプチド値は0.01ng/mL 未満であること、血糖値変動によって活動力が左右され一般状態区分表のイ、ウ、エに該当 し、低血糖になるとオに該当する状態になることが認められるから、基準 時において少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲B6、8、9、乙B1、控訴人X2本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況毎食前と就寝前の1日4回及び体調に異変を感じた際に血糖値を測定 し、高血糖となっていたとき、インスリンを注射する。 血糖値は、基準時当時は採血式で測定しており、その後センサー式(測定用センサー(針付)を腕や腰などの皮膚に装着する。)を併用している。採血式による測定は、1日20回以上行っており、センサー式を併用し始めた後、採血式による測定は1日20回程度、センサー式の測定 値を5~10分おきに確 などの皮膚に装着する。)を併用している。採血式による測定は、1日20回以上行っており、センサー式を併用し始めた後、採血式による測定は1日20回程度、センサー式の測定 値を5~10分おきに確認している。インスリンの投与はペン型インスリン注射器による自己注射であり、インスリン製剤が入ったカートリッジをペン型注射器に装着し、毎回注射器を消毒してから新しい針を付け、ダイヤルでインスリンの単位数を設定してから、注射部位(主に腹部又は大腿部)を消毒し、注射を打つ。通常、就寝前には効果が長く続く基 礎インスリンを、毎食前には効果の早い追加インスリンを投与する。 予期しない高血糖や、高血糖のときにインスリンを注射しても血糖値が思うように下がらないこともあるため、1日に10回程度のインスリンの注射をすることも頻繁にある。 (イ) 血糖値の変動及び症状 意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年10回程度あるとの診断がされているが、後記(4)イ(イ)、(5)イ(イ)のやりとりなどからすると、意識消失・昏睡といった重篤な意識障害によるものに限った回数である可能性がある。 上記アのとおり、血糖変動が著しいためコントロール不能である。食 事・運動量の多少の違いや、ホルモンのバランス、ストレス、風邪等に よる体調の変化によっても、血糖値のコントロールが乱れ、インスリンが効かなかったり、効きすぎたりする。基準時の診断書に添付された血糖値検査データでは、29日間に、血糖値が54mg/dL 以下の低血糖に6回なり、血糖値が250mg/dL を超える高血糖に6回なり、そのうち2回は300mg/dL を超え、1日のうちに300mg/dL を超える状態が複数回生じて いることもある。また、平成30年11月1日か 糖値が250mg/dL を超える高血糖に6回なり、そのうち2回は300mg/dL を超え、1日のうちに300mg/dL を超える状態が複数回生じて いることもある。また、平成30年11月1日から同月30日までの30日間センサー式で測定したデータ(甲B8)では、血糖値の読み取りが可能な25日の間に、ほぼ毎日70mg/dL 未満の低血糖になり、1日に複数回低血糖になる日もあるほか、そのうち15日は54mg/dL 未満の重症低血糖になっている。また、250mg/dL を超える高血糖に5回なり、そ のうち2回は300mg/dL を超えている。測定総時間中70mg/dL 未満の低血糖であった時間は23.6%、うち54mg/dL 未満の重症低血糖であった時間は14.5%であり、TBRにおける目標値を大きく逸脱している。 低血糖時には、めまい、動悸、頭痛、発汗、手や身体の震え、全身の倦怠感、いらいら、起床・起立・歩行の困難等の症状が起こり、身体全 体を動かす気力が失われるような感覚を覚える。重篤な低血糖は月1、2回あり、意識が朦朧として何も考えられなくなり、倒れそうになったり、動けなくなったり、記憶がなくなったりする。無自覚のうちに低血糖になっていて、家族に指摘されて血糖値を測定して判明することも月2~6回ある。血糖値測定により低血糖とわかったときには、ブドウ糖 やジュースなど補食する方法により糖分を摂取している。しかし、補食をしても血糖値がなかなか上がらず1時間以上かかることがあり、補食を繰り返す必要があることもある。低血糖時の補食や日常生活動作について、家族などの助力が必要となる状況はほぼ毎日生じており、重篤な低血糖時には、自分で補食することはできず、家族の介助により補食や 糖分を取らせてもらうしかない。 の補食や日常生活動作について、家族などの助力が必要となる状況はほぼ毎日生じており、重篤な低血糖時には、自分で補食することはできず、家族の介助により補食や 糖分を取らせてもらうしかない。 高血糖時には、頭痛、吐き気、喉の渇き、頻尿、足がつる、全身がだるくなる等の症状が起こり、ほぼ毎日みられる。しかし、高血糖時に必ずこのような症状が起こるとは限らず無自覚のこともあるし、症状がひどいときに家族の助力が必要になることもある。高血糖とわかったときには、インスリンの注射で対応するが、血糖値が思うように下がらない ときには、インスリンを追加で注射したり、ウォーキングや運動をしたりしなければならないこともある。 血糖値の高低についての感覚は、測定した血糖値の高低と必ずしも一致しない。 ウ日常生活の状況(甲B8~10、控訴人X2本人、弁論の全趣旨) (ア) 生活環境基準時には、実家に居住していたが、その後、平成29年11月に婚姻し、平成30年3月に退職した。同年4月に夫の転勤に伴って米国に転居し、2人の子(令和▲年生まれの第一子、令和▲年生まれの第二子)をもうけた。令和5年1月に帰国し、夫と2人の子と共に生活している。 独居の経験はない。 (イ) 就労・家事育児血糖コントロールに苦労しながらも4年間大学で勉強を続け、卒業後すぐの平成26年4月に大手損害保険会社に正社員として就職し、基準時においても同社で勤務し、主にデスクワークを担当していた。職場に は1型糖尿病であることを伝えており、インスリンの注射を自分のタイミングで行うことは許容されていたが、業務の都合や他の社員との関係から、適時に補食やインスリンの注射をすることができないこともあった。また、同僚と同じ弁当を食べると高血 インスリンの注射を自分のタイミングで行うことは許容されていたが、業務の都合や他の社員との関係から、適時に補食やインスリンの注射をすることができないこともあった。また、同僚と同じ弁当を食べると高血糖になることがあるため、自分で弁当を用意するなどの対応を取っていた。営業職の志望があったが、 外出や会食の機会が増え、血糖コントロールが更に難しくなることから、 自ら営業職への転向を志願することはなかった。 婚姻後、子をもうけたが、妊娠中は高血糖状態を避ける必要があるほか、血糖値の変動が通常と異なるため、血糖コントロールが困難であった。育児では、子の世話を優先せざるを得ない状況で、自己の低血糖への対処をすぐにできないことがある。 (ウ) その他長時間単独で外出することは困難で、外出の際にはインスリンの注射器、血圧自己測定器等を持ち歩く必要があること、高血糖時に血糖値を下げるための運動が体調・時間帯・天候にかかわらず必要となること、血糖コントロールのため毎回の食事につきできるだけ同じ製品を同じ時 間に同じ量だけ摂取するように制限しており、外食の機会がかえって負担となること、就寝中の低血糖症状や朝方の高血糖症状に対処するため、深夜や早朝に起きて、血糖値測定や補食、インスリン投与を行うことも多く、血糖コントロールのために睡眠を削らざるをえないこと、風邪などの病気にかかっている日に通常とは異なる血糖値の変動が生じること、 日々の血糖値の変動のパターンが多様で予測可能性なく、日々血糖コントロールに悩まされ、精神的な負担が大きいことなど、日常生活に制約がある。 糖尿病網膜症(単純期)及び糖尿病性歯周病の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性) 控訴人X2の随時の 的な負担が大きいことなど、日常生活に制約がある。 糖尿病網膜症(単純期)及び糖尿病性歯周病の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性) 控訴人X2の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.01ng/mL 未満であり、インスリン分泌機能はほぼ完全に障害されているといえ、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙B1)。 血糖値の変動が激しく予測可能性もないところ、そのコントロールのため、毎回の食事や時間を同様のものとしたり、睡眠時間を削って早朝や深 夜に血糖値測定や補食、インスリン投与を行ったり、高血糖時に血糖値を 下げるための運動を体調・時間帯・天候にかかわらず行ったりといった努力をしているが、食事・運動量の多少の違いや、ホルモンのバランス、ストレス、風邪等による体調の変化によっても、血糖値のコントロールが乱れ、インスリンの効果もまちまちであるなど、日々悩まされている。加えて、自覚症状と実際の血糖値の高低と必ずしも一致しないため、血糖値の 測定を頻繁に行う必要がある。重症低血糖を含む低血糖になることも頻繁で、無自覚のこともあるため、補食のために家族の援助が必要となる状況がほぼ毎日生じており、補食後血糖値が回復するまでに1時間以上の休憩を要することもある。外出についても、長時間単独での外出が困難で、インスリンの注射器や血圧自己測定器等を持ち歩く必要があるなどの制約が あり、日常生活に様々な制約がある。 基準時における勤務は、インスリンの注射を自分のタイミングで行うことが許容されているという配慮のある職場環境と、弁当の持参等による食事の管理の徹底といった自助努力によってようやく可能であったものであり、担当できる職種もデスクワークに限定されて タイミングで行うことが許容されているという配慮のある職場環境と、弁当の持参等による食事の管理の徹底といった自助努力によってようやく可能であったものであり、担当できる職種もデスクワークに限定されていた。 そうすると、控訴人X2については、基準時において勤務していたとはいえ、血糖コントロールのため自ら様々な努力を重ねているにもかかわらず、そのコントロールがなお困難で、頻繁に血糖値の測定、インスリン注射、糖分を含む飲食物の補食と休憩といった自己対処等を行う必要があり、外出も相当程度制約されているなど、日常生活は大きく制限されており、 上記勤務もこのような制限が許容される職場環境と、自助努力や職種の限定によってようやく可能となっているものである。そして、家族からも、日常的に、低血糖時の補食や日常生活動作について、介助を受ける必要な状況にあることにも照らすと、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (3) 控訴人X3について ア 3級該当性(乙C1)控訴人X3は、昭和▲年生まれの女性で、平成3年に1型糖尿病を発症した(甲C7)。証拠(乙C1)によれば、基準時(平成28年7月14日)における控訴人X3の障害の状態は、持続血糖モニタリングシステム付きインスリンポンプによる治療を継続しているが、予測できない低血糖 発作と高血糖発作を繰り返す血糖コントロール不能の状態が続いていること、内因性インスリン分泌不全の回復は望めず、随時の血清Cペプチド値が0.1ng/mL 以下(検査日同年6月20日)であること、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、予測、予防ができない低血糖発作、高血糖発作により、直ちにオの状態に移行しうることが認められるから、基準時におい 下(検査日同年6月20日)であること、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、予測、予防ができない低血糖発作、高血糖発作により、直ちにオの状態に移行しうることが認められるから、基準時におい て少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲C12~14、18、乙C1、控訴人X3本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況血糖値モニター付きインスリンポンプを用いて、原則として毎食前に、 高血糖時又は高血糖が予測される時に随時追加して、インスリンを投与している。追加投与は平均して1日に2、3回であり、早朝や深夜に行うことも少なくない。 血糖値は、インスリンポンプに付属するモニターにセンサー式で測定されて表示され、最低でも1日に10~20回自身で血糖値をチェック している。インスリンポンプは、筒に入れたインスリン製剤をポンプ本体に装着し、本体に繋がるチューブの先の針を皮下に刺しておいて、チューブを通してインスリン製剤を注入する仕組みのものであるが、インスリンを投与するタイミングや量は自身で判断して行う必要がある。効果が長く続く基礎インスリンは常時一定量を注入し、毎食前、高血糖時には、 効果の早い追加インスリンを、手動でインスリン量を設定して注入する。 追加インスリンの量は、食事に含まれる糖質量などを把握し、投与後の活動量を考慮して、毎回計算する必要がある。インスリンポンプの故障等の場合には、注射によるインスリン投与を行う。令和2年10月頃、ポンプのカニューレが体から外れていたことに気づかず極端な高血糖の状態が半日ぐらい続いていたことがあった。 (イ) 血糖値の変動及び症状意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年6回あるとの診断がされているが、 いたことに気づかず極端な高血糖の状態が半日ぐらい続いていたことがあった。 (イ) 血糖値の変動及び症状意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年6回あるとの診断がされているが、救急搬送を要する程度の重篤な意識障害によるものを想定したものである。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 上記アのとおり、予測できない低血糖発作と高血糖発作を繰り返す血糖コントロール不能の状態が続いている。重症低血糖の発作の出現の予測は不可能である。基準時の診断書に添付された血糖値検査データでは、約5か月間(平成28年2月8日~7月14日)に1日当たり平均2. 8回の測定を行った結果として、血糖値が50mg/dL 前後以下の低血糖に 少なくとも9回なり、そのうち2回は30mg/dL 以下を記録している。また、平成30年11月1日から同月30日までの30日間、センサー式で測定したデータ(甲C12)では、54mg/dL 未満の重症低血糖を記録した日は15日あり、1日のうちに複数回記録した日もある。測定総時間中70mg/dL 未満の低血糖であった時間は11.4%、うち54mg/dL 未満の 重症低血糖であった時間は4.0%であり、TBRにおける目標値を大きく逸脱している。 70mg/dL 前後の低血糖時には、めまい、動悸、発汗、震え、視野狭窄等の症状が起こり、50mg/dL 以下の重症低血糖時には、意識が朦朧として、判断力や注意力が著しく低下するような症状が起こる。意識が飛ぶ ような低血糖症状は少なくとも月2回程度、それに至らない程度の低血 糖症状は1日のうちに頻回に生じている。低血糖時には、ブドウ糖やビスケット・チョコレート等を補食する方法で対応するが、50mg/dL 症状は少なくとも月2回程度、それに至らない程度の低血 糖症状は1日のうちに頻回に生じている。低血糖時には、ブドウ糖やビスケット・チョコレート等を補食する方法で対応するが、50mg/dL 以下の重症低血糖時には、ジュースやラムネ等のより摂取しやすいもので補食する。低血糖時にはしばしば意識障害を伴うため、家族の助けが必要となることも多い。補食をしても、基本的には15分程度は効果が現わ れるかをチェックする必要があり、その間は横になって休むが、再度血糖値を測定した結果更に補食するなどの対応が必要となることがある。 血糖値の高低についての自覚症状は、測定した血糖値の高低と必ずしも一致しない。 ウ日常生活の状況(甲C12~15、控訴人X3本人、弁論の全趣旨) (ア) 生活環境平成23年8月に婚姻し、夫と2人の子(平成▲年▲月生まれの第一子、平成▲年▲月生まれの第二子)と共に生活している。独居の経験はない。 (イ) 就労・家事育児 高校卒業後、鍼灸の専門学校に3年間通って鍼灸師の資格を取得し、整骨院で正社員として勤務したが、長時間勤務で昼休みも満足に取ることができず、血糖コントロールに時間を割くことが難しかったため、3か月で退職した。鍼灸師の資格を活かしたいと思い、整骨院でパート勤務をしたが、血糖コントロールが難しく、2年とたたず、退職せざるを えなかった。その後、短期の派遣社員として事務的な軽作業等に従事した後、派遣社員としてソフトウェア販売会社で勤務していたが、残業があると血糖コントロールとの両立が難しくなり、職場に病気のことを伝えても理解が得られず、退職を余儀なくされた。平成23年10月頃から障がい者の通所作業所でパート勤務をしたが、第一子の妊娠を機に退 職し、以後、就労 との両立が難しくなり、職場に病気のことを伝えても理解が得られず、退職を余儀なくされた。平成23年10月頃から障がい者の通所作業所でパート勤務をしたが、第一子の妊娠を機に退 職し、以後、就労はしていない。 妊娠中は胎児に悪影響を与える高血糖状態を避ける必要が高いため、低血糖のリスクを受けざるを得ず、頻回の血糖値測定、インスリンの追加投入、補食を頻繁に求められる状況にあった。育児中も、授乳その他の対応で生活が不規則となり、血糖コントロールがより困難となり、子の世話を優先せざるを得ない状況で、自己の低血糖への対処をすぐにで きないことがある。 (ウ) その他不測の事態をおそれて単独での外出には慎重にならざるを得ない。明け方にかけて血糖値が上昇しやすい傾向があり、睡眠中に低血糖や高血糖の状態になって、しばしば睡眠を妨げられる。 糖尿病網膜症(単純期)及び白内障、下肢しびれ感並びに糖尿病性歯周病等の合併症がある。また、指定難病とされる好酸球性副鼻腔炎の治療を受けており、そのために投与しているステロイドは、血糖値のコントロールを不良としやすい。 夫は、控訴人X3の体調と育児を考慮し、勤務先を退職して平成31 年4月からフリーランスとして稼働している。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性)控訴人X3の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.1ng/mL 以下であり、内因性インスリンの分泌は枯渇しており、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙C1)。 低血糖になることが1日のうちにも頻回生じており、重症低血糖の発作の出現の予測も不可能であるところ、重症低血糖に陥って意識が飛んでしまい、補食のために家族の援助が必要となる頻度も高く、補 低血糖になることが1日のうちにも頻回生じており、重症低血糖の発作の出現の予測も不可能であるところ、重症低血糖に陥って意識が飛んでしまい、補食のために家族の援助が必要となる頻度も高く、補食後も血糖値が回復するかのチェックのため少なくとも15分程度を要する。インスリン療法において血糖値モニター付きインスリンポンプを用いているが、血 糖値のチェックを頻繁に行う必要があるし、インスリンを投与するタイミ ングや量は自身で判断する必要があり、毎食前には食事に含まれる糖質量や投与後の活動量を考慮して毎回計算をする必要がある。就労の経験はあるが、血糖コントロールとの両立が困難であることが理由で退職を余儀なくされた。2子の育児においても、子の世話を優先させるため血糖コントロールがより困難となっており、夫は勤務先を退職してフリーランスとし て稼働するようにして、介助や助力の態勢を整えている。そのほか、単独の外出は、不測の事態をおそれて慎重にならざるを得ないほか、睡眠も妨げられるなど、日常生活に様々な制約がある。 そうすると、控訴人X3については、重症低血糖になることが頻繁で、血糖値の確認、インスリンの投与、糖分を含む飲食物の補食と休憩といっ た自己対処等を行う必要も頻繁にあって、外出も相当程度制約されているなど、日常生活は大きく制限されており、勤務の経験があるとはいえ血糖コントロールとの両立が困難なため続けることができなかった。そして、家族からも、重症低血糖時に意識が飛ぶなどしばしば意識障害を伴い、補食等の介助が必要になる頻度が高いことにも照らすと、障害の程度は2級 の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (4) 控訴人X4についてア 3級該当性(乙D1)控訴人X4は、 になる頻度が高いことにも照らすと、障害の程度は2級 の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (4) 控訴人X4についてア 3級該当性(乙D1)控訴人X4は、昭和▲年生まれの女性で、平成4年に1型糖尿病を発症した(甲D8)。証拠(乙D1)によれば、基準時(平成28年7月11 日)における控訴人X4の障害の状態は、強化インスリン療法では血糖値が不安定であり、平成27年8月よりSAP療法(血糖モニター付きインスリンポンプ)を開始しているが、なお予測不能な高血糖や低血糖がみられ、血糖測定は1日4回以上、多いときは8回以上必要とし、血糖のコントロールは不能であること、随時の血清Cペプチド値は0.1ng/mL 未満であ ること、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、予測できない低血糖発 作、高血糖発作により、直ちにオの状態に移行し得ることが認められるから、基準時において少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールに係る症状等(甲共3、甲D13、14、16、22、23、25、26、控訴人X4本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況 平成27年8月までは採血式による血糖値の測定とペン型インスリン注射器によってインスリンを投与し、同月以降は血糖値の測定は採血式のほかセンサー式を併用することがあり、インスリンの投与も注射器とインスリンポンプを併用している。注射器によるインスリン投与の方法は上記(2)イ(ア)と、インスリンポンプによるインスリン投与の方法は、上 記(3)イ(ア)と同様であり、血糖値の測定回数は、採血式の場合毎食前、就寝前の4回のほか、低血糖・高血糖と感じたとき、低血糖又は高血糖からの回復を確認するときなど1日に5、6回程度であり、センサー式の 3)イ(ア)と同様であり、血糖値の測定回数は、採血式の場合毎食前、就寝前の4回のほか、低血糖・高血糖と感じたとき、低血糖又は高血糖からの回復を確認するときなど1日に5、6回程度であり、センサー式の場合は毎日10回以上である。なお、センサー式を用いる場合でも、毎日5回程度は採血による血糖自己測定により血糖値を確認している。 平成28年3月23日~4月6日に、1型糖尿病合併妊娠として、血糖管理及び周産期管理の目的で、R病院に入院し、高血糖を抑える必要に基づく厳格な血糖管理をされ、退院後も1日に10回以上血糖値の測定をし、血糖値に合わせて1日8回程度こまめに追加インスリンを注入するようにしていた。 (イ) 血糖値の変動及び症状意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年1、2回あるとの診断がされている(乙D1)が、令和4年5月に控訴人X4が主治医に対し診断書の作成を求めた際、主治医が「周りの先生とも診断書の話をして、周りと合わせているんだけども、救急車で運ばれるようなケース を重症低血糖の回数として記載しているから、そのようなケースでない と書けない。」と述べたことなどを踏まえると、上記診断は、救急搬送を要する意識消失・昏睡といった重篤な意識障害によるものに限った回数である可能性がある。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 SAP(モニター付きインスリンポンプ)を使用することで以前に比 してやや改善傾向はみられるが、それでも重症低血糖を来しており血糖コントロールは不良である。平成30年11月1日から同月30日までの30日間センサー式で測定したデータ(甲D13)では、測定総時間中70mg/dL 未満の低血糖であった時間は16.7%、うち54mg/dL ールは不良である。平成30年11月1日から同月30日までの30日間センサー式で測定したデータ(甲D13)では、測定総時間中70mg/dL 未満の低血糖であった時間は16.7%、うち54mg/dL 未満の重症低血糖であった時間は6.5%であり、TBRにおける目標値を大きく逸 脱している。上記期間において、自覚症状がないままに低血糖に陥っていることが多数回あり、早朝、低血糖のため起き上がることができず夫に補食の介助を頼むことが2回あった。また、R病院に入院時は、妊娠中に母体の血糖値が高いと胎児に先天異常が起こる危険性が高まることから、厳格な血糖管理下に置かれていたが、厳密にカロリー計算された 食事を摂り、それに合わせて医師から指示されたインスリン量を投与し、終日安静にしていても、低血糖や高血糖が発現し、対処後も回復に時間がかかる事態がしばしば起きており、血糖値のコントロールの難しさが露わになっている。 70mg/dL 前後の低血糖時には、めまい、動悸、発汗、震え、頭痛、手 のしびれ等の症状が起こり、この症状は高血糖状態から急激に血糖値が低下していく場合にも起こる。また、50mg/dL 以下の重症低血糖時には、頭がぼうっとする、身体がふらふらして立っていられない、手足に力が入らなくなるなどの症状が起こる。重症低血糖時の症状は1週間に1回くらい、それに至らない程度の低血糖症状は1日に3、4回起こってい る。R病院からの退院後は、低血糖が頻発し、めまい、手のしびれ等は 1日に5、6回、立っていられないなどの重い症状も1日1回起こっていた。無自覚のうちに低血糖になっていることもある。低血糖時には、ブドウ糖類を補食する方法で対応する。手先がしびれて袋が開けられなかったり、横になって動けなくなったりしたとき 症状も1日1回起こっていた。無自覚のうちに低血糖になっていることもある。低血糖時には、ブドウ糖類を補食する方法で対応する。手先がしびれて袋が開けられなかったり、横になって動けなくなったりしたときは、家族に補食を手伝ってもらう。補食をしても、重症低血糖時の症状が収まるまでには30分 以上かかったり収まらなかったりし、それに至らない程度の低血糖症状でも20分程度を要する。 200mg/dL 以上の高血糖時には、吐き気、喉の渇き、めまい、尿意等の症状が起こり、1日に1回はみられる。高血糖時には、追加インスリンの投与で対応するが、症状が収まるまで1、2時間を要する。 血糖値の高低についての自覚症状は、測定した血糖値の高低と必ずしも一致しない。 ウ日常生活の状況(甲D14、17、控訴人X4本人)(ア) 生活環境平成27年8月に婚姻するまでは両親と同居し、その後、夫と2人の 子(平成▲年▲月生まれの第一子、令和▲年▲月生まれの第二子)と同居している。独居の経験はない。 (イ) 就労・家事育児高校卒業後、医療事務の専門学校に通い、平成17年に歯科医院に就職したが、1型糖尿病のことは告げていなかったのでトイレでインスリ ン注射をしていた。仕事中は低血糖発作を起こさないように注意するあまり、高血糖状態となることが常であった。血糖値をコントロールしながら、平成26年12月まで勤務し、その後は就労していない。 育児では、子の世話を優先するため、自分の食事の時間が不規則になったり、自己の低血糖への対処をすぐにできないことがあるなど、血糖値 のコントロールがより困難となっている。 平成28年7月に作成された診断書(乙D1)には、インスリン治療を行っていても、予想できない高血 すぐにできないことがあるなど、血糖値 のコントロールがより困難となっている。 平成28年7月に作成された診断書(乙D1)には、インスリン治療を行っていても、予想できない高血糖・低血糖が起こり、血糖コントロールは不能である、発作により意識障害やけいれんが起き、家族や周囲の者の協力は不可欠である、日常生活、労働の継続は、介護や周囲の協力がなければ困難である旨の記載がある。 (ウ) その他インスリンポンプは、インスリン注入用針を3日に1回、センサーの針を6日に1回程度、交換する必要があるほか、常に体にチューブが繋がっていることから、日常の動作が制限されることがある。外出は、インスリン投与のタイミングと場所との関係で、時間と場所が制限される ことに加え、注射器や多くの備品を持ち歩く必要がある一方、外出先で低血糖にならないようインスリンを少なめに打つよう心掛けている。 糖尿病網膜症(単純期)及び糖尿病性歯周病の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性)控訴人X4の随時の血清Cペプチド値は0.1ng/mL 未満であり、内因性イ ンスリンの分泌は枯渇しており、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙D1)。 モニター付きインスリンポンプを使用しているものの、なお血糖コントロールが困難であり、そのことは妊娠中の入院時の厳格な管理下においても低血糖や高血糖が発現したことにも表れている。低血糖になることが1 日のうちにも頻回生じており、重症低血糖、高血糖になる頻度も高く、発症の予測ができない上、自覚症状では低血糖と高血糖の判別がつかないことや、無自覚の低血糖もあり、低血糖の自覚があっても横になって動けなくなるなどのため、家族が補食のた 糖、高血糖になる頻度も高く、発症の予測ができない上、自覚症状では低血糖と高血糖の判別がつかないことや、無自覚の低血糖もあり、低血糖の自覚があっても横になって動けなくなるなどのため、家族が補食のため援助することが必要となること少なくなく、補食をしても、重症低血糖時の症状が収まるまでに30分以上、 低血糖時でも20分程度を要している。高血糖時も、症状が収まるまで1、 2時間を要している。就労の経験はあるが、低血糖発作を避けるため、高血糖のリスクを取った状況であり、労働の継続は周囲の協力がなければ困難である。2子の育児においても、子の世話を優先させるため血糖コントロールがより困難となっている。外出についても、インスリン投与のタイミングと場所との関係で、時間や場所が制限されるし、注射器等の多くの 備品を持ち歩く必要があり、制約されている。 このように、控訴人X4については、重症低血糖を含む低血糖、高血糖の頻度が高く、血糖コントロール状態の不良の程度も高いため、インスリンの投与、補食と休憩といった自己対処等を行う必要が頻繁でそれに費やす時間も長く、外出も相当程度制約されており、勤務の経験があるとはい え労働の継続は周囲の協力がなければ困難である。そして、家族からも、重症低血糖を含む低血糖時の捕食の介助が必要になる頻度が高いことに照らすと、日常生活は大きく制限されているものであり、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (5) 控訴人X6について ア 3級該当性(甲F6、乙F1)控訴人X6は、昭和▲年生まれの女性で、昭和62年に1型糖尿病の診断を受けた(甲F6)。証拠(乙F1)によれば、基準時(平成28年7月20日)における控訴人X6の障害の状態は、インスリ F1)控訴人X6は、昭和▲年生まれの女性で、昭和62年に1型糖尿病の診断を受けた(甲F6)。証拠(乙F1)によれば、基準時(平成28年7月20日)における控訴人X6の障害の状態は、インスリン注射1日4回以上と頻回の血糖自己測定を実行しているが高血糖と無自覚性低血糖など 血糖の乱高下が認められること、随時の血清Cペプチド値の検査結果が0.1ng/mL 未満(検査日平成28年6月28日)であり、内因性インスリン分泌が枯渇していること、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、重症低血糖発作を起こすとオの状態に移行することがあることが認められるから、基準時において少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲共41、甲F10~15、乙F1、 控訴人X6本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況採血式の血糖値の測定を行い、ペン型インスリン注射器によってインスリン投与をしており、その方法は上記(2)イ(ア)と同様であり、身体への侵襲を伴う。血糖値測定及びインスリン投与は通常1日各4回だが、体 調に異常を感じた場合などはすぐに血糖値の測定を行い、値に応じたインスリン補給(高血糖時)もしくは補食(低血糖時)をし、その頻度は高い。また、高血糖の合併症は将来起こりうることだが、低血糖発作は、いつどこで起こるかわからず、毎日身近にあるものとの意識から、外出先で低血糖発作を起こして倒れることがないよう本来は必要とされるイ ンスリンの追い打ちを控えることもある。 (イ) 血糖値の変動及び症状令和4年8月22日付けで意識障害により自己回復ができない重症低血糖は、年12回あるとの診断がされている(甲F13)。これは、控訴人X6が主治医に対し、被控訴人が「意識障害により自己回 び症状令和4年8月22日付けで意識障害により自己回復ができない重症低血糖は、年12回あるとの診断がされている(甲F13)。これは、控訴人X6が主治医に対し、被控訴人が「意識障害により自己回復ができ ない重症低血糖は、意識喪失か昏睡状態になって救急車で運ばれるような重症低血糖ではなく、意識障害とは、低血糖が原因で意識が清明でなくなった状態を指すところ、必ずしも意識消失や昏睡に限定されない」「1型糖尿病患者は、基本的には自力で低血糖状態の改善を図り、回復に至ることからすれば、低血糖状態から自己回復できない状態にある場合 のほとんどにおいて、意識が清明でない(意識障害を来している)状態にあると判断されるものである」旨の見解を示していることを伝えた上で、診断されたものである。その際主治医は控訴人X6に対し、以前の診断書に記載した「意識障害により自己回復できない重症低血糖」の回数はもっと多くなる旨述べている。本件各支給停止処分に際し控訴人X 6が提出した診断書には、意識障害により自己回復ができない重症低血 糖は年3回あったと記載されている。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 高血糖・低血糖など血糖値の乱高下が認められ、低血糖状態への慣れが生じ50mg/dL~60mg/dL の無自覚低血糖が度々起こっており、重症低血糖になる危険性は十分にある。控訴人X6は、発症から30年を超えて おり、その日の行動や食事の内容によりインスリン投与の量や時期を工夫するなどして血糖値のコントロールに努めているが、それでもなお血糖値は乱高下している。平成28年6月13日から同年7月12日までの血糖値データグラフ(甲F12)では、約1か月の間に血糖値が50mg/dL以下から400mg/d ールに努めているが、それでもなお血糖値は乱高下している。平成28年6月13日から同年7月12日までの血糖値データグラフ(甲F12)では、約1か月の間に血糖値が50mg/dL以下から400mg/dL 弱まで激しく上下に変動しており、血糖値70mg/dL 未満と思われるのが24回、うち50mg/dL 以下が5回、200mg/dL 以上が26回ある。また、平成30年11月1日から同年12月1日までの31日間センサー式で測定したデータ(甲F10)では、54mg/dL 未満の重症低血糖が9日、200mg/dL 以上は毎日、うち250mg/dL 以上の高血糖が22日ある。測定総時間中180mg/dL を超える高血糖であった時間は 27.8%、うち 250mg/dL を超える高血糖であった時間は6.3%であり、70mg/dL 未満の低血糖であった時間は13.6%、うち54mg/dL 未満の重症低血糖であった時間は6.8%であり、いずれもTAR、TBRにおける目標値を逸脱し、低血糖の逸脱が大きい。上記期間中の重症低血糖症状に対し、自分一人では対応できず、家族に助けてもらったことが3回あっ た。 70mg/dL 未満の低血糖時には、倦怠感、動悸、手足の冷え、震え等の症状が起こり、54mg/dL 以下の重症低血糖時には、強い動悸と冷や汗、だるさ・気分の悪さで動けない、突然しんどくなって、頭がぼうっとするといった状態になる。ジュースやブドウ糖の補食により対応しており、 自分でジュースを取りに行ったり、蓋を開けられなかったりするときに は家族に助けてもらうほか、自宅内の各所にジュースやブドウ糖を置くといった工夫をしている。補食をしても、5分で収まることもある一方、回復に40分程度を要することもある。 200mg は家族に助けてもらうほか、自宅内の各所にジュースやブドウ糖を置くといった工夫をしている。補食をしても、5分で収まることもある一方、回復に40分程度を要することもある。 200mg/dL 以上の高血糖時には、吐き気、喉の渇き、だるさ等の症状が起こる。だるさ、しんどさについては、低血糖・高血糖のいずれによる ものか判別がつかないこともある。 ウ日常生活の状況等(甲F11、乙F1、控訴人X6本人)(ア) 生活環境平成19年に婚姻し、平成▲年に長男を出産したが、出産前に下記(イ)の乳児院を退職し、専業主婦となった。 (イ) 就労・育児家事高校卒業後、専門学校で保育士の資格を取得し、非正規職員として乳児院に就職した。1型糖尿病であることを知らせており、仕事を中断・離席をすることにつき理解、配慮を得られていた。基準時には、自宅で1日2時間程度の自転車の部品を作る内職をしていたが、体調によって はできないこともあった。 (ウ) その他血糖管理のため、食事・行動・労働等において、常時、慎重な配慮を要する生活を強いられている。しかし、そのような配慮をもってしても、血糖値のコントロールが難しいため、不測の事態をおそれて単独での外 出には慎重にならざるを得ない。睡眠時に低血糖・高血糖で体調が悪化することが多く、睡眠を妨げられる。 糖尿病網膜症(単純期)、糖尿病性歯周病及び橋本病等の合併症がある。 エ日常生活が著しい制限を受けるか(2級該当性) 控訴人X6の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.1ng/mL 未満であ り、内因性インスリンの分泌は枯渇しており、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙F1)。 血糖コントロールが チド値の検査結果は0.1ng/mL 未満であ り、内因性インスリンの分泌は枯渇しており、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙F1)。 血糖コントロールが困難で血糖値の変動が乱高下といえる程激しく、重症低血糖を含む低血糖、高血糖になる頻度も高い上、発症から30年を超えて低血糖状態へ慣れが生じているため無自覚のことも度々起こっており、 ジュースやブドウ糖等の補食のためであっても、家族の援助が必要となる頻度も高く、補食後も回復するのに必要な時間はまちまちで、40分を要する場合もある。不測の事態を恐れて単独での外出には慎重にならざるを得ないほか、睡眠も妨げられるなど、日常生活に様々な制約がある。 そうすると、控訴人X6については、重症低血糖を含む低血糖、高血糖 になる頻度が高く、血糖コントロール状態は著しく不良で、低血糖は無自覚のこともあって家族の介助が必要になる頻度も高く、日常生活は大きく制限されている上、就労の経験はあるが、1型糖尿病であることを職場に知らせ、仕事の中断につき理解や配慮を得られた上でのものであることに照らすと、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に 当たるものといえる。 (6) 控訴人X7についてア 3級該当性(甲G4、12、乙G1)控訴人X7は、昭和▲年生まれの女性で、昭和56年に1型糖尿病の診断を受けた(甲G4)。証拠(乙G1)によれば、基準時(平成28年7 月14日)における控訴人X7の障害の状態は、1型糖尿病に対して頻回のインスリン治療を行っているが、血糖値は非常に不安定で、しばしば低血糖発作を生ずること、随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.34ng/mLであったこと、糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年1回あっ インスリン治療を行っているが、血糖値は非常に不安定で、しばしば低血糖発作を生ずること、随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.34ng/mLであったこと、糖尿病ケトアシドーシスによる入院が年1回あったこと、少なくとも一般状態区分表のウに該当し、突然生ずる低血糖発作によりオ の状態に陥ることが認められるから、基準時において少なくとも3級に該 当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲G6、10~12、14、乙G1、控訴人X7本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況基本的に、毎食前と就寝前の1日4回、血糖値を測定し、注射により インスリンを投与しており、身体への侵襲を伴う。控訴人X7は、平成15年に双極性感情障害と診断され、以来精神科を受診する状態であり、平成28年7月1日付けで、病名躁うつ病、抑うつ状態により意欲低下や倦怠感などの症状が持続しており、食事量も動揺しやすく糖尿病治療への影響も出やすい、労務困難な状況である旨記載した診断書が作成さ れている。平成31年1月からは精神障害により障害基礎年金を受給している。うつ症状が重く昼まで起きることができず食事も水も飲まない場合には、インスリン投与も夕食対応分と就寝前の2回となったりする。 (イ) 血糖値の変動と症状S病院で行った血清Cペプチド値の検査結果は、平成23年5月6日 が0.12ng/mL(甲G12)、令和4年1月17日が0.14ng/mL(甲G13)である。 意識障害により自己回復ができない重症低血糖が年2、3回あるとの診断がされているが、上記(4)イ(イ)、(5)イ(イ)のやりとりなどを踏まえると、意識消失・昏睡といった重篤な意識障害によるものに限った回数である 可能性がある。 過去に糖尿病 るとの診断がされているが、上記(4)イ(イ)、(5)イ(イ)のやりとりなどを踏まえると、意識消失・昏睡といった重篤な意識障害によるものに限った回数である 可能性がある。 過去に糖尿病ケトアシドーシスによる入院歴が複数回あるが、最近は減少している。高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 躁うつ病の合併により、食思不安定を認め、血糖コントロールが非常に不安定で、しばしば低血糖発作を生ずる。平成30年10月31日か ら同年12月1日までの間センサー式で測定したデータ(甲G6)によ れば、1日の血糖変動が大きく、32日間のうち250mg/dL を明白に超える高血糖を記録した日が24日あり、400mg/dL に近い数値を記録した日もある一方、低血糖となることもままみられた。 血糖値が50~60mg/dL の低血糖になると、頭が重い、目がちかちかして見えなくなる、体がだるくなって起きられないといった症状が月3回 程度生じるが、無自覚の場合もある。そのほか、頭痛、寒気、倦怠といった軽度の低血糖症状は、毎日生じ、1日複数回生じることもある。低血糖症状が出た場合には糖分を補食するが、起き上がれるようになるまで30分から1時間程度を要する。低血糖のため歩けないような状態になったときには、母に介護してもらい、補食をするが、周囲に誰もいなけれ ば、昏睡状態に陥ってしまうことになる。 高血糖になると、頭痛、寒気、倦怠、口渇、頻尿といった症状が出て、横になっても回復までに2時間程度を要することもある。 ウ日常生活の状況(甲G6、10、12、控訴人X7本人)(ア) 生活環境 母と同居している。独居の経験はない。 (イ) 就労高校卒業後、1型糖尿病のことは告げずに農業協同組合に就職した の状況(甲G6、10、12、控訴人X7本人)(ア) 生活環境 母と同居している。独居の経験はない。 (イ) 就労高校卒業後、1型糖尿病のことは告げずに農業協同組合に就職したが、昼間に低血糖のため気を失い昏睡状態になり、上司の連絡を受けた母が仕事場に駆けつけたこともある。その後、作業着等の販売店のパートの 事務職員、介護職などの勤務歴がある。平成12年に介護職に転職した当初は正社員として勤務していたが、夜勤等をしなければならず、身体を使う仕事であったため、血糖コントロールが困難となり、平成13年9月以降はパート等で週2、3回勤務するようになった。いつまでも家族の世話になっていることを辛く感じて落ち込み、仕事に行けないよう になり、インスリン注射をすることもできなくなったため、平成15年 3月に精神科を受診し、双極性感情障害と診断された。平成21年3月頃以降は就労ができない体調となり、その状態が続いている。 (ウ) その他抑うつ状態にあることが多いため、本来必要な血糖値測定、インスリンの投与による血糖コントロールを十分にできていない。睡眠の時間帯 に低血糖、高血糖になったり血糖値測定を行ったりしているので、睡眠が妨げられているものとみられる。 基準時において、糖尿病性歯周病、単純糖尿病網膜症、潜在性甲状腺機能低下症の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性) 平成28年7月の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.34ng/mLであったが、平成23年5月の検査結果は0.12ng/mL、令和4年1月の検査結果が0.14ng/mL であり、いったん破壊された膵β細胞は再生せず、インスリンの生成がなくなってしまうという1型糖尿病の特性に照らせば、 年5月の検査結果は0.12ng/mL、令和4年1月の検査結果が0.14ng/mL であり、いったん破壊された膵β細胞は再生せず、インスリンの生成がなくなってしまうという1型糖尿病の特性に照らせば、控訴人X7の内因性インスリンの分泌は枯渇しているといえる(上記ア、イ(イ)、乙G 1)。糖尿病ケトアシドーシスによる入院もある。1日の血糖値の変動が大きく、躁うつ病との合併で食思不安定も重なり、血糖コントロールが非常に不安定で、昼まで起きることができないこともあるほか、無自覚の重症低血糖の症状も生じているから、補食のための家族の援助が必要である。 また、過去の勤務経験はあるが、基準時よりも7年前からは就労ができて いない。 そうすると、控訴人X7については、血糖値のコントロール状態の不良の程度は高く、家族の介助も必要であって、日常生活は大きく制限されていることに照らし、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (7) 控訴人X8について ア 3級該当性(甲H6、乙H1、3、弁論の全趣旨)控訴人X8は、昭和▲年生まれの男性で、平成10年に1型糖尿病を発症した(甲H6)。証拠(乙H1、3)及び弁論の全趣旨によれば、基準時(平成28年7月30日)における控訴人X8の障害の状態は、頻回の自己血糖測定及びインスリン注射を実行しているが、血糖の上下動が激し く、コントロールは困難であること、膵臓からのインスリン分泌は枯渇しており、平成26年9月頃の血清Cペプチド値は0.03ng/mL 未満であったこと、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、突然の低血糖発作又は高血糖発作により速やかにオの状態に移行することが認められるから、基準時において少なくとも3級に該当している。 /mL 未満であったこと、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、突然の低血糖発作又は高血糖発作により速やかにオの状態に移行することが認められるから、基準時において少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲H4、10~15、乙H1、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況毎食前と就寝前の1日4回、ペン型インスリン注射器によってインスリンを投与しており、その方法は上記(2)イ(ア)と同様であり、身体への侵 襲を伴う。控訴人X8が注射する部位は腹部であるが、同じ部位に続けて注射すると皮膚が硬くなるため、左右、上下など注射の都度、打つ部位を変えている。毎食前のインスリン投与の量は、食事の量や内容により都度調整しており、必要に応じて追加のインスリン投与を行うこともある。ただ、低血糖になると軽い場合でも数十分は体を動かすことがで きなくなってしまうため、また、運転中に低血糖になることを恐れ、外出時のインスリン投与の量は少なめにしている。 (イ) 血糖値の変動と症状令和4年7月9日付けで「血糖管理困難であるため、月1~2回程度の低血糖状態を呈す。低血糖時には速やかに意識障害を呈し、身の回り の事もできず、常に介助を必要とする。終日就床を強いられる場合もあ る。低血糖時の介助及び低血糖からの回復には家族による補助を必要とする」との診断がされている(甲H14)。これは、控訴人X6と同様に(上記(5)イ(イ))、控訴人X8が主治医に対し、被控訴人の見解を伝えた上で、診断を受けたものである。なお、本件各支給停止処分に際し控訴人X8が提出した診断書には、意識障害により自己回復ができない重 症低血糖は年1回あったと記載されているが、控訴人X8は、上記診断書の作成に際 けたものである。なお、本件各支給停止処分に際し控訴人X8が提出した診断書には、意識障害により自己回復ができない重 症低血糖は年1回あったと記載されているが、控訴人X8は、上記診断書の作成に際し、意識障害により自己回復ができない重症低血糖とは、昏睡状態になって救急車で運ばれるほどの重い低血糖であるとの前提で問診を受けていた。なお、控訴人X8の主治医は、平成26年9月20日付けで、日本年金機構大阪事務センターからの照会に対し、低血糖に より、週1回程度ジャパンコーマスケール10~30の意識障害が認められ、この際は、本人によるブドウ糖摂取等が困難であるため、主に妻の介助により意識を回復させる必要がある旨回答している。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 頻回の自己血糖測定及びインスリン注射により血糖コントロールを行っ ているものの、血糖の上下動は激しく、無自覚性低血糖も生じるなど、コントロール困難である。低血糖や高血糖は毎日生じ、1日のうちに何度も生じるが、事前に予測できない。平成30年11月1日から同月30日までの30日間センサー式で測定したデータ(甲H10)では、70mg/dL未満の低血糖になったのが11日、うち50mg/dL以下の重症低血糖になっ たのが6日ある。測定総時間中180mg/dL を超える高血糖であった時間が60.3%、うち250mg/dLを超える高血糖であった時間は28.5%、70mg/dL未満の低血糖であった時間は5.1%、54mg/dL 未満の重症低血糖であった時間は2.8%であり、いずれもTAR、TBRにおける目標値を逸脱し、高血糖の逸脱が大きい。また、高血糖から急激に低血糖となっている場 合も少なくない。 低血糖になると、空腹感 間は2.8%であり、いずれもTAR、TBRにおける目標値を逸脱し、高血糖の逸脱が大きい。また、高血糖から急激に低血糖となっている場 合も少なくない。 低血糖になると、空腹感から集中力が減退し、動悸、手の震え、冷汗などの症状が起こり、重症になると、いらいら、体全体の倦怠感、体が動かせないといった症状が起こる。無自覚の場合もある。チョコレートやジュースを補食して対応するが、無自覚や重症低血糖時には家族に持ってきてもらう必要がある。補食をしても、回復するには多くの場合30 分~1時間を要する。仕事中の低血糖を予防するため、血糖値を高めに保つようにしているが、1日の血糖値の変動は激しい。 高血糖時には、低血糖とは異なる体のだるさ、しびれ、節々の痛み、喉の渇きが生じるが、外出時には低血糖を避けるため、少なめのインスリンの投与で対応している。 ウ日常生活の状況等(甲H11~13、乙H1)(ア) 生活環境両親及び妻と同居している。 (イ) 就労高校3年への進級を控えた春休みに1型糖尿病の診断を受け、入院生 活を余儀なくされ、留年することが不可避となったため、高校を中退した後、父親が営んでいた造園業の仕事を手伝うようになった。しかし、当初は入院することも多く、また、体調不良で1か月のうち半分も仕事に行けないこともあった。そのような時期を経て、低血糖症状が生じたときは休憩をとるなどしながら、父や他の職人と共に顧客の家を回り、 脚立に乗って植木を伐採したり、場合によっては命綱をつけて木の枝に上って伐採したりするなど、父と共に造園業の仕事を続け、平成30年末に父の跡を継ぎ、2人の職人と共に仕事を行っている。造園業の仕事を手伝い始めて数年経った頃に、木に上って枝を伐採していた時に突 枝に上って伐採したりするなど、父と共に造園業の仕事を続け、平成30年末に父の跡を継ぎ、2人の職人と共に仕事を行っている。造園業の仕事を手伝い始めて数年経った頃に、木に上って枝を伐採していた時に突然低血糖になり、木から降りようとして足を踏み外した(木の枝をつかん で落下は免れた。)ことがあったほか、2、3年前に、作業中に低血糖 で思うように動けなくなり、作業を中断して帰宅したことがあった。自営業であり、父の代以来のなじみの客が多いため、低血糖で仕事を中断しても、予定を変更してもらうことが可能であるが、高血糖による合併症を懸念しつつも、できるだけ仕事中に低血糖状態にならないようインスリンの投与量を調整している。このような自助努力がされていること は、上記イ(イ)の測定総時間中180mg/dL を超える高血糖であった時間が60.3%に及んでいることとも符合する。 (ウ) その他就寝中の夜間や朝方に低血糖になることが多く、睡眠を妨げられている。 単純性糖尿病性網膜症及び両側アキレス腱反射低下の合併症がある。 エ日常生活が著しい制限を受けるか(2級該当性)血清Cペプチド値は0.03ng/mL 未満で膵β細胞が大きく破壊されていることをうかがわせ、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙H1)。 血糖コントロールが困難であり、血糖値の変動が激しく、低血糖、高血糖は毎日生じ、1日のうちに何度も生じるなど頻度も高く、高血糖から急激に低血糖となる場合も少なくないなど、事前に予測できない。重症低血糖も週1回程度生じているほか、無自覚の低血糖もあり、これらの時には補食のための家族の援助が必要があり、補食をしても回復するには多くの 場合30分~1時間を要する。 前に予測できない。重症低血糖も週1回程度生じているほか、無自覚の低血糖もあり、これらの時には補食のための家族の援助が必要があり、補食をしても回復するには多くの 場合30分~1時間を要する。また、睡眠も妨げられるなど、日常生活に様々な制約がある。 勤務については、植木の伐採など肉体労働を含む作業に従事しているが、稼働中に低血糖となることが危険なため、その予防のためリスクを取りながら高血糖に誘導するという自助努力と、父の代からの自営業で予定の調 整が容易であるといった職場環境によるところが大きい。 そうすると、控訴人X8については、重症低血糖を含む低血糖、高血糖になる頻度が高いため、インスリンの投与、補食と休憩といった自己対処等を行う必要が頻繁で、相当の時間を費やしているといえる。勤務については、肉体労働を含む作業に従事できているが、稼働中の低血糖を避けるため、相当程度高血糖に誘導しており、そのことによるリスクを負担して いることや、予定の調整が容易であるという職場環境があることから可能となっているものである。そして、家族からも、重症低血糖や無自覚低血糖が日常的にあって家族の介助が必要になる頻度も高いことにも照らすと、日常生活は大きく制限されており、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 (8) 控訴人X9についてア 3級該当性(甲I6、乙I1)控訴人X9は、昭和▲年生まれの女性で、平成3年に1型糖尿病を発症した(甲I6)。証拠(乙I1)によれば、基準時(平成28年8月30日)における控訴人X9の障害の状態は、インスリンポンプ療法を行って いるが、低血糖発作及び高血糖発作を繰り返し、血糖のコントロールが不能であること、内因性インスリン 準時(平成28年8月30日)における控訴人X9の障害の状態は、インスリンポンプ療法を行って いるが、低血糖発作及び高血糖発作を繰り返し、血糖のコントロールが不能であること、内因性インスリンの分泌は枯渇しており、随時の血清Cペプチド値の検査結果が0.1ng/mL 以下であること、少なくとも一般状態区分表のイに該当し、予測、予防ができない高血糖発作及び低血糖発作により直ちにウ、エ、オの状態に移行することが認められるから、基準時におい て少なくとも3級に該当している。 イ血糖コントロールの状態、症状等(甲I11~16、乙I1、控訴人X9本人、弁論の全趣旨)(ア) インスリン療法の状況血糖値モニター付きインスリンポンプによりインスリンを投与してお り(ただし、モニターは使用せず、血糖値は採血式によっていた。)、 身体への侵襲を伴う。インスリンポンプによるインスリン投与の方法は、上記(3)イ(ア)と同様である。基礎インスリンは、時間帯によって異なった注入量を設定し、追加インスリンは、毎食前のほか、平均して1日1、2回、血糖値が高めのときなどに投与していた。自己管理ノートに、血液を採取して測定した血糖値、インスリン量などを毎日記録し、月1回 の受診時には、その記録を元に主治医と相談してインスリン量を微調整している。 (イ) 血糖値の変動及び症状診断書(乙I1)には、意識障害により自己回復ができない重症低血糖がないとの記載があるが、上記記載に関する問診で、控訴人X9は、 主治医から重症血糖により救急搬送されたことの有無を聞かれており、主治医が、意識障害により自己回復ができない重症低血糖は救急搬送を伴うものと理解していた可能性がある。上記診断書の所見欄には「血糖コントロールは非常に不安 り救急搬送されたことの有無を聞かれており、主治医が、意識障害により自己回復ができない重症低血糖は救急搬送を伴うものと理解していた可能性がある。上記診断書の所見欄には「血糖コントロールは非常に不安定で、高血糖発作と低血糖発作を繰り返しているコントロール不能の状態であり、昏睡には至らないものの家人の助 けを借りなければならない重症低血糖発作を月1、2回は認めている。」旨の記載がある。所見欄が、血糖コントロールの困難さを示す上で、非常に重要なポイントであることは、専門家会合でも指摘されているところである(甲共64の3〈20頁〉)。 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院はない。 平成30年11月1日から同月30日までの30日間センサー式で測定したデータ(甲I11)では、54mg/dL 未満の重症低血糖なった日数は19日、回数は23回である。測定総時間中70mg/dL 未満の低血糖であった時間は15.7%、うち54mg/dL 未満の重症低血糖であった時間は6.0%であり、TBRにおける目標値を大きく逸脱している。 70mg/dL 前後の低血糖時には、脱力感、手の震え、意識が朦朧とする ようになる。ブドウ糖等を補食して対応するが、意識が朦朧となると自ら補食することは困難となり、家族の助けが必要である。回復までにかかる時間は30分から3時間以上である。 ウ日常生活の状況(甲I16、乙I1、控訴人X9本人、弁論の全趣旨)(ア) 生活環境 夫と二人の子(平成▲年▲月生まれの第一子、平成▲年▲月生まれの第二子)と同居している。独居の経験はない。 (イ) 就労・家事育児大学卒業後に事務の仕事に就き、約7年間勤務していたが、平成20年に婚姻を機に退職し、その後は就労し 、平成▲年▲月生まれの第二子)と同居している。独居の経験はない。 (イ) 就労・家事育児大学卒業後に事務の仕事に就き、約7年間勤務していたが、平成20年に婚姻を機に退職し、その後は就労していない。平成28年9月に作 成された診断書(乙I1)には、日中、夜間を問わず予測不能の低血糖発作が出現するため肉体労働は不可、軽労働も常に低血糖発作時に対処できる環境でなければ不可である旨の記載がある。 妊娠中は胎児に悪影響を与える高血糖状態を避ける必要が高いため、頻回の血糖値測定、インスリンの追加投入、補食を頻繁に求められる状 況にあった。育児中も、血糖コントロールに対する意識を強く持ち続けて対応した。子の成長に従って外出する際にも、血糖コントロールに細心の注意を払っている。 (ウ) その他就寝中に低血糖、高血糖になり、睡眠が妨げられることがしばしばあ る。血糖コントロールのために、食事の内容、食事にかける時間等を強く意識している。 白内障(糖尿病性の疑い)、糖尿病性歯周炎、橋本病及び原発性甲状腺機能低下症等の合併症がある。 エ日常生活の著しい制限に当たるか(2級該当性) 控訴人X9の随時の血清Cペプチド値の検査結果は0.1ng/mL 以下であ り、内因性インスリンの分泌は枯渇しており、3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤といい得る(上記ア、乙I1)。 インスリン療法にはインスリンポンプを用いており、インスリン投与量について、血糖値等とともに毎日自己管理ノートに記録し、月1回の受診時に主治医と相談して微調整をするなど、血糖コントロールに対する意識 を強く持ち続けているが、それでも血糖コントロールが困難であり、重症低血糖を含む低血糖になることが頻繁にあり、意識が 回の受診時に主治医と相談して微調整をするなど、血糖コントロールに対する意識 を強く持ち続けているが、それでも血糖コントロールが困難であり、重症低血糖を含む低血糖になることが頻繁にあり、意識が朦朧となって補食のために家族の援助が必要となる頻度も高く、補食後血糖値が回復するまでの時間も長時間にわたることがある。就労の経験はあるが、基準時の8年前からは就労しておらず、予測不能の低血糖発作が出現することから、発 作時の対処ができる環境下での軽労働のみ可能との診断がされており、労働も制限を受けている。育児に伴う外出はできているが、これも上記のような血糖コントロールに対する強い意識によってようやく可能となっているものといえる。 そうすると、控訴人X9については、重症低血糖になることが頻繁であ るため、補食と休憩といった自己対処等を行う必要が日常的にあるほか、血糖コントロールを強く意識した生活を続けること自体が大きな生活上の負担となっている。就労の経験はあるが、血糖コントロールが困難であることから、労働はほぼ不可能である。重症低血糖時に意識が朦朧となって家族の介助が必要になる頻度も高く、外出等は大きな自助努力を伴ってさ れているものであることにも照らすと、日常生活は大きく制限されているものと評価すべきであり、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たるものといえる。 6 まとめ以上によれば、控訴人ら7名については支給停止事由があるとはいえず、控 訴人X9については支給停止解除事由があるから、本件各処分は、その余の争 点について判断するまでもなく、いずれも違法である。 7 控訴人X9の義務付けの訴え(1審甲事件)について控訴人X9の義務付けの訴えは、いわゆる申請型義務付 件各処分は、その余の争 点について判断するまでもなく、いずれも違法である。 7 控訴人X9の義務付けの訴え(1審甲事件)について控訴人X9の義務付けの訴えは、いわゆる申請型義務付けの訴え(行訴法3条6項2号)であり、当該処分が取り消されるべきものである場合に限り、当該処分の取消しの訴えと併合して提起することができるところ(行訴法37条 の3第1項2号)、以上に説示したとおり、本件不解除処分は違法であるから、上記義務付けの訴えは適法である。 そして、控訴人X9は、基準日において2級に該当する障害の程度の状態に該当し、厚生労働大臣は、控訴人X9に対し、平成28年11月から障害基礎年金の支給停止を解除する旨の処分をしなければならないことは明らかである から、上記義務付けの訴えに係る請求は理由がある。 第4 結論以上によれば、控訴人らの請求は、いずれも理由があるから認容すべきであって、これをいずれも却下又は棄却した原判決は不当であるから、本件各控訴は理由がある。 よって、本件各控訴に基づき、原判決を取り消して、控訴人らの請求をいずれも認容することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官本 多 久美子 裁判官小堀 悟 裁判官蛯 名 日奈子

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