平成18(行ウ)741 行政文書不開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年7月12日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文5,257 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求処分行政庁が平成18年6月28日付けで原告に対してした,原告の同月14日付け行政文書開示請求につき,行政文書を不開示とした決定を取り消す。 第2事案の概要等本件は,原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき,平成18年6月14日,処分行政庁に対し,平成18年法律第10号による改正前の相続税法(以下「改正前相続税法」という。)49条の規定により,平成16年1月1日から同年12月31日までの間公示していた,課税価額が一定額を超える相続税に係る申告書の記載事項について開示を求めたところ,処分行政庁が,請求のあった文書に記載された個人識別情報については,情報公開法5条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当しないことを理由に不開示とする決定をしたことから,同決定には違法があると主張する原告が,その取消しを求めている事案である。 なお,平成18年法律第10号による改正によって,改正前相続税法49条により相続税の申告書の記載事項を公示する制度は,同年4月1日をもって廃止された。 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)( )原告の開示請求 ア原告は,平成18年6月14日付けで,処分行政庁に対し,情報公開法4条1項に基づき,請求する行政文書の名称等について「相続法第49条- 2 -の規定による申告書記載事項の公示平成16年1月1日~平成16年12月31日迄の公示を開始した分」である旨特定した上,行政文書開示請求をした(乙1以下「本件開示請求」といい請 9条- 2 -の規定による申告書記載事項の公示平成16年1月1日~平成16年12月31日迄の公示を開始した分」である旨特定した上,行政文書開示請求をした(乙1以下「本件開示請求」といい請求対象とされた文書を本。 ,「件行政文書」という。)。 イ処分行政庁は,平成18年6月28日付けで,本件開示請求につき,情報公開法9条2項に基づき,本件行政文書の開示をしない旨の決定する処分(以下「本件不開示決定」という。)をし,原告に対し,同日付けでその旨通知した(乙2。 )( )本件訴訟に至る経緯 ア原告は,平成18年8月22日,本件不開示決定の取消しを求め,審査請求をしたが,本件口頭弁論終結時,これに対する情報公開・個人情報保護審査会による答申及び裁決には至っていない。 イ原告は,平成18年12月26日,本件訴訟を提起した。 ( )その他 ア本件行政文書は,各公示開始日から1か月間,青梅税務署内の掲示板に掲示する方法によって公示されていた。 イ税務官署においては,平成17年3月末日まで,改正前相続税法49条(「」。)の規定による申告書の記載事項の公示制度以下本件公示制度というにより公示した内容については,情報公開法に基づく開示請求に応じる取扱いをしていたが,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報保護法」という。)の施行(平成17年4月1日)に際,,,し従来の取扱いを改め所得税及び相続税等の個人課税関係においては公示制度により公示したものであっても,既に公示期間が終了したものについては,情報公開法5条1号本文に該当する不開示情報を記録した行政文書に該当すると判断することとした。 争点 - 3 -本件の争点は,本件不開示決定の適法性である。 この点に関して,被告は,本 ついては,情報公開法5条1号本文に該当する不開示情報を記録した行政文書に該当すると判断することとした。 争点 - 3 -本件の争点は,本件不開示決定の適法性である。 この点に関して,被告は,本件行政文書には,情報公開法5条1号本文所定の不開示情報が記載されており,同情報は,同号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当しないと主張している。これに対して,原告は,本件行政文書が過去に法令の規定により公にされていたものであり,また,過去に情報公開に応じる取扱いがされていたことから,同号ただし書イに該当するとするほか,本件不開示決定が法律不遡及の原則(憲法39条)に反するとして,本件不開示決定は違法,違憲であり,取り消されるべきである旨主張する。 争点に対する摘示すべき当事者の主張は,上記のほか,後記第3「争点に対する判断」において掲げるとおりである。 第3争点に対する判断 本件行政文書は,改正前相続税法49条の規定の要件に該当する者ごとに,該当者の申告書の記載に従い,その者の氏名,納税地及び課税価格を記載した文書であるところ,そのような情報は,いずれも,個人に関する情報であり,かつ,当該情報に含まれる氏名等の記載によって特定の個人を識別でき,あるいは,他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができるものといえるから,情報公開法5条1号本文「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)であって,当該情報に含まれる氏名,生。 年月日,その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む」に該当する不開示情報(以下「個人識別情報」という)といえ。)。 る り特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む」に該当する不開示情報(以下「個人識別情報」という)といえ。)。 る。 これに対して,原告は,本件行政文書は,本件開示制度により,過去に公にされていたことから,情報公開法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。 しかしながら,情報公開法5条1号ただし書イにおいて「法令の規定によ,- 4 -り又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」を不開示情報から除いた趣旨は,個人識別情報であっても,一般に公にされている情報であれば,不開示情報とすることにより保護すべき利益が存するとは考え難,,いことによるものであると解されるところ過去に公表された情報であっても開示請求の時点では何人でも知り得る状態に置かれていないのであれば,開示請求時に不開示情報とすることにより保護すべき利益が存しないということにはならないのであるから,当然に同法5条1号ただし書イに該当するともいえない。むしろ,当該情報の性質,過去に公表された根拠やその態様等を考慮した上で,過去に公表されたことによって,当該情報を不開示情報とすることにより保護すべき利益が失われている場合にのみ,情報公開法5条1号ただし書イに該当すると解するのが相当である。 これを本件行政文書に含まれる個人識別情報についてみると,同情報は,遅くとも平成17年1月末には,公示期間が終了している情報であって,また,その公示方法も,当該税務署の掲示場の掲示板に1か月間公示されていたというものであるから,公示期間終了後も長期間にわたり,広く一般の者が当該情報を自ら保存することや,これを保存する第三者に照会することが想定される種類の情報であるとはいい難い。さらに,改正前 ていたというものであるから,公示期間終了後も長期間にわたり,広く一般の者が当該情報を自ら保存することや,これを保存する第三者に照会することが想定される種類の情報であるとはいい難い。さらに,改正前相続税法49条の趣旨は,同条の要件に該当する者の申告内容の一部を一定期間公示することにより,社会的監視による牽制効果を持たせ,もって,納税者に適正な申告を期待し,適正な申告を間接的に担保することにあり,同条による公示も,公示に係る申告内容の一部を一般に周知することまでも目的に含んでいた制度ではなく,あくまでも一定期間,定められた方法により公示されることそれ自体によって,その目的を達する制度であったといえる。 ちなみに,政府税制調査会は「平成18年度の税制改正に関する答申(乙,」6)において,公示制度が第三者による牽制効果を期待したものの,異なる目的に利用されており,犯罪や嫌がらせを誘発する原因となっていること,個人- 5 -情報保護法制の整備を契機として国の行政機関が保有する情報の一層適正な取,,扱いが求められていること等の諸事情から廃止すべきである旨答申しており本件公示制度については,弊害の発生が懸念されるなど否定的な評価を受けていたことが認められる。 以上検討したところによれば,本件行政文書に含まれる個人識別情報については,過去に公示されていたとしても,公示期間が終了した後においては,非開示情報とすることにより保護すべき利益がなお存するというべきであるから,情報公開法5条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には該当しないと解するのが相当であり,原告の主張は採用できない。 次に,原告は,本件公示制度により公示した内容については,改正前相続税法49条所定の公示期間を 公にすることが予定されている情報」には該当しないと解するのが相当であり,原告の主張は採用できない。 次に,原告は,本件公示制度により公示した内容については,改正前相続税法49条所定の公示期間を経過した後であっても,情報公開法に基づく情報開示請求に応じて,公にされてきたことをとらえて,本件行政文書に含まれる個人識別情報が,情報公開法5条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当する旨主張する。 確かに,前記前提事実(第2の1)( )イのとおり,税務官署においては, 平成17年3月末日までの間,本件公示制度により公示した内容については,。 ,情報公開法に基づく開示請求に応じて開示していた経緯が認められるしかし税務官署が開示請求に応じていた当時は,本件公示制度が維持されており,行政機関個人情報保護法も未施行であったのであるから,そうした前提の下で開示請求に応じていた事実があったからといって,そのことをもって,本件公示制度が廃止された後,行政機関個人情報保護法も施行された後にされた本件開示請求との関係において,公にする慣行があるとみる根拠にできないことは明らかであるし,不開示情報とすることにより保護すべき利益が失われていたともいい難い。 - 6 -したがって,かつての税務官署の取扱いを根拠に,本件行政文書に含まれる個人識別情報が情報公開法5条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するとの原告の主張を採用することはできない。 また,原告は,本件行政文書が開示されていた期間は,改正前相続税法49条の適用を受ける期間である以上,本件不開示決定が,法律不遡及の原則を定めた憲法39条に違反するとも主張する。し はできない。 また,原告は,本件行政文書が開示されていた期間は,改正前相続税法49条の適用を受ける期間である以上,本件不開示決定が,法律不遡及の原則を定めた憲法39条に違反するとも主張する。しかし,情報公開法上の不開示情報に該当するか否かについて,憲法39条の適用があるかどうかという点をひとまずおいても,前記前提事実( )によると,本件不開示決定は,同決定時に施 行されている法令を適用して行われたものであり,未施行の法令を遡及して適,,用したなどの事情は認められないから同主張は前提となる事実を欠いており採用の限りでない。 さらに,原告は,本件不開示決定において,処分行政庁が部分開示の可能性を検討していないことが違法である旨主張する。しかしながら,前記1のとおり,本件行政文書の内容は,特定の個人の相続税に係る申告書における氏名,納税地及び課税価格であって,いずれも個人に関する情報であり,それ自体で又は他の情報と照合することにより,その特定の個人を識別することができる情報であるといえる。したがって,部分開示をしなかったことが違法となるものではなく,やはり,原告の上記主張も採用できない。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部- 7 -田徹裁判長裁判官吉倉地康弘裁判官小島清二裁判官

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