平成13(わ)120 傷害致死,死体遺棄等被告

裁判年月日・裁判所
平成14年5月9日 福井地方裁判所
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判決文本文11,460 文字)

判決平成14年5月9日福井地方裁判所平成13年(わ)第120号、第141号被告人Aに対する傷害致死、死体遺棄、窃盗、道路交通法違反被告事件被告人Bに対する傷害致死、死体遺棄被告事件 主文 1 被告人Aについて(1) 被告人Aを懲役5年6月に処する。 (2) 未決勾留日数中210日をその刑に算入する。 2 被告人Bについて(1) 被告人Bを懲役5年に処する。 (2) 未決勾留日数中210日をその刑に算入する。 理由 (認定事実)第1 傷害致死事犯(1) 犯行に至る経緯被告人Bは、金沢市の実家に住む祖母や両親の許で養育され、中学校を卒業して地元で就職し、他方、被告人Aは、金沢市内の中学校を卒業して就職したのち両親と共に北海道上磯郡の実家へ転居し、平成4年10月頃から単身金沢市に戻って職を転々とするうち、被告人両名は、平成7年頃に知り合い、双方の両親が被告人両名の結婚に反対する中、平成7年12月に婚姻の届出をし、富山県魚津市内のパチンコ店で両名とも住み込み従業員として働くうち、平成8年11月に第1子の長女Cを儲けたが、被告人Bと同僚との折り合いが悪くなったため、平成10年1月頃、Cを連れて北海道の被告人Aの実家へ転居した。しかし、被告人両名は、もともと被告人Bを快く思っていない被告人Aの両親と被告人Bとの折り合いが悪いこと等から、間もなく被告人Aの実家近くの町営住宅に転居し、被告人Aが土木作業員等のアルバイトをして生活するうち、同年4月29日に第2子の二女Dを儲けたが、同年9月頃にはE町を離れ、翌10月頃から福井県吉田郡のパチンコ店で両名とも住み込み従業員として働き、その社員 土木作業員等のアルバイトをして生活するうち、同年4月29日に第2子の二女Dを儲けたが、同年9月頃にはE町を離れ、翌10月頃から福井県吉田郡のパチンコ店で両名とも住み込み従業員として働き、その社員寮で2歳になるC及び生後半年のDと一緒に暮らすようになった。そこに暮らしていた間、被告人両名は、CやDの体に垢が溜まるまで風呂に入れないで放置するなど、子供の世話をしようとする意思が乏しかったのに、今後の出産計画や育児能力等について十分話し合うこともなく、平成11年2月頃に被告人Bが第3子を妊娠したことが判明したため、被告人Bは同店をやめ、翌3月に同店をやめた被告人Aと共に社員寮を出た。 その後、被告人Aは、平成11年4月頃、石川県松任市内のF株式会社に運転手として就職し、その社員寮で家族と共に暮らすうち、同年5月に被告人Bは第3子の三女Gを出産し、翌6月にF株式会社が用意した金沢市内のアパートに移った。しかし、被告人Aの勤務態度は、親戚が死んだという嘘を並べて会社を休んだり、会社に高速道路の代金が請求されるカードを無断で使用したり、会社のトラックを損傷する事故を3回も惹起するなど良好でなく、結局、被告人Aは同年10月に無断で退職し、被告人Bら家族と共に同アパートから室内に生活用品等を散乱させたままで立ち去ったが、F株式会社が被告人Aに代わって支払った同アパートの修繕費やトラックの修理代金等を合計すると、被告人Aが返済すべき金額は約20数万円に達していた。 被告人Aは、F株式会社を無断で退職したことを隠したまま、平成11年11月頃、石川県松任市内のH株式会社に運転手として就職し、その社員寮で3歳のC・1歳半のD・生後半年のGを抱えていた被告人Bと共に暮らすようになったが、被告人両名は、Gが生まれた同年5月頃から既に、自分たちの 川県松任市内のH株式会社に運転手として就職し、その社員寮で3歳のC・1歳半のD・生後半年のGを抱えていた被告人Bと共に暮らすようになったが、被告人両名は、Gが生まれた同年5月頃から既に、自分たちの育児の負担が増えたのにDがCに比べて成長が遅く手がかかるとしていらだち、自分たちの思いどおりにならないとして腹を立て、Dに暴力を振るうようになっており、被告人Aは、その顔や尻を平手で強打するなどし、被告人Bも、Dをつねったりハンガーで尻を叩いたりシャワーの湯をかけたりしていた。このように被告人両名がDに対する暴力を繰り返す中で、同年11月、Dは、被告人Aの暴力により左後頭部打撲挫創の傷害を負い、病院で後頭部の皮膚を縫う治療を受けたことまであった。平成12年の春頃から夏頃までの間も、Dの頬・背中・腹・目の周り等に被告人両名の暴行による痣が絶えることはなく、Dは、このような被告人両名による虐待の影響もあって、2歳になっても同年齢の子供に比べ体重が軽く、言葉の発達も遅れ、「パパ、ママ、バーカ、バーチャン」と言える程度であった。 そのような状況の下に、被告人Bは、第4子を妊娠し、平成12年6月に第4子の長男Iを出産したが、同年7月頃、その実家に1か月間くらいC・D・Gを連れて滞在した際には、被告人両名による虐待から解放されたDは、これをかわいがった被告人Bの祖母に懐き、H株式会社の社員寮へ戻る際にも、その体にくっついて離れようとしないDを被告人Aが引き離して連れ帰ったほどであった。 しかるに、被告人両名は、自分たちとは折り合いが悪かった被告人Bの祖母がDをかわいがること自体不快に思っただけではなく、被告人Bの実家ではDが思いどおりに振る舞っていたと勝手に考えて腹を立て、H株式会社の社員寮へ戻ったDを更に厳しく虐待するようになった 告人Bの祖母がDをかわいがること自体不快に思っただけではなく、被告人Bの実家ではDが思いどおりに振る舞っていたと勝手に考えて腹を立て、H株式会社の社員寮へ戻ったDを更に厳しく虐待するようになった。 しかるところ、平成12年7月頃、被告人Aの下にF株式会社から約23万7000円の請求書が届いたが、被告人Aは、その対応を被告人Bに相談しないまま請求に応じようとはせず、翌8月中旬頃、F株式会社の担当者から直接取立てに行く旨の電話を受けるや、被告人Bに対し、ヤクザからいわれのない取立てを受けている旨の嘘をつき、子供たちの安全を守るためには家にいないほうがよいなどと言い含めて、同月下旬頃、H株式会社の社員寮から、そのトラックで被告人B・C・D・生後1年余のG・生後2か月のIを連れ出し、この妻子5名を乗せたまま、そのトラックでH株式会社の荷物を金沢から関西方面や関東方面に輸送していたが、当然のことながら、被告人両名は、狭いトラックの中での生活等によって次第に精神的にも肉体的にも疲労が高まり、子供たちもトラックでの生活に飽き、次第に被告人両名の言うことを聞かなくなった。 平成12年9月2日夕方、被告人Aが仕事を終えてH株式会社事務所に戻った際、専務から「トラックに家族を乗せて仕事に行くのは危険だから、今後はしないように。借金取りが来ているようだが、月に1、2万でも給料天引きで返したらどうか。」と注意を受けたが、被告人Aは、H株式会社の社員寮に戻ればF株式会社の債権取立てを免れることができず、そうなれば、これまで被告人Bに言い含めていた、いわれのない取立てを受けている旨の嘘がばれてしまうと考え、被告人Bに対し「ヤクザが来ている。寮にいるのはまずい。」などと更に嘘を重ねて、自分の普通乗用自動車スズキワゴンR(石川○○こ○○○○号、以下 われのない取立てを受けている旨の嘘がばれてしまうと考え、被告人Bに対し「ヤクザが来ている。寮にいるのはまずい。」などと更に嘘を重ねて、自分の普通乗用自動車スズキワゴンR(石川○○こ○○○○号、以下「本件自動車」と略称)に妻子5名を乗せ、金沢市内の宿泊施設があるプールへ連れて行ったが、被告人両名は、暴行による痣が体に残っているDは人目を避けるためプールに入れず、被告人A・C・Gだけ一緒にプールに入った。その宿泊施設に泊まれなかったため、被告人両名は、子供連れでも宿泊できるところを探し、同日午後10時30分頃、石川県石川郡のいわゆるラブホテルであるホテルJで宿泊手続をとった。 被告人両名は、子供4名を連れてホテルJ303号室に入ると、子供たちを早く風呂に入れて、不自由なトラック生活による疲れを癒そうと考え、風呂場の浴槽に湯を張り、被告人AがI・C・Gを入浴させたのちDを風呂に入れたが、Dが風呂場の中で泣いたため、これに腹を立てた被告人Aは、いつもDが一番嫌がることをして泣き止ませようと考え、シャワーの湯を頭からかけたが、Dは泣き止まなかった。 (2) 犯罪事実被告人Aは、平成12年9月2日午後11時頃、ホテルJ303号室の風呂場において、泣き続けるD(当時2歳4か月)の口許にシャワーの先をあてがい、噴出する湯をむりやり飲ませて泣き止ませようとしたが、当然のことながら苦しむDが泣き止むはずはなく、その責め苦に耐えかねて大声で泣き続けたため、自分たちが疲れ切っているのにDが一向に静かにならないとの憤懣が込み上げてますます立腹し、その鬱憤を晴らそうとの思いと、何としてでも静かにさせようとの思いから、泣き止まないDをもっと怖い思いに遭わせてやろうと考え、Dの髪の毛を掴んで抱き上げたうえ、その顔面を下に向けて数回にわたり浴槽の湯に沈ませ 晴らそうとの思いと、何としてでも静かにさせようとの思いから、泣き止まないDをもっと怖い思いに遭わせてやろうと考え、Dの髪の毛を掴んで抱き上げたうえ、その顔面を下に向けて数回にわたり浴槽の湯に沈ませる暴行を加えた。その後、Dが泣き止んだと思った被告人AがDを風呂場から出したので、被告人BがDの体を拭いて服を着せた。 Dは風呂場から出た後も泣き続けたため、被告人Bも、これまでの不自由なトラック生活による疲れが溜まっていたうえに、折角ラブホテルに子供連れで入室できたのに、このままDが泣き続けて周りの部屋に泣き声が届くようなことがあれば他の宿泊客から苦情が出て、ここを追い出されるのではないかと恐れ、Dを一刻も早く泣き止ませるため懲らしめようと考え、服を着たままのDを風呂場に連れて行き、その頭から洗面器で浴槽の湯を浴びせかけたが、Dが泣き止まないのを見て服を脱がせ、おむつをはかせただけの姿にして寝室に放置した。 被告人両名は、その頃、泣き止まないDに対し、腹立ちからくる怒りをぶつけるとともに親の言うことを聞かないとして懲らしめるために暴行を加える旨の意思を暗黙のうちに相通じ、翌3日午前零時頃、被告人Aが風呂場でDの頭を手拳で数回殴打したうえ、Dを浴槽の中にうつ伏せにし、その肩と腰の部分を押さえつけてDの頭を浴槽の湯に数秒間沈める暴行を加え、これによって激しく泣き出したDを見た被告人Bも、自分自身の手でDを懲らしめなければ気が済まないとの思いが込み上げ、Dの頭を押さえつけて湯に数秒間沈める暴行を加えたに止まらず、苦しさに首を反らして湯から顔を出したDの頭を更に5秒間くらい湯に沈める暴行を加え、この被告人両名の順次浴槽の湯に沈める暴行により、Dに浴槽の湯を吸引させ、同日午前零時30分頃、ホテルJ303号室において、Dを窒息により死亡させた したDの頭を更に5秒間くらい湯に沈める暴行を加え、この被告人両名の順次浴槽の湯に沈める暴行により、Dに浴槽の湯を吸引させ、同日午前零時30分頃、ホテルJ303号室において、Dを窒息により死亡させた。 第2 死体遺棄事犯(1) 犯行に至る経緯被告人両名は、平成12年9月3日午前零時30分頃、ホテルJ303号室の床に横たわっていたDの鼻の穴から白く細かい泡が流れているのに気づき、被告人AがDの心臓付近に手を当てるなどして容態を把握しようとしたが、Dの呼吸は停止して心臓に鼓動もないことが判明したため狼狽し、Dに人工呼吸や心臓マッサージをしたものの、何の反応もなかった。 被告人両名は、その後2時間くらいの間、今後どうするかを話し合い、被告人AがDを病院に連れて行くとの提案をしたのに対し、被告人Bが、病院に連れて行けば体に残る痣等から、これまでの虐待やホテルJでの暴行が発覚して警察に捕まると考え、「それはだめ。」と反対したため、結局、被告人両名の間には、人に気づかれないようにホテルJを出て、Dの死体を人目につかない場所に捨てようとの死体遺棄の共謀が成立した。 (2) 犯罪事実被告人両名は、同日午前3時頃、ホテルJ303号室で服を着せたDの死体を被告人Aが抱きかかえてホテルJ駐車場まで搬出し、C・G・I(以下3名を「子供3名」と略称)を連れて本件自動車に乗り込んだのち、被告人Aが助手席にDの死体を乗せた本件自動車を運転して富山県方面へ向かい、同日午前6時頃、同県小矢部市のK株式会社から南側に約300メートル離れた空き地で、Dの死体を黒色ビニール袋に二重に入れて口を結んだうえ、これを手提げバッグに詰め、その手提げバッグを本件自動車の助手席の足元に置き、そこからは被告人Bが助手席に乗り込み、被告人Aが運転して、Dの死体を捨て を黒色ビニール袋に二重に入れて口を結んだうえ、これを手提げバッグに詰め、その手提げバッグを本件自動車の助手席の足元に置き、そこからは被告人Bが助手席に乗り込み、被告人Aが運転して、Dの死体を捨てるのに適した場所を探しながら福井県方面に向かった。その途中で、被告人両名は、Dが被告人Bの実家を気に入っていたことを思い出し、その裏山にDを埋めようと考え、同日午後8時30分頃、金沢市内の被告人Bの実家の裏山に着いたが、そこは被告人Bの父親等が出入りする場所であり、死体を埋めてもすぐに見つかると考え直して断念し、被告人Aが本件自動車を運転して再び福井県方面に向かった。 被告人Aは、Dの死体を捨てる場所を探しながら本件自動車を運転していたが、翌4日には、疲労感と眠気のためにそれ以上の運転が困難となり、福井県南条郡の休憩施設「道の駅L」駐車場に本件自動車を駐車して仮眠した。その間に、被告人Bは、上記休憩施設の展望台から西側の崖にある茂みまで降り、その茂みの中にある樫の大木の根本に低い草木が生い茂って洞穴状になっている場所を見つけ、そこならDの死体を捨てても人目につかないであろうと考え、本件自動車内で仮眠をとっていた被告人Aを起こし、Dの死体を捨てるのに適した場所を見つけた旨を話した。これを聞いた被告人Aも、みずからその洞穴状の場所まで降りて、人目につきにくいことを確認し、ここにDの死体を捨てることを決意し、同日午前5時頃、上記休憩施設の展望台西側崖の茂みの中にある洞穴状の場所に、上記手提げバッグ及び黒色ビニール袋からDの死体を取り出して捨て、その上に黒色ビニール袋をかけた。 このようにして、被告人両名は、共謀のうえ、Dの死体を遺棄した。 第3 窃盗事犯(1) 犯行に至る経緯被告人両名は、Dの死体を捨てたのち、これまでのDに対 黒色ビニール袋をかけた。 このようにして、被告人両名は、共謀のうえ、Dの死体を遺棄した。 第3 窃盗事犯(1) 犯行に至る経緯被告人両名は、Dの死体を捨てたのち、これまでのDに対する虐待や本件傷害致死の犯行の発覚を恐れ、逮捕を免れるため、北陸地方や東北地方などを本件自動車やレンタカーで子供3名を連れて移動しながら、その車中やホテルで宿泊する放浪生活を送っていたが、このような逃亡生活を送るうちに生活費にも事欠くようになったため、被告人Aは、店舗で品物を窃取し、その盗品を中古品買取り店に持ち込んで換金して、これを生活費に充てようと考えた。 (2) 犯罪事実被告人Aは、 1 平成13年4月16日午後11時53分頃、山形市のM店において、その店長N管理に係る音楽CD1点(時価2913円相当)を窃取し、 2 同月17日午前10時頃、山形市の株式会社Oにおいて、その店長P管理に係るDVDソフトなど3点(時価合計1万2826円相当)を窃取し、 3 同日午前11時頃、山形市のQ店内の株式会社Rにおいて、その店長S管理に係る音楽CD3点(時価合計1万0108円相当)を窃取した。 第4 無免許運転事犯(1) 犯行に至る経緯被告人Aの運転免許は平成12年12月に失効し、本件自動車が平成13年1月中旬頃に故障して使用できなくなったため、被告人Aは、被告人Bが借りたレンタカーを運転して上記のような逃亡生活を続けていた。 (2) 犯罪事実被告人Aは、公安委員会の運転免許を受けないで、平成13年4月17日午後4時9分頃、仙台市の東北縦貫自動車道T料金所自動発券機付近道路において、レンタカーである普通乗用自動車(石川○○わ○○○○号)を運転した。 (法令の適用) 1 被告人Aア罰条第1( 、仙台市の東北縦貫自動車道T料金所自動発券機付近道路において、レンタカーである普通乗用自動車(石川○○わ○○○○号)を運転した。 (法令の適用) 1 被告人Aア罰条第1(2)につき刑法60条、205条第2(2)につき刑法60条、190条第3(2)1ないし3につきいずれも刑法235条第4(2)につき道路交通法118条1項1号、64条イ刑種の選択第4(2)につき懲役刑ウ併合罪処理刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い傷害致死罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重)エ未決勾留日数算入刑法21条オ訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書 2 被告人Bア罰条第1(2)につき刑法60条、205条第2(2)につき刑法60条、190条イ併合罪処理刑法45条前段、47条本文、10条(重い傷害致死罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)ウ未決勾留日数算入刑法21条エ訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の事情) 1 本件は、被告人両名が、実の子である2歳4か月のD(平成10年4月29日生)に対しホテルの一室で浴槽の湯に顔を沈めるなどの暴行を加えてDを窒息死させ、その死体をU村の崖にある人目につかない茂みの中まで運んで遺棄し、以後約8か月にわたり自動車で逃亡生活を続けるうち生活費に窮し、これを得るために被告人Aが店舗で物品を窃取し、自動車の無免許運転をしたという事案である。 2 本件傷害致死について(1) 被告人両名は、もともと子 り自動車で逃亡生活を続けるうち生活費に窮し、これを得るために被告人Aが店舗で物品を窃取し、自動車の無免許運転をしたという事案である。 2 本件傷害致死について(1) 被告人両名は、もともと子供の世話をしようとする意思が乏しく、Dの世話も怠っていただけでなく、第3子のGが生まれた平成11年5月頃からは、当時満1歳になったばかりのDがCに比べて手がかかり、自分たちの思いどおりにならないなどといった身勝手極まりない理不尽な理由で、実の親なら分別を要求することなどありえない年齢のDに対し、あろうことか共に暴力を振るうようになり、平成12年の春頃からDが満2歳を過ぎて被告人両名に命を奪われるまでの間、Dの体には被告人両名の暴力による痣が絶えない程度にまで至っていた。このように親から虐待を受けて生きる幼な子の心身が順調に発達するはずはなく、実の両親である被告人両名の虐待による影響もあって発達が遅れたDが、それを理由に更に虐待を受けるというのでは、あまりも残酷である。 それまでの間も、被告人Aは、転々と勤務先を変えていたのに、被告人Bとの間に平成10年4月にD、平成11年5月にG、平成12年6月にIと、次々に子を儲けて育児の負担を増大させただけではなく、平成12年8月中旬頃には、被告人Bに対し、ヤクザからいわれのない取立てを受けている旨の嘘をついて、被告人B及び手がかかって当然の乳幼児を含む4人の子に不自由なトラック生活を余儀なくさせ、被告人Aを含む家族全員が肉体的にも精神的にも疲労を蓄積させていったのに、本件傷害致死の当日には、ヤクザが来ているので社員寮には帰れない旨の嘘を重ねて、疲れた妻子をホテルの一室へ赴かせたものである。 このようにして肉体的にも精神的にも疲労が蓄積していた被告人両名は、ホテルの一室で泣き が来ているので社員寮には帰れない旨の嘘を重ねて、疲れた妻子をホテルの一室へ赴かせたものである。 このようにして肉体的にも精神的にも疲労が蓄積していた被告人両名は、ホテルの一室で泣き出したDに対し、自分たちが早く休みたいとの思いから、上記のとおり残酷な虐待の延長として、いわれのない暴行を執拗に加えたものであり、この虐待にもがき苦しんだDは、遂に生命まで奪われたのである。このような虐待を、上記のような身勝手極まりない理不尽な理由で正当化しようとした被告人両名が、今は亡きDから非情かつ冷酷と怨まれてもやむを得ない。 (2) 本件傷害致死の犯行態様は、逃れるすべのない幼児であるDの頭部を浴槽の湯の中に沈めるなどの暴行を執拗に加えたというものであり、死の結果発生に至る可能性が極めて高いのに、実の両親である被告人両名が揃ってその危険性を顧慮することなく執拗に暴行を続けたという点で極めて悪質である。 (3) また、その犯行は、薄幸のうちにも懸命に生きようとしていたDの命を、僅か2年4か月で奪ったものであって、結果も極めて重大である。 3 本件死体遺棄について(1) 我が子Dの生命を奪った被告人両名は、これを弔うどころか、自分たちがDに加えてきた虐待や本件傷害致死の犯行が発覚しないことのみを願い、Dの死体を遠くU村の崖にある茂みまで運んで捨てたうえ、その後約8か月にわたり逮捕を免れるため子供3名を連れて逃亡生活を続けたものであって、そこには、我が子Dに対する情愛の念はもとより死者に対する畏敬の念も窺われない。 (2) 本件死体遺棄は、被告人Aが平成13年4月17日に仙台市で本件無免許運転の罪により現行犯逮捕された際、警察の追及を受けた被告人両名がDの死体を捨てた場所を自供したことにより発覚したものであるが、その 本件死体遺棄は、被告人Aが平成13年4月17日に仙台市で本件無免許運転の罪により現行犯逮捕された際、警察の追及を受けた被告人両名がDの死体を捨てた場所を自供したことにより発覚したものであるが、その自供に基づく捜査の結果、Dの死体が発見されたのは、被告人両名が遺棄してから約8か月経過後のことであり、Dの死体は、野生動物等に食い散らされて、既に白骨化した一部の骨のみとなり、その遺骨すら散乱している状態になっていたのである。Dは、薄幸の中で短い一生を閉じたのちも、葬られることなく茂みに放置され、白骨化した骨の一部しか残らなかったのであって、その霊の怨みに思いをいたすと、哀れというほかはない。 (3) また、本件死体遺棄の犯行を自供した被告人両名も、その後の捜査により本件傷害致死の犯行を認めるに至る前は、ともに、Dは海で溺れて死んだ旨の虚偽の供述をしていたのであって、これらの犯行が順次社会に報道された結果、社会に衝撃を与えたことも看過できない。 4 本件窃盗と本件無免許運転について(1) 本件窃盗と本件無免許運転は、被告人両名が逮捕を免れるために自動車で逃亡生活を続けるうちに、被告人Aが単独で犯した犯行である。被告人Aは、そのような逃亡を続けるために換金目的で店舗から品物を窃取し、運転免許が失効してから4か月近くにわたり自動車運転を続けてきたのであって、その規範意識の鈍麻は顕著というほかはない。 (2) しかし、本件窃盗の目的は、被告人両名が逃亡生活を続けるための資金を得るところにあり、本件無免許運転についても、被告人Bが被告人Aの運転免許が失効していることを知りながら、逃亡生活に使用するレンタカーを自分の名義で借りたという事情がある。 5 これまでに検討した事情に照らして考えると、僅か2年4か月の短い生涯を終えたD の運転免許が失効していることを知りながら、逃亡生活に使用するレンタカーを自分の名義で借りたという事情がある。 5 これまでに検討した事情に照らして考えると、僅か2年4か月の短い生涯を終えたDは、世界に二人しかいない実父母の完全な支配下にある時期を生きていたのであるから、実父母である被告人両名は、本来であれば、我が子Dに情愛を注ぎ、その発達の程度に応じた養育をし、健全な心身を育成しなければならなかったにもかかわらず、第3子Gを儲けて育児の負担が増えるや、満1歳になったばかりのDに対し、第1子のCに比べて手がかかるなどという自分たちの都合だけで虐待を始め、更に育児の負担が増えた第4子Iの出生後も虐待を続け、その虐待の影響もあって発達が遅れていたDに対し、これを理由に更に強烈な虐待を繰り返したあげく、被告人Aの無責任極まりない生活態度によって心身ともに疲労困憊するに至ったというのに、またもや自分たちの都合だけで、泣き叫ぶDを押さえつけて浴槽に沈めるなどの非情な虐待に及んだ結果、遂に我が子Dの命まで奪い、さらに、自分たちの逮捕を免れるためにDの死体を崖の茂みに隠して逃走し、盗みをして逃亡資金を作るまでになった被告人Aが無免許運転で現行犯逮捕されるまでの間、長期間にわたり逃亡生活を続けていたのである。もがき苦しみながら夭折したDにとって、被告人両名は、親ではなく、冷酷・非情な鬼であったと言っても過言ではない。このような本件傷害致死及び本件死体遺棄の犯情及び情状が極めて悪質で、強い非難を加えなければならないことは明らかであり、その刑事責任が相当に重いことも明らかである。 被告人両名が当公判廷において自分たちの身勝手な行動によりDの命を奪ったことについて反省していること、情状証人として出廷した被告人Aの父親及び被告人Bの母親がそれぞれ被 いことも明らかである。 被告人両名が当公判廷において自分たちの身勝手な行動によりDの命を奪ったことについて反省していること、情状証人として出廷した被告人Aの父親及び被告人Bの母親がそれぞれ被告人両名の更生に協力する旨を証言していること、被告人両名には、現在被告人Aの両親が引き取って養育している満5歳のC・すぐに満3歳となるG・間もなく満2歳となるIの3名の子供がいること、なお、被告人Aには道路交通法違反の罰金前科3件以外に前科がなく、被告人Bには前科がないことなど、被告人両名のために斟酌すべき情状もないではないが、これをもって、上記のとおり重大な刑事責任を大幅に減ずることはできない。 6 被告人両名がDに加え続けた虐待の程度について、それぞれの暴行内容や回数等を全体的に見れば、その間に大差はないというべきであり、本件傷害致死及び本件死体遺棄における被告人両名の各実行行為を見ても、共に積極的に関与したものであって、むしろ、その各犯行において被告人Bが果たした役割は、被告人Aに優るとも劣らないというべきである。被告人Aの単独犯行である本件窃盗及び本件無免許運転についても、被告人Bに無関係の犯行とはいえず、これをもって被告人Aの刑事責任と大きな差をつけることはできない。 しかしながら、前記のとおり、被告人Aが転々と勤務先を変えていたのに被告人Bとの間に次々に子を儲けて育児の負担を増大させただけではなく、被告人Bに嘘をついて乳幼児4人を抱える被告人Bに不自由なトラック生活を強いるような無責任極まりない生活態度をとり、これが本件傷害致死の犯行を触発した面があることからすれば、被告人Aの刑事責任は、被告人Bのそれよりも、その分重いというべきである。 7 以上の事情のほか諸般の事情をも考慮して、主文のとおり量刑した。 死の犯行を触発した面があることからすれば、被告人Aの刑事責任は、被告人Bのそれよりも、その分重いというべきである。 7 以上の事情のほか諸般の事情をも考慮して、主文のとおり量刑した。 平成14年5月9日福井地方裁判所刑事部裁判長裁判官松永眞明裁判官佐藤晋一郎裁判官松本展幸

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