平成10(行コ)83 出生届自己情報非開示処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成11年6月17日 東京高等裁判所 情報公開
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判決文本文3,667 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が、控訴人に対し、平成七年一一月一六日付でした情報非開示決定を取り消す。 3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文と同旨第二事案の概要本件事案の概要は、原判決の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 第三当裁判所の判断一戸籍事務について 1 戸籍事務は、日本国民の国籍及び出生・婚姻・縁組等の公法上又は私法上の身分関係を戸籍簿等に記載し、公証する事務であり、その性質上全国的に統一的な取扱いが要請されるから、国の事務とされ、法務省がこれを所掌している(法務省設置法二条五号、三条七号参照)。そのために、法務省には、戸籍等に関する国の行政事務を分掌する法務局及び地方法務局が置かれている(同法八条一項)。 2 しかし、戸籍に関する事務は、広く国民生活全般にかかわりをもち、その利用者の便宜等を考慮する必要があるために、市町村長又は区長が、国の機関として、これを管掌することとされている(戸籍法一条、四条)。 したがって、戸籍事務は、市町村長等が管掌するものではあるが、国のいわゆる機関委任事務に属し(地方自治法一四八条一項、三項、別表第四、二、(四)。なお、地方自治法二条三項一六号は戸籍事務を同法二条二項の事務として掲げているが、右規定をもって戸籍事務が機関委任事務ではないということはできない。)、市役所又は町村役場等の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長の監督を受ける(戸籍法三条、四条。なお、国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇条参照。)。 二戸籍事務にかかる情報の開示について 1 右にみたように、戸籍事務は 轄する法務局又は地方法務局の長の監督を受ける(戸籍法三条、四条。なお、国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇条参照。)。 二戸籍事務にかかる情報の開示について 1 右にみたように、戸籍事務は、もともと国の事務であり、法律により市町村長等の権限に属することとされた機関委任事務であるから、市町村等の議会は、戸籍事務の管理執行についてはもちろん、後記2、(三)、(1) に説示するところから明らかなように、戸籍簿等の管理ないし開示についても条例を制定することはできない(地方自治法一四条一項)。 2(一) それでは、市町村長等が戸籍事務(機関委任事務)を管掌する際に保有することとなった内部事務処理文書(以下単に「内部事務処理文書」という。本件文書もこの内部事務処理文書に含まれる。)の管理ないし開示は、戸籍事務の管理執行や戸籍簿等の管理ないし開示とは別であって、専ら地方自治法二条二項の公共事務(いわゆる固有事務)に属するとして、市町村等の議会がこれについて条例を制定することができるであろうか。 (二) 地方自治法一四九条八号は、市町村長等の担任事務として「公文書類を保管すること」を掲げているが、右の「保管」は、「保存」とも「管理」とも異なり、公文書類を自己の支配下に保持し、その滅失、毀損を防ぐという消極的な趣旨を有するにすぎないから、右の規定を根拠として、市町村等が内部事務処理文書の管理ないし開示について条例を制定することができると解することは困難である。 (三) また、そもそも戸籍事務の管理執行や戸籍簿等の管理ないし開示と内部事務処理文書の管理ないし開示とは密接不可分な関係にあるから、両者を右のように判然と区別することができるかについては相当疑問がある上、仮に両者の性質が異なるという前提に立つとしても、内部事務処理文書の管理ないし開示は、機関 開示とは密接不可分な関係にあるから、両者を右のように判然と区別することができるかについては相当疑問がある上、仮に両者の性質が異なるという前提に立つとしても、内部事務処理文書の管理ないし開示は、機関委任事務としての性質と固有事務としての性質とを併有するといわざるを得ないところ、むしろ前者の性質が後者の性質より強いことを否定することができない。 このことは、(1) ① 戸籍法は、一〇条、一二条の二において戸籍謄本、除籍謄本等の交付請求について、四八条二項において市町村長等の受理した書類の閲覧等の請求について、一一八条において戸籍事務の処分にかかる不服申立てについてそれぞれ規定しているほか、一二五条において届書その他戸籍事務の処理に関し必要な事項を命令に委任し、② 当該命令(戸籍法施行規則)は、戸籍簿、除籍簿のほか戸籍に関する帳簿、届書その他の書類の管理、保存について詳細に規定し、さらに、四八条二項において一定の届書、申請書等について監督法務局等への送付を、八○条二項において市町村の区域の変更に伴う書類の引継ぎについて監督法務局等への報告をそれぞれ義務づけていること等を併せ考えると、③ 結局、戸籍法及び戸籍法施行規則は、戸籍事務にかかる文書のうち基本的なものを含む相当広範囲なものの管理ないし開示についてこれを機関委任事務としているから、その余の付随的な文書、即ち内部事務処理文書の管理ないし開示についてもこれを機関委任事務としているのではないかと窺われること、(2) 内部事務処理文書の管理ないし開示が専ら固有事務に属すると解すると、市町村等の議会が、戸籍事務について最終的な責任を負う国の意思とは別に、しかも市町村ごとに、かつ、独自に、内部事務処理文書を開示の対象とするか、その非開示事由をどうするか等について決定することになるが、そのことは、 戸籍事務について最終的な責任を負う国の意思とは別に、しかも市町村ごとに、かつ、独自に、内部事務処理文書を開示の対象とするか、その非開示事由をどうするか等について決定することになるが、そのことは、国民の間に無用の混乱と不平等感とを招き、極めて好ましくない結果をもたらすこと、(3) ちなみに、内部事務処理文書のなかには本件文書が含まれるところ、本件文書は被控訴人の疑義に対する指示の請求に応えて交付されたものであって、従前の通達、取扱いとの関係でなお議論の余地のある問題に関するものである(甲一〇、一一、一三及び弁論の全趣旨。なお、後記三で引用する原判決の「第三当裁判所の判断」二、3後段参照。)こと等にかんがみれば明らかである。 3 以上のようにみてくると、機関委任事務一般にかかる情報の管理ないし開示についてはともかく、戸籍簿等の管理ないし開示は機関委任事務そのものに属するし、戸籍事務にかかる内部事務処理文書の管理ないし開示は機関委任事務としての性格を強く帯び、その反面として固有事務としての性格が薄弱であり、かつ、これらの文書について開示を相当と解すべき根拠もない。 そして、本件条例には戸籍事務にかかる文書を対象とするかどうかについての特段の規定は置かれていないから、ひるがえって考えてみると、本件条例は、そもそも戸籍事務にかかる文書はすべてこれを閲覧等の開示の対象にすることはできないし、またこれを閲覧等の開示の対象にしていないと解すべきである。 そうすると、控訴人は、本件条例に基づいて、本件文書の開示を請求することができないこととなるから、控訴人の請求は、失当として排斥を免れない。 三本件文書の非開示事由該当性について当裁判所の本件訴訟に対する判断は、右二で説示したとおりであるが、本件非開示決定ないし本件訴訟の経緯にかんがみて、念のた の請求は、失当として排斥を免れない。 三本件文書の非開示事由該当性について当裁判所の本件訴訟に対する判断は、右二で説示したとおりであるが、本件非開示決定ないし本件訴訟の経緯にかんがみて、念のために、本件文書の非開示事由該当性についても判断する。 この点に関する当裁判所の判断は、次のとおり訂正するほか、原判決四四頁六行目から五三頁七行目までと同じであるから、これを引用する。 1 原判決四七頁三行目の「明らかにしている」から同頁四行目末尾までを「明らかにしている(乙六、七)。」と改める。 2 原判決四七頁七行目の「服するものであるが(戸籍法三条、四条)」から四八頁二行目の「あてはまるものであるから、」までを「服するものである(戸籍法三条、四条)から、」と改める。 3 原判決四九頁八行目の「本件非開示の指示」から同頁末行までを「そして、」と改める。 四結論以上説示したところによれば、本件開示請求に応じないとした本件非開示決定は結局適法というべきである。 そして、原判決はその理由において一部不当なところがあるが、結論において正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 (平成一一年一月二一日口頭弁論終結)東京高等裁判所第一〇民事部裁判長裁判官増井和男裁判官岩井俊裁判官小圷眞史

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