平成11(ワ)28239 不当利得返還請求

裁判年月日・裁判所
平成13年11月16日 東京地方裁判所
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判決文本文17,268 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金1億8607万8424円及びこれに対する平成11年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告,被告及び株式会社Eが,平成9年から平成11年の間に,原告→被告→株式会社E→被告→原告という流れのケーブル類の売買取引を行い,原告と被告との間で相互に売買代金の支払・決済がされていたが,取引の大部分が現実には存在しない商品を対象としていたことが判明したとして,原告が,被告に対し,売買の原始的不能による無効を理由に,過当に支払った金員について,不当利得返還及び遅延損害金の支払を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は,()内に証拠を示す。)(1) 当事者等原告は,各種電気機器用コネクターケーブル及びその関連商品の加工及びそれら商品の販売を業とする株式会社であり,資本金は1000万円,平成12年度の年商は約5000万円である。 被告は,主に通信機器・電子機器及び電子部品等を取り扱う商社であり,資本金は1億円,平成11年度の年商は約148億円である。 株式会社Eは,株式会社Fの関連会社であり,電子関連部品の加工及び販売等を業とし,資本金は1050万円,年商は約15億円である(甲13,弁論の全趣旨)。 (2) 取引関係原告は,平成9年2月1日から平成11年8月16日までの間,被告から,別紙仕入記録帳のとおり機械部品を買い,また,被告に対し,別紙(以下別紙省略)売上記録帳のとおり機械部品を売った(争いがない)。 この間,原告が被告から仕入れた商品の仕入代金合計額は,12億9813万8951円であり,原告の被告に対する既払代金額は12億6873万8951 売上記録帳のとおり機械部品を売った(争いがない)。 この間,原告が被告から仕入れた商品の仕入代金合計額は,12億9813万8951円であり,原告の被告に対する既払代金額は12億6873万8951円であった。また,この間,原告が被告に対して売った商品の売上代金合計額は,11億2568万7323円であり,代金は全て支払済みである(争いがない)。 2 争点(1) 原告と被告との間の売買契約には,目的物が現実には存在しない,いわゆる架空取引があったか。 (2) 架空取引による売買は,原始的不能により無効となるか。 (3) 原告は,被告との取引当時,売買目的物が存在しないことを知っていたか。 (4) 原告が被告に対して不当利得返還請求をすることは,権利濫用又は信義則違反となるか。 3 当事者の主張(1) 争点(1)について(原告の主張)原告と被告とは,株式会社Eの担当者であるGの指示に従い,被告が株式会社Eから商品を仕入れ,原告が被告からその商品を仕入れ,さらに原告が被告の注文書にしたがって,その商品を再び被告に売り,再び被告が株式会社Eにその商品を売るという取引(いわゆる「環状取引」)を行っていた。 ところが,この取引には,商品が現存し,株式会社E,被告及び原告の間で実際に商品が流通した正規取引もあるが,その大部分は,商品が品番自体現存しない架空取引であった。正規取引は,別紙仕入記録帳及び売上記録帳に「○」がつけられたものであり,架空取引は,別紙仕入記録帳及び売上記録帳に「×」がつけられたものである。そして,原告の被告からの正規仕入代金額は合計505万8736円,架空仕入代金額は合計12億9308万0215円で,原告が被告に支払った代金額は合計12億6368万0215円であり,原告の被告に対する正規売上代金額は合計4808万5532円, 05万8736円,架空仕入代金額は合計12億9308万0215円で,原告が被告に支払った代金額は合計12億6368万0215円であり,原告の被告に対する正規売上代金額は合計4808万5532円,架空売上代金額は合計10億7760万1791円であり,被告は原告に対して代金を全額支払った。 したがって,架空取引を精算すると,原告が被告に対して1億8607万8424円の過払いとなり,被告は原告に対して同額を返還すべきである。 (被告の主張)原告,被告及び株式会社Eの間の取引は,被告が原告からの注文に基づいて,商品を株式会社Eに発注し,株式会社Eから原告(ないし原告が指示する取引先)に商品を直送する,あるいは逆に,被告が株式会社Eからの注文に基づいて,商品を原告に発注し,原告から株式会社E(ないし株式会社Eの指示する取引先)に商品を直送する形で行われており,被告を商社として介在させる通常の取引であった。 そして,原告及び株式会社Eは,商品の納入を実際に確認したからこそ,被告に対して納品書を交付し,代金を支払っているのであり,架空取引は存在しない。 (2) 争点(2)について(原告の主張)原告と被告との間の取引で対象としていた商品は,Gが品番を勝手に考案したものであり,現実には存在しない架空のものである。したがって,本件の取引は,制限種類売買ではあるが,商品が現存し得ないのであるから,原始的に不能な契約であって,無効である。 (被告の主張)契約が無効であることについては争う。 本件一連の取引にあっては,商品の現品を確認することなく,納品書の受理等の伝票上の処理のみによって行われるものとなっており,仮にその取引において商品が現実には存在しなかったとしても,伝票上の処理を終えることによって物の引渡しと同等の法律効果を有する取引であったと 理等の伝票上の処理のみによって行われるものとなっており,仮にその取引において商品が現実には存在しなかったとしても,伝票上の処理を終えることによって物の引渡しと同等の法律効果を有する取引であったと解されるのであって,原告による被告への代金の支払は当然に有効である。 (3) 争点(3)について(被告の主張)仮に架空取引が存在し,その法的効果が無効であったとしても,原告は,取引が商品の現存しない架空取引であって,被告に対する代金支払義務がないことを知りながら,被告に対して金銭を支払っている。したがって,原告は,非債弁済により,被告に対する不当利得返還請求をすることができない。 (原告の主張)原告は,取引が商品の現存しない架空取引であることについては全く知らなかった。したがって,原告は,被告に対する代金支払債務が存在しないことについても知らなかったのであり,被告に対する金銭の支払は非債弁済ではない。 (4) 争点(4)について(被告の主張)本件の架空取引は,原告代表者AとGが共謀して被告を欺きながら行ってきたものであり,商品がなかったことを理由に原告が被告に対して不当利得返還請求をすることは信義則に反し,権利を濫用するものである。 (原告の主張)Aは,商品の不存在の事実自体を知らず,Gと共謀して被告を欺くということはありえない。したがって,原告の被告に対する不当利得返還請求は,なんら信義則に反したり,権利を濫用するものではない。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実証拠(甲2の2,3の2,4の2,5の2,6の1ないし6の8,7の1ないし7の5,8の2,9の2・3,12,13,14の2ないし14の6,15の2,16ないし21〔枝番を含む〕,24ないし30〔枝番を含む〕,31の2,32の2,33の2,34の2,39,乙1ない ないし7の5,8の2,9の2・3,12,13,14の2ないし14の6,15の2,16ないし21〔枝番を含む〕,24ないし30〔枝番を含む〕,31の2,32の2,33の2,34の2,39,乙1ないし37,証人G,同H,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 関係会社の取引ア原告・株式会社E間原告は,昭和61年6月,株式会社Eと取引を開始した。 当初,両社の取引は,主に株式会社Eがコネクターケーブル等の加工を原告に注文し,原告はこれを受けて商品を加工し,商品は株式会社Eの指示に従って,株式会社Eの取引先に直送するという方法をとっていた(甲13,証人G)。 イ被告・株式会社E間被告は,Gが株式会社E製のネットワーク工事部材を売り込みに来たことを契機に,平成6年4月26日,仕入口座を開設して,株式会社Eからの仕入取引を開始した。また,被告は,同年7月26日に売掛口座を開設し,被告から株式会社Eに対する売掛取引を開始した(乙1)。 ウ原告,被告及び株式会社E間原告は,平成9年2月1日,被告から商品を仕入れたことがあった。Gは,そのころ,被告に対し,株式会社Eは原告に注文をしたいのだが,原告と株式会社E間には材料支給の加工費のみの仕入口座しかなく,完成品及び一次加工品の購入ができないので,納入等の打合せは原告と株式会社Eが直接行うが,被告に伝票を通させてほしい旨依頼した。 被告は,Gの依頼を受け,同月5日,原告に対する仕入口座を開設した。 ほどなく,Gから,被告に対し,今度は株式会社Eから原告に販売したいので間に入って欲しいとの依頼があった。被告は,これを受けて,同月17日,原告に対する売掛口座を開設し,一連の取引を開始した(甲13,39,乙1,証人G)。 エ架空取引の存在ところが,一連の取引 で間に入って欲しいとの依頼があった。被告は,これを受けて,同月17日,原告に対する売掛口座を開設し,一連の取引を開始した(甲13,39,乙1,証人G)。 エ架空取引の存在ところが,一連の取引には,売買の対象商品が存在する正規取引もあったが,商品が実在しない架空取引が大部分であった。別紙仕入記録帳及び売上記録帳記載の「○」印がついたものが正規取引であり,「×」印がついたものが架空取引であった。なお,株式会社Eにおいては,売買の対象商品が現実に存在するか否かを社内的にチェックする態勢を取っていなかった。 そして,原告の被告からの正規仕入代金額は合計505万8736円,架空仕入代金額は合計12億9308万0215円で,原告が被告に支払った代金額は合計12億6368万0215円であり,原告の被告に対する正規売上代金額は合計4808万5532円,架空売上代金額は合計10億7760万1791円であり,被告は原告に対して代金を全額支払った(甲2の2,3の2,9の2・3,12,13,16ないし21〔枝番を含む〕,24,証人G,原告代表者)。 (2) Gが架空取引を行った経緯株式会社Eは,平成8年度中に金型投資をし,J向けブランチアダプターを製作したところ,当初は,Jからブランチアダプターの注文を受けて販売をしていたものの,平成9年1月からは注文がなくなった。 Gの上司である常務取締役Kは,金型の償却ができていないことを知り,担当者であったGを厳しく叱責した。 Gは,深く責任を感じ,Kに対してJから注文がないとも言えず,とりあえず架空の売上げをつくっておいて,その場をしのぎ,架空取引であることを知らない他社の間で取引を循環させて,架空の売上げを株式会社Eの架空の仕入れによって埋めるまでの間に,新しい売り先を見つけるか,あるいは別の商品に上乗せ ておいて,その場をしのぎ,架空取引であることを知らない他社の間で取引を循環させて,架空の売上げを株式会社Eの架空の仕入れによって埋めるまでの間に,新しい売り先を見つけるか,あるいは別の商品に上乗せして償却するという計画を立てた。 そして,Gは,まず,Jに対して,ブランチアダプターを原告経由で他社に売るという虚偽の説明をして架空売上げを立て,株式会社E→J→原告→被告→株式会社Eの順に架空取引を循環させた。Gは,被告から架空仕入れをするとき,Kに対し,被告からの仕入れ伝票の対象商品は,被告からの有償支給ケーブルであり,Lで加工して被告に売り返すものであるとの虚偽の説明をし,その裏付けとして,Lに対して,予め仕入れを依頼していた工具に関し,その名目を加工費として納品書を発行させて,Kの承認を得た。 ところが,Gは,被告からの架空仕入れをするまでに他の償却方法を発見することができなかったので,仕方なく,さらに他の償却方法を探す時間を稼ぐために,平成9年9月ころ,伝票上別の品番をつけた架空商品を被告に売り返し,株式会社Eから被告を介して原告に架空の商品を売り,再び原告から被告を介して株式会社Eが架空の商品を仕入れて伝票を循環させるという取引をすることにした。 しかし,Gは,やはり他の償却方法を発見することができなかったので,仕方なく,架空取引が株式会社Eまで回ってきて,架空の仕入れをすると,再び株式会社E→被告→原告→被告→株式会社Eと循環する取引を行うようにした。 すると,株式会社Eにとっては,外形上は売上げが伸びているように見えるため,Gは株式会社E社内で高い評価を受けるようになり,ますます架空取引を中止することができなくなって,繰り返し前記と同様の架空取引を行った(甲9の2・3,証人G)。 (3) 取引態様ア正規取引原告,被 式会社E社内で高い評価を受けるようになり,ますます架空取引を中止することができなくなって,繰り返し前記と同様の架空取引を行った(甲9の2・3,証人G)。 (3) 取引態様ア正規取引原告,被告及び株式会社E間の正規取引の態様は,以下のとおりであった。 (ア) 原告の被告からの正規仕入取引原告は,株式会社Eの指示に従って被告へ発注して仕入れた商品を,株式会社Eの指示に従って被告以外の第三者会社に販売し,商品は被告から原告ないし原告の指示する先へ直送された。 (イ) 原告の被告に対する正規売上取引まず,Gが,原告に対し,第三者会社からの商品の発注をファックスで指示するとともに,被告に対しては,原告からその商品を発注するようファックスによる指示をする。原告は,Gの指示に従って,第三者会社に商品を発注して仕入れた商品の納品書を同社から受け取り,被告がやはりGの指示に従って,原告にその商品を発注して原告から納品書を受け取る。そして,商品は原告又は前記第三者会社から,被告ないし被告の指示する先に直送されることになる(甲6の1ないし6の8,13,証人G)。 イ架空取引原告,被告及び株式会社E間の架空取引の態様は,以下のとおりであった。 (ア) Gは,被告に対し,商品が存在しないことを秘して,あたかも商品が実在するかのようにして架空の品番・数量・単価及び合計金額を提示し,この架空の商品(以下「架空商品1」という。)を株式会社Eに発注して,原告に転売するよう指示する。また,Gは,原告に対しても,商品が存在しないことを秘して,架空商品1を被告から仕入れるよう指示する。 被告は,Gの指示に基づき,株式会社Eに注文書を発行して架空商品1を仕入れ,株式会社Eから納品書を受け取る。原告も,Gの指示に基づき,被告に注文書を発行して架空商品1を仕入れ, れるよう指示する。 被告は,Gの指示に基づき,株式会社Eに注文書を発行して架空商品1を仕入れ,株式会社Eから納品書を受け取る。原告も,Gの指示に基づき,被告に注文書を発行して架空商品1を仕入れ,被告から納品書を受け取る。 (イ) 次に,Gは,架空商品1の品番・数量・単価及び合計金額を変えて,外形上前記架空商品とは異なる新たな架空商品(以下「架空商品2」という。)を作り上げた上で,原告に対し,架空商品2の品番・数量・単価及び合計金額を提示し,これを約1か月後に被告に売るよう指示する。また,Gは,被告に対しても,架空商品2を原告から仕入れて,株式会社Eに転売するよう指示する。 被告は,Gの指示に基づき,原告に注文書を発行して架空商品2を仕入れ,原告から納品書を受け取る。株式会社Eは,被告に対して注文書を発行して架空商品2を仕入れ,被告から納品書を受け取る。 (ウ) 原告及び被告は,毎月末日締めで相互の売買関係を決済し,代金を支払う(甲13,28,30,弁論の全趣旨)。 ウ Gからの原告・被告に対する説明(ア) Gは,原告に対し,以下のように説明していた。 取引は,株式会社E→被告→原告→被告→株式会社Eの流れで行われ,最終的に株式会社Eの客先であるMに商品が販売されるが,実際には,取引の対象商品は取引当初から存在するものではなく,一連の取引がなされている間に,株式会社Eの指定加工先であるLにおいて加工・完成され,指定納入日にLからMに直送される。 このような特異な取引形態をとるのは,次の理由による。 Mから株式会社Eに対してなされる注文は,その多くが工事に使われる商品で,納期には非常に厳しく,指定納期に遅れると多額のペナルティーを要求されたり,注文を止められたりするので,株式会社Eとしては客先からの注文が一時的に集中したり,納期の前倒 多くが工事に使われる商品で,納期には非常に厳しく,指定納期に遅れると多額のペナルティーを要求されたり,注文を止められたりするので,株式会社Eとしては客先からの注文が一時的に集中したり,納期の前倒しを要求されたり,材料の入手に手間取ったりするような場合でも,常にスムーズに納期に対応できるよう,注文の内示を受けた商品については納期が5か月くらい先のものであっても材料を先行手配して購入し,加工を進めている。そのために仕入材料費や支払加工賃がかさんで社内経理担当者から資金繰り上好ましくないと指摘されて問題になっているが,営業担当の立場としては,大口で,しかも利益率の高いMからの注文はどうしても確保する必要があり,先行購入しているケーブルやコネクター類の材料やその仕掛品の一部を,Mへ納入するまでの間,転売して材料・仕掛品の資金の一部を先に回収すれば経理上の問題も解決するので,あえてこのような取引形態をとる必要があるのである。 したがって,原告及び被告は,一連の取引の中で,ともに商社的取引を行い,利益を得ることになるが,株式会社Eとしても,このような取引はやむを得ず一時的に行うのであり,いつ急に取引がなくなるかは分からない。 そして,原告のところで商品名等が変更されるのは,株式会社E→被告→原告の取引の流れの間は,Lでまだ仕掛品を加工している段階だが,Lで部品・部材であったものを完成させると,品名・数量・単価等が変わり,原告→被告→株式会社Eの順に買い戻すことになるという理由による。 なお,原告は,この取引に協力することによって,取引金額の5パーセントから時には10パーセントを超える利益を得ており,その割合をAとGとで交渉して決めることもできた(甲4の2,5の2,13,39,証人G,原告代表者)。 (イ) 他方,Gは,被告に対し,被告は株式会社 から時には10パーセントを超える利益を得ており,その割合をAとGとで交渉して決めることもできた(甲4の2,5の2,13,39,証人G,原告代表者)。 (イ) 他方,Gは,被告に対し,被告は株式会社Eと原告との間に入って商社としての金融機能を発揮するよう期待されているところ,取引は株式会社E→被告→原告の流れと,原告→被告→株式会社Eの流れの2通りがあり,物の流れは株式会社Eと原告の間でそれぞれ直送となるが,①原告が売り先の場合には,ほとんどが株式会社Eの外注先であるLに株式会社Eが材料を支給し,Lで一次加工されたものが直接原告に送られ,そこでさらに完成品に仕上げて原告の顧客へ納品され,②株式会社Eが売り先の場合には,原告で材料を調達して一次加工されたもの,あるいは完成品が直接株式会社Eの外注先や顧客に直送されると説明していた(乙1,証人H)。 (4) 架空取引の対象商品の品番の決定架空取引の対象商品の品番は,Gが,カタログにあるJIS規格の品番を参考にしつつ,アルファベットと数字を適当に組み合わせて作ったものであった。 そして,原告や被告から,どのような商品が取引の対象になっているのかという問い合わせがあったときには,Gは,ケーブルのカタログや図面を見せたり,Lから適当なケーブルの仕掛品を持ってきたりして,カタログや図面に掲載された物やサンプルに類したケーブル類が取引の対象商品であると説明していた(甲3の2,9の3,証人G,同H,原告代表者)。 (5) 架空取引が発覚するまでの経過ア Hらの原告に対する1回目の視察株式会社E,被告及び原告の取引が開始してから,平成11年6月ころに至るまで,取引上目立ったトラブルはなく,Gの仕組んだ架空取引は,書類上の取引高が徐々に増大していったが,原告及び被告は取引に関して何ら疑いを抱いていなか 告の取引が開始してから,平成11年6月ころに至るまで,取引上目立ったトラブルはなく,Gの仕組んだ架空取引は,書類上の取引高が徐々に増大していったが,原告及び被告は取引に関して何ら疑いを抱いていなかった。 もっとも,同年3月ころから,原告及び被告間の月間取引高が1億円を超えるようになると,被告としては,原告の工場を視察して生産ラインを確認するとともに,原告の信用度の確認をする必要性を感じるようになっていた。 そこで,Hは,Gを通じて原告との間で面会の約束を取り付け,同年6月16日,被告営業本部長Nとともに,原告本社を訪れた。Hらは,原告の加工場を視察して,ケーブルを自動的に切断し,長さを決め,コネクター付けを全自動でする高額の機械が置かれているのを見て,原告に十分な生産能力があり,Aとの会話の中から原告の支払能力に問題がないことを確認したが,当時納品が予定されていた商品がどれであるかという確認はしなかった(乙1,20,21,証人H)。 イ 7月21日付けの架空取引Gは,原告に対し,同年7月21日,同日付けで被告に合計8085万円(消費税抜き)の注文書を送付し,被告からの納品書を受理すること,及び,被告から,これらの商品が品番・数量等を変えた上,合計5088万円(消費税抜き)の商品と,合計3880万8000円(消費税抜き)に分けて,前者については同年8月27日付けで,後者については同年9月29日付けで,それぞれ注文書が発行されるから,これを待って納品書を被告に発行することを指示した。 また,Gは,原告に対し,同年7月21日,同年8月16日付けで被告に合計2800万円(消費税抜き)の注文書を送付し,被告からの納品書を受理すること,及び,被告から,これらの商品が品番・数量等を変えた上,10月26日付けで合計3136万円(消費税抜き)の注 で被告に合計2800万円(消費税抜き)の注文書を送付し,被告からの納品書を受理すること,及び,被告から,これらの商品が品番・数量等を変えた上,10月26日付けで合計3136万円(消費税抜き)の注文書が発行されるから,これを待って,納品書を被告に発行するよう指示した。 原告は,同年7月21日,同日付けで仕入れる分の商品については,Gの指示に従って,被告に対して合計8489万2500円分(消費税込み)の注文書を発行し,被告からの納品書を受理して,同額分の仕入れを行った。 ところが,被告は,原告に対し,同日,原告が8月16日付けで仕入れる予定の商品についてまで納品書を発行してきたので,Aは,Hに対して,8月16日付け分はまだ注文しておらず,現時点では納品書を受理することはできない旨電話で連絡したところ,Hは,売上げは7月21日付けとし,7月分の取引として請求書も発行するが,代金回収においては8月分の取引として扱い,9月末に支払ってくれればよいと説明した。そこで,原告は,被告に対し,同年8月6日,同月16日付けで仕入れる分の注文書を改めて発行した(甲25ないし28〔枝番を含む〕,証人H,原告代表者,弁論の全趣旨)。 ウ 7月29日付けの架空取引Gは,さらに,被告に対して内示をした上,原告に対して,同年7月29日,被告に対する合計2億1477万1515円(消費税込み)分の注文書を発行するよう指示した。 これに対し,Aは,同月21日にも前記の多額の仕入れをしているので,今回の指示に従うと,原告としては,被告への売上げ分と相殺しても,なお9212万8575円を被告に支払う必要があり,銀行から借入れをしなければならなくなるが,このような多額の借入れをしたにもかかわらず被告が倒産するようなことになれば,原告も倒産する可能性が出てくることから,G 575円を被告に支払う必要があり,銀行から借入れをしなければならなくなるが,このような多額の借入れをしたにもかかわらず被告が倒産するようなことになれば,原告も倒産する可能性が出てくることから,Gに対して,いったん取引を断った。 Gは,原告から取引を断られると,架空取引が露見してしまうことを恐れて,Aに対し,「被告は年商も何百億もあり,内容もいい会社ですのでつぶれる心配はありません。何とか買ってもらえませんか。」と,繰り返し頼み込んだ。しかし,Aは,「原告を通さずに,ほかに直接売ってもいいじゃないか。」と言って取引を拒んだので,Gは,Aに対し,「そういうふうに原告を通さずほかへ流してしまいますと,次からの注文は原告にはもう1円も行きませんよ。」と申し向けたところ,Aは一連の取引で得てきた利益を将来にわたって失うことを危惧して,銀行から借入れができるのであれば仕入れるという条件付きで,Gの指示に従うことにした。 Aは,取引銀行であるS信用金庫とT銀行に相談し,1億円の借入れが可能かどうかを問い合わせたところ,たぶん可能であるとの回答を得て,その旨をGに電話連絡した。そこで,Gは,Aに対し,「とりあえず注文書だけは至急被告にファックスしてください。原告で借入れができなかった場合には,被告と相談して注文書はなしにします。」と伝えた。 これを受けて,原告は,被告に対し,同月30日,注文書を作成し,ファックスで送信した(甲4の2・3,5の2,14の4・5,24,乙1ないし6,18,証人G,原告代表者,弁論の全趣旨)。 エ Hらの原告に対する2回目の視察Hは,同日,被告営業管理部長Q(以下「Q」という。)とともに,原告本社を訪れ,原告のS信用金庫とT銀行からの1億円の借入れが,ほぼ内示を受けており,同年8月中旬には正式借入れの承認がなされ, 察Hは,同日,被告営業管理部長Q(以下「Q」という。)とともに,原告本社を訪れ,原告のS信用金庫とT銀行からの1億円の借入れが,ほぼ内示を受けており,同年8月中旬には正式借入れの承認がなされ,同月25日ころには入金があるという話をAから聞いて,原告の支払能力を確認した。 そこで,被告は,株式会社Eからの同年7月29日付け納品書(代金合計1億9798万2750円)を受理し,原告に対して,同年8月5日付けで納品書を送付し,さらに同月10日には請求書を送付しておいた(甲30,乙1,7ないし15,22,23,証人H)。 オ Hらの原告に対する3回目の視察ところが,それでもなお原告の借入れが正式決定しなかったため,H及びQは,同年8月17日,原告本社を訪れて,原告の借入れが可能かについて再度確認し,Aは,5000万円について既にU県からの保証を得ているが,残り5000万円についてのV市の保証が得られれば融資が受けられると答えた。 原告は,同月18日,取引銀行からの融資が正式に決定したため,その旨を被告に伝えるとともに,被告からの前記納品書及び請求書を受理した。そして,Aは,Hに電話をかけて,納品書及び請求書の日付によれば,この取引は8月末締め分として扱うことになり,9月末まで支払ができない旨説明したところ,Hは,Aに対し,8月末に株式会社Eに代金を支払う必要があるため,何とか7月末締め分として扱うよう要請し,Aもこれを了承した。 原告は,被告に対し,同年8月26日,9212万8575円を振り込んで支払い,被告は,同月31日,株式会社Eへの支払を実施した(甲24,乙1,24,25,証人H,原告代表者,弁論の全趣旨)。 カ被告からの納品確認要請被告代表者Wは,同年7月29日付け取引が混乱したことから,Hに対し,納品立会いなどを行って取 実施した(甲24,乙1,24,25,証人H,原告代表者,弁論の全趣旨)。 カ被告からの納品確認要請被告代表者Wは,同年7月29日付け取引が混乱したことから,Hに対し,納品立会いなどを行って取引を適正にするよう指示したため,Hは,Gに対し,同年8月18日ころ,これからは被告は納品立会いを適宜行うようにして,現品を見なければ商品を買わないようにするし,伝票についても株式会社Eの角印が入った正式のものを作成するようにしてほしい旨伝えた。 Gは,同月18日,被告に対して,株式会社Eの角印が押された5枚の注文書を発行して送付するとともに,被告の原告に対する注文書発行を指示したが,Hは,Gに対し,5枚の注文書のうち納期が迫っている2枚分(取引額合計8828万4000円)の取引について,納品立会いをすることを求めた。 また,Aは,Gに対し,同年9月に入ると,毎日のように,商品はLでいつ出来上がるのかを問い合わせた。 そこで,Gは,実際には商品はないが,仕方なくHに納品立会いさせることとし,Hと協議した上で,同年9月17日午後3時に,豊島区a町b-c-d所在のRで,原告が商品を納入するところに立ち会うことを決定し,同月8日,原告にその旨をファックスで通知した(甲14の3,24,乙1,16,17,証人G,同H)。 キ架空取引の発覚と照合しかし,Gは,もうこれ以上隠し通すことはできないと思い,同月14日,原告方を訪れて,Gに対し,今までの取引は対象となる商品のない架空取引であり,伝票だけが回っているものであることを告白すると共に,「三者間の取引は当初から現品を伴わないカラ取引でした。納入先もMと申し上げたが,同社からの注文も存在しない。深くお詫び致します。」との詫び状を交付した。Aは,これを聞いて非常に驚き,「大変なことをしてくれた。俺はも から現品を伴わないカラ取引でした。納入先もMと申し上げたが,同社からの注文も存在しない。深くお詫び致します。」との詫び状を交付した。Aは,これを聞いて非常に驚き,「大変なことをしてくれた。俺はもうこれで破産して自殺するかもしれない。」と言った。 次に,Gは,同月15日,K宅を訪れて,取引が架空であったことを打ち明け,また,Hに対し,電話で同じような説明をした。 K,被告経理部長P,N,H,G及びAは,同月16日,株式会社Eに集合し,Gから架空取引に関する説明を聞いた。N及びKは,Gに対し,「お前はなんというひどいことをしてしまったのだ。」「A社長に申し訳ないと思わないのか。」などと怒鳴った。 Aは,取引が架空であることが判明したから,同月25日ころ,Hに対し,同年8月末日に原告は被告に対して支払った2億9966万4015円を返還するよう請求した。 これに対して,Nは,Aに対し,相互に決済しながら今日に至っているのだから,8月末日に原告が被告に支払った金銭を全額返還せよというのは不合理で,まず正規取引と架空取引を区別する必要があるとして,協力して正規取引と架空取引との照合をすることを申し出た。 そこで,Aはこれを了承し,同年10月12日と13日の両日にわたり,Hと協力して,取引の照合作業を行い,別紙仕入記録帳及び売上記録帳のとおり,正規取引と架空取引の区別をした(甲12,13,16ないし21〔枝番を含む〕,24,乙1,証人G,原告代表者)。 2 争点に対する判断(1) 争点(1)について前記前提となる事実のとおり,本件取引には対象商品が存在しない架空取引が含まれていたものであり,証拠(甲16ないし21〔枝番を含む〕)によれば,具体的には別紙仕入記録帳及び売上記録帳記載の「×」印のつけられた取引が,対象商品が実在しない架空取 品が存在しない架空取引が含まれていたものであり,証拠(甲16ないし21〔枝番を含む〕)によれば,具体的には別紙仕入記録帳及び売上記録帳記載の「×」印のつけられた取引が,対象商品が実在しない架空取引であったことが認められ,他にこの認定を左右するに足る証拠はない。 (2) 争点(2)について前記前提となる事実(3)及び(4)によれば,本件架空取引の態様は,原告及び被告が,Gの指示に従って,Gの考え出した架空の品番の商品を取引対象とする取引伝票を相互に発行し,伝票上の取引金額に基づいて代金支払・決済をするというものであり,原告及び被告は,Gの説明から,取引対象商品はケーブル類の原材料,仕掛品,完成品などであると信じて取引を行っていたことが認められる。 そして,証拠(甲2の2,3の2,証人G)及び弁論の全趣旨によれば,本件架空取引の対象商品は,当初からどこにも存在しない商品であること,商品名は,Gが単なるアルファベットと数字を適当に組み合わせて全く独自に考案したものであること,したがって,商品名自体から対象商品の規格,仕様,作成方法などが一義的に定まるものではないこと,現実にも,商品名から当該商品を製作することは物理的に不可能であること,以上の事実が認められる。 そうすると,本件架空取引は,伝票に記載された品番の商品についての制限種類売買であるかのような観を呈しているものの,対象商品が当初から実在しないばかりでなく,およそ製作が物理的に不能な商品を対象とするものであり,したがって,当該同種類の商品を他から入手することも,物理上社会通念上不可能であるから,制限種類売買としても原始的に不能であるといわなければならない。 これに対し,被告は,本件取引は伝票上の処理を終えることによって物の引渡しと同等の法律効果を有する取引であるから,対象商品が るから,制限種類売買としても原始的に不能であるといわなければならない。 これに対し,被告は,本件取引は伝票上の処理を終えることによって物の引渡しと同等の法律効果を有する取引であるから,対象商品が実在しなくとも,取引は有効であると主張する。 しかし,被告の主張のように,伝票上の処理と物の引渡しを同一視するとすれば,金銭の支払と伝票上の処理との間に契約上の対価関係が存在することになろうが,かかる取引は,民法555条に定めるところの「売買ハ当事者ノ一方カ或財産権ヲ相手方ニ移転スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其代金ヲ支払フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス」との文言には直接該当しないから,本件架空取引は,売買契約類似の無名契約であるということになる。そうとすれば,原告及び被告間には,金銭(代金)の支払と伝票上の処理を対価関係に立たせる旨の特別の合意が必要であると解されるが,前記前提となる事実によれば,原告及び被告は,伝票に記載された対象商品と金銭(代金)とを対価関係に置く通常の売買契約を締結する意思であったことは明らかであるから,被告の主張は失当であるといわざるを得ない。 したがって,本件架空取引は,売買契約としては原始的不能であり,法律上は無効であると解するのが相当であって,被告は,本件架空取引の代金として原告から受領した金員を,民法703条にいう「法律上ノ原因ナクシテ」利得したものと認められる。 (3) 争点(3)について前記前提となる事実によれば,原告は,本件架空取引が対象商品の現実の引渡しを伴わないものであり,しかも,株式会社E→被告→原告→被告→株式会社Eの順に循環する取引であることを認識していたことは認められる。 しかしながら,原告が平成11年7月29日付け売買を行うにあたり,すでに1億2000万円を超える負債を抱えながら,苦労し 告→株式会社Eの順に循環する取引であることを認識していたことは認められる。 しかしながら,原告が平成11年7月29日付け売買を行うにあたり,すでに1億2000万円を超える負債を抱えながら,苦労して取引先の銀行から1億円の借入れまでして代金の決済を行った事実が存すること(甲9の2,22ないし24),前記前提となる事実によれば,Aは,平成11年9月に入ると毎日のように,Gに対して商品はLでいつ出来上がるのかを問い合わせていた経緯が認められること,また,Gは,本件発覚後,原告に対し前記詫び状を交付していること,Gは,本件訴訟の提起前後を問わず,一貫して本件架空取引は自分が一人で仕組んだものであると供述していること,本件架空取引によって結局損失を被ったのは原告であったことなどの諸事情が認められるのであって,以上からすれば,本件架空取引において,対象商品が不存在であったことについて,原告が悪意であったとまでは,認めることができない。 これに対し,Hは,①同年9月16日に株式会社Eの応接室でGの説明を聞いたときに,NがAに対して「Aさんも知っていたのか」と尋ねたのに対して,Aが下を向いたまま黙っていた,②同月20日にKが被告方を訪れ,GとAが共謀して被告には迷惑をかけたと謝罪したと供述する(乙1,証人H)。しかし,①については,これを裏付ける客観的な証拠がなく,かえって,証拠(甲24,証人G,原告代表者)によれば,前記前提となる事実のとおり,NがGに対して「A社長に申し訳ないと思わないのか。」と述べた事実が認められるし,②についても,K自身が,同日,Gのみでは本件架空取引は成立せず,Aの協力があったのではないかとの推測を述べたように思うが,GとAが共謀していたと断定したことはない旨供述し(甲36の2),Gもこれに沿った供述をしている(甲32の Gのみでは本件架空取引は成立せず,Aの協力があったのではないかとの推測を述べたように思うが,GとAが共謀していたと断定したことはない旨供述し(甲36の2),Gもこれに沿った供述をしている(甲32の2)ことからすれば,いずれもその事実を認定することはできない。 したがって,原告が債務の不存在について知っていながら被告に対して非債弁済を行ったという事実は認められない。 (4) 争点(4)について前記のとおり,本件架空取引は,Kから叱責されたGが,自己の社内での保身を目的として,全て単独で画策し,原告及び被告を巻き込んだものであったことが認められ,その意味で原告と被告は,ともに被害者の面を有することは否定できない。 しかしながら,前記前提となる事実によれば,原告は,本件取引が株式会社E→被告→原告→被告→株式会社Eと循環する伝票上だけの異常な取引であることを知りながら,Gの説明を漫然と信用し,会社の目的でもない商社取引を行うこととし,何ら加工等に関わることもないのにも関わらず,5パーセントから時には10パーセント以上もの高額の利益を得ていた上,Gとの間で交渉して,利益率をできるだけ高くしようとさえ目論んでいたこと,また,原告は,自社では全く加工などしていないにもかかわらず,原材料,仕掛品を被告から仕入れて,これを自社で加工して完成品にした形をとり,商品番号を変えてこれを被告に売り戻していたのであって,結果的にはGが仕組んだ一連の架空取引において,対象商品のない伝票だけが循環している不自然な取引が発覚しないための重要な役割を担っており,原告のこのような不自然,不可解な行動がなければ,本件架空取引が早期に破綻し,関係者に多大の損害,迷惑をかけることはなかったものと認められるのである。しかも,原告は,実際は,株式会社Eではなくその関連会社で のような不自然,不可解な行動がなければ,本件架空取引が早期に破綻し,関係者に多大の損害,迷惑をかけることはなかったものと認められるのである。しかも,原告は,実際は,株式会社Eではなくその関連会社であるLで加工しているという商品につき,あたかも自社で完成品にしたかのような伝票操作をし,これにより利益を得ていたという本件取引の異常さに着目すれば,本件取引が当初から対象商品のない,あるいは最終需要者の存在しない架空取引であることは容易に認識することができたものと認められる。他方,被告は,納品書があれば当然に対象商品が存在すると軽信し,原告工場で3度の視察を行ったにもかかわらず,対象商品の存在や納品を実際に確認しなかったという点では,若干の落ち度があることは否めないとしても,対象商品が存在せず,しかも取引が循環していることについては全く知らないまま,原告と株式会社Eとの間に入って,日常業務としての商社取引を行っていたに過ぎないことが認められる。 そうとすれば,原告と被告の本件取引における役割,落ち度を比較するとき,原告の方が役割及び落ち度ともに遙かに重大である上,原告は,環状取引という特異な形で本件取引が行われていることをGの説明を聞いて知っていながら,これに協力し,何ら努力することなく大きな利益をあげることを意図していたのであるから,そこから生ずる危険についても,当然,自ら負担すべきであることを合わせ考慮すると,少なくとも,原告と被告との関係においては,たまたま取引が原始的不能により無効であったからといって,原告が被告に対して利得の返還を請求するのは,権利を濫用するものであるといわざるを得ない。 3 結論以上によれば,本件架空取引は無効であるが,原告が被告に対し,不当利得に基づき代金の精算を請求するのは権利の濫用に該当するから,原告の本 は,権利を濫用するものであるといわざるを得ない。 3 結論以上によれば,本件架空取引は無効であるが,原告が被告に対し,不当利得に基づき代金の精算を請求するのは権利の濫用に該当するから,原告の本訴請求は結局理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部裁判長裁判官小磯武男 裁判官尾崎智子裁判官大谷太別紙省略

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